説明

限定受信システムにおけるデジタル信号のバリアントのブロードキャスティング

【課題】受信機を更新する必要なしに、データストリームのオーディオ部またはビデオ部の複数のバリアントなど、デジタル信号の一部の複数のバリアントの分布を可能にするヘッドエンドシステム、受信機、スマートカード、および限定受信システムを提供する。
【解決手段】ヘッドエンドシステムによって生成されるデジタル信号は、受信機が、第2のデジタル信号におけるコピーの識別の必要なしに、デジタル信号を受信し、処理することを可能にする。受信機のエラーハンドリング性能は、1つのコピーのみが受信機の出力において使用されることを確実にする。エラーハンドリング性能は、1つの復号キーを受信機に使用させることによってトリガされて、すべてのコピーのスクランブルを解き、結果的に、1つのコピーは正しくスクランブルを解かれ、他のコピーは誤ってスクランブルを解かれることになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルビデオブロードキャスティングなど、デジタル信号のブロードキャスティングに関する。より詳細には、本発明は、限定受信システム(conditional access system)において、ヘッドエンドシステムから1つまたは複数の受信機に、デジタル信号の種々のバリアント(variants)をブロードキャストすることに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルビデオブロードキャスティング(DVB)は、既知の技術であり、MPEG-2を使用して、データストリーム内で多重化されたコンテンツストリームを伝送することが可能である。MPEG-2データストリームは、トランスポートストリーム(TS)と呼ばれる。TSは、パケットエレメンタリストリーム(PES)と呼ばれる1つまたは複数のコンテンツストリームを含む。PESは、PESヘッダ部分と、PESペイロード部分とを有する。
【0003】
保護されたDVBサービスのプロビジョニングは、通常、限定受信システムによって可能になる。限定受信システムは、ヘッドエンドシステムと、多数の受信機とを備える。スマートカードは、個々の加入者向けにペイTVアプリケーションを実装する。スマートカードは、例えば、セキュアチップを有するクレジットカードの大きさのカードであり、受信機内の限定受信モジュール内に挿入されることになる。スマートカードは、例えば、ハードウェアモジュールとしてか、またはソフトウェアで、受信機内に埋込み可能である。
【0004】
スマートカードの主な機能は、ヘッドエンドシステムから受信されるエンタイトルメントメッセージの処理と、受信機からの要求に対する応答である。スマートカードは、エンタイトルメント制御メッセージ(ECM)から、復号キー(制御語すなわちCWとしても知られている)を取得し、CWを受信機内のデスクランブラに供給して、PESの復号化を可能にする。
【0005】
国際規格ISO/IEC13818-1:2000に準拠している既知のDVBシステムにおいては、PESおよびTSは、ヘッドエンドシステムにおいて生成される。ヘッドエンドシステムは、オーディオ信号および/またはビデオ信号など、1つまたは複数のアナログ信号を受信する。符号化器が、アナログ信号をデジタル信号に符号化する。次に、デジタル信号は、パケット化器においてパケット化される。パケット化器は、PESヘッダおよびPESペイロードを含むPESパケットを作成する。複数のPESストリームは、マルチプレクサにおいて、多重化パケットストリームに多重化される。多重化パケットストリームは、高速スクランブラによって、TSへとスクランブルを掛けられる(暗号化されるとも呼ぶ)。TSは、1つまたは複数の受信機にTSを伝送またはブロードキャストするためのDVBネットワークインフラストラクチャの伝送コンポーネントに供給される。
【0006】
エレメンタリストリームは、TSパケットヘッダにおける独自のパケット識別子(PID)値によって識別される。単一のPIDと識別されたPESが、PIDストリームと呼ばれる。受信機において、デマルチプレクサがMPEG-2のTransport Streamを処理し、同一のPID値を有するパケットを別の出力ストリームに出力する。PIDルーティングテーブルが、これらの出力ストリームを、オーディオまたはビデオの解凍エンジンなど、関連する処理モジュールに転送する。
【0007】
それぞれのエレメンタリストリームは、エレンメンタリストリームを参照するPID値を有するTSパケットのペイロードに運ばれる。図17の例においては、オーディオPESについてのPID値’a1’が、TVプログラム’1’のオーディオをトランスポートするすべてのパケットによって共有される。類似する構成が、ビデオおよびEPGのエレメンタリストリームについて存在し、それぞれ、’v’および’e’と示す。図17の例においては、TVプログラム’1’、’2’、および’3’についてのオーディオ、ビデオ、およびEPGのストリーム(すなわち、a1、v1、e1、a2、v2、e2、a3、v3、およびe3)は、別のラジオチャンネル’a4’と同様、デマルチプレクサDemuxの出力である。PID値とエレメンタリストリームとの関係、およびTVプログラムは、MPEG-2のPSIメタデータ(図示せず)内に含まれる。そのメタデータは、選択されたTVプログラムについて、エレメンタリストリームを適切な処理モジュール(例えば、デコーディングエンジン)に送信するルータを構成するために使用される。ルータは、要素、PIDルーティングと示す。
【0008】
MPEG-2のTransport Streamは、TSパケットを順次、トランスポートする。結果として、デマルチプレクサのそれぞれの出力ストリームは、TSパケットデータを順次、運ぶ。
【0009】
図18の例においては、3つのPIDストリーム’a’、’a*’、および’a**’を示している。PIDストリーム’a*’および’a**’は、例えば、別々に暗号化されたか、または別々に透かしを入れられた単一のデータ源から生じたバリアントである。受信機において、PIDストリーム’a’と、PIDストリーム’a*’とは、単一のエレメンタリストリームを形成するために結合可能である。あるいは、PIDストリーム’a’と、PIDストリーム’a**’とは、単一のエレメンタリストリームを形成するために結合可能である。図18においては、太線が、特定のPID上のデータトラフィックの時間的存在を示している。エレメンタリストリームの共通部は、PID’a’上に分散される。この共通部は、受信機の群に分散される。エレメンタリストリームの受信機特有の部分は、PID’a*’および’a**’を使用する。図18の例においては、それらの特有の部分がPID’a*’および’a**’上に分散されている場合、データは、PID’a’を使用して配信されない。受信機においては、共通のデータストリーム’a’と、特有のデータストリーム’a*’または’a**’とは、エレメンタリストリームを取得するために結合される。
【0010】
データストリームの種々の部分は、1つまたは複数の入力を同一の出力に転送するPIDルーティングテーブルを可能にすることによって、受信機において合成可能である。これは、PID切替えとして知られている。図19は、受信機における既知のPID切替え機能の例を示している。
【0011】
図19の例は、下付き文字’1’および’2’で示すエレメンタリストリームを示している。下付き文字’1’で示すエレメンタリストリームは、例えば、TVプログラムに属している。TVプログラムのオーディオ部は、オーディオPID値’a1’と、’a1*’と、’a1**’とで示す3つのPIDストリームを有する。TVプログラムのビデオ部は、ビデオPID値’v1’と、’v1*’と、’v1**’とで示す3つのPIDストリームを有する。図19の例における受信機は、PIDストリーム’a1’における共通のデータ部を、PIDストリーム’a1**’における特有のデータ部と合成させることによって構成されるエレメンタリオーディオストリームをデコードすることが可能である。類似する合成が、PIDストリーム’v1’および’v1**’からのデータストリーム同士を結合することによって、ビデオエレメンタリストリームについて実装される。
【0012】
例えば、図18の’a*’または’a**’など、エレメンタリストリームの特定の部分が、透かしにより符号化可能であることは知られている。図19に示す例に類似して、透かしを入れられたPIDストリームの合成により、透かしを入れられた出力がもたらされる。それぞれのPESの独自のPID値を使用して、特定のPIDストリームを選択することによって、受信機は、エレメンタリストリームの特定の部分を切り替えて、それによって、受信機に独自の一連の透かしを出力に挿入することが可能である。
【0013】
PID切替えをサポートしない受信機が存在する。このような受信機の操作は一般に、図17の例に示す機能に限定される。受信機の更新には、PID切替え機能を追加することが求められることになる。このような更新は、ハードウェアおよび/またはファームウェアの更新を含む。既に配置された受信機では、ハードウェアを変更することは、実行できないことが多い。既に配置された受信機においてファームウェアを更新することは、ソフトウェアのベンダーが一般には、他の受信機設計に移行しており、既に配置された受信機のファームウェアを更新しないので、困難なことが多い。
【0014】
欧州特許第1486071号は、テレビジョンプログラムの複数暗号化のための暗号化構成を開示している。欧州特許第1486071号においては、複製パケットはそれぞれ、独自のPIDを有する。
【0015】
欧州特許第1461952号は、複数暗号化プログラムのための暗号化構成を開示している。PIDマッピング技術を使用して、複数暗号化を区別する。
【0016】
比較的古い受信機のかなりのインフラストラクチャを有するブロードキャスタには、PID切替えと同様の機能が必要である。これらのインフラストラクチャは通常、ペイTVブロードキャスタによって使用される。最新の受信機に存在する新規機能の展開により、複数のバージョンのエレメンタリストリームに対する必要性がしばしばもたらされるために、既存の受信機を制限することは、その新規機能の展開を限定する。PID切替えの便益は、手頃な費用の帯域幅で、このようなインフラストラクチャの耐用年数を延ばすことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許第1486071号
【特許文献2】欧州特許第1461952号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
受信機を更新する必要なしに、データストリームのオーディオ部またはビデオ部の複数のバリアントなど、データストリームの一部の複数のバリアントの分散を可能にする解決策の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一態様によれば、ヘッドエンドシステムが提案される。このヘッドエンドシステムは、第1のデジタル信号の少なくとも一部の2つ以上のコピーを生成するように構成されている複製器を備える。ヘッドエンドシステムは、オプションで、第1のデジタル信号の透かしを入れられたコピーを取得するために、それぞれのコピーに透かしを挿入するように構成されている1つまたは複数の透かし挿入モジュールをさらに備え、透かしは、それぞれのコピーごとに異なる。ヘッドエンドシステムは、第1のデジタル信号のスクランブルを掛けられたコピーを取得するために、それぞれのコピーにスクランブルを掛けるように構成されている1つまたは複数のスクランブラをさらに備え、それぞれのコピーは、別々にスクランブルを掛けられる。ヘッドエンドシステムは、第2のデジタル信号を取得するために、スクランブルを掛けられたコピーを結合するように構成されている結合器をさらに備え、スクランブルを掛けられたコピーは、第1のデジタル信号の2つ以上のコピーのうちの1つに関連しているとは識別できない。
【0020】
本発明の一態様によれば、上述の機能のうちの1つまたは複数を有するヘッドエンドシステムで使用するための方法が提案される。この方法は、第1のデジタル信号の少なくとも一部の2つ以上のコピーを生成するステップを含む。この方法は、オプションで、第1のデジタル信号の透かしを入れられたコピーを取得するために、それぞれのコピーに透かしを挿入するステップをさらに含み、透かしは、それぞれのコピーごとに異なる。この方法は、第1のデジタル信号のスクランブルを掛けられたコピーを取得するために、それぞれのコピーにスクランブルを掛けるステップをさらに含む。それぞれのコピーは、別々にスクランブルを掛けられる。この方法は、第2のデジタル信号を取得するために、スクランブルを掛けられたコピーを結合するステップをさらに含み、スクランブルを掛けられたコピーは、第1のデジタル信号の2つ以上のコピーのうちの1つに関連しているとは識別できない。
【0021】
スクランブルを掛けられたコピーは、第1のデジタル信号の2つ以上のコピーのうちの1つに関連しているとは識別できない。これは、例えば、PESパケットの2つのコピーが、同一のPIDを有することを意味する。結果として、PESパケットから、それらがコピーであることを導き出すことは不可能であり、PESパケットの受信機は、すべてのコピーを処理することになる。
【0022】
第2のデジタル信号においては、処理されたコピーは、第1のデジタル信号のコピーのうちの単一のものに関連しているとは識別できない。したがって、第2のデジタル信号においては、処理されたコピーは、例えば、PID切替え技術とは対照的にコピーであるとは識別され得ない。第2のデジタル信号は、いずれのコピーをも含んでいないように思われる。
【0023】
有意な出力は、例えば、テレビジョン出力におけるビデオ出力、オーディオ出力、EPG出力、またはビデオとオーディオとの結合など、エンドユーザの機器への表示に向けてデコード可能な出力である。有意でない出力は、エンドユーザの機器への表示に向けてデコード不可能な出力であり、必須情報が、有意でない出力には不足しているからである。このような必須情報の例は、PESパケットペイロードをデコードするのに必要なPESパケットヘッダ情報である。別の例は、ビデオ符号化用に使用されるIフレーム、Pフレーム、またはBフレームのデータ要素など、PESパケットペイロードにおけるMPEG-2のデータ要素である。
【0024】
ヘッドエンドシステムによって、このようにして生成された第2のデジタル信号は、受信機が、第2のデジタル信号における、例えばPIDによるコピーの識別の必要なしに、第2のデジタル信号を受信し、処理することを可能にする。受信機のエラーハンドリング性能は、1つのコピーのみが受信機の出力において使用されることを確実にする。そのエラーハンドリング性能が典型的に、受信機に利用可能であるために、有利には、受信機には、本発明により第2のデジタル信号を処理するための更新が必要ない。
【0025】
エラーハンドリング性能は、例えば、1つの復号キーを受信機に使用させることによってトリガされて、すべてのコピーのスクランブルを解き、結果的に、1つのコピーは正しくスクランブルを解かれ、他のコピーは誤ってスクランブルを解かれることになり、他のコピーにランダムデータをもたらす。
【0026】
オプションで挿入される透かしは有利には、ヘッドエンドシステムの制御下で、第2のデジタル信号の受信機の出力に示すことが可能である。
【0027】
請求項2の実施形態は有利には、コピーをパケット化してから、スクランブルを掛けることを可能にする。
【0028】
請求項3の実施形態は有利には、コピーをパケット化した後に、透かしが挿入されることを可能にする。
【0029】
請求項4の実施形態は有利には、第1のデジタル信号をパケット化してから、コピーを生成することを可能にする。
【0030】
請求項5の実施形態は有利には、コピーをパケット化してから、スクランブルを掛けることを可能にする。
【0031】
請求項6の実施形態は有利には、ヘッダを含むそれぞれパケット化されたコピーが、スクランブルを掛けられることを可能にする。
【0032】
請求項7および請求項13の実施形態は有利には、正しく、コピーのうちの1つのみのスクランブルを解くために、復号キーを受信機に供給することによって、ヘッドエンドシステムが、受信機においてどのコピーのスクランブルを解くべきかを制御することを可能にする。
【0033】
請求項8の実施形態は有利には、複数の復号キーが受信機に供給されることを可能にし、それらから、受信機は、選択データを使用して1つのキーを選択する。
【0034】
本発明の一態様によれば、上述の機能のうちの1つまたは複数を有するヘッドエンドシステムから、第2のデジタル信号およびエンタイトルメントメッセージを受信するための受信機が提案される。第2のデジタル信号は、第1のデジタル信号の2つ以上のスクランブルを掛けられたコピーを含み、スクランブルを掛けられたコピーは、第1のデジタル信号の2つ以上のコピーのうちの1つに関連しているとは識別できない。エンタイトルメントメッセージは、2つ以上の復号キーについてのキーデータを含む。エンタイトルメントメッセージは、選択データをさらに含む。受信機は、エンタイトルメントメッセージから、キーデータおよび選択データを取得するように構成されている復号化器を備える。受信機は、フィンガープリントベクトル(fingerprint vector)を含むメモリをさらに備える。受信機は、照合結果を取得するために、選択データをフィンガープリントベクトルと照合するように構成されている照合モジュールをさらに備える。受信機は、受信機が、スクランブルを掛けられたコピーのうちの1つを有意な出力へとスクランブルを解き、すべての他のスクランブルを掛けられたコピーを有意でない出力へとスクランブルを解くことを可能にするために、その照合結果に基づいてキーデータから1つの復号キーを取得するように構成されているキーセレクタをさらに備える。
【0035】
ヘッドエンドシステムから、このようにして受信された第2のデジタル信号は、受信機が、第2のデジタル信号におけるコピーの識別の必要なしに、第2のデジタル信号を受信し、処理することを可能にする。受信機のエラーハンドリング性能は、1つのコピーのみが受信機の出力において使用されることを確実にする。エラーハンドリング性能は、1つの復号キーを受信機に使用させることによってトリガされて、すべてのコピーのスクランブルを解き、結果的に、1つのコピーは正しくスクランブルを解かれ、他のコピーは誤ってスクランブルを解かれることになり、他のコピーにランダムデータをもたらす。
【0036】
本発明の一態様によれば、上述の機能のうちの1つまたは複数を有するヘッドエンドシステムから、第2のデジタル信号およびエンタイトルメントメッセージを受信するための受信機で使用するためのスマートカードが提案される。第2のデジタル信号は、第1のデジタル信号の2つ以上のスクランブルを掛けられたコピーを含む。スクランブルを掛けられたコピーは、第1のデジタル信号の2つ以上のコピーのうちの1つに関連しているとは識別できない。エンタイトルメントメッセージは、2つ以上の復号キーについてのキーデータを含む。エンタイトルメントメッセージは、選択データをさらに含む。スマートカードは、受信機からエンタイトルメントメッセージを受信するように構成されている入力モジュールを備える。スマートカードは、エンタイトルメントメッセージから、キーデータおよび選択データを取得するように構成されている復号化器をさらに備える。スマートカードは、フィンガープリントベクトルを含むメモリをさらに備える。スマートカードは、照合結果を取得するために、選択データをフィンガープリントベクトルと照合するように構成されている照合モジュールをさらに備える。スマートカードは、受信機が、スクランブルを掛けられたコピーのうちの1つを有意な出力へとスクランブルを解き、すべての他のスクランブルを掛けられたコピーを有意でない出力へとスクランブルを解くことを可能にするために、その照合結果に基づいてキーデータから1つの復号キーを取得するように構成されているキーセレクタをさらに備える。
【0037】
本発明の一態様によれば、上述の機能のうちの1つまたは複数を有するスマートカードで使用するための方法が提案される。この方法は、受信機から、エンタイトルメントメッセージを受信するステップを含む。エンタイトルメントメッセージは、2つ以上の復号キーについてのキーデータを含む。エンタイトルメントメッセージは、選択データをさらに含む。この方法は、キーデータおよび選択データを取得するために、エンタイトルメントメッセージを復号化するステップをさらに含む。この方法は、メモリからフィンガープリントベクトルを読み取るステップをさらに含む。この方法は、照合結果を取得するために、選択データをフィンガープリントベクトルと照合するステップをさらに含む。この方法は、受信機が、デジタル信号の第1のスクランブルを掛けられたコピーを有意な出力へとスクランブルを解き、デジタル信号の第2のスクランブルを掛けられたコピーを有意でない出力へとスクランブルを解くことを可能にするために、その照合結果に基づいてキーデータから1つの復号キーを取得するステップをさらに含む。
【0038】
ヘッドエンドシステムから受信機にこのようにして受信された第2のデジタル信号は、受信機が、第2のデジタル信号におけるコピーの識別の必要なしに、第2のデジタル信号を受信し、処理することを可能にする。受信機のエラーハンドリング性能は、1つのコピーのみが受信機の出力において使用されることを確実にする。エラーハンドリング性能は、スマートカードによって供給される1つの復号キーを受信機に使用させることによってトリガされて、すべてのコピーのスクランブルを解き、結果的に、1つのコピーは正しくスクランブルを解かれ、他のコピーは誤ってスクランブルを解かれることになり、他のコピーにランダムデータをもたらす。
【0039】
本発明の一態様によれば、上述の機能および利点のうちの1つまたは複数を有するヘッドエンドシステムと、上述の機能および利点のうちの1つまたは複数を有する1つまたは複数の受信機とを備える限定受信システムが提案される。
【0040】
本発明の一態様によれば、上述の機能および利点のうちの1つまたは複数を有するヘッドエンドシステムと、上述の機能および利点のうちの1つまたは複数を有する1つまたは複数の受信機と、上述の機能および利点のうちの1つまたは複数を有する1つまたは複数のスマートカードとを備える限定受信システムが提案される。
【0041】
本発明の一態様によれば、第2のデジタル信号において受信される2つ以上のスクランブルを掛けられたコピーから、1つのコピーを取得するための受信機におけるエラーハンドラの使用法が提案される。第2のデジタル信号は、上述の機能のうちの1つまたは複数を有するヘッドエンドシステムから受信される。スクランブルを掛けられたコピーは、第1のデジタル信号の2つ以上のコピーのうちの1つに関連しているとは識別できない。受信機は、復号キーを使用して2つ以上のスクランブルを掛けられたコピーのスクランブルを解いて、それによってスクランブルを掛けられたコピーのうちの1つを有意な出力へとスクランブルを解き、すべての他のスクランブルを掛けられたコピーを有意でない出力へとスクランブルを解くように構成されている。エラーハンドラは、有意でない出力を破棄するように構成されている。
【0042】
受信機に受信される第2のデジタル信号は有利には、第2のデジタル信号におけるコピーの識別の必要なしに、処理される。受信機のエラーハンドラは、1つのコピーのみが受信機の出力において使用されることを確実にする。エラーハンドラは、1つの復号キーを受信機に使用させることによってトリガされて、すべてのコピーのスクランブルを解き、結果的に、1つのコピーは正しくスクランブルを解かれ、他のコピーは誤ってスクランブルを解かれることになり、他のコピーにランダムデータをもたらす。
【0043】
本明細書において以降、本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施形態は、本発明に対する保護の範囲を限定しているとは解釈し得ないことを理解すべきである。
【0044】
本発明の態様は、図面に示す例示的な実施形態を参照することによって、さらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の例示的な実施形態のヘッドエンドシステムの基本要素を示し、単一のソースから生じたデジタル信号が処理される図である。
【図2】本発明の例示的な実施形態のヘッドエンドシステムを示し、2つのソースからのデジタル信号が処理され、多重化される図である。
【図3】本発明の例示的な実施形態のヘッドエンドシステムを示し、デジタル信号のコピーが、透かしを入れられた後にパケット化される図である。
【図4】本発明の例示的な実施形態のヘッドエンドシステムを示し、デジタル信号のコピーが、透かしを入れられた後にパケット化され、透かしを入れられたデータパケットが、より小さいデータパケットに変換されてからスクランブルを掛けられる図である。
【図5】本発明の例示的な実施形態のヘッドエンドシステムを示し、デジタル信号のコピーが、パケット化されてから透かしを入れられる図である。
【図6】本発明の例示的な実施形態のヘッドエンドシステムを示し、デジタル信号のコピーが、パケット化されてから透かしを入れられ、透かしを入れられたデータパケットが、より小さいデータパケットに変換されてからスクランブルを掛けられる図である。
【図7】本発明の例示的な実施形態のヘッドエンドシステムを示し、デジタル信号が、パケット化されてからコピーされる図である。
【図8】本発明の例示的な実施形態のヘッドエンドシステムを示し、デジタル信号が、パケット化されてからコピーされ、透かしを入れられたデータパケットが、より小さいデータパケットに変換されてからスクランブルを掛けられる図である。
【図9】本発明の例示的な実施形態におけるデータパケットの変換を示し、データパケットは、より小さいデータパケットに変換される図である。
【図10】PESパケットが、ヘッドエンドシステムおよび受信機で、処理の種々の段階において、いかにして処理可能であるかの例を示す図である。
【図11】本発明の例示的な実施形態のスマートカードを示す図である。
【図12】本発明の例示的な実施形態のスマートカードを示す図である。
【図13】本発明の例示的な実施形態の限定受信システムを示す図である。
【図14】本発明の例示的な実施形態のヘッドエンドシステムによって実行される方法のステップを示す流れ図である。
【図15】本発明の例示的な実施形態のスマートカードによって実行される方法のステップを示す流れ図である。
【図16】種々の受信機における同期点の種々のシーケンスの例を示す図である。
【図17】受信機におけるPESストリームを処理する従来技術の例を示す図である。
【図18】受信機がそれから、単一のエレメンタリストリームを形成することが可能な3つのPIDストリームの従来技術の例を示す図である。
【図19】受信機におけるPID切替えの従来技術の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は、既存の、および将来の受信機のエラーハンドリング性能を使用する。エラーハンドリング性能は典型的には、ソフトウェハ実装型の、またはハードウェア実装型の受信機のエラーハンドリングモジュールに実装される。エラーハンドリング性能は典型的には、ヘッドエンドシステムと受信機との間の伝送エラーを克服するために使用され、それらのエラーは、データストリームにおけるデータ要素の紛失、またはデータ構造の損傷を招くことがあり得、さらには受信機におけるデータストリームの追加的な処理を不可能にする。
【0047】
短いシーケンスのエラーがある場合、既知のエラーハンドリングモジュールは、可能な限り迅速にデコードを再開して、エンドユーザが気づくことがあり得るアナログ出力でのいずれの劣化をも抑えようと試みることになる。データストリームにおける1つまたは複数のデータパケットの損失が、データストリームの処理に一時的な中断をもたらし、エラーハンドリングモジュールをトリガして、コンテンツストリームにおける同期点の検出後のデータストリームの処理を再開するエラーハンドリング技術を適用する。
【0048】
MPEG-2受信機におけるエラーハンドリングモジュールは典型的には、同期点としてPESヘッダを使用する。エラーハンドリングモジュールは、国際規格ISO/IEC13818-1:2000によって規定されるように、PESヘッダの開始を示す所定の「packet_start_code_prefix」ビットパターンについて、オーディオPESおよび/またはビデオPESをサーチする。「packet_start_code_prefix」ビットパターンが検出された場合、PESはその点以降、処理されることになる。
【0049】
本発明は、受信機を更新する必要なしに、オーディオPESまたはビデオPESなど、データストリームの一部の複数のバリアントの分散を可能にする。
【0050】
本発明の利点のうちの1つは、限定受信システムに透かし機能を可能にすることであり、ヘッドエンドシステムは、受信機を更新する必要なしに、特定の受信機におけるフィンガープリントの生成を制御することが可能である。
【0051】
透かしは、観察する人による検出がほぼ不可能であるようなデータストリームに、情報信号を隠蔽することに対処するステガノグラフィの技術分野に属する。透かし情報は、ほぼ除去することが不可能であり、オーディオおよび/またはビデオ信号など、データストリームからデコードされるアナログ信号の操作には影響を受けない。
【0052】
データストリームは典型的には、例えば、オーディオおよび/またはビデオストリーム、あるいはデジタルTVストリームなど、1つまたは複数のコンテンツストリームを含む。典型的には、透かしは、受信機でのデコード後にアナログ領域において検出可能になるように、送信器においてコンテンツストリームに挿入される。
【0053】
透かしに含まれる情報は概して、スタジオからブロードキャスタへの経路を記録するように働く。透かしは、ブロードキャストヘッドエンドで加えられるか、またはスタジオでビデオコンテンツ権利者から取得されるアナログコピーに加えられるので、典型的には、追加的なダウンストリーム情報は含まれ得ない。
【0054】
フィンガープリントは、ブロードキャスト系統(broadcast chain)のさらに下方で挿入される特別なタイプの透かしである。フィンガープリントは典型的には、データストリームの受信機を識別する情報を含む。フィンガープリント情報は、広範囲の法医学的用途で使用される。
【0055】
既知の透かしソリューションは、特定のハードウェアおよび/またはソフトウェアの機能の使用を受信機に求める。既に配置された受信機の場合、透かし性能の追加には、ファームウェアに対する更新が必要である。既存の受信機は、透かし機能を実装する技術的なハードウェア性能を持っていないことがあり得、または例えば、受信機の製造業者からのサポート不足のために、新規ファームウェアを作成することはできないことがあり得る。
【0056】
図1は、本発明の例示的な実施形態のヘッドエンドシステム1の基本要素を示し、単一のソースから生じたデジタル信号が処理可能である。矢印は、ヘッドエンドシステムの要素間のデータフローを示している。ヘッドエンドシステム1は、外部のソースからデジタル信号を受信する。デジタル信号は、例えば、デジタルオーディオ信号またはデジタルビデオ信号である。あるいは、デジタル信号は、ヘッドエンドシステムの中から、例えば、ストレージ(図示せず)から、またはアナログオーディオ信号もしくはアナログビデオ信号など、アナログ信号をデジタル信号に符号化する符号化器(図示せず)から生じる。複製器12が、デジタル信号の少なくとも一部のいくつかのコピーを作成する。それぞれのコピーは、デジタル信号の一部のバリアントに処理されることになる。図1においては、ヘッドエンドシステム1は、2つのコピーを生成し、処理するために構成されている。3つ以上のコピーを生成し、処理するためのヘッドエンドシステムを構成することが可能である。
【0057】
デジタル信号のそれぞれのコピーは、デジタル信号にスクランブルを掛けるためのスクランブラ14a、14bに供給される。任意の既知のスクランブルプロセスが、スクランブラ14a、14bで使用可能である。スクランブルは、デジタル信号のそれぞれのコピーごとに異なる。1つまたは複数のデジタル信号に、スクランブルを掛けないヘッドエンドシステム1を構成することが可能である。
【0058】
別々に、コピーにスクランブルを掛けるために、コピーは、別々の暗号スキームを使用して、および/または別々の暗号キーを使用してスクランブル可能である。デジタル信号にスクランブルを掛けるために使用されるCWは、例えば、デジタル信号のそれぞれのコピーごとに異なる。
【0059】
マルチプレクサ15は、デジタル信号の処理されたコピーをコンテンツストリームに多重化する。コンテンツストリームにおいては、処理されたコピーは、第1のデジタル信号のコピーのうちの単一のものに関連しているとは識別できない。したがって、コンテンツストリームにおいては、処理されたコピーは、コピーであるとは識別され得ず、コンテンツストリームは、従来の暗号化ストリームであるように思われる。コンテンツストリームは、1つまたは複数の受信機に伝送またはブロードキャストされる。
【0060】
このようにしてヘッドエンドシステム1によって生成されたコンテンツストリームは、第1の暗号スキームを使用して、および/または第1の暗号キーにより、スクランブルを掛けられたデジタル信号の第1のコピーと、第1の暗号スキームとは異なる第2の暗号スキームを使用して、および/または第1の暗号キーとは異なる第2の暗号キーにより、スクランブルを掛けられたデジタル信号の第2のコピーとを含む。
【0061】
デジタル信号のそれぞれのコピーについて、オプションで、透かし挿入モジュール13a、13bは、デジタル信号の受信機でのデジタル信号のデコード後に、隠蔽信号をアナログ出力にもたらすことになる形態に、パケットの符号化を変更することによって、デジタル信号のコピーを処理する。このようにして挿入された透かしは、説明するように、受信機によって生成可能なより長いフィンガープリントシーケンスの一部を形成する。典型的には、複数のデジタル信号は、フィンガープリント全体を形成するように、ヘッドエンドシステム1によって処理される。
【0062】
例として、透かし挿入モジュール13aと、透かし挿入モジュール13bとはそれぞれ、単一ビットの透かしを生成して、フィンガープリントの一部としてデジタル信号のコピーに挿入する。デジタル信号の第1のコピーは、透かし挿入モジュール13aによってビット値「0」で挿入される。デジタル信号の第2のコピーは、透かし挿入モジュール13bによってビット値「1」で挿入される。両ビット値は、コピーされたデジタル信号の2つのそれぞれのインスタンスにおいて符号化されるので、受信機でのデジタル信号の選択的な処理(それによって、2つのコピーのうちの1つのみが正しくデコード可能になる)は、受信機のアナログ出力に、透かしとして意図されたビット値を埋め込む。フィンガープリントのように、より長いシーケンスのビットを生成するためには、複数のデジタル信号は、説明したように、透かしを入れられる。
【0063】
それぞれ透かしを入れられたデジタル信号は、デジタル信号のコピーのスクランブルに類似して、透かしを入れられたデジタル信号にスクランブルを掛けるためのスクランブラ14a、14bに供給される。
【0064】
このようにしてオプションの透かし用挿入モジュール13a、13bを含むヘッドエンドシステム1によって生成されたコンテンツストリームは、ビット値「0」で透かしを入れられ、第1の暗号スキームを使用して、および/または第1の暗号キーにより、スクランブルを掛けられたデジタル信号の第1のコピーと、ビット値「1」で透かしを入れられ、第1の暗号スキームとは異なる第2の暗号スキームを使用して、および/または第1の暗号キーとは異なる第2の暗号キーにより、スクランブルを掛けられたデジタル信号の第2のコピーとを含む。
【0065】
それぞれのスクランブラ14a、14bによって使用されるCWは、暗号キー生成器21、すなわち、CWの生成の場合ではCW生成器21において生成される。デジタル信号の1つのコピーのみのスクランブルを解くために、コンテンツストリームの受信機によって使用されることになるCWは、言わば既知の任意のやり方で、エンタイトルメントメッセージ生成器23によって、ECMなど、エンタイトルメントメッセージに安全に格納される。ECMは、ヘッドエンドシステムから受信機に伝送され、エンタイトルメントメッセージ生成器23から出る矢印でそれを示している。典型的には、受信機は、ECMをスマートカードに転送して、ECMからCWを抽出することになる。
【0066】
ECMが複数の受信機に伝送またはブロードキャストされるシナリオにおいては、ヘッドエンドシステムは、ECMにおけるデジタル信号のコピーにスクランブルを掛けるために使用されるすべてのCWを含むことが可能である。受信機および/またはスマートカードが、ECMから単一のCWを選択して、それによって、デコードされたアナログ信号に特定のフィンガープリントを生成することを可能にするために、選択データ生成器22が、選択データを生成し、それは、ECMに含まれる。この選択データにより、受信機またはスマートカードは、図11および図12の例において説明するように、ECMから特定のCWを選択する。
【0067】
暗号キー生成器21と、選択データ生成器22と、エンタイトルメントメッセージ生成器23とを備えるヘッドエンドシステム1の一部をCW制御部20として図1に示している。
【0068】
図2は、ヘッドエンドシステム1aの例を示し、2つのソースからのデジタル信号が処理可能であり、多重化可能である。図1に示すCW制御部20を図2には示していないが、典型的には、ヘッドエンドシステム1aの一部である。図2に示すヘッドエンドシステム1aは、2倍の図1のヘッドエンドシステムの要素を含む。第1のデジタル信号は、例えば、デジタルオーディオ信号であり、それは、図2の左上に示す第1の符号化器10によってアナログオーディオ信号から生成される。第2のデジタル信号は、例えば、デジタルビデオ信号であり、それは、図2の左下に示す第2の符号化器10によってアナログビデオ信号から生成される。
【0069】
図2の例においては、マルチプレクサ15によって生成されるコンテンツストリームのそれぞれは、パケット化器16によって、より小さいパケットにそれぞれパケット化される。これは、コンテンツストリームのより効率的な伝送を可能にする。処理され、パケット化されたコンテンツストリームはさらに、マルチプレクサ17で、データストリームに多重化されて、受信機に伝送またはブロードキャストされる。
【0070】
図3は、本発明の例示的な実施形態のヘッドエンドシステム1bを示し、デジタル信号のコピーがパケット化される。図1に示すCW制御部20を図3には示していないが、典型的には、ヘッドエンドシステム1bの一部である。矢印は、ヘッドエンドシステムの要素間のデータフローを示している。ヘッドエンドシステム1bは、デジタルオーディオ信号またはデジタルビデオ信号など、デジタル信号を処理するように構成されている。図3の例においては、デジタル信号は、ヘッドエンドシステムの中から、アナログオーディオ信号またはアナログビデオ信号など、アナログ信号をデジタル信号に符号化する符号化器10から生じる。複製器12が、デジタル信号の少なくとも一部のいくつかのコピーを作成し、それぞれのコピーをパケット化器11a、11bに転送する。オプションで、それぞれのコピーは、透かし挿入モジュール13a、13bによって処理されてから、パケット化される。図3においては、ヘッドエンドシステム1bは、2つのコピーを生成し、処理するために構成されている。3つ以上のコピーを生成し、処理するためのヘッドエンドシステムを構成することが可能である。
【0071】
オプションの透かし挿入モジュール13a、13bは、図1の例に類似して、デジタル信号のコピーを処理する。
【0072】
パケット化器11a、11bが、デジタル信号または透かしを入れられたデジタル信号を、それぞれヘッダとペイロードとを有する1つまたは複数のデータパケットにパケット化する。データパケットは、例えば、PESパケットである。
【0073】
PESパケットは、PESパケットのペイロードにスクランブルを掛けるためのスクランブラ14c、14dに供給される。任意の既知のスクランブルプロセスが、スクランブラ14c、14dで使用可能である。PESパケットにスクランブルを掛けるために使用される暗号スキーム、および/または暗号キーは、デジタル信号のそれぞれのコピーごとに異なる。1つまたは複数のPESパケットに、スクランブルを掛けないヘッドエンドシステム1bを構成することが可能である。スクランブルを掛けられたPESパケットの場合、PESパケットのPESヘッダにおけるスクランブル制御フィールドは、それに応じて、修正される。PESパケットのコピーのPIDは、同一が保たれる。
【0074】
マルチプレクサ15aは、デジタル信号の処理されたコピーをコンテンツストリームに多重化する。
【0075】
このようにして図3のヘッドエンドシステム1bによって生成されたコンテンツストリームは、オプションで、ビット値「0」で透かしを入れられ、第1の暗号スキームを使用して、および/または第1の暗号キーにより、スクランブルを掛けられたデジタル信号の第1のコピーからの第1のPESと、オプションで、例えばビット値「1」で透かしを入れられ、第1の暗号スキームとは異なる第2の暗号スキームを使用して、および/または第1の暗号キーとは異なる第2の暗号キーにより、スクランブルを掛けられたデジタル信号の第2のコピーからの第2のPESとを含む。
【0076】
コンテンツストリームは、オプションで、図2の例に類似してパケット化器16によって、より小さいパケットにさらにパケット化される。本明細書によって、PESマルチプレクサ15aによって生成されるPESパケットのストリームは、パケット化器モジュール16でTSパケットのストリームに変換可能である。オプションで、TSパケットの複数のストリームはさらに、図2の例に類似してマルチプレクサ17でTSデータストリームに多重化される。
【0077】
スクランブルを掛けられたPESパケットの受信機は、PESレベルのスクランブルの解除と適合できる可能性があるが、すべての受信機がPESレベルのスクランブルの解除をサポートするとは限らない。PESレベルのスクランブル解除が不可能な受信機が、スクランブルを掛けられたPESパケットを処理することを可能にするために、代替のスクランブルプロセスがヘッドエンドシステムで使用可能である。
【0078】
図4は、このような代替のスクランブルプロセスについて構成されている本発明の例示的な実施形態のヘッドエンドシステム1cを示している。ヘッドエンドシステム1cにおいては、PESヘッダを含むPESパケット全体が、スクランブルを掛けられる。代替のスクランブルプロセスは、ヘッドエンドシステム1cでのスクランブルをPESレベルで可能にし、受信機でのスクランブルの解除は、TSレベルで実行される。
【0079】
図3の例示的な実施形態に類似して、図4の例示的な実施形態においては、デジタル信号は、複製器12でコピーされ、それぞれのコピーは、(オプションの)透かし・スクランブル系統において処理される。図1に示すCW制御部20を図4には示していないが、典型的には、ヘッドエンドシステム1cの一部である。ヘッドエンドシステム1cにおいては、デジタル信号のコピーが、オプションで透かしを入れられた後に、第1のパケット化器11a、11bでPESパケットにパケット化される。このようにして作成されたPESパケットは、第2のパケット化器16a、16bで、TSパケットなど、より小さいデータパケットに変換される。すなわちPESヘッダを含むTSパケットのペイロードは、スクランブラ14e、14fでスクランブルを掛けられる。
【0080】
マルチプレクサ18は、デジタル信号のコピーのスクランブルを掛けられたTSパケットをコンテンツストリームに多重化する。コンテンツストリーム内で、デジタル信号のそれぞれのコピーのTSパケットは、一緒にグルーピングされる。マルチプレクサ18の出力はしたがって、例えば、デジタル信号の第1のコピーから、第1の透かしを入れられてスクランブルを掛けられたPESパケットをTSパケットペイロード内に含む第1の一連のTSパケットを含み、その後に、TSパケットペイロード内のデジタル信号の第2のコピーから、第2の透かしを入れられてスクランブルを掛けられたPESパケットをTSパケットペイロード内に含む第2の一連のTSパケットが続く。
【0081】
オプションで、TSパケットの複数のコンテンツストリームは、マルチプレクサ17でTSデータストリームに多重化される。
【0082】
図5は、本発明の例示的な実施形態のヘッドエンドシステム1dを示し、デジタル信号のコピーがパケット化されてから、透かしを入れられる。図1に示すCW制御部20を図5には示していないが、典型的には、ヘッドエンドシステム1dの一部である。矢印は、ヘッドエンドシステムの要素間のデータフローを示している。ヘッドエンドシステム1dは、デジタルオーディオ信号またはデジタルビデオ信号など、デジタル信号を処理するように構成されている。図5の例においては、デジタル信号は、ヘッドエンドシステムの中から、アナログオーディオ信号またはアナログビデオ信号など、アナログ信号をデジタル信号に符号化する符号化器10から生じる。複製器12が、デジタル信号の少なくとも一部のいくつかのコピーを作成し、それぞれのコピーをパケット化器11c、11dに転送する。図5においては、ヘッドエンドシステム1dは、2つのコピーを生成し、処理するために構成されている。3つ以上のコピーを生成し、処理するためのヘッドエンドシステムを構成することが可能である。
【0083】
パケット化器11c、11dは、デジタル信号を、それぞれヘッダおよびペイロードを有する1つまたは複数のデータパケットにパケット化する。データパケットは、例えば、PESパケットである。
【0084】
透かし挿入モジュール13c、13dは、PESパケットの受信機でのPESパケットのデコード後に、隠蔽信号がアナログ出力にもたらされることになるように、PESパケットのペイロードを変更することによって、PESパケットに透かしを加える。このようにして挿入された透かしは、説明するように、受信機によって生成可能なより長いフィンガープリントシーケンスの一部を形成する。典型的には、複数のPESパケットは、フィンガープリント全体を形成するように、ヘッドエンドシステム1dによって処理される。
【0085】
例として、透かし挿入モジュール13cと、透かし挿入モジュール13dとはそれぞれ、単一ビットの透かしを生成して、フィンガープリントの一部としてデジタル信号のコピーのPESパケットのペイロードに挿入する。デジタル信号の第1のコピーの第1のPESパケットペイロードは、透かし挿入モジュール13cによってビット値「0」で挿入される。デジタル信号の第2のコピーの第2のPESパケットペイロードは、透かし挿入モジュール13dによってビット値「1」で挿入される。両ビット値は、PESパケットの2つのそれぞれのインスタンスにおいて透かしを入れられるので、受信機でのPESパケットの選択的な処理(それによって、2つのコピーのうちの1つのみが正しくデコード可能になる)は、受信機のアナログ出力に、透かしとして意図されたビット値を埋め込む。フィンガープリントのように、より長いシーケンスのビットを生成するためには、複数のPESパケットは、説明したように、透かしを入れられる。
【0086】
透かしを入れられたPESパケットは、PESパケットのペイロードにスクランブルを掛けるためのスクランブラ14c、14dに供給される。任意の既知のスクランブルプロセスが、スクランブラ14c、14dで使用可能である。PESパケットにスクランブルを掛けるために使用される暗号スキームおよび/または暗号キーは、デジタル信号のそれぞれのコピーごとに異なる。1つまたは複数のPESパケットに、スクランブルを掛けないヘッドエンドシステム1dを構成することが可能である。スクランブルを掛けられたPESパケットの場合、PESヘッダにおけるスクランブル制御フィールドは、それに応じて、修正される。
【0087】
マルチプレクサ15aは、デジタル信号の処理されたコピーをコンテンツストリームに多重化する。
【0088】
図3のヘッドエンドシステム1bによって生成されるコンテンツストリームに類似して、このようにして図5のヘッドエンドシステム1dによって生成されたコンテンツストリームは、例えば、ビット値「0」で透かしを入れられ、第1の暗号スキームを使用して、および/または第1の暗号キーにより、スクランブルを掛けられたデジタル信号の第1のコピーからの第1の一連のPESパケットと、例えば、ビット値「1」で透かしを入れられ、第1の暗号スキームとは異なる第2の暗号スキームを使用して、および/または第1の暗号キーとは異なる第2の暗号キーにより、スクランブルを掛けられたデジタル信号の第2のコピーからの第2の一連のPESパケットとを含む。
【0089】
オプションで、コンテンツストリームはさらに、図2の例に類似してパケット化器16によって、より小さいパケットにパケット化される。本明細書によって、PESマルチプレクサ15aによって生成されるPESパケットのストリームは、パケット化器モジュール16でTSパケットのストリームに変換可能である。オプションで、TSパケットの複数のストリームはさらに、図2の例に類似してマルチプレクサ17でTSデータストリームに多重化される。
【0090】
図6は、代替のスクランブルプロセスについて構成されている本発明の例示的な実施形態のヘッドエンドシステム1eを示し、PESヘッダを含むPESパケット全体が、スクランブルを掛けられる。図1に示すCW制御部20を図6には示していないが、典型的には、ヘッドエンドシステム1eの一部である。代替のスクランブルプロセスは、ヘッドエンドシステム1eにおけるスクランブルをPESレベルで、および受信機におけるスクランブル解除をTSレベルで可能にする。
【0091】
図5の例示的な実施形態に類似して、図6においては、デジタル信号は、複製器12でコピーされ、それぞれのコピーは、パケット化・透かし・スクランブル系統において処理される。それぞれの系統は、第1のパケット化器11c、11dにおけるPESパケットへのデジタル信号のパケット化から開始し、その後、透かし挿入モジュール13c、13dによる透かしの挿入が続く。
【0092】
ヘッドエンドシステム1eにおいては、このようにして作成された透かしを入れられたPESパケットはさらに、第2のパケット化器16a、16b、スクランブラ14e、14f、PESレベルのマルチプレクサ18、および図4の例において説明したTSレベルのマルチプレクサ17によって処理される。
【0093】
図7は、本発明の例示的な実施形態のヘッドエンドシステム1fを示し、デジタル信号がパケット化されてから、コピーされる。図1に示すCW制御部20を図7には示していないが、典型的には、ヘッドエンドシステム1fの一部である。矢印は、ヘッドエンドシステムの要素間のデータフローを示している。ヘッドエンドシステム1fは、デジタルオーディオ信号またはデジタルビデオ信号など、デジタル信号を処理するように構成されている。図7の例においては、デジタル信号は、ヘッドエンドシステムの中から、アナログオーディオ信号またはアナログビデオ信号など、アナログ信号をデジタル信号に符号化する符号化器10から生じる。
【0094】
パケット化器11eは、デジタル信号を、それぞれヘッダおよびペイロードを有するPESパケットなどの1つまたは複数のデータパケットにパケット化する。
【0095】
複製器12aが、1つまたは複数のPESパケットのいくつかのコピーを作成する。図7においては、ヘッドエンドシステム1fは、2つのコピーを生成し、処理するために構成されている。3つ以上のコピーを生成し、処理するためのヘッドエンドシステムを構成することが可能である。
【0096】
図7のヘッドエンドシステム1fにおいては、オプションで、PESパケットのそれぞれのコピーは、透かし挿入モジュール13c、13dで処理される。PESパケットのそれぞれのコピーは、スクランブラ14c、14d、PESレベルのマルチプレクサ15a、第2のパケット化器16、および図5におけるヘッドエンドシステム1dについて説明したTSレベルのマルチプレクサ17で処理される。
【0097】
図8は、代替のスクランブルプロセスについて構成されている本発明の例示的な実施形態のヘッドエンドシステム1gを示し、PESヘッダを含むPESパケット全体が、スクランブルを掛けられる。図1に示すCW制御部20を図8には示していないが、典型的には、ヘッドエンドシステム1gの一部である。代替のスクランブルプロセスは、ヘッドエンドシステム1gにおけるスクランブルをPESレベルで、および受信機におけるスクランブルの解除をTSレベルで可能にする。
【0098】
図7の例示的な実施形態に類似して、図8においては、デジタル信号は、第1のパケット化器11eでPESパケットにパケット化される。PESパケットは、複製器12aでコピーされ、それぞれのコピーは、(オプションの)透かし・スクランブル系統において処理される。
【0099】
ヘッドエンドシステム1gにおいては、このようにして作成されたPESパケットはさらに、第2のパケット化器16a、16b、スクランブラ14e、14f、PESレベルのマルチプレクサ18、および図4の例において説明したTSレベルのマルチプレクサ17によって処理される。
【0100】
デジタル信号の選択された一部について、例えば、オンディマンドで、または所定の時間フレーム内で、デジタル信号またはPESパケットの一部分のみを複製し、(オプションで)透かしを入れ、スクランブルを掛けるヘッドエンドシステム1、1a、1b、1c、1d、1e、1f、1gを構成することが可能である。これは、コンテンツストリームの帯域幅を抑制するが、すべてのパケットがコンテンツストリームにコピーを有するわけではなくなる。
【0101】
図9は、PESパケットが、第2のパケット化器モジュール16、16a、16bによって、いかにして複数のTSパケットにパケット化可能であるかを示している。図9は、左側から右側に時間軸を有するとは解釈すべきではなく、TSパケットは典型的には、TSパケットの単一のストリームを形成するように連結されている。
【0102】
TSパケットは、一定の所定のペイロード長を有する。PESパケットを複数のより小さいTSパケットに適合させるために、PESパケットは、より小さいパーツに分割される。PESパケットは、PESヘッダP1と、PESペイロードP2とを有する。PESペイロードP2は、複数の等しい大きさのパーツと、残りのパーツとに分割される。図9の例においては、PESペイロードP2は、2つの等しい大きさのパーツP2aおよびP2bと、残りのパーツP2cとに分割される。パーツP2aおよびP2bは、TSパケットの所定のペイロード長に等しい長さを有する。
【0103】
PESパケットのヘッダP1は、TSヘッダT1を有する第1のTSパケットのペイロード内に置かれる。ヘッダが所定のペイロード長より小さい場合には、PESヘッダは、言わば既知のやり方で、スタッフビットsで詰められる。ヘッダがペイロードの大きさより大きい場合、ヘッダは、複数のTSパケットに分離され、分割され、必要に応じて、スタッフビットで詰められる。第2のTSパケットは、TSヘッダT2とともに生成され、ペイロードとしてP2aを有する。第3のTSパケットは、TSヘッダT3とともに生成され、ペイロードとしてP2bを有する。第4のTSパケットは、TSヘッダT4とともに生成され、ペイロードとしてP2cを有する。残りのパーツP2cは、所定のペイロード長の大きさと一致させるために、言わば既知のやり方で、スタッフビットsで詰められる。PESパケットがスクランブルを掛けられた場合、PESパケットのヘッダP1のスクランブル制御フィールドは、すべてのTSパケットヘッダT1、T2、T3、T4にコピーされる。これは、TSパケットのペイロードがスクランブルを掛けられることを、TSパケット受信機が検出することを可能にする。
【0104】
単一のPESパケットを運ぶTSパケットのグループは、トランスポートストリームスクランブラ14e、14fによりスクランブルを掛けられ、すなわち、それぞれのTSパケットのペイロードは、スクランブルを掛けられる。スクランブルを掛けられたTSパケットは次いで、他のPESパケット処理系統からのTSパケットと、PESレベルのマルチプレクサ18で多重化される。すべてのTSパケットは単一のストリームを形成するので、PESレベルのマルチプレクサ18は、PESパケットを含むTSパケットのグルーピングを保つ必要がある。本明細書の第2のパケット化器16a、16bは、例えば、既知のpayload_unit_start_indicatorのビットを第1のTSパケットヘッダT1に追加し、マルチプレクサ18が、新規一連のTSパケットの開始を検出することを可能にする。あるいは、第2のパケット化器16a、16bは、PESのグルーピング情報をマルチプレクサ18に供給して、PESパケットをトランスポートするすべてのTSパケットが一緒の状態のままであることを確実にする。TSパケットのグルーピングは、後述するように、受信機で、所望のエラーハンドリング処理をトリガするために使用可能である。
【0105】
図1〜図8の例示的な実施形態に示すように、ヘッドエンドシステムは、別々に、デジタル信号のコピーのそれぞれにスクランブルを掛ける。コピーは、コンテンツストリームに多重化され、コンテンツストリームは、1つまたは複数の受信機に供給される。ある受信機は、デジタル信号のコピーのうちの1つの復号化を可能にする特定の暗号スキームにより実装され、かつ/またはデジタル信号のコピーのうちの1つのスクランブルを解くために1つのCWのみが備わっている。したがって、その受信機に対して、コンテンツストリームの一部は、知られていない暗号スキームにおいて、および/または「間違いの」CWにより、スクランブルを掛けられる。受信機において、これは、正しくスクランブルを解かれなかった「ランダム」データ部によりスクランブルを解かれたコンテンツストリームの生成をもたらし、それは、受信機におけるエラーハンドリング機能をトリガすることになる。典型的には、導入されるエラーは、アナログ出力に検出可能なイベントをもたらす。アナログ出力におけるエラーの存在または不在は、バイナリ「0」または「1」と解釈可能である。アナログ出力の歪みは、透かしの非常に大まかな近似を形成する。
【0106】
図1〜図8の例示的な実施形態に示すように、オプションで、ヘッドエンドシステムは、デジタル信号のそれぞれのコピーに透かしを入れる。受信機でのエラーハンドリングは、知られていない暗号スキーム、および/または誤ったCWにより、コンテンツストリームの一部のスクランブルを解くことによって生じる、より長いエラーシーケンス全体にわたってスキップし、次の有効同期点において、例えば、次の有効PESヘッダにおいて、スクランブル解除を再開する。受信機でスクランブルを解いた後のアナログ出力は、典型的に人には検出不可能なフィンガープリントを形成する透かしを含む。
【0107】
受信機でのエラーハンドリングは典型的には、デジタル信号のアナログ信号へのデコードにかかわる解凍モジュール内に実装される。エラーハンドリングモジュールが、圧縮構文に従わない、より長いシーケンスのビットを検出した場合、エラーハンドラは、それが、次の有効同期点を検出するまで、データをスキップすることになる。エラーハンドラは次いで、通常のデコードを再開する解凍モジュールに制御を戻すことになる。
【0108】
エラーハンドリングは、次の同期点にスキップするので、それは、フィンガープリンティングのスキームが同期点と同調しているパケットに関して動作する場合、有益である。MPEG-2におけるPESパケットは、このような同期点を有する。類似するパケット化が、他の圧縮フォーマット、すなわちMPEG-2以外により可能である。PESレベルで透かしスキームを動作することは、別個のパケットとして伝送される2つのPESパケットの作成を可能にし、それぞれのコピーは、別のCWによりスクランブルを掛けられる。受信機においては、単一のCWのみが両方のパケットのスクランブルを解くために使用され、1つの適切に符号化されたPESパケットと、ランダムデータから成る1つのPESパケットとをもたらす。エラーハンドリングモジュールは、ランダムデータを有するPESパケット全体にわたってスキップすることになり、したがって、解凍モジュールは、適切にスクランブルを解かれたPESパケットのみを受信する。効果的には、エラーハンドリングモジュールは、ストリームから、別のCWにより暗号化されるPESパケットを取り除いている。
【0109】
受信機におけるエラーハンドリング機能のこの驚くべき成果を使用して、同一のPESパケットに対して2つの代替の符号化をもたらし、それぞれのPESパケットはオプションで、別の透かしパターンを含む。別のCW値によりPESパケットのそれぞれにスクランブルを掛けることにより、受信機は、すべての知られていないPESパケットをストリームから選択的に削除することが可能になる。
【0110】
図10は、PESパケットが、ヘッドエンドシステム1fで、および受信機で、処理の種々の段階において、いかにして処理されるかの例を示している。ヘッドエンドシステム1fにおいて、処理されてないPESストリームの形態でパケット化されたデジタル信号をラインIに示し、複数のPESパケットPES1、PES2、PES3、およびPES4を含む。それぞれのPESパケットPES1、PES2、PES3、およびPES4は、ラインIIに示す2つのコピーに複製される。ヘッドエンドシステムに、それぞれのPESパケットの3つ以上のコピーを作成させることが可能である。
【0111】
図10の例においては、複製されたPESパケットのそれぞれのインスタンスは、別の透かしWM0、WM1を符号化するように処理される。結果生じる透かしを入れられたPESパケットをラインIIIに示す。図10の例においては、それぞれのPESパケットは、偶数(「0」)、および奇数(「1」)の透かしを入れられたインスタンスを有する。バイナリ値「0」で透かしを入れられたPESパケットPES1のコピーをPES1,0として、ラインIIIに示す。バイナリ値「1」で透かしを入れられたPESパケットPES1のコピーをPES1,1として、ラインIIIに示す。同様に、第2、第3、および第4のコピーは、ラインIIIに示すように透かしを入れられる。
【0112】
PESパケットのそれぞれの透かしを入れられたインスタンスは、PESのそれぞれのコピーごとに異なるCWによりスクランブルを掛けられる。結果生じるスクランブルを掛けられたPESパケットをラインIVに示す。図10の例においては、偶数の透かしWM0を有するPESパケットは、上付き文字「0」、例えば、PES01,0によってラインIVに示される対応する偶数制御語CW0を使用して、スクランブルを掛けられる。奇数の透かしWM1を有するPESパケットは、上付き文字「1」、例えば、PES11,0によってラインIVに示される対応する奇数制御語CW1を使用して、スクランブルを掛けられる。
【0113】
透かしを入れられ、スクランブルを掛けられたPESパケットの受信機への伝送後(図9に示すPESパケットのTSパケットへのパケット化を含む場合がある)、PESパケットは、受信機によって受信され、処理される。受信機がPESパケットのスクランブルを解くことを可能にするために、ヘッドエンドシステムは、例えば、ECMなどの別個のエンタイトルメントメッセージにおけるCWを受信機に伝送する。受信されたCW値に応じて、PESパケットの1つのコピーは、適切にスクランブルを解かれ、他のコピーは、ランダムデータへとスクランブルを解く。受信機でのスクランブル解除後の結果をラインVに示す。図10の例においては、受信機は、CW0を使用してPES1,0を取得することはできたが、PES1,1は、CW0を使用して取得することはできなかった。したがって、CW0でのPES1,1のスクランブル解除は、ランダムデータをもたらす。
【0114】
受信機におけるデスクランブラによって生成されたランダムデータは、受信機におけるエラーハンドリングモジュールをトリガして、次の正しくスクランブルを解かれたPESパケットを待ち、ランダムデータ全体にわたってスキップする。次のPESパケットが検出された場合、受信機は、受信されたPESパケットの処理を再開する。効果的には、本明細書によって、ランダムデータは、エラーハンドラによって、スクランブルを解かれたデータから取り除かれる。受信機で結果生じるPESストリームをラインVIに示す。結果生じるPESストリームは、エンドユーザの装置への表示に向けて、例えば、ビデオ出力、オーディオ出力、EPG出力、またはテレビジョン出力におけるビデオとオーディオとの組合せなど、出力を生成するために、デコーダに入力可能である。
【0115】
エラーハンドラがアクティブである結果として、スクランブルを解かれた出力における歪みの検出は、バイナリパターンを構成するために使用可能である。このような歪みは典型的には、人の観察では検出できず、検出装置により検出可能である。それぞれの正しくスクランブルを解かれたPESパケットは、例えば、バイナリ「1」に対応し、それぞれの誤ってスクランブルを解かれたPESパケットは、例えば、バイナリ「0」に対応する。この場合においては、フィンガープリントが生成されることを可能にするために、透かしが、PESパケットにおいて符号化される必要はない。
【0116】
図10の例においては、透かしは、ヘッドエンドシステムによって、PESパケットに挿入されており、それは、フィンガープリントが受信機のアナログ出力において検出されることを可能にする。結果生じるPESストリーム、すなわち、PES1,0、PES2,1、PES3,0、およびPES4,0をデコードすることにより、バイナリ値「0100」を有するフィンガープリントを含むアナログ信号が生じ、個々のビット値は、そのアナログ信号から導き出すことができる。
【0117】
本発明は、透かしの適用例に限定するものではない。別々の透かしによりPESのバリアントを作成するのではなく、例えば、別々のスクランブルアルゴリズムまたは符号化アルゴリズムを使用して、PESのバリアントを作成することが可能である。例えば、特定のスクランブルアルゴリズムを使用してスクランブルを解くことが可能な受信機は、PESのバリアントのうちの1つのみのスクランブルを解くことが可能である。ヘッドエンドシステムは、受信されたCWを供給して、サポートされたPESバリアントのスクランブルを解く。供給されたCWで、サポートされていないPESバリアントのスクランブルを解くことにより、ランダムデータが生じ、エラーハンドラは、説明したようにそれを処理する。
【0118】
オプションでフィンガープリントの生成を含む、受信機におけるPESストリームの生成は、受信されたデータストリームのスクランブルを解くために使用されるCWのシーケンスによって確定される。CWを受信機に配信するためには、多数の既知の方法がある。1つの方法が、スマートカードにエンタイトルメント制御メッセージ(ECM)を送信することであり、それは、受信機のデスクランブラで使用するためのCWを戻すことになる。
【0119】
図11に示す例においては、スマートカード3aが、ECMにおけるいくつかのCWおよび選択データを受信するように構成されている。スマートカード3aは、局所的に格納されたフィンガープリントベクトルと、ECMに含まれる選択データとの比較に基づいて、受信機でスクランブルを解くために使用すべき特定のCWを選択するように構成されている。
【0120】
スマートカード3aは、入力モジュール31でECMを受信する。ECMは、メモリ33内に格納されているローカルキーPKを使用して、復号化器32で復号化される。ECMから、CWと選択データとの組がこのようにして、取得される。CWは、例えば、メモリ位置34a、34b、および34cにおける一時メモリ内に格納される。選択データは、メモリ位置35における一時メモリ内に格納される。スマートカード3aの識別を示すフィンガープリントベクトルは、メモリ36内に格納される。メモリ33および36と、一時メモリ位置34a、34b、34cおよび35とは、言わば既知の任意のやり方で、単一のメモリモジュール内、または複数のメモリモジュール内に実装可能であることは認識されるであろう。
【0121】
選択データは、照合モジュール37でフィンガープリントベクトルと照合される。照合モジュール37の出力は、一時メモリ位置34a、34bおよび34c内に格納されたCWから特定のCWを選択するために、選択モジュール38によって使用される。選択されたCWは、受信機に供給され、選択モジュール38から出る矢印でそれを示している。
【0122】
受信機においては、デスクランブラは、選択されたCWを使用して、スクランブルを解かれたコンテンツストリームを生成し、それは、オプションで受信機のアナログ出力に特定のフィンガープリントをもたらす。
【0123】
ヘッドエンドシステムにおいてコンテンツストリームを作成するために使用されるCWおよび透かし、ならびにCWおよび選択データを含むECMは、受信機のアナログ出力におけるフィンガープリントパターンが、スマートカード内に格納されたフィンガープリントベクトルに対応するように、ヘッドエンドシステムによって確定可能である。
【0124】
図12に示す例においては、スマートカード3bが、シード値および選択データを含むECMを受信するように構成されている。スマートカード3bは、受信されたシード値、および局所的に格納されたフィンガープリントベクトルとECMに含まれる選択データとの照合に基づいて、特定のCW値を生成するように構成されている。
【0125】
スマートカード3bは、入力31でECMを受信する。ECMは、メモリ33内に格納されているローカルキーPKを使用して、復号化器32で復号化される。ECMから、シード値と選択データとがこのようにして、取得される。シード値は、メモリ位置34dにおける一時メモリ内に格納される。選択データは、メモリ位置35における一時メモリ内に格納される。選択データは、照合モジュール37で、メモリ36内に格納されている局所的に格納されたフィンガープリントベクトルと照合される。メモリ33および36と、一時メモリ位置34dおよび35とは、言わば既知の任意のやり方で、単一のメモリモジュールまたは複数のメモリモジュール内に実装可能であることは認識されるであろう。
【0126】
CW生成器モジュール39は、シード値と、照合モジュール37の結果とを入力として使用して、CWを生成する機能により構成されている。生成されたCWは、受信機に供給され、CW生成モジュール39から出る矢印でそれを示している。
【0127】
図11および図12の例においては、受信機のアナログ出力において特定のフィンガープリントを生成するために、受信機側で使用可能なスマートカード3a、3bの2つの実装形態を示す。本発明は、スマートカード3aおよび3bのうちの1つの使用に限定するもではない。スマートカードの任意の他の実装形態は、ヘッドエンドシステムが、ECMにおける選択データを介するCWの選択または生成の制御にある限り、特定のCWを受信機に供給するために使用可能である。さらには、ヘッドエンドシステムが、例えば、特定のCWのみを含むECMを受信機に供給する場合には、既存のスマートカードを使用することが可能であり、その場合にはスマートカードは、この選択がヘッドエンドシステムによって既に行われているので、特定のCWを選択する必要はない。
【0128】
図13は、本発明の例示的な実施形態の限定受信システム5を示している。図1〜図8に示すヘッドエンドシステム1、1a、1b、1c、1d、1e、1fまたは1gのうちの1つの機能を有するヘッドエンドシステムが、通信ネットワーク6に接続されている。通信ネットワーク6は、例えば、DVBネットワーク、またはコンテンツストリームおよび可能なエンタイトルメントメッセージの伝送に適している任意の他のネットワークである。1つまたは複数の受信機4a、4bは、通信ネットワーク6に接続されて、ヘッドエンドシステムから、コンテンツストリームおよびエンタイトルメントメッセージを受信する。受信機4aは、埋め込まれている図11〜図12に示すスマートカード3a、3bに類似している機能を有する。受信機4bは、図11〜図12に示すスマートカード3a、3bに類似している機能を有するスマートカードに通信可能なように接続される。
【0129】
図14は、本発明の例示的な実施形態のヘッドエンドシステムによって実行される方法のステップの流れ図を示している。方法のステップは、図1〜図8の例に詳細に示している。ヘッドエンドシステムは、ステップ101において、デジタル信号の少なくとも一部の2つ以上のコピーを生成する。ステップ103において、デジタル信号のそれぞれのコピーは、スクランブルを掛けられたデジタル信号を取得するために、暗号キーを使用してスクランブルを掛けられ、暗号キーは、デジタル信号のそれぞれのコピーごとに異なる。オプションで、デジタル信号のそれぞれのコピーは、透かしを入れられたデジタル信号を取得するために、デジタル信号に透かしを挿入することによって、信号にスクランブルを掛ける103前に、ステップ102において透かしを入れられ、透かしは、デジタル信号のそれぞれのコピーごとに異なる。デジタル信号のコピーのスクランブルを掛けられたデジタル信号は、ステップ104において、コンテンツストリームを取得するために多重化される。ステップ105において、エンタイトルメントメッセージおよびコンテンツストリームの受信機が、デジタル信号の1つのコピーのスクランブルを解くための復号キーを取得することを可能にするために、暗号キーのうちの少なくとも1つについてのキーデータを含むエンタイトルメントメッセージが生成される。ステップ106において、コンテンツストリームおよびエンタイトルメントメッセージは、1つまたは複数の受信機に伝送される。
【0130】
図15は、本発明の例示的な実施形態のスマートカードによって実行される方法のステップの流れ図を示している。方法のステップは、図11〜図12の例に詳細に示している。ステップ201において、スマートカードは、エンタイトルメントメッセージを受信機から受信する。エンタイトルメントメッセージは、ステップ202において、復号化される。それによって、キーデータが、2つ以上の復号キーおよび選択データについて取得される。ステップ203において、フィンガープリントベクトルが、メモリから読み取られる。選択データは、照合結果を取得するために、ステップ204においてフィンガープリントベクトルと照合される。ステップ205において、1つの復号キーは、受信機が、デジタル信号の2つ以上のスクランブルを掛けられたコピーを含むコンテンツストリームからデジタル信号の1つのコピーのスクランブルを解くことを可能にするために、その照合結果を使用してキーデータから取得される。
【0131】
例および例示的な実施形態においては、MPEG-2の圧縮および多重化技術、ならびに関連のDVBスクランブル技術を参照する。本発明は、MPEG-2符号化フォーマットおよびDVBに限定するものではなく、デジタルオーディオおよびデジタルビデオの伝送に関する他の技術とともに使用可能である。
【0132】
デジタルTV符号化フォーマットは概して、所定の符号化パターンをサーチすることによって、ストリームのランダム点において開始するデコーディングを可能にする。このような同期点はまた、迅速な転送および巻戻しを可能にするトリックモードをサポートするためにも使用される。同期点は、MPEG-2におけるPESパケットの等価物を示す。同期点に続いてエレメンタリストリームをデコードした後、デコーダは、次の同期点を予測する。デコーダは概して、知られていない、または見つからない同期点を有するデータを無視し、次の同期点を求めて継続して走査する。
【0133】
説明したように、本発明は、「間違った」復号キーにより、スクランブルを解かれたデジタル信号のコピー全体にわたってスキップする受信機のエラーハンドリング性能を使用する。種々の受信機における種々の解凍実装形態は、コンテンツストリームにおける次の部分、例えば、PESパケットの次のコピー、または次のPESパケットの第1のコピーを見つけてスクランブルを解くために、同期点をコンテンツストリームの別々の点において使用することが可能である。図16は、4つの受信機における4つの異なる解凍エンジンの例を示している。同一のコンテンツストリームのいくつかの解凍実装形態のための同期点は、時間軸上の垂線によって示される。
【0134】
図16は、解凍エンジンE1、E2、E3、およびE4について、同期点の別々のシーケンスを示している。図16の例においては、通常、すべての解凍エンジンE1、E2、E3、およびE4によって認識される3つの同期点A、B、およびCがある。同期点A、B、およびCはしたがって、すべての解凍実装形態がそのようなものとして認識することになる同期点の共通の組の一部である。このような共通の組は、例えばMPEG-2など、所与のコンテンツ圧縮符号化フォーマットのすべての解凍実装形態に対して確定可能である。ヘッドエンドシステムが、同期点の共通の組の知識を使用することが可能である。
【0135】
特定のコンテンツ圧縮符号化フォーマットによるスクランブルは概して、キー配信モデルおよびキー同期機能を提供する。このような既存のキー配信および同期インフラストラクチャは、デジタル信号のコピーのスクランブル、およびオプションでコピーに透かしを入れることが可能な場合、ヘッドエンドシステムに信号を送るために使用可能である。これは、コンテンツストリームのすべての受信機が、本発明により、フィンガープリントを生成することが可能であることを確実にする。
【符号の説明】
【0136】
1, 1a, 1b, 1c, 1d, 1e, 1f, 1g ヘッドエンドシステム
3a, 3b スマートカード
4a, 4b 受信機
5 限定受信システム
6 通信ネットワーク
10 符号化器
11a, 11b, 11c, 11d, 11e, 16, 16a, 16b パケット化器
12, 12a 複製器
13a, 13b, 13c, 13d 透かし挿入モジュール
14a, 14b, 14c, 14d, 14e, 14f スクランブラ
15, 15a, 17, 18 マルチプレクサ
20 CW制御部
21 暗号キー生成器
22 選択データ生成器
23 エンタイトルメントメッセージ生成器
31 入力モジュール
32 復号化器
33, 36 メモリ
34a, 34b, 34c, 34d, 35 メモリ位置
37 照合モジュール
38 選択モジュール
39 CW生成モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のデジタル信号の少なくとも一部の2つ以上のコピーを生成するように構成されている複製器(12)と、
オプションで、前記第1のデジタル信号の透かしを入れられたコピーを取得するために、それぞれのコピーに透かしを挿入するように構成されている1つまたは複数の透かし挿入モジュール(13a、13b)であって、前記透かしは、それぞれのコピーごとに異なる、モジュールと、
前記第1のデジタル信号のスクランブルを掛けられたコピーを取得するために、それぞれのコピー、またはオプションでそれぞれの透かしを入れられたコピーにスクランブルを掛けるように構成されている1つまたは複数のスクランブラ(14a、14b)であって、それぞれのコピーは、別々にスクランブルを掛けられる、スクランブラと、
第2のデジタル信号を取得するために、前記スクランブルを掛けられたコピーを結合するように構成されている結合器(15)であって、前記スクランブルを掛けられたコピーは、前記第1のデジタル信号の前記2つ以上のコピーのうちの1つに関連しているとは識別できない、結合器と
を備える、ヘッドエンドシステム(1)。
【請求項2】
前記第1のデジタル信号のそれぞれのコピーをデータパケットにパケット化するように構成されている1つまたは複数の第1のパケット化器(11a、11b、11c、11d)をさらに備え、
前記1つまたは複数のスクランブラ(14c、14d)は、スクランブルを掛けられたデータパケットを取得するために、それぞれのデータパケットのペイロードにスクランブルを掛けるように構成され、
前記結合器は、マルチプレクサ(15a)を備え、前記第2のデジタル信号は、コンテンツストリームを含み、前記マルチプレクサ(15a)は、前記コンテンツストリームを取得するために、前記スクランブルを掛けられたデータパケットを多重化するように構成されている、請求項1に記載のヘッドエンドシステム(1b、1d)。
【請求項3】
前記1つまたは複数の透かし挿入モジュール(13c、13d)は、透かしを入れられたデータパケットを取得するために、それぞれのデータパケットのペイロードに前記透かしを挿入するように構成され、
前記1つまたは複数のスクランブラ(14c、14d)は、それぞれの透かしを入れられたデータパケットのペイロードにスクランブルを掛けるように構成されている、請求項2に記載のヘッドエンドシステム(1d)。
【請求項4】
前記第1のデジタル信号をデータパケットにパケット化するように構成されている第1のパケット化器(11e)をさらに備え、
前記複製器(12a)は、前記データパケットのうちの1つまたは複数の2つ以上のコピーを生成するように構成され、
前記1つまたは複数のスクランブラ(14c、14d)は、前記データパケットのスクランブルを掛けられたコピーを取得するために、それぞれのコピーのペイロードにスクランブルを掛けるように構成され、
前記結合器は、マルチプレクサ(15a)であり、前記第2のデジタル信号は、コンテンツストリームであり、前記マルチプレクサ(15a)は、前記コンテンツストリームを取得するために、前記スクランブルを掛けられたデータパケットを多重化するように構成されている、請求項1に記載のヘッドエンドシステム(1f)。
【請求項5】
前記データパケットの透かしを入れられたコピーを取得するために、それぞれのコピーの前記ペイロードに前記透かしを挿入するように構成されている1つまたは複数の透かし挿入モジュール(13c、13d)をさらに備え、前記1つまたは複数のスクランブラ(14c、14d)は、それぞれの透かしを入れられたデータパケットのペイロードにスクランブルを掛けるように構成されている、請求項4に記載のヘッドエンドシステム(1f)。
【請求項6】
それぞれのデータパケットを1つまたは複数の追加的なデータパケットにパケット化するための1つまたは複数の第2のパケット化器(16a、16b)をさらに備え、それぞれの追加的なデータパケットは、所定の長さを有する追加的なペイロードを含み、前記1つまたは複数の第2のパケット化器(16a、16b)は、
前記データパケットのヘッダのヘッダ長を確定し、前記ヘッダ長が、前記所定の長さに等しくないか、または前記所定の長さの倍数でない場合、前記ヘッダ長が、前記所定の長さに等しくなるか、または前記所定の長さの前記倍数になるように、前記ヘッダに1つまたは複数のスタッフィングビットを追加し、
前記データパケットの前記ペイロードのペイロード長を確定し、前記ペイロード長が、前記所定の長さに等しくないか、または前記所定の長さの倍数でない場合、前記ペイロード長が、前記所定の長さに等しくなるか、または前記所定の長さの前記倍数になるように、前記ペイロードに1つまたは複数のスタッフィングビットを追加し、
前記ヘッダを、前記所定の長さを有する1つまたは複数のヘッダのパーツに分割し、
前記ペイロードを、前記所定の長さを有する1つまたは複数のペイロードのパーツに分割し、
前記1つまたは複数のヘッダのパーツと、前記1つまたは複数のペイロードのパーツとを、前記追加的なデータパケットの前記追加的なペイロードに順次、置く
ように構成され、
前記1つまたは複数のスクランブラ(14e、14f)は、それぞれの追加的なデータパケットの前記追加的なペイロードにスクランブルを掛けるように構成され、前記マルチプレクサ(18)は、前記コンテンツストリームにおいて前記第1のデジタル信号のコピーによって、前記追加的なデータパケットをグルーピングするようにさらに構成されている、請求項2から5のいずれか一項に記載のヘッドエンドシステム(1c、1e、1g)。
【請求項7】
キー生成器(21)およびエンタイトルメントメッセージ生成器(23)をさらに備え、前記キー生成器は、それぞれのコピーにスクランブルを掛けるための前記1つまたは複数のスクランブラ(14a、14b、14c、14d、14e、14f)に、1つまたは複数の暗号キーを供給するように構成され、前記エンタイトルメントメッセージ生成器(23)は、前記エンタイトルメントメッセージおよび前記第2のデジタル信号の受信機が、前記スクランブルを掛けられたコピーのうちの1つを有意な出力へとスクランブルを解き、すべての他のスクランブルを掛けられたコピーを有意でない出力へとスクランブルを解くための復号キーを取得することを可能にするために、前記暗号キーのうちの1つまたは複数についてのキーデータを含むエンタイトルメントメッセージを生成するように構成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のヘッドエンドシステム。
【請求項8】
選択データを生成するように構成されている選択データ生成器(22)をさらに備え、前記選択データは、前記受信機が、前記キーデータから1つの復号キーを取得することを可能にし、前記エンタイトルメントメッセージ生成器(23)は、前記エンタイトルメントメッセージに前記選択データを含むようにさらに構成されている、請求項7に記載のヘッドエンドシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のヘッドエンドシステムから、第2のデジタル信号およびエンタイトルメントメッセージを受信するための受信機(4a)であって、前記第2のデジタル信号は、第1のデジタル信号の2つ以上のスクランブルを掛けられたコピーを含み、前記スクランブルを掛けられたコピーは、前記第1のデジタル信号の2つ以上のコピーのうちの1つに関連しているとは識別できず、前記エンタイトルメントメッセージは、2つ以上の復号キーについてのキーデータを含み、前記エンタイトルメントメッセージは、選択データをさらに含み、前記受信機(4a)は、
前記エンタイトルメントメッセージから、前記キーデータおよび前記選択データを取得するように構成されている復号化器(32)と、
フィンガープリントベクトルを含むメモリ(36)と、
照合結果を取得するために、前記選択データを前記フィンガープリントベクトルと照合するように構成されている照合モジュール(37)と、
前記受信機(4a)が、前記スクランブルを掛けられたコピーのうちの1つを有意な出力へとスクランブルを解き、すべての他のスクランブルを掛けられたコピーを有意でない出力へとスクランブルを解くことを可能にするために、前記照合結果に基づいて前記キーデータから1つの復号キーを取得するように構成されているキーセレクタ(38、39)と
を備える、受信機(4a)。
【請求項10】
請求項8に記載のヘッドエンドシステムから、第2のデジタル信号およびエンタイトルメントメッセージを受信するための受信機(4b)で使用するためのスマートカード(3a、3b)であって、前記第2のデジタル信号は、第1のデジタル信号の2つ以上のスクランブルを掛けられたコピーを含み、前記スクランブルを掛けられたコピーは、前記第1のデジタル信号の2つ以上のコピーのうちの1つに関連しているとは識別できず、前記エンタイトルメントメッセージは、2つ以上の復号キーについてのキーデータを含み、前記エンタイトルメントメッセージは、選択データをさらに含み、前記スマートカードは、
前記受信機から、前記エンタイトルメントメッセージを受信するように構成されている入力モジュール(31)と、
前記エンタイトルメントメッセージから、前記キーデータおよび前記選択データを取得するように構成されている復号化器(32)と、
フィンガープリントベクトルを含むメモリ(36)と、
照合結果を取得するために、前記選択データを前記フィンガープリントベクトルと照合するように構成されている照合モジュール(37)と、
前記受信機(4a)が、前記スクランブルを掛けられたコピーのうちの1つを有意な出力へとスクランブルを解き、すべての他のスクランブルを掛けられたコピーを有意でない出力へとスクランブルを解くことを可能にするために、前記照合結果に基づいて前記キーデータから1つの復号キーを取得するように構成されているキーセレクタ(38、39)と
を備える、スマートカード。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか一項に記載のヘッドエンドシステム(1、1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g)と、請求項9に記載の1つまたは複数の受信機(4a)および/あるいは請求項10に記載の1つまたは複数の受信機(4b)と、請求項10に記載の1つまたは複数のスマートカード(3a、3b)とを備える、限定受信システム(5)。
【請求項12】
請求項1から8のいずれか一項に記載のヘッドエンドシステムで使用するための方法であって、
第1のデジタル信号の少なくとも一部の2つ以上のコピーを生成するステップ(101)と、
オプションで、前記第1のデジタル信号の透かしを入れられたコピーを取得するために、それぞれのコピーに透かしを挿入するステップ(102)であって、前記透かしは、それぞれのコピーごとに異なる、ステップと、
前記第1のデジタル信号のスクランブルを掛けられたコピーを取得するために、それぞれのコピーにスクランブルを掛けるステップ(103)であって、それぞれのコピーは、別々にスクランブルを掛けられる、ステップと、
第2のデジタル信号を取得するために、前記スクランブルを掛けられたコピーを結合するステップ(104)であって、前記スクランブルを掛けられたコピーは、前記第1のデジタル信号の前記2つ以上のコピーのうちの1つに関連しているとは識別できない、ステップと
を含む、方法。
【請求項13】
前記エンタイトルメントメッセージおよび前記第2のデジタル信号の受信機が、前記スクランブルを掛けられたコピーのうちの1つを有意な出力へとスクランブルを解き、すべての他のスクランブルを掛けられたコピーを有意でない出力へとスクランブルを解くための復号キーを取得することを可能にするために、前記暗号キーのうちの1つまたは複数についてのキーデータを含むエンタイトルメントメッセージを生成するステップ(105)と、
前記第2のデジタル信号および前記エンタイトルメントメッセージを1つまたは複数の受信機に伝送するステップ(106)と
をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項10に記載のスマートカードで使用するための方法であって、
受信機から、エンタイトルメントメッセージを受信するステップ(201)であって、前記エンタイトルメントメッセージは、2つ以上の復号キーについてのキーデータを含み、前記エンタイトルメントメッセージは、選択データをさらに含む、ステップと、
前記キーデータおよび前記選択データを取得するために、前記エンタイトルメントメッセージを復号化するステップ(202)と、
メモリからフィンガープリントベクトルを読み取るステップ(203)と、
照合結果を得るために、前記選択データを前記フィンガープリントベクトルと照合するステップ(204)と、
前記受信機が、デジタル信号の第1のスクランブルを掛けられたコピーを有意な出力へとスクランブルを解き、前記デジタル信号の第2のスクランブルを掛けられたコピーを有意でない出力へとスクランブルを解くことを可能にするために、前記照合結果に基づいて前記キーデータから1つの復号キーを取得するステップ(205)と
を含む方法。
【請求項15】
請求項1から8のいずれか一項に記載のヘッドエンドシステムから第2のデジタル信号において受信される前記2つ以上のスクランブルを掛けられたコピーから、1つのコピーを取得するための受信機におけるエラーハンドラの使用法であって、前記スクランブルを掛けられたコピーは、前記第1のデジタル信号の前記2つ以上のコピーのうちの1つに関連しているとは識別できず、前記受信機は、復号キーを使用して前記2つ以上のスクランブルを掛けられたコピーのスクランブルを解いて、それによって前記スクランブルを掛けられたコピーのうちの1つを有意な出力へとスクランブルを解き、すべての他のスクランブルを掛けられたコピーを有意でない出力へとスクランブルを解くように構成され、前記エラーハンドラは、前記有意でない出力を破棄するように構成されている、使用法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−142630(P2011−142630A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−450(P2011−450)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(598036964)イルデト・コーポレート・ビー・ヴイ (16)
【Fターム(参考)】