説明

電子キーシステム

【課題】電子キーシステムにおいて、電子キーが車室外に持ち出されたときには確実に施錠を行うことにある。
【解決手段】車室内に送信される要求信号が車室外へ漏れることで、車室外に電子キーがあるにも関わらず車室内照合が成立した場合であっても、電子キー10が車室外に持ち出された旨判断された場合には車両ドアの施錠が実行される。これにより、ユーザが電子キー10を携帯してロックスイッチ32を操作しているにも関わらず施錠が実行されない事態を抑制することができ、利便性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両には、車両及び電子キー間での無線通信に基づき車両ドアの施解錠及びエンジン始動を許可する電子キーシステムが搭載されている。電子キーシステムにおいては、車両は車室内外に電子キーの応答を要求する要求信号を送信する。電子キーは要求信号を受信すると、自身のIDコードを含む応答信号を車両に送信する。車両は、応答信号に含まれるIDコードと、自身に予め記憶されるIDコードとの照合を実行する。車両は、車室外に存在する電子キーからの応答信号に含まれるIDコードの照合(車室外照合)が成立すると施解錠許可状態となる。この状態において、ユーザが車両ドアの車外側のドアハンドルに設けられるロックスイッチが操作されると車両ドアの施解錠状態が切り替えられる。
【0003】
また、車両は、車室内に存在する電子キーからの応答信号に含まれるIDコードの照合(車室内照合)が成立すると、エンジン始動許可状態となる。この状態において、運転席近傍に設けられるエンジンスイッチが押し操作されると、エンジンが始動される。
【0004】
上記電子キーシステムにおいては、電子キーを助手席やダッシュボード等に置いた状態において、エンジンの始動が可能である。従って、電子キーを車室内に置き忘れた状態で、ユーザは降車してロックスイッチの操作を通じて車両ドアの施錠を試みることが考えられる。このような場合に、電子キーが車両ドアの施錠により車室内に閉じ込められる、いわゆるインロックを防止する構成が知られている。例えば特許文献1においては、ロックスイッチの操作時に車室内に要求信号が送信されて、車室内における電子キーからの応答信号により車室内照合が成立するか否かが判断される。車室内照合が成立する旨判断された場合には、車室内に電子キーを置き忘れているとして車両ドアの施錠を実行しない。これにより、インロックを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−194799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、要求信号は車室内の大きさに合わせて送信されるようにその信号強度等が設定されている。しかし、要求信号は空気中を伝播する電磁波である。この電磁波は、車両ドアを構成する鉄材を通じて車室外に漏れにくいものの、同じく車両ドアを構成するガラス材からなるウインドウを通じて車室外に漏れる場合がある。この場合、ユーザが電子キーを携帯した状態で車室外からロックスイッチを操作しているにも関わらず、その電子キーが車外に漏れた要求信号を受ける。従って、電子キーが車室外に存在するにも関わらず車室内照合が成立して車両ドアの施錠が実行できないおそれがあった。
【0007】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電子キーが車室外に持ち出されたときには確実に施錠が実行できる電子キーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、電子キーは車両に設けられるアンテナを通じて送信される要求信号を受信したとき応答信号を送信し、車載装置は、車室外から施錠が試みられた旨認識した場合において、前記アンテナを介して送信した前記要求信号に対する前記応答信号の有無に基づき前記電子キーが車室内に存在するか否かを判断し、前記電子キーが車室内に存在する旨判断したとき車両ドアの施錠を規制する電子キーシステムにおいて、前記車載装置及び前記電子キー間で送受信される前記応答信号又は前記要求信号の信号強度を検出する信号強度検出回路と、前記信号強度検出回路を通じて検出される乗車時から施錠が試みられたときまでの前記応答信号又は前記要求信号の信号強度の変化に基づき前記電子キーが車室外に持ち出されたか否かを判断する判断部と、を備え、前記車載装置は、前記電子キーが車室内に存在する旨判断した場合であっても、前記判断部を通じて前記電子キーが車室外に持ち出された旨判断したとき前記電子キーは車室外において前記アンテナからの前記要求信号を受信しているとして、車両ドアの施錠を実行することをその要旨としている。
【0009】
要求信号は、予め設定されるエリア、例えば車室内のみに送信されることが望ましいものの実際には車室外に漏れることがある。この状態において、ユーザにより車室外から施錠が試みられた場合、そのユーザが携帯する電子キーはアンテナからの要求信号に応じて応答信号を送信する。このため、電子キーは実際には車室外に存在するにも関わらず、車室内に存在する旨判断されて施錠が規制されるおそれがあった。
【0010】
上記構成によれば、上記のように誤って電子キーが車室内に存在する旨判断された場合であっても、判断部を通じて電子キーが車室外に持ち出された旨判断されたときには車両ドアの施錠が実行される。これにより、電子キーが車室外に持ち出されたときには確実に施錠を行うことができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、前記車載装置は、前記アンテナを通じて車室内の形状に応じて形成される通信エリアに要求信号を送信するとともに、前記判断部は、前記信号強度検出回路を通じて検出される施錠が試みられたときの前記応答信号又は前記要求信号の信号強度に基づき前記電子キーが前記通信エリアにおける外周部分である外周エリアに存在する旨判断したとき、前記電子キーが車室外に持ち出されたか否かの判断を行うことをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、電子キーが外周エリアに存在する旨判断されたとき電子キーが車室外に持ち出されたか否かの判断が行われる。ここで、通信エリアの外周エリアは車室外に形成される可能性が高い。これにより、電子キーが車室外に持ち出されたか否かの判断を電子キーが車室外に存在する可能性が高いときに限って行うことができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電子キーシステムにおいて、前記判断部は、前記信号強度検出回路を通じて乗車時と施錠が試みられたときとの前記応答信号又は前記要求信号の信号強度を認識するとともに、これら認識された信号強度の差がしきい値以上となったとき前記電子キーが車室外に持ち出された旨判断することをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、乗車時と施錠が試みられたときとの両タイミングにおける応答信号又は要求信号の信号強度のみから電子キーが車室外に持ち出されたか否かの判断が行われる。これにより、電子キーが車室外に持ち出されたか否かの判断がより容易となる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電子キーシステムにおいて、
前記判断部は、乗車時から施錠が試みられたときまでの前記応答信号又は前記要求信号の信号強度の変化パターンを記憶するとともに、前記変化パターンに基づき前記電子キーが車室外に持ち出されたか否かを判断することをその要旨としている。
【0016】
同構成によれば、乗車時から施錠が試みられたときまでの応答信号又は要求信号の信号強度の変化パターンに基づき電子キーが車室外に持ち出されたか否かが判断される。よって、乗車時から施錠が試みられたときまでの電子キーの移動を総合的に考慮して電子キーが車室外に持ち出されたか否かの判断が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電子キーシステムにおいて、電子キーが車室外に持ち出されたときには確実に施錠が実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】電子キーシステムの構成図。
【図2】通信エリアを示した車両の上面図。
【図3】車室内照合のタイミング及びRSSI等を示すタイムチャート。
【図4】電子キー及び車内送信部間の距離とRSSIとの関係を示すグラフ。
【図5】車載制御部の動作処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明にかかる電子キーシステムについて図1〜図5を参照して説明する。
図1に示されるように、電子キーシステム1は、ユーザによって所持される電子キー10と、車両2に設けられる車載装置20とを備えている。この電子キーシステム1においては、電子キー10と車載装置20との間で自動的に相互通信が行われ、その相互通信が車外及び車内にて成立したことを条件として車両ドアの施解錠及びエンジンの始動が許可される。以下、電子キー10及び車載装置20の構成について説明する。
【0020】
<電子キー10>
電子キー10は、電子キー制御部11と、LF受信部12と、UHF送信部13とを備えている。
【0021】
電子キー制御部11は、コンピュータユニットによって構成されるとともに、不揮発性のメモリ11aを備える。このメモリ11aには電子キー10に固有のIDコードが記憶されている。
【0022】
LF受信部12は、その受信アンテナ12aを通じて車載装置20から送信されるLF(Low Frequency)帯の無線信号である要求信号を受信すると、同要求信号をパルス信号に復調し、それを電子キー制御部11へ出力する。電子キー制御部11は、復調された要求信号を認識すると、メモリ11aに記憶されたIDコードを含む応答信号を生成し、それをUHF送信部13へ出力する。UHF送信部13は、応答信号を変調し、それを自身の送信アンテナ13aを介してUHF(Ultra High Frequency)帯の無線信号として送信する。
【0023】
また、LF受信部12にはRSSI検出回路16が内蔵されている。RSSI検出回路16は要求信号の受信信号強度RSSI(Receive Signal Strength Indication)を検出して、その検出結果を電子キー制御部11へ出力する。電子キー制御部11は、RSSI検出回路16の検出結果(要求信号のRSSI)を含むRSSI情報信号を生成し、それをUHF送信部13へ出力する。UHF送信部13は、RSSI情報信号を変調し、それを自身の送信アンテナ13aを介してUHF帯の無線信号として送信する。本例では、RSSI情報信号は要求信号の受信毎に送信される。
【0024】
<車載装置>
図1に示すように、車載装置20は、車載制御部21と、車外送信部22と、車内送信部23と、車載受信部24とを備えている。また、車載制御部21には、ロックスイッチ32と、エンジンスイッチ33と、ドアロック装置34と、エンジン装置35と、車速センサ36と、カーテシスイッチ37と、ドアハンドルセンサ38とが電気的に接続されている。
【0025】
図2に示すように、車内送信部23は車室内の中央に設置されている。同じく、車載受信部24は車室内の中央に設けられる。
車外送信部22は、図2の右上に拡大して示すように、各車両ドアのアウトサイドドアハンドル4に内蔵されている。また、ドアハンドルセンサ38は、アウトサイドドアハンドル4の表面に設けられる。ドアハンドルセンサ38は、ユーザのアウトサイドドアハンドル4への接触を検出して、その検出結果を車載制御部21に出力する。
【0026】
ドアロック装置34は、車両ドアが閉じた状態において車両ドアを自動的に施解錠する。カーテシスイッチ37は、車両ドアの開閉状態を検出し、その検出結果を車載制御部21に出力する。
【0027】
図1に示すように、車載制御部21はコンピュータユニットによって構成されるとともに、不揮発性のメモリ21aを備える。このメモリ21aには電子キー10のメモリ11aに記憶されるIDコードと同一のIDコードが記憶されている。
【0028】
車速センサ36は、車両の速度を検出するとともに、その検出結果を車載制御部21に出力する。車載制御部21は、車両の速度が一定速度以下となったときから降車したユーザによりロックスイッチ32が操作されるまでの期間において、一定周期毎に要求信号を生成し、それを車内送信部23に出力する。
【0029】
車内送信部23は、車載制御部21から要求信号が入力されると、その要求信号を変調して、それを自身の車内送信アンテナ23aを介してLF帯の無線信号として車室内に送信する。この要求信号は、図2に示すように、車内送信部23を中心とした車室内の大きさに応じた形状の車内通信エリア31に送信される。ここで、上記背景技術において説明したように要求信号は車室外に漏れることがあるため、車内通信エリア31を完全に車室内の形状に応じて形成することは困難である。このため、車内通信エリア31の外周部分である外周エリア31aの一部は車室外にはみ出している。
【0030】
車外送信部22は、車載制御部21から要求信号が入力されると、その要求信号を変調して、それを自身の車外送信アンテナ22aを介してLF帯の無線信号として車室外に送信する。この要求信号は、図2に示すように、車外送信部22を中心とした底辺が車両側方に沿う半円状の車外通信エリア30に送信される。
【0031】
両通信エリア30,31に送信される要求信号に対して電子キー10から応答信号及びRSSI情報信号が送信される。
車載受信部24は、その受信アンテナ24aを介して電子キー10からのRSSI情報信号を受信する。そして、車載受信部24は、RSSI情報信号をパルス信号に復調し、それを車載制御部21へ出力する。
【0032】
車載制御部21は、図3に示すように、車速センサ36を通じて車速が一定速度以下となった旨認識したときから降車したユーザによりロックスイッチ32が操作されるまでの期間に受信したRSSI情報信号に含まれる要求信号のRSSIを自身のメモリ21aに記憶する。そして、車載制御部21は、上記各RSSIに基づき、電子キー10が車室内に存在するか否かを判断する。この判断方法については後で詳述する。
【0033】
車載受信部24は、その受信アンテナ24aを介して電子キー10からの応答信号を受信する。そして、車載受信部24は、応答信号をパルス信号に復調し、それを車載制御部21へ出力する。
【0034】
車載制御部21は、車載受信部24からの応答信号を認識すると、それに含まれるIDコードとメモリ21aに記憶されるIDコードとの照合を行う。ここで、車載制御部21は、応答信号が車外通信エリア30及び車内通信エリア31の何れに送信した要求信号に応答したものであるかに基づき、電子キー10が車室内及び車室外の何れに存在するかを認識できる。車室内に存在する電子キー10からの応答信号についてのIDコードの照合を車室内照合といい、車室外に存在する電子キー10からの応答信号についてのIDコードの照合を車室外照合という。
【0035】
エンジン停止状態において、車載制御部21は車室内照合が成立した旨判断するとエンジン始動許可状態となる。この状態において、車載制御部21はエンジンスイッチ33が押し操作された旨認識すると、エンジン装置35を通じてエンジンを始動する。
【0036】
また、車載制御部21は、ユーザが降車した後にロックスイッチ32が操作された旨認識したとき車室内照合及び車室外照合を順に行う。ここで、車載制御部21は、カーテシスイッチ37を通じて車両ドアが開かれた後に閉じられた旨認識したとき、ユーザが降車した旨判断する。車載制御部21は、上記両照合を行った結果、車室内照合が成立せずに車室外照合が成立したとき電子キー10は車室外に存在するとして車両ドアを施錠する。また、車載制御部21は、上記両照合を行った結果、車室内照合が成立して車室外照合が成立しなかったとき、電子キー10は車室内に存在するとして車両ドアを施錠しない。これにより、いわゆるインロックが防止される。さらに、車載制御部21は、上記両照合を行った結果、上記両照合が成立したとき電子キー10が外周エリア31aに存在するか否かを判断する。
【0037】
以下、電子キー10が外周エリア31aに存在するか否かの判断方法について説明する。図4に示すように、車内送信部23及び電子キー10間の距離が大きくなるにつれて電子キー10が受信する要求信号のRSSIは小さくなる。電子キー10は、第1のしきい値Th1以上のRSSIにて要求信号を受けたとき、その信号を正常に認識して応答信号を送信する。従って、第1のしきい値Th1により車内通信エリア31の大きさは設定される。第2のしきい値Th2は、外周エリア31aにおける最も車内送信部23側の位置において電子キー10が受信する要求信号のRSSIに基づき設定される。すなわち、電子キー10が外周エリア31aに存在するとき、それが受信する要求信号のRSSIは第1のしきい値Th1以上であって第2のしきい値Th2未満の範囲となる。このため、車載制御部21は、RSSI情報信号に基づく要求信号のRSSIが第1のしきい値Th1以上であって第2のしきい値Th2未満の範囲にあるとき、電子キー10が外周エリア31aに存在する旨判断する。
【0038】
そして、車載制御部21は、電子キー10が外周エリア31aに存在する旨判断したとき、メモリ21aに記憶される各RSSIに基づき電子キー10が車室内から車室外に持ち出されたか否かを判断する。
【0039】
具体的には、上述のように、車内通信エリア31において電子キー10が車内送信部23から離れるにつれて検出されるRSSIは小さくなる。よって、電子キー10が車室内から車室外に持ち出されて、ロックスイッチ32が操作されたときのRSSIは、メモリ21aに記憶される乗車時(正確には車速が一定速度以下となったとき)のRSSIよりも小さい。これらRSSIの差を基準として第3のしきい値Th3が設定されている。車載制御部21は、メモリ21aに記憶されるRSSIのうち、最大のRSSIから最小のRSSIを差し引いた値Δrが第3のしきい値Th3以上のとき、電子キー10が車室内から車室外に持ち出されたと判断して車両ドアを施錠する。このとき、電子キー10は、図2の右上の円中における位置P1で示すように、車室外における外周エリア31aに存在していると想定される。なお、図3に示された例では、最大のRSSIは車速が一定速度以下となったときであって、最小のRSSIはロックスイッチ32が操作されたときである。
【0040】
一方、車載制御部21は、メモリ21aに記憶されるRSSIのうち、最大のRSSIから最小のRSSIを差し引いた値Δrが第3のしきい値Th3未満のとき、電子キー10が車室内から車室外に持ち出されていないとして車両ドアを施錠しない。このとき、電子キー10は、図2の位置P2で示すように、車室内における外周エリア31aに存在していると想定される。
【0041】
車両ドアが施錠状態にあるとき、車外通信エリア30に要求信号が一定周期毎に送信される。このとき、車載制御部21は、電子キー10が車外通信エリア30に進入することで車室外照合が成立した旨判断すると施解錠許可状態となる。この状態において、車載制御部21はドアハンドルセンサ38を通じてドアハンドル4に触れた旨認識すると、ドアロック装置34を介して車両ドアを解錠する。
【0042】
上記構成によれば、電子キー10が車室外における外周エリア31aに存在して車室内照合が成立した場合であっても、電子キー10が車室外に持ち出された旨判断されて正常に施錠が実行される。
【0043】
次に、車載制御部21が実行する車両ドアの施錠に係る処理手順について図5のフローチャートに従って説明する。このフローチャートは、車両が一定速度を超えて走行したときに開始される。
【0044】
まず、車速が一定速度以下となるのが待たれる(S101でNO)。そして、車速が一定速度以下となったとき(S101でYES)、車室内照合が行われる(S102)。このとき、電子キー10からのRSSI情報信号に基づき要求信号のRSSIがメモリ21aに記憶される(S103)。次に、車両ドアの開閉後のロックスイッチ32の操作が待たれる(S104でNO)。車両ドアの開閉後のロックスイッチ32の操作があるまで、車室内照合(S102)及びRSSIの記憶(S103)が繰り返される。車両ドアの開閉後のロックスイッチ32の操作が認識されると(S104でYES)、車室内照合が成立するか否かが判断される(S105)。車室内照合が成立しない旨判断されて(S105でNO)、次に車室外照合が成立する旨判断されると(S106でYES)、電子キー10が車室外に存在すると判断される(S107)。この場合、ドアロック装置34を通じて車両ドアの施錠が実行される(S108)。車室内及び車室外照合が成立しない旨判断された場合(S105及びS106でNO)、電子キー10が車室内外に存在しないとして施錠が実行されることなく当該フローチャートが終了される。
【0045】
一方、車室内照合が成立する旨判断された場合(S105でYES)、電子キー10からのRSSI情報信号に基づき要求信号のRSSIがメモリ21aに記憶される(S109)。そして、車室外照合が成立するか否かが判断される(S110)。この車室外照合が成立しない旨判断されたとき(S110でNO)、電子キー10が車室内に存在している旨判断される(S111)。この場合、電子キー10が車室内に置き忘れられているとして、施錠が実行されることなく当該フローチャートが終了される。
【0046】
車室外照合が成立する旨判断されると(S110でYES)、電子キー10が外周エリア31aに存在するか否かが判断される(S112)。電子キー10が外周エリア31aに存在しない旨判断された場合(S112でNO)、電子キー10が車室内に存在している旨判断される(S111)。この場合、電子キー10が車室内に置き忘れられているとして、施錠が実行されることなく当該フローチャートが終了される。
【0047】
電子キー10が外周エリア31aに存在する旨判断された場合(S112でYES)、メモリ21aに記憶される複数のRSSIに基づき電子キー10が車室外に持ち出されたか否かが判断される(S113)。そして、電子キー10が車室外に持ち出された旨判断されると(S113でYES)、ステップS105において車室内照合が成立した場合であっても、ドアロック装置34を通じて車両ドアの施錠が実行される(S108)。これにて、当該フローチャートが終了される。
【0048】
電子キー10が車室外に持ち出されていない旨判断されると(S113でNO)、電子キー10が車室内に存在している旨判断される(S111)。この場合、車両ドアの施錠が実行されることなく当該フローチャートが終了される。
【0049】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)車室内に送信される要求信号が車室外へ漏れることで、車室外に電子キーがあるにも関わらず車室内照合が成立した場合(S105でYES)であっても、電子キー10が車室外に持ち出された旨判断された場合(S113でYES)には車両ドアの施錠が実行される。これにより、ユーザが電子キー10を携帯してロックスイッチ32を操作しているにも関わらず施錠が実行されない事態を抑制することができ、利便性を向上させることができる。
【0050】
(2)電子キー10が外周エリア31aに存在する旨判断されたとき(S112でYES)のみ電子キー10が車室外に持ち出されたか否かの判断(S113)が行われる。ここで、車内通信エリア31の外周部分である外周エリア31aは車室外にはみ出す可能性が高い。従って、電子キー10が外周エリア31aに存在する旨判断される場合には、電子キー10が車室外に存在する可能性が高い。このときに限って電子キー10が車室外に持ち出されたか否かの判断が行われることにより、その判断の回数を低減することができる。
【0051】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態においては、車両ドアの開閉後にロックスイッチ32が操作されると、車室内照合の後に車室外照合が行われていた。しかし、これら照合の順番は逆であってもよい。
【0052】
・上記実施形態においては、車両の速度が一定速度以下となったときから降車したユーザによりロックスイッチ32が操作されたときまでの期間において、要求信号の送信を通じて一定周期毎に車室内照合が行われていた。しかし、車室内照合のタイミングはこれに限らない。例えば、車両の速度が一定速度以下となったときと、降車したユーザによりロックスイッチ32が操作されたときにのみ車室内照合を行ってもよい。これにより、車室内照合の回数を減らせるため、それに係る処理を省くことができる。
【0053】
また、車室内照合が行われる周期は一定でなくてもよく、例えば、イグニッションスイッチがオフとされた直後だけ上記周期が短くなってもよい。これにより、イグニッションスイッチのオフ後におけるユーザの降車に伴うRSSIの変化を検出し易くなる。
【0054】
・上記実施形態においては、要求信号のRSSIが検出されていた。しかし、応答信号のRSSIが検出されて、その検出結果に基づき電子キー10が外周エリア31aに存在するか否か(S112)及び電子キー10が車室外に持ち出されたか否か(S113)の判断を行ってもよい。この場合、RSSI検出回路16は、車載受信部24に設けられる。応答信号のRSSIにおいても、図4と同様に、車載受信部24及び電子キー10間の距離に応じてRSSIが変化する。よって、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。さらに、要求信号及び応答信号の双方のRSSIに基づきステップS112,S113の判断がされてもよい。この場合、判断の精度は向上する。
【0055】
・上記実施形態においては、車載制御部21は判断部として電子キー10が外周エリア31aに存在するか否か(S112)及び電子キー10が車室外に持ち出されたか否か(S113)等の判断を行っていた。しかし、これらの判断が電子キー10の電子キー制御部11にて行われてもよい。この場合、車載制御部21は、車室内照合の成立(S102,S105)、ドア開閉後のロックスイッチ32の操作の有無(S104)を、無線信号を通じて電子キー10に通知する。電子キー制御部11は判断部として、前記無線信号を通じて車室内照合が成立した旨認識したとき、自身のメモリ11aに要求信号のRSSIを記憶していく。そして、上記ステップS112,S113の判断を行うとともに、その判断結果を無線信号に含ませて車載装置20に送信する。車載装置20は、この無線信号に含まれる判断結果に基づき、電子キー10の位置について車室内外の判断(S112,S113)を行う。ここで、上記判断結果を含む無線信号は、RSSI情報信号に比べて情報量が少ない。また、この無線信号は、要求信号の受信毎に送信されるRSSI情報信号に比べて送信回数が少なくて済む。従って、本構成によれば、電子キー10の信号送信に係る処理負担を低減することができる。
【0056】
・上記実施形態においては、車載制御部21は、メモリ21aに記憶されるRSSIのうち、最大のRSSIから最小のRSSIを差し引いた値Δrと、第3のしきい値Th3との比較に基づき電子キー10が車室内から車室外に持ち出されたか否かの判断が行われていた。しかし、車載制御部21は、車速が一定速度以下となったときのRSSI(第1のRSSI)、及びロックスイッチ32が操作されたときのRSSI(第2のRSSI)のみをメモリ21aに記憶してもよい。この場合、車載制御部21は、「第1のRSSI−第2のRSSI」が第3のしきい値Th3以上となったとき電子キー10が車室内から車室外に持ち出された旨判断する。本構成によれば記憶するRSSIが2つで済むとともに、複数のRSSIのうち最大及び最小のRSSIを選択する処理を省略できる。
【0057】
・さらに、車載制御部21は、車速が一定速度以下となったときからロックスイッチ32が操作されたときまでのRSSIの変化パターンを認識し、その変化パターンに基づき電子キー10が車室内から車室外に持ち出されたか否かの判断を行ってもよい。この変化パターンは、模式的には図3におけるRSSIの変化を示すグラフのようになる。例えば、車載制御部21は、微分を通じて変化パターンにおけるサンプリング周期毎の傾きを算出し、その傾きの絶対値が一定値以上となる場合に車室内から車室外に持ち出された旨の判断を行う。
【0058】
ここで、車速が一定速度以下となったときからロックスイッチ32が操作されたときまでの一定期間において電子キー10の移動量が大きくても、車速が一定速度以下となったときの電子キー10の位置と、ロックスイッチ32が操作されたときの電子キー10の位置とが近い場合には上記値Δrが第3のしきい値Th3未満となる。この点、上記変化パターンに基づき判断することで、上記一定期間における電子キー10の総合的な移動態様が加味される。
【0059】
・上記実施形態においては、車両ドアの開閉後にロックスイッチ32が操作されると(S104)、施錠が試みられているとして車室内照合が行われていた(S105)。しかし、上記車両ドアの開閉後という条件を省略してもよい。また、車両ドアが閉じられたときに、以後施錠が試みられるとしてステップS105における車室内照合が実行されてもよい。
【0060】
・また、上記実施形態においては、車速が一定速度以下となったとき(S101でYES)、車室内照合が開始されていた(S102)。しかし、乗車時であれば、車速が一定速度以下となったときに限らず、例えばイグニッションスイッチがオフとされたときやシフトレバーがパーキング位置とされたときであってもよい。
【0061】
・上記実施形態においては、車内送信部23は車室内の中央に1つ設けられていたが、その数や位置はこれに限定されない。車内送信部23が複数設けられる場合にはそれぞれからの要求信号のRSSIを記憶させてもよい。
【0062】
・上記実施形態におけるステップS110,S106の車室外照合を省略してもよい。この場合において、車室内照合が成立すると(S105でYES)、RSSIが記憶された後に(S109)、電子キー10が外周エリア31aに存在するか否かの判断が行われる(S112)。また、車室内照合が成立しない場合には(S105でNO)、電子キー10が車室外に存在する旨判断される(S107)。
【0063】
・上記実施形態においては、電子キー10が外周エリア31aに存在するか否か(S112)及び電子キー10が車室外に持ち出されたか否か(S113)の判断が行われていた。しかし、上記ステップS112の判断を省略してもよい。この場合であっても、上記ステップS113を通じて電子キー10が車室外に持ち出された旨判断された場合には正常に施錠が実行される。
【0064】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
(イ)請求項1〜3の何れか一項に記載の電子キーシステムにおいて、車両ドアの車室外側に設けられるとともに、車両ドアの施錠が規制されていない状態において操作されると車両ドアの施錠が実行されるロックスイッチを備え、前記施錠が試みられたときとは、前記ロックスイッチが操作されたときであって、前記乗車時とは車速が一定速度以下となったときであって、前記車載装置は、車速が一定速度以下となったとき、及び前記ロックスイッチが操作されたとき前記アンテナを通じて要求信号を送信する電子キーシステム。
【0065】
同構成によれば、車速が一定速度以下となったとき及びロックスイッチが操作されたときに要求信号が送信される。これにより、確実に乗車時及び施錠が試みられたときの要求信号又は応答信号の信号強度を認識できる。
【0066】
(ロ)請求項1〜3、上記(イ)項の何れか一項に記載の電子キーシステムにおいて、前記信号強度検出回路は前記電子キーに設けられるとともに、前記要求信号の信号強度を検出し、前記電子キーは、前記信号強度検出回路を通じて検出した前記要求信号の信号強度を無線信号に含ませて送信し、前記判断部は前記車載装置に設けられるとともに、前記無線信号に含まれる前記要求信号の信号強度の検出結果に基づき前記電子キーが車室外に持ち出されたか否かを判断する電子キーシステム。
【0067】
同構成によれば、判断部は車載装置に設けられる。これにより、判断部を電子キーに設けた場合に比べて、電子キーをよりコンパクトに構成することができる。ここで、電子キーは車載装置に比べて高い携帯性が要求されるため特に有益である。
【符号の説明】
【0068】
1…電子キーシステム、2…車両、10…電子キー、11…電子キー制御部、16…RSSI検出回路(信号強度検出回路)、20…車載装置、21…車載制御部、23…車内送信部、24…車載受信部、32…ロックスイッチ、33…エンジンスイッチ、34…ドアロック装置、35…エンジン装置、36…車速センサ、37…カーテシスイッチ、38…ドアハンドルセンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子キーは車両に設けられるアンテナを通じて送信される要求信号を受信したとき応答信号を送信し、車載装置は、車室外から施錠が試みられた旨認識した場合において、前記アンテナを介して送信した前記要求信号に対する前記応答信号の有無に基づき前記電子キーが車室内に存在するか否かを判断し、前記電子キーが車室内に存在する旨判断したとき車両ドアの施錠を規制する電子キーシステムにおいて、
前記車載装置及び前記電子キー間で送受信される前記応答信号又は前記要求信号の信号強度を検出する信号強度検出回路と、
前記信号強度検出回路を通じて検出される乗車時から施錠が試みられたときまでの前記応答信号又は前記要求信号の信号強度の変化に基づき前記電子キーが車室外に持ち出されたか否かを判断する判断部と、を備え、
前記車載装置は、前記電子キーが車室内に存在する旨判断した場合であっても、前記判断部を通じて前記電子キーが車室外に持ち出された旨判断したとき前記電子キーは車室外において前記アンテナからの前記要求信号を受信しているとして、車両ドアの施錠を実行する電子キーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、
前記車載装置は、前記アンテナを通じて車室内の形状に応じて形成される通信エリアに要求信号を送信するとともに、
前記判断部は、前記信号強度検出回路を通じて検出される施錠が試みられたときの前記応答信号又は前記要求信号の信号強度に基づき前記電子キーが前記通信エリアにおける外周部分である外周エリアに存在する旨判断したとき、前記電子キーが車室外に持ち出されたか否かの判断を行う電子キーシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子キーシステムにおいて、
前記判断部は、前記信号強度検出回路を通じて乗車時と施錠が試みられたときとの前記応答信号又は前記要求信号の信号強度を認識するとともに、これら認識された信号強度の差がしきい値以上となったとき前記電子キーが車室外に持ち出された旨判断する電子キーシステム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電子キーシステムにおいて、
前記判断部は、乗車時から施錠が試みられたときまでの前記応答信号又は前記要求信号の信号強度の変化パターンを記憶するとともに、前記変化パターンに基づき前記電子キーが車室外に持ち出されたか否かを判断する電子キーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−122222(P2012−122222A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272604(P2010−272604)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】