説明

防音ドーム

【課題】 折り畳み可能で設置及び持ち運びが容易であるとともに、騒音発生源を頻繁に移動させる必要がある場合であっても好適に適用することが可能な防音ドームを提供する。
【解決手段】 防音ドーム10は、内外二重のシート材を重ね合わせた棒状袋体30を複数連接してなるトンネル状のドーム形成体20と、ドーム形成体20の前後開放部の少なくとも一方を閉塞するカーテン部材60とを備えている。ドーム形成体20は、棒状袋体30の内部に空気を充填することによりアーチ状となって自立するとともに、棒状袋体30の内部から空気を抜き取ることにより折り畳み可能となっている。カーテン部材60は、ドーム形成体20に対して着脱可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音発生源を収容して防音を行うための防音ドームに関するものであり、特に、折り畳み可能で設置及び持ち運びが容易な防音ドームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
工事現場では、コンクリートミキサー車を用いてコンクリートを供給する等、種々の作業が行われており、作業に伴い騒音が発生する。特に、住宅地や学校近隣のように静粛が必要な地域において工事を行う際には、騒音の発生を極力抑制する必要がある。
【0003】
従来、工事現場における騒音の発生を防止するための技術が種々開発されている。例えば、コンクリート杭の杭頭を処理する際に、騒音を防止するための技術が開示されている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載されている技術は、内外壁面体を有する中空二重壁の空間部に圧縮空気を封入してエアードームを形成し、このエアードームで作業空間を覆うことにより、杭頭のはつり作業等により発生する騒音が外部に漏れないようにしたものである。
【0004】
【特許文献1】特開2001−123441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1に記載された技術は、工事現場の状況に合わせて、それぞれ大きさの異なるエアードームを作成しなければならず、汎用性に欠けるとともに、コストが上昇するという問題があった。また、閉鎖型のエアードームを用いているため、頻繁に防音領域から出入りする必要があるコンクリートミキサー車を用いた作業等には不向きであった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み提案されたもので、折り畳み可能で設置及び持ち運びが容易であるとともに、騒音発生源を頻繁に移動させる必要がある場合であっても好適に適用することができる防音ドームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の防音ドームは、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を備えている。
すなわち、本発明の防音ドームは、騒音発生源を収容して防音を行うための防音ドームであって、内外二重のシート材を重ね合わせた棒状袋体を複数連接してなるトンネル状のドーム形成体と、ドーム形成体の前後開放部の少なくとも一側を閉塞するカーテン部材と、を備えている。そして、ドーム形成体は、棒状袋体の内部に空気を充填することによりアーチ状となって自立するとともに、棒状袋体の内部から空気を抜き取ることにより折り畳み可能であり、カーテン部材は、ドーム形成体に対して着脱可能であることを特徴とする。
【0008】
このような構成からなる防音ドームは、コンプレッサ等を用いて棒状袋体の内部へ空気を充填することにより、ドーム形成体が自立してトンネル状となる。この状態で防音ドーム内に騒音発生源を収容し、カーテン部材によりドーム形成体の前後開放部の少なくとも一側を閉塞することにより、騒音発生源から発生する騒音が外部へ漏れ出すことを防止する。また、持ち運びや収納を行う際には、棒状袋体の内部から空気を抜き取って、ドーム形成体を折り畳めばよい。
【0009】
また、ドーム形成体の前後面に接着部材を取り付け、該接着部材により複数のドーム形成体を前後に連接して所望の長さの騒音発生源収納部を形成することが可能である。
【0010】
なお、エアードームに関する従来技術として、特開平10−299153号公報にドーム屋根が開示されている。このドーム屋根は、内部圧力の上昇によりアーチ状となって自立可能な空気膜を形成するチューブを複数連接したものである。しかし、このドーム屋根は、降雨時や降雪時であっても作業可能とすることを目的としたものであり、騒音発生源を収容して防音を行うことを目的としたものではない。すなわち、ドーム屋根の前後面は開放されており、ドーム屋根内に騒音発生源を収納したとしても、開放された前後面から騒音が漏れ出すため防音を行うことはできない。
【発明の効果】
【0011】
本発明の防音ドームは、内外二重のシート材を重ね合わせて複数の棒状袋体を形成し、各棒状袋体の内部に空気を充填して使用するため、棒状袋体の内部に充填された空気の作用により、防音効果が発揮される。また、使用状態では、カーテン部材によりドーム形成体の前後開放部の少なくとも一側が閉塞されているため、外部へ漏れ出す騒音量を減少させることができる。
【0012】
また、カーテン部材を開閉することにより、ドーム形成体の前後開放部を開放あるいは閉塞することができるので、頻繁に防音領域から出入りさせる必要があるコンクリートミキサー車を用いた作業等に好適に用いることができる。
また、棒状袋体の内部から空気を抜き取ることにより、ドーム形成体を折り畳むことができるので、持ち運び及び保管が容易となる。
さらに、接着部材により複数のドーム形成体を前後に連接して所望の長さの騒音発生源収納部を形成することにより、工事現場の状況に合わせて適切な大きさの防音ドームを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明に係る防音ドームの実施形態を説明する。
図1〜図10は、本発明の実施形態に係る防音ドームを示すもので、図1は正面図、図2は右側面図、図3は平面図、図4は底面図、図5はカーテン部材及び転倒防止用ロープを取り付けた状態の正面図、図6及び図7は使用状態の説明図、図8は棒状袋体の断面図、図9はカーテン部材の取り付け手順を示す説明図、図10は防音ドームの組立手順を示す説明図である。また、9(a)はドーム形成体の正面図、図9(b)はカーテンレールの縦断面図である。なお、本発明の実施形態に係る防音ドームは、正面形状と背面形状、及び右側面形状と左側面形状とが対称となっている。
【0014】
本発明の実施形態に係る防音ドーム10は、図1〜図4に示すように、断面形状が逆U字状となったドーム形成体20を基本構成としている。
このドーム形成体20は、内外二重のシート材からなる棒状袋体30を複数連接して構成されている。そして、棒状袋体30の内部に空気を充填することによりアーチ状となって自立するとともに、棒状袋体30の内部から空気を抜き取ることにより折り畳み可能となっている。このドーム形成体20は、棒状袋体30の内部に空気が充填された自立状態で、トンネル状となっている。
なお、棒状袋体30は、図8に示すように、2枚のシート材31を重ね合わせて接着することにより形成される。2枚のシート材31を接着するには、シート材31の材質に合わせて、縫製、蒸着、接着剤等の手段が用いられる。
【0015】
さらに、ドーム形成体20の前後開放部には、それぞれ接着部材として機能する面ファスナーが取り付けてある。この面ファスナーは、一側が雄部材40aとなっており、他側が雌部材40bとなっている。したがって、面ファスナーの雄部材40aと雌部材40bとを接着することにより、複数のドーム形成体20が前後に連接され、所望の長さの騒音発生源収納部を形成することができる。
【0016】
また、図1に示すように、ドーム形成体20の前後開放部の上部には、開放部の上側を遮蔽するためのシート材からなる遮蔽部材50が設けられている。
また、図9(a)に示すように、ドーム形成体20の開放部には、カーテンレール取付用の面ファスナーが取り付けてある。一方、図9(b)に示すように、カーテン部材60を吊り下げるためのカーテンレール70にも、カーテンレール取付用の面ファスナーが取り付けてある。このカーテンレール取付用の面ファスナーは、一側が雄部材80aとなっており、他側が雌部材80bとなっている。したがって、カーテンレール取付用の面ファスナーの雄部材80aと雌部材80bとを接着することにより、ドーム形成体20の開放部にカーテンレール70及びカーテン部材60を取り付けて、開放部を閉塞することができる。
【0017】
また、図1、図2、図5に示すように、ドーム形成体20の外周面及び前後面には、転倒防止用ロープ100を接続するためのロープ接続部90が複数設けられている。このロープ接続部90に転倒防止用ロープ100の一端を接続し、転倒防止用ロープ100の他端を地中に打ち込んだペグ110に接続することにより、強風等による防音ドーム10の転倒防止を図ることができる。
【0018】
棒状袋体30を形成する内外二重のシート材、遮蔽部材50、及びカーテン部材60の素材としては、例えば公知の防炎シートを使用する。なお、カーテン部材60は、棒状袋体30のように空気が充填されていないため、防音性能が高い防音シートを用いることが好ましい。なお、防音シートは重量が重いため、すべての部材を防音シートで構成した場合には、棒状袋体30の内部に空気を充填しただけではドーム形成体30を自立させることができないおそれがある。しかし、シート材の重量が問題とならない大きさの防音ドーム10を作製する場合、あるいは軽量の防音シートを用いることができるのであれば、すべての部材に防音性能が高い防音シートを用いてもよい。
【0019】
次に、図10を参照して、本発明の実施形態に係る防音ドーム10の組立手順を説明する。本発明の実施形態に係る防音ドーム10を組み立てるには、まず、カーテンレール取付用の面ファスナー80a,80bを用いて、ドーム形成体20の前後開放部にカーテンレール70を取り付ける((a),(b))。続いて、ドーム形成体20の前後開放部に取り付けた面ファスナー40a,40bを用いて、ドーム形成体20を前後に連接する(c)。図10に示す例では、2つのドーム形成体20を前後に連接している。
【0020】
続いて、ドーム形成体20の外周面の下部に設けた空気充填口120にエアーホース130の一端を連通接続するとともに、エアーホース130の他端にブロアー140を連通接続する(d)。そして、ブロアー140を駆動して棒状袋体30の内部に空気を送り込む(e)。なお、図示しないが、棒状袋体30は互いに連通するように構成されており、空気充填口120から空気を送り込むことにより、すべての棒状袋体30の内部に空気を充填することができる。棒状袋体30の内部に十分な量の空気が充填されると、ドーム形成体20がアーチ状に自立して、トンネル状の防音ドーム10が完成する(f)。
【0021】
続いて、適宜箇所のロープ接続部90に転倒防止用ロープ100の一端を接続するとともに、転倒防止用ロープ100の他端を地中に打ち込んだペグ110に接続することにより、転倒防止措置を施す。また、カーテン部材60により、ドーム形成体20の開放部を閉塞する(g)。
【0022】
本発明の実施形態に係る防音ドーム10は、図5〜図7に示すように、例えばコンクリートミキサー車150によりコンクリート供給作業を行う際に使用される。具体的には、防音ドーム10を組み立てた後に、図5に示すように、カーテン部材60を用いてドーム形成体20の一側の開放部を閉塞する。そして、図6及び図7に示すように、閉塞されていない側の開放部から、防音ドーム10内にコンクリートミキサー車150のエンジン部分を収容する。この状態で、コンクリート供給作業を行うと、棒状袋体30の内部に充填された空気の作用により防音効果が発揮されて、コンクリートミキサー車150のエンジン部分から騒音が発生したとしても、防音ドーム10から外部に漏れ出す騒音量を減少させることができる。さらに、開放部の一側がカーテン部材60により閉塞されているため、当該開放部から漏れ出す騒音量を減少させることができる。
【0023】
なお、図6及び図7に示す例では、コンクリートミキサー車150のエンジン部分のみを防音ドーム10内に収容したが、連接するドーム形成体20の数を増やすことにより、コンクリートミキサー車150の全体を防音ドーム10内に収容してもよい。この場合には、カーテン部材60を用いてドーム形成体20の両側の開放部を閉塞することにより、さらに防音効果を高めることができる。
なお、防音ドーム10内にコンクリートミキサー車150を収容する場合には、排気ガス中の有害物質を除去するために、コンクリートミキサー車150の排気ガス管(図示せず)に公知の排気ガス浄化装置を取り付けることが好ましい。
【0024】
また、図示しないが、ドーム形成体20の外周面に、開閉可能な空気抜き口を設けてもよい。この空気抜き口は、例えば、ドーム形成体20の外周面の適宜位置に設けた開口部と、開口部を塞ぐ閉塞シート材とからなり、ドーム形成体20の外周面と閉塞シート材の内面との間に面ファスナーを取り付けて構成することができる。そして、棒状袋体30の内部に空気を充填する際には、面ファスナーを接着状態として、閉塞シート材により開口部を塞いで、棒状袋体30の気密状態を確保する。一方、棒状袋体30の内部から空気を抜き出す際には、面ファスナーを非接着状態とし、閉塞シート材を開口部から引き離して、開口部を開放すればよい。
【0025】
なお、ドーム形成体20を構成する棒状袋体30の数、各棒状袋体30の大きさは、防音ドームを適用する工事現場の状況に応じて適宜変更して設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る防音ドームの正面図。
【図2】本発明の実施形態に係る防音ドームの右側面図。
【図3】本発明の実施形態に係る防音ドームの平面図。
【図4】本発明の実施形態に係る防音ドームの底面図。
【図5】本発明の実施形態に係る防音ドームにおいて、カーテン部材及び転倒防止用ロープを取り付けた状態の防音ドームの正面図。
【図6】本発明の実施形態に係る防音ドームの使用状態の説明図。
【図7】本発明の実施形態に係る防音ドームの使用状態の説明図。
【図8】本発明の実施形態に係る防音ドームにおける棒状袋体の断面図。
【図9】本発明の実施形態に係る防音ドームにおけるカーテン部材の取り付け手順を示す説明図。
【図10】本発明の実施形態に係る防音ドームの組立手順を示す説明図。
【符号の説明】
【0027】
10 防音ドーム
20 ドーム形成体
30 棒状袋体
31 シート材
40a 面ファスナー(雄部材)
40b 面ファスナー(雌部材)
50 遮蔽部材
60 カーテン部材
70 カーテンレール
80a カーテンレール取付用の面ファスナー(雄部材)
80b カーテンレール取付用の面ファスナー(雌部材)
90 ロープ接続部
100 転倒防止用ロープ
110 ペグ
120 空気充填口
130 エアーホース
140 ブロアー
150 コンクリートミキサー車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
騒音発生源を収容して防音を行うための防音ドームであって、
内外二重のシート材を重ね合わせた棒状袋体を複数連接してなるトンネル状のドーム形成体と、
前記ドーム形成体の前後開放部の少なくとも一方を閉塞するカーテン部材と、
を備え、
前記ドーム形成体は、前記棒状袋体の内部に空気を充填することによりアーチ状となって自立するとともに、前記棒状袋体の内部から空気を抜き取ることにより折り畳み可能であり、
前記カーテン部材は、前記ドーム形成体に対して着脱可能であることを特徴とする防音ドーム。
【請求項2】
前記ドーム形成体の前後面に接着部材を取り付け、該接着部材により複数のドーム形成体を前後に連接して所望の長さの騒音発生源収納部を形成することを特徴とする請求項1に記載の防音ドーム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−196216(P2008−196216A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33052(P2007−33052)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【Fターム(参考)】