説明

防眩コーティングおよび物品

本出願は防眩コーティングに関する。防眩コーティング組成物は次のようにして作製した。攪拌パドルを備えた容器において、31.55重量%のテトラエトキシシランを17.99重量%のメチルトリエトキシシランに添加した。攪拌を開始し、混合プロセス全体にわたって続けた。0.53重量%の100nmコロイドシリカ(エチレングリコールに30重量%分散)を攪拌混合物に添加した。10分後、9.67重量%の0.15M塩酸と0.15重量%の酢酸ナトリウム三水和物の混合物を上記のものに添加した。2.5時間の反応時間後、アルコール希釈液を添加した。まず、20.06重量%の1−ブタノール、ACS、10分後、20.05重量%の2−プロパノールを添加した。完成したコーティング組成物を一定の攪拌下で貯蔵した。用いる前、コーティング組成物を密閉容器にて室温、一定の攪拌下で2.5日間エージングした。コーティング組成物に対して、コーティング前25μmのメッシュフィルタを通して重力ろ過を行った。コーティング組成物は、タッチスクリーンパネル、コンピュータモニター、テレビスクリーン、光学フィルタ、額縁、窓、鏡、太陽集熱カバープレート、光学レンズおよび車両の風防に適用され得る。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
米国特許第5,725,957号明細書に記載されているとおり、ガラス基材の表面に関連する眩光を減じるには主に2つの方法がある。第1の方法は、薄膜内の光学干渉を利用して、眩光を制御するガラス基材上に「妨害」コーティングスタックを蒸着するものである。かかるフィルムの厚さは、通常、コーティングとガラスの相対屈折率に応じて、可視光の表示波長の約1/4か1/2である。第2の方法は、通常、ガラス基材の最外表面の特性を変える、またはガラス基材の拡散コーティングを介して、ガラスの表面に光散乱、すなわち、拡散手段を形成するものである。
【0002】
妨害コーティングは、解像度を減少せずに眩光を減少する。しかしながら、蒸着するのは比較的高価であり、スパッタリングなどの比較的高コストの真空蒸着技術および精密製造条件、または後に乾燥および焼成をする、非常に精密なアルコキシド溶液ディップコーティング技術を用いる必要がある。厳密な厚さ制御および均一性が必要である。
【0003】
光の拡散により眩光を減じるために、ガラス基材の外側表面をエッチングしたり、またはガラス基材上に蒸着したコーティングの外側表面をその他変性する取り組みがなされている。基材またはコートした基材の表面特性をエッチングまたはその他修正することには数多くの欠点がある。化学的手段によるエッチングは、通常、高腐蝕性化合物(例えば、フッ酸)の取扱いおよび保管を伴う。かかる化合物では、益々厳しくなる環境法を考慮すると、処理および廃棄の問題が生じる。サンドブラストによる等、非化学的手段によるエッチングは、追加のコストのかかる処理操作を必要とする。米国特許第5,725,957号明細書では、無機金属酸化物の前駆体を有機溶媒中に溶解することにより形成された前駆体溶液を透明基材にスプレーコートしている。変形として、様々な材料(例えば、異なる屈折率を有する混合酸化物)をコーティング組成物に組み込む他のやり方がなされている。
【0004】
眩光を減少する様々なアプローチが記載されてきているが、防眩表面を提供する新たなアプローチを見出すとき、業界において利点があるであろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本発明は、ガラス基材と、タッチスクリーンにおいてタッチを検出する活性要素と、防眩層とを含むタッチスクリーンなどの物品に関する。防眩層は、硬化した無機ポリマーマトリックス中にある凝集体無機酸化物粒子を含み、凝集体無機酸化物粒子は2マイクロメートル超〜約100マイクロメートルのサイズ範囲の表面構造を形成する。活性要素は、ガラス基材と防眩層との間に配置された透明導電層(例えば、透明導電酸化物を含む)を含んでいてもよい。
【0006】
ある実施形態において、物品(例えば、タッチスクリーン)は、透明導電層と防眩層および/または液晶シラン表面層との間に配置された酸化ケイ素層を含むのが好ましい。
【0007】
物品(例えば、タッチスクリーン)は、一般的に、少なくとも150の反射ヘーズ、10%未満の反射率および少なくとも80%の透過率をはじめとする光学特性のうち1つまたはこれらの組み合わせを有する。
【0008】
物品(例えば、タッチスクリーン)は、少なくとも10mNのナノスクラッチ試験により求める耐引っ掻き性、少なくとも100サイクルの平板回転摩耗試験、1マイクロメートルの防眩層について少なくとも2時間の摩耗試験により求める故障までの時間をはじめとする耐久性のうち1つまたはこれらの組み合わせを有する。
【0009】
無機酸化物粒子の平均粒径は、約0.05マイクロメートル〜約0.15マイクロメートルである。
【0010】
表面構造の寸法は、一般的に、少なくとも10マイクロメートルまたは20マイクロメートルである。表面層は合計表面積を有し、表面構造は合計表面積の少なくとも20%、少なくとも30%または少なくとも40%を含む。
【0011】
硬化した無機ポリマーマトリックスは、一般的に、ケイ素アルコキシドなどのオルガノシランから誘導されている。硬化したオルガノシランは、一般的に、ゾル−ゲルプロセスから誘導される。
【0012】
他の実施形態において、本発明は、オルガノシランと2マイクロメートル超〜約100マイクロメートルのサイズ範囲の凝集体無機酸化物粒子とを含むコーティング組成物に関する。無機酸化物粒子が1.5重量%未満の濃度で一般的に存在する。
【0013】
他の実施形態において、本発明は、コーティング組成物で防眩物品を製造する方法に関する。
【0014】
他の態様において、本発明は、無機ポリマー前駆体および平均粒径が0.05マイクロメートル〜0.15マイクロメートルのコロイド無機酸化物粒子を提供する工程と、2マイクロメートルを超える平均粒径を有するコロイドシリカ凝集体を凝集するのと同時に無機ポリマー溶液を形成する工程とを含む防眩コーティング組成物を製造する方法に関する。
【0015】
他の実施形態において、本発明は、光学特性および耐久性の相乗バランスを有する防眩層を含む物品(例えば、タッチスクリーン)に関する。物品の透過ヘーズは30%未満(例えば、20%、10%または5%未満)、透過率は少なくとも80%(例えば、少なくとも85%または90%)、透明度は少なくとも70%(例えば、80%)、ナノスクラッチ試験により求める耐引っ掻き性は少なくとも10mNであるのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、防眩(例えば、表面)層を含む物品、防眩層を製造するのに好適なコーティング組成物、防眩物品の製造方法および防眩コーティング組成物の製造方法に関する。ある実施形態において、物品は、タッチスクリーンなどの(例えば、被照)ディスプレイ物品である。
【0017】
米国特許第4,198,539号明細書、第4,293,734号明細書および第4,371,746号明細書に記載されているものなどの様々なタッチスクリーンが業界では公知である。タッチスクリーンは、一般的に、マサチューセッツ州、メスエンの3Mタッチシステムズ(3M Touch Systems,Inc.,Methuen,MA)より市販されているような(例えば、コンピュータ)タッチセンサーパネルを含む。
【0018】
図1の一例のディスプレイ10は、ガラス、プラスチックまたはその他透明媒体などの絶縁基材14と基材14上の活性部分15とを含むタッチパネル12を含む。タッチ入力を検出する活性要素15は、一般的に、基材14に直接蒸着された透明導電層16を含む。層16は、一般的に、20〜60ナノメートルの厚さを有するドープ酸化錫層であり、スパッタリング、真空蒸着および業界に公知のその他技術により蒸着される。導電層16はまた、導電ポリマー材料または導電有機−無機複合体を含んでいてもよい。導電パターン(図示せず)は、一般的に、導電層16の周囲に配置されていて、ディスプレイと指または針との間の接触点を確立するために、導電層16全体に均一な電界を与える。第2の導電層20を、任意で、ディスプレイ10が取り付けられ、導電層16に関して上述したとおり、同様のやり方で蒸着した酸化錫層を同様に含むディスプレイユニット(図示せず)の電気回路から生じるノイズからディスプレイ10を保護するために与えてもよい。タッチパネルは、本発明による防眩層18を含む。
【0019】
本発明の物品において、防眩層は、図1に図示するとおり、表面層として存在する。あるいは、防眩層は表面層と基材との間に配置される。防眩層上に層があると、後述するとおり、構造上の特徴、光学特性、防眩層の耐久性も、損なわれない。
【0020】
防眩表面層は、硬化した無機ポリマーマトリックス中の凝集体無機酸化物粒子を含む。凝集体無機酸化物粒子の最大寸法は、0.1マイクロメートル〜約100マイクロメートルのサイズ範囲である。凝集体無機酸化物粒子の最大寸法は、好ましくは少なくとも0.2マイクロメートル、より好ましくは少なくとも0.3マイクロメートルである。凝集体を形成する別個の無機体酸化物粒子は、表面構造より実質的にサイズが小さい。本明細書で用いる「凝集体」とは、少なくとも2つの粒子が結合し合わさったものを指す。表面構造は、1つ以上の凝集体無機酸化物粒子から構成されている。従って、表面構造の最大寸法は少なくとも単一凝集体のサイズである。
【0021】
理論に拘束されることは望むところではないが、表面構造をバインドするのに硬化した無機ポリマーマトリックスを用いることにより、得られる防眩表面は、高レベルの耐久性と組み合わせて防眩光学特性の相乗バランスを与え有利である。防眩は、一般的に、光学特性の組み合わせにより特徴付けられる。かかる光学特性の中でも、反射ヘーズおよび反射率が、通常、防眩特性を最も示す。本明細書に記載した防眩表面層の反射率は通常10%未満である。反射ヘーズは、一般的に少なくとも150、より一般的には少なくとも200である。反射ヘーズは、通常、600未満、より一般的には550未満である。しかしながら、防眩コーティングの適用は、透過率、透過ヘーズおよび透明度を減じる可能性がある。透過率は、通常、80%を超える。透過率は、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%以上である。防眩表面層の透過ヘーズは、一般的に30%未満、好ましくは25%未満である。比較的小さな表面構造を有する防眩表面層は、約10%の透過ヘーズを与えることができるが、大きな表面構造を有する防眩表面層は、10%未満の透過ヘーズ値を与えることができる。例えば、透過ヘーズは、8%、7%または6%未満であってもよい。透明度は少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%である。かかる光学特性を求める試験方法は、以下の実施例に記載してある。
【0022】
記載した光学特性と組み合わせて、防眩表面層はまた、高レベルの耐久性も示す。例えば、タッチスクリーンのナノスクラッチ試験により求める耐引っ掻き性は少なくとも10mN、好ましくは少なくとも30mNである。あるいは、またはこれに加えて、タッチスクリーンの摩耗試験により求める故障までの時間は、1マイクロメートルの防眩層について少なくとも2時間である。あるいは、またはこれに加えて、タッチスクリーンのCS−10F砥石車および500gの荷重によるテーバー耐摩耗性は少なくとも100サイクルである。かかる耐久性を求める試験方法は、以下の実施例に記載してある。
【0023】
様々なコロイド無機酸化物粒子を本明細書に記載した防眩層に用いてよい。好適な無機酸化物としては、例えば、シリカ、セリア、アルミナ、ジルコニア、チタニアおよびこれらの混合物が挙げられる。オルガノシラン系無機ポリマーマトリックスと組み合わせ用いるとき、シリカが好ましい無機酸化物粒子である。
【0024】
図2に示すとおり、一般的に、約95重量%のコロイド無機酸化物粒子を用いて、0.005マイクロメートル〜0.30マイクロメートルのサイズ範囲の凝集体を形成する。出発コロイド無機酸化物粒子分布には、0.30マイクロメートルを超える粒径の粒子は実質的に含まれない。出発コロイド粒子は、実質的にこれより大きくてもよく、例えば、出発コロイド無機酸化物粒子の平均粒径は約0.005マイクロメートル〜0.5マイクロメートルである。
【0025】
出願人は、平均粒径が約0.15マイクロメートル(150nm)のコロイド(例えば、シリカ)無機酸化物から比較的大きな凝集体を形成できるということを知見した。かかる比較的大きな凝集体を得るには、図4に示すとおり、実質的に全ての出発コロイド粒子が凝集体へと凝集する。得られる凝集体のサイズは、0.30マイクロメートル(すなわち、出発コロイド無機酸化物粒子の平均粒径の2倍)〜100マイクロメートル(すなわち、出発コロイド無機酸化物粒子の平均粒径の1000倍)であってよい。凝集体粒子の平均サイズは少なくとも2マイクロメートル、好ましくは40マイクロメートル未満であるのが一般的に好ましい。一般的に、凝集体のサイズは凝集体サイズ範囲全体に幾分均一に分散している。
【0026】
比較的大きな凝集体を含むコーティングから作製した50倍と20倍に拡大した例示の防眩表面層を図5および図6にそれぞれ示す。大きな表面構造(100)と、大きな表面構造を一般的に囲む比較的小さな表面構造(200)の組み合わせがある。これらの構造は、硬化した無機ポリマーマトリックスにより固定されている。比較的大きな表面構造は、低レベルのヘーズ(例えば、5%以下)を与えるのに有利である。
【0027】
大きな構造の平均最大寸法は、一般的に少なくとも10マイクロメートルである。さらに、大きな構造の平均最大寸法は、一般的に50マイクロメートル未満(例えば、40マイクロメートル未満)である。図6に示すような大きな構造の平均サイズは25マイクロメートルである。さらに、図6の表面構造の95%の最大寸法は70マイクロメートル未満である。これらの表面構造のアスペクト比は少なくとも約1:1、一般的には約5:1以下であり、構造は略不規則な形状である。これらの表面構造の不規則性は、表面全体の防眩特性に有益である。
【0028】
個々の大きな構造は、単一の凝集体無機酸化物粒子(約0.15マイクロメートル)〜約10マイクロメートルのサイズ範囲の単一ピークであってもよい。かかる個々の大きな構造は、無機ポリマーにより基材に固定された基部を備えた円錐のような形状であるのが一般的である。従って、円錐の頂点から円錐の基部の周囲端部に及んで、粒子および/または粒子凝集体の減少勾配がある。図5に示すとおり、単一表面構造が多数の隣接するピークを含むのは一般的ではない。例えば、各表面構造は2〜10個の明確なピークを有している。各明確なピークは、約4マイクロメートルより大きく、4マイクロメートル未満のサイズの数多くの凝集体を含有していてもよい。
【0029】
個々の大きな表面構造は、最も近い大きな表面構造から、約2マイクロメートル〜約50マイクロメートルの距離離れていてよい。大きな表面構造の大半は、平均で約15マイクロメートルの距離離れている。
【0030】
当業者であれば分かるとおり、防眩表面は、比較的大きな無機酸化物表面構造と組み合わせて、比較的小さな無機酸化物表面構造の様々な組み合わせを含んでいてよい。防眩層の合計表面積に対する表面構造の表面積は、一般的に、少なくとも約20%である。表面構造の表面積は、一般的に、約60%以下である。低レベルのヘーズを与える少なくともある実施形態において、表面構造の表面積は、防眩層の合計表面積の約25%〜35%である。他の実施形態において、比較的小さな無機酸化物凝集体から形成された防眩表面層のように、表面構造の表面積は約40%〜約50%である。
【0031】
ある実施形態において、図3に例示したような比較的小さな表面構造領域の場合には、表面構造は略均一に分配されている。従って、表面構造間の距離、すなわち、表面の未構造ランド部(300)は、構造のサイズと略同じ寸法である。他の実施形態において、図5および図6に例示した大きな表面構造の場合のように、表面構造間の未構造ランド部の表面積はかなり大きい。
【0032】
無機ポリマーは、十分に加熱するとSiO2を形成するシリカ源を含んでいるのが好ましい。
【0033】
硬化した無機ポリマーマトリックスは、熱により硬化したオルガノシラン溶液であるのが好ましい。オルガノシラン溶液は業界で公知であり、一般的に、「ゾル−ゲル」プロセスから誘導される。
【0034】
オルガノシランは、次の一般式:
nSiXm (式I)
(式中、Rはケイ素原子に結合した有機官能基であり、Xはケイ素原子に付加したハロゲンやアルコキシ基などの加水分解性基であり、nは1または2、mは4−nである)で表すことができる。
【0035】
好ましいオルガノシラン溶液は、ケイ素アルコキシドの加水分解および縮合から合成される。(例えば、C.J.ブリンカー(Brinker)およびG.W.シェーラー(Scherer)、「ゾル−ゲルサイエンス(Sol−Gel Science)」、アカデミックプレス(Academic Press)、1990年)を参照のこと。)かかるシランは極めて規則的な分子構造を有している。好ましいケイ素アルコキシドとしては、例えば、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシランおよびこれらの混合物が挙げられる。その他の好適なオルガノシランは、欧州特許第1077236号明細書に記載されているように、業界で公知である。
【0036】
一般的に、媒体を用いて、オルガノシランを希釈し、シランをコートされている基材表面に移動させる。さらに、水がオルガノシランと反応して、加水分解生成物またはシラノールを形成する。水とオルガノシラン間の加水分解反応は酸性溶液で触媒することができる。このように、溶液が塩基性の場合に溶液を沈殿させる自己縮合反応に対して、シラノールが安定するよう安定剤を用いてもよい。シラノールと基材との間に形成された結合は、交差縮合反応によりなされる。シラノールと基材の分子との間のクロス縮合反応は通常遅い。この反応は加熱により加速することができる。
【0037】
防眩表面層は、一般的に、アルコール含有コーティング組成物から作製される。凝集体は、オルガノシラン溶液に分散されたコロイド(例えば、シリカ)無機酸化物前駆体からコロイド(例えば、シリカ)無機酸化物を凝集することにより形成することができる。従って、凝集粒子は、オルガノシラン溶液の調製と同時に作製される。しかしながら、この代わりに、凝集体は、別個に形成し、任意で、非凝集粒子から分離してから、好適なオルガノシラン溶液に添加することができる。
【0038】
防眩コーティングを作製する方法には、(例えば、シリカ)無機酸化物粒子前駆体を含むオルガノシラン溶液(例えば、ゾル−ゲルプロセスを介して)を調製し、無機酸化物粒子の少なくとも一部を凝集するために組成物を不安定化させることが含まれる。コロイド(例えば、シリカ)無機酸化物粒子を凝集する様々な方法は、「ゾル−ゲル技術によるスクリーンのための1工程防眩ゾル−ゲルコーティング(One step antiglare sol−gel coatings for screens by sol−gel techniques)」、非結晶固体ジャーナル(Journal of Non−crystalline Solids)218(1997年)163−168および米国特許第5,998,013号明細書に記載されているように知られている。
【0039】
凝集の好ましい方法には、コロイド(例えば、シリカ)無機酸化物を、いくつかのケイ素アルコキシド前駆体の少なくとも1つと反応させてシラン前駆体を形成し、酸の添加により溶液を不安定化することが含まれる。通常、様々な酸を用いることができる。一般的に、塩酸、硝酸等の無機酸が用いられる。溶液はさらに、硬化工程中、コーティング緻密化を改善するために、接着促進剤、焼結助剤またはフラックスを含んでいてもよい。酢酸ナトリウムが好適な添加剤である。その調製において、これらの材料の添加順は変えることができる。例えば、ケイ素アルコキシド前駆体は、アルコール溶液に分散した後、焼結助剤および酸を(例えば、続けて)添加することができる。この混合物をコロイド(例えば、シリカ)無機酸化物溶液と組み合わせることができる。比較的大きな凝集体を得るには、この添加順が好ましい。あるいは、ケイ素アルコキシド前駆体をまず、コロイド(例えば、シリカ)無機酸化物溶液と組み合わせてから、酸、焼結助剤およびアルコールを(例えば、続けて)添加することができる。
【0040】
より詳細を述べると、テトラエトキシシランとメチルトリエトキシシランをエチレングリコール中100nmのコロイドシリカと共に連続的に攪拌することにより、防眩コーティング組成物を調製することができる。攪拌しながら、希釈酸/酢酸ナトリウム酸水和物を添加して、粒子前駆体を不安定化し、粒子前駆体の凝集粒子成長を開始する。希釈酸もまた、水和反応の水と酸触媒の両方を与えることにより、加水分解およびケイ素アルコキシド前駆体の縮合反応を開始してこれを維持する。反応完了後、約0.5〜150μmの準安定シリカフロックを含有する部分加水分解ケイ酸エチルゾルが得られる。1−ブタノールおよび2−プロパノールのアルコール希釈液を添加して、コーティング組成物をさらに安定化し、適用に必要とされる粘度に調整する。この方法により、前述したとおり、比較的大きな凝集体が生成される。
【0041】
(例えば、シリカ)無機酸化物凝集体は、アルコールなどの親水性溶剤中に均一に分散されたコロイド(例えば、シリカ)無機酸化物)から形成される。好適な溶剤としては、1−ブタノール、2−プロパノール、エタノール、酢酸エチル、エチレングリコール、プロピレングリコール、アセトン等が例示される。溶剤は、単体または2種類以上の種類の組み合わせであってもよい。コロイド(例えば、シリカ)無機酸化物分散液中の固体パーセントは、コロイド(例えば、シリカ)無機酸化物分散液の総重量に基づいて、通常、約5〜50%(好ましくは、約15〜30%)である。コロイドシリカは、様々な供給業者より市販されている。マサチューセッツ州、アシュランドのニャコールナノテクノロジー社(Nyacol Nanotechnolgies,Inc. Ashland,MA)およびマサチューセッツ州ワードヒルのアルファエーサー(Alfa Aesar,Ward Hill,MA)は両社共、平均粒径が20〜50nmのアルコール系ゾルを供給している。ある好ましいコロイドシリカは、「ニャコール(Nyacol)DP5540」という商品名でナノテクノロジー社(Nanotechnolgies,Inc.)より市販されているエチレングリコール中100nmコロイドシリカの30%溶液である。
【0042】
一般的に、低濃度のコロイド(例えば、シリカ)無機酸化物を用いる。コロイド(例えば、シリカ)無機酸化物の濃度はコーティング組成物の5重量%未満であるのが好ましい。より一般的には、コロイド(例えば、シリカ)無機酸化物の濃度は4重量%未満、より好ましくは3重量%未満である。出願人は、2重量%未満のコロイド(例えば、シリカ)無機酸化物を含むコーティング組成物で良好な防眩特性が得られるということを知見した。本実施形態については、1.5重量%以下、さらに1.0重量%以下の濃度でコロイド(例えば、シリカ)無機酸化物を用いるのが好ましい。図5に示すとおり、0.5%未満で比較的大きな表面構造が得られる。一般的に、コーティング組成物中のコロイドシリカの濃度は少なくとも0.05%である。
【0043】
コーティング組成物は、コーティング組成物を用いて基材をコートする前に、通常、室温で約2〜10日攪拌して、密閉容器に保管される。凝集体含有オルガノシランコーティング溶液を、薄い実質的に均一な層を与える好適な方法により適用される。精密ディップコーティング機は、精密かつ正確な引き抜き速度での滑らかな動きのために、好ましいコーティング手段である。適切なレオロジーまで適切に修正すると、本明細書に記載したコーティング組成物は、スプレーコーティング、メニスカスコーティング、フローコーティング、スクリーン印刷またはロールコーティングにより適用することができる。
【0044】
本明細書に記載したコーティング組成物は、様々な基材に対して十分な接着力を示す。透明かつ高耐久性の両方のために、照明ディスプレイパネルにはガラスおよび(例えば、セラミック)材料が好ましい基材である。ガラス基材の厚さは一般的に約0.4mm〜約4mmである。ソーダ石灰ガラスおよびホウケイ酸塩は、一般的に、ディスプレイに用いられている。本発明はまた、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートまたは酢酸酪酸セルロースなどの様々なプラスチック基材の防眩コーティングの耐久性を改善するのにも好適である。
【0045】
別法によれば、透明基材はプラスチックフィルムであってもよい。透明基材の厚さは、通常、少なくとも20マイクロメートルであり、少なくとも50マイクロメートルであることが多い。さらに、透明基材は、500マイクロメートル未満であることが多く、250マイクロメートル未満であることがより多い。プラスチックフィルムの表面を、望ましい場合には、処理して、防眩層の接着力を増大してもよい。かかる処理としては、サンドブラストまたは溶剤による表面での粗さの形成、コロナ放電による表面酸化、クロム酸による処理、炎による処理、加熱空気による処理、またはオゾンを存在させた紫外線による照射が例示される。
【0046】
プラスチック基材については、オルガノシランプライマー層を用いて、(例えば、コートされた)基材と防眩表面層との間の結合を向上させてもよい。通常、オルガノシランプライマー層は、非常に高濃度のヒドロキシル基と高角度Si−O−Si結合とを含む。防眩表面層のための結合部位がある。防眩コーティング組成物とオルガノシランプライマー層との間の縮合反応により永久結合が形成される。Si−O−Si結合は極めて丈夫である。
【0047】
ガラス基材については、酸化ケイ素層が基材と防眩層との間に配置されるのが好ましい。かかる酸化ケイ素層は、防眩層の基材への接着力を改善するものと考えられる。さらに、酸化ケイ素層の存在はまた、防眩層、ゆえに物品の耐久性を改善することもできる。例えば、かかる酸化ケイ素層を有するディスプレイ物品は、ナノスクラッチ試験により求める耐引っ掻き性が少なくとも25%の増大を示す。例えば、少なくとも20mN、少なくとも30mNまたは少なくとも40mNの耐引っ掻き性が得られている。酸化ケイ素層は、スパッタリング、蒸発、化学蒸着およびゾル−ゲル法をはじめとする様々な方法により適用される。米国特許第5,935,716号明細書、米国特許第6,106,892号明細書および米国特許第6,248,397号明細書には、ガラスに酸化ケイ素を蒸着することが開示されている。
【0048】
防眩コーティング組成物のコーティング後、コートした基材を熱硬化して、溶剤を飛ばし、コーティング材料内で熱誘導自己縮合反応により緻密な三次元フィルム構造を形成して、残りのシラノール分子から水酸化物を除去して、構造を下にある基材に結合する。これは、電気抵抗素子またはガス焚きオーブン内で1.5〜3時間の合計サイクルタイムでバッチプロセスにて実施することができる。耐久性は、通常、完全緻密化の結果として向上する。コーティング組成物の完全緻密化は、一般的に、約800℃で生じるが、硬化温度は基材の耐熱性に基づいて選択される。
【0049】
特に、ドープ酸化錫コートガラスに適用するときに、オルガノシラン溶液を硬化する好ましい方法は、米国特許第6,406,758号明細書に記載されている。かかる方法は、2.5〜6.0マイクロメートルの波長スペクトルで赤外線を放出する赤外ランプまたは外巻き加熱管を備えたチャンバ内で熱と赤外線の組み合わせを必要とする。赤外線を用いることにより、コーティングにより多くのエネルギーを導き、同時に、ガラス基材への熱曝露を減じる。これを行う際、硬化温度を約550℃未満まで減じることができる。
【0050】
硬化した防眩ランド層(すなわち、未構造化ランドの位置)の厚さは、一般的に、少なくとも0.5マイクロメートルである。さらに、防眩ランド層の厚さは、一般的に、1.5マイクロメートル以下である。
【0051】
防眩層は、さらに、表面に配置された抗菌層を含む。好適な抗菌層は、次の一般式:
3Si(CH2pZ (式II)
(式中、p>1、
Xは、加水分解可能でシラノールを形成するCl、Br、アルコキシ、ヒドロキシルラジカルおよびこれらの混合物から選択され、
Zは、アルキル第四級アンモニウム塩、アルキルスルホニウム塩、アルキルホスホニウム塩、置換ビフェニル、ターフェニル、アゾキシベンゼン、ケイ皮酸エステル、ピリジン、ベンゾエートおよびこれらの混合物から選択される官能基)を有する液晶シランである。
【0052】
かかる液晶シランは、ミシガン州、ミッドランドのダウコーニング(Dow Corning,Midland,MI)より「ダウコーニング(Dow Corning)5700」および「ダウコーニング(Dow Corning)5772」という商品名で市販されている。かかる抗菌層は、さらなる耐引っ掻き性を与える。
【0053】
眩光減少透明基材(例えば、ガラス)は、陰極線管スクリーンまたはその他ディスプレイデバイス(モニタ、テレビ、液晶ディスプレイ等)、タッチスクリーンや入力パネルなどの入力または選択デバイス、ガラス封止ディスプレイ(美術館またはその他公共ディスプレイ)、光学フィルタ、額縁、建築用窓、鏡に用いるガラスコンポーネント、太陽集熱カバープレート、眼鏡および目視デバイスに利用する光学レンズおよび車両の風防のような幅広い用途に利用される。
【0054】
本発明の利点を以下の実施例によりさらに説明するが、これらの実施例に挙げられた特定の材料および量、その他条件および詳細は本発明を不当に限定するものではない。特に断らない限り、パーセンテージおよび比率はすべて重量基準である。
【実施例】
【0055】
試験方法
摩耗試験
コートしたガラスを3cm×4cmの矩形試料へと切断した。端部と隅部を磨いて破損を最小に抑えた。試料を水で、次にイソプロパノール系ガラスクリーナーで完全に洗って微粒子を除去してから、残渣水を除去するためにアセトンに1分間浸した。試料を糸くずのない布で拭いて、30分間空気乾燥させ、秤量(オハイオ州、コロンブスのメトラートレドインターナショナル社(Mettler Toledo International Inc.,Columbus,OH)、P.N.AX205)した。
【0056】
試料のガラスのコート側を、180gの試料ホルダー中、100%振幅で30分間磨いた。研磨器具は、ビューラービブロメット2ポリッシャ-(Buehler VIBROMET 2 Polisher)(イリノイ州、レイクブラフのビューラー社(Buehler LTD,Lake Bluff,IL)P.N.67−1635)であった。磨き布は、ビューラーマイクロクロース(Buehler Microcloth)(イリノイ州、レイクブラフのビューラー社(Buehler LTD,Lake Bluff,IL)P.N.40−7222))であった。研磨媒体は、1000mlの脱イオン水中50gの1.0マイクロメートルアルミナ粉末のスラリー(マイクロポリッシュ(MICROPOLISH)II、イリノイ州、レイクブラフのビューラー社(Buehler LTD,Lake Bluff,IL)P.N.40−6321−080)であった。100%振幅での研磨30分後、試料を取り出し、水、イソプロパノール系クリーナー、次にアセトンで洗った。試料を糸くずのない布で拭いて、30分間空気乾燥してから、再秤量した。
【0057】
研磨120分後、表面の2つの点で連続性が得られるまで試料を磨いた。マルチメーターを用いて、各コートしたガラス試料の中心で2cm離れた2つの点で抵抗を測定した。
【0058】
摩耗率を、研磨時間の120分にわたって失われた合計重量として計算した。故障までの時間は、2cm離れた2つの点間に連続性が得られた時間であった。
【0059】
ナノスクラッチ
ナノスクラッチ試験機(マサチューセッツ州、ニーダムのCSMインスツルメンツ(CSM Instruments,Needham,MA))を用いてナノスクラッチ抵抗性を測定した。2mNから100mNに増加する漸進的スクラッチ荷重を用いて試験を行った。2−マイクロメートルの球状ダイヤモンド圧子をプローブとして用いた。
【0060】
耐摩耗性
テーバー摩耗試験機5130(ニューヨーク州、トナワンダのテーバーインダストリーズ(Taber Industries,North Tonawanda,NY))を用いて試料を摩耗した。ゴムに埋め込まれたAl23粒子からなる2つのCS−10F砥石車(ニューヨーク州、ノーストナワンダのテーバーインダストリーズ(Taber Industries,North Tonawanda,NY))を用いた。各車を500gで秤量し、150グリットのサンドペーパー(ニューヨーク州、ノーストナワンダのテーバーインダストリーズ(Taber Industries,North Tonawanda,NY)、P.N.ST−11)で新しい表面にした。サンドペーパーにてさらに25サイクルにわたって新しい表面にしておいた車で試料に100サイクルの摩耗を与えた。研磨前および各組の100サイクル後、印刷された中心部と残りの輪との間の抵抗を測定した。
【0061】
ガラスを、摩耗試験機により作られた摩耗領域を囲む2つの同心円からなる試験パターンで銀ペーストの厚膜にて下塗りした。ガラス試料をコート、焼成、5インチ(12.5cm)平方に切断した。故障は電気抵抗の25%増大と定義される。
【0062】
透過率
物品の透過率をBYKガードナーヘーズガードプラス(BYK Gardner Haze−Guard plus)を用いて測定した。
【0063】
透過ヘーズ
物品の透過ヘーズをBYKガードナーヘーズガードプラス(BYK Gardner Haze−Guard plus)を用いて測定した。
【0064】
透明度
光学物品の透明度をBYKガードナーヘーズガードプラス(BYK Gardner Haze−Guard plus)を用いて測定した。試料を光源路に垂直に配置した。円輪光検出器により測定される未散乱透過光および入射ビームから2.5°未満で散乱した光の値から透明度を計算する。
【0065】
反射ヘーズ
反射ヘーズをBYKガードナーヘーズグロスメータ(BYK Gardner Haze−Gloss Meter)を用いて測定した。
【0066】
反射率
反射率をBYKガードナー(BYK Gardner)TCS IIを用いて550nmで鏡面反射を含めて測定した。
【0067】
実施例1
3kgのバッチの防眩コーティング組成物を次のようにして作製した。攪拌パドルを備えた容器において、31.55%wtのテトラエトキシシラン(ダイナシルA、サイベント社(Dynasil A,Sivento Corp.))を17.99%のメチルトリエトキシシラン(ダイナシランMTES、サイベント社(Dynasilan MTES, Sivento Corp.))に添加した。攪拌を開始し、混合プロセス全体にわたって続けた。0.53%のDP5540(ニャコール社(Nyacol Corp)(エチレングリコール中30%100nmコロイドシリカを攪拌混合物に添加した。10分後、9.67%の0.15M塩酸と0.15%の酢酸ナトリウム三水和物の混合物を上記のものに添加した。2.5時間の反応時間後、アルコール希釈液を添加した。まず、20.06%の1−ブタノール、ACS、10分後、20.05%の2−プロパノールを添加した。完成したコーティング組成物を一定の攪拌下で貯蔵した。用いる前、コーティング組成物を密閉容器にて室温、一定の攪拌下で2.5日間エージングした。コーティング組成物に対して、コーティング前25μmのメッシュフィルタを通して重力ろ過を行った。
【0068】
実施例1を2つの異なる基材にコートした。第1の基材はソーダ石灰ガラスであった。第2の基材は、導電コーティングに配置された酸化ケイ素の薄い(25オングストローム未満)層の片側に配置されたフッ素ドープ酸化錫透明導電コーティングと、酸化ケイ素層にさらに配置された米国特許第6,727,895号明細書に記載されたような厚膜回路とを備えた清浄なソーダ石灰ガラス板から構成されたタッチスクリーン用のディスプレイパネルであった。加熱中、厚膜回路が酸化ケイ素層に浸透して、下の導電層との電気的接触がなされる。
【0069】
コーティングを、1秒当たり0.13インチ(0.33cm)に設定した引き抜き速度で精密ディップコーティング機によりディスプレイパネルのガラスか、または酸化ケイ素層のいずれかに適用した。好適な精密ディップコーティング機は、カリフォルニア州、ケマットテクノロジー、ノースリッジ社(Chemat Technology,Northridge Inc,CA)より「ディップ−マスター(Dip−Master)200」という商品名で入手可能である。ディップコーティングサイクル完了後、コートした基材をディップコーティング機筐体から取り出す前に、1分乾燥させた。コートした基材を、米国特許第6,406,758号明細書に開示されているように、赤外硬化オーブンで硬化した。
【0070】
米国特許第6,504,582号明細書および米国特許第6,504,583号明細書に開示されているように、ホメオトロピック液晶シラン溶液を基材に適用して硬化することにより、耐引っ掻きおよび抗菌処理をコートした基材に適用した。例示の構造はかかる液体シラン表面層を含んでいたが、この層(すなわち、表面上に存在する防眩層)がなくても同様の結果が得られた。
【0071】
防眩表面層を顕微鏡で50倍と20倍に拡大して観察した。実施例1の防眩表面層を50倍に拡大したものを図5に、20倍に拡大したものを図6に示す。表面構造が、別個のシリカ粒子から構成されていて、真の凝集体であることも光学顕微鏡により確認された。
【0072】
光学顕微鏡および画像分析ソフトウェア(イメージプロプラス(Image Pro Plus)4、メディアサイバネティクス(Media Cybernetics))を用いて、表面構造の表面の一部は、実施例1については31%と確認された。
【0073】
防眩層のない対照例と比較したコートした基材の光学特性を評価した。以下の表1に、少なくとも3つの試料と標準偏差の平均値を示す。
【0074】
【表1】

【0075】
コートした基材の耐久性を評価した。以下の表2に、少なくとも3つの試料と標準偏差の平均価を示す。
【0076】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明による防眩表面層を有するタッチパネルの三次元図である。
【図2】防眩表面層の作製に用いるのに好適な例示のコロイド無機酸化物の粒径分布を示すグラフである。
【図3】50倍に拡大した例示の防眩表面の写真である。
【図4】防眩表面の製造に用いる他の例示のコーティング組成物の粒径分布を示すグラフである。
【図5】50倍に拡大した他の例示の防眩表面の写真である。
【図6】20倍に拡大した他の例示の防眩表面の写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防眩層と、前記防眩層の下にある活性層と、前記活性層の下にあるガラス基材とを含み、前記防眩層が硬化した無機ポリマーマトリックス中に凝集体無機酸化物粒子を含み、前記凝集体無機酸化物粒子が2マイクロメートル超〜約100マイクロメートルのサイズ範囲の表面構造を形成している、タッチスクリーン。
【請求項2】
前記タッチスクリーンの反射ヘーズが少なくとも150である請求項1に記載のタッチスクリーン。
【請求項3】
前記タッチスクリーンの反射率が10%未満である請求項1に記載のタッチスクリーン。
【請求項4】
前記タッチスクリーンの透過率が少なくとも80%である請求項1に記載のタッチスクリーン。
【請求項5】
前記タッチスクリーンのナノスクラッチ試験により求められる耐引っ掻き性が少なくとも10mNである請求項1に記載のタッチスクリーン。
【請求項6】
前記タッチスクリーンの摩耗試験により求められる故障までの時間が1マイクロメートルの防眩層について少なくとも2時間である請求項1に記載のタッチスクリーン。
【請求項7】
シリカ粒子の平均粒径が約0.05マイクロメートル〜約0.15マイクロメートルである請求項1に記載のタッチスクリーン。
【請求項8】
前記表面構造の平均最大寸法が少なくとも約10マイクロメートルである請求項1に記載のタッチスクリーン。
【請求項9】
前記表面構造の平均最大寸法が少なくとも約20マイクロメートルである請求項5に記載のタッチスクリーン。
【請求項10】
前記無機酸化物が、シリカ、セリア、アルミナ、ジルコニア、チタニアおよびその混合物からなる群より選択される請求項1に記載のタッチスクリーン。
【請求項11】
前記無機粒子がシリカからなる請求項1に記載のタッチスクリーン。
【請求項12】
前記硬化した無機ポリマーマトリックスがオルガノシランから誘導される請求項1に記載のタッチスクリーン。
【請求項13】
前記硬化した無機ポリマーマトリックスがケイ素アルコキシドから誘導される請求項12に記載のタッチスクリーン。
【請求項14】
前記オルガノシランがゾル−ゲルプロセスから誘導される請求項11に記載のタッチスクリーン。
【請求項15】
前記表面層が合計表面積を有し、前記表面構造が前記合計表面積の少なくとも20%である請求項1に記載のタッチスクリーン。
【請求項16】
前記表面層が合計表面積を有し、前記表面構造が前記合計表面積の少なくとも30%である請求項1に記載のタッチスクリーン。
【請求項17】
前記表面層が合計表面積を有し、前記表面構造が前記合計表面積の少なくとも40%である請求項1に記載のタッチスクリーン。
【請求項18】
前記透明導電層と前記防眩層との間に配置されたケイ素酸化物層をさらに含む請求項1に記載のタッチスクリーン。
【請求項19】
前記活性要素が、前記ガラス基材と前記防眩層との間に配置された透明導電層を含む請求項1に記載のタッチスクリーン。
【請求項20】
前記透明導電層が透明導電性酸化物を含む請求項19に記載のタッチスクリーン。
【請求項21】
液晶シラン表面層をさらに含む請求項1に記載のタッチスクリーン。
【請求項22】
防眩層を含み、前記防眩層は、硬化した無機ポリマーマトリックス中に凝集体無機酸化物粒子を含み、前記凝集体無機酸化物粒子は、2マイクロメートル超〜約100マイクロメートルのサイズ範囲の表面構造を形成している、物品。
【請求項23】
前記物品がディスプレイパネルである請求項22に記載の物品。
【請求項24】
前記物品が、コンピュータモニター、テレビスクリーン、光学フィルタ、額縁、窓、鏡、太陽集熱カバープレート、光学レンズおよび車両の風防を含む群より選択される請求項22に記載の物品。
【請求項25】
オルガノシランと、2マイクロメートル超〜約100マイクロメートルのサイズ範囲の凝集体無機酸化物粒子とを含むコーティング組成物。
【請求項26】
前記無機酸化物粒子が1.5重量%未満の濃度で存在する請求項25に記載のコーティング組成物。
【請求項27】
透明基材を提供する工程と、
請求項25のコーティング組成物で前記基材をコーティングする工程と、
前記コーティング組成物を加熱する工程と
を含む防眩物品の製造方法。
【請求項28】
前記基材が、ガラス、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートおよび酢酸酪酸セルロースから選択される請求項27に記載の方法。
【請求項29】
無機ポリマー前駆体および平均粒径が0.05マイクロメートル〜0.15マイクロメートルのコロイド無機酸化物粒子を提供する工程と、
2マイクロメートル超〜約100マイクロメートルのサイズ範囲のコロイド無機酸化物凝集体を凝集するのと同時に無機ポリマー溶液を形成する工程と
を含む防眩コーティング組成物を製造する方法。
【請求項30】
前記コロイド無機酸化物粒子が1.5重量%未満の量で存在する請求項29に記載の方法。
【請求項31】
酸の添加を含む請求項29に記載の方法。
【請求項32】
酢酸ナトリウムの添加を含む請求項29に記載の方法。
【請求項33】
物品の透過ヘーズが30未満、透過率が少なくとも80%、透明度が少なくとも70、ナノスクラッチ試験により求められる耐引っ掻き性が少なくとも10mNである、防眩層を含む物品。
【請求項34】
前記ヘーズが5%未満である請求項33に記載の物品。
【請求項35】
前記透過率が少なくとも90%である請求項33に記載の物品。
【請求項36】
前記透明度が少なくとも80%である請求項33に記載の物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−512747(P2008−512747A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529873(P2007−529873)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/026698
【国際公開番号】WO2006/025992
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】