電動式ランナ
【課題】任意の機器が接続され、敷設されたダクト状のレールに沿って容易に位置を変更することができる電動式ランナを提供する。
【解決手段】電動式ランナ1は、レール2に走行自在に係合されると共に任意の機器9が接続されるランナ11と、ランナ11に設けられランナ11を自走させるアクチュエータ12とを備えている。ランナ11は、ダクト2に係合する係合部14と、機器9を接続するためのコネクタ15とを備えている。ランナ11は、電動式ランナ1にプラグ機能(挿入着脱機能)を付与する。アクチュエータ12として、衝撃力によってランナ11を自走させるインパクトアクチュエータを用いることができる。電動式ランナ1は、アクチュエータと共に自走するので、従来の配線ダクト用のプラグと異なり、移動のための着脱が不要であり、容易に位置を変更することができる。
【解決手段】電動式ランナ1は、レール2に走行自在に係合されると共に任意の機器9が接続されるランナ11と、ランナ11に設けられランナ11を自走させるアクチュエータ12とを備えている。ランナ11は、ダクト2に係合する係合部14と、機器9を接続するためのコネクタ15とを備えている。ランナ11は、電動式ランナ1にプラグ機能(挿入着脱機能)を付与する。アクチュエータ12として、衝撃力によってランナ11を自走させるインパクトアクチュエータを用いることができる。電動式ランナ1は、アクチュエータと共に自走するので、従来の配線ダクト用のプラグと異なり、移動のための着脱が不要であり、容易に位置を変更することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクト状のレールに沿って自走する電動式ランナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、天井等に配線ダクトを敷設し、配線ダクトに電気的機械的に結合されるプラグを介してスポットライトのような電気機器を吊り下げて電気機器を動作させる配線システムが知られている。配線ダクトは、開口溝を有し、その内部に給電線が設けられており、開口溝に挿入する専用のプラグを介して、プラグに接続された照明機器などに電気を供給することができる。このような配線システムは、配線ダクトに対してプラグの脱着や増設が容易であり、配線ダクトに沿ってプラグの位置決めが自在である利点を生かし、例えば、スポットライトの位置を比較的頻繁に変更する必要のある美術館や博物館などにおいて用いられている。プラグを配線ダクトに機械的に結合する方法として、プラグ全体を回転する方法や、プラグに付属のレバーを回転操作する方法が一般的である。配線ダクト用のプラグとして、大重量の灯具用に結合強度を高めたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、バネ付勢された係止部をプラグに備え、プラグを配線ダクトの開口溝に押し込む直進動作によって係止部を配線ダクトの内側面に係止させることによりプラグの位置決め固定をするようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−3771号公報
【特許文献2】特開2002−345130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような配線ダクト用のプラグにおいては、プラグの脱着そのものは容易であるものの、脚立を使用する不安定な高所作業や多数の機器を変更する長時間作業などの場合に、その位置変更のための脱着作業は必ずしも容易ではない。
【0005】
本発明は、上記課題を解消するものであって、任意の機器が接続され、敷設されたダクト状のレールに沿って容易に位置を変更することができる電動式ランナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、本発明の電動式ランナは、ダクト状のレールに走行自在に係合されると共に任意の機器が接続されるランナと、ランナに設けられ、電力供給により駆動され、該ランナを自走させるアクチュエータと、を備えていることを特徴とする。
【0007】
この電動式ランナにおいて、ランナは、機器を接続するためのコネクタを備えていてもよい。
【0008】
この電動式ランナにおいて、機器は、電力によって動作する機器であり、アクチュエータおよび機器は、外部から供給される電力を受ける受電構造を備えていてもよい。
【0009】
この電動式ランナにおいて、レールは、給電構造を有する配線ダクトであり、機器は、電力によって動作する機器であり、ランナは、配線ダクトに電気的および機械的に接続するプラグを有し、該プラグを介して配線ダクトからの電力をアクチュエータおよび機器に給電するようにしてもよい。
【0010】
この電動式ランナにおいて、プラグは、配線ダクトに電気的に接触しながら移動自在とされていてもよい。
【0011】
この電動式ランナにおいて、ランナは、プラグと配線ダクトとの間の電気的接続を機械的にオン/オフする機構を備えていてもよい。
【0012】
この電動式ランナにおいて、ランナは、機器への給電をオン/オフするスイッチを備えていてもよい。
【0013】
この電動式ランナにおいて、配線ダクトは、通信線を備えており、ランナは、機器と通信線との間を接続するための通信用コネクタを備えていてもよい。
【0014】
この電動式ランナにおいて、アクチュエータは、電力印加により電磁力に基づく衝撃を発生し、その衝撃力によってランナを自走させるインパクトアクチュエータとすることができる。
【0015】
この電動式ランナにおいて、インパクトアクチュエータを持つランナとレールとの間で摩擦抵抗を発生させる構造を備えていてもよい。
【0016】
この電動式ランナにおいて、コネクタは、機器を回転自在に支持する回転部を備え、インパクトアクチュエータは複数備えられ、ランナを直動または回転部を回転させるようにしてもよい。
【0017】
この電動式ランナにおいて、回転部は、機器を仰角方向に回転自在としてもよい。
【0018】
この電動式ランナにおいて、アクチュエータへの電力制御によりランナの移動速度を可変としてもよい。
【0019】
この電動式ランナにおいて、ランナは、アクチュエータを電力制御する制御回路を備えていてもよい。
【0020】
この電動式ランナにおいて、ランナは、アクチュエータの電源として電池を備えていてもよい。
【0021】
この電動式ランナにおいて、ランナは、アクチュエータに電源供給する充電池を備えていてもよい。
【0022】
この電動式ランナにおいて、ランナは、アクチュエータを遠隔操作するための操作信号を受信する受信部を備えていてもよい。
【0023】
この電動式ランナにおいて、ランナは、レール上の位置を認識する位置センサを備え、位置センサからの位置信号に基づいて自走制御を行なうようにしてもよい。
【0024】
この電動式ランナにおいて、ランナは、レール上の物体までの距離を測定する距離センサを備え、距離センサからの距離データに基づいて自走制御を行なうようにしてもよい。
【0025】
この電動式ランナにおいて、ランナは、自走していないときには該ランナをレールに固着させ、自走するときにはレールへの固着力を小さくするクランパを備ていてもよい。
【0026】
この電動式ランナにおいて、アクチュエータは、電力印加により電磁力に基づく衝撃を発生し、その衝撃力によってランナを自走させるインパクトアクチュエータであり、プラグと配線ダクトの給電構造との間の接続が、インパクトアクチュエータの動作時の衝撃力によってランナが動く瞬間のみ外れる構造としてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ランナがアクチュエータを備えてレールに沿ってアクチュエータと共に自走するので、従来の配線ダクト用のプラグと異なり、移動のための着脱が不要であり、容易に位置を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る電動式ランナについての正面図、(b)は同電動式ランナの側面図。
【図2】(a)は同電動式ランナの変形例の正面図、(b)は同変形例の側面図。
【図3】同電動式ランナの実施例を示す斜視図。
【図4】同電動式ランナの他の実施例を示す斜視図。
【図5】同電動式ランナのさらに他の実施例を示す斜視図。
【図6】(a)は第2の実施形態に係る電動式ランナについての正面図、(b)は同電動式ランナの変形例の正面図。
【図7】(a)は同電動式ランナの他の変形例の正面図、(b)は同電動式ランナのさらに他の変形例の正面図。
【図8】(a)は同電動式ランナのさらに他の変形例の正面図、(b)は同変形例における接電極部分の正面図、(b)の接電極が接触解除された状態の正面図。
【図9】同電動式ランナのさらに他の変形例の正面図。
【図10】同電動式ランナのさらに他の変形例の正面図。
【図11】(a)は第3の実施形態に係る電動式ランナについての正面図、(b)は同電動式ランナの側面図。
【図12】(a)は同電動式ランナの変形例の正面図、(b)は同変形例の側面図。
【図13】(a)(b)は同電動式ランナに適用されるインパクトアクチュエータの左向き動作を説明する断面図、(c)(d)は同インパクトアクチュエータの右向き動作を説明する断面図。
【図14】(a)は同電動式ランナに適用される他のインパクトアクチュエータの断面図、(b)は同インパクトアクチュエータの動作原理を説明する模式図。
【図15】(a)(b)は同電動式ランナに適用されるさらに他のインパクトアクチュエータの左向き動作を説明する断面図、(c)は同インパクトアクチュエータを左向きに動作させる際に電磁コイルに流す電流の時間変化グラフ。
【図16】(a)(b)は同インパクトアクチュエータの右向き動作を説明する断面図、(c)は同インパクトアクチュエータを右向きに動作させる際に電磁コイルに流す電流の時間変化グラフ。
【図17】(a)(b)は同電動式ランナに適用されるさらに他のインパクトアクチュエータの動作を説明する断面図、(c)は同インパクトアクチュエータの動作原理を説明する模式図。
【図18】(a)は同電動式ランナに適用されるさらに他のインパクトアクチュエータの平面断面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(b)のB−B線断面図。
【図19】(a)〜(c)は同インパクトアクチュエータの動作例を示す一部断面の側面図。
【図20】(a)(b)は同インパクトアクチュエータを動作させる際に電磁コイルに流す電流の時間変化グラフ。
【図21】同電動式ランナに適用されるさらに他のインパクトアクチュエータの断面図。
【図22】(a)(b)は同インパクトアクチュエータの部分拡大断面図。
【図23】(a)〜(d)は同インパクトアクチュエータの動作の様子を示す一部断面の側面図。
【図24】(a)は第4の実施形態に係る電動式ランナについての正面図、(b)は同電動式ランナの要部の斜視図、(c)は同電動式ランナの回転状態の要部の斜視図。
【図25】(a)は同電動式ランナの変形例の正面図、(b)は同変形例の要部の斜視図。
【図26】(a)は同電動式ランナの他の変形例の正面図、(b)は同変形例の側面図、(c)は同変形例の要部の斜視図。
【図27】(a)は同電動式ランナのさらに他の変形例の正面図、(b)は同変形例の側面図、(c)は同変形例の要部の斜視図、(d)は同変形例の回動状態の要部の斜視図。
【図28】第5の実施形態に係る電動式ランナについての側面図。
【図29】同電動式ランナのブロック構成図。
【図30】同電動式ランナの変形例の側面図。
【図31】(a)は第6の実施形態に係る電動式ランナについての正面、(b)は同電動式ランナのクランパが解除された状態の正面図。
【図32】(a)は第7の実施形態に係る電動式ランナについての正面図、同電動式ランナの接触子部分の斜視図。
【図33】(a)(b)(c)は同電動式ランナの接触子の動作を時系列的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態に係る電動式ランナについて、図面を参照して説明する。図1、図2は、第1の実施形態の電動式ランナを示す。電動式ランナ1は、図1(a)(b)に示すように、ダクト状のレール2に走行自在に係合されると共に任意の機器9が接続されるランナ11と、ランナ11に設けられ、電力供給により駆動され、ランナ11を自走させるアクチュエータ12と、を備えている。ダクト状のレール2とは、ダクトであってレール2として用いることができるダクトであり、以下、単にダクト2と称する。ダクト2は、断面がC字形状を有し、開口溝20が左右の縁辺部21によって形成されている。ランナ11は、さらに、ダクト2に係合するための係合部14を上部に備え、機器9を接続するためのコネクタ15を下部に備えている。ランナ11は、電動式ランナ1における主たる構造物であって、電動式ランナ1の本体として位置づけられる。コネクタ15は、ねじ止め、引っ掛けシーリングコネクタ型などの構造を備えることにより、既設のダクトに取り付けて使用する機器、例えば、照明灯や監視カメラなどを容易に取り付けることができる。
【0030】
係合部14は、ランナ11の上部に突設された円柱状の連結部14aと、連結部14aのさらに上部に連結部14aよりも拡径した略四角形状の係合板14bとを備え、その断面はT字形状を有している。連結部14aの径と係合板14bの短辺は開口溝20の開口幅よりも狭く、係合板14bの長辺は開口幅よりも広い。従って、ランナ11は、係合部14を開口溝20に挿入して全体を90°回転することにより、ダクト2に係合することができ、逆回転することにより、ダクト2から取り外すことができる。すなわち、係合部14は、ランナ11、従って電動式ランナ1にプラグ機能(挿入着脱機能)を付与するものである。この意味で、ランナ11または電動式ランナ1は、いわゆるダクト用のプラグとみなされる。ランナ11は、アクチュエータ12によって駆動される車輪12aを備えており、係合板14bと車輪12aとによってダクト2の縁辺部21を上下から挟持する。アクチュエータ12は、例えば、モータであり、制御部13によって遠隔制御される。
【0031】
ランナ11を移動させるとき、制御部13は、その移動方向に応じて、不図示の電源から供給される電力を制御してアクチュエータ12を動作させる。ランナ11は、車輪12aが回転することにより、所定の方向に移動する。このとき、係合板14bの下面は縁辺部21の上面を滑りながら移動する。車輪12aは、ランナ11を移動させるために必要な摩擦力が得られるように不図示の付勢手段によって縁辺部21の下面に押圧されている。ランナ11の移動をより容易とするために、図2(a)(b)に示すように、係合板14bに車輪14cを備えて、車輪14cによって縁辺部21の上面を転がるようにしてもよい。この場合においても、ランナ11は、係合部14と車輪14cを開口溝20に挿入して全体を90°回転することにより、ダクト2に係合することができる。
【0032】
電動式ランナ1は、天井などに敷設されて各種の機器を吊り下げるためのダクト2に適合させるために、係合部14と車輪12aの構成を変更したり、既設のダクト専用のプラグにアクチュエータ12を取り付けたりして構成することができる。電動式ランナ1は、遠隔操作によりダクト2に沿って自走させることができるので、例えば、高所のダクト2に取り付ける機器の位置を変えるたびに高所作業で毎回ランナ11を取り外す必要がなく、危険な作業などがなくなり、作業時間が短縮される。また、機器9の電源をオンとしたまま、ダクト2上を移動させることもできる。また、既設のダクト専用のプラグにアクチュエータ12を取り付けて電動式ランナ1を構成することができる。ここで、ダクト専用のプラグは、ダクトの任意の位置に挿入して取り付けられると共に取り外し可能なプラグであって、そのダクト固有の形状に適合しているものである。
【0033】
図3、図4、図5は、電動式ランナ1をダクト2に取り付けた実施例を示す。これらの電動式ランナ1は、外部から供給される電力を受ける受電構造を備えている。機器9は電力によって動作する機器であり、同様に、受電構造を備えている。ダクト2には、内部に給電線を備えた一般に配線ダクトと呼ばれるダクトの他に、そのような給電線を備えないダクトもあり、電動式ランナ1は、これらのいずれのダクトについても、適用することができる。図3に示す実施例において、天井に、機器移動のためのダクト2と、電力供給や制御を行なうためのコントロールボックス16とが取り付けられている。コントロールボックス16には、電源の供給口(コンセント)と制御部13からの制御信号の中継器が設けられている。ダクト2に、自走用のアクチュエータ12を搭載した電動式ランナ1を取り付け、コネクタ15を通して電動式ランナ1に機器9を取り付ける。機器9は、電動式ランナ1を介してコンセントから電気を取り、稼動する。また、アクチュエータ12もコンセントから電気を受けて動作し、電動式ランナ1がダクト2上を移動する。
【0034】
図4に示す他の実施例において、ダクト2は、電線を持つ配線ダクトであり、この配線ダクトに、電動式ランナ1と、電力供給や制御を行なうコントロールボックス16とが取り付けられている。コントロールボックス16は、不図示の別途の配線ダクトに取り付けることもできる。電動式ランナ1には、機器9として2台の監視カメラが接続されている。コントロールボックス16は、例えば、配線ダクトに電気的機械的に接続されるプラグ機能を有しており、ダクト2から電力を受電し、別途に敷設した電線を介して電動式ランナ1と機器9に給電する。また、コントロールボックス16と電動式ランナ1および機器9との間には、アクチュエータ12や機器9を制御するための制御信号や機器9からの情報信号を通信するための信号線ケーブルが配線されている。機器9の監視カメラは、ダクト2上を移動しながら映像を撮すことができる。
【0035】
図5に示すさらに他の実施例において、電動式ランナ1が、配線ダクトであるダクト2(1段目)に取り付けられ、その電動式ランナ1に、機器9としてダクト2(2段目)が接続されている。2段目のダクト2には、別の電動式ランナ1が取り付けられ、その電動式ランナ1には機器9として照明灯が接続されている。コントロールボックス16が、2段目のダクト2にプラグとして電気的機械的に挿入接続されている。コントロールボックス16から、各電動式ランナ1に電気的接続がなされている。1段目のダクト2に係合された電動式ランナ1は、そのダクト2に沿うX方向に移動することができ、2段目のダクト2に係合された電動式ランナ1は、そのダクト2に沿うY方向に移動することができる。従って、機器9としての照明灯は、XY面内で2次元的な移動を行うことができる。
【0036】
(第2の実施形態)
図6乃至図10は、第2の実施形態の電動式ランナ1を示す。本実施形態の電動式ランナ1は、いずれも給電構造を有する配線ダクトをレールとするダクト2(以下、配線ダクト2)に係合されるものであり、配線ダクト2から受電するための受電構造を備える点において、上述の第1の実施形態と異なる。図6(a)に示すように、配線ダクト2は、断面がC字形状の外枠の内部左右の側壁に、配線ダクト2の長手方向に沿うように突設されたリブを備えており、そのリブの突端部に給電用の電線22が表面を露出して埋め込まれている。電動式ランナ1は、受電構造として、接電極17を係合部14の上部に備えている。接電極17は、電線22に対し、その露出部に接触して電気的に接続される。接電極17によって受電した電力は、アクチュエータ12および機器9(不図示)の電力とされる。コネクタ15には、これに接続されて電力によって動作する機器に電力を給電するための接続用電極(ソケット)が設けられている。従い、電動式ランナ1の係合部14と接電極17は、配線ダクト2に対して電気的および機械的に接続するプラグを構成している。また、図6(b)に示すように、上述の図2(a)(b)に示した電動式ランナ1に対応させて、係合部14に車輪14cを備え、接電極17を配線ダクト2の内部天面に接触させるプラグの構造とすることができる。この場合の配線ダクト2は、電線22を内部天面に備えるものである。このような電動式ランナ1によれば、外部から機器9への電源配線が不要になり、ダクト2から機器9に電力を供給することができる。また、電線22は、電力線として用いることの他に、信号波を電力波に重畳させたり、時分割で信号送信したりすることにより、通信線として用いることもでき、これにより、電動式ランナ1を遠隔走行制御することができる。
【0037】
また、図7(a)に示すように、接電極17の構造を、電線22に接触して転がるローラ構造としたり、図7(b)に示すように、電線22に接触して摺動する複数電極を有するブラシ構造としたりすることができる。これにより、接電極17が電線22に対して相対移動する際に、配線ダクト2に対する電気的接触がより安定して確実となり、プラグとしての電動式ランナ1が、配線ダクト2に電気的に接触しながら、より円滑に移動自在となる。このような電動式ランナ1によれば、機器9の電源をオンして動作させた状態のまま機器9を移動させることができる。
【0038】
また、図8(a)(b)(c)に示すように、電動式ランナ1は、接電極17の配線ダクト2との電気的接続を機械的にオン/オフする機構を備えることができる。その機構として、左右一対のクランク状の金具17aと、左右の金具17aの間にあって金具17aの一端部を外方に付勢するバネ17dと、電磁石17eとを備えている。金具17aは、中間部が回転軸17bによって回転自在に軸支され、金具17aの上部一端部に接電極17を、下部他端部に磁性体17cを備えている。電磁石17eは、両磁性体17cに磁極を近接して配置されている。電磁石17eが非動作のときは、金具17aに作用するバネ17dの付勢力によって、接電極17が電線22に押圧され、接電極17と配線ダクト2との電気的接続がオンとなる。電磁石17eに電流が印加されると、磁性体17cが電磁石17eの磁力によって下方に引き寄せられ、金具17aがバネ17dの付勢力に抗して回転軸17bの周りに回転し、接電極17が電線22から離脱し、電気的接続がオフとなる。電動式ランナ1を自走させる電力は、別途に配線した電線を用いたり、ランナ11内部に電池を備えたりして、給電することができる。このような電動式ランナ1によれば、移動時における接電極17や電線22の磨耗を防止することができる。また、移動時における不安定な電気的接触が発生しないので、例えば、接触不良による火花発生を防ぐことができる。
【0039】
また、図9に示すように、電動式ランナ1は、機器への給電をオン/オフするスイッチ17fを備えることができる。電動式ランナ1が移動する際に、スイッチ17fをオフすることにより、機器9(不図示)への不安定な給電を停止して機器9を保護することができ、予期せぬ電気的な不具合や事故発生を回避することができる。
【0040】
また、図10に示すように、電動式ランナ1は、給電用の電線22とは別途に通信用の電線22(通信線)を備えた通信用の配線ダクト2に係合させて用いることができる。電動式ランナ1は、給電用と通信用のそれぞれの電線22に電気的に接続される接電極17を各々備える。コネクタ15は、機器と通信線との間を接続するための通信用コネクタを備え、これに接続される機器は、通信線を介して制御されたり、データ通信をしたりすることができる。通信線や接電極17は、必要に応じて任意数を備えることができる、また、電動式ランナ1つまりアクチュエータ12の制御用信号を送信するためにも用いることができる。
【0041】
(第3の実施形態)
図11、図12は、第3の実施形態の電動式ランナ1を示す。本実施形態の電動式ランナ1は、上述の第2の実施形態(図6)の電動式ランナ1におけるアクチュエータ12として、電力印加により電磁力(特に磁力)に基づく衝撃を発生し、その衝撃力によってランナを自走させるインパクトアクチュエータ3を用いる。また、この電動式ランナ1は、第1,2の実施形態における車輪12aを用いることなく、衝撃力と摩擦力の作用のもとで間欠的に移動する点が、上述の第1,2の実施形態の電動式ランナ1と異なる。図11の電動式ランナ1は図6(a)の電動式ランナ1に対応し、図12の電動式ランナ1は図6(b)の電動式ランナ1に対応する。
【0042】
インパクトアクチュエータ3は、可動子3aと、可動子3aが衝突する相手であるストッパ3bと、電磁力を発生して可動子3aを駆動する駆動部3cとを備えている。また、制御部13が、ランナ11内に備えられている。ストッパ3bと駆動部3cはランナ11に対して固定されており、可動子3aはランナ11に対して相対移動する。その相対移動の方向は、ダクト2の長手方向Xであり、電動式ランナ1の移動方向である。可動子3aが右側のストッパ3bに繰り返し衝突するたびに、電動式ランナ1は右に移動し、左側のストッパ3b(駆動部3c)に繰り返し衝突するたびに、左に移動する。可動子3aが往復動する際に、電動式ランナ1を移動させない側のストッパ3bには衝突しないように、制御部13が駆動部3cを制御する。また、電動式ランナ1の移動速度は、アクチュエータ3への電力制御、例えば、電力の電流値、繰り返し駆動のパルス時間幅や周波数などによって行われる。インパクトアクチュエータ3(以下、単に、アクチュエータ3という)の具体例は、後述の図13乃至図23によって詳述する。
【0043】
電動式ランナ1は、衝撃力によって効率的に移動するために、ランナ11とダクト2とが接触して相対移動する相互の面間に、適宜の静止摩擦力と動摩擦力とが存在することを前提としている。そのため、電動式ランナ1は、ダクト2の縁辺部21の下面Sにおける摩擦抵抗を発生させる圧接構造4を備えている。圧接構造4は、面Sに接触する摩擦板41と、摩擦板41とランナ11との間にあって摩擦板41を面Sに向けて付勢するバネ42とを備えている。面Sと摩擦板41との間の摩擦力は、バネ42の伸長力の設定によって適宜の大きさに調整される。このような電動式ランナ1によれば、アクチュエータからランナへの、駆動における伝達機構(例えば、車輪12aと、これに対するギヤなどの動力伝達機構)を用いることなく、電動式ランナ1を移動させることができ、自走のための構造を単純化、小型化できる。また、アクチュエータ3は、単純小型の構成とすることができるので、構成既設のダクト専用のプラグであって機器接続用のコネクタを備えたプラグに、もとのコネクタを使用可能に残したままアクチュエータ3を取り付けて電動式ランナ1を構成することができる。このように既存の専用プラグを電動式ランナ1に改造する場合、もとのプラグに接続できる任意の機器を電動式ランナ1に接続して移動させることができる。
【0044】
(渦電流式のインパクトアクチュエータ)
次に、アクチュエータ3の構成と動作原理について詳細説明する。図13はアクチュエータ3の例を示す。アクチュエータ3は、図13(a)に示すように、互いに離間し同軸に対向配置して一体化された左右の電磁コイル31と、電磁コイル31の間に配置された弾性体30と、各電磁コイル31と弾性体30との間に配置された2つの導電体32と、を備えている。各導電体32は、それぞれ少なくとも弾性体30の伸縮する範囲内で電磁コイル31の軸方向に沿って移動自在に構成されている。電磁コイル31は、その中心軸上に配置された軸棒31aによって一体化され、それぞれコイル枠31bに納められている。導電体32は、例えばアルミニュームなどの良導電体から成るドーナツ状の金属円板であって、軸棒31aによって移動方向が拘束されている。弾性体30は、アクチュエータ3が非駆動状態のとき、導電体32を電磁コイル31に近接させるように伸張している。導電体32と電磁コイル31の近接の度合いは、導電体32に必要な渦電流を発生できる距離であればよい。弾性体30は、例えばコイルバネや板バネ、ゴムなどを用いて構成することができる。アクチュエータ3は、電磁コイル31と導電体32を1つずつ含む組を、軸棒31aに沿って弾性体30の両側に、互いに対称配置となるように備えている。
【0045】
上記構成のアクチュエータ3の動作を説明する。アクチュエータ3は、ランナ11(電動式ランナ1の本体)に衝撃を与えることによりランナ11を軸棒31aの方向に移動させる。衝撃によって発生する力を衝撃力または衝撃と称する。電磁コイル31は、電力を与えられることにより、衝撃の発生源となる。ランナ11は、左方の組の動作によって左方に移動され、右方の組の動作によって右方に移動される。そこで、まず、左方の組の動作を説明する。左方の導電体32は、左方の電磁コイル31の通電によって導電体32に発生する渦電流に起因して発生する反発力によって、図13(a)に示すように、右方に反発移動される。すると、弾性体30は、移動する導電体32により圧縮され、その後、その伸張力によって導電体32を左方へ押し戻す。この時点で、電磁コイル31の通電はオフされている。従って、導電体32は、図13(b)に示すように、左方の電磁コイル31に衝突し、その衝突によって左方に向かう衝撃が発生する。ランナ11は、この衝撃によって左方に押されて左方に移動する。制御部20は、必要な渦電流とこれに起因する反発力とが得られるように電流を一気に流すように電磁コイル31への電力制御を行い、導電体32と電磁コイル31との衝突が邪魔されないように電力をオフする。また、制御部20は、このような通電を繰り返すことにより、ランナ11に反復して衝撃を与えてランナ11をパルス的に左方へ移動させる。図13(c)(d)は、右方の組の動作によってランナ11を右方に移動する場合を示す。その動作は、図13(a)(b)の場合の動作を左右に反転したものと考えることができる。衝撃によるランナ11の一方向への移動には、後戻りを防止する機構が必要であり、その機構として摩擦板41が用いられる。
【0046】
上述のように、アクチュエータ3は、左方と右方のいずれの方向であってもランナ11を移動させることができ、電動式ランナ1を、小型・軽量・安価に実現することができる。弾性体30は、時間をかけて圧縮されることにより、衝撃を和らげるダンパの役割をしている。なお、このアクチュエータ3において、一方(右方)の電磁コイル31と導電体32などの組を除いた構成として片側駆動のアクチュエータを構成することができる。片側駆動のアクチュエータ3は、両側駆動(往復駆動)のアクチュエータ3よりも小型に構成できるので、狭い空間に複数を分散させて配置することができる融通性がある。
【0047】
(永久磁石式のインパクトアクチュエータ)
図14はさらに他のアクチュエータを示す。アクチュエータ3は、図14(a)に示すように、上述の図13に示したアクチュエータ3において、2つの導電体32を、それぞれに対応して配置される2つの永久磁石33によって置き換えたものである。永久磁石33は、電磁コイル31の通電によって流れるコイル電流と永久磁石33の磁界との相互作用による反発力によって反発移動される。永久磁石33は、導電体32と同様にドーナツ円板状であって、中心側から外周側に向けて半径方向に磁化されている。本例の場合、中心側がS極で外周側がN極であるが、逆極性とすることができる。この永久磁石33は、電磁コイル31に流れる電流の向きによって、図14(b)に示すように、斥力を受けたり、引力を受けたり(不図示)する。なお、図14(b)には、磁力線を矢印曲線によって示している。
【0048】
上記構成のアクチュエータ3の動作を、例えば、左方の電磁コイル31と永久磁石33との組について説明する。アクチュエータ3は、永久磁石33に斥力を与えるように電磁コイル31に電流を流し、その後、電流をオフすると、永久磁石33は右方において弾性体30によって受け止められた後、弾性体30によって跳ね返されて、元の電磁コイル31に衝突する。つまり、アクチュエータ3は、上述の渦電流に起因して発生する反発力に代えて、電磁コイル31の通電によって流れるコイル電流と永久磁石33の磁界との相互作用による反発力を用いるものである。図13に示したものと、図14に示したものの折衷構成として、導電体32と永久磁石33とを1つずつ有するものとすることもできる。この構成の場合、左右の動作や構成が互いに対称的に成るとは限らない。逆に、対称的にならないことを利用して、往復動作の特性を違えて、コストや動作特性の最適化を図ることもできる。
【0049】
このアクチュエータ3において、左右の永久磁石33の互いの磁気反発力によって、弾性体30の反発力を代替させて、弾性体30を除去することができる(不図示)。この場合、2つの永久磁石33が互いに近づく場合には、相互の磁気反発力のダンピング効果によって衝突の衝撃が和らげられる。2つの永久磁石33が互いに離反する場合には、相対移動中の永久磁石33が相互に磁力を及ぼして、電磁コイル31に衝突するまでの間、その移動速度を加速し続ける。このことを考慮して、左右の組の間隔は適宜設定される。以上のように永久磁石33と電磁コイル31との反発力を用いるアクチュエータは、渦電流による場合よりもより大きな衝撃を発生させて1回で大きな移動を行える。また、渦電流による場合のジュール熱による発熱がない点、安定にエネルギ効率良く動作できる。
【0050】
(単コイル式のインパクトアクチュエータ)
図15および図16はさらに他のアクチュエータを示す。アクチュエータ3は、図15(a)に示すように、電磁コイル31と、永久磁石33と、ストッパ34と、電磁コイル31に通電する電流を時間制御する制御部20と、を備えている。永久磁石33は、電磁コイル31への通電によって生じる電磁作用によって電磁コイル31に対して相対移動する。ストッパ34は、永久磁石33の相対移動の範囲を制限するように電磁コイル31と一体化されて被衝突体をなす。このアクチュエータ3では、電磁コイル31への通電により、永久磁石33が被衝突体(すなわち、電磁コイル31とストッパ34のいずれか)と衝突することにより衝撃が発生する。被衝突体は、永久磁石33が衝突する相手(相対移動の相手)を示す用語として用いている。電磁コイル31は、コイル枠に納められ、その中心軸上に配置された軸棒31aによってストッパ34に一体化されている。永久磁石33は、ドーナツ円板状であって、中心側から外周側に向けて半径方向に磁化されている。本例の場合、中心側がS極で外周側がN極であるが、逆極性とすることができる。この永久磁石33は、電磁コイル31に流れる電流の向きによって、斥力を受けたり、引力を受けたりする。
【0051】
上記構成のアクチュエータ3の動作を、ランナ11を左方に移動させる場合について、図15(a)(b)(c)を参照して説明する。制御部20は、電磁コイル31に通電するコイル電流Jを時間制御することにより、電磁コイル31による引力(J<0、時間t3)と斥力(J>0、時間t5)によって永久磁石33を往復移動させ、引力によって永久磁石33を電磁コイル31に衝突させる。すなわち、永久磁石33は、図15(a)に示すように電磁コイル31とストッパ34の間にある位置から、図15(c)の時間t3における引力によって左方に移動し、図15(b)に示すように電磁コイル31に衝突する。その後、永久磁石33は、図15(c)の時間t5における斥力によって、図15(a)に示す位置に復帰する。このような永久磁石33の動作(時間t3,t5における動作)が繰り返され、ランナ11が左方にパルス的に移動する。図15(c)は、永久磁石33が図15(b)に示すように電磁コイル31側にある状態(初期状態)から、時間t2における斥力によって動作を開始する例を示す。時間t1,t4は駆動調整時間である。
【0052】
ランナ11を右方に移動させる場合について、図16(a)(b)(c)を参照して説明する。図16(a)は、図15(a)と同じ図である。制御部20は、電磁コイル31に通電するコイル電流Jを時間制御することにより、電磁コイル31による斥力(J>0、時間t4)と引力(J<0、時間t5)によって永久磁石33を往復移動させ、斥力によって永久磁石33をストッパ34に衝突させる。すなわち、永久磁石33は、図16(a)に示すように電磁コイル31とストッパ34の間にある位置から、図16(c)の時間t4における斥力によって右方に移動し、図16(b)に示すようにストッパ34に衝突する。その後、永久磁石33は、図16(c)の時間t5における引力によって、図16(a)に示す位置に復帰する。この永久磁石33の動作(時間t4,t5における動作)が繰り返され、ランナ11が右方にパルス的に移動する。ここで、図16(c)の時間t1,t2における永久磁石33の動作を説明する。時間t1では、永久磁石33が初期状態にあると仮定する。初期状態は、コイル電流Jがゼロであり、永久磁石33が電磁コイル31とストッパ34との中間位置(図16(a)の状態)ではなく、永久磁石33が、前述の図15(b)に示すように、電磁コイル31側にある状態である。永久磁石33は、その初期状態において移動範囲の左端にある。永久磁石33が左端の初期状態から右方に移動してストッパ34に衝突する最初の衝突では、時間t2に示すように、コイル電流Jは漸増した後、一定値となるコイル電流Jが流される。時間t2の始めにコイル電流Jを漸増させるのは、急激な離反に起因する反動によるランナ11の左方への移動を抑制するためである。
【0053】
上記のように、ランナ11は、永久磁石33が左方の電磁コイル31に衝突することによって左方に移動され、永久磁石33が右方のストッパ34に衝突することによって右方に移動される。従って、ランナ11を左方に移動させる場合には、永久磁石33がストッパ34に衝突しないように電磁コイル31からの磁気力を永久磁石33に及ぼす必要がある。逆に、ランナ11を右方に移動させる場合には、永久磁石33が電磁コイル31に衝突しないように電磁コイル31からの磁気力を永久磁石33に及ぼす必要がある。コイル電流Jを制御する制御部13は、電磁コイル31と永久磁石33の相対移動の一方向において衝突を発生させ、その一方向とは反対方向において衝突を回避させると共に相対移動の方向を反転させる。制御部13は、一方向における衝撃のみを反復して発生させるように、電磁コイル31に通電するコイル電流Jを時間制御する。このような制御部13とアクチュエータ3とを備えたランナ11は、電磁コイル31と永久磁石33の相対移動のいずれの向きにおいても衝突による衝撃を発生させることができるので、ランナ11の往復移動を実現することができる。また、アクチュエータ3が1つの電磁コイル31に、永久磁石33とストッパ34とを組み合わせて成るので、小型かつ簡単な構成となる。このアクチュエータ3をランナ11に備えることにより、電動式ランナ1を、モータや駆動力伝達装置などを用いる場合に比べて小型・軽量・安価に実現することができる。
【0054】
(コイル移動式のインパクトアクチュエータ)
図17はさらに他のアクチュエータを示す。アクチュエータ3は、図17(a)に示すように、上述の図15(a)に示したアクチュエータ3において、電磁コイル31と永久磁石33とを互いに入れ替え、ストッパ34を別途の永久磁石33に置き換えたものである。すなわち、アクチュエータ3は、互いに離間して同軸配置され軸棒31aの両端に固定された円板状の2つの永久磁石33と、軸棒31aに沿って移動自在とされた電磁コイル31と、を備えている。電磁コイル31は、コイル枠に納められ、中心軸上を軸棒31aによって挿通されている。2つの永久磁石33は、軸棒31aによってストッパ34に一体化されて被衝突体(この場合、電磁コイル31が衝突する相手)をなす。電磁コイル31は、電磁コイル31への通電によって生じる電磁作用によって、2つの永久磁石33に対して相対移動する。その相対移動の範囲は被衝突体によって(両端の永久磁石33によって)制限される。2つの永久磁石33は、ドーナツ円板状であり、中心側から外周側に向けて半径方向に磁化されている。本例の場合、中心側がS極で外周側がN極であるが、逆極性とすることができる。
【0055】
上記構成のアクチュエータ3の動作を、図17(b)(c)により、ランナ11を左方に移動させる場合について説明する。上述のような永久磁石33の間に挟まれた電磁コイル31は、通電されると、図17(c)に示すように、一方の永久磁石33から斥力を受け、他方の永久磁石33から引力を受ける。従って、電磁コイル31は、電磁コイル31に流す電流の向きによって、左方または右方のいずれかに移動方向を選択することができる。そこで、制御部20によって、電磁コイル31のコイル電流を時間制御することにより、図17(b)に示すように、電磁コイル31を左方の永久磁石33に衝突させてランナ11を左方に移動させることができる。同様に、電磁コイル31を右方の永久磁石33に衝突させてランナ11を右方に移動させることができる。制御部20は、電磁コイル31と永久磁石33の相対移動の一方向において衝突を発生させ、その一方向とは反対方向において衝突を回避させると共に相対移動の方向を反転させる。制御部20は、一方向における衝撃のみを反復して発生させるように電磁コイル31に通電する電流を時間制御する。制御部13は、このような制御を繰り返すことにより、ランナ11を左方、同様に右方へパルス的に移動させる。
【0056】
(ボイスコイル式のインパクトアクチュエータ)
図18、図19、および図20はさらに他のアクチュエータを示す。アクチュエータ3は、図18(a)(b)(c)に示すように、矩形の磁気回路35の対向する内面にそれぞれ配設された矩形平板状の永久磁石33と、2つの永久磁石33の間で移動自在に配設された電磁コイル31とを備えている。そして、電磁コイル31と2つの永久磁石33とは互いに組み合わされてボイスコイル構造とされている。電磁コイル31は、磁気回路35の内部に設けられた磁気回路が挿通(その挿通方向をX軸方向とする)され、この磁気回路部分は各永久磁石33の対向磁極となっている。電磁コイル31は、上部を回転軸受31cによって回動自在に支持されている。また、電磁コイル31の下部には、ハンマ34aが電磁コイル31の一部として設けられている。磁気回路35の外周におけるX軸方向の両端には、ハンマ34aが衝突可能な位置に、ストッパ34が設けられている。永久磁石33とストッパ34とが一体化されて被衝突体が形成されている。
【0057】
永久磁石33による磁界は、X軸方向に直交する水平方向に設定されている。従って、この磁界中に配設された電磁コイル31に通電されると、電磁コイル31は、そのコイル電流の向きに従って、X軸の正方向(右矢印方向)、またはその反対の負方向に移動させる力を受ける。そこで、図19(a)に示すように、電磁コイル31が左向きの力を受けると、電磁コイル31が左側に振り子運動をして、ハンマ34aが左側のストッパ34に衝突し、ランナ11が左方向に移動される。アクチュエータ3の動作を図19(a)(b)に示す状態間で反復して行うために、制御部13は、電磁コイル31に通電する電流を、図20(a)に示す時間変化となるように時間制御する。コイル電流Jは、例えば、正弦関数をコイル電流Jの正方向にシフトさせた関数形になっている。電磁コイル31は、このコイル電流Jの正側では、図19(a)に示すように、左方に振れて左方で衝突し、コイル電流Jの負側では、図19(b)に示すように、中立点に戻り、その後、コイル電流Jの時間変化に従って、左方への移動と衝突を繰り返す。また、アクチュエータ3の動作を図19(b)(c)に示す状態間で反復して行ってランナ11を右方に移動する場合、コイル電流Jは、図20(b)に示すように、正弦関数をコイル電流Jの負方向にシフトさせた時間変化とされる。
【0058】
上述の、図15乃至図20によって説明したアクチュエータ3は、より一般的に、次のように表現することができる。すなわち、アクチュエータ3は、対象物に衝撃を与えることにより該対象物を移動させる装置である。アクチュエータ3は、電磁コイル31と、電磁コイル31への通電によって生じる電磁作用によって電磁コイル31に対して相対移動する永久磁石33と、ストッパ34と、を備えている。ストッパ34は、前記相対移動の範囲を制限するように電磁コイル31または永久磁石33のいずれかと一体化されて被衝突体を構成している。このようなアクチュエータ3は、電磁コイル31への通電により、被衝突体と被衝突体に一体化されなかった電磁コイル31または永久磁石33のいずれかとが衝突することにより前記衝撃が発生されるものである。永久磁石33とストッパ34とが被衝突体をなす場合が図15の例である。また、ストッパ34として2個目の永久磁石33を設けて、2つの永久磁石33によって被衝突体をなす場合が図17の例である。また、永久磁石33と2つのストッパ34とによって被衝突体をなす場合が図18、図19の例である。このように、電磁コイル31と永久磁石33の相対移動のいずれの向きにおいても衝突による衝撃を発生させることができるので、ランナ11の往復移動を容易に実現することができる。また、アクチュエータ3が1つの電磁コイル31に、永久磁石33とストッパ34とを組み合わせて成るので、小型かつ簡単な構成となる。
【0059】
(中立点復帰式のインパクトアクチュエータ)
図21、図22、および図23はさらに他のアクチュエータ3を示す。アクチュエータ3は、図21に示すように、電磁コイル31と、その両端に配置したステータ35aと、これらの電磁コイル31およびステータ35aの中心軸上を往復移動する軸棒31aに一体化されて成る移動質量体3a(可動子3a)と、を備えている。移動質量体3aは、電磁コイル31およびステータ35aに対して相対運動を行う。移動質量体3aは、軸棒31aと、ステータ35aの内径側にそれぞれ配置された2つの永久磁石33と、両永久磁石33間に挿入された鉄心35bと、両永久磁石33の両端に配置されたヨーク35cと、2つの衝突頭片37と、衝撃増強錘36と、を備えている。一方のヨーク35cには衝突頭片37が直接接して配置され、他方のヨーク35cには衝突頭片37を介在させて他の衝突頭片37が配置されている。アクチュエータ3は、電磁コイル31、ステータ35a、および移動質量体3aを内蔵する外筒(シールドケース38)と、シールドケース38の両端に配置されて軸棒31aを軸支する軸受板39とをさらに備えている。電磁コイル31およびステータ35aはシールドケース38の内壁に固定されている。図21は、電磁コイル31が通電されていない状態を示す。この状態において、移動質量体3aは、永久磁石33、鉄心35b、ヨーク35c、およびステータ35aによって生じる磁場に起因する引力によって中立点に位置している。
【0060】
軸棒31aは、電磁コイル31およびステータ35aと同心である。軸棒31aを除く移動質量体3aの各構成物は、軸棒31aと同心になるように配置されて、軸棒31aと一体化されている。鉄心35bは、その長さが電磁コイル31の長さと同等である。換言すれば、鉄心35bは、両ステータ35aの間に収まる長さを有する。また、鉄心35bは、円筒の両端部に鍔部を備えた形状を有し、中央部の径が両端部の径よりも小さく形成されている。これにより、鉄心35bの両端部とこれらに近接する各ステータ35aとの間に、磁気抵抗の低い磁気回路が形成される。永久磁石33は、リング形状を有し、その厚み方向(中心軸方向)に磁化されている。2つの永久磁石33は、互いに磁極の方向を逆向きにして鉄心35bの両端に配置されている。永久磁石33の厚みはステータ35aの厚みよりも薄く、永久磁石33およびヨーク35cの厚みの合計はステータ35aの厚みよりも厚い。
【0061】
図21に示す中立状態において、2つの衝突頭片37とこれらに対向する各軸受板39との距離Dは、互いに等距離とされている。軸受板39は、衝突頭片37によって衝突される被衝突体であり、軸棒31aに一体化されて成る移動質量体3aの、電磁コイル31およびステータ35aに対する相対運動の移動範囲を制限する。すなわち、移動質量体3aの可動範囲は距離Dの2倍である(図22参照)。この距離Dは、移動質量体3aがいずれかの衝突頭片37に衝突した位置から、移動質量体3aが永久磁石33とステータ35aとの相互の引力によって中立点に復帰することができる距離以内に設定されている。
【0062】
図22によってアクチュエータ3の動作原理を説明する。電磁コイル31に一定方向に電流を流すと、例えば、図22(a)に磁力線Bで模式的に示すように、磁場が発生する。電磁コイル31の磁場は、2つの永久磁石33の一方による磁場を弱め、他方による磁場を強める。従って、電磁コイル31が発生する磁場によって、永久磁石33、鉄心35b、およびヨーク35cに作用する磁力に非対称性が生じ、移動質量体3aは、白抜き矢印で示すように移動する。電磁コイル31に前記一定方向とは逆方向に電流を流すと、図22(b)に示すように、移動質量体3aは、前記とは逆方向に移動する。また、図22(a)(b)の状態において、コイル電流を切って電磁コイル31による磁場を除くと、移動質量体3aは、永久磁石33とステータ35aとの相互の引力によって、前述の図21に示すように、中立点に復帰する。
【0063】
図23によってアクチュエータ3による左方向への移動の一連の動作を説明する。図23(a)に示すように、アクチュエータ3を摩擦板41を介して、面Sに載置する。アクチュエータ3と摩擦板41とは互いに一体化されている。この状態で、電磁コイル31は励磁されてなく、移動質量体3aは、中立点にあり、摩擦板41の左方先端は位置x0にある。電磁コイル31に電流を流すと、図23(b)に示すように、移動質量体3aが移動して軸受板39に衝突し、その衝撃によってアクチュエータ3と共に摩擦板41が移動し、その先端は位置x1に至る。衝撃の大きさは、電磁コイル31に流す電流の大きさとその立ち上がりの速さに依存し、より急激かつより大電流を流すことにより、より大きな衝撃を発生させることができる。衝突後に電磁コイル31に流す電流を停止すると、アクチュエータ3の内部の移動質量体3aが、図23(c)に示すように、中立点に復帰する。この復帰移動は、永久磁石33の磁気力によってゆっくり行われるので、摩擦板41と面Sとの間の静止摩擦力を超えるような反動はなく、摩擦板41の移動はない。また、永久磁石33の磁気力調整や面Sとの摩擦力調整などの条件設定を行うことにより、中立点への復帰の際に摩擦板41の移動が発生しないようにできる。以下、電磁コイル31に再び電流を流すことにより、図23(d)に示すように、摩擦板41の先端がさらに移動して位置x2に至る。アクチュエータ3は、このような動作の繰り返しによって、ランナ11を、間欠的に移動させることができる。
【0064】
(第4の実施形態)
図24乃至図27は、第4の実施形態の電動式ランナ1を示す。ここに示す電動式ランナ1は、アクチュエータ3によって機器9を回転させる機能を付加したものである。図24(a)〜(c)に示す電動式ランナ1は、上述の第3の実施形態における電動式ランナ1(図11)において、機器9を回転自在に支持する回転部15aをコネクタ15の機能として備え、アクチュエータ3を2つ備えたものである。アクチュエータ3は、ランナ11(電動式ランナ1の本体)の左右に並設されている。回転部15aは、係合部14とランナ11との間にあって、ランナ11、アクチュエータ3、コネクタ15、および機器9の全体を、係合部14に対して回転自在に支持する。係合部14の下部には、係合部14に一体的に固定されたベース板43が備えられ、圧接構造4のバネ43は、ベース板43を支点として、摩擦板41を面Sに向けて付勢する。
【0065】
電動式ランナ1は、図24(b)に示すように、アクチュエータ3が同方向に等しい駆動力によって駆動されると、並進力(直動力)が発生し、ダクト2に沿って移動する。また、図24(c)に示すように、アクチュエータ3が互いに逆方向に駆動されると、回転部15aの軸周りに発生する偶力成分によって、ランナ11以下機器9までの全体が回転部15aの回転軸を中心に、その場回転する。なお、2つのアクチュエータ3によって、並進力成分と偶力成分とが混在して生成されると、移動しながら回転する運動が発生する。このような複雑な運動を回避するために、各運動が開始される閾値を設定して、小さな駆動力に対する不感帯を設けるようにすればよい。閾値は、並進移動に対してはバネ43による押圧力の設定、回転移動に対しては所定の力に対しては回転を阻止するバネによるストッパなどを備えて設定することができる。このような電動式ランナ1によれば、照明や監視カメラなどの機器9の向きと位置とを自在に変えることができる。
【0066】
また、図25(a)(b)に示すように、電動式ランナ1は、アクチュエータ3を3つ備えることができる。この電動式ランナ1は、上述の図24に示した電動式ランナ1において、ベース板43と回転部15aとの間に3番目のアクチュエータ3を備えたものである。ランナ11は、ランナ上部11aとランナ下部11bとに分割され、回転部15aによって互いに回転自在に連結されている。ランナ下部11bには、他の2つのアクチュエータ3が、上記(図24)同様に並設されている。この電動式ランナ1は、3つのアクチュエータ3が同方向に駆動されると、その駆動方向に従い、ダクト2のいずれかの方向に並進移動する。また、並列されたアクチュエータ3が、互いに逆方向に駆動されると、ランナ下部11b以下の全体がその場回転する。この回転運動は、アクチュエータ3による衝撃力に基づくものであるので、直進運動の場合と同様に摩擦力などの介在が必要である。回転運動に必要な摩擦力は、回転部15aにおける回転軸受けの締め付けトルクや、互いに相対的に回転運動する部在間に設けた摩擦板や、磁力の吸引力を発生する磁石や磁性体などによって生成される。このような電動式ランナ1によれば、移動のための駆動力が増強されると共に、移動と回転とをより明確に分離して制御することができる。
【0067】
また、上述の図25(a)(b)の電動式ランナ1に、機器9を仰角方向に回転する機能を追加することができる。すなわち、図26(a)(b)(c)に示すように、ランナ下部11bに、コネクタ15として、水平回転軸を同軸に有する2つの回転部15bと、その軸の回りに傾動する保持板15cとをさらに備える。ランナ下部11bは、回転部15aに回転自在に連結された水平枠体と、その両端から垂下する側壁とで構成され、各回転部15bは、ランナ下部11bの垂下する側壁に各々保持されている。2つのアクチュエータ3は、保持板15b上に、回転部15bの回転軸に直交すると共に、その回転軸から離れた位置(すなわち、ねじれの位置)に衝撃力の動作軸(衝撃力の作用線)がくるように2つ並列される。この配置により、保持板15b上のアクチュエータ3は、回転部15bの回転軸まわりの回転モーメントを生成することができる。そこで、この2つのアクチュエータ3が同方向に駆動されると、機器9が仰角方向に回転され、互いに逆方向に駆動されると、機器9が、保持板15bと共に回転部15aの回転軸回りに回転する。回転部15b回りの回転運動に必要な摩擦力も、上記同様に生成される。
【0068】
また、図27に示すように、電動式ランナ1は、水平回転軸を同軸に有する2つの回転部15bと、その軸の回りに傾動する保持板15cとをコネクタ15として備え、アクチュエータ3を保持板15cの上下に2つ並列して備えるものとすることができる。各回転部15bは、係合部14に一体的に固定された水平枠体11の両端から垂下する側壁に各々保持されている。機器9は、保持板15cの下部に接続されている。電動式ランナ1は、2つのアクチュエータ3が同方向に駆動されると、ダクト2に沿って移動し、互いに逆方向に駆動されると、保持板15bと共に機器9が、回転部15bの回転軸回りに回転する。すなわち、この電動式ランナ1においても、回転部15bが機器9を仰角方向に回転自在とすることができる。
【0069】
(第5の実施形態)
図28、図29、図30は、第5の実施形態の電動式ランナ1を示す。図28、図29に示す電動式ランナ1は、ダクト2上の位置を認識する位置センサ5と、制御部13と、電池13cと、アクチュエータ3を遠隔操作するための操作信号を受信する受信部19とを内蔵して備えている。制御部13は、電池13cからの電力を受けて位置センサ5や受信部19からの信号を処理する制御回路13aと、制御回路13aからの指示を受けて電池13cからの電力を波形成形すると共にアクチュエータ3に出力する回路13bと、を備えている。受信部19への操作信号は、無線または有線のリモコン装置19aから送信される。その操作信号により、電動式ランナ1に対して、例えば、所定距離の移動や所定目標位置Pまでの移動を指令することができ、電動式ランナ1はその指令と位置センサ5からの位置信号とに基づいて自走制御を行うことができる。位置センサ5は、移動地点の位置決めを行えるセンサであり、例えば、ポテンショメータ、回転センサ、リニアエンコーダ、ロータリーエンコーダ、屋内GPSなどを単独で、または互いに組み合わせて用いることができる。また、光センサ、画像センサ、画像処理装置などによって位置センサ5を構成し、これを用いて、ダクト2に設定された目印を読み取ったり、カウントしたりして自己位置を認識するようにしてもよい。電池13cは、充電池とすることもできる。この場合、充電池は、ダクト2や別途の配線などからの電力で充電することができ、電池の交換が不要となる。また、配線ダクトからの電力で充電する場合は、電源から充電池までの配線が不要となる。
【0070】
また、図30に示す電動式ランナ1は、ダクト2上の物体までの距離を測定する距離センサ6を備え、距離センサ6からの距離データに基づいて自走制御を行なうものである。距離センサ6は、超音波距離計、光学式距離計、電磁波距離計などを用いることができ、例えば、光や超音波を発信する送波器6aと、物体からの反射波を受信する受波器6bとを用いて構成される。制御部13(不図示)は、距離センサ6からの信号に基づいて測定された、ダクト2上の障害物90や、他の電動式ランナ1などとの距離データを参照して、自走停止や、自走速度の減速などの自走制御を行う。例えば、リモコン装置19aによって、ダクト2上の複数の電動式ランナ1を移動対象として選択すると、選択された各電動式ランナ1が同時に移動する。移動する電動式ランナ1が、となり合う移動していない電動式ランア1近づいてぶつかりそうになる場合は、距離センサ6による障害物検知によって、互いにぶつかる前にアクチュエータ3が停止される。これにより、電動式ランナ1や機器同士の衝突防止を図ることができる。
【0071】
(第6の実施形態)
図31(a)(b)は、第6の実施形態の電動式ランナ1を示す。この電動式ランナ1は、上述した第3の実施形態の電動式ランナ1(図11)における圧接構造4にクランパとしての機能を持たせたものである。すなわち、電動式ランナ1は、自走していないときには、摩擦板41をダクト2に固着(クランプ)させ、自走するときにはダクト2への固着力を小さくするように、バネ42の伸長力に抗して摩擦板41を移動させる電磁石44を備えている。摩擦板41は、電磁石44によって吸引移動されるように、磁性体で構成されている。電磁石44の制御、従って、固着力の制御は、不図示の制御部によって、アクチュエータ3の駆動制御に同期して行われる。このような電動式ランナ1によれば、移動時の摩擦抵抗を少なくでき、移動速度が速くなり、移動時のダクト2の接触面の磨耗を低減することができる。バネ42として十分強力なものを用いることにより、電動式ランナ1の停止時には、強力な固着力によって安定に、電動式ランナ1の位置を維持することができる。
【0072】
(第7の実施形態)
図32、図33は、第7の実施形態の電動式ランナ1を示す。この電動式ランナ1は、接電極17と配線ダクト2の電線22(給電構造)との間の接続が、アクチュエータ3の動作時の衝撃力によって電動式ランナ1が動く瞬間のみ外れるようにしたものである。図32(a)(b)に示すように、接電極17は、係合部14の係合板14bに立設された回転軸17gと、ねじりバネ17hによって、回転自在に軸支されている。接電極17は回転に対する安定中立点を有し、その安定中立点は、接電極17の先端部がねじりバネ17hによって電線22に押圧されて電気的に接触する回転位置とされている。接電極17は、電動式ランナ1の移動に伴って回転軸17gが急激に移動するとき、慣性により、その移動から取り残され、その結果、安定中立点から外れた回転位置に回転し、接電極17と電線22との間の接続が外れる。例えば、図33(a)に示すように、電動式ランナ1が右方向Xに移動する場合、図33(b)に示すように、アクチュエータ3の可動子3aが一端左方に移動し、その後、右方に移動して、図33(c)に示すように、可動子3aが、ストッパ3bに衝突する。すると、その衝突の衝撃によって、電動式ランナ1が右方向Xに移動すると共に、その移動の瞬間に接電極17が回転して、電線22との間の接続が外れる。このような接電極17の動作は、電動式ランナ1が左方向に移動する場合においても、同様に左右対称に行われる。このような電動式ランナ1によれば、移動時の摩擦抵抗を低減することができ、接電極17と電線22の相互の接触部の磨耗を低減することができる。
【0073】
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、上述した各実施形態の構成を互いに組み合わせた構成とすることができる。上記において、電動式ランナ1が水平に配置され、機器9が下方に吊り下げられる旨、説明したが、電動式ランナ1は、任意の姿勢で敷設されたダクト2に対して係合させて用いることができる。また、係合部14の構成は、上記に限らず、ダクト2に対してガタなく係合して円滑に移動できるように、例えばバネ材で、ダクト2の横方向の位置決めを安定化させる係合構造を備えるものとすることができる。ダクト2(レール2)の形状は、C持形状に限らず、開口溝20を有しないL字形状でもよく、係合部14が移動自在に係合できる構造であればよい。従い、係合部14は左右対称である必要はなく、ダクト2の一部を走行自在に挟持できるものであればよい。
【符号の説明】
【0074】
1 電動式ランナ
11 ランナ(電動式ランナ本体、枠体)
12 アクチュエータ
13 制御部
13a 制御回路
13c 電池、充電池
14 係合部
15 コネクタ
16 電源
17 プラグ
19 受信部
2 レール(ダクト)
22 電線(給電構造、通信線)
3 インパクトアクチュエータ(アクチュエータ)
4 圧接構造、クランパ
5 位置センサ
6 距離センサ
9 機器
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクト状のレールに沿って自走する電動式ランナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、天井等に配線ダクトを敷設し、配線ダクトに電気的機械的に結合されるプラグを介してスポットライトのような電気機器を吊り下げて電気機器を動作させる配線システムが知られている。配線ダクトは、開口溝を有し、その内部に給電線が設けられており、開口溝に挿入する専用のプラグを介して、プラグに接続された照明機器などに電気を供給することができる。このような配線システムは、配線ダクトに対してプラグの脱着や増設が容易であり、配線ダクトに沿ってプラグの位置決めが自在である利点を生かし、例えば、スポットライトの位置を比較的頻繁に変更する必要のある美術館や博物館などにおいて用いられている。プラグを配線ダクトに機械的に結合する方法として、プラグ全体を回転する方法や、プラグに付属のレバーを回転操作する方法が一般的である。配線ダクト用のプラグとして、大重量の灯具用に結合強度を高めたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、バネ付勢された係止部をプラグに備え、プラグを配線ダクトの開口溝に押し込む直進動作によって係止部を配線ダクトの内側面に係止させることによりプラグの位置決め固定をするようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−3771号公報
【特許文献2】特開2002−345130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような配線ダクト用のプラグにおいては、プラグの脱着そのものは容易であるものの、脚立を使用する不安定な高所作業や多数の機器を変更する長時間作業などの場合に、その位置変更のための脱着作業は必ずしも容易ではない。
【0005】
本発明は、上記課題を解消するものであって、任意の機器が接続され、敷設されたダクト状のレールに沿って容易に位置を変更することができる電動式ランナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、本発明の電動式ランナは、ダクト状のレールに走行自在に係合されると共に任意の機器が接続されるランナと、ランナに設けられ、電力供給により駆動され、該ランナを自走させるアクチュエータと、を備えていることを特徴とする。
【0007】
この電動式ランナにおいて、ランナは、機器を接続するためのコネクタを備えていてもよい。
【0008】
この電動式ランナにおいて、機器は、電力によって動作する機器であり、アクチュエータおよび機器は、外部から供給される電力を受ける受電構造を備えていてもよい。
【0009】
この電動式ランナにおいて、レールは、給電構造を有する配線ダクトであり、機器は、電力によって動作する機器であり、ランナは、配線ダクトに電気的および機械的に接続するプラグを有し、該プラグを介して配線ダクトからの電力をアクチュエータおよび機器に給電するようにしてもよい。
【0010】
この電動式ランナにおいて、プラグは、配線ダクトに電気的に接触しながら移動自在とされていてもよい。
【0011】
この電動式ランナにおいて、ランナは、プラグと配線ダクトとの間の電気的接続を機械的にオン/オフする機構を備えていてもよい。
【0012】
この電動式ランナにおいて、ランナは、機器への給電をオン/オフするスイッチを備えていてもよい。
【0013】
この電動式ランナにおいて、配線ダクトは、通信線を備えており、ランナは、機器と通信線との間を接続するための通信用コネクタを備えていてもよい。
【0014】
この電動式ランナにおいて、アクチュエータは、電力印加により電磁力に基づく衝撃を発生し、その衝撃力によってランナを自走させるインパクトアクチュエータとすることができる。
【0015】
この電動式ランナにおいて、インパクトアクチュエータを持つランナとレールとの間で摩擦抵抗を発生させる構造を備えていてもよい。
【0016】
この電動式ランナにおいて、コネクタは、機器を回転自在に支持する回転部を備え、インパクトアクチュエータは複数備えられ、ランナを直動または回転部を回転させるようにしてもよい。
【0017】
この電動式ランナにおいて、回転部は、機器を仰角方向に回転自在としてもよい。
【0018】
この電動式ランナにおいて、アクチュエータへの電力制御によりランナの移動速度を可変としてもよい。
【0019】
この電動式ランナにおいて、ランナは、アクチュエータを電力制御する制御回路を備えていてもよい。
【0020】
この電動式ランナにおいて、ランナは、アクチュエータの電源として電池を備えていてもよい。
【0021】
この電動式ランナにおいて、ランナは、アクチュエータに電源供給する充電池を備えていてもよい。
【0022】
この電動式ランナにおいて、ランナは、アクチュエータを遠隔操作するための操作信号を受信する受信部を備えていてもよい。
【0023】
この電動式ランナにおいて、ランナは、レール上の位置を認識する位置センサを備え、位置センサからの位置信号に基づいて自走制御を行なうようにしてもよい。
【0024】
この電動式ランナにおいて、ランナは、レール上の物体までの距離を測定する距離センサを備え、距離センサからの距離データに基づいて自走制御を行なうようにしてもよい。
【0025】
この電動式ランナにおいて、ランナは、自走していないときには該ランナをレールに固着させ、自走するときにはレールへの固着力を小さくするクランパを備ていてもよい。
【0026】
この電動式ランナにおいて、アクチュエータは、電力印加により電磁力に基づく衝撃を発生し、その衝撃力によってランナを自走させるインパクトアクチュエータであり、プラグと配線ダクトの給電構造との間の接続が、インパクトアクチュエータの動作時の衝撃力によってランナが動く瞬間のみ外れる構造としてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ランナがアクチュエータを備えてレールに沿ってアクチュエータと共に自走するので、従来の配線ダクト用のプラグと異なり、移動のための着脱が不要であり、容易に位置を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る電動式ランナについての正面図、(b)は同電動式ランナの側面図。
【図2】(a)は同電動式ランナの変形例の正面図、(b)は同変形例の側面図。
【図3】同電動式ランナの実施例を示す斜視図。
【図4】同電動式ランナの他の実施例を示す斜視図。
【図5】同電動式ランナのさらに他の実施例を示す斜視図。
【図6】(a)は第2の実施形態に係る電動式ランナについての正面図、(b)は同電動式ランナの変形例の正面図。
【図7】(a)は同電動式ランナの他の変形例の正面図、(b)は同電動式ランナのさらに他の変形例の正面図。
【図8】(a)は同電動式ランナのさらに他の変形例の正面図、(b)は同変形例における接電極部分の正面図、(b)の接電極が接触解除された状態の正面図。
【図9】同電動式ランナのさらに他の変形例の正面図。
【図10】同電動式ランナのさらに他の変形例の正面図。
【図11】(a)は第3の実施形態に係る電動式ランナについての正面図、(b)は同電動式ランナの側面図。
【図12】(a)は同電動式ランナの変形例の正面図、(b)は同変形例の側面図。
【図13】(a)(b)は同電動式ランナに適用されるインパクトアクチュエータの左向き動作を説明する断面図、(c)(d)は同インパクトアクチュエータの右向き動作を説明する断面図。
【図14】(a)は同電動式ランナに適用される他のインパクトアクチュエータの断面図、(b)は同インパクトアクチュエータの動作原理を説明する模式図。
【図15】(a)(b)は同電動式ランナに適用されるさらに他のインパクトアクチュエータの左向き動作を説明する断面図、(c)は同インパクトアクチュエータを左向きに動作させる際に電磁コイルに流す電流の時間変化グラフ。
【図16】(a)(b)は同インパクトアクチュエータの右向き動作を説明する断面図、(c)は同インパクトアクチュエータを右向きに動作させる際に電磁コイルに流す電流の時間変化グラフ。
【図17】(a)(b)は同電動式ランナに適用されるさらに他のインパクトアクチュエータの動作を説明する断面図、(c)は同インパクトアクチュエータの動作原理を説明する模式図。
【図18】(a)は同電動式ランナに適用されるさらに他のインパクトアクチュエータの平面断面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(b)のB−B線断面図。
【図19】(a)〜(c)は同インパクトアクチュエータの動作例を示す一部断面の側面図。
【図20】(a)(b)は同インパクトアクチュエータを動作させる際に電磁コイルに流す電流の時間変化グラフ。
【図21】同電動式ランナに適用されるさらに他のインパクトアクチュエータの断面図。
【図22】(a)(b)は同インパクトアクチュエータの部分拡大断面図。
【図23】(a)〜(d)は同インパクトアクチュエータの動作の様子を示す一部断面の側面図。
【図24】(a)は第4の実施形態に係る電動式ランナについての正面図、(b)は同電動式ランナの要部の斜視図、(c)は同電動式ランナの回転状態の要部の斜視図。
【図25】(a)は同電動式ランナの変形例の正面図、(b)は同変形例の要部の斜視図。
【図26】(a)は同電動式ランナの他の変形例の正面図、(b)は同変形例の側面図、(c)は同変形例の要部の斜視図。
【図27】(a)は同電動式ランナのさらに他の変形例の正面図、(b)は同変形例の側面図、(c)は同変形例の要部の斜視図、(d)は同変形例の回動状態の要部の斜視図。
【図28】第5の実施形態に係る電動式ランナについての側面図。
【図29】同電動式ランナのブロック構成図。
【図30】同電動式ランナの変形例の側面図。
【図31】(a)は第6の実施形態に係る電動式ランナについての正面、(b)は同電動式ランナのクランパが解除された状態の正面図。
【図32】(a)は第7の実施形態に係る電動式ランナについての正面図、同電動式ランナの接触子部分の斜視図。
【図33】(a)(b)(c)は同電動式ランナの接触子の動作を時系列的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態に係る電動式ランナについて、図面を参照して説明する。図1、図2は、第1の実施形態の電動式ランナを示す。電動式ランナ1は、図1(a)(b)に示すように、ダクト状のレール2に走行自在に係合されると共に任意の機器9が接続されるランナ11と、ランナ11に設けられ、電力供給により駆動され、ランナ11を自走させるアクチュエータ12と、を備えている。ダクト状のレール2とは、ダクトであってレール2として用いることができるダクトであり、以下、単にダクト2と称する。ダクト2は、断面がC字形状を有し、開口溝20が左右の縁辺部21によって形成されている。ランナ11は、さらに、ダクト2に係合するための係合部14を上部に備え、機器9を接続するためのコネクタ15を下部に備えている。ランナ11は、電動式ランナ1における主たる構造物であって、電動式ランナ1の本体として位置づけられる。コネクタ15は、ねじ止め、引っ掛けシーリングコネクタ型などの構造を備えることにより、既設のダクトに取り付けて使用する機器、例えば、照明灯や監視カメラなどを容易に取り付けることができる。
【0030】
係合部14は、ランナ11の上部に突設された円柱状の連結部14aと、連結部14aのさらに上部に連結部14aよりも拡径した略四角形状の係合板14bとを備え、その断面はT字形状を有している。連結部14aの径と係合板14bの短辺は開口溝20の開口幅よりも狭く、係合板14bの長辺は開口幅よりも広い。従って、ランナ11は、係合部14を開口溝20に挿入して全体を90°回転することにより、ダクト2に係合することができ、逆回転することにより、ダクト2から取り外すことができる。すなわち、係合部14は、ランナ11、従って電動式ランナ1にプラグ機能(挿入着脱機能)を付与するものである。この意味で、ランナ11または電動式ランナ1は、いわゆるダクト用のプラグとみなされる。ランナ11は、アクチュエータ12によって駆動される車輪12aを備えており、係合板14bと車輪12aとによってダクト2の縁辺部21を上下から挟持する。アクチュエータ12は、例えば、モータであり、制御部13によって遠隔制御される。
【0031】
ランナ11を移動させるとき、制御部13は、その移動方向に応じて、不図示の電源から供給される電力を制御してアクチュエータ12を動作させる。ランナ11は、車輪12aが回転することにより、所定の方向に移動する。このとき、係合板14bの下面は縁辺部21の上面を滑りながら移動する。車輪12aは、ランナ11を移動させるために必要な摩擦力が得られるように不図示の付勢手段によって縁辺部21の下面に押圧されている。ランナ11の移動をより容易とするために、図2(a)(b)に示すように、係合板14bに車輪14cを備えて、車輪14cによって縁辺部21の上面を転がるようにしてもよい。この場合においても、ランナ11は、係合部14と車輪14cを開口溝20に挿入して全体を90°回転することにより、ダクト2に係合することができる。
【0032】
電動式ランナ1は、天井などに敷設されて各種の機器を吊り下げるためのダクト2に適合させるために、係合部14と車輪12aの構成を変更したり、既設のダクト専用のプラグにアクチュエータ12を取り付けたりして構成することができる。電動式ランナ1は、遠隔操作によりダクト2に沿って自走させることができるので、例えば、高所のダクト2に取り付ける機器の位置を変えるたびに高所作業で毎回ランナ11を取り外す必要がなく、危険な作業などがなくなり、作業時間が短縮される。また、機器9の電源をオンとしたまま、ダクト2上を移動させることもできる。また、既設のダクト専用のプラグにアクチュエータ12を取り付けて電動式ランナ1を構成することができる。ここで、ダクト専用のプラグは、ダクトの任意の位置に挿入して取り付けられると共に取り外し可能なプラグであって、そのダクト固有の形状に適合しているものである。
【0033】
図3、図4、図5は、電動式ランナ1をダクト2に取り付けた実施例を示す。これらの電動式ランナ1は、外部から供給される電力を受ける受電構造を備えている。機器9は電力によって動作する機器であり、同様に、受電構造を備えている。ダクト2には、内部に給電線を備えた一般に配線ダクトと呼ばれるダクトの他に、そのような給電線を備えないダクトもあり、電動式ランナ1は、これらのいずれのダクトについても、適用することができる。図3に示す実施例において、天井に、機器移動のためのダクト2と、電力供給や制御を行なうためのコントロールボックス16とが取り付けられている。コントロールボックス16には、電源の供給口(コンセント)と制御部13からの制御信号の中継器が設けられている。ダクト2に、自走用のアクチュエータ12を搭載した電動式ランナ1を取り付け、コネクタ15を通して電動式ランナ1に機器9を取り付ける。機器9は、電動式ランナ1を介してコンセントから電気を取り、稼動する。また、アクチュエータ12もコンセントから電気を受けて動作し、電動式ランナ1がダクト2上を移動する。
【0034】
図4に示す他の実施例において、ダクト2は、電線を持つ配線ダクトであり、この配線ダクトに、電動式ランナ1と、電力供給や制御を行なうコントロールボックス16とが取り付けられている。コントロールボックス16は、不図示の別途の配線ダクトに取り付けることもできる。電動式ランナ1には、機器9として2台の監視カメラが接続されている。コントロールボックス16は、例えば、配線ダクトに電気的機械的に接続されるプラグ機能を有しており、ダクト2から電力を受電し、別途に敷設した電線を介して電動式ランナ1と機器9に給電する。また、コントロールボックス16と電動式ランナ1および機器9との間には、アクチュエータ12や機器9を制御するための制御信号や機器9からの情報信号を通信するための信号線ケーブルが配線されている。機器9の監視カメラは、ダクト2上を移動しながら映像を撮すことができる。
【0035】
図5に示すさらに他の実施例において、電動式ランナ1が、配線ダクトであるダクト2(1段目)に取り付けられ、その電動式ランナ1に、機器9としてダクト2(2段目)が接続されている。2段目のダクト2には、別の電動式ランナ1が取り付けられ、その電動式ランナ1には機器9として照明灯が接続されている。コントロールボックス16が、2段目のダクト2にプラグとして電気的機械的に挿入接続されている。コントロールボックス16から、各電動式ランナ1に電気的接続がなされている。1段目のダクト2に係合された電動式ランナ1は、そのダクト2に沿うX方向に移動することができ、2段目のダクト2に係合された電動式ランナ1は、そのダクト2に沿うY方向に移動することができる。従って、機器9としての照明灯は、XY面内で2次元的な移動を行うことができる。
【0036】
(第2の実施形態)
図6乃至図10は、第2の実施形態の電動式ランナ1を示す。本実施形態の電動式ランナ1は、いずれも給電構造を有する配線ダクトをレールとするダクト2(以下、配線ダクト2)に係合されるものであり、配線ダクト2から受電するための受電構造を備える点において、上述の第1の実施形態と異なる。図6(a)に示すように、配線ダクト2は、断面がC字形状の外枠の内部左右の側壁に、配線ダクト2の長手方向に沿うように突設されたリブを備えており、そのリブの突端部に給電用の電線22が表面を露出して埋め込まれている。電動式ランナ1は、受電構造として、接電極17を係合部14の上部に備えている。接電極17は、電線22に対し、その露出部に接触して電気的に接続される。接電極17によって受電した電力は、アクチュエータ12および機器9(不図示)の電力とされる。コネクタ15には、これに接続されて電力によって動作する機器に電力を給電するための接続用電極(ソケット)が設けられている。従い、電動式ランナ1の係合部14と接電極17は、配線ダクト2に対して電気的および機械的に接続するプラグを構成している。また、図6(b)に示すように、上述の図2(a)(b)に示した電動式ランナ1に対応させて、係合部14に車輪14cを備え、接電極17を配線ダクト2の内部天面に接触させるプラグの構造とすることができる。この場合の配線ダクト2は、電線22を内部天面に備えるものである。このような電動式ランナ1によれば、外部から機器9への電源配線が不要になり、ダクト2から機器9に電力を供給することができる。また、電線22は、電力線として用いることの他に、信号波を電力波に重畳させたり、時分割で信号送信したりすることにより、通信線として用いることもでき、これにより、電動式ランナ1を遠隔走行制御することができる。
【0037】
また、図7(a)に示すように、接電極17の構造を、電線22に接触して転がるローラ構造としたり、図7(b)に示すように、電線22に接触して摺動する複数電極を有するブラシ構造としたりすることができる。これにより、接電極17が電線22に対して相対移動する際に、配線ダクト2に対する電気的接触がより安定して確実となり、プラグとしての電動式ランナ1が、配線ダクト2に電気的に接触しながら、より円滑に移動自在となる。このような電動式ランナ1によれば、機器9の電源をオンして動作させた状態のまま機器9を移動させることができる。
【0038】
また、図8(a)(b)(c)に示すように、電動式ランナ1は、接電極17の配線ダクト2との電気的接続を機械的にオン/オフする機構を備えることができる。その機構として、左右一対のクランク状の金具17aと、左右の金具17aの間にあって金具17aの一端部を外方に付勢するバネ17dと、電磁石17eとを備えている。金具17aは、中間部が回転軸17bによって回転自在に軸支され、金具17aの上部一端部に接電極17を、下部他端部に磁性体17cを備えている。電磁石17eは、両磁性体17cに磁極を近接して配置されている。電磁石17eが非動作のときは、金具17aに作用するバネ17dの付勢力によって、接電極17が電線22に押圧され、接電極17と配線ダクト2との電気的接続がオンとなる。電磁石17eに電流が印加されると、磁性体17cが電磁石17eの磁力によって下方に引き寄せられ、金具17aがバネ17dの付勢力に抗して回転軸17bの周りに回転し、接電極17が電線22から離脱し、電気的接続がオフとなる。電動式ランナ1を自走させる電力は、別途に配線した電線を用いたり、ランナ11内部に電池を備えたりして、給電することができる。このような電動式ランナ1によれば、移動時における接電極17や電線22の磨耗を防止することができる。また、移動時における不安定な電気的接触が発生しないので、例えば、接触不良による火花発生を防ぐことができる。
【0039】
また、図9に示すように、電動式ランナ1は、機器への給電をオン/オフするスイッチ17fを備えることができる。電動式ランナ1が移動する際に、スイッチ17fをオフすることにより、機器9(不図示)への不安定な給電を停止して機器9を保護することができ、予期せぬ電気的な不具合や事故発生を回避することができる。
【0040】
また、図10に示すように、電動式ランナ1は、給電用の電線22とは別途に通信用の電線22(通信線)を備えた通信用の配線ダクト2に係合させて用いることができる。電動式ランナ1は、給電用と通信用のそれぞれの電線22に電気的に接続される接電極17を各々備える。コネクタ15は、機器と通信線との間を接続するための通信用コネクタを備え、これに接続される機器は、通信線を介して制御されたり、データ通信をしたりすることができる。通信線や接電極17は、必要に応じて任意数を備えることができる、また、電動式ランナ1つまりアクチュエータ12の制御用信号を送信するためにも用いることができる。
【0041】
(第3の実施形態)
図11、図12は、第3の実施形態の電動式ランナ1を示す。本実施形態の電動式ランナ1は、上述の第2の実施形態(図6)の電動式ランナ1におけるアクチュエータ12として、電力印加により電磁力(特に磁力)に基づく衝撃を発生し、その衝撃力によってランナを自走させるインパクトアクチュエータ3を用いる。また、この電動式ランナ1は、第1,2の実施形態における車輪12aを用いることなく、衝撃力と摩擦力の作用のもとで間欠的に移動する点が、上述の第1,2の実施形態の電動式ランナ1と異なる。図11の電動式ランナ1は図6(a)の電動式ランナ1に対応し、図12の電動式ランナ1は図6(b)の電動式ランナ1に対応する。
【0042】
インパクトアクチュエータ3は、可動子3aと、可動子3aが衝突する相手であるストッパ3bと、電磁力を発生して可動子3aを駆動する駆動部3cとを備えている。また、制御部13が、ランナ11内に備えられている。ストッパ3bと駆動部3cはランナ11に対して固定されており、可動子3aはランナ11に対して相対移動する。その相対移動の方向は、ダクト2の長手方向Xであり、電動式ランナ1の移動方向である。可動子3aが右側のストッパ3bに繰り返し衝突するたびに、電動式ランナ1は右に移動し、左側のストッパ3b(駆動部3c)に繰り返し衝突するたびに、左に移動する。可動子3aが往復動する際に、電動式ランナ1を移動させない側のストッパ3bには衝突しないように、制御部13が駆動部3cを制御する。また、電動式ランナ1の移動速度は、アクチュエータ3への電力制御、例えば、電力の電流値、繰り返し駆動のパルス時間幅や周波数などによって行われる。インパクトアクチュエータ3(以下、単に、アクチュエータ3という)の具体例は、後述の図13乃至図23によって詳述する。
【0043】
電動式ランナ1は、衝撃力によって効率的に移動するために、ランナ11とダクト2とが接触して相対移動する相互の面間に、適宜の静止摩擦力と動摩擦力とが存在することを前提としている。そのため、電動式ランナ1は、ダクト2の縁辺部21の下面Sにおける摩擦抵抗を発生させる圧接構造4を備えている。圧接構造4は、面Sに接触する摩擦板41と、摩擦板41とランナ11との間にあって摩擦板41を面Sに向けて付勢するバネ42とを備えている。面Sと摩擦板41との間の摩擦力は、バネ42の伸長力の設定によって適宜の大きさに調整される。このような電動式ランナ1によれば、アクチュエータからランナへの、駆動における伝達機構(例えば、車輪12aと、これに対するギヤなどの動力伝達機構)を用いることなく、電動式ランナ1を移動させることができ、自走のための構造を単純化、小型化できる。また、アクチュエータ3は、単純小型の構成とすることができるので、構成既設のダクト専用のプラグであって機器接続用のコネクタを備えたプラグに、もとのコネクタを使用可能に残したままアクチュエータ3を取り付けて電動式ランナ1を構成することができる。このように既存の専用プラグを電動式ランナ1に改造する場合、もとのプラグに接続できる任意の機器を電動式ランナ1に接続して移動させることができる。
【0044】
(渦電流式のインパクトアクチュエータ)
次に、アクチュエータ3の構成と動作原理について詳細説明する。図13はアクチュエータ3の例を示す。アクチュエータ3は、図13(a)に示すように、互いに離間し同軸に対向配置して一体化された左右の電磁コイル31と、電磁コイル31の間に配置された弾性体30と、各電磁コイル31と弾性体30との間に配置された2つの導電体32と、を備えている。各導電体32は、それぞれ少なくとも弾性体30の伸縮する範囲内で電磁コイル31の軸方向に沿って移動自在に構成されている。電磁コイル31は、その中心軸上に配置された軸棒31aによって一体化され、それぞれコイル枠31bに納められている。導電体32は、例えばアルミニュームなどの良導電体から成るドーナツ状の金属円板であって、軸棒31aによって移動方向が拘束されている。弾性体30は、アクチュエータ3が非駆動状態のとき、導電体32を電磁コイル31に近接させるように伸張している。導電体32と電磁コイル31の近接の度合いは、導電体32に必要な渦電流を発生できる距離であればよい。弾性体30は、例えばコイルバネや板バネ、ゴムなどを用いて構成することができる。アクチュエータ3は、電磁コイル31と導電体32を1つずつ含む組を、軸棒31aに沿って弾性体30の両側に、互いに対称配置となるように備えている。
【0045】
上記構成のアクチュエータ3の動作を説明する。アクチュエータ3は、ランナ11(電動式ランナ1の本体)に衝撃を与えることによりランナ11を軸棒31aの方向に移動させる。衝撃によって発生する力を衝撃力または衝撃と称する。電磁コイル31は、電力を与えられることにより、衝撃の発生源となる。ランナ11は、左方の組の動作によって左方に移動され、右方の組の動作によって右方に移動される。そこで、まず、左方の組の動作を説明する。左方の導電体32は、左方の電磁コイル31の通電によって導電体32に発生する渦電流に起因して発生する反発力によって、図13(a)に示すように、右方に反発移動される。すると、弾性体30は、移動する導電体32により圧縮され、その後、その伸張力によって導電体32を左方へ押し戻す。この時点で、電磁コイル31の通電はオフされている。従って、導電体32は、図13(b)に示すように、左方の電磁コイル31に衝突し、その衝突によって左方に向かう衝撃が発生する。ランナ11は、この衝撃によって左方に押されて左方に移動する。制御部20は、必要な渦電流とこれに起因する反発力とが得られるように電流を一気に流すように電磁コイル31への電力制御を行い、導電体32と電磁コイル31との衝突が邪魔されないように電力をオフする。また、制御部20は、このような通電を繰り返すことにより、ランナ11に反復して衝撃を与えてランナ11をパルス的に左方へ移動させる。図13(c)(d)は、右方の組の動作によってランナ11を右方に移動する場合を示す。その動作は、図13(a)(b)の場合の動作を左右に反転したものと考えることができる。衝撃によるランナ11の一方向への移動には、後戻りを防止する機構が必要であり、その機構として摩擦板41が用いられる。
【0046】
上述のように、アクチュエータ3は、左方と右方のいずれの方向であってもランナ11を移動させることができ、電動式ランナ1を、小型・軽量・安価に実現することができる。弾性体30は、時間をかけて圧縮されることにより、衝撃を和らげるダンパの役割をしている。なお、このアクチュエータ3において、一方(右方)の電磁コイル31と導電体32などの組を除いた構成として片側駆動のアクチュエータを構成することができる。片側駆動のアクチュエータ3は、両側駆動(往復駆動)のアクチュエータ3よりも小型に構成できるので、狭い空間に複数を分散させて配置することができる融通性がある。
【0047】
(永久磁石式のインパクトアクチュエータ)
図14はさらに他のアクチュエータを示す。アクチュエータ3は、図14(a)に示すように、上述の図13に示したアクチュエータ3において、2つの導電体32を、それぞれに対応して配置される2つの永久磁石33によって置き換えたものである。永久磁石33は、電磁コイル31の通電によって流れるコイル電流と永久磁石33の磁界との相互作用による反発力によって反発移動される。永久磁石33は、導電体32と同様にドーナツ円板状であって、中心側から外周側に向けて半径方向に磁化されている。本例の場合、中心側がS極で外周側がN極であるが、逆極性とすることができる。この永久磁石33は、電磁コイル31に流れる電流の向きによって、図14(b)に示すように、斥力を受けたり、引力を受けたり(不図示)する。なお、図14(b)には、磁力線を矢印曲線によって示している。
【0048】
上記構成のアクチュエータ3の動作を、例えば、左方の電磁コイル31と永久磁石33との組について説明する。アクチュエータ3は、永久磁石33に斥力を与えるように電磁コイル31に電流を流し、その後、電流をオフすると、永久磁石33は右方において弾性体30によって受け止められた後、弾性体30によって跳ね返されて、元の電磁コイル31に衝突する。つまり、アクチュエータ3は、上述の渦電流に起因して発生する反発力に代えて、電磁コイル31の通電によって流れるコイル電流と永久磁石33の磁界との相互作用による反発力を用いるものである。図13に示したものと、図14に示したものの折衷構成として、導電体32と永久磁石33とを1つずつ有するものとすることもできる。この構成の場合、左右の動作や構成が互いに対称的に成るとは限らない。逆に、対称的にならないことを利用して、往復動作の特性を違えて、コストや動作特性の最適化を図ることもできる。
【0049】
このアクチュエータ3において、左右の永久磁石33の互いの磁気反発力によって、弾性体30の反発力を代替させて、弾性体30を除去することができる(不図示)。この場合、2つの永久磁石33が互いに近づく場合には、相互の磁気反発力のダンピング効果によって衝突の衝撃が和らげられる。2つの永久磁石33が互いに離反する場合には、相対移動中の永久磁石33が相互に磁力を及ぼして、電磁コイル31に衝突するまでの間、その移動速度を加速し続ける。このことを考慮して、左右の組の間隔は適宜設定される。以上のように永久磁石33と電磁コイル31との反発力を用いるアクチュエータは、渦電流による場合よりもより大きな衝撃を発生させて1回で大きな移動を行える。また、渦電流による場合のジュール熱による発熱がない点、安定にエネルギ効率良く動作できる。
【0050】
(単コイル式のインパクトアクチュエータ)
図15および図16はさらに他のアクチュエータを示す。アクチュエータ3は、図15(a)に示すように、電磁コイル31と、永久磁石33と、ストッパ34と、電磁コイル31に通電する電流を時間制御する制御部20と、を備えている。永久磁石33は、電磁コイル31への通電によって生じる電磁作用によって電磁コイル31に対して相対移動する。ストッパ34は、永久磁石33の相対移動の範囲を制限するように電磁コイル31と一体化されて被衝突体をなす。このアクチュエータ3では、電磁コイル31への通電により、永久磁石33が被衝突体(すなわち、電磁コイル31とストッパ34のいずれか)と衝突することにより衝撃が発生する。被衝突体は、永久磁石33が衝突する相手(相対移動の相手)を示す用語として用いている。電磁コイル31は、コイル枠に納められ、その中心軸上に配置された軸棒31aによってストッパ34に一体化されている。永久磁石33は、ドーナツ円板状であって、中心側から外周側に向けて半径方向に磁化されている。本例の場合、中心側がS極で外周側がN極であるが、逆極性とすることができる。この永久磁石33は、電磁コイル31に流れる電流の向きによって、斥力を受けたり、引力を受けたりする。
【0051】
上記構成のアクチュエータ3の動作を、ランナ11を左方に移動させる場合について、図15(a)(b)(c)を参照して説明する。制御部20は、電磁コイル31に通電するコイル電流Jを時間制御することにより、電磁コイル31による引力(J<0、時間t3)と斥力(J>0、時間t5)によって永久磁石33を往復移動させ、引力によって永久磁石33を電磁コイル31に衝突させる。すなわち、永久磁石33は、図15(a)に示すように電磁コイル31とストッパ34の間にある位置から、図15(c)の時間t3における引力によって左方に移動し、図15(b)に示すように電磁コイル31に衝突する。その後、永久磁石33は、図15(c)の時間t5における斥力によって、図15(a)に示す位置に復帰する。このような永久磁石33の動作(時間t3,t5における動作)が繰り返され、ランナ11が左方にパルス的に移動する。図15(c)は、永久磁石33が図15(b)に示すように電磁コイル31側にある状態(初期状態)から、時間t2における斥力によって動作を開始する例を示す。時間t1,t4は駆動調整時間である。
【0052】
ランナ11を右方に移動させる場合について、図16(a)(b)(c)を参照して説明する。図16(a)は、図15(a)と同じ図である。制御部20は、電磁コイル31に通電するコイル電流Jを時間制御することにより、電磁コイル31による斥力(J>0、時間t4)と引力(J<0、時間t5)によって永久磁石33を往復移動させ、斥力によって永久磁石33をストッパ34に衝突させる。すなわち、永久磁石33は、図16(a)に示すように電磁コイル31とストッパ34の間にある位置から、図16(c)の時間t4における斥力によって右方に移動し、図16(b)に示すようにストッパ34に衝突する。その後、永久磁石33は、図16(c)の時間t5における引力によって、図16(a)に示す位置に復帰する。この永久磁石33の動作(時間t4,t5における動作)が繰り返され、ランナ11が右方にパルス的に移動する。ここで、図16(c)の時間t1,t2における永久磁石33の動作を説明する。時間t1では、永久磁石33が初期状態にあると仮定する。初期状態は、コイル電流Jがゼロであり、永久磁石33が電磁コイル31とストッパ34との中間位置(図16(a)の状態)ではなく、永久磁石33が、前述の図15(b)に示すように、電磁コイル31側にある状態である。永久磁石33は、その初期状態において移動範囲の左端にある。永久磁石33が左端の初期状態から右方に移動してストッパ34に衝突する最初の衝突では、時間t2に示すように、コイル電流Jは漸増した後、一定値となるコイル電流Jが流される。時間t2の始めにコイル電流Jを漸増させるのは、急激な離反に起因する反動によるランナ11の左方への移動を抑制するためである。
【0053】
上記のように、ランナ11は、永久磁石33が左方の電磁コイル31に衝突することによって左方に移動され、永久磁石33が右方のストッパ34に衝突することによって右方に移動される。従って、ランナ11を左方に移動させる場合には、永久磁石33がストッパ34に衝突しないように電磁コイル31からの磁気力を永久磁石33に及ぼす必要がある。逆に、ランナ11を右方に移動させる場合には、永久磁石33が電磁コイル31に衝突しないように電磁コイル31からの磁気力を永久磁石33に及ぼす必要がある。コイル電流Jを制御する制御部13は、電磁コイル31と永久磁石33の相対移動の一方向において衝突を発生させ、その一方向とは反対方向において衝突を回避させると共に相対移動の方向を反転させる。制御部13は、一方向における衝撃のみを反復して発生させるように、電磁コイル31に通電するコイル電流Jを時間制御する。このような制御部13とアクチュエータ3とを備えたランナ11は、電磁コイル31と永久磁石33の相対移動のいずれの向きにおいても衝突による衝撃を発生させることができるので、ランナ11の往復移動を実現することができる。また、アクチュエータ3が1つの電磁コイル31に、永久磁石33とストッパ34とを組み合わせて成るので、小型かつ簡単な構成となる。このアクチュエータ3をランナ11に備えることにより、電動式ランナ1を、モータや駆動力伝達装置などを用いる場合に比べて小型・軽量・安価に実現することができる。
【0054】
(コイル移動式のインパクトアクチュエータ)
図17はさらに他のアクチュエータを示す。アクチュエータ3は、図17(a)に示すように、上述の図15(a)に示したアクチュエータ3において、電磁コイル31と永久磁石33とを互いに入れ替え、ストッパ34を別途の永久磁石33に置き換えたものである。すなわち、アクチュエータ3は、互いに離間して同軸配置され軸棒31aの両端に固定された円板状の2つの永久磁石33と、軸棒31aに沿って移動自在とされた電磁コイル31と、を備えている。電磁コイル31は、コイル枠に納められ、中心軸上を軸棒31aによって挿通されている。2つの永久磁石33は、軸棒31aによってストッパ34に一体化されて被衝突体(この場合、電磁コイル31が衝突する相手)をなす。電磁コイル31は、電磁コイル31への通電によって生じる電磁作用によって、2つの永久磁石33に対して相対移動する。その相対移動の範囲は被衝突体によって(両端の永久磁石33によって)制限される。2つの永久磁石33は、ドーナツ円板状であり、中心側から外周側に向けて半径方向に磁化されている。本例の場合、中心側がS極で外周側がN極であるが、逆極性とすることができる。
【0055】
上記構成のアクチュエータ3の動作を、図17(b)(c)により、ランナ11を左方に移動させる場合について説明する。上述のような永久磁石33の間に挟まれた電磁コイル31は、通電されると、図17(c)に示すように、一方の永久磁石33から斥力を受け、他方の永久磁石33から引力を受ける。従って、電磁コイル31は、電磁コイル31に流す電流の向きによって、左方または右方のいずれかに移動方向を選択することができる。そこで、制御部20によって、電磁コイル31のコイル電流を時間制御することにより、図17(b)に示すように、電磁コイル31を左方の永久磁石33に衝突させてランナ11を左方に移動させることができる。同様に、電磁コイル31を右方の永久磁石33に衝突させてランナ11を右方に移動させることができる。制御部20は、電磁コイル31と永久磁石33の相対移動の一方向において衝突を発生させ、その一方向とは反対方向において衝突を回避させると共に相対移動の方向を反転させる。制御部20は、一方向における衝撃のみを反復して発生させるように電磁コイル31に通電する電流を時間制御する。制御部13は、このような制御を繰り返すことにより、ランナ11を左方、同様に右方へパルス的に移動させる。
【0056】
(ボイスコイル式のインパクトアクチュエータ)
図18、図19、および図20はさらに他のアクチュエータを示す。アクチュエータ3は、図18(a)(b)(c)に示すように、矩形の磁気回路35の対向する内面にそれぞれ配設された矩形平板状の永久磁石33と、2つの永久磁石33の間で移動自在に配設された電磁コイル31とを備えている。そして、電磁コイル31と2つの永久磁石33とは互いに組み合わされてボイスコイル構造とされている。電磁コイル31は、磁気回路35の内部に設けられた磁気回路が挿通(その挿通方向をX軸方向とする)され、この磁気回路部分は各永久磁石33の対向磁極となっている。電磁コイル31は、上部を回転軸受31cによって回動自在に支持されている。また、電磁コイル31の下部には、ハンマ34aが電磁コイル31の一部として設けられている。磁気回路35の外周におけるX軸方向の両端には、ハンマ34aが衝突可能な位置に、ストッパ34が設けられている。永久磁石33とストッパ34とが一体化されて被衝突体が形成されている。
【0057】
永久磁石33による磁界は、X軸方向に直交する水平方向に設定されている。従って、この磁界中に配設された電磁コイル31に通電されると、電磁コイル31は、そのコイル電流の向きに従って、X軸の正方向(右矢印方向)、またはその反対の負方向に移動させる力を受ける。そこで、図19(a)に示すように、電磁コイル31が左向きの力を受けると、電磁コイル31が左側に振り子運動をして、ハンマ34aが左側のストッパ34に衝突し、ランナ11が左方向に移動される。アクチュエータ3の動作を図19(a)(b)に示す状態間で反復して行うために、制御部13は、電磁コイル31に通電する電流を、図20(a)に示す時間変化となるように時間制御する。コイル電流Jは、例えば、正弦関数をコイル電流Jの正方向にシフトさせた関数形になっている。電磁コイル31は、このコイル電流Jの正側では、図19(a)に示すように、左方に振れて左方で衝突し、コイル電流Jの負側では、図19(b)に示すように、中立点に戻り、その後、コイル電流Jの時間変化に従って、左方への移動と衝突を繰り返す。また、アクチュエータ3の動作を図19(b)(c)に示す状態間で反復して行ってランナ11を右方に移動する場合、コイル電流Jは、図20(b)に示すように、正弦関数をコイル電流Jの負方向にシフトさせた時間変化とされる。
【0058】
上述の、図15乃至図20によって説明したアクチュエータ3は、より一般的に、次のように表現することができる。すなわち、アクチュエータ3は、対象物に衝撃を与えることにより該対象物を移動させる装置である。アクチュエータ3は、電磁コイル31と、電磁コイル31への通電によって生じる電磁作用によって電磁コイル31に対して相対移動する永久磁石33と、ストッパ34と、を備えている。ストッパ34は、前記相対移動の範囲を制限するように電磁コイル31または永久磁石33のいずれかと一体化されて被衝突体を構成している。このようなアクチュエータ3は、電磁コイル31への通電により、被衝突体と被衝突体に一体化されなかった電磁コイル31または永久磁石33のいずれかとが衝突することにより前記衝撃が発生されるものである。永久磁石33とストッパ34とが被衝突体をなす場合が図15の例である。また、ストッパ34として2個目の永久磁石33を設けて、2つの永久磁石33によって被衝突体をなす場合が図17の例である。また、永久磁石33と2つのストッパ34とによって被衝突体をなす場合が図18、図19の例である。このように、電磁コイル31と永久磁石33の相対移動のいずれの向きにおいても衝突による衝撃を発生させることができるので、ランナ11の往復移動を容易に実現することができる。また、アクチュエータ3が1つの電磁コイル31に、永久磁石33とストッパ34とを組み合わせて成るので、小型かつ簡単な構成となる。
【0059】
(中立点復帰式のインパクトアクチュエータ)
図21、図22、および図23はさらに他のアクチュエータ3を示す。アクチュエータ3は、図21に示すように、電磁コイル31と、その両端に配置したステータ35aと、これらの電磁コイル31およびステータ35aの中心軸上を往復移動する軸棒31aに一体化されて成る移動質量体3a(可動子3a)と、を備えている。移動質量体3aは、電磁コイル31およびステータ35aに対して相対運動を行う。移動質量体3aは、軸棒31aと、ステータ35aの内径側にそれぞれ配置された2つの永久磁石33と、両永久磁石33間に挿入された鉄心35bと、両永久磁石33の両端に配置されたヨーク35cと、2つの衝突頭片37と、衝撃増強錘36と、を備えている。一方のヨーク35cには衝突頭片37が直接接して配置され、他方のヨーク35cには衝突頭片37を介在させて他の衝突頭片37が配置されている。アクチュエータ3は、電磁コイル31、ステータ35a、および移動質量体3aを内蔵する外筒(シールドケース38)と、シールドケース38の両端に配置されて軸棒31aを軸支する軸受板39とをさらに備えている。電磁コイル31およびステータ35aはシールドケース38の内壁に固定されている。図21は、電磁コイル31が通電されていない状態を示す。この状態において、移動質量体3aは、永久磁石33、鉄心35b、ヨーク35c、およびステータ35aによって生じる磁場に起因する引力によって中立点に位置している。
【0060】
軸棒31aは、電磁コイル31およびステータ35aと同心である。軸棒31aを除く移動質量体3aの各構成物は、軸棒31aと同心になるように配置されて、軸棒31aと一体化されている。鉄心35bは、その長さが電磁コイル31の長さと同等である。換言すれば、鉄心35bは、両ステータ35aの間に収まる長さを有する。また、鉄心35bは、円筒の両端部に鍔部を備えた形状を有し、中央部の径が両端部の径よりも小さく形成されている。これにより、鉄心35bの両端部とこれらに近接する各ステータ35aとの間に、磁気抵抗の低い磁気回路が形成される。永久磁石33は、リング形状を有し、その厚み方向(中心軸方向)に磁化されている。2つの永久磁石33は、互いに磁極の方向を逆向きにして鉄心35bの両端に配置されている。永久磁石33の厚みはステータ35aの厚みよりも薄く、永久磁石33およびヨーク35cの厚みの合計はステータ35aの厚みよりも厚い。
【0061】
図21に示す中立状態において、2つの衝突頭片37とこれらに対向する各軸受板39との距離Dは、互いに等距離とされている。軸受板39は、衝突頭片37によって衝突される被衝突体であり、軸棒31aに一体化されて成る移動質量体3aの、電磁コイル31およびステータ35aに対する相対運動の移動範囲を制限する。すなわち、移動質量体3aの可動範囲は距離Dの2倍である(図22参照)。この距離Dは、移動質量体3aがいずれかの衝突頭片37に衝突した位置から、移動質量体3aが永久磁石33とステータ35aとの相互の引力によって中立点に復帰することができる距離以内に設定されている。
【0062】
図22によってアクチュエータ3の動作原理を説明する。電磁コイル31に一定方向に電流を流すと、例えば、図22(a)に磁力線Bで模式的に示すように、磁場が発生する。電磁コイル31の磁場は、2つの永久磁石33の一方による磁場を弱め、他方による磁場を強める。従って、電磁コイル31が発生する磁場によって、永久磁石33、鉄心35b、およびヨーク35cに作用する磁力に非対称性が生じ、移動質量体3aは、白抜き矢印で示すように移動する。電磁コイル31に前記一定方向とは逆方向に電流を流すと、図22(b)に示すように、移動質量体3aは、前記とは逆方向に移動する。また、図22(a)(b)の状態において、コイル電流を切って電磁コイル31による磁場を除くと、移動質量体3aは、永久磁石33とステータ35aとの相互の引力によって、前述の図21に示すように、中立点に復帰する。
【0063】
図23によってアクチュエータ3による左方向への移動の一連の動作を説明する。図23(a)に示すように、アクチュエータ3を摩擦板41を介して、面Sに載置する。アクチュエータ3と摩擦板41とは互いに一体化されている。この状態で、電磁コイル31は励磁されてなく、移動質量体3aは、中立点にあり、摩擦板41の左方先端は位置x0にある。電磁コイル31に電流を流すと、図23(b)に示すように、移動質量体3aが移動して軸受板39に衝突し、その衝撃によってアクチュエータ3と共に摩擦板41が移動し、その先端は位置x1に至る。衝撃の大きさは、電磁コイル31に流す電流の大きさとその立ち上がりの速さに依存し、より急激かつより大電流を流すことにより、より大きな衝撃を発生させることができる。衝突後に電磁コイル31に流す電流を停止すると、アクチュエータ3の内部の移動質量体3aが、図23(c)に示すように、中立点に復帰する。この復帰移動は、永久磁石33の磁気力によってゆっくり行われるので、摩擦板41と面Sとの間の静止摩擦力を超えるような反動はなく、摩擦板41の移動はない。また、永久磁石33の磁気力調整や面Sとの摩擦力調整などの条件設定を行うことにより、中立点への復帰の際に摩擦板41の移動が発生しないようにできる。以下、電磁コイル31に再び電流を流すことにより、図23(d)に示すように、摩擦板41の先端がさらに移動して位置x2に至る。アクチュエータ3は、このような動作の繰り返しによって、ランナ11を、間欠的に移動させることができる。
【0064】
(第4の実施形態)
図24乃至図27は、第4の実施形態の電動式ランナ1を示す。ここに示す電動式ランナ1は、アクチュエータ3によって機器9を回転させる機能を付加したものである。図24(a)〜(c)に示す電動式ランナ1は、上述の第3の実施形態における電動式ランナ1(図11)において、機器9を回転自在に支持する回転部15aをコネクタ15の機能として備え、アクチュエータ3を2つ備えたものである。アクチュエータ3は、ランナ11(電動式ランナ1の本体)の左右に並設されている。回転部15aは、係合部14とランナ11との間にあって、ランナ11、アクチュエータ3、コネクタ15、および機器9の全体を、係合部14に対して回転自在に支持する。係合部14の下部には、係合部14に一体的に固定されたベース板43が備えられ、圧接構造4のバネ43は、ベース板43を支点として、摩擦板41を面Sに向けて付勢する。
【0065】
電動式ランナ1は、図24(b)に示すように、アクチュエータ3が同方向に等しい駆動力によって駆動されると、並進力(直動力)が発生し、ダクト2に沿って移動する。また、図24(c)に示すように、アクチュエータ3が互いに逆方向に駆動されると、回転部15aの軸周りに発生する偶力成分によって、ランナ11以下機器9までの全体が回転部15aの回転軸を中心に、その場回転する。なお、2つのアクチュエータ3によって、並進力成分と偶力成分とが混在して生成されると、移動しながら回転する運動が発生する。このような複雑な運動を回避するために、各運動が開始される閾値を設定して、小さな駆動力に対する不感帯を設けるようにすればよい。閾値は、並進移動に対してはバネ43による押圧力の設定、回転移動に対しては所定の力に対しては回転を阻止するバネによるストッパなどを備えて設定することができる。このような電動式ランナ1によれば、照明や監視カメラなどの機器9の向きと位置とを自在に変えることができる。
【0066】
また、図25(a)(b)に示すように、電動式ランナ1は、アクチュエータ3を3つ備えることができる。この電動式ランナ1は、上述の図24に示した電動式ランナ1において、ベース板43と回転部15aとの間に3番目のアクチュエータ3を備えたものである。ランナ11は、ランナ上部11aとランナ下部11bとに分割され、回転部15aによって互いに回転自在に連結されている。ランナ下部11bには、他の2つのアクチュエータ3が、上記(図24)同様に並設されている。この電動式ランナ1は、3つのアクチュエータ3が同方向に駆動されると、その駆動方向に従い、ダクト2のいずれかの方向に並進移動する。また、並列されたアクチュエータ3が、互いに逆方向に駆動されると、ランナ下部11b以下の全体がその場回転する。この回転運動は、アクチュエータ3による衝撃力に基づくものであるので、直進運動の場合と同様に摩擦力などの介在が必要である。回転運動に必要な摩擦力は、回転部15aにおける回転軸受けの締め付けトルクや、互いに相対的に回転運動する部在間に設けた摩擦板や、磁力の吸引力を発生する磁石や磁性体などによって生成される。このような電動式ランナ1によれば、移動のための駆動力が増強されると共に、移動と回転とをより明確に分離して制御することができる。
【0067】
また、上述の図25(a)(b)の電動式ランナ1に、機器9を仰角方向に回転する機能を追加することができる。すなわち、図26(a)(b)(c)に示すように、ランナ下部11bに、コネクタ15として、水平回転軸を同軸に有する2つの回転部15bと、その軸の回りに傾動する保持板15cとをさらに備える。ランナ下部11bは、回転部15aに回転自在に連結された水平枠体と、その両端から垂下する側壁とで構成され、各回転部15bは、ランナ下部11bの垂下する側壁に各々保持されている。2つのアクチュエータ3は、保持板15b上に、回転部15bの回転軸に直交すると共に、その回転軸から離れた位置(すなわち、ねじれの位置)に衝撃力の動作軸(衝撃力の作用線)がくるように2つ並列される。この配置により、保持板15b上のアクチュエータ3は、回転部15bの回転軸まわりの回転モーメントを生成することができる。そこで、この2つのアクチュエータ3が同方向に駆動されると、機器9が仰角方向に回転され、互いに逆方向に駆動されると、機器9が、保持板15bと共に回転部15aの回転軸回りに回転する。回転部15b回りの回転運動に必要な摩擦力も、上記同様に生成される。
【0068】
また、図27に示すように、電動式ランナ1は、水平回転軸を同軸に有する2つの回転部15bと、その軸の回りに傾動する保持板15cとをコネクタ15として備え、アクチュエータ3を保持板15cの上下に2つ並列して備えるものとすることができる。各回転部15bは、係合部14に一体的に固定された水平枠体11の両端から垂下する側壁に各々保持されている。機器9は、保持板15cの下部に接続されている。電動式ランナ1は、2つのアクチュエータ3が同方向に駆動されると、ダクト2に沿って移動し、互いに逆方向に駆動されると、保持板15bと共に機器9が、回転部15bの回転軸回りに回転する。すなわち、この電動式ランナ1においても、回転部15bが機器9を仰角方向に回転自在とすることができる。
【0069】
(第5の実施形態)
図28、図29、図30は、第5の実施形態の電動式ランナ1を示す。図28、図29に示す電動式ランナ1は、ダクト2上の位置を認識する位置センサ5と、制御部13と、電池13cと、アクチュエータ3を遠隔操作するための操作信号を受信する受信部19とを内蔵して備えている。制御部13は、電池13cからの電力を受けて位置センサ5や受信部19からの信号を処理する制御回路13aと、制御回路13aからの指示を受けて電池13cからの電力を波形成形すると共にアクチュエータ3に出力する回路13bと、を備えている。受信部19への操作信号は、無線または有線のリモコン装置19aから送信される。その操作信号により、電動式ランナ1に対して、例えば、所定距離の移動や所定目標位置Pまでの移動を指令することができ、電動式ランナ1はその指令と位置センサ5からの位置信号とに基づいて自走制御を行うことができる。位置センサ5は、移動地点の位置決めを行えるセンサであり、例えば、ポテンショメータ、回転センサ、リニアエンコーダ、ロータリーエンコーダ、屋内GPSなどを単独で、または互いに組み合わせて用いることができる。また、光センサ、画像センサ、画像処理装置などによって位置センサ5を構成し、これを用いて、ダクト2に設定された目印を読み取ったり、カウントしたりして自己位置を認識するようにしてもよい。電池13cは、充電池とすることもできる。この場合、充電池は、ダクト2や別途の配線などからの電力で充電することができ、電池の交換が不要となる。また、配線ダクトからの電力で充電する場合は、電源から充電池までの配線が不要となる。
【0070】
また、図30に示す電動式ランナ1は、ダクト2上の物体までの距離を測定する距離センサ6を備え、距離センサ6からの距離データに基づいて自走制御を行なうものである。距離センサ6は、超音波距離計、光学式距離計、電磁波距離計などを用いることができ、例えば、光や超音波を発信する送波器6aと、物体からの反射波を受信する受波器6bとを用いて構成される。制御部13(不図示)は、距離センサ6からの信号に基づいて測定された、ダクト2上の障害物90や、他の電動式ランナ1などとの距離データを参照して、自走停止や、自走速度の減速などの自走制御を行う。例えば、リモコン装置19aによって、ダクト2上の複数の電動式ランナ1を移動対象として選択すると、選択された各電動式ランナ1が同時に移動する。移動する電動式ランナ1が、となり合う移動していない電動式ランア1近づいてぶつかりそうになる場合は、距離センサ6による障害物検知によって、互いにぶつかる前にアクチュエータ3が停止される。これにより、電動式ランナ1や機器同士の衝突防止を図ることができる。
【0071】
(第6の実施形態)
図31(a)(b)は、第6の実施形態の電動式ランナ1を示す。この電動式ランナ1は、上述した第3の実施形態の電動式ランナ1(図11)における圧接構造4にクランパとしての機能を持たせたものである。すなわち、電動式ランナ1は、自走していないときには、摩擦板41をダクト2に固着(クランプ)させ、自走するときにはダクト2への固着力を小さくするように、バネ42の伸長力に抗して摩擦板41を移動させる電磁石44を備えている。摩擦板41は、電磁石44によって吸引移動されるように、磁性体で構成されている。電磁石44の制御、従って、固着力の制御は、不図示の制御部によって、アクチュエータ3の駆動制御に同期して行われる。このような電動式ランナ1によれば、移動時の摩擦抵抗を少なくでき、移動速度が速くなり、移動時のダクト2の接触面の磨耗を低減することができる。バネ42として十分強力なものを用いることにより、電動式ランナ1の停止時には、強力な固着力によって安定に、電動式ランナ1の位置を維持することができる。
【0072】
(第7の実施形態)
図32、図33は、第7の実施形態の電動式ランナ1を示す。この電動式ランナ1は、接電極17と配線ダクト2の電線22(給電構造)との間の接続が、アクチュエータ3の動作時の衝撃力によって電動式ランナ1が動く瞬間のみ外れるようにしたものである。図32(a)(b)に示すように、接電極17は、係合部14の係合板14bに立設された回転軸17gと、ねじりバネ17hによって、回転自在に軸支されている。接電極17は回転に対する安定中立点を有し、その安定中立点は、接電極17の先端部がねじりバネ17hによって電線22に押圧されて電気的に接触する回転位置とされている。接電極17は、電動式ランナ1の移動に伴って回転軸17gが急激に移動するとき、慣性により、その移動から取り残され、その結果、安定中立点から外れた回転位置に回転し、接電極17と電線22との間の接続が外れる。例えば、図33(a)に示すように、電動式ランナ1が右方向Xに移動する場合、図33(b)に示すように、アクチュエータ3の可動子3aが一端左方に移動し、その後、右方に移動して、図33(c)に示すように、可動子3aが、ストッパ3bに衝突する。すると、その衝突の衝撃によって、電動式ランナ1が右方向Xに移動すると共に、その移動の瞬間に接電極17が回転して、電線22との間の接続が外れる。このような接電極17の動作は、電動式ランナ1が左方向に移動する場合においても、同様に左右対称に行われる。このような電動式ランナ1によれば、移動時の摩擦抵抗を低減することができ、接電極17と電線22の相互の接触部の磨耗を低減することができる。
【0073】
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、上述した各実施形態の構成を互いに組み合わせた構成とすることができる。上記において、電動式ランナ1が水平に配置され、機器9が下方に吊り下げられる旨、説明したが、電動式ランナ1は、任意の姿勢で敷設されたダクト2に対して係合させて用いることができる。また、係合部14の構成は、上記に限らず、ダクト2に対してガタなく係合して円滑に移動できるように、例えばバネ材で、ダクト2の横方向の位置決めを安定化させる係合構造を備えるものとすることができる。ダクト2(レール2)の形状は、C持形状に限らず、開口溝20を有しないL字形状でもよく、係合部14が移動自在に係合できる構造であればよい。従い、係合部14は左右対称である必要はなく、ダクト2の一部を走行自在に挟持できるものであればよい。
【符号の説明】
【0074】
1 電動式ランナ
11 ランナ(電動式ランナ本体、枠体)
12 アクチュエータ
13 制御部
13a 制御回路
13c 電池、充電池
14 係合部
15 コネクタ
16 電源
17 プラグ
19 受信部
2 レール(ダクト)
22 電線(給電構造、通信線)
3 インパクトアクチュエータ(アクチュエータ)
4 圧接構造、クランパ
5 位置センサ
6 距離センサ
9 機器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダクト状のレールに走行自在に係合されると共に任意の機器が接続されるランナと、前記ランナに設けられ、電力供給により駆動され、該ランナを自走させるアクチュエータと、を備えていることを特徴とする電動式ランナ。
【請求項2】
前記ランナは、機器を接続するためのコネクタを備えていることを特徴とする請求項1に記載の電動式ランナ。
【請求項3】
前記機器は、電力によって動作する機器であり、
前記アクチュエータおよび前記機器は、外部から供給される電力を受ける受電構造を備えていることを特徴とする請求項2に記載の電動式ランナ。
【請求項4】
前記レールは、給電構造を有する配線ダクトであり、
前記機器は、電力によって動作する機器であり、
前記ランナは、前記配線ダクトに電気的および機械的に接続するプラグを有し、該プラグを介して前記配線ダクトからの電力を前記アクチュエータおよび機器に給電することを特徴とする請求項2に記載の電動式ランナ。
【請求項5】
前記プラグは、前記配線ダクトに電気的に接触しながら移動自在とされていることを特徴とする請求項4に記載の電動式ランナ。
【請求項6】
前記ランナは、前記プラグと前記配線ダクトとの間の電気的接続を機械的にオン/オフする機構を備えていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の電動式ランナ。
【請求項7】
前記ランナは、機器への給電をオン/オフするスイッチを備えていることを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載の電動式ランナ。
【請求項8】
前記配線ダクトは、通信線を備えており、
前記ランナは、機器と前記通信線との間を接続するための通信用コネクタを備えていることを特徴とする請求項4乃至請求項7のいずれか一項に記載の電動式ランナ。
【請求項9】
前記アクチュエータは、電力印加により電磁力に基づく衝撃を発生し、その衝撃力によって前記ランナを自走させるインパクトアクチュエータであることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の電動式ランナ。
【請求項10】
前記インパクトアクチュエータを持つランナと前記レールとの間で摩擦抵抗を発生させる構造を備えていることを特徴とする請求項9に記載の電動式ランナ。
【請求項11】
前記コネクタは、機器を回転自在に支持する回転部を備え、
前記インパクトアクチュエータは複数備えられ、前記ランナを直動または前記回転部を回転させることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の電動式ランナ。
【請求項12】
前記回転部は、機器を仰角方向に回転自在であることを特徴とする請求項11に記載の電動式ランナ。
【請求項13】
前記アクチュエータへの電力制御により前記ランナの移動速度を可変としたことを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の電動式ランナ。
【請求項14】
前記ランナは、前記アクチュエータを電力制御する制御回路を備えていることを特徴とする請求項13に記載の電動式ランナ。
【請求項15】
前記ランナは、前記アクチュエータの電源として電池を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載の電動式ランナ。
【請求項16】
前記ランナは、前記アクチュエータに電源供給する充電池を備えていることを特徴とする請求項4乃至請求項14のいずれか一項に記載の電動式ランナ。
【請求項17】
前記ランナは、前記アクチュエータを遠隔操作するための操作信号を受信する受信部を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれか一項に記載の電動式ランナ。
【請求項18】
前記ランナは、前記レール上の位置を認識する位置センサを備え、前記位置センサからの位置信号に基づいて自走制御を行なうことを特徴とする請求項1乃至請求項17のいずれか一項に記載の電動式ランナ。
【請求項19】
前記ランナは、前記レール上の物体までの距離を測定する距離センサを備え、前記距離センサからの距離データに基づいて自走制御を行なうことを特徴とする請求項1乃至請求項18のいずれか一項に記載の電動式ランナ。
【請求項20】
前記ランナは、自走していないときには該ランナを前記レールに固着させ、自走するときには前記レールへの固着力を小さくするクランパを備ていることを特徴とする請求項1乃至請求項19のいずれか一項に記載の電動式ランナ。
【請求項21】
前記アクチュエータは、電力印加により電磁力に基づく衝撃を発生し、その衝撃力によって前記ランナを自走させるインパクトアクチュエータであり、
前記プラグと前記配線ダクトの給電構造との間の接続が、前記インパクトアクチュエータの動作時の衝撃力によって前記ランナが動く瞬間のみ外れる構造としたことを特徴とする請求項4に記載の電動式ランナ。
【請求項1】
ダクト状のレールに走行自在に係合されると共に任意の機器が接続されるランナと、前記ランナに設けられ、電力供給により駆動され、該ランナを自走させるアクチュエータと、を備えていることを特徴とする電動式ランナ。
【請求項2】
前記ランナは、機器を接続するためのコネクタを備えていることを特徴とする請求項1に記載の電動式ランナ。
【請求項3】
前記機器は、電力によって動作する機器であり、
前記アクチュエータおよび前記機器は、外部から供給される電力を受ける受電構造を備えていることを特徴とする請求項2に記載の電動式ランナ。
【請求項4】
前記レールは、給電構造を有する配線ダクトであり、
前記機器は、電力によって動作する機器であり、
前記ランナは、前記配線ダクトに電気的および機械的に接続するプラグを有し、該プラグを介して前記配線ダクトからの電力を前記アクチュエータおよび機器に給電することを特徴とする請求項2に記載の電動式ランナ。
【請求項5】
前記プラグは、前記配線ダクトに電気的に接触しながら移動自在とされていることを特徴とする請求項4に記載の電動式ランナ。
【請求項6】
前記ランナは、前記プラグと前記配線ダクトとの間の電気的接続を機械的にオン/オフする機構を備えていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の電動式ランナ。
【請求項7】
前記ランナは、機器への給電をオン/オフするスイッチを備えていることを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載の電動式ランナ。
【請求項8】
前記配線ダクトは、通信線を備えており、
前記ランナは、機器と前記通信線との間を接続するための通信用コネクタを備えていることを特徴とする請求項4乃至請求項7のいずれか一項に記載の電動式ランナ。
【請求項9】
前記アクチュエータは、電力印加により電磁力に基づく衝撃を発生し、その衝撃力によって前記ランナを自走させるインパクトアクチュエータであることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の電動式ランナ。
【請求項10】
前記インパクトアクチュエータを持つランナと前記レールとの間で摩擦抵抗を発生させる構造を備えていることを特徴とする請求項9に記載の電動式ランナ。
【請求項11】
前記コネクタは、機器を回転自在に支持する回転部を備え、
前記インパクトアクチュエータは複数備えられ、前記ランナを直動または前記回転部を回転させることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の電動式ランナ。
【請求項12】
前記回転部は、機器を仰角方向に回転自在であることを特徴とする請求項11に記載の電動式ランナ。
【請求項13】
前記アクチュエータへの電力制御により前記ランナの移動速度を可変としたことを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の電動式ランナ。
【請求項14】
前記ランナは、前記アクチュエータを電力制御する制御回路を備えていることを特徴とする請求項13に記載の電動式ランナ。
【請求項15】
前記ランナは、前記アクチュエータの電源として電池を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載の電動式ランナ。
【請求項16】
前記ランナは、前記アクチュエータに電源供給する充電池を備えていることを特徴とする請求項4乃至請求項14のいずれか一項に記載の電動式ランナ。
【請求項17】
前記ランナは、前記アクチュエータを遠隔操作するための操作信号を受信する受信部を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれか一項に記載の電動式ランナ。
【請求項18】
前記ランナは、前記レール上の位置を認識する位置センサを備え、前記位置センサからの位置信号に基づいて自走制御を行なうことを特徴とする請求項1乃至請求項17のいずれか一項に記載の電動式ランナ。
【請求項19】
前記ランナは、前記レール上の物体までの距離を測定する距離センサを備え、前記距離センサからの距離データに基づいて自走制御を行なうことを特徴とする請求項1乃至請求項18のいずれか一項に記載の電動式ランナ。
【請求項20】
前記ランナは、自走していないときには該ランナを前記レールに固着させ、自走するときには前記レールへの固着力を小さくするクランパを備ていることを特徴とする請求項1乃至請求項19のいずれか一項に記載の電動式ランナ。
【請求項21】
前記アクチュエータは、電力印加により電磁力に基づく衝撃を発生し、その衝撃力によって前記ランナを自走させるインパクトアクチュエータであり、
前記プラグと前記配線ダクトの給電構造との間の接続が、前記インパクトアクチュエータの動作時の衝撃力によって前記ランナが動く瞬間のみ外れる構造としたことを特徴とする請求項4に記載の電動式ランナ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公開番号】特開2013−5477(P2013−5477A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130933(P2011−130933)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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