説明

防災システムの監視制御盤

【課題】内部機器のための直流電源を変換して得られた直流電源によりバッテリが充電される軽量、小型の防災システムの監視制御盤を提供することである。
【解決手段】防災システムの監視制御盤は、商用交流電源が健全なとき、該商用交流電源の交流が入力される整流器により変換出力された直流の供給を受け、該商用交流電源が停電したとき、バッテリからの直流の供給を受ける防災システムの監視制御盤において、上記整流器の出力を入力し、該出力の電圧と極性の異なる電圧の直流に変換して出力するインバーティング電源が備えられ、上記バッテリは、プラス端子が上記整流器の出力端子と、マイナス端子が上記インバーティング電源の出力端子とそれぞれ接続されて充電される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、商用交流電源の停電時においてバッテリから電源供給を受ける防災システムの監視制御盤に関する。
【背景技術】
【0002】
自動火災報知設備や消火設備などの防災システムにおける監視制御盤として、従来の火災受信機は、商用交流電源に対し、電源供給回路が設けられており、火災受信機の内部、地区音響装置、防排煙装置に直流電源の供給を行っている。電源供給回路は、スイッチングレギュレータが使用され、商用交流が入力され、所定の電圧の直流に変換して出力する。この電源供給回路は例えば直流電圧24Vの直流を供給している。
また、商用交流電源の停電時に電源供給をバックアップするため、バッテリ(例えば、ニッケルカドミニウム電池)が設けられている。そして、バッテリを充電するためには、バッテリの直流出力電圧よりも大きな所定の直流電圧(例えば、直流電圧56V)をバッテリに印加することが推奨されているので、電源供給回路が設けられていてもそれを使ってバッテリを充電することができない。そこで、商用交流電源からの交流電源電圧をトランスに入力し、所定の交流出力電圧、例えばAC56Vに変換し、それを充電回路で整流することにより、バッテリを常時充電している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−287384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、交流電圧を変換するトランスと交流を直流に整流する充電回路が設けられているので、トランスの重さが重く、その体積が大きいという問題がある。そのため、火災受信機そのものが重くて大型な製品になってしまうという問題がある。
また、バッテリの充電に必要な直流電圧を供給する回路に加わる電圧が50V位であるので、その回路に用いられる電子部品の耐圧をそれ以上のものを使用しなければならないので、電子部品のコストが高くなってしまうという問題がある。
【0005】
この発明の目的は、内部機器のための直流電源を変換して得られた直流電源によりバッテリが充電される軽量、小型の防災システムの監視制御盤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わる防災システムの監視制御盤は、商用交流電源が健全なとき、該商用交流電源の交流が入力される整流器により変換出力された直流の供給を受け、該商用交流電源が停電したとき、バッテリからの直流の供給を受ける防災システムの監視制御盤において、上記整流器の出力を入力し、該出力の電圧と極性の異なる電圧の直流に変換して出力するインバーティング電源が備えられ、上記バッテリは、プラス端子が上記整流器の出力端子と、マイナス端子が上記インバーティング電源の出力端子とそれぞれ接続されて充電される。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係わる防災システムの監視制御盤の効果は、整流器の直流出力をインバーティング電源により整流器の直流出力と電圧が逆極性の直流を出力し、整流器の直流出力とインバーティング電源の直流出力とを用いてバッテリの充電に必要な電圧の直流電源を構成してバッテリを充電するので、バッテリの充電のために別途商用交流電源から必要な電圧の直流電源を発生するための整流器(例えば、トランス)を設けなくても良くなり、小型、軽量の防災システムの監視制御盤を得ることができる。
また、インバーティング電源を用いることにより、インバーティング電源を構成するトランジスタやコンデンサなどの電子部品に要求される耐圧が低くても良いので、電子部品のコストを低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、この発明に係わるインバーティング電源の例の回路図である。図2は、この発明に係わるステップアップ電源の例の回路図である。
インバーティング電源とは、正または負の電圧の直流が入力され、入力と逆極性の電圧の直流が出力される電源である。インバーティング電源としては、例えば、図1に示すような極性反転型チョッパ回路(昇降圧直流チョッパ回路)である。この極性反転型チョッパ回路では、スイッチS(例えば、トランジスタ)をオンすると直流電源−スイッチS−コイルLを含む回路を電流Iが流れ、コイルLにエネルギーが蓄積される。次に、スイッチSをオフすると、コイルLに蓄積されているエネルギーがコンデンサC−ダイオードD−コイルLを含む回路を電流Iが流れて、コンデンサCの両端に電圧Eが発生する。直流電源の電圧E(入力電圧)とコンデンサCの両端の電圧E(出力電圧)は、極性が逆転(インバーティング)している。そして、コイルLのリアクタンスが十分に大きいときは、スイッチSのオン時間tONとオフ時間tOFFを内部の制御回路(図示せず)で制御することによりコンデンサCの両端の電圧Eを設定することができる。
【0009】
ステップアップ電源とは、正または負の電圧の直流が入力され、入力された直流の電圧より高い電圧の直流が出力される電源である。ステップアップ電源としては、例えば、図2に示すような昇圧直流チョッパ回路である。この昇圧直流チョッパ回路では、スイッチS(例えば、トランジスタ)をオンすると直流電源−コイルL−スイッチSを含む回路を電流Iが流れ、コイルLにエネルギーが蓄積される。次に、スイッチSをオフすると、直流電源からとともにコイルLに蓄積されているエネルギーが直流電源−コイルL−ダイオードD−コンデンサCを含む回路を電流Iが流れて、コンデンサCの両端に電圧Eが発生する。そして、スイッチSのオン時間tONとオフ時間tOFFから求められる断続率d=tON/(tON+tOFF)からコンデンサCの両端の電圧Eは、式(E=E/(1−d))から求められるので、電圧E(出力電圧)は電圧E(入力電圧)より大きくなる。なお、スイッチSのオン時間tONとオフ時間tOFFは、内部の制御回路(図示せず)で制御する。
【0010】
なお、インバーティング電源およびステップアップ電源は上述の例に限るものではない。
【0011】
実施の形態1.
図3は、この発明の実施の形態1に係わる防災システムの監視制御盤としての火災受信機のブロック図である。
この発明の実施の形態1に係わる火災受信機1は、火災感知器2からの火災信号を検出して火災発生信号をマイクロコンピュータ3に入力する火災検出回路4、火災発生信号を受信したマイクロコンピュータ3からの地区音響警報信号に基づき火災の発生している地区音響装置5に鳴動信号を送信する地区音響回路6、火災発生信号を受信したマイクロコンピュータ3からの防排煙指令信号に基づき該当する防排煙設備7に制御信号を送信する制御回路8が備えられている。
【0012】
なお、火災検出回路4、地区音響回路6、制御回路8およびマイクロコンピュータ3は、内部機器(回路)の一例であり、また、一般的な火災受信機1に備わっているものを説明するために例として挙げているだけで、これに限るものではない。
【0013】
また、火災受信機1は、火災受信機1の内部の回路に電源を供給するために、電源部10が備えられている。さらに、火災受信機1は、火災受信機1の外部から入力されている商用交流電源11が停電したときに火災受信機1の内部の回路に電源を供給するために、バッテリ12(例えば、ニッケルカドミウム電池)が備えられている。そして、図示しない停電検出回路により停電の発生が検出されたとき、+24V電源ラインへの電源の供給をバッテリ12からに切り換えるスイッチ13(常時は開)が備えられている。このバッテリ12は、商用交流電源11が健全なときに電源部10から充電されている。そして、バッテリ12の充電の条件として、バッテリ12のプラス端子12aとマイナス端子12bとの間に印加する直流充電電圧は例えば48V以上が必要である。
【0014】
そこで、電源部10は、商用交流電源11が入力され、直流電圧48V、直流電圧+24V、直流電圧+5Vの3電源が出力されている。そして、電源部10は、交流電圧100Vの商用交流電源11を直流電圧+24Vの直流電源に整流する整流器14、整流器14から供給される直流電圧+24Vの直流電源を直流電圧+5Vに変換するDC/DCコンバータ15、整流器14から供給される直流電圧+24Vの直流電源を直流電圧−24Vの直流電源に交換するインバーティング電源16が備えられている。
整流器14からの直流電源は、+24V端子14aとGND端子14bとから出力され、24V電源ライン(図示せず)を介して、火災検出回路4、地区音響回路6、制御回路8に供給される。また、DC/DCコンバータ15からの直流電源は、+5V端子15aとGND端子15bとから出力され、マイクロコンピュータ3に供給される。さらに、インバーティング電源16からの直流電源は、−24V端子16aとGND端子16bとから出力される。
ここで、整流器14とDC/DCコンバータ15とは一般的なものである。また、インバーティング電源16は、図1に示したようなものである。
【0015】
そして、火災検出回路4、地区音響回路6、制御回路8の電源として直流電圧+24Vが印加されている。また、マイクロコンピュータ3の電源として直流電圧+5Vが印加されている。
【0016】
また、バッテリ12に充電するために、バッテリ12のプラス端子12aに整流器14の+24V端子14aを接続し、バッテリ12のマイナス端子12bにインバーティング電源16の−24V端子16aが接続されている。また、バッテリ12の充電を制御する充電回路17がバッテリ12のプラス端子12aと整流器14の+24V端子14aの間に設けられている。
このようにバッテリ12を接続することにより、バッテリ12に充電に必要な直流電圧48Vを印加することができる。
【0017】
従来、バッテリ12の充電のためには、平滑された直流をバッテリ12に印加しなければならないとされてきているが、この発明のように直流チョッパ回路を用いて変換された脈動を含んだ直流を印加してもバッテリ12を劣化することなく充電できることを見いだした。
【0018】
前記した図示しない停電検出回路は、例えば、整流器14の+24V端子14aの出力電圧を監視している。そして、その出力電圧が所定の電圧以下になったときは、商用交流電源11が停電したとして、図示しない停電検出回路からの信号に因りスイッチ13が切り換えられて、バッテリ12のプラス端子12aが24V電源ラインに、バッテリ12のマイナス端子12bがGNDに接続されて、火災受信機1内の回路3、4、6、8に電源が供給される。なお、マイクロコンピュータ3には、24V電源ラインの直流電圧24VがDC/DCコンバータ15に供給され、変換出力された直流電圧5Vの電源が供給される。
【0019】
このような火災受信機1は、整流器14の直流出力をインバーティング電源16により整流器14の直流出力と電圧が逆極性の直流に変換して出力し、整流器14の直流出力とインバーティング電源16の直流出力とを用いてバッテリ12の充電に必要な電圧の直流電源を構成し、バッテリ12を充電するので、バッテリ12の充電のために別途商用交流電源11から必要な電圧の直流電源を発生するための整流器(例えば、トランス)を設けなくても良くなり、小型、軽量の火災受信機1を得ることができる。
また、インバーティング電源16を用いることにより、図1のスイッチS(例えば、トランジスタ)やコンデンサCなどの電子部品に要求される耐圧が低くても良いので、電子部品のコストを低く抑えることができる。
なお、インバーティング電源16の出力電圧を−24Vとして説明したが、バッテリ12の構成に従って、出力電圧をスイッチS(図1)のオンオフを制御して適宜設定すればよい。
【0020】
実施の形態2.
図4は、この発明の実施の形態2に係わる防災システムの監視制御盤としての火災受信機のブロック図である。
実施の形態2に係わる火災受信機1Bは、図4に示すように、実施の形態1に係わる火災受信機1と電源部10Bが異なっており、その他は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
また、実施の形態2に係わる電源部10Bは、実施の形態1に係わる電源部10のインバーティング電源16の替わりにステップアップ電源18が備えられていることが異なっており、その他は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
そして、ステップアップ電源18に替えたために、バッテリ12の充電のための直流電源はステップアップ電源18だけから供給されている。
【0021】
ステップアップ電源18は、図2に示したようなものであり、整流器14から供給される直流電圧+24Vの直流電源が入力され、昇圧されて直流電圧+48Vの直流電源が出力される。この直流電圧+48Vの直流電源は、+48V端子18aとGND端子18bとから出力される。
そして、バッテリ12のプラス端子12aは、充電回路17を介してステップアップ電源18の+48V端子18aに接続されており、バッテリ12のマイナス端子12bは、ステップアップ電源18のGND端子18bに接続されている。
【0022】
このような火災受信機1Bは、整流器14の直流出力をステップアップ電源18によりバッテリ12の充電に必要な電圧の直流に変換してバッテリ12に印加するので、バッテリ12の充電のために別途商用交流電源11から必要な電圧の直流電源を発生するための整流器(例えば、トランス)を設けなくても良くなり、小型、軽量の火災受信機1Bを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明に係わるインバーティング電源の例の回路図である。
【図2】この発明に係わるステップアップ電源の例の回路図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係わる防災システムの監視制御盤としての火災受信機のブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係わる防災システムの監視制御盤としての火災受信機のブロック図である。
【符号の説明】
【0024】
1 火災受信機、2 火災感知器、3 マイクロコンピュータ、4 火災検出回路、5 地区音響装置、6 地区音響回路、7 防排煙設備、8 制御回路、10 電源部、11 商用交流電源、12 バッテリ、12a (バッテリの)プラス端子、12b (バッテリの)マイナス端子、13 スイッチ、14 整流器、14a (整流器の)+24V端子、14b (整流器の)GND端子、15 DC/DCコンバータ、15a (DC/DCコンバータの)+5V端子、15b (DC/DCコンバータの)GND端子、16 インバーティング電源、16a (インバーティング電源の)−24V端子、16b (インバーティング電源の)GND端子、17 充電回路、18 ステップアップ電源、18a (ステップアップ電源の)+48V端子、18b (ステップアップ電源の)GND端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用交流電源が健全なとき、該商用交流電源の交流が入力される整流器により変換出力された直流の供給を受け、該商用交流電源が停電したとき、バッテリからの直流の供給を受ける防災システムの監視制御盤において、
上記整流器の出力を入力し、該出力の電圧と極性の異なる電圧の直流に変換して出力するインバーティング電源が備えられ、
上記バッテリは、プラス端子が上記整流器の出力端子と、マイナス端子が上記インバーティング電源の出力端子とそれぞれ接続されて充電されることを特徴とする防災システムの監視制御盤。
【請求項2】
上記インバーティング電源は、極性反転型チョッパ回路であることを特徴とする請求項1に記載する防災システムの監視制御盤。
【請求項3】
商用交流電源が健全なとき、該商用交流電源の交流が入力される整流器により変換出力された直流の供給を受け、該商用交流電源が停電したとき、バッテリからの直流の供給を受ける防災システムの監視制御盤において、
上記整流器の出力を入力し、上記バッテリの充電に必要な電圧の直流に変換出力して、上記バッテリを充電するステップアップ電源が備えられていることを特徴とする防災システムの監視制御盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−271157(P2006−271157A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−88640(P2005−88640)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】