説明

電力線通信システム、コネクタ装置及び電力線通信装置

【課題】給電装置との間で充電ケーブルを介した電力線通信を行う車輌にて、電力線通信用の装置の小型化が可能な電力線通信システム、コネクタ装置及び電力線通信装置の提供。
【解決手段】電力線通信に必要な電磁誘導式信号変換器及びフィルタをコネクタ装置3に設け、電磁誘導式信号変換器を介して電力線通信を行う電力線通信部をECUに設ける。コネクタ装置3の円筒部32から延出したAC線11、12間に、コンデンサ16、信号配線17及びコンデンサ16を直列接続する。電磁誘導式信号変換器は、筒状部32に嵌合されるトロイダルコア15cに信号配線17を巻回して1次コイル及び電力線通信部に接続される信号配線13をトロイダルコア15cに巻回して2次コイルにて構成する。コネクタ装置3の筒状部32に、トロイダルコア15cに巻回された信号配線17、13を納める切り欠き32a、32bを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車等の車輌と、給電装置とを充電ケーブルで接続し、該充電ケーブルを介して車輌に搭載された電力線通信装置及び給電装置の間で電力線通信を行う電力線通信システム、車輌に搭載され、給電装置からの電力供給のための充電ケーブルを接続するコネクタ装置、及びコネクタ装置に接続された充電ケーブルを介して給電装置との電力線通信を行う電力線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モータ及びバッテリ等の装置を搭載し、バッテリに蓄積した電力にてモータを駆動することで走行する電気自動車及びハイブリッド自動車が普及し始めている。電気自動車は外部の給電装置からバッテリへの充電を行う必要があり、またハイブリッド自動車であっても外部の給電装置からバッテリへの充電を可能としたプラグインハイブリッド自動車がある。外部からバッテリへの充電を行う車輌においては、外部の給電装置に接続された充電ケーブルのプラグを車輌に設けられた給電口のコネクタ装置に接続して、給電装置から車輌のバッテリへ充電ケーブルを介した電力供給が行われ、バッテリが充電される。
【0003】
特許文献1においては、互いに区画された直流受電部及び交流受電部を単一構造の受電コネクタ内に配置すると共に、受電コネクタの開口端面全域を開閉自在に覆う第1のキャップと、この第1のキャップに設けられて、交流受電部に対応する位置に開口された透設孔を閉塞可能にする第2のキャップとを有する構成とし、交流受電部及び直流受電部を集約して一体化構造とした電気自動車用充電コネクタが提案されている。
【0004】
一方で、給電装置から車輌のバッテリへの充電を行う場合、充電制御のための情報、及び、充電量又は課金の管理等を行うための情報を、車輌及び給電装置の間で送受信する通信機能が必要となる。
【0005】
特許文献2においては、複数の電動車輌と供給管理装置とが電力線通信を行い、各々が交流電力を供給可能に構成された複数の電動車輌から共通の電力消費部への交流電力の供給を可能とした電力システムが提案されている。この電力システムでは、電力線通信により供給開始指示を受信した複数の車輌が識別ID(IDentifier)を他の車輌へ送信し、いずれかの車輌がマスターであると決定して他の車輌へマスターの通知を送信する。マスターの車輌は、自身の周期に従う交流電圧を生成し、他の車輌はマスターの車輌に同期した交流電圧を生成し、複数の車輌が連携して電力負荷への電力供給を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−192826号公報
【特許文献2】特開2008−035665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の電力システムのように、車輌と外部の装置とが電力線通信を行うためには、電力線に信号を重畳させると共に電力線に重畳された信号を取り出すためのカップリングトランスなどの部品を回路基板に実装した電力線通信装置(PLC(Power Line Communication)車載器)を車輌に搭載する必要がある。カップリングトランスなどの部品は小型化するにもある程度の限度があるため、PLC車載器(の回路基板)が大型化する傾向があった。電気自動車などの車輌では多数の電子機器が搭載され、車輌内における機器の配設スペースは限られているため、PLC車載器の小型化が望まれる。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、給電装置との間で充電ケーブルを介した電力線通信を行う機能を備えた車輌において、電力線通信を実現するための装置の小型化を可能とする電力線通信システム、コネクタ装置及び電力線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電力線通信システムは、車輌及び給電装置を充電ケーブルで接続し、該充電ケーブルを介して前記車輌に搭載された電力線通信装置及び前記給電装置の間で電力線通信を行う電力線通信システムにおいて、前記充電ケーブルは2本の電力供給用配線を含み、前記電力線通信装置は、前記充電ケーブルに含まれる前記2本の電力供給用配線にそれぞれ接続される2本の電力供給用内部配線と、該2本の電力供給用内部配線に、フィルタ回路を介して接続された一次コイル及び該一次コイルに電磁的に結合された二次コイルを有する電磁誘導式の信号変換器とを有し、前記給電装置は、前記充電ケーブルの電力供給用配線にそれぞれ接続される2本の電力供給用内部配線と、該2本の電力供給用内部配線に、フィルタ回路を介して接続された一次コイル及び該一次コイルに電磁的に結合された二次コイルを有する電磁誘導式の信号変換器とを有し、前記電力線通信装置の2本の電力供給用内部配線及びフィルタ回路と、前記充電ケーブルの2本の電力供給用配線と、前記給電装置の2本の電力供給用内部配線及びフィルタ回路とによって、電流ループ回路を構成するようにしてあり、前記電力線通信装置及び前記給電装置は、各信号変換器によって、前記充電ケーブルへの信号の重畳及び前記充電ケーブルに重畳された信号の取り出しを行うようにしてあることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る電力線通信システムは、前記電力線通信装置は、前記車輌に搭載され、前記充電ケーブルが接続されるコネクタ装置を有し、該コネクタ装置は、前記信号変換器を一体化してなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るコネクタ装置は、複数の接続端子と、該複数の接続端子を収容するコネクタ本体と、2本の電力用供給用内部配線とを含み、前記接続端子に接続された複数の内部配線とを備えるコネクタ装置において、前記2本の電力用供給用内部配線に接続する信号変換器を一体化してなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るコネクタ装置は、前記複数の接続端子を収容する収容部と、前記収容部に突設され、前記複数の内部配線を挿通させる筒状部とを備え、前記信号変換器は、前記筒状部の外周りに配された環状磁性体と、該環状磁性体に巻回され、フィルタ回路を介して前記2本の電力供給用内部配線間に接続された第1の信号配線と、前記環状磁性体に巻回された第2の信号配線とを備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るコネクタ装置は、前記環状磁性体は、前記筒状部に外嵌するようにしてあり、前記筒状部には、前記環状磁性体に巻回された前記第1の信号配線及び前記第2の信号配線の巻回部分を収める切り欠きが形成してあることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るコネクタ装置は、前記フィルタ回路は、前記第1の信号配線の一端及び一方の前記電力供給用内部配線に接続されたコンデンサと、前記第1の信号配線の他端及び他方の前記電力供給用内部配線に接続されたコンデンサとを有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る電力線通信装置は、前記コネクタ装置と、前記第2の信号配線に接続され、前記コネクタ装置の前記環状磁性体、前記第1の信号配線及び第2の信号配線にて構成される電磁誘導式の信号変換器により電力線通信を行う電力線通信部とを備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る電力線通信装置は、車輌に接続された充電ケーブルを介して外部装置との間で電力線通信を行う電力線通信装置において、前記充電ケーブルは2本の電力供給用配線を含み、前記充電ケーブルの電力供給用配線にそれぞれ接続される2本の電力供給用内部配線と、該2本の電力供給用内部配線に、フィルタ回路を介して接続された一次コイル及び該一次コイルに電磁的に結合された二次コイルを有する電磁誘導式の信号変換器とを備え、該信号変換器によって、前記充電ケーブルへの信号の重畳及び前記充電ケーブルに重畳された信号の取り出しを行うようにしてあることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る電力線通信装置は、前記車輌に搭載され、前記充電ケーブルが接続されるコネクタ装置を備え、該コネクタ装置は、前記信号変換器を一体化してなることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、充電ケーブルが接続されるコネクタ装置に電力線通信のための信号変換器を設け、電力線通信装置の小型化(コネクタ装置を含めた車輌内における電力線通信のための装置全体での小型化)を実現する。
コネクタ装置は、充電ケーブルとの接続を行うための複数の接続端子を収容する収容部に、接続端子に接続された複数の内部配線を挿通させる筒状部を設け、この筒状部の外周りに信号変換器のコアをなす環状磁性体を配する。筒状部を挿通する複数の内部配線には2本の電力供給用内部配線を含み、この2本の電力供給用内部配線間にフィルタ回路を介して第1の信号配線を接続すると共に、第1の信号配線を環状磁性体に巻回する。また環状磁性体には、第2の信号配線を巻回して設ける。環状磁性体に巻回された第1の信号配線が1次コイルとなり、環状磁性体に巻回された第2の配線が2次コイルとなって、電磁誘導式の信号変換器が構成される。
これにより、電力線通信装置の回路基板などには大型の信号変換器を設ける必要がないため、電力線通信装置を小型化することができ、更には車輌内の他の機器(例えばボディECU(Electronic Control Unit))などとCPU(Central Processing Unit)を共通化して電力線通信装置を一体化することも可能となる。
【0019】
また、本発明においては、コネクタ装置の筒状部には、環状磁性体に巻回された第1の信号配線及び第2の信号配線の巻回部分を収める切り欠きを形成する。これにより、環状磁性体は2つの信号配線が巻回された状態でコネクタ装置の筒状部に外嵌させることができ、コネクタ装置の組み立てなどを容易化することができる。
【0020】
また、本発明においては、第1の信号線に接続されるフィルタ回路は、2つのコンデンサを用いて構成される。第1の信号線の両端にはコンデンサがそれぞれ接続され、両端のコンデンサが2つの電力供給用内部配線にそれぞれ接続される。即ち、2つの電力供給用内部配線の間には、コンデンサ、環状磁性体に巻回された第1の信号配線及びコンデンサがこの順で直列に接続される。これにより、環状磁性体、第1の信号配線及び第2の信号配線により構成される信号変換器を用いて、2つの電力供給用内部配線に対する信号の重畳及び抽出を行うことができる。なお、コンデンサと配線との接続は、例えばコンデンサの金属線状の端子と配線の絶縁被膜を剥がして導線を露出させた部分とをスリーブを用いて圧着するなどの方法で行うことができる。
【0021】
また、本発明においては、2本の電力供給用配線(単相3線式の交流給電における2本のAC(Alternating Current)線(即ち接地用配線以外の2本の配線))を含む充電ケーブルを接続することによって、車輌に搭載された電力線通信装置と外部の給電装置とが充電ケーブルを介した電力線通信を行う。電力線通信装置及び給電装置は、充電ケーブルの電力供給用配線に接続される2つの電力供給用内部配線間に設けた電磁誘導式の信号変換器及びフィルタ回路をそれぞれ備える。信号変換器は、2つの電力供給用内部配線間に設けた信号線を磁性体のコアに巻き付けて1次コイルとし、電力線通信回路などに接続される信号配線を同コアに巻き付けて2次コイルとして構成することができる。車輌の電力線通信装置及び給電装置は、それぞれが有する信号変換器を利用して充電ケーブル(一方の電力供給用内部配線及び電力供給用配線)に対する信号の重畳及び重畳された信号の取り出しを行うことができ、電力線通信を行うことができる。
【0022】
さらに、本発明においては、充電ケーブルが接続されるコネクタ装置に、電磁誘導式の信号変換器を一体化して搭載することにより、コネクタ装置内外の配線及び装置を電磁的に離隔することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明による場合は、充電ケーブルが接続されるコネクタ装置に電力線通信のための信号変換器を設ける。例えば、コネクタに設けた筒状部に2本の電力供給用内部配線を挿通し、この2本の電力供給用内部配線にフィルタ回路を介して第1の信号配線を接続し、筒状部の外周りに設けた環状磁性体に第1の信号配線を巻回すると共に、電力線通信部などに接続される第2の信号配線を環状磁性体に巻回して設ける構成とすることにより、環状磁性体、第1の信号配線及び第2の信号配線により電磁誘導式の信号変換器が構成される。よって電力線通信装置の回路基板などに信号変換器を設ける必要がなく、電力線通信装置の小型化を実現できる。
【0024】
また、本発明による場合は、充電ケーブルが接続されるコネクタ装置に、電磁誘導式の信号変換器を一体化して搭載することで、車輌内AC線に通信信号が流れることを防止する。これにより、電力線通信に係る通信信号が、車輌内の他の機器から放射されるノイズによる影響を受け難くし、しかも、車輌内の他の機器が、通信信号に起因するノイズの影響を受けがたくなる。
さらに、コネクタ装置にて、例えば100V/230Vの交流電圧を絶縁することにより、車輌内に配線する通信線は、数V程度の低電圧、かつ、小電流となるため、通信線を細線化することが可能となる。
しかも、電力線通通信装置には、商用電力が入力されなくなるため、絶縁距離を確保する必要がなくなり、省スペース化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る電力線通信システムの構成を説明するための模式図である。
【図2】本発明に係る電力線通信システムに対応した電気自動車の内部構成を示すブロック図である。
【図3】コネクタ装置の構成を示す外観斜視図である。
【図4】コネクタ装置の構成を示す側面図である。
【図5】コネクタ装置の構成を示す側面図である。
【図6】コネクタ装置の構成を示す側面図である。
【図7】コネクタ装置の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1は、本発明に係る電力線通信システムの構成を説明するための模式図である。本実施の形態では、電気自動車のバッテリを充電するために充電スタンドと電気自動車とを充電ケーブルにて接続した際、充電制御、ユーザ認証又は課金管理等の情報を、充電ケーブルを利用した電力線通信によって、電気スタンドと電気自動車との間で送受信する構成を例に説明する。
【0027】
電気自動車及び充電スタンドを接続する充電ケーブルは、交流電圧が印加される2本の電力供給線(以下、単にAC線という)71、72と、接地電位に接続される接地線(図1において図示は省略する)を含んでいる。本実施の形態では、2本のAC線と1本の接地線とによる3線式の交流電圧を充電スタンドから電気自動車へ供給する。
【0028】
充電スタンドは、充電ケーブルのAC線71、72に接続され、電源からの交流電圧が印加される電力供給用の2本の内部配線(以下、単にAC線という)51、52を有している。また充電スタンドでは、2本のAC線51、52間に、コンデンサ56、電磁誘導式信号変換器55の1次コイル55a及びコンデンサ56がこの順に直列に接続されている。なお、AC線51、52に接続される2つのコンデンサ56は、フィルタ回路を構成するものである。また電磁誘導式信号変換器55の2次コイル55bは、充電スタンド内の電力線通信部(図示は省略する)に接続されている。
【0029】
同様に、電気自動車は、充電ケーブルのAC線71、72に接続され、充電スタンド及び充電ケーブルからの電力を車輌内の充電器4(図2参照)へ導く電力供給用の2本の内部配線(以下、単にAC線という)11、12を有している。また電気自動車では、2本のAC線11、12間に、コンデンサ16、電磁誘導式信号変換器15の1次コイル15a及びコンデンサ16がこの順に直列に接続されている。なお、AC線11、12に接続される2つのコンデンサ16は、フィルタ回路を構成するものである。また電磁誘導式信号変換器15の2次コイル15bは、電気自動車内の電力線通信部22(図2参照)に接続されている。
【0030】
充電スタンド及び電気自動車を充電ケーブルで接続することによって、充電スタンドのAC線51、充電ケーブルのAC線71及び電気自動車のAC線11が接続された電力供給経路と、充電スタンドのAC線52、充電ケーブルのAC線72及び電気自動車のAC線12が接続された電力供給経路との2つの電力供給経路が構成される。充電スタンド及び電気自動車が充電ケーブルで接続された状態では、上記の2つの電力供給経路と、コンデンサ16、56と、電磁誘導式信号変換器15、55とによる閉ループ回路が構成され、このループ内に配された電磁誘導式信号変換器15、55により電力供給経路に対する信号の重畳及び重畳された信号の取り出しを行うことができ、充電スタンド及び電気自動車間で電力線通信を行うことができる。
【0031】
図2は、本発明に係る電力線通信システムに対応した電気自動車の内部構成を示すブロック図であり、電気自動車の充電及び通信に係るブロックを示してある。本実施の形態に係る電気自動車1には、ボディECU2、コネクタ装置3、充電器4、バッテリ5及びパワーマネジメントECU6等が搭載されている。ボディECU2は、電気自動車1のドアのロック/アンロック制御、又は、ヘッドライトなどの点灯制御等を行うものであり、制御部21、電力線通信部22、無線通信部23、CAN(Controller Area Network)通信部24及び電源回路25等を備えて構成されている。本実施の形態に係る電気自動車1では、電力線通信のための電磁誘導式信号変換器15を電力線通信部22又はボディECU2ではなくコネクタ装置3に設けることによって、電力線通信部22(を有するボディECU2)の小型化及び電気自動車1内における配置自由度の向上を図ったものである。
【0032】
ボディECU2の制御部21は、具体的にはCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等の処理装置で構成され、ボディECU2内の各部の動作制御及び各種の演算処理等を行っている。特に本実施の形態において制御部21は、電気自動車1のパワーマネジメントECU6とデータの授受が可能に構成されており、パワーマネジメントECU6から与えられた送信データを電力線通信部22へ与えて電力線通信によるデータ送信を行うと共に、電力線通信部22が電力線通信により受信した受信データをパワーマネジメントECU6へ与える処理を行う。
【0033】
電力線通信部22は、コネクタ装置3に設けられた電磁誘導式信号変換器15に信号配線13を介して接続されている(ただし、信号配線13は、電磁誘導式信号変換器15のトロイダルコア15cに巻回されることで2次コイル15bを構成するものであり、電磁誘導式信号変換器15の一部でもある)。電力線通信部22は、制御部21から与えられた送信データに応じた信号を電磁誘導式信号変換器15によりAC線11、12へ重畳し、充電ケーブルを介した充電スタンドへのデータ送信を行う。また電力線通信部22は、AC線11、12に重畳された信号を電磁誘導式信号変換器15にて抽出することによって、充電スタンドからの信号を取り出し、この信号に応じた受信データを制御部21へ与える。
【0034】
無線通信部23は、ユーザが所持する携帯電話器など、車輌内外の通信機器との間で無線通信を行うものである。CAN通信部24は、電気自動車1に搭載された他の装置との間で有線の通信を行うものである。無線通信部23及びCAN通信部24は、制御部21から与えられたデータの送信を行うと共に、受信したデータを制御部21へ与える。電源回路25は、電気自動車1のバッテリ5(又は別のバッテリであってもよい)から供給される電力を、電圧値の調整などを行ってボディECU2内の各部へ供給する。
【0035】
コネクタ装置3は、電気自動車1に充電ケーブルを接続するためのものであり、複数の接続端子が設けられたコネクタ本体30と、電力線通信のための電磁誘導式信号変換器15と、フィルタ回路をなす2つのコンデンサ16とを備えて構成されている。コネクタ本体30に設けられた2つの接続端子にはAC線11、12が接続され、AC線11、12はそれぞれ2つに分岐しており、一方が充電器4へそれぞれ接続され、他方が各コンデンサ16にそれぞれ接続されている。また2つのコンデンサ16は信号配線17を介して接続されている。即ち、2つのAC線11、12間に、第1のコンデンサ16、信号配線17、第2のコンデンサ16がこの順に直列接続されている。
【0036】
コネクタ装置3に設けられる電磁誘導式信号変換器15は、円環状の磁性体であるトロイダルコア15cに、AC線11、12間の信号配線17を(1回転以上)巻回すると共に、電力線通信部22に接続される信号配線13を巻回して構成されている。この構成により、トロイダルコア15cに巻回された信号配線17が1次コイル15aとなり、トロイダルコア15cに巻回された信号配線13が2次コイル15bとなって、電磁誘導式信号変換器15として機能する。また、コネクタ装置3内に電磁誘導式信号変換器15を一体化して構成することにより、電気自動車1内のAC線11、12に通信信号が流れることを防止し、電気自動車1内の他の機器は通信信号から放射される電磁波の影響を受け難くなる。また、通信信号は、電気自動車1内の他の機器から放射される電磁波の影響を受け難くなる。このように相互に与える悪影響を低減することができる。なおコネクタ装置3の詳細な構成については後述する。
【0037】
充電器4は、充電スタンドから供給される電力にてバッテリ5の充電を行うものである。充電スタンドは、例えば電圧が200Vであり、且つ、周波数が50Hz又は60Hzの交流電圧によって電力供給を行うものであるため、充電器4は交流電圧を直流電圧に変換してバッテリ5へ印加することによって充電を行う。バッテリ5は、電気自動車を走行させるモータ(図示は省略する)の駆動電力を蓄積するものであり、例えばリチウムイオン電池などである。パワーマネジメントECU6は、電気自動車の充電に係る制御を行うものであり、ボディECU2の電力線通信部22による電力線通信にて充電スタンドからの情報(例えば供給電力の電圧値、周波数又は課金情報等)を取得し、取得した情報に基づいて充電器4などの動作を制御することで、充電制御を行う。
【0038】
図3は、コネクタ装置3の構成を示す外観斜視図であり、電気自動車1に搭載された場合に車輌内側となる部分の外観を図示したものである。また、図4〜図6は、コネクタ装置3の構成を示す側面図であり、図4は図3における下方からコネクタ装置3を見た構成であり、図5は図3における手前側からコネクタ装置3を見た構成であり、図6は図3における上方からコネクタ装置3を見た構成である。また、図7は、コネクタ装置3の構成を示す平面図である。なお、図3〜図7においては、AC線11、12及び信号配線13、17以外の内部配線(例えば接地電位用の内部配線など)は図示を省略してある。
【0039】
コネクタ装置3は、2本のAC線11、12及び1本の接地用配線14等が接続される複数の接続端子(図示は省略する)を収容するコネクタ本体30を備えている。コネクタ本体30は、略矩形の板状をなす取付部31と、取付部31の一面の中央に突設された円筒状の筒状部32とを備えている。取付部31の四隅にはそれぞれ取付孔33が形成してあり、電気自動車1の車体の所定位置にねじ等でコネクタ本体30を取り付けることができるようにしてある。なおコネクタ本体30は、筒状部32が設けられた側が車体の内側となるように取り付けられる。
【0040】
コネクタ本体30の取付部31の他面には、円筒状をなし、充電の際に充電ケーブルが挿入して接続されるケーブル接続部34が設けられている。ケーブル接続部34は、AC線11、12及び接地用配線等の内部配線に接続される複数の接続端子が内部に収容されており、充電ケーブルとの電気的接続がなされる。またケーブル接続部34には、充電ケーブルを接続しない際に接続端子が露出することを防止すべく、開口部分を閉塞するように開閉可能にカバー35が設けられている。
【0041】
ケーブル接続部34内に収容された2つの接続端子に接続される2本のAC線11、12は、コネクタ本体30の取付部31の表裏を貫通し、筒状部32内を挿通する態様で設けられている。筒状部32を挿通して電気自動車1の内部へ配されるAC線11、12は、充電器4まで電気自動車1内を適宜に配されて接続されるが、筒状部32の端部から充電器4までの適所にはコンデンサ16がそれぞれ接続されている。コンデンサ16は、例えば金属線状の2つの端子を有する電気部品であり、一方の端子がAC線11又は12の絶縁被膜を剥がされて内部の金属導線が露出した部分に接続されている。またコンデンサ16の他方の端子には、信号配線17が接続されている。コンデンサ16の端子とAC線11、12又は信号配線17との接続は、例えば円環状のスリーブを用いた圧着などの方法で行うことができる。
【0042】
信号配線17は、トロイダルコア15cに巻回された後、両端がそれぞれコンデンサ16の端子に接続される。トロイダルコア15cに信号配線17を巻回させることによって、トロイダルコア15c及び信号配線17の巻回部分を1次コイル15aとして機能させることができる。またトロイダルコア15cには、ボディECU2の電力線通信部22に接続される信号配線13が巻回して設けられている。トロイダルコア15cに信号配線13を巻回させることによって、トロイダルコア15c及び信号配線13の巻回部分を2次コイル15bとして機能させることができる。
【0043】
電磁誘導式信号変換器15を構成するためのトロイダルコア15cは、コネクタ本体30の筒状部32の外側に嵌合するようにしてあり、トロイダルコア15cに信号配線17、13を巻回した後、トロイダルコア15cを筒状部32に嵌合させることで、コネクタ装置3の組み立てが行われる。また筒状部32には、トロイダルコア15cを嵌合させた際に、トロイダルコア15aに巻回された信号配線17及び13をそれぞれ収容するための2つの切り欠き32a及び32bが形成されている。切り欠き32a及び32bは、筒状部32の突端に達するように、筒状部32の軸方向へ略矩形に切り欠かれた形状をなしている。
【0044】
以上の構成の電力線通信システムは、電力線通信に必要な電磁誘導式信号変換器15をコネクタ装置3に設け、電磁誘導式信号変換器15への信号を入出力して電力線通信に係る処理を行う電力線通信部22をボディECU2に設ける構成とすることによって、電気自動車1における電力線通信装置の配設スペースを節約することができる。電磁誘導式信号変換器15は、コネクタ装置3の筒状部32に嵌合される円環状のトロイダルコア15cに信号配線17、13をそれぞれ巻回して構成することによって、電磁誘導式信号変換器15を有さない従来のコネクタ装置と比較して、装置サイズの大型化を最小限に抑えてコネクタ装置3に電磁誘導式信号変換器15を設けることができる。またサイズの大きいトロイダルコア15cをコネクタ装置3に設けることができるため、トロイダルコア15cを有する電磁誘導式信号変換器15を用いた電力線通信の通信精度を向上できる。
【0045】
また、コネクタ装置3の筒状部32には、トロイダルコア15cに巻回された信号配線17、13を納める切り欠き32a、32bを形成することによって、信号配線17、13が巻回されたトロイダルコア15cを容易に筒状部32に嵌合させることができるため、コネクタ装置3の組み立てなどを容易化することができる。
【0046】
なお、本実施の形態においては、電力線通信装置の信号処理を行う電力線通信部22をボディECU2に設ける構成としたが、これに限るものではなく、電気自動車1内にボディECU2とは別体の電力線通信装置を搭載し、この電力線通信装置に電力線通信部22を設ける構成としてもよい。この場合であっても、電力線通信装置の回路基板にはカップリングトランス17を搭載する必要がないため、電力線通信装置を小型化できる。また、電力線通信装置の信号処理を行う電力線通信部22を、ボディECU2以外のCPUを有するECUに統合してもよい。
【0047】
また、電力線通信機能を備える車輌として電気自動車1を例に説明を行ったが、これに限るものではなく、プラグインハイブリッド自動車など、外部からバッテリへの充電を行う機能を有するその他の車輌であってもよい。また、電力線通信機能を備える給電装置として充電スタンドを例に説明を行ったが、これに限るものではなく、充電ケーブルを介して車輌への給電を行う機能を有する他の装置であってもよい。例えばユーザが自宅のコンセントに充電ケーブルを接続して車輌への充電を行う場合、自宅の配電盤などに電力線通信装置を設けるなどの構成であってもよい。また更には、充電ケーブル内に電力線通信を行う回路を搭載する構成であってもよい。
【0048】
また、図3〜図6に示したコネクタ装置3の構造において、AC線11、12に対するコンデンサ16の接続位置は図示のものに限らず、筒状部32から充電器4までのいずれの位置にコンデンサ16を接続してもよい。ただし、コンデンサ16は、筒状部32に近い位置に接続することが好ましい。またコンデンサ16は、AC線11、12及び信号配線17にスリーブを用いて接続する構成としたが、これに限るものではなく、例えば半田付けにより接続するなど、その他の方法で接続してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 電気自動車
2 ボディECU
3 コネクタ装置
4 充電器
11 AC線(電力供給用内部配線)
12 AC線(電力供給用内部配線)
15 電磁誘導式信号変換器
15a 1次コイル
15b 2次コイル
15c トロイダルコア
16 コンデンサ(フィルタ)
21 制御部
22 電力線通信部
30 コネクタ本体(収容部)
31 取付部
32 筒状部
33 取付孔
51 AC線
52 AC線
55 電磁誘導式信号変換器
55a 1次コイル
55b 2次コイル
56 コンデンサ
71 AC線
72 AC線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌及び給電装置を充電ケーブルで接続し、該充電ケーブルを介して前記車輌に搭載された電力線通信装置及び前記給電装置の間で電力線通信を行う電力線通信システムにおいて、
前記充電ケーブルは2本の電力供給用配線を含み、
前記電力線通信装置は、
前記充電ケーブルに含まれる前記2本の電力供給用配線にそれぞれ接続される2本の電力供給用内部配線と、
該2本の電力供給用内部配線に、フィルタ回路を介して接続された一次コイル及び該一次コイルに電磁的に結合された二次コイルを有する電磁誘導式の信号変換器と
を有し、
前記給電装置は、
前記充電ケーブルの電力供給用配線にそれぞれ接続される2本の電力供給用内部配線と、
該2本の電力供給用内部配線に、フィルタ回路を介して接続された一次コイル及び該一次コイルに電磁的に結合された二次コイルを有する電磁誘導式の信号変換器と
を有し、
前記電力線通信装置の2本の電力供給用内部配線及びフィルタ回路と、前記充電ケーブルの2本の電力供給用配線と、前記給電装置の2本の電力供給用内部配線及びフィルタ回路とによって、電流ループ回路を構成するようにしてあり、
前記電力線通信装置及び前記給電装置は、各信号変換器によって、前記充電ケーブルへの信号の重畳及び前記充電ケーブルに重畳された信号の取り出しを行うようにしてあること
を特徴とする電力線通信システム。
【請求項2】
前記電力線通信装置は、前記車輌に搭載され、前記充電ケーブルが接続されるコネクタ装置を有し、
該コネクタ装置は、前記信号変換器を一体化してなる
ことを特徴とする請求項1に記載の電力線通信システム。
【請求項3】
複数の接続端子と、該複数の接続端子を収容するコネクタ本体と、2本の電力用供給用内部配線とを含み、前記接続端子に接続された複数の内部配線とを備えるコネクタ装置において、
前記2本の電力用供給用内部配線に接続する信号変換器を一体化してなることを特徴とするコネクタ装置。
【請求項4】
前記複数の接続端子を収容する収容部と、
前記収容部に突設され、前記複数の内部配線を挿通させる筒状部と
を備え、
前記信号変換器は、
前記筒状部の外周りに配された環状磁性体と、
該環状磁性体に巻回され、フィルタ回路を介して前記2本の電力供給用内部配線間に接続された第1の信号配線と、
前記環状磁性体に巻回された第2の信号配線と
を備える
ことを特徴とする請求項3に記載のコネクタ装置。
【請求項5】
前記環状磁性体は、前記筒状部に外嵌するようにしてあり、
前記筒状部には、前記環状磁性体に巻回された前記第1の信号配線及び前記第2の信号配線の巻回部分を収める切り欠きが形成してあること
を特徴とする請求項4に記載のコネクタ装置。
【請求項6】
前記フィルタ回路は、
前記第1の信号配線の一端及び一方の前記電力供給用内部配線に接続されたコンデンサと、
前記第1の信号配線の他端及び他方の前記電力供給用内部配線に接続されたコンデンサと
を有すること
を特徴とする請求項4又は請求項5に記載のコネクタ装置。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6のいずれか1つに記載のコネクタ装置と、
前記第2の信号配線に接続され、前記コネクタ装置の前記環状磁性体、前記第1の信号配線及び第2の信号配線にて構成される電磁誘導式の信号変換器により電力線通信を行う電力線通信部と
を備えること
を特徴とする電力線通信装置。
【請求項8】
車輌に接続された充電ケーブルを介して外部装置との間で電力線通信を行う電力線通信装置において、
前記充電ケーブルは2本の電力供給用配線を含み、
前記充電ケーブルの電力供給用配線にそれぞれ接続される2本の電力供給用内部配線と、
該2本の電力供給用内部配線に、フィルタ回路を介して接続された一次コイル及び該一次コイルに電磁的に結合された二次コイルを有する電磁誘導式の信号変換器と
を備え、
該信号変換器によって、前記充電ケーブルへの信号の重畳及び前記充電ケーブルに重畳された信号の取り出しを行うようにしてある
ことを特徴とする電力線通信装置。
【請求項9】
前記車輌に搭載され、前記充電ケーブルが接続されるコネクタ装置を備え、
該コネクタ装置は、前記信号変換器を一体化してなる
ことを特徴とする請求項8に記載の電力線通信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−199903(P2012−199903A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244747(P2011−244747)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】