説明

電子機器の冷却構造

【課題】優れた冷却効果を有する電子機器の冷却構造を提供する。
【解決手段】電子機器の冷却構造は、吸気口1cおよび排気口が設けられた筐体と、筐体内に配置された、一方面に発熱部品3が実装された回路基板とを備えている。回路基板における一方面と筐体における回路基板の一方面に対向する対向壁12との間には、発熱部品3と対向壁12の双方に接触するように放熱部材が配置されている。放熱部材は、対向壁12上に所定方向に配列され、所定方向に直交する通風方向の両側に開口する開口を形成するフィン45および発熱部品3で発生する熱をフィン45に伝えるプレート41を含む。フィン45間には、吸気口1cから排気口に至る空気の流れがファンによって生じさせられる。吸気口1cは、適切な位置に線上に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱部品を内蔵する電子機器の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電子機器に搭載される回路基板には、いわゆるLSIと呼ばれる大規模集積回路およびマイクロプロセッサなどの発熱部品が実装されている。近年、電子機器の動作周波数の高周波化などに伴って、発熱部品での発熱量は増加傾向にある。また、電子機器の小型化に伴って、発熱部品の冷却が難しくなっている。したがって、発熱部品を効率的に冷却することができる手段が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、図9に示すような電子機器の冷却構造が開示されている。図9に示す冷却構造は、吸気口108が形成された底壁104bを有する筐体104を備える。筐体104内には、回路基板116と、回路基板116に実装され吸気口108と対向する発熱部品117と、筐体104内の空気を吸い込んで筐体104の外に吐き出すファン130とが収容されている。回路基板116と底壁104bの間には弾性変形が可能なシール材136が介在されている。シール材136は、発熱部品117を取り囲むとともに、筐体104の内部に回路基板116および底壁104bと協働して発熱部品117からファン130に至る導風路138を形成している。さらに、筐体104内には、裏面が発熱部品117に熱的に接続され表面が導風路138に面する熱拡散板123が設置されている。吸気口108から導風路138に吸い込まれた空気は、熱拡散板123に直接吹き付けられ、熱拡散板123が満遍なく冷やされる。これにより、発熱部品117を冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−301715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発熱部品における発熱量の増加に伴って、要求される冷却性能が高くなると、特許文献1の図9に示した電子機器の冷却構造では冷却性能が不十分となるおそれがある。また、特許文献1の電子機器のように、導風路138を通過する空気との熱交換によって発熱部品を冷却する態様の冷却構造を有する電子機器を小型化すると、導風路138も小型化されるため、空気と熱拡散板123との熱交換量が少なくなる。すなわち、冷却性能が低下するという問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、発熱量の大きな電子機器に対しても十分な冷却性能を確保できるとともに、小型化された電子機器に対しても良好な冷却性能を確保できる電子機器の冷却構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、発熱部品を内蔵する電子機器の冷却構造であって、吸気口および排気口が設けられた筐体と、前記筐体内に配置された、一方面に前記発熱部品が実装された回路基板と、前記回路基板における一方面と前記筐体における前記一方面に対向する対向壁との間に、前記発熱部品と前記対向壁の双方に接触するように配置された放熱部材であって、前記対向壁上に所定方向に配列され、前記所定方向に直交する通風方向の両側に開口する開口を形成するフィン、および前記発熱部品で発生する熱を前記フィンに伝えるプレートを含む放熱部材と、前記吸気口から前記フィン間を通じて前記排気口に至る空気の流れを生じさせるファンと、を備え、前記吸気口が前記所定方向に延びる線上に前記対向壁に設けられており、前記吸気口の前記通風方向の位置が、前記開口のうちの空気の流出量が多いほうの開口である第1開口を基準として前記第1開口から前記開口の他方である第2開口に向かって前記放熱部材の前記通風方向の長さの0.3倍以上1.3倍以下の位置である、電子機器の冷却構造、を提供する。
【0008】
ここで、「発熱部品」とは、発熱量が比較的大きな電子部品(例えば、発熱量が4W以上の電子部品)をいい、その具体例としては、半導体チップが封止樹脂で覆われた半導体パッケージなどが挙げられる。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成によれば、発熱部品で発生する熱を吸気口から排気口に流れる空気に対して放熱部材のフィンから効率的に放熱することができる。さらに、上記の構成によれば、放熱部材が発熱部品で発生する熱を筐体に伝える熱伝導経路として機能するため、熱伝導を利用して筐体からも外部の空気に放熱することができる。特に、本構成における吸気口は上記のような適切な形状でありかつ適切な位置に設けられているため、吸気口から取り込んだ新鮮な空気によってフィンを空冷できるとともに、熱伝導による筐体からの放熱性も十分に維持できる。これにより、空冷と筐体からの放熱の双方の効果を効果的に利用することができるため、優れた冷却効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電子機器の冷却構造を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態1に係る電子機器の冷却構造を示す平面図
【図3】図2に示す経路aに沿った模式的な断面図
【図4】本発明の実施の形態1に係る電子機器の冷却構造の斜視図および放熱部材の要部拡大斜視図
【図5】本発明の実施の形態2に係る電子機器の冷却構造の斜視図
【図6】本発明の実施の形態3に係る電子機器の冷却構造の斜視図
【図7】本発明の実施の形態4に係る電子機器の冷却構造の斜視図
【図8】本発明の実施の形態5に係る電子機器の冷却構造の断面図
【図9】従来の他の電子機器の冷却構造を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明は本発明の一例に関するものであり、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0012】
(実施の形態1)
図1および図2に、本発明の実施の形態1に係る電子機器の冷却構造を示す。本実施の形態では、ストレージデバイス6およびドライブメカニズム7を備えるブルーレイプレイヤーに本発明を適用した形態を説明するが、本発明は、例えばDVDプレイヤーあるいはCDプレイヤーなどの他の電子機器にも適用可能である。
【0013】
具体的に、本実施の形態の冷却構造は、ストレージデバイス6およびドライブメカニズム7を収容する、上下方向に扁平な箱状の筐体1を備えている。筐体1は、上下方向に延びる矩形筒状の周壁13と、この周壁13で囲まれる空間を上下から塞ぐ天井壁11および底壁(本発明の対向壁に相当)12とを有している。なお、図1では、電子機器の内部構成を明らかにするために筐体1を二点鎖線で描いている。
【0014】
周壁13は、平面視で長方形枠状をなしており、筐体1の前面および背面を構成する一対の長辺部13a,13bと、筐体1の右側面および左側面を構成する一対の短辺部13cとを有している。また、天井壁11は筐体1の上面を構成し、底壁12は筐体1の下面を構成している。
【0015】
ドライブメカニズム7は、筐体1内の左側位置に配置されており、ドライブメカニズム7には、筐体1の前面からブルーレイディスクを挿入可能となっている。また、ストレージデバイス6は、筐体1内の右側位置に、底壁12から離間して配置されている(図3参照)。
【0016】
さらに、筐体1内には、ドライブメカニズム7とストレージデバイス6の間に、底壁12との間に所定の隙間(例えば、4〜8mm程度)が形成されるように、回路基板2が略水平に配置されている。回路基板2は、ストレージデバイス6よりも下方に位置しており、一部がストレージデバイス6と重なっている。そして、回路基板2の底壁12と対向する下面には、発熱部品3が実装されている。
【0017】
筐体1の右側面を構成する周壁13の短辺部13cには、ストレージデバイス6の右方の位置に、筐体1内に外気を取り込んで筐体1内の機器全体を空冷するための吸気口(本発明の第2の吸気口に相当)1aが設けられている。また、筐体1の背面を構成する周壁13の長辺部13bには、ストレージデバイス6の後方の位置に、筐体1内の空気を外部に排出するための排気口1bが設けられている。吸気口1aおよび排気口1bは、実際は複数の通気孔からなるが、図面では簡略化のために1つの四角で表している。
【0018】
さらに、筐体1の下面を構成する底壁12には、筐体1内に外気を取り込んで特に放熱部品3を空冷するための局所吸気口1cが設けられている。本実施の形態における局所吸気口1cは、長方形の複数のスリットを線上に並べて構成されている(図4(a)参照)。なお、後述するように、局所吸気口1cは、フィン45間に空気を導く吸気口として機能する。
【0019】
また、周壁13の長辺部13bの内側面には、排気口1bと重なるようにファン5が取り付けられている。そして、ファン5が稼働すると、吸気口1aおよび局所吸気口1cから吸気され、排気口1bから排気される空気の流れが生じる。
【0020】
回路基板2の下面と筐体1の底壁12の間には、回路基板2の下面に実装された発熱部品3と底壁12の双方に接触するように放熱部材4が配置されている。放熱部材4は、平面視で長方形状をなしており、長手方向と直交する短手方向に空気が吹き抜け可能な構造を有している。
【0021】
具体的に、放熱部材4は、図4(a)に示すように、底壁12上に所定方向に配列されたフィン45と、フィン45を底壁12と協働して挟持するプレート41とを有している。そして、フィン45が配列された方向(図4(a)のx方向)が放熱部材4の長手方向であり、水平面上でフィン45が配列された方向と直交する通風方向(図4(a)のy方向)が放熱部材4の短手方向である。すなわち、プレート41は、フィン45が配列された方向に延びる長方形板状をなしている。また、フィン45は、通風方向の両側に開口する第1開口45aおよび第2開口45bを形成する。
【0022】
放熱部材4の長さは、発熱部品3の幅よりも十分に大きく設定されており、放熱部材4は、フィン45が配列された方向において発熱部品3の両側に張り出している(図2参照)。
【0023】
本実施の形態では、フィン45は、図4(b)に示すように、隣り合うフィン45の上端部同士および下端部同士が交互に接続されていて、山部46Aおよび谷部46Bを交互に繰り返す波型のコルゲートフィン46を構成している。なお、コルゲートフィン46の山部46Aおよび谷部46Bは尖っていてもよい。
【0024】
コルゲートフィン46は、山部46Aおよび谷部46Bにおいてプレート41および筐体1とメッキ加工により接合されている。ただし、それらは、ブレージング、電着塗装、熱伝導性の高い接着剤や機械的カシメなどで接合されていてもよい。また、谷部46Bと筐体1とがプレート41と同様のプレートを介して接続されていてもよい。
【0025】
コルゲートフィン46を構成する材料には、例えば厚さ0.08〜0.2mmのアルミニウム製の平板を好適に用いることができるが、熱伝導率の高い金属材料であれば、如何なるものでも採用可能である。また、コルゲートフィン46には、放射による伝熱を促進させるために、たとえば黒色アルマイト処理などの表面に放射率が高くなるような塗装を行うことが好ましい。
【0026】
プレート41は、中央において発熱部品3と面接触している。発熱部品3とプレート41との間には、接触熱抵抗を減少させる観点から、熱伝導性の高いグリースなどを塗布することが好ましい。
【0027】
次に、局所吸気口1c、フィン45および排気口1bの位置関係と、ファン5が形成す筐体1内における空気の流れについて説明する。
【0028】
本実施の形態では、底壁12における、フィン45が配列された方向(図4(a)のx方向)に延びる線上に局所吸気口1cが設けられている。また、局所吸気口1cは、局所吸気口1cから吸気され、第2開口45bから第1開口45aに向かって流れ、その後、排気口1bから排気される空気の流れをファン5が形成できるような位置に設けられている(すなわち、第1開口45aが、空気の流出量の多いほうの開口である)。なお、第1開口45aは局所吸気口1cから遠いほうの開口であり、第2開口45bは局所吸気口1cから近いほうの開口である。特に、本実施の形態においては、局所吸気口1cの通風方向(図4(a)のy方向)の位置を、第1開口45aを基準として、第1開口45aから第2開口45bに向かって(つまり、−y方向に)フィン45の通風方向の長さの1.0倍以上1.3倍以下の位置にしている。
【0029】
次に、本実施の形態における電子機器が冷却される仕組みについて述べる。本実施の形態の冷却構造によれば、発熱部品3で発熱する熱を、局所吸気口1cから排気口1bに流れる空気に対してフィン45が効率的に放熱することができる。
【0030】
また、本実施の形態の冷却構造によれば、放熱部材4は、発熱部品3で発生する熱を筐体1に伝える熱伝導経路として機能する。したがって、本構成によると、発熱部品3で発生する熱を放熱部材4を介して底壁12に伝え、底壁12から外部の空気に放熱させることができる。
【0031】
特に、本実施の形態の冷却構造によれば、局所吸気口1cが上記のような適切な位置に設けられているため、局所吸気口1cから取り込んだ新鮮な空気によってフィン45を空冷できるとともに、熱伝導による筐体1からの放熱性も維持することができる。
【0032】
また、放熱部材4は、フィン45が配列された方向において発熱部品3の両側に張り出しているので、発熱部品3で発生する熱を広く拡散させながら底壁12に導くことができる。このため、局所吸気口1cから排気口1bに流れる空気の対流による放熱および発熱部品3から筐体1への熱伝導後の筐体1の下面からの輻射による放熱をいっそう効率的にすることができる。
【0033】
また、別の観点からは、本実施の形態に係る冷却構造では、発熱部品3で発生する熱が熱伝導によって最も伝わる底壁12の放熱部材4との接触面が、局所吸気口1cから吸気された直後の新鮮な空気により冷却される。すなわち、本実施の形態によれば、筐体1における熱の集中を抑制することができる。
【0034】
なお、本実施の形態では、フィン45間に効率的に空気を吸気するために、局所吸気口1cが設けられた領域のx方向の長さを放熱部材4のx方向の長さと同じ長さにしている。ただし、冷却効果の観点からは、局所吸気口1cが設けられた領域のx方向の長さは放熱部材4のx方向の長さよりも大きくしても問題ない。筐体1の強度などに基づいて適宜決定すればよい。局所吸気口1cのy方向の長さもx方向の長さと同様、筐体1の強度などに基づいて適宜決定すればよい。
【0035】
また、本実施の形態では、局所吸気口1cのx方向の位置は、局所吸気口1cの中央のx座標と放熱部材4の中央のx座標とが等しくなるようにしているが、局所吸気口1cのx方向の位置はこれに限定されない。局所吸気口1cから吸気される空気がフィン45間に流入しやすいように適宜決定すればよい。
【0036】
また、本実施の形態では加工の容易さの観点から、局所吸気口1cは、y方向に延びる長方形の複数のスリットを線上に並べて構成されている。ただし、局所吸気口1cは、x方向に延びる連続する1つの細長い長方形のスリットによって構成されてもよい。ただし、本実施の形態によれば、筐体1の底壁12における、局所吸気口1cから見て放熱部材4側の部分とその反対側の部分とを熱的に分断しない。したがって、熱の拡散の観点からは、局所吸気口1cは本実施の形態の形状とすることが好ましい。
【0037】
また、吸気口1aの開口面積は局所吸気口1cの開口面積よりも大きいことが好ましい。これにより、筐体1内の発熱部品3以外の熱源(電源回路など)から発生する熱を、吸気口1aから吸気される空気に効率的に伝達することができ、電子機器全体を効率的に冷却することができる。
【0038】
ここで、本実施の形態の効果を確認するために行ったシミュレーション結果について具体的に説明する。たとえば、放熱部材4の通風方向(y方向)の長さが30mm、発熱部品3での発熱量が15Wの条件において、局所吸気口1cのy方向の位置を第2開口45bから−y方向に11mmの位置とした場合は、筐体1の底壁12の最も高温の部分の温度は67度であり、発熱部品3の最も高温の部分の温度は111度であった。また、同じ条件下で局所吸気口1cのy方向の位置を第2開口に接する位置とした場合は、筐体1の底壁12の最も高温の部分の温度は69度であり、発熱部品3の最も高温の部分の温度は111度であった。このように、多数のフィン45を有する放熱部材4を用い、さらに、局所吸気口1cのy方向の位置を第2開口45bと同じ位置または第2開口45bよりも上流側の所定の位置とする場合は、筐体1の底壁12の表面温度を所定温度(たとえば70℃)以下かつ発熱部品3の温度を所定温度(たとえば120℃)以下に保つことができる。
【0039】
(実施の形態2)
図5に、本発明の実施の形態2に係る電子機器の冷却構造を示す。なお、実施の形態2においては、実施の形態1と同一構成部分には同一符号を付して、その説明を省略する。以下の実施の形態でも同様である。
【0040】
本実施の形態では、放熱部材4が、プレート41の第2開口45b側の端部に接続された覆い部42を有している。覆い部42は、局所吸気口1cを覆うように筐体1の底壁12まで延び、導風路を形成している。
【0041】
筐体1の底壁12に設けた局所吸気口1cを覆うように覆い部42が設けられているため、局所吸気口1cから導入された空気は確実にフィン45間に流入する。このため、実施の形態1の冷却構造に比べて、本実施の形態の冷却構造は、フィン45間における対流がより効果的になる。すなわち、発熱部品3で発熱する熱を、局所吸気口1cから排気口1bに流れる空気に対してフィン45がより効率的に放熱することができる。また、覆い部42が設けられているため、局所吸気口1cから筐体1の内部への異物混入の危険性を抑制することができる。
【0042】
なお、本実施の形態では、覆い部42は一枚の金属板が折り曲げられることにより、プレート41と一体形成されているが、プレートと別部材で構成されていてもよい。また、覆い部42は量産を考慮したその他形状でもよい。
【0043】
(実施の形態3)
図6に、本発明の実施の形態3に係る電子機器の冷却構造を示す。本実施の形態では、プレート41に接続された覆い部42が、局所吸気口1cを覆うように筐体1の底壁12まで延び、さらに覆い部42に接続された接触部43が筐体1の底壁12と面接触することで、熱的に接続されている。
【0044】
本実施の形態のように、接触部43と筐体1の底壁12とを熱的に接合させることで、発熱部品3において発生する熱が覆い部42の接触部43まで、熱伝導により伝わり、さらに筐体1の底壁12へと伝わる新たな熱伝導経路が形成される。これにより、発熱部品3から筐体1の底壁12への熱伝導量の絶対量が実施の形態2における同熱伝導量の絶対量よりも大きくなり、筐体1からの放熱量の絶対量が多くなる。すなわち、本実施の形態に係る冷却構造は、実施の形態2に係る冷却構造よりも、優れた冷却性能を有する。また、本実施の形態では上記のような新たな熱伝導経路が存在するため、筐体1の底壁12における放熱部材4に接している部分とともに、局所吸気口1cによってその部分と分断された部分にも熱を伝達させることができる。したがって、本実施の形態の筐体1における熱は、実施の形態2の筐体1における熱よりも均一に分散し易い。換言すると、本実施の形態の筐体1は、実施の形態2の筐体1よりも熱を集中させ難い。これにより、筐体1が局所的に高温になることを抑制することができる。
【0045】
覆い部42の接触部43と筐体1の底壁12とが面接触している部分には、接触熱抵抗を減少させる観点から、熱伝導性の高いグリースなどを塗布することやゲルシートを介在させることが好ましい。また、覆い部42の接触部43は、例えばネジによって底壁12に固定すればよい。
【0046】
なお、接触部43の形状および寸法は、発熱量に応じて、発熱部品3の温度と筐体1の底壁12の温度が所望の温度以下となるように適宜決定すればよい。
【0047】
(実施の形態4)
図7に実施の形態4に係る電子機器の冷却構造を示す。本実施の形態では、局所吸気口1cは、筐体1における底壁(対向壁)12において放熱部材4の第1開口45aと第2開口45bの間に設けられている。
【0048】
実施の形態4に係る冷却構造においては、局所吸気口1cから吸気された空気の全てがフィン45間に流入する。すなわち、実施の形態1の冷却構造に比べると、本実施の形態の冷却構造は、フィン45間における対流がより効果的になる。そのため、熱伝導による冷却効果を確保しつつも、空冷による冷却効果をより効果的に利用することができる。
【0049】
なお、本実施の形態において局所吸気口1cからフィン45間に流入した空気はフィン45が形成する両方の開口から流出するが、いずれの開口からの空気の流出量が多いかは、局所吸気口1cの位置や筐体1内の素子の配置によって変わる。本実施の形態では、フィン45間における対流を効果的にするという観点から、局所吸気口1cから見て遠い側の開口からの空気の流出量が多くなるように(すなわち、局所吸気口1cから見て遠いほうの開口が第1開口45aとなるように)冷却構造全体を構成している。なお、局所吸気口1cおよび第2開口45bから空気が流入し、第1開口45aからのみ空気が流出するように冷却構造を構成してもよい。なお、本実施の形態においては、局所吸気口1cの通風方向(図7のy方向)の位置を、第1開口45aを基準として、第1開口45aから第2開口45bに向かって(つまり、−y方向に)フィン45の通風方向の長さの1.3倍以上1.0倍以下の位置にしている。
【0050】
ここで、本実施の形態の効果を確認するために行ったシミュレーション結果について具体的に説明する。たとえば、放熱部材4の通風方向(y方向)の長さが30mm、発熱部品3での発熱量が15Wの条件において、局所吸気口1cのy方向の位置を第2開口45bから+y方向に11mmの位置とした場合は、筐体1の底壁12の最も高温の部分の温度は61度であり、発熱部品3の最も高温の部分の温度は101度であった。また、同じ条件下で局所吸気口1cのy方向の位置を第2開口45bから+y方向に22mmの位置とした場合は、筐体1の底壁12の最も高温の部分の温度は62度であり、発熱部品3の最も高温の部分の温度は103度であった。このように、多数のフィン45を有する放熱部材4を用い、さらに、局所吸気口1cのy方向の位置を第1開口45aと第2開口45bの間の位置とする場合は、筐体1の底壁12の表面温度を所定温度(たとえば65℃)以下かつ発熱部品3の温度を所定温度(たとえば120℃)以下に保つことができる。
【0051】
(実施の形態5)
図8に、本発明の実施の形態5に係る電子機器の冷却構造を示す。本実施の形態では、フィン45の配列ピッチが、発熱部品3の直下においてその外側の配列ピッチよりも大きく設定されている。換言すれば、フィン45は、発熱部品3の直下では疎に、その外側では密になっている。
【0052】
このように、フィン45を発熱部品3の直下では疎に、その外側では密に形成することにより、発熱部品3の直下におけるフィン45間の通風抵抗は、その外側におけるフィン45間の通風抵抗よりも小さくなる。これにより、発熱部品3の直下におけるフィン45間を通る空気の量は、その外側におけるフィン45間を通る空気の量よりも多くなる。したがって、最も高温となる発熱部品3の直下を集中的に空冷することができる。
【0053】
さらに、フィン45は発熱部品3の直下では疎に、その外側では密に形成されているため、発熱部品3の直下における発熱部品3から筐体1の底壁12に至る熱伝導経路は、その外側における熱伝導経路よりも狭い。すなわち、本実施の形態においては、前記他の実施の形態に比べると、発熱部品3の直下における発熱部品3から筐体1の底壁12に至る熱伝導量の、その外側における熱伝導量に対する相対量が小さい。これにより、通常であれば熱が集中しやすい発熱部品3の直下の底壁12に伝わる熱を小さくすることができる。すなわち、筐体1における熱の集中を抑制することができる。
【0054】
なお、フィン45の具体的な疎密の間隔は、発熱部品3の温度と筐体1の底壁12の温度が所望の温度以下となるように適宜決定すればよい。
【0055】
(その他の実施の形態)
前記各実施の形態では、筐体1の底壁12と回路基板2の底壁12との間に放熱部材4が配置されているが、回路基板2が筐体1の天井壁11の近くに配置されている場合には、回路基板2の上面に発熱部品3が実装され、回路基板2の上面と筐体1の天井壁11との間に発熱部品3と天井壁11の双方に接触するように放熱部材4が配置されていてもよい。
【0056】
ただし、筐体1の上面は、使用者の手が接触するなどのことを考慮すると、低温であることが望ましい。そのため、前記各実施の形態のように、筐体1の底壁12と回路基板2の底壁12との間に放熱部材4を配置して、筐体1の底壁12に放熱する構成とするのがより好ましい。さらに、一般的に、底壁12のほうが構成部品を支持するために天井壁11よりも高剛性とされるため、前記各実施の形態のような構成とされているほうが、筐体1において面方向での熱拡散が良好に行われる点で好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、特に、筐体内にLSIやCPUなどの発熱部品を備える電子機器の冷却構造に有用である。
【符号の説明】
【0058】
1 筐体
1a 吸気口
1b 排気口
1c 局所吸気口
2 回路基板
3 発熱部品
4 放熱部材
5 ファン
6 ストレージデバイス
7 ドライブメカニズム
11 天井壁
12 底壁
13 周壁
41 プレート
42 覆い部
43 接触部
45 フィン
45a 第1開口
45b 第2開口
46 コルゲートフィン
46A 山部
46B 谷部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品を内蔵する電子機器の冷却構造であって、
吸気口および排気口が設けられた筐体と、
前記筐体内に配置された、一方面に前記発熱部品が実装された回路基板と、
前記回路基板における一方面と前記筐体における前記一方面に対向する対向壁との間に、前記発熱部品と前記対向壁の双方に接触するように配置された放熱部材であって、前記対向壁上に所定方向に配列され、前記所定方向に直交する通風方向の両側に開口する開口を形成するフィン、および前記発熱部品で発生する熱を前記フィンに伝えるプレートを含む放熱部材と、
前記吸気口から前記フィン間を通じて前記排気口に至る空気の流れを生じさせるファンと、を備え、
前記吸気口が前記対向壁に、前記所定方向に延びる線上に設けられており、
前記吸気口の前記通風方向の位置が、前記開口のうちの空気の流出量が多いほうの開口である第1開口を基準として前記第1開口から前記開口の他方である第2開口に向かって前記放熱部材の前記通風方向の長さの0.3倍以上1.3倍以下の位置である、
電子機器の冷却構造。
【請求項2】
前記吸気口の前記通風方向の位置が前記第1開口と前記第2開口の間の位置であり、
前記吸気口から吸気された空気が前記第1開口と前記第2開口のいずれかまたは両方から流出する、
請求項1に記載の電子機器の冷却構造。
【請求項3】
前記吸気口の前記通風方向の位置が前記第2開口から見て前記第1開口とは反対側の位置であり、
前記吸気口から吸気された空気が前記第2開口から前記フィン間に流入し、前記第1開口から流出する、
請求項1に記載の電子機器の冷却構造。
【請求項4】
前記放熱部材は、前記プレートにおける前記第2開口側の端部から前記筐体における前記対向壁まで前記吸気口を覆うように延びる覆い部をさらに含む、
請求項3に記載の電子機器の冷却構造。
【請求項5】
前記放熱部材は、前記覆い部の先端から前記対向壁に沿って延びる接触部をさらに含み、
前記接触部と前記対向壁とが面接触している、
請求項4に記載の電子機器の冷却構造。
【請求項6】
前記所定方向における前記吸気口が設けられた領域の長さが前記放熱部材における前記所定方向の長さと同じまたはそれ以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子機器の冷却構造。
【請求項7】
前記放熱部材は、前記所定方向において前記発熱部品の両側に張り出している、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電子機器の冷却構造。
【請求項8】
前記筐体は、前記所定方向および前記通風方向に直交する上下方向に延びる周壁と、この周壁で囲まれる空間を上下から塞ぐ天井壁および底壁とを有しており、
前記回路基板の一方面は、前記底壁と対向する下面となっており、
前記筐体の前記対向壁は、前記底壁である、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子機器の冷却構造。
【請求項9】
前記周壁には、前記吸気口よりも開口面積の大きな第2の吸気口が設けられている、
請求項8に記載の電子機器の冷却構造。
【請求項10】
前記フィンの配列ピッチは、前記発熱部品の直下の領域を含む区間においてその外側の配列ピッチよりも大きく設定されている、請求項8に記載の電子機器の冷却構造。
【請求項11】
前記フィンは、隣り合うフィンの前記発熱部材側の端部同士または前記対向壁側の端部同士が交互に接続されていて、山部と谷部を交互に繰り返すコルゲートフィンを構成している、請求項1〜10のいずれか一項に記載の電子機器の冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−249496(P2011−249496A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120127(P2010−120127)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】