説明

電子機器

【課題】複数のCPUと外部装置との通信系統を削減できるとともに、通信系統の変更に対して柔軟に対応できる電子機器を提供すること。
【解決手段】少なくとも2個のCPUで構成され、これらCPUと外部装置との間で各種信号の授受を行うように構成された電子機器において、
前記CPUの各通信ポートと前記外部装置との通信ポートが、連動して切換制御される連動切換スイッチを介して接続されることを特徴とするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関し、詳しくは、複数のCPUで構成された電子機器におけるCPU相互間およびこれらCPUと外部装置との間における通信系統の切換に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、制御部と操作部が制御システムとして一体化されたシングルループコントローラは、温度や圧力および流量などのプロセス量の制御を1ループ単位で行うものであって、分散形制御システム(DCS)のバックアップや、ボイラーをはじめとする各種プラントの制御に広く用いられている。
【0003】
ところで、このようなシングルループコントローラの一種に、機器全体を制御・演算する第1のCPU1と入出力を司る第2のCPU2よりなるマルチプロセッサ構造として構成されたものがある。
【0004】
機器全体としては、外部装置との間で入出力データや設定値などの各種データの授受を行うものの、CPU2は通常の動作時では入出力を司るものとしてCPU1の制御下にあり、外部装置との間で各種データを直接やり取りすることはない。
【0005】
図2は、このような従来の電子機器における外部装置との間の通信系統の一例を示すブロック図である。図2において、CPU1はCPU2との間で通信ポートP11およびP21を介して「通信1」を行うとともに通信ポートP12を介して図示しない外部装置との間で「通信2」を行い、CPU2は通信ポートP22を介して図示しない外部装置との間で「通信3」を行う。
【0006】
ここで、たとえば「通信1」としてはCPU1によるCPU2の制御があり、「通信2」としては外部装置からCPU1へのプログラムのダウンロードがあり、「通信3」としては外部装置からCPU2へのプログラムのダウンロードがある。
【0007】
ところが、図2の構成によれば、CPU1とCPU2のそれぞれに相互間で通信を行うための通信ポートP11,P21と、外部装置との間で通信を行うための通信ポートP12,P22を設けなければならず、部品点数が増えることからコスト要因になる。
【0008】
そこで、図3に示すように、外部装置との間で通信を行うための通信ポートをCPU1とCPU2が共用する構成として、通信経路を機械的な切換スイッチを用いて切り換えることも考えられている。
【0009】
図3は従来の電子機器における外部装置との間の通信系統の他の例を示すブロック図であり、図2と共通する部分には同一の符号を付けている。図3において、切換スイッチSWの一方の固定接点aはCPU1の通信ポートP12に接続され、切換スイッチSWの他方の固定接点bはCPU2の通信ポートP22に接続され、切換スイッチSWの可動接点cは共通の通信ポートPcに接続されている。
【0010】
図3の構成によれば、CPU1はたとえば「通信1」により図2と同様にCPU2の制御を行う。そして、切換スイッチSWの可動接点cを外部から入力される切換信号で固定接点a側に切換制御することにより、CPU1の通信ポートP11は切換スイッチSWの固定接点a→可動接点cよりなる通信系統を介して通信ポートPcに接続されて、CPU1と図示しない外部装置との間で「通信2」によるプログラムのダウンロードを行うことができる。
【0011】
また、切換スイッチSWの可動接点cを外部から入力される切換信号で固定接点b側に切換制御することにより、CPU2の通信ポートP22は切換スイッチSWの固定接点b→可動接点cよりなる通信系統を介して通信ポートPcに接続されて、CPU2と図示しない外部装置との間で「通信3」によるプログラムのダウンロードを行うことができる。
【0012】
図4も従来の電子機器における外部装置との間の通信系統の他の例を示すブロック図であり、図2および図3と共通する部分には同一の符号を付けている。図4において、切換スイッチSWの一方の固定接点aはCPU1の通信ポートP11に接続され、切換スイッチSWの他方の固定接点bは通信ポートPcに接続され、切換スイッチSWの可動接点cはCPU2の通信ポートP21に接続されている。すなわち、図4の構成では、CPU2の通信ポートP22は削除されている。
【0013】
図4の構成によれば、CPU1は、通信ポートP12を介して外部装置との間で「通信2」を行い、図2および図3と同様にプログラムのダウンロードを行うことができる。そして、切換スイッチSWの可動接点cを外部から入力される切換信号で固定接点a側に切換制御することにより、CPU1の通信ポートP11は切換スイッチSWの固定接点a→可動接点cよりなる通信系統を介してCPU2の通信ポートP21に接続され、CPU1はたとえば「通信1」により図2および図3と同様にCPU2の制御を行う。
【0014】
また、切換スイッチSWの可動接点cを外部から入力される切換信号で固定接点b側に切換制御することにより、CPU2の通信ポートP22は切換スイッチSWの固定接点b→可動接点cよりなる通信系統を介して通信ポートPcに接続されて、CPU2と図示しない外部装置との間で「通信3」によるプログラムのダウンロードを行うことができる。
【0015】
特許文献1には、複数のCPUが設けられた電子機器の動作モードの切換方法が記載されている。
【0016】
【特許文献1】特開2004−295728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、これら従来の構成によれば、コストを削減しようとしても、図2や図3に示すように、CPU2に少なくとも2個の通信ポートが必要であったり、CPU1とCPU2が別のプリント配線板に実装されている場合にはその間をコネクタやワイヤーなどで接続しなければならず、配線の数が多くなってしまう。
【0018】
また、図3や図4に示すように、通信系統を削減するために外部から入力される切換信号で可動接点cが切換制御される切換スイッチSWを設けた場合には、その設定通りに動作するのみであり、通信系統の変更に対して柔軟に対応できないという問題もある。
【0019】
本発明は、これらの問題を解決するものであり、その目的は、複数のCPUと外部装置との通信系統を削減できるとともに、通信系統の変更に対して柔軟に対応できる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
少なくとも2個のCPUで構成され、これらCPUと外部装置との間で各種信号の授受を行うように構成された電子機器において、
前記CPUの各通信ポートと前記外部装置との通信ポートが、連動して切換制御される連動切換スイッチを介して接続されることを特徴とする。
【0021】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の電子機器において、
前記連動切換スイッチは、前記CPUから出力される切換信号または外部から入力される切換信号により切換制御されることを特徴とする。
【0022】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の電子機器において、
前記電子機器は、シングルループコントローラであることを特徴とする。
【0023】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の電子機器において、
前記信号の授受は、前記外部装置から前記各CPUへのプログラムのダウンロードを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の電子機器によれば、複数のCPUと外部装置との通信系統を削減できるとともに、通信系統の変更に対して柔軟に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図2】従来の電子機器における外部装置との間の通信系統の一例を示すブロック図である。
【図3】従来の電子機器における外部装置との間の通信系統の他の例を示すブロック図である。
【図4】従来の電子機器における外部装置との間の通信系統の他の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施例を示すブロック図であり、図4と共通する部分には同一の符号を付けている。図1と図4の相違点は、図1では3個の切換スイッチSW1〜SW3を設けていることである。
【0027】
図1において、第1の切換スイッチSW1の一方の固定接点aはCPU1の通信ポートP11に接続され、第1の切換スイッチSW1の他方の固定接点bは第2の切換スイッチSW2の他方の固定接点bに接続され、第1の切換スイッチSW1の可動接点cはCPU2の通信ポートP21に接続されている。
【0028】
第2の切換スイッチSW2の一方の固定接点aはCPU1の通信ポートP12に接続され、第2の切換スイッチSW2の他方の固定接点bは前述のように第1の切換スイッチSW1の他方の固定接点bに接続され、第2の切換スイッチSW2の可動接点cは通信ポートPcに接続されている。
【0029】
第3の切換スイッチSW3の一方の固定接点aにはCPU1の切換出力信号が入力されて第3の切換スイッチSW3の他方の固定接点bには外部からの切換信号が入力され、第3の切換スイッチSW3の可動接点cから第1の切換スイッチSW1および第2の切換スイッチSW2の各可動接点cを連動して切換制御するための切換信号が出力されている。
【0030】
図1の構成の動作を説明する。第1の切換スイッチSW1および第2の切換スイッチSW2の各可動接点cが図1に示すように第1の切換スイッチSW1および第2の切換スイッチSW2の一方の固定接点a側に切換制御されている状態では、CPU1の通信ポートP11は切換スイッチSW1の固定接点a→切換スイッチSW1の可動接点cよりなる通信系統を介してCPU2の通信ポートP21に接続され、CPU1は「通信3」および「通信1」により図2〜図4と同様にCPU2の制御を行う。
【0031】
また、この状態では、CPU1の通信ポートP12は切換スイッチSW2の固定接点a→切換スイッチSW2の可動接点cよりなる通信系統を介して通信ポートPcに接続され、CPU1は外部装置との間で「通信2」を行い、図2〜図4と同様にプログラムのダウンロードを行うことができる。
【0032】
これに対し、第1の切換スイッチSW1および第2の切換スイッチSW2の各可動接点cが第1の切換スイッチSW1および第2の切換スイッチSW2の他方の固定接点b側に切換制御されている状態では、CPU2の通信ポートP21は切換スイッチSW1の可動接点c→切換スイッチSW1の固定接点b→切換スイッチSW2の固定接点b→切換スイッチSW2の可動接点cよりなる通信系統を介して通信ポートPcに接続され、CPU2は外部装置との間で「通信1」を行い、図2〜図4と同様にプログラムのダウンロードを行うことができる。
【0033】
第3の切換スイッチSW3の可動接点cが内部切換信号により第3の切換スイッチSW3の一方の固定接点a側に切換制御されている状態では、第1の切換スイッチSW1および第2の切換スイッチSW2の各可動接点cは第3の切換スイッチSW3の固定接点a側に入力されているCPU1の切換出力信号にしたがって切換制御され、第3の切換スイッチSW3の可動接点cが内部切換信号により第3の切換スイッチSW3の他方の固定接点b側に切換制御されている状態では、第1の切換スイッチSW1および第2の切換スイッチSW2の各可動接点cは第3の切換スイッチSW3の固定接点b側に入力されている外部切換信号にしたがって切換制御される。
【0034】
図1の構成によれば、図4と同様にCPU2の通信ポートP22を削除して通信ポートP21の1つとすることができる。
【0035】
そして、外部装置と通信を行うポートを、図3と同様に通信ポートPcの1つだけとすることができる。
【0036】
また、連動して切換制御される第1の切換スイッチSW1および第2の切換スイッチSW2の切換状態を、第3の切換スイッチSW3の可動接点cの切換制御に応じて、外部切換信号またはCPU1の切換出力信号に基づいて設定できる。すなわち、第1の切換スイッチSW1および第2の切換スイッチSW2の切換状態を、CPU1で設定できる。
【0037】
さらに、第3の切換スイッチSW3について、起動時は可動接点cが固定接点b側に切り換えられているように初期設定しておくことにより、CPU1が通信やプログラムなどにしたがって動作することで可動接点cを固定接点a側に切り換わるようにすることができる。これより、起動時は確実に外部から切換制御可能となり、CPU1およびCPU2へのプログラムのダウンロードが確実に実行されるように設定できる。
【0038】
なお、上記実施例では、シングルループコントローラの例について説明したが、これに限るものではなく、複数のCPUで構成される各種の電子機器の各CPUへのプログラムのダウンロードにも好適である。
【0039】
以上説明したように、本発明によれば、複数のCPUと外部装置との通信系統を削減できるとともに、通信系統の変更に対して柔軟に対応できる比較的低コストの電子機器が実現できる。
【符号の説明】
【0040】
P11、P12、P21 通信ポート
SW1〜SW3 切換スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2個のCPUで構成され、これらCPUと外部装置との間で各種信号の授受を行うように構成された電子機器において、
前記CPUの各通信ポートと前記外部装置との通信ポートが、連動して切換制御される連動切換スイッチを介して接続されることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記連動切換スイッチは、前記CPUから出力される切換信号または外部から入力される切換信号により切換制御されることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記電子機器は、シングルループコントローラであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記信号の授受は、前記外部装置から前記各CPUへのプログラムのダウンロードを含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−14380(P2012−14380A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149709(P2010−149709)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】