説明

電子機器の電源制御回路

【課題】昇降圧回路で昇降圧された電源で動作する電子デバイス自体で、昇降圧回路の動作を含む電源を制御する電子機器の電源制御回路を提供する。
【解決手段】電子デバイスを起動させる際に、電源スイッチは、少なくとも起動させた電子デバイスが連続動作の判定を行うまでの第1時間、昇降圧回路の制御端子へ0N信号を連続出力するトリガー信号を出力し、起動した電子デバイスは、電子デバイスの連続動作と判定した場合に、昇降圧回路の制御端子へON信号を連続出力する。連続動作できない理由が生じて起動した電子デバイスが昇降圧回路の動作を停止させても、電源制御回路全体が、トリガー信号を出力する前の動作停止状態にもどるので、その理由が解消した後、電源スイッチからトリガー信号を出力することにより、電子デバイスを再起動できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーの電源電圧を異なる電圧に昇降圧して電子デバイスに供給する電子機器の電源制御回路に関し、更に詳しくは、別に起動させる電源制御用のコントローラを用いずに、電子デバイス自体で電子デバイスに供給される電源を制御する電子機器の電源制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の携帯無線通信機器100は、図6に示すように、外部との無線通信を制御する通信モジュール101と、無線通信のデータを生成する為の入力手段102、表示手段103等と、これらの全体の動作を制御するマイクロコンピュータ104とを備え、携帯無線通信機器100に内蔵のこれらの回路部品、モジュールは、機器100へ着脱自在のバッテリー105を電源として動作している(特許文献1参照)。
【0003】
このような携帯無線通信機器100では、外部電源の供給を受けないバッテリー105の動作寿命をできるだけ引き延ばす必要があり、操作者が機器100を使用しない間、バッテリー105からの電源供給を停止させる為に、操作者が入力操作可能な電源/復帰スイッチ106を備えている。しかしながら、電源/復帰スイッチ106を操作して、通信モジュール101に電源を供給し起動させた後であっても、通信相手先との通信が確立できない場合には、その後の無駄な電力消費を防ぐために、バッテリー105の電源供給を遮断する必要があり、一方、電源/復帰スイッチ106を操作して、通信モジュール101への電源供給を停止しようとしても、その前に、通信が確立している外部の通信相手先との通信終了処理、通信中のデータ記憶などの終了処理が必要であり、電源/復帰スイッチ106の操作によって、直接通信モジュール101を電源制御することはできなかった。
【0004】
そこで、通信モジュール101の電源制御は、電源/復帰スイッチ106の操作データを入力したマイクロコンピュータ104が行っている。すなわち、操作者が携帯無線通信機器100全体を起動させようとして電源/復帰スイッチ106を操作した場合には、マイクロコンピュータ104が、通信モジュール101へバッテリー105からの電源供給制御を行い、通信相手先との通信が確立できない場合には、電源の遮断制御を行う。また、操作者が無線通信を終了して携帯無線通信機器100全体を停止させようとして電源/復帰スイッチ106を操作した場合には、マイクロコンピュータ104は、通信モジュール101が通信終了処理を行った後に、バッテリー105からの電源供給を遮断する制御を行う。
【0005】
ところで、このような携帯無線通信機器に用いられるバッテリー105は、1.5Vの直流電圧を出力する電池であり、1.8Vで動作するマイクロコンピュータ等の回路部品に対しては、2個の電池を直列に接続して3.0Vの出力電圧として、電源を供給している。しかしながら、ブルートゥース(商標)による近距離無線通信の制御に使用されるブルートゥース通信モジュールなどの一部の通信モジュールは、動作電圧が3.3V若しくは3.5Vであり、3.0Vの出力電圧をこれらの動作電圧へ昇圧する昇圧回路が必要となるので、昇圧した別の電源回路を設けている(特許文献2参照)。
【0006】
この他の従来の携帯無線通信機器110を、図7を用いて説明すると、通信モジュール111は、通信電源スイッチ112を介して電源Aに接続し、また、マイクロコンピュータ(CPU)113a、入力手段113b、表示手段113c等からなるデータ処理モジュール113は、電源制御回路114を介して、電源Bに接続している。電源Aと電源Bは、それぞれ同一の充電回路115で充電されるものであるが、電源Aは、充電電圧を昇圧する昇圧回路を内蔵し、電源Bの出力電圧に対して、比較的高い電源電圧を出力し通信モジュール111を動作させている。
【0007】
従って、通信モジュール111とデータ処理モジュール113は、それぞれ通信電源スイッチ112若しくは電源制御回路114によって独立した電源制御が可能であり、データ通信機能のみ、又はデータ処理機能のみを使用する場合に、使用しない他側のモジュールへの電源供給を停止し、バッテリー(電源A、電源B)の電力消費を節約している。一方、通信を終了させようとして通信電源スイッチ112を操作し、通信モジュール111への電源供給を遮断すると、直ちに通信モジュール111の動作が停止し、その後の通信終了処理ができないものとなるので、通信電源スイッチ112は、CPU113aによる制御を可能とし、通信モジュール111が通信終了処理を行った後に、CPU113が、通信電源スイッチ112を制御し、通信モジュール111への電源を遮断させている。
【0008】
【特許文献1】特開2003−102073号公報(明細書項目0019乃至0023、図2)
【特許文献2】特開2002−32158号公報(明細書項目0043乃至0046、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の従来の携帯無線通信機器100、110は、いずれも通信モジュール101、111の電源制御を、マイクロコンピュータ(CPU)104、113aによって行うので、通信モジュール101、111が把握する通信開始の際の通信相手先との通信確立状況、通信終了時の通信処理の状況を表すデータを、その都度マイクロコンピュータ(CPU)104、113aへ出力する必要があり、電源制御が煩雑で処理に時間を要するとものとなっていた。
【0010】
また、携帯無線通信機器は、無線通信中にバッテリーの消耗によって通信モジュールの動作が停止しないように、バッテリーの電源電圧を監視する電圧検出回路と、バッテリーが消耗している場合に交換を促すためにその監視結果を表示する表示手段を設ける必要があり、携帯無線通信機器100では、電源/復帰スイッチ106に、この電圧検出回路と、電池残量を表示する発光表示素子が備えられている。
【0011】
しかしながら、外部から入力操作する電源/復帰スイッチ106に、電圧検出回路を備えるには、構造上、A/Dコンバータのような別の電圧検出用回路部品を用意する必要があり、また、電圧検出回路でバッテリーの消耗状況を検出する毎に、そのデータを通信モジュールへ出力しなければならない。更に、携帯無線通信機器には、通信モジュール101の動作状況(通信状況)を操作者へ知らせる為の発光表示素子が通信モジュール101に接続されているにもかかわらず、上述の電池残量を表示する発光表示素子を別に設けなければならなかった。
【0012】
このような理由から、通信モジュール101、111自体で、昇圧回路を含む電源制御を行えば、マイクロコンピュータ(CPU)104、113aとの通信状況のデータ入出力を行わう必要がなく、起動する通信モジュールへ電圧検出回路を内蔵することによって、常時バッテリーの電源電圧を検出でき、更に、内蔵の電圧検出回路によってバッテリーの電源電圧を検出できるので、通信状況を操作者へ知らせる為の発光表示素子で、バッテリーの残量を表示できる。
【0013】
従って、通信モジュール自体で、電源制御を行うことが要望さているが、上述したように、バッテリーの出力電圧を昇圧して通信モジュールを動作させる昇圧回路を含む電源制御回路を有する携帯無線通信機器では、これを実現することができなかった。すなわち、操作者が電源スイッチをON操作し、昇圧回路を動作させて通信モジュールを起動させた後に、通信相手先との通信が確立できない、バッテリーの電電電圧不足などの理由で起動した通信モジュールが昇圧回路の動作を停止させる制御信号を出力したとすると、電源スイッチがON操作している状態で、昇圧回路の動作を停止させる制御が働いているので、上記理由が解消しても、再び昇圧回路を動作させて通信モジュールを起動させることができないと考えられていたからである。
【0014】
また、一般に通信機器を起動若しくは停止させる電源スイッチは、電源の入り切りの状態を視覚的に操作者に知らせるために、操作摘みが電源入りと電源切りで異なるポジションとなるスライドスイッチが用いられている。このスライドスイッチを電源スイッチとして昇圧回路の動作を制御する場合には、通信機器の動作を停止させている間にバッテリーの電力が消耗しないように、昇圧回路の制御端子に「H」レベルの制御信号を出力する操作摘みのポジションで、昇圧回路が動作するように設定する必要がある。一方、上述した通信モジュール自体で電源制御を行う場合に、起動させた通信モジュールから昇圧回路の動作を停止させる場合があるが、スライドスイッチが「H」レベルの制御信号を出力するポジションとなっているので、通信モジュールから昇圧回路を停止させることができない。また、通信機器の動作を停止させようとして、スライドスイッチを「L」レベルの制御信号を出力するポジションとすると、直ちに昇圧回路の動作が停止してしまうので、通信モジュールで通信終了処理を行うことができない。従って、このように携帯無線通信機器内の通信モジュールから制御する電源制御回路に外部から操作手段として併用する電源スイッチには、スライドスイッチは適さないものであった。
【0015】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、電源スイッチに連動して動作するマイクロコンピュータによることなく、昇降圧回路により昇降圧された電源の供給を受ける電子デバイス自体で、昇圧回路の動作を含む電源を制御する電子機器の電源制御回路を提供することを目的とする。
【0016】
また、電子機器内の電子デバイスから制御する電源制御回路に外部からの操作手段として併用する電源スイッチに、その操作位置から制御状態が明瞭なスライドスイッチを用いた電子機器の電源制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の目的を達成するため、請求項1の電子機器の電源制御回路は、第1電圧の電源を出力するバッテリーと、第1電圧と異なる第2電圧で動作する電子デバイスと、バッテリーと電子デバイスとの間に接続され、制御端子にON信号が入力されている間、第1電圧を第2電圧に昇降圧して電子デバイスに供給する昇降圧回路と、昇降圧回路の制御端子へON信号を出力し、電子デバイスを起動させるトリガー信号と、電子デバイスの動作を停止させる停止信号とを、入力操作に応じて出力する電源スイッチと、を備えた電子機器の電源制御回路であって、
電子デバイスは、昇降圧回路の制御端子へON信号を出力するON制御端子と、電源スイッチから停止信号を入力するOFF制御端子とを有し、電源スイッチから出力するトリガー信号は、少なくとも起動させた電子デバイスが連続動作の判定を行うまでの第1時間、昇降圧回路の制御端子へ0N信号を連続出力し、トリガー信号の出力により起動した電子デバイスは、電子デバイスの連続動作と判定した場合に、昇降圧回路の制御端子へON信号を連続出力し、連続動作中の電子デバイスは、OFF制御端子に停止信号が入力されると、所定の終了処理を行った後に、昇降圧回路の制御端子への0N信号の連続出力を停止することを特徴とする。
【0018】
電子デバイスを起動させる電源スイッチから出力されるトリガー信号は、少なくとも起動させた電子デバイスが連続動作の判定を行うまでの第1時間、昇降圧回路の制御端子へ0N信号を出力するだけなので、起動した電子デバイスが動作電圧不足、障害の発生等の理由で連続動作と判定できず、昇降圧回路の動作を停止させた場合には、電源制御回路全体が、トリガー信号を出力する前の動作停止状態にもどり、トリガー信号を出力する電源スイッチの操作によって、電子デバイスが起動される。
【0019】
電源スイッチから、電子デバイスの動作を停止させる停止信号を出力した場合にも、連続動作中の電子デバイスは、所定の終了処理を行った後に、昇降圧回路を動作させる0N信号の連続出力を停止するので、電源制御回路全体が、トリガー信号を出力する前の動作停止状態にもどり、トリガー信号を出力する電源スイッチの操作によって、電子デバイスを再起動できる。
【0020】
請求項2の電子機器の電源制御回路は、電源スイッチが、押圧操作を行っている間にON信号を出力するモーメント動作型プッシュスイッチであり、電源スイッチの第1時間以上の押圧操作によって昇降圧回路の制御端子へ第1時間以上連続して出力されるON信号を、トリガー信号とし、電源スイッチの押圧操作によって、連続動作中の電子デバイスのOFF制御端子へ出力されるON信号を、停止信号とすることを特徴とする。
【0021】
電源スイッチを第1時間以上押圧操作することによって、押圧操作中に昇降圧回路を動作させるON信号が出力され、少なくとも電子デバイスは、連続動作の判定をするまで動作する。電子デバイスが連続動作中に、再び電源スイッチを押圧操作すると、電子デバイスのOFF制御端子へ停止信号が出力され、電子デバイスが所定の終了処理を行った後に、電源制御回路全体が、トリガー信号を出力する前の動作停止状態にもどる。
【0022】
請求項3の電子機器の電源制御回路は、電源スイッチは、基準電位にあるバッテリーの低圧側端子に接続する第1ポジションと、基準電位に対して第1電圧の第1電位にあるバッテリーの高圧側端子に接続する第2ポジションとの間で移動するコモン端子を、電子デバイスのOFF制御端子へ接続させたスライドスイッチであり、コモン端子に一側電極を接続させたコンデンサと、アノードを基準電位とし、カソードをコンデンサの他側電極に接続させた第1ダイオードと、コンデンサと第1ダイオードの接続点にアノードを接続させ、基準電位と第1電位との間の設定電位以上の電圧印加をON信号の入力とする昇降圧回路の制御端子にカソードを接続させた第2ダイオードと、電子デバイスのON制御端子にアノードを接続し、昇降圧回路の制御端子にカソードを接続させた第3ダイオードとを、更に備え、
コモン端子が基準電位から第1電位としたときに、第1ダイオードを流れる充電電流により、コンデンサの他側電極の電位が、第1電位から設定電位まで低下する時間が少なくとも第1時間となるようにコンデンサの容量を設定し、コモン端子を第1ポジションから第2ポジションに切り換える入力操作に応じて、スライドスイッチは、コモン端子を基準電位から第1電位とするトリガー信号を出力し、第2ダイオードを介して第1時間以上昇降圧回路の制御端子へ設定電位以上の電圧を印加し、トリガー信号の出力により起動した電子デバイスは、電子デバイスの連続動作と判定した場合に、ON制御端子から第3ダイオードを介して昇降圧回路の制御端子へ設定電位以上の電圧を連続して印加し、コモン端子を第2ポジションから第1ポジションに切り換える入力操作に応じて、スライドスイッチは、コモン端子を第1電位から基準電位とする停止信号を出力し、連続動作中の電子デバイスは、OFF制御端子の電位が第1電位と基準電位間の所定の判定電位未満となることを停止信号の入力として、所定の終了処理を行った後に、ON制御端子から昇降圧回路の制御端子への設定電位以上の電圧印加を停止することを特徴とする。
【0023】
スライドスイッチのコモン端子を第1ポジションから第2ポジションへ入力操作すると、コンデンサの他側電極の電位は、基準電位から第1電位に変化し、スライドスイッチの内部抵抗及び第1ダイオードの抵抗とコンデンサの容量によって定まる時定数に従って、少なくとも第1時間が経過した後設定電位未満となる。コンデンサの他側電極に第2ダイオードを介して接続する昇圧回路の制御端子の電位は、コモン端子を第2ポジションへ移動操作した後、第1時間が経過するまで設定電位以上の電圧が印加されので、第1時間以上ON信号が入力され、コモン端子を第1ポジションから第2ポジションへ移動させるスライドスイッチの入力操作でトリガー信号を出力できる。
【0024】
トリガー信号の出力により起動した電子デバイスは、電子デバイスの連続動作と判定した場合に、ON制御端子から第3ダイオードを介して昇降圧回路の制御端子へ設定電位以上の電圧を連続して印加するので、連続したON信号が出力される。
【0025】
スライドスイッチのコモン端子を第2ポジションから第1ポジションへ入力操作すると、コモン端子の電位は第1電位から基準電位となり、連続動作中の電子デバイスは、OFF制御端子の電位が所定の判定電位未満となることを停止信号の入力とし、通信終了処理を行った後に、ON制御端子から昇降圧回路の制御端子への設定電位以上の電圧印加を停止する。
【0026】
請求項4の電子機器の電源制御回路は、電子デバイスが、電圧検出スイッチを介してバッテリーに接続し、バッテリーの電源電圧を監視する電圧検出回路を有し、電圧検出スイッチは、電子デバイスのON制御端子がON信号を出力している間、バッテリーと電圧検出回路間を接続するように動作することを特徴とする。
【0027】
電子デバイスが電圧検出回路を有するので、起動中にバッテリーの電圧情報を外部の電圧検出回路から定期的に得る必要がなく、バッテリーの消耗が速やかに検出される。
【0028】
また、電子デバイスに電源が供給されずに停止している間は、電圧検出回路へも電流が流れないので、電子デバイスが起動中にのみ電圧検出回路を動作させるようなスイッチを備える必要がない。
【0029】
請求項5の電子機器の電源制御回路は、電圧検出回路が、所定値以下に低下したバッテリーの電源電圧を検出すると、電子デバイスは、所定の終了処理を行った後に、昇降圧回路の制御端子への0N信号の連続出力を停止することを特徴とする。
【0030】
バッテリーが消耗して電子デバイスへの電源の供給が停止される前に、電子デバイスは、所定の終了処理を行った後に、昇圧回路の動作が停止し電源の供給が停止する。
【0031】
請求項6の電子機器の電源制御回路は、電子デバイスが、外部との無線通信を制御する通信モジュールであり、連続動作中の通信モジュールは、OFF制御端子に停止信号が入力されると、通信終了処理を行った後に、前記昇降圧回路の制御端子への0N信号の連続出力を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
請求項1の発明によれば、電子デバイスへの電源制御を、電源復帰、監視用に他の一部の回路を動作させておかずに、電子デバイス自体の処理、判断で行わせるので、動作を停止している間に、一部の回路を動作させるためのバッテリーの消耗がなく、携帯無線通信機器を長時間使用することができる。
【0033】
また、マイクロコンピュータなどの他の制御素子を用いず、自らが電源を供給する昇降圧回路の動作を制御するので、電子デバイスから、電源制御のためのデータを他のコントローラなどの素子へ出力する必要がなく、電源制御の処理を迅速に実行できる。
【0034】
また、電子デバイスに、バッテリーの電源電圧を監視する電圧検出回路を内蔵させることが可能で、電圧検出回路でバッテリーの電源電圧を任意に検出することができ、バッテリーが消耗している場合には、迅速に昇降圧回路の動作を停止して、電子機器の全体を、トリガー信号を出力する前の動作停止状態に戻すことができる。
【0035】
請求項2の発明によれば、昇圧回路の制御端子へ第1時間以上連続してON信号を出力し、電子デバイスを起動させるトリガー信号と、電子デバイスの動作を停止させる停止信号とを出力する電源スイッチを、モーメント動作型プッシュスイッチで構成することができる。
【0036】
請求項3の発明によれば、入力操作した後のスイッチ回路の状態が変化しないスライドスイッチを電源スイッチとして用いても、入力操作後の少なくとも第1時間のみON信号を出力するトリガー信号を出力することができ、電源投入状態と、遮断状態がその操作位置から明瞭なスライドスイッチを使用することができる。
【0037】
請求項4の発明によれば、電子デバイスが電圧検出回路を有するので、起動中に常時バッテリーの電圧情報を得ることができる。
【0038】
更に、電子デバイスに電源を供給しない間は、電圧検出回路へも無駄な電流が流れないので、別に電圧検出回路とバッテリー間を遮断するスイッチ機能を設ける必要がなく、回路構成が簡略化される。
【0039】
請求項5の発明によれば、バッテリーの消耗による動作の異常停止前に、所定の終了処理をおこなうことができる。
【0040】
請求項6の発明によれば、マイクロコンピュータなどの他の制御素子を用いず、通信モジュールの自らが電源を供給する昇圧回路の動作を制御するので、通信モジュールから、電源制御のために通信確立状況、通信終了時の通信処理の状況を表すデータを他のコントローラなどの素子へ出力する必要がなく、電源制御の処理が簡単で迅速に実行できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の第1実施の形態に係る電子機器の電源制御回路1を、図1と図2を用いて説明する。図1は、電源制御回路1を備えた携帯無線通信機器10の回路図、図2は、電源制御回路1の各部の信号波形を示す波形図である。
【0042】
本実施の形態に係る電子機器は携帯無線通信機器10であり、具体的には、近距離無線通信技術であるブルートゥース(商標)を用いて、被制御機器を遠隔制御するリモートコントロール送信機である。ブルートゥースは、免許なしで自由に使うことのできる2.45GHz帯の電波を利用するもので、赤外制御信号を用いる従来の遠隔制御方式と比較して、バッテリーの消費電力が小さく、機器間の距離が10m以内であれば、障害物があっても制御信号が到達することから、家庭内等で使用する携帯のリモートコントロール送信機に採用されつつある。
【0043】
しかしながら、このブルートゥースによる無線通信を制御する通信モジュールは、通常のマイクロコンピュータなどに比べて動作電圧が高く、外部機器(被制御機器)との無線通信を制御する図1に示すブルートゥース通信モジュール2も、直流1.5Vを出力電圧とするバッテリー3を2個直列に接続しても得られない3.5Vの電圧で動作するので、昇圧回路4で3.5Vに昇圧した出力電圧を供給し、動作させている。また、ブルートゥース通信モジュール2は、ペアリングした特定の被制御機器との無線通信の開始及び終了の際に、所定の通信確立処理と通信終了処理を行う必要があるので、通信モジュール2を含む携帯無線通信機器10の全体にバッテリー3、3の電源を供給し、若しくは電源を遮断する電源スイッチ5で直接通信モジュール2の電源を制御することができず、後述する電源制御のために、電源スイッチ5の停止信号を入力するOFF制御端子PWIと、昇圧回路4の動作を制御するON信号を出力するON制御端子PWとを有してる。
【0044】
通信モジュール2は、また、A/Dコンバータから構成される電圧検出回路7を内蔵し、その入力端子を一対の電圧検出スイッチ6、6を介して一対の各バッテリー3、3に接続させることによって、各バッテリー3、3の電源電圧を監視可能としている。一対の電圧検出スイッチ6、6は、ON制御端子PWが0N信号を出力する間に閉じ制御され、電圧検出回路7の入力端子を各バッテリー3、3に接続させている。
【0045】
図中8、8、8は、それぞれ青色、緑色、黄色の発光ダイオードであり、3個の発光ダイオード8の点灯若しくは点滅を組み合わせて、被制御機器との無線通信状況と電圧検出回路7で検出する各バッテリー3、3の電源電圧情報を表示し、操作者が確認できるようにしている。
【0046】
携帯無線通信機器10は、操作者によるデータ入力手段として、タッチパッドへの操作位置を検出するタッチパッドモジュール9を備え、タッチパッドモジュール9に接続するメインコントローラ11は、タッチパッドモジュール9が検出した操作位置から対応するデータを図示しない記憶部から読み出し、そのデータが被制御機器を制御する制御データである場合には、通信モジュール2へ出力する。通信モジュール2は、入力された制御データをブルートゥースのフォーマットに従った無線通信信号に含めて、被制御機器へ送信し、被制御機器を遠隔制御する。これらのタッチパッドモジュール9とメインコントローラ11とは、通信モジュール2が無線通信を行わない間は起動させる必要がないので、通信モジュール2による電源制御で起動するようになっている。
【0047】
昇圧回路4は、2個のバッテリー3、3を直列に接続して出力される3.0Vの電源電圧を3.5Vに昇圧して、通信モジュール2、メインコントローラ11等へ供給するものであり、その制御端子4aに例えば0.8Vと設定する設定電位VTD以上の電圧を印加するON信号が入力されたときに、昇圧動作を行うように設定されている。以下、本明細書では0.8Vの設定電位VTD以上の電圧信号をON信号という。尚、昇圧回路4の制御端子4aの電位は、制御端子4aにON信号の入力が途絶えると、昇圧回路4内を通して流れる放電電流によって設定電位VTD未満に低下するようなっている。
【0048】
本実施の形態に係る電源スイッチ5は、自動復帰し、押圧操作を行っている間にのみ押圧操作信号を出力するモーメント動作型プッシュスイッチであり、操作摘みと一体で可動する可動接点5bは、操作摘みを押圧操作している間にバッテリー3の高圧側端子3aに接続する固定接点5aへ接続して3Vの電位となり、押圧操作せず自動復帰している間に、接地された固定接点5cに接続し接地電位となる。
【0049】
可動接点5bは、カソードが昇圧回路4の制御端子4aに接続させた逆流防止ダイオード12のアノードと、アノードを通信モジュール2のOFF制御端子PWIに接続させた逆流防止ダイオード13のカソードに接続し、電源スイッチ5を押圧操作している間に、電源スイッチ5の可動接点5bからON信号を出力するようにしている。逆流防止ダイオード13のアノードは、更に、カソードに可動接点5bからON信号が入力された際に、OFF制御端子PWIへ後述する停止信号となる0N信号が入力されるように、プルアップ抵抗17を介して昇圧回路4の出力電源線16に接続している。
【0050】
また、昇圧回路4の制御端子4aは、アノードを通信モジュール2のON制御端子PWに接続させた逆流防止ダイオード14のカソードと、昇圧回路4の出力電源線16に介在する遮断スイッチ15の制御端子にも接続している。遮断スイッチ15は、昇圧回路4の制御端子4aにON信号が入力されない間、すなわち、昇圧回路4の動作が停止している間に開動作し、昇圧回路4の出力を携帯無線通信機器10の各回路から完全に遮断し、動作停止中の各回路にバッテリー3、3から漏れ電流が流れ出ないようにしている。
【0051】
以下、このように構成された電源制御回路1の動作を説明する。携帯無線通信機器10全体の動作を停止させている停止状態では、電源スイッチ5を押圧操作していないので、可動接点5bは接地電位で昇圧回路4の制御端子4aにはON信号が入力されないので、昇圧回路4の動作は停止し、遮断スイッチ15も開制御され、バッテリー3、3から電流が流れない。
【0052】
携帯無線通信機器10を起動させる為に操作者が電源スイッチ5を押圧操作すると、可動接点5bの電位は接地電位から3Vとなり、図2のニに示すように、逆流防止ダイオード12を介して昇圧回路4の制御端子4aにON信号が入力され、昇圧回路4が昇圧動作を開始するとともに、遮断スイッチ15が閉じ、3.5Vに昇圧した出力電圧が出力電源線16を介して通信モジュール2に供給され、通信モジュール2が起動する。
【0053】
起動した通信モジュール2は、ペアリングした特定の被制御機器との通信確立処理をブートプログラムにより実行し、通信が確立できた場合には、図2のハに示すように、ON制御端子PWから逆流防止ダイオード14を介して昇圧回路4の制御端子4aへON信号を連続出力する。ON制御端子PWからON信号を連続出力する通信モジュール2は、その後に電源スイッチ5の押圧操作を中止しても、図2のニに示すように、昇圧回路4の制御端子4aへON信号が入力されているので、昇圧回路4が動作を停止することがなく、通信モジュール2は、3.5Vの電圧の供給を受けて連続動作する。また、メインコントローラ11とタッチパッドモジュール2等の携帯無線通信機器10内の他の回路、回路素子は、連続動作する通信モジュール2の電源制御によって起動する。
【0054】
一方、このON制御端子PWがON信号を出力するまでの同図に示すT時間経過前に電源スイッチ5の押圧操作を中止すると、昇圧回路4の動作が停止し、通信モジュール2は連続動作に移行しない。つまり、電源スイッチ5は、ON制御端子PWがON信号を出力するまでのT時間以上の押圧操作で、通信モジュール2を連続動作させるトリガー信号を発生する。
【0055】
また、起動させた通信モジュール2が通信確立処理を行っても、特定の被制御機器との通信が確立できない場合など、通信モジュール2を連続動作できない所定の理由が発生した場合には、図2のハ’に示すように、ON制御端子PWを接地電位の状態としてON信号を出力しない。その結果、電源スイッチ5の押圧操作を解除した時点で、昇圧回路4の制御端子4aへのON信号の入力は途絶え(同図のニ’)、昇圧回路4の動作は停止して(同図のロ’)、携帯無線通信機器10の全体が停止状態に戻る。
【0056】
連続動作している通信モジュール2は、通信モジュール2自体による電源制御若しくは操作者による電源スイッチ5の押圧操作によって、その連続動作を停止する。前者は、例えば通信モジュール2が、通信障害など連続動作を停止させる必要があると判断した場合である。以下、この一例を、通信モジュール2がバッテリー3、3の電源電圧不足と判断し、連続動作を停止する場合で説明する。
【0057】
通信モジュール2が連続動作している間は、ON制御端子PWからON信号が連続出力されているので、電圧検出スイッチ6、6が閉じ制御され、電圧検出回路7は、各バッテリー3、3の電源電圧を監視可能となっている。電圧検出回路7が、バッテリー3、3の電源電圧からバッテリー3の消耗を検出した場合に、通信モジュール2は、3個の発光ダイオード8の点灯若しくは点滅制御して、操作者へバッテリー3、3の交換若しくは充電を促すとともに、通信相手先との通信終了処理と、携帯無線通信機器10内の他の回路、モジュールへの電源供給を停止し(以下、終了処理という)、各回路、回路素子の動作を停止させる。その後、ON制御端子PWの電位を接地電位として、連続出力しているON信号の出力を停止し、昇圧回路4の動作を停止させる。その結果、通信モジュール2への電源供給が停止され、携帯無線通信機器10の全体を停止状態にもどる。
【0058】
後者の操作者による電源スイッチ5の押圧操作は、通信モジュール2が連続動作している間に、電源スイッチ5を所定時間押圧操作する。この押圧操作の間、可動接点5bに接続する逆流防止ダイオード13のカソード側は、接地電位から3Vの電位となり、逆流防止ダイオード13に逆電圧が加わる。その結果、接地電位となっていたOFF制御端子PWIの電位は、プルアップ抵抗17を介して接続する出力電源線16の3.5Vの電位となり、図2のホに示すように、押圧操作の間にOFF制御端子PWIにON信号が入力されることになる。連続動作中の通信モジュール2は、OFF制御端子PWIに入力されるON信号を、通信モジュール2の動作停止を求める停止信号とみなし、終了処理後に、図2のハに示すように、ON制御端子PWから連続出力しているON信号の出力を停止し、昇圧回路4の動作を停止させる。その結果、通信モジュール2への電源供給が停止され、携帯無線通信機器10の全体を停止状態にもどる。
【0059】
上述の第1実施の形態に係る電源制御回路1では、モーメント動作型プッシュスイッチを電源スイッチ5とするので、ON制御端子PWがON信号を出力するまでのT時間経過前に電源スイッチ5を押圧操作を解除すると起動させることができず、また、押圧操作後の操作位置は、常に操作前の位置に復帰するので、その操作位置から電源投入状態を知ることができない。
【0060】
本発明の第2の実施の形態に係る電源制御回路20は、電源スイッチ21としてスライドスイッチを用いて、この問題を解決したものであり、以下、第2実施の形態に係る電子機器の電源制御回路20を、図3乃至図5を用いて説明する。図3は、電源制御回路20を備えた携帯無線通信機器30の回路図、図4は、電源制御回路20の要部回路図、図5は、図3の各部の信号波形を示す波形図である。尚、上述の携帯無線通信機器10と実質的に同一若しくは同様に作用する構成については、同一の番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0061】
電源スイッチ21は、操作摘みと一体にスライドする可動接点21bを、バッテリー3の高圧側端子3aに接続する固定接点21aと、接地された固定接点21c間で移動させるスライドスイッチであり、操作摘みが固定接点21a側にスライドする電源投入ポジションで可動接点21bは、3Vの電位となり、固定接点21c側にスライドする電源遮断ポジションで接地電位となる。
【0062】
可動接点5bは、第1実施の形態と同様に、アノードを通信モジュール2のOFF制御端子PWIに接続させた逆流防止ダイオード13のカソードと、逆流防止ダイオード12のアノード側に接続するが、逆流防止ダイオード12のアノードとの間に遅延用コンデンサ22を接続させている。図4に示すように、可動接点21bに接続する遅延用コンデンサ22の一側電極22aに対して他方の逆流防止ダイオード12のアノードに接続する他側電極22bは、アノードを接地させた充電用ダイオード23のカソードに接続させている。
【0063】
遅延用コンデンサ22の容量は、他側電極22bの電位が充電用ダイオード23を流れる充電電流によって3.0Vの電源電圧から0.8Vの設定電位VTDまで低下する充電時間Tが、通信モジュール2のON制御端子PWからON信号が出力されるまでの時間するまでの図5に示す時間Tより少なくとも長い時間となるように設定する。すなわち、充電時間Tは、スライドスイッチ21やダイオード23の内部抵抗などの充電パスに存在する抵抗の総和と、コンデンサ22の容量との積に依存するので、コンデンサ22の容量に依存する充電時間Tが時間Tより長くなるように容量を調整する。
【0064】
昇圧回路4は、図4に示すように、制御回路4aに接続するCE端子にON信号が入力されている間、Vss端子とGND端子間をスイッチング動作するスイッチングモジュール24と、一側をバッテリー3の高圧側端子3aに他側をスイッチングモジュール24のVss端子へ接続させた昇圧コイル25と、スイッチングモジュール24のVoutから出力される昇圧出力を整流平滑化する整流ダイオード26及び平滑コンデンサ27とを備えている。
【0065】
昇圧回路4の制御回路4aは、CE端子の他に、PチャンネルMOS形FETの動作を制御するNチャンネルMOS形FET28のゲートへも接続し、制御回路4aにON信号が入力されている間に、遮断スイッチ15となるPチャンネルMOS形FETのドレイン−ソース間が導通するようになっている。
【0066】
従って、昇圧回路4の制御回路4aにON信号が入力されている間は、スイッチングモジュール24が所定の周期でスイッチング動作するとともに、PチャンネルMOS形FET15のドレイン−ソース間が導通し、スイッチングモジュール24のVoutから出力される昇圧出力は、整流ダイオード26と平滑コンデンサ27によって3.5Vの直流電圧に整流平滑化され、出力電圧線16に出力される。
【0067】
また、昇圧回路4の制御回路4aへのON信号の入力が停止すると、制御回路4aの電位は、制御回路4aと接地間に直列に接続した抵抗31とコンデンサ29の時定数に従って接地電位まで低下する。これにより、スイッチングモジュール24のスイッチング動作が停止中もVoutの電位は3.0Vの電源電圧となるが、PチャンネルMOS形FET15のドレイン−ソース間が絶縁されるので、バッテリー3から出力電圧線16に電流が漏れ出ることがない。
【0068】
以下、このように構成された電源制御回路20の動作を説明する。携帯無線通信機器30全体の動作を停止させている停止状態では、スライドスイッチ21の操作摘みが電源遮断ポジションにあり、可動接点21bは接地電位にあり、昇圧回路4の制御端子4aにはON信号が入力されないので、昇圧回路4の動作は停止するとともに、PチャンネルMOS形FET15もドレイン−ソース間が絶縁され、バッテリー3、3から出力電源線16に電流が流れない。
【0069】
携帯無線通信機器10を起動させる為に、操作者がスライドスイッチ21の操作摘みを電源投入ポジションへ移動操作すると、可動接点21bの電位が3Vとなり、可動接点5bに接続する遅延用コンデンサ22の両電極22a、22bも、接地電位から3Vとなる。その結果、図5のヌに示すように、逆流防止ダイオード12を介して昇圧回路4の制御端子4aに、設定電位VTDを越えた電位のON信号が入力される。これにより、昇圧回路4が昇圧動作を開始するとともに、PチャンネルMOS形FET15がドレイン−ソース間が導通し、3.5Vに昇圧した電圧が出力電源線16を介して通信モジュール2に供給され、通信モジュール2が起動する。
【0070】
尚、操作者がスライドスイッチ21の操作摘みを電源投入ポジションへ移動操作した際に、可動接点21bの電位が3Vとなるが、通信モジュール2のOFF制御端子PWIから可動接点21bの方向を順方向とする逆流防止ダイオード13が介在することによって、起動前で電源が印加されていない通信モジュール2のOFF制御端子PWIに、外部から3Vの電圧が加わることがなく、ラッチアップしない。OFF制御端子PWIには、図5のルに示すように、昇圧回路8が昇圧動作を行って通信モジュール2に電源が供給されると同時に、プルアップ抵抗17を介して出力電源線16からON信号が入力され、以後通信モジュール2の連続動作中、ON信号が連続して入力される。
【0071】
起動した通信モジュール2は、第1実施の形態と同様に、通信確立処理をブートプログラムにより実行し、通信が確立できた場合には、図5のリに示すように、ON制御端子PWから逆流防止ダイオード14を介して昇圧回路4の制御端子4aへON信号を連続出力する。
【0072】
この間に昇圧回路4の制御端子4aの電位となる遅延用コンデンサ22の他側電極22bの電位は、充電用ダイオード23を流れる充電電流で遅延用コンデンサ22が充電されることにより、徐々に低下するが(図5のヌ参照)、少なくとも上記ON制御端子PWがON信号を連続出力するまでの時間Tまで、設定電位VTDまで低下しないように遅延用コンデンサ22の容量を調整するので、通信モジュール2が通信確立処理などの初期動作を完了するまで、昇圧回路4の動作が停止し、通信モジュール2の動作が停止することはない。つまり、スライドスイッチ21は、操作摘みを電源投入ポジションへ移動させる入力操作によって、少なくとも起動させた通信モジュール2が連続動作の判定を行うT時間、昇圧回路4の制御端子4aへON信号を連続出力するトリガー信号を発生する。
【0073】
その後に遅延用コンデンサ22の他側電極22bの電位が設定電位VTD未満に低下し、逆流防止ダイオード12を介して制御端子4aに入力されるON信号が途絶えても、ON制御端子PWからON信号を連続出力する通信モジュール2は、ON制御端子PWから連続してON信号を出力するので、昇圧回路4の動作が停止することはなく、通信モジュール2は、3.5Vの電圧を受けて連続動作する。
【0074】
一方、起動させた通信モジュール2が通信モジュール2を連続動作できない所定の理由があると判定した場合には、図5のリ’に示すように、ON制御端子PWを接地電位の状態としてON信号を出力しない。その結果、遅延用コンデンサ22の他側電極22bからのON信号が途絶えた時点で、昇圧回路4の動作は停止して(同図のチ’)、携帯無線通信機器10の全体が停止状態に戻る。
【0075】
連続動作している通信モジュール2が、通信モジュール2自体による電源制御で、通信モジュール2への電源供給を停止し、携帯無線通信機器10の全体を停止状態に復帰させる場合については、第1実施の形態と同一であるので、その説明を省略する。操作者がスライドスイッチ21を入力操作し、通信モジュール2の連続動作を停止させる場合は、スライドスイッチ21の操作摘みを、電源遮断ポジションへ移動させる。
【0076】
この移動操作によって可動接点5bの電位は、3Vから接地電位となり、逆流防止ダイオード13にプルアップ抵抗17を介して出力電源線16からの電流が流れ、OFF制御端子PWIの電位は、図5のルに示すように、逆流防止ダイオード13によるダイオード降下分を無視すればほぼ接地電位に引き込まれる。連続動作中の通信モジュール2は、OFF制御端子PWIの電位がここでは設定電位VTD未満となったときに、通信モジュール2の動作停止を求める停止信号が入力されたものするように設定される。OFF制御端子PWIの電位は、設定電位VTD未満となると、通信モジュール2は、終了処理を行った後に、図5のリに示すように、ON制御端子PWから連続出力しているON信号の出力を停止し、昇圧回路4の動作を停止させる。その結果、通信モジュール2への電源供給が停止され、携帯無線通信機器10の全体を停止状態に復帰する。
【0077】
上述の各実施の形態では、ON制御端子PWからON信号を出力している間に、電圧検出スイッチ6、6を閉じ制御するので、通信モジュール2が連続動作した後に、電圧検出回路7でバッテリー3、3の電源電圧を監視しているが、通信モジュール2が起動した直後に電圧検出回路7も動作させ、バッテリー3、3の電源電圧不足と判断した場合に、ON制御端子PWからON信号を出力することなく、起動動作を停止するようにしてもよい。
【0078】
又、上述の各実施の形態は、近距離無線通信技術であるブルートゥース(商標)を用いて、被制御機器を遠隔制御するリモートコントロール送信機を電子機器の一例として説明し、電子デバイスは、通信モジュール2で説明したが、電源スイッチに直接連動して動作せず、昇降圧回路の出力で動作する電子デバイスを備えた電子機器であれば、その通信方式や用途は、上述の実施の形態に限らない。例えば、操作者が電子機器への電源を遮断する電源スイッチの操作を行った後にも、一定時間ファンを回転制御する電子デバイスや、メモリーに所定のデータを書き込む電子デバイスを備えた電子機器にも本発明を適用できる。
【0079】
更に、上述の各実施の形態は、バッテリーの電源を昇圧して電子デバイスへ供給する昇圧回路を用いた一例で説明したが、バッテリーの電源を降圧して電子デバイスへ供給する降圧回路を備えるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、バッテリーの電源電圧と異なる電圧で動作する電子デバイスを備えた電子機器に適している。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る電源制御回路1を備えた携帯無線通信機器10の回路図である。
【図2】図1の電源制御回路1の各部の信号波形を示す波形図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る電源制御回路20を備えた携帯無線通信機器30の回路図である。
【図4】電源制御回路20の要部回路図である。
【図5】図3の電源制御回路20の各部の信号波形を示す波形図である。
【図6】従来の電子機器100の構成を示すブロック図である。
【図7】他の従来の電子機器110の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0082】
1、20 電源制御回路
2 通信モジュール(電子デバイス)
3 バッテリー
4 昇圧回路
4a 昇圧回路の制御端子
5、21 電源スイッチ
5b 可動接点(コモン端子)
6 電圧検出スイッチ
7 電圧検出回路
12 逆流防止ダイオード(第2ダイオード)
14 逆流防止ダイオード(第3ダイオード)
22 遅延用コンデンサ(コンデンサ)
22a コンデンサの一側電極
22b コンデンサの他側電極
23 充電用ダイオード(第1ダイオード)
TD 設定電位
PW ON制御端子
PWI OFF制御端子
第1時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電圧の電源を出力するバッテリーと、
第1電圧と異なる第2電圧で動作する電子デバイスと、
前記バッテリーと前記電子デバイスとの間に接続され、制御端子にON信号が入力されている間、第1電圧を第2電圧に昇降圧して前記電子デバイスに供給する昇降圧回路と、
前記昇降圧回路の制御端子へON信号を出力し、前記電子デバイスを起動させるトリガー信号と、前記電子デバイスの動作を停止させる停止信号とを、入力操作に応じて出力する電源スイッチと、を備えた電子機器の電源制御回路であって、
前記電子デバイスは、前記昇降圧回路の制御端子へON信号を出力するON制御端子と、前記電源スイッチから停止信号を入力するOFF制御端子とを有し、
前記電源スイッチから出力するトリガー信号は、少なくとも起動させた前記電子デバイスが連続動作の判定を行うまでの第1時間、前記昇降圧回路の制御端子へ0N信号を連続出力し、
トリガー信号の出力により起動した前記電子デバイスは、前記電子デバイスの連続動作と判定した場合に、前記昇降圧回路の制御端子へON信号を連続出力し、
連続動作中の前記電子デバイスは、OFF制御端子に停止信号が入力されると、所定の終了処理を行った後に、前記昇降圧回路の制御端子への0N信号の連続出力を停止することを特徴とする電子機器の電源制御回路。
【請求項2】
電源スイッチは、押圧操作を行っている間にON信号を出力するモーメント動作型プッシュスイッチであり、前記電源スイッチの第1時間以上の押圧操作によって前記昇降圧回路の制御端子へ第1時間以上連続して出力されるON信号を、トリガー信号とし、前記電源スイッチの押圧操作によって、連続動作中の前記電子デバイスのOFF制御端子へ出力されるON信号を、停止信号とすることを特徴とする請求項1に記載の電子機器の電源制御回路。
【請求項3】
電源スイッチは、基準電位にある前記バッテリーの低圧側端子に接続する第1ポジションと、基準電位に対して第1電圧の第1電位にある前記バッテリーの高圧側端子に接続する第2ポジションとの間で移動するコモン端子を、前記電子デバイスのOFF制御端子へ接続させたスライドスイッチであり、
前記コモン端子に一側電極を接続させたコンデンサと、
アノードを基準電位とし、カソードを前記コンデンサの他側電極に接続させた第1ダイオードと、
前記コンデンサと前記第1ダイオードの接続点にアノードを接続させ、基準電位と第1電位との間の設定電位以上の電圧印加をON信号の入力とする前記昇降圧回路の制御端子にカソードを接続させた第2ダイオードと、
前記電子デバイスのON制御端子にアノードを接続し、前記昇降圧回路の制御端子にカソードを接続させた第3ダイオードとを、更に備え、
前記コモン端子が基準電位から第1電位としたときに、前記第1ダイオードを流れる充電電流により、前記コンデンサの他側電極の電位が、第1電位から設定電位まで低下する時間が少なくとも第1時間となるように前記コンデンサの容量を設定し、
前記コモン端子を第1ポジションから第2ポジションに切り換える入力操作に応じて、前記スライドスイッチは、前記コモン端子を基準電位から第1電位とするトリガー信号を出力し、前記第2ダイオードを介して第1時間以上前記昇降圧回路の制御端子へ設定電位以上の電圧を印加し、
トリガー信号の出力により起動した前記電子デバイスは、前記電子デバイスの連続動作と判定した場合に、ON制御端子から前記第3ダイオードを介して前記昇降圧回路の制御端子へ設定電位以上の電圧を連続して印加し、
前記コモン端子を第2ポジションから第1ポジションに切り換える入力操作に応じて、前記スライドスイッチは、前記コモン端子を第1電位から基準電位とする停止信号を出力し、連続動作中の前記電子デバイスは、OFF制御端子の電位が第1電位と基準電位間の所定の判定電位未満となることを停止信号の入力として、所定の終了処理を行った後に、ON制御端子から前記昇降圧回路の制御端子への設定電位以上の電圧印加を停止することを特徴とする請求項1に記載の電子機器の電源制御回路。
【請求項4】
電子デバイスは、前記電圧検出スイッチを介して前記バッテリーに接続し、前記バッテリーの電源電圧を監視する電圧検出回路を有し、
前記電圧検出スイッチは、前記電子デバイスのON制御端子がON信号を出力している間、前記バッテリーと前記電圧検出回路間を接続するように動作することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子機器の電源制御回路。
【請求項5】
電圧検出回路が、所定値以下に低下した前記バッテリーの電源電圧を検出すると、前記電子デバイスは、所定の終了処理を行った後に、前記昇降圧回路の制御端子への0N信号の連続出力を停止することを特徴とする請求項4に記載の電子機器の電源制御回路。
【請求項6】
電子デバイスは、外部との無線通信を制御する通信モジュールであり、
連続動作中の前記通信モジュールは、OFF制御端子に停止信号が入力されると、通信終了処理を行った後に、前記昇降圧回路の制御端子への0N信号の連続出力を停止することを特徴とする請求項1に記載の電子機器の電源制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−44811(P2009−44811A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204949(P2007−204949)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】