説明

離型剤の塗布方法および射出成形用金型

【課題】 成形品の押出し時に、開閉ピンを押出しピンと協働できるようにすることで、スペース的な問題を解消し、簡単な構造で離型剤の供給口と排気口を開閉すると共に、離型剤の供給する時間を短縮する。
【解決手段】 固定側金型および可動側金型により形成される金型キャビティに離型剤を塗布する離型剤の塗布方法であって、離型剤通路の少なくとも一部が開閉ピンに対する金型キャビティの前面に形成されるように離型剤通路を可動側金型に形成しておき、離型剤通路に対し金型キャビティ前面側から開閉ピンを後退位置から所定位置まで前進させることで、離型剤通路を開状態から閉状態とすると共に、前記所定位置を越えるように開閉ピンを前進させることにより開閉ピンを金型キャビティ内に挿入させて金型キャビティ内に形成された成形品を押出させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の射出成形において離型剤を金型キャビティに塗布する離型剤塗布方法と射出成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、特開2004−167537号公報(特許文献1)、特開2002−239706号公報(特許文献2)が知られる。
図5は特許文献1に示される従来の離型剤あるいは潤滑剤を塗布するダイカストマシンを示す断面側面図、図6は図5に示すダイカストマシンに用いられる押出しピンを示す側面図、図7は特許文献2に示される従来の離型剤を金型キャビティに塗布される金型を示す断面側面図である。
【0003】
先ず、特許文献1の全体構成を概略的に示す図5において、11は固定側金型、12は可動側金型、16は溶融金属を導くための導入路を構成する凹部に突出可能なピン、17は金型キャビティ13を構成する凹部に突出可能な押出しピン、19は押出しピン16を動作させる油圧シリンダ、26Aは油圧シリンダ19と押出しピン17を固定した押出しプレート、20は押出しプレート26を動作させる油圧シリンダ、24は金型キャビティ13から空気を排気する排気口、40は排気口24に接続された真空装置、30はダイカストマシンのスリーブ、31はダイカストマシンの給湯口、32はダイカストマシンのプランジャである。
【0004】
次に、上述したピン16を詳細に示す図6において、16Aは金型キャビティ13に離型剤を導入する離型剤供給路、16Bはスリーブ30に潤滑剤を導入する潤滑剤供給路、16Cはピン16が過剰に高い温度になることを防止するためにピン16内部に冷却液を供給し、冷却するための冷却液循環路である。
【0005】
上述したダイカストマシンにおいて、離型剤の塗布方法を含めた成形動作について説明する。固定側金型11と可動側金型12との型締が完了したのち、プランジャ32を給湯口31よりも上方に位置させ、金型キャビティ13を閉空間とする。
【0006】
真空装置40により排気口24から金型キャビティ13内の空気を排出しながら、油圧シリンダ19を駆動し、ピン16のみを金型キャビティ13の導入路に突出させる。
【0007】
その後、離型剤供給装置から離型剤をピン16に供給する。離型剤はピン16の離型剤供給路16Aを通って、金型キャビティ13に突出したピン16の開口から金型キャビティ13に向かって噴射される。離型剤を所定量供給したのち、離型剤供給装置からの離型剤の供給を停止し、油圧シリンダ19を駆動してピン16を可動側金型12内に没入させる。プランジャ32によりスリーブ30内に収容された溶湯を金型キャビティ13内に射出、充填する。成形品が固化したのち固定側金型11と可動側金型12とを開き、油圧シリンダ20を駆動して押出しプレート26Aを移動させ、ピン16および押出しピン17により成形品を押出して可動側金型12から離型する。
【0008】
次に、特許文献2の構成を概略的に示す図7において(上述した符号と同じものは省略)、18は金型キャビティ13に離型剤を供給する供給路および排出路を開閉する可動側金型12の金型キャビティ13表面から後退可能なシャットオフピン、26Bは押出しピン17を固定し摺動させるための押出しプレート、27はシャットオフピン18を固定し摺動させるためのシャットオフプレートであり、油圧シリンダ19のロッド側を支持している。
【0009】
上述した離型剤が金型キャビティ13に塗布される金型において、離型剤の塗布方法について説明する。固定側金型11と可動側金型12との型締が完了したのち、加熱ノズル先端が固定側金型11に押し付けられ、金型キャビティ13を閉空間とする。油圧シリンダ19を駆動しシャットオフピン18を可動側金型12表面より後退することにより、離型剤供給口21と排気口24が開かれて、金型キャビティ13内の排気を始める。
【0010】
それと並行して離型剤供給装置から離型剤を開状態の離型剤供給口21へ供給し、離型剤は金型キャビティ13に噴射される。離型剤を所定量供給したのち、離型剤供給装置からの離型剤の供給を停止し、油圧シリンダ19を駆動してシャットオフピン18を可動側金型12表面まで前進させることにより離型剤供給口21と排気口24が閉じられる。
【0011】
シャットオフピン18が閉状態に移動した後、加熱ノズルの先端から溶湯を金型キャビティ13内に射出、充填する。成形品が固化したのち固定側金型11と可動側金型12とを開き、油圧シリンダ20を駆動して押出しプレート26Bを移動させ、押出しピン17により成形品を押出して可動側金型12から離型する。
【特許文献1】特開2004−167537号公報
【特許文献2】特開2002−239706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1に記載のダイカストマシンにおいては、排気口24の開閉手段がなく常時開の状態であるため、金型キャビティ13内の空気のみは通過できるが、金型キャビティ13内に射出、充填された溶湯は通過できないようにすることが必要である。
【0013】
したがって、特許文献1に記載においては、必然的に排気口24の開口面積を小さくしなければならず、そのため、金型キャビティ13内の空気を排出するのに時間がかかるようになる。つまり離型剤を金型キャビティ13内に供給するのに時間がかかるため、成形サイクルが長くなるという問題がある。
【0014】
また、ピン16の内部に離型剤供給路16A、潤滑剤供給路16Bおよび冷却液循環路16Cを設けるために、ピン16の外径を大きくすることが必要となる。このため、スペース的に複数のピン16を金型キャビティ13に配置することが困難となり、離型剤の塗布が不安定で成形品の品質が安定しないという問題点もある。
【0015】
次に、特許文献2に記載の金型においては、押出しピン17は、金型キャビティ13に離型剤を供給するためにのみ用いられ、シャットオフピン18は、供給路および排出路を開閉するためにのみ用いられており、このため、押出しピン17とシャットオフピン18を共に、それぞれの目的の為に一つの可動側金型に設けることが必要で、金型構造が複雑になるばかりでなく、金型のコストアップになるなどの問題点がある。
【0016】
本発明は、上述のような従来技術の課題を解決するためになされたもので、成形品の押出し時に、開閉ピンを押出しピンと協働できるようにすることで、スペース的な問題を解消し、簡単な構造で離型剤の供給口と排気口を開閉することができると共に、離型剤の供給する時間を短縮することができる離型剤塗布方法と射出成形用金型を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の課題を解決するため、本発明は、固定側金型および可動側金型により形成される金型キャビティに離型剤を塗布するために、可動側金型に形成された離型剤通路を介して離型剤を供給又は排出するようにすると共に、該離型剤通路を横切る開閉ピンを設けて該離型剤通路を開閉するようにした離型剤の塗布方法であって、離型剤通路の少なくとも一部が前記開閉ピンに対する金型キャビティの前面に形成されるように前記離型剤通路を可動側金型に形成しておき、前記離型剤通路に対し前記金型キャビティ前面側から開閉ピンを後退位置から所定位置まで前進させることで、前記離型剤通路を開状態から閉状態とすると共に、前記所定位置を越えるように前記開閉ピンを前進させることにより該開閉ピンを金型キャビティ内に挿入させて前記金型キャビティ内に形成された成形品を押出させるようにしたものである。
【0018】
ここで、前記成形品を押出す際には、前記開閉ピンは、前記成形品の押出しピンと共に金型キャビティ内に挿入されることを特徴とする。
【0019】
また、前記離型剤通路を複数形成し、複数の前記離型剤通路を開閉するように開閉ピンを動作させ、複数の離型剤通路を開いて複数の離型剤通路から金型キャビティに離型剤を供給しながら、同時に余剰離型剤を複数の離型剤通路から金型キャビティの外部に排出することを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、固定側金型および可動側金型により形成される金型キャビティに離型剤を塗布するために、可動側金型に形成された離型剤通路を介して離型剤を供給又は排出するようにすると共に、該離型剤通路を横切る開閉ピンを設けて該離型剤通路を開閉するようにした射出成形用金型であって、前記可動側金型の固定側金型の反対側から前記金型キャビティ側に挿通する開閉ピンを設けると共に、前記離型剤通路の少なくとも一部が前記開閉ピンに対する金型キャビティの前面に形成されるように前記離型剤通路を前記可動側金型に形成し、前記離型剤通路に対し前記金型キャビティ前面側から開閉ピンを後退位置から所定位置まで前進させることで、前記離型剤通路を開状態から閉状態とすると共に、前記所定位置を越えるように前記開閉ピンを前進させることにより該開閉ピンを金型キャビティ内に挿入させて前記金型キャビティ内に形成された成形品を押出させる駆動手段を備えたことを特徴とする。
【0021】
ここで、前記可動側金型の固定側金型の反対側から前記金型キャビティ側に挿通する押出しピンを備え、前記駆動手段は、前記成形品を押出す際には、前記開閉ピンと共に前記押出しピンを金型キャビティ内に挿入させて前記金型キャビティ内に形成された成形品を押出すことを特徴とする。
【0022】
また、本発明において、前記押出しピンの基部が取り付けられた押出しプレートと、前記押出しプレートに対して進退動可能に設けられ、開閉ピンの基部が取り付けられたシャットオフプレートとを備え、前記駆動手段は、前記開閉ピンを後退位置から所定位置まで前進させることにより、前記離型剤通路を開状態から閉状態とする場合は、前記押出しピンを設けた押出しプレートに対して(押出しプレートを基準として)前記開閉ピンを取り付けたシャットオフプレートを前進駆動させる第1駆動手段で構成され、前記所定位置を越えるように前記開閉ピンを前進させることにより該開閉ピンを金型キャビティ内に挿入させて前記金型キャビティ内に形成された成形品を押出させる場合は、前記押出しプレートと共にシャットオフプレートを前進駆動させる第2駆動手段で構成されることを特徴とする。
【0023】
ここで、前記離型剤通路は複数設けられていることを特徴とする。
【0024】
また、前記開閉ピンは複数設けられていることを特徴とする。
【0025】
なお、実施の形態には、下記の発明が開示されている。
固定側金型11および可動側金型12により形成される金型キャビティ13に離型剤を塗布する方法であって、成形品を金型から押出す工程において、成形品を金型から押出すための押出しピン17とともに動作して成形品を押出す離型剤通路を開閉する開閉ピン15を、前記成形品を金型から押出すための押出しピン17を固定した押出しプレート26Aに配設した駆動手段により、前記押出しピン17とは独立して動作し離型剤通路を開いて、金型キャビティに離型剤を供給しながら、同時に余剰離型剤を金型キャビティ13の外部に排出する離型剤塗布方法。
【0026】
また、固定側金型11と可動側金型12との型締が完了したのち、射出成形機のノズルを金型に接触して金型キャビティ13を閉空間とし、金型キャビティ13に離型剤を供給しながら、同時に余剰離型剤を金型キャビティ13の外部に排出することを特徴とする離型剤塗布方法。
【0027】
また、複数の前記離型剤通路を開閉する開閉ピン15を動作させ、複数の離型剤通路を開いて複数の離型剤通路から金型キャビティ13に離型剤を供給しながら、同時に余剰離型剤を複数の離型剤通路から金型キャビティ13の外部に排出することを特徴とする離型剤塗布方法。
【0028】
また、固定側金型11および可動側金型12により形成される金型キャビティ13に離型剤を塗布される射出成形用金型であって、成形品を金型から押出すための押出しピン17と、前記押出しピン17とともに動作し成形品を金型から押出し、または独立して動作し金型キャビティ13に離型剤を供給または金型キャビティ13の外部に排出するための離型剤通路を開閉する開閉ピン15と、前記離型剤通路を開閉する開閉ピン15の駆動手段19とを備え、前記成形品を金型から押出すための押出しピン17を固定した押出しプレート26Aに前記駆動手段19を配設したことを特徴とする射出成形用金型。
【0029】
また、複数の前記離型剤通路を開閉する開閉ピン15と、前記離型剤通路を開閉する開閉ピン15の駆動手段19により、金型キャビティ13に離型剤を供給または金型キャビティ13の外部に排出するための複数の離型剤通路を形成することを特徴とする射出成形用金型。
【0030】
これらにおいて、前記駆動手段19は油圧シリンダであることを特徴とする射出用成形金型。
【0031】
次に、以上の構成における作用について説明する。金型キャビティに離型剤を塗布するには、押出しプレートに配設された駆動手段を駆動すると離型剤通路を開閉するピンが可動側金型の金型キャビティ表面より後退し、離型剤通路が開かれる。離型剤供給装置から離型剤を開状態の離型剤供給口へ供給し、離型剤は金型キャビティの内部に噴射される。同時に排出口も開状態であるため金型キャビティ内の空気を排出するとともに金型キャビティに供給された余剰離型剤も金型キャビティの外部に排出される。離型剤の供給を停止し、駆動手段を駆動すると離型剤通路を開閉するピンが可動側金型表面まで前進し、離型剤通路が閉じられる。
【0032】
また、成形品を金型から押出すには、離型剤通路を開閉するピンが可動側金型表面まで前進した状態で射出成形機の油圧シリンダを駆動すると、押出しプレートに固定された押出しピンと、押出しプレートに配設された駆動手段を連結したシャットオフプレートに固定した離型剤通路を開閉するピンが金型キャビティに突出して成形品を可動側金型から離型する。
【0033】
また、ピンにより離型剤通路を開閉することによって、離型剤供給口および排出口の開口面積を大きくすることができるので、金型キャビティに離型剤を短時間で供給することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、成形品の押出し時に、開閉ピンを押出しピンと協働できるようにすることで、スペース的な問題を解消することができ、簡単な構造で離型剤の供給口と排気口を開閉することができると共に、その通路口径を大きくすることが容易となり、離型剤の供給する時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態における金型を示す断面側面図であり、従来の金型に関する図5および図7に対応する図である。
【0036】
図1において、11は固定側金型、12は可動側金型で13は固定側金型11および可動側金型12により形成され、成形品の外形に対応する形状を有する金型キャビティである。26Aは型締装置に取付けられた油圧シリンダ20(第2駆動手段)により前進可能な押出しプレートであり、該押出しプレート26Aには複数の押出しピン17が固定され、押出しプレート26Aの端部には、ロッドが後述のシャットオフプレートに取り付けられる油圧シリンダ(第1駆動手段)19が取付けられている。
【0037】
27は離型剤通路を開閉する開閉ピン15を固定し摺動するシャットオフプレートであり、少なくとも2個の油圧シリンダ19のピストンロッド側を支持し、油圧シリンダ19により押出しプレートに26Aに対して(押出しプレート26Aを基準として)前進駆動される。
【0038】
図2においては、押出しプレート26Aの端部に取付けられた油圧シリンダ19が作動して、シャットオフプレート27を可動側型盤側の方向に移動させることにより、シャットオフプレート27に固定された離型剤通路を開閉する開閉ピン15が金型キャビティ13表面より後退位置まで後退し、離型剤通路を開けている状態が示されている。離型剤通路はシャットオフプレート27に対する金型キャビティ13の前面であって、シャットオフプレート27が所定位置まで前進することにより、それに取り付けられた開閉ピン15がその通路を塞ぐように構成されている。なお、開閉ピン15は、それが取り付けられたシャットオフプレート27が油圧シリンダ20による押出しプレート26Aの前進駆動に伴って前進動することにより、押出しピン17と共に金型キャビティ13内に挿入され、成形品を押出しピン17と共に押出す。
【0039】
次に上述した本発明の実施の形態における金属射出成形の金型において、離型剤を金型キャビティに塗布する方法について、図1〜図4を参照して説明する。
【0040】
固定側金型11と可動側金型12との型締が完了したのち、加熱ノズル先端30が固定側金型11に押し付けられ、金型キャビティ13を閉空間とする(図1)。
【0041】
次に押出しプレート26Aの端部に取付けられた油圧シリンダ19が作動して、シャットオフプレート27を押出しプレート26Aに対して可動側型盤側の方向に移動させることにより、シャットオフプレート27に固定された離型剤通路を開閉する開閉ピン15が金型キャビティ13表面より後退位置に後退し、離型剤供給口21と排気口24が開かれた状態とする。この状態において、離型剤供給装置から離型剤が開状態の離型剤供給口21へ供給され、金型キャビティ13に噴射される。そして、それと並行して排気口24より余剰離型剤が金型キャビティ13の外部に排出される(図2)。
【0042】
離型剤を所定量供給したのち、離型剤供給装置からの離型剤の供給が停止される。その後、金型キャビティ13に射出、充填された溶湯が離型剤通路に入らないように、離型剤供給口21と排気口24が開閉ピン15により閉じられる。この場合、開閉ピン15は、油圧シリンダ19の再作動により、シャットオフプレート27を介して可動側金型12表面まで前進させられることで、離型剤通路を閉じる(図3)。
【0043】
開閉ピン15が閉状態に移動した後、加熱ノズルの先端から溶湯を金型キャビティ13内に射出、充填する。成形品が固化した後、固定側金型11と可動側金型12とを開き、油圧シリンダ20を作動してシャットオフプレート27と共に押出しプレート26Aを固定側金型の方向に移動させることにより、押出しプレート26Aに固定された押出しピン17と、シャットオフプレート27に固定された開閉ピン15とが、金型キャビティ13表面より突出し(キャビティ内に挿入され)、成形品を押出して可動側金型12から離型する(図4)。
【0044】
なお、成形品の形状や取り数に応じて、複数適所に離型剤通路を設けると共に複数適所に離型剤供給口21や排気口24を設け、更にそれらを開閉する複数の開閉ピン15を設け、離型剤供給口21と排気口24が開かれた状態で、1つ或いは少なくとも2つ以上の離型剤供給口21から金型キャビティ13に離型剤を供給しながら、少なくとも2つ以上の排気口24より余剰離型剤を金型キャビティ13の外部に排出するようにしてもよい。
【0045】
以上に詳述した本発明の実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
シャットオフプレートに固定された離型剤通路を開閉する開閉ピンで離型剤供給口と排気口を開閉するように構成したため、離型剤供給口および排出口の開口面積を大きくすることができるために金型キャビティに離型剤を短時間で供給することができる。つまり成形サイクルを短縮することができるので、成形品の製造コストの低下を図ることができる。
【0046】
また、離型剤通路を開閉するピンを固定し摺動するシャットオフプレートが押出しプレートに配設された油圧シリンダのピストンロッド側を支持するように構成したので、ピンは離型剤通路の開閉と成形品の可動側金型からの押出しを行うことができるため、金型構造が簡単になり、金型のコストダウンを図ることができる。
【0047】
また、射出成形機のノズルを用いて金型キャビティを閉空間とした状態で離型剤を金型キャビティに供給するよう構成したため、金型キャビティに供給した離型剤がスプル口から金型キャビティの外部に排出されることがなく、確実に金型キャビティの表面に離型剤を塗布することができるので製品の品質を高めることができる。
【0048】
また、シャットオフプレートに固定された複数の離型剤通路を開閉するピンで複数の離型剤供給口と複数の排気口を開閉するように構成したため、成形品形状や取り数に応じて最適な離型剤供給口と排気口を容易に設定できるため、製品の品質を高めることができる。また、ピンの長さを変更することにより離型剤供給口と排出口の数を容易に増減することができるため、金型のコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の好適な実施例に係る金型の断面側面図である。
【図2】離型剤通路を開閉するピンが後退し、離型剤供給口と排出口が開いて離型剤を噴霧できる状態となっている金型を示す断面側面図である。
【図3】離型剤塗布後、油圧シリンダが戻って離型剤通路を開閉するピンが離型剤通路を閉じて射出前の状態となっている金型を示す断面側面図である。
【図4】金型が開いて、成形品を押出すために押出しピンと離型剤を開閉するピンが突き出た状態となっている金型を示す断面側面図である。
【図5】従来の離型剤あるいは潤滑剤を塗布するダイカストマシンを示す断面側面図である。
【図6】図5に示すダイカストマシンに用いられる離型剤通路を備えたピンを示す図である。
【図7】従来の離型剤を金型キャビティに塗布される金型を示す断面側面図である。
【符号の説明】
【0050】
11 固定側金型、12 可動側金型、13 金型キャビティ、15 開閉ピン、17 押出しピン、19 油圧シリンダ(第1駆動手段)、20 油圧シリンダ(第2駆動手段)、21 離型剤供給口、24 排気口、26A 押出しプレート、26B 押出しプレート、27 シャットオフプレート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側金型および可動側金型により形成される金型キャビティに離型剤を塗布するために、可動側金型に形成された離型剤通路を介して離型剤を供給又は排出するようにすると共に、該離型剤通路を横切る開閉ピンを設けて該離型剤通路を開閉するようにした離型剤の塗布方法であって、
離型剤通路の少なくとも一部が前記開閉ピンに対する金型キャビティの前面に形成されるように前記離型剤通路を可動側金型に形成しておき、
前記離型剤通路に対し前記金型キャビティ前面側から開閉ピンを後退位置から所定位置まで前進させることで、前記離型剤通路を開状態から閉状態とすると共に、前記所定位置を越えるように前記開閉ピンを前進させることにより該開閉ピンを金型キャビティ内に挿入させて前記金型キャビティ内に形成された成形品を押出させるようにしたことを特徴とする離型剤の塗布方法。
【請求項2】
前記成形品を押出す際には、前記開閉ピンは、前記成形品の押出しピンと共に金型キャビティ内に挿入されることを特徴とする請求項1に記載の離型剤の塗布方法。
【請求項3】
前記離型剤通路を複数形成すると共に、前記開閉ピンを複数設け、
複数の前記離型剤通路を開閉するように複数の開閉ピンを動作させ、複数の離型剤通路を開いて複数の離型剤通路から金型キャビティに離型剤を供給しながら、同時に余剰離型剤を複数の離型剤通路から金型キャビティの外部に排出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の離型剤の塗布方法。
【請求項4】
固定側金型および可動側金型により形成される金型キャビティに離型剤を塗布するために、可動側金型に形成された離型剤通路を介して離型剤を供給又は排出するようにすると共に、該離型剤通路を横切る開閉ピンを設けて該離型剤通路を開閉するようにした射出成形用金型であって、
前記可動側金型の固定側金型の反対側から前記金型キャビティ側に挿通する開閉ピンを設けると共に、前記離型剤通路の少なくとも一部が前記開閉ピンに対する金型キャビティの前面に形成されるように前記離型剤通路を前記可動側金型に形成し、
前記離型剤通路に対し前記金型キャビティ前面側から開閉ピンを後退位置から所定位置まで前進させることで、前記離型剤通路を開状態から閉状態とすると共に、前記所定位置を越えるように前記開閉ピンを前進させることにより該開閉ピンを金型キャビティ内に挿入させて前記金型キャビティ内に形成された成形品を押出させる駆動手段を備えたことを特徴とする射出成形用金型。
【請求項5】
前記可動側金型の固定側金型の反対側から前記金型キャビティ側に挿通する押出しピンを備え、
前記駆動手段は、前記成形品を押出す際には、前記開閉ピンと共に前記押出しピンを金型キャビティ内に挿入させて前記金型キャビティ内に形成された成形品を押出すことを特徴とする請求項4に記載の射出成形用金型。
【請求項6】
前記押出しピンの基部が取り付けられた押出しプレートと、
前記押出しプレートに対して進退動可能に設けられ、開閉ピンの基部が取り付けられたシャットオフプレートとを備え、
前記駆動手段は、
前記開閉ピンを後退位置から所定位置まで前進させることにより、前記離型剤通路を開状態から閉状態とする場合は、前記押出しピンを設けた押出しプレートに対して前記開閉ピンを取り付けたシャットオフプレートを前進駆動させる第1駆動手段で構成され、
前記所定位置を越えるように前記開閉ピンを前進させることにより該開閉ピンを金型キャビティ内に挿入させて前記金型キャビティ内に形成された成形品を押出させる場合は、前記押出しプレートと共にシャットオフプレートを前進駆動させる第2駆動手段で構成されることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の射出成形用金型。
【請求項7】
前記離型剤通路は複数設けられていることを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれかに記載の射出成形用金型。
【請求項8】
前記開閉ピンは複数設けられていることを特徴とする請求項4乃至請求項7のいずれかに記載の射出成形用金型。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−137008(P2006−137008A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325991(P2004−325991)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】