説明

電動パーキングブレーキ制御装置

【課題】電動パーキングブレーキの構成要素の耐久性を高める必要を廃することができる電動パーキングブレーキ制御装置を提供すること。
【解決手段】本発明による電動パーキングブレーキ制御装置1は、車両のドラムブレーキ7の作動力を制御する作動力制御手段2aと、ドラムブレーキ7の制動力不足を検出する制動力不足検出手段2bと、制動力不足検出手段2bが制動力不足を検出した場合に、制動力不足検出手段2bが制動力不足を検出しなくなるまで作動力を増加させる作動力増加手段2cと、車両の位置を検出する位置検出手段9aと、作動力増加手段2cが作動力を増加させた場合に、作動力の増加分と位置検出手段9aの検出した車両の位置を記憶する記憶手段9bを備えると共に、記憶された車両の位置において再度車両を停止させる場合に、作動力増加手段2cが記憶された作動力の増加分だけ一度に作動力を増加させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車、トラック、バス等の車両に適用されて好適な電動パーキングブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の電動パーキングブレーキ制御装置としては、特許文献1に記載されているようなものが提案されている。この電動パーキングブレーキ制御装置においては、電動パーキングブレーキの作動力を、車両環境に応じて制御すると共に、電動パーキングブレーキを作動させても、制御不良や路面の勾配等の影響により車両が完全に停止せず、制動力が不足していると検出される場合には、制動力の不足が検出されなくなるまで、電動パーキングブレーキの作動力を予め定められた所定量ずつ段階的に増加させる制御が行われている。
【特許文献1】特開2006−131151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、このような電動パーキングブレーキ制御装置においては、予め定められた所定量ずつ電動パーキングブレーキの作動力を段階的に増加させることに起因して、車両を完全に停止させるまでの電動パーキングブレーキの作動回数の増加を招くことになる。これに伴い、電動パーキングブレーキを構成するアクチュエータやケーブル、ドラム、アンカーやシュー等の構成要素の耐久性を高める必要が生じて、各構成要素の大型化や重量の増大、コストの増大を招くという問題が発生する。
【0004】
本発明は、上記問題に鑑み、電動パーキングブレーキの構成要素の耐久性を高める必要を廃することができる電動パーキングブレーキ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題を解決するため、本発明による電動パーキングブレーキ制御装置は、
車両の電動パーキングブレーキの作動力を制御する作動力制御手段と、前記電動パーキングブレーキの制動力不足を検出する制動力不足検出手段と、前記制動力不足検出手段が制動力不足を検出した場合に、前記制動力不足検出手段が前記制動力不足を検出しなくなるまで前記作動力を増加させる作動力増加手段と、車両の位置を検出する位置検出手段と、前記作動力増加手段が前記作動力を増加させた場合に、当該作動力の増加分と前記位置検出手段の検出した車両の位置を記憶する記憶手段を備えると共に、当該記憶された車両の位置において再度車両を停止させる場合に、前記作動力増加手段が前記記憶された作動力の増加分だけ一度に前記作動力を増加させることを特徴とする。
【0006】
なお、作動力とは、電動パーキングブレーキを動作させる力を指し、例えば、電動パーキングブレーキが張力付与装置とケーブルとドラムブレーキにより構成されるものである場合には、ケーブルの張力又は張力付与装置内部のアクチュエータのトルクを指す。また、制動力とは電動パーキングブレーキを動作させた場合に車両に作用する制動力を指す。
【0007】
ここで、前記電動パーキングブレーキ制御装置において、
前記記憶手段が、前記作動力増加手段が前記作動力を増加させた場合に、車両状態と路面状態を記憶することが好ましい。
【0008】
ここで、車両状態とは、主に車両を構成する変速機のシフト位置であり、路面状態とは、主に路面勾配を指すものとする。
【0009】
これによれば、前回の停止と同じ車両の位置において車両を停止させる場合に、前記電動パーキングブレーキ制御装置の前記作動力増加手段が前記電動パーキングブレーキの作動力を増加させるにあたって、前回停車において記憶した作動力の増加分を用いて、一度に前記作動力を増加させるため、前記電動パーキングブレーキの作動力を段階的に増加させることに比べて、高い張力でもって前記電動パーキングブレーキを動作させる頻度を低下させることができる。
【0010】
これと共に、前記記憶された車両の位置において再度車両を停止させる場合に、前記作動力増加手段が前記記憶された車両状態に基づいて前記作動力の増加分を補正することができ、よりきめの細かい前記作動力の増加を行うことができる。さらに、前記記憶された車両の位置において再度車両を停止させることを検出するにあたり、車両の位置だけでなく路面勾配を考慮して検出することができるので、より正確な検出を行うことができる。
【0011】
これにより、前記電動パーキングブレーキを構成する要素、アクチュエータやケーブル、ドラム、アンカーやシュー等の構成要素の耐久性を高める必要を廃することができ、各構成要素の大型化や重量の増大、コストの増大を招くことを防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電動パーキングブレーキの構成要素の耐久性を高める必要を廃することができる電動パーキングブレーキ制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明に係る電動パーキングブレーキ制御装置の一実施形態を示す模式図である。
【0015】
電動パーキングブレーキ制御装置1は、電動パーキングブレーキECU2(Electronic Control Unit)と、前後加速度センサ3と、車速センサ4と、パーキングスイッチ5と、張力付与装置6と、ドラムブレーキ7と、変速機ECU8(Electronic Control Unit)と、カーナビゲーションECU9(Electronic Control Unit)と、GPS受信アンテナ10と、イナーシャメジャメントユニット(IMU)11と、ABS12と、ステアリングセンサ(STGセンサ)13と、受信機14と、データベース(DB)15と、ディスプレイ16と、スピーカ17と、タッチパネル18と、ハードディスク(HDD)19を備えて構成される。
【0016】
電動パーキングブレーキECU2と、変速機ECU8と、カーナビゲーションECU9と、ABS12はCAN(Controller Area Network)等の通信規格により相互に接続される。
【0017】
電動パーキングブレーキECU2は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが以下に述べる所定の処理を行うものであり、作動力制御手段2a、制動力不足検出手段2b、作動力増加手段2cを備えて構成される。
【0018】
前後加速度センサ3は、周知の加速度センサにより構成され、前後加速度信号を電動パーキングブレーキECU2に供給するものである。
【0019】
車速センサ4は、各車輪に設けた車輪速センサであり、車速を検出して電動パーキングブレーキECU2に車速信号を供給するものである。
【0020】
パーキングスイッチ5は、車両内部のコンソール近傍に設けられ、車両の停止時において、運転者の操作により、ドラムブレーキ7によりブレーキをかけるかどうかを選択するものである。
【0021】
張力付与装置6は、図示しないアクチュエータと、当該アクチュエータの発生したトルクをワイヤーの張力に変換するウォームホイールと、ウォームホイールの回転を固定する固定部とから構成される周知のものであり、このアクチュエータを所定の電流を通電して動作させると後述するドラムブレーキ7を構成する一対のシューを動作させるケーブルに張力を付与するものである。固定部によりウォームホイールを固定することにより、アクチュエータに電流が供給されない場合においても張力すなわち作動力を維持することができる。
【0022】
ドラムブレーキ7は周知のドラムブレーキであり、図示しない車輪に結合された図示しないドラムの内周側に、これも図示しない一対のシューがアンカーにより結合されて配置され、ケーブルに張力が作用すると一対のシューがアンカーを軸として相互に離隔するように動作してドラムの内周面に押し付けられて、制動力を発生させるものである。つまり、張力付与装置6とドラムブレーキ7とで電動パーキングブレーキを構成している。
【0023】
変速機ECU8は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものである。変速機ECU8は、車両のシフト位置を検出して電動パーキングブレーキECU2に伝送する。
【0024】
カーナビゲーションECU9は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを相互に接続するデータバスから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、以下に述べるそれぞれの制御を行うものであり、位置検出手段9a、記憶手段9bを構成するものである。
【0025】
GPS受信アンテナ10は、地球上空に打ち上げられた複数の軍事衛星の内三個の軍事衛星からの電波を受信し、これらの電波をもとに、カーナビゲーションECU9の位置検出手段9aは、例えば三角測量の原理で自車の位置つまりは経度と緯度を測定する。なお、経度と緯度に加え高度も測定する場合には四個の軍事衛星を用いる。
【0026】
ここで、イナーシャメジャメントユニット11は車両のヨーレート及び前後加速度を検出するものであり、ステアリングセンサ13は車両の操舵装置に設けられて操舵角を検出するものである。
【0027】
タッチパネル18はユーザが目的地等の探索条件を入力する入力装置であり、データベース15はCD−ROMやDVD−ROM等の記憶媒体により構成され、表示用の地図情報と、探索用の地図情報を格納し記憶している。ディスプレイ16は、入力された目的地をもとにカーナビゲーションECU9が探索した経路を表示用の地図情報とともに表示するものである。
【0028】
また、ABS12は制動時の車輪のロックを防止する装置であり、その制御に用いるための車速を図示しない車輪速センサから取得しており、カーナビゲーションECU9はその車速をABS12からCAN等の通信規格による伝送により取得している。
【0029】
さらに、受信機14は光あるいは電波ビーコンに準拠したものであり、VICS(Vehicle Information & Communication System:道路交通情報システム)からの道路情報(渋滞情報を含む)を受信する。
【0030】
上述したGPS受信アンテナ10を用いたカーナビゲーションECU9の位置検出手段9aによる自車の位置の測定は、軍事衛星からの電波を利用する特性上、高層ビルの谷間に自車が位置する場合やトンネル内を自車が走行している場合、あるいは、高架橋の下を自車が走行している場合などでは軍事衛星からの電波をGPS受信アンテナ10が受信できないため、自車の位置が測定できないという問題が生じる。
【0031】
このため、GPS受信アンテナ10が軍事衛星から電波を受信できない場合には、カーナビゲーションECU9の位置検出手段9aは、ABS12が検出した車速とイナーシャメジャメントユニット11が検出したヨーレート、ステアリングセンサ13が検出した操舵角をもとにして、自車の移動距離と方向を計算して自車の位置を測定する。これにより、GPS受信アンテナ10を用いた自車の位置の測定と併せて、トータルの自車位置の測定の精度を高めている。
【0032】
電動パーキングブレーキECU2の作動力制御手段2aは、運転者が車両を停止してパーキングスイッチ5を操作してドラムブレーキ7を動作させた場合に、所定の制動力を発生させるように張力付与装置6の張力すなわち作動力を制御する。この張力付与装置6の発生した張力はケーブルによりドラムブレーキ7に伝達されて、ドラムブレーキ7を構成するドラムにシューが押し付けられて制動力が発生する。
【0033】
電動パーキングブレーキECU2の制動力不足検出手段2bは、車速センサ4の車速信号を検出しており、作動力制御手段2aがドラムブレーキ7の作動力を発生させているにもかかわらず、車速がゼロとならない場合に、制動力が不足していると検出する。また制動力不足検出手段2bは、前後加速度センサ3の前後加速度信号を検出しており、この前後加速度信号に基づいて路面勾配を演算する。なお、制動力の不足は、制御上の誤差により作動力が目標値に達しない場合と、路面勾配による場合に発生する。
【0034】
さらに、電動パーキングブレーキECU2の作動力増加手段2cは、制動力不足検出手段2bが制動力の不足を検出した場合に、この制動力の不足が解消するまで、ドラムブレーキ7の作動力を所定値毎に段階的に増加させる。
【0035】
加えて、カーナビゲーションECU9の位置検出手段9aは、自車の位置を検出し、記憶手段9bは、制動力の不足が検出されて電動パーキングブレーキECU2の作動力増加手段2cにより電動パーキングブレーキの作動力が増加された場合に、位置検出手段9aが検出した自車の位置と、作動力増加手段2cが最終的に増加した作動力の増加分を記憶する。
【0036】
さらに、記憶手段9bは、電動パーキングブレーキECU2の制動力不足検出手段2bが前後加速度センサ3から取得して演算した路面勾配を、電動パーキングブレーキECU2からCANを介して取得してハードディスク19に格納して記憶し、変速機ECU8からシフト位置を、CANを介して取得してハードディスク19に格納して記憶する。
【0037】
さらに、カーナビゲーションECU9の位置検出手段9aは引き続いて車両の位置を検出し、車両が、記憶手段9bが記憶した車両の位置に再度停止する場合において、パーキングスイッチ5の入力をもとに作動力制御手段2aが作動力を制御すると共に、作動力増加手段2cが、記憶手段9bが記憶した、前回作動力増加手段2cが最終的に増加した作動力と路面勾配及びシフト位置を読み出して、この作動力の増加分を、今回のシフト位置と前回のシフト位置を用いて補正して、この補正後の作動力の増加分を用いて一度に、ドラムブレーキ7の作動力を増加する。
【0038】
以上述べた本実施例による電動パーキングブレーキ制御装置1は以下のフローチャートに基づいて実行される。以下に、本実施例の電動パーキングブレーキ制御装置1の制御内容をフローチャートを用いて説明する。図2は、本発明による電動パーキングブレーキ制御装置1の電動パーキングブレーキECU2及びカーナビゲーションECU8の制御内容を示すフローチャートである。
【0039】
S1において、電動パーキングブレーキECU2の作動力制御手段2aは、パーキングスイッチ5の入力を検出し、S2において、運転者が車両を停止してパーキングスイッチ5を操作して張力付与装置6及びドラムブレーキ7を動作させた場合に、所定の制動力を発生させるように張力付与装置6のアクチュエータを制御してワイヤーの張力すなわち作動力を制御する。この張力付与装置6の発生した張力はケーブルによりドラムブレーキ7に伝達されて、ドラムブレーキ7を構成するドラムにシューが押し付けられて制動力が発生する。
【0040】
続いて、S3において、電動パーキングブレーキECU2の制動力不足検出手段2bは、車速センサ4の車速信号を検出し、S4において、カーナビゲーションECU9の位置検出手段9aが車両の位置を検出する。
【0041】
さらに、S5においてカーナビゲーションECU9の位置検出手段9aは変速機ECU8からCANを介してシフト位置を検出し、S6においてカーナビゲーションECU9の位置検出手段9aは電動パーキングブレーキECU2からCANを介して路面勾配を検出する。
【0042】
さらに、S7において、電動パーキングブレーキECU2の制動力不足検出手段2bは、作動力制御手段2aが張力付与装置6及びドラムブレーキ7の作動力を発生させているにもかかわらず、車速がゼロとならない場合に、制動力が不足していると判定し、S8にすすみ、車速がゼロである場合には制動力が不足しているとは判定せず、制御を終了する。
【0043】
さらに、S8において、電動パーキングブレーキECU2の作動力増加手段2cは、制動力不足検出手段2bが制動力の不足を検出した場合に、張力付与装置6及びドラムブレーキ7の作動力を所定値増加させ、S9において制動力不足検出手段2bにより制動力の不足が検出されるかどうかを判定し、なお制動力の不足が検出される場合にはS8に戻ってさらに作動力を所定値増加させる。S9において制動力の不足が検出されない場合はS10にすすむ。つまり、S9において制動力不足が検出される間は、S8のステップは繰り返されて制動力は所定値毎に増加される。(増し引き制御)
【0044】
加えて、S10において、カーナビゲーションECU9の記憶手段9bは、位置検出手段9aが検出した自車の位置と、作動力増加手段2cが最終的に増加した作動力の増加分をハードディスク19に格納して記憶する。さらに、S11において、カーナビゲーションECU9の記憶手段9bは、S5において位置検出手段9aが検出したシフト位置と路面勾配をハードディスク19に格納して記憶する。
【0045】
さらに、S12において、電動パーキングブレーキECU2の位置検出手段9aは引き続いて車両の位置と路面勾配を検出し、車両が、記憶手段9bが記憶した車両の位置と路面勾配と一致して、記憶手段9bが記憶した車両の位置に再度停止すると判定する場合にはS13にすすみ、判定しない場合には制御を終了する。
【0046】
S13において、電動パーキングブレーキECU2の作動力制御手段2aがパーキングスイッチ5の入力に基づいて作動力を制御すると共に、電動パーキングブレーキECU2の作動力増加手段2cが、S10、S11において記憶手段9bが記憶した、前回最終的に増加した作動力とシフト位置を記憶手段9bから読み出して、この作動力の増加分を前回のシフト位置と今回のシフト位置の比較に基づいて補正して、この補正後の作動力の増加分だけ一度に、ドラムブレーキ7の作動力を増加する。
【0047】
なお、シフト位置により作動力の増加分を補正するにあたっては、例えば、前回停止時のシフト位置がN(ニュートラル)で、今回停止時のシフト位置がD(ドライブ)であり、昇り勾配である場合には、Dのトルク分だけ作動力の増加分を低減する。
【0048】
以上述べた制御内容により実現される本実施例の電動パーキングブレーキ制御装置1によれば、前回の停止と同じ車両の位置において車両を停止させる場合に、電動パーキングブレーキECU2の作動力増加手段2cがドラムブレーキ7の作動力を増加させるにあたって、前回停車において記憶した作動力の増加分を用いて、一度に作動力を増加させるため、張力付与装置6及びドラムブレーキ7の作動力つまりは張力を段階的に増加させることに比べて、高い張力でもって張力付与装置6やドラムブレーキ7を動作させる頻度を低下させることができる。
【0049】
これにより、電動パーキングブレーキを構成する張力付与装置6やドラムブレーキ7を構成する要素、つまりは、アクチュエータやケーブル、ドラム、アンカーやシュー等の耐久性を高める必要を廃することができ、各構成要素の大型化や重量の増大、コストの増大を招くことを防止することができる。
【0050】
さらに、記憶手段9bが、作動力増加手段2cが作動力を増加させた場合に、車両状態としてのシフト位置と路面状態としての路面勾配を記憶することにより、記憶された車両の位置において再度車両を停止させる場合に、作動力増加手段2cが記憶された車両状態に基づいて作動力の増加分を補正することができるので、マニュアル動作のメカニカルパーキングブレーキを運転者の判断により操作するのと同等の、よりきめの細かい作動力の増加の制御を行うことができる。
【0051】
さらに、図2のフローチャートのS12において、記憶手段9bにより記憶された車両の位置において再度車両を停止させることを検出するにあたり、車両の位置だけでなく路面勾配を考慮して検出することができるので、より正確な検出を行うことができる。
【0052】
なおハードディスク19の記憶容量に限りがある場合には、例えば、自宅指定地点を優先度1、メモリ地点を優先度2、路面勾配が閾値以上の地点を優先度3、自宅からの距離が閾値以上の地点を優先度4、その他を優先度5というようにランク付けして、作動力の増加の制御を行った車両の位置に優先順位をつけて記憶し、記憶容量の限界に近づいた段階で優先順位の低い順にデータを消去することが好ましい。
【0053】
この場合、ハードディスク19の記憶容量を超えると、上記優先順位に基づいて新規の車両の位置を記憶するが、例えば優先度5に相当する車両の位置は記憶されなくなるため、各車両の位置毎に作動力の増加の制御の実施回数を加えて記憶するものとしても良い。この場合において、新規に車両の位置を記憶する場合は、各優先度の車両の位置の中で最も実施回数が低いものを消去する。
【0054】
これにより、ハードディスク19の記憶容量に限りがある場合でも、本実施例により得られる作用効果つまりは、電動パーキングブレーキを構成する張力付与装置6やドラムブレーキ7を構成する要素の耐久性を高める必要を廃することを最大限活用することができる。
【0055】
また、本実施例においては、電動パーキングブレーキECU2の制動力不足検出手段2bが前後加速度センサ3を用いて路面勾配を演算しているが、この前後加速度センサ3が断線、ショート等の電気的に検知できない故障が発生している場合には、カーナビゲーションECU9に接続されているイナーシャメジャメントユニット11の検出する前後加速度をバックアップとして用いて路面勾配を求めても良い。
【0056】
さらに、前後加速度センサ3とイナーシャメジャメントユニット11を相互にバックアップするように用いることもできる。すなわち、前後加速度センサ3により検出した前後加速度と、イナーシャメジャメントユニット11により検出した前後加速度がイコールとならない場合で、前後加速度センサ3の検出した前後加速度が前回記憶値と一致する場合には、イナーシャメジャメントユニット11のゲイン異常であると判定し、引き続き前後加速度センサ3により検出した前後加速度を用いて制動力不足検出手段2bが路面勾配を求める。
【0057】
加えて、前後加速度センサ3により検出した前後加速度と、イナーシャメジャメントユニット11により検出した前後加速度がイコールとならない場合で、イナーシャメジャメントユニット11が検出した前後加速度が前回記憶値と一致する場合には、前後加速度センサ3のゲイン異常であると判定し、イナーシャメジャメントユニット11により検出した前後加速度を用いて制動力不足検出手段2bが路面勾配を求める。
【0058】
これらのことにより、本実施例の電動パーキングブレーキ装置全体のフェールセーフ度を高めることができる。
【0059】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【0060】
例えば、本実施例においては、電動パーキングブレーキとしてドラムブレーキ方式のものを用いたが、ディスクブレーキ方式のものを用いても良い。また、車速センサ4を省略して、ABS12の速度情報をカーナビゲーションECU9およびCANを介して電動パーキングブレーキECU2の制動力不足検出手段2bが取得する構成としても良い。
【0061】
さらに、本実施例においては、路面勾配を求めるにあたり前後加速度センサ3の検出した前後加速度を用いたが、車高センサを備えた車両においては、前輪と後輪の車高差を求めて、その車高差により前後加速度により求めた路面勾配を補正して更に正確な路面勾配を求めることもできる。
【0062】
また、上述した実施例においては、記憶手段9bをカーナビゲーションECU9に設けたが、電動パーキングブレーキECU2内に設けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、車両の電動パーキングブレーキ制御装置に関するものであり、電動パーキングブレーキに要求される耐久性を下げて、電動パーキングブレーキを構成する要素の大型化や重量の増大を防止することができるので乗用車、トラック、バス等の様々な車両に適用して有益なものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る電動パーキングブレーキ制御装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る電動パーキングブレーキ制御装置の一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
1 電動パーキングブレーキ制御装置
2 電動パーキングブレーキECU
2a 作動力制御手段
2b 制動力不足検出手段
2c 作動力増加手段
3 前後加速度センサ
4 車速センサ
5 パーキングスイッチ
6 張力付与装置
7 ドラムブレーキ
8 変速機ECU
9 カーナビゲーションECU
9a 位置検出手段
9b 記憶手段
10 GPS受信アンテナ
11 イナーシャメジャメントユニット
12 ABS
13 ステアリングセンサ
14 受信機
15 データベース
16 ディスプレイ
17 スピーカ
18 タッチパネル
19 ハードディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の電動パーキングブレーキの作動力を制御する作動力制御手段と、前記電動パーキングブレーキの制動力不足を検出する制動力不足検出手段と、前記制動力不足検出手段が制動力不足を検出した場合に、前記制動力不足検出手段が前記制動力不足を検出しなくなるまで前記作動力を増加させる作動力増加手段と、車両の位置を検出する位置検出手段と、前記作動力増加手段が前記作動力を増加させた場合に、当該作動力の増加分と前記位置検出手段の検出した車両の位置を記憶する記憶手段を備えると共に、当該記憶された車両の位置において再度車両を停止させる場合に、前記作動力増加手段が前記記憶された作動力の増加分だけ一度に前記作動力を増加させることを特徴とする電動パーキングブレーキ制御装置。
【請求項2】
前記記憶手段が、前記作動力増加手段が前記作動力を増加させた場合に、車両状態と路面状態を記憶することを特徴とする請求項1に記載の電動パーキングブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−132939(P2008−132939A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−322139(P2006−322139)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】