説明

電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置、及び該ガス流量異常診断装置を備えた電子式ガスメータ

【課題】 ガス供給設備に伴う各種要因によって発生するガス流量異常の発生及びその原因を具体的に特定することができるようなガス流量異常診断を行えるようにした電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置及び該装置を備える電子式ガスメータを提供する。
【解決手段】 電子式ガスメータの有する流量演算手段14−11によって算出した流量について流量異常検出手段14−2が複数項目の流量異常を検出する。異常データ記憶手段16−1が検出した項目別の流量異常データを記憶する。流量異常検出手段14−2は安定していた流量が所定値巾以上で変化したことを流量異常として検出して計数する流量異常回数計数手段14−21を有し、その計数値を異常データ記憶手段16−1が流量異常データとして記憶する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置、及び該ガス流異常診断装置を備えた電子式ガスメータに係り、特に、ガス流路中のガスの流速に応じて変化する物理量を間欠的に測定し、該測定した物理量に基づいてガス流路を通過したガスの通過流量を求める流量演算手段と、該流量演算手段によって求めた通過流量に基づいて積算流量を求める流量積算手段とを備える電子式ガスメータにおいて発生するガス流量異常を診断するガス流量異常診断装置、及び、該異常診断装置を備えた電子式ガスメータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、電子式ガスメータとして、例えば特開平9−280917号公報において提案されているものが知られている。このガスメータでは、ガス流路内に流れの方向に相対して一定距離だけ離れて配置された超音波周波数で作動する例えば圧電式の第1及び第2の振動子を有し、一方の振動子から流れ方向に超音波を発生しこの超音波を他方の振動子で検出すると、遅延時間を設けて再び振動子から超音波を発生させ、この繰り返しを行ってその時間を計測し、逆に他方の振動子から流れに逆らって超音波を発生し同様の繰り返し時間を計測し、この計測した時間と遅延時間の差からガスの流速を演算するものである。
【0003】上述したようにガスの流速を計測するに当たって、振動子によって発生した図6(a)に示すような送信波形の超音波を受信して得られる図6(b)に示すような波形の受信信号を相互に検出することが行われるが、この受信信号の検出に当たって受信波形を基準レベルRと比較することが行われる。
【0004】そして、ガス流路内を流れているガスの流速を間欠的に求め、この流速にガス流路の断面積を乗じて瞬時流量を求める演算処理を行うようになっており、この瞬時流量に間欠時間を乗じて通過流量を求め、更にこの通過流量を積算して求めた積算流量を表示する。
【0005】このような電子式ガスメータでは、従来の膜式と呼ばれる機械式のガスメータと同様に、演算して求めた流量に基づいて、既知の最大流量、増加流量、使用時間オーバー、復帰安全確認中の漏洩、微少漏洩などのガス流量異常の検出を行うことが求められるが、膜式ガスメータと異なり、流速を計測している関係で、流速に変化を生じさせる各種の要因による流量異常を考慮する必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上述した従来の電子式ガスメータにおいては、上述した一般的な流量異常を検出し警報することは考えられても、流速を変化させる各種の要因による流量異常の発生原因を具体的に特定することができるような異常診断を行えるようにする考え方がない。
【0007】このため、例えば、LPガスを供給するガス供給設備において、圧力容器に収容された液化ガスを所定の供給圧のガスに変換する圧力調整器の不調によって一度気化したガスが液状態に戻る再液化現象が生じ、このような現象の発生によってガス供給圧が安定しないだけでなく、ガス流速に変動が生じてガス流量が変化しても、これを発見することは至難とされている。
【0008】また、例えば集合住宅などのガス供給設備において、ガスメータの上流側の比較的近いところでガス供給管が分岐されて隣接宅へのガス供給が行われ、しかも隣接宅においてガスヒートポンプ(GHP)が使用されている場合に、その運転によってガス供給路のガス圧力に変動が生じ、ガス供給圧が不安定になり、これが原因でガス流量に脈流が発生されることがあっても、再液化同様に、これを発見することは至難のことであった。
【0009】仮に、これらを発見しょうとした場合には、作業員が現場に出向いてガス供給設備を時間をかけて診断し、解析しなければならず、各種要因によって発生するガス流量異常の発見及びそれに対する対処を迅速に行うことが不可能であった。
【0010】よって本発明は、上述した従来の問題に鑑み、ガス供給設備に伴う各種要因によって発生するガス流量異常の発生及びその原因を具体的に特定することができるようなガス流量異常診断を行えるようにした電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置を提供することを課題としている。
【0011】本発明はまた、ガス供給設備に伴う各種要因によって発生するガス流量異常の発生及びその原因を具体的に特定することができるようなガス流量異常診断を行えるようにしたガス流量異常診断装置を備えた電子式ガスメータを提供することを課題としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため成された請求項1記載の発明は、図1の基本構成図に示すように、ガス流路10中のガスの流速に応じて変化する物理量を間欠的に測定し、該測定した物理量に基づいてガス流路を通過したガスの通過流量を求める流量演算手段14−11と、該流量演算手段14−11によって求めた通過流量に基づいて積算流量を求める流量積算手段14−12とを備える電子式ガスメータの前記流量演算手段14−11によって算出した流量について複数項目の流量異常を検出する流量異常検出手段14−2と、該流量異常検出手段14−2によって検出した項目別の流量異常を流量異常データとして記憶する異常データ記憶手段16−1とを備え、前記流量異常検出手段14−2は、安定していた流量が所定値巾以上で変化したことを検出し、該検出を流量異常として計数する流量異常回数計数手段14−21を有し、前記異常データ記憶手段16−1に記憶する前記流量異常データとして、前記流量異常回数計数手段14−21による計数値を含むことを特徴とする電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置に存する。
【0013】請求項1記載の電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置においては、流量異常検出手段14−2が電子式ガスメータの流量演算手段14−11によって算出した流量について複数項目の流量異常を検出し、検出した項目別の流量異常を流量異常データとして異常データ記憶手段16−1が記憶する。流量異常検出手段14−2の流量異常回数計数手段14−21は、安定していた流量が所定値巾以上で変化したことを検出し、該検出を流量異常として計数し、異常データ記憶手段16−1は流量異常データとして、流量異常回数計数手段14−21による計数値を記憶するようになっているので、異常データ記憶手段16−1に流量異常データとして記憶した計数値によって、流量についての複数項目の異常をその発生頻度とともに知ることができる。
【0014】請求項2記載の発明は、請求項1記載の電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置において、前記異常データ記憶手段16−1に記憶する前記流量異常データとして、前記流量異常の各々の発生時刻を更に含むことを特徴とする電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置に存する。
【0015】請求項2記載の電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置においては、異常データ記憶手段16−1が流量異常データとして、各流量異常の発生時刻を更に記憶することで、請求項1の発明の作用に加え、異常データ記憶手段16−1に流量異常データとして記憶した発生時刻によって、各流量異常の発生とその発生時刻も知ることができる。
【0016】請求項3記載の発明は、請求項1記載の電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置において、前記ガス流路中のガスが圧力調整器によって圧力調整されて供給されるLPガスであり、前記流量異常回数計数手段14−21は、流量有りで安定していた流量が所定値巾以上で変化したことを検出し、該検出を再液化による流量異常として計数する再液化回数計数手段14−211を有し、前記異常データ記憶手段16−1に記憶する前記流量異常データとして、前記再液化回数計数手段14−211による計数値及び前記再液化の各々の発生時刻を含むことを特徴とする電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置に存する。
【0017】請求項3記載の電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置においては、流量異常回数計数手段14−21の有する再液化回数計数手段14−211が、流量有りで安定していた流量が所定値巾以上で変化したことを検出し、該検出を再液化による流量異常として計数し、異常データ記憶手段16−1が流量異常データとして再液化回数計数手段14−211による計数値を記憶するとともに各再液化の発生時刻を記憶することで、請求項1記載の発明の作用に加え、異常データ記憶手段16−1に流量異常データとして記憶した発生時刻によって、再液化の発生とその発生時刻も知ることができる。
【0018】請求項4記載の発明は、請求項1又は3記載の電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置において、前記流量異常回数計数手段14−21は、平均流量が流量なし又は任意の流量で安定している流量の変化巾が所定値以上であることを検出し、該検出を脈流による流量異常として計数する脈流回数計数手段14−212を有し、前記異常データ記憶手段16−1に記憶する前記流量異常データとして、前記脈流回数計数手段14−212による計数値を記憶及び前記脈流の各々の発生時刻を含むことを特徴とする電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置に存する。
【0019】請求項4記載の電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置においては、流量異常回数計数手段14−21の有する脈流回数計数手段14−212が平均流量が流量なし又は任意の流量で安定している流量の変化巾が所定値以上であることを検出し、該検出を脈流による流量異常として計数し、異常データ記憶手段16−1が流量異常データとして脈流回数計数手段14−212による計数値を記憶するとともに各脈流の発生時刻を記憶することで、請求項1又は3記載の発明の作用に加え、異常データ記憶手段16−1に流量異常データとして記憶した発生時刻によって、脈流の発生とその発生時刻も知ることができる。
【0020】請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置において、前記電子式ガスメータの前記流量演算手段14−11が、ガス流路内に流れの方向に相対して一定距離だけ離れて配置され超音波信号を送受信する第1及び第2の振動子TD1,TD2と、該振動子の送受信を切り換える切換手段14−111と、前記一方の振動子から超音波信号が送信され他方の振動子で基準レベル以上の信号が受信されたとき、前記振動子間相互の超音波伝搬を予め定めた複数回行う繰り返し手段14−112と、前記繰り返し時に送信信号を遅らせる遅延手段14−113と、各繰り返しの伝搬時間を計測する計時手段14−114とを有し、前記物理量を、前記計時手段14−114の各計時値と前記遅延手段14−113の遅延値との差により間欠的に測定し、該測定した差に基づいて前記通過流量を求めることを特徴とする電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置に存する。
【0021】請求項5記載の電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置においては、超音波のガス中における伝搬時間がガス流の流速に応じて変化する現象を利用し、流量演算手段14−11が一対の超音波振動子の一方からガス流路中のガスの流れ方向に発射した超音波を他方の振動子によって受信させて、超音波のガス中における伝搬時間を計時し流速を求めることによって、通過流量を求めるものであっても、請求項1〜4記載の発明の作用によって、ガス流量異常を知ることができる。
【0022】請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置において、前記流量異常検出手段14−2が流量異常を検出したとき又は要求に応じ、前記異常データ記憶手段16−1に記憶されている流量異常データに基づいて異常警告を行う警告手段14−3を備え、前記警告手段14−3は、音によって警告を行う放音警告手段、表示によって警告を行う表示警告手段、前記異常データ記憶手段に記憶している流量異常データを通信回線を介して遠隔地に送出する遠隔警告手段の少なくとも1つを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置に存する。
【0023】請求項6記載の電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置においては、流量異常検出手段14−2が異常を検出したとき又は要求に応じ、異常データ記憶手段16−1に記憶されている流量異常データに基づいて警告手段14−3が警告を行うことで、請求項1〜5記載の発明の作用に加え、警告によって項目別の流量異常を知ることができる。
【0024】請求項7記載の発明は、ガス流路中のガスの流速に応じて変化する物理量を間欠的に測定し、該測定した物理量に基づいてガス流路を通過したガスの通過流量を求める流量演算手段14−11と、該流量演算手段によって求めた通過流量に基づいて積算流量を求める流量積算手段14−12と、請求項1〜6のいずれかに記載のガス流量異常診断装置とを備えることを特徴とする電子式ガスメータに存する。
【0025】請求項7記載の電子式ガスメータおいては、ガスメータを通じて供給するガス流を狂わせる流量異常の原因を異常診断装置が具体的に特定することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図2は本発明の電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置とガス流量異常診断装置を備えた電子式ガスメータの実施の形態を示している。図示の電子式ガスメータは、ガスメータ中の流路としてのガス流路10内にガス流方向において距離Lだけ離され互いに対向して配置された超音波周波数で作動する例えば圧電式の第1及び第2の振動子TD1及びTD2を有する超音波式ガスメータとして構成されている。
【0027】各振動子TD1及びTD2、TD3はインタフェース(I/F)回路11a及び11bをそれぞれ介して送信回路12及び受信回路13に接続されている。送信回路12は、演算処理制御部14の制御の下で、振動子TD1、TD2の一方を駆動して超音波信号を発生させる信号をパルスバーストの形で送信し、このための発振回路(図示せず)を内蔵している。受信回路13は、ガス流路10を通過した超音波信号を受信した他方の振動子TD1、TD2からの信号を入力して超音波信号を増幅する前置増幅器(図示せず)を内蔵し、増幅した信号を演算処理制御部14に対して入力している。
【0028】演算処理制御部14には、流量異常検出処理によって検出された流量異常のデータを記憶するため、バックアップ電源を必要としない異常データ記憶手段を構成するE2 PROMのような不揮発性メモリ16が接続されている。また、演算処理制御部14には、ガスメータの保守管理業務を行っている施設などの監視装置に対して記憶している流量異常データを有線又は無線の通信回線を介して送出したり、通信回線を介しての監視装置側からの定期的なポーリングに応じて記憶している流量異常データを送出するための網制御ユニット(NCU)17が接続されている。
【0029】また、演算処理制御部14は、高速に信号を処理するデジタル信号処理ユニットや、これを制御するためのマイクロコンピュータなどを有し、マイクロコンピュータはプログラムに従って各種の処理を行う中央処理ユニット(CPU)、CPUが行う処理のプログラムなどを格納した読み出し専用のメモリであるROM、CPUでの各種の処理過程で利用するワークエリア、各種データを格納するデータ格納エリアなどを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM、時計及びカレンダなどを内蔵する。
【0030】演算処理制御部14は、流量を計測するため以下のような処理を行う。まず、送信回路12から信号を供給する振動子と受信回路13で超音波信号を受信する振動子とを交互に切り換える切換制御を行う。また、受信回路13で受信され増幅された信号をA/D変換して入力し、この入力した信号を予め設定した基準レベルと比較する。この比較によって基準レベル以上の信号の入力を検出したとき、予め定めた時間遅延させて、送信回路12から振動子を駆動するための信号を送信させる動作を予め定めた設定回数繰り返す。このことによって、送信回路から信号を送信させた後、受信回路13を介して受信した信号が基準レベルを越えたことを検出する毎に、上述の動作を設定回数繰り返すが、CPU内に構成したタイマカウンタに、繰り返しの開始からの時間を計時する動作を開始させ、設定回数が終了したときに停止させることで、設定回数の送信の開始から送信の終了までの時間を計測する。
【0031】一方の振動子から送信して他方の振動子によって受信した超音波信号に基づいて時間計測が行われた後、送信側と受信側の振動子を切り換えて、例えば下流から上流に向かって超音波信号を発信し、この発信を上述のように繰り返し、その時間を計時する。そして、上述のように計時した時間の時間差からガス流路10の大きさや流れの状態を考慮して流量演算を行って流量値を求める。また、この流量値を積算して積算流量を求め、この流量積算によって求めた流量積算値を表示器15に表示させることでガス使用量を計量表示する。
【0032】上述のように超音波を受信して繰り返し送信すると、振動子間を反射する超音波信号が送信波と重畳するが、上述のように送信タイミングを遅延させることによって、反射波の干渉を防ぐことができる。
【0033】以上によって、計測が開始すると、第1の振動子TD1から第2の振動子TD2へ超音波を送信可能な状態にする。駆動によってバースト送信が開始され、上述のように超音波の受信と送信が所定の時間の遅延をもって連続的に繰り返され、繰り返し回数が設定値に達すると、繰り返しを停止するとともに、タイマカウンタを停止させて計時して時間T1を計測する。次に、第2の振動子TD2から第1の振動子TD1へ超音波を送信可能な状態に切り換える。そして、超音波の送受信の繰り返しを行い、時間T2を計測して計測を終了する。
【0034】時間T1とT2は遅延時間Tdを含んでいるので、遅延除去処理を行って遅延時間を差し引いて真の超音波伝搬時間T1′とT2′を算出する。すなわち、T1′=T1−Td (1)
T2′=T2−Td (2)
このT1′とT2′の平均値から平均伝搬時間が求められ、その平均伝搬時間と振動子TD1とTD2の距離Lから、測定したときの音速Cが求められる。すなわち、C=L/((T1′+T2′)/2) (3)
この音速Cは温度tとC=331.5+0.607t (4)
の関係にあるので、温度が算出できる。
【0035】上述のT1′とT2′の差にガス流路の形状によって決まる流量係数K1と、温度t1による補正係数K2により流量演算によって流量値Qを求める。すなわち、Q=K1×K2×(T1′−T2′) (5)
なお、ガスの流速をVとすると、T1′=L/(C+V) (6)
T2′=L/(C−V) (7)
となっており、この時間T1′とT2′の逆数を求めて流量係数K3を乗じて流量Qを求めると、Q=K3×((1/T1′)−(1/T2′)) (8)
となって、温度によって変化する音速Cの補正を行わずに流量を算出することができる。
【0036】演算処理制御部14はまた、ガス流路10を通過した超音波信号を受信した他方の振動子TD1、TD2からの信号を受信した超音波信号を受信回路13にて増幅した後A/D変換して入力すると、上述した流量Qの演算を行った後に、各種の流量異常を検出する流量異常検出処理を行う他、検出した流量異常に基づいて流量異常データを記憶する異常データ記憶処理を行うとともに、記憶した流量異常データに基づいて警告処理を行う。
【0037】演算処理制御部14が行う流量異常検出処理及び異常データ記憶処理には、演算した流量に基づく流量異常を検出する処理とこの検出結果を記憶する処理とが含まれる。流量異常検出処理によって検出された流量異常はデータ化して演算処理制御部14に接続された不揮発性メモリ16に記憶される。
【0038】流量異常検出処理では、演算して求めた流量に基づいて、既知の最大流量、増加流量、使用時間オーバー、復帰安全確認中の漏洩、微少漏洩などの異常検出が行われる他に、再液化及び脈流の各流量異常をそれぞれ検出する処理が行われる。
【0039】まず、再液化異常検出処理では、図3(a)又は(b)に示すように、任意の流量で安定していた流量が所定値巾Δq以上で変化したことを検出し、この検出回数を再液化の発生回数として計数し、この計数値を流量異常データとして不揮発性メモリ16内に記憶し、計数値が所定値以上となったとき警告を発する。
【0040】さらに、例えばガスヒートポンプ(GHP)の運転によってガス流路に生じる脈流を検出するための脈流異常検出処理では、図4(a)又は(b)に示すように、流量なし、すなわち流量0の状態又は任意の流量Q′で安定していた流量が平均流量なし又は任意の平均流量Q′で所定巾Δq′又はΔq″以上の変化流量が発生したことを検出し、該回数を脈流として計数し、この計数値と各脈流の発生時刻を流量異常データとして不揮発性メモリ16内に記憶する。この場合も、計数値が所定値以上となったとき警告を発する。
【0041】演算処理制御部14が行う警告処理においては、音によって警告を行う放音警告、表示によって警告を行う表示警告、異常データ記憶手段に記憶している流量異常データを通信回線を介して遠隔地に送出する遠隔警告の少なくとも1つが行われ、いずれの場合にも、少なくとも必要に応じて、記憶した流量異常データによって流量異常の内容を具体的に知らせることができるようになっている。また、記憶した流量異常データを読み出したとき、通信によって或いはスイッチ操作によって外部からリセット要求したときにクリアできるようにする。
【0042】音による警告は、流量異常の発生が所定回数発生した場合に、フザー音又は音声によって行わせることができる。表示による警告は、積算流量及びセキュリティ表示を行う例えば液晶或いはLEDなどからなる表示器15に一緒にあるいは選択的に全項目又は流量異常の有無のみのを行わせることができる。なお、電池電源の消耗を最小限に抑えるためには、外部スイッチの操作時のみ表示を行うようにすることもできる。また、遠隔地への通信による警告は、異常発生時に網制御ユニットを介して端末発呼によって行い、ガスメータなどの保守管理業務を行っている施設などの監視装置に対して記憶している流量異常データを送出したり、監視装置側からの定期的なポーリングに応じて記憶している流量異常データを送出することもできる。何れにしても、警告があったときには、流量異常データを参照することによって、流量異常の原因を特定して流量異常に対する対策を容易にかつ早急に取ることができる。
【0043】警告手段としては、音によって警告を行う放音警告手段、表示によって警告を行う表示警告手段、記憶している流量異常データを通信回線を介して遠隔地に送出する遠隔警告手段の少なくとも1つを有することで、音、表示、あるいは、異常データ記憶手段に記憶している流量異常データの遠隔地への送出によって、流量異常を警告するようになり、警告を必要に応じた方法で行うことができる。
【0044】具体的には、超音波式ガスメータに組み込まれたときには、種々の効果が得られる。例えば、ガスメータを通じて供給されるガス流の流量異常の早期の発見、早期の警告、早期の通報、並びに修理勧告や警告が可能になるので、ユーザに安心を与えることができる他、警告があったときには流量異常発生部の容易な特定によって迅速な対応ができるようになり、また不具合のの詳細な解析が可能になり、事後の対策を容易にすることができる。
【0045】以上概略動作を説明したが、演算処理制御部14のCPUが行う処理を示す図5のフローチャートを参照して、以下その詳細を説明する。
【0046】演算処理制御部14は例えば電源投入によって動作を開始し、その最初のステップS1において送信回路12に第1の振動子TD1を接続するとともに、受信回路13に第2の振動子TD2を接続する切り換えを行ってからステップS2に進んで駆動を行うとともに、繰り返し回数をインクリメントして計数する。次のステップS3に進んで駆動回数が2であるか否かを判定し、判定がYESのときにはステップS4に進んで時間計測のための計時を開始し、NOのときにはステップS4を飛ばしてステップS5に進んで送信遅延時間の経過を待ってからステップS6に進み、ここで送信回路12を介して振動子12を振動させる送信信号を出力して超音波信号を発生させる。
【0047】次にステップS7に進んで第2の振動子TD2が超音波信号を受信して変換して得られる電気信号を受信回路13によって増幅した後A/D変換して入力する。その後、ステップS8に進んで受信信号が予め定めた基準レベル以上となったか否かを判定し、越えておらずステップS8の判定がNOのときには上記ステップS7に戻り、基準レベル以上となってステップS8の判定をYESとなるまで受信回路13によって増幅された電気信号をA/D変換して入力し続ける。
【0048】基準レベル以上の信号を検出しステップS8の判定がYESなるとステップS9に進んで再度受信回路13によって増幅された電気信号をA/D変換して入力してからステップS10に進んで上記ステップS9で入力した受信信号がゼロクロスしたか否かを判定する。ゼロクロス点を検出できずステップS10の判定がNOのときには上記ステップS9に戻り、ゼロクロスしたことを検出してステップS10の判定がYESとなるまで受信回路13によって増幅された信号をA/D変換して入力し続ける。
【0049】ゼロクロス点を検出しステップS10の判定がYESなるとステップS11に進んで上記ステップS2において計数している駆動回数に基づいて繰り返し回数が設定回数Nとなったか否かを判定し、設定回数NになっておらずステップS11の判定がNOのときには上記ステップS2に戻って駆動を再開するとともに駆動回数をインクリメントして計数してから素S3に進む。ステップS3の判定はNOであるので、ステップS4を飛ばして進む次のステップS5において送信遅延時間の経過を待ってからステップS6に進み、ここで送信回路12を介して第1の振動子12を振動させる送信信号を出力して超音波信号を発生させる上述の動作を繰り返す。
【0050】繰り返し回数が設定回数Nとなって上記ステップS11の判定がYESになるとステップS12に進んで上記ステップS4において開始した時間計測のための計時を終了し、そのときの超音波伝搬時間T1を得る。その後ステップS13に進んで時間計測が終了したか否かを判定するが、第2の振動子TD2から第1の振動子TD1への超音波伝搬時間T2の計測が終わっていないので、ステップS13の判定はNOとなり、上記ステップ1に戻って送信回路12に第2の振動子TD2を接続するとともに、受信回路13に第1の振動子TD1を接続する切り換えを行ってから上述したステップS2以降の処理を繰り返す。
【0051】この繰り返し処理によってステップS11の判定がYESになったときには、ステップS12において第2の振動子TD2から第1の振動子TD1への超音波伝搬時間T2の時間計測が終了してステップS13の判定もYESとなってステップS14に進む。ステップS14においては上記ステップS12において計測した伝搬時間T1及びT2に含まれている遅延時間Tdを除去して伝搬時間T1′とT2′を求める。その後ステップS15に進んでステップS14において求めた伝搬時間T1′とT2′とによって上述した式(8)に基づいて流量Qを演算する。その後ステップS16に進んでステップS15において演算した流量に基づいて流量異常検出処理を行い、ステップS16における流量異常検出処理が終わったら次の時間計測のため上記ステップS1に戻って上述の処理を繰り返す。
【0052】なお、ステップS16の流量異常検出処理では、流量異常データの記憶、警告処理も行う。
【0053】
【発明の効果】以上説明したように請求項1記載の発明によれば、流量異常データとして記憶した計数値によって、流量についての複数項目の異常をその発生頻度とともに知ることができるので、流量異常発生の原因を具体的に特定することができるような異常診断を行える電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置が得られる。
【0054】また、請求項2記載の発明によれば、流量異常データとして記憶した発生時刻によって、各流量異常の発生とその発生時刻も知ることができるので、流量異常発生の原因を具体的に特定することがより容易にできるような異常診断を行える電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置が得られる。
【0055】更に、請求項3記載の発明によれば、流量異常データとして記憶した発生時刻によって、再液化の発生とその発生時刻も知ることができるので、流量異常の一つである再液化の発生の原因を具体的に特定することがより容易にできるような異常診断を行える電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置が得られる。
【0056】請求項4記載の発明によれば、流量異常データとして記憶した発生時刻によって、脈流の発生とその発生時刻も知ることができるので、流量異常の一つである脈流の発生の原因を具体的に特定することがより容易にできるような異常診断を行える電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置が得られる。
【0057】請求項5記載の発明によれば、電子式ガスメータが超音波のガス中における伝搬時間を計時し流速を求めることによって、通過流量を求めるものであっても、請求項1〜4記載の発明同様の効果を奏する電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置が得られる。
【0058】請求項6記載の発明によれば、異常を検出したとき又は要求に応じ、記憶されている流量異常データに基づいて警告を行うことで、警告によって項目別の流量異常を知ることができる電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置が得られる。
【0059】請求項7記載の発明によれば、ガスメータを通じて供給するガス流を狂わせる流量異常の原因を異常診断装置によって具体的に特定することができる電子式ガスメータが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置及び該装置を組み込んだ電子式ガスメータの基本構成を示すブロック図である。
【図2】本発明による電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置及び該装置を組み込んだ電子式ガスメータの一実施の形態を示す図である。
【図3】再液化流量異常が発生したときの受信波形の波形例を示す波形図である。
【図4】脈流流量異常が発生したときの受信波形の波形例を示す波形図である。
【図5】図2中の演算処理制御部が行う処理の一例を示すフローチャートである。
【図6】超音波式において超音波伝搬時間を計測する方法の一例を説明するための送信信号と受信信号の波形図である。
【符号の説明】
10 ガス流路
TD1 第1の振動子
TD2 第2の振動子
14−11 流量演算手段(演算処理制御部)
14−111 切換手段(演算処理制御部)
14−112 繰り返し手段(演算処理制御部)
14−113 遅延手段(演算処理制御部)
14−114 計時手段(演算処理制御部)
14−12 流量積算手段(演算処理制御部)
14−2 流量異常検出手段(演算処理制御部)
14−21 流量異常回数計数手段(演算処理制御部)
14−211 再液化回数計数手段(演算処理制御部)
14−212 脈流回数計数手段(演算処理制御部)
14−3 警告手段(演算処理制御部)
16−1 異常データ記憶手段(不揮発性メモリ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ガス流路中のガスの流速に応じて変化する物理量を間欠的に測定し、該測定した物理量に基づいてガス流路を通過したガスの通過流量を求める流量演算手段と、該流量演算手段によって求めた通過流量に基づいて積算流量を求める流量積算手段とを備える電子式ガスメータの前記流量演算手段によって算出した流量について複数項目の流量異常を検出する流量異常検出手段と、該流量異常検出手段によって検出した項目別の流量異常を流量異常データとして記憶する異常データ記憶手段とを備え、前記流量異常検出手段は、安定していた流量が所定値巾以上で変化したことを検出し、該検出を流量異常として計数する流量異常回数計数手段を有し、前記異常データ記憶手段に記憶する前記流量異常データとして、前記流量異常回数計数手段による計数値を含むことを特徴とする電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置。
【請求項2】 前記異常データ記憶手段に記憶する前記流量異常データとして、前記流量異常の各々の発生時刻を更に含むことを特徴とする請求項1記載の電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置。
【請求項3】 前記ガス流路中のガスが圧力調整器によって圧力調整されて供給されるLPガスであり、前記流量異常回数計数手段は、流量有りで安定していた流量が所定値巾以上で変化したことを検出し、該検出を再液化による流量異常として計数する再液化回数計数手段を有し、前記異常データ記憶手段に記憶する前記流量異常データとして、前記再液化回数計数手段による計数値及び前記再液化の各々の発生時刻を含むことを特徴とする請求項1記載の電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置。
【請求項4】 前記流量異常回数計数手段は、平均流量が流量なし又は任意の流量で安定している流量の変化巾が所定値以上であることを検出し、該検出を脈流による流量異常として計数する脈流回数計数手段を有し、前記異常データ記憶手段に記憶する前記流量異常データとして、前記脈流回数計数手段による計数値を記憶及び前記脈流の各々の発生時刻を含むことを特徴とする請求項1又は3記載の電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置。
【請求項5】 前記電子式ガスメータの前記流量演算手段が、ガス流路内に流れの方向に相対して一定距離だけ離れて配置され超音波信号を送受信する第1及び第2の振動子と、該振動子の送受信を切り換える切換手段と、前記一方の振動子から超音波信号が送信され他方の振動子で基準レベル以上の信号が受信されたとき、前記振動子間相互の超音波伝搬を予め定めた複数回行う繰り返し手段と、前記繰り返し時に送信信号を遅らせる遅延手段と、各繰り返しの伝搬時間を計測する計時手段とを有し、前記物理量を、前記計時手段の各計時値と前記遅延手段の遅延値との差により間欠的に測定し、該測定した差に基づいて前記通過流量を求めることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置。
【請求項6】 前記流量異常検出手段が流量異常を検出したとき又は要求に応じ、前記異常データ記憶手段に記憶されている流量異常データに基づいて異常警告を行う警告手段を備え、前記警告手段は、音によって警告を行う放音警告手段、表示によって警告を行う表示警告手段、前記異常データ記憶手段に記憶している流量異常データを通信回線を介して遠隔地に送出する遠隔警告手段の少なくとも1つを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子式ガスメータにおけるガス流量異常診断装置。
【請求項7】 ガス流路中のガスの流速に応じて変化する物理量を間欠的に測定し、該測定した物理量に基づいてガス流路を通過したガスの通過流量を求める流量演算手段と、該流量演算手段によって求めた通過流量に基づいて積算流量を求める流量積算手段と、請求項1〜6のいずれかに記載のガス流量異常診断装置とを備えることを特徴とする電子式ガスメータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2001−165743(P2001−165743A)
【公開日】平成13年6月22日(2001.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−350738
【出願日】平成11年12月9日(1999.12.9)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】