集積型半導体レーザ素子および半導体レーザモジュール
【課題】内部で発生する迷光の前方への放射を抑制することができる集積型半導体レーザ素子およびこれを備える半導体レーザモジュールを提供すること。
【解決手段】複数の半導体レーザと、前記複数の半導体レーザからの出力光を合流させることができる光合流器と、前記光合流器からの出力光を増幅する半導体光増幅器とを集積した集積型半導体レーザ素子であって、前記光合流器の出力ポート側の端面の前部に前記半導体光増幅器の出力端側へ伝搬する光を後方に反射する反射手段を設けたことを特徴とする。
【解決手段】複数の半導体レーザと、前記複数の半導体レーザからの出力光を合流させることができる光合流器と、前記光合流器からの出力光を増幅する半導体光増幅器とを集積した集積型半導体レーザ素子であって、前記光合流器の出力ポート側の端面の前部に前記半導体光増幅器の出力端側へ伝搬する光を後方に反射する反射手段を設けたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の半導体レーザを集積した集積型半導体レーザ素子および集積型半導体レーザ素子を備える半導体レーザモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえばDWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing)光通信用の波長可変光源として、集積型半導体レーザ素子が開示されている(特許文献1参照)。図17は、従来の集積型半導体レーザ素子を模式的に表した平面概略図である。この集積型半導体レーザ素子70は、複数のDFB(Distributed Feedback)型のレーザストライプ71−1〜71−n(nは2以上の整数)と、複数の光導波路72−1〜72−nと、多モード干渉型(Multi mode Interferometer : MMI)光合流器73と、半導体光増幅器74を一つの基板上に集積したものである。
【0003】
この集積型半導体レーザ素子70の動作を説明する。まず、DFBレーザストライプ71−1〜71−nの中から選択した1つのDFBレーザストライプを駆動する。光導波路72−1〜72−nのうち駆動するDFBレーザストライプと光学的に接続している光導波路は、駆動するDFBレーザストライプからの出力光を導波する。MMI合流器73は、光導波路を導波した光を通過させて出力ポート73aから出力する。半導体光増幅器74は、出力ポート73aから出力した光を増幅して出力端74aから出力する。
【0004】
一方、図18は、図17に示す集積型半導体レーザ素子70を備える光通信用の半導体レーザモジュールを模式的に表した平面概略図である。この半導体レーザモジュール80の動作を説明する。集積型半導体レーザ素子70は、駆動するDFBレーザストライプに対応する波長の光を出力する。コリメートレンズ81は、集積型半導体レーザ素子70からの出力光を平行光線とする。光アイソレータ82は、コリメートレンズ81からの平行光線を一方向にのみ透過する。ビームスプリッタ83は、コリメートレンズ81からの平行光線の大部分を透過し、一部を分岐する。パワーモニタPD(Photo Detector)84は、ビームスプリッタ83により分岐した光を検出し、検出した光強度に応じた電流が流れる。一方、集光レンズ85は、ビームスプリッタ83を透過した光を集光して光ファイバ86に結合する。光ファイバ86は結合した光を伝搬し、伝搬した光は信号光などとして用いられる。
【0005】
ここで、光ファイバ86からの光出力(光ファイバ出力)は一定であることが要求される。光ファイバ出力を一定にするための集積型半導体レーザ素子70の制御方法としては、駆動するDFBレーザストライプの駆動電流を一定に制御した状態で、パワーモニタPD84に流れる電流が一定となるように半導体光増幅器74の駆動電流を制御する制御方法がある。
【0006】
【特許文献1】特開2003−258368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、従来の集積型半導体レーザ素子を備える半導体レーザモジュールにおいては、上記の制御方法を用いても光ファイバ出力が一定にならない場合があった。図19はパワーモニタPDに流れる電流と光ファイバ出力との関係を示す図である。図19に示すように、パワーモニタPDに流れる電流と光ファイバ出力との間にはオフセットがある。
【0008】
このオフセットは、DFBレーザストライプの光出力の経時的な低下や、DFBレーザストライプの設定温度や、駆動するDFBレーザストライプによって変動する場合がある。このようなオフセットの変動があると、光ファイバ出力を一定にするための集積型半導体レーザ素子の制御方法は、上記変動を考慮した複雑なものとしなければならない。
【0009】
このオフセットは、集積型半導体レーザ素子内部で発生する迷光が半導体光増幅器の出力端側に伝搬し、素子の前方へ出射し、光ファイバと結合せずにパワーモニタPDに入射することが原因と考えられる。この迷光は、DFBレーザストライプとMMI光合流器を接続する光導波路の曲がった部分からの放射光や、MMI光合流器の出力ポート側の端面からの放射光であると考えられる。具体的には、光導波路は、曲がった部分において半径方向に光が放射することが知られている。また、MMI光合流器については、例えばN入力ポート、1出力ポートのMMI光合流器を、どの入力ポートからの入力光も出力ポートから均一に出力されるように設計した場合、入力光強度の1/Nのみが出力ポートに結合し、入力光強度の(N−1)/Nは出力ポートに結合せずに損失となる。特に、光合流器が、半導体埋め込み型の導波路からなる場合は、出力ポートに結合しない光のほとんどが出力ポート側の端面から放射する。
【0010】
すなわち、従来の集積型半導体レーザ素子は、内部で発生する迷光が半導体光増幅器の出力端側へ伝搬して素子の前方へ出射するという課題があった。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、内部で発生する迷光の前方への放射を抑制することができる集積型半導体レーザ素子およびこれを備える半導体レーザモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る集積型半導体レーザ素子は、複数の半導体レーザと、前記複数の半導体レーザからの出力光を合流させることができる光合流器と、前記光合流器からの出力光を増幅する半導体光増幅器とを集積した集積型半導体レーザ素子であって、前記光合流器の出力ポート側の端面の前部に前記半導体光増幅器の出力端側へ伝搬する光を後方に反射する反射手段を設けたことを特徴とする。
【0013】
また、この発明に係る集積型半導体レーザ素子は、上記発明において、前記反射手段は、前記半導体光増幅器を埋め込む埋め込み部に幅方向にわたって設けた溝であることを特徴とする。
【0014】
また、この発明に係る集積型半導体レーザ素子は、上記発明において、前記溝を複数設けたことを特徴とする。
【0015】
また、この発明に係る集積型半導体レーザ素子は、上記発明において、前記反射手段の反射面と前記光合流器の出力ポート側の端面とのなす角度が0度より大きく45度より小さいことを特徴とする。
【0016】
また、この発明に係る集積型半導体レーザ素子は、上記発明において、前記半導体光増幅器と前記反射手段の該半導体光増幅器に近い端部との距離は、該半導体光増幅器を導波する光の幅方向の強度分布が最大値から1/e2となる位置よりも離れていることを特徴とする。
【0017】
また、この発明に係る集積型半導体レーザ素子は、上記発明において、前記反射手段の前記光合流器に近い反射面と前記光合流器の出力ポート側の端面との距離の最大値Lと、前記光合流器の厚さ方向の中心位置からの前記反射面の下端部までの深さDと、前記光合流器の出力ポート側の端面における該端面からの前記埋め込み部への放射光の前記厚さ方向の強度分布が最大値から1/e2となる幅の半値W0と、前記埋め込み部の屈折率nと、前記放射光の波長λとの間に、W0√(1+(λL/πnW02)2)<Dなる関係が成り立つことを特徴とする。
【0018】
また、この発明に係る集積型半導体レーザ素子は、上記発明において、前記複数の半導体レーザの間の埋め込み部に溝を設けたことを特徴とする。
【0019】
また、この発明に係る集積型半導体レーザ素子は、上記発明において、前記光合流器は多モード干渉型光合流器であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る半導体レーザモジュールは、上記のいずれかの発明に係る集積型半導体レーザ素子と、前記集積型半導体レーザ素子からの出力光を透過および分岐する光分岐素子と、前記光分岐素子を透過した光を伝送する光ファイバと、前記光分岐素子により分岐した光の強度を検出する光検出器と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、光合流器の出力ポート側の端面の前部に半導体光増幅器の出力端側へ伝搬する光を後方に反射する反射手段を設けたことにより、内部で発生する迷光の伝搬を阻止することができるので、迷光の前方への放射を抑制することができる集積型半導体レーザ素子を実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、図面を参照して本発明に係る集積型半導体レーザ素子および半導体レーザモジュールの実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子の構造と製造方法について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子を模式的に表した平面概略図である。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子10は、複数のDFBレーザストライプ11−1〜11−n(nは2以上の整数)と、複数の光導波路12−1〜12−nと、MMI合流器13と、半導体光増幅器14とを一つの半導体基板上に集積し、埋め込み部15により埋め込んだ構造を有する。そして、MMI光合流器13の出力ポート13a側の端面13bの前部の埋め込み部に、半導体光増幅器14の出力端14a側へ伝搬する光を後方に反射する反射手段である反射溝16a、16bを幅方向(半導体光増幅器14の光の伝搬方向に直交する方向)にわたって設けている。また、DFBレーザストライプ11−1〜11−n間の埋め込み部にトレンチ溝17−1〜17−m(m=n―1)を設けている。
【0025】
DFBレーザストライプ11−1〜11−nは、各々が幅1.5〜3μm、長さ600μmのストライプ状の埋め込み構造を有する端面発光型レーザであり、集積型半導体レーザ素子10の一端において幅方向に25μmピッチで形成されている。DFBレーザストライプ11−1〜11−nは、各DFBレーザストライプに備えられた回折格子の間隔を互いに異ならせることにより、出力光の波長が1530nm〜1570nmの範囲で相違するように構成されている。また、DFBレーザストライプのレーザ発振波長は、集積型半導体レーザ素子10の設定温度を変化させることにより調整することができる。すなわち、集積型半導体レーザ素子10は、駆動するDFBレーザストライプの切り替えと温度制御により、広い波長可変範囲を実現している。
【0026】
MMI合流器13は集積型半導体レーザ素子10の中央部付近に形成されている。また、光導波路12−1〜12−nはDFBレーザストライプ11−1〜11−nとMMI合流器13との間に形成されており、DFBレーザストライプ11−1〜11−nとMMI合流器13とを光学的に接続する。半導体光増幅器14は集積型半導体レーザ素子10のDFBレーザストライプ11−1〜11−nとは反対側の一端に形成されている。
【0027】
この集積型半導体レーザ素子10の動作を説明する。まず、DFBレーザストライプ11−1〜11−nの中から選択した1つのDFBレーザストライプを駆動する。トレンチ溝17−1〜17−mはDFBレーザストライプ11−1〜11−n間を電気的に分離するのでDFBレーザストライプ間の分離抵抗が大きくなり、DFBレーザストライプ11−1〜11−nの中の1つを選択して駆動することが容易にできる。
【0028】
つぎに、複数の光導波路12−1〜12−nのうち駆動するDFBレーザストライプと光学的に接続している光導波路は、駆動するDFBレーザストライプからの出力光を導波する。MMI合流器13は、光導波路を導波した光を通過させて出力ポート13aから出力する。半導体光増幅器14は、出力ポート13aから出力した光を増幅して出力端14aから出力する。
【0029】
半導体光増幅器14は、駆動するDFBレーザストライプからの出力光のMMI合流器13による光の損失を補い、出力端から所望の強度の光出力を得るために用いられる。
【0030】
この集積型半導体レーザ素子10が動作する際には、光導波路12−1〜12−nの曲がった部分からの放射光や、MMI光合流器13の出力ポート13a側の端面13bからの放射光が迷光となる。しかし、図2に示すように、反射溝16a、16bの内側面が反射面となって半導体光増幅器14の出力端14a側へ伝搬する図中矢印で示される迷光を後方に反射するので、迷光の素子の前方への放射を抑制することができる。反射溝16a、16bの反射率は埋め込み部15の屈折率により異なるが、例えば溝内部が空気で埋め込み部15が半導体の場合30%程度である。
【0031】
反射溝16aの内側面とMMI光合流器13の端面13bとのなす角度θ(図1参照)は、0度より大きく45度より小さい。反射溝16bについても同様である。角度θが0度であると反射溝16a、16bが反射した光がもとの方向に戻るので、MMI光合流器13を経由してDFBレーザストライプ11−1〜11−nに戻り、レーザ発振の動作の不安定や雑音の発生の原因となる場合がある。角度θが45度であると反射溝16a、16bが反射した光が集積型半導体レーザ素子10の側面で反射し、再び反射溝16a、16bで反射してもとの方向に戻るので、MMI光合流器13の端面13bを経由してDFBレーザストライプ11−1〜11−nに戻り、レーザ発振の動作の不安定や雑音の発生の原因となる場合がある。また、角度θが45度より大きいと、溝の内側面で反射した迷光が集積型半導体レーザ素子10の側面と溝との間の部分を通って前方に伝搬しやすくなる。
【0032】
また、半導体光増幅器14と反射溝16aの半導体光増幅器14に近い端部との距離l(図2参照)は、半導体光増幅器14を導波する光の幅方向の強度分布が最大値から1/e2となる位置よりも離れており、たとえば2μm以上とする。その結果、反射溝16aが半導体光増幅器14を導波する光の導波モードに影響を及ぼすことはない。ただし、距離lは、大きすぎると反射溝16aと半導体光増幅器14の間から迷光が漏洩する量が多くなるので、5μm以下とすることが好ましい。半導体光増幅器14と反射溝16bの半導体光増幅器14に近い端部との距離も同様の距離とする。
【0033】
つぎに、図3〜13を用いて、本実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子の製造方法について説明する。図3〜5は、各製造工程において、図1に示す集積型半導体レーザ素子10のA−A線に沿った断面を概略的に示すものである。
【0034】
まず、n型InP基板21上に、有機金属気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition : MOCVD)法を用いて、下部クラッドを兼ねるn型InPバッファ層22、組成を連続的に変化させた下部InGaAsP−SCH(Separate Confinement Heterostructure)層23、MQW活性層24、上部InGaAsP−SCH層25、InPスペーサ層26、InGaAsPグレーティング層27、p型InP層28を順次堆積する(図3)。なお、図中の領域E1〜E4は、それぞれDFBレーザストライプ11−1〜11−nを形成する領域、光導波路12−1〜12−nを形成する領域、MMI光合流器13を形成する領域、半導体光増幅器14を形成する領域を示す。
【0035】
つぎに、全面にSiN膜を堆積した後、領域E1のDFBレーザストライプ11−1〜11−nのそれぞれを形成する位置に、互いに周期の異なる回折格子のパターンになるようにパターンニングを施す。また、領域E4にもパターンニングを施す。そして、SiN膜をマスクとしてエッチングして、領域E1のInGaAsPグレーティング層27に回折格子となる格子溝29を形成するとともに、領域E4のInGaAsPグレーティング層27を全て取り除く。つぎに、SiN膜のマスクを除去した後に領域E1〜E4の全面にp型InP層28を再び堆積する。
【0036】
つぎに、全面にSiN膜を堆積した後、領域E1、E4のそれぞれに、DFBレーザストライプや半導体光増幅器よりもやや幅広の形状のパターンになるようにパターンニングを施す。そして、SiN膜をマスクとしてエッチングして、図4に示すように、下部InGaAsP−SCH層23までを除去してn型InPバッファ層22を露出する。このとき領域E2、E3は下部InGaAsP−SCH層23まで全て除去される。
【0037】
つぎに、SiN膜のマスクをそのまま選択成長のマスクとして、MOCVD法により、図5に示すように、InGaAsPコア層30、i型InP層31を順次堆積する。
【0038】
つぎに、SiN膜のマスクを除去した後、新たにSiN膜を堆積し、図1に示したDFBレーザストライプ11−1〜11−n、光導波路12−1〜12−n、MMI光合流器13、半導体光増幅器14に対応するパターンになるようにパターンニングを施す。そして、このSiN膜をマスクとしてエッチングして、DFBレーザストライプ11−1〜11−n、光導波路12−1〜12−n、MMI光合流器13、半導体光増幅器14に対応するメサ構造を形成するとともに、n型InPバッファ層22を露出させる。
【0039】
図6はこの工程を行った後の状態を説明する平面概略図である。領域E1〜E4においては、DFBレーザストライプ11−1〜11−n、光導波路12−1〜12−n、MMI光合流器13、半導体光増幅器14のそれぞれに対応する形状をしたメサ構造M1〜M4が形成される。
【0040】
つぎに、直前の工程で用いたSiN膜のマスクを選択成長のマスクとして、MOCVD法を用いて、露出したn型InPバッファ層22上に、p型InP埋め込み層32、n型電流ブロッキング層33を順次堆積する。ついで、SiN膜のマスクを除去した後、MOCVD法を用いて、領域E1〜E4の全面にp型InPクラッド層34、InGaAsコンタクト層35を順次堆積する。図7は、図6に示す半導体増幅器14を形成する領域E4におけるB−B線に沿った断面を概略的に示すものである。
【0041】
つぎに、全面にSiN膜を堆積した後、図8に示すように、反射溝に対応するパターン36a、36bおよびトレンチ溝に対応するパターン37−1〜37−mになるようにパターンニングを施す。
【0042】
そして、このSiN膜をマスクとしてエッチングして、図1に示す反射溝16a、16bとトレンチ溝17−1〜17−mを形成する。図9は反射溝16a、16bを形成した様子を示す断面概略図である。
【0043】
トレンチ溝17−1〜17−mについては、例えばn型InPバッファ層22に到る深さまで形成するが、DFBレーザストライプ11−1〜11−n間が電気的に分離できる深さまで形成すればよい。また、反射溝16a、16bについては、反射溝16a、16bのMMI光合流器13に近い内側面とMMI光合流器13の出力ポート13a側の端面13bとの距離の最大値Lと、MMI光合流器13のInGaAsPコア層30の厚さ方向の中心位置からの反射溝16a、16bの下端部までの深さDと、MMI光合流器13の端面13bにおける、該端面13bからのp型InP埋め込み層32への放射光の厚さ方向の強度分布が最大値から1/e2となる幅の半値W0と、p型InP埋め込み層32の屈折率nと、放射光の波長λとの間に、W0√(1+(λL/πnW02)2)<Dなる関係が成り立つような深さに形成する。この関係について以下説明する。
【0044】
図10は、図8におけるC−C線に沿った断面を用いて、反射溝16bの深さについて説明する図である。MMI光合流器13の端面13bにおいてInGaAsPコア層30からp型InP埋め込み層へと放射した光は強度分布Gを有し、その形状はInGaAsPコア層30の厚さ方向にy軸を取るとexp(−y/W02)で表される。この放射光が距離Lだけ進むと強度分布は曲線Sで示すように厚さ方向に広がり、強度が最大値から1/e2となる幅の半値WはW(L)=W0√(1+(λL/πnW02)2)で表される。したがって、W0√(1+(λL/πnW02)2)<Dなる関係が成り立っていれば、InGaAsPコア層30から放射した光が反射溝16bの下を通過して前方へ到達することなく反射されるので、迷光の伝搬を一層効果的に抑制できる。たとえば、InGaAsPコア層30のバンドギャップ波長が1.3μmで厚さが200nm、放射光の波長λが1.55μm、nが3.17、Lが5μmの場合は、W0は約0.82μmとなるので、Dは1.254μm以上にすればよい。
【0045】
つぎに、SiN膜のマスクを除去した後、全面に再びSiN膜を堆積し、DFBレーザストライプ11−1〜11−nと半導体光増幅器14に対する開口部を形成してSiN保護膜38とし、全面にAuZn/Auからなる2層の導電膜を堆積した後、DFBレーザストライプ11−1〜11−nと半導体光増幅器14とに対応する形状にパターンニングすることによってp側電極39を形成する。一方、n型InP基板21の裏面にはAuGeNi/Auからなる2層構造のn側電極40を形成する。こうして、図6に示す領域E4に半導体増幅器14が形成される。図11は、この時点における領域E4におけるB−B線に沿った断面概略図である。
【0046】
一方、図12は、この時点での図6に示す領域E3のF−F線に沿った断面を、図13は、この時点での領域E1のH−H線に沿った断面を、それぞれ概略的に示すものである。図11〜13に示すように、上記製造工程により、半導体増幅器14、DFBレーザストライプ11−1〜11−n、光導波路12−1〜12−n、MMI光合流器13が、同時に形成される。
【0047】
最後に、n型InP基板21を、集積型半導体レーザ素子10が複数並んだバー状にへき開し、DFBレーザストライプ11−1〜11−n、半導体増幅器14を形成した両端面に反射防止膜をコートしたのち、各集積型半導体レーザ素子10ごとに分離することにより、完成する。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子10によれば、MMI光合流器13の出力ポート13a側の端面13bの前部に半導体光増幅器14の出力端14a側へ伝搬する光を後方に反射する反射溝16a、16bを設けたことにより、MMI光合流器13や光導波路12−1〜12−nから放射する迷光の素子前方への放射を抑制することができる。
【0049】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る集積型半導体レーザ素子について説明する。本実施の形態2に係る集積型半導体レーザ素子は、実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子と同様の構造を有し、同様の方法で製造できるが、反射溝が素子の前方に向かって複数設けられている点が異なる。
【0050】
図14は、本実施の形態2に係る集積型半導体レーザ素子を模式的に表した平面概略図である。図14に示すように、本実施の形態2に係る集積型半導体レーザ素子50は、実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子10と同様に、複数のDFBレーザストライプ51−1〜51−nと、複数の光導波路52−1〜52−nと、MMI合流器53と、半導体光増幅器54とを単一の基板上に集積し、埋め込み部55により埋め込んだ構造を有する。そして、MMI光合流器53の出力ポート53a側の端面53bの前部の埋め込み部に、半導体光増幅器54の出力端54a側へ伝搬する光を後方に反射する複数の反射溝56a、56bを幅方向にわたって設けている。また、DFBレーザストライプ51−1〜51−n間の埋め込み部にトレンチ溝57−1〜57−mを設けている。
【0051】
この集積型半導体レーザ素子50が動作する際には、光導波路52−1〜52−nの曲がった部分からの放射光や、MMI光合流器53の出力ポート53a側の端面53bからの放射光が迷光となる。しかし、図15に示すように、素子の前方に向かって設けられた複数の反射溝56a、56bが半導体光増幅器54の出力端54a側へ伝搬する図中矢印で示される迷光を後方に反射するので、迷光の素子前方への放射を抑制することができる。そして、一つの反射溝を透過した迷光も、図中幅のある矢印で示されるように複数の反射溝によって順次反射されて減衰する。また、半導体光増幅器52と一つの反射溝の間を抜けて前方へ伝搬する迷光も、図中矢印で示されるように外側に広がることにより次の反射溝により反射される。その結果、素子の前方へ放射する迷光が一層抑制される。
【0052】
なお、反射溝56a、56bのそれぞれの溝の数は3〜5程度である。また、反射溝56a、56bのそれぞれにおいて、複数の溝を所定の間隔で周期的に配置することによって、迷光を効果的に反射することができる。たとえば、迷光の波長をλ´、溝内部と溝以外の部分との平均屈折率をn´とすると、溝の間隔はλ´/4n´とする。
【0053】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係る半導体レーザモジュールについて説明する。本実施の形態3に係る半導体レーザモジュールは、実施の形態2に係る集積型半導体レーザ素子50を備えるものである。
【0054】
図16は、本実施の形態3に係る半導体レーザモジュールを模式的に表した平面概略図である。本実施の形態3に係る半導体レーザモジュール60の動作を説明する。集積型半導体レーザ素子50は、駆動するDFBレーザストライプに対応する波長の光を出力する。コリメートレンズ61は、集積型半導体レーザ素子50からの出力光を平行光線とする。光アイソレータ62は、コリメートレンズ61からの平行光線を一方向にのみ透過する。ビームスプリッタ63は、コリメートレンズ61からの平行光線の大部分を透過し、一部を分岐する。パワーモニタPD64は、ビームスプリッタ63により分岐した光を検出し、検出した光強度に応じた電流が流れる。一方、集光レンズ65は、ビームスプリッタ63を透過した光を集光して光ファイバ66に結合する。光ファイバ66は結合した光を伝搬し、伝搬した光は信号光などとして用いられる。
【0055】
本実施の形態3に係る半導体レーザモジュール60は、迷光の素子前方への放射を抑制することができる集積型半導体レーザ素子50を備えているので、パワーモニタPD64に流れる電流と光ファイバ66からの光出力との間のオフセットが大幅に小さくなる。したがって、DFBレーザストライプの光出力の経時的な低下や設定温度などによるパワーモニタPD64の検出電流の変動がきわめて小さくなり、光ファイバ出力を一定にするための制御が容易になる。
【0056】
なお、本実施の形態1または2に係る集積型半導体レーザ素子は、反射手段として溝を設けたが、反射手段として、埋め込み部とは屈折率や反射率が異なる材質からなる反射板を設けてもよい。このような反射板は、上記と同様な方法で形成した反射溝の内側面を前記材質で被覆したり、反射溝を前記材質で充填したりすることにより形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子を模式的に表した平面概略図である。
【図2】反射溝が迷光を反射することを説明する図である。
【図3】実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子の製造方法を説明する断面概略図である。
【図4】実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子の製造方法を説明する断面概略図である。
【図5】実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子の製造方法を説明する断面概略図である。
【図6】実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子の製造方法を説明する平面概略図である。
【図7】実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子の製造方法を説明する断面概略図である。
【図8】実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子の製造方法を説明する平面概略図である。
【図9】実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子の製造方法を説明する断面概略図である。
【図10】反射溝の深さについて説明する図である。
【図11】実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子の製造方法を説明する断面概略図である。
【図12】実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子の製造方法を説明する断面概略図である。
【図13】実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子の製造方法を説明する断面概略図である。
【図14】本発明の実施の形態2に係る集積型半導体レーザ素子を模式的に表した平面概略図である。
【図15】複数の反射溝が迷光を反射することを説明する図である。
【図16】本発明の実施の形態3に係る半導体レーザモジュールを模式的に表した平面概略図である。
【図17】従来の集積型半導体レーザ素子を模式的に表した平面概略図である。
【図18】図17に示す集積型半導体レーザ素子を備える光通信用の半導体レーザモジュールを模式的に表した平面概略図である。
【図19】パワーモニタPDに流れる電流と光ファイバ出力との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
10、50 集積型半導体レーザ素子
11−1〜11−n、51−1〜51−n DFBレーザストライプ
12−1〜12−n、52−1〜52−n 光導波路
13、53 MMI光合流器
13a、53a 出力ポート
13b、53b 出力側端面
14、54 半導体光増幅器
14a、54a出力端
15、55 埋め込み部
16a、16b 反射溝
17−1〜17−m、57−1〜57−m トレンチ溝
21 n型InP基板
22 n型InPバッファ層
23 下部InGaAsP−SCH層
24 MQW活性層24
25 上部InGaAsP−SCH層
26 InPスペーサ層
27 InGaAsPグレーティング層
28 p型InP層
29 格子溝
30 InGaAsPコア層
31 i型InP層
32 p型InP埋め込み層
33 n型電流ブロッキング層
34 p型InPクラッド層
35 InGaAsコンタクト層
36a、36b パターン
37−1〜37−m パターン
38 保護膜
39 p側電極
40 n側電極
56a、56b 複数の反射溝
60 半導体レーザモジュール
61 コリメートレンズ
62 光アイソレータ
63 ビームスプリッタ
64 パワーモニタPD
65 集光レンズ
66 光ファイバ
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の半導体レーザを集積した集積型半導体レーザ素子および集積型半導体レーザ素子を備える半導体レーザモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえばDWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing)光通信用の波長可変光源として、集積型半導体レーザ素子が開示されている(特許文献1参照)。図17は、従来の集積型半導体レーザ素子を模式的に表した平面概略図である。この集積型半導体レーザ素子70は、複数のDFB(Distributed Feedback)型のレーザストライプ71−1〜71−n(nは2以上の整数)と、複数の光導波路72−1〜72−nと、多モード干渉型(Multi mode Interferometer : MMI)光合流器73と、半導体光増幅器74を一つの基板上に集積したものである。
【0003】
この集積型半導体レーザ素子70の動作を説明する。まず、DFBレーザストライプ71−1〜71−nの中から選択した1つのDFBレーザストライプを駆動する。光導波路72−1〜72−nのうち駆動するDFBレーザストライプと光学的に接続している光導波路は、駆動するDFBレーザストライプからの出力光を導波する。MMI合流器73は、光導波路を導波した光を通過させて出力ポート73aから出力する。半導体光増幅器74は、出力ポート73aから出力した光を増幅して出力端74aから出力する。
【0004】
一方、図18は、図17に示す集積型半導体レーザ素子70を備える光通信用の半導体レーザモジュールを模式的に表した平面概略図である。この半導体レーザモジュール80の動作を説明する。集積型半導体レーザ素子70は、駆動するDFBレーザストライプに対応する波長の光を出力する。コリメートレンズ81は、集積型半導体レーザ素子70からの出力光を平行光線とする。光アイソレータ82は、コリメートレンズ81からの平行光線を一方向にのみ透過する。ビームスプリッタ83は、コリメートレンズ81からの平行光線の大部分を透過し、一部を分岐する。パワーモニタPD(Photo Detector)84は、ビームスプリッタ83により分岐した光を検出し、検出した光強度に応じた電流が流れる。一方、集光レンズ85は、ビームスプリッタ83を透過した光を集光して光ファイバ86に結合する。光ファイバ86は結合した光を伝搬し、伝搬した光は信号光などとして用いられる。
【0005】
ここで、光ファイバ86からの光出力(光ファイバ出力)は一定であることが要求される。光ファイバ出力を一定にするための集積型半導体レーザ素子70の制御方法としては、駆動するDFBレーザストライプの駆動電流を一定に制御した状態で、パワーモニタPD84に流れる電流が一定となるように半導体光増幅器74の駆動電流を制御する制御方法がある。
【0006】
【特許文献1】特開2003−258368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、従来の集積型半導体レーザ素子を備える半導体レーザモジュールにおいては、上記の制御方法を用いても光ファイバ出力が一定にならない場合があった。図19はパワーモニタPDに流れる電流と光ファイバ出力との関係を示す図である。図19に示すように、パワーモニタPDに流れる電流と光ファイバ出力との間にはオフセットがある。
【0008】
このオフセットは、DFBレーザストライプの光出力の経時的な低下や、DFBレーザストライプの設定温度や、駆動するDFBレーザストライプによって変動する場合がある。このようなオフセットの変動があると、光ファイバ出力を一定にするための集積型半導体レーザ素子の制御方法は、上記変動を考慮した複雑なものとしなければならない。
【0009】
このオフセットは、集積型半導体レーザ素子内部で発生する迷光が半導体光増幅器の出力端側に伝搬し、素子の前方へ出射し、光ファイバと結合せずにパワーモニタPDに入射することが原因と考えられる。この迷光は、DFBレーザストライプとMMI光合流器を接続する光導波路の曲がった部分からの放射光や、MMI光合流器の出力ポート側の端面からの放射光であると考えられる。具体的には、光導波路は、曲がった部分において半径方向に光が放射することが知られている。また、MMI光合流器については、例えばN入力ポート、1出力ポートのMMI光合流器を、どの入力ポートからの入力光も出力ポートから均一に出力されるように設計した場合、入力光強度の1/Nのみが出力ポートに結合し、入力光強度の(N−1)/Nは出力ポートに結合せずに損失となる。特に、光合流器が、半導体埋め込み型の導波路からなる場合は、出力ポートに結合しない光のほとんどが出力ポート側の端面から放射する。
【0010】
すなわち、従来の集積型半導体レーザ素子は、内部で発生する迷光が半導体光増幅器の出力端側へ伝搬して素子の前方へ出射するという課題があった。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、内部で発生する迷光の前方への放射を抑制することができる集積型半導体レーザ素子およびこれを備える半導体レーザモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る集積型半導体レーザ素子は、複数の半導体レーザと、前記複数の半導体レーザからの出力光を合流させることができる光合流器と、前記光合流器からの出力光を増幅する半導体光増幅器とを集積した集積型半導体レーザ素子であって、前記光合流器の出力ポート側の端面の前部に前記半導体光増幅器の出力端側へ伝搬する光を後方に反射する反射手段を設けたことを特徴とする。
【0013】
また、この発明に係る集積型半導体レーザ素子は、上記発明において、前記反射手段は、前記半導体光増幅器を埋め込む埋め込み部に幅方向にわたって設けた溝であることを特徴とする。
【0014】
また、この発明に係る集積型半導体レーザ素子は、上記発明において、前記溝を複数設けたことを特徴とする。
【0015】
また、この発明に係る集積型半導体レーザ素子は、上記発明において、前記反射手段の反射面と前記光合流器の出力ポート側の端面とのなす角度が0度より大きく45度より小さいことを特徴とする。
【0016】
また、この発明に係る集積型半導体レーザ素子は、上記発明において、前記半導体光増幅器と前記反射手段の該半導体光増幅器に近い端部との距離は、該半導体光増幅器を導波する光の幅方向の強度分布が最大値から1/e2となる位置よりも離れていることを特徴とする。
【0017】
また、この発明に係る集積型半導体レーザ素子は、上記発明において、前記反射手段の前記光合流器に近い反射面と前記光合流器の出力ポート側の端面との距離の最大値Lと、前記光合流器の厚さ方向の中心位置からの前記反射面の下端部までの深さDと、前記光合流器の出力ポート側の端面における該端面からの前記埋め込み部への放射光の前記厚さ方向の強度分布が最大値から1/e2となる幅の半値W0と、前記埋め込み部の屈折率nと、前記放射光の波長λとの間に、W0√(1+(λL/πnW02)2)<Dなる関係が成り立つことを特徴とする。
【0018】
また、この発明に係る集積型半導体レーザ素子は、上記発明において、前記複数の半導体レーザの間の埋め込み部に溝を設けたことを特徴とする。
【0019】
また、この発明に係る集積型半導体レーザ素子は、上記発明において、前記光合流器は多モード干渉型光合流器であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る半導体レーザモジュールは、上記のいずれかの発明に係る集積型半導体レーザ素子と、前記集積型半導体レーザ素子からの出力光を透過および分岐する光分岐素子と、前記光分岐素子を透過した光を伝送する光ファイバと、前記光分岐素子により分岐した光の強度を検出する光検出器と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、光合流器の出力ポート側の端面の前部に半導体光増幅器の出力端側へ伝搬する光を後方に反射する反射手段を設けたことにより、内部で発生する迷光の伝搬を阻止することができるので、迷光の前方への放射を抑制することができる集積型半導体レーザ素子を実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、図面を参照して本発明に係る集積型半導体レーザ素子および半導体レーザモジュールの実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子の構造と製造方法について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子を模式的に表した平面概略図である。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子10は、複数のDFBレーザストライプ11−1〜11−n(nは2以上の整数)と、複数の光導波路12−1〜12−nと、MMI合流器13と、半導体光増幅器14とを一つの半導体基板上に集積し、埋め込み部15により埋め込んだ構造を有する。そして、MMI光合流器13の出力ポート13a側の端面13bの前部の埋め込み部に、半導体光増幅器14の出力端14a側へ伝搬する光を後方に反射する反射手段である反射溝16a、16bを幅方向(半導体光増幅器14の光の伝搬方向に直交する方向)にわたって設けている。また、DFBレーザストライプ11−1〜11−n間の埋め込み部にトレンチ溝17−1〜17−m(m=n―1)を設けている。
【0025】
DFBレーザストライプ11−1〜11−nは、各々が幅1.5〜3μm、長さ600μmのストライプ状の埋め込み構造を有する端面発光型レーザであり、集積型半導体レーザ素子10の一端において幅方向に25μmピッチで形成されている。DFBレーザストライプ11−1〜11−nは、各DFBレーザストライプに備えられた回折格子の間隔を互いに異ならせることにより、出力光の波長が1530nm〜1570nmの範囲で相違するように構成されている。また、DFBレーザストライプのレーザ発振波長は、集積型半導体レーザ素子10の設定温度を変化させることにより調整することができる。すなわち、集積型半導体レーザ素子10は、駆動するDFBレーザストライプの切り替えと温度制御により、広い波長可変範囲を実現している。
【0026】
MMI合流器13は集積型半導体レーザ素子10の中央部付近に形成されている。また、光導波路12−1〜12−nはDFBレーザストライプ11−1〜11−nとMMI合流器13との間に形成されており、DFBレーザストライプ11−1〜11−nとMMI合流器13とを光学的に接続する。半導体光増幅器14は集積型半導体レーザ素子10のDFBレーザストライプ11−1〜11−nとは反対側の一端に形成されている。
【0027】
この集積型半導体レーザ素子10の動作を説明する。まず、DFBレーザストライプ11−1〜11−nの中から選択した1つのDFBレーザストライプを駆動する。トレンチ溝17−1〜17−mはDFBレーザストライプ11−1〜11−n間を電気的に分離するのでDFBレーザストライプ間の分離抵抗が大きくなり、DFBレーザストライプ11−1〜11−nの中の1つを選択して駆動することが容易にできる。
【0028】
つぎに、複数の光導波路12−1〜12−nのうち駆動するDFBレーザストライプと光学的に接続している光導波路は、駆動するDFBレーザストライプからの出力光を導波する。MMI合流器13は、光導波路を導波した光を通過させて出力ポート13aから出力する。半導体光増幅器14は、出力ポート13aから出力した光を増幅して出力端14aから出力する。
【0029】
半導体光増幅器14は、駆動するDFBレーザストライプからの出力光のMMI合流器13による光の損失を補い、出力端から所望の強度の光出力を得るために用いられる。
【0030】
この集積型半導体レーザ素子10が動作する際には、光導波路12−1〜12−nの曲がった部分からの放射光や、MMI光合流器13の出力ポート13a側の端面13bからの放射光が迷光となる。しかし、図2に示すように、反射溝16a、16bの内側面が反射面となって半導体光増幅器14の出力端14a側へ伝搬する図中矢印で示される迷光を後方に反射するので、迷光の素子の前方への放射を抑制することができる。反射溝16a、16bの反射率は埋め込み部15の屈折率により異なるが、例えば溝内部が空気で埋め込み部15が半導体の場合30%程度である。
【0031】
反射溝16aの内側面とMMI光合流器13の端面13bとのなす角度θ(図1参照)は、0度より大きく45度より小さい。反射溝16bについても同様である。角度θが0度であると反射溝16a、16bが反射した光がもとの方向に戻るので、MMI光合流器13を経由してDFBレーザストライプ11−1〜11−nに戻り、レーザ発振の動作の不安定や雑音の発生の原因となる場合がある。角度θが45度であると反射溝16a、16bが反射した光が集積型半導体レーザ素子10の側面で反射し、再び反射溝16a、16bで反射してもとの方向に戻るので、MMI光合流器13の端面13bを経由してDFBレーザストライプ11−1〜11−nに戻り、レーザ発振の動作の不安定や雑音の発生の原因となる場合がある。また、角度θが45度より大きいと、溝の内側面で反射した迷光が集積型半導体レーザ素子10の側面と溝との間の部分を通って前方に伝搬しやすくなる。
【0032】
また、半導体光増幅器14と反射溝16aの半導体光増幅器14に近い端部との距離l(図2参照)は、半導体光増幅器14を導波する光の幅方向の強度分布が最大値から1/e2となる位置よりも離れており、たとえば2μm以上とする。その結果、反射溝16aが半導体光増幅器14を導波する光の導波モードに影響を及ぼすことはない。ただし、距離lは、大きすぎると反射溝16aと半導体光増幅器14の間から迷光が漏洩する量が多くなるので、5μm以下とすることが好ましい。半導体光増幅器14と反射溝16bの半導体光増幅器14に近い端部との距離も同様の距離とする。
【0033】
つぎに、図3〜13を用いて、本実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子の製造方法について説明する。図3〜5は、各製造工程において、図1に示す集積型半導体レーザ素子10のA−A線に沿った断面を概略的に示すものである。
【0034】
まず、n型InP基板21上に、有機金属気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition : MOCVD)法を用いて、下部クラッドを兼ねるn型InPバッファ層22、組成を連続的に変化させた下部InGaAsP−SCH(Separate Confinement Heterostructure)層23、MQW活性層24、上部InGaAsP−SCH層25、InPスペーサ層26、InGaAsPグレーティング層27、p型InP層28を順次堆積する(図3)。なお、図中の領域E1〜E4は、それぞれDFBレーザストライプ11−1〜11−nを形成する領域、光導波路12−1〜12−nを形成する領域、MMI光合流器13を形成する領域、半導体光増幅器14を形成する領域を示す。
【0035】
つぎに、全面にSiN膜を堆積した後、領域E1のDFBレーザストライプ11−1〜11−nのそれぞれを形成する位置に、互いに周期の異なる回折格子のパターンになるようにパターンニングを施す。また、領域E4にもパターンニングを施す。そして、SiN膜をマスクとしてエッチングして、領域E1のInGaAsPグレーティング層27に回折格子となる格子溝29を形成するとともに、領域E4のInGaAsPグレーティング層27を全て取り除く。つぎに、SiN膜のマスクを除去した後に領域E1〜E4の全面にp型InP層28を再び堆積する。
【0036】
つぎに、全面にSiN膜を堆積した後、領域E1、E4のそれぞれに、DFBレーザストライプや半導体光増幅器よりもやや幅広の形状のパターンになるようにパターンニングを施す。そして、SiN膜をマスクとしてエッチングして、図4に示すように、下部InGaAsP−SCH層23までを除去してn型InPバッファ層22を露出する。このとき領域E2、E3は下部InGaAsP−SCH層23まで全て除去される。
【0037】
つぎに、SiN膜のマスクをそのまま選択成長のマスクとして、MOCVD法により、図5に示すように、InGaAsPコア層30、i型InP層31を順次堆積する。
【0038】
つぎに、SiN膜のマスクを除去した後、新たにSiN膜を堆積し、図1に示したDFBレーザストライプ11−1〜11−n、光導波路12−1〜12−n、MMI光合流器13、半導体光増幅器14に対応するパターンになるようにパターンニングを施す。そして、このSiN膜をマスクとしてエッチングして、DFBレーザストライプ11−1〜11−n、光導波路12−1〜12−n、MMI光合流器13、半導体光増幅器14に対応するメサ構造を形成するとともに、n型InPバッファ層22を露出させる。
【0039】
図6はこの工程を行った後の状態を説明する平面概略図である。領域E1〜E4においては、DFBレーザストライプ11−1〜11−n、光導波路12−1〜12−n、MMI光合流器13、半導体光増幅器14のそれぞれに対応する形状をしたメサ構造M1〜M4が形成される。
【0040】
つぎに、直前の工程で用いたSiN膜のマスクを選択成長のマスクとして、MOCVD法を用いて、露出したn型InPバッファ層22上に、p型InP埋め込み層32、n型電流ブロッキング層33を順次堆積する。ついで、SiN膜のマスクを除去した後、MOCVD法を用いて、領域E1〜E4の全面にp型InPクラッド層34、InGaAsコンタクト層35を順次堆積する。図7は、図6に示す半導体増幅器14を形成する領域E4におけるB−B線に沿った断面を概略的に示すものである。
【0041】
つぎに、全面にSiN膜を堆積した後、図8に示すように、反射溝に対応するパターン36a、36bおよびトレンチ溝に対応するパターン37−1〜37−mになるようにパターンニングを施す。
【0042】
そして、このSiN膜をマスクとしてエッチングして、図1に示す反射溝16a、16bとトレンチ溝17−1〜17−mを形成する。図9は反射溝16a、16bを形成した様子を示す断面概略図である。
【0043】
トレンチ溝17−1〜17−mについては、例えばn型InPバッファ層22に到る深さまで形成するが、DFBレーザストライプ11−1〜11−n間が電気的に分離できる深さまで形成すればよい。また、反射溝16a、16bについては、反射溝16a、16bのMMI光合流器13に近い内側面とMMI光合流器13の出力ポート13a側の端面13bとの距離の最大値Lと、MMI光合流器13のInGaAsPコア層30の厚さ方向の中心位置からの反射溝16a、16bの下端部までの深さDと、MMI光合流器13の端面13bにおける、該端面13bからのp型InP埋め込み層32への放射光の厚さ方向の強度分布が最大値から1/e2となる幅の半値W0と、p型InP埋め込み層32の屈折率nと、放射光の波長λとの間に、W0√(1+(λL/πnW02)2)<Dなる関係が成り立つような深さに形成する。この関係について以下説明する。
【0044】
図10は、図8におけるC−C線に沿った断面を用いて、反射溝16bの深さについて説明する図である。MMI光合流器13の端面13bにおいてInGaAsPコア層30からp型InP埋め込み層へと放射した光は強度分布Gを有し、その形状はInGaAsPコア層30の厚さ方向にy軸を取るとexp(−y/W02)で表される。この放射光が距離Lだけ進むと強度分布は曲線Sで示すように厚さ方向に広がり、強度が最大値から1/e2となる幅の半値WはW(L)=W0√(1+(λL/πnW02)2)で表される。したがって、W0√(1+(λL/πnW02)2)<Dなる関係が成り立っていれば、InGaAsPコア層30から放射した光が反射溝16bの下を通過して前方へ到達することなく反射されるので、迷光の伝搬を一層効果的に抑制できる。たとえば、InGaAsPコア層30のバンドギャップ波長が1.3μmで厚さが200nm、放射光の波長λが1.55μm、nが3.17、Lが5μmの場合は、W0は約0.82μmとなるので、Dは1.254μm以上にすればよい。
【0045】
つぎに、SiN膜のマスクを除去した後、全面に再びSiN膜を堆積し、DFBレーザストライプ11−1〜11−nと半導体光増幅器14に対する開口部を形成してSiN保護膜38とし、全面にAuZn/Auからなる2層の導電膜を堆積した後、DFBレーザストライプ11−1〜11−nと半導体光増幅器14とに対応する形状にパターンニングすることによってp側電極39を形成する。一方、n型InP基板21の裏面にはAuGeNi/Auからなる2層構造のn側電極40を形成する。こうして、図6に示す領域E4に半導体増幅器14が形成される。図11は、この時点における領域E4におけるB−B線に沿った断面概略図である。
【0046】
一方、図12は、この時点での図6に示す領域E3のF−F線に沿った断面を、図13は、この時点での領域E1のH−H線に沿った断面を、それぞれ概略的に示すものである。図11〜13に示すように、上記製造工程により、半導体増幅器14、DFBレーザストライプ11−1〜11−n、光導波路12−1〜12−n、MMI光合流器13が、同時に形成される。
【0047】
最後に、n型InP基板21を、集積型半導体レーザ素子10が複数並んだバー状にへき開し、DFBレーザストライプ11−1〜11−n、半導体増幅器14を形成した両端面に反射防止膜をコートしたのち、各集積型半導体レーザ素子10ごとに分離することにより、完成する。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子10によれば、MMI光合流器13の出力ポート13a側の端面13bの前部に半導体光増幅器14の出力端14a側へ伝搬する光を後方に反射する反射溝16a、16bを設けたことにより、MMI光合流器13や光導波路12−1〜12−nから放射する迷光の素子前方への放射を抑制することができる。
【0049】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る集積型半導体レーザ素子について説明する。本実施の形態2に係る集積型半導体レーザ素子は、実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子と同様の構造を有し、同様の方法で製造できるが、反射溝が素子の前方に向かって複数設けられている点が異なる。
【0050】
図14は、本実施の形態2に係る集積型半導体レーザ素子を模式的に表した平面概略図である。図14に示すように、本実施の形態2に係る集積型半導体レーザ素子50は、実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子10と同様に、複数のDFBレーザストライプ51−1〜51−nと、複数の光導波路52−1〜52−nと、MMI合流器53と、半導体光増幅器54とを単一の基板上に集積し、埋め込み部55により埋め込んだ構造を有する。そして、MMI光合流器53の出力ポート53a側の端面53bの前部の埋め込み部に、半導体光増幅器54の出力端54a側へ伝搬する光を後方に反射する複数の反射溝56a、56bを幅方向にわたって設けている。また、DFBレーザストライプ51−1〜51−n間の埋め込み部にトレンチ溝57−1〜57−mを設けている。
【0051】
この集積型半導体レーザ素子50が動作する際には、光導波路52−1〜52−nの曲がった部分からの放射光や、MMI光合流器53の出力ポート53a側の端面53bからの放射光が迷光となる。しかし、図15に示すように、素子の前方に向かって設けられた複数の反射溝56a、56bが半導体光増幅器54の出力端54a側へ伝搬する図中矢印で示される迷光を後方に反射するので、迷光の素子前方への放射を抑制することができる。そして、一つの反射溝を透過した迷光も、図中幅のある矢印で示されるように複数の反射溝によって順次反射されて減衰する。また、半導体光増幅器52と一つの反射溝の間を抜けて前方へ伝搬する迷光も、図中矢印で示されるように外側に広がることにより次の反射溝により反射される。その結果、素子の前方へ放射する迷光が一層抑制される。
【0052】
なお、反射溝56a、56bのそれぞれの溝の数は3〜5程度である。また、反射溝56a、56bのそれぞれにおいて、複数の溝を所定の間隔で周期的に配置することによって、迷光を効果的に反射することができる。たとえば、迷光の波長をλ´、溝内部と溝以外の部分との平均屈折率をn´とすると、溝の間隔はλ´/4n´とする。
【0053】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係る半導体レーザモジュールについて説明する。本実施の形態3に係る半導体レーザモジュールは、実施の形態2に係る集積型半導体レーザ素子50を備えるものである。
【0054】
図16は、本実施の形態3に係る半導体レーザモジュールを模式的に表した平面概略図である。本実施の形態3に係る半導体レーザモジュール60の動作を説明する。集積型半導体レーザ素子50は、駆動するDFBレーザストライプに対応する波長の光を出力する。コリメートレンズ61は、集積型半導体レーザ素子50からの出力光を平行光線とする。光アイソレータ62は、コリメートレンズ61からの平行光線を一方向にのみ透過する。ビームスプリッタ63は、コリメートレンズ61からの平行光線の大部分を透過し、一部を分岐する。パワーモニタPD64は、ビームスプリッタ63により分岐した光を検出し、検出した光強度に応じた電流が流れる。一方、集光レンズ65は、ビームスプリッタ63を透過した光を集光して光ファイバ66に結合する。光ファイバ66は結合した光を伝搬し、伝搬した光は信号光などとして用いられる。
【0055】
本実施の形態3に係る半導体レーザモジュール60は、迷光の素子前方への放射を抑制することができる集積型半導体レーザ素子50を備えているので、パワーモニタPD64に流れる電流と光ファイバ66からの光出力との間のオフセットが大幅に小さくなる。したがって、DFBレーザストライプの光出力の経時的な低下や設定温度などによるパワーモニタPD64の検出電流の変動がきわめて小さくなり、光ファイバ出力を一定にするための制御が容易になる。
【0056】
なお、本実施の形態1または2に係る集積型半導体レーザ素子は、反射手段として溝を設けたが、反射手段として、埋め込み部とは屈折率や反射率が異なる材質からなる反射板を設けてもよい。このような反射板は、上記と同様な方法で形成した反射溝の内側面を前記材質で被覆したり、反射溝を前記材質で充填したりすることにより形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子を模式的に表した平面概略図である。
【図2】反射溝が迷光を反射することを説明する図である。
【図3】実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子の製造方法を説明する断面概略図である。
【図4】実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子の製造方法を説明する断面概略図である。
【図5】実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子の製造方法を説明する断面概略図である。
【図6】実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子の製造方法を説明する平面概略図である。
【図7】実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子の製造方法を説明する断面概略図である。
【図8】実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子の製造方法を説明する平面概略図である。
【図9】実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子の製造方法を説明する断面概略図である。
【図10】反射溝の深さについて説明する図である。
【図11】実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子の製造方法を説明する断面概略図である。
【図12】実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子の製造方法を説明する断面概略図である。
【図13】実施の形態1に係る集積型半導体レーザ素子の製造方法を説明する断面概略図である。
【図14】本発明の実施の形態2に係る集積型半導体レーザ素子を模式的に表した平面概略図である。
【図15】複数の反射溝が迷光を反射することを説明する図である。
【図16】本発明の実施の形態3に係る半導体レーザモジュールを模式的に表した平面概略図である。
【図17】従来の集積型半導体レーザ素子を模式的に表した平面概略図である。
【図18】図17に示す集積型半導体レーザ素子を備える光通信用の半導体レーザモジュールを模式的に表した平面概略図である。
【図19】パワーモニタPDに流れる電流と光ファイバ出力との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
10、50 集積型半導体レーザ素子
11−1〜11−n、51−1〜51−n DFBレーザストライプ
12−1〜12−n、52−1〜52−n 光導波路
13、53 MMI光合流器
13a、53a 出力ポート
13b、53b 出力側端面
14、54 半導体光増幅器
14a、54a出力端
15、55 埋め込み部
16a、16b 反射溝
17−1〜17−m、57−1〜57−m トレンチ溝
21 n型InP基板
22 n型InPバッファ層
23 下部InGaAsP−SCH層
24 MQW活性層24
25 上部InGaAsP−SCH層
26 InPスペーサ層
27 InGaAsPグレーティング層
28 p型InP層
29 格子溝
30 InGaAsPコア層
31 i型InP層
32 p型InP埋め込み層
33 n型電流ブロッキング層
34 p型InPクラッド層
35 InGaAsコンタクト層
36a、36b パターン
37−1〜37−m パターン
38 保護膜
39 p側電極
40 n側電極
56a、56b 複数の反射溝
60 半導体レーザモジュール
61 コリメートレンズ
62 光アイソレータ
63 ビームスプリッタ
64 パワーモニタPD
65 集光レンズ
66 光ファイバ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体レーザと、前記複数の半導体レーザからの出力光を合流させることができる光合流器と、前記光合流器からの出力光を増幅する半導体光増幅器とを集積した集積型半導体レーザ素子であって、
前記光合流器の出力ポート側の端面の前部に前記半導体光増幅器の出力端側へ伝搬する光を後方に反射する反射手段を設けたことを特徴とする集積型半導体レーザ素子。
【請求項2】
前記反射手段は、前記半導体光増幅器を埋め込む埋め込み部に幅方向にわたって設けた溝であることを特徴とする請求項1に記載の集積型半導体レーザ素子。
【請求項3】
前記溝を複数設けたことを特徴とする請求項2に記載の集積型半導体レーザ素子。
【請求項4】
前記反射手段の反射面と前記光合流器の出力ポート側の端面とのなす角度が0度より大きく45度より小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の集積型半導体レーザ素子。
【請求項5】
前記半導体光増幅器と前記反射手段の該半導体光増幅器に近い端部との距離は、該半導体光増幅器を導波する光の幅方向の強度分布が最大値から1/e2となる位置よりも離れていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の集積型半導体レーザ素子。
【請求項6】
前記反射手段の前記光合流器に近い反射面と前記光合流器の出力ポート側の端面との距離の最大値Lと、前記光合流器の厚さ方向の中心位置からの前記反射面の下端部までの深さDと、前記光合流器の出力ポート側の端面における該端面からの前記埋め込み部への放射光の前記厚さ方向の強度分布が最大値から1/e2となる幅の半値W0と、前記埋め込み部の屈折率nと、前記放射光の波長λとの間に、
W0√(1+(λL/πnW02)2)<D
なる関係が成り立つことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の集積型半導体レーザ素子。
【請求項7】
前記複数の半導体レーザの間の埋め込み部に溝を設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の集積型半導体レーザ素子。
【請求項8】
前記光合流器は多モード干渉型光合流器であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の集積型半導体レーザ素子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一つに記載の集積型半導体レーザ素子と、
前記集積型半導体レーザ素子からの出力光を透過および分岐する光分岐素子と、
前記光分岐素子を透過した光を伝送する光ファイバと、
前記光分岐素子により分岐した光の強度を検出する光検出器と、
を備えることを特徴とする半導体レーザモジュール。
【請求項1】
複数の半導体レーザと、前記複数の半導体レーザからの出力光を合流させることができる光合流器と、前記光合流器からの出力光を増幅する半導体光増幅器とを集積した集積型半導体レーザ素子であって、
前記光合流器の出力ポート側の端面の前部に前記半導体光増幅器の出力端側へ伝搬する光を後方に反射する反射手段を設けたことを特徴とする集積型半導体レーザ素子。
【請求項2】
前記反射手段は、前記半導体光増幅器を埋め込む埋め込み部に幅方向にわたって設けた溝であることを特徴とする請求項1に記載の集積型半導体レーザ素子。
【請求項3】
前記溝を複数設けたことを特徴とする請求項2に記載の集積型半導体レーザ素子。
【請求項4】
前記反射手段の反射面と前記光合流器の出力ポート側の端面とのなす角度が0度より大きく45度より小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の集積型半導体レーザ素子。
【請求項5】
前記半導体光増幅器と前記反射手段の該半導体光増幅器に近い端部との距離は、該半導体光増幅器を導波する光の幅方向の強度分布が最大値から1/e2となる位置よりも離れていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の集積型半導体レーザ素子。
【請求項6】
前記反射手段の前記光合流器に近い反射面と前記光合流器の出力ポート側の端面との距離の最大値Lと、前記光合流器の厚さ方向の中心位置からの前記反射面の下端部までの深さDと、前記光合流器の出力ポート側の端面における該端面からの前記埋め込み部への放射光の前記厚さ方向の強度分布が最大値から1/e2となる幅の半値W0と、前記埋め込み部の屈折率nと、前記放射光の波長λとの間に、
W0√(1+(λL/πnW02)2)<D
なる関係が成り立つことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の集積型半導体レーザ素子。
【請求項7】
前記複数の半導体レーザの間の埋め込み部に溝を設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の集積型半導体レーザ素子。
【請求項8】
前記光合流器は多モード干渉型光合流器であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の集積型半導体レーザ素子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一つに記載の集積型半導体レーザ素子と、
前記集積型半導体レーザ素子からの出力光を透過および分岐する光分岐素子と、
前記光分岐素子を透過した光を伝送する光ファイバと、
前記光分岐素子により分岐した光の強度を検出する光検出器と、
を備えることを特徴とする半導体レーザモジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2007−250889(P2007−250889A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73149(P2006−73149)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]