説明

集積回路装置

【課題】データ信号を入出力可能な集積回路装置において、より適正に入力されているデータ信号を出力する。
【解決手段】集積回路装置10において、データ信号Dが通常入力時より遅延してフリップフロップFFのセットアップ時間制約に違反したタイミングでデータ信号Dが変化したときにはデータ信号Dが変化してから所定時間後に立ち上がるフリップフロップ制御用信号Gを生成して出力するようエッジ検出回路20とフリップフロップ制御用信号出力回路30とを構成し、こうして生成したフリップフロップ制御用信号Gと基準クロック信号Clkとを用いてデータ信号Dを入出力するようフリップフロップFFを構成した。これにより、より適正にデータ信号Dを入出力することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の集積回路装置としては、基準クロック信号に同期してデータ信号を入力して保持すると共に保持したデータ信号を出力するメインフリップフロップと、基準クロック信号を遅延させた遅延クロック信号に同期してデータ信号を入力して保持すると共に保持したデータ信号を出力するシャドーラッチと、メインフリップフロップから出力されるデータ信号とシャドーラッチから出力されるデータ信号とを比較する比較回路とを備えるものが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。この装置では、メインフリップフロップから出力されるデータ信号とシャドーラッチから出力されるデータ信号とが異なる場合には、メインフリップフロップにおけるデータ信号の入力に何らかのエラーが発生したものとしてシャドーラッチのデータ信号をメインフリップフロップに入力してメインフリップフロップのデータ信号を復旧している。
【非特許文献1】シドハーサ・ダス(Shidhartha Das)、外7名、「遅延エラーの検出と復旧とを用いたセルフチューニングDVSプロセッサ(A Self-Tuning DVS Processor Using Delay-Error Detection and Correction)」、アイトリプルイー・ジャーナル・オブ・ソリッドステート・サーキット(IEEE Jounal Of Solid-State Circuits)、2006年4月、第41巻、第4号、p.792−804
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、上述の集積回路装置では、データ信号がメインフリップフロップのセットアップ時間やホールド時間などの入力タイミングの制約を守ったタイミングで入力しない場合に入力エラーが生じる可能性が高い。近年、基準クロック信号の高周波数化に伴ってこうしたデータ信号の入力タイミングの制約が厳しくなり、入力タイミング制約違反による入力エラーが発生する可能性が高くなってきている。特に、電源電圧とクロック周波数とを調整することにより低消費電力化を図るDVFS(Dynamic Voltage and Frequency Scaling)機能を有するCPUにこうした集積回路装置が搭載される場合、電源電圧の変化に伴ってデータ信号の入力タイミングが変化するため、入力エラーが発生する可能性が高い。上述の集積回路装置では、こうした入力エラーが生じたときにはシャドーラッチに保持されているデータ信号を用いてメインフリップフロップのデータ信号を復旧するが、こうした復旧処理を実行すると全体の処理にオーバーヘッドが生じてしまう。こうしたオーバーヘッドは処理の高速化の観点から望ましくないため、より適正にデータ信号を入出力することが望ましい。
【0004】
本発明の集積回路装置は、基準クロック信号に同期してデータ信号を入出力可能な集積回路装置において、より適正にデータ信号を入出力することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の集積回路装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の第1の集積回路装置は、
基準クロック信号に同期してデータ信号を入出力可能な集積回路装置であって、
入力されているデータ信号が変化しているときにはデータ不安定状態信号を生成して出力し、入力されているデータ信号が変化していないときにはデータ安定状態信号を生成して出力するデータ状態信号生成出力回路と、
前記データ状態信号生成出力回路によりデータ安定状態信号が出力されているときに入力されている基準クロック信号が立ち上がったときには該基準クロック信号の立ち上がりに同期して制御用パルス信号を生成して出力し、前記データ状態信号生成出力回路からデータ不安定状態信号が出力されているときに入力されている基準クロック信号が立ち上がったときには前記データ状態信号生成出力回路から出力されている信号がデータ安定状態信号に遷移するときに同期して制御用パルス信号を生成して出力する制御用パルス信号生成出力回路と、
前記制御用パルス信号生成出力回路から出力された制御用パルス信号に同期して入力されているデータ信号を保持すると共に該保持しているデータ信号を出力するデータ信号保持回路と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の第1の集積回路装置では、入力されているデータ信号が変化しているときにはデータ状態信号生成出力回路からデータ不安定状態信号が出力され、入力されているデータ信号が変化していないときにはデータ状態信号生成出力回路からデータ安定状態信号が出力される。そして、入力されているデータ信号が変化していないときに基準クロック信号が立ち上がったときには、制御用パルス信号生成出力回路から基準クロック信号の立ち上がりに同期して制御用パルス信号が出力され、データ信号保持回路は出力された制御用パルス信号に同期して入力されているデータ信号を保持すると共に保持しているデータ信号を出力する。これにより、基準クロック信号に同期してデータ信号を入出力することができる。一方、入力されているデータが変化しているときに基準クロック信号が立ち上がったときには、制御用パルス信号生成出力回路からデータ状態信号生成出力回路から出力されている信号がデータ安定状態信号に遷移するときに同期して制御用パルス信号が出力され、データ信号保持回路は出力された制御用パルス信号に同期して入力されているデータ信号を保持すると共に保持しているデータ信号を出力する。データ状態信号生成出力回路から出力されている信号がデータ安定状態信号に遷移するときに同期して出力される制御用パルス信号に同期してデータ信号を入出力するから、より適正にデータ信号を入出力することができる。ここで、「信号が立ち上がったとき」には、信号が立ち下がったときも含むものとする。
【0008】
こうした本発明の第1の集積回路装置において、前記データ状態信号生成出力回路は、入力されているデータ信号が変化しているときには該入力されているデータ信号の変化してから少なくとも前記データ信号保持回路のセットアップ時間が経過するまで前記データ不安定状態信号を生成して出力する回路であるものとすることもできる。こうすれば、入力されているデータ信号が変化しているときに基準クロック信号が立ち上がったときには、データ信号が変化してから少なくともセットアップ時間が経過したときに同期する制御用パルス信号を生成して出力することができるから、より適正に入力されているデータ信号を出力することができる。
【0009】
また、本発明の第1の集積回路において、前記データ信号保持回路は、前記制御用パルス信号生成出力回路から出力された制御用パルス信号に同期して入力されているデータ信号を保持すると共に該保持しているデータ信号を出力する第1ラッチ回路と、前記基準クロック信号に同期して第1ラッチ回路から出力されているデータ信号を保持すると共に該保持しているデータ信号を出力する第2ラッチ回路を有する回路であるものとすることもできる。こうすれば、第1ラッチ回路で制御用パルス信号に同期して適正に入力されているデータ信号を出力することができるから、より適正に入力されているデータ信号を保持して出力することができる。
【0010】
さらに、本発明の第1の集積回路装置において、前記データ状態信号生成出力回路は、入力されているデータ信号の立ち上がりのタイミングで変化するデータ立ち上がりタイミング信号を生成して出力する立ち上がりタイミング信号生成出力回路と、入力されているデータ信号の立ち下がりのタイミングで変化するデータ立ち下がりタイミング信号を生成して出力する立ち下がりタイミング信号生成出力回路と、前記データ立ち上がりタイミング信号および前記データ立ち下がりタイミング信号の少なくとも一方が出力されているときには前記データ不安定状態信号を出力すると共に前記データ立ち上がりタイミング信号および前記データ立ち下がりタイミング信号が出力されていないときには前記データ安定状態信号を出力するデータ状態信号出力回路と、を有する回路であるものとすることもできる。こうすれば、急峻なデータ不安定状態信号やデータ安定状態信号を生成して出力することができるから、より適正に制御用パルス信号を生成することができ、より適正にデータ信号を入出力することができる。
【0011】
そして、本発明の第1の集積回路装置において、前記制御用パルス信号生成出力回路は、入力されている基準クロック信号が立ち下がっているときには該入力されている基準クロック信号に同期して立ち下がった信号を制御用パルス信号として生成して出力すると共に入力されている基準クロック信号が立ち上がっているときには該入力されている基準クロック信号と前記データ状態信号生成出力回路からの信号との論理積に基づく信号を制御用パルス信号として出力するドミノ論理回路を有する回路であるものとすることもできる。こうすれば、急峻な制御用パルス信号を生成して出力することができるから、より適正にデータ信号を入出力することができる。
【0012】
また、本発明の第1の集積回路装置において、前記制御用パルス信号生成出力回路は、前記データ状態信号生成出力回路によりデータ安定状態信号が出力されているときに前記生成した制御用パルス信号が立ち上がったときには正常動作信号を生成し出力し、前記データ状態信号生成出力回路によりデータ不安定状態信号が出力されているときに前記生成した制御用パルス信号が立ち上がったときにはデータ入力エラー信号を生成し出力する回路であるものとすることもできる。データ状態信号生成出力回路によりデータ不安定状態信号が出力されているときに生成した制御用パルス信号が立ち上がったときには、データ記憶保持回路で保持しているデータ信号が正しくない可能性が高いから、こうしたときにデータ入力エラー信号を生成し出力することにより、入出力されたデータ信号が正しくない可能性が高いことを報知することができる。
【0013】
さらに、本発明の第1の集積回路装置において、前記制御用パルス信号生成出力回路は、前記データ状態信号生成出力回路によりデータ安定状態信号が出力されているときに入力されている基準クロック信号が立ち上がったときにはデータ安定時動作信号を生成して出力し、前記データ状態信号生成出力回路からデータ不安定状態信号が出力されているときに入力されている基準クロック信号が立ち上がったときにはデータ不安定時動作信号を生成して出力する回路であるものとすることもできる。こうすれば、基準クロック信号が立ち上がったときにデータ信号が変化していたか否かを報知することができる。この場合、前記制御用パルス信号生成出力回路は、前記データ状態信号生成出力回路によりデータ安定状態信号が出力されているときに入力されている基準クロック信号が立ち上がったとき、前記データ不安定時動作信号が出力されているときにはデータ不安定時動作信号に同期して立ち下がる制御用パルス信号を生成して出力し、前記データ安定時動作信号が出力されているときには前記データ不安定状態信号の前記データ安定状態信号への遷移に同期して立ち上がる制御用パルス信号を生成して出力する回路であるものとすることもできる。こうすれば、データ不安定状態信号のデータ安定状態信号への遷移に同期して立ち上がる制御用パルス信号を生成して出力することができるから、より適正にデータ信号を入出力することができる。
【0014】
本発明の第2の集積回路装置は、上述したいずれかの態様の本発明の集積回路装置、すなわち、基本的には、基準クロック信号に同期してデータ信号を入出力可能な集積回路装置であって、入力されているデータ信号が変化しているときにはデータ不安定状態信号を生成して出力し、入力されているデータ信号が変化していないときにはデータ安定状態信号を生成して出力するデータ状態信号生成出力回路と、前記データ状態信号生成出力回路によりデータ安定状態信号が出力されているときに入力されている基準クロック信号が立ち上がったときには該基準クロック信号の立ち上がりに同期して制御用パルス信号を生成して出力し、前記データ状態信号生成出力回路からデータ不安定状態信号が出力されているときに入力されている基準クロック信号が立ち上がったときには前記データ状態信号生成出力回路から出力されている信号がデータ安定状態信号に遷移するときに同期して制御用パルス信号を生成して出力する制御用パルス信号生成出力回路と、前記制御用パルス信号生成出力回路から出力された制御用パルス信号に同期して入力されているデータ信号を保持すると共に該保持しているデータ信号を出力するデータ信号保持回路と、を備える集積回路装置を複数備えることを要旨とする。
【0015】
この本発明の第2の集積回路装置では、上述したいずれかの態様の本発明の集積回路装置を複数備えているから、本発明の集積回路装置の奏する効果、例えば、より適正にデータ信号を入出力することができる効果などと同様の効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の第1実施例としての集積回路装置10の回路構成の概略を示す回路図である。集積回路装置10は、図示するように、入力されているデータ信号Dが変化したときに立ち下がるデータエッジ信号Dedgを生成して出力するデータエッジ信号出力回路20と、入力されている基準クロック信号Clkとデータエッジ信号Dedgとを用いてフリップフロップ制御用信号Gを生成して出力するフリップフロップ制御用信号出力回路30と、フリップフロップ制御用信号Gと基準クロック信号Clkとを用いて入力されているデータ信号Dを出力信号Qとして出力するフリップフロップFFとを備える。
【0018】
データエッジ信号出力回路20は、入力されるデータ信号Dの立ち上がりのタイミングで立ち下がる信号を出力するパルス生成回路22と、入力されるデータ信号DをインバータINV1で反転した信号の立ち上がり、すなわち、入力されるデータ信号Dの立ち下がりのタイミングで立ち下がる信号を出力するパルス生成回路24と、パルス生成回路22,24からそれぞれ出力される信号の論理積に基づく信号を出力するANDゲートとして機能する論理回路26とを備える。パルス生成回路22,24は、入力される信号の立ち上がりのタイミングで立ち下がる信号を出力するエッジ検出回路として構成されている。ここで、エッジ検出回路について説明する。
【0019】
図2は、エッジ検出回路の回路構成の一例を示す回路図である。エッジ検出回路は、図示するように、入力される信号Sinを反転させると共に遅延時間Tdだけ遅延させて出力するインバータINV2と、ソースが電源VDDに接続されると共にゲートが信号の出力となるドレインに接続されたp型のMOSトランジスタP1と、ドレインがトランジスタP1のドレインに接続されると共にゲートに信号Sinが入力されるn型のMOSトランジスタN1と、ドレインがトランジスタN1のソースに接続されると共にソースが接地GNDに接続されてゲートがインバータINV2の出力に接続されたn型のMOSトランジスタN2とを備える。図3は、エッジ検出回路に入出力される各信号の相関としてのタイミングチャートの一例を示す説明図である。図中、信号INVoutは、インバータINV2から出力される信号であるものとした。図示するように、エッジ検出回路に信号Sinが入力されると、入力される信号Sinが立ち上がったタイミングでインバータINV2の遅延時間Tdの間だけ立ち下がるパルス信号としての出力信号Soutが生成されて出力されるから、急峻な出力信号Soutを生成して出力することができる。こうして構成されたエッジ検出回路では、インバータINV2における遅延時間Tdを調整することにより、出力信号Soutのパルス幅を調整することができる。以上、エッジ検出回路について説明した。
【0020】
実施例のパルス生成回路22,24として、図2に例示したエッジ検出回路においてインバータINV2の遅延時間TdをフリップフロップFFのセットアップ時間tsetより若干長い時間tdedgになるよう調整されたものを用いるものとした。こうして構成されたデータエッジ信号出力回路20は、図4に示すように、入力されているデータ信号Dが立ち下がったり立ち上がったりして変化すると、こうした変化のタイミングから時間tdedgの期間立ち下がるデータエッジ信号Dedgを出力する。すなわち、データエッジ信号Dedgが立ち上がっていることはデータ信号Dが変化していないことを示し、データエッジ信号Dedgが立ち下がっていることはデータ信号Dが変化していることを示している。なお、実施例のパルス生成回路22,24では、インバータINV2の遅延時間Tdを時間tdedgに調整するものとしたが、インバータINV2を複数段のインバータが直列接続されたものとして構成して、直列接続したインバータの段数を調整することにより複数段のインバータによる遅延時間が時間tdedgとなるよう調整するものとしてもよい。
【0021】
フリップフロップ制御用信号出力回路30は、比較的高速動作可能なドミノCMOS論理回路として構成されており、ソースが電源VDDに接続されると共にゲートに基準クロック信号Clkが入力されてドレインからフリップフロップ制御用信号GBを出力するp型のMOSトンランジスタP2と、ドレインがトランジスタP2のドレインに接続されると共にゲートにデータエッジ信号出力回路20からのデータエッジ信号Dedgが入力されるn型のMOSトランジスタN3と、ドレインがトランジスタN3のソースと接続されると共にソースが接地VSSに接続されてゲートに基準クロック信号Clkが入力されるn型のMOSトンランジスタN4と、トランジスタN3のドレインからの信号を反転してフリップフロップ制御用信号Gとして出力するインバータINV3とを備える。こうして構成されたフリップフロップ制御用信号出力回路30では、基準クロック信号Clkが立ち下がるとトランジスタP2がオンすると共にトランジスタN4がオフして、フリップフロップ制御用信号Gが立ち下がると共にフリップフロップ制御用信号GBが立ち上がる。そして、基準クロック信号Clkが立ち上がるとトランジスタP2がオフすると共にトランジスタN4がオンするが、この状態でデータエッジ信号Dedgが立ち下がるとトランジスタN3がオフしてフリップフロップ制御用信号G,GBの状態が維持されて、データエッジ信号Dedgが立ち上がるとトランジスタN3がオンしてフリップフロップ制御用信号Gが立ち上がると共にフリップフロップ制御用信号GBが立ち下がる。こうして一旦フリップフロップ制御用信号Gが立ち上がると、次に基準クロック信号Clkが立ち下がるまでフリップフロップ制御用信号G,GBの状態が維持される。すなわち、フリップフロップ制御用信号出力回路30では、基本的には、基準クロック信号Clkとデータエッジ信号Dedgとが共に立ち上がっているときに立ち上がるフリップフロップ制御用信号Gを生成して出力するANDゲートとして機能するが、一旦フリップフロップ制御用信号Gを立ち上げた後は次に基準クロック信号Clkが立ち下がるまでフリップフロップ制御用信号Gの状態を維持することができる。
【0022】
フリップフロップ制御用信号出力回路30には、基準クロック信号Clkが立ち上がったときにデータ信号Dの状態を示すデータ状態信号Dstを出力する基準クロック変化時データ状態出力回路32と、フリップフロップ制御用信号Gに対してデータ信号Dがホールド時間の制約に違反して入力していることを示すデータエラー発生信号Errを出力するエラー信号出力回路38とが設けられている。
【0023】
基準クロック変化時データ状態出力回路32は、入力されている基準クロック信号Clkの立ち上がりのタイミングで立ち下がるクロックエッジ信号Cedgを生成して出力するパルス生成回路34と、パルス生成回路34からのクロックエッジ信号Cedgを反転させた信号とデータエッジ信号出力回路20からのデータエッジ信号Dedgを反転させた信号との論理積に基づいてデータ状態信号Dstを生成して出力するANDゲートとして機能する論理回路36とから構成されている。パルス生成回路34は、図2に例示したエッジ検出回路とインバータINV2の遅延時間TdをフリップフロップFFのセットアップ時間tset程度に調整している点やエッジ検出回路のインバータINV2から基準クロック信号Clkと逆相の基準クロック信号Clkbを出力している点を除いて同一の構成をしており、入力されている基準クロック信号Clkの立ち上がりのタイミングでフリップフロップFFのセットアップ時間tset程度の期間立ち下がるパルス信号をクロックエッジ信号Cedgとして生成する。こうして構成された基準クロック変化時データ状態出力回路32は、図5に示すように、入力されている基準クロック信号Clkが立ち上がってクロックエッジ信号Cedgが立ち下がると共にデータエッジ信号Dedgが立ち下がっているとき、すなわち、基準クロック信号Clkが立ち上がっているときにデータ信号Dが安定していないときに立ち上がるデータ状態信号Dstを生成して出力する。なお、実施例ではパルス生成回路34では、フリップフロップFFのセットアップ時間tset程度の期間立ち下がるパルス信号をクロックエッジ信号Cedgとして生成するものとしたが、クロックエッジ信号Cedgの立ち下がり期間は、基準クロック信号の立ち上がりからデータ信号Dの入力の変化の遅延をどこまで許容するかに応じて適宜設定すればよく、こうした設定に基づいて図2に例示したエッジ検出回路のインバータINV2の遅延時間Tdを調整すればよい。
【0024】
エラー信号出力回路38は、入力されているフリップフロップ制御用信号Gの立ち上がりのタイミングで立ち下がるゲートエッジ信号Gedgを生成して出力するパルス生成回路40と、パルス生成回路40からのゲートエッジ信号Gedgを反転させた信号とデータエッジ信号Dedgを反転させた信号との論理積に基づいてデータエラー発生信号Errを生成して出力するANDゲートとして機能する論理回路42とから構成されている。パルス生成回路38は、図2に例示したエッジ検出回路とインバータINV2の遅延時間Tdを基準クロック信号Clkのホールド時間tholdと論理回路42におけるデータの遅延時間tand2との和の時間より若干長い時間tgedgの期間程度に調整している点を除いて同一の構成をしており、フリップフロップ制御用信号Gの立ち上がりのタイミングで時間tgedgの期間程度立ち下がるパルス信号をゲートエッジ信号Gedgとして生成して出力する。こうして構成されたエラー信号出力回路38は、図6に示すように、入力されているフリップフロップ制御用信号Gが立ち上がってゲートエッジ信号Gedgが立ち下がると共にデータエッジ信号Dedgが立ち下がっているとき、すなわち、フリップフロップ制御用信号Gに対してデータ信号Dがホールド時間の制約に違反した状態で入力されているときに立ち上がるデータエラー発生信号Errを出力する。
【0025】
フリップフロップFFは、入力されているデータ信号Dを反転して出力するインバータINV1と、信号を反転して出力するインバータINV5やインバータINV5の出力に入力が接続されると共にインバータINV5の入力に出力が接続されてフリップフロップ制御用信号Gの立ち上がり/立ち下がりでオン/オフするクロックドインバータCINV1,インバータINV1とインバータINV5との間に設けられフリップフロップ制御用信号Gの立ち下がりで開きフリップフロップ制御用信号Gの立ち上がりで閉じるトランスファゲートTG1から構成されたラッチL1と、信号を反転して出力するインバータINV6やインバータINV6の出力に入力が接続されインバータINV6の入力に出力が接続され基準クロック信号Clkの立ち下がり/立ち上がりでオン/オフするクロックドインバータCINV2,インバータINV5とインバータINV6との間に設けられ基準クロック信号Clkの立ち上がりで開き基準クロック信号Clkの立ち下がりで閉じるトランスファゲートTG2から構成されたラッチL2と、ラッチL2からの信号を反転して信号Qとして出力するインバータINV4とを備える。こうして構成されたフリップフロップFFでは、フリップフロップ制御用信号Gの立ち下がりでトラスファーゲートTG1が開いてインバータINV1からのデータ信号DをラッチL1に入力し、フリップフロップ制御用信号Gの立ち上がりでトラスファーゲートTG1が閉じてラッチL1でデータ信号Dを保持し、基準クロック信号Clkの立ち上がりでトラスファーゲートTG2が開いてラッチL1から入力されているデータ信号DをラッチL2に出力し、基準クロック信号Clkの立ち下がりでトラスファーゲートTG2が閉じてラッチL2に入力されているデータ信号Dを保持する。
【0026】
続いて、こうして構成された集積回路装置10の動作について説明する。最初に、フリップフロップFFのラッチL1からのデータ信号DがフリップフロップFFのセットアップ時間の制約とホールド時間の制約とを守った状態でフリップフロップFFに入力されている通常入力時の動作について説明し、次に、データ信号Dが通常入力時より遅延してラッチL2に入力されたときの動作について説明する。
【0027】
通常入力時には、図7に例示するように、データ信号Dが変化してからセットアップ時間tsetが経過した後に基準クロック信号Clkが立ち上がり、基準クロック信号Clkが立ち上がってからホールド時間tholdに至るまでデータ信号Dは変化しないから、データエッジ信号出力回路20からのデータエッジ信号Dedgが立ち上がっている状態で基準クロック信号Clkが立ち上がり、フリップフロップ制御用信号出力回路30から基準クロック信号Clkに同期して立ち上がるフリップフロップ制御用信号Gが出力される。そして、こうして出力されたフリップフロップ制御用信号Gと基準クロック信号Clkとに同期してフリップフロップFFにデータ信号Dが入力されてデータ信号Qが出力される。フリップフロップ制御用信号Gは、基準クロック信号Clkに同期して立ち上がっており、データ信号Dはフリップフロップ制御用信号Gに対してもセットアップ時間の制約とホールド時間の制約を守った状態で入力されているから、フリップフロップFFのラッチL1ではデータ信号Dを適正に入力して保持することができ、データ信号Qを適正に出力することができる。なお、入力されている基準クロック信号Clkが立ち上がったときにデータエッジ信号Dedgが立ち上がっているから、基準クロック変化時データ状態出力回路32からのデータ状態信号Dstは立ち下がった状態が維持される。また、データ信号Dはフリップフロップ制御用信号Gに対してホールド時間の制約を守った状態で入力されているから、データエラー発生信号Errも立ち下がった状態が維持される。
【0028】
続いて、データ信号Dが通常入力時より遅延して入力されたときの動作について説明する。データ信号Dが通常入力時より若干遅延して基準クロック信号Clkの立ち上がりより前であってセットアップ時間の制約に違反したタイミングで変化しているときには、図8に例示するように、データエッジ信号出力回路20からのデータエッジ信号Dedgが立ち下がった状態で基準クロック信号Clkが立ち上がり、フリップフロップ制御用信号出力回路30からのフリップフロップ制御用信号Gは立ち下がった状態となる。このとき、フリップフロップFFのトランスファゲートTG1,TG2が共に開いているから、入力されているデータ信号Dがデータ信号Qとして出力される。こうしてフリップフロップFFのトランスファゲートTG1,TG2が共に開いている状態でデータエッジ信号出力回路20からのデータエッジ信号Dedgが立ち上がったとき、すなわち、データ信号Dが変化してから時間tdedgが経過したときにフリップフロップ制御用信号出力回路30からのフリップフロップ制御用信号Gが立ち上がり、トラスファーゲートTG1が閉じてラッチL1でデータ信号Dを保持する。ここで、時間tdedgは、上述したように、フリップフロップFFのセットアップ時間tsetより若干長い時間として調整されているから、フリップフロップFF,特に、クロックドインバータCINV1の出力が安定した状態でフリップフロップ制御用信号Gが立ち上がりトランスファゲートTG1が閉じることになり、これにより、フリップフロップFFのラッチL1は、データ信号Dを適正に保持することができる。このように、基準クロック信号Clkに対してデータ信号Dがセットアップ時間の制約に違反した状態で入力されているときには、データ信号Dの変化から少なくともセットアップ時間tsetが経過した後にフリップフロップ制御用信号Gが立ち上げるから、入力されているデータ信号Dを適正に入出力することができる。ここで、入力されている基準クロック信号Clkの立ち上がったときにデータエッジ信号Dedgが立ち下がっているから、基準クロック変化時データ状態出力回路32からのデータ状態信号Dstが立ち上がる。これにより、基準クロック信号Clkに対してデータ信号Dがセットアップ時間の制約に違反した状態で入力されているときには、このような状態であることを報知することができる。なお、データ信号Dはフリップフロップ制御用信号Gに対してホールド時間の制約を守った状態で入力されているから、データエラー発生信号Errは立ち下がった状態が維持される。
【0029】
データ信号Dが更に遅延して、基準クロック信号Clkが立ち上がってからホールド時間tholdが経過する前までの期間にデータ信号Dが変化したときには、図9に例示するように、データエッジ信号出力回路20からのデータエッジ信号Dedgが立ち上がった状態で基準クロック信号Clkが立ち上がり、フリップフロップ制御用信号生成回路30から基準クロック信号Clkに同期して立ち上がるフリップフロップ制御用信号Gが出力され、こうして出力されたフリップフロップ制御用信号Gと基準クロック信号Clkとに同期してフリップフロップFFがラッチL1で保持しているデータ信号Dを入出力する。このとき、データ信号DがフリップフロップFFのホールド時間の制約を守った状態で入力されていないため、フリップフロップFFのラッチL1ではデータ信号Dが適正に保持されておらず、出力信号Qが正しくない可能性がある。この場合には、データエラー発生信号Errが立ち上がるため、出力信号Qが正しくない可能性があることを報知することができる。なお、この場合は、基準クロック信号Clkに対してデータ信号Dが通常入力時より早く到達してホールド時間より前に変化している同様であり、こうした場合でもデータエラー発生信号Errが立ち上がることになる。
【0030】
以上説明した第1実施例の集積回路装置10によれば、通常入力時には、フリップフロップ制御用信号Gと基準クロック信号Clkとを用いてフリップフロップFFのラッチL1で適正にデータ信号Dを入力して保持することができるから、データ信号Dを適正に入出力することができる。また、データ信号Dが通常入力時より遅延してラッチL2に入力されたときでも、データ信号Dが基準クロック信号Clkの立ち上がりより前に変化したときには、データ信号Dが変化してから時間tedg後に立ち上がるフリップフロップ制御用信号Gに同期してフリップフロップFFのラッチL1がデータ信号Dを入力して保持するから、より適正にデータ信号Dを入出力することができる。また、データエッジ信号出力回路20をパルス生成回路22,24とANDゲートとして機能する論理回路26とから構成しているから、急峻なデータエッジ信号Dedgを出力することができるから、より適正なフリップフロップ制御用信号Gを生成することができ、適正にデータ信号Dを入出力することができる。さらに、フリップフロップ制御用信号出力回路30をドミノCMOS論理回路として構成しているから、急峻なフリップフロップ制御用信号Gを生成することができ、適正にデータ信号Dを入出力することができる。さらに、データ信号Dが遅延して基準クロック信号Clkが立ち上がってからホールド時間が経過する前にデータ信号Dが変化したときには、データエラー発生信号Errが出力されるから、出力されているデータ信号Dが正しくない可能性が高いことを報知することができる。
【実施例2】
【0031】
次に、本発明の第2の実施例としての集積回路装置110について説明する。図10は、本発明の第2実施例としての集積回路装置110の回路構成の概略を示す回路図である。集積回路装置110は、図1に例示した第1実施例の集積回路装置10とフリップフロップ制御信号出力回路130の構成がフリップフロップ制御用信号出力回路30の構成と異なる点を除いて同一の構成であるから、同一の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0032】
フリップフロップ制御用信号出力回路130は、第1実施例のフリップフロップ制御信号出力回路30において、ソースがトランジスタP2のソースと接続されドレインがトランジスタP2のドレインと接続されると共にデータ状態信号DstをインバータINV7で反転させた信号がゲートに入力されたp型のMOSトランジスタP3を設けた構成となっている。こうして構成されたフリップフロップ制御用信号出力回路130では、基準クロック信号Clkが立ち下がるとトランジスタP2がオンすると共にトランジスタN4がオフして、フリップフロップ制御用信号Gが立ち下がると共にフリップフロップ制御用信号GBが立ち上がる。そして、基準クロック信号Clkが立ち上がるとトランジスタP2がオフすると共にトランジスタN4がオンする。この状態で、データエッジ信号Dedgが立ち上がっているときには、データ状態信号Dstが立ち下がっており、トランジスタN3がオンすると共にトランジスタP3がオフしてフリップフロップ制御用信号Gが立ち上がると共にフリップフロップ制御用信号GBが立ち下がる。一方、データエッジ信号Dedgが立ち下がっている場合、データ状態信号Dstが立ち下がっているときにはトランジスタN3がオフすると共にトランジスタP3がオフしてフリップフロップ制御用信号G,GBの状態が維持され、データ状態信号Dstが立ち上がっているときにはトランジスタN3がオフすると共にトランジスタP3がオンとなりフリップフロップ制御用信号Gが立ち下がると共にフリップフロップ制御用信号GBが立ち上がる。
【0033】
続いて、こうして構成された集積回路装置110の動作について説明する。集積回路装置110では、フリップフロップFFのラッチL1からのデータ信号DがフリップフロップFFのセットアップ時間の制約とホールド時間の制約とを守った状態でフリップフロップFFに入力されている通常入力時やデータ信号Dが通常入力時より若干遅延して基準クロック信号Clkの立ち上がりより前であってセットアップ時間の制約に違反したタイミングで変化しているとき、図7や図8を用いて説明した第1実施例の集積回路装置110の動作と同じ動作がなされるため、その説明を省略する。
【0034】
ここでは、データ信号Dが遅延して基準クロック信号Clkが立ち上がってからデータ信号Dの入力が許容できる期間(クロックエッジ信号Cedgの立ち下がり期間)にデータ信号Dが変化したときの動作について説明する。この場合、図11に例示するように、データエッジ信号出力回路20からのデータエッジ信号Dedgが立ち上がった状態で基準クロック信号Clkが立ち上がり、フリップフロップ制御用信号生成回路30から基準クロック信号Clkに同期して立ち上がるフリップフロップ制御用信号Gが一旦出力される。このとき、トランスファゲートTG1がオフとなりトランスファゲートTG2がオンとなっているから、ラッチL1で保持されているデータ信号Dを出力信号Qとして出力する。そして、クロックエッジ信号Cedgが立ち下がっている期間にデータ信号Dが変化すると、データエッジ信号Dedgが立ち下がりデータ状態信号Dstが立ち上がるから、トランジスタP1がオンとなりトランジスタN3がオフになり、フリップフロップ制御用信号Gが立ち下がり、トランスファゲートTG1,TG2が共にオンとなって入力されているデータ信号Dが出力信号Qとして出力される。その後、データエッジ信号Dedgが立ち上がるとデータ状態信号Dstが立ち下がるから、再びフリップフロップ制御用信号Gが立ち上がり、トランスファゲートTG1がオフになると共にトランスファゲートTG2がオンとなるから、入力されている信号DをラッチL1で保持すると共にデータ信号Dを出力信号Qとして出力する。これにより、データ信号Dが遅延して基準クロック信号Clkが立ち上がってからデータ信号Dの入力が許容できる期間にデータ信号Dが変化したときでも、データ信号Dを適正に入出力することができる。
【0035】
以上説明した第2実施例の集積回路装置20によれば、データ信号Dが遅延して基準クロック信号Clkが立ち上がってからデータ信号Dの入力が許容できる期間にデータ信号Dが変化したときには、入力されているデータ信号Dが変化する前に一旦立ち上がったフリップフロップ制御用信号Gをデータ信号Dの変化と共に立ち下げた後、データ信号Dが変化しなくなってから再び立ち上げるから、データ信号Dを適正に入出力することができる。
【実施例3】
【0036】
次に、本発明の第3の実施例としての集積回路装置210について説明する。図12は、本発明の第3実施例としての集積回路装置210の回路構成の概略を示す回路図である。集積回路装置120は、図1に例示した第1実施例の集積回路装置10と、フリップフロップ制御用信号出力回路30の構成が異なる点やフリップフロップFFの構成が異なる点を除いて同一の構成であるから、同一の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0037】
フリップフロップ制御信号出力回路230は、第1実施例のフリップフロップ制御信号出力回路30とパルス生成回路234の構成を除いて同一の構成となっている。パルス生成回路234は、図2に例示したエッジ検出回路とインバータINV2の遅延時間TdをフリップフロップFFのセットアップ時間tset程度に調整している点を除いて同一の構成をしており、入力されている基準クロック信号Clkの立ち上がりのタイミングで基準クロック信号Clkの立ち上がり時間程度の期間立ち下がるパルス信号をクロックエッジ信号Cedgとして生成する。
【0038】
フリップフロップFF2は、図1に例示したフリップフロップFFと基準クロック信号Clkに代えてフリップフロップ制御信号G,GBを入力している点を除いて同一の構成であり、フリップフロップ制御用信号Gおよびフリップフロップ制御用信号Gと逆相のフリップフロップ制御用信号GBに同期して入力されているデータ信号を入出力する周知のフリップフロップとして構成されている。
【0039】
こうして構成された集積回路装置210は、基本的には、基準クロック信号Clkの立ち下がりで入力されているデータ信号DをフリップフロップFFのラッチL1に保持し、基準クロック信号Clkの立ち上がりでラッチL1に保持しているデータ信号DをラッチL2に入力して信号Qとして出力する。
【0040】
続いて、こうして構成された集積回路装置210の動作,特に基準クロック信号Clkが立ち上がってフリップフロップFF2のラッチL1で保持しているデータ信号DをラッチL2に入力する際の動作について説明する。最初に、フリップフロップFF2のラッチL1からのデータ信号Dが基準クロック信号Clkに対するセットアップ時間の制約とホールド時間の制約とを守った状態でフリップフロップFF2のラッチL2に入力されている通常入力時の動作について説明し、次に、データ信号Dが通常入力時より遅延してラッチL2に入力されたときの動作について説明する。
【0041】
通常入力時には、図7に例示したタイミングチャートと同様に、データエッジ信号出力回路20からのデータエッジ信号Dedgが立ち上がっている状態で基準クロック信号Clkが立ち上がり、フリップフロップ制御用信号出力回路230から基準クロック信号Clkに同期して立ち上がるフリップフロップ制御用信号Gが出力される。そして、こうして出力されたフリップフロップ制御用信号Gに同期してフリップフロップFF2のラッチL2にデータ信号Dが入力されてデータ信号Qが出力される。フリップフロップ制御用信号Gは、基準クロック信号Clkに同期して立ち上がっており、データ信号Dはフリップフロップ制御用信号Gに対してもセットアップ時間の制約とホールド時間の制約を守った状態で入力されているから、フリップフロップFF2のラッチL2は、ラッチL1で保持しているデータ信号Dを正しく入出力することができる。このように、通常入力時には、基準クロックClkに同期してデータ信号Dを入力して出力することができる。
【0042】
続いて、データ信号Dが通常入力時より遅延してラッチL2に入力されたときの動作について説明する。データ信号Dが通常入力時より若干遅延して基準クロック信号Clkの立ち上がりより前であってセットアップ時間の制約に違反したタイミングで変化しているときには、図13に例示するように、データエッジ信号出力回路20からのデータエッジ信号Dedgが立ち下がった状態で基準クロック信号Clkが立ち上がり、フリップフロップ制御用信号出力回路230からのフリップフロップ制御用信号Gは立ち下がった状態となる。そして、データエッジ信号出力回路20からデータエッジ信号Dedgが立ち上がったとき、すなわち、データ信号Dが変化してから時間tdedgが経過してデータが変化していないときにフリップフロップ制御用信号出力回路230からのフリップフロップ制御用信号Gが立ち上がる。こうして出力されたフリップフロップ制御用信号Gに同期してフリップフロップFF2のラッチL2にデータが入力されてデータ信号Qが出力される。ここで、時間tdedgは、上述したように、フリップフロップFF2のセットアップ時間tsetより若干長い時間として調整されているから、データ信号DがフリップフロップFF2のセットアップ時間の制約を守った状態になるようフリップフロップ制御用信号Gが立ち上がることになる。こうしたフリップフロップ制御用信号を用いることにより、フリップフロップFF2のラッチL2は、ラッチL1で保持しているデータ信号Dを正しく入出力することができる。このように、基準クロック信号Clkに対してデータ信号Dがセットアップ時間の制約に違反した状態で入力されているときには、データ信号Dの変化から少なくともセットアップ時間tsetが経過した後にフリップフロップ制御用信号Gが立ち上げるから、入力されているデータ信号Dを適正に入出力することができる。
【0043】
データ信号Dが更に遅延して、基準クロック信号Clkが立ち上がってからホールド時間tholdが経過する前までの期間にデータ信号Dが変化したときには、図9に例示したタイミングチャート同様に、データエッジ信号出力回路20からのデータエッジ信号Dedgが立ち上がった状態で基準クロック信号Clkが立ち上がり、フリップフロップ制御用信号生成回路30から基準クロック信号Clkに同期して立ち上がるフリップフロップ制御用信号Gが出力され、こうして出力されたフリップフロップ制御用信号Gに同期してフリップフロップFF2がラッチL1で保持しているデータ信号Dを入出力する。このとき、データ信号DがフリップフロップFFのホールド時間の制約を守った状態で入力されていないため、フリップフロップFFのラッチL1ではデータ信号Dが適正に保持されておらず、出力信号Qが正しくない可能性があるが、データエラー発生信号Errが立ち上がるため、出力信号Qが正しくない可能性があることを報知することができる。
【0044】
以上説明した第3実施例の集積回路装置210によれば、通常入力時には、フリップフロップ制御用信号Gに同期してフリップフロップFF2のラッチL1で保持しているデータ信号DをラッチL2で適正に入出力することができる。また、データ信号Dが通常入力時より遅延してラッチL2に入力されたときでも、データ信号Dが基準クロック信号Clkの立ち上がりより前に変化したときには、データ信号Dが変化してから時間tedg後に立ち上がるフリップフロップ制御用信号Gに同期してフリップフロップFF2のラッチL2にデータ信号Dが入出力されるから、より適正にデータ信号Dを入出力することができる。
【0045】
第3実施例の集積回路装置210では、二つのラッチL1,L2を有するフリップフロップFFを備えるものとしたが、フリップフロップ制御用信号Gに同期して入力されているデータ信号Dを保持すると共に保持したデータ信号Dを信号Qとして出力するものであれば如何なる回路を備えていてもよく、例えば、フリップフロップFFに代えて1つのラッチから構成されるラッチ回路を備えているものとしてもよい。
【0046】
第1,第3実施例の集積回路装置10,210では、フリップフロップ制御用信号出力回路30,230は基準クロック変化時データ状態出力回路32やエラー信号出力回路38を備えるものとしたが、基準クロック変化時データ状態出力回路32やエラー信号出力回路38を備えていないものとしてもよい。
【0047】
第1〜3実施例の集積回路装置10,110,210では、エッジ検出回路20では、入力されているデータ信号Dが変化してから時間tdedgの期間立ち下がっているデータエッジ信号Dedgを生成するものとしたが、データエッジ信号Dedgはフリップフロップ制御用信号Gがデータ信号Dの安定より遅れて立ち上がるよう生成されていればよく、時間tdedgより長く立ち下がっていてもよいし、時間tdedgよりも短く立ち下がっていてもよく、少なくともセットアップ時間tsetの間立ち下がっているのが望ましい。こうすれば、データ信号Dが変化してからフリップフロップ制御用信号Gの立ち上がりまでに少なくともセットアップ時間tset程度の時間があるから、データ信号Dを適正に入出力することができる。
【0048】
第1〜3実施例の集積回路装置10,110,210では、データエッジ信号出力回路20をパルス生成回路22,24とANDゲートとして機能する論理回路26とから構成するものとしたが、データ信号Dの変化を検出してデータ信号Dが変化したときにデータエッジ信号Dedgを出力する回路であれば如何なる回路を用いてもよく、例えば、データ信号Dとデータ信号Dを所定時間遅延させた信号との排他的論理和に基づいてデータエッジ信号Dedgを出力するものとしてもよい。
【0049】
第1〜3実施例の集積回路装置10,110,210では、フリップフロップ制御用信号出力回路30,130,230をドミノCMOS論理回路として構成するものとしたが、データエッジ信号Dedgが立ち上がっているときに基準クロック信号Clkが立ち上がったときには基準クロック信号に同期して立ち上がるフリップフロップ制御用信号Gを出力し、データエッジ信号Dedgが立ち下がっているときにはデータエッジ信号Dedgが立ち上がってから立ち上がるフリップフロップ制御用信号Gを生成して出力するものであれば如何なる回路を用いるものとしてもよい。
【0050】
第1〜3実施例の集積回路装置10,110,210では、データ信号Dの変化状態を示す信号として一つのパルス信号を用いるものとしたが、複数のパルス信号を用いるものとしてもよい。
【0051】
また、こうした1つの集積回路装置10,110,210から構成されるものに限定されるものではなく、複数の集積回路装置10,110,210から構成されるものとしてもよく、集積回路装置10,110、210を互いに組み合わせて構成されるものとしても構わない。
【0052】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、集積回路装置の製造産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1実施例としての集積回路装置10の回路構成の概略を示す回路図である。
【図2】エッジ検出回路の回路構成の一例を示す回路図である。
【図3】エッジ検出回路に入出力される各信号の相関としてのタイミングチャートの一例を示す説明図である。
【図4】データエッジ信号出力回路20に入出力される各信号の相関としてのタイミングチャートの一例を示す説明図である。
【図5】基準クロック変化時データ状態出力回路32に入出力される各信号の相関としてのタイミングチャートの一例を示す説明図である。
【図6】エラー信号出力回路38に入出力される各信号の相関としてのタイミングチャートの一例を示す説明図である。
【図7】通常入力時に集積回路装置10に入出力される各信号の相関としてのタイミングチャートの一例を示す説明図である。
【図8】データ信号Dが正常入力時より若干遅延したときに集積回路装置10に入出力される各信号の相関としてのタイミングチャートの一例を示す説明図である。
【図9】データ信号Dが正常入力時より大きく遅延したときに集積回路装置10に入出力される各信号の相関としてのタイミングチャートの一例を示す説明図である。
【図10】本発明の第2実施例としての集積回路装置110の回路構成の概略を示す回路図である。
【図11】データ信号Dが正常入力時より大きく遅延したときに集積回路装置110に入出力される各信号の相関としてのタイミングチャートの一例を示す説明図である。
【図12】本発明の第3実施例としての集積回路装置210の回路構成の概略を示す回路図である。
【図13】データ信号Dが正常入力時より若干遅延したときに集積回路装置210に入出力される各信号の相関としてのタイミングチャートの一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0055】
10,110,210 集積回路装置、20 データエッジ信号出力回路、22,24,34,40 パルス生成回路、26,36,42 論理回路、30,130,230 フリップフロップ制御用信号出力回路、32 基準クロック変化時データ状態出力回路、38 エラー信号出力回路、CINV1,CINV2 クロックドインバータ、INV1,INV2,INV3,INV4,INV5,INV6,INV7 インバータ、N1,N2,N3,N4,P1,P2,P3 トランジスタ、TG1,TG2 トランスファゲート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準クロック信号に同期してデータ信号を入出力可能な集積回路装置であって、
入力されているデータ信号が変化しているときにはデータ不安定状態信号を生成して出力し、入力されているデータ信号が変化していないときにはデータ安定状態信号を生成して出力するデータ状態信号生成出力回路と、
前記データ状態信号生成出力回路によりデータ安定状態信号が出力されているときに入力されている基準クロック信号が立ち上がったときには該基準クロック信号の立ち上がりに同期して制御用パルス信号を生成して出力し、前記データ状態信号生成出力回路からデータ不安定状態信号が出力されているときに入力されている基準クロック信号が立ち上がったときには前記データ状態信号生成出力回路から出力されている信号がデータ安定状態信号に遷移するときに同期して制御用パルス信号を生成して出力する制御用パルス信号生成出力回路と、
前記制御用パルス信号生成出力回路から出力された制御用パルス信号に同期して入力されているデータ信号を保持すると共に該保持しているデータ信号を出力するデータ信号保持回路と、
を備える集積回路装置。
【請求項2】
前記データ状態信号生成出力回路は、入力されているデータ信号が変化しているときには該入力されているデータ信号の変化してから少なくとも前記データ信号保持回路のセットアップ時間が経過するまで前記データ不安定状態信号を生成して出力する回路である請求項1記載の集積回路装置。
【請求項3】
前記データ信号保持回路は、前記制御用パルス信号生成出力回路から出力された制御用パルス信号に同期して入力されているデータ信号を保持すると共に該保持しているデータ信号を出力する第1ラッチ回路と、前記基準クロック信号に同期して第1ラッチ回路から出力されているデータ信号を保持すると共に該保持しているデータ信号を出力する第2ラッチ回路を有する回路である請求項1または2記載の集積回路装置。
【請求項4】
前記データ状態信号生成出力回路は、入力されているデータ信号の立ち上がりのタイミングで変化するデータ立ち上がりタイミング信号を生成して出力する立ち上がりタイミング信号生成出力回路と、入力されているデータ信号の立ち下がりのタイミングで変化するデータ立ち下がりタイミング信号を生成して出力する立ち下がりタイミング信号生成出力回路と、前記データ立ち上がりタイミング信号および前記データ立ち下がりタイミング信号の少なくとも一方が出力されているときには前記データ不安定状態信号を出力すると共に前記データ立ち上がりタイミング信号および前記データ立ち下がりタイミング信号が出力されていないときには前記データ安定状態信号を出力するデータ状態信号出力回路と、を有する回路である請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載の集積回路装置。
【請求項5】
前記制御用パルス信号生成出力回路は、入力されている基準クロック信号が立ち下がっているときには該入力されている基準クロック信号に同期して立ち下がった信号を制御用パルス信号として生成して出力すると共に入力されている基準クロック信号が立ち上がっているときには該入力されている基準クロック信号と前記データ状態信号生成出力回路からの信号との論理積に基づく信号を制御用パルス信号として出力するドミノ論理回路を有する回路である請求項1ないし4のいずれか1つの請求項に記載の集積回路装置。
【請求項6】
前記制御用パルス信号生成出力回路は、前記データ状態信号生成出力回路によりデータ安定状態信号が出力されているときに前記生成した制御用パルス信号が立ち上がったときには正常動作信号を生成し出力し、前記データ状態信号生成出力回路によりデータ不安定状態信号が出力されているときに前記生成した制御用パルス信号が立ち上がったときにはデータ入力エラー信号を生成し出力する回路である請求項1ないし5のいずれか1つの請求項に記載の集積回路装置。
【請求項7】
前記制御用パルス信号生成出力回路は、前記データ状態信号生成出力回路によりデータ安定状態信号が出力されているときに入力されている基準クロック信号が立ち上がったときにはデータ安定時動作信号を生成して出力し、前記データ状態信号生成出力回路からデータ不安定状態信号が出力されているときに入力されている基準クロック信号が立ち上がったときにはデータ不安定時動作信号を生成して出力する回路である請求項1ないし6のいずれか1つの請求項に記載の集積回路装置。
【請求項8】
前記制御用パルス信号生成出力回路は、前記データ状態信号生成出力回路によりデータ安定状態信号が出力されているときに入力されている基準クロック信号が立ち上がったとき、前記データ不安定時動作信号が出力されているときにはデータ不安定時動作信号に同期して立ち下がる制御用パルス信号を生成して出力し、前記データ安定時動作信号が出力されているときには前記データ不安定状態信号の前記データ安定状態信号への遷移に同期して立ち上がる制御用パルス信号を生成して出力する回路である請求項7記載の集積回路装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1つの請求項に記載の集積回路装置を複数備える集積回路装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−164733(P2009−164733A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339774(P2007−339774)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 応用物理学会固体素子・材料コンファレンス 刊行物名 Extended Abstracts of the 2007 International Conference on SOLID STATE DEVICES AND MATERIALS 発行年月日 平成19年9月19日 発行者名 応用物理学会固体素子・材料コンファレンス 刊行物名 Extended Abstracts of the 2007 International Conference on SOLID STATE DEVICES AND MATERIALS 発行年月日 平成19年9月19日
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】