説明

電力変換装置

【課題】複数のコンデンサ素子や導体を熱から保護することを目的とする。
【解決手段】本発明のコンデンサモジュールのうち代表的な一つは、コンデンサ素子と、前記コンデンサ素子と接続される導体と、前記コンデンサ素子の全体を封止するとともに前記導体の一部を封止する第1のモールド樹脂と、前記第1のモールド樹脂の収納空間を形成するケースと、冷却冷媒を流すために流路を形成する流路形成体と、を備え、前記ケースは、前記流路形成体と一体に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサモジュールを備えた電力変換装置に係り、特に、パワー半導体素子のスイッチング時のサージ電圧を低減するに好適な、低インダクタンスな配線,端子接続構造と、高放熱構造の電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大電流のスイッチング可能なパワー半導体素子の開発が進み、これを用いた電力変換装置は、スイッチングにより効率よくモータ等の負荷に電力を供給することができる。このため、電車,自動車等の車載用電機システムのモータ駆動に幅広く利用され、特にハイブリッド自動車ではエンジンと電気モータを組み合わせて、モータの低回転からの高トルク,電池への回生エネルギーの貯蔵,アイドル・ストップシステムを加えることで、高燃費,CO2の削減を実現している。
【0003】
この電力変換装置に用いるコンデンサ素子は大容量化が求められており、複数のコンデンサ素子が用いられることが多い。複数のコンデンサ素子を集合体としてモジュール化される(特許文献1)。
【0004】
車両の小型に伴い車載空間が小さくなる傾向にあり、複数の装置同士、又は装置内の部品間において熱伝達が発生しやすい環境になっている。上記複数のコンデンサ素子は、導電性の導体に接続される。特に、これら複数のコンデンサ素子や導体を熱から保護する必要性が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−76967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、複数のコンデンサ素子や導体を熱から保護することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコンデンサモジュールのうち代表的な一つは、コンデンサ素子と、前記コンデンサ素子と接続される導体と、前記コンデンサ素子の全体を封止するとともに前記導体の一部を封止する第1のモールド樹脂と、前記第1のモールド樹脂の収納空間を形成するケースと、冷却冷媒を流すために流路を形成する流路形成体と、を備え、前記ケースは、前記流路形成体と一体に形成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成によれば、複数のコンデンサ素子や導体を熱から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態による車載用電機システム搭載した車両の構成を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の一実施形態による車載用電機システムに用いる電力変換装置の主回路図である。
【図3】本発明の第1の実施形態によるコンデンサモジュールの外観斜視図である。
【図4】(a)本発明の第1の実施形態による電力変換装置の外観斜視図である。(b)(a)の電力変換装置の断面図である。(c)(b)の要部拡大図である。(d)(b)の一部断面拡大図である。
【図5】本発明の第1の実施形態によるコンデンサモジュールの分解図である。
【図6】本発明の第1の実施形態によるコンデンサモジュールの主要部の斜視図および電流経路の説明図である。
【図7】(a)絶縁シートで絶縁をとった第1の実施形態の断面図である。(b)絶縁シートをコンデンサ素子CDS間に挿入した場合の第1の実施形態を示した図である。
【図8】本発明の第1の実施形態による電力変換装置のコンデンサモジュールとパワーモジュールの接続を示す分解斜視図である。
【図9】(a)本発明の第1の実施形態による電力変換装置のコンデンサモジュールとパワーモジュールの接続を示す断面図である。(b)(a)の斜視図である。(c)(b)の一部構成を示した図である。
【図10】本発明の第1の実施形態による電力変換装置のインダクタンス回路図であり、(a)オフ時の電流、(b)オン時の電流である。
【図11】本発明の第2の実施形態によるコンデンサモジュールの外観斜視図である。
【図12】本発明の第2の実施形態によるコンデンサモジュールの分解図である。
【図13】本発明の第2の実施形態による電力変換装置のコンデンサモジュールとパワーモジュールの組図である。
【図14】本発明の第2の実施形態による電力変換装置のコンデンサモジュールとパワーモジュールの分解図である。
【図15】(a)(b)本発明の第2の実施形態による電力変換装置のコンデンサモジュールとパワーモジュールの接続断面図である。
【図16】本発明の第2の実施形態による電力変換装置の回路図である。
【図17】本発明の第3の実施形態によるコンデンサモジュールの構成を示す分解斜視図である。
【図18】本発明の第4の実施形態によるコンデンサモジュールの構成を示す断面図である。
【図19】(a)本発明の第1の実施形態による電力変換装置のパワー半導体素子IGBTに流れる電流,電圧の概略波形である。(b)ダイオードに流れる電流,電圧の概略波形である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態によるコンデンサモジュール,電力変換装置及び車載用電機システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
以下に説明する実施形態では、本発明のコンデンサモジュールが用いられる電力変換装置として、車載用電力変換装置を例にあげる。
【0012】
なお、以下に説明する構成は、DC/DCコンバータや直流チョッパなどの直流−直流電力変換装置にも適用可能である。また、以下に説明する構成は、産業用や家庭用などの電力変換装置にも適用可能である。
【0013】
図1は、本発明の実施形態によるコンデンサモジュールを使用した電力変換装置INVを用いて構成した車載用電機システムと、内燃機関のエンジンシステムを組み合わせたハイブリッド電気自動車(以下、「HEV」と称する)のブロック図である。
【0014】
本実施形態のHEVは、前輪FRW,FLW,後輪RPW,RLW,前輪車軸FDS,後輪車軸RDS,デファレンシャルギアDEF、変速機T/M,エンジンENG,電動機MG1,MG2,電力変換装置INV,バッテリBAT,エンジン制御装置ECU,変速機制御装置TCU,電動機制御装置MCU、バッテリ制御装置BCU、車載用ローカルエリアネットワークLANを備える。
【0015】
本実施例では、駆動力は、エンジンENGと2つの電動機MG1,MG2で発生し、変速機T/M,デファレンシャルギアDEF,前輪車軸FDSを通じて前輪FRW,FLWに伝わる。
【0016】
変速機T/Mは、複数のギアから構成され、速度等の運転状態に応じてギア比を変えることができる装置である。
【0017】
デファレンシャルギアDEFは、カーブなどで左右の車輪FRW,FLWに速度差があるときに、適切に左右に動力を分配する装置である。
【0018】
エンジンENGは、インジェクタ,スロットバルブ,点火装置,吸排気バルブ(いずれも図示省略)などの複数のコンポーネントで構成される。インジェクタは、エンジンENGの気筒内に噴射する燃料を制御する燃料噴射弁である。スロットバルブは、エンジンENGの気筒内に供給される空気の量を制御する絞り弁である。点火装置は、エンジンENGの気筒内の混合気を燃焼させる火源である。吸排気バルブは、エンジンENGの気筒の吸気及び排気に設けられた開閉弁である。
【0019】
電動機MG1,MG2は、三相交流同期式、つまり永久磁石回転電機である。
【0020】
尚、電動機MG1,MG2としては、三相交流誘導式回転電機やリラクタンス式回転電機などのものを用いてもよい。
【0021】
電動機MG1,MG2は、回転する回転子と、回転磁界を発生する固定子からなる。
【0022】
回転子は、鉄心の内部に複数の永久磁石を埋め込んだもの、もしくは、鉄心の外周表面に複数の永久磁石を配置して構成する。固定子は、電磁鋼板に銅線を巻回して構成する。
【0023】
固定子の巻線に三相交流電流を流すことにより、回転磁界が発生し、回転子が生じるトルクにより電動機MG1,MG2を回転させることができる。
【0024】
電力変換装置INVは、パワー半導体のスイッチングにより、電動機MG1,MG2の電力を制御するものである。簡単に言えば、高圧バッテリBATの直流源を、電動機MG1,MG2に繋いだり(オン),切ったり(オフ)することで、電動機MG1,MG2を制御する。本実施例では、電動機MG1,MG2が三相交流モータであるので、スイッチング(オン,オフ)の時間幅の粗密により、三相交流電圧発生させ、電動機MG1,MG2の駆動力を制御する(PWM制御)。
【0025】
電力変換装置INVは、スイッチング時に瞬時に電力を供給するコンデンサモジュールCM,スイッチングするパワーモジュールPMU,パワーモジュールのスイッチングを駆動回路装置DCU及び、スイッチングの時間幅の粗密を決める電動機制御装置MCUから構成する。
【0026】
コンデンサモジュールCM,パワーモジュールPMUは、図3以降に詳しく説明する。
【0027】
電動機制御装置MCUは、総合制御装置GCUからの回転数指令n*,トルク指令値τ*を電動機MG1,MG2で実現するため、パワーモジュールPMUのスイッチングを決定する。このため演算するためのマイコン,データマップなどのメモリを搭載している。
【0028】
駆動回路装置DCUは、電動機制御装置MCUで決定されたPWM信号に基づいて、パワーモジュールPMUを駆動する。このため、パワーモジュールPMUを駆動に必要な、数A、数十Vの駆動能力を持つ回路を搭載する。また、高電位側のパワー半導体素子を駆動するために、制御信号を絶縁分離する回路を搭載している。
【0029】
バッテリBATは、直流電源で、ニッケル水素電池や、リチウムイオン電池などの電力密度の高い2次電池で構成する。電力変換装置INVを介して、電動機MG1,MG2に電力を供給し、または、逆に、電動機MG1,MG2の発電力を電力変換装置INVで変換して貯蔵する。
【0030】
変速機T/M,エンジンENG,電力変換装置INV,バッテリBATは、各々、変速機制御装置TCU,エンジン制御装置ECU,電動機制御装置MCU,バッテリ制御装置BCUで制御する。これらの制御装置は、車載用ローカルエリアネットワークLANにより、総合制御装置GCUに接続し、総合制御装置からの指令値に基づき統括するとともに、双方向の通信も可能である。各制御装置は、総合制御装置GCUの指令信号(指令値),各種センサ,他の制御装置の出力信号(各種パラメータ値),予め記憶装置に記憶されているデータやマップなどをもとに、機器を制御する。
【0031】
例えば、総合制御装置GCUは、運転者の加速要求に基づいたアクセルの踏み込み量に応じて車両の必要トルク値を算出し、この必要トルク値を、エンジンENGの運転効率が良くなるように、エンジンENG側の出力トルク値と第1の電動機MG1側の出力トルク値とに分配する。分配されたエンジンENG側の出力トルク値はエンジントルク指令信号としてエンジン制御装置ECUに、分配された第1の電動機MG1側の出力トルク値はモータトルク指令信号として電動機制御装置MCUに伝達され、各々、エンジンENG,電動機MG1を制御する。
【0032】
次に、ハイブリッド自動車の運転モードを説明する。
【0033】
まず、車両の発進時や低速走行時においては、主に電動機MG1を電動機として動作させ、電動機MG1で発生した回転駆動力を、変速機T/M及びデファレンシャルギアDEFを介して前輪車軸FDSに伝達する。これにより、前輪車軸FDSが電動機MG1の回転駆動力によって回転駆動されて前輪FRW、FLWが回転駆動し、車両が走行する、この時、電動機MG1には、バッテリBATからの出力電力(直流電力)が電力変換装置INVによって三相交流電力に変換し供給する。
【0034】
次に、車両の通常走行時(中速,高速走行時)においては、エンジンENGと電動機MG1を併用し、エンジンENGで発生した回転駆動力と、電動機MG1で発生した回転駆動力とを、変速機T/M及びデファレンシャルギアDFFを介して前輪車軸FDSに伝達する。これにより、前輪車軸FDSがエンジンENGと電動機MG1の回転駆動力によって回転駆動されて前輪FRW,FLWが回転駆動し、車両が走行する。また、エンジンENGで発生した回転駆動力の一部は、電動機MG2に供給する。この動力の分配により、電動機MG2は、エンジンENGで発生した回転駆動力の一部によって回転駆動され、発電機として動作し、発電する。電動機MG2によって発電された三相交流電力は電力変換装置INVに供給され、一旦直流電力に整流された後、再び三相交流電力に変換し、電動機MG1に供給する。これにより、電動機MG11は回転駆動力を発生する。
【0035】
次に、車両の加速時、特にエンジンENGに供給される空気量を制御するスロットル弁の開度が全開になる急加速時(例えば急勾配坂の登坂時で、アクセルの踏み込み量が大きい時)においては、前述した通常走行時の動作に加え、バッテリBATからの出力電力を電力変換装置INVによって三相交流電力に変換して電動機MG1に供給し、電動機MG1によって発生する回転駆動力を増加する。
【0036】
次に、車両の減速・制動時においては、前輪FRW,FLWの回動による駆動車軸DSFの回絵駆動力をデファレンシャルギアDFF,変速機T/Mを介して電動機MG1に供給して、電動機MG1を発電機として動作させ、発電させる、発電によって得られた三相交流電力(回生エネルギー)は、電力変換装置INVによって直流電力に整流され、バッテリBATに供給する。これにより、バッテリBATを充電する。車両の停止時は、基本的にはエンジンENG及び電動機MG1,MG2の駆動は停止するが、バッテリBATの残量が少ない場合には、エンジンENGを駆動して電動機MG2を発電機として動作させ、得られた発電電力を電力変換装置INVを介してバッテリBATを充電する。
【0037】
なお、MG1,MG2の発電,駆動の役割は、特に限定されず、効率によっては、上述と逆の役割で動作する。
【0038】
本発明の実施形態による車載用電機システムの電力変換装置INVの大電流が流れる主回路の回路図を図2に示す。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0039】
本実施形態の電力変換装置INVは、スイッチング時に瞬時に電力を供給するコンデンサモジュールCM、スイッチングするパワーモジュールPMU,パワーモジュールPMUのスイッチング電力を供給する駆動回路装置DCU,電動機を制御するためにスイッチング波形を制御する電動機制御装置MCUから構成する。なお、図2では、第1の電動機MG1に対する電力変換装置INVの構成のみを示しているが、図1の電力変換装置INVは、第2の電動機MG2に対するパワーモジュールPMU,駆動回路装置DCUも備えており、それらの構成は、図2に示すものと同様である。
【0040】
パワーモジュールPMUは、スイッチング(オン,オフ)するパワー半導体素子Mpu,Mnu,Mpv,Mnv,Mpw,Mnwを用いて、3相交流出力のため3個(Au,Av,Aw)のブリッジ回路を構成する。
【0041】
ブリッジ回路の両端は、接続する接続部3a,4aを通じて、コンデンサモジュールCMの接続部3b,4bと接続する。
【0042】
ブリッジ回路の中点は、接続部24U,24V,24Wを通じて、電動機MG1の3相入力接続部(U接続部,V接続部,W接続部)に接続する。
【0043】
ブリッジ回路は、アームともよばれ、高電位を出力するパワー半導体素子を上アーム,低電位を出力するパワー半導体素子を下アームと呼ぶ。
【0044】
3個のブリッジ回路(Au,Av,Aw)のパワー半導体素子は、3相交流電圧を発生するように120°の位相差を持たせてスイッチング(オン,オフ)し、高電位側(上アーム)、低電位側(下アーム)の接続を切り替える。これにより、時間幅に粗密のあるパルス電圧波形の3相交流電圧を発生する。
【0045】
パワー半導体素子(Mpu,Mnu,Mpv,Mnv,Mpw,Mnw)は、大電流をスイッチングするために、外部からスイッチングを駆動電源が必要となる。このため、パワー半導体モジュールPMUに、スイッチングを駆動する駆動回路DCUを接続する。
【0046】
また、駆動回路DCUには、電動機制御装置MCUを接続し、電動機制御装置MCUから、電動機の回転数,トルク応じたスイッチング時間幅,タイミング(パルス電圧の粗密幅)の信号を受ける。
【0047】
本実施例の回路図では、パワー半導体素子(Mpu,Mnu、Mpv,Mnv,Mpw,Mnw)として、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)を用いている。このため、スイッチング時に電流が還流するパワー半導体素子のダイオードDpu,Dnu,Dpv,Dnv,Dpw,DnwをIGBTに逆並列に接続する。
【0048】
また、本実施例の回路図では、各相の上(下)アームのパワー半導体素子は、1つで構成している(ダイオード入れると2つ)が、電流容量にあわせて、パワー半導体素子を並列接続する。
【0049】
本実施例の回路図では、パワー半導体素子としてIGBTを用いたが、MOSFET(金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ)を用いてもよい。この場合は、MOSFETの場合、還流用のダイオードが内蔵されているため、特にダイオードは必要としない。
【0050】
パワーモジュールPMUは、ケースによって囲われ、ベースと呼ばれる金属板上に絶縁基板を介してパワー半導体素子を実装し、三相ブリッジ回路を形成するように、半導体チップ間,半導体チップと入力端子との間,半導体チップと出力端子との間をアルミワイヤや板状導体などの接続導体によって電気的に接続して構成する。ベースは、銅やアルミニウムなどの熱伝導性部材で構成し、スイッチングによるパワー半導体素子の発熱を冷却する。ベースの下面は空気或いは冷却水などの冷却媒体によって冷却する。冷却効率を向上させるために、冷媒との接触面積を増やすフィンなどを設ける。絶縁基板は、窒化アルミニウムなどの高熱伝導の絶縁部材を用いる。ベースと絶縁基板の間,絶縁基板とパワー半導体素子の間は、はんだなどの接合部材によって接合する。
【0051】
パワーモジュールPMUは、大電流をスイッチングする。このため、スイッチング時に、瞬時に電流が変化できる低インピーダンス回路が必要となる。高圧バッテリBATは、内部インピーダンスや、接続ケーブルのインダクタンスがあるため、インピーダンスが高く、パワーモジュールPMUと低インピーダンスの回路を構成することはできない。
【0052】
そこで、コンデンサモジュールCMは、電力変換装置INV内のパワーモジュールPMU近傍に設置,接続し、パワーモジュールPMUのスイッチング時に低インピーダンスの回路を構成する。つまり高周波では、コンデンサ自体は、コンデンサ容量C,周波数fとするとインピーダンスZ=1/(2×π×f×C)により、低インピーダンスとなる。しかし、コンデンサモジュール内部やパワーモジュール内部の配線の寄生インダクタンス、コンデンサモジュールとパワーモジュールの接続部の寄生インダクタンスは、瞬時に電流変化する高周波では、寄生インダクタンスL、周波数fでは、インピーダンスZ=2×π×f×Lで大きくなる。また、電流変化di/dtが大きくなると、この寄生インダクタンスLで発生する跳ね上がり電圧V=L×di/dtで大きくなる。
【0053】
本実施例のコンデンサモジュールCMは、内部の配線が低インダクタンスで、かつ、パワーモジュールPMUとの接続部も、応力緩和構造をもつ低インダクタンス接続を実現している。このため、パワー半導体モジュールのスイッチングを早く(di/dtを大きく)することができ、スイッチング時間が短い。つまり、大電流Iと大電圧Vがクロスする時間tが短く、発熱Q=I×V×tが小さい。この発熱Qが小さくなることで、パワー半導体素子の温度を下げることができ、パワー半導体素子の数を少なくすることができ、電力変換装置の小型化、低コスト化を実現できる。
【実施例1】
【0054】
本発明の第1の実施形態によるコンデンサモジュールCMについて図3〜図10及び、図19を用いて説明する。
【0055】
本発明の第1の実施形態によるコンデンサモジュールCMの外観斜視図を図3に示す。コンデンサモジュールCMは、コンデンサ素子CDS,絶縁シート10,幅広導体8,9により構成する。
【0056】
コンデンサ素子CDSは、絶縁シート10を介して積層した幅広導体8,9の積層体の上に載置して、幅広導体8,9の端部に形成した接続端子にて電気的に接続する。
【0057】
パワーモジュールPMUとの接続端子を低インダクタンスでかつ、組み立て性よく形成するため、コンデンサ素子CDSを載置した平面を2回屈曲させた平面に、凸部の平面部を設け、凸部の側辺を境に屈曲した平面を形成し、この平面の端部を互いに反対方向に屈曲し、パワーモジュールPMUと接続する外部接続端子3b,4bを形成する。このように平面を2回屈曲することで、外部接続端子3b,4bのネジ止め用の穴の中心軸、3b-center,4b-centerが、コンデンサ素子CDSと干渉することなく、ネジ止め用の自動機を使った組み立てが可能となる。
【0058】
高圧バッテリBATとの接続端子は、コンデンサ素子CDSを載置した平面部から屈曲した平面を形成し、端部に接続端子3c,4cを形成する。
【0059】
本発明の第1の実施形態によるコンデンサモジュールを金属容器に収納したときの外観図,断面図、及び、一部拡大図を図4(a),(b),(c),(d)に示す。
【0060】
ただし、外観図にはモールド樹脂は記載せず、樹脂の構成は断面図に示す。
【0061】
コンデンサ素子CDSは、絶縁シート10を介して積層した幅広導体8,9の積層体に載置して、幅広導体8,9の端部に形成した接続端子で電気的に接続する。また、絶縁シート10を介して積層した幅広導体8,9の積層体のコンデンサ素子CDSを載置した部分を、冷却用金属ケース12内に収納し、第1のモールド樹脂13aでモールドし、さらにその外側を第2のモールド樹脂13bの2層で封止している。図の冷却用金属ケース12は冷却配管17を備えた例を図示している。第1のモールド樹脂13aは、エポキシ樹脂のような耐湿性のあるものを使用し、コンデンサ素子CDSが吸湿による耐電圧寿命の低下を防止する。また、第2のモールド樹脂は、車載の温度変化による異種材料間の膨張収縮差が生じても、金属ケースと第1のモールド樹脂13aとの間の密着性を維持できるよう、ウレタンのような、弾力性のある樹脂を用いることが好ましい。このように、密着性を維持することで、コンデンサ素子CDSの発熱が金属ケースに伝熱し、コンデンサ素子CDSの放熱性を高めること可能となり、コンデンサ素子の薄膜樹脂の耐熱温度以下、耐電圧寿命の信頼性を高めることができる。例えば冷却水,金属ケースの温度が120℃の場合でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルムコンデンサ素子の中心温度を、使用上限の130℃以下にすることが可能となる。
【0062】
コンデンサ素子CDSは、蒸着したフィルムを巻回して製作しているため、熱伝導に異方性がある。
【0063】
図5に巻き軸方向の長さCDS−Ax−L,巻き軸断面が楕円状の場合の長軸CDS−R−Lの長さを示す。つまり、巻回する軸方向CDS−Axが、径方向CDS−Radより熱伝導がよい。このため、より高温での使用を考慮するならば、コンデンサ素子として、巻き軸方向の長さCDS−Ax−Lを、巻き軸断面の直径CDS−R、もしくは、巻き軸断面が楕円状の場合の長軸CDS−R−Lよりも小さくし、コンデンサ容量は同じでも、中心からの熱伝導がよく、高放熱構造のコンデンサ素子CDSを用いることが好ましい。
【0064】
また、巻き軸方向の長さCDS−Ax−Lを短くすることで、コンデンサ素子CDS,積層体の導体にできる寄生インダクタンスを小さくすることができる。図6の例で言うと、15−A,14−Bの電流経路が作る磁束面積、つまり、長方形の面積が小さくでき、寄生インダクタンスを小さくすることができる。
【0065】
このような樹脂モールドは、2回に分けてモールドを実施することで可能となる。1回目は、金属ケースではなく、第1樹脂モールド用のケースを用いて、第1の樹脂をモールドする。第1樹脂モールド用のケースは、第1樹脂が剥離しやすいような材料、例えばテフロン(登録商標)で製作し、抜き勾配や、割り型とすることで、容易に取り出すことが可能となる。このとき、コンデンサ素子CDSは完全に第1の樹脂でモールドすることが必要で、また、金属ケースとの絶縁するために、コンデンサ素子CDS載置した幅広導体8,9も第1の樹脂でモールドするのが好ましい。
【0066】
2回目は、金属ケースをモールド型として、第2の樹脂をモールドする。このとき、樹脂の硬化により、金属ケースが変形しないように、第2の樹脂の厚みを調節するとよい。また、絶縁の信頼性を高めるために、絶縁シートを金属ケース12と、コンデンサモジュールCMの間に挿入し、第2の樹脂をモールドしてもよい。
【0067】
図4(b)に対して、図7(a)に金属ケース12とコンデンサモジュールCMの平板導体9の間に絶縁シート10aを挿入し、絶縁を強化した実施例の断面図を示す。本実施例では、コンデンサモジュールCMの接続端子3bが、接続ネジなどの関係で金属表面が露出するため、金属ケース12に段差を付けて絶縁距離を設けているのに加え、絶縁シート10aを挿入し、沿面距離により絶縁を確保している。
【0068】
金属ケースの内側は、凸凹を設けることで、第2の樹脂との密着性を向上させ、冷却性の信頼性をあげることができる(図示せず)。
【0069】
このように、樹脂モールドすることで、コンデンサ素子CDSが水路をもつ金属ケースに囲まれ、コンデンサ素子CDSを両側の金属ケースから冷却する両面冷却が実現できる。また、コンデンサ素子CDSと積層幅広導体の接続箇所の信頼性,コンデンサCDSと積層幅広導体の密着によるコンデンサの冷却性,耐湿性の向上することができる。
【0070】
積層体の断面図を示す図4(c)(d)を用い、インダクタンス低減効果を説明する。
【0071】
幅広導体8と幅広導体9が絶縁シート10を介して積層した積層体の断面に流れる電流を破線で示す。電流80,81の方向が互いに対向する向きとなり、この電流がつくる磁場の方向が逆になり低インダクタンスが実現できる。つまり、幅広導体8,9の寄生インダクタンスを67−N,67−Pとすると、インダクタンスの磁気的な結合が生じ、低インダクタンスが実現できる。パワーモジュールPMUとの接続端子3b、4bの直前まで低インダクタンス配線とすることができる。
【0072】
本発明の第1の実施形態によるコンデンサモジュールCMの分解図を図5に示す。
【0073】
図5では、7個のコンデンサ素子CDSの隣り合うコンデンサ素子の電極の極性が交互になるように、コンデンサ素子CDSとの接続端子を配置している。ここで、本実施形態では、コンデンサ素子CDSとして、金属を蒸着したフィルムを積層巻きし、金属吹き付けにより巻き軸方向の両面に電極11を形成したフィルムコンデンサを用いている。つまり、本実施形態のコンデンサは、電極11が両側面に対向するようなコンデンサである。
【0074】
コンデンサ素子CDSを載置する積層体は、幅広導体8,絶縁シート10,幅広導体9からなる。
【0075】
幅広導体8は、複数のコンデンサ素子CDSを全て載置できる面積を有している。すなわち、幅広導体8は、円筒形状の複数のコンデンサを並置した場合は、その長手方向の幅、以上の幅広の導体となる。幅広導体8の上面には、コンデンサ素子CDSの電極11と接続するための立ち上がり部14が設ける。例えば、図示のように、7個のコンデンサ素子CDSから構成する場合、立ち上がり部14は、7個形成する。また、その配置は、図示のように、一番奥のコンデンサ素子CDS−Aと接続する立ち上がり部14−Aは、コンデンサ素子CDS−Aの紙面の下側の電極11に接続する位置に設け、奥から2番目のコンデンサ素子CDS−Bに接続される立ち上がり部14−Bは、コンデンサ素子CDS−Bの紙面の上側の電極11に接続する位置に設ける。このように、立ち上がり部14を千鳥状に交互に配置する。
【0076】
幅広導体9も、幅広導体8と同様に、複数のコンデンサ素子CDSを全て載置できる面積を有している。すなわち、幅広導体9は、円筒形状の複数のコンデンサ素子CDSを並置した場合のその長手方向の幅以上の幅広の導体とする。幅広導体9の上面にも同様に、コンデンサ素子CDSの電極11と接続するための立ち上がり部15を設ける。幅広導体8と幅広導体9を積層した状態では、立ち上がり部15は、幅広導体8に形成された貫通穴16を貫通して、幅広導体8の上部に突出する。図示のように、7個のコンデンサ素子CDSでは、立ち上がり部15は、立ち上がり部14と同様に7個形成する。また、その配置は、図示のように、一番奥のコンデンサ素子CDS−Aに接続する立ち上がり部15Aは、コンデンサ素子CDSの上側の電極11に接続する位置に設け、奥から2番目のコンデンサCDS−Bに接続する立ち上がり部15−Bは、コンデンサ素子CDSの下側電極11に接続する位置に設け、立ち上がり部15を千鳥状とする。したがって、1個のコンデンサ素子CDSについてみると、一方の端面の電極11に幅広導体8の立ち上がり部14を接続し、他方の端面の電極11には幅広導体9の立ち上がり部15を接続する。コンデンサモジュールCMを構成する複数のコンデンサCDSは、幅広導体8と幅広導体9に対して並列接続する。積層幅広導体8,9とコンデンサ素子CDSの側面電極11は、はんだ等により電気的に固着する。
【0077】
コンデンサ素子CDSの接続用端子である立ち上がり部14,15は、積層幅広導体8,9の一部を切り抜き、幅広導体面から立体的に立ち上げて形成する。これにより、接続部材を新たに用いることなく、コンデンサ素子CDSと幅広積層導体8,9の接続ができ、はんだ付け箇所を減らし、工数低減,コスト低減になるほか、接続部の信頼性向上,電気抵抗低減,放熱性向上になる。
【0078】
コンデンサ素子CDSの電極の極性が千鳥状に交互し、絶縁距離がとれない場合、コンデンサ素子CDSの電極間の絶縁が必要となる。図7(b)に絶縁シートをコンデンサ素子CDS間に挿入した実施例を示す。コンデンサ素子間に絶縁シート10bを挿入し、異極間の絶縁を確保する。また、図7(b)では、コンデンサ素子CDSと幅広導体8の間にも絶縁シート10cを挿入している。これにより、幅広導体8とコンデンサ素子CDS間の絶縁を確実に確保することができる。
【0079】
積層した幅広導体8,9は、抵抗が小さく、熱伝導が小さい銅材を用いる。なお、軽量化が要求される場合は、アルミ材を用い、その表面にニッケル等をメッキすれば、はんだ接続が可能となる。積層幅広導体8,9の厚さは1mmとしている。
【0080】
絶縁シート10としては、可能な限り薄いものが望ましく、電力変換装置内の環境温度が最大120℃であれば、ポリプロピレン(PP)や、ポリエチレン(PET)の1mm以下の0.2mm,0.4mm程度で、容易に形状が変形でき、モールド樹脂と密着性がいいものを用いる。絶縁シート10が薄いほど幅広導体8,9を近接して積層することができるため、インダクタンスを小さくすることができる。もちろん、使用温度範囲が高い場合には、耐熱性の高い絶縁シートを用いる。電流容量が低い電力変換装置INVであれば、積層幅広導体8,9の代わりに、絶縁シート10の両面に金属をプリントしたものを用いることで、プリントした金属を幅広導体としてもよい。この場合は、接続導体を別途用意し接続する。
【0081】
外部接続端子4c,3cの曲げは、組み立て後に曲げると、組み立てが容易になる。
【0082】
本発明の第1の実施形態によるコンデンサモジュールの主要部の斜視図および電流経路の説明図を図6に示す。
【0083】
幅広導体8の端部には、1個の接続部4cと、3個の接続部4bが形成されている。また、幅広導体9の端部には、1個の接続部3cと、3個の接続部3bが形成されている。接続部3c,4cは、高圧バッテリBATからのバスバー、ケーブル接続するために用いる。接続部3b,4bは、それぞれ、パワーモジュールのU相アーム,V相アーム,W相アームと接続するために用いる。
【0084】
幅広導体8,絶縁シート10,幅広導体9の積層体の上に、コンデンサCDSを接続固定した状態を示している。コンデンサ素子CDS−Aの右側面の電極11−Aには、幅広導体9の立ち上がり部15−Aが接続され、コンデンサ素子CDS−Bの右側面の電極11−Bには、幅広導体8の立ち上がり部14−Bが接続される。
【0085】
このように、コンデンサ素子CDSを配置接続することにより、積層体の幅広導体に流れる電流が打ち消しあい、低インダクタンスを実現することができる。
【0086】
次に、本発明の第1の実施形態による電力変換装置INVのコンデンサモジュールCMとパワーモジュールPMUの接続を示す分解図を図8に示す。
【0087】
図8に示すコンデンサモジュールCMは、図3〜図6にて説明したものである。冷却配管を備えた金属ケースのコンデンサモジュールCM,パワーモジュールPMUがあり、パワーモジュールPMUは、冷却配管を備えた金属ケース12の、側面からネジ止めする。
【0088】
本実施例のパワーモジュールPMUは、銅ベース20を直接冷媒で冷却する、直接冷却方式のパワーモジュールの例を示している。このため、金属ケース12の側面には、冷却水路28が露出しており、冷却水の漏れを防ぐOリング29がある(図4(a))。パワーモジュールPMUは、U相アーム,V相アーム,W相アームがあり、それぞれに両端電極(4a−U,3a−U,4a−V,3a−V,4a−W,3a−W)をもつ。このため、本実施例のコンデンサモジュールCMの接続部は、3対の4b、3bの接続端子をもつ。パワーモジュールPMUは、制御するためのスイッチング素子として、パワー半導体素子Mを搭載している。
【0089】
コンデンサモジュールCMの接続部3b,4bは、ネジを挿入可能な貫通穴を設け、この穴位置をパワーモジュールPMUの接続部3a,4aと同じにし、ネジで電気的、機械的に接続する。本実施例では、コンデンサ素子CDSの載置した平面を2回屈曲することで、外部接続端子3b,4bのネジ止め用の穴の中心軸、3b-center,4b-centerが、コンデンサ素子CDSと干渉することがなく、貫通穴に上部からネジを挿入することが可能となり、自動機での組み立てが簡単になる。また、ネジの頭が飛び出しても、異極の電極に対して絶縁距離が取れている。
【0090】
なお、コンデンサモジュールCMの接続部数は、パワーモジュールPMUの接続部数に合わせて変更ができ、特に3対にこだわらないことは、言うまでもない。
【0091】
本発明の第1の実施形態による電力変換装置INVのコンデンサモジュールCMの接続端子とパワーモジュールPMUの接続端子の接続断面図、斜視図を図9(a)に示す。ただし、ネジや、ナットは省略する。
【0092】
図9(a)に示す実施例では、パワーモジュールPMUの接続端子3a−U,4a−Uは、端部において互いに反対方向に屈曲し、それぞれコンデンサモジュールCMの接続端子3b,4bと向き合い接続する。このとき、コンデンサモジュールCMの接続部の絶縁物10と、パワーモジュールPMUの絶縁物10−PMUが互いに向き合う形で重なることで、接続部の絶縁を維持する。このとき、パワーモジュールPMUの接続端子の片方に段差4a−U−Cを設け、パワーモジュールのPMUの絶縁物10−PMUが、接続端子4a−U,3a−Uの接続面よりも凹ますことにより、接続部の絶縁物10,10−PMUに応力が加わらず、絶縁信頼性を確保することができる。
【0093】
パワーモジュールPMUの接続端子3a−U,4a−Uと、コンデンサモジュールCMの接続端子3b,4bとを接続したときに、それぞれ、その手前の折り曲げ部から延在する方向が同一方向になる構成をとる。
【0094】
図9(a)で、点線81と点線80は、それぞれ、幅広導体8,接続端子4b,接続端子4a−Uと、接続端子3a−U,接続端子3b,幅広導体9を流れる電流の経路を示している。このとき、接続部4b,4a−U上の電流をみると、電流方向が逆方向となり、打ち消しあっていることがわかる。つまり、コンデンサモジュールCMの接続部4bのインダクタンス62−Pと、パワーモジュールPMUの接続部のインダクタンス57−Nに、上述の互いに逆方向に電流が流れることで、電流による磁束が打ち消しあい、低インダクタンスの接続が実現できる。
【0095】
さらに、積層体の端部において互いに反対方向に屈曲した端子接続面を、積層体の導体面に直交射影したときにできる各辺が重なるか、又は、1辺を残りの1辺に直交射影したときに重なるように形成することで、接続端子の近傍の積層体に流れる電流が、積層面で絶縁物を挟んで対向するように流れ、互いの電流による磁束が打ち消しあい、低インダクタンスの接続が実現できる。
【0096】
図9(b)にコンデンサモジュールCMの接続部の斜視図を示す。図9(b)では、積層体の導体を見やすくするため、絶縁シートを省いている。
【0097】
コンデンサモジュールCMの接続端子面は4b−U−s,3b−U−s,積層体の積層平面(導体面,絶縁シート面)は89L−sとなり、直交射影したときにできる各辺は4b−U−pl,3b−U−plとなる。
【0098】
図9(c)に、積層体の積層面(導体面、絶縁シート面)89L−s,直交射影した4b−U−pl,3b−U−plの関係のみを図示する。この場合、さらに、3b−U−plを4b−U−plに直交射影すると、重なる。このような配置をとると、積層体の導体に絶縁物を挟んで対向する電流81,80が対向するように流れ、寄生インダクタンス67−P,67−Nのインダクタンス結合が強くなり、低インダクタンスが実現できる。この例では、理解しやすくするため、接続端子面4b−U−s,3b−U−sが積層体の平面89L−sに垂直とし、直交投射すると辺(線)になるとした。接続端子面4b−U−s,3b−U−sが垂直でない場合は、接続端子面4b−U−s、3b−U−sを延長し、積層体の平面89L−sと交わる線を3b−U−pl′,4b−U−pl′とすればよい。
【0099】
上記のインダクタンス低減効果を、回路図でまとめて説明する。
【0100】
本発明の第1の実施形態による電力変換装置INVのインダクタンス回路図を図10に示す。
【0101】
ここでは、急激に変化する電流、それにより発生する電圧を説明するため、抵抗成分は省略し、インダクタンス成分を主に記述する。また、パワーモジュールPMUは、U相の1アーム(Au)のみを記述し、上アーム,下アームのパワー半導体スイッチング素子Mpu,Dpuは、代表して1素子とする。
【0102】
寄生インダクタンスの同一符号は、図4,図9と同一部分を示している。寄生インダクタンス53は、高圧バッテリBATと電力変換装置INVの間を接続するケーブルやバスバーのインダクタンスを示している。寄生インダクタンス55は、電力変換装置INVとMG1の間の接続するケーブルとバスバーの寄生インダクタンスを示している。インダクタンス54は、電動機MG1の界磁巻き線の一部のインダクタンスを示している。
【0103】
パワーモジュールPMUには、高電位側と低電位側の接続端子に、寄生インダクタンス57−P,57−Nがある。また、内部の寄生インダクタンス56もあり、接続端子近くの積層体の導体面の寄生インダクタンスを、56P,56Nとする。
【0104】
コンデンサモジュールCMには、瞬時に電力を供給,吸収する複数のコンデンサ素子CDS−A,CDS−B、各々のコンデンサ素子CDSが載置された幅広導体の寄生インダクタンス61−A,61−B、積層体の幅広導体の寄生インダクタンス67−P,67−Nがあり、接続端子には寄生インダクタンス62−P,62−Nがある。なお、ここでは、コンデンサはCDS−A,CDS−Bの2つのみを記載する。
【0105】
今、パワーモジュールPMUの上アームのパワー半導体素子Mpuがオンからオフになるときの電流変化を考える。上アームのパワー半導体素子Mpuがオンのときに流れる電流経路は、電流経路64となる。インダクタンス54,55は大きいため、ここを流れる電流は、スイッチング時に急激に変化できない。そのため、オフ時は下アームのパワー半導体素子(Dnu)を通る電流経路65となる。ここで、急激に電流変化した回路を考えると、電流経路66で電流が流れたことと同じになる。この電流経路66の閉回路に存在する寄生インダクタンスを低くすることで、スイッチング時の跳ね上がり電圧低減,スイッチングスピードアップによるパワー半導体素子の発熱低減することができる。
【0106】
なお、本説明のスイッチングは、上アームのパワー半導体素子(Mpu)がオンからオフとなる場合を説明したが、上アームのパワー半導体素子(Mpu)がオフからオンの場合でも、下アームのパワー半導体素子(Dnu)は逆にオンからオフになるため、電流方向は逆となるが電流経路66で電流が流れる。また、下アームのパワー半導体素子(Mnu)のスイッチング時でも、同様に、電流方向は逆になるときもあるが電流経路66が流れることがわかる。
【0107】
まず、第1の低インダクタンスの効果は、図9に示したコンデンサモジュールCMとパワーモジュールPMUの接続構造による。
【0108】
図9に示すように、コンデンサモジュールCMの接続部4b,パワーモジュールPMUの接続部4aに、電流方向が逆方向に打ち消しあい、コンデンサモジュールCMの接続部4bのインダクタンス62−Pと、パワーモジュールPMUの接続部4aのインダクタンス57−Nのインダクタンスが結合し、低インダクタンスとなる。
【0109】
さらに、積層体の端部において互いに反対方向に屈曲した接続端子を、図9(a),(b)のように形成することで、接続端子の近傍の積層体に流れる電流が、積層面で絶縁物を挟んで対向するように流れ、コンデンサモジュールCMの積層体の幅広導体の寄生インダクタンス67−P,67−Nが接続端子近傍で小さくすることできる。
【0110】
さらに、コンデンサモジュールの接続端子は、図9のように積層体に凸部を設け、凸部の側辺を境に屈曲した積層体の平面を形成し、この平面の端部を互いに反対方向に屈曲し、パワーモジュールPMUと接続する外部接続端子3b,4bを形成し、外部から接続部のネジ止めなどの組み立てが可能な構造を実現している。
【0111】
第2の低インダクタンスの効果は、図6に示したコンデンサ素子CDSと積層幅広導体8,9の千鳥接続による。
【0112】
図6のように、コンデンサ素子CDS−A,CDS−Bが載置された、幅広導体8,9の電流68−A,電流68−Bは、互いに逆方向となる。このことで、コンデンサ素子CDS−A,CDS−B直下の幅広導体8のインダクタンス61−A,幅広導体9のインダクタンス61−Bに対して、電流68−A,電流68−Bが逆方向に流れ、インダクタンスが結合により、低インダクタンスとなる。つまり、図10の寄生インダクタンス61−A,61−Bが結合し低インダクタンスとなる。
【0113】
以上、本発明により、組み立てやすく、絶縁性も考慮した低インダクタンスの接続端子構造を持ち、冷却構造を兼ね備えた、省スペースなコンデンサモジュールを実現し、これを用いた小型,高パワー密度のインバータ、これを用いた車載用電機システムを提供することができる。
【0114】
本実施例では、コンデンサモジュールCMと、パワーモジュールPMUと直接接続を実現しているため、接続箇所の低減によるインダクタンスを低減している。例えば仮に、耐圧600Vの電源接続部の絶縁距離が沿面距離で8mm必要であった場合、1mmは約1nHのインダクタンス増加となるため、1箇所の接続をなくすことで、8nHのインダクタンスを低減することができる。
【0115】
本発明の第1の実施形態による電力変換装置INVのパワー半導体素子IGBTに流れる電流,電圧の概略波形を図19(a)、ダイオードに流れる電流,電圧の概略波形を図19(b)に示す。
【0116】
図19(a)のように、電流波形はオンスイッチングで急激(数ギガA/s)に立ち上がり、数十マイクロ秒のほぼ平坦な電流(数100Hz)が流れ、オフスイッチングで急激(数ギガA/s)に立下る。
【0117】
図19(a)で平坦に見える電流は、数100Hzの低周波であるが、数十マイクロ秒に波形を拡大して見ているため、平坦に見える。
【0118】
図19(a)の波形を、図8のパワーモジュールPMUの上アームのIGBT(M)、図10の回路図のIGBT(Mpu)の波形とする。
【0119】
図19(b)の波形を、図8のパワーモジュールPMUの下アームのダイオード、図10の回路図のダイオード(Dnu)の波形とする。
【0120】
上アームのIGBT(Mpu)のオンスイッチング(TR)の期間は、上アームのIGBT(Mpu)のオンのスピードにより電流は増加し、電圧は、ほぼゼロ(実際は導通損失があるため数V)となる。上アームのIGBT(Mpu)の電圧がほぼゼロとなったとき、パワーモジュールPMUの下アームのダイオード(Dnu)に電圧が加わり、下アームのダイオード(Dnu)がオフをはじめる。このとき、下アームのダイオード(Dnu)には、オフ時に発生する高周波のリカバリー電流、図19(b)の回路図の電流66Rのダイオードの逆方向の電流が流れる。このリカバリー電流は、ダイオードの半導体内に逆方向電圧による空乏層が広がり始めてから、半導体内のキャリアが消滅するまで続く。このリカバリー電流により、通電した電流以上の貫通電流がIGBT(Mpu)に流れる。このリカバリー電流は、ダイオード内の半導体のキャリアーの消滅スピードによるため、小電流ほど、低温ほど、急激に減少する。
【0121】
このため、下アームのダイオード(Dnu)には、急激なリカバリー電流による跳ね上がり電圧が発生し、それは、並列接続している下アームのIGBT(Mnu)にも加わる(ダイオードの波形は図示せず)。本実施例の構造では、電流経路66Rの回路が、低インダクタンスであるため、このダイオードのリカバリー電流による下アームの跳ね上がり電圧が低減できる。
【0122】
このリカバリー電流は、ダイオードの半導体の構造によるため、外部制御では、コントロールできない。このため、もっぱら、半導体製造時に、キャリアーの消滅スピードをコントロールするための、半導体の格子欠陥を作りコントロールしていた。ただし、キャリアーの消滅スピードを遅くすると、ダイオード内にキャリアーが長く存在するため、損失(発熱)が大きくなるデメリットも生じる。つまり、このリカバリー電流のスピードは、ダイオードの半導体素子が決まれば、駆動回路DCUなどの外部回路でコントロールできない。
【0123】
しかし、本実施例の構造を用いると、電流経路66Rの回路が、低インダクタンスであるため、コントロールできないリカバリー電流に対しても、下アームの跳ね上がり電圧を抑制することが可能となる。このため、本実施例は、零下の温度となる過酷な車載環境で、跳ね上がり電圧を抑制した、高信頼の電力変換装置及び、車載電機システムに適している。
【0124】
上アームが完全にオン状態(TP)の期間は、コンデンサモジュールCMから低周波の電流が、図10(a)の回路図の電流経路64で流れる。この電流は、数百Hz程度の低周波で、上記のオンスイッチング(TR)の期間のリカバリー電流ほどでないため、コンデンサモジュールとパワーモジュール、及び、その接続部の寄生インダクタンスにより、跳ね上がり電圧は生じない。スイッチング時間(TR,TS)の1μs未満に比べ、オン期間(TP)は数10μsと長いため、コンデンサモジュールCMの発熱は、このオン期間(TP)に流れる電流量により決まる。このため、コンデンサモジュール内のコンデンサ素子CDSが多いほど、発熱が均等に分担され、また、コンデンサ素子CDSの構造が冷却がよい構造ほど、コンデンサ素子CDSの寿命が向上する。
【0125】
上アームがオフスイッチング(TS)の期間は、パワーモジュールPMUの電流が急激にゼロになる。このとき、図10(a)の回路図の電流経路66で高周波の電流が流れる。このため、図19(a)の波形のように、上アームのIGBTには、この電流変化により、電源電圧以上の跳ね上がり電圧が生じる。本実施例の構造では、電流経路66は、低インダクタンス回路を実現しているため、跳ね上がり電圧を抑制することができる。このため、スイッチングスピードをアップし、スイッチング時の損失を減らし、小型の半導体素子使用が可能となり、小型高信頼の車載用電機システムを実現することができる。
【0126】
以上、本実施形態によれば、組み立てやすく、絶縁性も考慮した低インダクタンスの接続端子構造を持ち、冷却構造を兼ね備えた、省スペースなコンデンサモジュールが実現できる。また、これを用い、冷却構造の小型化はもちろん、跳ね上がり電圧を抑制、発熱損失を低減する低インダクタンスの実装、つまり、電磁気的な一体構造をもつインバータが実現可能となる。さらに、小型で高パワー密度のインバータを用いた車載用電機システムを実現することができる。
【実施例2】
【0127】
次に、図11〜図16を用いて、本発明の第2の実施形態によるコンデンサモジュールCM及び電力変換装置INVの構成について説明する。
【0128】
本実施例により、図1の電動機システムにおいて、2つの電動機MG1,MG2を制御する電力変換装置INVを、低インダクタンスかつ応力緩和構造で小型に実現できる。
【0129】
図11は、本発明の第2の実施形態によるコンデンサモジュールの構成を示す斜視図である。図12は、本発明の第2の実施形態によるコンデンサモジュールの分解図である。図13は、本発明の第2の実施形態による電力変換装置INVのコンデンサモジュールCMとパワーモジュールPMUの組図である。図14は本発明の第2の実施形態による電力変換装置INVのコンデンサモジュールCMとパワーモジュールPMUの分解図である。なお、同一符号は、同一部分を示している。
【0130】
図11,図12に示すように、本実施例では、2つのコンデンサモジュールCM1,CM2が組み合わさっている。これを図13,図16に示す、冷却配管17をもつ金属ケース12に樹脂モールドして一体化し、パワーモジュールPMU1,2を、側面の冷却流路に取り付ける。コンデンサモジュールCM1、CM2の基本的な構成は、図4〜図10に示したコンデンサモジュールCMと同様である。
【0131】
本実施例の特徴は、コンデンサモジュールCM1,CM2の2つを、1つの金属ケース12に樹脂モールドにより一体化し、2つのパワーモジュールPMU1,PMU2と、組み立てが容易な、低インダクタンスの接続端子を備えたところである。この構造をとることで、2つのパワーモジュールの冷却流路で囲まれた中心にコンデンサのあるインバータを実現することができる。
【0132】
さらに、2つのコンデンサモジュールを上下に積み重ね、コンデンサ素子CDSが両側の水路をもつ金属ケースに囲まれ、コンデンサ素子CDSを両側の金属ケースから冷却する両面冷却が実現できる。
【0133】
また、コンデンサモジュールCM1,CM2は、高圧バッテリBAT用の接続端子3c−1または4c−1と3c−2または4c−2が重なり、接続穴も重なる配置をとり、高圧バッテリBATに接続されたケーブル等の接続端子を、共締めしたときに、コンデンサモジュールCM1,CM2を電気的に接続する構造をとることである。これにより、コンデンサモジュールCM1,CM2を予め接続することが無くなり、2つのコンデンサモジュールをCM1,CM2を分割してつくることができる。
【0134】
コンデンサモジュールCM1、CM2の接続構造について、図11のc−c′−c″−c′′′平面,d−d′−d″−d′′′平面の断面図を図15(a),(b)に示す。
【0135】
図15(a)に示すように、コンデンサモジュールCM1は、積層体から、導体CM1−8が飛び出しており、導体CM1−8,絶縁シートCM1−10,導体CM1−9が階段状になっている。コンデンサモジュールCM2は、積層体から、導体CM2−9が飛び出しており、導体CM2−9,絶縁シートCM2−10,導体CM1−8が階段状になっている。これらを、導体CM1−8と導体CM2−8,絶縁シートCM1−10と絶縁シートCM2−10,導体CM1−9と導体CM2−9、が重なるように配置する。
【0136】
また、図15(b)に示すように、CM1−4c,CM2−4cが重なるように配置し、BATに接続されたケーブル等の接続端子を、共締めしたときに、コンデンサモジュールCM1,CM2を電気的に接続する構造をとる。このような、接続形状をとることで、コンデンサモジュールCM1とコンデンサモジュールCM2が低インダクタンスの接続が実現できる。
【0137】
第2の実施例の回路図を図16に示す。
【0138】
2つの電動機MG1,MG2を制御するため2つのパワーモジュールPMU1,PMU2、2つのコンデンサモジュールCM1,CM2で構成した図13の電力変換装置INVの回路図を示している。
【0139】
なお、コンデンサモジュールCM1,CM2とパワーモジュールPMU1,PMU2の接続部の寄生インダクタンスを主に記述し、その他の寄生インダクタンスは省略する。パワーモジュール内のパワー半導体素子のブリッジ回路で構成した3相アームAu,Av,Awは、ボックスで表示する。また、駆動回路DCUなどの制御回路は省略する。その他の同一符号は、同一部分を示している。
【0140】
コンデンサモジュールCM1、CM2には、高圧バッテリBATから、DCバスバーDC−busにより、直流電圧が入力される。回路図上の寄生インダクタンスDC−bus−LP,DC−bus−LNは、DCバスバーDC−busの高電位側(正極),低電位側(負極)のバスバーの寄生インダクタンスを示している。ノイズ防止用のコモンモードチョークフィルタCFは、コンデンサモジュールCM1,CM2とケーブルの間にある。
【0141】
コンデンサモジュールCM1とパワーモジュールPMU1の接続部には、高電位側の寄生インダクタンスCM1−62P,PMU1−57P,低電位側の寄生インダクタンスCM1−62N,PMU1−57Nがあり、スイッチング時に流れる電流66−Aに対して、高電位側,低電位側で各々が磁気的に結合し、低インダクタンス配線を実現している。
【0142】
また、コンデンサモジュールCM2とパワーモジュールPMU2の接続部には、高電位側の寄生インダクタンスCM2−62P,PMU2−57P,低電位側の寄生インダクタンスCM2−62N,PMU2−57Nがあり、スイッチング時に流れる電流66−Bに対して、高電位側,低電位側で各々が磁気的に結合し、低インダクタンス配線を実現している。また、コンデンサモジュールCM1とコンデンサモジュールCM2の接続部の寄生インダクタンスCM1−63P(CM1−63N)とCM2−63P(CM2−63N)は、図15(b)のように、コンデンサモジュールCM2からコンデンサモジュールCM1へスイッチング時に流れる電流64−Bが対向するように流れることで、電流が作る磁場が打ち消しあい、インダクタンスが結合し、低インダクタンスとなる。これにより、パワーモジュールPMU1のみが動作しているときは、コンデンサモジュールCM1,CM2の両方とも低インダクタンスで接続されていることから、コンデンサモジュールCM1,CM2の両方からPMU1へ電力を供給することができる。
【0143】
以上説明したように、本実施形態によれば、2つの電動機MG1,MG2を制御する電力変換装置INVを用いた車載電機システムにおいて、2つのパワーモジュールPMU1,PMU2で用いるコンデンサを、2つの低インダクタンスのコンデンサモジュールCM1,CM2で構成し、電力変換装置INVを小型で実現することができる。
【0144】
以上、本実施形態によれば、2つの電動機を制御する電力変換装置を用いた車載電機システムにおいて、冷却構造の小型化はもちろん、跳ね上がり電圧を抑制、発熱損失を低減する低インダクタンスの実装、つまり、電磁気的な一体構造をもつ電力変換装置が実現可能となる。また、小型で高パワー密度のインバータを用いた車載用電機システムを実現することができる。
【実施例3】
【0145】
次に、本発明の第3の実施形態によるコンデンサモジュールの構成を図17に示す。なお、図4と同一符号は、同一部分を示している。
【0146】
本実施形態では、コンデンサモジュールCMの基本的な構成は、図4〜図9に示したコンデンサモジュールCMと同様である。本実施例の特徴は、図4に比べ、コンデンサ素子CDSの載置方向を変えた点である。コンデンサ素子CDSは、蒸着したフィルムを巻回して製作しているため、熱伝導に異方性がある。つまり、巻回する軸方向CDS−Axが、径方向CDS−Radより熱伝導がよい。
【0147】
このため本実施例によれば、ケース12の上面が、コンデンサ素子CDS軸方向CDS−Axとなり、上面で伝熱のよい接続ができる。このため、本実施形態によれば、コンデンサ素子の巻き軸方向の面、つまり、電極面CM2−11−A,CM2−11−Bを金属ケース12に近接させることができ、高放熱構造を実現することができる。この結果、コンデンサ素子CDSの寿命を向上させることが可能になる。
【実施例4】
【0148】
次に、本発明の第4の実施形態によるコンデンサモジュールの断面図を図18に示す。本実施形態は、実施例3の構造の変形例である。
【0149】
本実施形態のような構造を採用した場合においても、コンデンサ素子の巻き軸方向の面、つまり、電極面を金属ケース12に近接させることができ、高放熱構造を実現することができる。この結果、コンデンサ素子CDSの寿命を向上させることが可能になる。
【0150】
以上、実施例3及び4の構成によれば、2つの電動機を制御する電力変換装置を用いた車載電機システムにおいて、2つのパワーモジュールに用いるコンデンサを、2つの低インダクタンスのコンデンサモジュールで構成し、組み立てやすく、絶縁性も考慮した低インダクタンスの接続端子構造を持ち、冷却構造を兼ね備えた、省スペースなコンデンサモジュールが実現できる。
【0151】
また、これを用い、冷却構造の小型化はもちろん、跳ね上がり電圧を抑制、発熱損失を低減する低インダクタンスの実装、つまり、電磁気的な一体構造をもつ電力変換装置INVが実現可能となる。また、小型で高パワー密度のインバータを用いた車載用電機システムを実現することができる。
【0152】
以上のとおり、上記実施例1乃至4によれば、小型かつ組み立て性の良い電力変換装置において、スイッチング時のサージ電圧を効果的に低減する低インダクタンスの電力変換装置を実現することができ、ひいては、小型で高性能の車載電機システムを提供することが可能になる。
【符号の説明】
【0153】
3a,4a…パワーモジュール接続部、3b,4b…コンデンサモジュール接続部、8,9…幅広導体、10…絶縁シート、11…コンデンサ素子電極、CDS…コンデンサ素子、PMU…パワーモジュール、12…金属ケース、13a…第1のモールド樹脂、13b…第2のモールド樹脂、14,15…立ち上がり部、16…貫通穴、17…冷却配管、19…絶縁基板、20…銅ベース、21…ケース、23…接続ネジ、27…筐体、28…冷却水路、29…Oリング、30…Oリング溝、31…冷却フィン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子と接続される導体と、
前記コンデンサ素子の全体を封止するとともに前記導体の一部を封止する第1のモールド樹脂と、
前記第1のモールド樹脂の収納空間を形成するケースと、
冷却冷媒を流すために流路を形成する流路形成体と、を備え、
前記ケースは、前記流路形成体と一体に形成されるコンデンサモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載されたコンデンサモジュールであって、
前記第1のモールド樹脂と前記ケースとの間に配置されるとともに当該第1のモールド樹脂を当該ケースに保持する第2のモールド樹脂を備え、
前記第1のモールド樹脂は、前記第2のモールド樹脂よりも耐湿性の高い樹脂材料により構成されるコンデンサモジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたいずれかのコンデンサモジュールであって、
前記第1のモールド樹脂は、抜き勾配が形成されるコンデンサモジュール。
【請求項4】
請求項1ないし3に記載されたいずれかのコンデンサモジュールであって、
前記ケースは、前記収納空間を形成する当該ケースの内壁に凹凸を設けるコンデンサモジュール。
【請求項5】
請求項1ないし4に記載されたいずれかのコンデンサモジュールであって、
前記コンデンサ素子は、蒸着されたフィルムを巻回されて形成され、かつ前記コンデンサ素子の巻軸方向の長さが巻軸方向の楕円形の断面の長軸の長さよりも小さく形成されるコンデンサモジュール。
【請求項6】
請求項1ないし5に記載されたいずれかのコンデンサモジュールであって、
前記導体は、第1幅広導体と、絶縁部材と、前記絶縁部材を挟んで前記第1幅広導体を対向する位置に配置される第2幅広導体とにより構成されるコンデンサモジュール。
【請求項7】
請求項1ないし6に記載されたいずれかのコンデンサモジュールを用いた電力変換装置であって、
前記コンデンサ素子により平滑化された直流電流を取得するとともに当該直流電流を交流電流に変換するパワーモジュールを備え、
前記流路形成体は、前記流路と繋がる開口を形成し、
前記開口は、前記パワーモジュールにより塞がれる電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−105541(P2012−105541A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−874(P2012−874)
【出願日】平成24年1月6日(2012.1.6)
【分割の表示】特願2006−231460(P2006−231460)の分割
【原出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】