説明

電力変換装置

【課題】溶断検出機能付きヒューズを備えた電力変換装置において、主回路の寄生インダクタンスを減少させ且つ溶断検出器が誤動作することを防止する。
【解決手段】主ヒューズエレメント3a、4aと、この主ヒューズエレメントと並列接続
され且つ略平行配置された溶断検出用エレメント3c、4cとからなる第1の過電流保護
素子3および第2の過電流保護素子4を、互いに逆極性の電流が流れる第1の電流路と第
2の電流路にそれぞれ配設し、第1の過電流保護素子と第2の過電流保護素子の配置構成
を、第1の電流路と第2の電流路に流れる電流によって、互いのインダクタンスを打ち消
し合うように主ヒューズエレメント3a、4a同士を近接配置すると共に、溶断検出用エ
レメント3c、4c同士は、近接効果が出にくいように、互いの間隔が主ヒューズエレメ
ント同士の間隔よりも大きくなるように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体スイッチング素子が破損した際に被害拡大を抑制する目的で回路内にヒューズを設けた電力変換装置に関し、特には、ヒューズが溶断したことを検出する溶断検出機能を備えた電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3は、例えば特開平5−30634号公報に記載された、従来の溶断検出器を併設した半導体保護用ヒューズを備えた電力変換装置の概略回路構成図、図2は、図3の各部品の配置例を示す図である。
図2、図3において、1は直流回路の端子間に接続された直流電圧源としての電解コンデンサ、2、5は平行ブスバー、3、4はヒューズであって、それぞれ主ヒューズエレメント3a、3b、4a、4b、溶断検出用エレメント3c、4c、および溶断検出用接点3d、4dを備えている。
7は、自己消孤可能な電力半導体スイッチング素子IGBTと並列に接続されたフリーホイーリングダイオードを内蔵する半導体モジュールであり、両端は溶断検出器付きのヒューズ3、4を介して電解コンデンサ1の両端に接続されている。また、ヒューズ3、4が溶断した場合は溶断表示用接点3d、4dが動作し、補助電源(図示せず)を用いて溶断検出信号を発生する。6は回路の寄生インダクタンスにより発生する過電圧を抑制するためのスナバコンデンサである。
なお、図4は、例えば、米国特許第5,260,679号公報に記載された溶断検出器付きヒューズの構造の一例を示す概略断面図であり、30は主電極、40は消弧材、50は主ヒューズエレメント、60は溶断検出用エレメント、70はばね、90は溶断検出接点である。主ヒューズエレメント50に比べ溶断検出用エレメント60の抵抗値は高く設定されており、ヒューズが正常な場合は、溶断検出用エレメント60にはほとんど電流は流れない。主ヒューズエレメント50が事故の発生等で溶断した場合に、溶断検出用エレメント60に電流が流れ、溶断検出用エレメント60が溶断して、機構的に溶断検出接点90を動作させる。
【0003】
このような過電流保護用のヒューズを備えた電力変換装置において、半導体モジュール7への過大な電圧印加を抑制するためには、例えば、特開2000−152604号公報、特開2001−57782号公報に記載されているように、主回路配線の、特にヒューズによるインダクタンスを打ち消し合うように、ヒューズを近接配置し、配線インダクタンスを減少させることが必要とされている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−30634号公報
【特許文献2】特開2000−152604号公報号公報
【特許文献3】特開2001−57782号公報
【特許文献4】米国特許第5,260,679号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
溶断検出器付のヒューズにおいては、通常は、主ヒューズエレメントに対し溶断検出用エレメントの抵抗は十分大きくなるように設計されており、低周波の電流に対しては主ヒューズエレメントより先に溶断することはない。
しかしながら、上述のように、主回路配線のインダクタンスを低減させるために、電力変換装置の主回路にヒューズを近接して配置した場合、従来装置においては、スナバコンデンサと電解コンデンサとの共振等により高周波成分の電流が流れた場合に、溶断検出用エレメントにも近接効果が発生し、この近接効果により直流抵抗で決まる分流比以上の電流が溶断検出用エレメントに流れ、溶断検出用エレメントに電流が集中して、主ヒューズエレメントより先に溶断検出用エレメントが溶断し、溶断検出器が不要な動作をするという問題があった。
【0006】
この発明は、上記のような従来装置の問題点を解消するためになされたもので、主回路配線の寄生インダクタンスを減少させ電力変換装置に過大電圧が印加されることを防止すると共に、主ヒューズエレメントが溶断する前に溶断検出用エレメントが溶断し、溶断検出器が誤動作することを防止するようにした溶断検出機能付きの電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係わる電力変換装置は、主ヒューズエレメントと、この主ヒューズエレメントと並列接続され且つ略平行配置された溶断検出用エレメントとからなる第1の過電流保護素子および第2の過電流保護素子を有し、電力変換装置のアームと直列に接続された互いに逆極性の電流が流れる第1の電流路と第2の電流路の、一方の電流路に前記第1の過電流保護素子を、他方の電流路に前記第2の過電流保護素子を配設した電力変換装置であって、前記第1の過電流保護素子と第2の過電流保護素子は、前記第1の電流路と第2の電流路に流れる電流によって、互いのインダクタンスを打ち消し合うように主ヒューズエレメント同士を近接配置すると共に、前記溶断検出用エレメント同士は、近接効果が出にくいように、互いの間隔が主ヒューズエレメント同士の間隔よりも大きくなるように配置したものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明の電力変換装置によれば、主回路配線の寄生インダクタンスを減少させ電力変換装置に過大電圧が印加されることを防止すると共に、溶断検出用エレメントの不要な動作をなくして、溶断検出器が誤動作することを防止する溶断検出機能を備えた電力変換装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による電力変換装置の各部品の配置状態を示す概略図である。なお、図中、図2、図3との同一符号は、同一もしくは相当部分を示す。
図1において、1は直流回路の端子間に接続された直流電圧源としての電解コンデンサ、2、5は平行ブスバー、3は、第1の過電流保護素子であるヒューズであって、主ヒューズエレメント3aと、この主ヒューズエレメント3aに並列接続され且つ略平行に配置された溶断検出用エレメント3cがヒューズに内蔵された形で備えられている。4はヒューズ3と同様に構成された第2の過電流保護素子であるヒューズであって、主ヒューズエレメント4aと、この主ヒューズエレメント4aに並列接続され且つ略平行に配置された溶断検出用エレメント4cを備えている。6は電力変換装置主回路の寄生インダクタンスにより発生する過電圧を抑制するためのスナバコンデンサ、7は、例えば自己消孤可能な電力半導体スイッチング素子IGBTと並列に接続されたフリーホイーリングダイオードを内蔵する半導体モジュールであって電力変換装置の出力アームを構成し、両端はヒューズ3、4を介して直流電圧源としての電解コンデンサ1の両端に接続されている。
【0010】
次にこの発明の特徴となるヒューズ3とヒューズ4の配置構成について説明する。
第1の過電流保護素子であるヒューズ3は、半導体モジュール7に直列接続された一方の電路である第1の電流路に配設され、第2の過電流保護素子であるヒューズ4は、半導体モジュール7に直列接続された他方の電路で、第1の電流路とは逆極性の電流が流れる第2の電流路に配設される。そしてヒューズ3とヒューズ4は、主回路の寄生インダクタンスを減少させるように、第1の電流路と第2の電流路に流れる電流によって互いのインダクタンスが相殺されるように主ヒューズエレメント3aと4aとを近接して対向配置する。
一方、溶断検出用エレメント3c、4cは、近接効果がでないように、主ヒューズエレメント3aと4aの外側で対向する主ヒューズエレメントから最も遠くなる位置、すなわち、
溶断検出用エレメント同士の間隔が最も大きくなるように配置するものである。
【0011】
なお、上記の説明においては、溶断検出用エレメントがヒューズに内蔵されたタイプのものを例に説明したが、溶断検出用エレメントをヒューズの外に取り付ける構造のものであってもよいことは言うまでもない。
【0012】
以上のように、この発明の実施の形態1の電力変換装置によれば、主ヒューズエレメントと、この主ヒューズエレメントと並列接続され且つ略平行配置された溶断検出用エレメントとからなる第1の過電流保護素子および第2の過電流保護素子を、電力変換装置のアームと直列に接続された互いに逆極性の電流が流れる第1の電流路と第2の電流路にそれぞれ配設し、前記第1の過電流保護素子と第2の過電流保護素子の配置構成を、前記第1の電流路と第2の電流路に流れる電流によって、互いのインダクタンスを打ち消し合うように主ヒューズエレメント同士を近接配置すると共に、前記溶断検出用エレメント同士は、近接効果が出にくいように、互いの間隔が主ヒューズエレメント同士の間隔よりも大きくなるように配置するようにしたので、主回路配線の寄生インダクタンスを減少させ、電力変換装置に過大電圧が印加されることを防止すると共に、主ヒューズエレメントが溶断する前に溶断検出用エレメントが溶断し、溶断検出器が誤動作することを防止ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
この発明は回路保護用の溶断検出装置付のヒューズを備えたインバータ等の電力変換装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1における電力変換装置の各部品の配置状態を示す概略図である。
【図2】従来の半導体保護用ヒューズを備えた電力変換装置の各部品の配置状態を示す概略図である。
【図3】従来の半導体保護用ヒューズを備えた電力変換装置の概略回路構成図である。
【図4】従来の溶断検出器付きヒューズの一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 電解コンデンサ 2、5 平行ブスバー 3、4 ヒューズ 3a、3b、4a
4b 主ヒューズエレメント 3c、4c 溶断検出用エレメント 3d、4d 溶
断検出用接点 6 スナバコンデンサ 7 半導体モジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主ヒューズエレメントと、この主ヒューズエレメントと並列接続され且つ略平行配置された溶断検出用エレメントとからなる第1の過電流保護素子および第2の過電流保護素子を有し、電力変換装置のアームと直列に接続された互いに逆極性の電流が流れる第1の電流路と第2の電流路の、一方の電流路に前記第1の過電流保護素子を、他方の電流路に前記第2の過電流保護素子を配設した電力変換装置であって、前記第1の過電流保護素子と第2の過電流保護素子は、前記第1の電流路と第2の電流路に流れる電流によって、互いのインダクタンスを打ち消し合うように主ヒューズエレメント同士を近接配置すると共に、前記溶断検出用エレメント同士は、近接効果が出にくいように、互いの間隔が主ヒューズエレメント同士の間隔よりも大きくなるように配置したことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記第1の過電流保護素子と第2の過電流保護素子の配置は、主ヒューズエレメント同士を対向させて近接配置すると共に、前記溶断検出用エレメント同士の位置が、主ヒューズエレメントの外側で互いの間隔が最大となるように配置したことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
前記第1の過電流保護素子と第2の過電流保護素子は、ヒューズエレメントと溶断検出用エレメントとが一体に内蔵されたものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−274765(P2007−274765A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94462(P2006−94462)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】