説明

難燃硬化性樹脂組成物

【課題】高度の平坦性と流れ性を発現する難燃硬化性フィルム、難燃硬化性複合材料、難燃硬化性積層体、難燃硬化性樹脂付き金属箔及びそれらの硬化物を提供する。
【解決手段】(A)成分:ジビニル芳香族化合物及びモノビニル芳香族化合物からなる単量体由来の構造単位を有する溶剤可溶性多官能ビニル芳香族共重合体、(B)成分:リン−窒素系難燃剤、及び(C)成分:平均粒子径が0.001〜6μmの無機フィラーを含んでなる樹脂組成物であり、(A)成分の配合量が4〜99.8wt%、(B)成分の配合量が0.1〜95.9wt%、(C)成分の配合量が0.1〜95.9wt%である難燃硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多官能ビニル芳香族共重合体に、リン−窒素系難燃剤及び無機フィラーを配合して得られる高度の平坦性と流れ性を発現する難燃硬化性樹脂組成物に関する。この難燃硬化性樹脂組成物からは、難燃性樹脂硬化物、難燃硬化性フィルム、難燃硬化性複合材料、難燃性硬化複合材料、難燃硬化性積層体及び難燃硬化性樹脂付き金属箔が得られる。
【背景技術】
【0002】
近年、IT技術の急速な進歩に伴って、用いられる携帯端末機器、コンピュータやディスプレイ等の電子機器に対して、高性能化、高機能化、小型化が急速に進んでいる。これに伴い、電子機器に用いられる半導体素子等の電子部品やそれらを実装する基板に対してもより高密度かつ高性能なものが求められるようになってきた。これらの用途では、内部部品の発熱発火等の問題から樹脂の難燃化が必要とされている。
【0003】
こうした半導体素子等の電子部品やそれらを実装する基板で使用される熱硬化性樹脂に難燃性を付与するためには、樹脂を成形・硬化させる前に難燃剤を添加する方法が一般的である。難燃剤としては、無機水酸化物、有機リン化合物、有機ハロゲン化合物、ハロゲン含有有機リン化合物等が知られている。
【0004】
これらの中で難燃効果の優れた難燃剤は、有機ハロゲン化合物、ハロゲン含有有機リン化合物等のハロゲン含有化合物である。
【0005】
しかしながら、これらハロゲン含有化合物は、樹脂の成形硬化時に熱分解してハロゲン化水素を発生し、基板上の配線の腐食や樹脂の劣化及び着色を惹起する。また、火災等により樹脂が燃焼する際にはハロゲン化水素等の生物に対する有害ガスや煙を発生するという問題点を有している。
【0006】
一方、ハロゲンを含まない難燃剤は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機水酸化物や有機リン化合物である。
【0007】
ところが、無機水酸化物は、熱分解で生じる水の蒸発潜熱により難燃性が発現されるため、難燃効果が低く、そのために多量に添加せねばならないが、多量添加により、樹脂本来の特性が損なわれるという欠点がある。
【0008】
また、有機リン化合物は比較的良好な難燃効果が得られることから広く用いられており、代表的なものとしてトリフェニルホスフェイト(TPP)、トリクレジルホスフェイト(TCP)等が知られている。しかしながら、これらの有機リン化合物は液体又は低融点固体であるため揮発性が高く、樹脂の成形温度を低下させたり、耐湿熱安定性に劣るために湿熱履歴による電気的特性の変化が大きい等の問題がある。
【0009】
また、半導体素子等の電子部品やそれらを実装する基板といった先進技術分野ではこれまで以上に要求される高密度化及び高多層化に対する要求も厳しくなってきている。例えば、通信分野においては、携帯電話等の情報通信技術において、薄型・軽量化及び高速・大容量化に伴い、回路基板では高密度かつ高多層の実装を可能にする加工性が樹脂材料に強く求められるようになってきた。
【0010】
一方、電子デバイスの高周波化に伴う、回路基板、特に回路を形成する金属と隣接する絶縁層に対する低誘電正接化の要求を解決する新しい材料として熱硬化性ポリフェニレンエーテルが近年注目をあび、銅張積層板等への応用が試みられている。
【0011】
近年の多層プリント基板における高密度化、薄型化に伴い、層間を極めて薄くすることが望まれており、表面平坦性と加工時の流れ性に優れた難燃硬化性樹脂材料が必要とされている。しかしながら、従来のポリフェニレンエーテルの鎖中に架橋性の官能基を導入し、更に硬化させて利用する技術では薄型化及び高密度実装化における表面平坦性と流れ性の両立という観点において、今のところ満足すべき解決法は得られていない。
【0012】
具体例を挙げると、特開2001−81305号公報には、(a)熱硬化型ポリフェニレンエーテル系樹脂、及び(b)特定の構造を有するシランカップリング剤で処理したシリカを含有し、且つ(a)成分100重量部を基準として(b)成分であるシリカを10〜38000重量部含有する硬化性ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物が開示されている。すなわち、特定の構造のシランカップリング剤で処理したシリカを配合することにより、両者の親和性を向上させ、充分な分散状態が得られ、表面にシリカの凝集物のない優れた平滑性を有する樹脂付金属箔やフィルムが製造され得ることが開示されている。しかし、熱硬化型ポリフェニレンエーテル系樹脂として使用されているポリフェニレンエーテルと不飽和カルボン酸又は酸無水物との反応生成物の軟化温度は通常の硬化温度よりも高いため、真空ラミネートを始めとする熱成形を行うのに必要な流れ性が不足しており、このような高度の流れ性を必要とする成形加工を行うことは不可能である。かかる成形性の改良方法では、多量の可塑剤の併用が試みられているが、これはポリフェニレンエーテルの優れた電気特性(低誘電率、低誘電正接)を損うだけでなく、硬化後の耐熱性、耐薬品性の低下にもつながっていた。
【0013】
一方、特開2004−107374号公報には、(a)樹脂及び(b)特定構造のホスファゼン化合物からなり、(b)成分のホスファゼン化合物を1〜35重量%含有する1GHz以上の高周波帯で使用される難燃性樹脂組成物が開示されている。そして、ハロゲン化合物を含まず、耐熱性、機械特性に優れ、環境上好ましい、高度の難燃性及び優れた電気特性を有する安価な樹脂組成物が得られるとしている。
【0014】
また、特許文献3には特定構造の溶剤可溶性の多官能ビニル芳香族共重合体とポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物が開示されている。しかしながら、これら特許文献のいずれも、特定構造の溶剤可溶性の多官能ビニル芳香族共重合体がリン−窒素系難燃剤と相乗的に平均粒子径が0.001〜6μmの無機フィラーを含んでなる難燃硬化性樹脂組成物については何ら開示されていない。
【0015】
【特許文献1】特開2004−107374号公報
【特許文献2】特開2001−081305号公報
【特許文献3】特開2004−131638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、多官能ビニル芳香族共重合体を含む平坦性と流れ性が改良された難燃硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。更に、高度の平坦性と流れ性を発現する難燃硬化性フィルム、難燃硬化性複合材料、難燃硬化性積層体、難燃硬化性樹脂付き金属箔及びそれらの硬化物を提供することを目的とする。また、本発明は、高度の平坦性と流れ性を示し、更に、高度の難燃性、良好な外観、成形加工性、硬化特性、誘電特性、耐熱性、耐熱加水分解性を示し、高密度・高多層プリント基板の絶縁材料だけではなく、電子産業、宇宙・航空機産業等の先進技術分野において、絶縁材料、誘電材料、耐熱材料、包装材料、接着材料、筐体材料などに用いることができる難燃硬化性樹脂組成物及びそれから得られる各種樹脂材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、(A)成分:ジビニル芳香族化合物(a)及びモノビニル芳香族化合物(b)からなる単量体由来の構造単位を有する多官能ビニル芳香族共重合体であって、ジビニル芳香族化合物(a)に由来する繰り返し単位を20モル%以上含有し、かつ、下記式(a1)及び(a2)
【化1】

(式中、R1は炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を示し、R2は炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を示す。)で表されるジビニル芳香族化合物(a)由来のビニル基を含有する構造単位のモル分率が(a1)/[(a1)+(a2)]≧0.5を満足し、かつ多官能ビニル芳香族共重合体のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が600〜30,000であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が20.0以下である溶剤可溶性の多官能ビニル芳香族共重合体、
(B)成分:リン−窒素系難燃剤、
(C)成分:平均粒子径が0.001〜6μmの無機フィラー
を含んでなる樹脂組成物であって、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計に対する(A)成分の配合量が4〜99.8wt%、(B)成分の配合量が0.1〜95.9wt%、(C)成分の配合量が0.1〜95.9wt%であることを特徴とする難燃硬化性樹脂組成物である。
【0018】
ここで、上記の難燃硬化性樹脂組成物は次の1)〜5)の要件の1以上を満足することは、より良好な難燃硬化性樹脂組成物を与える。
1) (A)成分が、ジビニル芳香族化合物(a)及びモノビニル芳香族化合物(b)からなる単量体由来の構造単位を有する多官能ビニル芳香族共重合体の主鎖骨格中に下記一般式(1)
【化2】

(但し、Qは飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基又はベンゼン環に縮合した芳香族環若しくは置換芳香族環を示し、nは0〜4の整数である。)で表されるインダン構造を有する多官能ビニル芳香族共重合体であること。
【0019】
2) (D)成分として熱可塑性ポリフェニレンエーテル系樹脂を含んでなる難燃硬化性樹脂組成物であって、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計に対する(D)成分の配合量が1〜80wt%であること。
3) (E)成分として芳香族ビニル系熱可塑性樹脂を含んでなる難燃硬化性樹脂組成物であって、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分の合計に対する(E)成分の配合量が1〜80wt%であること。
4) (F)成分としてビニル基、エチニル基、エポキシ基、オキセタン基、シアネート基、イソシアネート基及び水酸基からなる群から選ばれる一つ以上の官能基を含む熱硬化性樹脂を含んでなる難燃硬化性樹脂組成物であって、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分及び(F)成分の合計に対する(F)成分の配合量が1〜60wt%であること。
5) (G)成分として熱可塑性ポリフェニレンエーテル系樹脂、及び芳香族ビニル系熱可塑性樹脂以外の熱可塑性樹脂を含む難燃硬化性樹脂組成物であって、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分及び(G)成分の合計に対する(G)成分の配合量が1〜50wt%であること。
【0020】
また本発明は、前記の難燃硬化性樹脂組成物を硬化して得られた硬化物である。
更に本発明は、前記の難燃硬化性樹脂組成物をフイルム状に成形してなるフィルムである。
また本発明は、前記の難燃硬化性樹脂組成物と基材からなる複合材料であって、基材を5〜90wt%の割合で含有する難燃硬化性複合材料である。
更に本発明は、前記の難燃硬化性複合材料を硬化して得られる複合材料の硬化物である。
また本発明は、前記の難燃硬化性複合材料の層と金属箔層とを有する積層体である。
更に本発明は、前記の難燃硬化性樹脂組成物から形成された樹脂層を金属箔の片面に有する難燃硬化性樹脂付き金属箔である。
【0021】
以下、本発明の難燃硬化性樹脂組成物について、更に説明する。
【0022】
本発明の難燃硬化性樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を必須成分として含む。本発明の難燃性樹脂組成物は、その用途等によっては更に、(D)成分、(E)成分、(F)成分及び(G)成分のいずれか1以上の任意成分を含むことが好ましい。以下、各成分について説明する。
【0023】
(A)成分として使用される溶剤可溶性の多官能ビニル芳香族共重合体は、その分子構造に由来して、絶縁材料として良好な電気的特性をもっているだけではなく、一般的な熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂の平坦性が悪い、流れ性が低いといった高密度・高多層実装時の成形性に関する問題点を(B)成分及び(C)成分との相乗的な効果によって解決し、耐熱性を更に高める成分として有効である。
【0024】
(A)成分は、ジビニル芳香族化合物(a)及びモノビニル芳香族化合物(b)からなる単量体由来の構造単位を含有する可溶性多官能ビニル芳香族共重合体(以下、多官能ビニル芳香族共重合体又は共重合体ともいう。)である。この共重合体は、トルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン及びクロロホルムのいずれか、好ましくは全部に可溶である。この共重合体は、ポリフェニレンエーテル系樹脂等の他の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂との相溶性が優れる。この共重合体は、ジビニル芳香族化合物(a)に由来する繰り返し単位として、上記式(a1)及び(a2)の他に上記一般式(1)で表される構造単位を含むことがよい。上記式(a1)、(a2)及び(1)において、R1、R2、Q及びnは上記の意味を有するが、各構造単位が共重合体中に存在する割合は、使用するジビニル芳香族化合物(a)及びモノビニル芳香族化合物(b)の種類及び反応触媒、反応温度等の反応条件によって定まる。
【0025】
多官能ビニル芳香族共重合体の合成に使用されるジビニル芳香族化合物(a)としては、例えば、m-ジビニルベンゼン、p-ジビニルベンゼン、1,2-ジイソプロペニルベンゼン、1,3-ジイソプロペニルベンゼン、1,4-ジイソプロペニルベンゼン、1,3-ジビニルナフタレン、1,8-ジビニルナフタレン、1,4-ジビニルナフタレン、1,5-ジビニルナフタレン、2,3-ジビニルナフタレン、2,7-ジビニルナフタレン、2,6-ジビニルナフタレン、4,4'-ジビニルビフェニル、4,3'-ジビニルビフェニル、4,2'-ジビニルビフェニル、3,2'-ジビニルビフェニル、3,3'-ジビニルビフェニル、2,2'-ジビニルビフェニル、2,4-ジビニルビフェニル、1,2-ジビニル-3,4-ジメチルベンゼン、1,3-ジビニル-4,5,8-トリブチルナフタレン、2,2'-ジビニル-4-エチル-4'-プロピルビフェニル等を用いることができるが、これらに制限されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0026】
ジビニル芳香族化合物(a)の好適な具体例としては、コスト及び得られたポリマーの耐熱性の点でジビニルベンゼン(m−及びp−異性体の両方)、ジビニルビフェニル(各異性体を含む)及びジビニルナフタレン(各異性体を含む)がある。より好ましくは、ジビニルベンゼン(m−及びp−異性体の両方)、ジビニルビフェニル(各異性体を含む)である。特に、ジビニルベンゼン(m−及びp−異性体の両方)が好ましく用いられる。更に、高度の耐熱性が要求される分野ではジビニルビフェニル(各異性体を含む)及びジビニルナフタレン(各異性体を含む)が好適に使用される。
【0027】
一方、モノビニル芳香族化合物(b)としては、エチルビニル芳香族化合物(b1)及び(b1)以外のモノビニル芳香族化合物(b2)を挙げることができる。
エチルビニル芳香族化合物(b1)としては、o-エチルビニルベンゼン、m-エチルビニルベンゼン、p-エチルビニルベンゼン、2-ビニル-2'-エチルビフェニル、2-ビニル-3'-エチルビフェニル、2-ビニル-4'-エチルビフェニル、3-ビニル-2'-エチルビフェニル、3-ビニル-3'-エチルビフェニル、3-ビニル-4'-エチルビフェニル、4-ビニル-2'-エチルビフェニル、4-ビニル-3'-エチルビフェニル、4-ビニル-4'-エチルビフェニル等を用いることができるが、これらに制限されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0028】
多官能ビニル芳香族共重合体において、エチルビニル芳香族化合物(b1)は、(D)成分であるポリフェニレンエーテル系樹脂及び(E)成分である芳香族ビニル系熱可塑性樹脂との相溶性の調整、溶剤可溶性及び加工性を改善する構造単位を与える。また、エチルビニル芳香族化合物(b1)から誘導される構造単位が多官能ビニル芳香族共重合体中に導入されることによって、共重合体のゲル化を防ぎ、溶媒への溶解性を高めることができるばかりではなく、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物の引張り破断伸びといった機械的特性を改善することができる。好適な具体例としては、コスト、ゲル化防止及び得られたポリマーの耐熱性の点でエチルビニルベンゼン(m−及びp−異性体の両方)及びエチルビニルビフェニル(各異性体を含む)等を挙げることができる。
【0029】
エチルビニル芳香族化合物(b1)以外のモノビニル芳香族化合物(b2)としては、重合性の二重結合を1つ有する芳香族化合物が使用される。ここで、モノビニル芳香族化合物(b2)のビニル基を構成する炭素原子はアルキル基等により置換されていてもよい。
【0030】
かかるモノビニル芳香族化合物(b2)としては、スチレン、ビニルナフタレン等の無置換のモノビニル芳香族化合物、p-メチルスチレン等の核アルキル置換スチレン等の核アルキル置換芳香族ビニル化合物、α-メチルスチレン等のα-アルキル置換スチレンやα-アルキル置換芳香族ビニル化合物、4-t-ブトキシスチレン等のアルコキシ置換スチレン等の芳香族ビニル化合物を挙げることができる。更に、インデン類、アセナフチレン類等の環状オレフィンをモノビニル芳香族化合物(b2)として挙げることができる。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0031】
モノビニル芳香族化合物(b2)はこれらに制限されるものではない。重合時に共重合体の骨格中に於けるインダン構造の生成量が大きいという点で、スチレン、α-アルキル置換スチレン、α-アルキル置換芳香族ビニル化合物が好ましい。好適な具体例としては、コスト及び得られたポリマーの耐熱性の点でスチレン、α-メチルスチレン及び4-t-ブトキシスチレンを挙げることができる。モノビニル芳香族化合物(b2)は、本発明の難燃硬化性樹脂組成物の硬化物の平坦性及び流れ性を高める目的、あるいは他の樹脂との相溶性の改善といった目的のために有効である。
【0032】
(A)成分の多官能ビニル芳香族共重合体は、ジビニル芳香族化合物(a)及びモノビニル芳香族化合物(b)を含む単量体を重合して得られる。それぞれの単量体の使用量を(a)及び(b)とすれば、(a)及び(b)の合計に対し、ジビニル芳香族化合物(a)は、20〜99モル%、好ましくは30〜95モル%、更に好ましくは50〜85モル%である。ジビニル芳香族化合物(a)に由来する構造単位の含有量が20モル%未満であると、生成した多官能ビニル芳香族共重合体を硬化させた場合に、硬化性が低下すると共に、耐熱性が低下する傾向がある。
【0033】
モノビニル芳香族化合物(b)は、1〜80モル%、更に好ましくは5〜70モル%、特に好ましくは15〜50モル%である。モノビニル芳香族化合物(b)由来する構造単位の含有量が80モル%以上であると、生成した可溶性多官能ビニル芳香族共重合体を硬化させた場合に、耐熱性が低下する傾向がある。
【0034】
エチルビニル芳香族化合物(b1)とそれ以外のモノビニル芳香族化合物(b2)の使用割合には特に制限はなく、生成した可溶性多官能ビニル芳香族共重合体に、他の樹脂成分を配合する場合に相溶性が良好となる比率で使用することがよい。
【0035】
ところで、(A)成分の多官能ビニル芳香族共重合体を形成する単量体には、ジビニル芳香族化合物(a)、モノビニル芳香族化合物(b)の他に、本発明の効果を損なわない範囲でトリビニル芳香族化合物やその他のジビニル化合物及びモノビニル化合物等の他の単量体(c)を少量含むことができる。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。これらの他の単量体(c)はジビニル芳香族化合物(a)及びモノビニル芳香族化合物(b)を含む単量体の総量に対して30モル%未満、好ましくは0〜15モル%の範囲内で使用される。
【0036】
他の単量体(c)を含む場合であっても、単量体全量中におけるジビニル芳香族化合物(a)及びモノビニル芳香族化合物(b)の使用量は、上記のモル%を満足させることがよく、好ましい範囲も同様である。
【0037】
本発明の硬化性樹脂組成物で使用される可溶性多官能ビニル芳香族共重合体中では上記式(a1)及び(a2)で表されるジビニル芳香族化合物由来のビニル基を含有する構造単位のモル分率(a1)/[(a1)+(a2)]が≧0.5を満足することが必要である。好ましくはモル分率が0.7以上であり、特に好ましくは0.9以上である。0.5未満であると生成した共重合体の成形性が低下したり、硬化物の耐熱性が低下したり、硬化に長時間を要することになる。
【0038】
また、可溶性多官能ビニル芳香族共重合体はその主鎖骨格中に上記一般式(1)で表されるインダン構造を有することが望ましい。一般式(1)において、Qはビニル基等の不飽和脂肪族炭化水素基、フェニル基等の芳香族炭化水素基、これらの炭化水素基置換体等があり、これらは0〜4個置換することができる。また、Qはインダン構造のベンゼン環と縮合環を形成してナフタレン環等を形成する2価の炭化水素基であることもでき、この2価の炭化水素基は置換基を有してもよい。一般式(1)で表されるインダン構造単位はルイス酸触媒を使用してカチオン重合を行う際、ジビニル芳香族化合物及(a)びモノビニル芳香族化合物(b)から、成長末端のカルボカチオンが前末端の繰り返し単位の芳香族環を攻撃して、環化することにより生成する。
【0039】
一般式(1)で表されるインダン構造は本発明の硬化性樹脂組成物で使用される可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の耐熱性と溶剤への可溶性を更に高める構造単位であり、多官能ビニル芳香族共重合体を製造する際、特定の溶媒、触媒、温度等の製造条件下で製造を行うことにより、成長ポリマー鎖末端の活性点がジビニル芳香族化合物及びモノビニル芳香族化合物由来の構造単位の芳香族環を攻撃することにより生成するものである。インダン構造は全ての構造単位に対して0.01モル%以上、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは1モル%以上、更に好ましくは3モル%以上、最も好ましくは5モル%以上存在することがよい。上限には制限はないが、20モル%、好ましくは10モル%であることがよい。本発明の多官能ビニル芳香族共重合体の主鎖骨格中に上記インダン構造が存在しないと、耐熱性と溶剤への可溶性が不足すると共に、(B)成分との親和性が低下する。
【0040】
可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の数平均分子量Mn(ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて得られる標準ポリスチレン換算による。)は、600〜30,000、好ましくは600〜10,000、より好ましくは700〜5,000である。Mnが600未満であると多官能ビニル芳香族共重合体の硬化性が低下したり、硬化物の耐熱性が低下するなど、加工性が低下する。また、Mnが30,000を超えると、他の樹脂成分との相溶性が低下しやすくなり、フィルムや樹脂付き金属箔等に成形した場合、平坦性の低下や流れ性の低下を招く。
【0041】
可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の分子量分布(Mw/Mn)の値は20以下であり、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、特に好ましくは5以下である。下限には制限はないが、重合の観点からは1.5以上であることがよい。Mw/Mnが20を越えると、本発明の難燃硬化性樹脂組成物の粘度が上昇することに伴う加工特性の悪化、他の樹脂成分との相溶性の低下に伴う外観や物性の低下といった問題点を生ずる。
【0042】
可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の金属イオン含有量は、各金属イオンについて500ppm以下、好ましくは300ppm以下、より好ましくは200ppm以下、更に好ましくは100ppm以下、特に好ましくは50ppm以下であることがよい。金属イオン含有量が500ppm以上であると、共重合体の電気的特性が悪化する。
【0043】
次に、本発明で使用する(B)成分について説明する。
(B)成分のリン−窒素系難燃剤としては、一分子中に窒素原子とリン原子とを共に有する化合物であると同時に、(A)成分の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体と共通の溶剤に可溶であることがよい。このような難燃剤を特定の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体及び特定粒子径の無機フィラーと併用することにより、特に平坦性と流れ性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0044】
(B)成分のリン−窒素系難燃剤の好適な例としては、フェノキシホスファゼン、メチルフェノキシフォスファゼン、アミノフォスファゼン等のようなフォスファゼン化合物、N,N-ジエチルフォスファミドのようなリン酸アミド、ポリ(N,N-ジエチルフォスファミド)のようなポリリン酸アミドなどを挙げることができる。これらのリン−窒素系難燃剤の中でも、フォスファゼン化合物は優れた平坦性と流れ性を発揮するので、好適である。リン−窒素系難燃剤は、単独で又は二種以上を混合して使用できる。後記する窒素系難燃剤のリン酸塩やポリリン酸塩もリン−窒素系難燃剤として使用可能であるが、溶剤可溶性が劣るため使用に制限を受ける場合がある。
【0045】
次に、(C)成分である平均粒子径が0.001〜6μmの無機フィラーついて説明する。
無機フィラーとしては、特に制限はないが、具体的には例えば、ワラステナイト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、タルク、ベントナイト、アルミナシリケート、パイロフイライト、モンモリロナイト、珪酸カルシウム等の珪酸塩、二硫化モリブデン、アルミナ、塩化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化チタンなどの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ポリリン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム等のリン酸塩、ガラスビーズ、ガラスマイクロバルーン、ガラスフレーク、窒化ホウ素、炭化珪素及びシリカなどが挙げられる。中でも、周期表の2族(2A族)の金属(例えば、マグネシウム、カルシウム等)の炭酸塩、リン酸塩及び珪酸塩あるいは溶融シリカが強度・密着性の観点から好ましく、平坦性という観点からは、溶融シリカが好ましい。
【0046】
無機フィラーの粒子径は、成形加工品の平滑性等を考慮すると、平均粒子径が0.001〜6μm、好ましくは0.01〜3μm、より好ましくは0.05〜2μmである。平均粒径が0.001μmよりも小さいと、無機フィラーを2次凝集なく分散させるのが困難になり、平坦性が低下する。また、平均粒径が6μmを越えても平坦性が低下する。無機フィラーのモース硬度も特に制限はないが、通常6程度以下とするのがよい。モース硬度が6程度よりもはるかに大きいと、切削加工性が低下し、切削加工具を傷める可能性があるためである。無機フィラーの形状は、上記粒子径を有するものであれば、粉状、板状又は粒状であることができ、中空形状であってもよい。無機フィラーは単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
【0047】
次に(D)成分して使用される熱可塑性ポリフェニレンエーテル系樹脂(以下、PPE系樹脂ともいう)について説明する。
本発明の(D)成分として使用されるPPE系樹脂としては、下記一般式(2)及び(3)で表される繰り返し単位のいずれか又は両者を有する単独重合体又は共重合体であることが好ましい。
【0048】
【化3】

(ここで、R3、R4、R5、R6、R7、R8は独立に炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基又は水素であるが、R7、R8は同時に水素ではない。)
【0049】
PPE系樹脂の単独重合体の代表例としては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エチル-6-n-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2,6-ジ-n-プロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-n-ブチル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-エチル-6-イソプロピル-1,4-フェニレン)エーテル、ポリ(2-メチル-6-ヒドロキシエチル-1,4-フェニレン)エーテル等が挙げられる。中でも、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)エーテルが好ましい。
【0050】
(D)成分としてのPPE系樹脂はその官能基の一部が耐熱性や接着性等の特性を改善するために、末端にある官能基が変性されていてもよく、主鎖中に官能基を有していてもよい。例えば、末端にあるOH基の一部又は全部を、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、水酸基、無水ジカルボキル基などの反応性官能基に変性してもよい。また、グラフト反応や、共重合など何らかの方法でアルキル基、アリール基以外の官能基を導入したり、更にその官能基を変性してもよい。しかし、熱可塑性樹脂である必要があるので、官能基の種類と数には制限がある。
【0051】
本発明で用いることのできるPPE系樹脂(変性されたポリフェニレンエーテル系樹脂を含む意味で使用される)の分子量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、制限されるものではないが、数平均分子量が500〜50000であることが好ましい。成型加工性に優れた組成物を得る必要がある場合には、PPE系樹脂の数平均分子量が500〜30000、好ましくは1200〜20000であることが好ましい。
【0052】
次に、本発明の(E)成分として使用される芳香族ビニル系熱可塑性樹脂(以下、芳香族ビニル系樹脂ともいう)について説明する。
芳香族ビニル系樹脂としては、ゴム変性芳香族ビニル系樹脂、ゴム非変性芳香族ビニル系樹脂、芳香族ビニル系エラストマーから選ばれる一種以上の芳香族ビニル系樹脂が挙げられる。
【0053】
上記ゴム変性芳香族ビニル系熱可塑性樹脂は、芳香族ビニル系熱可塑性樹脂のマトリックス及びその中に分散したゴム粒子よりなり、ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル単量体及び所望によりこれと共重合可能なビニル単量体を加えて、塊状重合法、塊状懸濁重合法、溶液重合法又は乳化重合法により、ゴム状重合体にグラフト重合することにより得ることができる。このようなゴム変性芳香族ビニル系熱可塑性樹脂の例としては、耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体)等が挙げられる。
【0054】
本発明において用いることのできる他の(E)成分には、ゴム変性されていない芳香族ビニル系樹脂や芳香族ビニル系エラストマーがある。
【0055】
かかる芳香族ビニル系樹脂としては、ポリスチレン、ポリ(スチレン‐アクリロニトリル)、ポリ(スチレン‐メチルメタクリレート)等が挙げられる。
【0056】
芳香族ビニル系熱エラストマーとしては、靱性を向上させるという観点からは、ガラス転移温度が20℃以下、好ましくは0℃以下の重合体セグメントを有する芳香族ビニル系エラストマーが好ましい。このような芳香族ビニル系エラストマーとしては、スチレン共役ジエンブロック共重合体(ジエン系ブロック共重合体ともいう)若しくは水添スチレン共役ジエンブロック共重合体等の芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーを好適な例として挙げることができる。ここで言う水添スチレン共役ジエンブロック共重合体とは当該ブロック共重合体中の共役ジエン重合体ブロックが一部又は全部が水添されたブロック共重合体(水添ジエン系ブロック共重合体ともいう)を指す。耐熱酸化劣化性の観点からは、水添スチレン共役ジエンブロック共重合体等の芳香族ビニル系水添熱可塑性エラストマーであることがより好ましい。
【0057】
好適な芳香族ビニル系エラストマーとして使用される水添ジエン系ブロック共重合体は、下記の1)〜5)の構造式に示すように、少なくとも1個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとから成るジエン系ブロック共重合体を水素添加して得られるものである。なお、構造式中、Aはビニル芳香族化合物単位を主体とする重合体ブロック、Bは共役ジエン化合物単位を主体とする重合体ブロックを示す。この水添ジエン系ブロック共重合体は、ビニル芳香族化合物単位を5〜85wt%、好ましくは10〜70wt%、より好ましくは15〜40wt%含むものである。
1) A−B 2) A−B−A 3) B−A−B−A
4) [A−B−]4−Si 5) [B−A−B−]4−Si
【0058】
また、それぞれの重合体ブロックにおける分子鎖中の水素添加された共役ジエン化合物又はビニル芳香族化合物の分布が、ランダム、テーパード(分子鎖に沿ってモノマー成分が増加又は減少するもの)、一部ブロック状又はこれらの組み合わせで成っていてもよく、これら重合体ブロックがそれぞれ2個以上ある場合は、各重合体ブロックはそれぞれが同一構造であってもよく、異なる構造であってもよい。
【0059】
水添ブロック共重合体を構成する原料となるビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレン等の内から1種又は2種以上が選択でき、中でもスチレンが好ましい。共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等の内から1種又は2種以上が選ばれ、中でもブタジエン、イソプレン及びこれらの組み合わせが好ましい。本発明の(A)成分及び(D)成分との相溶性の観点からブタジエンであることが最も好ましい。一方、本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化物の耐薬品性や屈曲性を増大させる目的にはイソプレンであることが好ましい。
【0060】
また、上記の構造を有する水添ブロック共重合体の数平均分子量は特に限定されないが、数平均分子量は5000〜100万、好ましくは1万〜50万、更に好ましくは3万〜30万の範囲である。更に水添ブロック共重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状あるいはこれらの任意の組み合わせのいずれであってもよい。
【0061】
次に、本発明で(F)成分として使用されるビニル基、エチニル基、エポキシ基、オキセタン基、シアネート基、イソシアネート基及び水酸基からなる群から選ばれる一つ以上の官能基を含む熱硬化性樹脂(以下、熱硬化性樹脂ともいう)について説明する。
熱硬化性樹脂の具体例を挙げると、熱硬化性ポリフェニレンエーテル、両末端に官能基を有するポリフェニレンエーテルオリゴマー、多官能性芳香族エポキシ化合物、多官能芳香族オキセタン化合物、ジアリルフタレート、多官能性芳香族アクリロイル化合物、多官能性芳香族メタクリロイル化合物、多官能性芳香族マレイミド、多官能性芳香族シアネート化合物、多官能性芳香族イソシアネート化合物、不飽和芳香族ポリエステル化合物及びこれらのそのプレポリマーが挙げられる。これらは1種又は2種以上が用いられる。
【0062】
以下、好適な(F)成分の熱硬化性樹脂について、説明する。
熱硬化性ポリフェニレンエーテルは、その構造単位の一部が耐熱性や接着性等の特性を改善するために、反応性官能基を導入されたものである。反応性官能基としては、アルケニル基、アルキニル基、エポキシ基、オキサゾリン基、エステル基、ヒドロキシル基等がある。
【0063】
かかる、反応性官能基を有する熱硬化性ポリフェニレンエーテル系樹脂の反応性官能基が導入された構造単位の代表例としては、下記一般式(4)で表される構造単位を挙げることができる。
【化4】

(但し、R5及びR8は、それぞれ独立して、水素、アリル基及びプロパギル基からなる群から選ばれ、かつ、R5及びR8のいずれか一つはアリル基又はプロパギル基である。R6及びR7は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、第一級若しくは第二級の低級アルキル、ハロアルキル、炭化水素オキシ、芳香族炭化水素基又は少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てているハロ炭化水素オキシである。)
【0064】
一般式(4)で表される構造単位は「ポリファイル Vol.30、No.3、p55‐57、1993年」、「高分子論文集Vol.54、No.4、p171‐182、1997年」、特公平5-8930号公報や特公平5-8931号公報に開示されているように、ポリフェニレンエーテル系樹脂をブチルリチウムのような有機金属化合物でメタル化した後、アリルハライドもしくはプロパギルハライドと反応させてアリル基又はプロパギル基を導入することができる。
【0065】
反応性官能基を有する熱硬化性ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、両末端に官能基を有するポリフェニレンエーテルであっても良い。この両末端に官能基を有するポリフェニレンエーテルオリゴマーはその成形性、耐熱性や接着性等の特性を改善するために、その分子鎖の末端に反応性官能基を導入されたものである。この両末端に官能基を有するポリフェニレンエーテルオリゴマーは、2価のフェノールと1価のフェノールとを酸化共重合して得られる構造式(7)で表されるポリフェニレンエーテルオリゴマー体(以下、2官能OPEという。)を、クロロメチルスチレン、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、エピクロロヒドリン等の熱硬化性官能基含有化合物と反応させることにより得られる。
【化5】

【0066】
構造式(7)で表される2官能OPEは、-(O-X-O)-が下記構造式(8)で表され、-(Y-O)-が下記構造式(9)で表される1種類以上の構造がランダムに配列したものである。
【化6】

【0067】
式中、R9、R10、R15、R16、R17、R18は、同一又は異なってもよく、ハロゲン原子又は炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基である。R11、R12、R13、R14、R19、R20は、同一又は異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基である。Aは、炭素数20以下の直鎖状、分岐状あるいは環状の炭化水素基である。a、bは少なくともいずれか一方が0でない0〜20の整数を示す。好ましくは、R9、R10、R15、R16がメチル基であり、R11、R12、R13、R14が水素原子であり、-(Y-O)-が構造式(10)、構造式(11)又は構造式(10)と構造式(11)がランダムに配列した構造を有することが望ましい。
【0068】
【化7】

【0069】
上述の両末端に官能基を有するポリフェニレンエーテルオリゴマーは、下記構造式(14)
【化8】

で表される。すなわち、-(O-X-O)-は構造式(8)で表され、-(Y-O)-は構造式(9)で表される。
【0070】
Zは、炭素数1以上で酸素原子を含んでもよい有機基である。例示すると、-(-CH2-)-、-(-CH2-CH2-)-、-(-CH2-Ar-)-などであるが、これらに限定されることはない。Tはビニル基、エポキシ基、シアネート基、オキサゾンリン基、カルボキシル基、水酸基から選ばれる熱硬化性官能基である。これらの熱硬化性官能基の内、(E)成分の芳香族ビニル系樹脂や(A)成分の多官能ビニル芳香族共重合体との相溶性の観点から、ビニル基が最も好適に使用される。
【0071】
両末端に官能基を有するポリフェニレンエーテルオリゴマーの数平均分子量Mnは700〜4000の範囲である。Mnが4000を超えると樹脂組成物の溶融粘度が増大し、成形性が低下するばかりでなく、(A)成分などの他の樹脂成分との相溶性が低下し、フィル外観の悪化、物性の低下などをもたらす。一方、Mnが700未満であると機械的強度や耐熱性が低下する。両末端に官能基を有するポリフェニレンエーテルオリゴマーの内、(A)成分や(E)成分との相溶性に優れ、樹脂組成物の強度、耐熱性が良好であり、かつ硬化物の熱時強度がより優れることから両末端にビニル基を有するポリフェニレンエーテルオリゴマー(OPE-2Vn)が最も好適である。
【0072】
その他の(F)成分として使用され得る熱硬化性樹脂について説明する。
多官能性エポキシ化合物としては、分子内にエポキシ基を2個以上有する芳香族エポキシ樹脂であればよく、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、及びこれらの樹脂をハロゲン化したエポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルグリシジルエーテルエタン(4官能性エポキシ樹脂)、各種のノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。なお、本発明の効果を損なわない範囲内で分子内にエポキシ基を1個有する芳香族エポキシ樹脂を併用することもできる。
【0073】
多官能性芳香族エポキシ化合物を使用する場合、本発明の難燃性樹脂組成物に硬化剤を含有することができる。多官能性芳香族エポキシ化合物の硬化反応に用いる硬化剤としては特に限定されず、従来公知のエポキシ樹脂用の硬化剤を用いることができ、例えば、アミン化合物、アミン化合物から合成されるポリアミノアミド化合物等の化合物、3級アミン化合物、イミダゾール化合物、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物、熱潜在性カチオン重合触媒、光潜在性カチオン重合開始剤、ジシアンアミド及びその誘導体等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0074】
多官能性芳香族オキセタン化合物としては、分子内にオキセタン基を2個以上有するオキセタン樹脂であればよく、例えば、1,4-ビス[{(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ}メチル]ベンゼン(XDO)、9,9-ビス[2-メチル-4-{2-(3-オキセタニル)}ブトキシフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-[2-{2-(3-オキセタニル)}ブトキシ]エトキシフェニル]フルオレンなどの2官能オキセタン化合物や、オキセタン化ノボラック樹脂などの多官能芳香族オキセタン化合物が挙げられる。これらの化合物は、市場で容易に入手することができる。また、これらは2種類以上を併用してもよい。なお、本発明の効果を損なわない範囲内で分子内にオキセタン基を1個有する芳香族オキセタン樹脂を併用することもできる。
【0075】
多官能性芳香族オキセタン化合物を使用する場合、硬化剤を配合することができる。硬化剤としては、分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物及び分子中に1個以上の酸無水物基を有する化合物からなる群より少なくとも1つ選ばれる。
【0076】
多官能性芳香族オキセタン化合物が、優れた速硬化性を発揮するには、硬化触媒を用いることが必須である。硬化触媒は、多官能性芳香族オキセタン化合物と硬化剤との反応を促進する化合物であり、ルイス酸又は一般式(15)で示される有機ホウ素化合物から選ばれる。ここでルイス酸とは、G.N.Lewisにより定義されるところの化合物であり、この定義に含まれるすべての酸が含まれる。
【化9】

(式中、R21〜R23は、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、カルボキシル基、ハロゲン及び水素から選ばれる1価の基であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0077】
(F)成分として使用されるジアリルフタレートとしては、オルト、メタ、パラのいずれの異性体も用いることができる。
【0078】
(F)成分として使用される多官能性(メタ)アクリロイル化合物としては、次式で表される化合物がある。
【化10】

(式中、mは2〜10の整数であり、R24は水素又はメチル基を示し、R25は芳香族多価ヒドロキシ基化合物の残基を示す)
【0079】
上式において、芳香族多価ヒドロキシ化合物の残基R25としては、キシレングリコール、ビスフェノールAで代表される複数個のベンゼン環が橋絡部を介して連結された芳香族性ポリオール及びこれらの芳香族ポリオールのアルキレンオキサイド付加物などで例示される芳香族ポリオール残基;フェノールとホルムアルデヒドとを反応させて得られるベンゼン多核体(通常、10核体以下のものが好適に用いられる)の残基;エポキシ基を2個以上有する芳香族エポキシ樹脂から導かれる残基;末端に水酸基を2個以上有する芳香族ポリエステル樹脂から導かれる残基がある。
【0080】
多官能性芳香族マレイミドとしては、次の式で表されるものがある。
【化11】

(式中、nは2〜10の整数であり、R27、R28は水素、ハロゲン又は低級アルキル基を表し、R29は2〜10価の芳香族有機基を示す)
【0081】
この多官能性芳香族マレイミドは、無水マレイン酸類と分子内にアミノ基を2〜10個有する芳香族ポリアミンとを反応させてマレアミド酸とし、次いでこのマレアミド酸を脱水環化させることにより製造される。
好適なポリアミンとしては、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、4,4−ジアミノビフェニル、ビス(4−アミノフェニル)メタン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、ビス(4−アミノフェニル)スルホン等とホルムアルデヒドを反応させて得られるポリアミン(通常、ベンゼン核が10核体以下のものが好適に用いられる)などが挙げられる。
【0082】
多官能性芳香族シアネートとしては、次式で表されるものがある。
【化12】

(式中、pは2〜10の整数であり、R30は2〜10価の芳香族有機基を表し、シアネート基は有機基R30の芳香環に直接結合している)
【0083】
このような多官能芳香族シアネートの例としては、1,3-ジシアネートベンゼン、1,4-ジシアネートベンゼン、1,3,5-トリシアネートベンゼン、2,6-ジシアネートナフタレン、2,7-ジシアネートナフタレン、1,3,6-トリシアネートナフタレン、4,4-ジシアネートビフェニル、ビス(4-シアネートフェニル)メタン、2,2-ビス(4-シアネートフェニル)プロパン、トリス(4-シアネートフェニル)ホスフェート、及びフェノール樹脂とハロゲン化シアンとの反応により得られるベンゼン多核体の芳香族ポリシアネート化合物等が挙げられる。
【0084】
多官能性芳香族イソシアネートとしては、次式で表されるものがある。
【化13】

(式中、qは2〜10の整数であり、R31は2〜10価の芳香族有機基を示す)
【0085】
かかる多官能性芳香族イソシアネートの例としては、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0086】
これらの多官能性芳香族イソシアネートは、種々のブロック剤を用いて多官能性芳香族ブロックイソシアネートに変換して用いることもできる。ブロック剤の例としては、アルコール類、フェノール類、オキシム類、ラクタム、マロン酸エステル、アセト酢酸エステル、アセチルアセトン、アミド類、イミダゾール類、亜硫酸塩等公知のものが使用できる。
【0087】
不飽和芳香族ポリエステルとしては、グリコール類を芳香族不飽和多塩基酸及び芳香族飽和多塩基酸、あるいはこれらの無水物、エステル、酸クロライドと反応させることによって得られるものがあり、一般のものが用いられる。
不飽和ポリエステルの詳細については、例えば滝山榮一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社、1988)が参照される。
【0088】
本発明の難燃性硬化性樹脂組成物に(F)成分を配合する場合、(F)成分としては、以上述べたような化合物群のうちから1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、これらの化合物を、後述する公知の触媒、開始剤、硬化剤等の存在下又は不存在下で熱、光等により予備反応せしめて得られるプレポリマーも本発明の(F)成分の1種として用いることができる。
【0089】
これらの(F)成分の中で、(A)成分及び(E)成分との相溶性という観点、及び、機械的性質及び成形加工性の改質という観点から、両末端に官能基を有するポリフェニレンエーテルオリゴマーが好ましく使用される。また、本発明の硬化性樹脂組成物と金属等の異種材料との接着性の改良効果という観点からは、多官能性エポキシ化合物が好ましい。
【0090】
次に、本発明の(G)成分として使用される熱可塑性ポリフェニレンエーテル系樹脂及び芳香族ビニル系熱可塑性樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下、他の熱可塑性樹脂ともいう。)について説明する。
(G)成分として使用される他の熱可塑性樹脂の具体例としては、エチレン・プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−ペンテン)等のポリオレフィン類及びその誘導体、ナイロン6、ナイロン6・6などのポリアミド類及びその誘導体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート類、アクリル酸(又はメタクリル酸)エステル共重合体類、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のゴム類、ポリホスファーゼン類、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー等が挙げられる。
【0091】
本発明の(G)成分として使用される熱可塑性ポリフェニレンエーテル系樹脂及び芳香族ビニル系熱可塑性樹脂以外の熱可塑性樹脂は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分及び(G)成分の合計に対する(G)成分の配合量(重量比)は1〜50wt%であることがよく、好ましくは5〜45wt%である。(G)成分配合量が1wt%未満では機械的特性が低下し、60wt%を越えると(A)成分、(D)成分、(E)成分及び(F)成分との相溶性が低下するので好ましくない。
【0092】
本発明の難燃硬化性樹脂組成物は、前記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分よりなるがその配合比は広範囲に変化させることができるが、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計に対する(A)成分、(B)成分及び(C)成分の配合量(wt%)が下記式を満足する必要がある。
(A)成分配合量=4〜99.8(wt%)
(B)成分配合量=0.1〜95.9(wt%)
(C)成分配合量=0.1〜95.9(wt%)
好ましくは(A)成分配合量が6〜99wt%であり、より好ましくは10〜90wt%である。また、(B)成分配合量については、好ましくは0.5〜90wt%、より好ましくは2〜70(wt%)である。更に、(C)成分配合量については、好ましくは0.5〜90wt%、より好ましくは1〜85(wt%)である。
【0093】
(A)成分である可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の添加量が4wt%未満であると(A)成分及び(C)成分との機械的強度が低下し、99.8wt%を越えると難燃性の低下を招く。(B)成分であるリン−窒素系難燃剤の添加量が0.1wt%未満であると(A)成分及び(C)成分との平坦性における相乗効果が低下し、95.9wt%を越えると、機械的強度の低下を招く。(C)成分配合量が0.1wt%未満では無機フィラーの効果である機械的特性に対する改質効果が低下し、95.9wt%を越えると平坦性が低下する。
【0094】
本発明の難燃性樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の他、他の成分を含有することができる。他の成分として、好ましいものに(D)成分、(E)成分及び(F)成分がある。これらの配合量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計量と、任意成分(D)成分、(E)成分及び(F)成分の内配合される成分の合計量の和(以下、基準量という)から定めることが望ましい。
【0095】
本発明の難燃性樹脂組成物において(A)成分である可溶性多官能ビニル芳香族共重合体は加熱等の手段により架橋反応を起こして硬化するが、その際の反応温度を低くしたり不飽和基の架橋反応を促進する目的でラジカル開始剤を含有させて使用してもよい。この目的で用いられるラジカル開始剤の量はビニル基を含有する(A)成分である可溶性多官能ビニル芳香族共重合体及び(F)成分の内、ビニル基を含有する熱硬化性樹脂の和を基準として、0.01〜15wt%、好ましくは0.05〜10wt%である。特に好ましくは0.1〜8wt%である。ラジカル開始剤の量が0.01wt%未満であると、硬化に長時間を要する上に、硬化物のガラス転移温度が低下し、15wt%を超えて使用すると硬化物の機械的特性が低下する。
【0096】
ラジカル開始剤の代表的な例を挙げると、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物があるがこれらに限定されない。また、過酸化物ではないが、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタンもラジカル開始剤として使用できる。しかし、本発明の難燃性樹脂組成物の硬化に用いられる開始剤はこれらの例に限定されない。
【0097】
この他、本発明の難燃性樹脂組成物に(F)成分として用いられる多官能性芳香族マレイミドの適した硬化剤としてはポリアミンが、多官能性芳香族シアネートに適した触媒としては鉱酸、ルイス酸、炭酸ナトリウムあるいは塩化リチウム等の塩類、トリブチルホスフィン等のリン酸エステル類等が、また多官能性芳香族イソシアネートに適した触媒、硬化剤としては、例えば岩田敬治編、「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社、1987)118〜123頁中に教示されているようなアミン類、有機金属、多価アルコール等がそれぞれ挙げられる。
上記の触媒、開始剤、硬化剤等は、架橋成分の種類に応じて適宜選択して用いられる。
【0098】
なお、本発明の難燃硬化性樹脂組成物は難燃性の一層の向上を図る目的で、(H)成分として(B)成分の難燃剤以外の難燃剤(以下、他の難燃剤ともいう)を、本発明の効果を損なわない範囲の量を配合して使用することができる。他の難燃剤としては、窒素系難燃剤、リン系難燃剤及び無機系難燃剤からなる群から選ばれる1種以上の難燃剤がある。
【0099】
(H)成分として使用される窒素系難燃剤としては、配合される樹脂が高温下に晒された時、吸熱分解して樹脂から熱を奪い且つ不活性な雰囲気を形成して難燃効果を示す難燃剤である。なかでも、示差熱分析における分解時の吸熱が1mgあたり50mJ以上、とくには150mJ以上であるものが好ましい。このような窒素系難燃剤としては、公知のものを制限なく使用できるが、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、トリアジン、メラミン、ベンゾグアナミン、メチルグアナミン、シアヌル酸等の含窒素複素環化合物、シアン化合物、脂肪族アミド、芳香族アミド、尿素、チオ尿素等を例示することができる。
【0100】
(H)成分として使用される窒素系難燃剤として上記した各化合物の塩も使用することができる。塩としては、硫酸塩、硝酸塩、硼酸塩、イソシアヌル酸塩等を挙げることができる。上記の窒素系難燃剤のなかでも、脂肪族アミン化合物、トリアジン化合物及びこれらの塩は優れた難燃化効果を発揮するので、本発明においてはこれらの化合物を特に好適に使用することができる。
【0101】
(H)成分として使用されるリン系難燃剤は、配合された樹脂が高温下に晒された時にポリリン酸化合物を生成して耐熱皮膜を形成し、また、固体酸による炭化促進機構で難燃効果を示すと考えられている。こうしたリン系難燃剤としては、公知のものを制限なく使用できるが、具体例としては、リン酸カルシウム、リン酸チタニウム等のようなリン酸塩;トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のようなリン酸エステル;ポリリン酸;ポリリン酸カルシウムのようなポリリン酸塩;ポリ(ジフェニルリン酸)のようなポリリン酸エステル;トリフェニルホスフィンオキサイドのようなホスフィンオキサイド;フェニルホスフォランのようなホスフォラン;ジフェニルホスホン酸のようなホスホン酸;ホスフィンスルフィドなどを挙げることができる。このうち、リン酸塩及びポリリン酸塩が難燃化効果が大きいために好適に使用できる。
【0102】
更に、(H)成分として好適に使用できる無機系難燃剤としては、金属水酸化物及び金属酸化物からなる群から選ばれる1種以上の無機系難燃剤を挙げることができる。
【0103】
好適に使用できる金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、ハイドロタルサイト類、カルシウム・アルミネート水和物、下記式で示される複合水酸化マグネシウム等が挙げられる。
Mg1−xMx(OH)2
(ここで、MはMn、Fe、Co、Ni、Cu、Znから選ばれる1種以上であり、Xは0より大きく0.1以下の値である)
好適に使用できる金属水酸化物としては、樹脂組成物の機械的強度、金属水酸化物の分散性の観点から、レーザー回折散乱法で測定した平均2次粒子径で0.2〜6μmのものが好ましい。
【0104】
好適に使用できる金属酸化物としては、酸化銅(I)、酸化銅(II)、酸化マグネシウム、酸化タングステン(IV)、酸化タングステン(VI)、酸化チタン(II)、酸化チタン(III)、酸化チタン(IV)、酸化亜鉛、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、酸化バリウム、酸化マンガン(II)、酸化マンガン(III)、酸化マンガン(IV)、酸化マンガン(VII)、酸化モリブデン(IV)、酸化モリブデン(VI)等の金属酸化物を挙げることができる。なお、本発明の(H)成分として酸化アンチモン化合物及びハロゲン系化合物は有害性の観点から使用されない。しかし、不純物量の存在を妨げない。
【0105】
上記の(H)成分の窒素系難燃剤、リン系難燃剤及び無機系難燃剤の配合量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の和を基準として0.1〜40wt%、好ましくは0.1〜30wt%である。特に好ましくは0.2〜20wt%である。配合量が0.1wt%より少ない場合には、十分な難燃効果が得られず、また40wt%よりも多い場合には、成形性及び機械的特性が低下するので好ましくない。また、(H)成分と(B)成分の和を基準とした場合の、(H)成分の配合量は50wt%未満である。好ましくは30wt%未満である。(H)成分の配合量が50wt%を越えると、成形品の外観が悪化するので好ましくない。
【0106】
なお、本発明の難燃硬化性樹脂組成物は(I)成分として難燃助剤を含有することが好ましい。難燃助剤が配合されることにより、酸素指数の向上や最大発熱速度の大幅な低下をもたらすことができる。上記難燃助剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物、フッ素樹脂、シリコーンオイル、シリコーン−アクリル複合ゴムからなる群より選択される少なくとも1種類の難燃助剤が好適に用いられる。これらの難燃助剤を用いることにより(A)成分である樹脂の分解を防ぎ、最大発熱速度を抑制することができる。
【0107】
上記(I)成分である難燃助剤の配合量は、本発明の(A)成分、(B)成分及び(C)成分の和を基準として0.1〜25wt%、好ましくは0.1〜20wt%である。特に好ましくは0.2〜15wt%である。配合量が0.1wt%より少ない場合には、十分な難燃効果が得られず、また25wt%よりも多い場合には、成形性及び屈曲性や破断伸びが低下するので好ましくない。
【0108】
本発明の難燃硬化性樹脂組成物は、その用途に応じて所望の性能を付与させる目的で本来の性質を損なわない範囲の量の添加剤を配合して用いることができる。添加剤としては、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、可塑剤、顔料、染料、着色剤等が挙げられる。
【0109】
本発明の難燃硬化性樹脂組成物は、(A)、(B)、(C)成分を必須の成分として含有し、(D)〜(G)成分又は(H)〜(I)成分を任意成分として含有するが、更に必要により上記のようなその他の成分を配合することができる。大別すると(A)、(D)、(E)、(F)及び(G)成分からなる樹脂成分と、(B)、(C)、(H)及び(I)成分からなる非樹脂成分とを含有する。好ましい配合割合は次のようである。樹脂成分は全体の2〜99.9wt%、好ましくは10〜90wt%である。樹脂成分中の(A)成分は3〜100wt%、好ましくは10〜100wt%である。樹脂成分中の(D)成分は、0〜97wt%、好ましくは5〜95wt%である。樹脂成分中の(E)成分は、0〜70wt%、好ましくは5〜40wt%である。
【0110】
本発明の難燃硬化性樹脂組成物中の各成分の存在割合は、次の範囲であることが望ましい。
(A)成分:4〜99.8wt%、好ましくは10〜96wt%
(B)成分:0.1〜95.9wt%、好ましくは3〜70wt%
(C)成分:0.1〜95.9wt%、好ましくは3〜90wt%
(D)成分:0〜80wt%、好ましくは5〜60wt%
(E)成分:0〜80wt%、好ましくは5〜70wt%
(F)成分:0〜90wt%、好ましくは5〜60wt%
(G)成分:0〜50wt%、好ましくは0.1〜30wt%
(H)成分:0〜40wt%、好ましくは0.1〜30wt%
(I)成分:0〜25wt%、好ましくは0.1〜20wt%
【0111】
本発明の難燃硬化性樹脂組成物を製造する方法としては特に限定されず、例えば、(A)成分の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体、(B)成分のリン−窒素系難燃剤、(C)成分の無機フィラー、及び、所望によりその他の成分を各所定配合量を直接配合して混合する方法や、(A)成分に所定配合量以上の(C)成分を配合、混合してマスターバッチを調製した後、調製されたマスターバッチに、所定の配合量となるように(A)成分、(B)成分とを加えて希釈する所謂マスターバッチ法等が挙げられる。
【0112】
本発明の難燃硬化性樹脂組成物を製造する際の混合方法としては特に限定されず、種々の方法を用いることができる。例えば、各成分を溶媒中に均一に溶解又は分散させる溶液混合法、あるいはヘンシェルミキサー等による撹拌・混合するブレンド法等が利用できる。溶液混合に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、テトラヒドロフラン(THF)などの1種以上が用いられる。
【0113】
本発明の硬化性樹脂組成物は、あらかじめその用途に応じて所望の形に成形してもよい。その成形方法は特に限定されない。通常は、難燃硬化性樹脂組成物を上述した溶媒に溶解させて所定の形に成形するキャスト法又は難燃硬化性樹脂組成物を加熱溶融して所定の形に成形する加熱溶融法が用いられる。
【0114】
本発明の難燃硬化性脂組成物は、これを硬化することにより硬化物が得られる。硬化の方法は任意であり、熱、光、電子線等による方法を採用することができる。加熱により硬化を行う場合その温度は、ラジカル開始剤の種類によっても異なるが、80〜300℃、より好ましくは120〜250℃の範囲で選ばれる。また、時間は1分〜10時間程度、より好ましくは1分〜5時間である。
【0115】
また、この難燃硬化性樹脂組成物は、後述する硬化複合材料と同様、金属箔(金属板を含む意味である。以下、同じ。)と張り合わせて用いることができる。
【0116】
次に、本発明の難燃硬化性樹脂組成物から得られる難燃硬化性フィルム、難燃硬化性複合材料、難燃性硬化複合材料、難燃性樹脂硬化物、難燃硬化性積層体及び難燃硬化性樹脂付き金属箔について説明する。
【0117】
本発明の難燃硬化性樹脂組成物のフィルムは、単一の層からなるものであってもよいし、複数の層からなるものであってもよい。複数の層からなるフィルムとしては、例えば、中間層と中間層を挟む表面層とからなる多層構造を有するもの等が好ましい。
【0118】
難燃硬化性樹脂組成物のフィルムの厚さの好ましい下限は1μm、好ましい上限は300μmである。1μm未満であると強度が不足しがちであり、300μmを超えると熱プレス成形時の熱伝導率が悪くなることがある。また、熱プレス成形時の回路パターンへの影響は、フィルムの寸法変化率に加えてフィルムの収縮力の影響も大きい。更に、収縮力はフィルムの断面積との相関が大きいことから、収縮力を低減させ、熱プレス成形時の回路パターンへの影響を少なくするためには、難燃硬化性フィルムの厚さは200μm以下であることがより好ましい。より好ましい下限は5μm、好ましい上限は100μmである。なお、難燃硬化性樹脂組成物のフィルムが、中間層と中間層を挟む表面層とからなる多層構造を有する場合にあっては、全体の厚みを1としたときの中間層の占める割合が0.5以下であることが好ましい。
【0119】
本発明の難燃硬化性樹脂組成物のフィルムの表面は、平滑性を有し、表面粗度計を使用して得られた凹凸の大きさが2μm以下、好ましくは1μm以下、更に好ましくは0.7μm以下であることがよい。本発明のフィルムの表面には、ハンドリングに必要なスリップ性、アンチブロッキング性等が付与されていてもよい。
【0120】
本発明の難燃硬化性樹脂組成物のフィルムを製造する方法としては特に限定されることはなく、例えば溶液キャスト法等を挙げることができる。溶液キャスト法としては、難燃硬化性樹脂組成物と必要に応じて他の成分を芳香族系、ケトン系等の溶媒若しくはその混合溶媒中に均一に溶解又は分散させ、PETフィルムなどの樹脂フィルムに塗布した後、乾燥する方法などが挙げられる。塗布は必要に応じて複数回繰り返すことも可能であり、この際組成や濃度の異なる複数の溶液を用いて塗布を繰り返し、最終的に希望とする樹脂組成及び樹脂量に調整することも可能である。
【0121】
本発明の難燃硬化性樹脂組成物のフィルムを少なくとも片面に積層した積層フィルムは、熱プレス成形の際に圧力を均一にかけるためのクッション性や強度を有しており、例えば、プリント基板における回路パターンへの均一な充填性と密着性に優れる。一方、任意の樹脂フィルムの少なくとも片面に、本発明の難燃硬化性樹脂組成物のフィルムが積層されたフィルムも本発明の1つである。
【0122】
本発明の難燃硬化性複合材料は、機械的強度を高め、寸法安定性を増大させるために、難燃硬化性樹脂組成物に基材を加えることにより得られる。なお、基材は(C)成分と区別しがたい物を含むが、強化を主目的とする繊維、紙、布類を基材という。
【0123】
このような基材としては、ロービングクロス、クロス、チョップドマット、サーフェシングマットなどの各種ガラス布、アスベスト布、金属繊維布及びその他合成若しくは天然の無機繊維布、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリベンゾザール繊維等の液晶繊維から得られる織布又は不織布、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維などの合成繊維から得られる織布又は不織布、綿布、麻布、フェルトなどの天然繊維布、カーボン繊維布、クラフト紙、コットン紙、紙−ガラス混繊紙などの天然セルロース系布などの布類、紙類等がそれぞれ単独で、あるいは2種以上併せて用いられる。
【0124】
基材の占める割合は、難燃硬化性複合材料中に5〜90wt%、好ましくは10〜80wt%、更に好ましくは20〜70wt%であることがよい。基材が5wt%より少なくなると複合材料の硬化後の寸法安定性や強度が不十分であり、また基材が90wt%より多くなると複合材料の誘電特性が劣り好ましくない。
【0125】
本発明の難燃硬化性複合材料には、必要に応じて樹脂と基材の界面における接着性を改善する目的でカップリング剤を用いることができる。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネートカップリング剤等一般のものが使用できる。
【0126】
難燃硬化性複合材料を製造する方法としては、例えば、本発明の難燃硬化性樹脂組成物と必要に応じて他の成分を前述の芳香族系、ケトン系等の溶媒若しくはその混合溶媒中に均一に溶解又は分散させ、基材に含浸させた後、乾燥する方法が挙げられる。含浸は浸漬(ディッピング)、塗布等によって行われる。含浸は必要に応じて複数回繰り返すことも可能であり、またこの際、組成や濃度の異なる複数の溶液を用いて含浸を繰り返し、最終的に希望とする樹脂組成及び樹脂量に調整することも可能である。
【0127】
本発明の難燃硬化性複合材料において、熱硬化性樹脂を含有する場合には、加熱等の方法により硬化することによってその硬化物が得られる。その製造方法は特に限定されるものではなく、例えば難燃硬化性複合材料を複数枚重ね合わせ、加熱加圧下に各層間を接着せしめると同時に熱硬化を行い、所望の厚みの複合材料の硬化物を得ることができる。また、一度接着硬化させた複合材料の硬化物と難燃硬化性複合材料を組み合わせて新たな層構成の硬化物を得ることも可能である。積層成形と硬化は、通常熱プレス等を用い同時に行われるが、両者をそれぞれ単独で行ってもよい。すなわち、あらかじめ積層成形して得た未硬化あるいは半硬化の難燃硬化性複合材料を、熱処理又は別の方法で処理することによって硬化させることができる。
【0128】
成形及び硬化は、80〜300℃、0.1〜1000kg/cm2、1分〜10時間の範囲、好ましくは、温度150〜250℃、圧力1〜500kg/cm2、時間1分〜5時間の範囲で行うことがよい。
【0129】
本発明の難燃性積層体とは、本発明の難燃硬化性複合材料の層と金属箔の層より構成されるものである。ここで用いられる金属箔としては、例えば銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。その厚みは特に限定されないが、3〜200μm、より好ましくは3〜105μmの範囲である。
【0130】
本発明の難燃性積層体を製造する方法としては、例えば上記で説明した本発明の難燃硬化性樹脂組成物と基材から得た難燃硬化性複合材料と、金属箔を目的に応じた層構成で積層し、加熱加圧下に各層間を接着せしめると同時に熱硬化させる方法を挙げることができる。本発明の難燃硬化性樹脂組成物の積層体においては、難燃硬化性複合材料と金属箔が任意の層構成で積層される。金属箔は表層としても中間層としても用いることができる。上記の他、積層と硬化を複数回繰り返して多層化することも可能である。
【0131】
金属箔との接着には接着剤を用いることもできる。接着剤としては、エポキシ系、アクリル系、フェノール系、シアノアクリレート系等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。上記の積層成形と硬化は、上記硬化物の製造と同様の条件で行うことができる。
【0132】
本発明の難燃硬化性樹脂組成物付き金属箔は、本発明の難燃硬化性樹脂組成物と金属箔より構成されるものである。ここで用いられる金属箔としては、例えば銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。その厚みは特に限定されないが、3〜200μm、より好ましくは5〜105μmの範囲である。
【発明の効果】
【0133】
本発明の難燃硬化性樹脂組成物は、薄物の成形物あるいは硬化物においても、高度の平坦性、流れ性、難燃性、良好な外観、成形加工性、硬化特性、誘電特性、耐熱性、耐熱加水分解性を示し、電気産業、宇宙・航空機産業等の分野において誘電材料、絶縁材料、耐熱材料、構造材料、包装材料、接着材料、筐体材料、バリヤ材料等に用いることができる。特に、片面、両面、多層プリント基板、フレキシブルプリント基板、ビルドアップ基板等として用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0134】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらにより制限されるものではない。なお、各例中の部はいずれも重量部である。また、実施例中の測定結果は以下に示す方法により試料調製及び測定を行ったものである。
【0135】
1)ポリマーの分子量及び分子量分布
可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の分子量及び分子量分布測定はGPC(東ソー製、HLC−8120GPC)を使用し、溶媒:THF、流量:1.0ml/min、カラム温度:40℃で行った。共重合体の分子量は単分散ポリスチレンによる検量線を用い、ポリスチレン換算分子量として測定を行った。
2)ポリマーの構造
日本電子製JNM-LA600型核磁気共鳴分光装置を用い、13C−NMR及び1H−NMR分析により決定した。溶媒としてクロロホルム-d1を使用した。1H−NMRではテトタメチルシラン、13C−NMRではNMR測定溶媒であるクロロホルム-d1の共鳴線を内部標準として使用した。
【0136】
3)ガラス転移温度(Tg)及び軟化温度測定の試料調製及び測定
加熱プレス成形により得られた硬化物フィルムのTgの測定は、サンプルフィルムをTMA(熱機械分析装置)測定装置にセットし、窒素気流下、昇温速度10℃/分で30℃から360℃までスキャンさせることにより測定を行い、線膨張係数の変化する変曲点よりTgを求めた。
【0137】
4)引張り強度及び伸び率
引張り強度及び伸び率は引張り試験装置を用いて測定を行った。伸び率は引張り試験のチャートから測定した。
5)銅箔引き剥し強さ
積層体から幅20mm、長さ100mmの試験片を切り出し、銅箔面に幅10mmの平行な切り込みを入れた後、面に対して180°の方向に50mm/分の速さで連続的に銅箔を引き剥し、その時の応力を引張り試験機にて測定し、その応力の最低値を示した(JIS C 6481に準拠)。
6)誘電率及び誘電正接
誘電率と誘電正接は、空洞共振法(アジレントテクノロジー製,8722ES型ネットワークアナライザー、関東電子応用開発製空洞共振器)によって、2GHzの値を観測した。
【0138】
7)成形性
黒化処理を行った銅張り積層板の上に、硬化性樹脂組成物の未硬化フィルムを積層し、真空ラミネーターを用いて、温度:110℃、プレス圧:0.1MPaで真空ラミネートを行い、黒化処理銅箔とフィルムの接着状態により評価を行った。評価は黒化処理銅箔とフィルムの接着状態が良好であったものを「○」、黒化処理銅箔とフィルムとが容易に剥離することができる接着状態のものを「×」として評価した。
8)燃焼性
燃焼性はアメリカUL規格サブジェクト94(UL94)の垂直燃焼試験法に準拠して燃焼試験を行い、難燃性を評価した。燃焼性試験に使用した試験片はハロゲン系難燃剤を使用することなく難燃化されたFR−4基板の上に本発明の難燃硬化性樹脂組成物フィルムを両面に200μmの厚さで貼り合わせ、真空プレス成形機により180℃、1時間加熱硬化させた後、所定の寸法に切断することによって作成した。
【0139】
9)平坦性
表面の凹凸を表面粗度計((株)小坂研究所製全自動微細形状測定機Surfcorder ET4000(商品名))により計測した。
【実施例】
【0140】
合成例1
ジビニルベンゼン1.90モル(271ml)、エチルビニルベンゼン0.10モル(14.0ml)、スチレン2.00モル(229ml)、塩化ベンジル2.70モル(311ml)、テトラヒドロフラン0.135モル(32.8ml)及びトルエン925mlを3000mlのフラスコ内に投入し、30℃で90mmolのSnCl4のトルエン溶液(2.14mmol/ml)42.1mlを添加し、3時間反応させた。重合反応を少量のメタノールで停止させた後、室温で反応混合液を大量のメタノールに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールで洗浄し、濾別、乾燥して、共重合体A:262.2g(収率:56.5wt%)を得た。
【0141】
得られた共重合体AのMwは7280、Mnは2970、Mw/Mnは2.5であった。13C−NMR及び1H−NMR分析により、共重合体Aはジビニルベンゼンとエチルイニルベンゼン由来の構造単位を47モル%、スチレン由来の構造単位を53モル%含有していた。インダン構造は全ての単量体の構造単位に対して2.3モル%存在していた。更に、前記式(a1)及び(a2)で表される構造単位の総量に占める式(a1)で表される構造単位のモル分率は0.99であった。また、TMA測定の結果、硬化物のTgは278℃であった。TGA測定の結果、熱分解温度は411℃、炭化歩留りは15%であった。共重合体Aはトルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。また、共重合体Aのキャストフィルムは曇りのない透明なフィルムであった。
【0142】
合成例2
ジビニルベンゼン0.80モル(114ml)、エチルビニルベンゼン0.04モル(6.0ml)、スチレン1.56モル(179ml)、塩化ベンジル0.90モル(104ml)、テトラヒドロフラン0.060モル(14.6ml)及びトルエン1077mlを3000mlのフラスコ内に投入し、30℃で60mmolのSnCl4のトルエン溶液(0.56mmol/ml)108mlを添加し、5時間反応させた。重合反応を少量のメタノールで停止させた後、室温で反応混合液を大量のメタノールに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールで洗浄し、濾別、乾燥して、共重合体B:92.5g(収率:32.9wt%)を得た。
【0143】
得られた共重合体BのMwは5400、Mnは2480、Mw/Mnは2.2であった。共重合体Bはジビニルベンゼンとエチルイニルベンゼン由来の構造単位を38モル%、スチレン由来の構造単位を62モル%含有していた。また、インダン構造は全ての単量体の構造単位に対して0.8モル%存在していた。更に、前記式(a1)で表される構造単位のモル分率は0.99であった。また、硬化物のTgは274℃であり、熱分解温度は405℃、炭化歩留りは13%であった。共重合体Bはトルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。また、共重合体Bのキャストフィルムは曇りのない透明なフィルムであった。
【0144】
合成例3
ジビニルベンゼン1.07モル(152ml)、エチルビニルベンゼン0.06モル(8.0ml)、スチレン1.13モル(128.9ml)、1−クロロエタン0.30モル(31.3ml)、酢酸エチル1.13モル(109.9ml)、及びトルエン750mlを3000mlのフラスコ内に投入し、30℃でTiCl4を0.75モル(82.4ml)を添加し、1時間反応させた。重合反応を少量のメタノールで停止させた後、室温で反応混合液を大量のメタノールに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールで洗浄し、濾別、乾燥して、共重合体C:200.1g(収率:76.3wt%)を得た。
【0145】
得られた共重合体CのMwは5300、Mnは2220、Mw/Mnは2.4であった。共重合体Cはジビニルベンゼンとエチルビニルベンゼン由来の構造単位を52モル%、スチレン由来の構造単位を48モル%含有していた。また、インダン構造は全ての単量体の構造単位に対して0.1モル%存在していた。更に、前記式(a1)で表される構造単位のモル分率は0.99であった。また、硬化物のTgは284℃であり、熱分解温度は354℃、炭化歩留りは11%であった。共重合体Cはトルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。また、共重合体Cのキャストフィルムは曇りのない透明なフィルムであった。
【0146】
以下の実施例で使用した成分の略号を次に示す。
【0147】
PPE:極限粘度が0.45のポリフェニレンエーテル(三菱瓦斯化学社製)
OPE-2St-1:両末端にビニル基を有するポリフェニレンオリゴマー(Mn=1160、三菱瓦斯化学社製、2,2',3,3',5,5'-ヘキサメチルビフェニル-4,4'-ジオール・2,6-ジメチルフェノール重縮合物とクロロメチルスチレンとの反応生成物)
OPE-2St-2:両末端にビニル基を有するポリフェニレンオリゴマー(Mn=2270、三菱瓦斯化学社製、2,2',3,3',5,5'-ヘキサメチルビフェニル-4,4'-ジオール・2,6-ジメチルフェノール重縮合物とクロロメチルスチレンとの反応生成物)
反応開始剤P-1:2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂社製、商品名:パーヘキサ25B)
反応開始剤P-2:α,α’ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(日本油脂社製、商品名:パーブチルP)
硬化触媒C-1:2-エチル-4-メチルイミダゾール(四国化成社製、キュアゾール2E4MZ)
硬化触媒C-2:1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール(四国化成社製、キュアゾール2MZ-CN)
熱可塑性樹脂T-1:水添スチレンブタジエンブロック共重合体(旭化成工業社製、商品名:タフテックH1053)
熱可塑性樹脂T-2:水添スチレンブタジエンブロック共重合体(クレイトンポリマージャパン社製、商品名:KRATON GRP6935)
熱可塑性樹脂T-3:水添スチレンブタジエンブロック共重合体(旭化成工業社製、商品名:タフテックH1041)
熱可塑性樹脂T-4:水添スチレンイソプレンブロック共重合体(旭化成工業社製、商品名:タフテックM1913)
熱可塑性樹脂T-5:スチレンブタジエンブロック共重合体(旭化成工業社製、商品名:タフプレン315P)
【0148】
熱硬化性樹脂E-1:o-クレゾールノボラックエポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名:EOCN-1020)
熱硬化性樹脂E-2:液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、エピコート828)
熱硬化性樹脂E-3:トリアリルシアヌレート(デグサジャパン社製、商品名:TAC)
熱硬化性樹脂E-4:トリアリルイソシアヌレート(デグサジャパン社製、商品名:TAIC)
【0149】
難燃剤PN-1:ヘキサフェノキシシクロトリフォスファゼン(大塚化学社製)
球状シリカS-1:平均粒径:0.5μm(アドマテックス社製、商品名:アドマファインSO-C2)
球状シリカS-2:平均粒径:0.3μm(アドマテックス社製、商品名:アドマファインSO-C1)
タルク-1:平均粒径:1.0μm(日本タルク社製、SG-2000)
炭酸カルシウム-1:平均粒子径50μmの炭酸カルシウム
シランカップリング剤-1:ビス−(3-[トリエトキシシリル]プロピル)ポリスルフィド
シランカップリング剤-2:ビニルトリメトキシシラン
シランカップリング剤-3: γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0150】
実施例1
合成例1で得られた共重合体A:100.0重量部、リン−窒素系難燃剤PN-1:10.0重量部、及び球状シリカS-1:150.0重量部、熱硬化性樹脂E-2:5.0重量部、シランカップリング剤-1:1.0重量部と溶剤としてキシレン:100.0重量部とを配合して、攪拌後、反応開始剤P-2:1.0重量部及び硬化触媒C-1:0.1重量部を加えて、難燃性樹脂組成物溶液を調製した。
ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)シートを張りつけた台に、難燃性樹脂組成物溶液をキャストし、フィルムを得た。得られたフィルムは窒素ガスを流したイナートオーブンで、80℃で10分間乾燥させた。得られたフィルムは約50μmの厚みであり、べたつき等がなく成膜性に優れていた。得られたフィルムの表面粗さを測定したところ、Ra=0.46μmであった。また、真空ラミネーターを用いて、温度:110℃、プレス圧:0.1MPaで真空ラミネートを行い、黒化処理銅箔とフィルムの接着状態により成形性の評価を行ったところ、黒化処理銅箔とフィルムの接着状態は良好であった。このフィルムを真空プレス成形機にて180℃、1時間熱硬化させ、約50μmの硬化物フィルムを得た。
この硬化物フィルムの特性は、引張り強度:46.3(MPa)、伸び率:3.5(%)、銅箔引き剥がし強さ:0.71(kN/m)、引張り弾性率:2370(MPa)、誘電率:2.78(-)、誘電正接:0.0021(-)、難燃性:V-0であった。
【0151】
実施例2〜5及び比較例1〜3
熱硬化性樹脂の種類・添加量、無機フイラー種類及び難燃剤種類を変化させたこと以外は実施例1と同様の方法によって、難燃性樹脂組成物溶液を得て、これから硬化物フィルムを得た。樹脂組成物の組成(溶剤を除く。以下、同じ。)及び硬化物フィルムの評価結果を表1及び表2に示す。
【0152】
【表1】

【0153】
【表2】

【0154】
実施例6
合成例1により得られた共重合体A:9.0重量部、OPE-2St-1:36.0重量部、熱可塑性樹脂T-1:9.0重量部、熱可塑性樹脂T-2:23.0重量部、熱可塑性樹脂T-3:15.0重量部、熱可塑性樹脂T-4:3.0重量部、リン−窒素系難燃剤PN-1:5.0重量部、球状シリカ:50.0重量部、熱硬化性樹脂E-2:5.0重量部、シランカップリング剤-1:1.0重量部と溶剤としてキシレン:264.0重量部とを配合して、攪拌後、反応開始剤P-2:1.0重量部及び硬化触媒C-1:0.1重量部を加えて、難燃性樹脂組成物溶液を調製した。
ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)シートを張りつけた台に、難燃性樹脂組成物溶液をキャストし、フィルムを得た。得られたフィルムは約50μmの厚みであり、べたつき等がなく成膜性に優れていた。得られたフィルムの表面粗さを測定したところ、Ra=0.37μmであった。また、真空ラミネーターを用いて、温度:110℃、プレス圧:0.1MPaで真空ラミネートを行い、黒化処理銅箔とフィルムの接着状態により成形性の評価を行ったところ、黒化処理銅箔とフィルムの接着状態は良好であった。このフィルムをエヤーオーブンで80℃10分間乾燥後、真空プレス成形機にて180℃、1時間熱硬化させ、約50μmの硬化物フィルムを得た。
この硬化物フィルムの特性は、引張り強度:31.9(MPa)、伸び率:18.7(%)、銅箔引き剥がし強さ:1.02(kN/m)、引張り弾性率:977(MPa)、誘電率:2.58(-)、誘電正接:0.0041(-)、難燃性:V-0であった。
【0155】
実施例7〜9
熱可塑性樹脂の添加量、球状シリカ種類、シランカップリング剤種類及びPPEの添加量を変化させたこと以外は実施例6と同様の方法によって、難燃性樹脂組成物溶液を得て、これから硬化物フィルムを得た。樹脂組成物の組成及び硬化物フィルムの評価結果を表3に示す。
【0156】
【表3】

【0157】
比較例4〜6
共重合体の添加量、OPE-2Stの添加量、熱可塑性樹脂を添加したこと、無機フィラーの種類及び添加量、リン−窒素系難燃剤の添加量及び熱硬化性樹脂の添加量を変更したこと以外は実施例1と同様の方法によって、難燃性樹脂組成物溶液を得て、これから硬化物フィルムを得た。樹脂組成物の組成及び硬化物フィルムの評価結果を表4に示す。
【0158】
【表4】

【0159】
実施例10〜13
共重合体の種類及び添加量及びその他の成分の種類、配合量を表1に示すようにを変化させたこと以外は実施例1と同様の方法によって、難燃性樹脂組成物溶液を得て、これから硬化物フィルムを得た。樹脂組成物の組成及び硬化物フィルムの評価結果を表5に示す。
【0160】
【表5】

【0161】
実施例14
実施例5で得た熱硬化性樹脂組成物溶液(ワニスという。)に、ガラスクロス(Eガラス、目付71g/m2)を浸漬して含浸を行い、80℃のエアーオーブン中で10分間乾燥させた。得られた硬化性複合材料(プリプレグ)のレジンコンテンツ(R.C)は50%であった。
このプリプレグを使用して、直径0.35mmのスルーホールが5mmピッチで配置されている厚み0.8mmのコア材を張り合わせたところ、樹脂が充填されていないスルーホールは4500穴中0であった。
【0162】
実施例15
成形後の厚みが約0.6mm〜1.0mmになるように、実施例9で得られた硬化性複合材料を複数枚重ね合わせ、その両面に厚さ35μmの銅箔を置いてプレス成形機により成形硬化させて積層体を得た。硬化条件は、3℃/分で昇温し、180℃で90分間保持することにとした。また、圧力はいずれも30 kg/cm2とした。
【0163】
このようにして得られた積層体の諸物性を以下の方法で測定した。
1.耐トリクロロエチレン性:銅箔を除去した積層体を25mm角に切り出し、トリクロロエチレン中で5分間煮沸し、外観の変化を目視により観察した(JIS C 6481に準拠)。
2.誘電率及び誘電正接:誘電率、誘電正接は空洞共振法(アジレントテクノロジー製8722ES型 ネットワークアナライザー、関東電子応用開発製空洞共振器)によって、10GHzの値を測定した。
3.ハンダ耐熱性:銅箔を除去した積層体を25mm角に切り出し、260℃のハンダ浴中に120秒間浮かべ、外観の変化を目視により観察した(JIS C 6481に準拠)。
4.ガラス転移温度(Tg):積層体から切り出した試料をTMAにて測定した。
【0164】
耐トリクロロエチレン性試験では積層体の外観に変化は観察されなかった。Tgは198℃であった。ハンダ耐熱性試験では積層体の外観に変化は観察されなかった。誘電率は3.10、誘電正接は0.0028であった。
【0165】
実施例16
実施例5で得たワニスを18μmの電解銅箔上に塗布し、10分間風乾した後、80℃のイナートオーブン中で10分間乾燥させた。銅箔上の樹脂厚みは50μmであった。この樹脂組成物付き銅箔と実施例14使用したと同じコア材を重ね180℃で90分間、30kg/cm2の圧力で加熱加圧硬化した。スルーホールを観察したところ、樹脂が充填されていないスルーホールは確認されなかった。
【0166】
実施例17
実施例1で得たワニスを市販の厚さ18μmの圧延銅箔(ジャパンエナジー社製、商品名:BHY)に厚さ50μm塗工し、実施例1と同様に80℃のイナートオーブン中で10分間乾燥した後、これと市販の厚さ50μmのポリイミドフィルム(宇部興産(株)製、商品名:ユーピレックス−S)とをロールプレス機を用い、温度80℃で貼り合わせた。次いで、80℃の送風乾燥機で残留溶媒を除去し、真空下、200℃で90分間、30kg/cm2の圧力で加熱加圧硬化し、ポリイミドフィルムと実施例1の樹脂組成物層、銅箔よりなるフレキシブル銅箔積層板を得た。得られた積層板のハンダ耐熱性試験ではフレキシブル銅箔積層板の外観に変化は観察されなかった。耐トリクロロエチレン性試験ではフレキシブル銅箔積層板の外観に変化は観察されなかった。また、ポリイミドフィルムと実施例1の樹脂層との間の引剥がし試験を行ったところ、銅箔引剥がし強さは0.95kN/mであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:ジビニル芳香族化合物(a)及びモノビニル芳香族化合物(b)からなる単量体由来の構造単位を有する多官能ビニル芳香族共重合体であって、ジビニル芳香族化合物(a)に由来する繰り返し単位を20モル%以上含有し、かつ、下記式(a1)及び(a2)
【化1】

(式中、R1及びR2は独立に、炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を示す。)で表されるジビニル芳香族化合物(a)由来のビニル基を含有する構造単位のモル分率が(a1)/[(a1)+(a2)]≧0.5を満足し、かつ多官能ビニル芳香族共重合体のゲル浸透クロマトグラフィーで測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が600〜30,000であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量の比(Mw/Mn)が20.0以下である溶剤可溶性の多官能ビニル芳香族共重合体
(B)成分:リン−窒素系難燃剤
(C)成分:平均粒子径が0.001〜6μmの無機フィラー、
を含んでなる樹脂組成物であり、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計に対する(A)成分の配合量が4〜99.8wt%、(B)成分の配合量が0.1〜95.9wt%、(C)成分の配合量が0.1〜95.9wt%であることを特徴とする難燃硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)成分が、多官能ビニル芳香族共重合体の主鎖骨格中に下記一般式(1)
【化2】

(但し、Qは飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基又はベンゼン環に縮合した芳香族環若しくは置換芳香族環を示し、nは0〜4の整数である。)で表されるインダン構造を有する多官能ビニル芳香族共重合体である請求項1に記載の難燃硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(D)成分として熱可塑性ポリフェニレンエーテル系樹脂を含み、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計に対する(D)成分の配合量が1〜80wt%である請求項1又は2に記載の難燃硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
(E)成分として芳香族ビニル系熱可塑性樹脂を含み、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分の合計に対する(E)成分の配合量が1〜80wt%である請求項1〜3のいずれかに記載の難燃硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(F)成分としてビニル基、エチニル基、エポキシ基、オキセタン基、シアネート基、イソシアネート基及び水酸基からなる群から選ばれる一つ以上の官能基を含む熱硬化性樹脂を含み、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分及び(F)成分の合計に対する(F)成分の配合量が1〜60wt%である請求項1〜4のいずれかに記載の難燃硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
(G)成分として(D)成分及び(E)成分以外の熱可塑性樹脂を含み、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分及び(G)成分の合計に対する(G)成分の配合量が1〜50wt%である請求項1〜5のいずれかに記載の難燃硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の難燃硬化性樹脂組成物を硬化して得られたことを特徴とする硬化物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の難燃硬化性樹脂組成物をフィルム状に成形してなることを特徴とする難燃硬化性樹脂組成物フィルム。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の難燃硬化性樹脂組成物と基材からなる複合材料であって、基材を5〜90wt%の割合で含有することを特徴とする難燃硬化性複合材料。
【請求項10】
請求項9に記載の難燃性複合材料の層と金属箔層とを有することを特徴とする難燃性積層体。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれかに記載の難燃硬化性樹脂組成物から形成された樹脂層を金属箔の片面に有することを特徴とする難燃硬化性樹脂組成物付き金属箔。

【公開番号】特開2007−262191(P2007−262191A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87450(P2006−87450)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】