説明

電子機器

【課題】本発明は、自己診断機能を有する回路の小型化を実現することを目的とする。
【解決手段】そして、この目的を達成するために本発明は、AD変換器13のサンプリン
グ周波数を変化させる周波数可変回路15と、AD変換器13の出力信号に通過帯域を制限するフィルタ16と、フィルタ16を通過したAD変換器13の出力信号におけるノイズレベルの積分値を算出する出力電圧判定回路17と、を備え、AD変換器13のサンプリング周波数を前記フィルタ16における通過帯域外まで変化させることにより、AD変換器13の量子化ノイズレベルを変化させ、当該量子化ノイズレベルの積分値が所定の範囲内にあるか否かを前記出力電圧判定回路17において判定することにより自己診断を行う電子機器としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、航空機、船舶、ロボット、デジタルカメラ、カーナビゲーション、センサ等の、各種電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の電子機器は、図6に示すごとく、検出素子1と、前記検出素子1が検出する物理情報を信号として検出するピックアップ回路2と、前記ピックアップ回路2によって検出された信号をAD変換するAD変換器3と、前記AD変換器3のサンプリング周波数を決定する周波数供給回路4と、前記AD変換器3の出力信号における出力電圧の大きさを判定する出力電圧判定回路7と、を備えている。
【0003】
そして、前記AD変換器3に故障診断用のアナログ信号を入力する診断信号供給回路8を設け、このアナログ信号入力時における前記AD変換器3の出力信号が所定の範囲内にあるか否かを前記出力電圧判定回路7が判定することにより、自己診断を行う構成としていた。
【0004】
なお、この出願に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−157719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の電子機器では、回路の小型化が難しいことが問題となっていた。
【0007】
すなわち、上記従来の構成においては、自己診断を行うためにわざわざ故障診断用のアナログ信号を入力する診断信号供給回路8を設ける必要があり、その結果として回路の小型化が難しくなってしまっていた。
【0008】
そこで本発明は、自己診断機能を有する回路の小型化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、この目的を達成するために本発明は、検出素子と、前記検出素子が検出する物理情報を信号として検出するピックアップ回路と、前記ピックアップ回路によって検出された信号をAD変換するAD変換器と、前記AD変換器のサンプリング周波数を変化させる周波数可変回路と、前記AD変換器の出力信号に通過帯域を制限するフィルタと、前記フィルタを通過した前記AD変換器の出力信号におけるノイズレベルの積分値を算出する出力電圧判定回路と、を備え、前記AD変換器のサンプリング周波数を前記フィルタにおける通過帯域外まで変化させることにより、前記AD変換器の量子化ノイズレベルを変化させ、前記量子化ノイズレベルの積分値が所定の範囲内にあるか否かを前記出力電圧判定回路において判定することにより自己診断を行う電子機器としたものである。
【発明の効果】
【0010】
このような構成とすることにより、わざわざ故障診断用のアナログ信号を入力する診断信号供給回路を設けることなく自己診断機能を保有する回路を実現することができ、その
結果として、回路の小型化を実現することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における電子機器を示す電気回路図
【図2】本発明の実施の形態1における電子機器の他の実施の形態を示す電気回路図
【図3】本発明の実施の形態1の電子機器におけるフィルタ回路を示す電気回路図
【図4】本発明の実施の形態1における電子機器のAD変換器におけるサンプリング周波数と量子化ノイズとの関係図
【図5】本発明の実施の形態1における電子機器のフィルタ通過後におけるサンプリング周波数と量子化ノイズとの関係図
【図6】従来の電子機器を示す電気回路図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における電子機器について図面を参照しながら説明する。
【0013】
本実施の形態における電子機器は、図1に示すごとく、検出素子11と、前記検出素子11が検出する物理情報を信号として検出するピックアップ回路12と、前記ピックアップ回路12によって検出された信号をAD変換するAD変換器13と、前記AD変換器13のサンプリング周波数を変化させる周波数可変回路15と、前記AD変換器13の出力信号に通過帯域を制限するフィルタ16と、前記フィルタ16を通過した前記AD変換器13の出力信号におけるノイズレベルの積分値を算出する出力電圧判定回路17と、を備えている。
【0014】
そして、前記AD変換器13のサンプリング周波数を前記フィルタ16における通過帯域外まで変化させることにより、前記AD変換器13の量子化ノイズレベルを変化させ、前記量子化ノイズレベルの積分値が所定の範囲内にあるか否かを前記出力電圧判定回路17において判定することにより自己診断を行う構成としている。
【0015】
このような構成により、わざわざ故障診断用のアナログ信号を入力する診断信号供給回路を設けることなく自己診断機能を保有する回路を実現することができ、その結果として、回路の小型化を実現することができるのである。
【0016】
以下、より具体的に本実施の形態の構成について説明する。
【0017】
図2は電子機器の一例として、角速度センサにおける実施の形態について説明したものであり、角速度センサは検出素子21と、モニタ回路41と、振動制御回路42と、駆動回路43とを少なくとも有しており、具体的には、前記駆動回路43から出力される駆動信号により振動する前記検出素子21と、前記検出素子21からの振動振幅に応じたモニタ信号を検出し増幅するモニタ回路41と、前記モニタ回路41により増幅されたモニタ信号が入力されると共に、このモニタ信号の振幅を一定にすることにより前記検出素子21の駆動振幅を一定にする前記振動制御回路42と、前記振動制御回路42により振幅が一定にされたモニタ信号が入力され、前記駆動信号を出力する前記駆動回路43とを少なくとも有している。
【0018】
また、前記検出素子21において検出された角速度は信号として前記ピックアップ回路22に検出され、前記ピックアップ回路22の出力信号は前記AD変換器23に入力されてAD変換され、デジタル信号に変換される。前記AD変換器23の出力信号は前記フィルタ26に入力され、前記フィルタ26の出力信号は前記出力電圧判定回路27に入力される。この出力電圧判定回路27において、前記フィルタ26の出力信号に含まれる量子化ノイズレベルの積分値が算出される。
【0019】
図3にフィルタ26の一実施例を示す。まず、AD変換器23の出力信号が、増幅度αである第1の増幅器51、及び遅延時間Tである遅延器52に入力される。そして、前記遅延器52からの出力信号が増幅度βである第2の増幅器53に入力され、前記第1の増幅器51、及び前記第2の増幅器53の出力が、加算器54により加算され、出力されるような構成であり、本実施の形態におけるフィルタ26はローパスフィルタである。なお、このフィルタ26としては、ローパスフィルタ以外にバンドパスフィルタやハイパスフィルタなどを用いることも可能であるが、後述する量子化ノイズレベルの積分値の変化を出力電圧判定回路27においてより高精度に検出する上では、ローパスフィルタを用いることが望ましい。
【0020】
前記AD変換器23におけるAD変換は周波数可変回路25より供給されるサンプリング周波数fsに基づいて行われ、このとき、AD変換のサンプリング周波数fsの大きさに応じた量子化誤差が生じ、量子化ノイズが発生する。この量子化ノイズの周波数スペクトルは、図4に示すごとく、サンプリング周波数fsの大きさによって変化し、例えばサンプリング周波数が2倍になれば、量子化ノイズの周波数帯域は2倍となり、量子化ノイズレベルは1/2倍となる。
【0021】
ここで、図2に示した前記周波数可変回路25により、前記AD変換器23のサンプリング周波数fsを前記フィルタ26における通過帯域外まで変化させることにより、前記フィルタ26の出力における通過帯域内の量子化ノイズレベルの積分値は、図5に示すごとく低下する。すなわち、前記周波数可変回路25によりサンプリング周波数fsを変化させることで、前記出力電圧判定回路27に入力される量子化ノイズレベルの積分値を変化させることが可能となる。
【0022】
このとき、前記AD変換器23より後段の信号経路に断線や固着等の故障があった場合には、サンプリング周波数fsを変化させたとしても、前記出力電圧判定回路27に入力される量子化ノイズレベルの積分値は変化しないため、前記出力電圧判定回路27によってこの量子化ノイズレベルの積分値を算出することにより、故障の判定が可能となる。
【0023】
このような構成により、わざわざ故障診断用のアナログ信号を入力する診断信号供給回路を設けることなく自己診断機能を保有する回路を実現することができ、その結果として、回路の小型化を実現することができるのである。
【0024】
なお、本実施の形態においては角速度センサを例に挙げて説明したが、その他の加速度センサ等、サンプリング周波数可変のAD変換器23を有する電子機器であれば本発明の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の電子機器は、回路の小型化を実現することができるという効果を有し、自動車、航空機、船舶、ロボット、デジタルカメラ、カーナビゲーション、センサ等の、各種電子機器において有用である。
【符号の説明】
【0026】
1 検出素子
2 ピックアップ回路
3 AD変換器
4 周波数供給回路
7 出力電圧判定回路
11 検出素子
12 ピックアップ回路
13 AD変換器
15 周波数可変回路
16 フィルタ
17 出力電圧判定回路
21 検出素子
22 ピックアップ回路
23 AD変換器
25 周波数可変回路
26 フィルタ
27 出力電圧判定回路
41 モニタ回路
42 振動制御回路
43 駆動回路
51 第1の増幅器
52 遅延器
53 第2の増幅器
54 加算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出素子と、
前記検出素子が検出する物理情報を信号として検出するピックアップ回路と、
前記ピックアップ回路によって検出された信号をAD変換するAD変換器と、
前記AD変換器のサンプリング周波数を変化させる周波数可変回路と、
前記AD変換器の出力信号に通過帯域を制限するフィルタと、
前記フィルタを通過した前記AD変換器の出力信号におけるノイズレベルの積分値を算出する出力電圧判定回路と、を備え、
前記AD変換器のサンプリング周波数を前記フィルタにおける通過帯域外まで変化させることにより、前記AD変換器の量子化ノイズレベルを変化させ、前記量子化ノイズレベルの積分値が所定の範囲内にあるか否かを前記出力電圧判定回路において判定することにより自己診断を行う
電子機器。
【請求項2】
前記検出素子が検出する物理情報が、前記検出素子に印加された角速度である
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記フィルタがローパスフィルタである
請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記フィルタが、
前記AD変換器の出力信号が入力される第1の増幅器と、
前記AD変換器の出力信号が入力される遅延器と、
前記遅延器からの出力信号が入力される第2の増幅器と、
前記第1、第2の増幅器の出力信号を加算し出力する加算器と、
を具備する構成である
請求項3に記載の電子機器。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−117924(P2011−117924A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39724(P2010−39724)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【特許番号】特許第4645768号(P4645768)
【特許公報発行日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】