説明

電動ポンプ

【目的】ポンプに電動機を一体的に組合わせたものにおいて、その電動機の発熱源であるステータを効果的に放熱する構造を備えた車両用の電動ポンプとすること。
【構成】ロータ室11と吸入ポート13と吐出ポート14とを有し且つ吸入ポート13及び吐出ポート14のそれぞれに連通する吸入側オイル通路16と吐出側オイル通路17が形成されたポンプケース1と、駆動ロータ21と従動ロータ22とからなるポンプ部Aと、焼結形成されたステータコア71からなるステータ7とモータケース5と駆動ロータ21を回転駆動させるシャフト4とその外周に装着されるインナーマグネット6とからなるモータ部Bとからなること。モータケース5の内周面5aとステータコア71の外周面71aとの間に空隙部Qが形成され、ポンプケース1とモータケース5との接合にて、空隙部Qは、吸入側オイル通路16と吐出側オイル通路17とにそれぞれ連通されること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプに電動機を一体的に組合わせたものにおいて、その電動機の発熱源であるステータを効果的に放熱する構造を備えた車両用の電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のオイルポンプに電動機が組み付けられたタイプのものが種々存在する。この種のものとして、特許文献1が挙げられる。特許文献1では、油圧供給装置に関するものであるが、この特許文献1の中で、電動モータMで駆動される電動油圧ポンプP2が開示されている。電動油圧ポンプP2は、特許文献1に記載された図3に示すように、センサレス・ブラシレス直流モータで成る電動モータMと、トロコイド型の油圧ポンプPとを連結した構造を有している。
【0003】
電動モータMは、樹脂材料にて形成されたモータケース30に円筒状の内部空間Sを形成し、この内部空間Sを取り囲む位置に複数のコア31を配置している。前記トロコイド型の油圧ポンプPは前記駆動軸35を回転自在に支持する軸受部40Aを有し、内部空間を形成するポンプケース40と、アウタロータ42と、インナロータ41とを備えている。そして、作動油に圧力が作用し、該作動油を吐出する部位が吐出部47に設定され、作動油を吸引する部位が吸引部49に設定されている。
【0004】
そして、特許文献1における電動モータMの放熱構造としては、図3に示すように、油圧ポンプPは吐出部47からの作動油の一部を軸受部40Aと駆動軸35との隙間を介して内部空間Sに供給し、この内部空間Sからの作動油をポンプケース40において駆動軸35と平行する戻し油路43から吸引部49に戻す構造となっている。上記構造により電動モータM、より詳細にはコア31で発生した熱は内部空間Sに存在する作動油に伝達し、作動油とともに戻し油路43から吸引部49に放熱することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−69838
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1には、以下のような課題が残されている。すなわち、コア31の外周側には、樹脂材料で形成されたモータケース30が配置され、また特許文献1に開示された図3から読み取れるようにコア31はモータケース30に一体成形されている。一般に、樹脂材料は金属材料と比較すると熱伝導率が低いため、特許文献1の構造ではコア31の発熱はモータケース30の外周側からは放熱されにくい。そのため、特許文献1では、コア31の内周側から作動油を使用して放熱を行っている。
【0007】
ところで、図3に記載されているコア31を見ると、多くの線が狭い間隔で平行に引かれていることが見て取れる。よって、具体的な記載はされていないものの、技術的常識からすると、コア31は積層鋼板を数多く貼り合せた構造である。そのため、特許文献1のようにコア31の内周側に作動油が存在すると、長期の使用に伴い、積層鋼板同士の微細隙間に作動油が徐々に浸入してきてしまい、耐久性に難があった。
【0008】
また、上記作動油の浸入を阻止するために、例えばコア31の内周側を樹脂等でコーティングすると、永久磁石で形成されたロータ34とコア31との距離(いわゆるエアギャップ)を拡大するしかなく、これにより磁気抵抗が大きくなる。よって、電動モータMの効率が低下してしまうものであった。
【0009】
また、回転駆動されるロータ34が作動油に油没しているため、回転時に抵抗となり、電動モータMの効率低下の要因となるものであった。そこで、本発明が解決しようとする課題(技術的課題)は、極めて簡単な構成によって、オイルによるコイルの温度上昇を抑制し、放熱効果を高くし、モータ効率を向上させると共に製造コストを低減し、装置全体をコンパクトにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、発明者は上記課題を解決すべく鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、ロータ室と吸入ポートと吐出ポートとを有し且つ前記吸入ポート及び吐出ポートのそれぞれに連通する吸入側オイル通路と吐出側オイル通路が形成されたポンプケースと前記ロータ室に収納される駆動ロータと従動ロータとからなるポンプ部と、焼結形成されたステータコアからなるステータと該ステータが装着されたモータケースと前記駆動ロータを回転駆動させるシャフトと該シャフトの外周に装着されるインナーマグネットとからなるモータ部とからなり、前記モータケースの内周面と前記ステータコアの外周面との間に空隙部が形成され、前記ポンプケースと前記モータケースとの接合にて、前記空隙部は、前記吸入側オイル通路と吐出側オイル通路とにそれぞれ連通されてなる電動ポンプとしたことにより、上記課題を解決した。
【0011】
請求項2の発明を、請求項1において、前記モータケースの内周面には軸方向に沿う突起条が周方向に沿って複数形成されることにより前記空隙部が形成されてなる電動ポンプとしたことにより、上記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1において、前記ステータコアの外周面には軸方向に沿う突起条が周方向に沿って複数形成されることにより前記空隙部が形成されてなる電動ポンプとしたことにより、上記課題を解決した。
【0012】
請求項4の発明を、請求項2又は3において、前記突起条はセレーションとして形成されてなる電動ポンプとしたことにより、上記課題を解決した。請求項5の発明を、請求項1において、前記モータケースの内周面は周方向に沿って波形状の凹凸面として形成されることにより前記空隙部が形成されてなる電動ポンプとしたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明では、ステータコアの外周面と、モータケースとの内周面に形成される空隙部を利用し、該空隙部に連通する吸入側オイル通路及び吐出側オイル通路からオイルを送り込み、該オイルによって、ステータコアとモータケース間の伝熱性を向上させ、コイルの温度上昇を抑制させることができる。
【0014】
これは、空隙部がステータコアとモータケースとの間の極僅かの隙間であり、単なる空気だけの断熱層では無く、オイルを充填させることよって伝熱が行われ、熱伝導性が極めて良好にさせるものである。これによって、コイルや電子部品の温度上昇を抑制することにより、これら部品の信頼性を高めることができる。また電子部品の熱負荷が軽減されることで、耐熱グレード(質)を下げた低価格な電子部品の選定が可能となるため、コスト低減にもつながる。
【0015】
また、前記空隙部は、モータケースとステータコアとの接触面に形成される極僅かの隙間であればオイル介在面として十分であり、よってモータ部の外径が大きくなることを防止すると共に、コンパクトにまとめることができる。前記空隙部は、ステータコアの外周側に位置するので、ステータコアの内周側において、インナーマグネット以外に何も配置される必要がなく、インナーマグネットとステータコア間のエアギャップを縮小でき、モータ効率を向上させることができる。
【0016】
請求項2及び請求項3では、極めて簡単且つ確実な空隙部を形成することができる。請求項4の発明では、複数の突起条がセレーションとして形成されることにより、製造が簡単にできる。請求項5の発明では、モータケースの内部の波形状の凹凸面は、通常、製造上発生してしまう程度の極僅かな凹凸を有する面である。そして、これを利用することでモータケースとステータコアとの間に空隙部を最も簡単に形成することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(A)は本発明の構成を示す縦断側面図、(B)は(A)のY1−Y1矢視断面図、(C)はステータコア及び一部切除したモータケースを組合わせた斜視図、(D)は(B)のY2−Y2矢視断面図である。
【図2】(A)は図1(A)の(ア)部拡大詳細図、(B)は(A)のY3−Y3矢視断面図、(C)は(A)のY4−Y4矢視断面図である。
【図3】(A)は本発明の第2実施形態における構成の縦断正面図、(B)は(A)のY5−Y5矢視断面図である。
【図4】(A)は第1実施形態における変形例の要部縦断正面図、(B)は第2実施形態における変形例の要部縦断正面図、(C)は第3実施形態におけるモータケースの縦断正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。本発明は、電動ポンプであり、図1(A)に示すように、主にオイルポンプとして使用されるポンプ部Aと、ステータ7及びインナーマグネット6等からなるモータ部Bと、回路基板9やヒートシンク8等からなる回路部Cとから構成され、これらが組み合わされたものである。
【0019】
さらに、具体的な構成としては、ポンプ部Aは、ポンプケース1と、駆動ロータ21と、従動ロータ22と、オイルシール3とから構成される。前記ポンプケース1には、ロータ室11が形成され、該ロータ室11の中心位置には軸受孔12が形成され、該軸受孔12を中心として略左右対称に吸入ポート13と吐出ポート14とが形成されている。駆動ロータ21と従動ロータ22のタイプは、内接歯車タイプのロータを採用している〔図1(A)参照〕。また、特に図示しないが、前記駆動ロータ21と前記従動ロータ22とを外歯歯車同士を組み合わせた外接歯車タイプのロータが採用されたものであっても構わない。
【0020】
本発明では、図1(A)に示すように、駆動ロータ21及び従動ロータ22は、内接歯車タイプが使用されるものとして説明する。したがって、駆動ロータ21はインナーロータが使用され、従動ロータ22はアウターロータが使用される。前記駆動ロータ(インナーロータ)21は、複数のトロコイド形状の外歯を有し、前記従動ロータ(アウターロータ)22は、前記駆動ロータ21より1枚以上多くした内歯を有するものであり、駆動ロータ21の外歯と従動ロータ22の内歯とが滑らかに接触しつつ相互に回転し続ける。
【0021】
駆動ロータ21の外歯と、従動ロータ22の内歯とによって構成される空隙を歯間空間S(セル)と称する。駆動ロータ21の回転中心にはボス孔が形成されモータ部Bのシャフト4が挿通され、駆動ロータ21とシャフト4とは、一体となって回転するようにキー等にて周方向に固定される。
【0022】
ポンプケース1には、後述するモータ部Bのモータケース5との接続側面1aにオイルシール3のための窪み部15が形成されている。該窪み部15は、前記軸受孔12の周囲に円形の段差装状部として形成され、オイルシール3が圧入等の固定手段にて装着されるようになっている。オイルシール3は、ロータ室11からポンプケース1とシャフト4との間の隙間を漏れてきたオイルをモータ部B側に漏れることを防止する役目をなしている〔図1(A)参照〕。
【0023】
ポンプケース1には、ロータ室11からモータ部Bへの接続側面1aに向かって、2本の孔状通路が形成されている〔図1(A)参照〕。ロータ室11側において、この2本の孔状通路のうちの1本は吸入ポート13の近傍に形成され、これを吸入側オイル通路16と称する。またもう1本は吐出ポート14の近傍に形成され、これを吐出側オイル通路17と称する。吸入側オイル通路16及び吐出側オイル通路17は共にオイルを流通させる役目をなす。
【0024】
ポンプの稼動時において、吐出ポート14近傍の方が吸入ポート13よりも圧力が高いため、吐出ポート14近傍の吐出側オイル通路17から後述するオイル介在面を経由して吸入ポート13近傍の吸入側オイル通路16に向かってオイルが流れる〔図2(A)参照〕。そして、吸入側オイル通路16及び吐出側オイル通路17が形成され、2本のオイル通路をオイルが流れ、放熱効果は高まる。また、例え圧力差が僅かでオイルが流動しない状態であったとしても、モータケース5の内周面5aと、ステータコア71の外周面71aとの間の極僅かの空隙部Qは、オイルで満たされることになり、単に組み付けた時のように空気が介在するよりも高い放熱効果を有する。
【0025】
吸入側オイル通路16及び吐出側オイル通路17には、ポンプ始動の初期にオイルが流動しなくてもコイルの温度上昇により吸入側オイル通路16及び吐出側オイル通路17や後述するオイル介在面に対流が発生し、その結果、オイルの流動を発生させ、オイルの熱移動による放熱が行われる。
【0026】
モータ部Bは、図1(A),(B)に示すように、モータケース5,シャフト4,インナーマグネット6、ステータ7から構成される。ステータ7は、ステータコア71とコイル72とから構成される。インナーマグネット6は、回転ベース61の外周に永久磁石62が筒状に装着されたものである。前記回転ベース61は略カップ形状をなし、底部61a及び円筒側部61bとから構成される。底部61aは、円板形状に形成され、直径中心に前記シャフト4の軸端部が固着されている。
【0027】
インナーマグネット6は、シャフト4と一体化され、インナーマグネット6の回転によりシャフト4も回転する。回転ベース61は、永久磁石62のバックヨークとしての役割を有しているため、磁性体すなわち鉄系金属となっている。上記バックヨークとは、マグネット間の磁路を形成し、空間を通るより、磁気抵抗を低減させるものである。
【0028】
インナーマグネット6の永久磁石62は、中空円筒形状に形成され、回転ベース61の外周側壁面に固着される。また、永久磁石62には、偶数の磁極が周方向に等間隔に設けられている。永久磁石62とステータ7との間は回転時に互いに擦れ無い程度の隙間が設けられている。
【0029】
ステータ7は、その外周面71aがモータケース5の内周面5aに焼ばめ、圧入、キー、ボルト、接着等の方法により固定される。ステータ7は、焼結体であるステータコア71と、該ステータコア71を完全に被覆するように配置される薄い樹脂製のインシュレータと、インシュレータに巻き付けられるコイル72とからなる。ステータコア71の外周側は完全に一周に亘って繋がり、円筒形状に形成されており、磁極ごとに分割されてはいない。ステータコア71の内周側には磁極ごとに周方向等分に分割され、偶数個のティース部71b,71b,…が形成される。
【0030】
ステータコア71の外周面71aと,モータケース5の内周面5aとは、略類似(相補)形状となるように製造される。モータケース5内にステータコア71が収納された状態で、モータケース5の内周面5aと、ステータコア71の外周面71aとの間に空隙部Qが形成される。そして、ポンプケース1とモータケース5を接合することにより、モータケース5側の空隙部Qに、ポンプケース1側の吸入側オイル通路16及び吐出側オイル通路17がそれぞれ連通する構成となっており、空隙部Qにオイルが送り込まれる。空隙部Qに介在するオイルにより、極めて薄いオイル介在層がモータケース5とステータコア71との間に構成されることになる。
【0031】
空隙部Qを構成するための実施形態は、以下に述べるように、複数存在する。まず第1実施形態では、前記モータケース5の内周面5aには軸方向に沿う突起条51,51,…が周方向に沿って複数形成されることにより前記空隙部Qが形成される。モータケース5内に軸方向に沿って収納されるステータコア71は、前記突起条51,51,…にのみ当接する。そして、複数の突起条51,51,…の間に空隙部Qが形成されることになる。
【0032】
モータケース5に形成される突起条51,51,…については、モータケース5におけるポンプケース1との接合側の開口付近には突起条51,51,…の未形成部分51nが存在することもある〔図1(D)参照〕。つまり、突起条51の長手方向の端部は、モータケース5の内周面5aの軸方向全体に亘って形成されるものではなく、モータケース5の開口箇所は突起条51,51,…が存在しない部分となっている。
【0033】
これら突起条51の未形成部分51nによって、モータケース5とポンプケース1との接合部分では、吸入側オイル通路16及び吐出側オイル通路17により送り込まれたオイルが、突起条51の未形成部分51nを流れて、該突起条51に妨げられることなく、空隙部Qの軸方向及び周方向全体に略均等となるように流れ込むようにすることができる。また、突起条51の長手方向の他方側端部も内周面5aの軸方向における端部箇所で未形成部分51nが形成されることもあり、空隙部Qの周方向におけるオイルの流れをより一層円滑にすることができる。
【0034】
次に、空隙部Qの第2実施形態では、前記ステータコア71の外周面71aに突起条711,711,…が周方向に沿って複数形成され、空隙部Qが形成されるものである。この第2実施形態では、モータケース5側には前記突起条51,51,…は形成されない。このような構成により、ステータコア71はモータケース5の内周面5aに対して、突起条711,711,…で当接する。そして、複数の突起条711,711,…の間に空隙部Qが形成されることになる。
【0035】
この第2実施形態においても、モータケース5に収納されたステータコア71のポンプケース1側寄りとその反対側寄りのそれぞれの付近では、突起条711,711,…の未形成部分711nが存在する〔図3(B)参照〕。これによって、第1実施形態と同様に、ポンプケース1側の吸入側オイル通路16と吐出側オイル通路17とから送り込まれるオイルが、空隙部Qの軸方向及び周方向に均等に流れ込むようにすることができる。
【0036】
また、第1及び第2実施形態の変形例として、前記ステータコア71側の突起条711,711,…、或は前記モータケース5側の突起条51,51,…が、セレーションとして形成されることもある〔図4(A),(B)参照〕。突起条51又は突起条711がセレーションとして形成される場合には、モータケース5とステータコア71との接触部分が多数形成されることになり、ステータコア71がモータケース5に収納されるときには、極めて強固に固定することができる。この変形例においても、突起条51及び突起条711には、それぞれに前述した未形成部分が形成される。
【0037】
第3実施形態の空隙部Qでは、モータケース5の内周面5aに沿って波形状の凹凸面として形成されたものである〔図4(C)参照〕。実際には、モータケース5の形成時における精度のバラツキを若干大きく(悪く)することによって、ステータコア71の外周面71aと、モータケース5の内周面5aとの間に、局所的に生じる極僅かの隙間を空隙部Qとして使用されるものである。空隙部Qは、極僅かの隙間であるが、ステータコア71の外周側面1aとモータケース5の内周面5aとの極僅かの隙間に全周に亘ってオイル介在面を配置することができるものである。
【0038】
さらに、前記モータ部Bにおいて、前記ポンプ部Aとは軸方向において反対側に外気に露出するように多数のフィンを有したヒートシンク8が配置装着される〔図1(B)参照〕。ヒートシンク8の軸方向奥側且つモータ部寄りには回路基板9が配置される。該回路基板9は、モータケース5に取り付けられ、回路基板9上にはステータ7のコイル72を制御する電子部品が搭載される。ステータ7は、モータケース5に固定され、回路基板9もモータケース5に固定されている。
【0039】
したがって従来は、ステータ7のコイル72で発生した熱はモータケース5を伝わって回路基板9上の電子部品に到達してしまうものであるが、本発明では、オイル介在面やオイル通路(吸入側オイル通路16及び吐出側オイル通路17が形成されており、回路基板9に装着された電子部品に到達する熱量を低減させることができる。
【0040】
本発明では、ステータ7を構成するステータコア71が焼結材により形成されたものである。これによって、ステータコア71は、気密構造体となりオイルが浸入することができないものとなる。これは、従来の積層鋼板によるステータコアとは異なる構造であり、積層鋼板のステータコアでは鋼板間の接合面にオイルが毛細管現象により浸入するものであり、オイルがステータコア内に浸入してオイル漏れを発生する恐れがあった。
【0041】
これに対して、焼結材製のステータコア71では、全体が気密構造体であるため、オイルが直接、接したとしてもオイルがステータコア71の内部に浸入することがなく、したがって、ステータコア71を介してオイルがモータケース5の中心部に漏れてくることが無い。つまり、焼結材製としたステータコア71そのものがモータケース5内におけるシール部材としての機能を有する。そして、空隙部Qのオイルは、ステータコア71に直接、接する構成であるため放熱効果を高くすることができる。
【符号の説明】
【0042】
A…ポンプ部、B…モータ部、11…ロータ室、13…吸入ポート、14…吐出ポート、16…吸入側オイル通路、17…吐出側オイル通路、21…駆動ロータ、
22…従動ロータ、4…シャフト、5…ポンプケース、5a…内周面,51…突起条、
6…インナーマグネット、7…ステータコア、71a…外周面、711…突起条、
Q…空隙部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ室と吸入ポートと吐出ポートとを有し且つ前記吸入ポート及び吐出ポートのそれぞれに連通する吸入側オイル通路と吐出側オイル通路が形成されたポンプケースと前記ロータ室に収納される駆動ロータと従動ロータとからなるポンプ部と、焼結形成されたステータコアからなるステータと該ステータが装着されたモータケースと前記駆動ロータを回転駆動させるシャフトと該シャフトの外周に装着されるインナーマグネットとからなるモータ部とからなり、前記モータケースの内周面と前記ステータコアの外周面との間に空隙部が形成され、前記ポンプケースと前記モータケースとの接合にて、前記空隙部は、前記吸入側オイル通路と吐出側オイル通路とにそれぞれ連通されてなることを特徴とする電動ポンプ。
【請求項2】
請求項1において、前記モータケースの内周面には軸方向に沿う突起条が周方向に沿って複数形成されることにより前記空隙部が形成されてなることを特徴とする電動ポンプ。
【請求項3】
請求項1において、前記ステータコアの外周面には軸方向に沿う突起条が周方向に沿って複数形成されることにより前記空隙部が形成されてなることを特徴とする電動ポンプ。
【請求項4】
請求項2又は3において、前記突起条はセレーションとして形成されてなることを特徴とする電動ポンプ。
【請求項5】
請求項1において、前記モータケースの内周面は周方向に沿って波形状の凹凸面として形成されることにより前記空隙部が形成されてなることを特徴とする電動ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−122451(P2012−122451A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275972(P2010−275972)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000144810)株式会社山田製作所 (183)
【Fターム(参考)】