説明

電圧制御温度補償水晶発振器及び温度−発振周波数特性調整方法

【課題】制御電圧入力端子22への基準電圧の印加に対して公称の発振周波数を生成するVC−TCXO10において、温度変化に伴う印加電圧の変動にもかかわらず、高精度の発振周波数を維持する。
【解決手段】定電圧回路11は水晶発振回路14へ供給する定電圧を生成する。定電圧出力端子20は、該定電圧を外部へ導出する端子となっている。恒温槽30におけるVC−TCXO10の温度−発振周波数特性調整時では、定電圧出力端子20−制御電圧入力端子22間に接続線38が接続されるとともに、発振周波数が使用許容温度範囲全体にわたり公称値になるように、温度補償回路12の制御データが温度補償回路調整端子21から設定される。携帯型無線機45へのVC−TCXO10の実装時では、接続線52が定電圧出力端子20−制御電圧入力端子22間に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば無線機に実装される電圧制御温度補償水晶発振器(VC−TCXO:Voltage Controlled, Temperature Compensated Crystal Oscillator)及びその温度−発振周波数特性調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、VC−TCXOを装備する通信装置を開示する(特許文献1の図1等)。該通信装置では、ベースバンド部のDAC(デジタル/アナログ変換器)とVC−TCXOとの間に電圧保持部を介在させ、非送信期間では、該電圧保持部のFETをオンにして、DACからの制御電圧を電圧保持部のコンデンサに蓄積し、また、送信期間では、電圧保持部のFETをオフにすることにし、これにより、送信期間には、VC−TCXOの制御電圧からノイズを除去して、送信波の変調精度を改善している(特許文献1の段落0020)。
【0003】
図12〜図14を参照して、従来のVC−TCXO150について説明する。図12はVC−TCXO150の構成図、図13はメーカ出荷前のVC−TCXO150の調整時の接続状況図、図14は携帯型無線機45におけるVC−TCXO150の接続状態を示す図である。図12〜図14の記載素子の内、後述の本発明に係る図1〜図3の記載素子と同一の素子については、図1〜図3の記載素子と同符号で指示し、説明は省略し、主要点についてのみ説明することにする。
【0004】
図12において、定電圧回路11が生成する定電圧は、同じVC−TCXO150内に実装されている温度補償回路12、周波数制御回路13及び水晶発振回路14へ供給される。VC−TCXO150は、温度補償回路12を備えることにより、温度変化に対する発振周波数の安定性を高めている。発振信号出力端子23の発振周波数は、制御電圧入力端子22に印加する電圧により、微調整することができる。この印加電圧があらかじめ設定された基準電圧と等しい場合には、発振信号出力端子23の発振周波数はその公称周波数と等しくなり、また、印加電圧が基準電圧より高い場合及び低い場合は、それに応じて、発振信号出力端子23の発振周波数はそれぞれ高く及び低くなる。なお、印加電圧の高低とVC−TCXOの周波数の高低との関係がVC−TCXO150とは逆のVC−TCXOも存在する。
【0005】
図13では、VC−TCXO150は、恒温槽30内に収納されて、1個ずつ、温度−発振周波数特性を調整される。調整時は、制御電圧入力端子22は恒温槽30外の定電圧源160へ接続線161を介して接続される。恒温槽30内の温度は、VC−TCXO150の使用許容温度範囲の全体にわたって変化し、VC−TCXO150は、各温度において、その制御電圧入力端子22へ恒温槽30外の定電圧源160から一定の基準電圧を印加されつつ、温度補償回路調整端子21に公称値の発振周波数を出力するように、ジグ32により温度補償回路12の記憶装置(図示せず)の制御データを設定される。定電圧源160は、非常に高精度のものが使用されるので、恒温槽30内の調整機関において制御電圧入力端子22への印加電圧は極めて安定した電圧となる。
【0006】
VC−TCXO150は、そのメーカから出荷後、携帯型無線機45等のメーカにおいて所定の製品に実装される。VC−TCXO150が例えば携帯型無線機45(図14)に実装される場合には、VC−TCXO150は、その制御電圧入力端子22へ定電圧回路165からの制御電圧を印加される。
【特許文献1】特開2003−174380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
制御電圧入力端子22に印加される基準電圧を生成する携帯型無線機45内部の定電圧回路165には、温度補償されたシリーズレギュレータやシャントレギュレータが使用される。携帯型無線機45のような携帯型では、その大きさや消費電流などに制約があるため、現在使用されるものは、定電圧源160(図13)ほどの精度はなく、その電圧の温度安定性は最良のものでも、30ppm/°C程度が限界である。定電圧回路165の温度安定性が30ppm/°Cと仮定して、以下、VC−TCXO150の問題点について述べる。
【0008】
VC−TCXO150を−35°C〜+85°Cの120°Cの温度範囲で使用する場合の定電圧源の温度偏差は次のように計算される。
30 [ppm/°C] × 120 [°C]=3600 [ppm]・・・( = 0.36% )
【0009】
制御電圧入力端子22の基準電圧が 1.5V に設定されている場合、該基準電圧の変移量は次のように計算される。
1.5 [V] × 3600 [ppm]= 5.4 [mV]
【0010】
制御電圧入力端子22の対周波数感度が40ppm/Vであるとき(制御電圧1V当たり発振周波数が40ppm変化するとき)、その発振周波数の変化量は次のように計算される。
40 [ppm/V]× 5.4[mV]= 0.216 [ppm]
【0011】
すなわち、制御電圧入力端子22に印加される基準電圧が温度で5.4mV、変移するために、発振信号出力端子23の発振周波数は約0.22ppm動いてしまうことになる。
【0012】
VC−TCXO150のメーカの調整時では、−35°C〜+85°Cのすべての温度範囲にわたり不変の基準電圧を使用している。すなわち、定電圧源160(図13)は、恒温槽30内のVC−TCXO150の温度変化にもかかわらず、自身は温度変化無しで一定の基準電圧を制御電圧入力端子22に印加して、VC−TCXO150の発振周波数の調整を行うので、発振信号出力端子23の発振周波数は非常に安定したものとなる。しかし、VC−TCXO150が、実際に、携帯型無線機45に実装されたときには、制御電圧入力端子22へは、定電圧源160に比して精度が劣る定電圧回路165から制御電圧を供給されることになり、また、定電圧回路165は、図12の定電圧源160とは異なり、自身もVC−TCXO150と共に温度変化することになるので、定電圧回路165からの制御電圧入力端子22への現実の印加電圧は、恒温槽30における調整時よりも、温度に対して不安定なものになっている。したがって、携帯型無線機45における制御電圧の変移は、前述の約0.22ppmより十分に大きなものとなる。
【0013】
特許文献1は、ノイズ除去によるVC−TCXOの発振周波数の精度改善について言及するものの、温度変化に伴う制御電圧の変動に対する発振周波数の精度改善についての解決手段を開示していない。
【0014】
本発明の目的は、実機への搭載状態において温度変化に伴う制御電圧の変動に対する発振周波数の精度を向上することができる電圧制御温度補償水晶発振器及びその温度−発振周波数特性調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、電圧制御温度補償水晶発振器が内蔵する定電圧回路に着目し、個々の電圧制御温度補償水晶発振器についての温度−発振周波数特性の調整時、及び実機への各電圧制御温度補償水晶発振器の実装時における電圧制御温度補償水晶発振器の水晶発振回路の制御電圧として、該定電圧回路の生成電圧を使用できるように、電圧制御温度補償水晶発振器を構築する。具体的には、定電圧回路の生成した給電用電圧に係る電圧(該電圧には給電用電圧自体も含むものとする。)を外部へ導出する端子を付加したり、電圧制御温度補償水晶発振器内に配線を形成したりする。
【0016】
本発明の電圧制御温度補償水晶発振器は次のものを備えている。
制御電圧入力端子、
該制御電圧入力端子に印加された制御電圧に基づく周波数で発振する水晶発振回路、
該水晶発振回路の発振信号を外部へ導出する発振信号出力端子、
該水晶発振回路へ供給する一定値の給電用電圧を生成する定電圧回路、
前記水晶発振回路の出力について温度補償する温度補償回路、及び
前記定電圧回路の給電用電圧に係る定電圧を外部へ導出する定電圧出力端子。
【0017】
本発明の別の電圧制御温度補償水晶発振器は次のものを備えている。
制御電圧に基づく周波数で発振する水晶発振回路、
該水晶発振回路の発振信号を外部へ導出する発振信号出力端子、
該水晶発振回路へ供給する一定値の給電用電圧を生成する定電圧回路、
前記水晶発振回路の出力について温度補償する温度補償回路、及び
前記定電圧回路の給電用電圧に係る定電圧を前記制御電圧として前記水晶発振回路へ供給する制御電圧供給回路。
【0018】
本発明の温度−発振周波数特性調整方法は次のステップを備えている。
前述の電圧制御温度補償水晶発振器を、その水晶発振回路の入力側基準電圧が前記定電圧回路の生成電圧に係る電圧となるような接続を施して、恒温槽へ収容するステップ、
前記恒温槽内の温度を所定範囲にわたり変化させるステップ、及び
前記水晶発振回路の発振周波数が前記恒温槽内の各温度において公称値に維持されるように、前記電圧制御温度補償水晶発振器内の発振周波数制御因子を設定するステップ。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電圧制御温度補償水晶発振器の温度−発振周波数特性の調整や、実機への装備では、定電圧回路の生成する給電用電圧に係る電圧が水晶発振回路の制御電圧として使用することができるようになっているので、温度変化に伴う制御電圧の変化について、実機装備時は、温度−発振周波数特性の調整時の制御電圧の変化と同一のものが再現されることになる。したがって、実機搭載時における温度−発振周波数特性は、温度−発振周波数特性の調整時と同一のものとなり、電圧制御温度補償水晶発振器の発振周波数の精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1はVC−TCXO10の構成図である。VC−TCXO10は、チップ形態で製造され、内部に、定電圧回路11、温度補償回路12、周波数制御回路13、水晶発振回路14を構築されている。VC−TCXO10は、その外部との接続用に、電源入力端子19、定電圧出力端子20、温度補償回路調整端子21、制御電圧入力端子22、発振信号出力端子23及びグランド端子24を備えている。
【0021】
定電圧回路11は、電源入力端子19から供給される電圧から所定の定電圧を生成し、該定電圧を温度補償回路12、周波数制御回路13、水晶発振回路14及び定電圧出力端子20へ分配する。
【0022】
温度補償回路12は、例えば、温度を検出するサーミスタ、出力側の可変容量ダイオードの逆方向電圧を調整するDAC(デジタル/アナログ変換器)、調整値を格納する記憶装置(例:EPROM又はFLHROM)、及び該記憶装置の設定データに基づき温度に応じてDACの出力を制御するマイコンを装備する。温度補償回路12は、後述の図2の温度−発振周波数特性調整時に、温度補償回路調整端子21から入力される信号に基づき記憶装置のデータを設定されるようになっている。
【0023】
周波数制御回路13は、制御電圧入力端子22に印加された電圧に対応する電圧を、出力側の可変容量ダイオードにその逆方向電圧として印加する。温度補償回路12の出力側の可変容量ダイオードと周波数制御回路13の出力側の可変容量ダイオードとは、それらの一端側を向かい合わせに接続されて、水晶発振回路14の入力電圧を決定する。水晶発振回路14は、該入力電圧に関係する周波数の発振信号を発振信号出力端子23へ出力する。
【0024】
図2はVC−TCXO10のメーカにおいて各VC−TCXO10について行う温度−発振周波数特性調整時の接続状況図である。VC−TCXO10は、恒温槽30内に収納され、恒温槽30内における温度−発振周波数特性の調整中、VC−TCXO10の使用許容温度範囲、例えば−35°C〜+85°Cの温度範囲の全体にわたる温度変化を受ける。定電圧源31、ジグ32及び周波数カウンタ33は、恒温槽30の外に配備され、それぞれ接続線37,39,40を介して恒温槽30内のVC−TCXO10の電源入力端子19、定電圧出力端子20及び温度補償回路調整端子21へ接続される。
【0025】
定電圧源31は、VC−TCXO10の電源入力端子19へ電力を供給し、周波数カウンタ33は、発振信号出力端子23から出力される発振信号の周波数を測定する。ジグ32は、VC−TCXO10の温度−発振周波数特性調整における恒温槽30内の変化温度範囲の各温度において周波数が公称値になるように、温度補償回路調整端子21を介して温度補償回路12へデータを送って、温度補償回路12の記憶装置に記憶させる。
【0026】
図3はVC−TCXO10が携帯型無線機45に装備されたときの接続図である。携帯型無線機45は、ハウジング46及びアンテナ47を装備している。VC−TCXO10は、バッテリ50、定電圧回路51及び局部発振回路53と共に、ハウジング46内に配設される。電源入力端子19は、定電圧回路51を介してバッテリ50から電力を供給される。定電圧出力端子20及び制御電圧入力端子22は接続線52により相互に接続される。発振信号出力端子23は、局部発振回路53へ接続されて、発振信号を局部発振回路53へ供給する。グランド端子24はハウジング46内のグランド54へ接続される。
【0027】
携帯型無線機45において、VC−TCXO10の定電圧回路11は、携帯型無線機45内の温度変化に伴い、出力電圧がわずかながら変化する。温度補償回路12の生成電圧は、VC−TCXO10内の温度補償回路12、周波数制御回路13及び水晶発振回路14だけでなく、接続線52を介して制御電圧入力端子22へも供給されており、これは、図2で説明したように、該VC−TCXO10が、出荷元メーカにおいて恒温槽30に収納されて、温度−発振周波数特性を調整された時と同一の状況になっている。したがって、制御電圧入力端子22の印加電圧が、ハウジング46内の温度変化に伴い、変化しても、発振信号出力端子23の発振信号の周波数は、VC−TCXO10の出荷元メーカにおける温度−発振周波数特性調整時と同様に、公称値を維持することができる。
【0028】
図4は、定電圧回路11の生成電圧と制御電圧入力端子22の基準電圧とが相違する場合に、VC−TCXO60に分圧器61を外付けすることにより対処する回路図である。なお、制御電圧入力端子22の基準電圧とは、各温度において発振信号出力端子23に公称値の発振周波数が出力するときの制御電圧入力端子22の電圧と定義する。VC−TCXO60の素子の内、図1のVC−TCXO10の各素子と同一の素子については、VC−TCXO10の素子に付けた符号で指示して、それらの説明は省略する。
【0029】
分圧器61は、VC−TCXO60の外に設けられ、両端をそれぞれ定電圧出力端子20及びグランドへ接続されるとともに、分圧端子を制御電圧入力端子22へ接続される。VC−TCXO60へ外付けされている分圧器61は、恒温槽30内におけるVC−TCXO60の温度−発振周波数特性調整時及び携帯型無線機45におけるVC−TCXO60の実装時の両方に使用され、接続線38(図2)及び接続線52(図3)の代わりに使用される。現実には、恒温槽30内におけるVC−TCXO60の温度−発振周波数特性調整時に使用する分圧器61と、携帯型無線機45へのVC−TCXO60の実装時に使用する分圧器61とは、異なるので、前者及び後者の分圧器61を、説明の便宜上、それぞれ分圧器61a,61bというように、区別する。
【0030】
温度−発振周波数特性調整では、分圧器61aは、あらかじめ、その分圧端子の電圧が、−35°C〜+85°Cの範囲内で適当に選択された所定温度において、制御電圧入力端子22の基準電圧となるように、分圧抵抗が設定されている。そして、分圧器61aは、図4の分圧器61のように、VC−TCXO60と接続されて、恒温槽30内に収容される。その後、恒温槽30内は、VC−TCXO60の使用許容温度範囲全体にわたって温度変化させられる。VC−TCXO60は、各温度において、発振信号出力端子23の発振周波数が公称値になるように、温度補償回路12の記憶装置のデータをジグ32により設定される。
【0031】
携帯型無線機45では、分圧器61bは、図4の分圧器61のように、VC−TCXO60へ接続され、制御電圧入力端子22に基準電圧が生成されるように、分圧点を調整される。なお、この時のVC−TCXO60及び分圧器61bの温度は、共に同一であるとともに、VC−TCXO60が恒温槽30内で受けた温度変化範囲に含まれるものとなっている。したがって、それ以降、ハウジング46内の温度が変化しても、それは、VC−TCXO60が、恒温槽30内において、公称の発振周波数を出力するように、調整済みの温度である。結果、VC−TCXO60は、携帯型無線機45において、温度変化にもかかわらず、発振信号出力端子23に公称発振周波数を生成する。
【0032】
図5は、定電圧回路11の生成電圧と制御電圧入力端子22の基準電圧とが相違する場合に、分圧器66を内蔵することにより対処するVC−TCXO65の回路図である。VC−TCXO65の素子の内、図4のVC−TCXO60の素子と同一の素子については、VC−TCXO60の素子に付けた符号で指示して、それらの説明は省略する。
【0033】
VC−TCXO65は、分圧器66を内蔵し、定電圧出力端子67を備えている。分圧器66は、図4の分圧器61と同一の役目を果たすものとなっており、両端において定電圧回路11の出力端とグランドとへ接続されているとともに、分圧点を定電圧出力端子67へ接続されている。分圧器66の分圧点は、分圧器61の分圧点と同一の電圧を生成するようになっている。
【0034】
VC−TCXO65は、恒温槽30内での温度−発振周波数特性調整では、定電圧出力端子67−制御電圧入力端子22間に接続線38(図2)を接続され、携帯型無線機45への実装時では、定電圧出力端子67−制御電圧入力端子22間に接続線52(図3)を接続される。図4のVC−TCXO60では、恒温槽30内での温度−発振周波数特性調整時及び携帯型無線機45への実装時、分圧器61a,61bが必要になったが、VC−TCXO65では、分圧器61a,61bを省略することができる。なお、接続線38,52は、抵抗値上の製品のばらつきは分圧器61a,61bに比して小さい。
【0035】
VC−TCXO65では、分圧器66の分圧点をVC−TCXO65の内部配線により周波数制御回路13の入力側へ接続すれば、定電圧出力端子67を省略することができる。後述の図8のVC−TCXO88はその例である。さらに、図8のVC−TCXO88では、制御電圧入力端子22を残しているが、分圧器66の分圧点をVC−TCXO65の内部配線で周波数制御回路13の入力側へ接続した場合には、制御電圧入力端子22を省略してもよい。
【0036】
図6は発振信号出力端子23が定電圧回路11の定電圧を導出する端子を兼ねるVC−TCXO72の回路図である。VC−TCXO72の素子の内、図1のVC−TCXO10の各素子と同一の素子については、VC−TCXO10の素子に付けた符号で指示して、それらの説明は省略する。
【0037】
VC−TCXO72では、VC−TCXO10の定電圧出力端子20(図1)が省略されている。コンデンサ73は水晶発振回路14の出力端子と発振信号出力端子23との間に介在する。抵抗74は、定電圧回路11の出力端と発振信号出力端子23との間に介在する。定電圧回路11の出力は直流であるのに対し、水晶発振回路14の出力は交流である。コンデンサ73は、水晶発振回路14の出力端が定電圧回路11の直流の生成電圧から影響を受けるのを防止している。
【0038】
携帯型無線機45におけるVC−TCXO72では、発振信号出力端子23はコンデンサ78を介して局部発振回路53の入力側へ接続される。発振信号出力端子23は、また、LPF(低域ろ波器)79を介して制御電圧入力端子22へ接続される。コンデンサ78は、定電圧回路11の直流の定電圧が局部発振回路53へ送られるのを阻止しつつ、水晶発振回路14が生成した発振信号の通過を許容する。LPF79は、水晶発振回路14が生成した発振信号が制御電圧入力端子22へ伝わるのを阻止する。
【0039】
VC−TCXO72の温度−発振周波数特性について恒温槽30内で調整する場合には、電源入力端子19及び温度補償回路調整端子21には、図2の定電圧源31及びジグ32を接続し、制御電圧入力端子22及び発振信号出力端子23には、図6のコンデンサ78及びLPF79を残しつつ、局部発振回路53に代えて、周波数カウンタ33を接続する。携帯型無線機45へのVC−TCXO72の実装時に使用するコンデンサ78及びLPF79と、恒温槽30におけるVC−TCXO72の調整時に使用するコンデンサ78及びLPF79とは、同一のものではないが、携帯型無線機45の製作時に、VC−TCXO72、コンデンサ78及びLPF79を同一の温度環境下の或る温度において、局部発振回路53の入力側の発振周波数を公称周波数になるように、コンデンサ78及びLPF79における所定の素子の値を調整すれば、該温度では、恒温槽30における温度−発振周波数特性調整時の素子値を再現していることになるので、別の温度へ変化しても、発振信号出力端子23の発振信号の周波数が公称値に維持される。
【0040】
図7は温度補償回路調整端子21が定電圧回路11の定電圧を導出する端子を兼ねるVC−TCXO82の回路図である。VC−TCXO82の素子の内、図6のVC−TCXO72の各素子と同一の素子については、VC−TCXO72の素子に付けた符号で指示して、それらの説明は省略する。VC−TCXO82では、VC−TCXO72のコンデンサ73及び抵抗74が無い代わりに、VC−TCXO82内に抵抗83が付加される。
【0041】
抵抗83は、定電圧回路11の出力端と複数の温度補償回路調整端子21の中の1つとの間に介在している。ジグ32(図2)の出力インピーダンスは抵抗83の抵抗値より十分に低い値になっている。恒温槽30におけるVC−TCXO82の調整時及び携帯型無線機45へのVC−TCXO82の実装時では、定電圧回路11の定格電圧が出力される1つの温度補償回路調整端子21と制御電圧入力端子22との間に、接続線52(図3)のような接続線又は分圧器61(図4)のような分圧器が接続される。すなわち、接続線の場合には、該接続線は、定電圧出力用温度補償回路調整端子21と制御電圧入力端子22とを接続する。また、分圧器の場合には、該分圧器は、両端を定電圧出力用温度補償回路調整端子21とグランドとへ接続されるとともに、分圧点を制御電圧入力端子22に接続される。
【0042】
図8はFM等の信号発生に利用されているVC−TCXO88及びその接続図を示している。VC−TCXO88の素子の内、図5のVC−TCXO65の各素子と同一の素子については、VC−TCXO65の素子に付けた符号で指示して、それらの説明は省略する。
【0043】
VC−TCXO65では、分圧器66の分圧点は定電圧出力端子67へ接続されているのに対し、VC−TCXO88では、定電圧出力端子67は省略され、分圧器66の分圧点は、VC−TCXO88の内部配線により制御電圧入力端子22へ接続されている。変調信号生成回路91は、FM又はFSK等の変調信号(ベースバンド信号)を生成し、コンデンサ92を介して制御電圧入力端子22へ接続されている。コンデンサ92は、変調信号生成回路91からの直流分が制御電圧入力端子22へ送られるのを阻止する。
【0044】
VC−TCXO88は、そのメーカ出荷前の温度−発振周波数特性調整時に、変調信号生成回路91及びコンデンサ92から分離して、恒温槽30に収容される。その場合、電源入力端子19、温度補償回路調整端子21及び発振信号出力端子23には、それぞれ定電圧源31、ジグ32及び周波数カウンタ33が接続される。また、制御電圧入力端子22には何も接続されない。VC−TCXO88は、携帯型無線機45への実装時には、図8に図示するように、変調信号生成回路91及びコンデンサ92を接続される。携帯型無線機45のハウジング46内のVC−TCXO88では、制御電圧入力端子22へ印加される直流電圧は、ハウジング46内の温度変化に対して、恒温槽30内における温度−発振周波数特性調整時における対応温度変化のときと同じように、変化する。したがって、VC−TCXO88は、変調信号生成回路91からの変調信号を制御電圧入力端子22に重畳されて、温度からの影響を排除されて、該変調信号に精確に対応付けられた発振周波数を生成する。
【0045】
図9は電圧制御温度補償水晶発振器100のブロック図である。電圧制御温度補償水晶発振器100は、少なくとも制御電圧入力端子101、水晶発振回路102、発振信号出力端子103、定電圧回路104、温度補償回路105及び定電圧出力端子106を備える。電圧制御温度補償水晶発振器100の具体例は前述のVC−TCXO10(図1),60(図4),65(図5),72(図6),82(図7)である。
【0046】
水晶発振回路102は、該制御電圧入力端子101に印加された制御電圧に基づく周波数で発振する。発振信号出力端子103は、該水晶発振回路102の発振信号を外部へ導出する。定電圧回路104は、該水晶発振回路102へ供給する一定値の給電用電圧を生成する。温度補償回路105は、水晶発振回路102の出力について温度補償する。定電圧出力端子106は、定電圧回路104の給電用電圧に係る定電圧を外部へ導出する。
【0047】
制御電圧入力端子101、水晶発振回路102、発振信号出力端子103、定電圧回路104、温度補償回路105及び定電圧出力端子106は、例えばVC−TCXO10では、それぞれ制御電圧入力端子22、水晶発振回路14、発振信号出力端子23、定電圧回路11、温度補償回路12及び定電圧出力端子20に対応している。定電圧出力端子106において、定電圧回路104の給電用電圧に係る定電圧とは、定電圧回路104の給電用電圧自体も含むものとする。
【0048】
電圧制御温度補償水晶発振器100の温度−発振周波数特性調整時及び実機への電圧制御温度補償水晶発振器100の実装時には、制御電圧入力端子101に基準電圧を印加する必要がある。定電圧出力端子106が電圧制御温度補償水晶発振器100に装備される結果、定電圧回路104の給電用電圧に係る定電圧を、調整時及び実装時に共通に、該基準電圧として使用することができるので、実装時の温度変化に対する発振周波数のぶれを抑制して、発振周波数の精度を高めることができる。
【0049】
電圧制御温度補償水晶発振器100は、その一例において、分圧回路115を備える。分圧回路115は、定電圧回路104の給電用電圧の分圧を、定電圧回路104の給電用電圧に係る定電圧として生成する。分圧回路115の具体例は分圧器66(図5)である。分圧回路115により、定電圧回路104が生成する定電圧と、制御電圧入力端子101の基準電圧とが相違する場合にも、適切に対処することができる。
【0050】
定電圧出力端子106は、発振信号出力端子103が兼ねることができる。発振信号出力端子103を兼ねる定電圧出力端子106の具体例はVC−TCXO72(図6)の発振信号出力端子23である。また、温度補償回路調整端子116が定電圧出力端子106を兼ねてもよい。温度補償回路調整端子116は、温度補償回路105にその温度制御データを設定する設定信号を外部から供給するためのものである。発振信号出力端子103を兼ねる温度補償回路調整端子116の具体例はVC−TCXO82(図7)の温度補償回路調整端子21である。なお、電圧制御温度補償水晶発振器100は、定電圧出力端子106を兼ねた発振信号出力端子103と、定電圧出力端子106を兼ねた温度補償回路調整端子116との両方を装備してもよい。
【0051】
図10は電圧制御温度補償水晶発振器120のブロック図である。電圧制御温度補償水晶発振器120の素子の内、図9の電圧制御温度補償水晶発振器100の素子と同一のものについては、電圧制御温度補償水晶発振器100の素子に付した符号を付して、説明を省略して、相違点について述べる。水晶発振回路102は、制御電圧に基づく周波数で発振する。制御電圧供給回路121は、定電圧回路104の給電用電圧に係る定電圧を制御電圧として水晶発振回路102へ供給する。
【0052】
電圧制御温度補償水晶発振器120の具体例はVC−TCXO88(図8)である。電圧制御温度補償水晶発振器100(図9)では、定電圧出力端子106が必要となるが、電圧制御温度補償水晶発振器120では、定電圧出力端子106を省略することができる。また、電圧制御温度補償水晶発振器120に対して後述の温度−発振周波数特性調整方法130を実施する場合には、温度−発振周波数特性調整時や実装時に、電圧制御温度補償水晶発振器100において必要とされる制御電圧入力端子101−定電圧出力端子106間の接続回路を省略することができる。
【0053】
電圧制御温度補償水晶発振器120では、制御電圧供給回路121は、定電圧回路の給電用電圧の分圧を制御電圧として生成する分圧回路とすることができる。
【0054】
図11は温度−発振周波数特性調整方法130のフローチャートである。温度−発振周波数特性調整方法130は電圧制御温度補償水晶発振器100,120に適用される。
【0055】
S131では、その水晶発振回路102の入力側基準電圧が定電圧回路の生成電圧に係る電圧となるような接続を施して、恒温槽へ収容する。なお、該接続について、電圧制御温度補償水晶発振器100については、図2の接続線38のようなものであるが、電圧制御温度補償水晶発振器120については、その内部に接続がなされているので、外部における接続は不要である。
【0056】
S132では、恒温槽内の温度を所定範囲にわたり変化させる。S133では、水晶発振回路102の発振周波数が恒温槽内の各温度において公称値に維持されるように、電圧制御温度補償水晶発振器100,120内の発振周波数制御因子を設定する。
【0057】
電圧制御温度補償水晶発振器100の具体例のVC−TCXO10では、恒温槽30における温度−発振周波数特性調整時では、ジグ32から温度補償回路調整端子21を介して温度補償回路12へデータを送って、温度補償回路12の記憶装置における温度制御データを設定していたが、電圧制御温度補償水晶発振器100,120内の発振周波数制御因子は、温度補償回路105以外の素子値であってもよいとする。
【0058】
本明細書は様々な発明を開示している。それら発明には、本明細書における発明の最良の形態等において、独立の作用、効果を奏する1つ又は複数の素子を抽出したものや、1つ又は複数の素子を自明の範囲で変更したものや、1つ又は複数の素子の組合せを自明の範囲で発明の形態間で入れ換えたものを含む。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】VC−TCXOの構成図である。
【図2】VC−TCXOのメーカにおいて各VC−TCXOについて行う温度−発振周波数特性調整時の接続状況図である。
【図3】VC−TCXOが携帯型無線機に装備されたときの接続図である。
【図4】定電圧回路の生成電圧と制御電圧入力端子の基準電圧とが相違する場合に、VC−TCXOに分圧器を外付けすることより対処する回路図である。
【図5】定電圧回路の生成電圧と制御電圧入力端子の基準電圧とが相違する場合に、分圧器を内蔵することより対処するVC−TCXOの回路図である。
【図6】発振信号出力端子が定電圧回路の定電圧を導出する端子を兼ねるVC−TCXOの回路図である。
【図7】温度補償回路調整端子が定電圧回路の定電圧を導出する端子を兼ねるVC−TCXOの回路図である。
【0060】
【図8】FM等の信号発生に利用されているVC−TCXO及びその接続図を示す図である。
【図9】電圧制御温度補償水晶発振器のブロック図である。
【図10】別の電圧制御温度補償水晶発振器のブロック図である。
【図11】温度−発振周波数特性調整方法のフローチャートである。
【図12】従来のVC−TCXOの構成図である。
【図13】メーカ出荷前の従来のVC−TCXOの調整時の接続状況図である。
【図14】携帯型無線機における従来のVC−TCXOの接続状態を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
100:電圧制御温度補償水晶発振器、101:制御電圧入力端子、102:水晶発振回路、103:発振信号出力端子、104:定電圧回路、105:温度補償回路、106:定電圧出力端子、115:分圧回路、116:温度補償回路調整端子、120:電圧制御温度補償水晶発振器、121:制御電圧供給回路、130:温度−発振周波数特性調整方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御電圧入力端子、
該制御電圧入力端子に印加された制御電圧に基づく周波数で発振する水晶発振回路、
該水晶発振回路の発振信号を外部へ導出する発振信号出力端子、
該水晶発振回路へ供給する一定値の給電用電圧を生成する定電圧回路、
前記水晶発振回路の出力について温度補償する温度補償回路、及び
前記定電圧回路の給電用電圧に係る定電圧を外部へ導出する定電圧出力端子、
を備えることを特徴とする電圧制御温度補償水晶発振器。
【請求項2】
前記定電圧回路の給電用電圧の分圧を、前記定電圧回路の給電用電圧に係る定電圧として生成する分圧回路、
を備えることを特徴とする請求項1記載の電圧制御温度補償水晶発振器。
【請求項3】
前記発振信号出力端子が前記定電圧出力端子を兼ねていることを特徴とする請求項1又は2記載の電圧制御温度補償水晶発振器。
【請求項4】
前記温度補償回路にその温度制御データを設定する設定信号を外部から供給される温度補償回路調整端子が、前記定電圧出力端子を兼ねていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電圧制御温度補償水晶発振器。
【請求項5】
制御電圧に基づく周波数で発振する水晶発振回路、
該水晶発振回路の発振信号を外部へ導出する発振信号出力端子、
該水晶発振回路へ供給する一定値の給電用電圧を生成する定電圧回路、
前記水晶発振回路の出力について温度補償する温度補償回路、及び
前記定電圧回路の給電用電圧に係る定電圧を前記制御電圧として前記水晶発振回路へ供給する制御電圧供給回路、
を備えることを特徴とする電圧制御温度補償水晶発振器。
【請求項6】
前記制御電圧供給回路は、定電圧回路の給電用電圧の分圧を前記制御電圧として生成する分圧回路であることを特徴とする請求項5記載の電圧制御温度補償水晶発振器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の電圧制御温度補償水晶発振器を、その水晶発振回路の入力側基準電圧が前記定電圧回路の生成電圧に係る電圧となるような接続を施して、恒温槽へ収容するステップ、
前記恒温槽内の温度を所定範囲にわたり変化させるステップ、及び
前記水晶発振回路の発振周波数が前記恒温槽内の各温度において公称値に維持されるように、前記電圧制御温度補償水晶発振器内の発振周波数制御因子を設定するステップ、
を備えることを特徴とする温度−発振周波数特性調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−5182(P2009−5182A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165381(P2007−165381)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】