説明

電動機および圧縮機

【課題】圧縮応力に起因する固定子の透磁率の低下を抑制することによって効率の低下を防ぎながら、高温・高圧状態での使用に適した電動機を提供する。
【解決手段】固定子50は、積層された複数の板状部材により形成されている。固定子50の外周面は、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って交互に配置されている第1の外周面51と第2の外周面52により形成されている。積層された複数の電磁鋼板は、第1の外周面51と第2の外周面52との境界箇所51a、51bと固定子50の中心Qを結ぶ境界線Lb、Lcによって囲まれた連結領域S内の連結箇所で、溶接部54によって軸方向に連結されている。また、固定子50は、軸方向両側の端面のうちの少なくとも一方側の端面において、境界線Lb、Lcがハウジング20と交差する箇所で、溶接部53aによってハウジング20に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機に関し、特に、圧縮機に好適に用いることができる電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコン(空調装置)や冷蔵庫等の圧縮機では、誘導電動機、リラクタンスモータ、永久磁石電動機等の電動機が駆動源として用いられている。永久磁石電動機としては、例えば、磁石挿入孔に永久磁石が挿入されている回転子を有する埋込磁石型永久磁石電動機(Interior Permanent Magnet Motor;IPMモータ)、磁石が表面に貼り付けられた回転子を有する表面磁石型永久磁石電動機(Surface Permanent Magnet Motor;SPMモータ)、フラックスバリアが設けられているフラックスバリアモータ等が用いられている。圧縮機で用いられている電動機では、固定子を、ハウジングの内周面により形成されている固定子挿入空間内に固定する方法として焼き嵌め方法が用いられている。(特許文献1参照)
焼き嵌め方法を用いて固定子をハウジングの固定子挿入空間内に固定するには、ハウジングの、固定子挿入空間を形成する内周面の内径を、固定子の外周面の外径より僅かに小さく設定する。そして、ハウジングを加熱し、ハウジングの固定子挿入空間の内径が固定子の外周面の外径より大きくなるように熱膨張させる。この状態で、ハウジングの固定子挿入空間内に固定子を挿入した後、雰囲気温度(常温)に冷却する。これにより、ハウジングの固定子挿入空間の内径が縮小し、固定子挿入空間を形成する内周面により発生する締付力(保持力)によって固定子が固定子挿入空間内に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−201428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、ハウジングの、固定子挿入空間を形成する内周面により発生する締付力(保持力)によって、固定子をハウジングの固定子挿入空間内に固定しているため、固定子は、常時圧縮応力を受けている。一般的に、電動機の固定子は、磁性を有する複数の板状部材(例えば、電磁鋼板)を積層して形成される。ここで、図32に、積層された複数の電磁鋼板により形成されている固定子に加わる圧縮応力あるいは引張応力と固定子の透磁率との関係が示されている。図32に示されているように、積層された複数の電磁鋼板により形成されている固定子の透磁率は、固定子が圧縮応力を受けると低下する。固定子の透磁率が低下すると、固定子を流れる磁束量が低下し、電動機のトルクが減少する。この固定子の透磁率の低下による電動機のトルクの減少を補償するためには、固定子巻線に流れる電流を増加させ、固定子に流れる磁束量を増大させる必要がある。この場合、固定子巻線に流れる電流の増加によって銅損が増加する。また、固定子のヒステリシス曲線が大きくなって鉄損が増加する。このため、電動機の効率が低下する。
また、近年、圧縮機の冷媒(冷却媒体)として、地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)が小さい自然冷媒(Natural Refrigerant)の使用が検討されている。特に、自然冷媒の中でも、毒性や可燃性を有していない二酸化炭素(CO)が注目されている。ここで、冷媒として二酸化炭素を用いた場合には、フロン系の冷媒等を用いた場合に比べてハウジング内が高温・高圧となる。ハウジングの、固定子挿入空間を形成する内周面により発生する締付力(保持力)によって、固定子をハウジングの固定子挿入空間内に固定している場合には、ハウジング内の温度や圧力による固定子の膨張量とハウジングの膨張量の違いによって、固定子挿入空間を形成する内周面により発生する締付力(固定子をハウジングの固定子挿入空間内に固定する保持力)が低下するおそれがある。そして、固定子の保持力の低下は、固定子の固定子挿入空間内での移動や固定子挿入空間からの落下、また、保持力の低下に起因する音の発生等を引き起こすおそれがある。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、圧縮応力に起因する固定子の透磁率の低下を抑制することによって効率の低下を防ぎながら、高温・高圧状態での使用に適した電動機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電動機は、好適には圧縮機、より好適には、二酸化炭素(CO)を冷媒とする圧縮機の駆動源として用いられるが、圧縮機以外の種々の装置の駆動源として用いることができる。また、本発明の電動機は、ハウジングと、固定子と、回転子を備え、固定子は、ハウジングの内周面によって形成されている固定子挿入空間内に挿入された状態でハウジングに固定され、回転子は、固定子の回転子挿入空間内に回転可能に挿入されていればよく、種々の形式の電動機として構成することができる。例えば、永久磁石電動機(埋込磁石型永久磁石電動機、表面磁石型永久磁石電動機)、誘導電動機、リラクタンスモータ等として構成することができる。固定子は、磁性(あるいは強磁性)を有し、板状に形成された複数の板状部材が積層されて形成されている。固定子を形成する板状部材としては、典型的には電磁鋼板が用いられる。複数の板状部材は、軸方向に沿って積層されている。なお、本明細書では、「軸方向」は、固定子の回転子挿入空間内に回転子が挿入された状態において、回転子の回転軸に沿った方向が対応する。
固定子は、軸方向に直角な断面で見て、周方向(外周面に沿った方向)に沿って複数の連結領域を有している。「連結領域」は、軸方向に直角な断面で見て、固定子の中心を通る領域線によって囲まれた領域として定義される。なお、固定子の中心は、固定子の回転子挿入空間内に回転子が挿入されている状態において、軸方向に直角な断面で見て、回転子の回転軸の中心が対応する。連結領域を定める領域線により形成される角度(連結領域の広さ)は、設定角度以内に設定される。複数の連結領域は、好適には、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って設定間隔(あるいは、設定角度)で設けられる。「周方向に沿った複数の連結領域」は、固定子を形成する複数の板状部材を軸方向に連結する軸方向の連結箇所が設けられる領域を意味し、「軸方向連結領域」ということもできる。
そして、固定子を形成している複数の板状部材は、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿った複数の連結領域の軸方向の連結箇所で軸方向に連結されている。「軸方向に連結されている」という記載は、軸方向(積層方向)に隣接する板状部材が、少なくとも周方向に沿った相対移動が規制されている状態で連結されていることを表している。勿論、周方向に沿った相対移動だけでなく、軸方向に沿った相対移動も規制された状態で連結されていてもよい。連結領域の軸方向の連結箇所の位置や数、複数の板状部材を軸方向に連結する方法は適宜選択可能である。
さらに、固定子は、少なくとも電動機の駆動時に、周方向に沿った複数の連結領域のうちの設定数の連結領域の軸方向の連結箇所に、当該軸方向の連結箇所を固定子の中心から外周方向に引っ張る引張応力が加わるように、設定数の連結領域の固定箇所でハウジングに固定されている。「設定数の連結領域」は、周方向に沿った複数の連結領域(軸方向連結領域)のうち、固定子をハウジングに固定する固定箇所が設けられる連結領域(軸方向連結領域)を意味し、「ハウジングに固定される連結領域(軸方向連結領域)」ということもできる。なお、複数の連結領域の全部に固定箇所を設けてもよいし、複数の連結箇所のうちの一部の連結箇所にのみ固定箇所を設けてもよい。すなわち、「設定数の連結領域≦複数の連結領域」であればよい。
設定数の連結領域(ハウジングに固定される連結領域)それぞれの固定箇所は、軸方向に直角な断面で見て、当該固定箇所に作用する、当該固定箇所を固定子の中心から外周方向に引っ張る引張応力あるいは引張応力の分力が、当該設定数の連結領域の軸方向の連結箇所に、当該軸方向の連結箇所を固定子の中心から外周方向に引っ張る引張応力として作用するように設定される。固定箇所は、軸方向に直角な断面で見て、設定数の連結領域に1個所設定してもよいし複数箇所設定してもよい。また、固定箇所は、固定子の軸方向一方側の端面と他方側の端面の間(軸方向両側の端面を含む)において、軸方向の1個所設定してもよいし複数箇所設定してもよい。固定箇所で固定子をハウジングに固定する方法としては、種々の方法を用いることができる。なお、設定数の連結領域の広さ(連結領域を定める領域線により形成される角度)は、当該設定数の連結領域の任意の1つあるいは複数の固定箇所に作用する引張応力あるいは引張応力の分力が当該設定数の連結領域の軸方向の連結箇所に引張応力として作用するように設定される。また、「設定数(固定箇所が設けられる連結領域の数)」は、当該設定数の連結領域の固定箇所に作用する引張応力あるいは引張応力の分力により当該設定数の連結領域の軸方向の連結箇所に作用する引張応力によって、固定子全体に作用する圧縮応力が抑制されるように設定される。
本発明の電動機では、固定子を形成する複数の板状部材は、軸方向に直角な断面で見て、複数の連結領域の軸方向の連結箇所で軸方向に連結されている。これにより、固定子は、軸方向に直角な断面で見て、軸方向の剛性を高めた合体部が周方向に沿って形成される。そして、固定子は、少なくとも電動機の駆動時に、複数の連結領域のうちの設定数の連結領域の固定箇所に作用する引張応力あるいは引張応力の分力によって、設定数の連結領域の軸方向の連結箇所(軸方向の剛性を高めた合体部)に引張応力が加わる。このように、軸方向の剛性を高めた合体部に引張応力を作用させることにより、固定子に圧縮応力が加わるのを効果的に抑制することができる。ここで、固定子の透磁率の低下量は、固定子に圧縮応力が加わる場合より、引張応力が加わる場合の方が小さい。このため、本発明の電動機では、固定子の透磁率の低下量を低減することができ、電動機の効率の低下を防ぐことができる。また、設定数の連結領域の固定箇所で固定子がハウジングに固定されているため、温度や圧力によって固定子およびハウジングが膨張しても、固定子をハウジングの固定子挿入空間内に固定する保持力が低下するのを防止することができる。
なお、本発明は、少なくとも電動機の駆動時に、設定数の連結領域の軸方向の連結箇所に引張応力を加えることを特徴としている。この観点から、本発明の「連結領域」は、軸方向に直角な断面で見て、「軸方向の連結箇所の周方向中心と固定子の中心を結ぶ線の周方向両側設定角度以内の領域線によって囲まれる領域」として定義することができる。また、固定子をハウジングの固定子挿入空間に挿入する方法としては、少なくとも電動機の駆動時に、設定数の連結領域の軸方向の連結箇所に引張応力が加わり、固定子全体に圧縮応力が加わるのを抑制することができる種々の方法を用いることができる、例えば、隙間嵌め方法、焼き嵌め方法、圧入方法等を用いることができる。焼き嵌め方法や圧入方法を用いる場合には、ハウジングの内周面による締め付けによって固定子が受ける圧縮応力が、電動機の駆動時に、設定数の連結領域の軸方向の連結箇所に作用する引張応力によって抑制されるように、固定子の外周面やハウジングの内周面の寸法、設定数(固定箇所が設けられる連結領域の数)等が設定される。
【0006】
固定子を形成する複数の板状部材を軸方向に連結する方法としては、種々の方法を用いることができる。
例えば、クランプ(「カシメ部」ともいう)によって連結する方法、カシメンピンによって連結する方法、接合によって連結する方法を用いることができる。
クランプは、積層される複数の板状部材を結合するために用いられる。クランプは、板状部材を加工することによって形成され、積層方向の一方側に凹部、他方側に突部を有している。そして、軸方向(積層方向)に隣接する一方の板状部材のクランプの突部を他方の板状部材のクランプの凹部に係合(嵌合)させることによって、複数の板状部材が連結される。この方法を用いる場合には、積層される複数の板状部材を結合するためのクランプを兼用することができる。
カシメピンは、積層された複数の板状部材を一体に固定するために用いられる。カシメピンは、複数の板状部材を積層した後、各板状部材に軸方向(積層方向)に形成されているカシメピン挿入孔に挿入される。この方法を用いる場合には、積層された複数の板状部材を一体化するためのカシメピンを兼用することができる。
積層された板状部材を接合する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、複数の板状部材を積層した状態で、各板状部材の外周(固定子の外周面)の箇所を、軸方向に溶接する方法を用いることができる。
なお、複数の板状部材は、複数の連結領域において、いずれか1つの連結方法を用いて軸方向に連結してもよいし、適宜選択した複数(2以上)の連結方法を用いて軸方向に連結してもよい。すなわち、複数の連結領域は、クランプによる軸方向の連結箇所、カシメピンによる軸方向の連結箇所、接合(例えば、溶接)による軸方向の連結箇所を含む複数の軸方向の連結箇所のうちの少なくとも1つの軸方向の連結箇所を有していてもよいし複数(2以上)の軸方向の連結箇所を有していてもよい。複数の軸方向の連結箇所を有する場合、複数の連結領域の各軸方向の連結箇所の配置位置は適宜選択することができる。
【0007】
固定子の外周面は、種々の形状に形成することができる。本発明の電動機の一つの形態では、固定子の外周面は、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って交互に配置されている第1の外周面と第2の外周面によって形成されている。第1の外周面は、ハウジングの内周面に対応する形状を有しており、第2の外周面は、第1の外周面から固定子の中心側に窪んでいるとともに、軸方向に延びている。「ハウジングの内周面に対応する形状」は、典型的には、ハウジングの内周面の形状と相似な形状が対応する。本形態では、ハウジングの固定子挿入空間内に固定子が挿入されている状態では、固定子の第2の外周面とハウジングの内周面との間に軸方向の一方側から他方側に連通する穴(通路)が形成される。この穴(通路)は、例えば、圧縮機では、冷媒を流す通路として用いられる。なお、固定子の第1の外周面およびハウジングの内周面の寸法は、固定子をハウジングの固定子挿入空間内に挿入する方法に応じて設定される。例えば、隙間嵌め方法を用いる場合には、第1の外周面の寸法はハウジングの内周面の寸法より僅かに小さく設定される。一方、焼き嵌め方法や圧入方法を用いる場合には、第1の外周面の寸法はハウジングの内周面の寸法より僅かに大きく設定される。
そして、本形態では、複数の連結領域のうちの少なくとも設定数の連結領域は、軸方向に直角な断面で見て、第2の外周面を挟んで周方向両側に配置されている第1の外周面それぞれと当該第2の外周面との境界箇所と固定子の中心を結ぶ境界線のうちの少なくとも一方の境界線を含んでいる。「少なくとも一方の境界線を含む連結領域」としては、例えば、一方の境界線のみを含む連結領域、一方の境界線とその周方向近傍の領域を含む連結領域、両方の境界線によって囲まれた領域を含む連結領域、両方の境界線によって囲まれた領域とその周方向近傍の領域を含む連結領域を設定することができる。一方の境界線のみを含む連結領域あるいは両方の境界線によって囲まれた領域を含む連結領域を設定する場合には、境界線が連結領域を定める領域線として用いられる。
本形態では、設定数の連結領域の固定箇所は、軸方向に直角な断面で見て、第1の外周面と第2の外周面との境界箇所(あるいは境界箇所の周方向近傍の箇所)のうちの少なくとも一方の境界箇所に設定され、設定された固定箇所(境界箇所あるいは境界箇所の近傍箇所)でハウジングに固定される。なお、一方の境界箇所(あるいは一方の境界箇所の周方向近傍の箇所)のみを固定箇所として設定してもよいし、両方の境界箇所(あるいは両方の境界箇所の周方向近傍の箇所)を固定箇所として設定してもよい。両方の境界箇所(あるいは両方の境界箇所の周方向近傍の箇所)を固定箇所として設定する場合には、各固定箇所に作用する引張応力の分力の一部は、連結領域の軸方向の連結箇所を外周方向に引っ張る引張応力として作用し、他の一部は、固定箇所でハウジングに固定されている板状部材を他の板状部材から引き離す引離応力として作用する。このため、軸方向の連結箇所に作用する引張応力が大きく、固定箇所でハウジングに固定されている板状部材に作用する引離応力が小さくなるように、連結領域の広さ(連結領域を定める領域線により形成される角度)が設定される。
本形態では、固定子の第2の外周面とハウジングの内周面との間に穴(通路)が形成される。このため、複数の板状部材を、第2の外周面の箇所で、接合(例えは、溶接)によって軸方向に連結することができる。また、固定子の第2の外周面とハウジングの内周面との間に形成される穴(通路)に冷却風を流すことによって、穴(通路)の近傍を冷却することができる。これにより、固定子を、第1の外周面と第2の外周面との境界箇所(あるいは境界箇所の周方向近傍の箇所)で、溶接によってハウジングに固定する際に、溶接部の温度を短時間で低下させることができる。
【0008】
複数の板状部材が、軸方向に直角な断面で見て、連結領域の複数(2以上)の軸方向の連結箇所で軸方向に連結されている場合、連結領域の固定箇所に作用する引張応力あるいは引張応力の分力が、連結領域の軸方向の連結箇所に引張応力として作用する。連結領域の複数の軸方向の連結箇所は、当該連結領域の適宜の箇所に配置することができるが、固定子の中心を通る線と交差するように配置するのが好ましい。例えば、クランプによる軸方向の連結箇所、カシメピンによる軸方向の連結箇所あるいは接合による軸方向の連結箇所のうちの複数(2以上)の軸方向の連結箇所を、複数の軸方向の連結箇所が、固定子の中心を通る線と交差するように設定する(線上に配置する)。「複数の軸方向の連結箇所を、複数の軸方向の連結箇所が固定子の中心を通る線と交差するように設定する」態様としては、「固定子の中心を通る線が、各軸方向の連結箇所の周方向中心を通る」態様を用いるのが好ましいが、「固定子の中心を通る線が、各軸方向の連結箇所のいずれかの箇所を通る」態様であればよい。
本形態では、設定数の連結領域の軸方向の連結箇所に効果的に引張応力が作用する。
【0009】
前述したように、「連結領域」は、軸方向に直角な断面で見て、「軸方向の連結箇所の周方向中心と固定子の中心を結ぶ線の周方向両側設定角度以内の領域線によって囲まれる領域」として定義することができる。すなわち、「連結領域」は、軸方向の連結箇所の周方向中心と固定子の中心を結ぶ線を、固定子の中心の周りに周方向両側に設定角度θa回転させた領域線によって囲まれた領域として定義される。「軸方向の連結箇所の周方向中心」は、連結領域内に1つの連結箇所を有する場合には、1つの連結箇所の周方向中心を意味し、連結領域内に複数の連結箇所を有している場合には、複数の連結箇所全体の周方向中心を意味する。
ここで、連結領域を定める領域線が固定子の外周面と交差する箇所が固定箇所として設定されている場合には、[固定箇所に作用する引張応力の分力の一部=固定箇所に作用する引張応力×cosθa]が、軸方向の連結箇所に引張応力として作用する。軸方向の連結箇所に作用する引張応力は、角度θaが0度の時に最大であり、角度θaが大きくなるほど小さくなる。一方、[固定箇所に作用する引張応力の分力の他の一部=固定箇所に作用する引張応力×sinθa]が、固定箇所でハウジングに固定されている板状部材を他の板状部材から引き離す引離応力として作用する。固定箇所でハウジングに固定されている板状部材に作用する引離応力は、角度θaが0度の時に最少であり、角度θaが大きくなるほど大きくなる。
本形態では、連結領域は、軸方向に直角な断面で見て、軸方向の連結箇所の周方向中心と固定子の中心を結ぶ線から周方向両側15度以下の範囲(θa≦15度)、好適には10度以下(θa≦10度)の範囲に設定されている。角度θaが15度を超えると、固定箇所でハウジングに固定されている板状部材が外周方向にずれ、絶縁不良が発生するおそれがある。また、角度θaが10度以下の場合には、軸方向の連結箇所の周方向中心に効果的に引張応力が加わり、電動機の効率の低下を十分に防ぐことができる。また、固定箇所でハウジングに固定されている板状部材が外周方向にずれるおそれもない。
【0010】
固定子をハウジングに固定する固定箇所は、軸方向に直角な断面で見て、設定数の連結領域内に少なくとも1個所、また、軸方向に沿って、少なくとも1個所設定されていればよい。固定子をハウジングに固定する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、溶接によって固定する方法を用いることができる。固定子をハウジングに溶接する方法としては、例えば、ハウジングの固定子挿入空間内で、固定子の軸方向両側の端面のうちの少なくとも一方の端面とハウジングを溶接する方法を用いることができる。あるいは、ハウジングに、外周面と内周面を連通する連通孔を形成し、この連通孔を介した溶接によって固定子とハウジングを溶接する方法を用いることができる。なお、連通孔を介した溶接によって固定子をハウジングに固定する場合には、連通孔は、固定子の第1の外周面と第2の外周目との境界箇所より、第2の外周面と周方向の反対方向に離れた箇所(境界箇所の近傍箇所)を固定箇所として設定するのが好ましい。
【0011】
固定箇所が設けられる連結領域(設定数の連結領域)は、好適には、固定子の周方向に沿って4〜6箇所設定される。これにより、少なくとも電動機の駆動時に、適切な保持力で固定子をハウジングに固定することができるとともに、固定子に圧縮応力が加わるのを抑制することができる。
【0012】
連結領域の軸方向の連結箇所の配置位置や連結領域の固定箇所の配置位置は、適宜設定することができるが、連結領域の軸方向の連結箇所のうちの少なくとも1つの軸方向の連結箇所と連結領域の固定箇所が、軸方向に直角な断面で見て、固定子の中心を通る線と交差するように配置されるのが好ましい。例えば、クランプによる軸方向の連結箇所、カシメピンによる軸方向の連結箇所あるいは接合による軸方向の連結箇所のうちの少なくとも1つ軸方向の連結箇所と固定箇所を、固定子の中心を通る線と交差するように設定する(線上に配置する)。「少なくとも1つの軸方向の連結箇所と固定箇所を、固定子の中心を通る線と交差するように設定する」態様としては、「固定子の中心を通る線が、少なくとも1つの軸方向の連結箇所および固定箇所の周方向中心を通る」態様を用いるのが好ましいが、「固定子の中心を通る線が、少なくとも1つの軸方向の連結箇所および固定箇所のいずれかの箇所を通る」態様であればよい。
本形態では、連結領域の固定箇所に作用する引張応力あるいは引張応力の分力によって、連結領域の軸方向の連結箇所に効果的に引張応力が作用する。
【0013】
以上で説明した電動機は、圧縮機の駆動源として用いることができる。特に、自然冷媒である二酸化炭素が冷媒として用いられ、ハウジング内が高温・高圧となる圧縮機の駆動源として好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電動機は、固定子に圧縮応力が加わることによる効率の低下を防ぐことができるとともに、高温・高圧状態での使用に適している。また、本発明の圧縮機は、高い効率を維持しながら、高温・高圧状態において好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の電動機が使用される圧縮機の一実施の形態の断面図である。
【図2】第1の実施の形態の電動機の固定子の断面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】第1の実施の形態の電動機の固定子とハウジングの断面図である。
【図5】第1の実施の形態の電動機の断面図である。
【図6】図5のVI−VI線断面図である。
【図7】第2の実施の形態の電動機の固定子の断面図である。
【図8】第2の実施の形態の電動機の断面図である。
【図9】図8のIX−IX線断面図である。
【図10】第3の実施の形態の電動機の固定子の断面図である。
【図11】第3の実施の形態の電動機の断面図である。
【図12】図11のXII−XII線断面図である。
【図13】第4の実施の形態の電動機の断面図である。
【図14】第5の実施の形態の電動機の断面図である。
【図15】第6の実施の形態の電動機の断面図である。
【図16】第7の実施の形態のハウジングの断面図である。
【図17】第7の実施の形態の電動機の断面図である。
【図18】図17のXVIII−XVIII線断面図である。
【図19】第8の実施の形態の電動機の断面図である。
【図20】第9の実施の形態の電動機の断面図である。
【図21】第10の実施の形態の電動機の断面図である。
【図22】第11の実施の形態の電動機の断面図である。
【図23】第12の実施の形態の電動機の固定子の断面図である。
【図24】第12の実施の形態の電動機の固定子とハウジングの断面図である。
【図25】第12の実施の形態の電動機の断面図である。
【図26】図25のXXVI−XXVI線断面図である。
【図27】第13の実施の形態の電動機の固定子の断面図である。
【図28】第13の実施の形態の電動機の断面図である。
【図29】第14の実施の形態の電動機の断面図である。
【図30】連結領域を説明する図である。
【図31】連結領域の数(設定数)と鉄損との関係を示すグラフである。
【図32】固定子に加わる圧縮応力および引張応力と固定子の透磁率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
先ず、本発明の電動機を駆動源として用いた圧縮機の一実施の形態10の断面図を図1に示す。なお、図1に示されている一実施の形態の圧縮機10では、駆動源として埋込磁石型永久磁石電動機40が用いられている。
一実施の形態の圧縮機10は、ハウジング20、圧縮機構部30、埋込磁石型永久磁石電動機40、アキュムレータ80等により構成されている。ハウジング20は、鉄(Fe)やアルミニウム(Al)等により形成される。ハウジング20は、密閉されており、圧縮機構部30と埋込磁石型永久磁石電動機40を収容している。ハウジング20には、吸入管81と吐出管21が設けられている。
【0017】
埋込磁石型永久磁石電動機40は、固定子50と回転子70を有している。
固定子50は、薄い板状の電磁鋼板を複数枚積層して形成されている。なお、各電磁鋼板には、積層方向に隣接する電磁鋼板を結合するためのクランプ(「カシメ部」とも呼ばれる)が形成される。クランプは、積層方向の一方側に凹部を有し、積層方向の他方側に突部を有している。そして、電磁鋼板を積層する際に、積層方向に隣接する一方の電磁鋼板のクランプの突部を他方の電磁鋼板のクランプの凹部に嵌合(係合)させる。なお、積層した複数の電磁鋼板を一体化するため接合(例えば、溶接)やカシメピンが用いられる場合もある。電磁鋼板が、本発明の「板状部材」に対応する。なお、固定子50を形成する板状部材は、磁性を有していればよく、電磁鋼板に限定されない。固定子50は、内周側に、スロット59を形成するティース58が設けられている(図3参照)。スロット59内には、絶縁材を介して固定子巻線60が、例えば、分布巻方式や集中巻方式によって配設されている。固定子50は、ハウジング20の内周面20Aによって形成されている空間(固定子挿入空間)20a(図4参照)内に挿入された状態でハウジング20に固定される。軸方向に直角な断面で見て、固定子50の外周面の形状や、ハウジング20の内周面20Aの形状は、円形形状や多角形形状等種々の形状に形成することができる。
回転子70は、固定子50の中心側に形成されている空間(回転子挿入空間)50a(図2参照)内に回転可能に挿入される。回転子70は、薄い板状の電磁鋼板を複数枚積層して形成されている回転子コア71を有している。回転子コア71は、回転軸挿入孔、磁石挿入孔、カシメピン挿入孔が軸方向に形成されている。回転軸挿入孔には回転軸75が挿入され、磁石挿入孔には永久磁石72が挿入される。そして、積層された複数の電磁鋼板は、カシメピン挿入孔に挿入されたカシメピン73によって一体化されている。74は、回転子70(回転子コア71)のバランスを調整するためのバランスウェイトである。各電磁鋼板には、積層方向に隣接する電磁鋼板を結合するためのクランプ(カシメ部)が形成されている。
【0018】
なお、本明細書では、固定子50の回転子挿入空間50a内に回転子70が回転可能に挿入されている状態において、回転子70の回転軸75に沿った方向が、「固定子の軸方向」に対応する。また、軸方向に直角な断面で見て、回転子70の回転軸75の中心が、「固定子の中心Q」に対応する。
【0019】
アキュムレータ80は、冷媒(冷却媒体)と潤滑油を分離する。本実施の形態では、冷媒として二酸化炭素(CO)が用いられている。勿論、冷媒は二酸化炭素に限定されない。アキュムレータ80で分離された冷媒は、吸入管81を介して圧縮機構部30に戻される。また、アキュムレータ80で分離された潤滑油は、潤滑油溜め33に戻される。
圧縮機構部30は、シリンダ31と、回転軸75により駆動される偏心ロータ32を有している。圧縮機構部30は、偏心ロータ32が回転することによって、吸入管81から吸入された冷媒をシリンダ31内で圧縮する。
圧縮機構部30で圧縮された冷媒は、埋込磁石型永久磁石電動機40の固定子50に形成された穴(通路)、固定子50の外周面とハウジング20の内周面20Aとの間に形成された穴(通路)、回転子70に形成された孔(通路孔)、固定子50と回転子70(回転子コア71)との間の間隙(ギャップ)等を通り、吐出管21から吐出される。
また、回転軸75の回転によって、潤滑油溜め33に貯留されている潤滑油が圧縮機構部30の摺動部に供給される。各摺動部を潤滑した潤滑油は、潤滑油留め33に戻される。
図1に示されている圧縮機10では、冷媒と潤滑油が混在した媒体が吐出管21から吐出される。
なお、一実施の形態の圧縮機10では、駆動源として埋込永久磁石型電動機40を用いたが、埋込永久磁石型電動機40に限定されず、種々の形式の電動機を駆動源として用いることができる。以下では、埋込永久磁石電動機40を、単に「電動機40」という。
【0020】
次に、本発明の電動機の概略構成を説明する。
電磁鋼板等の磁性を有する複数の板状部材を積層して形成される固定子は、圧縮応力あるいは引張応力が加わると透磁率が低下する。固定子の透磁率が低下すると、固定子に流れる磁束量が低下し、電動機のトルクが減少する。固定子の透磁率が低下すると、前述したように、電動機の効率が低下する。固定子に加わる圧縮応力あるいは引張応力と固定子の透磁率との関係が、図32に示されている。図32に示されているように、固定子に圧縮応力および引張応力が加わっていない状態では、固定子は、縦軸線と交差する箇所の透磁率(初期値)を有している。この状態で、固定子に圧縮応力を加えると、固定子の透磁率は初期値から低下する。一方、固定子に引張応力を加えると、固定子の透磁率は、一旦初期値より増加した後、初期値より低下する。ここで、図32から分かるように、固定子に引張応力が加わった場合の透磁率の低下量は、固定子に圧縮応力が加わった場合の透磁率の低下量より小さい。すなわち、少なくとも電動機の駆動時に、固定子に圧縮応力が加わるのを抑制し、引張応力が加わるように構成することにより、固定子の透磁率の低下を抑制することができ、電動機の効率の低下を防ぐことができる。
また、冷媒として二酸化炭素(CO)を用いた圧縮機では、電動機(圧縮機)の駆動時にハウジング内が高温・高圧となり、固定子の膨張量およびハウジングの膨張量が、フロン系の冷媒を用いた場合より増大する。一般的に、高温のみによる固定子およびハウジングの膨張量より高温・高圧による固定子およびハウジングの膨張量が大きいため、このような圧縮機では、電動機の駆動時における固定子の膨張量とハウジングの膨張量の差が増大する。ここで、ハウジングの内周面による締付力(保持力)によって固定子をハウジングの固定子挿入空間内に固定している場合には、固定子の膨張量とハウジングの膨張量の差が増大することによって、固定子の保持力が低下するおそれがある。このため、電動機を高温・高圧状態で使用する場合には、固定子およびハウジングの膨張による固定子の保持力の低下を抑制する対策を講ずる必要がある。
本発明の電動機は、圧縮応力に起因する固定子の透磁率の低下を抑制することによって効率の低下を防ぎながら、固定子およびハウジングの膨張による固定子の保持力の低下を抑制することを目的とし、「少なくとも電動機の駆動時に、固定子に引張応力を加え、固定子に圧縮応力が加わるのを抑制するように固定子をハウジングに固定する」ことを基本の技術思想とする。本発明の電動機では、少なくとも電動機の駆動時に、固定子に引張応力が加わり、圧縮応力が加わるのが抑制されるため、固定子の透磁率の低下を防ぐことができ、固定子の透磁率の低下による電動機の効率の低下を抑制することができる。また、電動機の駆動時に、固定子がハウジングに引っ張られるため、固定子の膨張量とハウジングの膨張量との違いによる固定子の保持力の低下を抑制することができる。
【0021】
そして、固定子に引張応力を効果的に加えるための構成についてさらに検討した結果、「固定子を形成する複数の板状部材を、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿った設定数の連結領域の連結箇所で軸方向に連結することによって、軸方向の剛性を高めた合体部を形成し、軸方向の剛性を高めた合体部(軸方向の連結箇所)に引張応力が加わるように、設定数の連結領域の固定箇所で固定子をハウジングに固定する」構成を用いることにより、効率の低下や固定子の保持力の低下を効果的に抑制することができることを見出した。
すなわち、本発明の電動機は、「固定子を形成する複数の板状部材は、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿った設定数の連結領域の連結箇所で軸方向に連結されており、固定子は、軸方向に直角な断面で見て、電動機の駆動時に、周方向に沿った設定数の連結領域の軸方向の連結箇所(合体部)に引張応力が加わるように、周方向に沿った設定数の連結領域に設けられた固定箇所でハウジングに固定されている」構成を基本構成として有している。
なお、固定子を形成する複数の板状部材は、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って、設定数より多い複数の連結領域の連結箇所で軸方向に連結されていてもよい。連結領域の軸方向の連結箇所の数は、軸方向に直角な断面で見て、1つでもよいし複数(2以上)でもよい。設定数の連結領域の固定箇所は、軸方向に直角な断面で見て、設定数の連結領域の軸方向の連結箇所(合体箇所)に引張応力が作用すればよく、1個所でもよいし複数(2以上)箇所でもよい。また、設定数の連結領域の固定箇所は、軸方向に沿って、固定子の軸方向一方側端面と軸方向他方側端面との間(軸方向一方側端面および軸方向他方側端面を含む)の1個所でもよく複数(2以上)箇所でもよい。連結領域の広さ(範囲)は、連結領域の任意の固定箇所に作用する引張応力あるいは引張応力の分力によって、連結領域の軸方向の連結箇所(合体部)に引張応力が作用し、固定子全体に作用する圧縮応力が抑制されるように設定される。
【0022】
固定子を形成する複数の板状部材を、連結領域の連結箇所で軸方向に連結し、固定子を、連結領域の固定箇所でハウジングに固定した状態で、固定子50およびハウジング20が膨張した場合(ハウジング20の膨張量>固定子50の膨張量)における、固定箇所に作用する引張応力と軸方向の連結箇所に作用する引張応力との関係を、図30を参照して説明する。図30は、電動機40を軸方向に直角な方向から見た断面の一部を示している。
なお、図30において、実線で示されているクランプ55(軸方向の連結箇所)の周方向中心と固定子50の中心Qを結ぶ線をLfで表している。また、クランプ55(軸方向の連結箇所)の周方向一方側端部および周方向他方側端部それぞれと固定子50の中心Qを結ぶ線をLiおよびLjで表し、線Liと線Ljによって形成される角度をθbで表している。また、クランプ55(軸方向の連結箇所)の周方向中心と固定子50の中心Qを結ぶ線Lfから周方向両側に角度θa離れた領域線LgおよびLhによって囲まれる領域が連結領域Sで表されている。固定子50の中心Qを通り、線LiとLjによって囲まれている領域と交差する線が、本発明の「固定子の中心を通り、軸方向の連結箇所と交差する線」に対応する。また、固定子50の中心Qとクランプ55(軸方向の連結箇所)の周方向中心を結ぶ線Lfが、本発明の「固定子の中心を通り、軸方向の連結箇所の周方向中心と交差する線」に対応する。
固定子50を形成する複数の板状部材を軸方向に連結する方法としては、軸方向(積層方向)に隣接する板状部材を接合(例えば、溶接54)することによって軸方向に連結する方法、軸方向(積層方向)に隣接する板状部材に形成されるクランプ(カシメ部)55によって軸方向に連結する方法、複数の板状部材を一体化するカシメピン56によって軸方向に連結する方法等を用いることができる。
【0023】
ここで、固定子50を形成する複数の板状部材が、連結領域S内で、実線で示されているクランプ(カシメ部)55によって軸方向に連結されているものとする。
この状態で、クランプ55の周方向中心と固定子50の中心Qを結ぶ線Lfと交差する(線Lf上の)固定箇所Wbで、固定子50がハウジング20に固定されている場合を考える。すなわち、固定箇所Wbおよびクランプ55(軸方向の連結箇所)の周方向中心が、固定子50の中心Qを通る線と交差する(θa=0)ように(線上に)、固定箇所Wbとクランプ55が配置されている場合を考える。この場合には、固定箇所Wbに作用する、固定箇所Wbを固定子50の中心Qから外周方向に引っ張る引張応力は、クランプ55を、固定子50の中心Qから外周方向に引っ張る引張応力Pとして作用する。すなわち、固定箇所Wbおよびクランプ55(軸方向の連結箇所)の周方向中心が、固定子50の中心Qを通る線と交差するように(線上に)配置されている場合には、固定箇所Wbに作用する引張応力のほとんどがクランプ55(軸方向の連結箇所)に引張応力として作用する。
なお、固定箇所Wbの周方向中心と固定子50の中心Qを結ぶ線が、線LiとLjによって囲まれている領域内に存在する場合も同様である。すなわち、固定箇所Wbとクランプ55(軸方向の連結箇所)が、固定子50の中心Qを通る線と交差する(θa≦θb/2)ように(線上に)、固定箇所Wbとクランプ55が配置されている場合にも、固定箇所Wbに作用する引張応力のほとんどがクランプ55(軸方向の連結箇所)に引張応力として作用する。
次に、固定子50が、クランプ55(軸方向の連結箇所)と固定子50の中心Qを結ぶ線と交差しない固定箇所Waでハウジング20に固定されている場合([θa>θb/2])を考える。この場合には、固定箇所Waに作用する引張応力H(G)の線Lf方向の分力の一部Hf=H×cosθa(Gf=G×cosθa)が、クランプ55(軸方向の連結箇所)に引張応力として作用する。さらに、引張応力H(G)の分力の他の一部、例えば、分力Hfに直交する方向の分力Hk=H×sinθa(分力Gfに直交する方向の分力Gk=G×sinθa)が、固定箇所Waでハウジング20に固定されている板状部材を他の板状部材から引き離す引離応力として作用する。このクランプ55(軸方向の連結箇所)に作用する引張応力は、角度θaが大きくなるほど小さくなり、一方、固定箇所Waでハウジング20に固定されている板状部材に作用する引離応力は、角度θaが大きくなるほど大きくなる。このため、角度θaは、適切な範囲内に設定する必要がある。検討の結果、角度θaが15度を超えると、クランプ55(軸方向の連結箇所)に作用する引張応力は小さく、また、固定箇所Waでハウジング20に固定されている板状部材に作用する引離応力が大きくなってずれるおそれがあることが分かった。固定箇所Waでハウジング20に固定されている板状部材が外周方向にずれると、スロット59内で絶縁不良が発生するおそれがある。さらに、角度θaが10度以下であれば、クランプ55(軸方向の連結箇所)に作用する引張応力が十分に大きく、効率の低下を十分に防ぐ効果を得ることができ、また、固定箇所Waでハウジング20に固定されている板状部材に作用する引離応力は十分に小さくなり、板状部材がずれるおそれがないことが分かった。
なお、固定子50を形成する複数の板状部材が、連結領域S内の複数の連結箇所で軸方向に連結されている場合(連結領域S内に複数の軸方向の連結箇所を有している場合)は、複数の軸方向の連結箇所全体の周方向中心を周方向中心とする1つの連結箇所で軸方向に連結されている場合と等価である。例えば、複数の板状部材が、図30に破線で示されているクランプ55とカシメピン56で軸方向に連結されている場合には、クランプ55の周方向中心と固定子50の中心Qを結ぶ線(図ではLi)と、カシメピン56の周方向中心と固定子50の中心Qを結ぶ線(図ではLj)との周方向中心を周方向中心とする1つの軸方向の連結箇所(図では、実線で示されているクランプ55)によって軸方向に連結されている場合と等価である。
したがって、連結領域Sの広さは、連結領域S内の軸方向の連結箇所(例えば、クランプ55)の周方向中心と固定子50の中心Qを通る線Lfから周方向両側の角度θaが15度以内、好適には、10度以内に設定される。すなわち、連結領域Sを定める領域線Lg、Lhは、連結領域S内の軸方向の連結箇所(例えば、クランプ55)の周方向中心と固定子50の中心Qを結ぶ線Lfから周方向両側に15度以内、好適には、10度以内に設定される。
【0024】
さらに、固定箇所が設定されている(ハウジング20と固定される固定箇所を有している)連結領域S(少なくとも1つの軸方向の連結箇所を有している)の数と固定子の鉄損との関係を示すグラフが、図31に示されている。図31に示されているグラフは、固定子50の外周面(図3に示されている固定子50では、第1の外周面51)の直径が50mm〜200mmの場合のものである。図31に示されているグラフから、固定箇所が設定されている連結領域Sを、周方向に沿って4〜6箇所設定することにより、固定子の鉄損を効果的に低減することができることが分かる。なお、固定箇所が設定されている(ハウジング20と固定される固定箇所を有している)連結領域Sの数が、本発明の「設定数」に対応する。
【0025】
次に、圧縮機10で用いられる本発明の電動機40の実施の形態を以下に説明する。なお、以下で説明する各実施の形態の電動機40では、同じ構成の回転子を用いることができるため、回転子の説明は省略し、固定子とハウジングの構成についてのみ説明する。
【0026】
第1の実施の形態の電動機40の固定子50を図2および図3に示している。図2は、固定子50の断面図(軸方向に沿った断面図)であり、図3は、図2のIII−III線断面図(軸方向に直角な断面図)である。なお、軸方向は、図2では上下方向であり、図3では紙面に垂直な方向である。
本実施の形態の固定子50は、環状に形成されており、軸方向一方側端面50Aおよび軸方向他方側端面50Bを有している。固定子50は、軸方向に直角な断面で見て、内周側に、スロット59を形成するティース58を有している。ティース58の先端面(内周側の面)によって、固定子50の内周側に、回転子70が回転可能に挿入される回転子挿入空間50aが形成されている。
【0027】
また、固定子50の外周面は、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って交互に配置されている第1の外周面51と第2の外周面52によって形成されている。第2の外周面52は、当該第2の外周面52を挟んで周方向両側に配置されている第1の外周面51それぞれと境界箇所51aおよび51bで繋がっている。第1の外周面51は、ハウジング20の内周面20A(図4参照)に対応した形状を有している。「内周面20Aに対応した形状」は、典型的には、内周面20Aの形状と相似な形状である。本実施の形態では、ハウジング20は、円筒形状(内周面20Aの断面が円形形状を有している)に形成されている。このため、固定子50の第1の外周面51は、固定子50の中心Qを中心とする円弧形状に形成されている。第2の外周面52は、第1の外周面51から固定子50の中心Q側に窪んでいるとともに、軸方向に延びている。第2の外周面52によって、第1の外周面51を周方向に沿って延ばした仮想外周面(図3に破線で示されている)から切り欠かれた凹部52aが形成される。
本実施の形態では、第1の外周面51と第2の外周面52との境界箇所51aおよび51bそれぞれと固定子50の中心Qを結ぶ境界線LbおよびLcによって囲まれている領域が連結領域Sとして設定されている。すなわち、連結領域Sは、第1の外周面51と第2の外周面52との境界箇所51aおよび51bそれぞれと固定子50の中心Qを結ぶ境界線LbおよびLcを含んでいる。なお、本実施の形態では、境界線LbおよびLcが、連結領域Sを定める領域線として用いられている。
本明細書では、「軸方向の連結箇所が設けられる連結領域S」は、固定子を形成する複数の板状部材を軸方向に連結する領域を意味し、「軸方向連結領域」ということもできる。
【0028】
第1の外周面51(あるいは、ハウジング20の内周面20A)の形状(寸法)は、固定子50をハウジング20の固定子挿入空間20aに挿入する方法に応じて設定される。この時、少なくとも電動機40の駆動時に、固定箇所に作用する引張応力あるいは引張応力の分力によって、固定子に圧縮応力が加わるのが抑制されるように設定される。
例えば、隙間嵌め方法を用いて固定子50を固定子挿入空間20a内に挿入する場合には、固定子50の第1の外周面の寸法(例えば、直径)は、ハウジング20の内周面20Aの寸法(例えば、直径)より僅かに小さく設定される。この場合には、電動機40の非駆動時において、固定子の第1の外周面51とハウジング20の内周面20Aとの間に僅かの隙間が形成されているため、固定子50に圧縮応力が加わらない。なお、固定子50とハウジング20との固定箇所により、第1の外周面51を締め付ける締付力が発生することはあり得る。
あるいは、焼き嵌め方法や圧入方法を用いて固定子50をハウジング20の固定子挿入空間20a内に挿入する場合には、固定子50の第1の外周面の寸法(例えば、直径)は、ハウジング20の内周面20Aの寸法(例えば、直径)より僅かに大きく設定される。この場合には、電動機40の非駆動時において、ハウジング20の内周面20Aによる締付力によって、固定子50に圧縮応力が加わっている。なお、電動機の駆動時に、軸方向の連結箇所に作用する引張応力によって、固定子に加わる圧縮応力が抑制されるように、固定子50の第1の外周面51やハウジング20の内周面20Aの寸法(例えば、直径)、固定箇所が設定される連結領域の数等が設定される。
【0029】
また、固定子50を形成する複数の電磁鋼板は、連結領域S内の連結箇所で軸方向に連結されている。本実施の形態では、軸方向に直角な断面で見て、第2の外周面52の周方向中心51cの箇所で、軸方向(積層方向)に隣接する電磁鋼板が溶接(溶接部54)によって接合されている。すなわち、複数の電磁鋼板は、第2の外周面52の周方向中心51cの箇所で、溶接部54によって軸方向に連結されている。本実施の形態では、凹部52aに対応する箇所に、複数の電磁鋼板を軸方向に連結する溶接部54が形成されている。これにより、固定子50を形成する複数の電磁鋼板を溶接部54によって軸方向に連結した状態で、固定子50をハウジング20の固定子挿入空間20aに容易に挿入することができる。
【0030】
固定子50は、図4に示されているように、ハウジング20の内周面20Aによって形成されている固定子挿入空間20a内に挿入される。例えば、隙間嵌め方法、焼き嵌め方法、圧入方法等を用いて挿入される。固定子50がハウジング20の固定子挿入空間20a内に挿入された電動機40の断面図(軸方向に沿った断面図)を図5に示し、図5のVI−VI線断面図(軸方向に直角な断面図)を図6に示している。
また、固定子50は、固定子挿入空間20a内に挿入された後、連結領域S内の固定箇所でハウジング20に固定される。本実施の形態では、軸方向に直角な断面で見て、固定子50の第1の外周面51と第2の外周面52との境界箇所51aおよび51bそれぞれと固定子50の中心Qを結ぶ境界線LbおよびLcによって囲まれている領域が連結領域Sとして設定されている。すなわち、境界線LbおよびLcが連結領域Sを定める領域線として用いられている(連結領域Sが境界線LbおよびLcを含んでいる)。また、境界箇所51aおよび51bの両方が固定箇所として設定されている。また、固定子50をハウジング20に固定する方法として、溶接方法が用いられている。また、固定子50をハウジング20に固定する軸方向の固定箇所として、軸方向一方側端面50Aが設定されている。すなわち、固定子50は、軸方向両側の端面50Aおよび50Bのうちの軸方向一方側の端面50Aにおいて、第1の外周面51と第2の外周面52との境界箇所51aおよび51bの両方の箇所(固定箇所)で、溶接部53aによってハウジング20に溶接(固定)されている。
固定子50をハウジング20に溶接する方法としては、例えば、レーザー溶接方法、TIG溶接方法、MIG溶接方法等が用いられる。
本実施の形態では、固定子50の第2の外周面52とハウジング20の内周面20Aとの間に、軸方向一方側から軸方向他方側に連通する穴(通路)52aが形成される。この穴(通路)52aは、圧縮機の冷媒等を流す通路として用いられるが、固定子50とハウジング20を溶接する溶接部53aの冷却にも用いることができる。例えば、第1の外周面51と第2の外周面52との境界箇所51aおよび51bに、固定子50をハウジング20に溶接するための溶接部53aを形成する際に、穴(通路)52a内に冷却風を流すことによって、溶接部53aの温度を短時間で低下させることができる。これにより、溶融金属等が穴(通路)52a内を流れるのを防止することができるとともに、固定子50のスロット59と固定子巻線60を絶縁する絶縁部材が溶解して絶縁不良となるのを防止することができる。
なお、本実施の形態では、固定子50の軸方向他方側の端面50Bにおいて、溶接部53bによって固定子50をハウジング20に固定することもできる。また、固定子50の軸方向一方側の端面50Aおよび軸方向他方側の端面50Bにおいて、溶接部53aおよび53bによって固定子50をハウジング20に固定することもできる。また、固定子50をハウジング20に接合する方法は、溶接方法に限定されない。
本明細書では、「連結領域Sのうち、固定子をハウジングに固定する固定箇所が設けられる連結領域S」は、ハウジングに固定される連結領域を意味し、「ハウジングに固定される連結領域(軸方向連結領域)」ということもできる。
【0031】
第2の実施の形態の電動機40の固定子50の断面図(軸方向に直角な断面図)を図7に示している。
本実施の形態では、固定子50の外周面は、第1の実施の形態と同様に、周方向に沿って交互に配置されている第1の外周面51と第2の外周面52によって形成されている。また、第1の実施の形態と同様に、軸方向に直角な断面で見て、第1の外周面51と第2の外周面52との境界箇所51aおよび51bそれぞれと固定子50の中心Qを結ぶ境界線LbおよびLcが連結領域Sを定める領域線として用いられている(連結領域Sが境界線LbおよびLcを含んでいる)。
また、固定子50を形成する複数の電磁鋼板は、連結領域Sの連結箇所で軸方向に連結されている。図7に示すように、本実施の形態では、軸方向に直角な断面で見て、第2の外周面52の周方向中心51cと固定子50の中心Qを結ぶ線Laと交差する(線La上の)連結箇所で、クランプ55によって軸方向に連結されている。例えば、軸方向(積層方向)に隣接する一方の電磁鋼板に形成されているクランプ55の突部を他方の電磁鋼板に形成されているクランプ55の凹部に嵌合(係合)させる。これにより、軸方向(積層方向)に隣接する電磁鋼板は、周方向に沿った相対移動が規制される。すなわち、複数の電磁鋼板は、クランプ55によって軸方向に連結される。
本実施の形態では、積層方向に隣接する電磁鋼板を結合するためのクランプを用いて、複数の電磁鋼板を軸方向に連結することができる。
【0032】
固定子50は、ハウジング20の固定子挿入空間20a内に挿入された後、連結領域Sの固定箇所でハウジング20に固定される。固定子50がハウジング20の固定子挿入空間20a内に挿入され電動機40の断面図(軸方向に沿った断面図)を図8に示し、図8のIX−IX線断面図(軸方向に直角な断面図)を図9に示している。本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、境界箇所51aおよび51bの両方が固定箇所として設定され、固定子50をハウジング20に固定する方法として溶接方法が用いられている。また、固定子50をハウジング20に固定する固定箇所は、軸方向一方側端面50Aの箇所が設定されている。
なお、本実施の形態では、固定子50の軸方向他方側端面50Bにおいて、あるいは、固定子50の軸方向一方側端面50Aおよび軸方向他方側端面50Bの両端面において、溶接部53b、あるいは、溶接部53aおよび53bによって固定子50をハウジング20に固定することもできる。
【0033】
第3の実施の形態の電動機40の固定子50の断面図(軸方向に直角な断面図)が図10に示されている。
本実施の形態では、固定子50の外周面は、第1の実施の形態と同様に、周方向に沿って交互に配置されている第1の外周面51と第2の外周面52によって形成されている。また、第1の実施の形態と同様に、軸方向に直角な断面で見て、第1の外周面51と第2の外周面52との境界箇所51aおよび51bそれぞれと固定子50の中心Qを結ぶ境界線LbおよびLcが連結領域Sを定める領域線として用いられ(連結領域Sが境界線LbおよびLcを含んでおり)、境界箇所51aおよび51bの両方が固定箇所として設定されている。
また、固定子50を形成する複数の電磁鋼板は、連結領域Sの連結箇所で軸方向に連結されている。本実施の形態では、軸方向に直角な断面で見て、第2の外周面52の周方向中心51cと固定子50の中心Qを結ぶ線Laと交差する(線La上の)連結箇所で、カシメピン56によって軸方向に連結されている。例えば、各電磁鋼板に、線Laと交差する(線La上の)連結箇所に、カシメピン挿入孔を形成する。そして、複数の電磁鋼板を積層した状態で、各電磁鋼板に形成されているカシメピン挿入孔にカシメピンを挿入し、複数の電磁鋼板を一体に固定する。これにより、複数の電磁鋼板は、軸方向に連結される。
本実施の形態では、積層された複数の電磁鋼板を一体化するためのカシメピンを用いて、複数の電磁鋼板を軸方向に連結することができる。
【0034】
固定子50は、ハウジング20の内周面20Aによって形成されている固定子挿入空間20a内に挿入された後、連結領域S内の固定箇所でハウジング20に固定される。固定子50がハウジング20の固定子挿入空間20a内に挿入され電動機40の断面図(軸方向に沿った断面図)が図11に示され、図11のXII−XII線断面図(軸方向に直角な断面図)が図12に示されている。本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、境界箇所51aおよび51bの両方が固定箇所として設定され、固定子50をハウジング20に固定する方法として、溶接方法が用いられている。また、固定子50をハウジング20に固定する軸方向の固定箇所として、軸方向一方側の端面50Aが設定されている。
なお、本実施の形態では、固定子50の軸方向他方側の端面50Bにおいて、溶接部53bによって固定子50をハウジング20に固定することができる。また、固定子50の軸方向一方側の端面50Aおよび軸方向他方側の端面50Bにおいて、溶接部53aおよび53bによって固定子50をハウジング20に固定することができる。
【0035】
第1〜第3の実施の形態では、「第2の外周面52と、当該第2の外周面52の周方向両側に配置されている第1の外周面51との境界箇所51aおよび51bそれぞれと固定子50の中心Qを結ぶ境界線LbおよびLcによって囲まれている(境界線LbおよびLcを含む)領域S」が、本発明の「軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って配置されている複数の連結領域」に対応する。また、「固定子50の軸方向一方側の端面50Aおよび軸方向他方側の端面50Bのうちの少なくとも一方の端面において、固定子50の第1の外周面51と第2の外周面52との境界箇所51aおよび51bで、固定子50が溶接部53aおよび53bの少なくとも一方によってハウジング20に溶接されている」構成が、本発明の「電動機の駆動時に、設定数の連結領域の軸方向の連結箇所に引張応力が加わるように、設定数の連結領域の固定箇所で固定子がハウジングに固定されている」構成に対応する。
また、第1の実施の形態の「複数の電磁鋼板が、固定子50の第2の外周面52の周方向中心51cの箇所で、接合(溶接部54)によって軸方向に連結されている」構成、第2の実施の形態の「複数の電磁鋼板が、固定子50の第2の外周面52の周方向中心51cと固定子50の中心Qを結ぶ線Laと交差する固定箇所で、クランプ55によって軸方向に連結されている」構成、第3の実施の形態の「複数の電磁鋼板が、固定子50の第2の外周面52の周方向中心51cと固定子50の中心Qを結ぶ線Laと交差する固定箇所で、カシメピン56によって軸方向に連結されている」構成が、本発明の「固定子を形成する複数の板状部材が、連結領域内の連結箇所で軸方向に連結されている」構成に対応する。
なお、第1〜第3の実施の形態において、軸方向の連結箇所は連結領域S内の適宜の位置に配置することができる。
【0036】
固定子50を形成する複数の電磁鋼板を軸方向に連結する方法としては、溶接により軸方向に連結する方法(第1の実施の形態)、クランプにより軸方向に連結する方法(第2の実施の形態)、カシメピンにより軸方向に連結する方法(第3の実施の形態)等の中から選択した複数の軸方向に連結する方法を組み合わせて用いることもできる。
溶接により軸方向に連結する方法とクランプにより軸方向に連結する方法を用いた第4の実施の形態の電動機40の断面図(軸方向に直角な断面図)を図13に示している。本実施の形態では、軸方向に直角な断面で見て、溶接(溶接部54)による軸方向の連結箇所の周方向中心およびクランプ55による軸方向の連結箇所の周方向中心が、第2の外周面52の周方向中心51cと固定子50の中心Qを結ぶ線Laと交差するように(線La上に)配置されている。
溶接により軸方向に連結する方法とカシメピンにより軸方向に連結する方法を用いた第5の実施の形態の電動機40の断面図(軸方向に直角な断面図)を図14に示している。本実施の形態では、軸方向に直角な断面で見て、溶接(溶接部54)による軸方向の連結箇所の周方向中心およびカシメピン56による軸方向の連結箇所の周方向中心が、第2の外周面52の周方向中心51cと固定子50の中心Qを結ぶ線Laと交差するように(線La上に)に配置されている。
溶接により軸方向に連結する方法と、クランプにより軸方向に連結する方法とカシメピンにより軸方向に連結する方法を用いた第6の実施の形態の電動機40の断面図(軸方向に直角な断面図)を図15に示している。本実施の形態では、溶接(溶接部54)による軸方向の連結箇所の周方向中心、クランプ55による軸方向の連結箇所の周方向中心およびカシメピン56による軸方向の連結箇所の周方向中心が、第2の外周面52の周方向中心51cと固定子50の中心Qを結ぶ線Laと交差するように(線La上に)配置されている。
なお、クランプにより軸方向に連結する方法とカシメピンにより軸方向に連結する方法を用いることもできる。
第4〜第6の実施の形態では、複数の軸方向の連結箇所それぞれの周方向中心が、第2の外周面52の周方向中心51cと固定子50の中心Qとを結ぶ線Laと交差するように複数の軸方向の連結箇所を配置したが、複数の軸方向の連結箇所は、連結領域S内の適宜の位置に配置することができる。例えば、第2の外周面52の周方向中心51cと固定子50の中心Qとを結ぶ線Laが、複数の軸方向の連結箇所それぞれのいずれかの箇所と交差するように複数の軸方向の連結箇所を配置してもよい。また、第2の外周面52の周方向中心51c以外の箇所と固定子の中心Qとを結ぶ線と交差するように配置してもよい。また、複数の連結箇所全てが固定子の中心Qを通る1つの線に交差していなくてもよい。
【0037】
第1〜第6の実施の形態では、ハウジング20の固定子挿入空間20a内において、固定子50の軸方向一方側の端面50Aおよび軸方向他方側の端面50Bの少なくとも一方の端面において、固定子50をハウジング20に溶接(溶接部53a、53b)する方法を用いたが、固定子50をハウジング20に溶接する方法はこれに限定されない。
ハウジングに形成した連通孔を介して、固定子をハウジングに溶接する方法を用いた第7の実施の形態の電動機40を説明する。なお、本実施の形態のハウジング20の断面図(軸方向に沿った断面図)を図16に示している。また、固定子50をハウジング20の固定子挿入空間20aに挿入した電動機40の断面図(軸方向に沿った断面図)を図17に示し、図17のXVIII−XVIII線断面図(軸方向に直角な断面図)を図18に示している。
本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って交互に配置されている第1の外周面51と第2の外周面52によって外周面が形成されている固定子50を有している。
【0038】
ここで、本実施の形態では、ハウジング20に形成された連通孔21a〜21cのうちの少なくとも1つを介して、固定子50をハウジング20に溶接する方法を用いている。固定子50の第1の外周面51と第2の外周面52との境界箇所51aおよび51bで固定子50をハウジング20に溶接する(境界箇所51aおよび51bを固定箇所に設定)ためには、ハウジング20に、固定子50の境界箇所51aおよび51bに対向する箇所に連通孔21a〜21cを形成する必要がある。しかしながら、固定子50の境界箇所51aおよび51bに対向する箇所に形成した連通孔21a〜21cを介して固定子50をハウジング20に溶接する際には、第2の外周面52とハウジング20の内周面20Aとの間に形成されている穴(通路)52a側に溶融金属が流れ出るおそれがある。また、溶接時間を要することにより、固定子50のスロット59と固定子巻線60を絶縁する絶縁部材が溶解して絶縁不良が発生するおそれがある。また、ハウジング20の連通孔21a〜21cを完全に密閉するのが困難であり、密閉型圧縮機に適さない。
本実施の形態では、穴(通路)52aを介して溶融金属が流れ出るのを抑制し、また、溶接時間を短縮して絶縁不良の発生を抑制し、また、連通孔21a〜21cを容易に密閉できるようにするために、連通孔21a〜21cを境界箇所51aおよび51bの近傍箇所に形成している。すなわち、図18に示されているように、軸方向に直角な断面で見て、第1の外周面51と第2の外周面52との境界所51aおよび51bより、周方向に沿って、第2の外周面52と反対側に離れている箇所(境界箇所51aおよび51bの近傍箇所)に形成している。そして、境界箇所51aおよび51bの近傍箇所で、連通孔21a〜21cを介して溶接(溶接部57a)によって、固定子50の第1の外周面51をハウジング20に溶接している。
本実施の形態では、軸方向に直角な断面で見て、第1の外周面51と第2の外周面52との境界箇所51aおよび51bそれぞれと固定子50の中心Qを結ぶ境界線LbおよびLcより、第2の外周面52と周方向反対側に離れている線LdおよびLeによって囲まれている領域(=線LbおよびLcによって囲まれている領域+線Lbより第2の外周面52と周方向反対側の近傍領域+線Lcより第2の外周面52と周方向反対側の近傍領域>線LbおよびLcによって囲まれている領域)が連結領域Sとして設定されている。すなわち、境界線51aおよび51bより第2の外周面と周方向反対側に離れている線LdおよびLeが連結領域Sを定める領域線として用いられている(連結領域Sは境界線LbおよびLcを含んでいる)。
【0039】
固定子50を形成する複数の電磁鋼板は、軸方向に直角な断面で見て、連結領域S内の連結箇所で軸方向に連結される。本実施の形態では、複数の電磁鋼板は、第2の外周面52の周方向中心51cの箇所で、溶接部54によって軸方向に連結されている。
ハウジング20には、固定子50をハウジング20の固定子挿入孔20a内に挿入した状態において、連結領域S内の固定箇所に対向する箇所に、内周面20Aと外周面20Bを連通する連通孔21a〜21cが形成されている。例えば、固定子50の軸方向一方側の端面50Aにおいて固定子50をハウジング20に溶接する場合には、固定子50をハウジング20の固定子挿入空間20a内の固定位置に配置した状態において、固定子50の軸方向一方側の端面50Aの固定箇所に対向する箇所に連通孔21aが形成される。なお、軸方向他方側の端面50Bにおいて固定子50をハウジング20に溶接する場合には、軸方向他方側の端面50Bの固定箇所に対向する箇所に連通孔21bが形成される。また、固定子50の軸方向一方側の端面50Aと軸方向他方側の端面50Bの間の固定箇所で固定子50をハウジング20に溶接する場合には、当該固定箇所に対向する箇所に連通孔21cが形成される。固定子5をハウジング20に固定する軸方向の固定箇所は、固定子50の軸方向一方側の端面50Aと軸方向他方側の端面50Bの間(軸方向一方側の端面50Aおよび軸方向他方側の端面50Bを含む)の少なくとも1個所(1個所あるいは複数箇所)設定されていればよい。
本実施の形態では、固定子50は、ハウジング20の連通孔21aに形成された溶接部57a、あるいは、連通孔21bに形成された溶接部57b、あるいは、連通孔21cに形成された溶接部57cのうちの少なくとも1つの溶接部によって、ハウジング20に固定されている。
【0040】
図18に示した本実施の形態では、「第1の外周面51と第2の外周面52との境界箇所51aおよび51bより、第2の外周面52と周方向反対側に離れている箇所それぞれと固定子50の中心Qを結ぶ線LdおよびLeによって囲まれている領域S(>境界線LbおよびLcによって囲まれている領域)が、本発明の「軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って配置されている複数の連結領域」に対応する。また、「複数の電磁鋼板が、第2の外周面52の周方向中心51cの箇所で(周方向中心51cの箇所が連結箇所として設定)、溶接部54によって軸方向に連結されている」構成が、本発明の「固定子を形成する複数の板状部材が、連結領域内の連結箇所で軸方向に連結されている」構成に対応する。また、「固定子50が、線LdおよびLeと交差する(線LdおよびLe上の)固定箇所で、ハウジングの連通孔21a〜21cに形成されている溶接部57a〜57cによって、ハウジング20に固定されている」構成が、本発明の「少なくとも電動機の駆動時に、設定数の連結領域の軸方向の連結箇所に引張応力が加わるように、設定数の連結領域の固定箇所で固定子がハウジングに固定されている」構成に対応する。
【0041】
第1〜第7の実施の形態では、第1の外周面51と第2の外周面52との境界箇所51aおよび51bの両方(境界箇所51aおよび51bそれぞれの近傍箇所の両方)で、固定子50をハウジング20に固定した(境界箇所の両方を固定箇所に設定した)が、境界箇所51aおよび51bの一方(境界箇所51aおよび51bそれぞれの近傍箇所の一方)で、固定子50をハウジングに固定する(境界箇所の一方を固定箇所に設定する)こともできる。
境界箇所51aおよび51bの一方(境界箇所51aおよび51bそれぞれの近傍箇所の一方)を固定箇所に設定した第8の実施の形態の電動機40の断面図(軸方向に直角な断面図)を図19に示している。
本実施の形態では、固定子50の外周面は、第1の実施の形態と同様に、周方向に沿って交互に配置されている第1の外周面51と第2の外周面52によって形成されている。また、固定子50を形成する複数の電磁鋼板は、溶接部54によって軸方向に連結されている。また、固定子50は、軸方向に直角な断面で見て、第1の外周面51と第2の外周面52との境界箇所51aおよび51bのうちの一方の境界箇所51bで、溶接部53aによってハウジング20に固定されている。
前述したように、軸方向の連結箇所および固定箇所の周方向中心が回転子の中心Qを通る線に交差するように、連結箇所および固定箇所を配置するのが好ましい。ここで、複数の電磁鋼板を軸方向に連結するための溶接部54と、固定子50をハウジング20に固定するための溶接部53aを、固定子50の中心Qを通る線と交差するように配置するのは困難である。このため、本実施の形態では、固定子50を形成する複数の電磁鋼板は、軸方向に直角な断面で見て、第1の外周面51と第2の外周面52との境界箇所51aおよび51bのうちの一方の境界箇所51bより、周方向に沿って第2の外周面52側に離れた箇所(境界箇所51bの近傍箇所)と固定子50の中心Qを結ぶ線Lfと交差する(線Lf上の)連結箇所で、溶接部54によって軸方向に連結されている。本実施の形態では、線Lfが第2の外周面52と交差する箇所が軸方向の連結箇所として設定されている。
なお、複数の電磁鋼板を、他方の境界箇所51aより、周方向に沿って第2の外周面52側に離れた連結箇所(境界箇所51aの近傍箇所)で、溶接部54によって軸方向に連結し、固定子50を、他方の境界箇所51aで、固定子50の軸方向一方側端面50Aにおいて、溶接部53aによってハウジング20に固定してもよい。また、固定子50を、軸方向他方側の端面50Bにおいて、溶接部53bによってハウジング20に固定することができる。また、固定子50を、軸方向一方側の端面50Aおよび軸方向他方側の端面50Bにおいて、固定子50をハウジング20に溶接部53aおよび53bによって固定することもできる。固定子50をハウジング20に接合する方法は、溶接方法に限定されない。
【0042】
本実施の形態では、軸方向に直角な断面で見て、一方の境界箇所51bから周方向に沿って第2の外周面52側に離れた箇所(境界箇所51bの近傍箇所)と固定子50の中心Qを結ぶ線Lfより周方向両側に角度θa離れている線LgおよびLhによって囲まれている領域が連結領域Sとして設定されている。すなわち、線LgおよびLhによって連結領域Sが定められている(連結領域Sは一方の境界線Lcを含んでいる)。
【0043】
本実施の形態では、「一方の境界箇所51b(51a)の近傍箇所と固定子50の中心Qを結ぶ線Lfから周方向両側に角度θa離れている線LgおよびLhによって囲まれている領域S」が、本発明の「軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って配置されている複数の連結領域」に対応する。また、「複数の電磁鋼板が、一方の境界箇所51b(51a)の近傍箇所と固定子50の中心Qを結ぶ線Lfと交差する連結箇所で、溶接部54によって軸方向に連結されている」構成が、本発明の「固定子を形成する複数の板状部材が、連結領域の連結箇所で軸方向に連結されている」構成に対応する。また、「軸方向に直角な断面で見て、一方の境界箇所51b(51a)で(境界箇所51b(51a)が固定箇所として設定)、固定子50が溶接部53aあるいは53bによってハウジング20に溶接されている」構成が、本発明の「少なくとも電動機の駆動時に、設定数の連結領域の軸方向の連結箇所に引張応力が加わるように、設定数の連結領域の固定箇所で固定子がハウジングに固定されている」構成に対応する。
【0044】
境界箇所51aおよび51bの一方を固定箇所に設定した第9の実施の形態の電動機40の断面図(軸方向に直角な断面図)を図20に示している。
本実施の形態では、固定子50の外周面は、第1の実施の形態と同様に、周方向に沿って交互に配置されている第1の外周面51と第2の外周面52によって形成されている。
本実施の形態では、軸方向に直角な断面で見て、一方の境界箇所51bと固定子50の中心Qを結ぶ線Lf(=境界線Lc)より周方向両側に角度θa離れている線LgおよびLhによって囲まれている領域が連結領域Sとして設定されている。すなわち、線LgおよびLhによって連結領域Sが定められている(連結領域Sは一方の境界線Lcを含んでいる)。
固定子50を形成する複数の電磁鋼板は、軸方向に直角な断面で見て、第1の外周面51と第2の外周面52との境界箇所51aおよび51bのうちの一方の境界箇所51bと固定子50の中心Qを結ぶ線Lfと交差する(線Lf上の)連結箇所で、クランプ55によって軸方向に連結されている。そして、固定子50は、一方の境界箇所51bで(境界箇所51bが固定箇所として設定)、固定子の軸方向一方側の端面50Aにおいて、溶接部53aによってハウジング20に固定されている。勿論、他方の境界箇所51a側の連結箇所で、複数の電磁鋼板をクランプ55によって軸方向に連結し、他方の境界箇所51a側の固定箇所で、軸方向一方側の端面50Aにおいて、溶接部53aによって固定子50をハウジング20に固定してもよい。また、軸方向一方側の端面50Aおよび軸方向他方側の端面50Bにおいて、固定子50をハウジング20に溶接部53aおよび53bによって固定してもよい。
【0045】
境界箇所の一方を固定箇所に設定した第10の実施の形態の電動機40の断面図(軸方向に直角な断面図)を図21に示している。
本実施の形態では、固定子50の外周面は、第1の実施の形態と同様に、周方向に沿って交互に配置されている第1の外周面51と第2の外周面52によって形成されている。
本実施の形態では、軸方向に直角な断面で見て、一方の境界箇所51bと固定子50の中心Qを結ぶ線Lfより周方向両側に角度θa離れている線LgおよびLhによって囲まれている領域が連結領域Sとして設定されている。すなわち、線LgおよびLhによって連結領域Sが定められている(連結領域Sは一方の境界線Lcを含んでいる)。
固定子50を形成する複数の電磁鋼板は、軸方向に直角な断面で見て、第1の外周面51と第2の外周面52との境界箇所51aおよび51bのうちの一方の境界箇所51bと固定子50の中心Qを結ぶ線Lfと交差する(線Lf上の)連結箇所で、カシメピン56によって軸方向に連結されている。そして、固定子50は、一方の境界箇所51bで(境界箇所51bが固定箇所として設定)、固定子の軸方向一方側の端面50Aにおいて、溶接部53aによってハウジング20に固定されている。連結箇所や固定箇所については、第9の実施の形態と同様の変更が可能である。
【0046】
第9および第10の実施の形態では、「一方の境界箇所51b(51a)と固定子50の中心Qを結ぶ線Lfから周方向両側に角度θa離れている線LgおよびLhによって囲まれている領域S」が、本発明の「軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って配置されている複数の連結領域」に対応する。また、「複数の電磁鋼板が、一方の境界箇所51b(51a)と固定子50の中心Qを結ぶ線Lfと交差する連結箇所で、クランプ55あるいはカシメピン56によって軸方向に連結されている」構成が、本発明の「固定子を形成する複数の板状部材が、連結領域内の連結箇所で軸方向に連結されている」構成に対応する。また、「軸方向に直角な断面で見て、一方の境界箇所51b(51a)で(境界箇所51b(51a)が固定箇所として設定)、固定子50が溶接部53aあるいは53bによってハウジング20に溶接されている」構成が、本発明の「少なくとも電動機の駆動時に、設定数の連結領域内の軸方向の連結箇所に引張応力が加わるように、設定数の連結領域の固定箇所で固定子がハウジングに固定されている」構成に対応する。
【0047】
第8〜第10の実施の形態では、固定子挿入空間20a内で固定子50とハウジング20を溶接したが、ハウジングに形成された連通孔を介する溶接によって固定子50をハウジング20に固定することもできる。
一方の境界箇所(一方の境界箇所の近傍箇所)を固定箇所に設定した第11の実施の形態の電動機40の断面図(軸方向に直角な断面図)を図22に示している。
ここで、前述したように、一方の境界箇所51bに対向する箇所に形成した連通孔21a〜21cを介して溶接を行うと、第2の外周面52とハウジング20の内周面20Aとの間に形成される穴(通路)52aに溶融金属が流れ出るおそれや、溶接時間を要することにより固定子50のスロット59と固定子巻線60を絶縁する絶縁部材が溶解して絶縁不良が発生するおそれがある。また、ハウジング20の連通孔21a〜21cを完全に密閉するのが困難である。
本実施の形態では、軸方向に直角な断面で見て、一方の境界箇所51bより第2の外周面52と周方向反対側に離れている箇所(一方の境界箇所51bの近傍箇所)で、連通孔21a〜21cに形成された溶接部57a〜57cによって、固定子50をハウジング20に溶接している。
本実施の形態では、軸方向に直角な断面で見て、一方の境界箇所51bから第2の外周面52と周方向反対側に離れた箇所(一方の境界箇所51bの近傍箇所)と固定子50の中心Qを結ぶ線Lfより周方向両側に角度θa離れている線LgおよびLhによって囲まれている領域が連結領域Sとして設定されている。すなわち、線LgおよびLhによって連結領域Sが定められている(連結領域Sは一方の境界線Lcを含んでいる)。
本実施の形態では、他方の境界箇所51a側の連結箇所で、複数の電磁鋼板をクランプ55によって軸方向に連結し、他方の境界箇所51a側の固定箇所で、溶接部57aによって固定子50をハウジング20に固定してもよい。また、固定子50は、軸方向一方側の端面50Aと軸方向他方側の端面50Bの間(軸方向一方側の端面50Aと軸方向他方側の端面50Bを含む)の少なくとも1つの軸方向の固定箇所(任意の1つの軸方向の固定箇所あるいは複数の軸方向の固定箇所)で、溶接部によってハウジング20に固定することができる。
【0048】
本実施の形態では、「一方の境界箇所51b(51a)より第2の外周面52と周方向反対側に離れている箇所と固定子50の中心Qを結ぶ線Lfから周方向両側に角度θa離れている線LgおよびLhによって囲まれている領域S」が、本発明の「軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って配置されている複数の連結領域」に対応する。また、「複数の電磁鋼板が、一方の境界箇所51b(51a)より第2の外周面52と周方向反対側に離れている箇所と固定子50の中心Qを結ぶ線Lfと交差する固定箇所で、クランプ55によって軸方向に連結されている」構成が、本発明の「固定子を形成する複数の板状部材が、連結領域内の連結箇所で軸方向に連結されている」構成に対応する。また、「一方の境界箇所51b(51a)より第2の外周面52と周方向に反対側に離れている箇所と固定子50の中心Qを結ぶ線Lfと交差する固定箇所で、固定子50が溶接部57aによってハウジング20に溶接されている」構成が、本発明の「少なくとも電動機の駆動時に、設定数の連結領域の軸方向の連結箇所に引張応力が加わるように、設定数の連結領域の固定箇所で固定子がハウジングに固定されている」構成に対応する。
なお、連結箇所および固定箇所は、連結領域S内の適宜の箇所に設定することができる。
【0049】
第1〜第11の実施の形態では、第1の外周面と第2の外周面との境界箇所のうちの少なくとも一方の境界箇所(境界箇所の近傍箇所)を、固定子をハウジングに固定する固定箇所として設定したが、第1の外周面と第2の外周面との境界箇所(境界箇所の近傍箇所)以外の箇所を固定箇所として設定することもできる。
第1の外周面と第2の外周面との境界箇所(境界箇所の近傍箇所)以外の箇所(外周面の任意の箇所)を固定箇所として設定した第12の実施の形態の電動機40の固定子150の断面図(軸方向に直角な断面図)を図23に示している。
本実施の形態の電動機では、固定子150は、軸方向に直角な断面で見て、周方向に交互に配置されている第1の外周面151と第2の外周面152により形成されている。本実施の形態では、第2の外周面152とハウジング120の内周面120Aとの間に形成される穴(通路)は、冷媒等の媒体を流す通路として用いられる。なお、本実施の形態では、第2の外周面152を省略することもできる、すなわち、第1の外周面151のみを有する(軸方向に直角な断面で見て、円形形状の外周面を有する)固定子150を用いることもできる。
本実施の形態では、軸方向に直角な断面で見て、第1の外周面151の任意の箇所と固定子150の中心Qを結ぶ線Lfより周方向両側に角度θa離れている線LgおよびLhによって囲まれている領域が連結領域Sとして設定されている。すなわち、線LgおよびLhによって連結領域Sが定められているが、連結領域Sは、図2〜図22に示した実施の形態のように、第1の外周面51と第2の外周面52との境界箇所51aおよび51b(境界箇所51aおよび51bそれぞれの近傍箇所)それぞれと固定子150の中心Qを結ぶ境界線LbおよびLcを含んでいない。
固定子150を形成する複数の電磁鋼板は、連結領域S内の連結箇所で軸方向に連結されている。本実施の形態では、軸方向に直角な断面で見て、第1の外周面151の任意の箇所と固定子150の中心Qを結ぶ線Lfと交差する(線Lf上の)連結箇所で、クランプ155によって軸方向に連結されている。
【0050】
固定子150は、図24に示されているように、ハウジング120の内周面120Aによって形成されている固定子挿入空間120a内に挿入された後、連結領域S内の固定箇所でハウジング120に固定される。固定子150がハウジング120の固定子挿入空間120a内に挿入されている電動機40の断面図(軸方向に沿った断面図)を図25に示し、図25のXXVI−XXVI線断面図(軸方向に直角な断面図)を図26に示している。
固定子150の第1の外周面151の寸法(例えば、直径)とハウジング120の内周面120Aの寸法(例えば、直径)は、前述したように、固定子150をハウジング120の固定子挿入空間120aに挿入する方法によって設定される。
本実施の形態では、固定子150をハウジング120に固定する方法として溶接方法が用いられている。また、固定子150をハウジング120に溶接する方法として、ハウジング120に形成された連通孔を介して溶接する方法が用いられている。このため、ハウジング120には、固定子150が固定子挿入空間120a内の固定位置に挿入された状態において、固定箇所に対向する箇所に、内周面120Aと外周面120Bを連通する連通孔121a〜121cが形成される。例えば、固定子150の軸方向一方側の端面150Aの固定箇所に対向する箇所に、連通孔121aが形成される。あるいは、固定子150の軸方向他方側の端面150Bの固定箇所に対向する箇所に、連通孔121bが形成される。あるいは、軸方向一方側の端面150Aと軸方向他方側の端面150Bとの間の固定箇所に対向する箇所に、連通孔121cが形成される。なお、固定子150をハウジング120に固定する軸方向の固定箇所は、軸方向一方側の端面150Aと軸方向他方側の端面150Bの間(軸方向一方側の端面150Aおよび軸方向他方側の端面150Bを含む)の少なくとも1個所(任意の1つの軸方向の固定箇所あるいは複数の軸方向の固定箇所)設定されていればよい。これにより、固定子150は、ハウジング120の連通孔121a、121b、121cに形成された溶接部157a、157b、157cによってハウジング120に固定される。
【0051】
第1の外周面と第2の外周面との境界箇所(境界箇所の近傍箇所)以外の箇所(外周面の任意の箇所)を固定箇所として設定した第13の実施の形態の電動機40の固定子150の断面図(軸方向に直角な断面図)を図27に示す。
本実施の形態の電動機では、固定子150は、第12の実施の形態と同様に、軸方向に直角な断面で見て、周方向に交互に配置されている第1の外周面151と第2の外周面152により形成されている。なお、本実施の形態では、第2の外周面152を省略することもできる、
本実施の形態では、第12の実施の形態と同様に、軸方向に直角な断面で見て、第1の外周面151の任意の箇所と固定子150の中心Qを結ぶ線Lfより周方向両側に角度θa離れている線LgおよびLhによって囲まれている領域が連結領域Sとして設定されている。
固定子150を形成する複数の電磁鋼板は、連結領域S内の連結箇所で軸方向に連結されている。本実施の形態では、軸方向に直角な断面で見て、第1の外周面151の任意の箇所と固定子150の中心Qを結ぶ線Lfと交差する(線Lf上の)連結箇所で、カシメピン156によって軸方向に連結されている。
固定子150は、ハウジング120の内周面120Aによって形成されている固定子挿入空間120a内に挿入された後、連結領域S内の固定箇所でハウジング120に固定される。固定子150がハウジング120の固定子挿入空間120a内に挿入されている電動機40の断面図(軸方向に直角な断面図)を図28に示している。
本実施の形態では、第12の実施の形態と同様に、固定子150をハウジング120に固定する方法として溶接方法が用いられている。また、固定子150をハウジング120に溶接する方法として、ハウジング120に形成された連通孔121a〜121cを介して溶接する方法が用いられている。
【0052】
第1の外周面と第2の外周面との境界箇所(境界箇所の近傍箇所)以外の箇所(外周面の任意の箇所)を固定箇所として設定した第14の実施の形態の電動機40の固定子150の断面図(軸方向に直角な断面図)を図29に示している。
本実施の形態の電動機では、固定子150は、第12の実施の形態と同様に、軸方向に直角な断面で見て、周方向に交互に配置されている第1の外周面151と第2の外周面152により形成されている。なお、本実施の形態では、第2の外周面152を省略することもできる、
本実施の形態では、第12の実施の形態と同様に、軸方向に直角な断面で見て、第1の外周面151の任意の箇所と固定子150の中心Qを結ぶ線Lfより周方向両側に角度θa離れている線LgおよびLhによって囲まれている領域が連結領域Sとして設定されている。
固定子150を形成する複数の電磁鋼板は、連結領域S内の連結箇所で軸方向に連結されている。本実施の形態では、クランプ155およびカシメピン156によって軸方向に連結されている。クランプ155による軸方向の連結箇所およびカシメピン156による軸方向の連結箇所は、軸方向に直角な断面で見て、連結領域内に配置されていればよいが、好適には、クランプ155およびカシメピン156が、より好適には、クランプ155およびカシメピン156の周方向中心が、固定子150の中心Qを通る線と交差するように(線上に)配置される。
また、固定子150をハウジング120に固定する固定箇所は、連結領域S内に設定されていればよいが、好適には、クランプ155およびカシメピン156と固定箇所が、より好適には、クランプ155およびカシメピン156の周方向中心と固定箇所が、固定子150の中心Qを通る線に交差するように(線上に)配置される。なお、図30で説明したように、複数の軸方向の連結箇所が設定される場合、複数の軸方向の連結箇所全体の周方向中心を周方向中心とする1つの軸方向の連結箇所で軸方向に連結されている場合と等価である。
【0053】
第11〜第14の実施の形態では、「外周面の任意の箇所と固定子150の中心Qを結ぶ線Lfから周方向両側に角度θa離れている線LgおよびLhによって囲まれている領域S」が、本発明の「軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って配置されている複数の連結領域」に対応する。また、「複数の電磁鋼板が、外周面の任意の箇所と固定子150の中心Qを結ぶ線Lfと交差する固定箇所で、クランプ155およびカシメピン156の少なくとも一方によって軸方向に連結されている」構成が、本発明の「固定子を形成する複数の板状部材が、連結領域内の連結箇所で軸方向に連結されている」構成に対応する。また、「外周面の任意の箇所と固定子150の中心Qを結ぶ線Lfと交差する固定箇所で、固定子150が、ハウジング120の連通孔121a〜121cに形成されている溶接部157a〜157cによってハウジング120に溶接されている」構成が、本発明の「少なくとも電動機の駆動時に、設定数の連結領域の軸方向の連結箇所に引張応力が加わるように、設定数の連結領域の固定箇所で固定子がハウジングに固定されている」構成に対応する。
なお、第11〜第14の実施の形態では、連通孔121a〜121cを形成することなく、固定子150をハウジング120に溶接することもできる。例えば、固定子挿入空間120a内で、固定子150の軸方向両側の端面の少なくとも一方側の端面において、固定子150とハウジング120を溶接する方法を用いることができる。また、固定子150をハウジング120に固定する方法としては、溶接方法以外の種々の方法を用いることができる。また、固定子150を構成する複数の電磁鋼板を軸方向に連結する方法としては、種々の方法の1つあるいは複数を用いることができる。
【0054】
以上説明したように、本発明の電動機では、固定子を形成する複数の板状部材を、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿った複数の連結領域内の連結箇所で軸方向に連結することによって、軸方向の剛性が高められた合体部を形成している。そして、少なくとも電動機の駆動時に、設定数の連結領域内の軸方向の連結箇所(軸方向の剛性が高められた合体部)に引張応力を加えて、固定子全体に加えられる圧縮応力を抑制するように、設定数の連結領域内の固定箇所で固定子をハウジングに固定している。これにより、固定子に引張応力が加わり、圧縮応力が加わるのが抑制されるため、圧縮応力に起因する固定子の透磁率の低下が抑制され、さらに、固定子の透磁率の低下による電動機の効率の低下を防ぐことができる。また、高温・高圧の状態で電動機が駆動される場合でも、固定子およびハウジングの膨張による固定子の保持力の低下を防止することができる。
【0055】
本発明は、実施の形態で説明した構成に限定されず、種々変更、追加、削除が可能である。
実施の形態で説明した各構成は、単独で用いることもできるし、適宜選択した複数の構成を組み合わせて用いることもできる。
連結領域の広さや数は、適宜選択することができる。
固定子を形成する複数の板状部材を軸方向に連結する方法としては、種々の連結方法のうちの1つの連結方法を用いることもできるし、適宜選択した複数の連結方法を組み合わせて用いることもできる。また、軸方向の連結箇所は、連結領域内の適宜の箇所に設定することができる。好適には、複数の軸方向の連結箇所は、固定子の中心を通る線と交差するように設定される。
固定子をハウジングに固定する方法としては、種々の固定方法を用いることができる。また、固定子をハウジングに溶接する固定箇所は、連結領域内の適宜の箇所に設定することができるが、好適には、連結領域内の少なくとも1つの連結箇所と固定箇所が、固定子の中心を通る線と交差するように設定される。
本発明の電動機は、永久磁石電動機に限定されず種々の形式の電動機として構成することができる。また、本発明の電動機は、圧縮機以外の種々の装置の駆動源として用いることができる。
圧縮機の構成は、実施の形態で説明した構成に限定されない。
【符号の説明】
【0056】
10 圧縮機
20、120 ハウジング
20A、120A 内周面
20B、120B 外周面
20a、120a 固定子挿入空間
21a〜21c、121a〜121c 連通孔
30 圧縮機構部
40 電動機
50、150 固定子
50A、50B、150A、150B 軸方向端面
50a、150a 回転子挿入空間
51、151 第1の外周面
51a、51b 境界箇所
52、152 第2の外周面
52a、152a 穴(通路)
53a、53b、57a、57b、57c、157a、157b、157c 溶接部(固定部)
54 溶接部(連結部)
55、155 クランプ(連結部)
56、156 カシメピン(連結部)
58、158 ティース
59、159 スロット
60 固定子巻線
70 回転子
75 回転軸
80 アキュムレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、固定子と、回転子を備え、前記固定子は、積層された複数の板状部材により形成され、前記ハウジングの内周面によって形成されている固定子挿入空間内に挿入された状態で前記ハウジングに固定されており、前記回転子は、前記固定子の回転子挿入空間内に回転可能に挿入されている電動機であって、
前記固定子は、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って複数の連結領域を有しており、
前記複数の板状部材は、軸方向に直角な断面で見て、前記複数の連結領域の軸方向の連結箇所で軸方向に連結されており、
前記固定子は、電動機の駆動時に、前記複数の連結領域のうちの設定数の連結領域の軸方向の連結箇所に、当該軸方向の連結箇所を前記固定子の中心から外周方向に引っ張る引張応力が加わるように、前記設定数の連結領域の固定箇所で前記ハウジングに固定されている
ことを特徴とする電動機。
【請求項2】
請求項1に記載の電動機であって、
前記複数の板状部材は、軸方向に隣接して積層されている板状部材に形成されているクランプが係合されていることによって軸方向に連結されている
ことを特徴とする
【請求項3】
請求項1または2に記載の電動機であって、
前記複数の板状部材は、軸方向に配置されているカシメピンによって軸方向に連結されている
ことを特徴とする
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の電動機であって、
前記複数の板状部材は、軸方向に隣接して積層されている板状部材が接合されることによって軸方向に連結されている
ことを特徴とする電動機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の電動機であって、
前記固定子の外周面は、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って交互に配置されている第1の外周面と第2の外周面によって形成されており、前記第1の外周面は、前記ハウジングの内周面に対応する形状を有しており、前記第2の外周面は、前記第1の外周面から前記固定子の中心側に窪んでいるとともに、軸方向に延びており、
前記設定数の連結領域は、軸方向に直角な断面で見て、前記第2の外周面と当該第2の外周面を挟んで周方向両側に配置されている第1の外周面それぞれとの境界箇所と前記固定子の中心を結ぶ境界線のうちの少なくとも一方の境界線を含んでいる
ことを特徴とする電動機。
【請求項6】
請求項5に記載の電動機であって、
前記設定数の連結領域の固定箇所は、軸方向に直角な断面で見て、前記第2の外周面を挟んで周方向両側に配置されている第1の外周面それぞれと当該第2の外周面との境界箇所のうちの少なくとも一方の境界箇所に設定されている
ことを特徴とする電動機。
【請求項7】
請求項3または4に記載の電動機であって、
前記設定数の連結領域のクランプによる軸方向の連結箇所、カシメピンによる軸方向の連結箇所あるいは接合による軸方向の連結箇所は、軸方向に直角な断面で見て、前記固定子の中心を通る線と交差するように設定されている
ことを特徴とする電動機。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の電動機であって、
前記設定数の連結領域は、軸方向に直角な断面で見て、前記設定数の連結領域の軸方向の連結箇所の周方向中心と前記固定子の中心を結ぶ線から周方向両側15度以下の範囲である
ことを特徴とする電動機。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の電動機であって、
前記固定子は、軸方向両側の端面のうちの少なくとも一方側の端面において、溶接によって前記ハウジングに固定されている
ことを特徴とする電動機。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の電動機であって、
前記ハウジングには、外周面と内周面を連通する連通孔が形成されており、
前記固定子は、前記ハウジングに形成されている連通孔を介した溶接によって前記ハウジングに固定されている
ことを特徴とする電動機。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の電動機であって、前記設定数は4〜6であることを特徴とする電動機。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の電動機であって、
前記設定数の連結領域のクランプによる軸方向の連結箇所、カシメピンによる軸方向の連結箇所あるいは接合による軸方向の連結箇所のうちの少なくとも1つの軸方向の連結箇所と固定箇所は、軸方向に直角な断面で見て、前記固定子の中心を通る線と交差するように設定されている
ことを特徴とする電動機。
【請求項13】
電動機を有する圧縮機であって、前記電動機として請求項1〜12のいずれかに記載の電動機が用いられていることを特徴とする圧縮機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate


【公開番号】特開2011−50151(P2011−50151A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195484(P2009−195484)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000100872)アイチエレック株式会社 (58)
【Fターム(参考)】