説明

防音具及びこれを備えた外装ケース

【課題】簡単な構成であっても、外装ケースの隙間から漏洩する騒音を防止することができる防音具、及びこの防音具を備えた外装ケースを提供すること。
【解決手段】外装ケースに取り付けられる防音具であって、音エネルギーを吸収する吸音部材22と、この吸音部材22が一端側に接続されると共に、吸音部材22が接続された面と同じ面の他端側に接着力を有する接着部材24が設けられた平板部材30とを備えることを特徴とする防音具20。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装ケースの隙間から漏洩する騒音を防止する防音具、及びこの防音具を備えた外装ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタなどの電気製品あるいは電子機器等は、騒音を発生させる物を外装ケースで収容するようにしている。そして、この騒音は外装ケースを介して外部に漏れるため、外装ケースの内側全体に吸音材を配置することが望ましい。しかし、そのような吸音材の配置では、内部に熱がこもってしまい、また、電気製品などの小型化を阻害してしまう。
そこで、従来の騒音対策例である図8に示すように、電気製品あるいは電子機器等においては、もっぱら、外装ケースの隙間だけを塞ぐような工夫がされている。
【0003】
例えば、図8(a)に示す騒音対策では、遮音部材3は、図示しないつるまきバネに接続されて付勢力を有する突当部材6に押されて、軸4を中心に回動するようになっており、この遮音部材3を外装ケース1の隙間Sに突き当てて、隙間Sを塞ぐようになっている(例えば、特許文献1参照)。
また、図8(b)に示す騒音対策では、外装ケース2を構成する複数のカバー部材2a,2aのそれぞれに段部5,5を形成し、段部5,5同士が対向するようにカバー部材2a,2aを例えばネジ留めすると共に、この段部5,5の間に吸音材7を配置するようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−194885号の公開特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、図8(a)に示す騒音対策では、つるまきバネにより付勢力を得た突当部材6で、遮音部材3を突き当てて回動させるという複雑な構造を有しており、外装ケースのコストアップにつながってしまう。また、図8(b)に示す騒音対策でも、外装ケース自体の形状が複雑になってしまうため、例えば、樹脂製のケースを射出成形する場合などにおいて、金型が複雑になって、コストアップにつながってしまう。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためのものであり、簡単な構成であっても、外装ケースの隙間から漏洩する騒音を防止することができる防音具、及びこの防音具を備えた外装ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的は、第1の発明によれば、音エネルギーを吸収する吸音部材と、この吸音部材が一端側に接続されると共に、前記吸音部材が接続された面と同じ面の他端側に接着力を有する接着部材が設けられた平板部材とを備える防音具により達成される。
【0008】
第1の発明の構成によれば、防音具は、音エネルギーを吸収する吸音部材と、この吸音部材が一端側に接続されると共に、吸音部材が接続された面と同じ面の他端側に接着力を有する接着部材が設けられた平板部材とを備える。このため、平板部材の他端側に設けられた接着部材を利用して、平板部材を外装ケースに貼り付けることができる。そして、平板部材の一端側には、音エネルギーを吸収する吸音部材が接続されている。したがって、例えば、この吸音部材が隙間を覆うように外装ケースに密着させて、平板部材を外装ケースに貼り付ければ、吸音部材はそれ自体に接着力がなくても、隙間を覆うように外装ケースに密着したままその位置が保持されて、騒音の漏洩を防止することができる。
かくして、本発明の効果として、簡単な構成であっても、外装ケースの隙間から漏洩する騒音を防止することができる防音具を提供することができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記吸音部材は多孔質材料から形成されており、前記平板部材はその主面が外装ケースと略平行に配置されていることを特徴とする。
第2の発明の構成によれば、吸音部材は多孔質材料から形成されているが、この多孔質材料は、粒子の振動速度が速いほど、効率よく音エネルギーが熱エネルギーに変化するので、吸音の効果が高くなるという特性を有する。そして、平板部材は、その主面が外装ケースと略平行に配置されているため、外装ケースと平板部材との間で薄く平面的に拡がった空間を形成して、この空間における音波による空気粒子の振動速度を速くしている。そうすると、吸音部材は、この平板部材と外装ケースとの間に形成された薄く平面的に拡がった空間に配置されることになるので、効果的に吸音して、より高い防音効果を得ることができる。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明の構成において、前記接着部材は、その内側に、前記吸音部材の厚みに対応させた厚みを有する板材を含んでいることを特徴とする。
第3の発明の構成によれば、接着部材は、その内側に、吸音部材の厚みに対応させた厚みを有する板材を含んでいる。このため、吸音部材の厚みに対応させた接着部材を形成して、一端側に接続された吸音部材の厚みが接着部材に比べて大き過ぎるために、平板部材を外装ケースに貼り付け難くなるという事態を防止できる。したがって、ある程度大きな厚みを有する吸音部材を平板部材に接続してもよく、騒音漏れを効果的に防止することができる。
【0011】
第4の発明は、第1ないし第3の発明のいずれかの構成において、前記吸音部材は、弾力性があり、かつ、前記接着部材の厚み寸法に比べて厚みが大きいことを特徴とする。
第4の発明の構成によれば、吸音部材は、弾力性があり、かつ、接着部材の厚み寸法に比べて厚みが大きい。このため、平板部材を吸音部材より薄い接着部材で外装ケースに貼り付けると、吸音部材は、外装ケースと平板部材との間に圧縮して挟まれる。したがって、隙間の密閉度を高めたり、或いは音波による空気粒子の振動速度を速くしたりして、防音効果を高めることができる。
【0012】
第5の発明は、第4の発明の構成において、前記平板部材は、前記吸音部材の外側の側面に沿って折り曲げられていることを特徴とする。
第5の発明の構成によれば、平板部材は、吸音部材の外側の側面に沿って折り曲げられている。このため、第4の発明の構成により吸音部材が圧縮されて、吸音部材が外側に膨らもうとしても、吸音部材の外側の側面に沿って折り曲げられた平板部材の部分が、その膨らみを防止する。したがって、第4の発明の吸音部材の圧縮により高められた防音効果が減衰されないようにすることができる。
【0013】
第6の発明は、第1ないし第5の発明のいずれかの構成において、前記平板部材は、外装ケースの形状に合わせて折り曲げられていることを特徴とする。
第6の発明の構成によれば、平板部材は、外装ケースの形状に合わせて折り曲げられているので、例えば、角部などの平坦な外装ケースでない部位に隙間がある場合であっても、吸音部材を外装ケースに密着させて、防音効果に得ることができる。
【0014】
第7の発明は、第1ないし第6の発明のいずれかの構成において、前記平板部材は、一方向に沿って中心付近から端面に向かうにしたがって幅が大きくなるように切り欠かれた切り込み部を有する。
第7の発明の構成によれば、平板部材は、一方向に沿って中心付近から端面に向かうにしたがって幅が大きくなるように切り欠かれた切り込み部を有する。このため、その切り欠かれた端面どうしを近づけるようにすると、一方向に沿って折り曲げる方向の成分と、一方向に対して角度をつけて折り曲げる方向の成分とが合わさって、平板部材を湾曲させることができる。したがって、外装ケースが湾曲していても、そのケース形状に平板部材を合わせて、吸音部材を確実に外装ケースに密着させることができる。
【0015】
また、上述の目的は、第8の発明によれば、複数のカバー体により騒音発生源を収容するようになっており、前記複数のカバー体の間に形成された隙間から漏洩する騒音を防止する防音具を備えた外装ケースであって、前記防音具は、音エネルギーを吸収する吸音部材と、この吸音部材が一端側に接続されると共に、前記吸音部材が接続された面と同じ面の他端側に接着力を有する接着部材が設けられた平板部材とを備え、前記接着部材は、前記隙間を挟んだ複数のカバー体のうち一つのカバー体にのみ貼り付けられている外装ケースにより達成される。
【0016】
第8の発明の構成によれば、複数のカバー体の間に形成された隙間から漏洩する騒音を防止する防音具は、音エネルギーを吸収する吸音部材と、この吸音部材が一端側に接続されると共に、吸音部材が接続された面と同じ面の他端側に接着力を有する接着部材が設けられた平板部材とを備えている。このため、第1の発明と同様に、吸音部材はそれ自体に接着力がなくてもカバー体に密着されて、騒音の漏洩を防止することができる。
さらに、接着部材は、隙間を挟んだ複数のカバー体のうち一つのカバー体にのみ貼り付けられており、複数のカバー体をつなぐように吸音部材を貼り付けているわけではないので、複数のカバー体が分解し易くなって、例えば分解や組み立てが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る外装ケースの例として、プリンタ用の外装ケース10を示しており、図1(a)は外装ケース10の概略斜視図、図1(b)は外装ケース10の一部のカバー体が開いた状態の概略斜視図である。
この図に示されるように、外装ケース10は、図面上視認することができる複数のカバー体12a,12b,12c,12d、及び図示されない裏側のカバー体により騒音発生源を収容するようになっている。
【0018】
すなわち、外装ケース10は樹脂成形品であって、それぞれが図示しない金具で接続されており、全体的に略6面体となって騒音発生源を封止するようにしている。そして、できるだけ騒音が外部に漏れないようするため、外装ケース10のほとんどの主面は、開口部や隙間などを形成しないようにしている。しかし、プリンタとしての機能を発揮させるためには、内部空間と外部空間とを連通しなければならない部分がある。例えば、印刷済みの用紙を排出する排出口S2や、図示しない用紙やトナーの補給口、手差し印刷時に用いる手差し口S1などといった部分である。このため、例えば、図1(b)に示すように、手差し口である開口部S1を形成するカバー体12bと、この開口部S1を開閉する手差しトレイであるカバー体12cとの間の部分N,Oに隙間が形成され、そこから、内側の音が外部に漏洩するため、この漏洩を防止するように、後述する防音具が設けられている。
【0019】
また、メンテナンスやリサイクルなどを考慮すると、外装ケース10を樹脂で一体成形することはできず、複数のカバー体12a,12b,12dのそれぞれを分解あるいは取り外しできるようにしているため、複数のカバー体12a,12b,12dどうしのつなぎ目の部分M,P,Qに隙間が形成される。なお、このような隙間は、外観上からしても、図1に示すように角部付近に位置することが多い。そして、このようなつなぎ目の隙間からも、内側の音が外部に漏洩するため、この漏洩を防止するように、後述する防音具が設けられている。
【0020】
図2ないし図6は、この防音具を説明するための図であり、図2(a)は図1のA−A線概略断面図、図2(b)は図2(a)の防音具の変形例である。また、図3(a)は図1(b)のB−B線概略断面図、図3(b)は図1(a)のB−B線概略断面図である。また、図4は図3のNの部分を拡大した図、図5は図1のP,Oの部分を拡大した図である。
【0021】
これらの図に示されるように防音具20(20−1,20−2,20−3)は、外装ケース10の複数の個所M,N,O,P,Qに取り付けられている。
まず、外装ケース10のQの部分(図1参照)に取り付けられた防音具20−1について、図2を参照しながら説明する。
Qの部分に取り付けられた防音具20−1は、図2(a)に示されるように、外装ケース10の内側に取り付けられており、音エネルギーを吸収する吸音部材22と、この吸音部材22が一端側(図2の左側)に接続されると共に、吸音部材22が接続された面と同じ面30aの他端側(図2の右側)に接着力を有する接着部材24が設けられた平板部材30とを備えている。
【0022】
平板部材30は、後述するように吸音部材22自体に接着力あるいは粘着力がなくても、吸音部材22の位置を保持できるようにするための部材である。すなわち、平板部材30は、一端側(図2の左側)に吸音部材22が接続されており、この接続された領域以外の領域である他端側(図2の右側)に接着部材24が設けられている。そして、この接着部材24を外装ケース10の内面に貼り付けて、平板部材30を固定するともに、この平板部材30に接続された吸音部材22の位置を保持するようにしている。
【0023】
このため、平板部材30は、接着部材24で外装ケース10に貼り付けた際に、その形状が容易に変わらず、少なくとも、吸音部材22の位置を保持できる程度の硬度を有し、より好ましくは、吸音部材22を外装ケース10側に押圧できる程度の硬度を有するようになっている。
また、平板部材30は、音を遮断できるように気密性の高い材料ともなっており、この気密性と上述した硬度とを考慮して、本実施形態では、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート、ステンレス鋼(SUS)、木材(例えば杉)、及びこれらの材料に類似する樹脂・金属・木材製の材料が利用されている。
具体的には、平板部材30は、スペースを取り過ぎないように薄く形成され、本実施形態では、0.2mmの厚みを有するポリエチレンテレフタレート(PET)シート、0.2mmの厚みを有するステンレス鋼(SUS)、0.5mmの厚みを有する木材(例えば杉)などが利用されている。
【0024】
また、この外装ケース10のQの部分に配置された平板部材30は、後述するように、カバー体12aとカバー体12bのつなぎ目に沿って長く形成された吸音部材22と同じ長さを有しており、このため、全体的な形状としてはテープ状に形成されている。なお、平板部材30の幅W1は、少なくとも、吸音部材22の幅W2と接着部材24の幅W3とを加算した幅以上の幅W1を有している。
そして、平板部材30は、その主面が外装ケース10と略平行に配置され、外装ケース10と平板部材30との間に、薄く平面的に拡がった平板状の空間を形成するようなっている。このため、騒音の音波による空気粒子αの振動速度は、外装ケース10と平板部材30との間で速くなって、速い速度で空気粒子αを吸音部材22に衝突させるようにしている。
【0025】
接着部材24は、平板部材30側と外装ケース10側の両面に接着力を有しており、外装ケース10の隙間S3を挟んだカバー体12a,12bのうちカバー体12aにのみ貼り付けられている。これにより、カバー体12aとカバー体12bとを容易に分離することができる。また、本実施形態の場合、隙間S3は外装ケース10の角部付近にあるので、この角部と遠ざかる方向にあるカバー体12aに接着部材24を貼り付けて、防音具20−1を容易に配置できるようにしている。
【0026】
また、接着部材24は、カバー体12aと平板部材30とを接続できればよく、例えば、一般的な両面粘着テープなどを利用すればよいが、本実施形態では、その内側に、吸音部材22の厚みに対応させた厚みを有する板材25を含んでいる。すなわち、吸音部材22が吸音効果を十分に発揮するためには、ある程度の厚み寸法を必要とするが、上述のように、一般的な両面粘着テープを利用した場合、吸音部材22の厚みよりも両面粘着テープの厚みの方が小さく、平板部材30を外装ケースに貼り付け難くなる恐れがある。このため、板材25の平板部材30側とカバー体12a側に両面粘着テープ等の接着剤をつけて、接着部材24の厚みを大きくしている。また、防音具20−1を安定的に貼り付けられるように、本実施形態の接着部材24の幅W3は5mm程度としている。
なお、この板材25には、例えば気密性の高い金属板等の遮音効果のある材料を用いることができ、これにより、接着部材24でも音を遮蔽できるようにしている。
【0027】
吸音部材22は、音エネルギーを吸収するようになっており、例えば、発泡ウレタン、スポンジ、フェルト材、或いはビニールシート等の膜材料や、プラスチックボード等の板材料を利用することもできる。図2の吸音部材22では、ある程度の弾力性があって、音エネルギーが熱エネルギーに変化することで騒音が吸収されるようになっており、例えば、発泡ウレタン、スポンジなどの多孔質材料が用いられている。この際、上述のように、平板部材30を外装ケース10と平行に配置することで、騒音の音波による空気粒子αの振動速度を速くして、空気粒子αを吸音部材22に衝突するようにしている。このため、この多孔質材料から形成された吸音部材22は、効率よく音エネルギーを熱エネルギーに変化させて、吸音の効果が高くなっている。
【0028】
この吸音部材22は、隙間S3側と反対の面22bが、接着剤23を用いて平板部材30に接合され、隙間S3側の面22aは、接着力あるいは粘着力がない面であり、外装ケース10のカバー体12a,12bと密着しているが接合されていない状態となっている。
また、吸音部材22は、外装ケース10の隙間S3を覆う大きさを有するようになっており、具体的には、隙間S3の幅W4(本実施形態では1mm)よりも大きな幅W2で形成され、図1に示すカバー体12aとカバー体12bのつなぎ目に沿って長く形成され、その長さは外装ケース10の高さ寸法と略同じ寸法を有している。
【0029】
また、吸音部材22の厚みは接着部材24と略同じか、好ましくは、図2の点線に示すように、接着部材24の厚みD2よりも大きな厚みD1を有するように形成されている。これにより、吸音部材22は、接着部材24で平板部材30を貼り付けた際、平板部材30で外装ケース10側に押圧されて圧縮され、隙間S3の密閉度を高めたり、或いは音波による空気粒子αの振動速度を速くしたりして、防音効果を高めることができる。
【0030】
そして、このように吸音部材22を圧縮することで得られる効果を減衰しないように、より好ましくは、図2(b)に示すように、平板部材30は、吸音部材22の外側の側面22cに沿って折り曲げられた部分30bを有している。すなわち、この折り曲げられた部分30bにより、吸音部材22がカバー体12a,12bと平板部材30との間に挟まれて外側に膨らもうとしても、その膨らみを防止している。また、このように、平板部材30をカバー体12b側に折り曲げることで、音波による空気粒子αの振動速度はより速くなって、防音効果をさらに高めることができる。
【0031】
次に、図1に示す外装ケース10のNの部分に取り付けられた防音具20−2について、図3および図4を参照しながら説明する。
Nの部分に取り付けられた防音具20−2の構造は、上述の外装ケース10のQの部分に取り付けられた防音具20−1の構造と同様である。
このNの部分に取り付けられた防音具20−2が、Qの部分に取り付けられた防音具20−1と異なるのは、その取り付け位置についてである。
すなわち、防音具20−2は、手差し口である開口部S1を形成するカバー体12bと、この開口部S1を開閉する手差しトレイであるカバー体12cとの間の部分に形成された隙間S4に配置されている。
【0032】
そして、開閉可能なカバー体12cが開口部S1を閉じた状態において形成された隙間S4を塞ぐように吸音部材22が配置され、接着部材24は、開口部S1を形成するカバー体12bのみに貼り付けられている。
これにより、カバー体12cを開けることもできるし、閉めた際には、上述の防音具20−1と同様に、防音効果を発揮することができる。
【0033】
次に、図1に示す外装ケース10のPの部分に取り付けられた防音具20−3について、図5を参照しながら説明する。
このPの部分に取り付けられた防音具20−3が、上述の外装ケース10のQの部分に取り付けられた防音具20−1と主に異なるのは、平板部材30の形状と、吸音部材22の配置についてである。
【0034】
すなわち、この防音具20−3の平板部材30は、外装ケース10の形状に合わせて折り曲げられている。具体的には、外装ケース10のPの部分は90度に折り曲がった角部にあるため、平板部材30も90度の角度をもって折り曲げられており、防音具20−3を配置し易くしている。
【0035】
また、図5の吸音部材22は、隙間S5を覆うようには配置されていないが、音エネルギーを熱エネルギーに変化させる吸音の効果を有するので、この吸音部材22側から音が漏洩することを有効に防止している。また、接着部材24や平板部材30側の音エネルギーをもった空気粒子αについては、接着部材24は上述のように金属板などの主面に両面粘着テープを貼付したもので、平板部材30もある程度の硬度を有し、空気密度の高いポリエチレンテレフタレートシートやステンレス鋼等が用いられているので遮蔽効果を有するので、この接着部材24や平板部材30側から音が漏洩することも有効に防止できる。したがって、この3つの部材(吸収部材22、接着部材24、平板部材30)をもって、隙間S5を塞ぎ、防音効果を得ることができる。
【0036】
なお、より防音効果を高めるため、吸音部材22が隙間S5を覆うように寸法を長く形成するようにしても勿論よい。
また、図5は、外装ケース10のPの部分の防音具20−3を図示しているが、図1および図3に示す外装ケース10のOの部分の防音具も、この防音具20−3と同様の構成となっている。
【0037】
本発明の実施形態に係る外装ケース10は以上のように構成されており、防音具20は、音エネルギーを吸収する吸音部材22と、この吸音部材22が一端側に接続されると共に、吸音部材22が接続された面と同じ面の他端側に接着力を有する接着部材24が設けられた平板部材30とを備えている。このため、図2や図4に示す防音具20−1,20−2のように平板部材30を接着部材24で外装ケース10に貼り付けて、吸音部材22で隙間S3、S4を覆って、騒音の漏洩を防止することができる。或いは、図5に示す防音具20−3のように吸音部材22、接着部材24、平板部材30の3つの部材をもって隙間S5を塞ぎ、騒音の漏洩を防止することができる。
【0038】
しかも、図2ないし図5に示す防音具20は、隙間を挟んだ複数のカバー体のうち一つのカバー体にのみ貼り付けられている。例えば、図2に示すように、防音具20−1はカバー体12aにのみ接合されており、カバー体12bには接合されていない。したがって、例えばカバー体12aとカバー体12bとが分解し易くなって、修理やリサイクルが容易となる。
【0039】
図6および図7は本発明の第2の実施形態に係る外装ケース50を示しており、図6は外装ケース50の概略斜視図、図7はこの外装ケース50に用いられる防音具20−4である。なお、図7(a)は防音具20−4の平板部材30側から視認した図、図7(b)は図7(a)のC−C線切断断面図である。
これらの図で図1ないし図5の実施形態で用いた符号と同一の符号を付した箇所は共通する構成であるから、重複した説明は省略し、以下、相違点を中心に説明する。
【0040】
図6および図7の外装ケース50が、図1ないし図5で示した外装ケース10と、主に相違するのは、カバー体が3次元的曲面をもっている点と、この3次元的曲面の部分に取り付けられる防音具20−4の平板部材30の形状についてである。
すなわち、外装ケース50は複数のカバー体50a,50bを備えている。カバー体50aは、図6における上部に、3次元的曲線をもって切り取られるようにした開口部を有している。そして、カバー体50bはこの開口部を開閉するための蓋であり、開口部の形状に対応して3次元的曲面を有している。
【0041】
そして、このカバー体50aとカバー体50bとの境界の部分(図6の一点鎖線で示されるTの部分)に形成された隙間S6を塞ぐように、図7に示す防音具20−4が取り付けられる。すなわち、防音具20−4の接着部材24を、カバー体50aの開口部の周縁部(カバー体50aのTの部分)のみに貼り付け、カバー体50bが閉められたときに隙間S6が塞がれるようになっている。
【0042】
ここで、この防音具20−4の平板部材30は、図7に示すように、一方向(図7のX方向)に沿って中心付近CLから端面30c,30dに向かうにしたがって幅W5が大きくなるように切り欠かれた切り込み部40を有している。
具体的には、切り込み部40は、短手方向に沿って、中心付近CLから一方の端面30c(図7の右側の端面30c)に向かってしたがって幅W5が大きくなるように切り欠かれた切り込み部40aと、中心CLから他方の端面30d(図7の左側の端面30d)に向かうにしたがって幅W5が大きくなるように切り欠かれた切り込み部40bとを有し、この切り込み部40aと切り込み部40bとは、長手方向に互い違いに形成されている。
【0043】
なお、一方の端面30c(図7の右側の端面30c)に向かって切り欠かれた切り込み部40aの位置には、吸収部材22が設けられるようになっている。しかし、接着部材24が、図2の接着部材24と同様に硬度が高い板材などを含んでいる場合は、他方の端面30d(図7の左側の端面30d)に向かって切り欠かれた切り込み部40bの位置には、この接着部材24が配置されないようになっている。
【0044】
本発明の第2の実施形態に係る外装ケース50は以上のように構成されており、平板部材30は、一方向(図7のX方向)に沿って切り欠かれた切り込み部40を有し、この切り込み部40は、中心付近CLから端面30c,30dに向かうにしたがって幅W5が大きくなっている。このため、例えば、図7の点線で示した図のように、右側の切り欠き部40aの切り欠いた端面同士を突き当てるように近づければ、Z軸方向に折り曲げられる成分とX軸方向に折り曲げられる成分とが合わさって、図7のZ軸方向の成分を加味したX軸方向の折り曲げが容易となる。したがって、3次元的曲線を有する外装ケース50に形成された隙間S6であっても、その形状に防音具20−4の形状を合わせて、吸音部材22を確実に外装ケース50に密着させることができる。
【0045】
本発明は上述の実施形態に限定されない。各実施形態や各変形例の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略し、図示しない他の構成と組み合わせることができる。
例えば、図2ないし図7に示す防音具20を外装ケース10,50の外側の面に貼り付けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る外装ケースの例として、プリンタ用の外装ケースを示しており、図1(a)は外装ケースの概略斜視図、図1(b)は外装ケースの一部のカバー体が開いた状態の概略斜視図。
【図2】防音具を説明するための図であり、図2(a)は図1のA−A線概略断面図、図2(b)は図2(a)の防音具の変形例。
【図3】図3(a)は図1(b)のB−B線概略断面図、図3(b)は図1(a)のB−B線概略断面図。
【図4】図3のNの部分を拡大した図。
【図5】図1のP,Oの部分を拡大した図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る外装ケースの概略斜視図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る外装ケースに用いられる防音具であり、図7(a)は平板部材側から視認した図、図7(b)は図7(a)のC−C線切断断面図。
【図8】従来の騒音対策例。
【符号の説明】
【0047】
10,50・・・外装ケース、12a,12b,12c,12d・・・カバー体、20,20−1,20−2,20−3,20−4・・・防音具、22・・・吸音部材、24・・・接着部材、30・・・平板部材、S3,S4,S5,S6・・・隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音エネルギーを吸収する吸音部材と、
この吸音部材が一端側に接続されると共に、前記吸音部材が接続された面と同じ面の他端側に接着力を有する接着部材が設けられた平板部材と
を備えることを特徴とする防音具。
【請求項2】
前記吸音部材は多孔質材料から形成されており、前記平板部材はその主面が外装ケースと略平行に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の防音具。
【請求項3】
前記接着部材は、その内側に、前記吸音部材の厚みに対応させた厚みを有する板材を含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の防音具。
【請求項4】
前記吸音部材は、弾力性があり、かつ、前記接着部材の厚み寸法に比べて厚みが大きいことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の防音具。
【請求項5】
前記平板部材は、前記吸音部材の外側の側面に沿って折り曲げられていることを特徴とする請求項4に記載の防音具。
【請求項6】
前記平板部材は、外装ケースの形状に合わせて折り曲げられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の防音具。
【請求項7】
前記平板部材は、一方向に沿って中心付近から端面に向かうにしたがって幅が大きくなるように切り欠かれた切り込み部を有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の防音具。
【請求項8】
複数のカバー体により騒音発生源を収容するようになっており、前記複数のカバー体の間に形成された隙間から漏洩する騒音を防止する防音具を備えた外装ケースであって、
前記防音具は、
音エネルギーを吸収する吸音部材と、
この吸音部材が一端側に接続されると共に、前記吸音部材が接続された面と同じ面の他端側に接着力を有する接着部材が設けられた平板部材と
を備え、
前記接着部材は、前記隙間を挟んだ複数のカバー体のうち一つのカバー体にのみ貼り付けられている
ことを特徴とする外装ケース。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−93766(P2007−93766A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280350(P2005−280350)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】