説明

電子指紋と電子署名機能を持つ、コイルを横切るジャンパーのないHF帯の格段にコストダウンされたICカードの製造方法

【課題】多数巻きのコイルをまたぐジャンパー線や共振容量を不要とし、またセキュリティと有用性を高めたHF帯RFIDカードを提供する。
【解決手段】フィルム基板の両面に形成された対向電極による静電容量とコイルで共振回路を構成することによりスルーホールを不要とする。またカード中央部に複数のLC共振回路を形成し、共振周波数群のランダムなアナログ量の組み合わせによりカードかそれを保持する個人を表す電子指紋を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパスモ、JRのスイカ、社員証等に広く使われている13.56MHz帯のICカードの、製造時の多数回巻きコイルのジャンパーを不要とし、且つICカードに電子指紋の機能を持たせる技術分野のものである。

【背景技術】
【0002】
HF帯のICカードはすでに13.56MHzを使い市場導入され数cm程度のニアコンタクトで社員証、定期券、プリペイド切符などに使用されている。このICカード応用では、図1に示すように、クレジットカード寸法の誘電体フィルムに4〜8ターンのコイルが形成され、IC上の静電容量との間で共振周波数が決められているが、導電性インクを印刷してジャンパーを作りLC共振の閉ループを構成している。このために付加工程を必要としていた。

また13.56MHzの共振周波数は正確でなければならない。コイルのインダクタンスと合わせて共振周波数を決定する容量は、従来外付けの5%精度の部品を実装するか、またはICチップ上の通常15%の精度のものを調整して使うかの方法があった。前者の方法はICチップとジャンパーの他に容量をマウントする別工程が必要であった。後者はICに記憶された調整値は、到来電波が共振を引き起こしてそこで電圧を発生させ、記憶された調整値を当てはめる必要があり、初期に共振周波数がずれていると、十分な電圧が発生せず調整が出来ないという、鶏と卵の関係が出来てしまう問題があった。ICチップが大きかった時代はチップを縦長の形状にし、ICチップ自体にジャンパーの役割をさせる出願があるが、ICチップが1ミリ角以下になっている現在では無意味である。

半導体プロセスが微細化して、ICチップの消費電流は十分に減っても、共振周波数の精度が高くなければ、ICカードのLC共振のQ値を高く出来ず、数cmのトランザクション距離に留まる。図2に従来の一般的なICカードの内部回路を示す。

RFIDのICチップ上の容量を使う場合は、ボンディングワイヤの抵抗値が共振ループに入り、高いQ値が得られない。また13.56MHzの物理的なセキュリティレベルが高くなく、いたずらに冗長な暗号化をRFIDカードのトランザクションに課していた。従来のRFID技術では、複数の人が止まらずにセキュリティチェックを受けられるような可能性(ワイドゲート)を持っていない。またICカードの製造コストが、磁気カードを置き換えるには至らず、便利さと引き換えに誰がその置き換えコストを負担するかという問題が残っている。またRFIDカードを発展させて行った場合、何枚ものカードを持つ必要があり、単なる共通化の努力だけでは解決できない問題を抱えている。従来のRFIDカードは次の100年間フォーマットを変えないという確固たる決意が持てるような究極性を有していない。

【0003】
【特許文献1】特公平07−032368
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまでのHF帯ICカードの幾つかの問題点は
1)
従来のICカードの製造コストは40円程度であるが、これを20円程度にまで引き下げなければ、誰がICカードに切り替えるコストを負担するかの問題が残る。
2)
従来のリーダの設置コストは20万円〜400万円程度であったが、これを1000円〜2万円程度に引き下げられなければ一般化が進まず、局所的な適用に留まって社会システムのバランスを欠く。
3)
半導体の微細化にともなって、高いQ値のLC共振として、数cmの限定されたアクセス距離から数mの複数カード同時アクセスに切替え、新しいアンチコリジョンを適用し、同時にセキュリティを飛躍的に高め、だらだらとEEPROM上の冗長なIDを読み出し、暗号を発行して利便性を損なうのを改めなければならない。
4)
LC共振は高い周波数精度でICチップの外側で決定されていなければならない。
5)
導電性インクの印刷工程などによりジャンパーを形成する追加工程を無くさなければならない。またスルーホールを使ってはならない。
6)
ICカードの貼り合わせの最終工程までロールツーロールで製造が行なわれなければならない。
などであった。

RFIDタグと対照的に、RFIDカードでは自立機能をカード側に持たせ、カードを1つのコンピュータを目指す理想に偏り、消費電力が減らず、処理能力が低下し、セキュリティも高まらないでいた。これらを見直し、出来るだけ少ない機能で堅牢さと処理能力を回復することが課題となっている。

13.56MHzを使用するHF帯のICカードの製造に於いてコイルと交差するジャンパーをなくすることが製造工程の簡単化に不可欠である。また個別部品かICチップ上の容量を共振素子として使わなくて済み、電極を作ったままですでに精度のよい高いQ値を持つ共振回路が形成されているのが理想である。またICチップのボンディングワイヤの抵抗分が共振ループには入らないようにできればQ値が高まり性能が向上する。

13.56MHzを使用するHF帯のICカードは物理的なセキュリティレベルが低いが、電子指紋のような物理的なセキュリティ機能を、コストアップゼロで埋込めるのが好ましい。

またRFIDのカードリーダが常時強い電波を出すのではなく、また間歇的に強い電波を出して休止期間の不便さを設けるのでもなく、遠くからRFIDカードの接近が感知されて、必要な場合にのみ電波を出すのが、電波公害の撲滅には必要である。また徒に強い電波を出すことをやめ、適切な電波の大きさに限ることにより、盗聴の機会を減ずるようにしなければならない。

無数のクレジットカードを持たないことが好ましいように、HF帯のRFIDカードも目的別に無数に持つのではなく、HF帯のRFIDカードの能力を飛躍的に高めて何にでも使えることにより、1枚のカードの所持で済ませることができ、そのカードは高いセキュリティを持ち、紛失しても格段の不都合を生じないのがよい。

【課題を解決するための手段】
【0005】
すでに従来型のHF帯のRFIDカードが出回っている国では次のような3つのステップで徐々に軌道修正する。まだ出回っていない国では、当初から最適なものを導入して行くのがよい。

ステップ1: 従来の製造方法の改善と互換性の維持
従来との互換性を保つ例として、誘電体フィルム基板の表面に形成されたスパイラルコイルの巻き数を30%程度増やす。図2に示すようにこのスパイラルコイルの内周の端、および外周の端に位置した静電容量の裏面電極をそれぞれ形成し、その間を、スパイラルコイルを裏面で横切るパターンで結ぶ。この2つの裏面静電容量電極と同一面積で誘電体フィルムを挟んで対向する2つの表面電極をそれぞれ形成して、表面のスパイラルコイルの両端とそれぞれ繋げる。これら合計4つの対向電極の内、1つを2つのエリアに分割し、その間にICチップを置き、ICの2つのボンディングパッドをそれぞれのエリアにワイヤボンディングかソルダーバンプか金スタッブかACFで接続する。スパイラルコイルの両端に繋がれた2つの静電容量がその直列接続容量値としてスパイラルコイルのインダクタンスとLC共振をするので、従来ICチップ上に形成されていた共振容量は基板上で既に精度の高い共振が構成されており、IC内部の容量は接続を切り離すことが必要である。誘電体フィルム基板の片面ではなく両面にアルミ等のメタル層をデポジション(蒸着)等で形成することにより、ジャンパーの印刷工程が無くなるか、誘電体フィルム基板の、両面の導電層の間を結ぶスルーホールの必要が無くなる。ジャンパーを無くすこと、及び共振電流がICチップに流れ込まないことにより性能・信頼性が向上する。その他の電気的な特性は従来の方法とほぼ同じで互換性がある。

図4はステップ1のRFIDカードの回路図である。

ステップ2: 本質的な改革
本来RFIDカードが達成可能なパーフォーマンスを発揮するための、カードIC,リーダIC、プロトコルなどを目的に適合したものにする。また固有な電子指紋を付け加える。

図5はステップ2のRFIDカードの構造である。

ステップ3: UHF帯への連続的な移行を目指し、カードとタグのRFID世界の伸展との整合性を取るための、2周波共振カードとする。

図6はステップ3のRFIDカードの構造である。

図7はステップ3のRFIDカードの回路図である。

【0006】
ステップ1〜3では、一貫して13.56MHzを使用するHF帯のICカードの電極形成を最初から両面で考え、両面の電極を接続するスルーホールは存在せず、対向する電極の容量で接続すると最低限2つの容量値をもつことになり、またインダクタンスは片面に1つか、両面で2つか、あるいはそれ以上かの構成になる。この構成により、多数巻きのコイルと交差するジャンパーが不必要になる。また個別部品としての容量を使ってマウントする必要がないか、またはIC内部の容量を使って鶏と卵の関係に陥ることが避けられ、またICチップのボンディングワイヤの抵抗分による損失が共振でQ倍に作用するのを避けられる。即ち、共振ループは2層電極のエッチング工程だけで形成され、ICチップをその共振ループの外側に接続でき、そして2層の電極間のスルーホールは存在しない。またICをマウントする前にすでに決まっている共振周波数を、対向電極を削るなどの方法でトリミングすることができる。また作りっぱなしの状態ですでに比較的高い周波数精度を持っている。

【0007】
基本的にRFIDカード単体で動作させるのではなく、電子指紋と合わせて運用する。これは決してセキュリティを高めるためではない。従来のRFIDカードは極めて不十分なものであるが、電子指紋と組み合わせることでカードに有用性が飛躍的に向上する。

【発明の効果】
【0008】
ジャンパーのない本発明の製造方法は、13.56MHzの追加調整を必要とせず、カードの製造工程が簡単になり、信頼性が高まる。同時にICカードの所持者を、カードに搭載されたICチップに駆動DC電圧を誘起する能動的な動作をさせなくても、受動的な方法で認識でき、これに電子指紋の役割をさせ、また電子署名の役割もさせることができる。夜間に一人で働く人がこれを所持している場合、その動きを確認することで、突然死を防げる場合もある。車の運転時には、運転免許証は携帯が義務付けられているが、13.56MHzのICカードが免許証として使われた場合は、酒気帯び運転と眠気運転時の通常とは異なる動きを検出することが可能である。

具体的には、誘電体フィルム基板の両面にメタル層を形成することでジャンパーの印刷工程を無くすことができる。LC共振周波数の精度を製造管理上高めることが出来るので、微細化プロセス使用によりICチップの消費電力が数分の一に減った場合の恩恵を受けてICカードの到達距離を数倍に伸ばすことが可能になる。工夫されたハードウェア上のプロトコルとそれに対応したカードIC及びリーダIC導入によりトランザクションはコンタクトアクセスからリモートアクセスになり、快適さと堅牢さが格段に改善する。UHF帯への円滑な移行が可能になる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ICカードは面積が大きく、両面フレキシブル基板を用いるとインレーの製造コストが高くなる。PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の両面にアルミを蒸着する方法は、スルーホールがない前提では合理的な製造コストを提供する。50um程度のプラスチックフィルムはそれ自体で耐久性に富んでいるので、この両側に貼り付ける表紙と台紙の、素材としての耐久性の負担が軽減する。

非接触ICカードは繰り返して使用されるので、RFIDタグのように1円以下で製造することが究極の目標とはならない。本発明では表1に示す3つのステップで現状の40円以上のカード製造コストが段階的に20円程度にまで下がって行く。しかし3段階方式の主目的はカードの信頼性と機能やRFID世界での他の方法との親和性が格段に改善されて行くことである。

【0010】
本発明の趣旨は単一のRFIDカードで、交通機関の数次パス、一回切符、クレジットカード、社員証、住民基本カード、運転免許証、学生証、交通安全マーカー機能、自動点灯/消灯機能、テレビリモコン、大地震などの災害対応、身分証などの全てのID・マーカー機能を行わせるときに生じ得る全ての矛盾を取り除くことである。

そのためにはカードの製造費を20円程度とし、カードは20年の使用に耐えなければならない。製造コストの20円は旧来の磁気接触ストライプ部分は含まない。またカードは現在のクレジットカードと同一の大きさと厚みであることを規定する。追加製造コストゼロの電子指紋を埋込むことを必然とする。

カードリーダは製造コストを一律1000円と規定し、3.3V電源供給を重畳したLAN接続を必然と規定する。表1は3つのステップの特徴である。

【表1】

【実施例】
【0011】
従来のHF帯ICカードの典型的な製造方法は、図1に示すように誘電体フィルム基板1に50um厚のPETフィルム(比誘電率3.2)を使い、片面に5umのアルミ層を蒸着してアンテナコイル2、ボンディングエリア3、ジャンパー接続エリア4を形成する。ジャンパー接続エリアとボンディングエリアに接続のための前処理をした後、ジャンパー接続エリア間に導電性インクを印刷して、乾燥させて基板工程を終える。この基板にICチップをチッププレーサでエポキシ樹脂を介して置き、硬化後にワイヤボンディングする。5umのアルミ層の蒸着ではシート抵抗は6mオーム/SQであり13.56MHzでの表皮電流の厚みは5umより十分に厚い。スパイラルコイルは6ターン程度である。

本発明のステップ1では置き換えであるために、図3に示すように、従来の工程を出来るだけ踏襲する。アルミの蒸着は誘電体フィルム基板の両面に行う。スパイラルコイルは従来6ターン程度巻かれていたものを8ターン程度に増やすが、これを片面のみで形成するか、或いは両面に分割して行う。3つの接合共振容量C1=26pF6、C2=19pF7、C3=3pF8を構成する対向面積はそれぞれ7mm角、6mm角、2mm角である。共振容量を微調整する場合は共振容量にトリミング17を施す。

本発明のステップ2では図5に示すように電子指紋のためのUHF/SHF帯の多周波共振素子群18をICカードの中央の空白部分に配列する。これは個別にランダマイズされるだけではなく、基板製造時のステッパー蒸着マスクの配列単位内で分散される。

本発明のステップ3では図6に示すように、2次共振アンテナコイ20と分岐裏面電極19を介した共振容量が追加される。

【0012】
本発明はクレジットカードの大きさと厚さを前提にしている。多数のカードを多様化して、個別目的に使用するのではなく、単一のカードを標準化された方法で、商業的ではなく出来るだけ社会的な目的に使うことを前提にしている。このためこれまでの13.56MHz帯のICカードでは考えられなかった高いセキュリティ基準を課す。

【0013】
図8に鉄道の改札の従来のスイカの応用例を示す。自動改札機21が等間隔に並べられている。改札機の一番手前にタッチアンドゴーのリーダ板22がある。乗客は定期券を取り出してリーダ板の上に平行に触れることによってトランザクションを行う。トランザクションが完了しなければ、乗客の通過をセンサで検知し、ブロッカー23で通過を阻止する。隣接するレーンA24aとレーンB24bのリーダ板はタイムスロットで同期して稼動しており、タッチアンドゴーで近接動作であってもリーダAがレーンAのカードのバックスキャターを検出するのをリーダBのTX電磁波が妨害するのを防いでいる。

図9に鉄道改札の本発明の応用例を示す。

レーンA24aとレーンB24bはパーティション25によって隔てられている。乗客が定期券を取り出さないことを前提にしているので、リーダ26はパーティションの中程の両側に2つに分割されてインターリーブ駆動される。

図10は複数のレーンの運用を示す。

隣接したレーン間も同様に同期したタイムスロットでインターリーブして駆動される1つのタイムスロットでリーダは最大1mSecを掛けてランプ出力を出しその間に閾値Vthに達したICカードがあればアクノレッジを受けて出力を固定して4mSec以内でトランザクションを完了する。2つ以上のICカードが同じタイムスロットで同時にアクノレッジを出す衝突が起こる確率は1ppm以下であり、リーダが重複を検出して、次のタイムスロットで処理される。トランザクションの完了時にカードICは閾値Vthを一時的に高めるので、重複したアクセスは起こらない。このような仕組みが用意されて初めてタッチアンドゴーからリモートアクセスに切り替えることが可能になる。改札の運用の効率から言えば、一回切符を含めた全てのトランザクションがRFIDに切り替えられて初めて良質のサービスを供給できる。その場合はその他の切符等はタグの大きさや1円以下のコスト要求から言ってHF帯ではなくUHF帯またはSHF帯にならざるを得ないが、その際にICカードが予めコストアップなく2周波対応であることが大きな助けになる。

社員証などのIDカードの構内・建物での使用は既に広く普及している。それが本発明により現在のタッチアンドパスからリモートアクセスになれば快適である。しかしながら快適さを追求する一方でセキュリティを一層高めたい要求が起こる。本発明では、電子指紋を選択してカードに割り当てる事が出来、リーダがICに駆動電圧を発生させられる距離より遠くからカードIDの所在を常時知る事が可能になる。その際のカード側の追加製造コストはなく、リーダ側の追加コストは1台当たり100円以下である。全てのリーダは3.3V電源付きLANに繋がっており、運用にもさしたるコストは発生しない。カードIDが長時間動きを止めれば事故が起こった可能性があるなど安全対策に寄与する。

【0014】
一回切符のUHF帯のRFIDタグ化コストは、HF帯のRFIDカードであるスイカのコストより需要である。RFIDタグは1円以下の製造コストであるから、印刷を行う磁気切符と同程度の切符のコストである。大きさは磁気切符の方が一回り大きい。タグ切符(UHF帯のRFIDタグ)には持ち主を書き込む事が出来、他人が拾得しても使用できないような策を講じることも出来るものとする。タグ切符には始点・終点や有効期限は印刷されない。タグ切符は平均100回以上繰り返して使用されるが、時には1回しか使用されないで破棄され、タグ切符のコストは1円以下であり、破棄する場合は殆ど例外なく駅構内に備え付けの箱に破棄される。鉄道会社は破棄されたタグ切符を消毒して、また新たに区別なく販売する。購入されたタグ切符は、払い切る場合と、プリペイドの場合と、信用で決済できる場合に分けてプログラムされる。いずれの場合も何も印刷されず、表示装置の前に行けば内容が確認される。従来の磁気切符のゲートは1台900万円程度、切符販売/両替機/清算機は1台300万円程度である。これに対して、既にRFIDカードの設備が存在する場合、タグ切符改札機能追加は1ゲート当たり2000円程度、切符販売/両替機/清算機は1台200万円程度である。これまで自動化のコストが大都市より田舎の方が大きな負担となっていたが、その差はタグ切符では逆転する。また無人駅と有人駅の間にさしたる差を生じない。タグ切符とRFIDカードのどちらも、車両ゲート及び座席ゲートを合わせて運用される。これらの追加ゲートの設置コストは、1車両当たり2万円程度が必要である。その代わり、車掌による検札業務の負担は、磁気切符と比較すると大幅に軽減する。一般的には切符は購入せず、乗車した経路を記録して後日課金するのがよい。今後自動車交通は廃れ、鉄道が重要な交通手段となるのは必然であり、現金を持たなければ鉄道の利用が許されない社会は持続し得ない。催促なしのある時払いに合致した、HF帯のRFIDカードとUHF帯のタグ切符が本発明の趣旨である。

【0015】
UHF帯のタグ切符、電子指紋を持ったHF帯のRFIDカードパスはワイドゲートで混在して運用される。タグ切符には電子指紋がない。しかし、タグ切符もカードパスもともにUHF帯の高いQの無負荷LC共振部を持っているので、10m以上の手前からワイドゲートに接近したことが検知され、そのときに限り通常の出力でHF/UHFのリーダはトランザクションを開始する。図11にワイドゲートを示す。

これまでスイカなどでタッチアンドゴーにせざるを得なかったのは、リーダ・カード間の感度不足、衝突回避(アンチコリジョン)のアーキテクチャーの不在、トランザクション完了の明確なサインの不在、の3つの問題が解決できなかったからである。本発明では高い共振のQ値が与えられ、またレーン間のクロストークが問題ではないので、感度を十分に高くすることが出来る。また本発明では乱数を発生させることなく瞬時に、ほぼ一度でアンチコリジョンが確立するので、数十人の乗客が止まらずワイドゲートを通過できる。また本発明では、トランザクションの確立後に、カードパスやタグ切符のLC共振のQ値が一時的にダンプされ、トランザクションが完了していないカードパスやタグ切符は、ワイドゲートの後半部で検出される。しかしブロックをしないのが妥当であると考えられる。乗客の権利が発生するのは車両や座席に於いてであり、そこでは車両ゲート及び座席ゲートを合わせて運用されるからである。駅員が改札にいて顔を憶えてくれていたり、ランドセルにぶら下がった定期券を見せて通る事が出来、立ち止まる必要がないのは究極の自動化である。社会はこの究極の便利さを享受して来た。これに対して、ポケットからパスや切符を取り出して、機械に入れ、そして機械から取り出すのは手動化であって省人化ではあっても自動化とは正反対のものである。もっと有意義に科学を利用するなら、RFIDを持った人間が通過するだけで、トランザクションが適正に滑らかに完了しなければならない。100年続いた鉄道のシステムを変えるなら、次の100年は変えませんと断言できなければ変えてはならない。それが社会の成り立ちである。

【0016】
RFIDの基本原理は図12に示すように、10m離れたリーダのコイルの電流入力に対するRFIDのコイルの誘起電圧の関係が、数式1に示すようにそれぞれのコイルがLC共振する場合のQ値の積に比例することを利用するものである。即ちそれぞれのQが共に30であれば、10m離れた2つのコイルは、等価的に1cmの距離に見えるのである。従ってRFIDにとって離れた距離と言うのはさしたる問題ではないのである。ただ如何に高いQを持てるかが課題である。

【数1】


RFIDの応用原理として認識しなければならないことは、アンテナの大きさ、或いは等価断面積がRFIDの効率とは無関係なことである。従来のRFID技術は全てこの原理を見落として設計されていた。図13に示すようなループアンテナを例に取り、波長に比べて周囲長が十分に短いとする。放射抵抗は数式2で表される。リアクタンスは数式3で表される。開放端子電圧は数式4であり、有能電力は数式5であり、ループアンテナの半径には無関係である。受信アンテナの放射抵抗を雑音源としたばあいは、S/Nは数式6で表されループアンテナの半径には無関係であることが分かる。誘導性の受信ループアンテナに容量を装荷してアンテナを共振させた場合の共振電圧は、数式7で表され、ループの半径が小さい方が大きな共振電圧が得られることが分かる。

【数2】


【数3】


【数4】


【数5】


【数6】


【数7】


RFIDには2つの制限感度がある。

A)RFIDがトランザクションを行なうのに必要な整流されたDC電圧と駆動電流を得るための感度。整流効率を50%、駆動電力を15uW(1.5V−10uA)とする。
B)RFIDからバックスキャターされた電磁波で誘起されるリーダでの受信電圧が、リーダに発生する放射抵抗の雑音より20dB以上大きくなるための感度。

比較を簡単にするために、リーダもRFIDも共に半径2cmのループアンテナとする。
このアンテナは950MHz(波長31.6cm)に於いて数式9の放射抵抗とリアクタンスを持っている。

【数8】


【数9】

【数10】


RFIDの負荷Qが10になると仮定すると、等価的な負荷抵抗は4.5Kオームである。この負荷抵抗に30uWの電力が消費されている場合、共振でQ倍された端子電圧は0.37Vrmsである。共振させない場合の開放端子電圧は、37mVrmsである。3m離れた場所から、この電圧を発生させるリーダの電流は

【数11】


【数12】


リーダのこの電流による電界を受けたRFIDがQ=90で共振したのをリーダのコイルが受ける開放端子電圧は

【数13】


一方5オームの放射抵抗が500KHzの帯域幅で受ける雑音は

【数14】


到達し得るバックスキャター検出のS/Nは距離には無関係になり、

【数15】


即ち、バックスキャター検出のS/N20dBを確保するためには、本来RFIDチップにDC電圧を発生させるアクティブ駆動に必要な電界強度の1/100(−40dB)の電界でディップサーチが出来ることを示している。言い換えると同じリーダの放射強度では、1mのアクティブ駆動ができれば、100m以上のディップサーチが出来る。これが本発明の重要な点である。必要な場合にのみアクティブ駆動を行い、それ以外はパッシブ駆動とすることで、利便性が飛躍的に拡大するのである。

【0017】
リーダのサーチ範囲内に多くの予め登録された電子指紋が存在するが、リーダの配列アンテナにより各電子指紋が区別され易くなる。差分から、動いているIDを動的に捉える。但し全ての電子指紋が静止しているか多くが動いている場合は、IDを区別することは困難な場合がある。図14にオフィスに於ける電子指紋検出を示す。

【0018】
一回切符をRFID化する場合にHF帯を使うのは合理的ではない。HF帯のRFIDカードは本発明でその製造原価を20円にでき、20年以上使用が可能であるが、UHF帯のRFIDタグはすでに1円で製造する方法が別の出願で確立しているからである。従って交通機関のゲートはHF帯のRFIDカードとUHF帯のRFIDタグを同時にワイドゲートで乗客が通過する速度を緩めずにトランザクションを行わなければならない。またUHF帯RFIDタグのトランザクションの機能を追加したリーダの追加コストは5%以下で無視できる程度でなければならない。磁気切符の製造・印刷コストとRFIDタグの製造コストはともに1円程度であるので大差はないが、設備コストは圧倒的にRFIDタグの方が経済的に優れている。しかし、RFIDタグを繰り返して使う方が地球人として胸を張れる。

【0019】
RFIDカードが磁気式のクレジットカードを置き換えられないのは、信用の積み重ねが十分でないためである。またセキュリティも十分ではない。ATMカード、デビットカード、クレジットカードの3種類を本発明のHF帯のRFIDカードで置き換える時に提供できるのは、電子指紋と電子署名であり、そのセキュリティレベルは極めて高く、また操作が単純である。図15に電子署名の実施形態の例を示す。本来印鑑やサインは破られないものではなく、国などの権威に於いて破らないものである。破れないものを求めるならそれは指紋やDNAである。本発明のRFIDカードは電子指紋があり、またEEPROM上のIDがある。IDは拾得されれば意味を持たないので、パスワードや暗証番号と合わせて運用されなければならない。従来のクレジットカードのサインは、厳密には確認されないことが多いので、高いセキュリティを持っているとは言えない。本発明の電子指紋と電子署名の組み合わせはこれらの従来の方法より格段に高いセキュリティを持っている。電子署名の電波の盗聴は困難である。

【0020】
従来の社員証は極めて安直なレベルであり、クレジットカードのような厳密性を持っていない。社員証はタイムカード打刻の機能も持っているが、おおよその所、多くの業種でタイムカードが不必要になって来ている。社員証のRFID化とともに、セキュリティゲートが設けられたが、これは多くの場合不必要である。実体はRFID化したために必要になったものである。セキュリティゲートは機密保持の意欲を植え付けるが、機密保持は本来ゲートで行なわれるものではない。本発明はゲートを取り払う英断を可能にする。構内に一度入れば電子指紋は常に監視され、またRFIDを携帯しないで行動することを制限できるからである。警備員が夜間見回りをする頻度も減らす事が出来る。社員が廻りに人が居ない所で倒れているのを容易に発見できる。社員食堂のトランザクションもスムーズなものになる。各リーダは1000円程度のBOXで済み、すでに存在している社内LANにフックアップできるので、従来の初歩的な社員証システムよりも設備コストが少ない。

【0021】
企業のセキュリティシステムとは趣を異にするキャンパスでの利便性と安全性に重点を置いてRFIDの学生証カードが使われる。学校・大学での用途はCanPASSとして適用される。それは図書館・生協店舗・学生食堂・ゼミ/イベント参加費の決済、備品購入決済・コーヒーショップ・複写経費・市民/地域社会との交わり便宜・卒業生の大学利用・留学生へのガイダンス・自転車/自動車/バイク管理、業者の搬入/搬出管理・大講義出欠簿・コンピュータ貸与・研究室セキュリティ・ローン決済・防災・防犯・構内交通安全・自動点灯/消灯・所在確認・会議室予約などが一括管理される。企業のオフィスと比べた大きな差は、キャンパスでは基本的にワイドゲートが使われることである。

【0022】
日本の住民基本台帳カードは米国を例に取ればソーシャルセキュリティ番号(SSN)やドライバーズライセンス(D/L)に相当する。これがないと極めて不便を強いられ正常な市民生活を送るのに支障がある。国民背番号を嫌う前に、最低人権保障の手立てとなり、それで交通機関を利用できるものであればよい。

【0023】
運転免許証をRFID化か、接点を持つICカードにするだけではなく、その使用目的と利便性を広げたい。免許証の不携帯は防ぐことが出来る。盗難に逢った車を衛星監視に頼らず追跡できる。酒気帯び運転・眠気運転・過労運転を運転者の動きから推測することができる。歩行者が死角にいて車から認識されるために、電池を持つマーカーでその存在を知らせる事が出来るが、RFICカードを携帯していて、そこに組み込まれた電子指紋も同程度のマーカー機能を持つ。今後出来るだけ制動をせず惰性で走る交通手段が一般化した場合、高度な安全性はこのようなRFID技術が主として担うことになる。

【0024】
従来コンベンションの期間パス、遊園地やスキー場のパスがRFIDカードの主要な応用の1つであった。しかし、イベントの度に新たなRFIDカードを発行する必要はない。人が1枚だけ所持する標準化されたICカードで、電子指紋によって多くのことがイベントコントロールのために実現される。これは電子指紋とICカードのトランザクション機能が、イベント管理に関することを何でも実行してくれるからである。

【0025】
家庭やオフィスで部屋全体やフロア全体を照明していた時代は去った。2000年代初頭は、誰も勤務していない数万坪の夜間のオフィスが昼間のような明るさで照らし出されるのが繁栄の象徴であった。必要な場所を必要な明るさに照明すると、人々は集中して働く事が出来るし、他社と重複した競争に明け暮れるのではなく、何を個性的になすべきかの方向も見えて来る。電子指紋を微小電力でモニターすることで、自動的な照明空間を作り出すことが極めて低コストで実現できる。

【0026】
2.45GHzのブルーツースを使った携帯電話で機器のコントロールや簡単な入力が出来るのは前時代的な方法である。テレビのコンディショナルアクセスの決済はRFIDカードで行う事ができる。しかし図18に示すように、ICカードを使って電池がなく、RFIDモードの数十分の一の電磁放射で、テレビの待機電力が極めて少ないリモコンを構成する事が出来る。その一つの方式は、テレビのリーダとICカードを結ぶ線をZ軸として、それと直角なX−Yの2軸の電波振幅面を切り替える組み合わせで、RFIDカードはテレビの動き検出リモコンとなる。二つ目の方式は、電子指紋の共振コイルをカード上の領域にX−Y平面を作って4重極構成にして、指が近づいた極のQ値が低下することをリーダが検出してマウス入力とし、且つA/Bボタンに対応した2つの共振回路を指で覆うとA/Bボタンを押したことに対応させるものである。

【0027】
大地震などの災害が起こって、数千人の人々が瓦礫の下敷きになっているとき、現実には瓦礫を取り除く重機などの手段がない場合が多いと思われるが、救出犬の数がなく、ただ手をこまねいているしかない場合、電子指紋はカードの存在と場所の発見を高い確率で可能にする。通常の電子指紋検出はRFIDトランザクションの1/100程度の電界で行なわれるが、大地震のような緊急時にはその100倍、またはもっと強い電波でほぼ確実に電子指紋を見つけられる。トタン屋根の下などで電波が遮られる場合は、色々な角度から電子指紋を検出して見ることになる。雪崩による生き埋めでは、電波が雪に吸収される分、近くからでないと電子指紋の検出が難しい。しかし熊の方向を8の字指向性のアンテナで調べるような曖昧さは全くない。重要なのは常にRFIDカードを日頃から身に着けることが極めて利便であるような状況を作り出すことである。

【0028】
IDやパスワードを数多く持つのは前近代的である。一生同じものを持ち、そのセキュリティが極めて高いと言う方が望ましい。また割り当てられ、或いはスペクトルオークションで手に入れた周波数帯域を目一杯の電力で使うのは、貧しい考え方である。身分証などの全てのIDをまとめて一つにし、マーカーも特には設けず自然な形で備わっており、必要なものを必要な時に必要な量使うように心がけ、或いは手段としてのデバイスをそういうものにしてしまえば、地球は電波的にきれいな存在に生まれ変わる。発散してしまったものを一つにまとめるのには大変な苦労を伴う。最初から正しくRFIDを構築することが唯一地球環境を保つ解である。

【産業上の利用可能性】
【0029】
これまで主として切符と限定した決済に使われていた13.56MHz帯のICカードを広い目的に広げて利用することが出来る。広い範囲のキャシュレス決済を促す。緊急の場合にライフラインを確保する目的に使う。出来れば地震で瓦礫の下に埋まった人を救済したい。できれば雪崩で時間を争う救出に使いたい。個人が登録された場合は、この人が誰であるかをできるだけ早く知りたい。どこの国の人も簡単に持てるようにしたい。そのことが産業上で利用することの意味である。

【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は従来のHF帯RFIDカードの構造である。
【図2】図2は従来のHF帯RFIDカードの回路図である。
【図3】図3は本発明のHF帯RFIDカードの構造である。
【図4】図4は本発明のHF帯RFIDカードの回路図である。
【図5】図5は本発明の電子指紋を搭載したHF帯RFIDカードの構造である。
【図6】図6は本発明の電子指紋を搭載したHF/UHF帯RFIDカードの構造である。
【図7】図7は本発明の電子指紋を搭載したHF/UHF帯RFIDカードの回路図である。
【図8】図8は従来のHF帯RFIDカードのリーダの構造である。
【図9】図9は本発明のHF帯RFIDカードのリーダの構造である。
【図10】図10は本発明のHF帯RFIDカードのリーダの運用の構造である。
【図11】図11は本発明のHF/UHF帯RFIDワイドゲートの構造である。
【図12】図12はRFIDシステムの基本原理である。
【図13】図13はループアンテナの動作原理である。
【図14】図14は構内オフィスセキュリティシステムを示したものである。
【図15】図15は電子署名について説明したものである。
【図16】図16はHF帯RFIDカードを運転免許証に利用したものである。
【図17】図17はダミーカードとリーダ間の人の動きを検出するものである。
【図18】図18はテレビリモコンの用途について説明したものである。
【図19】図19は大地震で瓦礫の下に埋まった人の捜索である
【符合の説明】
【0031】
1:誘電体フィルム基板、2:アンテナコイル、3:ボンディングエリア、4:ジャンパー接続エリア、5:印刷されたジャンパー、6:ICチップ、7:ボンディングワイヤ、8a:共振容量C0、8b:共振容量C1、8c:共振容量C2、8d:共振容量C3、8e:2次共振容量C4、9a:ICカード横寸法(85.6mm)、9b:ICカード縦寸法(54mm)、10:スパイラルコイル損失、11:回路負荷インピーダンス、12:整流ダイオード、13:EEPROMコントロール、14:TXバックスキャター、15:電圧レギュレータ、16:裏面電極、17:共振容量微調整、18:電子指紋、19:分岐裏面電極、20:2次共振アンテナコイル、21:自動改札機、22:リーダ板、23:ブロッカー、24a:レーンA、24b:レーンB、24c:レーンC、25:パーティション、26a:ダイバーシティリーダ/左、26b:ダイバーシティリーダ/右、27a1/27a2:レーンAドライブ、27b1/27b2:レーンBドライブ、28:HFパス、29:UHF切符、30:活性チェック、31:UHFアプローチ検出、32:警告、33:ワイドゲート、34:IDと電子指紋の監視、35:指向性スキャン、36:偏波面切替え、37:背景電波差し引き、38:周波数スキャン、39:リーダ間情報整合、40:登録された指紋と照合、41:ダミー電子指紋、42:平面盤上電子署名、43:盤上空立体電子署名、44:車内リーダ、45:エンジンルーム/前方リーダ、46:監視、47:ダミーカード、48:ディップパターン検出、49:マウス領域、50:A/Bボタン、51:タッチパッド方式、52:動き検出方式方式、53:コンディショナルアクセス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレジットカードサイズ(85.6mmx54mm)RFID構造の中心層をなす、誘電体フィルムの両面に形成された銅箔、アルミ、導電性インクなどの導電層が、2回巻き以上のスパイラルインダクタ含む交差のない形の線分で構成され、それらの線分の両端の電極が、フィルムを誘電体とした少なくとも2箇所の対向電極で容量的に接続され、それらのインダクタと誘電体接続容量とで13.56MHzのLC共振の主要部分を構成するようにし、片面の多重巻きのコイルを反対面の線分で横切る形を取るRFIDのインレーで、これらのコイルと誘電体接続容量とRFIDのICチップの他には有用な電気回路部品が存在しない構成のHF帯ICカードの製造方法。誘電体フィルムの両面または片面に形成された多重巻のコイルは、表面から裏面への容量結合と、裏面から表面への容量結合の2つの非接触結合によりLC共振の閉ループを形成する。この合計4つの静電容量電極の内1つを、2つのエリアに分割し、その間にICチップをマウントし、ICチップの2つのボンディングパッドと分割された2つエリアを、それぞれワイヤボンディング、金スタッブ、半田バンプ或いはACFにより金属接続する事。
【請求項2】
主として誘電体フィルム基板のパターンで決められる共振周波数を、ICチップをマウントする前の工程で調べ、所要周波数と合致するように容量部分の電極面積を削るか、パンチングで一部を除去するか、或いは誘電体フィルムの厚みに応じてデポジションのマスクを選択すること等により、共振容量値を加減して製品の共振周波数を微調整するようにしたRFIDの製造方法。
【請求項3】
ICカードの誘電体フィルム主基板に、単層の導電層からなる多重巻きのコイルのインダクタと容量電極のみを形成し、別の誘電体フィルム副基板に単層の容量電極を構成し、副基板を主基板の表面あるいは背面から誘電層と挟んで貼り付けて、対向面結合容量を形成する両面電極製造の代替手段。
【請求項4】
RFIDカードの共振容量形成に於いて、対向する容量電極の一方を他より大きくすることにより、表裏の位置ずれによる静電容量値のばらつきを軽減すること。
【請求項5】
導電性インクによるジャンパー印刷、または誘電体フィルムの両面電極間のスルーホールを使用しない形で、HF帯のLC並列共振回路に直列に接続されてICチップに接続されるUHF帯或いはSHF帯のLC並列共振回路を形成し、2つ若しくはそれ以上のキャリア周波数で動作するRFIDを得る事。またIC内部の動作クロックをリーダからのキャリアではなく変調波から再生し、ICの動作がRFキャリア周波数に依存しないようにすること。
【請求項6】
HF帯ICカードの外周にスパイラルコイル等の必要な回路が形成され、その中央部には広い面積に亘って空き地が存在する状況に於いて、この空き地にHF帯のコイル及び共振容量と同一の製造過程で形成されるUHF帯またはSHF帯の20以上の高いQ値を持つ共振回路を8つ以上形成して、Q値の違いを含めたその共振周波数群のランダムなアナログ量の無数の組み合わせで、ICカードかそれを保持する個人を表す電子指紋とし、8つ以上のランダムな共振回路の配置では地球の全人口67億人のそれぞれに、あるいは当該電子指紋システムが適用される範囲内の人々に、個別の識別可能な電子指紋を与えられるようにすること。リーダは微小出力のディップサーチで共振回路群のディップ周波数パターンを調べて電子指紋を検出・特定する。ランダムに形成されたこれら8個以上の共振回路が全て同じ平面内にあることから、ベクトル量ではなくスカラー量としての応答を返し、リーダまたリーダ群は、複数のカードが静止しているかまたは動いて行く前提で、予め登録された電子指紋を容易に識別でき、同じ距離でRFIDカードが1〜1.5VのIC駆動電圧を発生させてEEPROMのIDを読み取るのと比べて、その100分の1以下の電磁界をリーダが放射するだけで、電子指紋を検出するか、または電子指紋の存在する位置を常時認識して置く事ができる。電子指紋の共振コイルの縦横の配列を、人体や近傍の金属の影響が、周波数ディップパターンの周波数軸の伸び縮みとして影響するようにして、電子指紋認識の精度を上げる事。
【請求項7】
社員証などのセキュリティパスに使用した場合、13.56MHzのRFID機能と合わせて、カードの中央部に配した電子指紋、或いはその動き認識による電子署名を使ってRFIDカードのセキュリティ機能を構成すること。またリーダの間近でRFIDのトランザクションを行う前に、RFIDを身につけた人が近づいたのを登録された又は登録されていない電子指紋を検出したときに限って、RFIDの電界強度に引き上げることで、不要な電波の送出を抑えて電波公害を減らし、また地球温暖化を引き起こす電力消費を抑えることができる。
【請求項8】
高いLC共振周波数の精度と微細化半導体プロセスの採用により、数cmのタッチアンドゴーでなく数mのリモートアクセスが可能になる場合、2つ以上のカードが同時に各々のEEPROM上の番地を申告し、1つ又は複数のリーダがこれを読んで衝突が起こる通例の衝突回避の手法では快適さと確実性を著しく損なう。これが、牛を一頭一頭並べて柵に入れるタッチアンドゴーが選ばれた理由の1つである。この非人間性を避けるために、1つのリーダが規定タイムスロット内で出力を直線的に上げて行き、最初に動作電圧に達したカードがアクノレッジを返すのをリーダが受取り、その瞬時に出力を一定に保つことを繰り返して、乱数を与える事無く順列を決められ、衝突が容易に避けられるようにすること。隣接するゲートはインターリーブしたタイムスロットを持ち、隣のゲートのリーダとの交信で重複をチェックする。また1つのレーンの中でラインの順番が飛び越されて交信が成立することは許容される。極めて低い確率で2つ以上のカードが、ほぼ同時にアクノレッジを返した場合は、次のタイムスロットに持ち越される。
【請求項9】
トランザクションが完了した後に、カードICはアクノレッジを返す動作電圧到達判定の閾値を一時的に変更し、重複してトランザクションがなされないようにしてゲートを通過する使用方法。あるいは、ICチップの外部のLC共振を一時的にICチップでQダンプして、無反応にすること。
【請求項10】
社員証などで立ち入りを許可された構内で、電子指紋がリーダからのRFID機能と比べて十分に弱い電波で常時モニターされ、そのリーダの検出範囲内に複数の電子指紋を持つカードが存在しても、カード内の同一平面内の共振コイル群をディップ検出するパターンの直線的加算性が成り立つために、リーダはそれぞれを分離して認識できることを利用し、LANで接続されたリーダからの情報が比較・統合されることにより、構内全体のカードの分布を極めて微弱な電波で、常時把握すること。また構内の、一層高いセキュリティの部分に、RFIDのトランザクションを経ずして、立ち入れないように電子指紋の所在を見張ること。またゲストの構内への立ち入りをRFIDトランザクションで許可した場合、その先の立ち入り部分を一時的に付与されたRFIDカードの電子指紋によって、制限する仕組み。またRFIDカードの電子指紋が長時間静止していた場合、特に夜間一人で勤務するような場合は、事故とみなすか、単に眠っているかを判定する仕組み。またディップサーチで電子指紋を伴わない動きを、電子指紋インターラプタで検出してセキュリティの情報として利用すること。
【請求項11】
鉄道等の一回切符とプリレイド切符を製造原価1円以下のRFIDタグとし、IDパスをRFIDカードとして、全トランザクションをRFID化する前提で、複数の乗客が同時に同じゲートを通れるワイドゲートとすること。また列車等からの乗降に対してチェックを行うトレインゲート、座席に対してチェックを行うシートゲート設けることなどとの組み合わせにより、ゲートへの設備投資を大幅に軽減し、また駅舎の無人化を可能にする運用方法。
【請求項12】
人間が所持しない電子指紋をリーダが読む適切な場所に置き、人体或いは動物が、リーダと電子指紋の間を横切って、ディップパターンが変化するのを読み取るインターラプタの機能を課すことにより、電子指紋を故意に所持しないのを見張り、或いは安全性確保に役立てること。また人間が所持しないダミーの電子指紋のディップパターンが煙の発生などで変化することで、火災警報等に役立てること。
【請求項13】
大地震などの大きな災害が発生した場合、捜索犬の投入などと合わせて、瓦礫の下に埋った行方不明者を、ディップパターンを、登録された電子指紋に限らず無差別にも検出して、数千人の捜索を可能にすること。また雪崩の発生時に、当該電波が届く範囲で、RFIDより100倍以上高感度で検出できるディップサーチにより、埋った方向とそこまでの距離を出来る限り特定できるようにすること。またネット上の多くのパッシブリピータをシートに配置したものを引っ張って、広い範囲を迅速に捜索できるようにすること。
【請求項14】
運転免許証に13.56MHzのRFIDカードが使用された場合において、カードの中央部の電子指紋に利用により、運転時の免許証の携帯を監視し、登録された指紋か否かによって車の運転を不可能にして盗難を阻止し、またRFIDの照合に先立って電子署名でハンドフリーのキーレスエントリーを可能とし、また酒気帯び運転や眠さを抑えられないのに無理に運転する場合の正常でないカードの動きを一台の多目的リーダにより、監視すること。
【請求項15】
建物の影にいる歩行者や自転車に乗った人が、電子指紋を持つ13.56MHzのRFIDカードを所持する場合、車に搭載したリーダが前方にディップを読み取り、その動く方向と速度を算出して、危険を回避する処置を講ずるようにした装置。
【請求項16】
13.56MHzのRFIDカードの偽造を防ぐ能力を高める目的で、公開されないRFIDのICチップ内のマスクROMか書き換え可能なEEPROMと、電子指紋の関係を対応させて、セキュリティを高めること。ICチップをインレーにマウントする段階で電子指紋とマスクIDを対応させる事が可能である
【請求項17】
電子指紋を持つICカードが予め登録された動きで行うことを、人間の手がカードを持つ影響も含めて検出し、またリーダがそれを学習で補正して、電子署名として使用すること。
【請求項18】
電子指紋を持つICカードのリーダからの動き検出により、カードにテレビやエアコンのリモコンの機能をさせること。テレビ等のコントロールされる機器は極めて微弱な電波で電子指紋の特定の動きを検出して、通常のリモコン働きをするが、電波をRFID用に強めてコンディショナルアクセスを行うこと。また電子指紋を動かす事で、極めて微弱なリーダの電波でリモコンの機能をさせること。また電子指紋の一部の共振コイルの配置を4重極構成にして、その領域をマウスのX−Y平面にし、指先が4極のQ値をダンピングするのをリーダが検出してマウス入力とし、またA/Bボタンに対応するコイルを設けてそこを指で押さえることでボタンを押したと検知できるようにすること。また見当たらなくなったリモコンの所在を画面に表示すること。
【請求項19】
ランダムな、しかし用途によりマスターキー機能によるグループ化が可能なように、電子指紋を、蒸着マスクによるマスターキー化と、レーザー加工かサンドブラストによるランダムなトリミングの組み合わせで創出すること。
【請求項20】
予めRFIDカード内の電子指紋を1/100以下の弱い電波で、その電子指紋までのの等価的な方向と距離、およびそのカードの向きをリーダが見極め、RFIDカードとしてのトランザクションは、スイカのタッチアンドゴーのような消極的な方法を取らず、ターゲットに向けた、絞られて且つカードの向きに合わせた電界を与えることで、混信を避けるようにすること。リーダはディップサーチを定常出力から減じて行い、対象とするカードが近傍にないと判断した場合にはカードIDの検出及びトランザクションを行わないことによって、実質的に放射電力を下げ、電力消費を抑える。
【請求項21】
電子指紋のサーチに於いて、外来の雑音周波数はリーダからの電波の強さには比例せず一定であるが、電子指紋のリーダへのバックスキャターはリーダからの電波の強さに比例
することを利用して、外来の雑音周波数分を差し引くことで、電子指紋のサーチの精度をあげる方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−3187(P2010−3187A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162619(P2008−162619)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(708002676)
【Fターム(参考)】