説明

電子キーシステム、および電子キーシステム用の車載装置

【課題】通信不良が発生した際に自動的にチャンネルを変更可能で、しかも、認証成立までのレスポンスを良好にし得る電子キーシステムの提供。
【解決手段】車載装置は、携帯機に応答要求を送信する際に応答用チャンネルを通知する。その際、携帯機が車室内にあると推定される場合は(S107:車室内)、LF帯のチャンネルを最初に通知し(S110,S115)、携帯機が車室外にあると推定される場合は(S107:車室外)、RF帯のチャンネルを最初に通知する(S112,S115)。そして、通知した応答用チャンネルで携帯機からの応答受信を試行し(S120)、受信失敗時には(S125:NO)、さらに他のチャンネルに変更し(S140)、応答要求の送信(S115)と応答の受信(S120)を再試行する。この通信により、応答の受信に成功すれば(S125:YES)、所定の機能動作を実行する(S130)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子キーシステム、および電子キーシステム用の車載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車関連技術の分野においては、車両に搭載される車載装置と、車両の利用者が所持する携帯機とで構成される電子キーシステムが実用化されている。この種の電子キーシステムは、車載装置と携帯機との間で無線通信による認証が成立すれば、機械式キーでの操作を行わなくても、ドアのロック/アンロックやエンジン始動等の制御を実行できる仕組みになっている。
【0003】
ところで、この種の電子キーシステムにおいて、車載装置と携帯機が通信時に利用するチャンネルが単一のチャンネルに固定されている場合、そのチャンネルと同じ周波数の妨害電波が到来すると、正常な通信ができなくなる等の問題を招く。
【0004】
このような問題に対し、下記特許文献1では、周波数が異なる複数のチャンネルをいずれかに切り替えて通信を行う技術が、既に提案されている。この特許文献1に記載の技術の場合、利用者がスイッチを操作して複数のチャンネルをいずれかに切り替えることで、通信時に使用するチャンネルを変更することができた。
【特許文献1】特開平4−315681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、利用者が妨害電波に起因する通信不良に気づかない限り、スイッチ操作によるチャンネル変更がなされない。そのため、かなりの頻度で通信不良が発生するような状況下でも、たまに通信に成功すれば、利用者によっては通信不良の発生に気づかず、チャンネル変更には至らないおそれがあった。また、利用者が任意にチャンネルを変更するだけでは、妨害電波による悪影響を受けやすいチャンネルへの変更を行ってしまうおそれもあった。
【0006】
また、上記のような手動設定ではなく、妨害電波に起因する通信不良が発生したことを検出して、自動的に別のチャンネルへの変更を行うことは可能である。
しかし、複数のチャンネルが使用できる場合、各チャンネルで使用する周波数帯が大きく異なっていると、妨害の受けやすさや通信エリアの広さは、チャンネルによって変わる可能性がある。
【0007】
そのため、通信に使用するチャンネルを無作為に変更するだけでは、最初に妨害を受けやすいチャンネルへの変更を行ってしまう可能性もあり、この場合、妨害を受けにくいチャンネルへの自動変更が完了するまでに時間を要し、認証成立までのレスポンスが悪くなってしまう、という問題を招く。
【0008】
また、携帯機が車両の近傍には存在しないにもかかわらず、車両近傍のみを通信エリアとするチャンネルへの変更を行ってしまう可能性もあり、この場合も、より通信エリアが広いチャンネルへの自動変更が完了するまでに時間を要し、認証成立までのレスポンスが悪くなってしまう、という問題を招く。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、通信不良が発生した際に自動的にチャンネルを変更可能で、しかも、認証成立までのレスポンスを良好にし得る電子キーシステムと、そのような電子キーシステム用の車載装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、本発明において採用した構成について説明する。
請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、車載装置は、携帯機が車室内にあると推定される場合には最初にLFチャンネルでの通信を試行する一方、携帯機が車室外にあると推定される場合には最初にRFチャンネルでの通信を試行する。
【0011】
車両には、一般に、様々なノイズ源(例えば、点火プラグ、各種モーター類、オルタネーター等)が存在する。そのため、こうしたノイズ源が稼働状態にある場合、RFチャンネルでの通信を妨害する可能性があるが、LFチャンネルは、RFチャンネルに比べ、妨害を受けにくい。
【0012】
したがって、携帯機が車室内にある場合には、最初にLFチャンネルでの通信を試行すれば、最初にRFチャンネルでの通信を試行するものよりも、妨害を受ける可能性が低くなり、認証成立までのレスポンスが良好なものとなる。
【0013】
一方、LFチャンネルは、通信エリアを広くすることが容易ではない。そのため、携帯機が車両から離れた位置にある場合、LFチャンネルでの通信ができない可能性があるが、RFチャンネルは、LFチャンネルに比べ、容易に通信エリアを広くすることができる。
【0014】
したがって、携帯機が車室外にある場合には、最初にRFチャンネルでの通信を試行すれば、最初にLFチャンネルでの通信を試行するものよりも、携帯機が通信エリア内に存在する可能性が高くなり、認証成立までのレスポンスが良好なものとなる。
【0015】
つまり、携帯機が車室内にあると推定されるか車室外にあると推定されるかに応じて、最初に試行するチャンネルをLFチャンネルまたはRFチャンネルのいずれかに変更することで、必ず最初はLFチャンネルから試行するものや、必ず最初はRFチャンネルから試行するものよりも、認証成立までのレスポンスを向上させることができる。
【0016】
ところで、この種の電子キーシステムにおいては、通常、車載装置は、通信エリアを車室内に限定して携帯機に応答を要求したり、通信エリアを車室外にまで拡大して携帯機に応答を要求したりすることができるので、それらの要求に対する応答があったか否かにより、携帯機が車室内にあるのか車室外にあるのかを判定できる。
【0017】
したがって、請求項2に記載の電子キーシステムのように、前回の通信時に携帯機が車室内にあると判定できた場合に、次回の通信時には携帯機が車室内にあると推定すれば、多くの場合、携帯機が車室内にあることを正確に推定できる。
【0018】
また、請求項3に記載の電子キーシステムのように、前回の通信時に携帯機が車室外にあると判定できた場合に、次回の通信時には携帯機が車室外にあると推定すれば、多くの場合、携帯機が車室外にあることを正確に推定できる。
【0019】
さらに、請求項4に記載の電子キーシステムのように、前回の通信時から経過した時間があらかじめ定められた時間を超えている場合には、前回の通信時に携帯機が車室内にあると判定したか否かを問わず、次回の通信時には携帯機が車室外にあると推定してもよい。
【0020】
このようにすれば、最後にLFチャンネルで通信を行った後、しばらく通信が行われなかったとしても、その場合、より通信エリアが広いRFチャンネルでの通信を最初に試行することになるので、最初の試行で通信ができる可能性を高めることができる。
【0021】
また、請求項5に記載の電子キーシステムのように、エンジンスイッチがオフにされた場合には、前回の通信時に携帯機が車室内にあると判定したか否かを問わず、次回の通信時には携帯機が車室外にあると推定するようにしてもよい。
【0022】
このようにすれば、エンジンスイッチがオフにされた後、次の通信が行われる前に携帯機が車室外へ持ち出されたとしても、その場合、より通信エリアが広いRFチャンネルでの通信を最初に試行することになるので、最初の試行で通信ができる可能性を高めることができる。
【0023】
また、請求項6に記載の電子キーシステムのように、車両のドアが開けられた場合には、前回の通信時に携帯機が車室内にあると判定したか否かを問わず、次回の通信時には携帯機が車室外にあると推定するようにしてもよい。
【0024】
このようにすれば、車両のドアが開けられた後、次の通信が行われる前に携帯機が車室外へ持ち出されたとしても、その場合、より通信エリアが広いRFチャンネルでの通信を最初に試行することになるので、最初の試行で通信ができる可能性を高めることができる。
【0025】
また、請求項7に記載の電子キーシステムのように、車両のドアのアンロックが行われた場合には、前回の通信時に携帯機が車室内にあると判定したか否かを問わず、次回の通信時には携帯機が車室外にあると推定するようにしてもよい。
【0026】
このようにすれば、車両のドアのアンロックが行われた後、次の通信が行われる前に携帯機が車室外へ持ち出されたとしても、その場合、より通信エリアが広いRFチャンネルでの通信を最初に試行することになるので、最初の試行で通信ができる可能性を高めることができる。
【0027】
なお、請求項8に記載の電子キーシステム用の車載装置によれば、この車載装置に対応する携帯機と組み合わせることにより、請求項1に記載の電子キーシステムを構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、本発明の実施形態について一例を挙げて説明する。
以下に説明する電子キーシステムは、車両の正規利用者が所持する特定の携帯機が車両周囲の無線通信エリア内に入ったときにドアのアンロック等の制御を実行する機能(いわゆるスマート機能)を備えたものである。なお、本実施形態において、この電子キーシステムは、携帯機でのボタン操作に応じてドアのロック/アンロック等の制御を実行する機能(いわゆるリモートキーレスエントリー機能)を兼ね備えている。
【0029】
図1は、電子キーシステムの構成を表すブロック図である。この電子キーシステムは、車両に搭載される車載装置1と、携帯機2とによって構成される。
これらの内、車載装置1は、制御部10、LF送信部11、LF受信部12、RF受信部13、エンジンスイッチ15、ドアスイッチ16などを備えている。
【0030】
制御部10は、車載装置1側全体の動作を制御するマイクロコンピュータである。
LF送信部11は、携帯機2に対して無線信号を送信する手段で、LF送信部11から送信される無線信号は、車室外ドア近傍、車室内、トランク内、車室外トランク近傍など、限られた通信エリア内に対してのみ到達するようになっている。
【0031】
LF受信部12は、携帯機2から送信されてくるLF帯の無線信号を受信する手段である。また、RF受信部13は、携帯機2から送信されてくるRF帯の無線信号を受信する手段である。このRF受信部13は、周波数が異なる3つのチャンネルRF1〜RF3をいずれかに切り替えて通信可能で、いずれのチャンネルに切り替えるかは、制御部10によって制御される構成となっている。
【0032】
エンジンスイッチ15は、エンジンを始動する際に利用者が操作するスイッチで、利用者がエンジンスイッチ15を操作したことが、エンジンスイッチ15からの信号によって検知された場合、制御部10はエンジン始動が許可される状態にあるか否かを判断する。そして、エンジン始動が許可される状態にあれば、制御部10からエンジン制御系へエンジン始動信号が伝達されるようになっている。
【0033】
ドアスイッチ16は、ドアを開く際に利用者が操作するドアハンドルに設けられたスイッチで、利用者がドアハンドルを操作したことが、ドアスイッチ16からの信号によって検知された場合、制御部10はドア解錠が許可される状態にあるか否かを判断する。そして、ドア解錠が許可される状態にあれば、制御部10からドアロック制御系へアンロック信号が伝達されるようになっている。
【0034】
また、携帯機2は、制御部21、LF受信部22、送信部23、操作部24などを備えている。
制御部21は、携帯機2側全体の動作を制御するマイクロコンピュータである。LF受信部22は、車載装置1から送信されてくる無線信号を受信する手段である。
【0035】
送信部23は、車載装置1に対して無線信号を送信する手段である。この送信部23は、送信周波数選択部23Aを備えていて、制御部21からの指令に応じて、送信の際に使用するチャンネルが車載装置1側と同一チャンネルとなるように、LF帯の周波数を使用するチャンネルLF、およびRF帯の周波数を使用するチャンネルRF1〜RF3の内、いずれかのチャンネルに切り替えるようになっている。
【0036】
操作部24は、リモートキーレスエントリー機能を利用するためのトリガーとなるスイッチを備えたもので、操作部24で所定の操作を行うと、車載装置1側においてドアのロック/アンロック制御が行われる仕組みになっている。
【0037】
[車載装置および携帯機が実行する処理]
次に、スマート機能利用時に車載装置1および携帯機2が実行する処理について説明する。図2は、車載装置1が実行する処理のフローチャート、図3は応答用チャンネルの設定テーブル、図4は携帯機が実行する処理のフローチャートである。
【0038】
車載装置1が図2に示す処理を開始すると、車載装置1は、所定の通信条件が成立したか否かを判断する(S105)。ここで、所定の通信条件が成立していなければ(S105:NO)、S105の処理を繰り返す一方、所定の通信条件が成立していれば(S105:YES)、S107の処理へと進む。
【0039】
このS105の処理において、所定の通信条件が成立する場合の具体例としては、例えば、ドアスイッチに対する操作が行われた、エンジンスイッチ操作が行われた、といった条件などを挙げることができる。ただし、これらの条件そのものは特に限定されるものではない。例えば、上記のように利用者が何らかの操作を行ったタイミング以外にも、定期的に行うべき通信タイミングに至った、といった条件が成立したときにS105の処理で肯定判断がなされてもよい。
【0040】
S107の処理へ進んだ場合、車載装置1は、車室内・車室外どちらに携帯機2があると推定されるかを判断する(S107)。本実施形態の場合、S107の処理において車室内に携帯機2があると推定されるのは、前回の通信時に携帯機2が車室内にあると判定できた場合で、且つ、前回の通信時から経過した時間があらかじめ定められた時間を超えていない場合である。
【0041】
また、S107の処理において車室外に携帯機2があると推定されるのは、(1)前回の通信時に携帯機2が車室外にあると判定できた場合、(2)前回の通信時に携帯機2との通信が成立しなかった場合、(3)前回の通信時から経過した時間があらかじめ定められた時間を超えている場合、これら(1)〜(3)の内、少なくとも1つに該当する場合である。
【0042】
ただし、車室内・車室外どちらに携帯機2があると推定されるかを判断する条件は、さらに他の条件を加味してもよい。具体例を挙げれば、(A)エンジンスイッチがオフにされた場合、(B)車両のドアが開けられた場合、(C)車両のドアのアンロックが行われた場合、これら(A)〜(C)の内、少なくとも1つに該当する場合には、利用者が車両の外へ出た可能性があるので、この場合は、前回の通信時に携帯機2が車室内にあると判定したか否かを問わず、次回の通信時には携帯機2が車室外にあると推定してもよい。
【0043】
さて、以上のような推定方法にて、携帯機2が車室内にあると推定された場合(S107:車室内)、変数AAに初期値「00」をセットする(S110)。また、携帯機2が車室外にあると推定された場合(S107:車室外)、変数AAに初期値「01」をセットする(S112)。変数AAにセットされる値は、後述する処理の中で、応答用チャンネルの設定テーブル(図3参照)から応答用チャンネルを選択する際に使用される。
【0044】
続いて、車載装置1は、LFで携帯機2へデータ送信を行う(S115)。S115の処理で、LF帯の電波を利用した信号伝送を行うのは、主に携帯機2の検出エリアを車両周辺に制限するためである。
【0045】
また、S115の処理で送信されるデータは、携帯機2に対して応答を要求する旨を通知するためのデータで、このデータ送信の際には、応答用チャンネルを指定するための情報を携帯機2へ通知する。より具体的には、車載装置1は、応答用チャンネル設定テーブル(図3参照)を参照し、変数AAに格納された値に対応付けられたチャンネルを、応答用チャンネルとして選択する。そして、この応答用チャンネルを示す情報を携帯機2へ通知する。
【0046】
なお、変数AAに初期値「00」がセットされた場合、最初にLF帯のチャンネル(LF)が応答用チャンネルとして選択されることになる。一方、変数AAに初期値「01」がセットされた場合、最初にRF帯のチャンネル(RF1)が応答用チャンネルとして選択されることになる。
【0047】
さて、応答用チャンネルを示す情報が通知された携帯機2は、図4に示すように、まず、送信部23で使用するチャンネルを、車載装置1から指令された周波数に変更する(S305)。車載装置1から指令された周波数は、S115の処理によって送信されてきたデータ中に含まれているので、そのデータに基づいてS305の処理では、送信部23が使用する周波数の変更が行われる。
【0048】
そして、送信部23から車載装置1への応答を送信し(S310)、携帯機2側の処理を終了する。S310の処理では、携帯機2が車両に対応したものであることを識別するための固有のIDが含まれる応答信号を発信する。
【0049】
以上説明したような処理が携帯機2側で実行されると、車載装置1側では、応答用チャンネルで携帯機2からの応答を受信する(S120)。このS120の処理によって受信されるのは、S310の処理によって携帯機2側から送信された応答である。
【0050】
ただし、S120の処理において、携帯機2からの応答は、正常に受信できる場合もあれば、周囲の環境によっては正常に受信できない場合もあり、例えば、応答と同じ周波数の妨害電波が到来するような環境では、応答を正常に受信できないことがある。また、予期しないデータを受信する可能性もある。
【0051】
そこで、S120の処理を終えたら、S125の処理により、受信した応答中に含まれるIDと車載装置2側で記憶している対照用IDとの照合を行い、両者が一致するか否かを判定する(S125)。
【0052】
ここで、ID照合結果が一致すれば(S125:YES)、所定の携帯機2から送信された応答を正常に受信できたものと考えられるので、この場合は、所定の機能動作(例えば、ドアロックの解除、エンジン始動等)を実行し(S130)、図2に示す処理を終了する。
【0053】
一方、S125の処理において、ID照合結果が一致しなければ(S125:NO)、妨害電波の影響で応答を正常に受信できなかった可能性があるので、周波数を変更して応答の受信を再試行する。
【0054】
具体的には、まず、変数AAに1を加算する(S140)。これにより、応答用チャンネル設定テーブル(図3参照)の中から選択するチャンネルが、次のチャンネルに更新されることになる。S140の処理では、変数AAの値は「00」→「01」→「10」→「11」の順に変化し、さらに1が加算された場合は「00」へ戻るように構成されている。
【0055】
したがって、S140の処理で更新された変数AAの格納値が、初期値(S110またはS112でセットされた値)とは異なる値になっていれば、まだすべての応答用チャンネルによる通信を試行していないことになる(S145:NO)。この場合、変数AAの値は、既に試行したチャンネルとは別のチャンネルに対応する値に更新されたことになるので、この場合はS115へ戻る。
【0056】
以上のようなS115からS120、S125、S140、S145を経てS115へ戻るループ処理は、ID照合が一致(S125:YES)となるか、または全チャンネルを試行してもID照合が不一致(S145:YES)となるまでは、繰り返される。
【0057】
一方、上記ループ処理中、S125の処理においてID照合結果が一致すれば(S125:YES)、所定の携帯機2から送信された応答を正常に受信できたものと考えられる。そこで、この場合は、所定の機能動作(例えば、ドアロックの解除、エンジン始動等)を実行する(S130)。また、全チャンネルを試行してもID照合が不一致となる場合は(S145:YES)、図2に示す処理を終了する。
【0058】
[実施形態の効果]
以上説明したように、上記電子キーシステムによれば、利用者がスイッチ操作によってチャンネルを手動設定するようなことをしなくても、自動的にチャンネルを変更することができる。
【0059】
しかも、上記電子キーシステムによれば、車載装置1は、携帯機2が車室内にあると推定される場合には最初にLFチャンネルでの通信を試行する一方、携帯機2が車室外にあると推定される場合には最初にRFチャンネルでの通信を試行する。
【0060】
したがって、車両に存在するノイズ源からの影響を受けやすい車室内に携帯機2が存在する場合には、妨害を受けにくいLFチャンネルでの通信を最初に試行することで、認証成立までのレスポンスを向上させることができる。また、車載装置1からの距離が遠くなる車室外に携帯機2が存在する場合には、通信エリアの広いRFチャンネルでの通信を最初に試行することで、認証成立までのレスポンスを向上させることができる。よって、必ず最初はLFチャンネルから試行するものや、必ず最初はRFチャンネルから試行するものよりも、認証成立までのレスポンスを良好なものとすることができる。
【0061】
[変形例等]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
【0062】
例えば、上記実施形態では、応答用チャンネルとして、LF帯のチャンネルを1つ、RF帯のチャンネルを3つ利用して、これら4つのチャンネルを順に切り替えて通信を行う例を示したが、チャンネル数は上記の例に限定されるものではない。具体的には、LF帯のチャンネルを2つ以上用意してもよいし、RF帯のチャンネルを1つか2つあるいは4つ以上用意してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態として説明した電子キーシステムの概略構成図。
【図2】スマート機能利用時に車載装置が実行する処理のフローチャート。
【図3】応答用チャンネルの設定テーブル。
【図4】スマート機能利用時に携帯機が実行する処理のフローチャート。
【符号の説明】
【0064】
1・・・車載装置、2・・・携帯機、10・・・制御部、11・・・LF送信部、12・・・LF受信部、13・・・RF受信部、15・・・エンジンスイッチ、16・・・ドアスイッチ、21・・・制御部、22・・・LF受信部、23・・・送信部、23A・・・送信周波数選択部、24・・・操作部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載装置と、利用者が携帯する携帯機とで構成され、前記車載装置と前記携帯機との間で無線通信を行うことにより、前記車載装置に各種制御を実行させるために必要となる認証を行う電子キーシステムであって、
前記車載装置が前記携帯機に応答を要求した場合に、当該応答要求に応じた前記携帯機が前記車載装置へ応答を返すように構成されていて、
前記応答の伝送時に使用されるチャンネルについては、LF帯の周波数を利用する少なくとも1つのLFチャンネルおよびRF帯の周波数を利用する少なくとも1つのRFチャンネルを含む複数のチャンネルの中からいずれかを選択して使用可能で、いずれのチャンネルを使用するかは、前記車載装置側で選択されて、当該選択されたチャンネルを示す情報が前記応答要求の伝送時に前記車載装置から前記携帯機へと伝達されることにより、前記車載装置および前記携帯機が同一チャンネルを使用して前記応答の送受信を実行可能とされ、
しかも、前記車載装置は、あらかじめ定められた条件に基づいて前記携帯機が車室内にあるか車室外にあるかを推定し、車室内にあると推定される場合には最初に前記LFチャンネルを選択する一方、車室外にあると推定される場合には最初に前記RFチャンネルを選択して、前記応答要求の送信および前記応答の受信を試行し、当該試行の結果、前記応答の受信に失敗した場合には、受信失敗時に選択したチャンネル以外のチャンネルを前記複数のチャンネルの中から選択し直して、前記応答要求の送信および前記応答の受信を再試行するように構成されている
ことを特徴とする電子キーシステム。
【請求項2】
前記車載装置は、前回の通信時に前記携帯機が車室内にあると判定できた場合に、次回の通信時には前記携帯機が車室内にあると推定する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子キーシステム。
【請求項3】
前記車載装置は、前回の通信時に前記携帯機が車室外にあると判定できた場合に、次回の通信時には前記携帯機が車室外にあると推定する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子キーシステム。
【請求項4】
前記車載装置は、前回の通信時から経過した時間があらかじめ定められた時間を超えている場合には、前回の通信時に前記携帯機が車室内にあると判定したか否かを問わず、次回の通信時には前記携帯機が車室外にあると推定する
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電子キーシステム。
【請求項5】
前記車載装置は、エンジンスイッチがオフにされた場合には、前回の通信時に前記携帯機が車室内にあると判定したか否かを問わず、次回の通信時には前記携帯機が車室外にあると推定する
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の電子キーシステム。
【請求項6】
前記車載装置は、車両のドアが開けられた場合には、前回の通信時に前記携帯機が車室内にあると判定したか否かを問わず、次回の通信時には前記携帯機が車室外にあると推定する
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の電子キーシステム。
【請求項7】
前記車載装置は、車両のドアのアンロックが行われた場合には、前回の通信時に前記携帯機が車室内にあると判定したか否かを問わず、次回の通信時には前記携帯機が車室外にあると推定する
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の電子キーシステム。
【請求項8】
請求項1に記載の電子キーシステムを構成可能な車載装置であって、
前記携帯機からの応答の伝送時に使用されるチャンネルについて、LF帯の周波数を利用する少なくとも1つのLFチャンネルおよびRF帯の周波数を利用する少なくとも1つのRFチャンネルを含む複数のチャンネルの中からいずれかを選択して使用可能で、いずれのチャンネルを使用するかを選択して、当該選択したチャンネルを示す情報を前記応答要求の伝送時に前記携帯機へと伝達することにより、前記携帯機と同一チャンネルを使用して前記応答の受信を実行可能とされ、
しかも、あらかじめ定められた条件に基づいて前記携帯機が車室内にあるか車室外にあるかを推定し、車室内にあると推定される場合には最初に前記LFチャンネルを選択する一方、車室外にあると推定される場合には最初に前記RFチャンネルを選択して、前記応答要求の送信および前記応答の受信を試行し、当該試行の結果、前記応答の受信に失敗した場合には、受信失敗時に選択したチャンネル以外のチャンネルを前記複数のチャンネルの中から選択し直して、前記応答要求の送信および前記応答の受信を再試行するように構成されている
ことを特徴とする電子キーシステム用の車載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−202228(P2008−202228A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36387(P2007−36387)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】