電動アクチュエータ、電動アクチュエータ動力切断方法、及び電動アクチュエータ動力切断装置
【課題】固着状態が発生した際に駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行することを容易に実現でき、更に、機構の簡素化及び構造の小型化を図ることができる、電動アクチュエータを提供する。
【解決手段】ケース部37、内側軸部38、支持部39、連結部材40を含む動力切断機構24が備えられる。ケース部37が電動モータ21に固定される。ケース部37の内側の内側軸部38がスクリュー部30に固定される。支持部39は、ケース部37及び内側軸部38の間で軸方向と平行な荷重を支持し、内側軸部38に嵌め込まれ、ケース部37に対して軸方向溝及び周方向溝にて摺動可能に設置される。連結部材40は、所定の大きさ以上のトルクが作用したときに、ケース部37及び内側軸部38の連結を切り離して動力の伝達を切断する。
【解決手段】ケース部37、内側軸部38、支持部39、連結部材40を含む動力切断機構24が備えられる。ケース部37が電動モータ21に固定される。ケース部37の内側の内側軸部38がスクリュー部30に固定される。支持部39は、ケース部37及び内側軸部38の間で軸方向と平行な荷重を支持し、内側軸部38に嵌め込まれ、ケース部37に対して軸方向溝及び周方向溝にて摺動可能に設置される。連結部材40は、所定の大きさ以上のトルクが作用したときに、ケース部37及び内側軸部38の連結を切り離して動力の伝達を切断する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータと、ナット部及びスクリュー部を有して回転方向の駆動力を直線方向に変換して伝達する動力伝達機構と、直線方向に変位して駆動力を出力する出力部と、を備える電動アクチュエータ、電動アクチュエータにおける駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断する、電動アクチュエータ動力切断方法及び電動アクチュエータ動力切断装置、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、航空機等、種々の分野において、各種機器を駆動するアクチュエータとして、直線方向に沿って伸縮するように変位することで各種機器を駆動する電動アクチュエータが用いられている。このような電動アクチュエータは、電動モータと、ナット部及びスクリュー部を有して回転方向の駆動力を直線方向に変換して伝達する動力伝達機構と、直線方向に変位して駆動力を出力する出力部と、を備えて構成されている。このような電動アクチュエータでは、上記の動力伝達機構において、こじり或いは焼き付き等の原因によって固着状態(ジャム状態)が発生してしまうことがある。
【0003】
上記のような固着状態の発生に備え、電動アクチュエータにおいては、固着状態が発生した場合であっても駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行できることで、駆動対象の機器の作動の信頼性を確保可能であることが重要となる。例えば、電動アクチュエータでは、固着状態が発生した電動アクチュエータとは異なる他のアクチュエータによって機器が駆動される場合に他のアクチュエータの作動を阻害せずに追従して作動可能な構造が設けられることで、機器の作動の信頼性が確保されることになる。
【0004】
特許文献1においては、第1のアクチュエータと第2のアクチュエータとを同軸線上で逆方向に延びるように設けられた電動アクチュエータが開示されている。そして、この電動アクチュエータでは、第1のアクチュエータ及び第2のアクチュエータのそれぞれが、ボールスクリュー機構としての動力伝達機構と電動モータとを備えて構成されている。これにより、この電動アクチュエータは、第1及び第2のアクチュエータのうちの一方のアクチュエータの動力伝達機構において固着状態が発生した場合であっても、駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行することができる。即ち、第1及び第2のアクチュエータのうち固着状態が発生した一方のアクチュエータと同軸線上で逆方向に延びるように設けられた他方のアクチュエータによって、駆動対象の機器を作動させることができる。
【0005】
また、特許文献2においては、第2実施形態として、駆動源としての電動モータ、出力部、ボールスクリュー機構としての動力伝達機構、動力伝達機構と出力部との間における駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断可能な動力切断機構、が設けられた電動アクチュエータが開示されている。この電動アクチュエータにおける上記の動力切断機構は、動力伝達機構のナット部と出力部との間における連結を切断可能な電動クラッチ機構として構成されている。
【0006】
上記の電動クラッチ機構は、上記の駆動源としての電動モータとは別個のクラッチ駆動用電動モータを備えている。そして、この電動クラッチ機構は、クラッチ駆動用電動モータの駆動力を伝達するギヤ機構、ギヤ機構とナット部と出力部との間に設けられてこれらに対する噛み合い構造及び係合構造が設けられたロッキングプレート、等の機構が更に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5214972号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0103928号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された電動アクチュエータによると、固着状態が発生した際には、駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行することができる。しかしながら、この電動アクチュエータの場合、動力伝達機構及び電動モータをそれぞれ備えるとともに同軸上で逆方向に延びるように設けられた二重のアクチュエータが必要となる。このため、機構が複雑化するとともに構造も大型化してしまうことになる。また、このことに伴い、重量の増大も招いてしまうことになる。
【0009】
特許文献2に開示された電動アクチュエータによると、固着状態が発生した際には、前述の電動クラッチ機構が作動することで、ナット部と出力部との連結を切り離し、駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行することができる。しかしながら、この電動アクチュエータの場合、駆動源としての電動モータとは別個のクラッチ駆動用電動モータが必要となる。また、クラッチ駆動用電動モータに加え、ギヤ機構、及び前述の複雑な形状を有するロッキングプレート、等の機構も必要となる。このため、機構が複雑化するとともに構造も大型化してしまうことになる。また、このことに伴い、重量の増大も招いてしまうことになる。
【0010】
更に、特許文献2に開示された電動アクチュエータによると、ナット部と出力部との連結を切り離す際、ナット部と出力部との間で軸方向と平行な方向に作用している大きな荷重(軸力)に抗して、電動クラッチ機構を作動させる必要がある。このため、ナット部と出力部との連結を切り離すためには、大出力のクラッチ駆動用電動モータが必要となる。この場合、更に、構造の大型化と重量の増大を招いてしまうことになる。よって、出力が小さい小型のクラッチ駆動用電動モータの場合、ナット部と出力部との連結を切り離して駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行することが難しいという問題がある。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、固着状態(ジャム状態)が発生した際に駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行することを容易に実現でき、更に、機構の簡素化及び構造の小型化を図ることができる、電動アクチュエータと、その電動アクチュエータを備える電動アクチュエータ動力切断装置、及びその電動アクチュエータにおいて用いられる電動アクチュエータ動力切断方法、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための第1発明に係る電動アクチュエータは、回転方向の駆動力を発生させる電動モータと、ナット部及びスクリュー部を有し、前記ナット部及び前記スクリュー部が相対回転することで、前記電動モータの回転方向の駆動力を直線方向の駆動力に変換して伝達する動力伝達機構と、前記ナット部及び前記スクリュー部のうち直線方向に変位する直線変位部ととともに変位して直線方向の駆動力を出力する出力部と、を備える電動アクチュエータに関する。そして、第1発明に係る電動アクチュエータは、前記ナット部及び前記スクリュー部のうち前記電動モータの回転が伝達されて回転する回転部と前記電動モータとの間における駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断可能な動力切断機構を更に備え、前記動力切断機構は、中空で筒状の部分を有し、前記回転部及び前記電動モータの一方に対して固定され又はギヤ部を介して連結されるケース部と、軸状の部分を有し、前記ケース部の内側に設置されるとともに前記回転部及び前記電動モータの他方に対して固定され又はギヤ部を介して連結される内側軸部と、前記ケース部及び前記内側軸部の間において当該ケース部及び当該内側軸部の軸方向と平行な方向に作用する荷重を支持可能に設置され、前記ケース部及び前記内側軸部の一方に対して一体に設けられ又は嵌め込まれるとともに、前記ケース部及び前記内側軸部の他方に対して転動可能又は摺動可能な支持部と、前記ケース部と前記内側軸部とを連結する連結部材と、を含み、前記ケース部及び前記内側軸部の他方には、前記支持部が転動可能又は摺動可能であって前記ケース部及び前記内側軸部の軸方向と平行に延びる軸方向溝、及び、前記支持部が転動可能又は摺動可能であって前記ケース部及び前記内側軸部の周方向に沿って延びる周方向溝が、設けられ、前記連結部材は、前記ケース部及び前記内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに、前記ケース部及び前記内側軸部の連結を切り離して動力の伝達を切断することを特徴とする。
【0013】
この構成によると、電動アクチュエータにおいて、ナット部及びスクリュー部のうちの回転部と電動モータとの間の駆動力の伝達経路の連結が切り離されていない通常の作動状態では、連結部材を介して、ケース部及び内側軸部との間で動力が伝達されている。一方、動力伝達機構における固着状態(ジャム状態)が発生した際には、ケース部及び内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用し、連結部材が、ケース部及び内側軸部の連結を切り離して動力の伝達を切断する。このとき、動力切断機構において軸方向と平行な方向に作用している荷重(軸力)は、ケース部及び内側軸部の一方に一体に又は嵌め込まれた支持部と、ケース部及び内側軸部の他方における周方向溝を区画する部分との間で、支持される。これにより、連結部材に上記の軸力が作用してしまうことを抑制することができる。よって、動力伝達機構において固着状態が発生した際にケース部及び内側軸部の間で生じる所定の大きさ以上のトルクが連結部材に作用し、容易に、ケース部及び内側軸部の連結が切り離されることになる。
【0014】
連結部材がケース部及び内側軸部の連結を切り離した状態になると、ケース部及び内側軸部の間で軸方向を中心とした回転方向の相対変位が生じ、支持部が周方向溝に沿って相対変位することになる。そして、支持部は、周方向溝に沿って相対変位することで、軸方向溝に移動可能となる。これにより、支持部が軸方向に沿って相対移動可能となり、ケース部及び内側軸部が、軸方向に沿って互いに相対変位することが可能となる。よって、動力伝達機構において固着状態が発生した際には、軸力の影響をほとんど受けずに連結部材が動力伝達を切断するように作動し、ケース部及び内側軸部の軸方向の相対変位が可能な状態となる。このため、この電動アクチュエータによると、駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行することを容易に実現できることになる。
【0015】
また、上記の構成の電動アクチュエータによると、特許文献1に開示された電動アクチュエータのように二重にアクチュエータが設けられる必要がない。更に、上記の構成の電動アクチュエータによると、特許文献2に開示された電動アクチュエータのような構造も不要となる。即ち、上記の構成の電動アクチュエータによると、駆動源としての電動モータとは別個のクラッチ駆動用電動モータ、ギヤ機構、複雑な形状を有するロッキングプレート、等の機構も不要となる。よって、上記の構成の電動アクチュエータによると、機構の簡素化及び構造の小型化を図ることができる。
【0016】
従って、上記の構成によると、固着状態が発生した際に駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行することを容易に実現でき、更に、機構の簡素化及び構造の小型化を図ることができる、電動アクチュエータを提供することができる。
【0017】
第2発明に係る電動アクチュエータは、第1発明の電動アクチュエータにおいて、前記支持部は、ボール状に形成され、前記ケース部及び前記内側軸部の一方に対して嵌め込まれていることを特徴とする。
【0018】
この構成によると、支持部が、ケース部又は内側軸部に嵌め込めまれるボール状に形成される。このため、ケース部及び内側軸部の一方に保持されて他方に対して滑らかに転動又は摺動する支持部の構造を容易に形成することができる。
【0019】
第3発明に係る電動アクチュエータは、第2発明の電動アクチュエータにおいて、前記ケース部及び前記内側軸部の一方には、前記支持部が嵌め込まれるように凹み形成された凹み部が設けられ、前記凹み部は、半球状の穴として、或いは、長穴状の溝として設けられていることを特徴とする。
【0020】
この構成によると、ボール状の支持部が嵌め込まれる凹み部が、半球状の穴或いは長穴状の溝として設けられる。このため、ケース部及び内側軸部の他方に対して滑らかに転動又は摺動させるようにボール状の支持部を容易に保持することができる。また、凹み部が長穴状の溝として設けられる場合は、ケース部及び内側軸部の他方に対してより滑らかに転動させるようにボール状の支持部を保持することができる。
【0021】
第4発明に係る電動アクチュエータは、第1発明乃至第3発明のいずれかの電動アクチュエータにおいて、前記連結部材は、前記ケース部及び前記内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに破断するピン状の部材として、或いは、前記ケース部及び前記内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに前記ケース部及び前記内側軸部のいずれかとの係合が解除されるクラッチ部材として、設けられていることを特徴とする。
【0022】
この構成によると、連結部材が、所定の大きさ以上の負荷で破断するピン状の部材、或いは所定の大きさ以上の負荷で連結のための係合を解除するクラッチ部材として設けられる。このため、ケース部及び内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに、ケース部及び内側軸部の連結を切り離して動力の伝達を切断する連結部材を簡素な構造で実現することができる。
【0023】
また、前述の目的を達成するための第5発明に係る電動アクチュエータ動力切断方法は、回転方向の駆動力を発生させる電動モータと、ナット部及びスクリュー部を有し、前記ナット部及び前記スクリュー部が相対回転することで、前記電動モータの回転方向の駆動力を直線方向の駆動力に変換して伝達する動力伝達機構と、前記ナット部及び前記スクリュー部のうち直線方向に変位する直線変位部ととともに変位して直線方向の駆動力を出力する出力部と、を含む電動アクチュエータにおいて用いられ、前記ナット部及び前記スクリュー部のうち前記電動モータの回転が伝達されて回転する回転部と前記電動モータとの間における駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断する、電動アクチュエータ動力切断方法に関する。そして、第5発明に係る電動アクチュエータ動力切断方法は、前記伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断可能な動力切断機構を更に含む前記電動アクチュエータを制御する制御ステップを備え、前記動力切断機構は、中空で筒状の部分を有し、前記回転部及び前記電動モータの一方に対して固定され又はギヤ部を介して連結されるケース部と、軸状の部分を有し、前記ケース部の内側に設置されるとともに前記回転部及び前記電動モータの他方に対して固定され又はギヤ部を介して連結される内側軸部と、前記ケース部及び前記内側軸部の間において当該ケース部及び当該内側軸部の軸方向と平行な方向に作用する荷重を支持可能に設置され、前記ケース部及び前記内側軸部の一方に対して一体に設けられ又は嵌め込まれるとともに、前記ケース部及び前記内側軸部の他方に対して転動可能又は摺動可能な支持部と、前記ケース部と前記内側軸部とを連結する連結部材と、を含み、前記ケース部及び前記内側軸部の他方には、前記支持部が転動可能又は摺動可能であって前記ケース部及び前記内側軸部の軸方向と平行に延びる軸方向溝、及び、前記支持部が転動可能又は摺動可能であって前記ケース部及び前記内側軸部の周方向に沿って延びる周方向溝が、設けられ、前記制御ステップでは、前記動力伝達機構における固着状態が検知されたときに、前記電動アクチュエータの作動時における上限のトルクの大きさとして設定された上限トルク値を超えるトルクを発生可能な電流が前記電動モータに所定時間供給され、前記上限トルク値を超えるトルクが前記電動モータから出力されることで、前記ケース部及び前記内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用し、前記連結部材が前記ケース部及び前記内側軸部の連結を切り離して動力の伝達を切断することを特徴とする。
【0024】
この構成によると、第1発明と同様の効果を奏することができる。即ち、電動アクチュエータにおいて、固着状態が発生した際に駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行することを容易に実現でき、更に、機構の簡素化及び構造の小型化を図ることができる。そして、この電動アクチュエータ動力切断方法によると、制御ステップでは、固着状態検知時に上限トルク値を超えるトルクを発生可能な電流を所定時間のみ電動モータに供給することで、容易に、ナット部及びスクリュー部のうちの回転部と電動モータとの間の駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断することができる。また、上記の所定時間は、ごく短い時間に設定されていてもよい。この場合であっても、連結部材に所定の大きさ以上の負荷を付与してケース部及び内側軸部の連結を切り離すことができる。尚、特許文献2に開示された電動アクチュエータの場合、仮に固着状態が誤って検知されたときであっても、クラッチ駆動用電動モータが作動するため、動力の伝達が強制的に切断されてしまうことになる。しかしながら、上記の構成によると、仮に固着状態が誤って検知され、上限トルク値を超えるトルクを発生可能な電流が電動モータに供給された場合であっても、実際に固着状態が発生していなければ、ケース部及び内側軸部の間の連結は切り離されず、動力の伝達が誤って切断されてしまうことも防止できる。
【0025】
また、前述の目的を達成するための第6発明に係る電動アクチュエータ動力切断装置は、回転方向の駆動力を発生させる電動モータと、ナット部及びスクリュー部を有し、前記ナット部及び前記スクリュー部が相対回転することで、前記電動モータの回転方向の駆動力を直線方向の駆動力に変換して伝達する動力伝達機構と、前記ナット部及び前記スクリュー部のうち直線方向に変位する直線変位部ととともに変位して直線方向の駆動力を出力する出力部と、を含む電動アクチュエータを備え、前記ナット部及び前記スクリュー部のうち前記電動モータの回転が伝達されて回転する回転部と前記電動モータとの間における駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断する、電動アクチュエータ動力切断装置に関する。そして、第6発明に係る電動アクチュエータ動力切断装置は、前記電動アクチュエータに設けられ、前記伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断可能な動力切断機構と、前記電動アクチュエータを制御する制御部と、を更に備え、前記動力切断機構は、中空で筒状の部分を有し、前記回転部及び前記電動モータの一方に対して固定され又はギヤ部を介して連結されるケース部と、軸状の部分を有し、前記ケース部の内側に設置されるとともに前記回転部及び前記電動モータの他方に対して固定され又はギヤ部を介して連結される内側軸部と、前記ケース部及び前記内側軸部の間において当該ケース部及び当該内側軸部の軸方向と平行な方向に作用する荷重を支持可能に設置され、前記ケース部及び前記内側軸部の一方に対して一体に設けられ又は嵌め込まれるとともに、前記ケース部及び前記内側軸部の他方に対して転動可能又は摺動可能な支持部と、前記ケース部と前記内側軸部とを連結する連結部材と、を含み、前記ケース部及び前記内側軸部の他方には、前記支持部が転動可能又は摺動可能であって前記ケース部及び前記内側軸部の軸方向と平行に延びる軸方向溝、及び、前記支持部が転動可能又は摺動可能であって前記ケース部及び前記内側軸部の周方向に沿って延びる周方向溝が、設けられ、前記制御部は、前記動力伝達機構における固着状態が検知されたときに、前記電動アクチュエータの作動時における上限のトルクの大きさとして設定された上限トルク値を超えるトルクを発生可能な電流を前記電動モータに所定時間供給し、前記上限トルク値を超えるトルクが前記電動モータから出力されることで、前記ケース部及び前記内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用し、前記連結部材が前記ケース部及び前記内側軸部の連結を切り離して動力の伝達を切断することを特徴とする。
【0026】
この構成によると、第1発明と同様の効果を奏することができる。即ち、電動アクチュエータにおいて、固着状態が発生した際に駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行することを容易に実現でき、更に、機構の簡素化及び構造の小型化を図ることができる。そして、この電動アクチュエータ動力切断装置によると、制御部の制御に基づいて、固着状態検知時に上限トルク値を超えるトルクを発生可能な電流が所定時間のみ電動モータに供給されることで、容易に、ナット部及びスクリュー部のうちの回転部と電動モータとの間の駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断することができる。また、上記の所定時間は、ごく短い時間に設定されていてもよい。この場合であっても、連結部材に所定の大きさ以上の負荷を付与してケース部及び内側軸部の連結を切り離すことができる。また、上記の構成によると、仮に固着状態が誤って検知され、上限トルク値を超えるトルクを発生可能な電流が電動モータに供給された場合であっても、実際に固着状態が発生していなければ、ケース部及び内側軸部の間の連結は切り離されず、動力の伝達が誤って切断されてしまうことも防止できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、固着状態が発生した際に駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行することを容易に実現でき、更に、機構の簡素化及び構造の小型化を図ることができる、電動アクチュエータと、その電動アクチュエータを備える電動アクチュエータ動力切断装置、及びその電動アクチュエータにおいて用いられる電動アクチュエータ動力切断方法、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電動アクチュエータと、その電動アクチュエータを備える電動アクチュエータ動力切断装置と、を示す模式図である。
【図2】図1に示す電動アクチュエータにおける動力切断装置の平面図及び斜視図である。
【図3】図2に示す動力切断機構の側面図及び断面図である。
【図4】図2に示す動力切断機構の平面図及び断面図であって一部切り欠き状態で示す図である。
【図5】図4に示す一部切り欠き状態の動力切断機構を示す斜視図である。
【図6】図4に示す一部切り欠き状態の動力切断機構を示す側面図及び断面図である。
【図7】図4に示す動力切断機構における内側軸部に設けられた凹み部の形状と変形例に係る凹み部の形状とを示す模式図である。
【図8】図1に示す電動アクチュエータ動力切断装置の作動を説明するためのフロー図である。
【図9】図4に示す動力切断機構が作動して動力が切断された状態を示す動力切断機構の平面図及び断面図である。
【図10】図5に示す動力切断機構が作動して動力が切断された状態を示す動力切断機構の斜視図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る電動アクチュエータにおける動力切断装置の平面図及び斜視図である。
【図12】図11に示す動力切断機構の側面図及び断面図である。
【図13】図11に示す動力切断機構の平面図及び側面図であって一部切り欠き状態で示す図である。
【図14】本発明の第3実施形態に係る電動アクチュエータにおける動力切断機構の側面図及び斜視図であって、一部切り欠き状態で示す図である。
【図15】本発明の第4実施形態に係る電動アクチュエータと、その電動アクチュエータを備える電動アクチュエータ動力切断装置と、を示す模式図である。
【図16】本発明の第5実施形態に係る電動アクチュエータと、その電動アクチュエータを備える電動アクチュエータ動力切断装置と、を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、電動モータと、ナット部及びスクリュー部を有して回転方向の駆動力を直線方向に変換して伝達する動力伝達機構と、直線方向に変位して駆動力を出力する出力部と、を備える電動アクチュエータ、電動アクチュエータにおける駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断する、電動アクチュエータ動力切断方法及び電動アクチュエータ動力切断装置に関して広く適用することができるものである。また、本実施形態は、各種機器を駆動する電動アクチュエータに関して広く用いることができる。例えば、本実施形態は、航空機、ヘリコプター、或いは、飛しょう体に設置された機器を駆動するための電動アクチュエータ、その電動アクチュエータを用いる電動アクチュエータ動力切断方法、その電動アクチュエータを備える電動アクチュエータ動力切断装置として実施することができる。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電動アクチュエータ1と、その電動アクチュエータ1を備える電動アクチュエータ動力切断装置10と、を示す模式図である。図1に示す電動アクチュエータ1及び電動アクチュエータ動力切断装置10は、例えば、航空機に設置される機器としての動翼を駆動するための電動アクチュエータ、及びその電動アクチュエータを備える電動アクチュエータ動力切断装置として用いられる。
【0031】
図1の模式図に示すように、電動アクチュエータ1は、ハウジング20、電動モータ21、動力伝達機構22、出力部23、動力切断機構24、位置検出器25、等を備えて構成されている。この電動アクチュエータ1は、固定側の機器にハウジング20が設置され、可動側の機器に出力部23が連結される。そして、ハウジング20に対して出力部23が直線方向に沿って伸縮するように変位することで可動側の機器を駆動する。例えば、電動アクチュエータ1が航空機の動翼を駆動するアクチュエータとして用いられる場合であれば、ハウジング20が翼に対して揺動自在に設置され、出力部23が動翼に対して揺動自在に設置される。そして、ハウジング20に対して出力部23が直線方向に沿って伸縮するように変位することで動翼が揺動するように駆動される。
【0032】
電動モータ21は、電流が供給されることで回転方向の駆動力を発生させる駆動源として設けられている。そして、電動モータ21は、ハウジング20に設置され、ステータ26、ステータ26に対して回転するロータ27、ステータ26に対するロータ26の回転数を検出する回転数検出器として設けられたレゾルバ28、等を備えて構成されている。また、電動モータ21は、正逆回転可能動作が可能であって、後述する制御ユニット34のアクチュエータコントローラ36からの指令に基づいてフィードバック制御が行われる。
【0033】
動力伝達機構22は、同軸心を中心として互いに相対回転可能に設けられたナット部29及びスクリュー部30と、ナット部29及びスクリュー部30の間に配置される複数のボール31と、を備えて構成されている。即ち、本実施形態では、動力伝達機構22は、ボールスクリュー機構として設けられ、複数のボール31が、ナット部29の内周に設けられたネジ溝とスクリュー部30の外周に設けられたネジ溝との間で転動しながら循環するように構成されている。
【0034】
そして、スクリュー部30は、軸受32によってハウジング20に対して回転自在に支持されてロータ27とともに回転する後述の動力切断機構24とともに回転自在に支持されている。一方、ナット部29は、ハウジング20に対してスライド移動自在に支持されている。これにより、動力伝達機構22は、ナット部29及びスクリュー部30が相対回転することで、電動モータ21の回転方向の駆動力を直線方向の駆動力に変換して伝達するように構成されている。
【0035】
また、本実施形態では、スクリュー部30がその軸心を中心として回転することでナット部29がその軸方向と平行に変位する。即ち、本実施形態の動力伝達機構22では、ナット部29及びスクリュー部30のうち直線方向に変位する直線変位部をナット部29が構成している。そして、ナット部29及びスクリュー部30のうち電動モータ21の回転が伝達されて回転する回転部をスクリュー部30が構成している。
【0036】
尚、動力伝達機構22は、ナット部及びスクリュー部が相対回転することで電動モータの回転方向の駆動力を直線方向の駆動力に変換して伝達する機構であればよく、ボールスクリュー機構以外の機構として構成されていてもよい。例えば、アクメスクリュー機構、或いは、ローラスクリュー機構として構成されていてもよい。
【0037】
出力部23は、本実施形態における直線変位部であるナット部29とともに変位して直線方向の駆動力を出力する部分として設けられている。即ち、出力部23は、電動モータ21が作動してその回転方向の駆動力を動力伝達機構22が直線方向に変換することで、ナット部29とともにハウジング20に対して直線方向に変位し、直線方向の駆動力を連結された駆動対象の機器に対して出力する。尚、出力部23は、ナット部29と一体に形成されていてもよく、また、ナット部29に対して直接に或いは他の部材を介して固定されていてもよい。
【0038】
また、出力部23には、ロードセンサ33が設置されている。ロードセンサ33は、例えば、歪ゲージを備え、出力部23に作用している荷重の値を電気信号として検出するように構成されている。ロードセンサ33にて出力部23に作用する荷重の値として検出された電気信号である荷重信号S1は、後述する制御ユニット34におけるアクチュエータコントローラ36に送信される。
【0039】
位置検出器25は、本体ケース25a及びこの本体ケース25aに対して変位するプローブ25bを有し、本体ケース25aに対するプローブ25bの相対位置を検出する機構として設けられている。本体ケース25aは、ハウジング20に設置され、内部に1次側及び2次側のコイルが設けられている。プローブ25bは、出力部23に対して取り付けられて出力部23とともに変位するように設けられている。また、プローブ25bには、本体ケース25aのコイルの内側で相対変位する可動鉄心が設けられている。上記の構成より、位置検出器25は、ハウジング20に対する出力部23の変位量を検出するように構成されている。
【0040】
尚、位置検出器25においては、1次側のコイルが励磁された状態で可動鉄心が変位することで2次側のコイルで発生した誘起電圧に基づく信号が位置検出信号S2として出力される。そして、この出力された位置検出信号S2は、後述する制御ユニット34におけるアクチュエータコントローラ36に送信される。
【0041】
動力切断機構24は、本実施形態の回転部であるスクリュー部30と電動モータ21との間における駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断可能な機構として設けられている。以下、動力切断機構24の構造について詳しく説明する。
【0042】
図2は、動力切断機構24の平面図(図2(a))及び斜視図(図2(b))である。図3は、動力切断機構24の側面図(図3(a))及び動力切断機構24について図3(a)のA−A線矢視方向から見た断面図(図3(b))である。図4は、動力切断機構24の平面図(図4(a))及び動力切断機構24について図4(a)のB−B線矢視方向から見た断面図(図4(b))であって、一部切り欠き状態で示す図である。図5は、図4に示す一部切り欠き状態の動力切断機構24を示す斜視図である。図6は、図4に示す一部切り欠き状態の動力切断機構24を示す側面図(図6(a))及びその動力切断機構について図6(a)のC−C線矢視方向から見た断面図(図6(b))である。
【0043】
尚、図2乃至図6は、動力切断機構24の構造を模式的に示している。そして、図2乃至図6においては、構造を明瞭に示す観点から、動力切断機構24における一部構成要素の図示と、断面状態を示す斜線のハッチングの一部の図示とが、適宜省略されている。また、図2乃至図6は、動力切断機構24におけるスクリュー部30に対して固定される部分の図示と電動モータ21に対して固定される部分の図示とが省略され、模式化されている。
【0044】
図1乃至図6に示す動力切断機構24は、ケース部37、内側軸部38、複数の支持ボール39、クラッチ部材40、等を備えて構成されている。
【0045】
ケース部37は、中空で筒状の部分を有し、電動モータ21のロータ27に対して固定されている。尚、前述の通り、図2乃至図6では、ケース部37において電動モータ21に対して固定される部分の構造の図示が省略されている(図9及び図10においても同様)。そして、ケース部37は、軸受32を介して、ハウジング20に対して回転自在に支持されている(図1を参照)。
【0046】
内側軸部38は、軸状の部分を有し、ケース部37の内側に設置されるとともに、本実施形態における回転部であるスクリュー部30に対して固定されている。本実施形態では、円筒軸状に形成された内側軸部38が例示されている。尚、前述の通り、図2乃至図6では、内側軸部38においてスクリュー部30に対して固定される部分の構造の図示が省略されている(図9及び図10においても同様)。
【0047】
支持ボール39は、複数設けられ、ケース部37及び内側軸部38の間においてケース部37及び内側軸部38の軸方向と平行な方向に作用する荷重を支持可能に設置された本実施形態における支持部を構成している。そして、支持ボール39は、内側軸部39の外周の側面に対して嵌め込まれるとともに、ケース部37に対して摺動可能に設置されている。尚、図2及び図3では、支持ボール39の図示が省略されている。
【0048】
ここで、内側軸部38に嵌め込まれた支持ボール39がケース部37に対して摺動可能に設置される構成について更に詳しく説明する。支持ボール39は、ボール状に形成され、内側軸部38の側面の外周方向に沿って複数嵌め込まれている。また、本実施形態では、複数の支持ボール39は、内側軸部38の外周に対して、内側軸部38の軸方向においても二段に亘って嵌め込まれている。
【0049】
そして、内側軸部38の外周の側面には、支持ボール39がそれぞれ嵌め込まれるように凹み形成された複数の凹み部46が設けられている。凹み部46は、半球状の穴として設けられている。凹み部46は、支持ボール39の数と同数設けられており、内側軸部38の外周に沿って設けられるとともに、内側軸部38の軸方向においても二段に亘って設けられている。
【0050】
図7は、凹み部46の形状と変形例に係る凹み部(47、48)の形状とを示す模式図である。図7(a)は、凹み部46について内側軸部38の径方向の外側から見た図であり、図7(b)は、内側軸部38の軸方向と平行な断面における凹み部46及び支持ボール39を示す断面図である。図7(a)及び図7(b)に示すように、凹み部46は、半球状の穴として設けられ、この半球状の穴にボール状の支持ボール39が嵌め込まれている。
【0051】
図7(c)は、変形例に係る凹み部47について内側軸部38の径方向の外側から見た図であり、図7(d)は、内側軸部38の軸方向と平行な断面における凹み部47及び支持ボール39を示す断面図である。また、図7(e)は、変形例に係る凹み部48について内側軸部38の径方向の外側から見た図であり、図7(f)は、内側軸部38の軸方向と平行な断面における凹み部48及び支持ボール39を示す断面図である。尚、変形例を示す図7(d)及び図7(f)では、本実施形態と同様に構成される要素である内側軸部38及び支持ボール39の断面については同一の符号を付している。
【0052】
図7(c)及び図7(d)に示す凹み部47と、図7(e)及び図7(f)に示す凹み部48とは、いずれも、半球状の穴ではなく、長穴状の溝として設けられている。支持ボール39は、長穴状の溝としての凹み部(47、48)に、転動可能な状態で嵌め込まれている。そして、支持ボール39は、内側軸部38の外周における長穴状の溝としての凹み部(47、48)に転動可能に嵌め込まれることで、ケース部37に対して転動可能に設置されている。
【0053】
また、凹み部47は、長穴状に延びる方向における端部が滑らかに円弧状に延びる曲面として形成されている。一方、凹み部48は、長穴状に延びる方向における端部が平坦な端面として形成されている。尚、半球状の穴として設けられた凹み部46の径寸法が支持ボール39の径寸法よりも適宜大きく設定されていることで、凹み部46に支持ボール39が転動可能に嵌め込まれ、この支持ボール39がケース部37に対して転動可能に設置されていてもよい。
【0054】
また、ケース部37の内周には、複数の軸方向溝41と複数の周方向溝42とが設けられている。各軸方向溝41は、支持ボール39が摺動可能であってケース部37及び内側軸部38の軸方向と平行に延びる溝として設けられている。軸方向溝41におけるケース部37及び内側軸部38の軸方向と垂直な断面は、半円弧状に形成されている。そして、複数の軸方向溝41は、ケース部37の周方向に沿って並んで設けられている。これにより、複数の軸方向溝41は、複数の支持ボール39が摺動可能なスプライン溝状に設けられている。尚、軸方向溝41における半円弧状の断面における径寸法は、例えば、支持ボール39の径寸法よりも僅かに大きく設定されている。
【0055】
周方向溝42は、支持ボール39が摺動可能であってケース部37及び内側軸部38の周方向に沿って延びる溝として設けられている。周方向溝42におけるケース部37及び内側軸部38の周方向と垂直な断面(即ち、径方向及び軸方向に平行な断面)は、半円弧状に形成されている。そして、周方向溝42は、内側軸部38の外周において軸方向に二段に亘って設置された支持ボール39に対応して、ケース部37の内周において軸方向に二段に亘って設けられている。尚、周方向溝42における半円弧状の断面における径寸法は、例えば、支持ボール39の径寸法よりも僅かに大きく設定されている。
【0056】
上記のように軸方向溝41及び周方向溝42が設けられているため、後述するクラッチ部材40によるケース部37と内側軸部38との連結が解除された状態では、支持ボール39が軸方向溝41又は周方向溝42に沿って摺動して変位可能に構成されている。これにより、クラッチ部材40による上記の連結が解除された状態では、内側軸部38は、ケース部37に対して軸方向に沿って直線的に変位可能に、又はケース部37に対して周方向に沿って回転可能に、構成されている。
【0057】
次に、クラッチ部材40の構成について説明する。クラッチ部材40は、ケース部37と内側軸部38とを連結する本実施形態における連結部材を構成している。クラッチ部材40は、ケース部37の側面に向かって開口するとともにケース部37を径方向に貫通するクラッチ設置穴45に設置されている。クラッチ設置穴45は、ケース部37の周方向に沿って複数設けられており、本実施形態では、ケース部37の周方向において等角度間隔に8個のクラッチ設置穴45が設けられた形態が例示されている。そして、ケース部37においては、クラッチ部材40も複数設置されており、8個のクラッチ設置穴45のうちの一部又は全部に設置されている。例えば、ケース部37の周方向において等角度間隔に2個或いは4個のクラッチ部材40が、2個或いは4個のクラッチ設置穴45に設置されている。尚、図2及び図3では、クラッチ部材40の図示が省略されている。
【0058】
また、各クラッチ部材40は、クラッチ軸40aとクラッチボール40bとを備えて構成されている。クラッチ軸40aは、クラッチ設置穴45において、ケース部37の径方向に沿って延びるように設置されている。また、クラッチ軸40aは、円柱軸状の部分とその軸方向における中途において径方向にフランジ状に張り出した円盤状の部分とを備えて構成されている。そして、クラッチ設置孔45に設置されたクラッチ軸40aは、上記の円盤状の部分において、コイルバネ等の弾性部材として構成されたクラッチバネによって、ケース部37の径方向の内側に向かって付勢されている。尚、図4乃至図6では、クラッチ設置孔45に設置されたクラッチ部材40のみが図示されており、クラッチバネの図示が省略されている。
【0059】
また、クラッチ設置穴45におけるケース部37の径方向内側の領域の穴の径寸法は、クラッチ軸40aの円柱軸状の部分の径寸法に対応して設定されている。一方、クラッチ設置穴45におけるケース部37の径方向外側の領域の穴の径寸法は、クラッチ軸40aの円盤状の部分の径寸法に対応して設定されている。このように、クラッチ設置穴45は、ケース部37の径方向内側に向かって段状に縮径した穴として形成されている。これにより、ケース部37の径方向内側に向かってクラッチバネによって付勢されるクラッチ軸40aのケース部37の内側への突出位置が位置決めされている。
【0060】
また、クラッチボール40bは、球状の部材として設けられており、クラッチ軸40aにおけるケース部37の径方向内側における端部と内側軸部38の外周の側面との間で、ケース部37の内周から一部が露出した状態で設置されている。これにより、クラッチボール40bは、クラッチバネによって付勢されたクラッチ軸40aによって、内側軸部38の外周の側面に押し付けられている。
【0061】
また、内側軸部38の側面には、外周方向に沿って複数のクラッチ用穴43が凹み形成されている。各クラッチ用穴43は、クラッチボール40bの径寸法に対応した径寸法の半球状の穴として設けられ、ケース部37の内周から露出したクラッチボール40aに係合可能に設けられている。クラッチボール40bがクラッチ用穴43に係合している状態では、ケース部37と内側軸部38とが、連結部材であるクラッチ部材40によって連結されている。
【0062】
クラッチボール40bがクラッチ穴用43に係合してケース部37と内側軸部38とが連結された状態では、ケース部37と内側軸部38とが一体に回転するため、電動モータ21のロータ27から伝達された回転方向の駆動力が、動力伝達機構22のスクリュー部30に伝達されることになる。これにより、ケース部37及び回転軸部38を介して、ロータ27とスクリュー部30とが一体に回転することになる。
【0063】
また、図4乃至図6に示すように、クラッチ部材40によってケース部37と内側軸部38とが連結された状態では、内側軸部38に嵌め込まれた各支持ボール39は、ケース部37の内周における周方向溝42を区画する部分に対して、内側軸部38及びケース部37の軸方向と平行な方向において当接して支持されている。これにより、動力切断機構24において軸方向と平行な方向に作用している荷重(軸力)は、内側軸部38に嵌め込まれた支持ボール39と、ケース部37における周方向溝42を区画する部分との間で、支持される。
【0064】
一方、クラッチ部材40は、動力伝達機構22において固着状態が発生し、ケース部37及び内側軸部38の間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときには、内側軸部38の外周の側面によってクラッチバネの付勢力に抗してクラッチボール40bが押し戻される。このとき、クラッチ部材40は、クラッチボール40bのクラッチ用穴43に対する係合が外れるように構成されている。即ち、上記の場合には、クラッチバネの付勢力に抗してクラッチ部材40がケース部37の径方向外側に変位し、クラッチ部材40と内側軸部38との係合が解除される。これにより、クラッチ部材40は、ケース部37及び内側軸部38の間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに、ケース部37及び内側軸部38の連結を切り離して動力の伝達を切断するように構成されている。
【0065】
また、内側軸部38の外周の側面には、内側軸部38の軸方向と平行に延びる複数のクラッチ用溝44が設けられている。各クラッチ用溝44は、クラッチボール40bが摺動又は転動可能な溝として設けられている。クラッチ用溝44における内側軸部38の軸方向と垂直な断面は、半円弧状に形成されている。尚、クラッチ用溝44における半円弧状の断面における径寸法は、例えば、クラッチボール40bの径寸法よりも僅かに大きく設定されている。そして、クラッチ用溝44は、内側軸部38の周方向に沿ってクラッチ用穴43と交互に並んで設けられている。これにより、動力伝達機構22において固着状態が発生してケース部37及び内側軸部38の間で所定の大きさ以上のトルクが作用し、クラッチボール40bのクラッチ用穴43に対する係合が外れたときに、クラッチボール40bがクラッチ用溝44に嵌まり込むことになる。そして、クラッチ部材40は、クラッチ用溝44に沿って、内側軸部38の外周に対して相対変位が可能となる。
【0066】
次に、電動アクチュエータ動力切断装置10について説明する。電動アクチュエータ動力切断装置10は、本実施形態の回転部であるスクリュー部30と電動モータ21との間における駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断するように構成されている。そして、図1に示すように、電動アクチュエータ動力切断装置10は、上述した電動アクチュエータ1に加え、電動アクチュエータ10を制御する本実施形態の制御部である制御ユニット34を更に備えて構成されている。
【0067】
制御ユニット34には、ドライバ35とアクチュエータコントローラ36とが備えられている。ドライバ35は、アクチュエータコントローラ36からの指令に基づいて、図示が省略された電源から電動モータ21へ供給する電流と、電動モータ21の回転数と、を制御し、電動モータ21を駆動する。アクチュエータコントローラ36は、ドライバ35を介して、電動アクチュエータ1の作動を制御する。尚、アクチュエータコントローラ36が制御部を構成していてもよい。即ち、ドライバ35が含まれない構成で制御部が構成されてもよい。
【0068】
アクチュエータコントローラ36は、図示が省略された上位のコンピュータからの指令信号に基づいて、電動アクチュエータ1を制御する。これにより、上位のコンピュータからの指令基づいて、電動アクチュエータ1が駆動する機器の動作が制御されることになる。また、アクチュエータコントローラ36には、位置検出器25から送信される前述の位置検出信号S2が入力されることに加え、電動モータ21のレゾルバ28にてロータ26の回転数の値として検知された回転数信号S4がレゾルバ28から送信されて入力される。そして、アクチュエータコントローラ36は、位置検出信号S2と回転数信号S4とに基づいて、ドライバ35を介して電動モータ21の回転数を制御し、出力部23のハウジング20に対する位置のフィードバック制御を行う。
【0069】
また、アクチュエータコントローラ36には、ロードセンサ33から送信される前述の荷重信号S1が入力されることに加え、ドライバ35から電動モータ21に対して供給される電流の電流値として検出される電流値信号S3も入力される。電流値信号S3は、例えば、ドライバ35と電動モータ21とを接続する駆動線(図示を省略)に流れる電流の電流値を検出する電流センサ(図示を省略)にて検出され、アクチュエータコントローラ36に送信される。
【0070】
そして、アクチュエータコントローラ36は、荷重信号S1と電流値信号S3とに基づいて、動力伝達機構22におけるこじり或いは焼き付き等の原因による固着状態(ジャム状態)が発生しているか否かを検知する。例えば、アクチュエータコントローラ36は、荷重信号S1と電流値信号S3とに基づいて、出力部23に作用した荷重の値と電動モータ21に供給された電流の電流値とを比較判断し、固着状態の発生の有無を検知する。更に、具体的には、例えば、アクチュエータコントローラ36は、電動モータ21の供給された電流の電流値が所定の値よりも大きいにも関わらず、出力部23に作用した荷重の値が所定の値よりも小さい場合には、動力伝達機構22における固着状態の発生を検知するように構成されている。
【0071】
また、アクチュエータコントローラ36は、動力伝達機構22における固着状態が検知されたときには、一旦、電動モータ21に対して供給する電流の電流値の上限を設定する電流リミッタを解除する。そして、アクチュエータコントローラ36は、電動アクチュエータ1の作動時(即ち、出力部23のハウジング20に対する位置を制御する通常の作動時)における上限のトルクの大きさとして設定された上限トルク値を超えるトルクである過大トルクを発生可能な電流を電動モータ21に対して所定時間供給する。この所定時間は、ごく短い瞬間的な時間として設定されてもよい。
【0072】
上記により、上限トルク値を超える過大トルクが電動モータ21から出力されることで、ケース部37及び内側軸部38の間で所定の大きさ以上のトルクが作用する。これにより、クラッチ部材40が、ケース部37及び内側軸部38の連結を切り離して動力の伝達を切断することになる。
【0073】
次に、本実施形態に係る電動アクチュエータ動力切断方法と、電動アクチュエータ1及び電動アクチュエータ動力切断装置10の作動とについて説明する。本実施形態の電動アクチュエータ動力切断方法は、電動アクチュエータ1において用いられ、本実施形態の回転部であるスクリュー部30と電動モータ21との間における駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断する方法として構成されている。そして、電動アクチュエータ1及び電動アクチュエータ動力切断装置10が作動することで、本実施形態の電動アクチュエータ動力切断方法が実施されることになる。
【0074】
図8は、電動アクチュエータ動力切断装置10の作動を説明するためのフロー図である。また、図8のフロー図に示す処理は、本実施形態の電動アクチュエータ動力切断方法における制御ステップを構成している。即ち、図8に示す処理は、電動アクチュエータ1を制御することで動力切断機構24において動力の伝達を切断する、本実施形態の制御ステップを構成している。
【0075】
図8に示す処理は、アクチュエータコントローラ36による電動アクチュエータ1の制御の際に、例えば、アクチュエータコントローラ36における所定の演算周期ごとに、繰り返し実行される。図8に示す処理は、固着状態検知ステップS101、電流リミッタ解除ステップS102、過大トルク生成ステップS103、クラッチ作動ステップS104、を備えて構成されている。
【0076】
そして、図8に示す処理が開始されると、まず、固着状態検知ステップS101が実行される。固着状態検知ステップS101では、アクチュエータコントローラ36において、荷重信号S1と電流値信号S3とに基づいて動力伝達機構22における固着状態の発生の有無が判断される。そして、固着状態が発生していないと判断されると(ステップS101、No)、図8に示す処理は一旦終了される。一方、固着状態の発生が検知されると(ステップS101、Yes)、電流リミッタ解除ステップS102が実行され、一旦、電動モータ21に対して供給される電流の電流値の上限を設定する電流リミッタが解除される。
【0077】
電流リミッタ解除ステップS102が実行されると、次いで、過大トルク生成ステップS103が実行される。この過大トルク生成ステップS103では、電動アクチュエータ1の作動時における上限のトルクとして設定された上限トルク値を超える過大トルクを発生可能な電流が電動モータ21に所定時間供給される。これにより、電動モータ21において過大トルクが生成される。
【0078】
過大トルク生成ステップS103が実行されると、これに伴って、クラッチ作動ステップS104も実行されることになる。このクラッチ作動ステップS014では、上限トルク値を超える過大トルクが電動モータ21から出力されることで、ケース部37及び内側軸部38の間で所定の大きさ以上のトルクが作用することになる。そして、クラッチ部材40が、ケース部37及び内側軸部38の連結を切り離して動力の伝達を切断する。これにより、図8に示す処理が終了することになる。
【0079】
ここで、クラッチ作動ステップS104が実行された際における電動アクチュエータ1の動力切断機構24の作動について、図9及び図10を参照しつつ説明する。図9は、動力切断機構24が作動して動力が切断された状態を示す動力切断機構24の平面図(図9(a))及び断面図(図9(b))である。図10は、動力切断機構24が作動して動力が切断された状態を示す動力切断機構24の斜視図である。尚、図9は、図4に対応した図として一部切り欠き状態で図示されており、図9(b)は、図9(a)のD−D線矢視方向から見た断面図である。また、図10は、図5に対応した図として一部切り欠き状態で図示されている。
【0080】
図9及び図10に示すように、クラッチ作動ステップS104が実行された状態では、クラッチ部材40と内側軸部38のクラッチ用穴43との係合が解除され、ケース部37及び内側軸部38の連結が解除されている。そして、ケース部37及び内側軸部38の連結が解除されると、前述の過大トルクが電動モータ21から伝達されたケース部37が内側軸部38に対して回転する。このとき、内側軸部38はケース部37とともに回転せず、支持ボール39がケース部37の内周に対して周方向溝42に沿って摺動して相対変位することになる。
【0081】
そして、内側軸部38に対してケース部37が所定角度回転した段階で、内側軸部38のクラッチ用溝44に対応する位置において、クラッチ部材40がクラッチバネによってケース部37の内側に突出し、クラッチ部材40がクラッチ用溝44に対して嵌まり込むことになる。更に、動力伝達機構22は、上記の状態においては、各支持ボール39がケース部37の内周の各軸方向溝41に対応する位置に位置するように構成されている。これにより、各支持ボール39が各軸方向溝41に沿ってケース部37の軸方向と平行な方向に摺動して変位自在な状態となる。また、この状態では、クラッチ部材40は、クラッチ用溝44に沿って内側軸部38の軸方向と平行な方向に摺動して相対変位自在な状態となっている。
【0082】
上述のように、動力伝達機構22におけるケース部37と内側軸部38との連結が切り離されて動力の伝達が切断された状態(図9及び図10に示す状態)では、支持ボール39が嵌め込まれた内側軸部38は、ケース部37に対して軸方向と平行な方向に移動自在な状態となる。このため、電動アクチュエータ1は、出力部23が連結された機器が、固着状態が発生した電動アクチュエータ1とは異なる他のアクチュエータによって駆動される場合に、他のアクチュエータの作動を阻害せずに追従して作動可能となる。
【0083】
以上説明したように、本実施形態によると、電動アクチュエータ1において、回転部であるスクリュー部30と電動モータ21との間の駆動力の伝達経路の連結が切り離されていない通常の作動状態では、クラッチ部材40を介して、ケース部37及び内側軸部38との間で動力が伝達されている。一方、動力伝達機構22における固着状態が発生した際には、ケース部37及び内側軸部38の間で所定の大きさ以上のトルクが作用し、クラッチ部材40が、ケース部37及び内側軸部38の連結を切り離して動力の伝達を切断する。このとき、動力切断機構24において軸方向と平行な方向に作用している荷重(軸力)は、内側軸部38に嵌め込まれた支持ボール39と、ケース部37における周方向溝42を区画する部分との間で、支持される。これにより、クラッチ部材40に上記の軸力が作用してしまうことを抑制することができる。よって、動力伝達機構22において固着状態が発生した際にケース部37及び内側軸部38の間で生じる所定の大きさ以上のトルクがクラッチ部材40に作用し、容易に、ケース部37及び内側軸部38の連結が切り離されることになる。
【0084】
クラッチ部材40がケース部37及び内側軸部38の連結を切り離した状態になると、ケース部37及び内側軸部38の間で軸方向を中心とした回転方向の相対変位が生じ、支持ボール39が周方向溝42に沿って相対変位することになる。そして、支持ボール39は、周方向溝42に沿って相対変位することで、軸方向溝41に移動可能となる。これにより、支持ボール39が軸方向に沿って相対移動可能となり、ケース部37及び内側軸部38が、軸方向に沿って互いに相対変位することが可能となる。よって、動力伝達機構22において固着状態が発生した際には、軸力の影響をほとんど受けずにクラッチ部材40が動力伝達を切断するように作動し、ケース部37及び内側軸部38の軸方向の相対変位が可能な状態となる。このため、この電動アクチュエータ1によると、駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行することを容易に実現できることになる。
【0085】
また、電動アクチュエータ1によると、特許文献1に開示された電動アクチュエータのように二重にアクチュエータが設けられる必要がない。更に、電動アクチュエータ1によると、特許文献2に開示された電動アクチュエータのような構造も不要となる。即ち、電動アクチュエータ1によると、駆動源としての電動モータとは別個のクラッチ駆動用電動モータ、ギヤ機構、複雑な形状を有するロッキングプレート、等の機構も不要となる。よって、電動アクチュエータ1によると、機構の簡素化及び構造を小型化を図ることができる。
【0086】
従って、本実施形態によると、固着状態が発生した際に駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行することを容易に実現でき、更に、機構の簡素化及び構造の小型化を図ることができる、電動アクチュエータ1を提供することができる。
【0087】
また、本実施形態によると、支持部である支持ボール39が、内側軸部38に嵌め込めまれるボール状に形成される。このため、内側軸部38に保持されてケース部37に対して滑らかに摺動する支持部の構造を容易に形成することができる。
【0088】
また、本実施形態によると、ボール状の支持部である支持ボール39が嵌め込まれる凹み部46が、半球状の穴として設けられる。このため、ケース部37に対して滑らかに摺動させるように支持ボール39を容易に保持することができる。また、長穴状の溝として設けられる凹み部(47、48)の場合は、ケース部37に対してより滑らかに転動させるように支持ボール39を保持することができる。
【0089】
また、本実施形態によると、連結部材が、所定の大きさ以上の負荷で連結のための係合を解除するクラッチ部材40として設けられる。このため、ケース部37及び内側軸部38の間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに、ケース部37及び内側軸部38の連結を切り離して動力の伝達を切断する連結部材を簡素な構造で実現することができる。
【0090】
また、電動アクチュエータ動力切断装置10及び本実施形態の電動アクチュエータ動力切断方法によると、固着状態検知時に上限トルク値を超えるトルクを発生可能な電流が所定時間のみ電動モータ21に供給されることで、容易に、回転部であるスクリュー部30と電動モータ21との間の駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断することができる。
【0091】
また、電動アクチュエータ動力切断装置10及び本実施形態の電動アクチュエータ動力切断方法によると、仮に固着状態が誤って検知され、上限トルク値を超えるトルクを発生可能な電流が電動モータ21に供給された場合であっても、実際に固着状態が発生していなければ、ケース部37及び内側軸部38の間の連結は切り離されず、動力の伝達が誤って切断されてしまうことも防止できる。
【0092】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る電動アクチュエータは、第1実施形態と同様に構成されている。そして、第2実施形態の電動アクチュエータにおいて用いられる第2実施形態に係る電動アクチュエータ動力切断方法、第2実施形態の電動アクチュエータを含む第2実施形態に係る電動アクチュエータ動力切断装置も、第1実施形態と同様に構成される。但し、第2実施形態は、電動アクチュエータの動力切断機構における連結部材の形態において、第1実施形態と異なっている。以下の第2実施形態の説明においては、第1実施形態と異なる形態のみ、即ち、電動アクチュエータの動力切断機構の連結部材の形態のみを説明する。
【0093】
図11は、第2実施形態に係る電動アクチュエータの動力切断機構24aの平面図(図11(a))及び斜視図(図11(b))である。図12は、動力切断機構24aの側面図(図12(a))及び動力切断機構24aについて図12(a)のE−E線矢視方向から見た断面図(図12(b))である。図13は、一部切り欠き状態で示す動力切断機構24aの平面図(図13(a))及び図13(a)に示す動力切断機構24aについてF−F線矢視方向から見た側面図(図13(b))である。尚、第2実施形態の説明では、第1実施形態と同様に構成される要素については、図11乃至図13において同一の符号を付すことで、説明を省略する。
【0094】
図11乃至図13に示すように、動力切断機構24aにおいては、ケース部37aと内側軸部38aとを連結する連結部材が、シャーピン49として設けられている。シャーピン49は、ケース部37a及び内側軸部38aの間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに破断する円柱ピン状の部材として設けられている。また、シャーピン49には、ケース部37a及び内側軸部38aの間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに破断し易いように、側面の周方向に沿って溝状に延びるように凹み形成或いは切り欠き形成されたくびれ部分が設けられている。
【0095】
また、シャーピン49は、ケース部37a及び内側軸部38aの径方向に沿って、ケース部37aから内側軸部38aに亘って延びるように設置されている。そして、シャーピン49は、ケース部37aに対して一方の端部側が保持されるとともに、内側軸部38aに対して他方の端部側が係合するように、ケース部37a及び内側軸部38aに対して嵌め込まれて設置されている。尚、前述のくびれ部分は、ケース部37a及び内側軸部38aの径方向において、ケース部37aの内周と内側軸部38aの外周とが摺接する位置に対応して配置されている。
【0096】
また、ケース部37aは、クラッチ設置穴45が設けられておらずに1つのシャーピン設置穴45aが設けられている点において、第1実施形態のケース部37と異なっている。シャーピン設置穴45aは、ケース部37aの径方向に貫通する穴として設けられ、嵌め込まれたシャーピン49を保持可能な径寸法の穴を含んで構成されている。
【0097】
また、内側軸部38aは、クラッチ用穴43及びクラッチ用溝44が設けられておらずに1つのシャーピン用穴50が設けられている点において、第1実施形態の内側軸部38と異なっている。シャーピン用穴50は、ケース部37aに保持されてケース部37aの径方向内側に突出したシャーピン49の端部が嵌め込まれてシャーピン49に係合する穴として設けられている。
【0098】
上述した第2実施形態に係る電動アクチュエータ、電動アクチュエータ動力切断装置、電動アクチュエータ動力切断方法によると、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。そして、第2実施形態によると、連結部材が、所定の大きさ以上の負荷で破断するピン状の部材であるシャーピン49として設けられる。このため、ケース部37a及び内側軸部38aの間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに、ケース部37a及び内側軸部38aの連結を切り離して動力の伝達を切断する連結部材を簡素な構造で実現することができる。
【0099】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態に係る電動アクチュエータは、第1実施形態と同様に構成されている。そして、第3実施形態の電動アクチュエータにおいて用いられる第3実施形態に係る電動アクチュエータ動力切断方法、第3実施形態の電動アクチュエータを含む第3実施形態に係る電動アクチュエータ動力切断装置も、第1実施形態と同様に構成される。但し、第3実施形態は、電動アクチュエータの動力切断機構における連結部材の形態において、第1実施形態と異なっている。以下の第3実施形態の説明においては、第1実施形態と異なる形態のみ、即ち、電動アクチュエータの動力切断機構の連結部材の形態のみを説明する。
【0100】
図14は、第3実施形態に係る電動アクチュエータの動力切断機構24bの側面図(図14(a))及び斜視図(図14(b))であって、一部切り欠き状態で示す図である。尚、第3実施形態の説明では、第1実施形態と同様に構成される要素については、図14において同一の符号を付すことで、説明を省略する。
【0101】
図14に示すように、動力切断機構24bにおいては、ケース部37bと内側軸部38bとを連結する連結部材が、シャーピン53として設けられている。シャーピン53は、ケース部37b及び内側軸部38bの間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに破断する円柱ピン状の部材として設けられている。
【0102】
また、ケース部37bは、クラッチ設置穴45が設けられていない点と内側軸部38bに対して連結されるケース側連結部51が更に設けられている点とにおいて、第1実施形態のケース部37と異なっている。ケース側連結部51は、ケース37bにおける軸方向溝41及び周方向溝42が設けられるケース本体部分に対して軸方向に直列に配置されている。そして、このケース側連結部51は、上記のケース本体部分に対して一体に設けられた円筒状の部分として構成されている。
【0103】
また、内側軸部38bは、クラッチ用穴43及びクラッチ用溝44が設けられていない点とケース部37bに対して連結される軸側連結部52が更に設けられている点とにおいて、第1実施形態の内側軸部38と異なっている。軸側連結部52は、内側軸部38bにおける支持ボール39が嵌め込まれる軸本体部分に対して軸方向に直列に配置されている。そして、この軸側連結部52は、上記の軸本体部分に対して一体に設けられた軸状の部分として構成されている。また、軸側連結部52は、ケース側連結部51の内側に設置されている。更に、シャーピン53による連結が切断されている状態では、軸側連結部52の外周は、ケース側連結部51の内周に対して、軸方向及び周方向に摺動自在に配置されている。
【0104】
そして、シャーピン53は、ケース側連結部51及び軸側連結部52の直径方向に沿って延びるとともに、ケース側連結部51から軸側連結部52を経て更にもう一度ケース側連結部51に亘って貫通するように設置されている。また、シャーピン53は、軸側連結部52に対して中央部分が保持されるとともに、ケース側連結部51に対して両端部分が係合するように、ケース部37b及び内側軸部38bに対して嵌め込まれて設置されている。
【0105】
上述した第3実施形態に係る電動アクチュエータ、電動アクチュエータ動力切断装置、電動アクチュエータ動力切断方法によると、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。そして、第3実施形態によると、連結部材が、所定の大きさ以上の負荷で破断するピン状の部材であるシャーピン53として設けられる。このため、ケース部37b及び内側軸部38bの間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに、ケース部37b及び内側軸部38bの連結を切り離して動力の伝達を切断する連結部材を簡素な構造で実現することができる。
【0106】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態に係る電動アクチュエータは、第1実施形態と同様に構成されている。そして、第4実施形態の電動アクチュエータにおいて用いられる第4実施形態に係る電動アクチュエータ動力切断方法、第4実施形態の電動アクチュエータを含む第4実施形態に係る電動アクチュエータ動力切断装置も、第1実施形態と同様に構成される。但し、第4実施形態は、電動アクチュエータにおける電動モータと動力切断機構とが連結される形態において、第1実施形態と異なっている。以下の第4実施形態の説明においては、第1実施形態と異なる形態のみ、即ち、電動アクチュエータにおける電動モータと動力切断機構とが連結される形態のみを説明する。
【0107】
図15は、本発明の第4実施形態に係る電動アクチュエータ2と、その電動アクチュエータ2を備える電動アクチュエータ動力切断装置11と、を示す模式図である。尚、第4実施形態の説明では、第1実施形態と同様に構成される要素については、図15において同一の符号を付すことで、説明を省略する。
【0108】
図15に示すように、電動アクチュエータ2及び電動アクチュエータ動力切断装置11においては、電動モータ21と動力切断機構24とが、ギヤ部54を介して連結されている。ギヤ部54は、例えば、複数のスパーギヤを備えた減速機構として構成されている。そして、ギヤ部54における小径のピニオンギヤが電動モータ21のロータ27に対して固定され、上記の小径のピニオンギヤに噛み合う大径のスパーギヤがケース部37に固定されている。このように、ケース部37が電動モータ21に対してギヤ部54を介して連結されている。
【0109】
そして、第4実施形態に係る電動アクチュエータ、電動アクチュエータ動力切断装置、電動アクチュエータ動力切断方法によっても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0110】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第5実施形態に係る電動アクチュエータは、第1実施形態と同様に構成されている。そして、第5実施形態の電動アクチュエータにおいて用いられる第5実施形態に係る電動アクチュエータ動力切断方法、第5実施形態の電動アクチュエータを含む第5実施形態に係る電動アクチュエータ動力切断装置も、第1実施形態と同様に構成される。但し、第5実施形態は、電動アクチュエータにおける動力伝達機構の形態において、第1実施形態と異なっている。以下の第5実施形態の説明においては、第1実施形態と異なる形態のみ、即ち、電動アクチュエータにおける動力伝達機構の形態のみを説明する。
【0111】
図16は、本発明の第5実施形態に係る電動アクチュエータ3と、その電動アクチュエータ3を備える電動アクチュエータ動力切断装置12と、を示す模式図である。尚、第5実施形態の説明では、第1実施形態と同様に構成される要素については、図16において同一の符号を付すことで、説明を省略する。
【0112】
図16に示すように、電動アクチュエータ3及び電動アクチュエータ動力切断装置12においては、動力伝達機構22aは、同軸心を中心として互いに相対回転可能に設けられたナット部29a及びスクリュー部30aと、ナット部29a及びスクリュー部30aの間に配置される複数のボール31と、を備えて構成されている。即ち、動力伝達機構22aは、第1実施形態と同様にボールスクリュー機構として設けられ、複数のボール31が、ナット部29aの内周に設けられたネジ溝とスクリュー部30aの外周に設けられたネジ溝との間で転動しながら循環するように構成されている。
【0113】
しかし、動力伝達機構22aにおいては、ナット部29aが、軸受32によってハウジング20に対して回転自在に支持されてロータ27とともに回転する動力切断機構24とともに回転自在に支持されている。一方、スクリュー部30aは、ハウジング20に対してスライド移動自在に支持されている。これにより、動力伝達機構22aは、ナット部29a及びスクリュー部30aが相対回転することで、電動モータ21の回転方向の駆動力を直線方向の駆動力に変換して伝達するように構成されている。
【0114】
そして、動力伝達機構22aにおいては、ナット部29aがその軸心を中心として回転することでスクリュー部30aがその軸方向と平行に変位する。即ち、動力伝達機構22aでは、ナット部29a及びスクリュー部30aのうち直線方向に変位する直線変位部をスクリュー部30aが構成している。そして、ナット部29a及びスクリュー部30aのうち電動モータ21の回転が伝達されて回転する回転部をナット部29aが構成している。
【0115】
上述した第5実施形態に係る電動アクチュエータ、電動アクチュエータ動力切断装置、電動アクチュエータ動力切断方法によっても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0116】
以上、本発明の第1乃至第5実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0117】
(1)前述の第1実施形態では、電動モータに対してケース部が固定され、ナット部及びスクリュー部のうち電動モータの回転が伝達されて回転する回転部に対して内側軸部が固定される形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。電動モータに対して内側軸部が固定され又はギヤ部を介して連結され、回転部に対してケース部が固定される形態が実施されてもよい。
【0118】
(2)前述の第1乃至第3実施形態では、支持部が、内側軸部に対して嵌め込まれてケース部に対して摺動可能な形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。支持部が、内側軸部に対して一体に設けられた形態が実施されてもよい。また、支持部が、ケース部に対して一体に設けられ又は嵌め込まれるとともに、内側軸部に対して転動可能又は摺動可能な形態が実施されてもよい。支持部がケース部に対して一体に設けられ又は嵌め込まれた形態の場合、例えば、ケース部として、軸方向に延びる断面で半割状態に形成された半円筒状の部分が一体に組み合わされる形態のケース部が実施されてもよい。これにより、ケース部の内側に対して支持部を一体に設け又は嵌め込むことが容易となる。また、ケース部に対して支持部が一体に設けられ又は嵌め込まれる形態の場合、内側軸部において軸方向溝及び周方向溝が設けられることになる。
【0119】
(3)前述の第1乃至第3実施形態では、支持部がボール状に形成された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、支持部が、円筒ころ状に形成されてもよい。
【0120】
(4)前述の第1実施形態では、ケース部及び内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに内側軸部との係合が解除されるクラッチ部材を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。ケース部及び内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときにケース部との係合が解除されるクラッチ部材が実施されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、電動モータと、ナット部及びスクリュー部を有して回転方向の駆動力を直線方向に変換して伝達する動力伝達機構と、直線方向に変位して駆動力を出力する出力部と、を備える電動アクチュエータ、電動アクチュエータにおける駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断する、電動アクチュエータ動力切断方法及び電動アクチュエータ動力切断装置、に関して広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0122】
1 電動アクチュエータ
21 電動モータ
22 動力伝達機構
23 出力部
24 動力切断機構
37 ケース部
38 内側軸部
39 支持ボール(支持部)
40 クラッチ部材(連結部材)
41 軸方向溝
42 周方向溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータと、ナット部及びスクリュー部を有して回転方向の駆動力を直線方向に変換して伝達する動力伝達機構と、直線方向に変位して駆動力を出力する出力部と、を備える電動アクチュエータ、電動アクチュエータにおける駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断する、電動アクチュエータ動力切断方法及び電動アクチュエータ動力切断装置、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、航空機等、種々の分野において、各種機器を駆動するアクチュエータとして、直線方向に沿って伸縮するように変位することで各種機器を駆動する電動アクチュエータが用いられている。このような電動アクチュエータは、電動モータと、ナット部及びスクリュー部を有して回転方向の駆動力を直線方向に変換して伝達する動力伝達機構と、直線方向に変位して駆動力を出力する出力部と、を備えて構成されている。このような電動アクチュエータでは、上記の動力伝達機構において、こじり或いは焼き付き等の原因によって固着状態(ジャム状態)が発生してしまうことがある。
【0003】
上記のような固着状態の発生に備え、電動アクチュエータにおいては、固着状態が発生した場合であっても駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行できることで、駆動対象の機器の作動の信頼性を確保可能であることが重要となる。例えば、電動アクチュエータでは、固着状態が発生した電動アクチュエータとは異なる他のアクチュエータによって機器が駆動される場合に他のアクチュエータの作動を阻害せずに追従して作動可能な構造が設けられることで、機器の作動の信頼性が確保されることになる。
【0004】
特許文献1においては、第1のアクチュエータと第2のアクチュエータとを同軸線上で逆方向に延びるように設けられた電動アクチュエータが開示されている。そして、この電動アクチュエータでは、第1のアクチュエータ及び第2のアクチュエータのそれぞれが、ボールスクリュー機構としての動力伝達機構と電動モータとを備えて構成されている。これにより、この電動アクチュエータは、第1及び第2のアクチュエータのうちの一方のアクチュエータの動力伝達機構において固着状態が発生した場合であっても、駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行することができる。即ち、第1及び第2のアクチュエータのうち固着状態が発生した一方のアクチュエータと同軸線上で逆方向に延びるように設けられた他方のアクチュエータによって、駆動対象の機器を作動させることができる。
【0005】
また、特許文献2においては、第2実施形態として、駆動源としての電動モータ、出力部、ボールスクリュー機構としての動力伝達機構、動力伝達機構と出力部との間における駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断可能な動力切断機構、が設けられた電動アクチュエータが開示されている。この電動アクチュエータにおける上記の動力切断機構は、動力伝達機構のナット部と出力部との間における連結を切断可能な電動クラッチ機構として構成されている。
【0006】
上記の電動クラッチ機構は、上記の駆動源としての電動モータとは別個のクラッチ駆動用電動モータを備えている。そして、この電動クラッチ機構は、クラッチ駆動用電動モータの駆動力を伝達するギヤ機構、ギヤ機構とナット部と出力部との間に設けられてこれらに対する噛み合い構造及び係合構造が設けられたロッキングプレート、等の機構が更に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5214972号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0103928号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された電動アクチュエータによると、固着状態が発生した際には、駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行することができる。しかしながら、この電動アクチュエータの場合、動力伝達機構及び電動モータをそれぞれ備えるとともに同軸上で逆方向に延びるように設けられた二重のアクチュエータが必要となる。このため、機構が複雑化するとともに構造も大型化してしまうことになる。また、このことに伴い、重量の増大も招いてしまうことになる。
【0009】
特許文献2に開示された電動アクチュエータによると、固着状態が発生した際には、前述の電動クラッチ機構が作動することで、ナット部と出力部との連結を切り離し、駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行することができる。しかしながら、この電動アクチュエータの場合、駆動源としての電動モータとは別個のクラッチ駆動用電動モータが必要となる。また、クラッチ駆動用電動モータに加え、ギヤ機構、及び前述の複雑な形状を有するロッキングプレート、等の機構も必要となる。このため、機構が複雑化するとともに構造も大型化してしまうことになる。また、このことに伴い、重量の増大も招いてしまうことになる。
【0010】
更に、特許文献2に開示された電動アクチュエータによると、ナット部と出力部との連結を切り離す際、ナット部と出力部との間で軸方向と平行な方向に作用している大きな荷重(軸力)に抗して、電動クラッチ機構を作動させる必要がある。このため、ナット部と出力部との連結を切り離すためには、大出力のクラッチ駆動用電動モータが必要となる。この場合、更に、構造の大型化と重量の増大を招いてしまうことになる。よって、出力が小さい小型のクラッチ駆動用電動モータの場合、ナット部と出力部との連結を切り離して駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行することが難しいという問題がある。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、固着状態(ジャム状態)が発生した際に駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行することを容易に実現でき、更に、機構の簡素化及び構造の小型化を図ることができる、電動アクチュエータと、その電動アクチュエータを備える電動アクチュエータ動力切断装置、及びその電動アクチュエータにおいて用いられる電動アクチュエータ動力切断方法、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための第1発明に係る電動アクチュエータは、回転方向の駆動力を発生させる電動モータと、ナット部及びスクリュー部を有し、前記ナット部及び前記スクリュー部が相対回転することで、前記電動モータの回転方向の駆動力を直線方向の駆動力に変換して伝達する動力伝達機構と、前記ナット部及び前記スクリュー部のうち直線方向に変位する直線変位部ととともに変位して直線方向の駆動力を出力する出力部と、を備える電動アクチュエータに関する。そして、第1発明に係る電動アクチュエータは、前記ナット部及び前記スクリュー部のうち前記電動モータの回転が伝達されて回転する回転部と前記電動モータとの間における駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断可能な動力切断機構を更に備え、前記動力切断機構は、中空で筒状の部分を有し、前記回転部及び前記電動モータの一方に対して固定され又はギヤ部を介して連結されるケース部と、軸状の部分を有し、前記ケース部の内側に設置されるとともに前記回転部及び前記電動モータの他方に対して固定され又はギヤ部を介して連結される内側軸部と、前記ケース部及び前記内側軸部の間において当該ケース部及び当該内側軸部の軸方向と平行な方向に作用する荷重を支持可能に設置され、前記ケース部及び前記内側軸部の一方に対して一体に設けられ又は嵌め込まれるとともに、前記ケース部及び前記内側軸部の他方に対して転動可能又は摺動可能な支持部と、前記ケース部と前記内側軸部とを連結する連結部材と、を含み、前記ケース部及び前記内側軸部の他方には、前記支持部が転動可能又は摺動可能であって前記ケース部及び前記内側軸部の軸方向と平行に延びる軸方向溝、及び、前記支持部が転動可能又は摺動可能であって前記ケース部及び前記内側軸部の周方向に沿って延びる周方向溝が、設けられ、前記連結部材は、前記ケース部及び前記内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに、前記ケース部及び前記内側軸部の連結を切り離して動力の伝達を切断することを特徴とする。
【0013】
この構成によると、電動アクチュエータにおいて、ナット部及びスクリュー部のうちの回転部と電動モータとの間の駆動力の伝達経路の連結が切り離されていない通常の作動状態では、連結部材を介して、ケース部及び内側軸部との間で動力が伝達されている。一方、動力伝達機構における固着状態(ジャム状態)が発生した際には、ケース部及び内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用し、連結部材が、ケース部及び内側軸部の連結を切り離して動力の伝達を切断する。このとき、動力切断機構において軸方向と平行な方向に作用している荷重(軸力)は、ケース部及び内側軸部の一方に一体に又は嵌め込まれた支持部と、ケース部及び内側軸部の他方における周方向溝を区画する部分との間で、支持される。これにより、連結部材に上記の軸力が作用してしまうことを抑制することができる。よって、動力伝達機構において固着状態が発生した際にケース部及び内側軸部の間で生じる所定の大きさ以上のトルクが連結部材に作用し、容易に、ケース部及び内側軸部の連結が切り離されることになる。
【0014】
連結部材がケース部及び内側軸部の連結を切り離した状態になると、ケース部及び内側軸部の間で軸方向を中心とした回転方向の相対変位が生じ、支持部が周方向溝に沿って相対変位することになる。そして、支持部は、周方向溝に沿って相対変位することで、軸方向溝に移動可能となる。これにより、支持部が軸方向に沿って相対移動可能となり、ケース部及び内側軸部が、軸方向に沿って互いに相対変位することが可能となる。よって、動力伝達機構において固着状態が発生した際には、軸力の影響をほとんど受けずに連結部材が動力伝達を切断するように作動し、ケース部及び内側軸部の軸方向の相対変位が可能な状態となる。このため、この電動アクチュエータによると、駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行することを容易に実現できることになる。
【0015】
また、上記の構成の電動アクチュエータによると、特許文献1に開示された電動アクチュエータのように二重にアクチュエータが設けられる必要がない。更に、上記の構成の電動アクチュエータによると、特許文献2に開示された電動アクチュエータのような構造も不要となる。即ち、上記の構成の電動アクチュエータによると、駆動源としての電動モータとは別個のクラッチ駆動用電動モータ、ギヤ機構、複雑な形状を有するロッキングプレート、等の機構も不要となる。よって、上記の構成の電動アクチュエータによると、機構の簡素化及び構造の小型化を図ることができる。
【0016】
従って、上記の構成によると、固着状態が発生した際に駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行することを容易に実現でき、更に、機構の簡素化及び構造の小型化を図ることができる、電動アクチュエータを提供することができる。
【0017】
第2発明に係る電動アクチュエータは、第1発明の電動アクチュエータにおいて、前記支持部は、ボール状に形成され、前記ケース部及び前記内側軸部の一方に対して嵌め込まれていることを特徴とする。
【0018】
この構成によると、支持部が、ケース部又は内側軸部に嵌め込めまれるボール状に形成される。このため、ケース部及び内側軸部の一方に保持されて他方に対して滑らかに転動又は摺動する支持部の構造を容易に形成することができる。
【0019】
第3発明に係る電動アクチュエータは、第2発明の電動アクチュエータにおいて、前記ケース部及び前記内側軸部の一方には、前記支持部が嵌め込まれるように凹み形成された凹み部が設けられ、前記凹み部は、半球状の穴として、或いは、長穴状の溝として設けられていることを特徴とする。
【0020】
この構成によると、ボール状の支持部が嵌め込まれる凹み部が、半球状の穴或いは長穴状の溝として設けられる。このため、ケース部及び内側軸部の他方に対して滑らかに転動又は摺動させるようにボール状の支持部を容易に保持することができる。また、凹み部が長穴状の溝として設けられる場合は、ケース部及び内側軸部の他方に対してより滑らかに転動させるようにボール状の支持部を保持することができる。
【0021】
第4発明に係る電動アクチュエータは、第1発明乃至第3発明のいずれかの電動アクチュエータにおいて、前記連結部材は、前記ケース部及び前記内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに破断するピン状の部材として、或いは、前記ケース部及び前記内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに前記ケース部及び前記内側軸部のいずれかとの係合が解除されるクラッチ部材として、設けられていることを特徴とする。
【0022】
この構成によると、連結部材が、所定の大きさ以上の負荷で破断するピン状の部材、或いは所定の大きさ以上の負荷で連結のための係合を解除するクラッチ部材として設けられる。このため、ケース部及び内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに、ケース部及び内側軸部の連結を切り離して動力の伝達を切断する連結部材を簡素な構造で実現することができる。
【0023】
また、前述の目的を達成するための第5発明に係る電動アクチュエータ動力切断方法は、回転方向の駆動力を発生させる電動モータと、ナット部及びスクリュー部を有し、前記ナット部及び前記スクリュー部が相対回転することで、前記電動モータの回転方向の駆動力を直線方向の駆動力に変換して伝達する動力伝達機構と、前記ナット部及び前記スクリュー部のうち直線方向に変位する直線変位部ととともに変位して直線方向の駆動力を出力する出力部と、を含む電動アクチュエータにおいて用いられ、前記ナット部及び前記スクリュー部のうち前記電動モータの回転が伝達されて回転する回転部と前記電動モータとの間における駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断する、電動アクチュエータ動力切断方法に関する。そして、第5発明に係る電動アクチュエータ動力切断方法は、前記伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断可能な動力切断機構を更に含む前記電動アクチュエータを制御する制御ステップを備え、前記動力切断機構は、中空で筒状の部分を有し、前記回転部及び前記電動モータの一方に対して固定され又はギヤ部を介して連結されるケース部と、軸状の部分を有し、前記ケース部の内側に設置されるとともに前記回転部及び前記電動モータの他方に対して固定され又はギヤ部を介して連結される内側軸部と、前記ケース部及び前記内側軸部の間において当該ケース部及び当該内側軸部の軸方向と平行な方向に作用する荷重を支持可能に設置され、前記ケース部及び前記内側軸部の一方に対して一体に設けられ又は嵌め込まれるとともに、前記ケース部及び前記内側軸部の他方に対して転動可能又は摺動可能な支持部と、前記ケース部と前記内側軸部とを連結する連結部材と、を含み、前記ケース部及び前記内側軸部の他方には、前記支持部が転動可能又は摺動可能であって前記ケース部及び前記内側軸部の軸方向と平行に延びる軸方向溝、及び、前記支持部が転動可能又は摺動可能であって前記ケース部及び前記内側軸部の周方向に沿って延びる周方向溝が、設けられ、前記制御ステップでは、前記動力伝達機構における固着状態が検知されたときに、前記電動アクチュエータの作動時における上限のトルクの大きさとして設定された上限トルク値を超えるトルクを発生可能な電流が前記電動モータに所定時間供給され、前記上限トルク値を超えるトルクが前記電動モータから出力されることで、前記ケース部及び前記内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用し、前記連結部材が前記ケース部及び前記内側軸部の連結を切り離して動力の伝達を切断することを特徴とする。
【0024】
この構成によると、第1発明と同様の効果を奏することができる。即ち、電動アクチュエータにおいて、固着状態が発生した際に駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行することを容易に実現でき、更に、機構の簡素化及び構造の小型化を図ることができる。そして、この電動アクチュエータ動力切断方法によると、制御ステップでは、固着状態検知時に上限トルク値を超えるトルクを発生可能な電流を所定時間のみ電動モータに供給することで、容易に、ナット部及びスクリュー部のうちの回転部と電動モータとの間の駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断することができる。また、上記の所定時間は、ごく短い時間に設定されていてもよい。この場合であっても、連結部材に所定の大きさ以上の負荷を付与してケース部及び内側軸部の連結を切り離すことができる。尚、特許文献2に開示された電動アクチュエータの場合、仮に固着状態が誤って検知されたときであっても、クラッチ駆動用電動モータが作動するため、動力の伝達が強制的に切断されてしまうことになる。しかしながら、上記の構成によると、仮に固着状態が誤って検知され、上限トルク値を超えるトルクを発生可能な電流が電動モータに供給された場合であっても、実際に固着状態が発生していなければ、ケース部及び内側軸部の間の連結は切り離されず、動力の伝達が誤って切断されてしまうことも防止できる。
【0025】
また、前述の目的を達成するための第6発明に係る電動アクチュエータ動力切断装置は、回転方向の駆動力を発生させる電動モータと、ナット部及びスクリュー部を有し、前記ナット部及び前記スクリュー部が相対回転することで、前記電動モータの回転方向の駆動力を直線方向の駆動力に変換して伝達する動力伝達機構と、前記ナット部及び前記スクリュー部のうち直線方向に変位する直線変位部ととともに変位して直線方向の駆動力を出力する出力部と、を含む電動アクチュエータを備え、前記ナット部及び前記スクリュー部のうち前記電動モータの回転が伝達されて回転する回転部と前記電動モータとの間における駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断する、電動アクチュエータ動力切断装置に関する。そして、第6発明に係る電動アクチュエータ動力切断装置は、前記電動アクチュエータに設けられ、前記伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断可能な動力切断機構と、前記電動アクチュエータを制御する制御部と、を更に備え、前記動力切断機構は、中空で筒状の部分を有し、前記回転部及び前記電動モータの一方に対して固定され又はギヤ部を介して連結されるケース部と、軸状の部分を有し、前記ケース部の内側に設置されるとともに前記回転部及び前記電動モータの他方に対して固定され又はギヤ部を介して連結される内側軸部と、前記ケース部及び前記内側軸部の間において当該ケース部及び当該内側軸部の軸方向と平行な方向に作用する荷重を支持可能に設置され、前記ケース部及び前記内側軸部の一方に対して一体に設けられ又は嵌め込まれるとともに、前記ケース部及び前記内側軸部の他方に対して転動可能又は摺動可能な支持部と、前記ケース部と前記内側軸部とを連結する連結部材と、を含み、前記ケース部及び前記内側軸部の他方には、前記支持部が転動可能又は摺動可能であって前記ケース部及び前記内側軸部の軸方向と平行に延びる軸方向溝、及び、前記支持部が転動可能又は摺動可能であって前記ケース部及び前記内側軸部の周方向に沿って延びる周方向溝が、設けられ、前記制御部は、前記動力伝達機構における固着状態が検知されたときに、前記電動アクチュエータの作動時における上限のトルクの大きさとして設定された上限トルク値を超えるトルクを発生可能な電流を前記電動モータに所定時間供給し、前記上限トルク値を超えるトルクが前記電動モータから出力されることで、前記ケース部及び前記内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用し、前記連結部材が前記ケース部及び前記内側軸部の連結を切り離して動力の伝達を切断することを特徴とする。
【0026】
この構成によると、第1発明と同様の効果を奏することができる。即ち、電動アクチュエータにおいて、固着状態が発生した際に駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行することを容易に実現でき、更に、機構の簡素化及び構造の小型化を図ることができる。そして、この電動アクチュエータ動力切断装置によると、制御部の制御に基づいて、固着状態検知時に上限トルク値を超えるトルクを発生可能な電流が所定時間のみ電動モータに供給されることで、容易に、ナット部及びスクリュー部のうちの回転部と電動モータとの間の駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断することができる。また、上記の所定時間は、ごく短い時間に設定されていてもよい。この場合であっても、連結部材に所定の大きさ以上の負荷を付与してケース部及び内側軸部の連結を切り離すことができる。また、上記の構成によると、仮に固着状態が誤って検知され、上限トルク値を超えるトルクを発生可能な電流が電動モータに供給された場合であっても、実際に固着状態が発生していなければ、ケース部及び内側軸部の間の連結は切り離されず、動力の伝達が誤って切断されてしまうことも防止できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によると、固着状態が発生した際に駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行することを容易に実現でき、更に、機構の簡素化及び構造の小型化を図ることができる、電動アクチュエータと、その電動アクチュエータを備える電動アクチュエータ動力切断装置、及びその電動アクチュエータにおいて用いられる電動アクチュエータ動力切断方法、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電動アクチュエータと、その電動アクチュエータを備える電動アクチュエータ動力切断装置と、を示す模式図である。
【図2】図1に示す電動アクチュエータにおける動力切断装置の平面図及び斜視図である。
【図3】図2に示す動力切断機構の側面図及び断面図である。
【図4】図2に示す動力切断機構の平面図及び断面図であって一部切り欠き状態で示す図である。
【図5】図4に示す一部切り欠き状態の動力切断機構を示す斜視図である。
【図6】図4に示す一部切り欠き状態の動力切断機構を示す側面図及び断面図である。
【図7】図4に示す動力切断機構における内側軸部に設けられた凹み部の形状と変形例に係る凹み部の形状とを示す模式図である。
【図8】図1に示す電動アクチュエータ動力切断装置の作動を説明するためのフロー図である。
【図9】図4に示す動力切断機構が作動して動力が切断された状態を示す動力切断機構の平面図及び断面図である。
【図10】図5に示す動力切断機構が作動して動力が切断された状態を示す動力切断機構の斜視図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る電動アクチュエータにおける動力切断装置の平面図及び斜視図である。
【図12】図11に示す動力切断機構の側面図及び断面図である。
【図13】図11に示す動力切断機構の平面図及び側面図であって一部切り欠き状態で示す図である。
【図14】本発明の第3実施形態に係る電動アクチュエータにおける動力切断機構の側面図及び斜視図であって、一部切り欠き状態で示す図である。
【図15】本発明の第4実施形態に係る電動アクチュエータと、その電動アクチュエータを備える電動アクチュエータ動力切断装置と、を示す模式図である。
【図16】本発明の第5実施形態に係る電動アクチュエータと、その電動アクチュエータを備える電動アクチュエータ動力切断装置と、を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、電動モータと、ナット部及びスクリュー部を有して回転方向の駆動力を直線方向に変換して伝達する動力伝達機構と、直線方向に変位して駆動力を出力する出力部と、を備える電動アクチュエータ、電動アクチュエータにおける駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断する、電動アクチュエータ動力切断方法及び電動アクチュエータ動力切断装置に関して広く適用することができるものである。また、本実施形態は、各種機器を駆動する電動アクチュエータに関して広く用いることができる。例えば、本実施形態は、航空機、ヘリコプター、或いは、飛しょう体に設置された機器を駆動するための電動アクチュエータ、その電動アクチュエータを用いる電動アクチュエータ動力切断方法、その電動アクチュエータを備える電動アクチュエータ動力切断装置として実施することができる。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電動アクチュエータ1と、その電動アクチュエータ1を備える電動アクチュエータ動力切断装置10と、を示す模式図である。図1に示す電動アクチュエータ1及び電動アクチュエータ動力切断装置10は、例えば、航空機に設置される機器としての動翼を駆動するための電動アクチュエータ、及びその電動アクチュエータを備える電動アクチュエータ動力切断装置として用いられる。
【0031】
図1の模式図に示すように、電動アクチュエータ1は、ハウジング20、電動モータ21、動力伝達機構22、出力部23、動力切断機構24、位置検出器25、等を備えて構成されている。この電動アクチュエータ1は、固定側の機器にハウジング20が設置され、可動側の機器に出力部23が連結される。そして、ハウジング20に対して出力部23が直線方向に沿って伸縮するように変位することで可動側の機器を駆動する。例えば、電動アクチュエータ1が航空機の動翼を駆動するアクチュエータとして用いられる場合であれば、ハウジング20が翼に対して揺動自在に設置され、出力部23が動翼に対して揺動自在に設置される。そして、ハウジング20に対して出力部23が直線方向に沿って伸縮するように変位することで動翼が揺動するように駆動される。
【0032】
電動モータ21は、電流が供給されることで回転方向の駆動力を発生させる駆動源として設けられている。そして、電動モータ21は、ハウジング20に設置され、ステータ26、ステータ26に対して回転するロータ27、ステータ26に対するロータ26の回転数を検出する回転数検出器として設けられたレゾルバ28、等を備えて構成されている。また、電動モータ21は、正逆回転可能動作が可能であって、後述する制御ユニット34のアクチュエータコントローラ36からの指令に基づいてフィードバック制御が行われる。
【0033】
動力伝達機構22は、同軸心を中心として互いに相対回転可能に設けられたナット部29及びスクリュー部30と、ナット部29及びスクリュー部30の間に配置される複数のボール31と、を備えて構成されている。即ち、本実施形態では、動力伝達機構22は、ボールスクリュー機構として設けられ、複数のボール31が、ナット部29の内周に設けられたネジ溝とスクリュー部30の外周に設けられたネジ溝との間で転動しながら循環するように構成されている。
【0034】
そして、スクリュー部30は、軸受32によってハウジング20に対して回転自在に支持されてロータ27とともに回転する後述の動力切断機構24とともに回転自在に支持されている。一方、ナット部29は、ハウジング20に対してスライド移動自在に支持されている。これにより、動力伝達機構22は、ナット部29及びスクリュー部30が相対回転することで、電動モータ21の回転方向の駆動力を直線方向の駆動力に変換して伝達するように構成されている。
【0035】
また、本実施形態では、スクリュー部30がその軸心を中心として回転することでナット部29がその軸方向と平行に変位する。即ち、本実施形態の動力伝達機構22では、ナット部29及びスクリュー部30のうち直線方向に変位する直線変位部をナット部29が構成している。そして、ナット部29及びスクリュー部30のうち電動モータ21の回転が伝達されて回転する回転部をスクリュー部30が構成している。
【0036】
尚、動力伝達機構22は、ナット部及びスクリュー部が相対回転することで電動モータの回転方向の駆動力を直線方向の駆動力に変換して伝達する機構であればよく、ボールスクリュー機構以外の機構として構成されていてもよい。例えば、アクメスクリュー機構、或いは、ローラスクリュー機構として構成されていてもよい。
【0037】
出力部23は、本実施形態における直線変位部であるナット部29とともに変位して直線方向の駆動力を出力する部分として設けられている。即ち、出力部23は、電動モータ21が作動してその回転方向の駆動力を動力伝達機構22が直線方向に変換することで、ナット部29とともにハウジング20に対して直線方向に変位し、直線方向の駆動力を連結された駆動対象の機器に対して出力する。尚、出力部23は、ナット部29と一体に形成されていてもよく、また、ナット部29に対して直接に或いは他の部材を介して固定されていてもよい。
【0038】
また、出力部23には、ロードセンサ33が設置されている。ロードセンサ33は、例えば、歪ゲージを備え、出力部23に作用している荷重の値を電気信号として検出するように構成されている。ロードセンサ33にて出力部23に作用する荷重の値として検出された電気信号である荷重信号S1は、後述する制御ユニット34におけるアクチュエータコントローラ36に送信される。
【0039】
位置検出器25は、本体ケース25a及びこの本体ケース25aに対して変位するプローブ25bを有し、本体ケース25aに対するプローブ25bの相対位置を検出する機構として設けられている。本体ケース25aは、ハウジング20に設置され、内部に1次側及び2次側のコイルが設けられている。プローブ25bは、出力部23に対して取り付けられて出力部23とともに変位するように設けられている。また、プローブ25bには、本体ケース25aのコイルの内側で相対変位する可動鉄心が設けられている。上記の構成より、位置検出器25は、ハウジング20に対する出力部23の変位量を検出するように構成されている。
【0040】
尚、位置検出器25においては、1次側のコイルが励磁された状態で可動鉄心が変位することで2次側のコイルで発生した誘起電圧に基づく信号が位置検出信号S2として出力される。そして、この出力された位置検出信号S2は、後述する制御ユニット34におけるアクチュエータコントローラ36に送信される。
【0041】
動力切断機構24は、本実施形態の回転部であるスクリュー部30と電動モータ21との間における駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断可能な機構として設けられている。以下、動力切断機構24の構造について詳しく説明する。
【0042】
図2は、動力切断機構24の平面図(図2(a))及び斜視図(図2(b))である。図3は、動力切断機構24の側面図(図3(a))及び動力切断機構24について図3(a)のA−A線矢視方向から見た断面図(図3(b))である。図4は、動力切断機構24の平面図(図4(a))及び動力切断機構24について図4(a)のB−B線矢視方向から見た断面図(図4(b))であって、一部切り欠き状態で示す図である。図5は、図4に示す一部切り欠き状態の動力切断機構24を示す斜視図である。図6は、図4に示す一部切り欠き状態の動力切断機構24を示す側面図(図6(a))及びその動力切断機構について図6(a)のC−C線矢視方向から見た断面図(図6(b))である。
【0043】
尚、図2乃至図6は、動力切断機構24の構造を模式的に示している。そして、図2乃至図6においては、構造を明瞭に示す観点から、動力切断機構24における一部構成要素の図示と、断面状態を示す斜線のハッチングの一部の図示とが、適宜省略されている。また、図2乃至図6は、動力切断機構24におけるスクリュー部30に対して固定される部分の図示と電動モータ21に対して固定される部分の図示とが省略され、模式化されている。
【0044】
図1乃至図6に示す動力切断機構24は、ケース部37、内側軸部38、複数の支持ボール39、クラッチ部材40、等を備えて構成されている。
【0045】
ケース部37は、中空で筒状の部分を有し、電動モータ21のロータ27に対して固定されている。尚、前述の通り、図2乃至図6では、ケース部37において電動モータ21に対して固定される部分の構造の図示が省略されている(図9及び図10においても同様)。そして、ケース部37は、軸受32を介して、ハウジング20に対して回転自在に支持されている(図1を参照)。
【0046】
内側軸部38は、軸状の部分を有し、ケース部37の内側に設置されるとともに、本実施形態における回転部であるスクリュー部30に対して固定されている。本実施形態では、円筒軸状に形成された内側軸部38が例示されている。尚、前述の通り、図2乃至図6では、内側軸部38においてスクリュー部30に対して固定される部分の構造の図示が省略されている(図9及び図10においても同様)。
【0047】
支持ボール39は、複数設けられ、ケース部37及び内側軸部38の間においてケース部37及び内側軸部38の軸方向と平行な方向に作用する荷重を支持可能に設置された本実施形態における支持部を構成している。そして、支持ボール39は、内側軸部39の外周の側面に対して嵌め込まれるとともに、ケース部37に対して摺動可能に設置されている。尚、図2及び図3では、支持ボール39の図示が省略されている。
【0048】
ここで、内側軸部38に嵌め込まれた支持ボール39がケース部37に対して摺動可能に設置される構成について更に詳しく説明する。支持ボール39は、ボール状に形成され、内側軸部38の側面の外周方向に沿って複数嵌め込まれている。また、本実施形態では、複数の支持ボール39は、内側軸部38の外周に対して、内側軸部38の軸方向においても二段に亘って嵌め込まれている。
【0049】
そして、内側軸部38の外周の側面には、支持ボール39がそれぞれ嵌め込まれるように凹み形成された複数の凹み部46が設けられている。凹み部46は、半球状の穴として設けられている。凹み部46は、支持ボール39の数と同数設けられており、内側軸部38の外周に沿って設けられるとともに、内側軸部38の軸方向においても二段に亘って設けられている。
【0050】
図7は、凹み部46の形状と変形例に係る凹み部(47、48)の形状とを示す模式図である。図7(a)は、凹み部46について内側軸部38の径方向の外側から見た図であり、図7(b)は、内側軸部38の軸方向と平行な断面における凹み部46及び支持ボール39を示す断面図である。図7(a)及び図7(b)に示すように、凹み部46は、半球状の穴として設けられ、この半球状の穴にボール状の支持ボール39が嵌め込まれている。
【0051】
図7(c)は、変形例に係る凹み部47について内側軸部38の径方向の外側から見た図であり、図7(d)は、内側軸部38の軸方向と平行な断面における凹み部47及び支持ボール39を示す断面図である。また、図7(e)は、変形例に係る凹み部48について内側軸部38の径方向の外側から見た図であり、図7(f)は、内側軸部38の軸方向と平行な断面における凹み部48及び支持ボール39を示す断面図である。尚、変形例を示す図7(d)及び図7(f)では、本実施形態と同様に構成される要素である内側軸部38及び支持ボール39の断面については同一の符号を付している。
【0052】
図7(c)及び図7(d)に示す凹み部47と、図7(e)及び図7(f)に示す凹み部48とは、いずれも、半球状の穴ではなく、長穴状の溝として設けられている。支持ボール39は、長穴状の溝としての凹み部(47、48)に、転動可能な状態で嵌め込まれている。そして、支持ボール39は、内側軸部38の外周における長穴状の溝としての凹み部(47、48)に転動可能に嵌め込まれることで、ケース部37に対して転動可能に設置されている。
【0053】
また、凹み部47は、長穴状に延びる方向における端部が滑らかに円弧状に延びる曲面として形成されている。一方、凹み部48は、長穴状に延びる方向における端部が平坦な端面として形成されている。尚、半球状の穴として設けられた凹み部46の径寸法が支持ボール39の径寸法よりも適宜大きく設定されていることで、凹み部46に支持ボール39が転動可能に嵌め込まれ、この支持ボール39がケース部37に対して転動可能に設置されていてもよい。
【0054】
また、ケース部37の内周には、複数の軸方向溝41と複数の周方向溝42とが設けられている。各軸方向溝41は、支持ボール39が摺動可能であってケース部37及び内側軸部38の軸方向と平行に延びる溝として設けられている。軸方向溝41におけるケース部37及び内側軸部38の軸方向と垂直な断面は、半円弧状に形成されている。そして、複数の軸方向溝41は、ケース部37の周方向に沿って並んで設けられている。これにより、複数の軸方向溝41は、複数の支持ボール39が摺動可能なスプライン溝状に設けられている。尚、軸方向溝41における半円弧状の断面における径寸法は、例えば、支持ボール39の径寸法よりも僅かに大きく設定されている。
【0055】
周方向溝42は、支持ボール39が摺動可能であってケース部37及び内側軸部38の周方向に沿って延びる溝として設けられている。周方向溝42におけるケース部37及び内側軸部38の周方向と垂直な断面(即ち、径方向及び軸方向に平行な断面)は、半円弧状に形成されている。そして、周方向溝42は、内側軸部38の外周において軸方向に二段に亘って設置された支持ボール39に対応して、ケース部37の内周において軸方向に二段に亘って設けられている。尚、周方向溝42における半円弧状の断面における径寸法は、例えば、支持ボール39の径寸法よりも僅かに大きく設定されている。
【0056】
上記のように軸方向溝41及び周方向溝42が設けられているため、後述するクラッチ部材40によるケース部37と内側軸部38との連結が解除された状態では、支持ボール39が軸方向溝41又は周方向溝42に沿って摺動して変位可能に構成されている。これにより、クラッチ部材40による上記の連結が解除された状態では、内側軸部38は、ケース部37に対して軸方向に沿って直線的に変位可能に、又はケース部37に対して周方向に沿って回転可能に、構成されている。
【0057】
次に、クラッチ部材40の構成について説明する。クラッチ部材40は、ケース部37と内側軸部38とを連結する本実施形態における連結部材を構成している。クラッチ部材40は、ケース部37の側面に向かって開口するとともにケース部37を径方向に貫通するクラッチ設置穴45に設置されている。クラッチ設置穴45は、ケース部37の周方向に沿って複数設けられており、本実施形態では、ケース部37の周方向において等角度間隔に8個のクラッチ設置穴45が設けられた形態が例示されている。そして、ケース部37においては、クラッチ部材40も複数設置されており、8個のクラッチ設置穴45のうちの一部又は全部に設置されている。例えば、ケース部37の周方向において等角度間隔に2個或いは4個のクラッチ部材40が、2個或いは4個のクラッチ設置穴45に設置されている。尚、図2及び図3では、クラッチ部材40の図示が省略されている。
【0058】
また、各クラッチ部材40は、クラッチ軸40aとクラッチボール40bとを備えて構成されている。クラッチ軸40aは、クラッチ設置穴45において、ケース部37の径方向に沿って延びるように設置されている。また、クラッチ軸40aは、円柱軸状の部分とその軸方向における中途において径方向にフランジ状に張り出した円盤状の部分とを備えて構成されている。そして、クラッチ設置孔45に設置されたクラッチ軸40aは、上記の円盤状の部分において、コイルバネ等の弾性部材として構成されたクラッチバネによって、ケース部37の径方向の内側に向かって付勢されている。尚、図4乃至図6では、クラッチ設置孔45に設置されたクラッチ部材40のみが図示されており、クラッチバネの図示が省略されている。
【0059】
また、クラッチ設置穴45におけるケース部37の径方向内側の領域の穴の径寸法は、クラッチ軸40aの円柱軸状の部分の径寸法に対応して設定されている。一方、クラッチ設置穴45におけるケース部37の径方向外側の領域の穴の径寸法は、クラッチ軸40aの円盤状の部分の径寸法に対応して設定されている。このように、クラッチ設置穴45は、ケース部37の径方向内側に向かって段状に縮径した穴として形成されている。これにより、ケース部37の径方向内側に向かってクラッチバネによって付勢されるクラッチ軸40aのケース部37の内側への突出位置が位置決めされている。
【0060】
また、クラッチボール40bは、球状の部材として設けられており、クラッチ軸40aにおけるケース部37の径方向内側における端部と内側軸部38の外周の側面との間で、ケース部37の内周から一部が露出した状態で設置されている。これにより、クラッチボール40bは、クラッチバネによって付勢されたクラッチ軸40aによって、内側軸部38の外周の側面に押し付けられている。
【0061】
また、内側軸部38の側面には、外周方向に沿って複数のクラッチ用穴43が凹み形成されている。各クラッチ用穴43は、クラッチボール40bの径寸法に対応した径寸法の半球状の穴として設けられ、ケース部37の内周から露出したクラッチボール40aに係合可能に設けられている。クラッチボール40bがクラッチ用穴43に係合している状態では、ケース部37と内側軸部38とが、連結部材であるクラッチ部材40によって連結されている。
【0062】
クラッチボール40bがクラッチ穴用43に係合してケース部37と内側軸部38とが連結された状態では、ケース部37と内側軸部38とが一体に回転するため、電動モータ21のロータ27から伝達された回転方向の駆動力が、動力伝達機構22のスクリュー部30に伝達されることになる。これにより、ケース部37及び回転軸部38を介して、ロータ27とスクリュー部30とが一体に回転することになる。
【0063】
また、図4乃至図6に示すように、クラッチ部材40によってケース部37と内側軸部38とが連結された状態では、内側軸部38に嵌め込まれた各支持ボール39は、ケース部37の内周における周方向溝42を区画する部分に対して、内側軸部38及びケース部37の軸方向と平行な方向において当接して支持されている。これにより、動力切断機構24において軸方向と平行な方向に作用している荷重(軸力)は、内側軸部38に嵌め込まれた支持ボール39と、ケース部37における周方向溝42を区画する部分との間で、支持される。
【0064】
一方、クラッチ部材40は、動力伝達機構22において固着状態が発生し、ケース部37及び内側軸部38の間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときには、内側軸部38の外周の側面によってクラッチバネの付勢力に抗してクラッチボール40bが押し戻される。このとき、クラッチ部材40は、クラッチボール40bのクラッチ用穴43に対する係合が外れるように構成されている。即ち、上記の場合には、クラッチバネの付勢力に抗してクラッチ部材40がケース部37の径方向外側に変位し、クラッチ部材40と内側軸部38との係合が解除される。これにより、クラッチ部材40は、ケース部37及び内側軸部38の間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに、ケース部37及び内側軸部38の連結を切り離して動力の伝達を切断するように構成されている。
【0065】
また、内側軸部38の外周の側面には、内側軸部38の軸方向と平行に延びる複数のクラッチ用溝44が設けられている。各クラッチ用溝44は、クラッチボール40bが摺動又は転動可能な溝として設けられている。クラッチ用溝44における内側軸部38の軸方向と垂直な断面は、半円弧状に形成されている。尚、クラッチ用溝44における半円弧状の断面における径寸法は、例えば、クラッチボール40bの径寸法よりも僅かに大きく設定されている。そして、クラッチ用溝44は、内側軸部38の周方向に沿ってクラッチ用穴43と交互に並んで設けられている。これにより、動力伝達機構22において固着状態が発生してケース部37及び内側軸部38の間で所定の大きさ以上のトルクが作用し、クラッチボール40bのクラッチ用穴43に対する係合が外れたときに、クラッチボール40bがクラッチ用溝44に嵌まり込むことになる。そして、クラッチ部材40は、クラッチ用溝44に沿って、内側軸部38の外周に対して相対変位が可能となる。
【0066】
次に、電動アクチュエータ動力切断装置10について説明する。電動アクチュエータ動力切断装置10は、本実施形態の回転部であるスクリュー部30と電動モータ21との間における駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断するように構成されている。そして、図1に示すように、電動アクチュエータ動力切断装置10は、上述した電動アクチュエータ1に加え、電動アクチュエータ10を制御する本実施形態の制御部である制御ユニット34を更に備えて構成されている。
【0067】
制御ユニット34には、ドライバ35とアクチュエータコントローラ36とが備えられている。ドライバ35は、アクチュエータコントローラ36からの指令に基づいて、図示が省略された電源から電動モータ21へ供給する電流と、電動モータ21の回転数と、を制御し、電動モータ21を駆動する。アクチュエータコントローラ36は、ドライバ35を介して、電動アクチュエータ1の作動を制御する。尚、アクチュエータコントローラ36が制御部を構成していてもよい。即ち、ドライバ35が含まれない構成で制御部が構成されてもよい。
【0068】
アクチュエータコントローラ36は、図示が省略された上位のコンピュータからの指令信号に基づいて、電動アクチュエータ1を制御する。これにより、上位のコンピュータからの指令基づいて、電動アクチュエータ1が駆動する機器の動作が制御されることになる。また、アクチュエータコントローラ36には、位置検出器25から送信される前述の位置検出信号S2が入力されることに加え、電動モータ21のレゾルバ28にてロータ26の回転数の値として検知された回転数信号S4がレゾルバ28から送信されて入力される。そして、アクチュエータコントローラ36は、位置検出信号S2と回転数信号S4とに基づいて、ドライバ35を介して電動モータ21の回転数を制御し、出力部23のハウジング20に対する位置のフィードバック制御を行う。
【0069】
また、アクチュエータコントローラ36には、ロードセンサ33から送信される前述の荷重信号S1が入力されることに加え、ドライバ35から電動モータ21に対して供給される電流の電流値として検出される電流値信号S3も入力される。電流値信号S3は、例えば、ドライバ35と電動モータ21とを接続する駆動線(図示を省略)に流れる電流の電流値を検出する電流センサ(図示を省略)にて検出され、アクチュエータコントローラ36に送信される。
【0070】
そして、アクチュエータコントローラ36は、荷重信号S1と電流値信号S3とに基づいて、動力伝達機構22におけるこじり或いは焼き付き等の原因による固着状態(ジャム状態)が発生しているか否かを検知する。例えば、アクチュエータコントローラ36は、荷重信号S1と電流値信号S3とに基づいて、出力部23に作用した荷重の値と電動モータ21に供給された電流の電流値とを比較判断し、固着状態の発生の有無を検知する。更に、具体的には、例えば、アクチュエータコントローラ36は、電動モータ21の供給された電流の電流値が所定の値よりも大きいにも関わらず、出力部23に作用した荷重の値が所定の値よりも小さい場合には、動力伝達機構22における固着状態の発生を検知するように構成されている。
【0071】
また、アクチュエータコントローラ36は、動力伝達機構22における固着状態が検知されたときには、一旦、電動モータ21に対して供給する電流の電流値の上限を設定する電流リミッタを解除する。そして、アクチュエータコントローラ36は、電動アクチュエータ1の作動時(即ち、出力部23のハウジング20に対する位置を制御する通常の作動時)における上限のトルクの大きさとして設定された上限トルク値を超えるトルクである過大トルクを発生可能な電流を電動モータ21に対して所定時間供給する。この所定時間は、ごく短い瞬間的な時間として設定されてもよい。
【0072】
上記により、上限トルク値を超える過大トルクが電動モータ21から出力されることで、ケース部37及び内側軸部38の間で所定の大きさ以上のトルクが作用する。これにより、クラッチ部材40が、ケース部37及び内側軸部38の連結を切り離して動力の伝達を切断することになる。
【0073】
次に、本実施形態に係る電動アクチュエータ動力切断方法と、電動アクチュエータ1及び電動アクチュエータ動力切断装置10の作動とについて説明する。本実施形態の電動アクチュエータ動力切断方法は、電動アクチュエータ1において用いられ、本実施形態の回転部であるスクリュー部30と電動モータ21との間における駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断する方法として構成されている。そして、電動アクチュエータ1及び電動アクチュエータ動力切断装置10が作動することで、本実施形態の電動アクチュエータ動力切断方法が実施されることになる。
【0074】
図8は、電動アクチュエータ動力切断装置10の作動を説明するためのフロー図である。また、図8のフロー図に示す処理は、本実施形態の電動アクチュエータ動力切断方法における制御ステップを構成している。即ち、図8に示す処理は、電動アクチュエータ1を制御することで動力切断機構24において動力の伝達を切断する、本実施形態の制御ステップを構成している。
【0075】
図8に示す処理は、アクチュエータコントローラ36による電動アクチュエータ1の制御の際に、例えば、アクチュエータコントローラ36における所定の演算周期ごとに、繰り返し実行される。図8に示す処理は、固着状態検知ステップS101、電流リミッタ解除ステップS102、過大トルク生成ステップS103、クラッチ作動ステップS104、を備えて構成されている。
【0076】
そして、図8に示す処理が開始されると、まず、固着状態検知ステップS101が実行される。固着状態検知ステップS101では、アクチュエータコントローラ36において、荷重信号S1と電流値信号S3とに基づいて動力伝達機構22における固着状態の発生の有無が判断される。そして、固着状態が発生していないと判断されると(ステップS101、No)、図8に示す処理は一旦終了される。一方、固着状態の発生が検知されると(ステップS101、Yes)、電流リミッタ解除ステップS102が実行され、一旦、電動モータ21に対して供給される電流の電流値の上限を設定する電流リミッタが解除される。
【0077】
電流リミッタ解除ステップS102が実行されると、次いで、過大トルク生成ステップS103が実行される。この過大トルク生成ステップS103では、電動アクチュエータ1の作動時における上限のトルクとして設定された上限トルク値を超える過大トルクを発生可能な電流が電動モータ21に所定時間供給される。これにより、電動モータ21において過大トルクが生成される。
【0078】
過大トルク生成ステップS103が実行されると、これに伴って、クラッチ作動ステップS104も実行されることになる。このクラッチ作動ステップS014では、上限トルク値を超える過大トルクが電動モータ21から出力されることで、ケース部37及び内側軸部38の間で所定の大きさ以上のトルクが作用することになる。そして、クラッチ部材40が、ケース部37及び内側軸部38の連結を切り離して動力の伝達を切断する。これにより、図8に示す処理が終了することになる。
【0079】
ここで、クラッチ作動ステップS104が実行された際における電動アクチュエータ1の動力切断機構24の作動について、図9及び図10を参照しつつ説明する。図9は、動力切断機構24が作動して動力が切断された状態を示す動力切断機構24の平面図(図9(a))及び断面図(図9(b))である。図10は、動力切断機構24が作動して動力が切断された状態を示す動力切断機構24の斜視図である。尚、図9は、図4に対応した図として一部切り欠き状態で図示されており、図9(b)は、図9(a)のD−D線矢視方向から見た断面図である。また、図10は、図5に対応した図として一部切り欠き状態で図示されている。
【0080】
図9及び図10に示すように、クラッチ作動ステップS104が実行された状態では、クラッチ部材40と内側軸部38のクラッチ用穴43との係合が解除され、ケース部37及び内側軸部38の連結が解除されている。そして、ケース部37及び内側軸部38の連結が解除されると、前述の過大トルクが電動モータ21から伝達されたケース部37が内側軸部38に対して回転する。このとき、内側軸部38はケース部37とともに回転せず、支持ボール39がケース部37の内周に対して周方向溝42に沿って摺動して相対変位することになる。
【0081】
そして、内側軸部38に対してケース部37が所定角度回転した段階で、内側軸部38のクラッチ用溝44に対応する位置において、クラッチ部材40がクラッチバネによってケース部37の内側に突出し、クラッチ部材40がクラッチ用溝44に対して嵌まり込むことになる。更に、動力伝達機構22は、上記の状態においては、各支持ボール39がケース部37の内周の各軸方向溝41に対応する位置に位置するように構成されている。これにより、各支持ボール39が各軸方向溝41に沿ってケース部37の軸方向と平行な方向に摺動して変位自在な状態となる。また、この状態では、クラッチ部材40は、クラッチ用溝44に沿って内側軸部38の軸方向と平行な方向に摺動して相対変位自在な状態となっている。
【0082】
上述のように、動力伝達機構22におけるケース部37と内側軸部38との連結が切り離されて動力の伝達が切断された状態(図9及び図10に示す状態)では、支持ボール39が嵌め込まれた内側軸部38は、ケース部37に対して軸方向と平行な方向に移動自在な状態となる。このため、電動アクチュエータ1は、出力部23が連結された機器が、固着状態が発生した電動アクチュエータ1とは異なる他のアクチュエータによって駆動される場合に、他のアクチュエータの作動を阻害せずに追従して作動可能となる。
【0083】
以上説明したように、本実施形態によると、電動アクチュエータ1において、回転部であるスクリュー部30と電動モータ21との間の駆動力の伝達経路の連結が切り離されていない通常の作動状態では、クラッチ部材40を介して、ケース部37及び内側軸部38との間で動力が伝達されている。一方、動力伝達機構22における固着状態が発生した際には、ケース部37及び内側軸部38の間で所定の大きさ以上のトルクが作用し、クラッチ部材40が、ケース部37及び内側軸部38の連結を切り離して動力の伝達を切断する。このとき、動力切断機構24において軸方向と平行な方向に作用している荷重(軸力)は、内側軸部38に嵌め込まれた支持ボール39と、ケース部37における周方向溝42を区画する部分との間で、支持される。これにより、クラッチ部材40に上記の軸力が作用してしまうことを抑制することができる。よって、動力伝達機構22において固着状態が発生した際にケース部37及び内側軸部38の間で生じる所定の大きさ以上のトルクがクラッチ部材40に作用し、容易に、ケース部37及び内側軸部38の連結が切り離されることになる。
【0084】
クラッチ部材40がケース部37及び内側軸部38の連結を切り離した状態になると、ケース部37及び内側軸部38の間で軸方向を中心とした回転方向の相対変位が生じ、支持ボール39が周方向溝42に沿って相対変位することになる。そして、支持ボール39は、周方向溝42に沿って相対変位することで、軸方向溝41に移動可能となる。これにより、支持ボール39が軸方向に沿って相対移動可能となり、ケース部37及び内側軸部38が、軸方向に沿って互いに相対変位することが可能となる。よって、動力伝達機構22において固着状態が発生した際には、軸力の影響をほとんど受けずにクラッチ部材40が動力伝達を切断するように作動し、ケース部37及び内側軸部38の軸方向の相対変位が可能な状態となる。このため、この電動アクチュエータ1によると、駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行することを容易に実現できることになる。
【0085】
また、電動アクチュエータ1によると、特許文献1に開示された電動アクチュエータのように二重にアクチュエータが設けられる必要がない。更に、電動アクチュエータ1によると、特許文献2に開示された電動アクチュエータのような構造も不要となる。即ち、電動アクチュエータ1によると、駆動源としての電動モータとは別個のクラッチ駆動用電動モータ、ギヤ機構、複雑な形状を有するロッキングプレート、等の機構も不要となる。よって、電動アクチュエータ1によると、機構の簡素化及び構造を小型化を図ることができる。
【0086】
従って、本実施形態によると、固着状態が発生した際に駆動対象の機器の作動を許容可能な状態に移行することを容易に実現でき、更に、機構の簡素化及び構造の小型化を図ることができる、電動アクチュエータ1を提供することができる。
【0087】
また、本実施形態によると、支持部である支持ボール39が、内側軸部38に嵌め込めまれるボール状に形成される。このため、内側軸部38に保持されてケース部37に対して滑らかに摺動する支持部の構造を容易に形成することができる。
【0088】
また、本実施形態によると、ボール状の支持部である支持ボール39が嵌め込まれる凹み部46が、半球状の穴として設けられる。このため、ケース部37に対して滑らかに摺動させるように支持ボール39を容易に保持することができる。また、長穴状の溝として設けられる凹み部(47、48)の場合は、ケース部37に対してより滑らかに転動させるように支持ボール39を保持することができる。
【0089】
また、本実施形態によると、連結部材が、所定の大きさ以上の負荷で連結のための係合を解除するクラッチ部材40として設けられる。このため、ケース部37及び内側軸部38の間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに、ケース部37及び内側軸部38の連結を切り離して動力の伝達を切断する連結部材を簡素な構造で実現することができる。
【0090】
また、電動アクチュエータ動力切断装置10及び本実施形態の電動アクチュエータ動力切断方法によると、固着状態検知時に上限トルク値を超えるトルクを発生可能な電流が所定時間のみ電動モータ21に供給されることで、容易に、回転部であるスクリュー部30と電動モータ21との間の駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断することができる。
【0091】
また、電動アクチュエータ動力切断装置10及び本実施形態の電動アクチュエータ動力切断方法によると、仮に固着状態が誤って検知され、上限トルク値を超えるトルクを発生可能な電流が電動モータ21に供給された場合であっても、実際に固着状態が発生していなければ、ケース部37及び内側軸部38の間の連結は切り離されず、動力の伝達が誤って切断されてしまうことも防止できる。
【0092】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る電動アクチュエータは、第1実施形態と同様に構成されている。そして、第2実施形態の電動アクチュエータにおいて用いられる第2実施形態に係る電動アクチュエータ動力切断方法、第2実施形態の電動アクチュエータを含む第2実施形態に係る電動アクチュエータ動力切断装置も、第1実施形態と同様に構成される。但し、第2実施形態は、電動アクチュエータの動力切断機構における連結部材の形態において、第1実施形態と異なっている。以下の第2実施形態の説明においては、第1実施形態と異なる形態のみ、即ち、電動アクチュエータの動力切断機構の連結部材の形態のみを説明する。
【0093】
図11は、第2実施形態に係る電動アクチュエータの動力切断機構24aの平面図(図11(a))及び斜視図(図11(b))である。図12は、動力切断機構24aの側面図(図12(a))及び動力切断機構24aについて図12(a)のE−E線矢視方向から見た断面図(図12(b))である。図13は、一部切り欠き状態で示す動力切断機構24aの平面図(図13(a))及び図13(a)に示す動力切断機構24aについてF−F線矢視方向から見た側面図(図13(b))である。尚、第2実施形態の説明では、第1実施形態と同様に構成される要素については、図11乃至図13において同一の符号を付すことで、説明を省略する。
【0094】
図11乃至図13に示すように、動力切断機構24aにおいては、ケース部37aと内側軸部38aとを連結する連結部材が、シャーピン49として設けられている。シャーピン49は、ケース部37a及び内側軸部38aの間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに破断する円柱ピン状の部材として設けられている。また、シャーピン49には、ケース部37a及び内側軸部38aの間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに破断し易いように、側面の周方向に沿って溝状に延びるように凹み形成或いは切り欠き形成されたくびれ部分が設けられている。
【0095】
また、シャーピン49は、ケース部37a及び内側軸部38aの径方向に沿って、ケース部37aから内側軸部38aに亘って延びるように設置されている。そして、シャーピン49は、ケース部37aに対して一方の端部側が保持されるとともに、内側軸部38aに対して他方の端部側が係合するように、ケース部37a及び内側軸部38aに対して嵌め込まれて設置されている。尚、前述のくびれ部分は、ケース部37a及び内側軸部38aの径方向において、ケース部37aの内周と内側軸部38aの外周とが摺接する位置に対応して配置されている。
【0096】
また、ケース部37aは、クラッチ設置穴45が設けられておらずに1つのシャーピン設置穴45aが設けられている点において、第1実施形態のケース部37と異なっている。シャーピン設置穴45aは、ケース部37aの径方向に貫通する穴として設けられ、嵌め込まれたシャーピン49を保持可能な径寸法の穴を含んで構成されている。
【0097】
また、内側軸部38aは、クラッチ用穴43及びクラッチ用溝44が設けられておらずに1つのシャーピン用穴50が設けられている点において、第1実施形態の内側軸部38と異なっている。シャーピン用穴50は、ケース部37aに保持されてケース部37aの径方向内側に突出したシャーピン49の端部が嵌め込まれてシャーピン49に係合する穴として設けられている。
【0098】
上述した第2実施形態に係る電動アクチュエータ、電動アクチュエータ動力切断装置、電動アクチュエータ動力切断方法によると、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。そして、第2実施形態によると、連結部材が、所定の大きさ以上の負荷で破断するピン状の部材であるシャーピン49として設けられる。このため、ケース部37a及び内側軸部38aの間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに、ケース部37a及び内側軸部38aの連結を切り離して動力の伝達を切断する連結部材を簡素な構造で実現することができる。
【0099】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態に係る電動アクチュエータは、第1実施形態と同様に構成されている。そして、第3実施形態の電動アクチュエータにおいて用いられる第3実施形態に係る電動アクチュエータ動力切断方法、第3実施形態の電動アクチュエータを含む第3実施形態に係る電動アクチュエータ動力切断装置も、第1実施形態と同様に構成される。但し、第3実施形態は、電動アクチュエータの動力切断機構における連結部材の形態において、第1実施形態と異なっている。以下の第3実施形態の説明においては、第1実施形態と異なる形態のみ、即ち、電動アクチュエータの動力切断機構の連結部材の形態のみを説明する。
【0100】
図14は、第3実施形態に係る電動アクチュエータの動力切断機構24bの側面図(図14(a))及び斜視図(図14(b))であって、一部切り欠き状態で示す図である。尚、第3実施形態の説明では、第1実施形態と同様に構成される要素については、図14において同一の符号を付すことで、説明を省略する。
【0101】
図14に示すように、動力切断機構24bにおいては、ケース部37bと内側軸部38bとを連結する連結部材が、シャーピン53として設けられている。シャーピン53は、ケース部37b及び内側軸部38bの間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに破断する円柱ピン状の部材として設けられている。
【0102】
また、ケース部37bは、クラッチ設置穴45が設けられていない点と内側軸部38bに対して連結されるケース側連結部51が更に設けられている点とにおいて、第1実施形態のケース部37と異なっている。ケース側連結部51は、ケース37bにおける軸方向溝41及び周方向溝42が設けられるケース本体部分に対して軸方向に直列に配置されている。そして、このケース側連結部51は、上記のケース本体部分に対して一体に設けられた円筒状の部分として構成されている。
【0103】
また、内側軸部38bは、クラッチ用穴43及びクラッチ用溝44が設けられていない点とケース部37bに対して連結される軸側連結部52が更に設けられている点とにおいて、第1実施形態の内側軸部38と異なっている。軸側連結部52は、内側軸部38bにおける支持ボール39が嵌め込まれる軸本体部分に対して軸方向に直列に配置されている。そして、この軸側連結部52は、上記の軸本体部分に対して一体に設けられた軸状の部分として構成されている。また、軸側連結部52は、ケース側連結部51の内側に設置されている。更に、シャーピン53による連結が切断されている状態では、軸側連結部52の外周は、ケース側連結部51の内周に対して、軸方向及び周方向に摺動自在に配置されている。
【0104】
そして、シャーピン53は、ケース側連結部51及び軸側連結部52の直径方向に沿って延びるとともに、ケース側連結部51から軸側連結部52を経て更にもう一度ケース側連結部51に亘って貫通するように設置されている。また、シャーピン53は、軸側連結部52に対して中央部分が保持されるとともに、ケース側連結部51に対して両端部分が係合するように、ケース部37b及び内側軸部38bに対して嵌め込まれて設置されている。
【0105】
上述した第3実施形態に係る電動アクチュエータ、電動アクチュエータ動力切断装置、電動アクチュエータ動力切断方法によると、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。そして、第3実施形態によると、連結部材が、所定の大きさ以上の負荷で破断するピン状の部材であるシャーピン53として設けられる。このため、ケース部37b及び内側軸部38bの間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに、ケース部37b及び内側軸部38bの連結を切り離して動力の伝達を切断する連結部材を簡素な構造で実現することができる。
【0106】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態に係る電動アクチュエータは、第1実施形態と同様に構成されている。そして、第4実施形態の電動アクチュエータにおいて用いられる第4実施形態に係る電動アクチュエータ動力切断方法、第4実施形態の電動アクチュエータを含む第4実施形態に係る電動アクチュエータ動力切断装置も、第1実施形態と同様に構成される。但し、第4実施形態は、電動アクチュエータにおける電動モータと動力切断機構とが連結される形態において、第1実施形態と異なっている。以下の第4実施形態の説明においては、第1実施形態と異なる形態のみ、即ち、電動アクチュエータにおける電動モータと動力切断機構とが連結される形態のみを説明する。
【0107】
図15は、本発明の第4実施形態に係る電動アクチュエータ2と、その電動アクチュエータ2を備える電動アクチュエータ動力切断装置11と、を示す模式図である。尚、第4実施形態の説明では、第1実施形態と同様に構成される要素については、図15において同一の符号を付すことで、説明を省略する。
【0108】
図15に示すように、電動アクチュエータ2及び電動アクチュエータ動力切断装置11においては、電動モータ21と動力切断機構24とが、ギヤ部54を介して連結されている。ギヤ部54は、例えば、複数のスパーギヤを備えた減速機構として構成されている。そして、ギヤ部54における小径のピニオンギヤが電動モータ21のロータ27に対して固定され、上記の小径のピニオンギヤに噛み合う大径のスパーギヤがケース部37に固定されている。このように、ケース部37が電動モータ21に対してギヤ部54を介して連結されている。
【0109】
そして、第4実施形態に係る電動アクチュエータ、電動アクチュエータ動力切断装置、電動アクチュエータ動力切断方法によっても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0110】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第5実施形態に係る電動アクチュエータは、第1実施形態と同様に構成されている。そして、第5実施形態の電動アクチュエータにおいて用いられる第5実施形態に係る電動アクチュエータ動力切断方法、第5実施形態の電動アクチュエータを含む第5実施形態に係る電動アクチュエータ動力切断装置も、第1実施形態と同様に構成される。但し、第5実施形態は、電動アクチュエータにおける動力伝達機構の形態において、第1実施形態と異なっている。以下の第5実施形態の説明においては、第1実施形態と異なる形態のみ、即ち、電動アクチュエータにおける動力伝達機構の形態のみを説明する。
【0111】
図16は、本発明の第5実施形態に係る電動アクチュエータ3と、その電動アクチュエータ3を備える電動アクチュエータ動力切断装置12と、を示す模式図である。尚、第5実施形態の説明では、第1実施形態と同様に構成される要素については、図16において同一の符号を付すことで、説明を省略する。
【0112】
図16に示すように、電動アクチュエータ3及び電動アクチュエータ動力切断装置12においては、動力伝達機構22aは、同軸心を中心として互いに相対回転可能に設けられたナット部29a及びスクリュー部30aと、ナット部29a及びスクリュー部30aの間に配置される複数のボール31と、を備えて構成されている。即ち、動力伝達機構22aは、第1実施形態と同様にボールスクリュー機構として設けられ、複数のボール31が、ナット部29aの内周に設けられたネジ溝とスクリュー部30aの外周に設けられたネジ溝との間で転動しながら循環するように構成されている。
【0113】
しかし、動力伝達機構22aにおいては、ナット部29aが、軸受32によってハウジング20に対して回転自在に支持されてロータ27とともに回転する動力切断機構24とともに回転自在に支持されている。一方、スクリュー部30aは、ハウジング20に対してスライド移動自在に支持されている。これにより、動力伝達機構22aは、ナット部29a及びスクリュー部30aが相対回転することで、電動モータ21の回転方向の駆動力を直線方向の駆動力に変換して伝達するように構成されている。
【0114】
そして、動力伝達機構22aにおいては、ナット部29aがその軸心を中心として回転することでスクリュー部30aがその軸方向と平行に変位する。即ち、動力伝達機構22aでは、ナット部29a及びスクリュー部30aのうち直線方向に変位する直線変位部をスクリュー部30aが構成している。そして、ナット部29a及びスクリュー部30aのうち電動モータ21の回転が伝達されて回転する回転部をナット部29aが構成している。
【0115】
上述した第5実施形態に係る電動アクチュエータ、電動アクチュエータ動力切断装置、電動アクチュエータ動力切断方法によっても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0116】
以上、本発明の第1乃至第5実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0117】
(1)前述の第1実施形態では、電動モータに対してケース部が固定され、ナット部及びスクリュー部のうち電動モータの回転が伝達されて回転する回転部に対して内側軸部が固定される形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。電動モータに対して内側軸部が固定され又はギヤ部を介して連結され、回転部に対してケース部が固定される形態が実施されてもよい。
【0118】
(2)前述の第1乃至第3実施形態では、支持部が、内側軸部に対して嵌め込まれてケース部に対して摺動可能な形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。支持部が、内側軸部に対して一体に設けられた形態が実施されてもよい。また、支持部が、ケース部に対して一体に設けられ又は嵌め込まれるとともに、内側軸部に対して転動可能又は摺動可能な形態が実施されてもよい。支持部がケース部に対して一体に設けられ又は嵌め込まれた形態の場合、例えば、ケース部として、軸方向に延びる断面で半割状態に形成された半円筒状の部分が一体に組み合わされる形態のケース部が実施されてもよい。これにより、ケース部の内側に対して支持部を一体に設け又は嵌め込むことが容易となる。また、ケース部に対して支持部が一体に設けられ又は嵌め込まれる形態の場合、内側軸部において軸方向溝及び周方向溝が設けられることになる。
【0119】
(3)前述の第1乃至第3実施形態では、支持部がボール状に形成された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、支持部が、円筒ころ状に形成されてもよい。
【0120】
(4)前述の第1実施形態では、ケース部及び内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに内側軸部との係合が解除されるクラッチ部材を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。ケース部及び内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときにケース部との係合が解除されるクラッチ部材が実施されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、電動モータと、ナット部及びスクリュー部を有して回転方向の駆動力を直線方向に変換して伝達する動力伝達機構と、直線方向に変位して駆動力を出力する出力部と、を備える電動アクチュエータ、電動アクチュエータにおける駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断する、電動アクチュエータ動力切断方法及び電動アクチュエータ動力切断装置、に関して広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0122】
1 電動アクチュエータ
21 電動モータ
22 動力伝達機構
23 出力部
24 動力切断機構
37 ケース部
38 内側軸部
39 支持ボール(支持部)
40 クラッチ部材(連結部材)
41 軸方向溝
42 周方向溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転方向の駆動力を発生させる電動モータと、
ナット部及びスクリュー部を有し、前記ナット部及び前記スクリュー部が相対回転することで、前記電動モータの回転方向の駆動力を直線方向の駆動力に変換して伝達する動力伝達機構と、
前記ナット部及び前記スクリュー部のうち直線方向に変位する直線変位部ととともに変位して直線方向の駆動力を出力する出力部と、
を備える電動アクチュエータであって、
前記ナット部及び前記スクリュー部のうち前記電動モータの回転が伝達されて回転する回転部と前記電動モータとの間における駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断可能な動力切断機構を更に備え、
前記動力切断機構は、
中空で筒状の部分を有し、前記回転部及び前記電動モータの一方に対して固定され又はギヤ部を介して連結されるケース部と、
軸状の部分を有し、前記ケース部の内側に設置されるとともに前記回転部及び前記電動モータの他方に対して固定され又はギヤ部を介して連結される内側軸部と、
前記ケース部及び前記内側軸部の間において当該ケース部及び当該内側軸部の軸方向と平行な方向に作用する荷重を支持可能に設置され、前記ケース部及び前記内側軸部の一方に対して一体に設けられ又は嵌め込まれるとともに、前記ケース部及び前記内側軸部の他方に対して転動可能又は摺動可能な支持部と、
前記ケース部と前記内側軸部とを連結する連結部材と、
を含み、
前記ケース部及び前記内側軸部の他方には、前記支持部が転動可能又は摺動可能であって前記ケース部及び前記内側軸部の軸方向と平行に延びる軸方向溝、及び、前記支持部が転動可能又は摺動可能であって前記ケース部及び前記内側軸部の周方向に沿って延びる周方向溝が、設けられ、
前記連結部材は、前記ケース部及び前記内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに、前記ケース部及び前記内側軸部の連結を切り離して動力の伝達を切断することを特徴とする、電動アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の電動アクチュエータであって、
前記支持部は、ボール状に形成され、前記ケース部及び前記内側軸部の一方に対して嵌め込まれていることを特徴とする、電動アクチュエータ。
【請求項3】
請求項2に記載の電動アクチュエータであって、
前記ケース部及び前記内側軸部の一方には、前記支持部が嵌め込まれるように凹み形成された凹み部が設けられ、
前記凹み部は、半球状の穴として、或いは、長穴状の溝として設けられていることを特徴とする、電動アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電動アクチュエータであって、
前記連結部材は、前記ケース部及び前記内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに破断するピン状の部材として、或いは、前記ケース部及び前記内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに前記ケース部及び前記内側軸部のいずれかとの係合が解除されるクラッチ部材として、設けられていることを特徴とする、電動アクチュエータ。
【請求項5】
回転方向の駆動力を発生させる電動モータと、
ナット部及びスクリュー部を有し、前記ナット部及び前記スクリュー部が相対回転することで、前記電動モータの回転方向の駆動力を直線方向の駆動力に変換して伝達する動力伝達機構と、
前記ナット部及び前記スクリュー部のうち直線方向に変位する直線変位部ととともに変位して直線方向の駆動力を出力する出力部と、
を含む電動アクチュエータにおいて用いられ、
前記ナット部及び前記スクリュー部のうち前記電動モータの回転が伝達されて回転する回転部と前記電動モータとの間における駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断する、電動アクチュエータ動力切断方法であって、
前記伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断可能な動力切断機構を更に含む前記電動アクチュエータを制御する制御ステップを備え、
前記動力切断機構は、
中空で筒状の部分を有し、前記回転部及び前記電動モータの一方に対して固定され又はギヤ部を介して連結されるケース部と、
軸状の部分を有し、前記ケース部の内側に設置されるとともに前記回転部及び前記電動モータの他方に対して固定され又はギヤ部を介して連結される内側軸部と、
前記ケース部及び前記内側軸部の間において当該ケース部及び当該内側軸部の軸方向と平行な方向に作用する荷重を支持可能に設置され、前記ケース部及び前記内側軸部の一方に対して一体に設けられ又は嵌め込まれるとともに、前記ケース部及び前記内側軸部の他方に対して転動可能又は摺動可能な支持部と、
前記ケース部と前記内側軸部とを連結する連結部材と、
を含み、
前記ケース部及び前記内側軸部の他方には、前記支持部が転動可能又は摺動可能であって前記ケース部及び前記内側軸部の軸方向と平行に延びる軸方向溝、及び、前記支持部が転動可能又は摺動可能であって前記ケース部及び前記内側軸部の周方向に沿って延びる周方向溝が、設けられ、
前記制御ステップでは、
前記動力伝達機構における固着状態が検知されたときに、前記電動アクチュエータの作動時における上限のトルクの大きさとして設定された上限トルク値を超えるトルクを発生可能な電流が前記電動モータに所定時間供給され、
前記上限トルク値を超えるトルクが前記電動モータから出力されることで、前記ケース部及び前記内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用し、前記連結部材が前記ケース部及び前記内側軸部の連結を切り離して動力の伝達を切断することを特徴とする、電動アクチュエータ動力切断方法。
【請求項6】
回転方向の駆動力を発生させる電動モータと、
ナット部及びスクリュー部を有し、前記ナット部及び前記スクリュー部が相対回転することで、前記電動モータの回転方向の駆動力を直線方向の駆動力に変換して伝達する動力伝達機構と、
前記ナット部及び前記スクリュー部のうち直線方向に変位する直線変位部ととともに変位して直線方向の駆動力を出力する出力部と、
を含む電動アクチュエータを備え、
前記ナット部及び前記スクリュー部のうち前記電動モータの回転が伝達されて回転する回転部と前記電動モータとの間における駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断する、電動アクチュエータ動力切断装置であって、
前記電動アクチュエータに設けられ、前記伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断可能な動力切断機構と、
前記電動アクチュエータを制御する制御部と、
を更に備え、
前記動力切断機構は、
中空で筒状の部分を有し、前記回転部及び前記電動モータの一方に対して固定され又はギヤ部を介して連結されるケース部と、
軸状の部分を有し、前記ケース部の内側に設置されるとともに前記回転部及び前記電動モータの他方に対して固定され又はギヤ部を介して連結される内側軸部と、
前記ケース部及び前記内側軸部の間において当該ケース部及び当該内側軸部の軸方向と平行な方向に作用する荷重を支持可能に設置され、前記ケース部及び前記内側軸部の一方に対して一体に設けられ又は嵌め込まれるとともに、前記ケース部及び前記内側軸部の他方に対して転動可能又は摺動可能な支持部と、
前記ケース部と前記内側軸部とを連結する連結部材と、
を含み、
前記ケース部及び前記内側軸部の他方には、前記支持部が転動可能又は摺動可能であって前記ケース部及び前記内側軸部の軸方向と平行に延びる軸方向溝、及び、前記支持部が転動可能又は摺動可能であって前記ケース部及び前記内側軸部の周方向に沿って延びる周方向溝が、設けられ、
前記制御部は、前記動力伝達機構における固着状態が検知されたときに、前記電動アクチュエータの作動時における上限のトルクの大きさとして設定された上限トルク値を超えるトルクを発生可能な電流を前記電動モータに所定時間供給し、
前記上限トルク値を超えるトルクが前記電動モータから出力されることで、前記ケース部及び前記内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用し、前記連結部材が前記ケース部及び前記内側軸部の連結を切り離して動力の伝達を切断することを特徴とする、電動アクチュエータ動力切断装置。
【請求項1】
回転方向の駆動力を発生させる電動モータと、
ナット部及びスクリュー部を有し、前記ナット部及び前記スクリュー部が相対回転することで、前記電動モータの回転方向の駆動力を直線方向の駆動力に変換して伝達する動力伝達機構と、
前記ナット部及び前記スクリュー部のうち直線方向に変位する直線変位部ととともに変位して直線方向の駆動力を出力する出力部と、
を備える電動アクチュエータであって、
前記ナット部及び前記スクリュー部のうち前記電動モータの回転が伝達されて回転する回転部と前記電動モータとの間における駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断可能な動力切断機構を更に備え、
前記動力切断機構は、
中空で筒状の部分を有し、前記回転部及び前記電動モータの一方に対して固定され又はギヤ部を介して連結されるケース部と、
軸状の部分を有し、前記ケース部の内側に設置されるとともに前記回転部及び前記電動モータの他方に対して固定され又はギヤ部を介して連結される内側軸部と、
前記ケース部及び前記内側軸部の間において当該ケース部及び当該内側軸部の軸方向と平行な方向に作用する荷重を支持可能に設置され、前記ケース部及び前記内側軸部の一方に対して一体に設けられ又は嵌め込まれるとともに、前記ケース部及び前記内側軸部の他方に対して転動可能又は摺動可能な支持部と、
前記ケース部と前記内側軸部とを連結する連結部材と、
を含み、
前記ケース部及び前記内側軸部の他方には、前記支持部が転動可能又は摺動可能であって前記ケース部及び前記内側軸部の軸方向と平行に延びる軸方向溝、及び、前記支持部が転動可能又は摺動可能であって前記ケース部及び前記内側軸部の周方向に沿って延びる周方向溝が、設けられ、
前記連結部材は、前記ケース部及び前記内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに、前記ケース部及び前記内側軸部の連結を切り離して動力の伝達を切断することを特徴とする、電動アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の電動アクチュエータであって、
前記支持部は、ボール状に形成され、前記ケース部及び前記内側軸部の一方に対して嵌め込まれていることを特徴とする、電動アクチュエータ。
【請求項3】
請求項2に記載の電動アクチュエータであって、
前記ケース部及び前記内側軸部の一方には、前記支持部が嵌め込まれるように凹み形成された凹み部が設けられ、
前記凹み部は、半球状の穴として、或いは、長穴状の溝として設けられていることを特徴とする、電動アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電動アクチュエータであって、
前記連結部材は、前記ケース部及び前記内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに破断するピン状の部材として、或いは、前記ケース部及び前記内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用したときに前記ケース部及び前記内側軸部のいずれかとの係合が解除されるクラッチ部材として、設けられていることを特徴とする、電動アクチュエータ。
【請求項5】
回転方向の駆動力を発生させる電動モータと、
ナット部及びスクリュー部を有し、前記ナット部及び前記スクリュー部が相対回転することで、前記電動モータの回転方向の駆動力を直線方向の駆動力に変換して伝達する動力伝達機構と、
前記ナット部及び前記スクリュー部のうち直線方向に変位する直線変位部ととともに変位して直線方向の駆動力を出力する出力部と、
を含む電動アクチュエータにおいて用いられ、
前記ナット部及び前記スクリュー部のうち前記電動モータの回転が伝達されて回転する回転部と前記電動モータとの間における駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断する、電動アクチュエータ動力切断方法であって、
前記伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断可能な動力切断機構を更に含む前記電動アクチュエータを制御する制御ステップを備え、
前記動力切断機構は、
中空で筒状の部分を有し、前記回転部及び前記電動モータの一方に対して固定され又はギヤ部を介して連結されるケース部と、
軸状の部分を有し、前記ケース部の内側に設置されるとともに前記回転部及び前記電動モータの他方に対して固定され又はギヤ部を介して連結される内側軸部と、
前記ケース部及び前記内側軸部の間において当該ケース部及び当該内側軸部の軸方向と平行な方向に作用する荷重を支持可能に設置され、前記ケース部及び前記内側軸部の一方に対して一体に設けられ又は嵌め込まれるとともに、前記ケース部及び前記内側軸部の他方に対して転動可能又は摺動可能な支持部と、
前記ケース部と前記内側軸部とを連結する連結部材と、
を含み、
前記ケース部及び前記内側軸部の他方には、前記支持部が転動可能又は摺動可能であって前記ケース部及び前記内側軸部の軸方向と平行に延びる軸方向溝、及び、前記支持部が転動可能又は摺動可能であって前記ケース部及び前記内側軸部の周方向に沿って延びる周方向溝が、設けられ、
前記制御ステップでは、
前記動力伝達機構における固着状態が検知されたときに、前記電動アクチュエータの作動時における上限のトルクの大きさとして設定された上限トルク値を超えるトルクを発生可能な電流が前記電動モータに所定時間供給され、
前記上限トルク値を超えるトルクが前記電動モータから出力されることで、前記ケース部及び前記内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用し、前記連結部材が前記ケース部及び前記内側軸部の連結を切り離して動力の伝達を切断することを特徴とする、電動アクチュエータ動力切断方法。
【請求項6】
回転方向の駆動力を発生させる電動モータと、
ナット部及びスクリュー部を有し、前記ナット部及び前記スクリュー部が相対回転することで、前記電動モータの回転方向の駆動力を直線方向の駆動力に変換して伝達する動力伝達機構と、
前記ナット部及び前記スクリュー部のうち直線方向に変位する直線変位部ととともに変位して直線方向の駆動力を出力する出力部と、
を含む電動アクチュエータを備え、
前記ナット部及び前記スクリュー部のうち前記電動モータの回転が伝達されて回転する回転部と前記電動モータとの間における駆動力の伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断する、電動アクチュエータ動力切断装置であって、
前記電動アクチュエータに設けられ、前記伝達経路の連結を切り離して動力の伝達を切断可能な動力切断機構と、
前記電動アクチュエータを制御する制御部と、
を更に備え、
前記動力切断機構は、
中空で筒状の部分を有し、前記回転部及び前記電動モータの一方に対して固定され又はギヤ部を介して連結されるケース部と、
軸状の部分を有し、前記ケース部の内側に設置されるとともに前記回転部及び前記電動モータの他方に対して固定され又はギヤ部を介して連結される内側軸部と、
前記ケース部及び前記内側軸部の間において当該ケース部及び当該内側軸部の軸方向と平行な方向に作用する荷重を支持可能に設置され、前記ケース部及び前記内側軸部の一方に対して一体に設けられ又は嵌め込まれるとともに、前記ケース部及び前記内側軸部の他方に対して転動可能又は摺動可能な支持部と、
前記ケース部と前記内側軸部とを連結する連結部材と、
を含み、
前記ケース部及び前記内側軸部の他方には、前記支持部が転動可能又は摺動可能であって前記ケース部及び前記内側軸部の軸方向と平行に延びる軸方向溝、及び、前記支持部が転動可能又は摺動可能であって前記ケース部及び前記内側軸部の周方向に沿って延びる周方向溝が、設けられ、
前記制御部は、前記動力伝達機構における固着状態が検知されたときに、前記電動アクチュエータの作動時における上限のトルクの大きさとして設定された上限トルク値を超えるトルクを発生可能な電流を前記電動モータに所定時間供給し、
前記上限トルク値を超えるトルクが前記電動モータから出力されることで、前記ケース部及び前記内側軸部の間で所定の大きさ以上のトルクが作用し、前記連結部材が前記ケース部及び前記内側軸部の連結を切り離して動力の伝達を切断することを特徴とする、電動アクチュエータ動力切断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図11】
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【図16】
【公開番号】特開2013−99175(P2013−99175A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241648(P2011−241648)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】
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