説明

陽イオン親水性シロキサニルモノマー製造のための方法

本発明は、生体適合性医療機器の製造に有用な高分子組成物に関する。さらに詳細には、本発明は、眼科用機器の製造に有用な望ましい物理的特性を有する高分子組成物を形成するための重合が可能なある種の陽イオンモノマーに関する。こうした特性には、重合医療機器を水で抽出する能力が挙げられる。これは、技術上一般的であるように、有機溶媒の使用を避ける。高分子組成物は、本明細書において開示される方法により調製される重合陽イオン親水性シロキサニルモノマーを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体適合性医療機器の製造に有用な高分子組成物に関する。さらに詳細には、本発明は、眼科用機器の製造に有用な望ましい物理的特性を有する高分子組成物を形成するための重合が可能なある種の陽イオンモノマーに関する。こうした特性には、重合医療機器を水で抽出する能力が挙げられる。これは、技術上一般的であるように、有機溶媒の使用を避ける。高分子組成物は、本明細書において開示される方法により調製される重合陽イオン親水性シロキサニルモノマーを含む。
【背景技術】
【0002】
生体用機器を含む種々の物品は、有機ケイ素化合物含有材料から形成される。ソフトコンタクトレンズなどの生体用機器に有用な有機ケイ素化合物材料の一つの部類は、ケイ素含有ヒドロゲル材料である。ヒドロゲルは、平衡状態で水を含有する、水和し架橋した高分子系である。ヒドロゲルコンタクトレンズは、比較的高い酸素透過性ならびに望ましい生体適合性および快適さを提供する。ヒドロゲル配合物中のケイ素含有材料の包含は、一般に、ケイ素系の材料が水よりも高い酸素透過性を有するので、より高い酸素透過性を提供する。
【0003】
有機ケイ素化合物材料の別の部類は、ハードコンタクトレンズ用に用いられる硬質のガス透過性材料である。こうした材料は、一般に、ケイ素またはフルオロケイ素コポリマーから形成される。これらの材料は酸素透過性であり、ソフトコンタクトレンズ用に用いられる材料よりも硬い。コンタクトレンズを含む、生体用機器に有用な有機ケイ素化合物含有材料は、以下の米国特許:米国特許第4,686,267号明細書(エリス(Ellis)ら)、米国特許第5,034,461号明細書(ライ(Lai)ら)、および米国特許第5,070,215号明細書(バンベリ(Bambury)ら)に開示されている。
【0004】
加えて、従来型のシロキサン型のモノマーは疎水性であり、それらにより製造されるレンズは、しばしば、親水性表面を提供するための追加の処理を必要とする。特定の理論により縛られようとは望まないが、発明者らは、本明細書において開示される4級シロキサン型モノマーなどの荷電シロキサン型モノマーを提供することが、親水性シロキサン型モノマーをもたらすことを信じる。親水性4級基が極性水分子の陰性部分と相互作用することは信じられる。
【0005】
ソフトコンタクトレンズ材料は、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−ビニル−ピロリドン、およびそれらの組合せなどの重合性および架橋性の親水性モノマーにより製造される。これらの親水性モノマーを重合させることにより製造されるポリマーは、それら自身で有意な親水性の性格を示すと共に、それらの高分子マトリクス中に有意な量の水を吸収することができる。それらの水を吸収する能力のせいで、これらのポリマーは、多くの場合、「ヒドロゲル」と呼ばれる。これらのヒドロゲルは、光学的に透明であり、それらの高いレベルの水和物水のせいで、ソフトコンタクトレンズを製造するための特に有用な材料である。シロキサン型モノマーが水ならびに親水性溶媒およびモノマー中に溶解しにくいことは周知であり、従って、それらは標準ヒドロゲル技術を用いて共重合し加工することも困難である。従って、ヒドロゲルレンズを製造するために用いられる材料、特に希釈剤中での改善された溶解性を有する新規のシロキサン型モノマーに対する必要性が存在する。さらに、従来技術において用いられる有機溶媒の代わりに水中で抽出可能である重合医療機器をもたらすモノマーに対する必要性が存在する。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、コンタクトレンズを含む生体用機器などの物品において有用である新奇の陽イオン有機ケイ素化合物含有モノマーを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
第1態様において、本発明は以下の分析特性を有するモノマーに関する:
モノマーは、また、少なくとも単一の荷電対イオンである対イオンX-としてのイオンを有する。単一荷電対イオンの例には、Cl-、Br-、I-、CF3CO2-、CH3CO2-、HCO3-、CH3SO4-、p−トルエンスルホン酸、HSO4-、H2PO4-、NO3-、およびCH3CH(OH)CO2-からなる基が挙げられる。2荷電対イオンの例には、SO42-、CO32-およびHPO42-が挙げられるであろう。他の荷電対イオンは当業者に明らかであるであろう。対イオンの残留量が水和生成物の形態で存在することが可能であることは理解されるべきである。従って、毒性対イオンの使用は阻止されるべきである。同様に、単一荷電対イオンに対して、対イオンと4級シロキサニルの比率が1:1であることは理解されるべきである。より大きな負の荷電の対イオンは、対イオンの全体荷電に対する異なる比率をもたらす。
【0008】
本明細書において開示される新奇の陽イオンケイ素含有モノマーを製造するための合成方法の略図を以下に提供する:
【化1】

【0009】
第2態様において、本発明は上述の方法により製造されるモノマーを含むモノマー混合物を形成する機器の形状をなす物品を包含する。好ましい実施形態により、物品は前述のモノマーおよび少なくとも第2モノマーを含む混合物の重合製品である。好ましい物品は光学的に透明でありコンタクトレンズとして有用である。
【0010】
これらの材料により製造される有用な物品は、疎水性、できればケイ素含有モノマーを必要とすることが可能である。好ましい組成物は、親水性および疎水性両方のモノマーを有する。本発明は、硬質または軟質いずれかの多種多様な高分子材料に適用される。生体材料を含むすべての高分子材料が本発明の範囲内にあると考えられるが、特に好ましい高分子材料は、コンタクトレンズ、有水晶体および無水晶体の眼内レンズを包含するレンズおよび角膜移植片である。特に好ましいものはケイ素含有ヒドロゲルである。
【0011】
本発明は、また、心臓弁、フィルム、手術用用具、血管代替品、子宮内器具、膜、ダイアフラム、手術による移植片、血管、人工尿管、人工乳房組織および体外で体液に接触させるように意図される膜、例えば、腎臓透析および心臓/肺機械用などの膜、カテーテル、マウス・ガード、義歯ライナー、眼科用機器などの医療機器を提供する。
【0012】
ケイ素含有ヒドロゲルは、少なくとも一つのケイ素含有モノマーおよび少なくとも一つの親水性モノマーを含有する混合物を重合することにより調製される。ケイ素含有モノマーは、架橋剤(多重合性官能基を有するモノマーとして定義される架橋剤)として機能することが可能であるか、または別の架橋剤は用いることが可能である。
【0013】
ケイ素含有コンタクトレンズ材料の前の例は、米国特許第4,153,641号明細書(ダイチャート(Deichert)ら、ボシュロム(Bausch & Lomb Incorporated)に委譲される)に開示されている。レンズは、2価炭化水素基を通して重合活性化不飽和基にα、ω末端結合されるポリ(オルガノシロキサン)モノマーから製造される。1,3−ビス(メタクリルオキシアルキル)−ポリシロキサンなどの種々の疎水性ケイ素含有プレポリマーが、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)などの公知の親水性モノマーと共重合された。
【0014】
米国特許第5,358,995号明細書(ライら)には、かさばったポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリレートモノマー、および少なくとも一つの親水性モノマーと重合したアクリル酸エステル封鎖ポリシロキサンプレポリマーからなるケイ素含有ヒドロゲルが記載されている。ライらはボシュロムに委譲され、全体の開示内容は本明細書において参考のため包含される。M2Xとして一般的に知られるアクリル酸エステル封鎖ポリシロキサンプレポリマーは、二つのアクリル酸エステル末端基および「x」数の反復ジメチルシロキサン単位からなる。好ましいかさばったポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、アクリル酸−またはビニル−含有のいずれかである親水性モノマーを有するTRISタイプ(メタクリルオキシプロピル・トリス(トリメチルシロキシ)シラン)である。
【0015】
この発明により用いることが可能であるケイ素含有モノマー混合物の他の例には以下が挙げられる:それらのすべてが共通に本明細書における譲受人ボシュロムに委譲されると共に、それらの全体の開示内容が本明細書において参考のため包含される米国特許第5,070,215号明細書および第5,610,252号明細書(バンベリら)に開示されている炭酸ビニルおよびカルバミン酸ビニルモノマー混合物、米国特許第5,321,108号明細書、第5,387,662号明細書および第5,539,016号明細書(クンツラー(Kunzler)ら)に開示されているフルオロケイ素モノマー混合物、米国特許第5,374,662号明細書、第5,420,324号明細書および第5,496,871号明細書(ライら)に開示されているフマル酸エステルモノマー混合物、および米国特許第5,451,651号明細書、第5,648,515号明細書、第5,639,908号明細書および第5,594,085号明細書(ライら)に開示されているウレタンモノマー混合物。
【0016】
非ケイ素疎水性材料の例には、アクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルが挙げられる。
【0017】
陽イオンケイ素含有モノマーは、多種多様な親水性モノマーと共重合してケイ素ヒドロゲルレンズを製造することが可能である。適する親水性モノマーには、メタクリル酸およびアクリル酸などの不飽和カルボン酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよび2−ヒドロキシエチルアクリレートなどのアクリル置換アルコール、N−ビニルピロリドン(NVP)および1−ビニルアゾナム−2−オンなどのビニルラクタム、およびメタクリルアミドおよびN,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)などのアクリルアミドが挙げられる。
【0018】
なおさらなる例には、米国特許第5,070,215号明細書に開示されている親水性炭酸ビニルまたはカルバミン酸ビニルモノマー、および米国特許第4,910,277号明細書に開示されている親水性オキサゾロンモノマーがある。他の適する親水性モノマーは当業者に明白である。
【0019】
疎水性架橋剤には、ジメタクリル酸エチレングリコール(EGDMA)およびメタクリル酸アリル(AMA)などのメタクリル酸エステルが挙げられるであろう。従来型のケイ素ヒドロゲルモノマー混合物とは対照的に、本明細書における本発明の4級化ケイ素モノマーを含有するモノマー混合物は比較的水溶性である。この態様は、かすんだレンズをもたらす不適合相分離のリスクがより少ないことにおいて、従来型のケイ素ヒドロゲルモノマー混合物に対する利点を提供する。また、重合材料は水により抽出可能である。しかし、望ましい場合に、従来型の有機抽出法もまた用いることが可能である。加えて、抽出されるレンズは、酸素透過係数(Dk)および低弾性率の良好な組合せ、望ましいコンタクトレンズを得るために重要であることが知られている特性を実証する。本明細書における本発明のモノマーにより製造される材料にとっての適する含水量は、0質量%〜約80質量%の範囲にあるであろう。適する酸素透過係数(Dk)は、約10〜約200の範囲にあるであろう。適する弾性率は、約20g/mm2〜約2000g/mm2の範囲にあるであろう。さらに、本明細書における本発明の4級化ケイ素モノマーにより調製されるレンズは、表面処理なしでさえも湿潤性であり、乾いた離型を提供し、モノマー混合物中の溶媒を必要とせず(グリセロールなどの溶媒は用いることが可能であるが)、抽出される重合材料は細胞毒でなく、表面は接触に対して潤滑性である。本明細書における本発明の4級化ケイ素モノマーを含有する重合モノマー混合物が望ましい引裂強度を実証しない場合において、TBE(メタクリル酸4−t−ブチル−2−ヒドロキシシクロヘキシル)などの強化剤は、モノマー混合物に添加することが可能である。他の強化剤は当業者に周知であり、必要とされる場合にまた用いることが可能である。
【0020】
本明細書において開示される陽イオンケイ素含有モノマーの利点は、それらが比較的水溶性であり、またそれらのコモノマー中に溶解できることであるが、有機希釈剤は初期モノマー混合物中に含むことが可能である。本明細書において用いられる用語「有機希釈剤」は、初期モノマー混合物中の成分の不適合性を最小化すると共に、実質的に初期混合物中の成分とは反応しない有機化合物を包含する。加えて、有機希釈剤はモノマー混合物の重合により製造される重合製品の相分離を最小化するために役立つ。また、有機希釈剤は一般に比較的不燃性である。
【0021】
熟慮された有機希釈剤には、t−ブタノール(TBA)、エチレングリコールなどのジオールおよびグリセロールなどのポリオールが挙げられる。好ましくは、有機希釈剤は、抽出段階間の硬化物品からのその除去を容易にするために抽出溶媒中に十分に溶解するものである。他の適する有機希釈剤は当業者に明白であるであろう。
【0022】
有機希釈剤は望ましい効果を提供するために有効な量で含まれる。一般に、希釈剤はモノマー混合物の5〜60質量%で含まれ、10〜50質量%が特に好ましい。
【0023】
本方法により、少なくとも一つの親水性モノマー、少なくとも一つの陽イオンケイ素含有モノマーおよび任意に有機希釈剤を含むモノマー混合物は、静鋳造法または回転成形法などの従来法により成形され硬化される。
【0024】
レンズ形成は、開始剤を用い、参考のため本明細書において包含される米国特許第3,808,179号明細書に記されているような条件下での、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)および過酸化物触媒などのフリーラジカル重合によることができる。技術上周知であるモノマー混合物重合の光開始も、また、本明細書において開示される物品を形成する方法において用いることが可能である。着色剤などはモノマー重合の前に添加することが可能である。
【0025】
続いて、十分な量の未反応モノマー、および、存在する場合に、有機希釈剤は、物品の生体適合性を改善するために硬化物品から除去される。レンズ取り付けの際の眼中への非重合モノマーの放出は、炎症および他の問題を引き起こすことができる。本明細書において開示される新奇な4級化シロキサンモノマーの特性のせいで、イソプロピルアルコールなどの可燃性溶媒により抽出されなければならない他のモノマー混合物と違って、不燃性溶媒を抽出工程用に用いることが可能である。
【0026】
一旦、本明細書において開示される陽イオンケイ素含有モノマーを含有する重合モノマー混合物から形成される生体材料が形成されると、それらは、次に、包装および恒久的使用用にそれらを調製するために抽出される。抽出は、重合材料を、種々の時間帯にわたり、水、t−ブタノールなどの種々の溶媒にさらすことにより達成される。例えば、一つの抽出法は、重合材料を約3分間にわたり水中に浸漬し、水を除去し、次に重合材料を約3分間にわたり別の分取水中に浸漬し、その分取水を除去し、次に、重合材料を水または緩衝液中でオートクレーブ処理することである。
【0027】
未反応モノマーおよびあらゆる有機希釈剤の抽出に続いて、成形物品、例えばRGPレンズは、技術上公知の種々の方法により任意に機械加工される。機械加工段階は、レンズ表面旋盤切削加工、レンズ縁旋盤切削加工、レンズ縁バフ研磨、またはレンズ縁または表面研磨を含む。本方法は、表面が粘着性かまたはゴム状である場合に、レンズ表面の機械加工が特に難しいので、レンズ表面が旋盤切削加工される方法に対して特に有利である。
【0028】
一般に、こうした機械加工法は、物品が金型部分から離される前に行われる。機械加工操作後、レンズは金型部分から離し水和することができる。あるいは、物品は金型部分からの除去後機械加工し、次に水和することができる。記載されるタイプの眼科用モノマーは、R1がCH3またはO(Si[CH3]3)であり、R2がR1と同じかまたはH(Si[CH3]2O)nであり、XがCl、Br、またはIであり、R3がCH3、直鎖または分岐鎖アルキル鎖であり、リンカー基Lが直鎖または分岐鎖アルキル鎖、エステル、アミド、エーテル、ウレイド、ウレタン、カルバミン酸エステル、またはそれらの組合せであり、R4がCH3、H、またはFであり、およびR5がHまたはFであるように、以下に詳述する2段階の合成手順を用いて調製される。
【0029】
【化2】

【実施例】
【0030】
実施例1.
一般的な眼科用モノマーの調製
水素化物含有シロキサン化合物を、溶媒または溶媒の組合せ中に溶解し、ハロゲン化アリルおよび技術上公知の標準ヒドロシリル化触媒により処理し、窒素雰囲気下で、GC、NMR、または他の適切な分析技術により測定される反応物質の定量的な損失をもたらすために十分な時間にわたり加熱した。次に、冷却溶液を減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィー、液−液抽出、および蒸留を含む、残留触媒および/または他の汚染物質を除去するための一つの技術または技術の組合せにより任意に精製する。得られる材料を、望ましい3級アミノ−ビニル化合物により処理され、ゲル化を引き起こすことなしで反応を促進するために十分な温度で加熱される求核置換反応用に適切な溶媒中に溶解する。溶媒を減圧下で除去し、得られる材料を真空ストリッピング、液−液抽出およびカラムクロマトグラフィーを含む技術上周知のいくつかの技術の一つまたはそれらの組合せにより精製することができる。
【0031】
実施例2
分析測定
NMR:当該技術分野における標準技術を用いる400MHzバリアン分光計を用いて1H−NMR分析を行った。試料を特記のない限り20mg/mLの濃度でクロロホルム−d(99.8原子%D)中に溶解した。7.25ppmで残留クロロホルムピークを指定することにより化学シフトを決定した。ピーク面積を、基線分離ピークの積分により決定し、最も近くで0.01に丸められるすべての生成物ピークの全体正規化面積の比率として報告する。分裂パターン(s=1重項、d=2重項、t=3重項、q=4重項、m=多重項、br=広域)および結合定数(J/Hz)は、存在し明確に識別可能な場合に報告されるが、しかし、当業者が認識することができるように、報告される分裂の欠如は、必ずしも開示される眼科用モノマーにおける分裂の欠如を示すものではない。
【0032】
機械的性質および酸素透過性:弾性率および伸び試験を、ヒドロゲル膜試料がホウ酸緩衝生理食塩水中に浸漬されるインストロン(Instron)(モデル4502)装置を用いてASTM・D−1708aに従って行った;膜試料の適切なサイズはゲージ長さ22mmおよび幅4.75mmであると共に、試料は、さらに、インストロン装置のクランプによる試料の握りに合わせるために犬用の骨形状、および厚さ200+50μmを形成する末端を有する。
【0033】
酸素透過係数(Dkとも呼ばれる)を以下の手順により測定した。そこから得られる酸素透過係数値が記載の方法と等価である限り、他の方法および/または装置は用いることが可能である。シリコンヒドロゲルの酸素透過係数を、その末端での中心円形金陰極および陰極から絶縁される銀陽極を含有するプローブを有するO2パーメオメーター(Permeometer)モデル201T装置(米国カリフォルニア州、アルバニーのクレアテック(Createch))を用いて、ポーラログラフ法(ANSI・Z80.20−1998)により測定する。測定は、150〜600μm範囲にある三つの異なる中心厚さの、予備検査したピンホールなしの平坦なシリコンヒドロゲル膜試料上だけで行う。膜試料の中心厚さ測定は、レーダー(Rehder)ET−1隙間ゲージを用いて測定することが可能である。一般に、膜試料は円板形状を有する。測定は、膜試料およびプローブを35℃+/−0.2°で平衡化した循環リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含有する浴槽中に浸漬して行う。プローブおよび膜試料をPBS浴槽中に浸漬する前に、膜試料を平衡化PBSで前もって濡らした陰極上に置いて集中化し、気泡または過剰のPBSが陰極と膜試料間に全く存在しないことを確実にすると共に、次に、プローブの陰極部分を膜試料にのみ接触させて、膜試料を取り付けキャップによりプローブに固定する。シリコンヒドロゲル膜に対して、プローブ陰極と膜試料間に、例えば円板形状を有するテフロン(登録商標)ポリマー膜を用いることは、多くの場合に有用である。こうした場合に、テフロン(登録商標)膜は最初に前もって濡らした陰極上に置かれ、次に、膜試料がテフロン(登録商標)膜上に置かれ、気泡または過剰のPBSがテフロン(登録商標)膜または膜試料の下に全く存在しないことを確実にする。一旦測定値が集められると、0.97以上の相関係数値(R2)を有するデータだけをDk値の計算に入れることが好ましい。厚さ当りの少なくとも二つのDk測定値、および合致するR2値が得られる。公知の回帰分析を用いて、少なくとも三つの異なる厚さを有する膜試料から酸素透過係数(Dk)を計算する。PBS以外の溶液により水和されるあらゆる膜試料を最初に精製水中に浸漬し、放置して少なくとも24時間にわたり平衡化し、次に、PHB中に浸漬し、放置して少なくとも12時間にわたり平衡化する。装置は規則的に洗浄され、RGP標準を用いて規則的に校正される。上限および下限値は、その開示内容について本明細書においてその全体が包含されるWilliam J.Benjamin,et al.,The Oxygen Permeability of Reference Materials,Optom Vis Sci 7(12s):95(1997)により確立される包括値の+/−8.8%を計算することにより確立される:
材料名 包括値 下限 上限
フルオロパーム30 26.2 24 29
メニコンEX 62.4 56 66
クアンタムII 92.9 85 101
【0034】
特記のない限り、またはその使用法により明確にされない限り、本出願書中に用いられるすべての数は、用語「約」により修飾されると考えることが好ましい。
【0035】
膜をガラス板から除去し、最小4時間にわたり脱イオンH2O中で水和/抽出し、新鮮脱イオンH2O中に移し、121℃で30分オートクレーブ処理した。次に、冷却膜について、表2に記載されるように眼科材料における対象の選択された特性を分析した。機械試験を、上述のASTM・D−1708aに従ってホウ酸緩衝生理食塩水中で行った。Dk(またはバーラー)単位で報告される酸素透過係数を、上述のように三つの異なる厚さを有する許容可能な膜を用いて、35℃でリン酸緩衝生理食塩水中において測定した。
【0036】
略語
NVP 1−ビニル−2−ピロリドン
DMA N,N−ジメチルアクリルアミド
TRIS メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン
HEMA メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
AIBN 2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)
Darocur 2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン
TBA t−ブタノール
TBE メタクリル酸4−t−ブチル−2−ヒドロキシ−シクロヘキシル
MMA メタクリル酸メチル
【0037】
実施例3
試薬
試薬臭化アリル、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、キシレン中の白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体、N,N−ジメチルアクリルアミド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、クロロホルム−d、t−ブタノール、メタクリル酸メチル、およびすべての溶媒をウィスコンシン州、ミルウォーキーのシグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)から購入し、さらなる精製なしで用いた。1−ビニル−2−ピロリドンおよびメタクリル酸2−ヒドロキシエチルをウィスコンシン州、ミルウォーキーのシグマ・アルドリッチから購入し、使用前に蒸留した。メタクリル酸4−t−ブチル−2−ヒドロキシシクロヘキシルをアロン・ケミカルズ(Aron Chemicals)から得た。試薬トリス(トリメチルシロキシ)シラン、メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、および水素化物末端ポリ(ジメチルシロキサン)(平均分子量1000〜1100g/モル)を、ペンシルベニア州、モリスビルのゲレスト(Gerest,Inc.)から購入した。
【0038】
眼科用モノマー1の調製
2:1(v/v)テトラヒドロフラン/ジオキサン溶液(920mL)中の臭化アリル(40mL、0.46モル)およびトリス(トリメチルシロキシ)シラン(168mL、0.48モル)を、キシレン(1.2mL)中の10%白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体により処理し、60℃で、窒素雰囲気下、15時間にわたり加熱した。冷却溶液を減圧下で濃縮し、2部に分割し、シリカゲルカラム(5X20cm、ペンタン)に通し、再結合して、再度溶媒を減圧下で除去した。得られる無色液体を酢酸エチル(375mL)中に溶解し、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(71mL、0.42モル)により処理し、60℃、暗闇で加熱した。GCを用いて転化率を監視した。その時間に結晶固形物が溶液から沈殿する約50時間後に、溶液を周囲温度に冷却した。沈殿物を濾過し、酢酸エチルから2回再結晶化して、無色の結晶固形物(109.2g)として眼科用モノマー1を得た:1HNMR(CDCl3、400MHz)δ6.13(s、0.02H)、5.66(s、0.02H)、4.65〜4.63(m、0.04H)、4.18〜4.16(m、0.04H)、3.69〜3.62(m、0.08H)、3.49(s、0.12H)、1.93〜1.82(m、0.12H)、1.62〜1.56(m、0.04H)、0.09(s、0.51H);mp114〜116℃。眼科用モノマー1のプロトンNMRスペクトルは図1として包含される。
【0039】
【化3】

【0040】
実施例4
眼科用モノマー1を含有する物品の光重合
眼科用モノマー1を含有する液体モノマー溶液を、種々の厚さでのシラン化ガラス板間に留め、フリーラジカル発生用添加剤の光化学分解を用いて重合した。表1に一覧する各例は、透明で不粘着、不溶性の膜をもたらす配合物を示す。
【0041】
表1.眼科用モノマー1を含有する透明物品の光重合
【表1】

【0042】
実施例5
眼科用モノマー1を含有する物品の熱重合
眼科用モノマー1を含有する液体モノマー溶液を、種々の厚さでのシラン化ガラス板間に留め、100℃で、窒素雰囲気下、2時間加熱することにより、フリーラジカル発生用添加剤の熱分解を用いて重合した。表2に一覧する各代表的な配合物例は、透明で不粘着、不溶性の膜をもたらした。
【0043】
表2.眼科用モノマー1を含有する透明物品の熱重合
【表2】

【0044】
実施例6
眼科用モノマー1を含有する加工物品の特性
上記例からの眼科用モノマー1を含有する代表的な膜を、脱イオン水中で最小4時間にわたる水和および抽出にかけ、次に、また脱イオン水中でオートクレーブ滅菌処理した。次に、眼科用途に対する対象の特性を測定した(表3)。
【0045】
表3.眼科用モノマー1を含有する加工物品の選択された特性
【表3】

【0046】
実施例7
眼科用モノマー2の調製
窒素雰囲気下で、テトラヒドロフラン/1,4−ジオキサン(2:1v/v、570mL)中の水素化物末端ポリ(ジメチルシロキサン)(99.3g、1000〜1100Mn)および臭化アリル(25mL、287mモル)溶液に、キシレン(0.7mL)中の10%白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体を添加し、溶液を60℃で15時間加熱した。冷却溶液を減圧下で濃縮し、ペンタン(250mL)中で再溶解し、シリカゲル(40g)上で15時間攪拌し、濾過し、再度溶媒を減圧下で除去した。次に、無色液体を酢酸エチル(140mL)中に溶解し、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(94mL、557mモル)により処理し、窒素雰囲気下、60℃で、暗闇において100時間加熱した。冷却溶液を真空除去して溶媒および残留メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチルを除き、蝋様固形物(99.4g)として眼科用モノマー2を得た:1HNMR(CDCl3、400MHz)δ6.19(s、0.01H)、5.66(s、0.01)、4.64(br、0.02H)、1.76(br、0.02H)、3.70〜3.64(m、0.04H)、3.50(0.06H)、1.94〜1.83(m、0.05H)、1.63〜1.55(m、0.02H)、0.05(s、0.78H)。眼科用モノマー2のプロトンNMRスペクトルは、ピーク面積積分比に関する点を除いて図1に示す眼科用モノマー1のそれに実質的に類似の外観にある。
【0047】
【化4】

【0048】
実施例8
眼科用モノマー2を含有する物品の熱重合
眼科用モノマー2を含有する液体モノマー溶液を、種々の厚さでのシラン化ガラス板間に留め、100℃で、窒素雰囲気下、2時間加熱することにより、フリーラジカル発生用添加剤の熱分解を用いて重合した。表4に一覧する各代表的な配合物例は、透明で不粘着、不溶性の膜をもたらした。
【0049】
表4.眼科用モノマー2を含有する透明物品の熱重合
【表4】

【0050】
実施例9
眼科用モノマー2を含有する加工物品の特性
上記例からの眼科用モノマー2を含有する代表的な膜を、脱イオン水中で最小4時間にわたる水和および抽出にかけ、次に、また脱イオン水中でオートクレーブ滅菌処理した。次に、眼科用途に対する対象の特性を測定した(表5)。
【0051】
表5.眼科用モノマー2を含有する加工物品の選択された特性
【表5】

【0052】
元々提供され、且つそれらを修正することが可能であるクレームは、現在予期しえないかまたは理解されていないもの、および例えば、出願者/特許権者および他から生じることが可能であるものを含む、変形、代替、修正、改善、同等物、および本明細書において開示される実施形態および教示の実質的な同等物を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例1により調製されるモノマーのNMRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化物含有シロキサン化合物を提供し、
水素化物含有シロキサン化合物を溶媒または溶媒の組合せ中に溶解し、
溶解した水素化物含有シロキサン化合物をハロゲン化アリルおよび標準ヒドロシリル化触媒により処理して、第1反応混合物を形成し、
第1反応混合物を、窒素雰囲気下で、適切な分析技術により測定される反応物質の定量的な損失をもたらすために十分な時間にわたり加熱し、その結果モノマー混合物を提供し、
モノマー混合物を冷却し、
冷却混合物を濃縮し、
冷却混合物を求核置換反応用に適切な溶媒中に溶解し、
求核置換反応用に適切な溶媒を含有する冷却混合物をt−アミノ−ビニル化合物で処理して、第2反応混合物を形成し、
第2反応混合物を、ゲル化を引き起こすことなく反応を促進するために十分な温度で加熱し、
あらゆる残留溶媒を除去して製品含有材料を提供し、および
製品含有材料を精製して水抽出可能医療機器形成性モノマーを得ること、
を含む、水抽出可能医療機器形成性モノマーを調製する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法により調製されるモノマー。
【請求項3】
実施例2に記載される方法により測定される以下の特性の少なくとも一つを有する請求項2に記載のモノマー:
0質量%〜約80質量%の水含量、
約10〜約200の酸素透過係数(Dk)、または
約20g/mm2〜約2000g/mm2の弾性率。
【請求項4】
科学上の誤差の一般に許容される標準内の図1に同等である実施例2に記載される方法により調製されるNMRスペクトルを有する、請求項1に記載の方法により調製されるモノマー。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2009−522373(P2009−522373A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−549631(P2008−549631)
【出願日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/060071
【国際公開番号】WO2007/082121
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(506076640)ボーシュ アンド ローム インコーポレイティド (99)
【Fターム(参考)】