説明

電子写真感光体の塗膜形成装置及び塗膜形成方法、電子写真感光体、それを用いた画像形成方法と画像形成装置及びプロセスカートリッジ

【課題】塗工液を循環して浸漬塗工しても塗工ムラやハジキがない塗膜形成が可能な電子写真感光体の塗膜形成装置とその塗膜形成方法、感光体、画像形成装置を提供する。
【解決手段】導電性基体(1)を浸漬塗工する塗工槽(2)と、塗工液を収容する撹拌手段(5)と冷却手段(4)を具備する塗工液タンク(3)と、冷却手段(8)を具備すると共に水分吸着剤(9)を収容した水分吸着タンク(7)を備えた装置により、塗工液を連続的に循環させながら、塗工液タンクの冷却手段により塗工槽の塗工液を15℃以下に維持し、且つ水分吸着タンクにより温度上昇なく塗工液中の水分を除去し、浸漬塗工で導電性基体(1)に塗膜を形成し、この塗膜を乾燥して顔料含有層からなる感光層とする。これを用いて画像形成装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体の塗膜形成装置及び塗膜形成方法に関し、詳しくは、電子写真感光体用基体に、顔料を含む塗工液を浸漬・塗布して塗膜を形成する塗膜形成装置、塗膜形成装置を用いた塗膜形成方法、及び塗膜形成方法により得られる電子写真感光体とそれを用いた画像形成方法、画像形成装置並びにプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体は、一般にドラム状の電子写真感光体用基体(以下、「感光体用基体」と称する。)の周面に感光体材料を塗布して製造される。感光体用基体上に感光体材料を塗布する方法としては、通常、感光体材料を含む塗工液を収容した塗工槽と感光体用基体を相対移動させながら感光体用基体を塗工液中に浸漬させた後に引き上げて塗膜を形成する浸漬塗工方法が知られている。
【0003】
このような浸漬塗工方法に用いられる塗工装置としては、感光体用基体を浸漬させる塗工槽と塗工液を収容する塗工液タンクが配管により連結され、塗工液タンク中の塗工液をポンプにより輸送して塗工槽下部から塗工槽内に塗工液を供給し、塗工槽上部からオーバーフローした塗工液を塗工液タンクに戻し循環させる装置が知られている。
【0004】
しかし、上記構成の塗工装置により浸漬塗工するの場合、顔料分散型の塗工液は経時において粘度が上昇し、本来有しているチキソトロピー性がさらに強くなり、その影響を受けて粘度の不均一性が発生するため、浸漬塗工される塗膜が不均一となって塗工ムラが発生しやすい。
例えば、ジスアゾ顔料を分散した塗工液の場合、上記塗工液の循環期間が長いと塗工液粘度の上昇が起り、塗膜ムラが発生する。このため、感光体用基体上にジスアゾ顔料含有層を設けた電子写真感光体を複写機に装着すると、中間調電位におけるハーフトーン画像において特に濃度ムラ画像として現れる。
また、塗工液には有機溶剤が用いられており、塗工液の循環を繰り返すことによって時間経過と共に、塗工液中の含有水分量が増大し、この水分増加によって感光体用基体に対するヌレ性が変化してハジキによる塗膜欠陥が発生する。
【0005】
上記塗工液粘度の上昇による塗工ムラに対する対策方法として、浸漬槽内で中央部にのみ一つの穴を有する撹拌板を上下動するように設けた製造装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。あるいは被塗布物を塗布液に浸漬する際に、被塗布物下部付近の塗布液の流れを制御する製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかし、上記提案はいずれも塗工液粘度が上昇するとその効果が得られにくいという問題があった。
【0006】
また、塗工液中の水分を除去方法として、脱水用フィルタを用いた電子写真用塗工装置が提案(例えば、特許文献3参照。)されている。
この提案によれば、水分の除去に関して一定の効果はあるが、液粘度の上昇を抑制することはできず、塗工液の経時における安定性が図れないという問題がある。また、水分吸着剤の着脱時に塗工液温度が変動し、その結果塗工ムラが発生する問題があり、連続生産性に劣るという問題がある。
【0007】
なお、本出願人は先に、感光体用塗工液中の水分含有量を制御する脱水フィルタを設けた電子写真感光体用塗工装置(例えば、特許文献4参照。)、あるいは吸着剤槽または乾燥剤槽を設けた電子写真感光層形成用塗工液の塗布装置(例えば、特許文献5参照。)を提案した。
上記提案の装置によれば、水分増加が抑制されてハジキなどが改善されるが、塗工液の経時における粘度上昇に対して十分でなく、濃度ムラ画像の発生における改善が望まれている。
【0008】
【特許文献1】特開平3−20747号公報
【特許文献2】特開平10−48849号公報
【特許文献3】特開平7−248632号公報
【特許文献4】特開平8−24743号公報
【特許文献5】特開2000−275871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、繰り返し循環するようにした顔料を含む塗工液に、感光体用基体(以降、「導電性基体」と称する。)を浸漬塗工しても、経時において塗工液の粘度を上昇させず、しかも塗工液中の含有水分量を増大させることなく、塗工ムラやハジキなどの発生がなく均一で安定した塗膜の形成を可能とする塗膜形成装置を提供すると共に、この塗膜形成装置を用いた塗膜形成方法、及び塗膜形成方法により得られる異常画像(濃度ムラ、白ポチなど)の発生のない電子写真感光体とそれを用いた画像形成方法、画像形成装置並びに画像形成装置用プロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の(1)〜(15)に記載する発明によって上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。以下、本発明について具体的に説明する。
【0011】
(1):少なくとも顔料を含む塗工液に導電性基体を浸漬して、該基体上に、後処理の乾燥で顔料含有層となす塗膜を形成する電子写真感光体の塗膜形成装置であって、
前記装置は,
導電性基体上に顔料を含む塗工液を浸漬塗布する塗工槽と、
該顔料を含む塗工液を収容する、撹拌手段と冷却手段を具備する塗工液タンクと、
該塗工液タンクの底部から塗工槽の底部へ塗工液を供給する塗工液供給パイプと、
該塗工液供給パイプの経路に塗工液タンク側から順次配備された循環ポンプ及び循環フィルタと、
前記塗工槽の底部から導入し、該塗工槽の上部からオーバーフローした塗工液を塗工液タンクに戻す戻り液輸送パイプと、
前記塗工液供給パイプにおける循環ポンプと循環フィルタの間で分岐し、塗工液タンク底部から供給される塗工液の一部をバルブを介して塗工液タンク上部へ循環させる循環輸送パイプと、
該循環輸送パイプの経路に配備された冷却手段を具備し、水分吸着剤を収容した水分吸着タンクと、
を備え、
前記塗工液タンクの冷却手段により、塗工槽内に供給される顔料を含む塗工液を所定温度に維持し、且つ冷却手段を具備する水分吸着タンクにより温度上昇なく塗工液中の水分を除去するように構成したことを特徴とする電子写真感光体の塗膜形成装置である。
【0012】
上記構成とした装置によれば、冷却手段により塗工液温度が制御されて、顔料を含む塗工液を繰り返し循環しても時間経過に伴う塗工液粘度の上昇がなく、従ってチキソトロピー性も強くならず粘度の不均一性が発生しない。このため、塗工ムラなどの発生がない。また、冷却手段を備えた水分吸着タンクに収容された水分吸着剤により、温度上昇させることなく塗工液中の水分が吸着されるため、ハジキなどの発生がない。これによって、均一で安定した塗膜の形成が可能である。
さらに、塗工液を連続循環させながら繰り返し塗工作業が可能であるため、効率的で生産性も良好であり、塗工液のロスも少ない。
【0013】
(2):前記塗工槽内に供給される塗工液の所定温度が15℃以下であることを特徴とする(1)に記載の電子写真感光体の塗膜形成装置である。
【0014】
塗工液の温度を15℃以下に維持することにより、顔料を含む塗工液を繰り返し循環しても経時における塗工液粘度の上昇が抑制され、確実に塗工ムラの発生を防ぐことができる。従って、塗工された塗膜を乾燥して顔料含有層とした場合に異常画像の発生を防止できる。
【0015】
(3):前記循環輸送パイプの経路に配備された水分吸着タンクへの塗工液流入側が該水分吸着タンクの下側であり、塗工液流出側が水分吸着タンクの上側であるように構成されたことを特徴とする(1)または(2)に記載の電子写真感光体の塗膜形成装置である。
【0016】
上記構成によって、塗工液中の水分の吸着効率的を高め、且つ冷却効率も良好としながら含有水分量が増加するのを防止することができる。
【0017】
(4):前記水分吸着剤が、水分吸着タンクに交換可能に収納される吸着剤充填容器に充填されていることを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載の電子写真感光体の塗膜形成装置である。
【0018】
水分吸着タンクに交換可能に収納される吸着剤充填容器に水分吸着剤を充填することにより、水分吸着剤の交換が容易となり保守管理が簡便となる。なお、水分吸着剤の交換時には、前記バルブを閉めて水分吸着タンクへの塗工液の循環を止めることにより塗工液の温度上昇を押えることができる。
【0019】
(5):前記水分吸着剤が、合成ゼオライト(モレキュラーシーブ)であることを特徴とする(4)に記載の電子写真感光体の塗膜形成装置である。
【0020】
モレキュラーシーブを水分吸着剤に用いることにより、顔料を含む塗工液中の水分を効果的に吸着し、水分量の増加を確実に抑制することができる。
【0021】
(6):前記水分吸着剤が充填された吸着剤充填容器の塗工液流入側と塗工液流出側は、それぞれメッシュ構造の開口部を有することを特徴とする(4)または(5)に記載の電子写真感光体の塗膜形成装置である。
【0022】
メッシュ構造の開口部とすることにより、吸着剤充填容器への塗工液の流入と流出を容易にし、充填された水分吸着剤を保持しつつ流量を減少させることなく循環させることができる。
【0023】
(7):前記メッシュ構造の開口部における開口径が130μm以下であることを特徴とする(6)に記載の電子写真感光体の塗膜形成装置である。
【0024】
開口径を130μm以下とすることにより、水分吸着剤の保持が確実に行われ、塗工ムラの発生が抑制される。
【0025】
(8):前記顔料を含む塗工液が、ジスアゾ顔料を含む分散液であることを特徴とする(1)〜(7)の何れかに記載の電子写真感光体の塗膜形成装置である。
【0026】
ジスアゾ顔料を含む分散液を用いた場合、経時における粘度上昇が抑制されてチキソトロピー性も強くならず、塗工ムラやハジキのない塗膜が形成され、塗工された塗膜を乾燥してなる顔料含有層を有する電子写真感光体は白ポチなどを発生せず良好である。
【0027】
(9):少なくとも顔料を含む塗工液に導電性基体を浸漬して、該基体上に、後処理の乾燥で顔料含有層となす塗膜を形成する電子写真感光体の塗膜形成方法であって、
前記方法は、
(1)〜(8)の何れかに記載の電子写真塗膜形成装置を用いて、
撹拌手段と冷却手段を具備する塗工液タンクに収容して液温度を制御した顔料を含む塗工液を、該塗工液タンク底部から塗工槽の底部へ、経路中に循環ポンプ及び循環フィルタを塗工液タンク側から順次配備した塗工液供給パイプにより供給し、
前記塗工槽の底部から導入し、該塗工槽の上部からオーバーフローさせた塗工液を戻り液輸送パイプで塗工液タンクに戻し、
並行して、前記塗工液タンク底部から供給される塗工液の一部を、塗工液供給パイプの循環ポンプと循環フィルタの間で分岐し、冷却手段を具備する水分吸着タンクを経路に配備した循環輸送パイプによりバルブを介して塗工液タンク上部へ循環させ、循環経路中で水分吸着剤を収容した水分吸着タンクで塗工液中の水分を温度上昇なく除去し、
前記塗工槽に導入した温度制御された塗工液に導電性基体を浸漬した後引上げ、該基体上に後処理の乾燥で顔料含有層となす塗膜を形成することを特徴とする電子写真感光体の塗膜形成方法である。
【0028】
上記塗膜形成方法によれば、顔料を含む塗工液を繰り返し循環しても時間経過に伴う塗工液粘度の上昇がなく粘度の不均一性に伴う塗工ムラなどの発生がない。また、水分吸着剤によって温度上昇させることなく塗工液中の水分が吸着されてハジキなどの発生がない。これによって、塗工液のロスも少なく、効率的で生産性良く均一で安定した塗膜の形成が可能である。
【0029】
(10):(9)に記載の電子写真感光体の塗膜形成方法により、少なくとも顔料を含む塗工液に導電性基体を浸漬塗工して形成された塗膜を乾燥してなる顔料含有層を有する電子写真感光体であって、
前記顔料含有層が、光導電性顔料を含む感光層であることを特徴とする電子写真感光体である。
【0030】
上記により、異常画像(濃度ムラ、白ポチなど)の発生のない高品質で信頼性が高い電子写真感光体が得られる。
【0031】
(11):前記顔料含有層が、電荷発生層と電荷輸送層の積層構成からなる感光層における電荷発生層であることを特徴とする(10)に記載の電子写真感光体である。
【0032】
感光層を電荷発生層と電荷輸送層からなる機能分離型の構成とすることにより、感度や耐久性を向上し、電荷発生層を顔料含有層とすることにより異常画像(濃度ムラ、白ポチなど)の発生のない高品質で信頼性が高い電子写真感光体が得られる。
【0033】
(12):前記電荷発生層が、ジスアゾ顔料を含むことを特徴とする(11)に記載の電子写真感光体である。
【0034】
電荷発生層にジスアゾ顔料を含有することにより、高感度で帯電特性が良好な電子写真感光体が得られる。
【0035】
(13):電子写真感光体に対して、帯電、露光、現像及び転写を行う工程を含む画像形成方法であって、
前記電子写真感光体が、(10)〜(12)の何れかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成方法である。
【0036】
上記画像形成方法によれば、前記いずれかに記載の電子写真感光体を備えているので、
濃度ムラや白ポチなどの異常画像の発生のない高品質で信頼性の高い安定した画像形成を行うことができる。
【0037】
(14):少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及び(10)〜(12)の何れかに記載の電子写真感光体からなることを特徴とする画像形成装置である。
【0038】
上記構成によれば、前記何れかに記載の電子写真感光体を備えているので、繰り返し使用に際しても高品質と信頼性が保たれる画像形成装置が提供される。
【0039】
(15):少なくとも請求項10〜12の何れかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段から選ばれる少なくとも1つの手段とが一体とされたことを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
【0040】
上記構成によれば、装置の小型化やメンテナンス性の向上を図ることができ、繰り返し使用に際しても濃度ムラや白ポチなどの異常画像の発生のない高品質で信頼性の高い安定した画像形成を行うことができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明に係る電子写真感光体の塗膜形成装置によれば、顔料を含む塗工液を繰り返し循環しながら導電性基体を浸漬塗工しても、経時において塗工液粘度の上昇や塗工液中の水分含有量の増加がないため、塗工ムラやハジキなどの発生がない均一で安定した塗膜の形成が可能である。この塗膜形成後に、乾燥処理すれば導電性基体上に顔料含有層を設けた電子写真感光体とすることができる。
本発明に係る電子写真感光体の塗膜形成方法によれば、経時においても塗工ムラやハジキなどの発生がない膜厚が均一で信頼性のある塗膜が確実に形成することができる。また、塗工液のロスも少なく、効率的で容易に塗膜を形成することができる。
本発明に係る電子写真感光体によれば、電子写真法による画像形成において濃度ムラや、白ポチなど異常画像の発生がない高品質で信頼性が高い画像が形成できる。そして、感光層を電荷発生層と電荷輸送層の機能分離型構成とし、電荷発生層にジスアゾ顔料を含有することにより、感光特性が良好な電子写真感光体とすることができる。
本発明に係る画像形成方法によれば、濃度ムラや白ポチなどの異常画像の発生がなく、常に安定した鮮明な画像が形成できる。
本発明に係る画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジによれば、長期使用しても光感度や帯電特性が良好に維持されて異常画像の発生がなく、高品質と信頼性が保たれた画像が形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
前述のように本発明における電子写真感光体塗膜形成装置は、少なくとも顔料を含む塗工液に導電性基体を浸漬して、該基体上に、後処理の乾燥で顔料含有層となす塗膜を形成する電子写真感光体の塗膜形成装置であって、
前記装置は,
導電性基体上に顔料を含む塗工液を浸漬塗布する塗工槽と、
該顔料を含む塗工液を収容する、撹拌手段と冷却手段を具備する塗工液タンクと、
該塗工液タンクの底部から塗工槽の底部へ塗工液を供給する塗工液供給パイプと、
該塗工液供給パイプの経路に塗工液タンク側から順次配備された循環ポンプ及び循環フィルタと、
前記塗工槽の底部から導入し、該塗工槽の上部からオーバーフローした塗工液を塗工液タンクに戻す戻り液輸送パイプと、
前記塗工液供給パイプにおける循環ポンプと循環フィルタの間で分岐し、塗工液タンク底部から供給される塗工液の一部をバルブを介して塗工液タンク上部へ循環させる循環輸送パイプと、
該循環輸送パイプの経路に配備された冷却手段を具備し、水分吸着剤を収容した水分吸着タンクと、
を備え、
前記塗工液タンクの冷却手段により、塗工槽内に供給される顔料を含む塗工液を所定温度に維持し、且つ冷却手段を具備する水分吸着タンクにより温度上昇なく塗工液中の水分を除去するように構成したことを特徴とするものである。
【0043】
一般に電子写真感光体に用いられる顔料分散型の塗工液は、チキソトロピー性を有しており、さらに経時において粘度が上昇してチキソトロピー性が強くなり、その影響を受けて粘度の不均一性が発生する。また、塗工液には有機溶剤が用いられるため、時間経過と共に塗工液中の含有水分量が増加する。このため、粘度の不均一性に伴う塗工ムラ、及び含有水分量の増加に伴うハジキが原因となって、塗膜欠陥が発生する問題があった。
一方、本発明の電子写真感光体の塗膜形成装置は、塗工液タンクに冷却手段を設け、顔料を含む塗工液を冷却して塗工槽内の塗工液を所定温度に維持すると共に、冷却手段を設けた水分吸着タンクにより塗工液中の水分を温度上昇なく除去するように構成されている。
このため、顔料を含む塗工液を繰り返し循環しても経時におけるチキソトロピー性の変化が少なく粘度の不均一性も生じない。このため、粘度の不均一性に伴う塗工ムラや、水分増加に伴うハジキなどの発生がく、均一で安定した塗膜が形成される。
以下、本発明の電子写真感光体塗膜形成装置について図面を参照しながら詳細を説明する。
【0044】
図1は本発明における電子写真感光体の塗膜形成装置の一構成例を示す概略図である。
図1の塗膜形成装置は、導電性基体(1)を浸漬してその導電性基体(1)上に顔料を含む塗工液(略、「塗工液」)を浸漬塗布する塗工槽(2)と、塗工液を収容する撹拌手段(5)と冷却手段(4)を具備する塗工液タンク(3)と、塗工液中の水分を除去する冷却手段(8)を具備し、水分吸着剤(9)を収容した水分吸着タンク(7)を備えている。
【0045】
塗工液タンク(3)と塗工槽(2)は、該塗工液タンク(3)の底部から塗工槽(2)の底部へ塗工液を供給する塗工液供給パイプ(20)により連結されている。
塗工液供給パイプ(20)の経路には塗工液タンク(3)側から順次循環ポンプ(6)及び循環フィルタ(10)が配備されている。塗工液は、塗工液タンク(3)の底部から塗工槽(2)の底部へ循環ポンプ(6)により循環フィルタ(10)を経由して連続的に供給される。
【0046】
そして、塗工槽(2)の底部から導入した塗工液を塗工槽(2)の上部からオーバーフローさせ、オーバーフローした塗工液を塗工液タンク(3)と塗工槽(2)間に別途設けた戻り液輸送パイプ(22)により塗工液タンク(3)に戻し、常に新規な塗工液が供給されるようにする。
【0047】
一方、塗工液タンク(3)と水分吸着タンク(7)は、塗工液タンク(3)の底部から工液タンク(3)の上部へ塗工液の一部を循環させる循環輸送パイプ(23)により連結されている。循環輸送パイプ(23)は、塗工液供給パイプ(20)の循環ポンプ(6)と循環フィルタ(10)間で分岐する配管であり、循環ポンプ(6)により塗工液タンク(3)の底部から供給される塗工液の一部をバルブ(11)を介して塗工液タンク(3)の上部へ循環させる。
この循環輸送パイプ(23)の経路には冷却手段(8)を具備し、水分吸着剤(9)を収容した水分吸着タンク(7)が配備されている。
【0048】
上記塗工液タンク(3)の冷却手段(4)及び水分吸着タンク(7)の冷却手段(8)は、各タンク(3)の外面から冷却するように構成されており、冷却媒体が図示しないポンプにより循環するようになっている。冷却手段(4)及び(8)の冷却媒体は塗工液を所定温度(例えば、15℃以下)に維持できるものであれば特に制限されず、水でも構わない。冷却手段(4)及び(8)の冷却媒体は同じでも異なっていても構わず、例えば、各冷却手段の冷却媒体を同じ冷却水にすることができる。
【0049】
図2は、図1における冷却手段(8)を具備する水分吸着タンク(7)の拡大図である。図2では一例として冷却水が冷却手段(8)における一方の側の下部から導入され、他方の側の上部から導出されるケースを示している。なお、符号21はメッシュ構造の開口部である。
【0050】
上記塗工槽(2)内に供給される塗工液の温度を15℃以下に維持することが好ましい。冷却手段により15℃以下に制御すれば、塗工液を繰り返し循環しても長時間塗工液粘度の上昇が抑制でき、確実に塗工ムラの発生が防止される。
【0051】
また、循環輸送パイプ(23)の経路に配備された水分吸着タンク(7)への塗工液流入側をタンクの下側とし、塗工液流出側が塗工液タンクの上側とすることが好ましい。
このように構成することで、塗工液が水分吸着タンク(7)全体を満たしながら上方へ輸送されるので塗工液中の水分の吸着を効率良く行うことができ、しかも冷却効率も高まる。
【0052】
また、水分吸着剤(9)が吸着剤充填容器に充填され、この吸着剤充填容器が水分吸着タンク(7)に交換可能に収納されることが好ましい。
このように構成すると、水分吸着剤の交換が容易となる。そして、水分吸着剤を替える場合には、前記バルブ(11)を閉めて一時的に水分吸着タンク(7)への塗工液の循環を止めた状態で交換でき、これにより塗工液の温度が上昇するのを防ぐことができる。
【0053】
上記水分吸着剤(9)として用いられる材料(水分吸着剤または吸収剤)としては、合成ゼオライト(モレキュラーシーブ)やシリカゲルなどがあるが、特に好ましいのはモレキュラーシーブである。モレキュラーシーブを水分吸着剤に用いることにより、顔料を含む塗工液中の水分を効果的に吸着し、水分量の増加を確実に抑制することができる。
【0054】
ここで、水分吸着剤(9)が充填された吸着剤充填容器の塗工液流入側と塗工液流出側は、それぞれメッシュ構造の開口部を有し、特にメッシュの開口径が130μm以下であることが好ましい。130μmを超すと、充填された水分吸着剤を良好に保持できず、塗工ムラが発生し、塗工膜を乾燥して顔料含有層(感光層)とした場合に異常画像の発生を引き起こす。130μm程度であれば、水分吸着剤を保持しつつ流量を減少させることなく循環させることができる。なお、あまり開口径が小さくなると圧損により流量が低下するので適宜所望の条件を選択する必要がある。
なお、実験によれば前記水分吸着タンク(7)へ循環される塗工液の循環流量は、塗工槽(2)に供給される塗工液の供給流量以下とするのが好ましい。
【0055】
図1に示すように、塗工液供給パイプ(20)の経路には循環フィルタ(10)が配備されており、循環ポンプ(6)により塗工槽(2)の底部へ供給される塗工液は循環フィルタ(10)で濾過される。
顔料を含む塗工液の顔料の平均粒経は、約0.2μm程度であるため、循環フィルタ(10)のメッシュは5〜10μm程度に設定される。
一方、塗工液中に仮に粒経の小さな水分吸着剤(9)が混入しても循環フィルタ(10)で除去されるが、水分吸着タンク(7)の設定条件が適切でない(例えば、開口径が130μmを超す場合)場合には循環フィルタ(10)の機能が十分果たせず塗工ムラの発生により、塗工膜を乾燥して感光層とした場合に異常画像が発生する要因となる。
【0056】
顔料を含む塗工液としてジスアゾ顔料を含む分散液を用いた場合、経時における粘度上昇が抑制されやすく、塗工ムラやハジキのない塗膜が形成され、塗膜を乾燥して感光層を設けた電子写真感光体は、白ポチなどが発生せず良好な画像が得られる。
【0057】
次に、本発明における電子写真感光体の塗膜形成方法について説明する。
本発明における電子写真感光体の塗膜形成方法は、前記電子写真感光体の塗膜形成装置を用いて実施されるものである。すなわち、電子写真感光体の塗膜形成方法は;
撹拌手段(5)と冷却手段(4)を具備する塗工液タンク(3)に収容され、液温度が制御された塗工液を、該塗工液タンク(3)底部から塗工槽(2)の底部へ、循環ポンプ(6)により、循環フィルタ(10)を通して塗工液供給パイプ(20)から供給し、
同時に、塗工槽(2)の底部から導入し、同塗工槽の上部からオーバーフローさせた塗工液を戻り液輸送パイプ(22)から塗工液タンク(3)に戻し、
並行して、塗工液タンク(3)の底部から供給される塗工液の一部を、塗工液供給パイプ(20)の循環ポンプ(6)と循環フィルタ(11)の間で分岐された循環輸送パイプ(23)によりバルブ(11)を介して塗工液タンク(3)上部へ循環させ、この循環の際に、循環輸送パイプ(23)に配備された冷却手段(8)を具備する水分吸着タンク(7)で塗工液中の水分を温度上昇なく除去し、
上記塗工槽(2)に導入した温度制御された塗工液に導電性基体(1)を浸漬した後引上げ、該基体上に後処理の乾燥で顔料含有層となす塗膜を形成することを特徴とするものである。
【0058】
上記塗膜形成方法により、塗工ムラやハジキなどの発生のない均一で安定した塗膜が形成される。すなわち、上記によれば、顔料を含む塗工液を繰り返し循環しても塗工液粘度の上昇がなく、従って粘度の不均一性に付随する塗工ムラなどの発生がない。また、水分吸着剤によって水分が確実に吸着されて塗工液中の水分含有量が増大することがないためハジキなどの発生がない。さらに、塗工液を長時間繰り返し循環して使用することができるため、塗工液のロスが少なく、生産性も良好である。
【0059】
次に、上記電子写真感光体の塗膜形成方法により、導電性基体上に形成された塗膜を乾燥してなる顔料含有層を有する、異常画像(濃度ムラ、白ポチなど)の発生のない本発明の電子写真感光体について説明する。
以下、本発明の電子写真感光体について図面を参照しながら詳細を説明する。
【0060】
図3は本発明における電子写真感光体の一構成例を示す断面図である。
図3では、導電性基体31上に、電荷発生材料と電荷輸送材料を主成分とする単層の感光層33が設けられている。図4は、本発明における電子写真感光体の別の構成例を示す断面図である。図5は、本発明における電子写真感光体のさらに別の構成例を示す断面図である。
すなわち、図4示す電子写真感光体では、導電性基体31上に、電荷発生材料を主成分とする電荷発生層35と、電荷輸送材料を主成分とする電荷輸送層37とが、順次積層された構成をとっている。一方、図5示す電子写真感光体では、図4における電荷発生層35と電荷輸送層37の積層順序が逆となった構成をとっている。
【0061】
上記構成において、電荷発生層と電荷輸送層からなる機能分離型の感光層構成とすることにより、感度や耐久性が向上する。そして、電荷発生材料(顔料)を含む塗工液を用いて本発明の塗膜形成方法により導電性基体を浸漬して形成した塗膜を乾燥して、例えば、電荷発生層を形成することにより、異常画像を発生しない高品質で信頼性が高い電子写真感光体が得られる。特に、電荷発生層にジスアゾ顔料を含有することにより、白ポチなどの異常画像の発生がない感光特性の良好な電子写真感光体が得られる
【0062】
電子写真感光体の各構成層について以下説明する。
〔導電性基体〕
導電性基体(31)の形状としては円筒状のものが代表的なものである。このような導電性基体(31)としては、体積抵抗1010 Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。
【0063】
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものも本発明の導電性基体31として用いることができる。
この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。
【0064】
また、同時に用いられる上記結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。
このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
【0065】
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体31として良好に用いることができる。
【0066】
次に、感光層について説明する。感光層は単層でも積層でもよいが、説明の都合上、先ず電荷発生層35と電荷輸送層37で構成される場合から説明する。
[積層構成の感光層]
〔電荷発生層〕
電荷発生層35は、顔料、特に有機顔料を必要に応じて結着樹脂と共に適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて、体積平均粒径で好ましくは1μm以下に分散した塗工液を浸漬塗工、すなわち本発明の前記電子写真感光体の塗膜形成装置を用いた塗膜形成方法により、顔料を含む塗工液に導電性基体を浸漬し、導電性基体上に塗膜を形成した後、塗膜を乾燥処理して電荷発生層(顔料含有層)とすることにより形成される。
このような浸漬塗工により塗工ムラやハジキなどがなく均一な塗膜が形成され安定した電荷発生層が形成される。
【0067】
光導電性顔料である有機顔料としては、無金属フタロシアニン顔料、オキソチタニルフタロシアニン顔料、金属フタロシアン顔料と無金属フタロシアニン顔料の混晶、フローレン環及びフルオレノン環を含有するジスアゾ顔料、芳香族アミンからなるジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料があげられ、無金属フタロ顔料とアゾ顔料の混合することもある。前述にように、ジスアゾ顔料は、本発明の塗膜形成装置に用いる塗工液として好ましく用いられる。
【0068】
必要に応じて電荷発生層35に用いられる結着樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0069】
ここで用いられる溶剤としては、例えばイソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等が挙げられる。電荷発生層35の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.1〜2μmである。
【0070】
〔電荷輸送層〕
電荷輸送層37は、電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
【0071】
電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。電荷輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。
【0072】
正孔輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等その他公知の材料が挙げられる。
これらの電荷輸送物質は単独、または2種以上混合して用いられる。
【0073】
結着樹脂としてはポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0074】
電荷輸送物質の量は結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。また、電荷輸送層の膜厚は5〜100μm程度とすることが好ましい。本件の効果がより得られるのは15μm以上の場合である。
【0075】
ここで用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。
【0076】
また、電荷輸送層には電荷輸送物質としての機能と結着樹脂の機能を持った高分子電荷輸送物質も良好に使用される。これら高分子電荷輸送物質から構成される電荷輸送層は耐摩耗性に優れたものである。高分子電荷輸送物質としては、公知の材料が使用できるが、トリアリールアミン構造を主鎖および/または側鎖に含むポリカーボネートが良好に用いられる。中でも、下記に例示する一般式(1)〜(10)で表される高分子電荷輸送物質が良好に用いられる。
【0077】
高分子電荷輸送物質の例示/一般式(1);
【0078】
【化1】

【0079】
(式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立して置換もしくは無置換のアルキル基又はハロゲン原子、R4は水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基、R5、R6は置換もしくは無置換のアリール基、o、p、qはそれぞれ独立して0〜4の整数、k、jは組成を表し、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9、nは繰り返し単位数を表し5〜5000の整数である。Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、又は下記一般式(1−1)で表される2価基を表す。)
【0080】
【化2】

【0081】
〔式中、R101、R102は各々独立して置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基またはハロゲン原子を表す。l、mは0〜4の整数、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CO−O−Z−O−CO−(式中Zは脂肪族の2価基を表す。)又は下記一般式(1−2):
【0082】
【化3】

【0083】
(式中、aは1〜20の整数、bは1〜2000の整数、R103、R104は置換または無置換のアルキル基又はアリール基を表す。)で表される2価基を表す。ここで、R101とR102、R103とR104は、それぞれ同一でも異なってもよい。〕
【0084】
高分子電荷輸送物質の例示/一般式(2);
【0085】
【化4】

【0086】
(式中、R7, R8は置換もしくは無置換のアリール基、Ar1, Ar2, Ar3は同一又は異なるアリレン基を表す。X,k,jおよびnは、前記一般式(1)の場合と同じである。)
【0087】
高分子電荷輸送物質の例示/一般式(3);
【0088】
【化5】

【0089】
(式中、R9, R10は置換もしくは無置換のアリール基、Ar4,Ar5,Ar6は同一又は異なるアリレン基を表す。X,k,jおよびnは、前記一般式(1)の場合と同じである。)
【0090】
高分子電荷輸送物質の例示/一般式(4);
【0091】
【化6】

【0092】
(式中、R11,R12は置換もしくは無置換のアリール基、Ar7, Ar8, Ar9は同一又は異なるアリレン基、pは1〜5の整数を表す。X,k,jおよびnは、前記一般式(1)の場合と同じである。)
【0093】
高分子電荷輸送物質の例示/一般式(5);
【0094】
【化7】

【0095】
(式中、R13,R14は置換もしくは無置換のアリール基、Ar10,Ar11,Ar12は同一又は異なるアリレン基、X1,X2は置換もしくは無置換のエチレン基、又は置換もしくは無置換のビニレン基を表す。X,k,jおよびnは、前記一般式(1)の場合と同じである。)
【0096】
高分子電荷輸送物質の例示/一般式(6);
【0097】
【化8】

【0098】
(式中、R15,R16,R17,R18は置換もしくは無置換のアリール基、Ar13,Ar14,Ar15,Ar16は同一又は異なるアリレン基、Y1,Y2,Y3は単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表し同一であっても異なってもよい。X,k,jおよびnは、前記一般式(1)の場合と同じである。)
【0099】
高分子電荷輸送物質の例示/一般式(7);
【0100】
【化9】

【0101】
(式中、R19,R20は水素原子、置換もしくは無置換のアリール基を表し,R19とR20は環を形成していてもよい。Ar17,Ar18,Ar19は同一又は異なるアリレン基を表す。X,k,jおよびnは、前記一般式(1)の場合と同じである。)
【0102】
高分子電荷輸送物質の例示/一般式(8);
【0103】
【化10】

【0104】
(式中、R21は置換もしくは無置換のアリール基、Ar20,Ar21,Ar22,Ar23は同一又は異なるアリレン基を表す。X,k,jおよびnは、前記一般式(1)の場合と同じである。)
【0105】
高分子電荷輸送物質の例示/一般式(9);
【0106】
【化11】

【0107】
(式中、R22,R23,R24,R25は置換もしくは無置換のアリール基、Ar24,Ar25,Ar26,Ar27,Ar28は同一又は異なるアリレン基を表す。X,k,jおよびnは、前記一般式(1)の場合と同じである。)
【0108】
高分子電荷輸送物質の例示/一般式(10);
【0109】
【化12】

【0110】
(式中、R26,R27は置換もしくは無置換のアリール基、Ar29,Ar30,Ar31は同一又は異なるアリレン基を表す。X,k,jおよびnは、前記一般式(1)の場合と同じである。)
【0111】
本発明において電荷輸送層37中に可塑剤やレベリング剤を添加してもよい。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂に対して0〜30重量%程度が適当である。
【0112】
レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいは、オリゴマーが使用され、その使用量は結着樹脂に対して、0〜1重量%が適当である。
浸漬塗工方法におけるこの電荷輸送塗工液の液粘度は、100mPa・s以上が良く、300〜1000mPa・sが好ましい。
【0113】
[単層構成の感光層]
次に、感光層が単層構成である単層感光層33の場合について述べる。
顔料を結着樹脂中に分散した感光体が使用できる。単層感光層33は、電荷発生物質および電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。また、必要により、可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
【0114】
結着樹脂としては、先に電荷輸送層37で挙げた結着樹脂がそのまま用いられるほかに、電荷発生層35で挙げた結着樹脂を混合して用いてもよい。もちろん、先に挙げた高分子電荷輸送物質も良好に使用できる。結着樹脂100重量部に対する電荷発生物質の量は5〜40重量部が好ましく、電荷輸送物質の量は0〜190重量部が好ましくさらに好ましくは50〜150重量部である。
単層感光層は、電荷発生物質、結着樹脂を必要ならば電荷輸送物質とともにテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等で分散した塗工液を用いて、前述の本発明の浸漬塗工法により形成できる。単層感光層の膜厚は、5〜50μm程度が適当である。
【0115】
次に、前記本発明の電子写真感光体用いた画像形成装置及び画像形成方法について、図面を用いて詳しく説明する。
第6図は、本発明の電子写真プロセスおよび電子写真装置を説明するための概略図である。第6図において、電子写真感光体(感光体)51は、本発明の塗膜形成装置を用いた塗膜形成方法により形成された塗膜を乾燥してなる顔料含有層を含む感光層が導電性基体上に設けられているものである。
【0116】
転写前チャージャ57、転写チャージャ60、分離チャージャ61、クリーニング前チャージャ63には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラを始めとする公知の手段が用いられる。転写手段には、一般に上記の帯電器が使用できるが、図に示されるように転写チャージャー60と分離チャージャー61を併用したものが効果的である。
【0117】
また、画像露光部55、除電ランプ52等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0118】
現像ユニット56により感光体51上に現像されたトナーは、転写紙59に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体1上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、ファーブラシ64およびクリーニングブレード65により、感光体から除去される。クリーニングは、クリーニングブラシだけで行なわれることもあり、この場合のクリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。
【0119】
電子写真感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
【0120】
上記構成の画像形成装置は本発明の電子写真感光体を備えているので、繰り返し使用に際しても高品質と信頼性が維持される。また、このような画像形成装置により行われる画像形成方法によれば、濃度ムラや白ポチなどの異常画像の発生がなく、常に安定して高品質で信頼性の高い画像形成を行うことができる。
【0121】
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段を含んだ1つの装置(部品)である。プロセスカートリッジの形状等は多く挙げられるが、一般的な例として、図7の模式図に示す構成例が挙げられる。
【0122】
図7において各符号、76は感光体、77は帯電手段である帯電チャージャ、78はクリーニング手段であるクリーニングブラシ、79は露光手段である画像露光部、80は現像手段である現像ローラを示す。
感光体76は、本発明の塗膜形成装置を用いた塗膜形成方法により形成された塗膜を乾燥してなる顔料含有層を含む感光層が導電性基体上に設けられているものである。
【0123】
上記構成によれば、繰り返し使用に際しても濃度ムラや白ポチなどの異常画像の発生がなく、装置の小型化やメンテナンス性の向上を図ることができるプロセスカートリッジを提供することができる。
【実施例】
【0124】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、「部」はすべて重量単位である。
【0125】
(実施例1)
以下の条件で下引き層、電荷発生層、電荷輸送層用の塗工液を調製し、順次、外径30mm、長さ340mmのアルミニュウム製の円筒状である導電性基体上に設けて、感光体を100本作製した。
【0126】
<下引き層>
下記処方の組成分をアルミボールを使用してボールミルにより72時間分散し、下引き層塗工液を調製した。
〈下引き層塗工液の処方〉
酸化チタン粉末: 50部
アルキッド・メラミン樹脂: 25部
メチルエチルケトン: 100部
【0127】
上記下引き層塗工液を導電性基体上に浸漬塗工し、130℃で20分乾燥して膜厚4μmの下引き層を形成した。なお、同じ条件で100本作製した。
【0128】
<電荷発生層>
次に、下記処方により、ボールミルにてポリビニルブチラールを溶解した溶液およびジスアゾ顔料粉末を全て投入して150時間分散し、電荷発生層塗工液を調製した。
〈電荷発生層塗工液の処方〉
下記構造式(a)で表されるジスアゾ顔料粉末: 50部
ポリビニルブチラール: 5部
メチルエチルケトン: 300部
シクロヘキサノン: 3000部
【0129】
【化13】

【0130】
上記電荷発生層塗工液を前記図1に示した塗膜形成装置の塗工液タンクに充填し、水分吸着タンクと塗工液タンクを冷却して塗工液温度を15℃に保ちながら1ヶ月間電荷発生層塗工液を循環した。すなわち、塗工液は塗工液タンクから塗工層へ供給され、オーバーフローした塗工液は塗工液タンクに戻ると共に、塗工液タンクから水分吸着タンクを通過して塗工液タンクへ循環している。なお、水分吸着タンクのメッシュ開口経は130μmのものを用いて、水分吸着剤としてはモレキュラーシーブ(合成ゼオライト)を充填した。
1ヶ月循環後の電荷発生層塗工液中(塗工槽)に上記下引き層を形成した導電性基体を浸漬した後、引上げて塗膜を形成し、これを100本について連続塗工を実施し、それぞれの塗膜を、130℃で30分乾燥して電荷発生層を形成した。
【0131】
<電荷輸送層>
次に、下記処方の組成分を均一に混合して電荷輸送層塗工液を調製した。
〈電荷輸送層塗工液の処方〉
ポリカーボネート: 15部
下記構造式(b)で表される電荷輸送物質: 7部
テトラヒドロフラン: 70部
【0132】
【化14】

【0133】
先に電荷発生層を形成した導電性基体を上記電荷輸送層塗工液に浸漬塗工した後、130℃で30分乾燥して、膜厚30μmの電荷輸送層を形成して実施例1の電子写真感光体を100本作製した。
【0134】
(比較例1)
実施例1において塗工液タンクを冷却して塗工液の温度を15℃に保ちながら循環したのに変えて、塗工液タンクの冷却を無し(室温25℃)とした以外は、実施例1と全く同様にして比較例1の電子写真感光体を100本作製した。
【0135】
(比較例2)
実施例1において水分吸着タンクを冷却して塗工液の温度を15℃に保ちながら循環したのに変えて、水分吸着タンクの冷却を無し(室温25℃)とした以外は、実施例1と全く同様にして比較例2の電子写真感光体を100本作製した。
【0136】
(比較例3)
実施例1において塗工液を塗工液タンクから水分吸着タンクを通過して塗工液タンクへ循環させているのに変えて、この循環を無しの状態とした以外は、実施例1と全く同様にして比較例3の電子写真感光体を100本作製した。
【0137】
(比較例4)
実施例1において水分吸着タンクのメッシュ開口経が130μmのものを用いたのに変えて、メッシュ開口径を155μmとした以外は、実施例1と全く同様にして比較例4の電子写真感光体を100本作製した。
【0138】
上記実施例1、比較例1〜4で作製したそれぞれ100本ずつの電子写真感光体について塗膜の状態を目視にて検査し、塗工ムラやハジキなどの発生状態を評価し、さらにレーザープリンターに搭載して画像品質を評価した。結果を下記表1に示す。
【0139】
【表1】

【0140】
上記表1の評価結果から、本発明の塗膜形成装置を用いた塗膜形成方法により塗膜を形成して電荷発生層とした実施例の電子写真感光体はいずれも、塗工ムラやハジキなどの発生が無く、さらにレーザープリンターによる画像品質においても異常画像の発生がないことが分かる。一方、塗工液タンクの温度制御をしない比較例1、水分吸着タンクの温度制御をしない比較例2、水分吸着タンクへの循環をしない比較例3、水分吸着タンクのメッシュ開口経を155μmとした比較例4の場合にはいずれも不具合品(NG)が多数発生することが分かる。
本発明の塗膜形成装置を用いれば塗工ムラやハジキなどの発生がなく均一で安定した塗膜の形成が可能であり、異常画像(濃度ムラ、白ポチなど)を発生することのない電子写真感光体が得られる。この電子写真感光体を画像形成装置や画像形成装置用プロセスカートリッジに搭載すれば高品質の画像が安定して形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明における電子写真感光体の塗膜形成装置の一構成例を示す概略図である。
【図2】図1における冷却手段(8)を具備する水分吸着タンク(7)の拡大図である。
【図3】本発明における電子写真感光体の一構成例を示す断面図である。
【図4】本発明における電子写真感光体の別の構成例を示す断面図である。
【図5】本発明における電子写真感光体のさらに別の構成例を示す断面図である。
【図6】本発明の電子写真プロセスおよび電子写真装置を説明するための概略図である。
【図7】本発明のプロセスカートリッジの構成例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0142】
1 導電性基体
2 塗工槽
3 塗工液タンク
4 冷却手段
5 撹拌手段
6 順次循環ポンプ
7 水分吸着タンク
8 冷却手段
9 水分吸着剤
11 バルブ
10 循環フィルタ
20 塗工液供給パイプ
21 メッシュ構造の開口部
22 戻り液輸送パイプ
23 循環輸送パイプ
31 導電性基体
33 感光層
35 電荷発生層
37 電荷輸送層
51 感光体
52 除電ランプ
55 画像露光部
56 現像ユニット
57 転写前チャージャ
59 転写紙
60 転写チャージャ
61 分離チャージャ
63 クリーニング前チャージャ
64 ファーブラシ
65 クリーニングブレード
76 感光体
77 帯電チャージャ
78 クリーニングブラシ
79 画像露光部、
80 現像ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも顔料を含む塗工液に導電性基体を浸漬して、該基体上に、後処理の乾燥で顔料含有層となす塗膜を形成する電子写真感光体の塗膜形成装置であって、
前記装置は,
導電性基体上に顔料を含む塗工液を浸漬塗布する塗工槽と、
該顔料を含む塗工液を収容する、撹拌手段と冷却手段を具備する塗工液タンクと、
該塗工液タンクの底部から塗工槽の底部へ塗工液を供給する塗工液供給パイプと、
該塗工液供給パイプの経路に塗工液タンク側から順次配備された循環ポンプ及び循環フィルタと、
前記塗工槽の底部から導入し、該塗工槽の上部からオーバーフローした塗工液を塗工液タンクに戻す戻り液輸送パイプと、
前記塗工液供給パイプにおける循環ポンプと循環フィルタの間で分岐し、塗工液タンク底部から供給される塗工液の一部をバルブを介して塗工液タンク上部へ循環させる循環輸送パイプと、
該循環輸送パイプの経路に配備された冷却手段を具備し、水分吸着剤を収容した水分吸着タンクと、
を備え、
前記塗工液タンクの冷却手段により、塗工槽内に供給される顔料を含む塗工液を所定温度に維持し、且つ冷却手段を具備する水分吸着タンクにより温度上昇なく塗工液中の水分を除去するように構成したことを特徴とする電子写真感光体の塗膜形成装置。
【請求項2】
前記塗工槽内に供給される塗工液の所定温度が15℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体の塗膜形成装置。
【請求項3】
前記循環輸送パイプの経路に配備された水分吸着タンクへの塗工液流入側が該水分吸着タンクの下側であり、塗工液流出側が水分吸着タンクの上側であるように構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体の塗膜形成装置。
【請求項4】
前記水分吸着剤が、水分吸着タンクに交換可能に収納される吸着剤充填容器に充填されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の電子写真感光体の塗膜形成装置。
【請求項5】
前記水分吸着剤が、合成ゼオライト(モレキュラーシーブ)であることを特徴とする請求項4に記載の電子写真感光体の塗膜形成装置。
【請求項6】
前記水分吸着剤が充填された吸着剤充填容器の塗工液流入側と塗工液流出側は、それぞれメッシュ構造の開口部を有することを特徴とする請求項4または5に記載の電子写真感光体の塗膜形成装置。
【請求項7】
前記メッシュ構造の開口部における開口径が130μm以下であることを特徴とする請求項6に記載の電子写真感光体の塗膜形成装置。
【請求項8】
前記顔料を含む塗工液が、ジスアゾ顔料を含む分散液であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の電子写真感光体の塗膜形成装置。
【請求項9】
少なくとも顔料を含む塗工液に導電性基体を浸漬して、該基体上に、後処理の乾燥で顔料含有層となす塗膜を形成する電子写真感光体の塗膜形成方法であって、
前記方法は、
請求項1〜8の何れかに記載の電子写真塗膜形成装置を用いて、
撹拌手段と冷却手段を具備する塗工液タンクに収容して液温度を制御した顔料を含む塗工液を、該塗工液タンク底部から塗工槽の底部へ、経路中に循環ポンプ及び循環フィルタを塗工液タンク側から順次配備した塗工液供給パイプにより供給し、
前記塗工槽の底部から導入し、該塗工槽の上部からオーバーフローさせた塗工液を戻り液輸送パイプで塗工液タンクに戻し、
並行して、前記塗工液タンク底部から供給される塗工液の一部を、塗工液供給パイプの循環ポンプと循環フィルタの間で分岐し、冷却手段を具備する水分吸着タンクを経路に配備した循環輸送パイプによりバルブを介して塗工液タンク上部へ循環させ、循環経路中で水分吸着剤を収容した水分吸着タンクで塗工液中の水分を温度上昇なく除去し、
前記塗工槽に導入した温度制御された塗工液に導電性基体を浸漬した後引上げ、該基体上に後処理の乾燥で顔料含有層となす塗膜を形成することを特徴とする電子写真感光体の塗膜形成方法。
【請求項10】
請求項9に記載の電子写真感光体の塗膜形成方法により、少なくとも顔料を含む塗工液に導電性基体を浸漬塗工して形成された塗膜を乾燥してなる顔料含有層を有する電子写真感光体であって、
前記顔料含有層が、光導電性顔料を含む感光層であることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項11】
前記顔料含有層が、電荷発生層と電荷輸送層の積層構成からなる感光層における電荷発生層であることを特徴とする請求項10に記載の電子写真感光体。
【請求項12】
前記電荷発生層が、ジスアゾ顔料を含むことを特徴とする請求項11に記載の電子写真感光体。
【請求項13】
電子写真感光体に対して、帯電、露光、現像及び転写を行う工程を含む画像形成方法であって、
前記電子写真感光体が、請求項10〜12の何れかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項14】
少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及び請求項10〜12の何れかに記載の電子写真感光体からなることを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
少なくとも請求項10〜12の何れかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、クリーニング手段から選ばれる少なくとも1つの手段とが一体とされたことを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−225867(P2007−225867A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46582(P2006−46582)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】