集合導体
【課題】集合導体において絶縁性を保持して導体占積率を可及的に向上させる。
【解決手段】各々、全体横断面形状を分割した一部の形状の横断面を有する複数の導体線が一体化した集合導体であって、それらの複数の導体線は、内部に配置された複数の第1導体線1と、複数の第1導体線1の周囲を覆うように配置された複数の第2導体線3とにより構成され、各第1導体線1は、第1の絶縁膜2に覆われ、各第2導体線3は、第1の絶縁膜2よりも厚く形成された第2の絶縁膜4に覆われている。
【解決手段】各々、全体横断面形状を分割した一部の形状の横断面を有する複数の導体線が一体化した集合導体であって、それらの複数の導体線は、内部に配置された複数の第1導体線1と、複数の第1導体線1の周囲を覆うように配置された複数の第2導体線3とにより構成され、各第1導体線1は、第1の絶縁膜2に覆われ、各第2導体線3は、第1の絶縁膜2よりも厚く形成された第2の絶縁膜4に覆われている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合導体に関し、特に、複数の導体線が束ねられて一体に構成された集合導体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電磁機械器具のコイルに用いられるマグネットワイヤとして、複数の導体線が束ねられて一体に構成された集合導体が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数本の自己融着性平角エナメル線を集合、転位、撚合わせて得られる撚線の外周に絶縁テープを螺旋巻きしてなる自己融着性転位電線において、自己融着性平角エナメル線が自己潤滑・自己融着性平角エナメル線であるものが開示されている。そして、特許文献1には、この自己融着性転位電線によれば、転位電線の製造作業及びコイル巻線作業時には素線同志が優れた相互滑り性を発揮し、しかもコイルの熱融着時には素線相互が強固に熱融着できる、と記載されている。
【特許文献1】特開平11−203948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電気自動車のモーター用のマグネットワイヤとして、集合導体が注目されている。このモーター用途の集合導体では、モーターの性能を向上させるために、その横断面における導体部の面積が占める割合、すなわち、導体占積率を向上させる必要があると共に、集合導体の絶縁性を保持する必要がある。ここで、集合導体の絶縁性は、導体部の周囲に設けられた絶縁部の厚さなどに依存するので、集合導体において、導体占積率の向上と絶縁性の保持とは、トレードオフの関係にある。また、集合導体にポリイミドフィルムなどの絶縁テープをらせん状に重ね合わせて巻くことにより、集合導体の絶縁性を保持する方法は、実用化されているものの、その作業性が低く、また、絶縁テープを巻く際に不要な空間が形成され易いので、集合導体の絶縁性が不均一になったり、導体占積率が低下したりするおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、集合導体において絶縁性を保持して導体占積率を可及的に向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、集合導体の外周に配置された各第2導体線を覆う第2の絶縁膜が集合導体の内部に配置された各第1導体線を覆う第1の絶縁膜よりも厚くなるようにしたものである。
【0007】
具体的に本発明に係る集合導体は、各々、全体横断面形状を分割した一部の形状の横断面を有する複数の導体線が一体化した集合導体であって、上記複数の導体線は、内部に配置された複数の第1導体線と、該複数の第1導体線の周囲を覆うように配置された複数の第2導体線とにより構成され、上記各第1導体線は、第1の絶縁膜に覆われ、上記各第2導体線は、上記第1の絶縁膜よりも厚く形成された第2の絶縁膜に覆われていることを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、集合導体の内部において、各第1導体線の間には、相対的に薄い第1の絶縁膜が設けられているので、集合導体の横断面における絶縁部の占める割合が低くなって、集合導体の導体占積率が向上する。また、集合導体の周壁には、各第2導体線の間に設けられた相対的に厚い第2の絶縁膜が配置するので、集合導体同士の絶縁性が保持される。ここで、一般的な集合導体では、各導体線における電流がその長さ方向に沿って流れるので、各導体線間の絶縁性よりも、集合導体同士の絶縁性が重要視される。したがって、各第1導体線が配置された集合導体の内部構造によって導体占積率を向上させると共に、各第2導体線が配置された集合導体の外周構造によって絶縁性を保持させることになるので、集合導体において絶縁性を保持して導体占積率を可及的に向上させることが可能になる。
【0009】
上記第1の絶縁膜は、上記各第1導体線を互いに結着するための結着材であってもよい。
【0010】
上記の構成によれば、第1の絶縁膜が結着材であるので、各第1導体線を互いに結着するための結着材によって、各第1導体線の絶縁性が保持される。そのため、各第1導体線の間に絶縁膜、結着材及び絶縁膜を積層して各第1導体線の絶縁性を保持する場合よりも、集合導体の導体占積率が向上する。
【0011】
上記第1の絶縁膜は、上記各第1導体線を被覆して絶縁するための絶縁薄膜と、該絶縁薄膜で被覆された各第1導体線を互いに結着するための結着材とを備えていてもよい。
【0012】
上記の構成によれば、各第1導体線に対して、絶縁薄膜及び結着材が順に積層されているので、各第1導体線における絶縁性を向上させることが可能になると共に、絶縁薄膜が結着材の下地膜になるので、各第1導体線に対する結着材の接着力が向上する。
【0013】
上記絶縁薄膜は、電着塗装により形成されていてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、絶縁薄膜が電着塗装により形成されているので、電着塗装する際の印加電圧を調整するだけで、絶縁薄膜を、例えば、0.5μm〜1.5μm程度に薄く均一に形成することが可能になり、絶縁薄膜の形成による集合導体における導体占積率の低下が抑制される。
【0015】
上記第2の絶縁膜は、上記各第2導体線を被覆して絶縁するための絶縁厚膜と、該絶縁厚膜で被覆された各第2導体線を互いに結着するための結着材とを備えていてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、各第2導体線に対して、絶縁厚膜及び結着材が順に積層されているので、各第2導体線における絶縁性を向上させることが可能になる。
【0017】
上記絶縁厚膜は、電着塗装により形成されていてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、絶縁厚膜が電着塗装により形成されているので、電着塗装する際の印加電圧を調整するだけで、絶縁厚膜を一度に、例えば、10μm〜20μm程度に厚く均一に形成することが可能になり、集合導体の絶縁性が保持される。
【0019】
上記各第2導体線の横断面積は、上記各第1導体線の横断面積よりも小さくなっていてもよい。
【0020】
上記の構成によれば、各第2導体線の横断面積が各第1導体線の横断面積よりも小さくなっているので、集合導体の横断面において集合導体の絶縁性の保持に寄与する第2の絶縁膜の占める割合が低くなって、集合導体の導体占積率が向上する。
【0021】
上記各第1導体線の横断面積は、上記各第2導体線の横断面積よりも小さくなっていてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、各第1導体線の横断面積が各第2導体線の横断面積よりも小さくなっているので、集合導体において各第1導体線が形成する導体の表面積が大きくなる。そのため、表皮効果によって導体の表面に電流が集中し易い高周波環境においても、低損失で電流を流すことが可能になる。
【0023】
上記各導体線は、上記各第1導体線の界面と上記各第2導体線の界面とが一致しないように配置されていてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、各第1導体線の界面と各第2導体線の界面とが一致していないので、各第1導体線の界面と各第2導体線の界面とが一致している場合よりも、集合導体を屈曲させた際の各導体線のばらけを抑制することが可能になる。
【0025】
上記各導体線の横断面は、矩形状に形成されていてもよい。
【0026】
上記の構成によれば、各導体線の横断面が矩形状になっているので、各導体線の側面を重ね合わせることにより、各導体線が幅方向及び高さ方向に容易に整列され、集合導体における導体占積率を向上させることが可能になる。
【0027】
上記各導体線は、無撚り状態で一体化されていてもよい。
【0028】
上記の構成によれば、各導体線が無撚り状態であるので、集合導体において、デッドスペースの形成が抑制されると共に、渦電流の発生が抑制される。
【0029】
上記各第1導体線には、相対的に高い電圧が供給されると共に、上記各第2導体線には、相対的に低い電圧が供給されるように構成されていてもよい。
【0030】
上記の構成によれば、集合導体の内部を構成する各第1導体線に相対的に高い電圧が供給され、集合導体の周壁を構成する各第2導体線に相対的に低い電圧が供給されるので、集合導体と、例えば、その集合導体を収容するステータコアの各スロットとの電位差が小さくなり、集合導体における電気性能及び信頼性を向上させることが可能になる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、集合導体の外周に配置された各第2導体線を覆う第2の絶縁膜が集合導体の内部に配置された各第1導体線を覆う第1の絶縁膜よりも厚く形成されているので、集合導体において絶縁性を保持して導体占積率を可及的に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の各実施形態に限定されるものではない。
【0033】
《発明の実施形態1》
図1〜図5は、本発明に係る集合導体の実施形態1を示している。
【0034】
図1は、本実施形態の集合導体10aの斜視図である。
【0035】
集合導体10aは、図1に示すように、その横断面において、例えば、5行(図中横方向)×2列(図中縦方向)に無撚り状態で整列された複数の第1導体線1と、各第1導体線1の間に設けられた結着材2と、5行×2列の第1導体線1の集合線の周囲を覆うように無撚り状態で整列された複数の第2導体線3と、各第2導体線3を被覆するように設けられた絶縁厚膜4と、絶縁厚膜4で被覆された各第2導体線3の間に設けられた結着材5とを備えている。ここで、各第1導体線1は、その表面に形成された結着材2によって互いに結着されて一体化されている。また、各第2導体線3は、その表面の絶縁厚膜4上に形成された結着材5によって互いに結着されると共に、5行×2列の第1導体線1の集合線に結着されて一体化されている。
【0036】
第1導体線1及び第2導体線3は、矩形状の横断面をそれぞれ有し、例えば、銅、アルミニウム、銀、鉄、金、又は、それらの合金などの導電性を有する材料により線状に構成されている。なお、第1導体線1及び第2導体線3の各横断面は、集合導体10aの矩形状の全体横断面形状を分割した一部の形状になっている。
【0037】
また、上記矩形状の横断面を有する第1導体線1(及び第2導体線3)とは、例えば、図2(a)に示すように、角部が直角である正方形の横断面を有する導体線1a、図2(b)に示すように、角部が直角である長方形の横断面を有する導体線1b、図2(c)に示すように、角部が円弧状である略正方形の横断面を有する導体線1c、図2(d)に示すように、角部が円弧状である略長方形の横断面を有する導体線1d、及び図2(e)に示すように、一方の対向する一対の辺が平行であり且つ他方の対向する一対の辺が円弧状であるトラック状の横断面を有する導体線1eなどから選択されるものである。
【0038】
さらに、第1導体線1及び第2導体線3の各横断面形状は、導体占積率や生産性などの観点から、上記矩形状が好ましいが、その他に、三角形、六角形などの多角形であってもよい。
【0039】
また、第1導体線1及び第2導体線3の各横断面形状は、その長さ方向に沿って全て同じでなくてもよく、例えば、横断面積がその長さ方向に沿って拡大又は縮小する相似形であってもよい。
【0040】
さらに、第1導体線1及び第2導体線3において、長辺の長さを短辺の長さの1倍〜1.5倍(好ましくは1倍〜1.2倍)とすることにより、m行×n列(m及びnは自然数)に整列させたとき、導体占積率が向上し大表面積の絶縁導体が得られるので、ハイブリッド車などの電気自動車に用いられるモーターの小型化及び軽量化を実現させることができる。
【0041】
また、第1導体線1及び第2導体線3の各横断面における一辺の長さは、例えば、0.03mm〜2mm(好ましくは0.05mm〜1mm)であり、0.03mmφ〜2.3mmφの丸線に対応するサイズであればよく、横断面積としては、0.0007mm2〜4mm2となる。
【0042】
なお、集合導体10aにおける各第1導体線1及び各第2導体線3は、例えば、正方形の横断面を有する導体線(1a)と三角形の横断面を有する導体線とを組み合わせて構成するなどして、全て同じ形状でなくてもよい。
【0043】
結着材2及び5の材質としては、融着剤として、ポリアミド系、ポリビニルブチラール系、エポキシ系、ポリエステル系などの熱融着性を有する樹脂や、アルコール可溶に変性されたポリアミド系などのアルコール融着性を有する樹脂が挙げられ、接着剤として、エポキシ系、ポリイミド系、フェノール系、ポリエステル系、ウレタン系などの樹脂が挙げられる。なお、結着材2及び5は、上記のような絶縁性を有する樹脂によって構成されているので、集合導体10における各第1導体線1及び各第2導体線3間の絶縁性を向上させることができる。
【0044】
結着材2及び5の膜厚は、0.5μm〜5μm(好ましくは1μm〜3μm)である。なお、上記融着剤は、ディップ塗装などにより塗布され、上記接着材は、外周壁から接着剤が供給されるロールコーター21a(図3参照)、当接面から接着剤が供給される含浸フェルト21b(図4参照)、ノズルから接着剤が供給されるスプレー21c(図5参照)などにより塗布される。ここで、結着材2及び5は、集合導体10aにおいて各第1導体線1及び各第2導体線3を固定できれば、各第1導体線1、及び絶縁厚膜4で被覆された各第2導体線3の表面に均一に形成されていなくてもよい。例えば、結着材2及び5は、各第1導体線1の表面、及び絶縁厚膜4で被覆された各第2導体線3の表面に点状やストライプ状に部分的に形成されていてもよい。この場合、各第1導体線1及び各第2導体線3間に形成される空間によって、第1導体線1同士及び第2導体線3同士がそれぞれ絶縁される。また、集合導体10aを構成する各第1導体線1には、同電位が供給されて第1導体線1同士の間で電流が行き来しにくいので、集合導体10aの使用形態によっては、各第1導体線1間の絶縁性が低くてもよい。
【0045】
絶縁厚膜4は、例えば、電着塗装を用いて、アクリル系、エポキシ系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリイミド系などの樹脂により形成され、又はディップ塗装を用いて、アミドイミド系、ウレタン系、エステルイミド系、ポリイミド系などの樹脂により形成されている。特に、電着塗装によって形成される絶縁厚膜4としては、絶縁性に優れるアクリル系の樹脂が好ましく、ディップ塗装によって形成される絶縁厚膜4としては、耐熱性に優れ、一般的な材料であるアミドイミド系の樹脂が好ましい。また、絶縁厚膜4の厚さは、5μm〜30μm程度(好ましくは、10μm〜20μm)であり、AC1kV以上(好ましくはAC2kV以上)の絶縁性を有していればよい。
【0046】
上記構成の集合導体10aは、モーターを構成するステータコアに形成された各スロット溝の内部において、例えば、複数個を重ねて配置されるものである。
【0047】
次に、上記構成の集合導体10aの製造方法について一例を挙げて説明する。
【0048】
まず、例えば、銅線を伸線して、一辺0.30mmの正方形の横断面を有する第1導体線1、及び一辺0.27mmの正方形の横断面を有する第2導体線3をそれぞれ作製する。
【0049】
続いて、作製された第1導体線1の表面に、融着剤として、例えば、エポキシ系ワニスを膜厚2μm程度にディップ塗装して結着材2を形成した後に、その第1導体線1を、例えば、長さ5m毎に切断して複数に分断する。
【0050】
そして、作製された第2導体線3の表面に、例えば、アクリル系ワニスを膜厚15μm程度に電着塗装して、絶縁厚膜4を形成する。さらに、絶縁厚膜4が形成された第2導体線3の表面に、融着剤として、例えば、エポキシ系ワニスを膜厚2μm程度にディップ塗装して結着材5を形成した後に、その第2導体線3を、例えば、長さ5m毎に切断して複数に分断する。
【0051】
引き続いて、図1に示すように、各々、表面に結着材2が形成された10本の第1導体線1を5行×2列に無撚り状態で整列させ、その整列させた集合線の周囲に、各々、表面に絶縁厚膜4を介して結着材5が形成された18本の第2導体線3を無撚り状態で整列させた後に、200℃程度に加熱することにより、隣り合った第1導体線1及び第2導体線3の各結着材2及び5を相互に融着一体化させる。
【0052】
以上のようにして、本実施形態の集合導体10aを製造することができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の集合導体10aによれば、集合導体10aの内部において、各第1導体線1の間には、相対的に薄い第1の絶縁膜として結着材2が設けられているので、集合導体10aの横断面における絶縁部の占める割合が低くなって、集合導体10aの導体占積率を向上させることができる。また、集合導体10aの周壁には、各第2導体線3の間に設けられた相対的に厚い第2の絶縁膜として、絶縁厚膜3及び結着材5が配置するので、集合導体10a同士の絶縁性を保持することができる。ここで、一般的な集合導体では、各導体線における電流がその長さ方向に沿って流れるので、各導体線間の絶縁性よりも、集合導体同士の絶縁性が重要視される。したがって、各第1導体線1が配置された集合導体10aの内部構造によって導体占積率を向上させると共に、各第2導体線3が配置された集合導体10aの外周構造によって絶縁性を保持させることになるので、集合導体10aにおいて絶縁性を保持して導体占積率を可及的に向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態の集合導体10aによれば、各第1導体線1を互いに結着するための結着材2によって、各第1導体線1の絶縁性が保持されるので、例えば、各第1導体線の間に絶縁膜、結着材及び絶縁膜を積層して各第1導体線の絶縁性を保持する場合よりも、集合導体の導体占積率を向上させることができる。
【0055】
また、本実施形態の集合導体10aによれば、各第2導体線3に対して、絶縁厚膜4及び結着材5が順に積層されているので、各第2導体線3における絶縁性を向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態の集合導体10aによれば、絶縁厚膜4が電着塗装により形成されているので、電着塗装する際の印加電圧を調整するだけで、絶縁厚膜を一度に、例えば、10μm〜20μm程度に厚く均一に形成することができ、集合導体10aの絶縁性を保持することができる。
【0057】
また、本実施形態の集合導体10aによれば、各第1導体線1及び各第2導体線3の横断面が矩形状になっているので、各第1導体線1及び各第2導体線3の側面を重ね合わせることにより、各第1導体線1及び各第2導体線3が幅方向及び高さ方向に容易に整列され、集合導体10aにおける導体占積率を向上させることができる。
【0058】
また、本実施形態の集合導体10aによれば、各第1導体線1及び各第2導体線3が無撚り状態であるので、集合導体10aにおいて、デッドスペースの形成を抑制すると共に、渦電流の発生を抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態の集合導体10aは、各第1導体線1に相対的に高い電圧が供給されると共に、各第2導体線3に相対的に低い電圧が供給されるように構成されていてもよい。これによれば、集合導体10aと、例えば、その集合導体10aを収容するステータコアの各スロットとの電位差が小さくなり、集合導体における電気性能及び信頼性を向上させることができる。
【0060】
《発明の実施形態2》
図6は、本実施形態の集合導体10bの斜視図である。なお、以下の各実施形態において、図1〜図5と同じ部分については同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0061】
集合導体10bは、図6に示すように、その横断面において、例えば、6行(図中横方向)×3列(図中縦方向)に無撚り状態で整列された複数の第1導体線1と、各第1導体線1の間に設けられた結着材2と、6行×3列の第1導体線1の集合線の周囲を覆うように無撚り状態で整列された複数の第2導体線3と、各第2導体線3を被覆するように設けられた絶縁厚膜4と、絶縁厚膜4で被覆された各第2導体線3の間に設けられた結着材5とを備えている。
【0062】
各第1導体線1の横断面は、例えば、一辺0.30mm程度の正方形であり、各第2導体線3の横断面は、例えば、一辺0.10mm程度の正方形であるので、各第2導体線3の横断面積は、図6に示すように、各第1導体線1の横断面積よりも小さくなっている。
【0063】
上記構成の集合導体10bは、上記実施形態1の各導体線のサイズ及び配列本数を変更すれば製造することができるので、製造方法の詳細な説明を省略する。
【0064】
本実施形態の集合導体10bによれば、上記実施形態1の効果の他に、各第2導体線3の横断面積が各第1導体線1の横断面積よりも小さくなっているので、集合導体10bの横断面において集合導体10bの絶縁性の保持に寄与する第2の絶縁膜(絶縁厚膜4及び結着材5)の占める割合が低くなって、集合導体の導体占積率を向上させることができる。
【0065】
《発明の実施形態3》
図7は、本実施形態の集合導体10cの斜視図である。
【0066】
集合導体10cは、図7に示すように、その横断面において、例えば、10行(図中横方向)×5列(図中縦方向)に無撚り状態で整列された複数の第1導体線1と、各第1導体線1の間に設けられた結着材2と、10行×5列の第1導体線1の集合線の周囲を覆うように無撚り状態で整列された複数の第2導体線3と、各第2導体線3を被覆するように設けられた絶縁厚膜4と、絶縁厚膜4で被覆された各第2導体線3の間に設けられた結着材5とを備えている。
【0067】
各第1導体線1の横断面は、例えば、縦0.10mm×横0.15mm程度の長方形であり、各第2導体線3の横断面は、例えば、一辺0.25mm程度の正方形であるので、各第1導体線1の横断面積は、図6に示すように、各第2導体線3の横断面積よりも小さくなっている。
【0068】
上記構成の集合導体10cは、上記実施形態1の各導体線のサイズ及び配列本数を変更すれば製造することができるので、製造方法の詳細な説明を省略する。
【0069】
本実施形態の集合導体10cによれば、上記実施形態1の効果の他に、各第1導体線1の横断面積が各第2導体線3の横断面積よりも小さくなっているので、集合導体10cにおいて各第1導体線1が形成する導体の表面積が大きくなる。そのため、表皮効果によって各第1導体線1の表面に電流が集中し易い高周波環境においても、低損失で電流を流すことができる。
【0070】
《発明の実施形態4》
図8は、本実施形態の集合導体10dの斜視図である。
【0071】
集合導体10dは、図8に示すように、その横断面において、例えば、6行(図中横方向)×3列(図中縦方向)に無撚り状態で整列された複数の第1導体線1と、各第1導体線1の間に設けられた結着材2と、6行×3列の第1導体線1の集合線の周囲を覆うように無撚り状態で整列された複数の第2導体線3と、各第2導体線3を被覆するように設けられた絶縁厚膜4と、絶縁厚膜4で被覆された各第2導体線3の間に設けられた結着材5とを備えている。
【0072】
各第1導体線1の横断面は、例えば、一辺0.30mm程度の正方形であるので、各第1導体線1の結着界面と各第2導体線3の結着界面とが一致していないように、各第2導体線3の横断面は、例えば、0.18mm〜0.25mm×0.33mm〜0.45mm程度の長方形になっている。
【0073】
上記構成の集合導体10dは、上記実施形態1の各導体線のサイズ及び配列本数を変更すれば製造することができるので、製造方法の詳細な説明を省略する。
【0074】
本実施形態の集合導体10dによれば、上記実施形態1の効果の他に、各第1導体線1の結着界面と各第2導体線3の結着界面とが一致していないので、各第1導体線の結着界面と各第2導体線の結着界面とが一致している場合よりも、集合導体10dを屈曲させた際の各導体線1及び3のばらけを抑制することができる。
【0075】
《発明の実施形態5》
図9は、本実施形態の集合導体10eの斜視図である。
【0076】
集合導体10eは、図9に示すように、その横断面において、例えば、4行(図中横方向)×3列(図中縦方向)に無撚り状態で整列された複数の第1導体線1と、各第1導体線1を被覆するように設けられた絶縁薄膜6と、絶縁薄膜6で被覆された各第1導体線1の間に設けられた結着材2と、4行×3列の第1導体線1の集合線の周囲を覆うように無撚り状態で整列された複数の第2導体線3と、各第2導体線3を被覆するように設けられた絶縁厚膜4と、絶縁厚膜4で被覆された各第2導体線3の間に設けられた結着材5とを備えている。
【0077】
絶縁薄膜6は、例えば、電着塗装を用いて、アクリル系、エポキシ系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリイミド系などの樹脂により形成され、又はディップ塗装を用いて、アミドイミド系、ウレタン系、エステルイミド系、ポリイミド系などの樹脂により形成されている。特に、電着塗装によって形成される絶縁薄膜6としては、絶縁性に優れるアクリル系の樹脂が好ましく、ディップ塗装によって形成される絶縁薄膜6としては、耐熱性に優れ、一般的な材料であるアミドイミド系の樹脂が好ましい。また、絶縁薄膜6の厚さは、0.5μm〜3μm程度(好ましくは、0.5μm〜1μm)である。
【0078】
次に、上記構成の集合導体10eの製造方法について一例を挙げて説明する。
【0079】
まず、例えば、銅線を伸線して、一辺0.30mmの正方形の横断面を有する第1導体線1、及び一辺0.27mmの正方形の横断面を有する第2導体線3をそれぞれ作製する。
【0080】
続いて、作製された第1導体線1の表面に、例えば、アクリル系ワニスを膜厚0.75μm程度に電着塗装して、絶縁薄膜6を形成した後に、その第1導体線1を、例えば、長さ5m毎に切断して複数に分断する。
【0081】
そして、作製された第2導体線3の表面に、例えば、アクリル系ワニスを膜厚15μm程度に電着塗装して、絶縁厚膜4を形成した後に、その第2導体線3を、例えば、長さ5m毎に切断して複数に分断する。
【0082】
さらに、絶縁薄膜6が形成された第1導体線1、及び絶縁厚膜4が形成された第2導体線3の所定の側面、すなわち、集合導体10eにおいて隣り合う各導体線(1及び3)の少なくとも一方の側面に、例えば、図3のロールコーター21a、図4の含浸フェルト21b、図5のスプレー21cなどを用いて、接着剤として、エポキシ系ワニスを膜厚2μm程度に塗布することにより、結着材2及び5を形成する。
【0083】
引き続いて、図9に示すように、各々、表面に結着材2が形成された12本の第1導体線1を4行×3列に無撚り状態で整列させ、その整列させた集合体の周囲に、各々、表面に結着材5が形成された18本の第2導体線3を無撚り状態で整列させた後に、200℃程度に加熱することにより、隣り合った第1導体線1及び第2導体線3の各結着材2及び5を相互に融着一体化させる。
【0084】
以上のようにして、本実施形態の集合導体10eを製造することができる。
【0085】
以上説明したように、本実施形態の集合導体10eによれば、集合導体10eの内部において、各第1導体線1の間には、相対的に薄い第1の絶縁膜として絶縁薄膜6及び結着材2が設けられているので、集合導体10eの横断面における絶縁部の占める割合が低くなって、集合導体10eの導体占積率を向上させることができる。また、集合導体10eの周壁には、各第2導体線3の間に設けられた相対的に厚い第2の絶縁膜として、絶縁厚膜4及び結着材5が配置するので、集合導体10e同士の絶縁性を保持することができる。ここで、一般的な集合導体では、各導体線における電流がその長さ方向に沿って流れるので、各導体線間の絶縁性よりも、集合導体同士の絶縁性が重要視される。したがって、各第1導体線1が配置された集合導体10eの内部構造によって導体占積率を向上させると共に、各第2導体線3が配置された集合導体10eの外周構造によって絶縁性を保持させることになるので、集合導体10eにおいて絶縁性を保持して導体占積率を可及的に向上させることができる。
【0086】
また、本実施形態の集合導体10eによれば、各第1導体線1に対して、絶縁薄膜6及び結着材2が順に積層されているので、各第1導体線1における絶縁性を向上させることができると共に、絶縁薄膜6が結着材2の下地膜になるので、各第1導体線1に対する結着材2の接着力を向上させることができる。さらに、各第1導体線1に絶縁薄膜6及び結着材2が順に積層され、各第2導体線3に絶縁厚膜4及び結着材5が順に積層されているので、各導体線1及び3の構成が同じになって、集合導体10eの内部及び外周における接着(結着)性のアンバランスを解消することができる。
【0087】
また、本実施形態の集合導体10eによれば、絶縁薄膜6が電着塗装により形成されているので、電着塗装する際の印加電圧を調整するだけで、絶縁薄膜6を、例えば、0.5μm〜1.5μm程度に薄く均一に形成することができ、絶縁薄膜6の形成による集合導体10eにおける導体占積率の低下を抑制することができる。
【0088】
また、本実施形態の集合導体10eによれば、各第1導体線1に対する絶縁薄膜6の密着性、及び各第2導体線3に対する絶縁厚膜4の密着性が高いので、屈曲させたときの被膜剥がれを抑制することができる。
【0089】
また、本実施形態の集合導体10eによれば、相対的に薄い絶縁薄膜6に被覆された各第1導体線1を内側に、及び相対的に厚い絶縁厚膜4に被覆された各第2導体線3を外側に配列させるだけで、絶縁性を保持して導体占積率を向上させることができるので、高い生産性で集合導体を製造することができる。
【0090】
ここで、本実施形態の集合導体10eに対応する比較例の集合導体110aでは、図10に示すように、各々、絶縁薄膜102で被覆された複数の導体線101を結着材103を介して結着させた集合線に対し、ポリイミドフィルムなどの絶縁テープ104がらせん状に重ね合わせて巻かれている。この集合導体110aでは、その作業性が低く、絶縁テープ104を巻く際に不要な空間が形成され易いので、集合導体110aの絶縁性が不均一になったり、導体占積率が低下したりするおそれがある。ここで、絶縁テープ104の厚さを薄くすれば、巻き易くなって作業性が高くなるものの、集合導体110aの絶縁性を低下させるおそれがある。また、比較例の集合導体110bでは、図11に示すように、各々、絶縁薄膜102で被覆された複数の導体線101を結着材103を介して結着させた集合線に対し、紫外線硬化樹脂などの絶縁被覆層105がコーティングされている。この集合導体110bでは、角部において絶縁被覆層105が薄くなり易いので、集合導体110bの絶縁性を低下させるおそれがある。
【0091】
また、本実施形態の集合導体10eによれば、形状に拘束力のある絶縁テープ104や絶縁被覆層105が外周に構成されていないので、屈曲させ易い集合導体を提供することができる。
【0092】
上記各実施形態では、結着材2及び5として、融着剤又は接着剤を用いる構成及び製造方法を例示したが、本発明は、例えば、集合導体の内部及び外周における接着性のアンバランスを解消するために、結着材2として金属用接着剤を用いると共に、結着材5としてプラスチック用融着剤を用いるなどするように、融着剤及び接着剤を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上説明したように、本発明は、集合導体における導体占積率を向上させることができるので、モーター用途のマグネットワイヤについて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】実施形態1に係る集合導体10aの斜視図である。
【図2】集合導体10aを構成する第1導体線1(1a〜1e)の断面図である。
【図3】第1導体線1に接着材2を塗布するためのロールコーター21aの模式図である。
【図4】第1導体線1に接着材2を塗布するための含浸フェルト21bの模式図である。
【図5】第1導体線1に接着材2を塗布するためのスプレー21cの模式図である。
【図6】実施形態2に係る集合導体10bの斜視図である。
【図7】実施形態3に係る集合導体10cの斜視図である。
【図8】実施形態4に係る集合導体10dの斜視図である。
【図9】実施形態5に係る集合導体10eの断面図である。
【図10】従来の集合導体110aの断面図である。
【図11】従来の集合導体110bの断面図である。
【符号の説明】
【0095】
1 第1導体線
2 結着材(第1の絶縁膜)
3 第2導体線
4 絶縁厚膜(第2の絶縁膜)
5 結着材(第2の絶縁膜)
6 絶縁薄膜(第1の絶縁膜)
10a〜10e 集合導体
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合導体に関し、特に、複数の導体線が束ねられて一体に構成された集合導体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電磁機械器具のコイルに用いられるマグネットワイヤとして、複数の導体線が束ねられて一体に構成された集合導体が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数本の自己融着性平角エナメル線を集合、転位、撚合わせて得られる撚線の外周に絶縁テープを螺旋巻きしてなる自己融着性転位電線において、自己融着性平角エナメル線が自己潤滑・自己融着性平角エナメル線であるものが開示されている。そして、特許文献1には、この自己融着性転位電線によれば、転位電線の製造作業及びコイル巻線作業時には素線同志が優れた相互滑り性を発揮し、しかもコイルの熱融着時には素線相互が強固に熱融着できる、と記載されている。
【特許文献1】特開平11−203948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電気自動車のモーター用のマグネットワイヤとして、集合導体が注目されている。このモーター用途の集合導体では、モーターの性能を向上させるために、その横断面における導体部の面積が占める割合、すなわち、導体占積率を向上させる必要があると共に、集合導体の絶縁性を保持する必要がある。ここで、集合導体の絶縁性は、導体部の周囲に設けられた絶縁部の厚さなどに依存するので、集合導体において、導体占積率の向上と絶縁性の保持とは、トレードオフの関係にある。また、集合導体にポリイミドフィルムなどの絶縁テープをらせん状に重ね合わせて巻くことにより、集合導体の絶縁性を保持する方法は、実用化されているものの、その作業性が低く、また、絶縁テープを巻く際に不要な空間が形成され易いので、集合導体の絶縁性が不均一になったり、導体占積率が低下したりするおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、集合導体において絶縁性を保持して導体占積率を可及的に向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、集合導体の外周に配置された各第2導体線を覆う第2の絶縁膜が集合導体の内部に配置された各第1導体線を覆う第1の絶縁膜よりも厚くなるようにしたものである。
【0007】
具体的に本発明に係る集合導体は、各々、全体横断面形状を分割した一部の形状の横断面を有する複数の導体線が一体化した集合導体であって、上記複数の導体線は、内部に配置された複数の第1導体線と、該複数の第1導体線の周囲を覆うように配置された複数の第2導体線とにより構成され、上記各第1導体線は、第1の絶縁膜に覆われ、上記各第2導体線は、上記第1の絶縁膜よりも厚く形成された第2の絶縁膜に覆われていることを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、集合導体の内部において、各第1導体線の間には、相対的に薄い第1の絶縁膜が設けられているので、集合導体の横断面における絶縁部の占める割合が低くなって、集合導体の導体占積率が向上する。また、集合導体の周壁には、各第2導体線の間に設けられた相対的に厚い第2の絶縁膜が配置するので、集合導体同士の絶縁性が保持される。ここで、一般的な集合導体では、各導体線における電流がその長さ方向に沿って流れるので、各導体線間の絶縁性よりも、集合導体同士の絶縁性が重要視される。したがって、各第1導体線が配置された集合導体の内部構造によって導体占積率を向上させると共に、各第2導体線が配置された集合導体の外周構造によって絶縁性を保持させることになるので、集合導体において絶縁性を保持して導体占積率を可及的に向上させることが可能になる。
【0009】
上記第1の絶縁膜は、上記各第1導体線を互いに結着するための結着材であってもよい。
【0010】
上記の構成によれば、第1の絶縁膜が結着材であるので、各第1導体線を互いに結着するための結着材によって、各第1導体線の絶縁性が保持される。そのため、各第1導体線の間に絶縁膜、結着材及び絶縁膜を積層して各第1導体線の絶縁性を保持する場合よりも、集合導体の導体占積率が向上する。
【0011】
上記第1の絶縁膜は、上記各第1導体線を被覆して絶縁するための絶縁薄膜と、該絶縁薄膜で被覆された各第1導体線を互いに結着するための結着材とを備えていてもよい。
【0012】
上記の構成によれば、各第1導体線に対して、絶縁薄膜及び結着材が順に積層されているので、各第1導体線における絶縁性を向上させることが可能になると共に、絶縁薄膜が結着材の下地膜になるので、各第1導体線に対する結着材の接着力が向上する。
【0013】
上記絶縁薄膜は、電着塗装により形成されていてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、絶縁薄膜が電着塗装により形成されているので、電着塗装する際の印加電圧を調整するだけで、絶縁薄膜を、例えば、0.5μm〜1.5μm程度に薄く均一に形成することが可能になり、絶縁薄膜の形成による集合導体における導体占積率の低下が抑制される。
【0015】
上記第2の絶縁膜は、上記各第2導体線を被覆して絶縁するための絶縁厚膜と、該絶縁厚膜で被覆された各第2導体線を互いに結着するための結着材とを備えていてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、各第2導体線に対して、絶縁厚膜及び結着材が順に積層されているので、各第2導体線における絶縁性を向上させることが可能になる。
【0017】
上記絶縁厚膜は、電着塗装により形成されていてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、絶縁厚膜が電着塗装により形成されているので、電着塗装する際の印加電圧を調整するだけで、絶縁厚膜を一度に、例えば、10μm〜20μm程度に厚く均一に形成することが可能になり、集合導体の絶縁性が保持される。
【0019】
上記各第2導体線の横断面積は、上記各第1導体線の横断面積よりも小さくなっていてもよい。
【0020】
上記の構成によれば、各第2導体線の横断面積が各第1導体線の横断面積よりも小さくなっているので、集合導体の横断面において集合導体の絶縁性の保持に寄与する第2の絶縁膜の占める割合が低くなって、集合導体の導体占積率が向上する。
【0021】
上記各第1導体線の横断面積は、上記各第2導体線の横断面積よりも小さくなっていてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、各第1導体線の横断面積が各第2導体線の横断面積よりも小さくなっているので、集合導体において各第1導体線が形成する導体の表面積が大きくなる。そのため、表皮効果によって導体の表面に電流が集中し易い高周波環境においても、低損失で電流を流すことが可能になる。
【0023】
上記各導体線は、上記各第1導体線の界面と上記各第2導体線の界面とが一致しないように配置されていてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、各第1導体線の界面と各第2導体線の界面とが一致していないので、各第1導体線の界面と各第2導体線の界面とが一致している場合よりも、集合導体を屈曲させた際の各導体線のばらけを抑制することが可能になる。
【0025】
上記各導体線の横断面は、矩形状に形成されていてもよい。
【0026】
上記の構成によれば、各導体線の横断面が矩形状になっているので、各導体線の側面を重ね合わせることにより、各導体線が幅方向及び高さ方向に容易に整列され、集合導体における導体占積率を向上させることが可能になる。
【0027】
上記各導体線は、無撚り状態で一体化されていてもよい。
【0028】
上記の構成によれば、各導体線が無撚り状態であるので、集合導体において、デッドスペースの形成が抑制されると共に、渦電流の発生が抑制される。
【0029】
上記各第1導体線には、相対的に高い電圧が供給されると共に、上記各第2導体線には、相対的に低い電圧が供給されるように構成されていてもよい。
【0030】
上記の構成によれば、集合導体の内部を構成する各第1導体線に相対的に高い電圧が供給され、集合導体の周壁を構成する各第2導体線に相対的に低い電圧が供給されるので、集合導体と、例えば、その集合導体を収容するステータコアの各スロットとの電位差が小さくなり、集合導体における電気性能及び信頼性を向上させることが可能になる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、集合導体の外周に配置された各第2導体線を覆う第2の絶縁膜が集合導体の内部に配置された各第1導体線を覆う第1の絶縁膜よりも厚く形成されているので、集合導体において絶縁性を保持して導体占積率を可及的に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の各実施形態に限定されるものではない。
【0033】
《発明の実施形態1》
図1〜図5は、本発明に係る集合導体の実施形態1を示している。
【0034】
図1は、本実施形態の集合導体10aの斜視図である。
【0035】
集合導体10aは、図1に示すように、その横断面において、例えば、5行(図中横方向)×2列(図中縦方向)に無撚り状態で整列された複数の第1導体線1と、各第1導体線1の間に設けられた結着材2と、5行×2列の第1導体線1の集合線の周囲を覆うように無撚り状態で整列された複数の第2導体線3と、各第2導体線3を被覆するように設けられた絶縁厚膜4と、絶縁厚膜4で被覆された各第2導体線3の間に設けられた結着材5とを備えている。ここで、各第1導体線1は、その表面に形成された結着材2によって互いに結着されて一体化されている。また、各第2導体線3は、その表面の絶縁厚膜4上に形成された結着材5によって互いに結着されると共に、5行×2列の第1導体線1の集合線に結着されて一体化されている。
【0036】
第1導体線1及び第2導体線3は、矩形状の横断面をそれぞれ有し、例えば、銅、アルミニウム、銀、鉄、金、又は、それらの合金などの導電性を有する材料により線状に構成されている。なお、第1導体線1及び第2導体線3の各横断面は、集合導体10aの矩形状の全体横断面形状を分割した一部の形状になっている。
【0037】
また、上記矩形状の横断面を有する第1導体線1(及び第2導体線3)とは、例えば、図2(a)に示すように、角部が直角である正方形の横断面を有する導体線1a、図2(b)に示すように、角部が直角である長方形の横断面を有する導体線1b、図2(c)に示すように、角部が円弧状である略正方形の横断面を有する導体線1c、図2(d)に示すように、角部が円弧状である略長方形の横断面を有する導体線1d、及び図2(e)に示すように、一方の対向する一対の辺が平行であり且つ他方の対向する一対の辺が円弧状であるトラック状の横断面を有する導体線1eなどから選択されるものである。
【0038】
さらに、第1導体線1及び第2導体線3の各横断面形状は、導体占積率や生産性などの観点から、上記矩形状が好ましいが、その他に、三角形、六角形などの多角形であってもよい。
【0039】
また、第1導体線1及び第2導体線3の各横断面形状は、その長さ方向に沿って全て同じでなくてもよく、例えば、横断面積がその長さ方向に沿って拡大又は縮小する相似形であってもよい。
【0040】
さらに、第1導体線1及び第2導体線3において、長辺の長さを短辺の長さの1倍〜1.5倍(好ましくは1倍〜1.2倍)とすることにより、m行×n列(m及びnは自然数)に整列させたとき、導体占積率が向上し大表面積の絶縁導体が得られるので、ハイブリッド車などの電気自動車に用いられるモーターの小型化及び軽量化を実現させることができる。
【0041】
また、第1導体線1及び第2導体線3の各横断面における一辺の長さは、例えば、0.03mm〜2mm(好ましくは0.05mm〜1mm)であり、0.03mmφ〜2.3mmφの丸線に対応するサイズであればよく、横断面積としては、0.0007mm2〜4mm2となる。
【0042】
なお、集合導体10aにおける各第1導体線1及び各第2導体線3は、例えば、正方形の横断面を有する導体線(1a)と三角形の横断面を有する導体線とを組み合わせて構成するなどして、全て同じ形状でなくてもよい。
【0043】
結着材2及び5の材質としては、融着剤として、ポリアミド系、ポリビニルブチラール系、エポキシ系、ポリエステル系などの熱融着性を有する樹脂や、アルコール可溶に変性されたポリアミド系などのアルコール融着性を有する樹脂が挙げられ、接着剤として、エポキシ系、ポリイミド系、フェノール系、ポリエステル系、ウレタン系などの樹脂が挙げられる。なお、結着材2及び5は、上記のような絶縁性を有する樹脂によって構成されているので、集合導体10における各第1導体線1及び各第2導体線3間の絶縁性を向上させることができる。
【0044】
結着材2及び5の膜厚は、0.5μm〜5μm(好ましくは1μm〜3μm)である。なお、上記融着剤は、ディップ塗装などにより塗布され、上記接着材は、外周壁から接着剤が供給されるロールコーター21a(図3参照)、当接面から接着剤が供給される含浸フェルト21b(図4参照)、ノズルから接着剤が供給されるスプレー21c(図5参照)などにより塗布される。ここで、結着材2及び5は、集合導体10aにおいて各第1導体線1及び各第2導体線3を固定できれば、各第1導体線1、及び絶縁厚膜4で被覆された各第2導体線3の表面に均一に形成されていなくてもよい。例えば、結着材2及び5は、各第1導体線1の表面、及び絶縁厚膜4で被覆された各第2導体線3の表面に点状やストライプ状に部分的に形成されていてもよい。この場合、各第1導体線1及び各第2導体線3間に形成される空間によって、第1導体線1同士及び第2導体線3同士がそれぞれ絶縁される。また、集合導体10aを構成する各第1導体線1には、同電位が供給されて第1導体線1同士の間で電流が行き来しにくいので、集合導体10aの使用形態によっては、各第1導体線1間の絶縁性が低くてもよい。
【0045】
絶縁厚膜4は、例えば、電着塗装を用いて、アクリル系、エポキシ系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリイミド系などの樹脂により形成され、又はディップ塗装を用いて、アミドイミド系、ウレタン系、エステルイミド系、ポリイミド系などの樹脂により形成されている。特に、電着塗装によって形成される絶縁厚膜4としては、絶縁性に優れるアクリル系の樹脂が好ましく、ディップ塗装によって形成される絶縁厚膜4としては、耐熱性に優れ、一般的な材料であるアミドイミド系の樹脂が好ましい。また、絶縁厚膜4の厚さは、5μm〜30μm程度(好ましくは、10μm〜20μm)であり、AC1kV以上(好ましくはAC2kV以上)の絶縁性を有していればよい。
【0046】
上記構成の集合導体10aは、モーターを構成するステータコアに形成された各スロット溝の内部において、例えば、複数個を重ねて配置されるものである。
【0047】
次に、上記構成の集合導体10aの製造方法について一例を挙げて説明する。
【0048】
まず、例えば、銅線を伸線して、一辺0.30mmの正方形の横断面を有する第1導体線1、及び一辺0.27mmの正方形の横断面を有する第2導体線3をそれぞれ作製する。
【0049】
続いて、作製された第1導体線1の表面に、融着剤として、例えば、エポキシ系ワニスを膜厚2μm程度にディップ塗装して結着材2を形成した後に、その第1導体線1を、例えば、長さ5m毎に切断して複数に分断する。
【0050】
そして、作製された第2導体線3の表面に、例えば、アクリル系ワニスを膜厚15μm程度に電着塗装して、絶縁厚膜4を形成する。さらに、絶縁厚膜4が形成された第2導体線3の表面に、融着剤として、例えば、エポキシ系ワニスを膜厚2μm程度にディップ塗装して結着材5を形成した後に、その第2導体線3を、例えば、長さ5m毎に切断して複数に分断する。
【0051】
引き続いて、図1に示すように、各々、表面に結着材2が形成された10本の第1導体線1を5行×2列に無撚り状態で整列させ、その整列させた集合線の周囲に、各々、表面に絶縁厚膜4を介して結着材5が形成された18本の第2導体線3を無撚り状態で整列させた後に、200℃程度に加熱することにより、隣り合った第1導体線1及び第2導体線3の各結着材2及び5を相互に融着一体化させる。
【0052】
以上のようにして、本実施形態の集合導体10aを製造することができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の集合導体10aによれば、集合導体10aの内部において、各第1導体線1の間には、相対的に薄い第1の絶縁膜として結着材2が設けられているので、集合導体10aの横断面における絶縁部の占める割合が低くなって、集合導体10aの導体占積率を向上させることができる。また、集合導体10aの周壁には、各第2導体線3の間に設けられた相対的に厚い第2の絶縁膜として、絶縁厚膜3及び結着材5が配置するので、集合導体10a同士の絶縁性を保持することができる。ここで、一般的な集合導体では、各導体線における電流がその長さ方向に沿って流れるので、各導体線間の絶縁性よりも、集合導体同士の絶縁性が重要視される。したがって、各第1導体線1が配置された集合導体10aの内部構造によって導体占積率を向上させると共に、各第2導体線3が配置された集合導体10aの外周構造によって絶縁性を保持させることになるので、集合導体10aにおいて絶縁性を保持して導体占積率を可及的に向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態の集合導体10aによれば、各第1導体線1を互いに結着するための結着材2によって、各第1導体線1の絶縁性が保持されるので、例えば、各第1導体線の間に絶縁膜、結着材及び絶縁膜を積層して各第1導体線の絶縁性を保持する場合よりも、集合導体の導体占積率を向上させることができる。
【0055】
また、本実施形態の集合導体10aによれば、各第2導体線3に対して、絶縁厚膜4及び結着材5が順に積層されているので、各第2導体線3における絶縁性を向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態の集合導体10aによれば、絶縁厚膜4が電着塗装により形成されているので、電着塗装する際の印加電圧を調整するだけで、絶縁厚膜を一度に、例えば、10μm〜20μm程度に厚く均一に形成することができ、集合導体10aの絶縁性を保持することができる。
【0057】
また、本実施形態の集合導体10aによれば、各第1導体線1及び各第2導体線3の横断面が矩形状になっているので、各第1導体線1及び各第2導体線3の側面を重ね合わせることにより、各第1導体線1及び各第2導体線3が幅方向及び高さ方向に容易に整列され、集合導体10aにおける導体占積率を向上させることができる。
【0058】
また、本実施形態の集合導体10aによれば、各第1導体線1及び各第2導体線3が無撚り状態であるので、集合導体10aにおいて、デッドスペースの形成を抑制すると共に、渦電流の発生を抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態の集合導体10aは、各第1導体線1に相対的に高い電圧が供給されると共に、各第2導体線3に相対的に低い電圧が供給されるように構成されていてもよい。これによれば、集合導体10aと、例えば、その集合導体10aを収容するステータコアの各スロットとの電位差が小さくなり、集合導体における電気性能及び信頼性を向上させることができる。
【0060】
《発明の実施形態2》
図6は、本実施形態の集合導体10bの斜視図である。なお、以下の各実施形態において、図1〜図5と同じ部分については同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0061】
集合導体10bは、図6に示すように、その横断面において、例えば、6行(図中横方向)×3列(図中縦方向)に無撚り状態で整列された複数の第1導体線1と、各第1導体線1の間に設けられた結着材2と、6行×3列の第1導体線1の集合線の周囲を覆うように無撚り状態で整列された複数の第2導体線3と、各第2導体線3を被覆するように設けられた絶縁厚膜4と、絶縁厚膜4で被覆された各第2導体線3の間に設けられた結着材5とを備えている。
【0062】
各第1導体線1の横断面は、例えば、一辺0.30mm程度の正方形であり、各第2導体線3の横断面は、例えば、一辺0.10mm程度の正方形であるので、各第2導体線3の横断面積は、図6に示すように、各第1導体線1の横断面積よりも小さくなっている。
【0063】
上記構成の集合導体10bは、上記実施形態1の各導体線のサイズ及び配列本数を変更すれば製造することができるので、製造方法の詳細な説明を省略する。
【0064】
本実施形態の集合導体10bによれば、上記実施形態1の効果の他に、各第2導体線3の横断面積が各第1導体線1の横断面積よりも小さくなっているので、集合導体10bの横断面において集合導体10bの絶縁性の保持に寄与する第2の絶縁膜(絶縁厚膜4及び結着材5)の占める割合が低くなって、集合導体の導体占積率を向上させることができる。
【0065】
《発明の実施形態3》
図7は、本実施形態の集合導体10cの斜視図である。
【0066】
集合導体10cは、図7に示すように、その横断面において、例えば、10行(図中横方向)×5列(図中縦方向)に無撚り状態で整列された複数の第1導体線1と、各第1導体線1の間に設けられた結着材2と、10行×5列の第1導体線1の集合線の周囲を覆うように無撚り状態で整列された複数の第2導体線3と、各第2導体線3を被覆するように設けられた絶縁厚膜4と、絶縁厚膜4で被覆された各第2導体線3の間に設けられた結着材5とを備えている。
【0067】
各第1導体線1の横断面は、例えば、縦0.10mm×横0.15mm程度の長方形であり、各第2導体線3の横断面は、例えば、一辺0.25mm程度の正方形であるので、各第1導体線1の横断面積は、図6に示すように、各第2導体線3の横断面積よりも小さくなっている。
【0068】
上記構成の集合導体10cは、上記実施形態1の各導体線のサイズ及び配列本数を変更すれば製造することができるので、製造方法の詳細な説明を省略する。
【0069】
本実施形態の集合導体10cによれば、上記実施形態1の効果の他に、各第1導体線1の横断面積が各第2導体線3の横断面積よりも小さくなっているので、集合導体10cにおいて各第1導体線1が形成する導体の表面積が大きくなる。そのため、表皮効果によって各第1導体線1の表面に電流が集中し易い高周波環境においても、低損失で電流を流すことができる。
【0070】
《発明の実施形態4》
図8は、本実施形態の集合導体10dの斜視図である。
【0071】
集合導体10dは、図8に示すように、その横断面において、例えば、6行(図中横方向)×3列(図中縦方向)に無撚り状態で整列された複数の第1導体線1と、各第1導体線1の間に設けられた結着材2と、6行×3列の第1導体線1の集合線の周囲を覆うように無撚り状態で整列された複数の第2導体線3と、各第2導体線3を被覆するように設けられた絶縁厚膜4と、絶縁厚膜4で被覆された各第2導体線3の間に設けられた結着材5とを備えている。
【0072】
各第1導体線1の横断面は、例えば、一辺0.30mm程度の正方形であるので、各第1導体線1の結着界面と各第2導体線3の結着界面とが一致していないように、各第2導体線3の横断面は、例えば、0.18mm〜0.25mm×0.33mm〜0.45mm程度の長方形になっている。
【0073】
上記構成の集合導体10dは、上記実施形態1の各導体線のサイズ及び配列本数を変更すれば製造することができるので、製造方法の詳細な説明を省略する。
【0074】
本実施形態の集合導体10dによれば、上記実施形態1の効果の他に、各第1導体線1の結着界面と各第2導体線3の結着界面とが一致していないので、各第1導体線の結着界面と各第2導体線の結着界面とが一致している場合よりも、集合導体10dを屈曲させた際の各導体線1及び3のばらけを抑制することができる。
【0075】
《発明の実施形態5》
図9は、本実施形態の集合導体10eの斜視図である。
【0076】
集合導体10eは、図9に示すように、その横断面において、例えば、4行(図中横方向)×3列(図中縦方向)に無撚り状態で整列された複数の第1導体線1と、各第1導体線1を被覆するように設けられた絶縁薄膜6と、絶縁薄膜6で被覆された各第1導体線1の間に設けられた結着材2と、4行×3列の第1導体線1の集合線の周囲を覆うように無撚り状態で整列された複数の第2導体線3と、各第2導体線3を被覆するように設けられた絶縁厚膜4と、絶縁厚膜4で被覆された各第2導体線3の間に設けられた結着材5とを備えている。
【0077】
絶縁薄膜6は、例えば、電着塗装を用いて、アクリル系、エポキシ系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリイミド系などの樹脂により形成され、又はディップ塗装を用いて、アミドイミド系、ウレタン系、エステルイミド系、ポリイミド系などの樹脂により形成されている。特に、電着塗装によって形成される絶縁薄膜6としては、絶縁性に優れるアクリル系の樹脂が好ましく、ディップ塗装によって形成される絶縁薄膜6としては、耐熱性に優れ、一般的な材料であるアミドイミド系の樹脂が好ましい。また、絶縁薄膜6の厚さは、0.5μm〜3μm程度(好ましくは、0.5μm〜1μm)である。
【0078】
次に、上記構成の集合導体10eの製造方法について一例を挙げて説明する。
【0079】
まず、例えば、銅線を伸線して、一辺0.30mmの正方形の横断面を有する第1導体線1、及び一辺0.27mmの正方形の横断面を有する第2導体線3をそれぞれ作製する。
【0080】
続いて、作製された第1導体線1の表面に、例えば、アクリル系ワニスを膜厚0.75μm程度に電着塗装して、絶縁薄膜6を形成した後に、その第1導体線1を、例えば、長さ5m毎に切断して複数に分断する。
【0081】
そして、作製された第2導体線3の表面に、例えば、アクリル系ワニスを膜厚15μm程度に電着塗装して、絶縁厚膜4を形成した後に、その第2導体線3を、例えば、長さ5m毎に切断して複数に分断する。
【0082】
さらに、絶縁薄膜6が形成された第1導体線1、及び絶縁厚膜4が形成された第2導体線3の所定の側面、すなわち、集合導体10eにおいて隣り合う各導体線(1及び3)の少なくとも一方の側面に、例えば、図3のロールコーター21a、図4の含浸フェルト21b、図5のスプレー21cなどを用いて、接着剤として、エポキシ系ワニスを膜厚2μm程度に塗布することにより、結着材2及び5を形成する。
【0083】
引き続いて、図9に示すように、各々、表面に結着材2が形成された12本の第1導体線1を4行×3列に無撚り状態で整列させ、その整列させた集合体の周囲に、各々、表面に結着材5が形成された18本の第2導体線3を無撚り状態で整列させた後に、200℃程度に加熱することにより、隣り合った第1導体線1及び第2導体線3の各結着材2及び5を相互に融着一体化させる。
【0084】
以上のようにして、本実施形態の集合導体10eを製造することができる。
【0085】
以上説明したように、本実施形態の集合導体10eによれば、集合導体10eの内部において、各第1導体線1の間には、相対的に薄い第1の絶縁膜として絶縁薄膜6及び結着材2が設けられているので、集合導体10eの横断面における絶縁部の占める割合が低くなって、集合導体10eの導体占積率を向上させることができる。また、集合導体10eの周壁には、各第2導体線3の間に設けられた相対的に厚い第2の絶縁膜として、絶縁厚膜4及び結着材5が配置するので、集合導体10e同士の絶縁性を保持することができる。ここで、一般的な集合導体では、各導体線における電流がその長さ方向に沿って流れるので、各導体線間の絶縁性よりも、集合導体同士の絶縁性が重要視される。したがって、各第1導体線1が配置された集合導体10eの内部構造によって導体占積率を向上させると共に、各第2導体線3が配置された集合導体10eの外周構造によって絶縁性を保持させることになるので、集合導体10eにおいて絶縁性を保持して導体占積率を可及的に向上させることができる。
【0086】
また、本実施形態の集合導体10eによれば、各第1導体線1に対して、絶縁薄膜6及び結着材2が順に積層されているので、各第1導体線1における絶縁性を向上させることができると共に、絶縁薄膜6が結着材2の下地膜になるので、各第1導体線1に対する結着材2の接着力を向上させることができる。さらに、各第1導体線1に絶縁薄膜6及び結着材2が順に積層され、各第2導体線3に絶縁厚膜4及び結着材5が順に積層されているので、各導体線1及び3の構成が同じになって、集合導体10eの内部及び外周における接着(結着)性のアンバランスを解消することができる。
【0087】
また、本実施形態の集合導体10eによれば、絶縁薄膜6が電着塗装により形成されているので、電着塗装する際の印加電圧を調整するだけで、絶縁薄膜6を、例えば、0.5μm〜1.5μm程度に薄く均一に形成することができ、絶縁薄膜6の形成による集合導体10eにおける導体占積率の低下を抑制することができる。
【0088】
また、本実施形態の集合導体10eによれば、各第1導体線1に対する絶縁薄膜6の密着性、及び各第2導体線3に対する絶縁厚膜4の密着性が高いので、屈曲させたときの被膜剥がれを抑制することができる。
【0089】
また、本実施形態の集合導体10eによれば、相対的に薄い絶縁薄膜6に被覆された各第1導体線1を内側に、及び相対的に厚い絶縁厚膜4に被覆された各第2導体線3を外側に配列させるだけで、絶縁性を保持して導体占積率を向上させることができるので、高い生産性で集合導体を製造することができる。
【0090】
ここで、本実施形態の集合導体10eに対応する比較例の集合導体110aでは、図10に示すように、各々、絶縁薄膜102で被覆された複数の導体線101を結着材103を介して結着させた集合線に対し、ポリイミドフィルムなどの絶縁テープ104がらせん状に重ね合わせて巻かれている。この集合導体110aでは、その作業性が低く、絶縁テープ104を巻く際に不要な空間が形成され易いので、集合導体110aの絶縁性が不均一になったり、導体占積率が低下したりするおそれがある。ここで、絶縁テープ104の厚さを薄くすれば、巻き易くなって作業性が高くなるものの、集合導体110aの絶縁性を低下させるおそれがある。また、比較例の集合導体110bでは、図11に示すように、各々、絶縁薄膜102で被覆された複数の導体線101を結着材103を介して結着させた集合線に対し、紫外線硬化樹脂などの絶縁被覆層105がコーティングされている。この集合導体110bでは、角部において絶縁被覆層105が薄くなり易いので、集合導体110bの絶縁性を低下させるおそれがある。
【0091】
また、本実施形態の集合導体10eによれば、形状に拘束力のある絶縁テープ104や絶縁被覆層105が外周に構成されていないので、屈曲させ易い集合導体を提供することができる。
【0092】
上記各実施形態では、結着材2及び5として、融着剤又は接着剤を用いる構成及び製造方法を例示したが、本発明は、例えば、集合導体の内部及び外周における接着性のアンバランスを解消するために、結着材2として金属用接着剤を用いると共に、結着材5としてプラスチック用融着剤を用いるなどするように、融着剤及び接着剤を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上説明したように、本発明は、集合導体における導体占積率を向上させることができるので、モーター用途のマグネットワイヤについて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】実施形態1に係る集合導体10aの斜視図である。
【図2】集合導体10aを構成する第1導体線1(1a〜1e)の断面図である。
【図3】第1導体線1に接着材2を塗布するためのロールコーター21aの模式図である。
【図4】第1導体線1に接着材2を塗布するための含浸フェルト21bの模式図である。
【図5】第1導体線1に接着材2を塗布するためのスプレー21cの模式図である。
【図6】実施形態2に係る集合導体10bの斜視図である。
【図7】実施形態3に係る集合導体10cの斜視図である。
【図8】実施形態4に係る集合導体10dの斜視図である。
【図9】実施形態5に係る集合導体10eの断面図である。
【図10】従来の集合導体110aの断面図である。
【図11】従来の集合導体110bの断面図である。
【符号の説明】
【0095】
1 第1導体線
2 結着材(第1の絶縁膜)
3 第2導体線
4 絶縁厚膜(第2の絶縁膜)
5 結着材(第2の絶縁膜)
6 絶縁薄膜(第1の絶縁膜)
10a〜10e 集合導体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々、全体横断面形状を分割した一部の形状の横断面を有する複数の導体線が一体化した集合導体であって、
上記複数の導体線は、内部に配置された複数の第1導体線と、該複数の第1導体線の周囲を覆うように配置された複数の第2導体線とにより構成され、
上記各第1導体線は、第1の絶縁膜に覆われ、
上記各第2導体線は、上記第1の絶縁膜よりも厚く形成された第2の絶縁膜に覆われていることを特徴とする集合導体。
【請求項2】
請求項1に記載された集合導体において、
上記第1の絶縁膜は、上記各第1導体線を互いに結着するための結着材であることを特徴とする集合導体。
【請求項3】
請求項1に記載された集合導体において、
上記第1の絶縁膜は、上記各第1導体線を被覆して絶縁するための絶縁薄膜と、該絶縁薄膜で被覆された各第1導体線を互いに結着するための結着材とを備えていることを特徴とする集合導体。
【請求項4】
請求項3に記載された集合導体において、
上記絶縁薄膜は、電着塗装により形成されていることを特徴とする集合導体。
【請求項5】
請求項1に記載された集合導体において、
上記第2の絶縁膜は、上記各第2導体線を被覆して絶縁するための絶縁厚膜と、該絶縁厚膜で被覆された各第2導体線を互いに結着するための結着材とを備えていることを特徴とする集合導体。
【請求項6】
請求項5に記載された集合導体において、
上記絶縁厚膜は、電着塗装により形成されていることを特徴とする集合導体。
【請求項7】
請求項1に記載された集合導体において、
上記各第2導体線の横断面積は、上記各第1導体線の横断面積よりも小さくなっていることを特徴とする集合導体。
【請求項8】
請求項1に記載された集合導体において、
上記各第1導体線の横断面積は、上記各第2導体線の横断面積よりも小さくなっていることを特徴とする集合導体。
【請求項9】
請求項1に記載された集合導体において、
上記各導体線は、上記各第1導体線の界面と上記各第2導体線の界面とが一致しないように配置されていることを特徴とする集合導体。
【請求項10】
請求項1に記載された集合導体において、
上記各導体線の横断面は、矩形状に形成されていることを特徴とする集合導体。
【請求項11】
請求項1に記載された集合導体において、
上記各導体線は、無撚り状態で一体化されていることを特徴とする集合導体。
【請求項12】
請求項1に記載された集合導体において、
上記各第1導体線には、相対的に高い電圧が供給されると共に、上記各第2導体線には、相対的に低い電圧が供給されるように構成されていることを特徴とする集合導体。
【請求項1】
各々、全体横断面形状を分割した一部の形状の横断面を有する複数の導体線が一体化した集合導体であって、
上記複数の導体線は、内部に配置された複数の第1導体線と、該複数の第1導体線の周囲を覆うように配置された複数の第2導体線とにより構成され、
上記各第1導体線は、第1の絶縁膜に覆われ、
上記各第2導体線は、上記第1の絶縁膜よりも厚く形成された第2の絶縁膜に覆われていることを特徴とする集合導体。
【請求項2】
請求項1に記載された集合導体において、
上記第1の絶縁膜は、上記各第1導体線を互いに結着するための結着材であることを特徴とする集合導体。
【請求項3】
請求項1に記載された集合導体において、
上記第1の絶縁膜は、上記各第1導体線を被覆して絶縁するための絶縁薄膜と、該絶縁薄膜で被覆された各第1導体線を互いに結着するための結着材とを備えていることを特徴とする集合導体。
【請求項4】
請求項3に記載された集合導体において、
上記絶縁薄膜は、電着塗装により形成されていることを特徴とする集合導体。
【請求項5】
請求項1に記載された集合導体において、
上記第2の絶縁膜は、上記各第2導体線を被覆して絶縁するための絶縁厚膜と、該絶縁厚膜で被覆された各第2導体線を互いに結着するための結着材とを備えていることを特徴とする集合導体。
【請求項6】
請求項5に記載された集合導体において、
上記絶縁厚膜は、電着塗装により形成されていることを特徴とする集合導体。
【請求項7】
請求項1に記載された集合導体において、
上記各第2導体線の横断面積は、上記各第1導体線の横断面積よりも小さくなっていることを特徴とする集合導体。
【請求項8】
請求項1に記載された集合導体において、
上記各第1導体線の横断面積は、上記各第2導体線の横断面積よりも小さくなっていることを特徴とする集合導体。
【請求項9】
請求項1に記載された集合導体において、
上記各導体線は、上記各第1導体線の界面と上記各第2導体線の界面とが一致しないように配置されていることを特徴とする集合導体。
【請求項10】
請求項1に記載された集合導体において、
上記各導体線の横断面は、矩形状に形成されていることを特徴とする集合導体。
【請求項11】
請求項1に記載された集合導体において、
上記各導体線は、無撚り状態で一体化されていることを特徴とする集合導体。
【請求項12】
請求項1に記載された集合導体において、
上記各第1導体線には、相対的に高い電圧が供給されると共に、上記各第2導体線には、相対的に低い電圧が供給されるように構成されていることを特徴とする集合導体。
【図1】
【図2】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2009−21127(P2009−21127A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−183437(P2007−183437)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】
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