説明

電動車両の制御装置

【課題】電動車両において、衝突等の走行異常時において高圧系の電圧を迅速に低下させる。
【解決手段】Gセンサにより衝突Gを検出すると、MGECU58は回生電流が所定値未満であるか否かを判定する。HVECU54は、回生電流が所定値未満である場合にSMR1,2をオフ制御し、同時に、平滑コンデンサ22の放電処理を実行する。また、HVECU54は、衝突を検出すると電子制御ブレーキシステムECBを作動させて駆動輪を停止させ、回生電流を速やかに所定値未満とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動車両の制御装置に関し、特に電動車両の衝突時の処理に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両では駆動モータを駆動するために高電圧系が用いられており、このため電動車両の衝突時には、高電圧部を速やかに(衝突後5秒以内に)60V以下に低下させることが安全性確保のために有効な解決方法の一つである。通常、駆動電力源としてのバッテリとインバータ及び駆動モータを含む駆動系との間はシステムメインリレー(SMR)で接続され、イグニッションスイッチのオンによりSMRがオンとなってバッテリと駆動系が接続され、イグニッションスイッチのオフによりSMRがオフとなってバッテリと駆動系とが遮断される。衝突時には、このSMRを速やかにオフすることが要求されるが、通電時のSMR遮断動作によるSMRの溶着を考慮する必要がある。SMRの溶着を防ぐため、例えば駆動モータの回転数をモニタし、バッテリへの回生電力供給がなくなるタイミングでSMRをオフすることも可能であるが、衝突時のレゾルバ断線等により回転数をモニタできないことも想定されるから、衝突を検出して所定時間が経過した後にSMRをオフすることが提案されている。
【0003】
なお、下記の特許文献1には、バッテリからの出力電流が所定電流を下回り、かつ車速が所定車速を下回る場合にメインリレー(SMRに相当)をオフしてメインリレーの溶着を防止することが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、SMRが溶着しているか否かを判定し、溶着していると判定された場合に、バッテリとインバータとの間に設けられた平滑用のコンデンサの放電を禁止することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−348583号公報
【特許文献2】特開2008−278560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
SMRの溶着を考慮して衝突検出から所定時間経過した後にSMRをオフして高圧系のコンデンサを放電する構成では、少なくとも所定時間を待たなければならず、迅速性の要求に応えることが困難である。
【0007】
本発明の目的は、電動車両の衝突等の走行異常時において、システムメインリレー(SMR)の溶着を生じることなく、かつ、迅速にSMRをオフして高圧系のコンデンサを放電することが可能な装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、バッテリからの電力をシステムメインリレー及びコンデンサを介して駆動モータに供給する電動車両の制御装置であって、衝突を含む電動車両の走行異常を検出する異常検出手段と、前記異常検出手段で走行異常が検出された場合に、前記システムメインリレーに流れる回生電流を検出する電流検出手段と、前記システムメインリレーが溶着する閾値を所定値とし、前記電流検出手段で検出された回生電流が所定値以上である場合に前記システムメインリレーをオン制御のまま維持し、所定値未満である場合に前記システムメインリレーをオフ制御し、かつ、前記コンデンサを放電制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の1つの実施形態では、前記異常検出手段で走行異常が検出された場合に、前記電動車両の駆動輪を停止させるブレーキを作動させる作動手段を備える。
【0010】
また、本発明の他の実施形態では、前記電流検出手段で検出された回生電流が所定値以上である場合に、前記電動車両の駆動輪を停止させるブレーキを作動させる作動手段を備える。
【0011】
また、本発明の他の実施形態では、前記制御手段は、前記システムメインリレーをオフ制御するためのオフ指令と、前記コンデンサを放電制御するための放電指令を同時に出力する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電動車両の衝突等の走行異常時において、システムメインリレー(SMR)の溶着を生じることなく、かつ、迅速にSMRをオフして高圧系のコンデンサを放電し低圧化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態のシステム全体構成図である。
【図2】実施形態の制御ブロック図である。
【図3】実施形態の処理フローチャートである。
【図4】実施形態のタイミングチャートである。
【図5】他の実施形態の処理フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0015】
1.システムの基本全体構成
まず、電動車両としてハイブリッド車両を例にとり、その基本全体構成について説明する。
【0016】
図1に、基本全体構成を示す。システムは、電源であるバッテリ10と、システムメインリレーSMR1,2と、フィルタコンデンサ14と、コンバータ20と、平滑コンデンサ22と、インバータ24と、モータジェネレータMG26と、ハイブリッド(HV)ECU54と、MGECU58を含んで構成される。フィルタコンデンサ14、コンバータ20、平滑コンデンサ22、インバータ24、及びMGECU58はパワーコントロールユニットPCUを構成する。なお、コンバータ20は必ずしも必須な構成ではなく、コンバータ20を有しない構成であってもよい。
【0017】
バッテリ10は、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等から構成され、直流電圧を供給するとともに、回生時に駆動系から供給される直流電圧により充電される。
【0018】
HVECU54は、運転状況や車両状況を示す各種センサの出力、例えばアクセル開度や車輪速等のセンサ出力に基づいて、ハイブリッド車両を統括的に制御する。
【0019】
PCUは、MG26の力行動作時にはHVECU54からの制御指令に従ってバッテリ10からの直流電圧を昇圧するとともに、昇圧した直流電圧を交流電圧に変換してMG26を駆動制御する。また、PCUは、MG26の回生時には、HVECU54からの制御指令に従ってMG26の発電した交流電圧を直流電圧に変換してバッテリ10を充電する。
【0020】
SMR1,2は、バッテリ10からインバータ24に対する電力供給経路をオン/オフする。SMR1は、バッテリ10の正極と電源ライン100との間に接続され、SMR2はバッテリ10の負極と電源ライン102との間に接続される。SMR1,2は、それぞれHVECU54からの制御指令によりオン/オフ制御される。
【0021】
コンバータ20は、昇降圧チョッパ回路により構成され、リアクトルLと、電力用半導体スイッチング素子Q1,Q2と、ダイオードD1,D2を備える。スイッチング素子Q1,Q2は、電源ライン100と電源ライン102との間に直列接続される。リアクトルLは、SMR1とスイッチング素子Q1,Q2の接続ノードとの間に接続される。リアクトルLに流れる電流は、ILセンサ18で検出される。スイッチング素子Q1,Q2のエミッタ・コレクタ間にはエミッタ側からコレクタ側に電流を流すように逆配列ダイオードD1,D2がそれぞれ接続される。スイッチング素子Q1,Q2のゲートには、ゲート制御信号が供給され、このゲート制御信号に応答してスイッチング素子Q1,Q2がオン/オフ制御される。コンバータ20は、電源ライン100と電源ライン102との間にバッテリ10からの電圧が入力され、スイッチング素子Q1,Q2のスイッチング動作により入力電圧を昇圧してモータ駆動のためのモータ動作電圧を出力する。コンバータ20での昇圧比は、スイッチング素子Q1,Q2のオン期間比(デューティ比)に応じて決定される。また、コンバータ20は、回生制動時には回生された電圧を降圧してバッテリ10に出力する。すなわち、コンバータ20は双方向コンバータである。
【0022】
MGECU58は、HVECU54からのMG26のトルク指令値に基づいてモータ動作電圧の電圧指令値を生成し、生成した電圧指令値に基づいてコンバータ20での昇圧比を決定する。そして、MGECU58は、この昇圧比が実現されるように、ゲート制御信号をスイッチング素子Q1,Q2に出力する。
【0023】
平滑コンデンサ22は、電源ライン101と電源ライン102の間に接続され、コンバータ20から出力されたモータ動作電圧を平滑化してインバータ24に供給する。
【0024】
インバータ24は、車輪を駆動するMG26に対してモータ動作電圧を三相交流に変換して出力する。また、インバータ24は、回生制動に伴ってMG26において発電された電力をコンバータ20に供給する。インバータ24は、電源ライン101及び電源ライン102の間に並列される、U相アーム、V相アーム、W相アームを構成するスイッチング素子Q3〜Q8を備える。各スイッチング素子Q3〜Q8のコレクタ・エミッタ間には図示しないが逆並列ダイオードがそれぞれ接続される。インバータ24の各相アームの中間点は、三相の永久磁石モータであるMG26の各相コイルの各相端に接続される。各相コイルの他端は中性点に共通接続される。三相のうちの二相に電流センサ28が設けられ、電流が検出される。例えば、V相及びW相にそれぞれ電流センサ28が設けられ、V相電流及びW相電流がそれぞれ検出される。電流センサ28は、検出した電流をMGECU58に出力する。なお、本実施形態では三相のうちの二相に電流センサ28を設ける構成を例示しているが、三相のそれぞれに電流センサ28を設ける構成としてもよい。
【0025】
HVECU54は、各種センサからの出力に基づき、所望の駆動力発生や発電が実行されるようにMG26の運転指令を生成してMGECU58に出力する。運転指令には、MG26の運転禁止/許可や、トルク指令値がある。
【0026】
MGECU58は、PCUに設けられた電流センサ28からの電流やレゾルバで検出されたMG26の回転子回転角に基づくフィードバック制御により、HVECU54からの運転指令に従ってMG26が動作するようにスイッチング素子Q3〜Q8のスイッチング動作を制御する。また、MGECU58は、HVECU54からの運転指令に基づいて、MG26の高効率化のためのモータ動作電圧の電圧指令値を生成し、コンバータ20での昇圧比を決定する。また、MGECU58は、回生制動時において、インバータ24から供給された直流電圧を降圧するようにコンバータ20を制御する。
【0027】
以上のような基本構成において、次に、ハイブリッド車両が衝突した際の処理について説明する。
【0028】
2.衝突時の処理
図2に、システムの機能ブロック図を示す。既述した電流センサ28、HVECU54、MGECU58に加え、Gセンサ50、エアバッグ(A/B)ECU52及び電子制御ブレーキシステム(ECB)56を備える。
【0029】
Gセンサ50は、衝突時の加速度を検出してA/BECU52に出力する。
【0030】
A/BECU52は、Gセンサからの衝突検出信号に基づいてエアバッグを作動させる。また、A/BECU52は、衝突検出信号をHVECU54に出力する。
【0031】
HVECU54は、この衝突検出信号に応答して、ECB56に制御信号を出力してECB56を動作させ、ブレーキを最大限に効かせる。
【0032】
一方、電流センサ28、あるいはコンバータ20のリアクトルLに流れる電流を検出するILセンサ18からの検出信号は、MGECU58に供給される。MGECU58は、電流センサ28で検出された電流(回生電流)、あるいはILセンサで検出された電流(回生電流)が所定値未満であるか否かを判定する。所定値は、これ以上の電流が流れている場合にSMR1,2をオフにすると溶着が生じるものとして実験的に見出された値、つまりSMR1,2に溶着が生じる閾値として定義される。あるいは、所定値はゼロ近傍の値とし、これより小さい値であれば実質的にゼロとみなせる値として定義される。MGECU58は、検出された回生電流が所定値未満である場合に、その旨をHVECU54に出力する。
【0033】
HVECU54は、A/BECU52から衝突検出信号を受信し、かつ、MGECU58から回生電流が所定値未満であることを検出する信号を受信したことを条件として、SMR1,2をオフにするための遮断指令を出力する。また、HVECU54は、SMR1,2の遮断指令と同時に、MGECU58に対してフィルタコンデンサ14と平滑コンデンサ22の放電指令を出力する。MGECU58は、放電指令を受信すると、フィルタコンデンサ14及び平滑コンデンサ22を放電すべく、例えばインバータ24のスイッチング素子Q3〜Q8をスイッチング制御する。具体的には、MGECU58は、MG26にq軸電流が流れないようにインバータ24を制御し、フィルタコンデンサ14及び平滑コンデンサ22の電荷をコンデンサMG26で消費させる。
【0034】
衝突時に車輪が空転し、この空転車輪が駆動輪である場合、MG26の逆起電圧がインバータ24を介してバッテリ10へと供給される。そして、駆動輪の回転が停止する前にSMR1,2をオフしようとすると、SMR1,2が溶着してしまい、フィルタコンデンサ14及び平滑コンデンサ22を放電することができなくなる。ところが、本実施形態のように、衝突時に回生電流が所定値未満であることを検出した上でSMR1,2をオフにすることで、SMR1,2の溶着を防止し、フィルタコンデンサ14及び平滑コンデンサ22を確実に放電することが可能となる。また、SMR1,2が溶着するおそれがある場合には、SMR1,2が溶着していないことを確認した上でフィルタコンデンサ14及び平滑コンデンサ22の放電処理に移行する必要があるところ、本実施形態ではSMR1,2が溶着するおそれがない状況においてSMR1,2をオフにするので、SMR1,2をオフにすると同時にフィルタコンデンサ14及び平滑コンデンサ22の放電処理を開始することが可能である。すなわち、SMR1,2の遮断指令と、フィルタコンデンサ14及び平滑コンデンサ22の放電指令とを同時に出力することが可能である。さらに、本実施形態では、衝突検出を受けてECB56を動作させて強制的に駆動輪を停止させるように構成しているため、衝突後、速やかに回生電流を所定値未満にすることができ、結果として、フィルタコンデンサ14及び平滑コンデンサ22の放電処理により高圧系を速やかに一定電圧以下に降圧できる。
【0035】
なお、SMR1,2の遮断指令と、フィルタコンデンサ14及び平滑コンデンサ22の放電指令は、HVECU54から同時に出力されるが、MGECU58はフィルタコンデンサ14及び平滑コンデンサ22の放電指令を受けて、例えばインバータ24のスイッチング素子Q3〜Q8をスイッチング制御するまでに一定のタイムラグが存在するため、実際には遮断指令を受けてSMR1,2がオフした後に平滑コンデンサ22の放電処理が実行される。
【0036】
図3に、本実施形態における衝突時の処理フローチャートを示す。まず、Gセンサ50で衝突時の加速度Gを検出する(S101)。Gセンサ50は、検出信号をA/BECU52に送信する(S102)。A/BECU52は、検出信号に応じてエアバッグを動作させるとともに、衝突検出信号をHVECU54に送信する(S103)。HVECU54は、衝突検出信号を受けて、ECB56に制御信号を送信してブレーキを最大限に動作させて車輪を停止させる(S104)。
【0037】
一方、これと並行して電流センサ28あるいはILセンサ18で検出された回生電流がMGECU58に供給され、MGECU58は検出された回生電流が所定値より小さいか否かを判定する(S105)。そして、回生電流が所定値未満である場合には、その旨の信号をHVECU54に送信する。HVECU54は、MGECU58から回生電流が所定値未満であることを示す信号を受信すると、SMR1,2の遮断指令とフィルタコンデンサ14及び平滑コンデンサ22の放電指令を同時に出力する(S106)。SMR1,2の遮断指令はSMR1,2に供給され、フィルタコンデンサ14及び平滑コンデンサ22の放電指令はMGECU58に供給される。SMR1,2は、HVECU54からの遮断指令に応じて速やかにオフする(S107)。また、MGECU58は、放電指令に応じて、例えばインバータ24をスイッチング制御し、平滑コンデンサ22の蓄積電荷をMG26で消費させて放電する(S108)。平滑コンデンサ22と共にフィルタコンデンサ14も放電する。
【0038】
図4に、本実施形態のタイミングチャートを示す。図4(a)はGセンサの検出タイミングであり、ある時刻において衝突Gを検出したとする。図4(b)はECB56の動作タイミングであり、この衝突を受けてECB56は動作状態がオフからオンになる。図4(c)、(d)はHVECU54からの制御指令タイミングであり、図4(c)はSMR1,2の遮断指令、図4(d)はフィルタコンデンサ14及び平滑コンデンサ22の放電指令のタイミングである。Gセンサが衝突Gを検出し、ECB56がブレーキを効かせて駆動輪の回転を停止あるいは停止に近い状態まで減速させると回生電流が所定値未満となり、このタイミングでSMR1,2の遮断指令がオンとなり、同時にフィルタコンデンサ14及び平滑コンデンサ22の放電指令もオンとなる。図4(e)はSMR1,2のオフタイミングであり、遮断指令を受けてSMR1,2は速やかにオフする。SMR1,2に流れる電流は所定値未満であることが確認されているので、溶着のおそれなく確実にオフされる。また、図4(f)はフィルタコンデンサ14及び平滑コンデンサ22の放電タイミングであり、SMR1,2のオフとほぼ同一のタイミングあるいはこれより若干遅れて放電が開始される。
【0039】
このように、本実施形態では、衝突後に回生電流が所定値未満であることを判定し、所定値未満であれば直ちにSMR1,2をオフするとともに、フィルタコンデンサ14及び平滑コンデンサ22の放電を実行するため、衝突が生じてから放電が完了するまでのトータルの時間を短縮することが可能である。また、本実施形態では、衝突を検出するとECB56を作動させて強制的に駆動輪を停止するため、たとえ衝突時に駆動輪が空転して回生電流が所定値以上流れていても、回生電流を速やかに所定電流未満に低下させることができ、これによりSMR1,2のオフ及びフィルタコンデンサ14、平滑コンデンサ22の放電処理の早期実行を担保することができる。本実施形態によれば、衝突時にECB56を作動させない場合にフィルタコンデンサ14及び平滑コンデンサ22の放電完了までの時間が約1秒程度であるところ、ECB56を作動させ、かつ、SMR1,2のオフ指令と放電指令を同時に出力することで例えば0.5秒程度に短縮し得る。
【0040】
3.他の実施形態
上記の実施形態では、Gセンサ50で衝突Gを検出した場合にECB56を作動させて駆動輪を停止させているが、回生電流が既に所定値未満である場合にはあえてECB56を作動させず、回生電流が所定値以上の場合においてECB56を作動させることも可能である。
【0041】
図5に、この場合の処理フローチャートを示す。まず、Gセンサ50で衝突時の加速度Gを検出する(S201)。Gセンサ50は、検出信号をA/BECU52に送信する(S202)。A/BECU52は、検出信号に応じてエアバッグを動作させるとともに、衝突検出信号をHVECU54に送信する(S203)。
【0042】
一方、これと並行して電流センサ28あるいはILセンサ18で検出された回生電流がMGECU58に供給され、MGECU58は検出された回生電流が所定値より小さいか否かを判定する(S204)。そして、回生電流が所定値未満である場合には、その旨の信号をHVECU54に送信する。HVECU54は、MGECU58から回生電流が所定値未満であることを示す信号を受信すると、SMR1,2の遮断指令とフィルタコンデンサ14及び平滑コンデンサ22の放電指令を同時に出力する(S205)。SMR1,2の遮断指令はSMR1,2に供給され、フィルタコンデンサ14及び平滑コンデンサ22の放電指令はMGECU58に供給される。SMR1,2は、HVECU54からの遮断指令に応じて速やかにオフする(S206)。また、MGECU58は、放電指令に応じて、例えばインバータ24をスイッチング制御し、平滑コンデンサ22の蓄積電荷をMG26で消費させて放電する(S207)。なお、平滑コンデンサ22と共にフィルタコンデンサ14も放電する。
【0043】
回生電流が所定値以上である場合には(S204でNO)、MGECU58はその旨の信号をHVECU54に送信する。HVECU54は、回生電流が所定値以上であることを示す信号を受信すると、ECB56を作動させる(S208)。そして、再び回生電流が所定値未満となっているか否かを判定する(S204)。
【0044】
以上の処理により、回生電流が所定値以上の場合においてECB56が作動し、ブレーキが最大限で作動するために駆動輪が速やかに停止し、これに伴って回生電流も速やかに所定値未満まで低下してSMR1,2をオフするとともにフィルタコンデンサ14及び平滑コンデンサ22の放電処理が実行される。
【0045】
4.その他の変形例
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0046】
例えば、本実施形態では、Gセンサ50で衝突Gを検出するとA/BECU52に送信し、A/BECU52はさらにHVECU54に送信しているが、Gセンサ50で衝突Gを検出した場合に直接HVECU54に送信してもよい。あるいは、Gセンサ50はA/BECU52以外のECUを経由してHVECU54に送信してもよい。さらに、衝突の発生はGセンサ以外のセンサで検出してもよい。
【0047】
また、本実施形態では、図1のシステム構成図に示すように1個のMG26を有する構成であるが、2個のMGを有する構成であってもよい。2個のMGはそれぞれに接続されたインバータで駆動される。この場合、電流センサ28は2個のMGそれぞれに設けられることになるが、リアクトル電流センサ18は1個のままで済む。従って、リアクトル電流センサ18で回生電流を検出する構成とすることで、2個のMGを有するシステムであっても簡易な構成でフィルタコンデンサ14及び平滑コンデンサ22の放電処理を迅速化することが可能となる。
【0048】
また、本実施形態では、回生電流が所定値未満の場合にSMR1,2をオフしているが、もちろん回生電流が0であるか否かを判定し、回生電流が0である場合にSMR1,2をオフしてもよいのはいうまでもない。回生電流が0の場合は、回生電流が所定値未満の場合の一つの態様である。
【0049】
また、本実施形態では、Gセンサ50で衝突Gを検出しているが、衝突は一例であり、本実施形態は、衝突以外の任意の走行異常を検出してSMR1,2をオフし、平滑コンデンサ22を放電する処理に同様に適用することができる。要するに、走行異常が生じて高圧系の電圧を迅速に低下させる必要がある任意の場合に適用できる。
【0050】
さらに、本実施形態では、ECB56により駆動輪を停止させているが、ECB56は車輪にブレーキを印加する一つの手段であり、車輪を停止させる任意の手段を用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
10 バッテリ、20 コンバータ、22 平滑コンデンサ、24 インバータ、26 モータジェネレータ(M/G)、54 ハイブリッドECU(HVECU)、58 モータジェネレータECU(MGECU)、SMR1,2 システムメインリレー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリからの電力をシステムメインリレー及びコンデンサを介して駆動モータに供給する電動車両の制御装置であって、
衝突を含む電動車両の走行異常を検出する異常検出手段と、
前記異常検出手段で走行異常が検出された場合に、前記システムメインリレーに流れる回生電流を検出する電流検出手段と、
前記システムメインリレーが溶着する閾値を所定値とし、前記電流検出手段で検出された回生電流が所定値以上である場合に前記システムメインリレーをオン制御のまま維持し、所定値未満である場合に前記システムメインリレーをオフ制御し、かつ、前記コンデンサを放電制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記異常検出手段で走行異常が検出された場合に、前記電動車両の駆動輪を停止させるブレーキを作動させる作動手段
を備えることを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1記載の装置において、
前記電流検出手段で検出された回生電流が所定値以上である場合に、前記電動車両の駆動輪を停止させるブレーキを作動させる作動手段
を備えることを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の装置において、
前記制御手段は、前記システムメインリレーをオフ制御するためのオフ指令と、前記コンデンサを放電制御するための放電指令を同時に出力する
ことを特徴とする電動車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−135083(P2012−135083A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283118(P2010−283118)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】