説明

防汚性物品及びその製造方法

【課題】従来の酸化ジルコニウム等の無機コーティング膜と比べて、食品の焦げ付き汚れや油汚れの除去効果に優れた防汚性物品、及び、この防汚性物品を容易に得ることのできる製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の防汚性物品は、基体の表面の少なくとも一部に、価数が+3価以上かつイオン半径が1オングストローム以上であるイットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)の群から選択される1種または2種以上の元素と、酸素(O)とを含有し、厚みが5nm以上かつ100nm以下の薄膜を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚性物品及びその製造方法に関し、特に、調理中に付着した食品の焦げ付き汚れや油汚れを、簡単に除去することが可能な防汚性物品、及び、この防汚性物品を簡単な装置で簡便かつ安価に製造することが可能な防汚性物品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンロ天板やオーブン皿等の加熱を要する調理器具においては、食品の焦げ付き汚れを簡単に除去するために、撥水性のフッ素樹脂コーティングが多用されてきたが、有機樹脂ゆえに、琺瑯引き等の調理器具と比べて耐熱性や耐摩耗性が劣るという欠点があった。
そこで、無機物のコーティング膜、例えば、ジルコニウム酸化物を主成分とするコーティング膜を基体の表面に成膜した撥水性のある調理器具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この調理器具では、硝酸ジルコニウムや酢酸ジルコニウム等の水溶性ジルコニウム化合物、あるいは酸化ジルコニウムゾルを耐熱性基体の表面に塗布し、焼成することにより、基体の表面に撥水性のコーティング膜を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−321108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の無機物のコーティング膜が施された調理器具では、コーティング膜が撥水性を有するので、焦げ付き汚れをある程度除去することはできるが、焦げ付き汚れが激しい場合には、この焦げ付き汚れを除去することは容易ではないという問題点があった。
特に、酸化ジルコニウムゾルを用いてコーティング膜を形成した場合、表面の平滑性が不十分なために、焦げ付き汚れが固着し易く、この固着した焦げ付き汚れを除去することは容易ではない。
このように、酸化ジルコニウム等の無機コーティング膜は、撥水性を有し、ある程度の焦げ付き汚れを除去する効果は認められるものの、十分ではなく、焦げ付き汚れの除去効果に優れたコーティング膜が待ち望まれていた。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、従来の酸化ジルコニウム等の無機コーティング膜と比べて、食品の焦げ付き汚れや油汚れの除去効果に優れた防汚性物品、及び、この防汚性物品を容易に得ることのできる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、防汚性物品を構成する基体の表面の少なくとも一部、すなわち焦げ付き汚れが生じ易い領域に、価数が+3価以上かつイオン半径が1オングストローム以上の元素と酸素(O)とを含有し、厚みが5nm以上かつ100nm以下の薄膜を形成すれば、従来の酸化ジルコニウム等の無機コーティング膜と比べて、食品の焦げ付き汚れや油汚れの除去効果に優れていることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の防汚性物品は、基体の表面の少なくとも一部に、価数が+3価以上かつイオン半径が1オングストローム以上の元素と酸素(O)とを含有し、厚みが5nm以上かつ100nm以下の薄膜を形成してなることを特徴とする。
【0008】
前記元素は、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)の群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
【0009】
本発明の防汚性物品の製造方法は、価数が+3価以上かつイオン半径が1オングストローム以上の元素のアルコキシド、前記元素のアルコキシドの加水分解物、前記元素のアルコキシドのキレート化合物、前記元素のアルコキシドの加水分解物のキレート化合物、前記元素の水溶性塩、前記元素の酸化物ゾルの群から選択される1種または2種以上を含む塗布液を、基体の表面の少なくとも一部に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を大気中、400℃以上の温度にて熱処理することを特徴とする。
【0010】
前記元素のアルコキシドのキレート化合物または前記元素のアルコキシドの加水分解物のキレート化合物は、前記元素のアルコキシドと、エタノールアミン、β−ジケトン、β−ケト酸エステル、カルボン酸の群から選択される1種または2種以上の化合物との反応生成物であることが好ましい。
前記塗布膜を熱処理した後、この塗布膜の表面を酸処理することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の防汚性物品によれば、基体の表面の少なくとも一部に、価数が+3価以上かつイオン半径が1オングストローム以上の元素と酸素(O)とを含有し、厚みが5nm以上かつ100nm以下の薄膜を形成したので、この薄膜の撥水性が向上することにより、食品の焦げ付き汚れや油汚れが付着し難いものとなり、したがって、従来の酸化ジルコニウム等の無機コーティング膜と比べて撥水性を向上させることができ、食品の焦げ付き汚れや油汚れの除去効果を向上させることができる。
よって、調理中に付着した食品が焦げ付いたり、あるいは油汚れが付着した場合においても、この焦げ付き汚れや油汚れを水拭き程度の簡単な操作で容易に除去することができる。
【0012】
本発明の防汚性物品の製造方法によれば、価数が+3価以上かつイオン半径が1オングストローム以上の元素のアルコキシド、前記元素のアルコキシドの加水分解物、前記元素のアルコキシドのキレート化合物、前記元素のアルコキシドの加水分解物のキレート化合物、前記元素の水溶性塩、前記元素の酸化物ゾルの群から選択される1種または2種以上を含む塗布液を、基体の表面の少なくとも一部に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を大気中、400℃以上の温度にて熱処理するので、得られた薄膜の撥水性が従来の酸化ジルコニウム等の無機コーティング膜と比べて向上したものとなり、したがって、食品の焦げ付き汚れや油汚れの除去効果に優れた薄膜を、基体の表面の少なくとも一部に、簡便な装置を用いて容易に製膜することができる。
また、塗布膜を熱処理した後に、この塗布膜の表面を酸処理すれば、得られた薄膜の撥水性がさらに向上し、したがって、食品の焦げ付き汚れや油汚れの除去効果がさらに優れたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の防汚性物品及びその製造方法を実施するための形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0014】
「防汚性物品」
本実施形態の防汚性物品は、基体の表面の少なくとも一部、すなわち、食品の焦げ付き汚れや油汚れが付く虞のある領域に、価数が+3価以上かつイオン半径が1オングストローム以上の元素と酸素(O)とを含有し、厚みが5nm以上かつ100nm以下の薄膜を形成している。
【0015】
ここで、本実施形態の防汚性物品としては、例えば、ガスコンロ、誘導加熱(IH:Induction Heating)方式のIHコンロ、ラジエントコンロ等の天板、オーブンのオーブン皿、オーブン筐体、オーブン底板等の調理用物品を挙げることができる。
【0016】
この調理用物品を構成する基体としては、例えば、表面が釉薬処理された釉薬処理品、透明もしくは黒色の結晶化ガラス等が挙げられる。この透明もしくは黒色の結晶化ガラスの場合、リチウムを含まない結晶化ガラスが好ましい。その理由は、リチウムが親水性に寄与する元素であるから、薄膜を形成し焼成する際に、ガラス内に拡散したり、表面に一部析出する等して、薄膜の撥水性を阻害する虞があるからである。
この釉薬処理品としては、例えば、各種コンロの天板、ホーロー製のオーブン皿、オーブン筐体、陶器製や磁器製のオーブン皿、オーブン底板等を挙げることができ、特に、コンロ用トッププレート、IHコンロ用トッププレート等が好適である。
また、透明もしくは黒色の結晶化ガラスとしては、ガスコンロの天板用、IHコンロの天板用、ラジエントコンロの天板用を挙げることができる。ここでは、透明結晶化ガラスの裏面に施色したものも透明ガラスに含める。
【0017】
薄膜は、基体の表面の少なくとも一部、すなわち、食品の焦げ付き汚れや油汚れが付く虞のある領域に形成されたもので、価数が+3価以上かつイオン半径が1オングストローム以上の元素と酸素(O)とを含有する金属酸化物を主成分としたものである。
この薄膜を製膜する領域としては、少なくとも食品の焦げ付き汚れや油汚れが付く虞のある領域とする必要があるが、基体の表面全体に洩れなく上記の薄膜を製膜した構成としてももちろんかまわない。
【0018】
この価数が+3価以上かつイオン半径が1オングストローム以上の元素としては、金属元素の一種である希土類元素、すなわちイットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)の群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
【0019】
ここで、薄膜の組成を、価数が+3価以上かつイオン半径が1オングストローム以上の元素と酸素(O)とを含有する金属酸化物を主成分とした理由について説明する。
例えば、薄膜の組成を上記以外の金属酸化物、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)とした場合、この酸化ジルコニウム(ZrO)の表面では、親水基(−OH)がオキソ基(=O)に変化するために撥水性を示す。しかしながら、この酸化ジルコニウム(ZrO)の表面に食品の焦げ付き汚れが付着した場合、この表面が撥水性にもかかわらず、この焦げ付き汚れは表面に強固に付着してしまい、この焦げ付き汚れを容易に除去することは難しい。すなわち、表面が撥水性を有するからといって、焦げ付き汚れに対する十分な除去性が得られるとは限らない。
【0020】
酸化ジルコニウム(ZrO)が焦げ付き汚れに対して十分な除去性を有しない理由は、ジルコニウム(Zr)の安定な価数が+4価と高く、かつ、そのイオン半径が0.86オングストロームと小さいことにある。イオン半径が1オングストロームより小さいと、このジルコニウム(Zr)が酸化して酸化ジルコニウム(ZrO)となった場合に、ジルコニウムイオン(Zr4+)を取り巻く酸素イオン(O2−)同士が相対的に接近して配位し、その結果、酸素イオン(O2−)の焦げ付き汚れに対する結合力が増し、焦げ付き汚れが固着し易くなるからと考えられる。
【0021】
一方、本実施形態の薄膜では、価数が+3価以上かつイオン半径が1オングストローム以上の元素と酸素(O)とを含有しているので、元素のイオン半径が1オングストローム以上になると、この元素自体が大きいために、酸化物を生成した場合に、このイオンを取り巻く酸素イオン(O2−)同士は、酸化ジルコニウム(ZrO)の場合のように相対的に接近することができなくなる。その結果、酸素イオン(O2−)同士が相対的に離れた構造となり、酸素イオン(O2−)の焦げ付き汚れに対する結合力が弱くなり、焦げ付き汚れが固着し難くなるからと考えられる。
【0022】
焦げ付き汚れは、食品を構成している有機物が完全に酸化される一歩手前の状態であり、いわば酸素を含む樹脂状態であるから、この焦げ付き汚れと薄膜中の酸素原子とは、非常に結合し易い状態になっているものと考えられる。そこで、薄膜中に酸素が密に存在していれば、焦げ付き汚れと薄膜とは、当然結合し易くなり、一方、薄膜中に酸素が疎に存在していれば、焦げ付き汚れと薄膜とは、当然結合し難くなる。
【0023】
本実施形態の薄膜は、価数が+3価以上かつイオン半径が1オングストローム以上の元素と酸素(O)とを含有しているので、この薄膜中に酸素が疎に存在することとなり、この薄膜と焦げ付き汚れとは、当然結合し難くなり、その結果、この薄膜に焦げ付き汚れが付着したとしても、この焦げ付き汚れが薄膜に固着する虞がなくなり、この焦げ付き汚れが除去し易くなる。
【0024】
このイオン半径が1オングストローム以上の元素の価数は、+3価以上が好適である。価数が+2価以下であると、耐薬品性が低下し、耐久性が不十分なものとなるので、好ましくない。
【0025】
この薄膜における、価数が+3価以上かつイオン半径が1オングストローム以上の元素の酸化物の含有率(質量百分率)は、薄膜の焦げ付き汚れの除去容易性を向上させるには高ければ高い程よく、例えば、焦げ付き汚れを水拭き程度で容易に除去することができる点を考慮すると、20質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
【0026】
この薄膜の厚みは、5nm以上かつ100nm以下が好ましく、より好ましくは10nm以上かつ90nm以下、さらに好ましくは30nm以上かつ80nm以下である。
この薄膜の厚みが5nmを下回ると、防汚性の付与が不充分となるので好ましくなく、一方、厚みが100nmを越えると、薄膜の耐衝撃性が低下してクラックが入り易くなり、また、光沢度が大きく、防汚性物品自体の色調等の意匠性が低下するので好ましくない。
【0027】
「防汚性物品の製造方法」
本実施形態の防汚性物品の製造方法は、価数が+3価以上かつイオン半径が1オングストローム以上の元素のアルコキシド、前記元素のアルコキシドの加水分解物、前記元素のアルコキシドのキレート化合物、前記元素のアルコキシドの加水分解物のキレート化合物、前記元素の水溶性塩、前記元素の酸化物ゾルの群から選択される1種または2種以上を含む塗布液を、基体の表面の少なくとも一部に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を大気中、400℃以上の温度にて熱処理する方法である。
【0028】
この塗布液においては、価数が+3価以上かつイオン半径が1オングストローム以上の元素としては、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)の群から選択される1種または2種以上の希土類元素が好ましい。
【0029】
上記の元素のアルコキシドとしては、特に制限されるものではないが、例えば、上記の元素のノルマルブトキシド等のブトキシド、上記の元素のテトラプロポキシド等のプロポキシドを挙げることができる。これらブトキシドやプロポキシドは、適度な加水分解速度を有し、膜質が均一な被膜を成膜することができ、しかも取り扱いが容易であるから、好ましい。
【0030】
上記の元素のアルコキシドの加水分解物としては、特に制限されるものではないが、例えば、上記の元素のノルマルブトキシド等のブトキシドの加水分解物、上記の元素のテトラプロポキシド等のプロポキシドの加水分解物を挙げることができる。これらアルコキシドの加水分解物の加水分解率としては、特に制限はなく、0モル%超〜100モル%の範囲内のものを使用することができる。
【0031】
これらのアルコキシドやアルコキシドの加水分解物は、吸湿性が高く、不安定であり、貯蔵安定性も充分ではないので、取り扱う際には非常に注意を要する。
そこで、取り扱いの容易さを考慮すると、これらアルコキシドやアルコキシドの加水分解物をキレート化した、上記の元素のアルコキシドのキレート化合物、上記の元素のアルコキシドの加水分解物のキレート化合物が好ましい。
【0032】
上記の元素のアルコキシドのキレート化合物としては、例えば、上記の元素のアルコキシドと、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のエタノールアミン、アセチルアセトン等のβ−ジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、マロン酸ジエチル、フェノキシ酢酸エチル等のβ−ケト酸エステル、酢酸、乳酸、クエン酸、安息香酸、リンゴ酸等のカルボン酸の群から選択される1種または2種以上の加水分解抑制剤(化合物)との反応生成物を挙げることができる。ここで、加水分解抑制剤とは、上記の元素のアルコキシドとキレート化合物を形成し、このキレート化合物の加水分解反応を抑制する作用を有する化合物のことである。
【0033】
また、上記の元素のアルコキシドの加水分解物のキレート化合物としては、上記の元素のアルコキシドと、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のエタノールアミン、アセチルアセトン等のβ−ジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、マロン酸ジエチル、フェノキシ酢酸エチル等のβ−ケト酸エステル、酢酸、乳酸、クエン酸、安息香酸、リンゴ酸等のカルボン酸の群から選択される1種または2種以上の加水分解抑制剤(化合物)との反応生成物を挙げることができる。加水分解抑制剤の定義は、上述した通りである。
【0034】
この加水分解抑制剤の、上記の元素のアルコキシド、または上記の元素のアルコキシドの加水分解物、に対する割合は、上記の元素のアルコキシド、または上記の元素のアルコキシドの加水分解物に含まれる元素の0.5モル倍〜4モル倍が好ましく、より好ましくは1モル倍〜3モル倍である。
ここで、上記の割合が0.5モル倍よりも少ないと、塗布液の安定性が不充分なものとなるからであり、一方、4モル倍を超えると、熱処理した後においても加水分解抑制剤が薄膜中に残留し、その結果、薄膜の硬度が低下するからである。
【0035】
これら上記の元素のアルコキシドのキレート化合物、上記の元素のアルコキシドの加水分解物のキレート化合物としては、上記の元素のアルコキシドまたは上記の元素のアルコキシドの加水分解物を溶媒中に溶解し、さらに加水分解抑制剤を添加し、得られた溶媒中にてキレート化反応を生じさせたものであってもよい。
【0036】
また、上記の元素の水溶性塩としては、上記の元素の硝酸塩、上記の元素の酢酸塩等を挙げることができる。
また、上記の元素の酸化物ゾルとしては、上記の元素の硝酸塩、上記の元素の酢酸塩等に酸またはアルカリを添加して熟成して得られたゾルを挙げることができる。これらのゾルは、限外濾過により不純物を取り除くことができる。
【0037】
この塗布液においては、上記の元素のアルコキシド、上記の元素のアルコキシドの加水分解物、上記の元素のアルコキシドのキレート化合物、上記の元素のアルコキシドの加水分解物のキレート化合物、上記の元素の水溶性塩、上記の元素の酸化物ゾル以外に、溶媒、各酸化物のゾル分散液、水溶性塩等を含有してもよい。
【0038】
上記の溶媒としては、上記の元素のアルコキシド、上記の元素のアルコキシドの加水分解物、上記の元素のアルコキシドのキレート化合物、上記の元素のアルコキシドの加水分解物のキレート化合物、上記の元素の水溶性塩、上記の元素の酸化物ゾル、を溶解または分散させることのできる溶媒であれば、特に制限なく用いることができ、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール等の低級アルコールの他、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)等のエーテル類(セロソルブ類)、アセトン、ジメチルケトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコール等のグリコール類等を挙げることができる。特に、溶媒として水を用いる場合、アルコキシドの加水分解量以上の量の水を含有させると塗布液の安定性が低下するので、アルコキシドの加水分解量より少ない量とする必要がある。
【0039】
ここで、上記の元素成分として、上記の元素のアルコキシド、上記の元素のアルコキシドの加水分解物、のいずれか一方または双方を用いる場合、アルコキシドの加水分解反応を制御する触媒を添加してもよい。
この触媒としては、塩酸、硝酸等の無機酸、クエン酸、酢酸等の有機酸等を挙げることができる。また、この触媒の添加量は、通常、塗布液中の上記の元素成分の合計量に対して0.01〜10質量%程度が好ましい。なお、触媒の過剰の添加は、熱処理の際に熱処理炉を腐食する虞があるので好ましくない。
この点、上記の元素のアルコキシドのキレート化合物または上記の元素のアルコキシドの加水分解物のキレート化合物を用いると、加水分解反応を制御する触媒である酸を添加する必要がなく、したがって、熱処理の際に熱処理炉を腐食する虞がないので好ましい。
【0040】
次いで、上記の塗布液を、防汚性物品を構成する基体の表面の少なくとも一部、すなわち、食品の焦げ付き汚れや油汚れが付く虞のある領域に塗布する。
塗布方法としては、バーコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法等を適用することができる。塗布に当たっては、塗布膜の厚みを、熱処理後の膜厚が5nm〜100nmの範囲になるように調製することが好ましい。
【0041】
このようにして得られた塗布膜を、熱風乾燥機等を用いて乾燥を行い、その後、この塗布膜中に含まれるバインダー等を散逸させるために、高温焼成炉等を用いて大気雰囲気中、400℃以上、好ましくは500℃以上の温度にて熱処理し、本実施形態の薄膜とする。
熱処理温度が400℃を下回ると、得られた薄膜の強度が低下するので好ましくない。なお、熱処理温度が高すぎると、基体が変形する虞があるので、熱処理温度を防汚性物品を構成する基体の材質に応じて調整する。
【0042】
このようにして得られた薄膜の表面を酸処理すると、撥水性がさらに向上し、したがって、食品の焦げ付き汚れや油汚れの除去効果がさらに向上する。
酸としては、特に制限はなく、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、クエン酸、酢酸等の有機酸が挙げられる。
酸処理の方法としては、薄膜の表面が酸に接触することができる方法であればよく、酸にて拭いたり、または酸を微量吹き付けたり、あるいは酸に浸漬したり等、いずれの方法によってもよい。
【0043】
従来のコーティング膜では、アルコキシドを用いると撥水性が発現し難いので、アルコキシドの替わりに硝酸塩や酢酸塩の水溶液、あるいは酸化物ゾルを用いていたが、本実施形態では、価数が+3価以上かつイオン半径が1オングストローム以上の元素と酸素(O)とを含有し、厚みが5nm以上かつ100nm以下の薄膜の表面を酸処理すると、アルコキシドやアルコキシドの加水分解物を用いたにも係わらず、直ちに撥水化することとなる。
これは、酸処理により、薄膜の表面の親水性である−OH基が消滅するからと考えられる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0045】
「実施例1〜12」
イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)の各元素の硝酸塩が0.3質量部、純水が99.7質量部となるように、上記の各元素の硝酸塩と純水とをそれぞれ混合し、実施例1〜12それぞれの塗布液M−1〜M−12を得た。
【0046】
次いで、これらの塗布液M−1〜M−12各々を、リチウムを含んでいないIHコンロの天板用透明結晶化ガラスN−0(日本電気硝子社製)の表面にスプレーコート法にて塗布し、塗布膜を形成した。
次いで、これらの天板用透明結晶化ガラスを、乾燥機を用いて大気雰囲気中、100℃にて3分間乾燥させ、次いで、高温焼成炉を用いて大気雰囲気中、700℃にて1時間焼成して、これらの天板用透明結晶化ガラス上に薄膜M−1〜M−12をそれぞれ形成し、実施例1〜12のIHコンロ用天板を得た。
【0047】
実施例1〜12のIHコンロ用天板に形成された薄膜M−1〜M−12をX線光電子分光分析(ESCA)により分析したところ、それぞれ、イットリウム酸化物、ランタン酸化物、セリウム酸化物、プラセオジム酸化物、ネオジム酸化物、サマリウム酸化物、ユウロピウム酸化物、ガドリニウム酸化物、テルビウム酸化物、エルビウム酸化物、ツリウム酸化物、イッテルビウム酸化物が生成していることが確認された。
【0048】
また、これらの酸化物の薄膜M−1〜M−12中における含有率は、それぞれ、イットリウム酸化物94質量%、ランタン酸化物95質量%、セリウム酸化物95質量%、プラセオジム酸化物96質量%、ネオジム酸化物96質量%、サマリウム酸化物95質量%、ユウロピウム酸化物95質量%、ガドリニウム酸化物96質量%、テルビウム酸化物96質量%、エルビウム酸化物95質量%、ツリウム酸化物96質量%、イッテルビウム酸化物95質量%であることが確認された。
【0049】
「実施例13」
イットリウムn−ブトキシド2.5質量部、アセト酢酸エチル2.0質量部、トルエン30質量部、ターピネオール65.5質量部を室温(25℃)下にて90分間混合攪拌して、イットリウムn-ブトキシドとアセト酢酸エチルとのキレート化合物を生成させ、実施例13の塗布液を得た。
次いで、この塗布液を用いて、ホーロー製のオーブン皿上にローラーコート法にて塗布し、塗布膜を作製した。
【0050】
次いで、このホーロー製のオーブン皿を、乾燥機を用いて大気雰囲気中、100℃にて3分間乾燥させ、次いで、高温焼成炉を用いて大気雰囲気中、500℃にて30分間焼成して、このホーロー製のオーブン皿上に薄膜M−13を形成し、実施例13のホーロー製のオーブン皿を得た。
このホーロー製のオーブン皿上の薄膜M−13をX線光電子分光分析(ESCA)により分析したところ、イットリウム酸化物が生成しており、この酸化物の薄膜M−13中における含有率は96質量%であることが確認された。
【0051】
「実施例14」
ランタンイソプロポキシド2.5質量部、アセト酢酸エチル2.1質量部、トルエン30質量部、ターピネオール65.4質量部を室温(25℃)下にて90分間混合攪拌して、ランタンイソプロポキシドとアセト酢酸エチルとのキレート化合物を生成させ、実施例14の塗布液を得た。
次いで、この塗布液を用いて、ホーロー製のオーブン皿上にローラーコート法にて塗布し、塗布膜を作製した。
【0052】
次いで、このホーロー製のオーブン皿を、乾燥機を用いて大気雰囲気中、100℃にて3分間乾燥させ、次いで、高温焼成炉を用いて大気雰囲気中、500℃にて30分間焼成して、このホーロー製のオーブン皿上に薄膜M−14を形成し、実施例14のホーロー製のオーブン皿を得た。
このホーロー製のオーブン皿上の薄膜M−14をX線光電子分光分析(ESCA)により分析したところ、ランタン酸化物が生成しており、この酸化物の薄膜M−14中における含有率は94質量%であることが確認された。
【0053】
「実施例15」
セリウムテトライソプロポキシド2.5質量部、アセト酢酸エチル1.8質量部、トルエン30質量部、ターピネオール65.7質量部を室温(25℃)下にて90分間混合攪拌して、セリウムテトライソプロポキシドとアセト酢酸エチルとのキレート化合物を生成させ、実施例15の塗布液を得た。
次いで、この塗布液を用いて、ホーロー製のオーブン皿上にローラーコート法にて塗布し、塗布膜を作製した。
【0054】
次いで、このホーロー製のオーブン皿を、乾燥機を用いて大気雰囲気中、100℃にて3分間乾燥させ、次いで、高温焼成炉を用いて大気雰囲気中、500℃にて30分間焼成して、このホーロー製のオーブン皿上に薄膜M−15を形成し、実施例15のホーロー製のオーブン皿を得た。
このホーロー製のオーブン皿上の薄膜M−15をX線光電子分光分析(ESCA)により分析したところ、セリウム酸化物が生成しており、この酸化物の薄膜M−15中における含有率は95質量%であることが確認された。
【0055】
「実施例16」
ランタンイソプロポキシド0.8質量部、ジルコニウムn−ブトキシド1.7質量部、アセト酢酸エチル2.0質量部、トルエン30質量部、ターピネオール65.5質量部を室温(25℃)下にて90分間混合攪拌して、ランタンイソプロポキシド及びジルコニウムn−ブトキシドとアセト酢酸エチルとのキレート化合物を生成させ、実施例16の塗布液を得た。
次いで、この塗布液を用いて、ホーロー製のオーブン皿上にローラーコート法にて塗布し、塗布膜を作製した。
【0056】
次いで、このホーロー製のオーブン皿を、乾燥機を用いて大気雰囲気中、100℃にて3分間乾燥させ、次いで、高温焼成炉を用いて大気雰囲気中、500℃にて30分間焼成して、このホーロー製のオーブン皿上に薄膜M−16を形成し、実施例16のホーロー製のオーブン皿を得た。
このホーロー製のオーブン皿上の薄膜M−16をX線光電子分光分析(ESCA)により分析したところ、ランタン酸化物及びジルコニウム酸化物が生成しており、この薄膜M−16中におけるランタン酸化物の含有率は22質量%、ジルコニウム酸化物の含有率は76質量%であることが確認された。
【0057】
「実施例17」
ランタンイソプロポキシド0.5質量部、ジルコニウムn−ブトキシド2.0質量部、アセト酢酸エチル2.0質量部、トルエン30質量部、ターピネオール65.5質量部を室温(25℃)下にて90分間混合攪拌して、ランタンイソプロポキシド及びジルコニウムn−ブトキシドとアセト酢酸エチルとのキレート化合物を生成させ、実施例17の塗布液を得た。
次いで、この塗布液を用いて、ホーロー製のオーブン皿上にローラーコート法にて塗布し、塗布膜を作製した。
【0058】
次いで、このホーロー製のオーブン皿を、乾燥機を用いて大気雰囲気中、100℃にて3分間乾燥させ、次いで、高温焼成炉を用いて大気雰囲気中、500℃にて30分間焼成して、このホーロー製のオーブン皿上に薄膜M−17を形成し、実施例17のホーロー製のオーブン皿を得た。
このホーロー製のオーブン皿上の薄膜M−17をX線光電子分光分析(ESCA)により分析したところ、ランタン酸化物及びジルコニウム酸化物が生成しており、この薄膜M−17中におけるランタン酸化物の含有率は12質量%、ジルコニウム酸化物の含有率は87質量%であることが確認された。
【0059】
「比較例1」
ジルコニウム(Zr)の硝酸塩0.25質量部、純水99.75質量部を混合攪拌して、比較例1の塗布液を得た。
次いで、この塗布液を、リチウムを含んでいないIHコンロの天板用透明結晶化ガラス N−0(日本電気硝子社製)の表面に、スプレーコート法にて塗布し、塗布膜を形成した。
【0060】
次いで、このIHコンロの天板用透明結晶化ガラスを、乾燥機を用いて大気雰囲気中、100℃にて3分間乾燥させ、次いで、高温焼成炉を用いて大気雰囲気中、700℃にて1時間焼成して、比較例1のIHコンロの天板用透明結晶化ガラスを得た。
このIHコンロの天板用透明結晶化ガラス上の薄膜Y−1をX線光電子分光分析(ESCA)により分析したところ、ジルコニウム酸化物が生成しており、このジルコニウム酸化物の薄膜Y−1中における含有率は96質量%であることが確認された。
【0061】
「比較例2」
ジルコニウムn−ブトキシド2.5質量部、アセト酢酸エチル1.7質量部、n−ブタノール30質量部、ターピネオール65.8質量部を室温(25℃)下にて90分間混合攪拌して、ジルコニウムn−ブトキシドとアセト酢酸エチルとのキレート化合物を生成させ、比較例2の塗布液を得た。
次いで、この塗布液を用いて、ホーロー製のオーブン皿上にローラーコート法にて塗布し、塗布膜を作製した。
【0062】
次いで、このホーロー製のオーブン皿を、乾燥機を用いて大気雰囲気中、100℃にて3分間乾燥させ、次いで、高温焼成炉を用いて大気雰囲気中、500℃にて30分間焼成して、このホーロー製のオーブン皿上に薄膜Y−2を形成し、比較例2のホーロー製のオーブン皿を得た。
このホーロー製のオーブン皿上の薄膜Y−2をX線光電子分光分析(ESCA)により分析したところ、ジルコニウム酸化物が生成しており、このジルコニウム酸化物の薄膜Y−2中における含有率は96質量%であることが確認された。
【0063】
次いで、実施例1〜17及び比較例1、2の調理器具の防汚性を評価した。評価結果を表1に示す。
なお、評価項目及び評価方法は次のとおりである。
(1)膜厚
薄膜測定装置 filmetrics F20(松下テクノトレーディング(株)社製)を用いて膜厚を測定した。
(2)焦げ付き汚れの除去容易性
調理器具の表面に醤油を10mL滴下し、大気中、300℃にて1時間加熱し、醤油を焦げ付かせた。次いで、この焦げ付き汚れを水を含ませた布を用いて水拭きし、除去の容易性を下記の評価基準にて評価した。
○:容易に除去することができた。
△:焦げ付き汚れが残るが、時間をかければ除去することができた。
×:焦げ付き汚れが残ってしまい、時間をかけても除去することが困難であった。
【0064】
(2)油汚れの除去容易性
調理器具の表面にてんぷら油を1mL滴下し、大気中、250℃にて1時間加熱し、油を固化させた。次いで、この油汚れを水を含ませた布を用いて水拭きし、除去の容易性を下記の評価基準にて評価した。
○:容易に除去することができた。
△:油汚れが残るが、時間をかければ除去することができた。
×:油汚れが残ってしまい、時間をかけても除去することが困難であった。
【0065】
【表1】

【0066】
表1によれば、実施例1〜16の調理器具は、焦げ付き汚れや油汚れを水拭き程度の簡単な操作で容易に除去することができた。
また、実施例17の調理器具は、焦げ付き汚れや油汚れが残ってしまうものの、時間をかければ除去することができた。
また、実施例1〜17の薄膜は、耐水性及び耐薬品性も優れており、調理器具として大変優れた材料であることが確認された。
したがって、実施例1〜17の調理器具は、比較例1、2の調理器具に比べて食品の焦げ付き汚れや油汚れの除去効果が向上していることが分かった。
【0067】
「実施例18」
実施例13にて得られたオーブン皿上の薄膜の表面を、2%塩酸を含ませた布を用いて拭き、塩酸処理を行った。
接触角は、塩酸処理前では75度であったのに対し、塩酸処理後では100度に増大した。
次いで、この塩酸処理薄膜の防汚性を上記の評価項目及び評価方法に基づいて評価した。その結果、この塩酸処理薄膜は、実施例13の薄膜と比べて撥水性が向上しており、したがって、焦げ付き汚れの除去容易性、油汚れの除去容易性共に、実施例13の薄膜と比べてさらに容易になった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の防汚性物品は、基体の表面の少なくとも一部に、価数が+3価以上かつイオン半径が1オングストローム以上の元素と酸素(O)とを含有し、厚みが5nm以上かつ100nm以下の薄膜を形成したことにより、従来の酸化ジルコニウム等の無機コーティング膜と比べて撥水性を向上させることができ、食品の焦げ付き汚れや油汚れの除去効果を向上させることができるものであるから、食品の調理に用いられる調理器具や各種厨房設備の付帯部品はもちろんのこと、この調理器具以外の防汚性が要求される各種部材や各種部品等に対しても適用可能であり、その工業的意義は極めて大きいものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の表面の少なくとも一部に、
価数が+3価以上かつイオン半径が1オングストローム以上の元素と酸素(O)とを含有し、厚みが5nm以上かつ100nm以下の薄膜を形成してなることを特徴とする防汚性物品。
【請求項2】
前記元素は、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)の群から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項1記載の防汚性物品。
【請求項3】
価数が+3価以上かつイオン半径が1オングストローム以上の元素のアルコキシド、前記元素のアルコキシドの加水分解物、前記元素のアルコキシドのキレート化合物、前記元素のアルコキシドの加水分解物のキレート化合物、前記元素の水溶性塩、前記元素の酸化物ゾルの群から選択される1種または2種以上を含む塗布液を、基体の表面の少なくとも一部に塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を大気中、400℃以上の温度にて熱処理することを特徴とする防汚性物品の製造方法。
【請求項4】
前記元素のアルコキシドのキレート化合物または前記元素のアルコキシドの加水分解物のキレート化合物は、前記元素のアルコキシドと、エタノールアミン、β−ジケトン、β−ケト酸エステル、カルボン酸の群から選択される1種または2種以上の化合物との反応生成物であることを特徴とする請求項3記載の防汚性物品の製造方法。
【請求項5】
前記塗布膜を熱処理した後、この塗布膜の表面を酸処理することを特徴とする請求項3または4記載の防汚性物品の製造方法。

【公開番号】特開2011−11958(P2011−11958A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159088(P2009−159088)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】