説明

電子機器

【課題】省電力を実現しつつ、電源電圧の上昇を好適に抑制する電子機器を提供すること。
【解決手段】電子機器は、トランスを有し、トランスの2次側において、制御系電装品に供給する第1電圧(3.3V)と、第1電圧より高い電圧であって複数の駆動系電装品に供給する第2電圧(24V)とを生成する電源を含む。通電制御部(81)は、複数の駆動系電装品の少なくとも1つ(62)を、PWM信号によって制御する。デューティ比決定部(81)は、制御系電装品への第1電圧(3.3V)の供給に伴って第2電圧(24V)の電圧値が上昇する電源電圧上昇時において、第2電圧(24V)が上限値の所定範囲内となるように、PWM信号のデューティ比を決定する。通電制御部は、電源電圧上昇時において、駆動系電装品(62)を、デューティ比が決定されたPWM信号によってダミー駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器に関し、詳しくは、一つの電源から値の異なる複数の電源電圧を利用する電子機器における、電源電圧の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
一つの電源から値の異なる複数の電源電圧を利用する電子機器の例として、特許文献1に、画像形成装置(電子機器)の各動作モードで駆動系の24V電圧が上昇しないように、定格電圧の最も低いファンを駆動する前にモータを擬似(ダミー)負荷として駆動する技術が、開示されている。それによって、24V電圧によって駆動されるファンへの定格以上の電圧印加が防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−011000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術においては、モータのダミー駆動時に必ずしも必要量の通電が行われているとは言えなかった。すなわち、ダミー駆動時に必要以上に通電を行っている可能性があり、その場合、電力を浪費する虞があった。
【0005】
本発明は、省電力を実現しつつ、電源電圧の上昇を好適に抑制する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術を提供するための手段として、第1の発明に係る電子機器は、複数の駆動系電装品と、前記複数の駆動系電装品を制御する制御系電装品と、トランスを有し、前記トランスの2次側において、前記制御系電装品に供給する第1電圧と、前記第1電圧より高い電圧であって前記複数の駆動系電装品に供給する第2電圧とを生成する電源と、前記複数の駆動系電装品の少なくとも1つを、パルス幅変調信号によって、通電のON期間とOFF期間とを切換えて制御する通電制御部と、前記制御系電装品への前記第1電圧の供給に伴って前記第2電圧の電圧値が上昇する電源電圧上昇時において、前記第2電圧が上限値の所定範囲内となるように、前記パルス幅変調信号のデューティ比を決定するデューティ比決定部とを備え、前記通電制御部は、前記電源電圧上昇時において、前記パルス幅変調信号によって制御される駆動系電装品を、前記デューティ比決定部によってデューティ比が決定されたパルス幅変調信号によってダミー駆動する。
本構成によれば、パルス幅変調信号のデューティ比を適宜決定することで、省電力を実現しつつ、電源電圧の上昇を好適に抑制することができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明の電子機器において、前記デューティ比決定部は、デューティ比の初期値を、前記通電のON期間を最大とするように決定し、ダミー駆動される前記駆動系電装品への通電開始から所定期間後に前記通電のON期間を減少させるデューティ比に変更する。
本構成によれば、ダミー駆動開始時のデューティ比を100%(あるいは0%)とすることにより、すなわち、ダミー駆動系電装品を直流駆動することにより、電源電圧の上昇抑止力を強めることができる。
【0008】
第3の発明は、第1の発明の電子機器において、前記第2電圧の値を測定する測定手段をさらに備え、前記デューティ比決定部は、前記第2電圧の測定値が前記上限値の所定範囲内に収まるように前記デューティ比を決定する。
本構成によれば、第2電圧の測定値に基づいてデューティ比を決定するので、より省電力を実現しつつ、第2電圧の上昇を好適に抑制することができる。
【0009】
第4の発明は、第3の発明の電子機器において、前記通電制御部は、前記測定値が前記所定範囲内に収まらない場合、ダミー駆動される前記駆動系電装品の異常と判断して、前記駆動系電装品への通電を停止する。
本構成によれば、電磁クラッチ等の駆動系電装品の異常を判断できる。
【0010】
第5の発明は、第1から第4の発明のいずれか一つの電子機器において、前記通電制御部は、前記駆動系電装品のダミー駆動時におけるパルス幅変調信号の周波数を、通常駆動時の周波数よりも低くする。
本構成によれば、第2電圧が上限値の所定範囲内となりさえすれば精度の良い平滑化は不要という観点から、パルス幅変調信号の周波数をより低くすることができるため、ノイズも低減できる。
【0011】
第6の発明は、第1から第5の発明のいずれか一つの電子機器において、前記ダミー駆動される駆動系電装品は、電磁コイルを含む電磁コイル部品である。
本構成によれば、ダミー駆動される電装品としてメインモータをPWM制御する場合と比べ、騒音の発生を抑えられる。
【0012】
第7の発明は、第6の発明の電子機器において、前記電磁コイル部品の周囲の温度を検出する温度検出手段をさらに備え、前記デューティ比決定部は、検出温度が高くなるに応じて前記通電のON期間が長くなるように前記デューティ比を決定する。
本構成によれば、温度に影響されやすい電磁コイルの不安定性を吸収できる。
【0013】
第8の発明は、第6または第7の発明の電子機器において、前記デューティ比決定部は、前記電磁コイル部品のダミー駆動時におけるパルス幅変調信号の周波数を、下式となるように、決定する。
周波数>>(1/τ)=R/L ここで、τ:電磁コイルの時定数、L:電磁コイルのインダクタンス、R:電磁コイルの抵抗
本構成によれば、電磁コイルのインダクタンス成分によって駆動電流が好適に平滑される。
【0014】
第9の発明は、第1から第8の発明のいずれか一つの電子機器において、前記複数の駆動系電装品は画像形成に係る複数の駆動系電装品であり、前記電子機器は、被記録媒体に画像を形成する画像形成装置であり、前記電源電圧上昇時は、前記画像形成装置による画像形成が行われない非画像形成動作期間である。
本構成によれば、画像形成装置の非画像形成動作期間において、省電力を実現しつつ、電源電圧の上昇を好適に抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電子機器によれば、電源電圧の上昇時に、パルス幅変調信号によって駆動系電装品がダミー駆動される。そのため、省電力を実現しつつ、電源電圧の上昇を好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態であるカラープリンタの概略構成を示す側断面図
【図2】カラープリンタの電源装置の概略的な構成図
【図3】カラープリンタの電磁クラッチ駆動回路の概略的な構成図
【図4】ダミー負荷のPWM駆動の実施例1に係るタイムチャート
【図5】ダミー負荷のPWM駆動の実施例2に係るタイムチャート
【図6】ダミー負荷のPWM駆動の実施例3に係るタイムチャート
【図7】ダミー負荷のPWM駆動の実施例4に係るタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態>
次に本発明の一実施形態について図1から図7を参照して説明する。
1.プリンタの全体構成
最初に図1を参照してプリンタの全体構成を説明する。
【0018】
図1は、本発明の電子機器の一例であるカラープリンタ(「画像形成装置」の一例)1の概略構成を示す側断面図である。なお、以下の説明においては、図1における右側をカラープリンタ1の前方とする。なお、画像形成装置はカラープリンタに限定されず、例えば、モノクロプリンタ、コピー機能等を備えた、いわゆる複合機等であってもよい。さらに、本発明の電子機器は画像形成装置に限定されず、例えば、オーディオ機器やビデオ機器にも適用できる。
【0019】
カラープリンタ1は、本体ケーシング2を備えており、本体ケーシング2の底部には、用紙(「被記録媒体」の一例)3が積載される供給トレイ4が設けられている。供給トレイ4の前端上方にはピックアップローラ5、給紙ローラ7、補助給紙ローラ7a、およびトレイ(Tray)用電磁クラッチ(「電磁コイル部品」および「駆動系電装品」の一例)61が設けられている。
【0020】
ピックアップローラ5の回転に伴って供給トレイ4内の最上位に積載された用紙3がピックアップされ、給紙ローラ7および補助給紙ローラ7aによってレジストローラ6に送り出される。また、トレイ用電磁クラッチ61は、後述するCPU81により制御されるメインモータ44から動力伝達機構(図示せず)を介してピックアップローラ5に伝達される回転動力等をオン/オフする。すなわち、トレイ用電磁クラッチ61は、メインモータ44の回転力をピックアップローラ5に伝達する。
【0021】
レジストローラ6は、用紙3の斜行を補正した上でその用紙3を所定のタイミングでベルト13上に送る。さらに、レジストローラ6の近傍には、レジストローラ6の回転をオン/オフするレジスト(Regist)用電磁クラッチ(「電磁コイル部品」および「駆動系電装品」の一例)62が設けられている。レジスト用電磁クラッチ62は、メインモータ44からの回転動力をレジストローラ6に伝達する。レジスト用電磁クラッチ62の近傍には、レジスト用電磁クラッチ62の周囲の温度を検出する温度センサ(「温度検出手段」の一例)S1が設けられている。温度センサS1の検出信号はCPU81に提供される(図3参照)。
【0022】
また、印刷部10は、ベルトユニット11、プロセス部20、定着器28などを備えている。ベルトユニット11は、前後一対の支持ローラ12間に、ベルト13を張架した構成となっており、ベルト13が駆動されることによりベルト13上の用紙3が後方に向けて搬送される。また、ベルト13の内側には、後述するプロセス部20の各感光体ドラム26とベルト13を挟んで対向する位置にそれぞれ転写ローラ14が設けられている。
【0023】
プロセス部20は、例えば4色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した4つの現像カートリッジ22(それぞれ22Y,22M,22C,22K)を備えている。各現像カートリッジ22には、スキャナ部17が個別に設けられている。スキャナ部17は、レーザ発光部(図示せず)から出射されたレーザ光Lを、各色毎に対応する感光体ドラム26(それぞれ26Y,26M,26C,26K)の表面にそれぞれ照射する。これにより、印刷データに基づいて感光体ドラム26の表面が露光される。
【0024】
各現像カートリッジ22には、現像剤である各色のトナーを収容するトナー収容室23、供給ローラ24、現像ローラ25、感光体ドラム26、帯電器27等がそれぞれ設けられている。
【0025】
トナー収容室23から放出されたトナーは、供給ローラ24の回転により現像ローラ25に供給され、このとき、供給ローラ24と現像ローラ25との間で正に摩擦帯電される。感光体ドラム26の表面は、その回転に伴って、まず、帯電器27により一様に正帯電された後、スキャナ部17からのレーザ光Lにより露光され、用紙3に形成すべき画像に対応した静電潜像が形成される。次いで、現像ローラ25の回転により、現像ローラ25上のトナーが感光体ドラム26の表面に供給され、静電潜像が可視像化される。その後、感光体ドラム26の表面上に担持されたトナー像は、用紙3が感光体ドラム26と転写ローラ14との間を通過する間に、転写ローラ14に印加される転写バイアス電圧によって、用紙3に転写される。
【0026】
転写後の用紙3は、ベルトユニット11によって定着器28に搬送され、ここで用紙3上に転写されたトナー像が熱定着される。このようにして用紙3には、印刷データに基づいて印刷部10によって印刷処理がなされる。そして、熱定着された用紙3は、メインモータ44により回転駆動される排紙ローラ30によって本体ケーシング2の上面に設けられた排出トレイ29上に排出される。この場合、用紙3は、フェースダウン(用紙3のトナー像が形成された面が下側になる状態)で排出トレイ29上に排出される。また、排紙ローラ30の近傍には排紙用電磁クラッチ(「電磁コイル部品」および「駆動系電装品」の一例)63が設けられており、排紙用電磁クラッチ63のオン/オフによって、排紙ローラ30の正回転および逆回転が切替えられる。
【0027】
また、本体ケーシング2内の下部には、ベルト13と供給トレイ4との間に位置して、両面印刷のための再搬送路51が設けられている。両面印刷時には、トナー像が熱定着された用紙3は、排紙ローラ30が逆回転されることによって、再搬送路51を通って給紙側に搬送される。
【0028】
2.電源装置の構成
次に、図2の回路ブロック図を参照して、カラープリンタ1の電源装置70に係る回路構成について説明する。電源装置(「電源」の一例)70は、トランスT1を有し、トランスT1の2次側において、CPU等の制御系電装品に供給するDC3.3V電源電圧あるいはDC5.0V電源電圧(「第1電圧」の一例)と、第1電圧より高い電圧であって複数の駆動系電装品に供給するDC24V電源電圧(「第2電圧」の一例)とを生成する。なお、第1電圧は、DC3.3VあるいはDC5.0Vに限られず、例えば、DC3.0VあるいはDC6.0Vであってもよい。また、第2電圧はDC24Vに限られず、例えば、DC12VあるいはDC36Vであってもよい。
【0029】
詳しくは、電源装置70は、図2に示されるように、ダイオードブリッジからなる整流回路71および平滑コンデンサC1を含む。整流回路71および平滑コンデンサC1は、AC入力、例えば、AC100Vを整流する。
【0030】
電源装置70は、いわゆるRCC(リンギング・チョーク・コンバータ)でる変換部を含む。変換部は、通常の、コンバータトランス(本発明における「トランス」に相当)T1、スイッチングトランジスタQ1、一次側制御回路72等を含む。
【0031】
電源装置70は、また、コンバータトランスT1の2次側において、ダイオードD1およびコンデンサC2を含む。ダイオードD1およびコンデンサC2は、コンバータトランスT1の2次側の電圧を整流して、ここでは、24V電源電圧を生成し、24V電源電圧を、電磁クラッチ(61,62,63)等の高圧の直流を必要とする複数の駆動系電装品に出力する。
【0032】
電源装置70は、また、コンバータトランスT1の2次側において、コンバータトランスT1の2次側巻き線の中間タップに接続されたダイオードD2、コンデンサC3およびDC−DCコンバータ73を含む。ダイオードD2およびコンデンサC3は、コンバータトランスT1の2次側の中間タップの電圧を整流して、所定のDC電圧を生成する。DC−DCコンバータ73は、所定のDC電圧を変換して、ここでは3.3V電源電圧(「第1電圧」の一例)を生成し、3.3V電源電圧を、低圧の直流で動作する制御系電装品、例えば、後述するCPU81に供給する。
【0033】
すなわち、電源装置70は、トランスT1を有し、トランスT1の2次側において、制御系電装品に供給する3.3V電源電圧(第1電圧)と、第1電圧より高い電圧であって複数の駆動系電装品に供給する24V電源電圧(第2電圧)とを生成する。
【0034】
3.電磁クラッチ駆動回路の構成
次に、図3の回路ブロック図を参照して、電磁クラッチ駆動に係る回路構成について説明する。電磁クラッチ駆動回路80は、CPU81、電圧検出回路82、駆動トランジスタTr1、保護ダイオードD3を含む。なお、駆動制御部はCPU81に限られず、例えば、ASIC(特定用途向けIC)であってもよい。
【0035】
CPU(「駆動制御部」の一例)81は、複数の駆動系電装品の少なくとも1つ(本実施形態では、レジスト用電磁クラッチ62)を、パルス幅変調(PWM)信号によって、通電のON期間とOFF期間とを切換えて制御する。また、CPU(「デューティ比決定部」の一例)81は、制御系電装品への3.3V電源電圧(第1電圧)の供給に伴って24V電源電圧(第2電圧)の電圧値が上昇する電源電圧上昇時において、24V電源電圧が上限値の所定範囲内となるように、PWM信号のデューティ比を決定する。そして、CPU81は、電源電圧上昇時において、PWM信号によって制御されるレジスト用電磁クラッチ62を、決定したデューティ比のPWM信号によってダミー駆動する。なお、ここで「上限値」とは、定格電圧が最も低い駆動系電装品(ここでは、一例として冷却ファン)の定格電圧である。
【0036】
レジスト用電磁クラッチ62は電磁コイルL1を含み、電磁コイルL1は抵抗成分R1を含む。なお、ダミー負荷として使用される電磁コイル部品はこれに限られない。例えば、トレイ用電磁クラッチ61あるいは排紙用電磁クラッチ63を使用してもよい。さらに、複数の電磁クラッチが使用されてもよい。
【0037】
CPU81は、PWM信号であるクラッチ駆動信号をPWMポートから駆動トランジスタTr1に供給する。すなわち、CPU81は、PWM信号によって駆動トランジスタTr1をON/OFF制御してレジスト用電磁クラッチ62をダミー駆動する。なお、印字中である通常駆動時は、レジスト用電磁クラッチ62はPWM信号によって駆動されてもよいし、直流駆動されてもよい。また、CPU81は、電磁クラッチ62の駆動制御の他に、カラープリンタ1の画像形成に係る各種動作制御を行う。例えば、CPU81は、画像形成に係る各処理が行われる際に、各処理に適合したタイミングにおいて、メインモータ44を駆動する。メインモータ44の回転動力は、所定の動力伝達機構(図示せず)を介して、ピックアップローラ5およびレジストローラ6等の各種回転部材に伝達される。
【0038】
4.ダミー負荷のPWM駆動制御
次に、図4から図7を参照して、レジスト用電磁クラッチ62をPWM信号によってダミー駆動する場合の制御態様について説明する。なお、図4から図7の各時刻t1において、例えば、定格電圧の最も小さい駆動系電装品である冷却ファンの駆動指令がなされたことに応じて、CPU81は、PWM信号によってレジスト用電磁クラッチ62のダミー駆動を開始するものとする。なお、ここで、冷却ファンの定格電圧は、例えば、DC29V以下とする。
【0039】
実施例1.(デューティ比一定駆動)
図4は、ダミー駆動時のデューティ比を一定とする場合のタイムチャートである。
【0040】
CPU81は、図4の時刻t1において、PWM信号によってレジスト用電磁クラッチ62のダミー駆動を開始する。このときのPWM信号のデューティ比は、所定の、例えば70%とされ、周波数は、例えば3kHzとされる。このとき、CPU81は、PWM信号のデューティ比を、上記したように、24V電源電圧が上限値の所定範囲内となるように、所定の70%に設定(決定)する。そして、レジスト用電磁クラッチ62のダミー駆動によって、24V電源電圧が上限値の所定範囲となるまで、所定期間、待機する。例えば、24V電源電圧の上限値の所定範囲が、27.0V〜28.0Vの範囲とすると、図4の時刻t2以降において、24V電源電圧の値が上昇値36Vから、ほぼ27.6Vに低下する。すると、CPU81は、定格電圧の最も小さい駆動系電装品である冷却ファンの駆動を開始する。これによって、24V電源電圧は、27.6Vに低下しているため、冷却ファンに、定格以上の電圧が印加されることが、防止される。
なお、24V電源電圧の上限値の所定範囲、およびこの場合のデューティ比は、事前に実験等において適宜決定され、例えば、電磁クラッチ駆動回路80内の不揮発メモリ(図示せず)に格納される。なお、この場合、24V電源電圧が上限値の所定範囲となることを、電圧検出回路82の検出値に基づいて、検知するようにしてもよい。
【0041】
実施例2.(デューティ比可変駆動1)
図5は、ダミー駆動時のデューティ比が可変される場合のタイムチャートである。
【0042】
CPU81は、図5の時刻t1において、PWM信号によってレジスト用電磁クラッチ62のダミー駆動を開始する。このときのPWM信号のデューティ比(デューティ比の初期値)は、通電のON期間を最大とするように決定する。ここでは、CPU81は、デューティ比を100%とし、周波数は、例えば3kHzとする。そして、ダミー駆動の開始から所定期間後の時刻(t2−1)に、デューティ比を、通電のON期間を減少させるデューティ比、例えば、70%に変更する。なお、ダミー駆動の開始から所定期間は、24V電源電圧が上限値の所定範囲となるまで期間であって、事前に決定される。時刻(t2−1)以降において、冷却ファンの駆動が開始される。
【0043】
この場合、ダミー駆動開始時のデューティ比を100%(あるいは0%)とすることにより、すなわち、レジスト用電磁クラッチ62を直流駆動することにより、24V電源電圧の上昇抑止力を強めることができる。そのため、図5の時刻(t2−1)は、図4の時刻t2より早くなり、実施例1と比べて、24V電源電圧の上昇値36Vから、27.6Vに低下するまでの時間を短縮することができる。
【0044】
実施例3.(デューティ比可変駆動2)
図6は、ダミー駆動時のデューティ比が可変される場合の別の例のタイムチャートである。実施例3では、CPU81は、電圧検出回路82による検出値(測定値)、すなわち、24V電源電圧(第2電圧)の値が、上限値の所定範囲内に収まるようにデューティ比を決定する。すなわち、CPU81は、フィードバック値(FB値)に基づいて、デューティ比を変更する。
【0045】
図6の時刻t1において、最初、例えば、30%のデューティ比のPWM信号によってレジスト用電磁クラッチ62のダミー駆動を開始する。そして、FB値が所定の値に下がるまで、デューティ比を徐々に上昇させる。図6の時刻t3においてFB値が所定の値に下がると、すなわち、24V電源電圧の値が上限値の所定範囲内に収まると、CPU81は、デューティ比を例えば、70%に固定し、冷却ファンの駆動を開始する。
【0046】
この場合、電圧検出回路82の検出値(第2電圧の測定値)に基づいてデューティ比を決定するので、より省電力を実現しつつ、24V電源電圧の上昇を好適に抑制することができる。
【0047】
実施例4.(デューティ比可変駆動3)
図7は、ダミー駆動時のデューティ比が可変される場合の別の例のタイムチャートである。実施例4では、CPU81は、温度センサS1による検出温度が高くなるのに応じて通電のON期間が長くなるようにデューティ比を決定する。
【0048】
図7の時刻t1において、CPU81は、例えば、不揮発メモリに格納された温度切替テーブルにしたがって、最初、50%のデューティ比のPWM信号によってレジスト用電磁クラッチ62のダミー駆動を開始する。そして、レジスト用電磁クラッチ62周辺の温度が21℃を超える時刻t4において、デューティ比を65%に替える。さらに、周辺の温度が31℃を超える時刻t5において、デューティ比を80%に替える。その際、CPU81は、例えば、電圧検出回路82による検出値によって、24V電源電圧が上限値の所定範囲まで低下するのを検知すると、冷却ファンの駆動が開始される。
【0049】
このように、レジスト用電磁クラッチ62の周辺温度に応じてデューティ比を変更することによって、24V電源電圧の値を上限値の所定範囲内に好適に収めることができる。すなわち、温度に影響されやすい電磁コイルL1の不安定性を吸収することができる。なお、温度切替テーブルは、図7に示された温度範囲に限定されず、任意である。例えば、−20℃から60℃の範囲でデューティ比が設定されていてもよい。
【0050】
5.実施形態の効果
24V電源電圧の上昇を抑制するために、レジスト用電磁クラッチ62がPWM信号によってダミー駆動される。その際、単に、PWM信号のデューティ比を適宜決定することで、24V電源電圧が所定範囲内に好適に収められる。そのため、省電力を実現しつつ、電源電圧の上昇を好適に抑制することができる。
【0051】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0052】
(1)上記実施形態において、ダミー駆動する電磁コイル部品(駆動系電装品)として電磁クラッチを使用する例を示したが、これに限られない。例えば、電磁コイル部品は、ソレノイドコイル単体であってもよいし、ソレノイドスイッチ、あるいは電磁リレーであってもよい。要は、電磁コイルを含む部品であればよい。さらに、ダミー駆動される駆動系電装品は、電磁コイル部品に限られず、例えば、モータ等であってもよい。
【0053】
(2)上記実施形態において、CPU(通電制御部)81は、電圧検出回路82による検出値(測定値)、すなわち24V電源電圧が上限値の所定範囲内に収まらない場合、ダミー駆動されるレジスト用電磁クラッチ(駆動系電装品)62の異常と判断して、駆動系電装品への通電を停止するようにしてもよい。この場合、レジスト用電磁クラッチ62に駆動信号を供給したにもかかわらず、駆動電流が流れないため、24V電源電圧が低減しないと考えられる。そのため、レジスト用電磁クラッチ62に何らかの異常が発生したと考えられる。したがって、この場合、電磁クラッチ等の駆動系電装品の異常を判断できる。なお、その際、電圧検出回路82による24V電源電圧の監視を定期的に複数回行い、異常判断の信頼性を高めるようにしてもよい。
【0054】
(3)上記実施形態において、CPU(通電制御部)81は、レジスト用電磁クラッチ(駆動系電装品)62のダミー駆動時におけるPWM信号の周波数を、通常駆動時の周波数よりも低くするようにしてもよい。この場合、24V電源電圧(第2電圧)が上限値の所定範囲内となりさえすれば精度の良い平滑化は不要という観点から、PWM信号の周波数をより低くすることができるため、ノイズも低減できる。また、周波数が低くなることにより、電装品を駆動する素子(トランジスタ)の損失低減になるので、発熱も小さく部品のコストを削減できる。なお、ここで、通常駆動時は、印字中を意味する。
【0055】
(4)上記実施形態において、CPU(デューティ比決定部)81は、レジスト用電磁クラッチ(電磁コイル部品)62のダミー駆動時におけるパルス幅変調信号の周波数を、次式となるように、決定するようにしてもよい。周波数>>(1/τ)=R/L ここで、τは電磁コイルL1の時定数であり、Lは電磁コイルL1のインダクタンスであり、Rは電磁コイルL1の抵抗である。この場合、電磁コイルL1のインダクタンス成分Lによって駆動電流が好適に平滑される。
【符号の説明】
【0056】
1…カラープリンタ
3…用紙
44…メインモータ
61…排紙ローラ用電磁クラッチ
62…レジストローラ用電磁クラッチ
81…CPU
82…電圧検出回路
S1…温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の駆動系電装品と、
前記複数の駆動系電装品を制御する制御系電装品と、
トランスを有し、前記トランスの2次側において、前記制御系電装品に供給する第1電圧と、前記第1電圧より高い電圧であって前記複数の駆動系電装品に供給する第2電圧とを生成する電源と、
前記複数の駆動系電装品の少なくとも1つを、パルス幅変調信号によって、通電のON期間とOFF期間とを切換えて制御する通電制御部と、
前記制御系電装品への前記第1電圧の供給に伴って前記第2電圧の電圧値が上昇する電源電圧上昇時において、前記第2電圧が上限値の所定範囲内となるように、前記パルス幅変調信号のデューティ比を決定するデューティ比決定部とを備え、
前記通電制御部は、前記電源電圧上昇時において、前記パルス幅変調信号によって制御される駆動系電装品を、前記デューティ比決定部によってデューティ比が決定されたパルス幅変調信号によってダミー駆動する、電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記デューティ比決定部は、デューティ比の初期値を、前記通電のON期間を最大とするように決定し、ダミー駆動される前記駆動系電装品への通電開始から所定期間後に前記通電のON期間を減少させるデューティ比に変更する、電子機器。
【請求項3】
請求項1に記載の電子機器において、
前記第2電圧の値を測定する測定手段をさらに備え、
前記デューティ比決定部は、前記第2電圧の測定値が前記上限値の所定範囲内に収まるように前記デューティ比を決定する、電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器において、
前記通電制御部は、前記測定値が前記所定範囲内に収まらない場合、ダミー駆動される前記駆動系電装品の異常と判断して、前記駆動系電装品への通電を停止する、電子機器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子機器において、
前記通電制御部は、前記駆動系電装品のダミー駆動時におけるパルス幅変調信号の周波数を、通常駆動時の周波数よりも低くする、電子機器。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電子機器において、
前記ダミー駆動される駆動系電装品は、電磁コイルを含む電磁コイル部品である、電子機器。
【請求項7】
請求項6に記載の電子機器において、
前記電磁コイル部品の周囲の温度を検出する温度検出手段をさらに備え、前記デューティ比決定部は、検出温度が高くなるに応じて前記通電のON期間が長くなるように前記デューティ比を決定する、電子機器。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の電子機器において、
前記デューティ比決定部は、前記電磁コイル部品のダミー駆動時におけるパルス幅変調信号の周波数を、下式となるように、決定する、電子機器。
周波数>>(1/τ)=R/L
ここで、τ:電磁コイルの時定数、L:電磁コイルのインダクタンス、R:電磁コイルの抵抗
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の電子機器において、
前記複数の駆動系電装品は画像形成に係る複数の駆動系電装品であり、
前記電子機器は、被記録媒体に画像を形成する画像形成装置であり、
前記電源電圧上昇時は、前記画像形成装置による画像形成が行われない非画像形成動作期間である、電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−78248(P2011−78248A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228623(P2009−228623)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】