説明

難燃性湿気硬化型組成物

【課題】
難燃性を要求される電気製品もしくは精密機器の組立用等の接着剤、固着剤として優れた性能を有する難燃性湿気硬化型組成物、該組成物を有効成分とする難燃性湿気硬化型接着剤組成物及びそれを用いた接着方法を提供する。
【解決手段】
(A)反応性珪素基含有有機重合体、(B)平均粒径0.1〜200μmの金属水酸化物、(C)親水性シリカ、及び(D)平均粒径0.01〜10μmの表面処理された炭酸カルシウムを必須成分として含有し、前記重合体(A)100質量部に対して、前記金属水酸化物(B)150〜350質量部、前記親水性シリカ(C)0.1〜15質量部、前記炭酸カルシウム(D)1〜50質量部を配合するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性湿気硬化型組成物、難燃性湿気硬化型接着剤組成物及び接着方法に関し、特に、難燃性を要求される電気製品もしくは精密機器の組立用等の接着剤、固着剤として優れた性能を有し、かつ長期保存安定性に優れた難燃性湿気硬化型組成物、該難燃性湿気硬化型組成物を有効成分とする難燃性湿気硬化型接着剤組成物、及びそれを用いた接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子市場、建築市場、土木市場等では難燃性を付与した接着剤、シーリング材、塗料、注型材が強く求められている。また接着剤及びシーリング材においては、近年、異種材料の接着における熱膨張の差を吸収する弾性接着剤が広く使われるようになってきており、熱膨張の差による歪みに追従し、クラックを防止する接着性、変位追従性の優れた組成物が求められている。
【0003】
難燃性接着剤における難燃剤としては、一般にはリン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、金属水酸化物等が用いられている。この中で、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸アンモニウム等のポリリン酸塩及び五酸化リン等のリン系難燃剤は、耐水性の低下や銅を腐食させるおそれがあった。また、デカブロモジフェニルエーテル及びテトラブロモビスフェノールA等の臭素系難燃剤に代表されるハロゲン系難燃剤は、金属腐食や大気汚染のおそれを指摘されている。このハロゲン系難燃剤は酸化アンチモンとの併用で難燃効果が大幅に向上するが、酸化アンチモンは毒性をもつため好ましくないという問題もあった。
【0004】
他方、金属水酸化物である水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムはノンハロゲンの難燃剤として、近年各種プラスチックの難燃化剤として使われている。
しかしながら、シリル基変性ポリエーテル型組成物の難燃化にこれらの金属水酸化物を適用した場合、当該組成物100重量部に対して少なくとも350重量部以上添加しないとUL94V−0(試料厚さ1.5mm)相当の難燃性が発揮されず、各種プラスチックへの接着性が劣り、熱老化性が低い等の問題があった。
なお、家電製品の難燃規制はアメリカのUL規格が基本になっており、多くの製品が規制対象となっている。UL94は、電気製品およびプラスチック材料の中の難燃性を評価するものであり、その中でUL94V−0は最も難燃性の高いクラスとして、規定されている。
【0005】
特許文献1には、反応性珪素基を有するアクリル系共重合体と金属水酸化物を含む難燃性を有する湿気硬化型組成物が記載されているが、該湿気硬化型組成物は、長期保存において組成物の液状分がブリードアウトしてしまい、長期保存安定性に課題があり、一液湿気硬化型では攪拌してから使用することが極めて困難なことから、使用期間に制限があった。
【特許文献1】特開平11−310682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、上記問題を解決するために、鋭意研究を行った結果、反応性珪素基を有する有機重合体、金属水酸化物、親水性シリカ及び表面処理された炭酸カルシウムを組み合わせることによって、接着剤、固着剤としての基本的性能を満たした上で、UL94V−0(試料厚さ1.5mm)に合格しうる難燃性を有する硬化物が得られ、かつ長期保存安定性に優れることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、難燃性を要求される電気製品もしくは精密機器の組立用等の接着剤、固着剤として優れた性能を有する難燃性湿気硬化型組成物、該組成物を有効成分とする難燃性湿気硬化型接着剤組成物及びそれを用いた接着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の難燃性湿気硬化型組成物は、(A)反応性珪素基含有有機重合体、(B)平均粒径0.1〜200μmの金属水酸化物、(C)親水性シリカ、及び(D)平均粒径0.01〜10μmの表面処理された炭酸カルシウムを必須成分として含有し、前記重合体(A)100質量部に対して、前記金属水酸化物(B)150〜350質量部、前記親水性シリカ(C)0.1〜15質量部、前記炭酸カルシウム(D)1〜50質量部を配合することを特徴とする。
【0008】
前記重合体(A)が、反応性珪素基含有ポリオキシアルキレン系重合体、反応性珪素基含有(メタ)アクリル系重合体、反応性珪素基含有ポリイソブチレン系重合体からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。なお、本発明において、アクリル又はメタクリルをあわせて(メタ)アクリルと記載する。
【0009】
前記金属水酸化物(B)が、水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムであることが好ましい。特に、前記金属水酸化物(B)が、カップリング剤、脂肪酸又は樹脂酸で処理された金属水酸化物であることが好適である。該表面処理された金属水酸化物を使用すれば保存安定性における粘度上昇率や電気特性の改善もできる。
【0010】
前記表面処理された炭酸カルシウム(D)が、脂肪酸又は樹脂酸で処理された表面処理炭酸カルシウムであることが好ましい。さらに、前記表面処理された炭酸カルシウム(D)が、BET比表面積20〜100m/gの炭酸カルシウムを脂肪酸で表面処理した炭酸カルシウムであって、平均粒径(平均1次粒子径)が0.05μm以下であることが好適である。
【0011】
本発明の難燃性湿気硬化型接着剤組成物は、難燃性湿気硬化型組成物を有効成分とするものである。
【0012】
本発明の接着方法は、本発明の難燃性湿気硬化型接着剤組成物を用いて難燃性製品の部品を接着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の難燃性湿気硬化型組成物は、難燃性で無溶剤化が容易であり、高温で軟化せず、各種接着剤に対する接着性が良好でかつ保存安定性及び貯蔵安定性に優れており、難燃性を要求される電気製品もしくは精密機器の組立用の接着剤、固着剤として好適に用いられるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これら実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
本発明の難燃性湿気硬化型組成物は、下記成分(A)、(B)、(C)及び(D)を必須成分として配合するものである。
(A)反応性珪素基含有有機重合体、
(B)平均粒径0.1〜200μmの金属水酸化物、
(C)親水性シリカ、及び
(D)平均粒径0.01〜10μmの表面処理された炭酸カルシウム。
【0015】
前記重合体(A)としては、反応性珪素基を含有する有機重合体であれば特に限定されず、公知の重合体を広く使用可能である。前記反応性珪素基は、珪素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋しうる珪素含有基であり、下記式(I)で示される珪素含有官能基が好適である。
【化1】

(式中、Rは同じであっても異なってよく、それぞれ炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価の有機基またはトリオルガノシロキシ基であり、Xは水酸基または異質もしくは同種の加水分解性基であり、Xが複数存在する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい、aは0,1または2の整数、bは0,1,2または3の整数でa=2でかつb=3にならない、mは0〜18の整数。)
【0016】
前記重合体(A)が、反応性珪素基含有ポリオキシアルキレン系重合体、反応性珪素基含有(メタ)アクリル系重合体、反応性珪素基含有(メタ)アクリル変性ポリオキシアルキレン系重合体、反応性珪素基含有ポリイソブチレン系重合体、及びこれらの混合物であることが好ましい。
【0017】
前記反応性珪素基含有ポリオキシアルキレン系重合体としては、特に限定されるものではないが、具体的には、特公昭45−36319号、特公昭46−12154号、特公昭49−32673号、特開昭50−156599号の各公報等に記載の反応性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体があげられる。
【0018】
前記反応性珪素基含有(メタ)アクリル系重合体としては、特に限定されるものではないが、具体的には、特開昭59−122541号、特開昭60−31556号、特開昭63−112642号、特開平11−310682号の各公報等に記載の公知の反応性珪素基を有する(メタ)アクリル系重合体が挙げられ、反応性珪素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が好ましく、加水分解により架橋可能な反応性珪素基を有し、分子鎖が実質的に、(1)炭素数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位及び、(2)炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位からなる共重合体(A1)を用いることが特に好ましい。なお、分子中の反応性珪素基の位置は特に限定されないが、分子鎖末端に反応性珪素基を有する(メタ)アクリル系重合体が好ましい。
【0019】
前記反応性珪素基含有有機重合体(A)の製造法は、特に限定されず、公知の合成法を利用することができる。前記反応性珪素基含有有機重合体として、反応性珪素基を含有し、主鎖がアクリル系重合体等のビニル系重合体であるものを用いる場合、ラジカル重合法で合成されたビニル系重合体を用いることが好ましい。
【0020】
上記重合体(A)のうち、上記反応性珪素基含有(メタ)アクリル系重合体、上記反応性珪素基を有するポリオキシアルキレン系重合体、及びこれらの混合物は、他の重合体に比べ耐熱性が優れている。また、上記反応性珪素基を有する(メタ)アクリル系重合体、上記反応性珪素基を有するポリオキシアルキレン系重合体、及びこれらの混合物は、上記反応基を有するシリコーン等に比べ、接点障害の要因となる低分子環状シロキサンを含有もしくは発生させない点で好適である。
【0021】
また、上記反応性珪素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、重合度3000〜6000程度では粘度が高いために、可塑剤、ポリエーテルポリオール及び溶剤等の液状物で希釈しないと作業性が悪い場合がある。
一方、反応性珪素基を有するポリオキシアルキレン系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体に比べて、同じ重合度で低粘度のものが得られる。したがって、塗布性等の作業性を改善する目的で、上記反応性珪素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体と反応性珪素基を有するオキシアルキレン系重合体を併用することで無溶剤型の難燃性組成物を構成することができる。
【0022】
前記重合体(A)として、上記反応性珪素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体と、反応性珪素基を有するポリオキシアルキレン系重合体とからなる混合物を用いる場合、両者の配合割合は特に限定されないが、上記反応性珪素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100重量部に対して、上記反応性珪素基を有するポリオキシアルキレン系重合体を10〜200重量部配合することが好ましい。
【0023】
前記金属水酸化物(B)としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好適に用いられる。金属水酸化物は表面処理せずに使用してもよく、カップリング剤、脂肪酸及び樹脂酸等の処理剤で表面処理したものを用いてもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0024】
上記カップリング剤としては、例えば、有機チタネート化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、アルコキシシランなどが挙げられる。具体的な有機チタネート化合物として、例えば、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラステアリルオキシチタン、ジプロキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、チタニウムプロポキシオクチレングリコレート、チタニウムステアレート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジートリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネートなどが挙げられる。アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートなどの有機アルミニウム化合物やジルコニウムブチレート、ジルコニウムアセチルアセトネート、アセチルアセトンジルコニウムブチレート、ジルコニウムラクテート、ステアリン酸ジルコニウムブチレートなどの有機ジルコニウム化合物が使用できる。また、シラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビストリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどが挙げられる。
【0025】
上記脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラギン酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸、エライジン酸、リノーリ酸、リシノール酸などの不飽和脂肪酸、ナフテン酸などの脂環族カルボン酸が挙げられる。
上記樹脂酸としては、例えば、アビチエン酸、ピマル酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸等が挙げられる。
【0026】
水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム又はその混合物は高分子材料の分解温度と一致する約180〜320℃で構造水を放出するため、炎の着火、延焼を防ぐことが出来、優れた難燃性を発揮することができる。
また、上記金属水酸化物が芳香族アミン、フェノール、ナフトール類もしくは活性メチレン化合物などで処理されたカップリング剤、脂肪酸または樹脂酸で表面処理されたものを使用した場合、多少難燃効果は薄れるが、粘度安定性及び電気特性が向上する。
【0027】
上記金属水酸化物の粒径は0.1μm〜200μmが用いられるが、0.3μm〜100μmが更に好ましく、0.3μm〜30μmが最も好ましい。
該金属水酸化物の粒径が、0.1μmより小さいと、組成物粘度が著しい高くなり作業性が悪くなる問題があり、一方200μmより大きいと、微量定量吐出の場合に針先や装置嵌合部で詰まる問題がある。
【0028】
金属水酸化物の量は、重合体(A)100重量部に対して150重量部〜350重量部が配合されることが好ましく、170重量部〜280重量部が更に好ましく、190重量部〜230重量部が最も好ましい。この金属水酸化物の量が、150重量部より少ないと、充分な難燃性が得られず、例えば着火すると延焼し続けたりポリマーが解重合し液状化することがあり、一方350重量部より多いと、組成物粘度が高くなり作業性が悪くなる問題の他、接着強さ等の基本的物性が保てなくなる。また金属水酸化物の粒径によっても難燃効果は多少異なる。
上記のハロゲン系、リン系、酸化アンチモン等の難燃剤は通常の使用において上述したような問題があるが、本発明においては、これらの難燃剤を金属水酸化物と併用することも可能である。この他に、硼酸亜鉛、錫酸亜鉛等も発煙量の低減効果が有るため、添加することができる。
【0029】
前記親水性シリカ(C)としては、結晶質の親水性シリカ及び非晶質の親水性シリカのいずれも使用可能であり、特に限定されないが、微粉状の親水性シリカが好ましい。
上記親水性シリカ(C)の量は、重合体(A)100重量部に対して、0.1〜15重量部配合することが好ましく、0.2〜10重量部がより好ましく、1〜8重量部が更に好ましい。
【0030】
前記表面処理された炭酸カルシウム(D)としては、平均粒径0.01〜10μmの公知の表面処理炭酸カルシウムが広く使用可能である。該炭酸カルシウムの平均粒径は0.01μm以上0.05μm以下が好ましく、0.01μm以上0.03μm以下がより好ましい。
【0031】
前記表面処理炭酸カルシウムの処理剤としては、具体的には、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラギン酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸、エライジン酸、リノーリ酸、リシノール酸などの不飽和脂肪酸、ナフテン酸などの脂環族カルボン酸、アビチエン酸、ピマル酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸などの樹脂酸などが挙げられる。またスルホン酸類、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩で処理された炭酸カルシウムも使用でき、さらにはアニオン性、カチオン性、ノニオン性の界面活性剤で処理された炭酸カルシウムも使用できる。
【0032】
さらに、前記炭酸カルシウム(D)が、BET比表面積20〜100m/gの炭酸カルシウムを脂肪酸で表面処理した炭酸カルシウムであることが好ましい。前記脂肪酸による表面処理は不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸で行うことが好ましく、該不飽和脂肪酸及び飽和脂肪酸は、酸の形態でも使用可能であるが、金属塩及び/又はエステルの形態で用いてもよい。不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸を併用する場合、両者の混合割合は特に限定されないが、不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸が0.5〜1.9であることが好ましい。また、水銀圧入法による空隙径分布曲線における最多確率空隙径のピークが0.03μm未満であり、且つ最多確率空隙容量が0.05〜0.5cm/gであることが好ましい。このような表面処理炭酸カルシウムとしては、具体的には、特開2003−171121号等に記載の炭酸カルシウムが挙げられる。
【0033】
上記表面処理された炭酸カルシウム(D)の量は、重合体(A)100重量部に対して1〜50重量部配合されることが好ましく、3〜40重量部が更に好ましく、5〜30重量部が最も好ましい。表面処理された炭酸カルシウムが50重量部より多いと、十分な難燃性は得られるものの、組成物の粘度が高粘度となり作業性に問題が生じる。
無処理の炭酸カルシウム、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、無水珪素、含水珪素、珪酸カルシウム、シラスバルーン、ガラスバルーン等を更に添加してもよく、このような無機物を添加した場合、難燃性が向上することがある。
【0034】
本発明の難燃性湿気硬化型組成物には、一般的に硬化触媒が用いられる。硬化触媒としては、前記重合体(A)を架橋させる触媒であれば特に限定されない。具体的には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジステアレート、ジブチル錫ラウレートオキサイド、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫ジオレイルマレート、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド、ジオクチル錫ジラウレート等の錫化合物;金属錯体としてはテトラ−n−ブトキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート等のチタネート系化合物;オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト、亜鉛系化合物、鉄系化合物、ビスマス等のカルボン酸金属塩;アルミニウムアセチルアセトナート錯体、バナジウムアセチルアセトナート錯体等の金属アセチルアセトナート錯体が挙げられる。またジブチルアミン−2−エチルヘキソエート等のアミン塩や、モノメチル燐酸、ジ−n−ブチル燐酸などの有機燐酸化合物や他の酸性触媒及び塩基性触媒等も使用することが出来る。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0035】
また、その他、必要に応じて種々の添加剤を添加してよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、老化防止剤、高沸点溶剤、シランカップリング剤(アミノシラン、エポキシシラン、アクリルシラン、ビニルシラン、メルカプトシラン、イソシアネートシランなど)が挙げられる。
また、本発明の組成物にさらにエポキシ樹脂を併用すると、残炭率が向上してドリップ性(燃焼中に落下すること)が改善するため、金属水酸化物の配合量を低減できる。
難燃剤として市販されているシリコーン化合物はノンハロゲンの難燃助剤として用いることができる。
【0036】
本発明の難燃性湿気硬化型組成物は、必要に応じて1液型とすることも可能であるし、2液型とすることも可能である。本発明の難燃性湿気硬化型組成物は、接着剤や固着剤としての使用が最も適しているが、必要に応じて、シーリング材、粘着材、コーティング材、ポッティング材等としても使用可能である。本発明の難燃性湿気硬化型組成物は、各種電気・電子分野用、建築物用、自動車用、土木用等に使用可能である。
【0037】
本発明の接着方法は、上記難燃性湿気硬化型組成物を有効成分とする難燃性湿気硬化型接着剤組成物を用いて難燃性製品の部品接着を行うものである。難燃性製品としては、電気製品、例えばスピーカー、ビデオカセットプレイヤー、テレビ、ラジオ、自動販売機、冷蔵庫、パーソナルコンピューター、カード型電池、ビデオカメラ等やカメラの他自動車部品及び精密機器等を挙げることができる。
本発明の接着方法は、これらに加えて、高圧部品、高圧となりうる回路やその周辺で使用される部品の接着、長時間連続運転される電器製品内の接着にも適用することができる。これらの部品の具体例としては、コネクター、スイッチ、リレー、電線ケーブル、フライバックトランス、偏向ヨーク等を挙げることができる。
【0038】
次に、本発明の難燃性湿気硬化型組成物を難燃性製品、例えば偏向ヨーク部品の接着に適用する場合について添付図面を参照して説明する。
図1は偏向ヨークの構造及び接着剤の塗布箇所を示す斜視説明図である。図中、10は偏向ヨークであり、ボビン20を有し、該ボビン20の下面には側方に突出するクサビ22が設けられている。24は該ボビン20の上面に取りつけられたコイルである。該コイル24にはフェライト25が取りつけられている。該ボビン上部には偏向ヨーク締付ネジ26を備えた取付板28を介してピューリティ磁石30、4極コンバーゼンス磁石32及び6極コンバーゼンス磁石34が積層され設置されている。
【0039】
この偏向ヨーク10の組立ては次のように行う。接着剤を用いることなく、ボビン20、フェライト25及びコイル24を仮組立後、接着剤で互いに接着する。次にボビン20に上記した各磁石30,32,34や珪素鋼板製部品、SUS製部品を接着剤で接着する。最後にクサビ22を用いて偏向ヨーク10をブラウン管(図示せず)に仮固定後、接着剤で接着する。
即ち、接着剤が塗布される箇所は、図1に示したように次の箇所である。
(1)上記したピューリティ磁石30、4極コンバーゼンス磁石32及び6極コンバーゼンス磁石34の積層された側面部分12。
(2)偏向ヨーク締付ネジ26と取付板28との接合部分14。
(3)ボビン20とコイル24との接合部分16。
(4)ボビン20とクサビ22との接合部分18。
【0040】
この場合の各部品を接着する接着剤としては、従来は、表1に示す各種接着剤が用いられている。
【0041】
【表1】

*1:ポリアミド、ポリオレフィン系組成物。
*2:クロロプレン、ニトリルゴム系組成物。
*3:2液型(主剤:エポキシ樹脂、硬化剤:ポリアミン、ポリアミド等)等。
*4:1液脱アセトキシ室温硬化型シリコーン系等。
【0042】
従来の接着剤の問題点は次のとおりである。
(1)ホットメルト系接着剤は高温下で軟化し、部品のズレを生じさせることがあった。
(2)ゴム系接着剤は組成として溶剤を含有するため、労働安全衛生上の問題、環境汚染を起こす他、プラスチック部品を侵し、ストレスクラッキングを生じさせることがあった。
(3)シリコーンRTVは耐熱性が良く、無溶剤系であるが、基本的に各種被着材に対して接着性が良くないという問題があった。
(4)エポキシ接着剤は室温で硬化可能なことから通常2液型が使用されているが、主剤/硬化剤の計量ミス、歩留まりの悪さ、室温のみで硬化させた場合の硬化時間の長さを指摘されることがあった。
【0043】
上記した問題を有する従来の各種の接着剤に代えて、本発明の難燃性湿気硬化型組成物を接着剤として適用すれば、従来の接着剤の有する問題点を一挙に解決することができる。即ち、本発明の難燃性湿気硬化型組成物は、難燃性で無溶剤化が可能であり、高温で軟化せず、各種被着材に対して接着性が良好でかつ保存安定性に優れるため、従来の接着剤の代替として使用できることは勿論、従来の接着剤の問題点を有しないため、理想的な接着剤として使用できるものである。
【実施例】
【0044】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0045】
(実施例1〜5及び比較例1〜7)
表2に示した配合(単位:質量部)で成分(A)〜(D)をプラネタリーミキサーに入れて100℃で1時間混合した後、20℃に冷却し、硬化触媒、接着付与剤を入れて、10分間真空減圧混合してそれぞれの配合に対する室温硬化性組成物を得た。
【0046】
【表2】

【0047】
表2中の各配合物質は次の通りである。
MA450:(株)カネカ製、ポリオキシアルキレン重合体とアクリル系重合体との混合物
ハイジライトH42:昭和電工(株)製、水酸化アルミニウム(平均粒径1.1μm)
ハイジライトH42S:昭和電工(株)製、表面脂肪酸処理水酸化アルミニウム(平均粒径1.1μm)
レオロシールQS−20:(株)トクヤマ製、親水性シリカ
アエロジルR972:日本アエロジル(株)製、疎水性シリカ
白艶華CCR:白石工業(株)製、表面処理炭酸カルシウム(平均粒径0.08μm)
ビスコエクセル30:白石工業(株)製、表面処理炭酸カルシウム(平均粒径0.03μm)
Brilliant-15:白石工業(株)製、表面処理されていない炭酸カルシウム(平均粒径0.15μm)
硬化触媒:ジブチル錫ジラウレート
接着付与剤:東レダウコーニングシリコーン(株)製、商品名SH6020〔γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン〕
【0048】
前記得られたそれぞれの室温硬化性組成物を接着剤として使用し、下記性能評価を行った。結果を表3に示す。
1)難燃性
接着剤を、シリコーン離型紙間で1.5mmのスペーサーを用いてシートを作製する。20℃7日後、離型紙から剥がし、1.5×13×130mmの硬化シートを作製する。得られた硬化シートに対し、UL94V−0規格に基づき試験を行い、難燃性を評価した。
具体的には以下の各項目を全て満たすものを合格、一つでも満たさないものを不合格とした。
a)各試料の残炎時間t1またはt2が「10秒以下」
b)全ての処理による各組の残炎時間の合計(5枚の試料のt1+t2)が「50秒以下」
c)第2回接炎の各試料の残炎時間と残じん時間の合計(t2+t3)が「30秒以下」
d)各試料の保持クランプまでの残炎または残じんが「無い事」
e)発炎物質または滴下物による標識用綿の着火が「無い事」
t1〜t3は下記の通りである。
t1:第1回接炎の試料の残炎時間(秒)
t2:第2回接炎の試料の残炎時間(秒)
t3:第2回接炎の試料の残じん時間(秒)
【0049】
2)保存安定性
接着剤を135mlラミネートチューブに充填し、50℃×60日間放置し、液状分のブリードアウトを観察した。
〈評価基準〉
○:チューブよりの吐出時にブリードアウトなし
×:チューブよりの吐出時にブリードアウトあり
【0050】
3)粘度及び貯蔵安定性
各接着剤を23℃50%RH環境下で24時間放置した後、B型粘度計(東機産業製、BSローター7番 10rpm)を使用し、粘度を測定した。その結果を初期粘度とした。その後、50℃乾燥機中に30日間放置した後、23℃50%RH環境下で24時間放置し、液温が23℃になるように調整し、同様に粘度測定を行った。望ましい粘度は、30〜400pa・sである。また、貯蔵安定性は「50℃30日後の粘度/初期粘度」の値により下記の基準で評価した。
◎:1.5未満、○:1.5以上2未満、△:2以上3未満、×:3以上。
【0051】
4)接着強度
軟鋼板(1.6×25×100mm)に各接着剤を25×25mmの接着面積で接着剤を200μm厚に塗布し、オープンタイムを3分とって貼り合わせ、20℃で7日養生し、引っ張り速さ50mm/分で接着強さを測定する。
【0052】
【表3】

【0053】
表3の結果から明らかなように、実施例1〜5は、接着強度及び粘度の点等、接着剤として好適な優れた特性を有し、且つUL94V−0規格に合格し得る、著しい難燃性を示し、更に保存安定性及び貯蔵安定性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】偏向ヨークの構造及び接着剤の塗布箇所を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
10:偏向ヨーク、20:ボビン、22:クサビ、24:コイル、25:フェライト、26:偏向ヨーク締付ネジ、28:取付板、30:ピューリティ磁石、32:4極コンバーゼンス磁石、34:6極コンバーゼンス磁石。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)反応性珪素基含有有機重合体、
(B)平均粒径0.1〜200μmの金属水酸化物、
(C)親水性シリカ、及び
(D)平均粒径0.01〜10μmの表面処理された炭酸カルシウム
を必須成分として含有し、前記重合体(A)100質量部に対して、前記金属水酸化物(B)150〜350質量部、前記親水性シリカ(C)0.1〜15質量部、前記炭酸カルシウム(D)1〜50質量部を配合することを特徴とする難燃性湿気硬化型組成物。
【請求項2】
前記重合体(A)が、反応性珪素基含有ポリオキシアルキレン系重合体、反応性珪素基含有(メタ)アクリル系重合体、反応性珪素基含有ポリイソブチレン系重合体からなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1記載の難燃性湿気硬化型組成物。
【請求項3】
前記金属水酸化物(B)が、水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1又は2記載の難燃性湿気硬化型組成物。
【請求項4】
前記金属水酸化物(B)が、カップリング剤、脂肪酸もしくは樹脂酸で処理された金属水酸化物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の難燃性湿気硬化型組成物。
【請求項5】
前記炭酸カルシウム(D)が、脂肪酸もしくは樹脂酸で処理された表面処理炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の難燃性湿気硬化型組成物。
【請求項6】
前記炭酸カルシウム(D)が、BET比表面積20〜100m/gの炭酸カルシウムを脂肪酸で表面処理した炭酸カルシウムであって、平均粒径が0.05μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の難燃性湿気硬化型組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の難燃性湿気硬化型組成物を有効成分とする難燃性湿気硬化型接着剤組成物。
【請求項8】
請求項7記載の難燃性湿気硬化型接着剤組成物を用いて難燃性製品の部品を接着することを特徴とする接着方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−84633(P2007−84633A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273118(P2005−273118)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000108111)セメダイン株式会社 (92)
【Fターム(参考)】