説明

防犯・防災システム

【課題】導電性部材料を使用した窓ガラスの防犯システムは、窓ガラスのサイズ、形状、破損の大小、或いは温度等の環境条件、窓の開閉による接点の磨耗、腐食など様々な問題を持っており、これらが誤動作の原因となっている。本発明では、これのら誤動作の原因を取り除き、窓ガラスの防犯、防災の装置を提供するものである。
【解決手段】本発明ではこのような課題を解決するために、従来の導電性ガラスの抵抗値の検知方法ではなく、窓の開閉の有無を判別と同時に、導電性ガラスの抵抗値を正確に測定し、導電性ガラスの抵抗値の突然の変化、すなわち瞬時抵抗値と瞬時抵抗値直前の平均値の値を比較することによって、ガラスの破損の有無、火災等による異常検知の防犯、防災装置を提案するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともどちらか一方のガラス板に導電膜を設けた複層ガラス又は合わせガラス板(以下導電性ガラスという)を使用した窓ガラスにおいて、盗難時における窓ガラスの破壊や、火災による過熱によって、その導電性材料の微小な抵抗値の変化を検知して、遠隔地に速やかに警報を発生するシステムを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
窓ガラスに導電性の材料を使用した場合、その電気抵抗は窓ガラスの形状、大きさ、周囲の環境、特に温度の影響によって微妙に変化する。
【0003】
したがって、抵抗値を定め、その大小によって窓ガラスの破損の有無を識別することは、破損が小さければ小さいほど困難で、誤警報の主因となる。
【0004】
また、窓の開閉が重要な機能である窓ガラスは、その抵抗値信号を取り出す手段として、通常、コネクタ等の接点を利用する。しかし、この方法は接点の磨耗、腐食等によって接触抵抗が微妙に変化し、定期的な保守、点検が必要である。
【0005】
本発明は、これらの課題を解決するために、窓ガラスの小さな破損ばかりではなく、隣家等からの火災時に起こるわずかな窓ガラスの抵抗変化を測定し、この変化の勾配がある一定幅を超えた時に、警報を発するようにした、より安全性の高い防犯、防災システムを提供するものである。
【0006】
ここで、「合せガラス」とは、少なくともどちらか一方のガラス板を中間膜で均一に張り合わせたものをいい、「複層ガラス」とは断熱を図る目的で複数のガラスとガラスの間に空気層を作って張り合わせたものをいう。
また、ガラス材料はガラス板ばかりではなく、合成樹脂等の絶縁性の高い板状材料をも含んだものとする。
【0007】
「導電性材料」とは、電気伝導率が高く、薄いフイルム状の膜、塗料、コーデング材、又は溶融材のことで、通常、金、銀、銅、鉄、ニッケル等の金属、又は金属酸化物から成るものとする。
【0008】
図1に従来実施例を示す。
導電性ガラス1の電極2は、DC電源19よりコネクタ部4a、導線6を介して接続され、他方の電極3は導線8、コネクタ4bを介して受信抵抗11に接続されている。
【0009】
窓の閉時に、このコネクタ部によって接続され、開時は切断される。
【0010】
また、受信抵抗11、DC電源19、比較器12等は窓枠等の室内側に設置され、DC電源19から供給する電圧は導電性ガラス1と受信抵抗11により分圧され、その分圧された信号を比較器12に送出する。
【0011】
比較器12は予め設定されている設定電圧13と、前記の導電性ガラス1からの電圧値とを比較し、設定値13を超えたら比較器12の出力で防犯警報出力を発する仕組となっている。
【0012】
このような方法は、構造が簡単であるという利点はあるが、窓ガラスの破損が小さい場合に、抵抗値の変化が少なく検知できないという問題点が生じる。
【0013】
そこで、増幅器等で抵抗値の感度を上げると、導電性ガラス1の抵抗値の温度変化や経時変化、コネクタ等の接触抵抗値の変化も増幅され、窓ガラス破損の識別が出来ず、防犯の意義を損なう結果となる。
【0014】
従来の方法は導電性ガラスのサイズ、形状によって抵抗値がそれぞれ異なり、それらの抵抗値に合わせてひとつひとつ設定する必要がある。そのために、操作が不便である。
【0015】
とりわけ、導電性ガラスの破損部分が小さいと、抵抗値の変化が少なく検知できない場合がある。
【0016】
抵抗値の微小変化を検知するために、感度を上げると、導電性ガラスの抵抗値が外気の温度によって影響を受け、誤動作する恐れが生じる。
【0017】
開閉付き窓ガラスの場合、抵抗値の断線が、窓の開閉によるものか、窓ガラスの破損によるものかの判別がつかないために、別途、開閉の接点信号を必要としている。
【0018】
また、コネクタの接点部の接触抵抗によって誤警報してしまう恐れがあること。
等の課題を持っていた。
【0019】
本発明は、懸かる問題を解決すると同時に、隣家等からの火災に対しても検知可能な防犯・防災システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
一般にガラスに用いている導電性材料の抵抗値は、様々な形状、大きさに対して、その電極間の抵抗は異なる。例えば、3×3mの正方形と2×4.5m長方形のガラスでは、同じ面積のガラスであっても抵抗値は異なる。
【0021】
本発明で使用している導電性材料は、各種の大きさ、形状に対して、その実用性を考慮し、電極間抵抗は15〜160Ωの範囲内に定めている。
【0022】
このような抵抗値をもった導電性ガラスにおいて、全面破損の場合は、言うまでも無く、その抵抗値は無限大となるが、一般的には全部破損するのではなく、盗難の場合の多くは鍵穴近くの一部分に限られていたり、人間が侵入できる大きさの穴であったりするのが通例である。
【0023】
従って、出来うるかぎり小規模な破損でも、検知できるようにすることが望ましいことは言うまでもない。
【0024】
今、人間の進入できる大きさの穴を300Φ程度とすると、その破損の度合いによる抵抗値の変化は、前記抵抗値15Ω〜160Ωの1%の変化、すなわち0.15〜1.6Ωの変化程度であることが実測されている。
【0025】
従って、防犯装置としては、この電極間抵抗値の1%変化を破壊として検知する必要がある。
【0026】
このような1%の抵抗値の変化を検出する方法として、従来より、測温抵抗体やサーミスタ等の抵抗値変化を利用した温度監視装置がよく知られている。
【0027】
但し、これらの装置は予め目標値(設定値)が定められており、その設定値に対して、温度が超えると警報を発する仕組みとなっている。
【0028】
また、センサとしての測温抵抗体やサーミスタは、規格が定められ、精度良く均一に製作されていることでもある。
【0029】
しかしながら、本発明で提案する導電性ガラスの電極間抵抗は、同じ形状、サイズあっても、抵抗値のバラツキは数%あり一定ではない。また、周囲温度によって大きく変化する特徴をもっている。
【0030】
因みにその変化は、導電性材料によっても異なるが0.05%/℃以上もあり、周囲温度の範囲を−10〜50℃とすると3%以上も変化してしまい、目標とする前述のガラス破損の検知幅1%をはるかに超えてしまう結果となる。
【0031】
そのために、従来のような方法では、その設定幅を大きくせざる得なく、言い換えれば、ガラス窓の全破損、ないしは大きな破損でないと、検知出来ないという仕組みである。
【0032】
さらに、開閉式の窓ガラスの場合、導電性ガラスの電極に電源や信号線を、如何に接続するかが重要な課題でもある。
【0033】
この問題の解決手段として、コネクタのような接点構造のものが一般に使用されるが、この方法は、窓の開閉により、磨耗や腐食により抵抗値にバラツキが生じ、精密な測定ができないという欠点をもっている。
【0034】
さらに、従来例では窓が開いているのか、窓ガラスの破損によって抵抗値が変化したのか、判別がつかないことでもあった。
【0035】
本発明ではこのような課題を解決するため、従来の導電性ガラスの抵抗値の検知方法ではなく、窓の開閉の有無を判別すると同時に、導電性ガラスの抵抗値を正確に測定し、ガラスの抵抗値の突然の変化、すなわち抵抗値の勾配、変化幅を検知することによって、ガラスの破損の有無、火災等の異常検知を提案するものである。
【実施例1】
【0036】
以下に本発明の実施形態を図2乃至図5に示す。
図中の図と同一記号を付した部分は同一物を表わしている。
【0037】
図2の実施例において、1は可動式の導電性ガラスで、窓ガラスの上下又は左右に電極2、3が設けられている。
また、電極2、3は建屋側に設置されている定電流回路20とコネクタ4a、4bの接点によって接続されており、コネクタ4a、4bの接触抵抗、或いは導線6、9の抵抗値が変化しても、導電性ガラス1の抵抗値が一定であれば、電極2、3間の電圧は一定である。この電圧を導線7、8、コネクタ5a、5bを介して差動増幅器34において増幅すれば、電極2、3の電圧すなわち抵抗値を正確に把握することが出来る。
【0038】
当然、コネクタ5a、5bの接触抵抗の影響も懸念されるが、差動増幅器34の入力抵抗21、22、23、24を高抵抗にすることによって、殆どその影響を無くすことが出来る。
【0039】
また、窓ガラス等に使用されている導電性材料は、周囲の環境変化、とりわけ温度によってその抵抗値は変わるが急激に変わるわけではない。
【0040】
1日の最大幅でも30℃前後、年間を通じても50〜60℃前後で、抵抗値の変化幅としては数%以下で、1分とか2分の短時間の変化幅としては僅かなものである。
【0041】
一方、本発明が目的とする盗難時におけるガラスの破損は、破損の大小に関係なく、殆ど瞬時にして抵抗値が変化する。
【0042】
従って、前記の差動増幅回路34の出力値を瞬時値とする第1の入力手段と、前記の差動増幅器34の出力に遅れ回路、例えばCRで構成する時定数回路等を設け、第2の入力手段35とし、比較器36に入力手段1と入力手段2を接続することによって、窓ガラスの瞬時の抵抗変化か、徐々に変わる周囲温度の抵抗変化かを識別することが可能となり、前記比較器36の出力を窓ガラス破損の防犯警報出力14として得られる。
【0043】
また、屋内の火災は当然であるが、屋外の火災等によって窓ガラスの温度が急上昇すると、周囲温度の変化とは異なり、窓ガラスの抵抗値は急激に変化する。
【0044】
前述の如く窓ガラスの抵抗値は正確に測定出来ることから、この抵抗値の測定或いは変化幅を利用し、火災報知器としての利用も可能となる。
【実施例2】
【0045】
図3はコネクタ等の接続部の接触抵抗、導線の断線を検知しようとするもので、窓の開閉信号としても利用でき、基準の抵抗値以上に接触抵抗が増加、或いは断線すると警報を発するようにしたものである。
【0046】
図3において、定電流回路20の電流のごく一部をR27、R28、R29に流すことによって基準電圧を作り、この基準電圧と、コネクタ等において発生する接触抵抗による電圧値を、比較器37、38で比較する。
【0047】
基準電圧以上になると警報或いは窓ガラスの開、閉の信号として発するようにしたものである。
【0048】
従って、前記の比較器出力信号の一部を第2の入力手段35に与えることによって、窓ガラス破損検知の開始とすることも可能となる。
【0049】
また、差動増幅器の入力抵抗21、22、23、24や比較器37、38の入力抵抗30、31及び32、33は、一般には高インピーダンスであることから、コネクタ5a、5bの接触不良、配線7、8の断線が生じると入力値が定まらない場合がある。
【0050】
このような場合、プルアップ抵抗25を定電流側に、プルダウン抵抗26をグランド側に接続することによって、断線時に出力値を確実に上限側ないしは下限側に設定することも可能であり、前記比較器の出力を断線警報出力15として検知することができる。
【実施例3】
【0051】
図4は請求項3に関する実施例で、導電性ガラスの両端の電極に生じたそれぞれの電圧値を、AD変換器、データメモリ保持、プログラムメモリ、演算処理機能等を内蔵した制御装置(マイクロチップCPU)で受信し、導電性ガラスの破損を検知しようとするものである。
【0052】
図4の実施例において、建屋側に設置されている定電流回路20をコネクタ4a、4b、導線6、9を介して導電性ガラス1の上下又は左右に設置した電極2、3にそれぞれ接続し、導電性ガラスの抵抗値に比例する電圧値が得る。
【0053】
この電圧値をコネクタ5a、5b、導線7、8を介して制御装置40の入力IN2、IN3に接続する。
【0054】
制御装置40は窓ガラスの電極間2、3の電圧値を、瞬時にAD変換し、メモリに逐次一定期間保存し、そのメモリ値の平均値として得られる平均測定値データ(第2の測定値)と前記の瞬時値(第1の測定値)を比較し、その差が一定値を超えた時、警報出力14を発するようにしたものである。
【0055】
また、前述の制御装置40の入力IN1に定電流回路20の出力電圧を接続することによって、定電流値を監視することも可能で、前述のIN2、IN3の電圧値の監視と含めて幅広い監視が可能となる。
【0056】
すなわち、窓の開閉の有無、或いはコネクタの接触抵抗の影響度合い、各部の配線の断線など検知することが可能である。
【0057】
また、AD変換器の入力抵抗は、通常、高インピーダンスであることから、コネクタ5a、5bの接触不良、配線7、8の断線が生じると入力値が定まらない場合がある。このような場合は、実施例図5に示すようにプルアップ抵抗25を定電流回路の出力側に、プルダウン抵抗26をグランド側に接続することによって、断線時に出力値を確実に上限側ないしは下限側に設定することも可能であり、断線警報出力15として別に検知することもできる。
【発明の効果】
【0058】
以上、説明したように、導電性部材料を使用した窓ガラスの防犯システムは、窓ガラスのサイズ、形状、破損の度合い、或いは温度等の環境条件、窓の開閉による接点の磨耗、腐食など様々な問題があり、従来品はこれらの問題が十分解決されず誤動作の原因となっている。
本発明では、これらの誤動作の原因を取り除き、窓ガラスの防犯、防災警報装置を提供するもので、以下の効果が期待できる。
1)導電性ガラスの抵抗値を正確に測定できることにより、窓ガラスの面積の1%以下の破損に対しても検知が可能となる。
2)抵抗値変化を直近の平均値と瞬時値とを比較しているので、周囲温度、接触抵抗、導線の変化や演算増幅器、比較器のドリフトの影響を受けない。
3)コネクタ等の接点の磨耗や腐食による接触抵抗の影響の検知が可能で、メインテナンス時期の把握が可能となり、よりシステムの信頼性のある装置を提供できる。
4)窓の開閉の有無の検知が可能である。
5)火災等の防災検知用としても利用できる。
6)操作が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】従来の防犯・防災システムを表す概要図
【図2】本発明の防犯・防災システムにおける実施例1を表す概要図
【図3】本発明の防犯・防災システムにおける実施例2を表す概要図
【図4】本発明の防犯・防災システムにおける実施例3を表す概要図
【図5】本発明の防犯・防災システムにおける実施例4を表す概要図
【符号の説明】
【0060】
1 導電性ガラス
2 電極
3 電極
4a、b コネクタの接点部
5a、b コネクタの接点部
6〜9 導線
10 接地
11 受信抵抗
12 比較器
13 設定電圧
14 防犯(防災)警報出力
15 断線警報出力
19 DC電源
20 定電流回路
21〜33 抵抗器
34 差動増幅器
35 第2の入力手段(平均値回路)
36〜38 比較器
40 制御装置(CPU)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともどちらか一方のガラス板に導電膜を設けた複層ガラス又は合わせガラス板に、導電性材料の上下又は左右に電極を設け、前記電極の両端に定電流を供給する定電流回路と、前記電極の両端に生ずる電圧値を差動入力増幅器に接続し、前記差動増幅器の出力電圧を瞬時値として入力する第1の入力手段と、前記差動増幅器の出力電圧を平均値化して入力する第2の入力手段とを具備し、前記第1の入力手段と前記第2の入力手段による入力とを比較し、その差が一定の電圧値を超えた場合に警報を発することを特徴とした窓ガラスの防犯・防災警報システム。
【請求項2】
前記第2の入力手段が、窓の閉によって測定を開始した時点、または一定時間の経過以降の値に固定、ないしは平均値化する回路を具備したことを特徴とする請求項1に記載の防犯・防災警報システム。
【請求項3】
少なくともどちらか一方のガラス板に導電膜を設けた複層ガラス又は合わせガラス板に、導電性材料の上下又は左右に電極を設け、前記電極の両端に定電流を供給する定電流回路とを具備し、定電流回路の出力電圧と前記電極の両端に生ずる電圧値をそれぞれAD変換、データメモリ保持、プログラムメモリ、演算処理機能等を具備した制御装置に接続し、該制御装置において該電極の両端電圧の瞬時測定値を第1の測定値とし、該電極の両端電圧の測定値を逐次メモリに保存し、そのメモリ値の近時の平均値として得られる第2の平均値の測定値を第2の測定値とし、前記第1の測定値と前記第2の測定値とを比較し、その差が一定の値を超えた時、警報を発することを特徴とした防犯・防災警報システム。
【請求項4】
前記第2の測定値を、窓の閉によって測定を開始した時点、または一定時間の経過後の平均値としたことを特徴とする請求項3に記載の防犯・防災警報システム。
【請求項5】
前記電極の両端に定電流を供給する導線と、前記電極の両端に生じた電圧を測定する導線とを別々に具備し、それぞれの導電に流れる電圧を比較し、配線の断線、接触抵抗の影響を検知することを特徴する請求項1乃至請求項4に記載の防犯・防災警報システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−252499(P2006−252499A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−111359(P2005−111359)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000223986)フィグラ株式会社 (68)
【Fターム(参考)】