説明

電子内視鏡用撮像素子パッケージ

【課題】光学フィルタや遮光マスク等のような投影像品質確保部材を、高圧蒸気滅菌の蒸気により劣化しない状態に容易な工程で電子内視鏡に組み付けることができる電子内視鏡用撮像素子パッケージを提供すること。
【解決手段】対物光学系3により固体撮像素子11の撮像面に投影される被写体の像に所定の品質を付与するための光学フィルタ21や遮光マスク22等のような投影像品質確保部材を、パッケージハウジング13とカバーガラス14とで気密に囲まれた部分内に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子内視鏡の挿入部先端に内蔵される電子内視鏡用撮像素子パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
電子内視鏡用撮像素子パッケージは一般に、内視鏡の挿入部先端に内蔵される対物光学系に対して独立したユニットとして構成されており、対物光学系による被写体の投影位置に撮像面が配置される固体撮像素子の周囲が、固体撮像素子を保持する電気絶縁材からなる絶縁基体に取り付けられた金属製のパッケージハウジングで気密に囲まれ、パッケージハウジングの前面に形成された窓部は透明なカバーガラスが気密に取り付けられて、固体撮像素子に水分が浸入しないようになっている(例えば、特許文献1、2)。
【特許文献1】特開平9−163243
【特許文献2】特開平11−47091
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
固体撮像素子の撮像面に赤外領域の光線やYAGレーザ光線等が入射すると撮像画像に顕著な不具合が生じるので、そのような波長領域の光線は撮像面に達しないように途中で選択的にカットする必要がある。また、撮像面に対する投影光路の周辺部の不要光を遮らないとフレアーやゴーストが発生する原因になるので、そのような不要光を遮るための遮光マスクも必要である。
【0004】
そこで、従来の電子内視鏡においては、不要な波長の光線をカットするための光学フィルタを対物光学系ユニットと撮像ユニットとの間の位置に組み込んでいた。具体的には、引用文献2に記載された発明のように、光学フィルタ(22)は撮像ユニットのカバーガラスの外面に貼り付けられ、遮光マスク(37)は対物光学系ユニットの後端部分に貼り付けられていた。
【0005】
しかし、内視鏡検査終了後に内視鏡を高圧蒸気滅菌装置内で滅菌して内視鏡内に例えば130°C程度の高圧の蒸気が浸入すると、光学フィルタ表面に形成されているコーティングが劣化して所定の波長の光線をカットできなくなってしまう場合がある。
【0006】
また、遮光マスクを対物光学系ユニットの後端部分に貼り付ける作業は、0.01mm単位の芯出し精度やゴミの付着等に神経を使う対物光学系ユニット組み立て工程で行うと非常に煩雑なものになってしまう。
【0007】
そこで本発明は、光学フィルタや遮光マスク等のような投影像品質確保部材を、高圧蒸気滅菌の蒸気により劣化しない状態に容易な工程で電子内視鏡に組み付けることができる電子内視鏡用撮像素子パッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の電子内視鏡用撮像素子パッケージは、対物光学系に対して独立したユニットとして電子内視鏡の挿入部先端に内蔵され、対物光学系による被写体の投影位置に撮像面が配置される固体撮像素子の周囲が、固体撮像素子を保持する電気絶縁材からなる絶縁基体に取り付けられた金属製のパッケージハウジングで気密に囲まれて、パッケージハウジングの前面に形成された窓部は透明なカバーガラスが気密に取り付けられた電子内視鏡用撮像素子パッケージにおいて、対物光学系により固体撮像素子の撮像面に投影される被写体の像に所定の品質を付与するための投影像品質確保部材を、パッケージハウジングとカバーガラスとで気密に囲まれた部分内に配置したものである。
【0009】
なお、投影像品質確保部材が、被写体像の投影光路の周辺部の不要光を遮るための遮光マスクと、不要な波長の光線をカットするための光学フィルタのどちらか一方であってもよく、その投影像品質確保部材が、パッケージハウジングで囲まれた空間内においてカバーガラスの裏面に貼り付けられていてもよい。
【0010】
また、投影像品質確保部材が、被写体像の投影光路の周辺部の不要光を遮るための遮光マスクと、不要な波長の光線をカットするための光学フィルタであってもよく、その場合、光学フィルタが、パッケージハウジングで囲まれた空間内においてカバーガラスの裏面に貼り付けられ、遮光マスクが光学フィルタの裏面に貼り付けられていてもよい。
【0011】
また、光学フィルタが、その表面に特定波長領域の光線をカットするためのコーティングが施されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、対物光学系により固体撮像素子の撮像面に投影される被写体の像に所定の品質を付与するための光学フィルタや遮光マスク等のような投影像品質確保部材を、パッケージハウジングとカバーガラスとで気密に囲まれた部分内に配置したことにより、高圧蒸気滅菌の蒸気により劣化しない状態に容易な工程で電子内視鏡に組み付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
対物光学系に対して独立したユニットとして電子内視鏡の挿入部先端に内蔵され、対物光学系による被写体の投影位置に撮像面が配置される固体撮像素子の周囲が、固体撮像素子を保持する電気絶縁材からなる絶縁基体に取り付けられた金属製のパッケージハウジングで気密に囲まれて、パッケージハウジングの前面に形成された窓部は透明なカバーガラスが気密に取り付けられた電子内視鏡用撮像素子パッケージにおいて、対物光学系により固体撮像素子の撮像面に投影される被写体の像に所定の品質を付与するための投影像品質確保部材を、パッケージハウジングとカバーガラスとで気密に囲まれた部分内に配置する。
【実施例】
【0014】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図2は電子内視鏡の挿入部1の先端部分を示しており、可撓性の挿入部1の先端面には観察窓2が配置されていて、その内側には、対物光学系3が対物光学系ユニット枠4内に収納された状態に配置されている。
【0015】
対物光学系3の後方には対物光学系3とは独立したユニットである撮像素子パッケージ10が配置されており、その内部に収納されている固体撮像素子11の撮像面11aが、対物光学系3による被写体の投影面に位置するように撮像素子パッケージ10が配置されている。
【0016】
固体撮像素子11は絶縁基体12に保持されてパッケージハウジング13とカバーガラス14で気密に封止された空間内に配置されており、絶縁基体12から後方に延出する複数の接続端子15に、挿入部1内に挿通配置された信号ケーブル5の信号線5aが接続されている。
【0017】
図1は撮像素子パッケージ10を拡大して示す側面断面図であり、12は、例えばセラミック等のような電気絶縁材からなるブロック状の絶縁基体であり、その前面側に固体撮像素子11が接合固着されて保持されている。
【0018】
16は、固体撮像素子11の内部回路と接続されているボンディングワイヤであり、絶縁基体12内に前後方向に埋設された導電体(図示せず)を介して接続端子15と電気的に接続されている。
【0019】
絶縁基体12の後半部分は前半部分に比べて外周が一段細く形成されており、その部分には金属製の環状部材17がピッタリと配置されて、無機質の接着剤で絶縁基体12側と気密に接合されている(接合部A)。
【0020】
13は、高温高圧蒸気滅菌に際しても固体撮像素子11に蒸気等が浸入しないように固体撮像素子11の周囲を気密に囲む状態に設けられた金属製のパッケージハウジングであり、その後半部分は絶縁基体12の周囲を囲む状態に配置されて、後端部が環状部材17の後端外縁部に気密に溶接されている(溶接部B)。
【0021】
透明な光学ガラスで円形状に形成された平板状のカバーガラス14は、無機質の接着剤によりパッケージハウジング13の前端の中央位置に形成された窓部に気密に接合されている。そして、分解斜視図である図3にも示されるように、例えば赤外領域付近の波長の光線とYAGレーザ光線等のような特定の波長をカットするためのコーティングが施された光学フィルタ21が、カバーガラス14の裏面に貼り付けられている。ただし、光学フィルタ21がそれ以外の特性のものであってもよい。なお、光学フィルタ21はカバーガラス14より一回り小さな円形の平板状に形成されている。
【0022】
そして、さらに光学フィルタ21の裏面には、対物光学系3により固体撮像素子11の撮像面11aに投影される被写体像の投影光路の周辺部の不要光を遮るための遮光マスク22が貼り付けられている。この実施例の遮光マスク22は、薄肉厚(例えば0.05mm程度)の金属板製であるが、それ以外の構成であってもよい。
【0023】
このような光学フィルタ21と遮光マスク22は、カバーガラス14がパッケージハウジング13に接合される前の、カバーガラス14が単体の状態の時にカバーガラス14に対して接合されるので、組み付け工程が非常に簡素で容易なものになる。なお、カバーガラス14、光学フィルタ21、遮光マスク22は、図4に示されるように外縁が各々矩形状に形成されたものであってもよい。
【0024】
そして、撮像素子パッケージ10の完成後は、図1に示されるように、光学フィルタ21と遮光マスク22が固体撮像素子11と共に絶縁基体12とパッケージハウジング13とカバーガラス14とで囲まれた気密空間内に配置された状態になるので、高圧蒸気滅菌が行われても光学フィルタ21に蒸気が触れないので、コーティングの劣化等による機能低下が発生しない。
【0025】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば図5に示されるように光学フィルタ21のみをカバーガラス14の裏面に貼り付けて配置し、或いは、図6に示されるように遮光マスク22のみをカバーガラス14の裏面に貼り付けて配置したものであっても、各々に個別の効果を生じる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施例の電子内視鏡用撮像素子パッケージの側面断面図である。
【図2】本発明の実施例の電子内視鏡の挿入部の先端部分の側面略示断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例の電子内視鏡用撮像素子パッケージの部分分解斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施例の電子内視鏡用撮像素子パッケージの変形例の部分分解斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施例の電子内視鏡用撮像素子パッケージの側面断面図である。
【図6】本発明の第3の実施例の電子内視鏡用撮像素子パッケージの側面断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 挿入部
2 撮像面
3 対物光学系
4 対物光学系ユニット枠
10 撮像素子パッケージ
11 固体撮像素子
11a 撮像面
12 絶縁基体
13 パッケージハウジング
14 カバーガラス
21 光学フィルタ(投影像品質確保部材)
22 遮光マスク(投影像品質確保部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物光学系に対して独立したユニットとして電子内視鏡の挿入部先端に内蔵され、上記対物光学系による被写体の投影位置に撮像面が配置される固体撮像素子の周囲が、上記固体撮像素子を保持する電気絶縁材からなる絶縁基体に取り付けられた金属製のパッケージハウジングで気密に囲まれて、上記パッケージハウジングの前面に形成された窓部は透明なカバーガラスが気密に取り付けられた電子内視鏡用撮像素子パッケージにおいて、
上記対物光学系により上記固体撮像素子の撮像面に投影される被写体の像に所定の品質を付与するための投影像品質確保部材を、上記パッケージハウジングとカバーガラスとで気密に囲まれた部分内に配置したことを特徴とする電子内視鏡用撮像素子パッケージ。
【請求項2】
上記投影像品質確保部材が、上記被写体像の投影光路の周辺部の不要光を遮るための遮光マスクと、不要な波長の光線をカットするための光学フィルタのどちらか一方である請求項1記載の電子内視鏡用撮像素子パッケージ。
【請求項3】
上記投影像品質確保部材が、上記パッケージハウジングで囲まれた空間内において上記カバーガラスの裏面に貼り付けられている請求項2記載の電子内視鏡用撮像素子パッケージ。
【請求項4】
上記投影像品質確保部材が、上記被写体像の投影光路の周辺部の不要光を遮るための遮光マスクと、不要な波長の光線をカットするための光学フィルタである請求項1記載の電子内視鏡用撮像素子パッケージ。
【請求項5】
上記光学フィルタが、上記パッケージハウジングで囲まれた空間内において上記カバーガラスの裏面に貼り付けられ、上記遮光マスクが上記光学フィルタの裏面に貼り付けられている請求項4記載の電子内視鏡用撮像素子パッケージ。
【請求項6】
上記光学フィルタが、その表面に特定波長領域の光線をカットするためのコーティングが施されたものである請求項2ないし5のいずれかの項に記載の電子内視鏡用撮像素子パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−14441(P2007−14441A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−197038(P2005−197038)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】