説明

電子機器及び電源制御装置

【課題】電源制御回路の発熱を抑え、その発熱に伴う回路や装置自体の損傷を低減することができる電子機器及び電源制御装置を実現する。
【解決手段】電子機器100が、電源制御回路1に入力される入力電力と電源制御回路1から出力される出力電力の差分を検出して、その差分が所定の閾値を越えると判断した場合に、電源制御回路1の発熱を抑制するための処理を行うこととし、検出した差分が冷却用閾値を越える場合に電源制御回路1を冷却するための冷却装置40を作動させ、検出した差分が出力抑制用閾値を越える場合に電源制御回路1から出力される出力電力の電力量を所定の割合減少させ、検出した差分が出力停止用閾値を越えると判断した場合に電源制御回路1からの出力電力の出力を停止させることによって、電源制御回路1の発熱を抑えて、その発熱に伴う電源制御回路1や電子機器100の損傷を低減することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及び電源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、充電制御回路の入出力間電圧差が極めて小さくなるようにすることで、その回路における消費電力を少なく抑制し、装置の発熱量を減少させることを可能にした電源装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、電源から入力される電力を、機器の所定の負荷部(例えば、発光部、モータ駆動部など)に出力する電源制御回路を有する電子機器において、その電源制御回路の発熱に伴う温度を検出する温度センサが、閾値となる温度より高い温度を検出した場合、所定の冷却装置を作動させて、電源制御回路を冷却する電子機器が知られている。
【特許文献1】特開2004−252658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の場合、電源装置は、充電制御回路の消費電力を少なく抑制することによって、その装置の発熱を抑えることはできるが、発熱してしまった装置や回路を冷却することはできないので、その回路を構成する各種素子やデバイスは熱による損傷を蓄積してしまうこととなって、その素子やデバイスが劣化してしまうことがあった。
【0005】
また、上記冷却装置を備える電子機器の場合、その電子機器の設置環境などによっては、電源制御回路の発熱に伴う温度上昇を温度センサが検出するまでの時間がばらつくことがある。そして、温度センサが温度上昇を検出するまでに時間がかかってしまい、電源制御回路を冷却するタイミングが遅れてしまうと、その間に回路の各種素子やデバイスに熱による損傷が蓄積されてしまうことがあった。
【0006】
本発明の目的は、電源制御回路の発熱を抑え、その発熱に伴う回路や装置自体の損傷を低減することができる電子機器及び電源制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1記載の発明は、電子機器において、電源部から入力される電力を、当該機器の所定の負荷部に出力する電源制御回路と、前記電源制御回路を冷却するための冷却装置と、前記電源制御回路に入力される入力電力を検知する入力電力検知手段と、前記電源制御回路から出力される出力電力を検知する出力電力検知手段と、前記入力電力検知手段が検知した入力電力と、前記出力電力検知手段が検知した出力電力との差分を検出する電力差検出手段と、前記電力差検出手段が検出した前記入力電力と前記出力電力との差分が、所定の閾値を越えるか否かを判断する判断手段と、前記判断手段により、前記入力電力と前記出力電力との差分が冷却用閾値を越えると判断されたことに基づき、前記冷却装置を作動させる冷却装置制御手段と、前記判断手段により、前記入力電力と前記出力電力との差分が出力抑制用閾値を越えると判断されたことに基づき、前記電源制御回路から出力される前記出力電力の電力量を所定の割合減少させる出力抑制制御手段と、前記判断手段により、前記入力電力と前記出力電力との差分が出力停止用閾値を越えると判断されたことに基づき、前記電源制御回路からの前記出力電力の出力を停止させる出力停止制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、電源制御装置において、電源部から入力される電力を、所定の負荷部に出力する電源制御回路と、前記電源制御回路を冷却するための冷却装置と、前記電源制御回路に入力される入力電力を検知する入力電力検知手段と、前記電源制御回路から出力される出力電力を検知する出力電力検知手段と、前記入力電力検知手段が検知した入力電力と、前記出力電力検知手段が検知した出力電力との差分を検出する電力差検出手段と、前記電力差検出手段が検出した前記入力電力と前記出力電力との差分が、所定の閾値を越えるか否かを判断する判断手段と、前記判断手段により、前記入力電力と前記出力電力との差分が冷却用閾値を越えると判断されたことに基づき、前記電源制御回路を冷却するための冷却装置を作動させる冷却装置制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載の電源制御装置において、前記判断手段により、前記入力電力と前記出力電力との差分が出力抑制用閾値を越えると判断されたことに基づき、前記電源制御回路から出力される前記出力電力の電力量を所定の割合減少させる出力抑制制御手段を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3に記載の電源制御装置において、前記判断手段により、前記入力電力と前記出力電力との差分が出力停止用閾値を越えると判断されたことに基づき、前記電源制御回路からの前記出力電力の出力を停止させる出力停止制御手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、電子機器は、電源制御回路に入力される入力電力と、電源制御回路から出力される出力電力の差分(電力差)を検出し、その差分が所定の閾値を越えると判断した場合に、電源制御回路の発熱を抑制するための処理を行うことができる。
【0012】
例えば、電子機器は、検出した差分が所定の閾値である冷却用閾値を越えると判断した場合に、電源制御回路を冷却するための冷却装置を作動させることができる。つまり、電源制御回路における発熱要因となる入力電力と出力電力の差分(電力差)が、所定の冷却用閾値を越える場合であって、電源制御回路が発熱する状態となったことに基づき、冷却装置が電源制御回路を冷却することができるので、電源制御回路の発熱を抑え、その発熱に伴う電源制御回路や電子機器の損傷を低減することができる。
【0013】
また、電子機器は、検出した差分が所定の閾値である出力抑制用閾値を越えると判断した場合に、電源制御回路から出力される出力電力の電力量を所定の割合減少させることができる。つまり、電源制御回路における発熱要因となる入力電力と出力電力の差分(電力差)が、所定の出力抑制用閾値を越える場合であって、電源制御回路が発熱する状態となったことに基づき、電源制御回路から出力される出力電力の電力量を減少させることができる。そして、出力電力が減少されたことに伴い入力電力も同じ割合減少することとなるので、発熱要因となる入力電力と出力電力の差分(電力差)も同じ割合減少することとなる。この発熱要因となる入力電力と出力電力の差分(電力差)が減少するので、電源制御回路の発熱が抑えられ、その発熱に伴う電源制御回路や電子機器の損傷を低減することができる。
【0014】
また、電子機器は、検出した差分が所定の閾値である出力停止用閾値を越えると判断した場合に、電源制御回路からの出力電力の出力を停止させることができる。つまり、電源制御回路における発熱要因となる入力電力と出力電力の差分(電力差)が、所定の出力停止用閾値を越える場合であって、電源制御回路が発熱する状態となったことに基づき、電源制御回路から出力される出力電力を停止させることができる。そして、出力電力が停止されたことに伴い、電子機器自体が停止することとなるので、発熱要因となる電力の供給が停止することとなる。この発熱要因となる電力の供給が停止し、電子機器が停止してしまうので、電源制御回路の発熱が抑えられることとなって、その発熱に伴う電源制御回路や電子機器の損傷を低減することができる。
【0015】
特に、この電子機器は、発熱要因となる入力電力と出力電力の差分(電力差)に基づき、電源制御回路や電子機器の発熱を抑制する処理を実行することができるので、従来のように、温度センサが実際の発熱を検出した後に冷却などの発熱抑制処理を施すことに比べて、早い段階での発熱抑制対応を実行することができることとなる。それによって、発熱に伴う電源制御回路や電子機器の損傷をより少ないものとすることができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、電源制御装置は、電源制御回路に入力される入力電力と、電源制御回路から出力される出力電力の差分(電力差)を検出し、その差分が所定の閾値である冷却用閾値を越えると判断した場合に、電源制御回路を冷却するための冷却装置を作動させることができる。
【0017】
つまり、電源制御回路における発熱要因となる入力電力と出力電力の差分(電力差)が、所定の冷却用閾値を越える場合であって、電源制御回路が発熱する状態となったことに基づき、冷却装置が電源制御回路を冷却することができるので、電源制御回路の発熱を抑え、その発熱に伴う電源制御回路や電源制御装置の損傷を低減することができる。
【0018】
特に、この電源制御装置は、発熱要因となる入力電力と出力電力の差分(電力差)に基づき、電源制御回路や電源制御装置の発熱を抑える処理を実行することができるので、従来のように、温度センサが実際の発熱を検出した後に冷却処理(発熱抑制処理)を施すことに比べて、早い段階での冷却対応(発熱抑制対応)を実行することができることとなる。それによって、発熱に伴う電源制御回路や電源制御装置の損傷をより少ないものとすることができる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、請求項2に記載の発明と同様の効果が得られることは無論のこと、電源制御装置は、電源制御回路に入力される入力電力と、電源制御回路から出力される出力電力の差分(電力差)を検出し、その差分が所定の閾値である出力抑制用閾値を越えると判断した場合に、電源制御回路から出力される出力電力の電力量を所定の割合減少させることができる。
【0020】
つまり、電源制御回路における発熱要因となる入力電力と出力電力の差分(電力差)が、所定の出力抑制用閾値を越える場合であって、電源制御回路が発熱する状態となったことに基づき、電源制御回路から出力される出力電力の電力量を減少させることができる。そして、出力電力が減少されたことに伴い入力電力も同じ割合減少することとなるので、発熱要因となる入力電力と出力電力の差分(電力差)も同じ割合減少することとなる。
【0021】
このように発熱要因となる入力電力と出力電力の差分(電力差)が減少するので、電源制御回路の発熱が抑えられ、その発熱に伴う電源制御回路や電源制御装置の損傷を低減することができる。
【0022】
請求項4記載の発明によれば、請求項2又は3に記載の発明と同様の効果が得られることは無論のこと、電源制御装置は、電源制御回路に入力される入力電力と、電源制御回路から出力される出力電力の差分(電力差)を検出し、その差分が所定の閾値である出力停止用閾値を越えると判断した場合に、電源制御回路からの出力電力の出力を停止させることができる。
【0023】
つまり、電源制御回路における発熱要因となる入力電力と出力電力の差分(電力差)が、所定の出力停止用閾値を越える場合であって、電源制御回路が発熱する状態となったことに基づき、電源制御回路から出力される出力電力を停止させることができる。そして、出力電力が停止されたことに伴い、電源制御装置自体が停止することとなるので、発熱要因となる電力の供給が停止することとなる。
【0024】
このように発熱要因となる電力の供給が停止し、電源制御装置が停止してしまうので、電源制御回路の発熱が抑えられることとなって、その発熱に伴う電源制御回路や電源制御装置の損傷を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明に係る電子機器及び電源制御装置の実施の形態について詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明に係る電子機器の要部構成を示すブロック図である。
【0027】
電子機器100は、図1に示すように、機器の各部を制御する電源制御装置としての制御部10と、機器の各部に電力を供給する電源部20と、電源部20から供給される電力によって作動する負荷部30と、機器の発熱箇所を冷却するための冷却装置40等を備えている。
【0028】
電源部20は、例えば、AC電源や整流回路等を備え、電気機器100の各部に供給する電力を制御部10に出力する。
【0029】
負荷部30は、電源部20から供給される電力を消費して作動する機構等を有し、例えば、光を出力するランプを備える発光部や、モータを駆動させるモータ駆動機構などを有する。
【0030】
冷却装置40は、機器において発熱する箇所を冷却するための装置であり、例えば、発熱箇所に風を吹きつけて冷却する冷却ファンである。特に、冷却装置40は、発熱する電源制御回路1を冷却するように風を吹きつけるようになっている。
【0031】
なお、冷却装置40は、電源部20から供給される電力を消費して作動するので、負荷部30の一部としてもよい。
【0032】
制御部10は、例えば、CPU5(図2参照)を備えており、図示しない操作部等から入力される操作入力信号や、予め設定されている設定データ等に応じて、図示しないROMなどに格納されている電子機器用の各種制御プログラムに従って各部の動作を集中制御し、その処理結果を図示しないRAM内のワークエリアに格納する。そして、制御部10は、電子機器100を構成する各部の動作を制御する。
【0033】
また、制御部10は、図2に示すように、電源部20から入力される電力を負荷部30に出力する電源制御回路1と、電源制御回路1に入力される入力電力(Pin)を検知する入力電力検知手段2と、電源制御回路1から出力される出力電力(Pout)を検知する出
力電力検知手段3等を備えている。
【0034】
電源制御回路1は、電源部20から入力された入力電力(Pin)を、負荷部30が消費する電力量に応じた出力電力(Pout)に調整して出力することが可能な回路である。
【0035】
ここで、電源制御回路1の発熱について説明する。
【0036】
電源制御回路1の効率が96%である場合、例えば、電源部20から電源制御回路1に入力される入力電力(Pin)が230W(ワット)であると、電源制御回路1から負荷部30に出力する出力電力(Pout)は約220Wとなる。つまり、出力電力(Pout)を220Wとするためには、入力電力(Pin)が230Wなければならない。
【0037】
これは、電源制御回路1が、入力電力(Pin)を安定した出力電力(Pout)として調
整する際に、回路中で4%の損失が生じてしまうからである。
【0038】
そして、入力電力(Pin)と出力電力(Pout)の電力差(差分)であって、その損失
分4%の10Wのエネルギーは回路において熱に変換されてしまう。つまり、損失分の電力エネルギーによって、電源制御回路1における素子(デバイス)が発熱してしまう。この発熱によって、素子や回路、機器自体が損傷してしまわないように、冷却装置40によって温度を下げるなどの対策が取られることとなる。
【0039】
なお、電源制御回路1における素子の温度は、基板の限界温度である約100℃以下に
維持すべきであり、好ましくは80℃以下に維持すべきである。
【0040】
入力電力検知手段2と出力電力検知手段3は、例えば、電力量を検知することができるセンサなどを有する電力検知機器である。
【0041】
そして、入力電力検知手段2は、電源制御回路1に入力される入力電力(Pin)を検知し、検知した入力電力に関するデータをCPU5に送出する。また、出力電力検知手段3は、電源制御回路1から出力される出力電力(Pout)を検知し、検知した出力電力に関
するデータをCPU5に送出する。
【0042】
CPU5は、入力電力検知手段2が検知した入力電力(Pin)と、出力電力検知手段3が検知した出力電力(Pout)の差分(Pin−Pout)を検出する電力差検出手段5aとして機能する。
【0043】
また、CPU5は、電力差検出手段5aとしてのCPU5が検出した入力電力と出力電力の差分(Pin−Pout)が、所定の閾値である電力差を越えるか否かを判断する判断手
段として機能する。
【0044】
なお、所定の閾値(後述する冷却用閾値、出力抑制用閾値、出力停止用閾値など)である電力差は、図示しないROMに記憶されて格納されている。
【0045】
また、CPU5は、判断手段としてのCPU5が、入力電力と出力電力の差分(Pin−Pout)が冷却用閾値である、例えば20Wを越えたと判断したことに基づき(図2中、
矢印A)、冷却装置40を作動させる冷却装置制御手段5bとして機能する。本実施形態における冷却装置制御手段5bとしてのCPU5は、入力電力と出力電力の差分(Pin−Pout)が20W以上であり、30W未満であると判断手段(CPU5)が判断したこと
に基づき、冷却装置40を作動させる制御を行う。
【0046】
なお、冷却装置制御手段5bとしてのCPU5は、判断手段としてのCPU5が、電力の差分(Pin−Pout)が冷却用閾値(例えば、20W)を越えたと判断したことに基づ
き、動作中の冷却ファンの風量が増すように冷却装置40を作動させてもよく、また、停止中の冷却ファンを起動させるように冷却装置40を作動させてもよい。
【0047】
また、CPU5は、判断手段としてのCPU5が、入力電力と出力電力の差分(Pin−Pout)が出力抑制用閾値である、例えば30Wを越えたと判断したことに基づき(図2
中、矢印B)、電源制御回路1から出力される出力電力(Pout)の電力量を所定の割合
(例えば、1割)減少させる出力抑制制御手段として機能する。本実施形態における出力抑制制御手段としてのCPU5は、入力電力と出力電力の差分(Pin−Pout)が30W
以上であり、40W未満であると判断手段(CPU5)が判断したことに基づき、出力電力(Pout)を減少させる制御を行う。
【0048】
なお、電源制御回路1において、出力電力(Pout)が減少されると、その出力電力(
Pout)の減少率と同率に入力電力(Pin)も減少することとなる。
【0049】
また、CPU5は、判断手段としてのCPU5が、入力電力と出力電力の差分(Pin−Pout)が出力停止用閾値である、例えば40Wを越えたと判断したことに基づき(図2
中、矢印C)、電源制御回路1からの出力電力(Pout)の出力を停止させる出力停止制
御手段として機能する。
【0050】
なお、電子機器100は、電源制御回路1における温度異常を報知するブザーや点滅灯などを備える図示しない警報部を備え、判断手段としてのCPU5が、入力電力と出力電力の差分(Pin−Pout)が所定の閾値(例えば、出力抑制用閾値、30W)を越えたと
判断した場合に警報部を作動させて、警報部が出力する音や光によって温度異常を警告するようになっている。
【0051】
次に、電子機器100における電源制御回路1の発熱を抑える処理について、図3に示すフローチャートに基づき説明する。
【0052】
まず、電子機器100における図示しない操作部における電源スイッチがオンにされたことに伴い、電子機器100が起動し、電子機器100は所定の動作・駆動を行う(ステップS101)。
【0053】
そして、入力電力検知手段2は入力電力(Pin)を検知し、出力電力検知手段3は出力電力(Pout)を検知して、それぞれ検知した電力に関するデータをCPU5に送出する
(ステップS102)。
【0054】
次いで、CPU5は、入力電力(Pin)と出力電力(Pout)の差分(Pin−Pout)である電力差を検出する(ステップS103)。
【0055】
次いで、CPU5は、検出した電力差が、冷却用閾値である20Wを越え、30W未満であるか否かを判断する(ステップS104)。
【0056】
CPU5が、検出した電力差が20W以上、30W未満であると判断すると(ステップS104;Yes)、CPU5は、電源制御回路1を冷却するため、冷却ファンの風量が増すように冷却装置40を作動させて(ステップS105)、ステップS102に戻る。
【0057】
一方、CPU5が、検出した電力差が20W以上、30W未満でないと判断すると(ステップS104;No)、ステップS106へ進む。
【0058】
ステップS106において、CPU5は、検出した電力差が、出力抑制用閾値である30Wを越え、40W未満であるか否かを判断する(ステップS106)。
【0059】
CPU5が、検出した電力差が30W以上、40W未満であると判断すると(ステップS106;Yes)、CPU5は、出力電力を1割減少させて(ステップS107)、ステップS102に戻る。なお、CPU5が検出した電力差が30W以上である場合には、図示しない警報部が光や音などを出力し温度異常である旨を警告する。
【0060】
一方、CPU5が、検出した電力差が30W以上、40W未満でないと判断すると(ステップS106;No)、ステップS108へ進む。
【0061】
ここで、CPU5が、出力電力を1割減少させる処理(ステップS107)について説明する。
【0062】
入力電力が230Wであり、出力電力が200Wであると、電力差が30Wとなるので、出力抑制制御手段としてのCPU5は、出力電力を1割減少させて180Wとする。この出力電力の減少に伴って入力電力も1割減少するようになっているので、入力電力は207Wとなる。このような出力電力と入力電力を減少させる処理に応じて、出力電力と入力電力とが1割減少された後の電力差は207W−180W=27Wのようになり、電力差も1割減少することとなる。そして、1割減少した電力差(27W)は20W以上30W未満の範囲になる。
【0063】
ステップS108において、CPU5は、検出した電力差が、出力停止用閾値である40Wを越えたか否かを判断する(ステップS108)。
【0064】
CPU5が、検出した電力差が40W以上でないと判断すると(ステップS108;No)、CPU5は、電力差は20W未満であるものとしてステップS102に戻る。この際、冷却ファンの風量を通常量に戻したり、出力電力(入力電力)を初期値に戻したりするようにしてもよい。
【0065】
一方、CPU5が、検出した電力差が40W以上であると判断すると(ステップS108;Yes)、CPU5は、電源制御回路1に出力電力の出力を停止させることで、電子機器100の動作を停止させて(ステップS109)、電子機器100の駆動を終了する。
【0066】
このように、本発明に係る電子機器100は、電源制御回路1に入力される入力電力(Pin)と電源制御回路1から出力される出力電力(Pout)の差分である電力差(Pin−
Pout)を検出し、その電力差が所定の閾値以上であった場合に、電源制御回路1の発熱
を抑える処理を実行することができるので、電源制御回路1や電子機器100自体が異常な高温になりにくい。
【0067】
具体的には、電子機器100は、第1段階として、その電力差が冷却用閾値である20Wを越えた(電力差が20W以上30W未満)場合、冷却装置40である冷却ファンを作動させて、電源制御回路1に風を吹きつけて空冷する。
【0068】
そして、電源制御回路1が冷却装置40により冷却されることによって、電源制御回路1の発熱や電子機器100自体の発熱が抑えられる。
【0069】
また、電子機器100は、第2段階として、その電力差が出力抑制用閾値である30Wを越えた(電力差が30W以上40W未満)場合、出力電力(入力電力)を所定量減少させることで、発熱要因となる電力差を減少させる。
【0070】
そして、電源制御回路1における発熱要因となる電力差が減少されることによって、電源制御回路1の発熱や電子機器100自体の発熱が抑えられる。
【0071】
また、電子機器100は、第3段階として、その電力差が出力停止用閾値である40Wを越えた場合、電源制御回路1に出力電力の出力を停止させて、電子機器100の動作を停止させる。なお、電力差が出力停止用閾値である40Wを越えるような場合は、電源制御回路1などに何らかの異常があるものと判断されるようにして、電子機器100が停止される。
【0072】
そして、電子機器100の動作が停止されることによって発熱要因である電力の供給が停止することになり、電源制御回路1の発熱や電子機器100自体の発熱が抑えられる。
【0073】
このように電子機器100は、電源制御回路1の発熱を抑えることができ、その発熱に伴う電源制御回路1や電子機器100の損傷を低減することができる。
【0074】
特に、電子機器100は、発熱要因となる電力差に基づき、電源制御回路1や電子機器100の発熱を抑える処理を実行することができるので、従来のように、温度センサが実際の発熱を検出した後に冷却処理を施すことに比べて、早い段階での冷却対応を実行することができることとなる。それによって、電源制御回路1や、電源制御回路1に備えられる各種素子や、電子機器100自体の発熱に伴う損傷をより少ないものとすることができる。
【0075】
なお、本実施の形態においては、上記第1段階、第2段階、第3段階の3ステップによる発熱抑制を実行したが、第1段階、第2段階、第3段階の順はこれ以外の任意の順でもよく、また、全ての発熱抑制(3ステップの発熱抑制)を実行せずに、1ステップや2ステップでの発熱抑制を実行してもよい。
【0076】
また、検出した電力差が出力抑制用閾値を越えた場合であって、出力電力(入力電力)を所定量減少させる際に、冷却装置40である冷却ファンを作動させて、電源制御回路1を空冷してもよい。
【0077】
なお、以上の実施の形態において、電子機器100を具体的な装置や機器に適応させての説明を行わなかったが、この電子機器100は各種装置や機器に適応させることができる。例えば、本発明に係る電子機器100をプロジェクタに適応した場合、負荷部30にはランプなどの発光部が対応することとなる。
【0078】
また、冷却装置40は、電源制御回路1のみを冷却することに限らず、電源制御回路1の周囲近傍や、負荷部30なども冷却するように作動してもよい。
【0079】
なお、以上の実施の形態において、電力差検出手段、判断手段、冷却装置制御手段、出力抑制制御手段、出力停止制御手段は、CPU5が制御処理するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各種制御処理をロジック回路を用いて行うようにしてもよい。
【0080】
また、以上の実施の形態において示した電力差などの数値は、本実施形態における一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0081】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に係る電子機器の要部構成を示すブロック図である。
【図2】電子機器の制御部(電源制御装置)を示す説明図である。
【図3】本発明に係る電子機器の発熱量抑制処理の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0083】
1 電源制御回路
2 入力電力検知手段
3 出力電力検知手段
5 CPU(電力差検出手段、判断手段、冷却装置制御手段、出力抑制制御手段、出力停止制御手段)
5a 電力差検出手段
5b 冷却装置制御手段
10 制御部(電源制御装置)
20 電源部
30 負荷部
40 冷却装置
100 電子機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源部から入力される電力を、当該機器の所定の負荷部に出力する電源制御回路と、
前記電源制御回路を冷却するための冷却装置と、
前記電源制御回路に入力される入力電力を検知する入力電力検知手段と、
前記電源制御回路から出力される出力電力を検知する出力電力検知手段と、
前記入力電力検知手段が検知した入力電力と、前記出力電力検知手段が検知した出力電力との差分を検出する電力差検出手段と、
前記電力差検出手段が検出した前記入力電力と前記出力電力との差分が、所定の閾値を越えるか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により、前記入力電力と前記出力電力との差分が冷却用閾値を越えると判断されたことに基づき、前記冷却装置を作動させる冷却装置制御手段と、
前記判断手段により、前記入力電力と前記出力電力との差分が出力抑制用閾値を越えると判断されたことに基づき、前記電源制御回路から出力される前記出力電力の電力量を所定の割合減少させる出力抑制制御手段と、
前記判断手段により、前記入力電力と前記出力電力との差分が出力停止用閾値を越えると判断されたことに基づき、前記電源制御回路からの前記出力電力の出力を停止させる出力停止制御手段と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
電源部から入力される電力を、所定の負荷部に出力する電源制御回路と、
前記電源制御回路に入力される入力電力を検知する入力電力検知手段と、
前記電源制御回路から出力される出力電力を検知する出力電力検知手段と、
前記入力電力検知手段が検知した入力電力と、前記出力電力検知手段が検知した出力電力との差分を検出する電力差検出手段と、
前記電力差検出手段が検出した前記入力電力と前記出力電力との差分が、所定の閾値を越えるか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により、前記入力電力と前記出力電力との差分が冷却用閾値を越えると判断されたことに基づき、前記電源制御回路を冷却するための冷却装置を作動させる冷却装置制御手段と、
を備えることを特徴とする電源制御装置。
【請求項3】
前記判断手段により、前記入力電力と前記出力電力との差分が出力抑制用閾値を越えると判断されたことに基づき、前記電源制御回路から出力される前記出力電力の電力量を所定の割合減少させる出力抑制制御手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の電源制御装置。
【請求項4】
前記判断手段により、前記入力電力と前記出力電力との差分が出力停止用閾値を越えると判断されたことに基づき、前記電源制御回路からの前記出力電力の出力を停止させる出力停止制御手段を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の電源制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−318354(P2006−318354A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142364(P2005−142364)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】