説明

防眩フィルム、反射防止フィルム、偏光板及び画像表示装置

【課題】本発明は、粗大粒子による点欠陥がなく生産収率のよい防眩フィルム、外光の映り込みが少なく、黒締まりに優れると共に、膜厚均一性に優れ、反射率が非常に低い反射防止フィルム、防眩フィルムを具備した偏光板、および画像表示装置を提供する。
【解決手段】透明支持体1上に、バインダー及び透光性微粒子を含む防眩層2を有する防眩フィルムであって、該透光性微粒子の平均粒子径が3μm以上15μm以下であり、且つ該防眩層の平均膜厚が該透光性微粒子の平均粒子径より0.1〜2.0μm薄く、該防眩層中に該透光性微粒子を該防眩層を形成する全固形分に対し1.0〜3.0質量%含有し、且つ、該防眩層表面の凹凸の傾斜角θを測定した際、0°≦θ≦1°の領域(θ(1))が60%以上98.5%以下である防眩フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩フィルム、反射防止フィルム、偏光板および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような様々な画像表示装置において、外光の反射や像の映り込みによるコントラスト低下を防止するために、ディスプレイの表面には、防眩フィルムや防眩性反射防止フィルムが使用される。オフィスや家庭環境での使用が広がっており、室内の蛍光灯や視聴者の像がディスプレイ表面に映りこむことを防止する防眩性の向上と、明所での表示コントラストの更なる向上が要求されている。
【0003】
安価であって、かつ大量生産も可能な防眩フィルムに関しては、透明基材フィルムの表面に、透光性微粒子を含む樹脂を塗工して防眩層を形成したものが挙げられる。しかしながら透光性微粒子には粒子製造に起因する粗大粒子が含まれており、粗大粒子は防眩フィルム作製時に点欠陥となり、防眩フィルムの生産収率を下げる問題がある。そのため粗大粒子を精度よく除去する方法として、透光性微粒子のエマルジョン状態または分散液状態で予め濾過処理を行う方法が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、予め透光性微粒子を濾過処理するため、透光性微粒子が非常に高価、且つ、透光性微粒子の生産性が低くなり、安価であって、かつ大量生産が可能な防眩フィルムを製造することが困難であった。
【0004】
また外光の映り込みを防止するには、防眩フィルムの防眩層上に反射防止層を有する反射防止フィルムが一般に用いられる。反射防止フィルムは、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減する作用を有していて、ディスプレイの最表面に配置される。また反射防止フィルムの表面に適度な凹凸を設け、表面散乱の効果により外光の映り込みを抑えることもできる。
しかしながら、該防眩層の凹凸表面に反射防止層をコーティングしようとすると、凹凸に起因して塗布ムラや粗大粒子に起因するハジキが生じ、膜厚が均一にならず設計通りに最適な光干渉が起きないことにより反射率が下がらないことがある。そのため、低反射と防眩性を両立することは困難であった。
【特許文献1】特開2005−309399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、粗大粒子による点欠陥がなく生産収率のよい防眩フィルムの提供、及びこの防眩フィルム上に反射防止層を設けた反射防止フィルムを提供することである。
さらに、本発明の目的は、外光の映り込みが少なく、黒締まりに優れると共に、膜厚均一性に優れ、反射率が非常に低い反射防止フィルムの提供にある。また、本発明の別の目的は、該防眩フィルムまたは反射防止フィルムを含む、偏光板、および画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、下記手段により上記課題を解決した。
【0007】
1. 透明支持体上に、バインダー及び透光性微粒子を含む防眩層を有する防眩フィルムであって、該透光性微粒子の平均粒子径が3μm以上15μm以下であり、且つ該防眩層の平均膜厚が該透光性微粒子の平均粒子径より0.1〜2.0μm薄く、該防眩層中に該透光性微粒子を該防眩層を形成する全固形分に対し1.0〜3.0質量%含有し、且つ、該防眩層表面の凹凸の傾斜角θを測定した際、0°≦θ≦1°の領域(θ(1))が60%以上98.5%以下である防眩フィルム。
2. 前記防眩層表面の凹凸の平均間隔(Sm)が0.03mm<Sm<0.5mmである上記1に記載の防眩フィルム。
3. 前記防眩層表面の10点平均粗さ(Rz)が0.2μm<Rz<2.0μmである上記1または2に記載の防眩フィルム。
4. 前記防眩層がフッ素系またはシリコーン系のレベリング剤を含有する上記1〜3のいずれかに記載の防眩フィルム。
5. 上記1〜4のいずれかに記載の防眩フィルムの防眩層上に、該防眩層よりも屈折率が低い低屈折率層を有する反射防止フィルム。
6. 前記低屈折率層が中空シリカ粒子を含有する上記5に記載の反射防止フィルム。
7. 前記防眩層と前記低屈折率層との間に、前記防眩層、前記低屈折率層よりも屈折率が高い、高屈折率層をさらに有する上記5または6に記載の反射防止フィルム。
8. 前記高屈折率層がSi、Al、Ti、Zr、Sb、Zn、Sn、Inから選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物微粒子を含有する上記7に記載の反射防止フィルム。
9. 前記高屈折率層がSi、Al、Ti、Zr、Sb、Zn、Sn、Inから選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物微粒子を高屈折率層の全固形分中30質量%以上含有する上記8に記載の反射防止フィルム。
10. 前記高屈折率層がフッ素系またはシリコーン系のレベリング剤を含有する上記7〜9のいずれかに記載の反射防止フィルム。
11. 前記防眩層と前記高屈折率層との間に、前記防眩層よりも屈折率が高く、前記高屈折率層よりも屈折率の低い、中屈折率層をさらに有する上記7〜10のいずれかに記載の反射防止フィルム。
12. 前記中屈折率層がSi、Al、Ti、Zr、Sb、Zn、Sn、Inから選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物微粒子を含有する上記11に記載の反射防止フィルム。
13. 前記中屈折率層がSi、Al、Ti、Zr、Sb、Zn、Sn、Inから選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物微粒子を中屈折率層の全固形分中30質量%以上含有する上記12に記載の反射防止フィルム。
14. 前記中屈折率層がフッ素系またはシリコーン系のレベリング剤を含有する上記11〜13のいずれかに記載の反射防止フィルム。
15. 偏光膜と該偏光膜の両側に保護フィルムを有する偏光板であって、該保護フィルムの少なくとも一方が、上記1〜4のいずれかに記載の防眩フィルムまたは上記5〜14のいずれかに記載の反射防止フィルムである偏光板。
16. 上記1〜4のいずれかに記載の防眩フィルム、上記5〜14のいずれかに記載の反射防止フィルム、または上記15に記載の偏光板を、画像表示面に有する画像表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、透光性微粒子を特殊な処理を行い粗大粒子比を下げた粒子を使用しなくても、粗大粒子による点欠陥を非常に視認しくい防眩フィルムを提供することができる。このため、安価で、生産性の高い粒子を用いることができ、安価であって、かつ大量生産が可能な防眩フィルムを製造することができる。
【0009】
従来から知られた防眩層に、塗布組成物から形成される反射防止層(光学干渉層(膜厚が50〜200nmの範囲である、低屈折率層、高屈折率層、および中屈折率層の少なくとも2層))を2層以上積層すると、精密な塗布を行っても、塗布膜厚に変動が生じてこれが2層以上あるために、さらに膜厚の変動が顕著になる。また、防眩層の突起部分の頻度が多いと、光学干渉層を塗布しても、光学干渉層は薄膜であるので追随して光学干渉層の形成が困難になる。また、粗大粒子により点欠陥により、ハジキが生じやすくなる。上述した理由から、塗布膜厚の変動が存在するために、光学干渉作用の違いが表れる。その結果、得られる反射防止フィルムにおいて、反射率が下がらないことがあった。
【0010】
しかし、本発明の防眩層では、平らな領域とピークの領域とが分布しているため、凹凸に起因した塗布ムラが生じにくく且つ点欠陥が視認しにくいためハジキが生じにくい。塗布組成物から形成される干渉層の膜厚は、均一に塗布されるため、最適な光干渉が起きて反射率も下がることになる。すなわち、外光の映り込みが少なく、黒締まりに優れる反射防止フィルムが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について更に詳細に説明する。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記載は、「アクリレート及びメタクリレートの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリル酸」等も同様である。
【0012】
(防眩フィルムの層構成)
本発明の防眩フィルムは、透明支持体上に、バインダー及び透光性微粒子を含む防眩層を有する防眩フィルムであって、該透光性微粒子の平均粒子径が3μm以上15μm以下であり、且つ該防眩層の平均膜厚が該透光性微粒子の平均粒子径より0.1〜2.0μm薄く、該防眩層中に該透光性微粒子を該防眩層を形成する全固形分に対し1.0〜3.0質量%含有し、且つ、該防眩層表面の凹凸の傾斜角θを測定した際、0°≦θ≦1°の領域(θ(1))が60%以上98.5%以下である防眩フィルムである。
【0013】
本発明の防眩フィルムは、透明支持体の上に少なくとも1層の防眩層を有する。防眩層は1層でもよいし、複数層、例えば2層〜4層で構成されていてもよい。
【0014】
本発明の防眩フィルム、または該防眩フィルムを含む反射防止フィルムなどの光学フィルムとして好ましい層構成の例を下記に示す。下記構成において基材フィルムは、フィルムで構成された透明支持体を指している。
・基材フィルム/防眩層
・基材フィルム/帯電防止層/防眩層
・基材フィルム/防眩層/低屈折率層
・基材フィルム/防眩層/帯電防止層/低屈折率層
・基材フィルム/ハードコート層/防眩層/低屈折率層
・基材フィルム/ハードコート層/防眩層/帯電防止層/低屈折率層
・基材フィルム/ハードコート層/帯電防止層/防眩層/低屈折率層
・基材フィルム/防眩層/高屈折率層/低屈折率層
・基材フィルム/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
・帯電防止層/基材フィルム/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
・基材フィルム/帯電防止層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
・帯電防止層/基材フィルム/防眩層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
【0015】
本発明の防眩フィルムでは、防眩層以外の層が塗設されていてもよく、これらの層としては、例えばハ−ドコート層、帯電防止層、低屈折率層、防汚層等が挙げられる。防眩層がハ−ドコート層、帯電防止層、防汚層等の機能を同時に有することがより好ましい。本発明の防眩フィルムは、上記したこれらの層を有することで、光学フィルムとして好適に利用できる。
【0016】
本発明では、低反射化の点から、中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層を含む構成の反射防止フィルムが好ましく、例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等に記載の構成が挙げられる。製造が単純で生産性の高いという点では、本発明で好ましい形態は、支持体上に単一層の防眩層を有する防眩フィルム、および、支持体上に単一層の防眩層と単一層の低屈折率層をこの順に有する反射防止フィルムである。
【0017】
(防眩層の構成)
本発明の防眩層は、透光性微粒子の平均粒子径が3μm以上15μm以下であり、且つ防眩層の平均膜厚が透光性微粒子の平均粒子径より0.1〜2.0μm薄く、且つ防眩層中に透光性微粒子を防眩層を形成する全固形分に対し1.0〜3.0質量%含有する層である。
【0018】
防眩層を形成する塗布液は、例えば、電離放射線等で硬化されて形成する透光性ポリマーの原料となる主たるマトリックス形成バインダー用モノマー類、前記特定粒径の透光性微粒子、重合開始剤、好ましくは、塗布液の粘度を調整するための高分子化合物、カール低減や屈折率調節等のための無機微粒フィラー、塗布助剤、レベリング剤等を含む。
【0019】
防眩層の厚さは2μm〜14.9μmが好ましく、4〜10μmが更に好ましく、4.5〜7.5μmがより好ましい。2μm未満の場合には、防眩フィルムの硬度が不足し、14.9μmを超えると防眩フィルムのカールが大きくなり、また、膜の脆性が悪化する。
防眩層の平均膜厚は防眩フィルムの断面を電子顕微鏡で観察し、膜厚をランダムに30ヶ所測定した平均値から算出される。
【0020】
ここで、バインダーの屈折率は、アッベ屈折計で直接測定するか、分光反射スペクトルや分光エリプソメトリーを測定するなどして定量評価できる。前記透光性微粒子の屈折率は、屈折率の異なる2種類の溶媒の混合比を変化させて屈折率を変化させた溶媒中に透光性微粒子を等量分散して濁度を測定し、濁度が極小になった時の溶媒の屈折率をアッベ屈折計で測定することで測定される。
【0021】
(防眩層の透光性微粒子)
本発明において、防眩層の平均膜厚が防眩層内に分散される透光性微粒子の平均粒子径より0.1〜2.0μm薄いものが好ましく、0.5〜2.0μmがより好ましく、1.0μm〜1.8μmがさらに好ましい。膜厚と粒子径の差が0.1μm未満では点欠陥を視認しやすくなる問題を生じる。これは差が0.1μm未満の場合は、点欠陥を生じる粗大粒子(ここでは平均粒子径の1.5倍以上の粒子とする)が正常部の凸部の高さに対し、非常に大きいため粗大粒子を点欠陥と視認しているものと推定している。
【0022】
差が2.0μmを超える場合、凹凸表面が大きすぎるため、反射防止層をコーティングしようとすると、凹凸に起因して塗布ムラやハジキが生じ、膜厚が均一にならず設計通りに最適な光干渉が起きないことにより反射率が下がらないことがある。
【0023】
本発明において、防眩層内に分散される透光性微粒子の平均粒径は3〜15μmのものが好ましく、5μm〜10μmがより好ましく、6μm〜8μmがさらに好ましい。平均粒径が3μm未満では添加する層の膜厚を薄くする必要が生じ、フィルムの硬度が不足するため、好ましくない。一方、15μmを超えると、添加する層の膜厚を厚くする必要が生じ、カールやコスト上昇といった問題が生じる。
【0024】
防眩層の1つの凸部は実質的に5個以下の透光性微粒子によって形成されていることが好ましく、実質的に1個の透光性微粒子によって凸部が形成されていることがより好ましい。ここで「実質的に」とは、上記で定義された凸部のうち、90%以上が好ましい態様を満たしていることを意味する。透光性微粒子については、前記の粒径及び後述する防眩層の内部ヘイズの値を満たすものが好ましく用いられるが、凸部は実質的に1個の透光性微粒子によって形成されていることがより好ましいため、分散性の良好な粒子を選定することが好ましい。
【0025】
本発明の透光性微粒子の屈折率は、1.46〜1.65が好ましく、より好ましくは1.47〜1.60であり、さらに好ましくは1.49〜1.58である。
【0026】
本発明の透光性微粒子の具体例としては、例えば、架橋ポリメチルメタアクリレート粒子、架橋メチルメタアクリレート−スチレン共重合粒子、架橋メチルメタアクリレート−メチルアクリレート共重合粒子、架橋アクリレート−スチレン共重合粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋メチルメタアクリレート−架橋変性アクリレート共重合粒子、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋ポリメチルメタアクリレート粒子、架橋メチルメタアクリレート−スチレン共重合粒子等が好ましい。
【0027】
透光性微粒子の添加量は、防眩層100質量部に対して、1.0〜3.0質量部が好ましく、1.6〜2.8質量部であることがより好ましく、1.9〜2.8質量部であることが更に好ましく、最も好ましくは2.0〜2.5質量部である。添加量を3.0質量部以下とすると、凹凸の密度を粗にできるため膜表面の平坦部の割合を多くでき、反射防止層を均一に積層できる。この際、上記微粒子は防眩層よりも少なくとも0.1〜2.0μm突出して防眩性を発現しているため平坦部が多くても防眩性が損なわれることがない。
また、透光性微粒子の添加量が1.0〜3.0質量部では、適度な凹凸表面になり、且つ、点欠陥を生じる粗大粒子の絶対数が少なく、2つの効果により点欠陥を視認しにくくなる。
【0028】
本発明の透光性微粒子としては、1種類であっても良いが、2種以上を併用してもよい。2種を併用する場合、2種の透光性微粒子の屈折率は異なっていることが望ましい。該2種の透光性微粒子は、樹脂粒子および無機微粒子のいずれであってもよい。該2種の透光性微粒子は粒子径が互いに同じでも異なっていても良い。
【0029】
該2種の透光性微粒子のうち一方が透光性樹脂よりも屈折率が低く、一方が透光性樹脂よりも屈折率が高い態様をとることが好ましい。例えば該2種の透光性微粒子のうち高屈折率粒子は屈折率が透光性樹脂に対して0.010〜0.050高いのが好ましく、更に好ましくは0.010〜0.030であり、低屈折率側粒子は透光性樹脂に対して0.010〜0.050低いのが好ましく、更に好ましくは0.010〜0.030である。粒子Aと粒子Bの屈折率差があることで内部散乱と表面の形状の制御が容易となる。
【0030】
透光性微粒子の平均粒径は、塗膜中で2つ以上の粒子が隣接して存在している場合も、独立して存在している場合も、平均粒径は一次粒径を指す。但し、一次粒子径が0.1μm程度の凝集性の無機粒子が二次粒子として、本願の粒子サイズを満たす大きさで塗布液中に分散され、その後塗布されている場合には二次粒子の大きさとする。
【0031】
本発明の透光性微粒子の形状は、真球又は不定形のいずれも使用できる。粒度分布はヘイズ値と拡散性の制御性、塗布面状の均質性から単分散性粒子が好ましい。例えば平均粒子径よりも33%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.8%以下であり、さらに好ましくは、0.4%以下である。
【0032】
また、例えば平均粒子径よりも16%以上粒子径が小さな粒子を微小粒子と規定した場合、この微小粒子の割合は全粒子数の10%以下であることが好ましく、より好ましくは6%以下であり、さらに好ましくは、4%以下である。このような粒子径分布を持つ粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布の粒子を得ることができる。分級には風力分級法、遠心分級法、沈降分級法、濾過分級法、静電分級法等の方法を用いることが好ましい。
【0033】
粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。平均粒径は得られた粒子分布から算出したり、光散乱法や電子顕微鏡写真により測定できる。
【0034】
また、防眩層には、上記透光性微粒子とは別の透光性微粒子を併用してもよい。該透光性微粒子の具体例としては、例えば架橋ポリメチルメタアクリレート粒子、架橋メチルメタアクリレート−スチレン共重合粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋メチルメタアクリレート−メチルアクリレート共重合粒子、架橋アクリレート−スチレン共重合粒子、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋ポリメチルメタアクリレート粒子、架橋メチルメタアクリレート−スチレン共重合粒子等が好ましい。さらにはこれらの樹脂粒子の表面にフッ素原子、シリコン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、スルホン酸基、燐酸基等を含む化合物を化学結合させた所謂表面修飾した粒子やシリカやジルコニアなどのナノサイズの無機微粒子を表面に結合した粒子も好ましく挙げられる。また、透光性微粒子として、無機微粒子を用いることもできる。無機微粒子の具体例としては、シリカ粒子、アルミナ粒子等が好ましく挙げられるが、シリカ粒子が特に好ましく用いられる。
【0035】
透光性微粒子は、バインダー中で透光性微粒子が沈降し易い場合があり、その場合には、沈降防止のためにシリカ等の無機フィラーを添加してもよい。なお、無機フィラーは添加量が増す程、透光性微粒子の沈降防止に有効であるが、塗膜の透明性に悪影響を与える。従って、好ましくは、粒径0.5μm以下の無機フィラーを、バインダーに対して塗膜の透明性を損なわない程度に、0.1質量%未満程度含有させるとよい。
【0036】
これらの具体的な透光性微粒子の一例としては、市販されている樹脂粒子を挙げることができ、例えば、綜研化学(株)製のケミスノー、MX300、MX600、MX675、RX0855、MX800、SX713L、MX1500H等、あるいは積水化成品工業(株)製のテックポリマー、SSX108HXE、SSX108LXE SSX−106TN、SSX−106FB、XX120S等を用いることができる。
【0037】
本発明の防眩フィルムにおいて、表面散乱に起因するヘイズ値は0〜10%であることが好ましく、更に好ましくは0.5〜5%である。
【0038】
本発明の防眩フィルムにおいて、JIS−B0601(1994)に準じて算術平均粗さRaが0.05以上0.25μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.07以上0.20μm以下、最も好ましくは0.08以上0.18μm以下である。凹凸の平均間隔Smが0.03以上0.5mm以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.04以上0.3mm以下、最も好ましくは0.06以上0.2mm以下である。10点平均粗さRzが0.2以上2.0μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.25以上1.6μm以下、最も好ましくは0.3以上1.3μm以下である。
【0039】
本発明のθ(1)は防眩層の表面凹凸の傾斜角θが0°≦θ≦1°と低角度のため、実質防眩層の凹凸ピークのない領域、すなわち平らな領域の比率を表す尺度である。
本発明の防眩フィルムにおいて、防眩層表面の凹凸の傾斜角θが0°≦θ≦1°の領域(θ(1):測定面積に対する0°≦θ≦1°の領域が占める面積の割合)は60%以上98.5%以下であり、70%以上94%以下であることがさらに好ましく、85%以上93%以下であることがさらに好ましい。θ(1)が98.5%を超える場合は、防眩性がないフィルムのため、蛍光灯等がはっきり映り込み眩しくて気になる。更に、粗大粒子により点欠陥が目立ち、問題となる。60%未満の場合は、ディスプレイの最表面に配置し、ディスプレイを黒表示した場合に白茶けが発生する問題がある。
【0040】
傾斜角度θの分布は以下の方法で決定される。すなわち、面積が0.5乃至2平方マイクロメートルである三角形の頂点を透明フィルム基材面(支持体面)に仮定し、その点から鉛直上向きに伸ばした3つの垂線がフィルム表面と交わる3点によって形成される三角形の面の法線が、支持体から鉛直上向きに伸ばした垂線となす角θを表面の傾斜角度とし、基材上で250000平方マイクロメートル(0.25平方ミリメートル)以上の面積を該三角形に分割して測定した時の全測定点の傾斜角度分布を調べる。
【0041】
傾斜角度を測定する方法を図1を参照して詳細に述べる。まず支持体面における面積が0.5乃至2平方マイクロメートルとなるようなメッシュにフィルムを分割する(図1(a)参照)。図1(b)は分割したメッシュのうちの3点を抽出した図である。この支持体上の3点から鉛直上向きに垂線を伸ばし、その3点が表面と交わった点をA、B、Cとする。三角形ABC面の法線DD’が、支持体から鉛直上向きに伸ばした垂線OO’と為す角度θを傾斜角度とする。図1(c)は点O’DD’を含む平面Pで切ったときのフィルムの断面図である。線分EFは三角形ABCと平面Pとの交線である。測定面積は支持体上で250000平方マイクロメートル(0.25平方ミリメートル)以上が好ましく、この面を支持体上で三角形に分割して測定し、傾斜角度を求める。測定する装置はいくつかあるが、一例を述べる。装置はマイクロマップ社(米国)製SXM520−AS150型を用いた場合を説明する。例えば対物レンズが10倍の時、傾斜角度の測定単位は0.8平方マイクロメートルであり、測定範囲は500000平方マイクロメートル(0.5平方ミリメートル)である。対物レンズの倍率を大きくすれば、それに合わせて測定単位と測定範囲は小さくなる。測定データはMAT−LAB等のソフトを用いて解析し、傾斜角度分布を算出することができる。
【0042】
本発明の防眩フィルムにおいて、表面粗さ、傾斜角頻度を上記の範囲にすることで点欠陥が視認しにくく、反射防止層をコーティングした場合、反射率の低い、黒締まりに優れた防眩フィルムが得られる。
【0043】
(透光性微粒子調製)
本発明に係る透光性微粒子の製造法は、懸濁重合法、乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、分散重合法、シード重合法等を挙げることができ、いずれの方法で製造されてもよい。これらの製造法は、例えば「高分子合成の実験法」(大津隆行、木下雅悦共著、化学同人社)130頁及び146頁から147頁の記載、「合成高分子」1巻、p.246〜290、同3巻、p.1〜108等に記載の方法、及び特許第2543503号明細書、同第3508304号明細書、同第2746275号明細書、同第3521560号明細書、同第3580320号明細書、特開平10−1561号公報、特開平7−2908号公報、特開平5−297506号公報、特開2002−145919号公報等に記載の方法を参考にすることができる。
【0044】
(防眩層のマトリックス形成用バインダー)
防眩層を形成するマトリックスを形成するバインダーとしては、特に限定されないが、電離放射線等による硬化後に飽和炭化水素鎖、又はポリエーテル鎖を主鎖として有する透光性ポリマーであることが好ましい。また、硬化後の主たるバインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。
【0045】
必要な内部散乱性を得るために、該透光性微粒子と透光性樹脂(マトリックス)との屈折率を調節する必要がある。該透光性微粒子と該透光性樹脂の屈折率差の絶対値は0.001〜0.050が好ましく、更に好ましくは0.015〜0.040であり、最も好ましくは0.010〜0.030である。
【0046】
硬化後に飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、下記に述べる第一群の化合物より選ばれるエチレン性不飽和モノマー及びこれらの重合体が好ましい。また、ポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーとしては、下記に述べる第二群の化合物より選ばれるエポキシ系モノマー及びこれらの開環による重合体が好ましい。さらにこれらのモノマー類の混合物の重合体も好ましい。
【0047】
本発明では、第一群の化合物として、飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0048】
防眩層を形成するためのバインダーポリマーに用いられる、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル{例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−クロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート}、ビニルベンゼン及びその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例えば、ジビニルスルホン)、(メタ)アクリルアミド(例えば、メチレンビスアクリルアミド)等が挙げられる。
【0049】
さらに、第二群の化合物として、2個以上のエチレン性不飽和基を有する樹脂、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂および多価アルコール等の、多官能化合物などのオリゴマー又はプレポリマー等もあげられる。これらは2種以上併用してもよく、また、2個以上のエチレン性不飽和基を有する樹脂はバインダー全量に対して10〜100%含有することが好ましい。
【0050】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤、および粒子、必要に応じて無機フィラー、塗布助剤、その他の添加剤、有機溶媒等を含有する塗布液を調製し、該塗布液を透明支持体上に塗布後、電離放射線又は熱による重合反応により硬化して防眩層を形成する。電離放射線硬化と熱硬化を合わせて行うことも好ましい。光及び熱重合開始剤としては市販の化合物を利用することができ、それらは、「最新UV硬化技術」(p.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)や、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)のカタログに記載されている。
【0051】
(防眩層の高分子化合物)
本発明の防眩層は、さらに、高分子化合物を含有してもよい。高分子化合物を添加することで、硬化収縮を小さくしたり、塗布液の粘度調整を行うことができる。
【0052】
高分子化合物は、塗布液に添加する時点で既に重合体を形成しており、該高分子化合物としては、例えばセルロースエステル類(例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースナイトレート等)、ウレタンアクリレート類、ポリエステルアクリレート類、(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、メタクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸エチル共重合体、メタクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/(メタ)アクリル酸共重合体、ポリメタクリル酸メチル等)、ポリスチレン等の樹脂が好ましく用いられる。
【0053】
高分子化合物は、硬化収縮への効果や塗布液の粘度増加効果の観点から、高分子化合物を含有する層に含む全バインダーに対して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜40質量%の範囲で含有することが好ましい。また、高分子化合物の分子量は質量平均で0.3万〜40万が好ましく、0.5万〜30万がより好ましく、0.5万〜20万がさらに好ましい。
【0054】
(防眩層の無機フィラー)
本発明の防眩層には、上記の透光性微粒子に加えて、屈折率の調整、膜強度の調整、硬化収縮減少、さらに低屈折率層を設けた場合の反射率低減の目的に応じて、無機フィラーを使用することもできる。例えば、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属元素を含有する酸化物からなり、一次粒子の平均粒径が、一般に0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下1nm以上である微細な高屈折率無機フィラーを含有することも好ましい。
【0055】
透光性微粒子との屈折率差を調整するために、マトリックスの屈折率を低くする必要が生じた場合は、無機フィラーとして、シリカ微粒子、中空シリカ微粒子等の微細な低屈折率無機フィラーを用いることができる。好ましい粒径は、前記の微細な高屈折率無機フィラーと同じである。
【0056】
無機フィラーは、表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
【0057】
なお、無機フィラーは、粒径が光の波長よりも十分短いために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質の性質を有する。
【0058】
(レベリング剤)
特に塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状均一性を確保するために、フッ素系、シリコーン系の何れかの界面活性剤、あるいはその両者を塗布組成物中に含有することが好ましい。特に、フッ素系の界面活性剤は、より少ない添加量において、本発明のフィルムの塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状故障を改良する効果が現れるため、好ましく用いられる。面状均一性を高めつつ、高速塗布適性を持たせることにより生産性を高めることが目的である。フッ素系の界面活性剤の好ましい例としては、例えば、特開2007−188070号公報の段落番号0049〜0074に記載の化合物が挙げられる。
【0059】
本発明で用いられるレベリング剤(特に、フッ素系ポリマー)の好ましい添加量は、塗布液に対して0.001〜5質量%の範囲であり、好ましくは0.005〜3質量%の範囲であり、更に好ましくは0.01〜1質量%の範囲である。界面活性剤の添加量が0.001質量%以上で効果が十分であり、また5質量%以下とすることで、塗膜の乾燥が十分に行われ、塗膜としての良好な性能(例えば反射率、耐擦傷性)が得られる。
【0060】
(防眩層用塗布液の有機溶媒)
防眩層を形成する塗布組成物には、有機溶媒を添加することができる。
【0061】
有機溶媒としては、例えばアルコール系では、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール、イソアミルアルコール、1−ペンタノール、n−ヘキサノール、メチルアミルアルコール等、ケトン系では、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等、エステル系では、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、酢酸n−アミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酢酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル等、エーテル、アセタール系では、1,4ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルフラン、テトラヒドロピラン、ジエチルアセタール等、炭化水素系では、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、リグロイン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、ジビニルベンゼン等、ハロゲン炭化水素系では、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化エチレン、1,1,1−トリクロルエタン、1,1,2−トリクロルエタン、トリクロルエチレン、テトラクロルエチレン、1,1,1,2−テトラクロルエタン等、多価アルコールおよびその誘導体系では、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキシレングリコール、1,5−ペンタンジオール、グリセリンモノアセテート、グリセリンエーテル類、1,2,6−ヘキサントリオール等、脂肪酸系では、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、絡酸、イソ絡酸、イソ吉草酸、乳酸等、窒素化合物系では、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、アセトニトリル等、イオウ化合物系では、ジメチルスルホキシド等、が挙げられる。
【0062】
有機溶媒の中でメチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、1−ペンタノール等が特に好ましい。また、有機溶媒には、凝集性制御の目的でアルコール、多価アルコール系の溶媒を適宜混合して用いてもよい。これらの有機溶媒は、単独でも混合して用いてもよく、塗布組成物中に有機溶媒総量として、20重量%〜90重量%含有することが好ましく、30重量%〜80重量%含有することがより好ましく、40重量%〜70重量%含有することが最も好ましい。防眩層の表面形状の安定化のためには、沸点が100℃未満の溶媒と沸点が100℃以上の溶媒を併用することが好ましい。
【0063】
(防眩層の硬化)
防眩層は、塗布液を支持体に塗布後、光照射、電子線ビーム照射、加熱処理などを実施して、架橋又は重合反応させて形成できる。紫外線照射の場合、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用できる。紫外線による硬化は、窒素パージ等で酸素濃度が4体積%以下、更に好ましくは2体積%以下、最も好ましくは0.5体積%以下の雰囲気下で硬化することが好ましい。
以下に、防眩層以外の層について説明する。
【0064】
(低屈折率層)
本発明の防眩フィルムでは、反射率を低減するため、防眩層上に防眩層よりも屈折率が低い低屈折率層を有することが好ましい。低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.46であることが好ましく、1.25〜1.46であることがより好ましく、1.30〜1.40であることが特に好ましい。低屈折率層の厚さは、50〜200nmであることが好ましく、70〜100nmであることがさらに好ましい。低屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。
低屈折率層が中空シリカ粒子を含有することが好ましい。
【0065】
低屈折率層を形成するための好ましい硬化性組成物の態様としては、
(1)架橋性若しくは重合性の官能基を有する含フッ素化合物を含有する組成物、
(2)含フッ素のオルガノシラン材料の加水分解縮合物を主成分とする組成物、
(3)2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーと中空構造を有する無機微粒子を含有する組成物、
が挙げられる。
【0066】
(1)架橋性若しくは重合性の官能基を有する含フッ素化合物
架橋性または重合性の官能基を有する含フッ素化合物としては、含フッ素モノマーと架橋性または重合性の官能基を有するモノマーの共重合体を挙げることができる。これら含フッ素ポリマーの具体例は、特開2003−222702号公報、特開2003−183322号公報等に記載されている。
【0067】
上記のポリマーに対しては特開2000−17028号公報に記載のごとく適宜重合性不飽和基を有する硬化剤を併用してもよい。また、特開2002−145952号に記載のごとく含フッ素の多官能の重合性不飽和基を有する化合物との併用も好ましい。多官能の重合性不飽和基を有する化合物の例としては、上記の2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを挙げることができる。また、特開2004−170901号公報に記載のオルガノランの加水分解縮合物も好ましく、特に(メタ)アクリロイル基を含有するオルガノシランの加水分解縮合物が好ましい。これら化合物は、特にポリマー本体に重合性不飽和基を有する化合物を用いた場合に耐擦傷性改良に対する併用効果が大きく好ましい。
【0068】
ポリマー自身が単独で十分な硬化性を有しない場合には、架橋性化合物を配合することにより、必要な硬化性を付与することができる。例えばポリマー本体に水酸基含有する場合には、各種アミノ化合物を硬化剤として用いることが好ましい。架橋性化合物として用いられるアミノ化合物は、例えば、ヒドロキシアルキルアミノ基及びアルコキシアルキルアミノ基のいずれか一方又は両方を合計で2個以上含有する化合物であり、具体的には、例えば、メラミン系化合物、尿素系化合物、ベンゾグアナミン系化合物、グリコールウリル系化合物等を挙げることができる。これら化合物の硬化には、有機酸又はその塩を用いるのが好ましい。
【0069】
(2)含フッ素のオルガノシラン材料の加水分解縮合物を主成分とする組成物
含フッ素のオルガノシラン化合物の加水分解縮合物を主成分とする組成物も屈折率が低く、塗膜表面の硬度が高く好ましい。フッ素化アルキル基に対して片末端又は両末端に加水分解性のシラノールを含有する化合物とテトラアルコキシシランの縮合物が好ましい。具体的組成物は、特開2002−265866号公報、317152号公報に記載されている。
【0070】
(3)2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーと中空構造を有する無機微粒子を含有する組成物
更に別の好ましい態様として、低屈折率の粒子とバインダーからなる低屈折率層が挙げられる。低屈折率粒子としては、有機でも無機でも良いが、内部に空孔を有する粒子が好ましい。中空粒子としては中空シリカ粒子が好ましく、その具体例は、特開2002−79616号公報に記載のシリカ系粒子に記載されている。粒子屈折率は1.15〜1.40が好ましく、1.20〜1.30が更に好ましい。バインダーとしては、上記防眩層の頁で述べた二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーや、特開2002−243907号、特開2002−372601号、特開2003−26732号、特開2003−222702号、特開2003−294911号、特開2003−329804号、特開2004−4444、特開2004−45462号に記載のパーフルオロオレフィンとビニルエーテル類またはビニルエステル類との共重合体を挙げることができる。
【0071】
本発明の低屈折率層には、上記の防眩層の頁で述べた重合開始剤を添加することが好ましい。ラジカル重合性化合物を含有する場合には、該化合物に対して1〜10質量部、好ましくは1〜5質量部の重合開始剤を使用できる。
【0072】
本発明の低屈折層には、無機粒子を併用することができる。耐擦傷性を付与するために、低屈折率層の厚みの15%〜150%、好ましくは30%〜100%、更に好ましくは45%〜60%の粒径を有する微粒子を使用することができる。
【0073】
本発明の低屈折率層には、防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性等の特性を付与する目的で、公知のポリシロキサン系あるいはフッ素系の防汚剤、滑り剤等を適宜添加することができる。
また、耐擦傷性、あるいは薬品処理後の耐擦傷性の特性を付与する目的で、特開平10−25388号公報、特開2000−17028号公報および特開2002−145952号に記載に記載の重合性の不飽和結合を有する化合物とを併用することが好ましい。
【0074】
(高屈折率層、中屈折率層)
本発明のフィルムは、反射防止性を高めるために、前記防眩層と前記低屈折率層との間に、前記防眩層、前記低屈折率層よりも屈折率が高い、高屈折率層をさらに有することが好ましい。
また、前記防眩層と前記高屈折率層との間に、前記防眩層よりも屈折率が高く、前記高屈折率層よりも屈折率の低い、中屈折率層をさらに有することも好ましい。
以下、本明細書では、この高屈折率層と中屈折率層を高屈折率層と総称して呼ぶことがある。なお、本発明において、高屈折率層、中屈折率層、低屈折率層の「高」、「中」、「低」とは層相互の相対的な屈折率の大小関係を表す。また、支持体との関係で言えば屈性率は、支持体>低屈折率層、高屈折率層>支持体の関係を満たすことが好ましい。
また、本明細書では高屈折率層、中屈折率層、低屈折率層を反射防止層と総称して呼ぶことがある。
【0075】
防眩層の上に高屈折率層、低屈折率層を形成して、反射防止フィルムを作製するためには、高屈折率層の屈折率は1.53〜2.30であることが好ましく、より好ましくは1.55〜2.00、更に好ましくは、1.55〜1.70である。
【0076】
支持体から近い順に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層を塗設し、反射防止フィルムを作成する場合、高屈折率層の屈折率は、1.60〜2.30であることが好ましく、1.65〜2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.55〜1.80であることが好ましく、1.60〜1.70であることがさらに好ましい。
【0077】
本発明に用いる高屈折率層および中屈折率層は屈折率調整、防眩層上への塗布性を良くするために無機微粒子を含有することが好ましく、分散媒体中に無機粒子を分散した分散液に、好ましくは、さらにマトリックス形成に必要なバインダー前駆体(例えば、後述する電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)、光重合開始剤等を加えて高屈折率層および中屈折率層形成用の塗布組成物とし、透明支持体上に高屈折率層および中屈折率層形成用の塗布組成物を塗布して、電離放射線硬化性化合物(例えば、多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)の架橋反応又は重合反応により硬化させて形成することが好ましい。
【0078】
高屈折率層および中屈折率層に用いられるバインダー前駆体としては、上記(防眩層のマトリックス形成用バインダー)中に記載した、重合性の不飽和結合を有する化合物を好ましく用いることができる。これらの化合物は2種以上を併用しても良い。
【0079】
高屈折率層および中屈折率層のバインダー前駆体は、該層の塗布組成物の固形分量に対して、5〜80質量%添加するのが好ましい。
【0080】
高屈折率層および中屈折率層における無機微粒子の含有量は、高屈折率層または中屈折率層の固形分全量に対し30質量%以上が好ましく、30〜90質量%であることがより好ましく、さらに好ましくは40〜80質量%、特に好ましくは50〜75質量%である。無機微粒子は各層内で二種類以上を併用してもよい。
高屈折率層および中屈折率層には、芳香環を含む電離放射線硬化性化合物、フッ素以外のハロゲン化元素(例えば、Br、I、Cl等)を含む電離放射線硬化性化合物、S、N、P等の原子を含む電離放射線硬化性化合物などの架橋又は重合反応で得られるバインダー前駆体も好ましく用いることができる。
【0081】
高屈折率層および中屈折率層の膜厚は用途により適切に設計することができる。高屈折率層および中屈折率層を光学干渉層として用いる場合、30〜200nmが好ましく、より好ましくは50〜170nm、特に好ましくは60〜150nmである。
【0082】
高屈折率層および中屈折率層のヘイズは、防眩機能を付与する粒子を含有しない場合、低いほど好ましい。5%以下であることが好ましく、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。
高屈折率層および中屈折率層は、前記支持体上に直接、又は、他の層を介して構築することが好ましい。
【0083】
(無機微粒子)
本発明においては屈折率調整、防眩層上へ塗布した際の膜厚均一性改良、ハジキの改良、硬度などの物理特性、反射率、散乱性などの光学特性向上のため、各種無機微粒子を用いることができる。高屈折率層、中屈折率層への無機微粒子の添加量は、各層の固形分中30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%以上であることが最も好ましい。粒子添加量が30質量%以下であると防眩層上においてハジキの発生や膜厚均一性が悪化するため好ましくない。
無機微粒子としては、珪素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも一つの金属の酸化物、具体例としては、SiO、ZrO、TiO、Al、In、ZnO、SnO、Sb、ITO、ATO等が挙げられる。すなわち、本発明においては、前記高屈折率層及び前記中屈折率層が、Si、Al、Ti、Zr、Sb、Zn、Sn、Inから選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物微粒子を含有するのが好ましい。また、前記無機微粒子としては、その他BaSO、CaCO、タルクおよびカオリンなどを用いることもできる。
高屈折率層や中屈折率層を形成するに際しては、屈折率の高い無機微粒子を前記バインダー前駆体と共に、開始剤、有機置換されたケイ素化合物を溶媒中に分散した塗布組成物の硬化物が好ましい。
この場合の無機微粒子としては、屈折率の観点から、特にZrO、TiOが好ましく用いられる。
【0084】
上記TiOの粒子としては、コバルト、アルミニウム、ジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの元素を含有するTiOを主成分とする無機粒子が特に好ましい。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。
本発明におけるTiOを主成分とする粒子は、屈折率が1.90〜2.80であることが好ましく、2.10〜2.80であることがさらに好ましく、2.20〜2.80であることが最も好ましい。
【0085】
TiOを主成分とする粒子の結晶構造は、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造が主成分であることが好ましく、特にルチル構造が主成分であることが好ましい。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。
【0086】
TiOを主成分とする粒子に、Co(コバルト)、Al(アルミニウム)及びZr(ジルコニウム)から選ばれる少なくとも1つの元素を含有することで、TiOが有する光触媒活性を抑えることができ、本発明のフィルムの耐候性を改良することができる。
特に、好ましい元素はCo(コバルト)である。また、2種類以上を併用することも好ましい。
本発明のTiOを主成分とする無機粒子は、表面処理により特開2001−166104号公報記載のごとく、コア/シェル構造を有していても良い。
【0087】
本発明に使用する無機微粒子の粒径は、分散媒体中でなるべく微細化されていることが好ましく、重量平均径は1〜200nmである。好ましくは5〜150nmであり、さらに好ましくは10〜100nm、特に好ましくは10〜80nmである。無機微粒子を100nm以下に微細化することで透明性を損なわないフィルムを形成できる。無機微粒子の粒子径は、光散乱法や電子顕微鏡写真により測定できる。
【0088】
無機微粒子の比表面積は、10〜400m/gであることが好ましく、20〜200m/gであることがさらに好ましく、30〜150m/gであることが最も好ましい。
【0089】
本発明に使用する無機微粒子は分散媒体中に分散物として、各層形成用の塗布液に添加することが好ましい。
無機微粒子の分散媒体は、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散媒体の例には、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n-メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1-メトキシ-2-プロパノール)が含まれる。トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびブタノールが特に好ましい。
特に好ましい分散媒体は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンである。
【0090】
無機微粒子は、分散機を用いて分散する。分散機の例には、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライターおよびコロイドミルが含まれる。サンドグラインダーミルおよび高速インペラーミルが特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例には、ボールミル、三本ロールミル、ニーダーおよびエクストルーダーが含まれる。
【0091】
(導電性粒子)
本発明の防眩フィルムには導電性を付与するために、各種の導電性粒子を用いることができる。
導電性粒子は、金属の酸化物または窒化物から形成することが好ましい。金属の酸化物または窒化物の例には、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛および窒化チタンが含まれる。酸化錫および酸化インジウムが特に好ましい。導電性無機粒子は、これらの金属の酸化物または窒化物を主成分とし、さらに他の元素を含むことができる。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。他の元素の例には、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P、S、B、Nb、In、Vおよびハロゲン原子が含まれる。酸化錫および酸化インジウムの導電性を高めるために、Sb、P、B、Nb、In、Vおよびハロゲン原子を添加することが好ましい。Sbを含有する酸化錫(ATO)およびSnを含有する酸化インジウム(ITO)が特に好ましい。ATO中のSbの割合は、3〜20質量%であることが好ましい。ITO中のSnの割合は、5〜20質量%であることが好ましい。
【0092】
導電性無機粒子を表面処理してもよい。表面処理は、無機化合物または有機化合物を用いて実施する。表面処理に用いる無機化合物の例には、アルミナおよびシリカが含まれる。シリカ処理が特に好ましい。表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤およびチタネートカップリング剤が含まれる。シランカップリング剤が最も好ましい。二種類以上の表面処理を組み合わせて実施してもよい。
導電性無機粒子の形状は、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状あるいは不定形状であることが好ましい。また、二種類以上の導電性粒子を特定の層内あるいはフィルムとして併用してもよい。
導電性無機粒子は、分散物の状態で帯電防止層の形成に使用することができる。
【0093】
(分散剤)
本発明に使用する無機微粒子、導電性粒子の分散液安定性や、硬化後の膜強度等を確保するために、特開平11−153703号公報や米国特許第6210858号明細書等に記載されているような、多官能(メタ)アクリレートモノマーとアニオン性基含有(メタ)アクリレート分散剤とが塗布組成物中に含まれることが好ましい。
【0094】
(レベリング剤)
本発明の高屈折率層および中屈折率層の少なくとも1層に前述のフッ素系またはシリコーン系のレベリング剤を使用することが好ましい。本発明の高屈折率層、あるいは中屈折率層に使用することで防眩層の表面凹凸に起因した膜厚の不均一性や塗布物のハジキを改良することができる。すなわち本発明においては、前記高屈折率層がレベリング剤を含有するのが好ましく、また前記中屈折率層がレベリング剤を含有するのが好ましい。
【0095】
本発明において、低屈折率層等を設けた反射防止性防眩フィルムの好ましい積分反射率は、3.0%以下が好ましく、更に好ましくは2.0%以下であり、最も好ましくは1.5%以下0.2%以上である。積分反射率を下げることで防眩フィルムの表面での光散乱を小さくしても十分な防眩性が得られるため、黒締まりに優れた防眩性反射防止フィルムが得られる。
【0096】
(透明支持体)
本発明の防眩フィルムの透明支持体としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムを形成するポリマーとしては、セルロースアシレート(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、代表的には富士フイルム社製TAC−TD80U,TD80UFなど)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR社製)、非晶質ポリオレフィン(ゼオネックス:商品名、日本ゼオン社製)、(メタ)アクリル系樹脂(アクリペットVRL20A:商品名、三菱レイヨン社製、特開2004−70296号公報や特開2006−171464号公報記載の環構造含有アクリル系樹脂)などが挙げられる。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、が好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。
【0097】
本発明の防眩フィルムを液晶表示装置に用いる場合、片面に粘着層を設ける等してディスプレイの最表面に配置する。また、本発明の防眩フィルムと偏光板を組み合わせてもよい。該透明支持体がトリアセチルセルロースの場合は偏光板の偏光層を保護する保護フィルムとしてトリアセチルセルロースが用いられるため、本発明の防眩フィルムをそのまま保護フィルムに用いることがコストの上では好ましい。
【0098】
本発明の防眩フィルムは、片面に粘着層を設ける等してディスプレイの最表面に配置したり、そのまま偏光板用保護フィルムとして使用される場合には、十分に接着させるためには透明支持体上に最外層を形成した後、鹸化処理を実施することが好ましい。鹸化処理は、公知の手法、例えば、アルカリ液の中に該フィルムを適切な時間浸漬して実施される。アルカリ液に浸漬した後は、該フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。
鹸化処理することにより、最外層を有する側とは反対側の透明支持体の表面が親水化される。
【0099】
(塗布方式)
本発明の防眩フィルムは以下の方法で形成することができるが、この方法に制限されない。まず、各層を形成するための成分を含有した塗布液が調製される。次に、諸機能層を形成するための塗布液をディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法により透明支持体上に塗布し、加熱・乾燥するが、マイクログラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ダイコート法(米国特許2681294号明細書、特開2006−122889号明細書参照)がより好ましく、ダイコート法が特に好ましい。
【0100】
その後、光照射あるいは加熱して、機能層を形成するモノマーを重合して硬化する。これにより機能層が形成される。ここで必要であれば、機能層を複数層とすることができる。
【0101】
次に、同様にして低屈折率層を形成するための塗布液を機能層上に塗布し、光照射あるいは加熱し(紫外線など電離放射線を照射、好ましくは加熱下で電離放射線を照射することにより硬化させ、)低屈折率層が形成される。このようにして本発明の防眩フィルムが得られる。
【0102】
(偏光板)
偏光板は、偏光膜の表側および裏側の両面を保護する2枚の保護フィルムで主に構成される。本発明の防眩フィルムは、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムのうち少なくとも1枚に用いることが好ましい。本発明の防眩フィルムが保護フィルムを兼ねることで、偏光板の製造コストを低減できる。また、本発明の防眩フィルムを最表層に使用することにより、外光の映り込み等が防止され、耐傷性、防汚性等も優れた偏光板とすることができる。
【0103】
親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜との接着性を改良するのに特に有効である。また、親水化された表面は、空気中の塵埃が付着しにくくなるため、偏光膜と接着させる際に偏光膜と防眩フィルムの間に塵埃が入りにくく、塵埃による点欠陥を防止するのに有効である。
【0104】
鹸化処理は、最外層を有する側とは反対側の透明支持体の表面の水に対する接触角が40゜以下になるように実施することが好ましい。更に好ましくは30゜以下、特に好ましくは20゜以下である。
【0105】
(画像表示装置)
本発明の防眩フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)、表面電界ディスプレイ(SED)のような画像表示装置に適用することができる。特に好ましくは液晶表示装置(LCD)に用いられる。本発明の防眩フィルムは透明支持体を有しているので、透明支持体側を画像表示装置の画像表示面に接着して用いられる。
【0106】
本発明の防眩フィルムは、偏光膜の表面保護フィルムの片側として用いた場合、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、または半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
【実施例】
【0107】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特別の断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0108】
[実施例1]
(防眩層用塗布液の調製)
本実施例に使用した防眩層用塗布液を以下に記載する。
【0109】
防眩層用塗布液1の組成
PET−30 30.0質量部
DPHA 12.9質量部
MX−150H 0.9質量部
イルガキュア127 1.0質量部
SP−13 0.08質量部
メチルイソブチルケトン 40.0質量部
シクロヘキサノン 15.0質量部
【0110】
防眩層用塗布液2の組成
PET−30 48.4質量部
MX−600 1.03質量部
イルガキュア127 1.5質量部
SP−13 0.1質量部
メチルイソブチルケトン 30.0質量部
メチルエチルケトン 20.0質量部
【0111】
防眩層用塗布液3の組成
PET−30 48.4質量部
MX−300 1.03質量部
イルガキュア127 1.5質量部
SP−13 0.1質量部
メチルイソブチルケトン 30.0質量部
メチルエチルケトン 20.0質量部
【0112】
防眩層用塗布液4の組成
PET−30 48.4質量部
MX−1500H 1.03質量部
イルガキュア127 1.5質量部
SP−13 0.1質量部
メチルイソブチルケトン 30.0質量部
メチルエチルケトン 20.0質量部
【0113】
防眩層用塗布液5の組成
PET−30 48.4質量部
SSX108HLE 1.03質量部
イルガキュア127 1.5質量部
SP−13 0.1質量部
メチルイソブチルケトン 30.0質量部
メチルエチルケトン 20.0質量部
【0114】
防眩層用塗布液6の組成
PET−30 48.4質量部
MX−2000 1.03質量部
イルガキュア127 1.5質量部
SP−13 0.1質量部
メチルイソブチルケトン 30.0質量部
メチルエチルケトン 20.0質量部
【0115】
防眩層用塗布液7の組成
PET−30 48.4質量部
SSX106FB 0.025質量部
イルガキュア127 1.5質量部
SP−13 0.1質量部
メチルイソブチルケトン 30.0質量部
メチルエチルケトン 20.0質量部
【0116】
防眩層用塗布液8の組成
PET−30 48.4質量部
MX−600 0.51質量部
イルガキュア127 1.5質量部
SP−13 0.1質量部
メチルイソブチルケトン 30.0質量部
メチルエチルケトン 20.0質量部
【0117】
防眩層用塗布液9の組成
PET−30 48.4質量部
MX−600 1.28質量部
イルガキュア127 1.5質量部
SP−13 0.1質量部
メチルイソブチルケトン 30.0質量部
メチルエチルケトン 20.0質量部
【0118】
防眩層用塗布液10の組成
PET−30 48.4質量部
MX−600 2.08質量部
イルガキュア127 1.5質量部
SP−13 0.1質量部
メチルイソブチルケトン 30.0質量部
メチルエチルケトン 20.0質量部
【0119】
防眩層用塗布液11の組成
PET−30 48.4質量部
MX−600 0.64質量部
SSX106FB 0.64質量部
イルガキュア127 1.5質量部
SP−13 0.1質量部
メチルイソブチルケトン 30.0質量部
メチルエチルケトン 20.0質量部
【0120】
透光性微粒子は10質量%メチルイソブチルケトン溶液にし、ポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散し、塗布液を調液した。上記塗布液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩層用塗布液1〜11を調製した。
【0121】
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
・DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物[日本化薬(株)製]
・PET−30:ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物[日本化薬(株)製]
・イルガキュア127:重合開始剤[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製]
・MX−150H:平均粒径1.5μm架橋ポリメチルメタクリレート微粒子、綜研化学(株)製
・MX−300:平均粒径3.0μm架橋ポリメチルメタクリレート微粒子、綜研化学(株)製
・MX−600:平均粒径6.0μm架橋ポリメチルメタクリレート微粒子、綜研化学(株)製
・MX−1500H:平均粒径15μm架橋ポリメチルメタクリレート微粒子、綜研化学(株)製
・MX−2000:平均粒径20μm架橋ポリメチルメタクリレート微粒子、綜研化学(株)製
・SSX108HLE:平均粒径8.0μm架橋ポリメチルメタクリレート微粒子、積水化成品工業(株)製
・SSX106FB:平均粒径6.0μm架橋架橋アクリレート−スチレン共重合微粒子、積水化成品工業(株)製
【0122】
【化1】

【0123】
(防眩層101の塗設)
トリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士フイルム(株)製)をロール形態から巻き出して、スロットルダイを有するコーターを用いて、防眩層用塗布液1を直接押し出して塗布した。搬送速度30m/分の条件で塗布し、30℃で15秒間、90℃で20秒間乾燥の後、さらに窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照射量90mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、平均膜厚1.2μmの防眩性を有する防眩層を形成し、巻き取り防眩層101を作製した。
【0124】
(防眩層102〜110の作製)
防眩層101の作製において、防眩層塗布液1を防眩層塗布液2〜10に変更し、平均膜厚を表1のようにした以外は防眩層101と同様にして、防眩層102〜110を作製した。
【0125】
(防眩層111〜113の作製)
防眩層101の作製において、防眩層塗布液1を防眩層塗布液2に変更し、平均膜厚が3.0μm、6.0μm、11.0μmになるように塗布量を変更した以外は防眩層101と同様にして、防眩層111〜113を作製した。
【0126】
(防眩層114の作製)
防眩層101の作製において、防眩層塗布液1を防眩層塗布液11に変更し、平均膜厚が4.7μmになるように塗布量を変更した以外は防眩層101と同様にして、防眩層114を作製した。
【0127】
(防眩フィルムの評価)
以下の方法により防眩フィルムの諸特性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0128】
(表面形状の評価)
防眩層101〜114の表面粗さの算術平均粗さ(Ra)、凹凸の平均間隔(Sm)及び10点平均粗さ(Rz)は、触針式表面粗さ計「サーフコーダ SE3500」{(株)小坂研究所製}を用いて、JIS B−0601(1994)に従い設定し、該表面粗さ計より導出される値を採用した。
【0129】
(θ(1)の測定)
防眩層101〜114の傾斜角度θはマイクロマップ社(米国)製SXM520N−AS150型、対物レンズ10倍、CCDカメラ Hitachi DenshiLtd.KP−MIU 測定範囲は816μm×618μm、測定波長 560nm、測定モード WAVE で行った。測定データはMAT−LABを用いて、傾斜角度を算出し、θ(1)を求めた。
【0130】
(粗大粒子による点欠陥の評価)
上記作製した防眩フィルムにおいて、1.34m×5.00mの範囲を透過光で目視により粗大粒子による点欠陥を数えた。
○:2個以下
×:3個以上
【0131】
(映り込み)
防眩層101〜114の裏面を黒マジックで塗りつぶした後に、フィルムの表面に蛍光灯の光を反射させた際の光の映り込みの様子を評価した。
○:蛍光灯の形状がわからない。
△:やや蛍光灯の形状が映りこんでいるが、気にならない。
×:蛍光灯の形がはっきりと映り込み、眩しくて気になる。
△以上のレベルを合格と判定した。
【0132】
(カール)
作製した防眩フィルムのカールの測定を、JIS―K7619−1988の「写真フィルムのカールの測定法」中の方法Aのカール測定用型板法により実施した。
測定条件は25℃、相対湿度60%、調湿時間10時間であり、カールを下記の数式で表したときの値が、マイナス15以下、及びプラス15以上の時に×、マイナス15〜マイナス10、及びプラス10〜プラス15の時に△、マイナス10〜プラス10の時に○と判断した。△以上を合格とした。このときのカールの試料内測定方向は、ウェッブ形態での塗布の場合、基材の搬送方向について測ったものである。
(数式) カール=1/R Rは曲率半径(m)
【0133】
評価結果を表1に示す。
【0134】
【表1】

【0135】
上記結果から、透光性微粒子の平均粒子径が3μm以上15μm以下であり、且つ防眩層の平均膜厚が透光性微粒子の平均粒子径より0.1〜2.0μm薄く、且つ防眩層中に透光性微粒子を防眩層を形成する全固形分に対し1.0〜3.0質量%含有する防眩フィルムは映り込みが少なく、カールが小さい上に、透光性微粒子の粗大粒子による点欠陥が視認しにくいことがわかった。
【0136】
[実施例2]
(中・高・低屈折率層の塗設)
【0137】
(中屈折率層用塗布液Aの調製)
ZrO微粒子含有ハードコート剤(デソライトZ7404[屈折率1.72、固形分濃度:60質量%、酸化ジルコニウム微粒子含量:70質量%(対固形分)、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒子径:約20nm、溶剤組成:MIBK/MEK=9/1、JSR(株)製])10.0質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)3.0質量部、光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.1質量部、メチルイソブチルケトン86.9.質量部、SP−13を0.1質量部添加を添加して攪拌した。十分に攪拌ののち、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して中屈折率層用塗布液Aを調製した。上記塗布液を塗布硬化してなる中屈折率層の硬化後の屈折率は1.62であった。
【0138】
(中屈折率層用塗布液Bの調製)
ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物(VR−77;昭和高分子株式会社)を5.0重量部、ZrO微粒子含有ハードコート剤(デソライトZ7404[屈折率1.72、固形分濃度:60質量%、酸化ジルコニウム微粒子含量:70質量%(対固形分)、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒子径:約20nm、溶剤組成:MIBK/MEK=9/1、JSR(株)製])5.23質量部、光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.24質量部、メチルイソブチルケトン117質量部を添加して攪拌して中屈折率層用塗布液Bを調製した。上記塗布液を塗布硬化してなる中屈折率層の硬化後の屈折率は1.62であった。
【0139】
(高屈折率層用塗布液Aの調製)
ZrO微粒子含有ハードコート剤(デソライトZ7404[屈折率1.72、固形分濃度:60質量%、酸化ジルコニウム微粒子含量:70質量%(対固形分)、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒子径:約20nm、溶剤組成:MIBK/MEK=9/1、JSR(株)製])15.0質量部に、メチルイソブチルケトン85.0質量部、SP−13を0.1質量部添加を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して高屈折率層用塗布液Aを調製した。上記塗布液を塗布硬化してなる中屈折率層の硬化後の屈折率は1.72であった。
【0140】
(低屈折率層用塗布液Aの調製)
中空シリカ粒子微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、触媒化成工業(株)製CS60−IPA、平均粒子径60nm、シェル厚み10nm、シリカ濃度20%、シリカ粒子の屈折率1.31)500部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン20部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.5部加え混合した後に、イオン交換水9部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8部を添加し、分散液を得た。その後、シリカの含率がほぼ一定になるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力30Torrで減圧蒸留による溶媒置換を行い、最後に濃度調整により固形分濃度18.2%の分散液を得た。得られた中空シリカ粒子分散液のIPA残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ0.5%以下であった。
【0141】
得られた中空シリカ粒子分散液を用いて下記組成の低屈折率層用塗布液Aを調製した。上記塗布液を塗布硬化してなる中屈折率層の硬化後の屈折率は1.36であった。
【0142】
低屈折率層用塗布液Aの組成
DPHA 1.0質量部
P−1 1.6質量部
中空シリカ粒子分散液(18.2%) 26.4質量部
RMS−033 0.4質量部
イルガキュア907 0.3質量部
M−1 1.9質量部
MEK 168.4質量部
【0143】
「P−1」:特開2004−45462号公報に記載の含フッ素共重合体P−3(重量平均分子量約50000)
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、日本化薬(株)製
イルガキュア907:重合開始剤(日本チバガイギー(株)製)
M−1:特開2006−28280号公報に例示の含フッ素アクリレートM−1
RMS−033:メタクリロキシ変性シリコーン(Gelest(株)製)
【0144】
中屈折率層用塗布液、高屈折率層用塗布液、低屈折率層用塗布液を、スロットルダイを有するコーターを用いて直接押し出して表2に示す構成で塗布した。各層の塗布液量はPETフィルム上に同液を塗布した際に所望の膜厚になる液量をそのまま防眩層上にも適用した。このPETフィルム上膜厚を防眩層上の実際の膜厚として表2に記載する。PETフィルム上の膜厚は反射分光膜厚計“FE−3000”(大塚電子(株)製)を用いて算出した。
【0145】
【表2】

【0146】
中屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら180W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量240mJ/cm2の照射量とした。
【0147】
高屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量240mJ/cm2の照射量とした。
【0148】
低屈折率層の乾燥条件は60℃、60秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm2、照射量600mJ/cm2の照射量とした。
【0149】
(反射防止フィルムの評価)
以下の方法により反射防止フィルムの諸特性の評価を行った。結果を表3に示す。
【0150】
(積分反射率)
試料1〜19の反射防止フィルムの裏面(低屈折率層とは反対側の面)をサンドペーパーで粗面化した後に黒色インクで処理し、裏面反射をなくした状態にした。該反射防止フィルムの表面を、分光光度計V−550(日本分光(株)製)の積分球に装着して、380〜780nmの波長領域において、反射率(積分反射率)を測定し、450〜650nmにおける積分反射率の平均(平均反射率)を算出し、反射防止性を評価した。
【0151】
(黒表示時の黒の締まり<表示性能>)
延伸したポリビニルアルコールフィルムに、ヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。試料1〜19の反射防止フィルムのそれぞれに鹸化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、各反射防止フィルムのセルローストリアセテート側が偏光膜側となるように偏光膜の片側に貼り付けた。また、市販のセルローストリアセテートフィルム「フジタックTD80UF」{富士フイルム(株)製}をポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の、反射防止フィルムを貼った側とは反対側に貼り付けた。このようにして反射防止フィルム付き偏光板(HKH−01)〜(HKH−19)を作製した。
32型フルハイビジョン液晶TV“LC−32GS10”{シャープ(株)製、画素サイズ370μm}の視認側の偏光板を剥がし、代わりに偏光板(HKH−01)〜(HKH−19)を、反射防止フィルムが最表面となるように粘着剤を介して、視認側に貼り付けた。一般的にTVを用いる一般家庭環境下(約200Lx)にてパネルを黒表示にて駆動させて白茶け感を目視にて確認した。目視の際の判定基準は、黒の程度が良好な場合を○、黒の程度が良好な場合を△、白茶けが発生している場合を×とし、△以上を合格とした。
【0152】
(映り込み)
試料1〜19フィルムの裏面を黒マジックで塗りつぶした後に、フィルムの表面に蛍光灯の光を反射させた際の光の映り込みの様子を評価した。
○:十分に反射が抑えられている、または十分に光が拡散されており、気にならない。
△:やや蛍光灯の形状が映りこんでいるが、気にならない。
×:蛍光灯の形がはっきりと映り込み、眩しくて気になる。
△以上のレベルを合格と判定した。
【0153】
(鉛筆硬度)
作製した反射防止フィルムの鉛筆硬度を、JIS―K5400に従う鉛筆硬度試験で評価した。
鉛筆硬度が3H以上であるものを○、2Hであるものを△、H以下であるものを×とし、△以上を合格とした。
【0154】
(カール)
作製した反射防止フィルムのカールの測定を、JIS―K7619−1988の「写真フィルムのカールの測定法」中の方法Aのカール測定用型板法により実施した。
測定条件は25℃、相対湿度60%、調湿時間10時間であり、カールを下記の数式で表したときの値が、マイナス15以下、及びプラス15以上の時に×、マイナス15〜マイナス10、及びプラス10〜プラス15の時に△、マイナス10〜プラス10の時に○と判断した。△以上を合格とした。このときのカールの試料内測定方向は、ウェッブ形態での塗布の場合、基材の搬送方向について測ったものである。
(数式) カール=1/R Rは曲率半径(m)
【0155】
評価結果を表3に示す。
【0156】
【表3】

【0157】
上記結果から、透光性微粒子の平均粒子径が3μm以上15μm以下であり、且つ防眩層の平均膜厚が透光性微粒子の平均粒子径より0.1〜2.0μm薄く、且つ防眩層中に透光性微粒子を防眩層を形成する全固形分に対し1.0〜3.0質量%含有する防眩フィルムは驚くべきことに表面に凹凸を有し防眩性を保ちつつ、低屈折率層を積層しても積分反射率が2.0%以下となり、黒締まり、映り込み防止が良好な反射防止特性が得られることがわかった。さらに、干渉層を2層以上積層すると積分反射率が1.5%以下となり、より黒締まり、映り込み防止が良好な反射防止特性が得られることがわかった。
【0158】
[実施例3]
上記試料1〜19の各フィルムと80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士フイルム(株)製)を1.5mol/L、55℃のNaOH水溶液中に2分間浸漬したあと中和、水洗した。鹸化済の試料1〜19の各フィルムと鹸化済80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士フイルム(株)製)の各々のフィルムに、ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させ、延伸して作製した偏光膜の両面を接着、保護して偏光板を作製した。このようにして作製した偏光板を、低屈折率層が最表面となるように透過型TN液晶表示装置搭載のノートパソコンの液晶表示装置(偏光選択層を有する偏光分離フィルムである住友3M(株)製のD−BEFをバックライトと液晶セルとの間に有する)の視認側の偏光板と貼り代えたところ、本発明のフィルム試料を有するものは背景の映りこみが極めて少なく、表示品位の非常に高い表示装置が得られた。また、本発明のフィルム試料を有するものは点欠陥を視認することができなかった。
【0159】
[実施例4]
本発明試料の各々のフィルムを、有機EL表示装置の表面のガラス板に粘着剤を介して貼り合わせたところ、ガラス表面での反射が抑えられ、視認性の高い表示装置が得られた。また、本発明の試料は点欠陥を視認することができなかった。
【0160】
[実施例5]
実施例1における本発明試料の各々のフィルムを用いて、片面に本発明のフィルムを有する偏光板を作製し、偏光板の本発明のフィルムを有している側の反対面にλ/4板を張り合わせ、本発明のフィルム側が最表面になるように、有機EL表示装置の表面のガラス板に貼り付けたところ、表面反射および、表面ガラスの内部からの反射がカットされ極めて視認性の高い表示が得られた。また、本発明のフィルム試料を有するものは点欠陥を視認することができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】図1(a)〜(c)は、それぞれ、傾斜角度の測定方法の概要を説明する模式図である。
【図2】本発明のフィルムの好ましい実施形態を模式的に示す概略断面図である。
【図3】本発明のフィルムの好ましい実施形態を模式的に示す概略断面図である。
【図4】本発明のフィルムの好ましい実施形態を模式的に示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0162】
(1)支持体
(2)防眩層
(3)中屈折率層
(4)高屈折率層
(5)低屈折率層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体上に、バインダー及び透光性微粒子を含む防眩層を有する防眩フィルムであって、該透光性微粒子の平均粒子径が3μm以上15μm以下であり、且つ該防眩層の平均膜厚が該透光性微粒子の平均粒子径より0.1〜2.0μm薄く、該防眩層中に該透光性微粒子を該防眩層を形成する全固形分に対し1.0〜3.0質量%含有し、且つ、該防眩層表面の凹凸の傾斜角θを測定した際、0°≦θ≦1°の領域(θ(1))が60%以上98.5%以下である防眩フィルム。
【請求項2】
前記防眩層表面の凹凸の平均間隔(Sm)が0.03mm<Sm<0.5mmである請求項1に記載の防眩フィルム。
【請求項3】
前記防眩層表面の10点平均粗さ(Rz)が0.2μm<Rz<2.0μmである請求項1または2に記載の防眩フィルム。
【請求項4】
前記防眩層がフッ素系またはシリコーン系のレベリング剤を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の防眩フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の防眩フィルムの防眩層上に、該防眩層よりも屈折率が低い低屈折率層を有する反射防止フィルム。
【請求項6】
前記低屈折率層が中空シリカ粒子を含有する請求項5に記載の反射防止フィルム。
【請求項7】
前記防眩層と前記低屈折率層との間に、前記防眩層、前記低屈折率層よりも屈折率が高い、高屈折率層をさらに有する請求項5または6に記載の反射防止フィルム。
【請求項8】
前記高屈折率層がSi、Al、Ti、Zr、Sb、Zn、Sn、Inから選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物微粒子を含有する請求項7に記載の反射防止フィルム。
【請求項9】
前記高屈折率層がSi、Al、Ti、Zr、Sb、Zn、Sn、Inから選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物微粒子を高屈折率層の全固形分中30質量%以上含有する請求項8に記載の反射防止フィルム。
【請求項10】
前記高屈折率層がフッ素系またはシリコーン系のレベリング剤を含有する請求項7〜9のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項11】
前記防眩層と前記高屈折率層との間に、前記防眩層よりも屈折率が高く、前記高屈折率層よりも屈折率の低い、中屈折率層をさらに有する請求項7〜10のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項12】
前記中屈折率層がSi、Al、Ti、Zr、Sb、Zn、Sn、Inから選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物微粒子を含有する請求項11に記載の反射防止フィルム。
【請求項13】
前記中屈折率層がSi、Al、Ti、Zr、Sb、Zn、Sn、Inから選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物微粒子を中屈折率層の全固形分中30質量%以上含有する請求項12に記載の反射防止フィルム。
【請求項14】
前記中屈折率層がフッ素系またはシリコーン系のレベリング剤を含有する請求項11〜13のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項15】
偏光膜と該偏光膜の両側に保護フィルムを有する偏光板であって、該保護フィルムの少なくとも一方が、請求項1〜4のいずれかに記載の防眩フィルムまたは請求項5〜14のいずれかに記載の反射防止フィルムである偏光板。
【請求項16】
請求項1〜4のいずれかに記載の防眩フィルム、請求項5〜14のいずれかに記載の反射防止フィルム、または請求項15に記載の偏光板を、画像表示面に有する画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−79099(P2010−79099A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249262(P2008−249262)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】