説明

電子機器

【課題】駆動源からの回転力を受けて回転する回転軸の振動を抑制可能な電子機器を提供する。
【解決手段】駆動源と、前記駆動源からの回転力を受けて回転する回転軸と、前記回転軸を回転可能に支持する支持部分とを備えた電子機器において、前記回転軸(送り軸5)が、中空部5xを有した軸体5yと、前記軸体5yの前記中空部5x内に設けられた制振材5zとを備えた構成としたことを特徴とする。また、前記回転軸は、前記駆動源からの回転力を最初に受け、回転力を別の回転軸に伝達する回転軸であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源からの回転力を受けて回転する回転軸を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷ヘッドを搭載したキャリッジをガイドする案内軸が、中空軸と中空軸の中空内に充填された制振材とにより構成された電子機器としてのインクジェットプリンターが知られている。当該構成によれば、キャリッジが案内軸上を移動する際の振動を制振材により抑制でき、騒音を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−203643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プリンター、ファクシミリ、複写機等の電子機器内には、モーターから回転力を受けて回転する様々な回転軸が設けられている。従って、回転軸が回転可能に支持された部分には、モーターの振動が回転軸を介して伝達されるので、振動による騒音の発生や、振動が電子機器内の動作部品に伝播して動作部品の動作に悪影響を与えてしまう等の可能性があった。
例えば上述した従来のインクジェットプリンターは、固定軸である案内軸を制振構造としたものであり、インクジェットプリンター内に設けられたモーターからの回転力を受けて回転する回転軸を制振構造としたものではない。従って、当該インクジェットプリンターでは、上述したように、回転軸が回転可能に支持された部分に回転軸を介してモーターの振動が伝達されてしまうので、振動による騒音の発生や、振動がインクジェットプリンター内の動作部品に伝播して動作部品の動作に悪影響を与えてしまう等の可能性があった。
本発明は、駆動源からの回転力を受けて回転する回転軸の振動を抑制可能な電子機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る電子機器は、駆動源と、前記駆動源からの回転力を受けて回転する回転軸と、前記回転軸を回転可能に支持する支持部分とを備えた電子機器において、前記回転軸が、中空部を有した軸体と、前記軸体の前記中空部内に設けられた制振材とを備えた構成であるので、回転軸の振動を抑制でき、騒音抑制、動作部位の動作信頼性を向上できる電子機器を得ることができる。
前記回転軸は、前記駆動源からの回転力を最初に受け、回転力を別の回転軸に伝達する回転軸であるので、駆動源からの回転力を最初に受ける回転軸の振動を抑制できることから、騒音抑制、動作部位の動作信頼性の向上を、より効果的に実現できる。
前記回転軸は、前記軸体の前記中空部の容積と前記中空部内に充填する前記制振材の材料とを選定して前記回転軸の振動レベルの最も大きい振動周波数帯の振動を抑制するように構成されたので、回転軸の振動レベルの最も大きい振動周波数帯の振動を抑制でき、回転軸の振動を効果的に抑制できる。
前記軸体は異なる断面形状の中空部を複数備え、前記回転軸は前記軸体の複数の異なる断面形状の中空部内にそれぞれ制振材が充填されて構成されたので、制振材の配置形態の違いにより、それぞれ異なる振動周波数帯の振動を抑制できるようになり、回転軸の振動をより効果的に抑制できる。
前記制振材として、密度の異なる複数の材料を用いたので、密度の異なる複数の材料により、異なる複数の振動周波数帯の振動を抑制できるようになり、回転軸の振動をより効果的に抑制できる。
前記軸体は、一部に中実な軸部を有するとともに一部に中空部を有した構成であるので、異なる複数の振動周波数帯の振動を抑制できるとともに、中実な軸部により軸体の強度を強くでき、軸体を小径にでき、回転軸の小型化が図れる。
電子機器がインクジェットプリンターであり、前記回転軸は、印刷対象物を前記インクジェットプリンターのケース内に取込むローラーを有した回転軸、前記ケース内に取込まれた前記印刷対象物を印刷ヘッドのインクを吐出するノズルと対面する位置に送るローラーを有した回転軸、印刷終了後の前記印刷対象物を前記ケース外に排出するローラーを有した回転軸、インクシステムに設けられた回転軸のうちの1つ以上の回転軸であるので、騒音を抑制できるとともに、印刷ヘッド、回転軸、インクシステム等の動作部位の動作信頼性を向上でき、印刷ヘッドによる印刷精度向上が図れるインクジェットプリンターを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】プリンターの内部構成を上方から見た簡略構成図(実施形態1)。
【図2】(a)は軸体を示す斜視図、(b)は送り軸を示す正面図、(c)は(b)のA−A断面図(実施形態1)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組合せのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【0008】
実施形態1
図1に基づいて、実施形態1の電子機器の一例としてのインクジェットプリンター(以下、プリンターという)の全体構成を説明する。
プリンター1は、ケース(筐体)2と、ケース2に固定されたフレーム3と、ケース2に固定された駆動源の一例としての軸回転駆動用のモーター4と、送りローラー5aを有した回転軸の一例としての送り軸(紙送り軸(PF軸))5と、キャリッジ機構6と、印刷ヘッド7と、インクシステム8とを備える。
【0009】
フレーム3は、一体に形成された回転軸支持フレーム3a及びキャリッジ支持フレーム3bを備えた構成、又は、別体として形成された回転軸支持フレーム3aとキャリッジ支持フレーム3bとが連結された構成である。
回転軸を回転可能に支持する支持部分の一例としての回転軸支持フレーム3aは、送り軸5、送り軸5の送りローラー5aと接触して送りローラー5aの回転により印刷ヘッド7の位置に送られる紙等の印刷対象物18を押さえる押さえローラー9aを有したローラー軸9等の回転軸を支持するフレームである。
キャリッジ支持フレーム3bは、キャリッジ10の上部10tに係合される図外のレール条の係合部を有し、キャリッジ10を案内軸13の軸方向(案内軸13の中心軸線に沿った方向)に移動可能なように支持するフレームである。
【0010】
キャリッジ機構6は、インクを吐出する印刷ヘッド7を搭載したキャリッジ10と、キャリッジガイド手段11と、キャリッジ駆動機構12とを備える。
キャリッジガイド手段11は、上述したキャリッジ支持フレーム3bと案内軸13とを備える。
案内軸13は、キャリッジ10に形成された軸受部10aを貫通して、両端がキャリッジ支持フレーム3bに固定される。
よって、キャリッジ10は、互いに平行に配置された案内軸13とキャリッジ支持フレーム3bのレール条の係合部とによって支持されて、一定の姿勢に維持された状態で、案内軸13に沿って往復移動可能なように構成される。
【0011】
キャリッジ駆動機構12は、キャリッジ支持フレーム3bに固定されたキャリッジ駆動用のモーター14と、モーター軸14aに固定された駆動プーリー15と、キャリッジ支持フレーム3bに回転可能に取付けられた従動プーリー16と、駆動プーリー15と従動プーリー16とに掛け渡されて、かつ、キャリッジ10に連結されたタイミングベルト17とを備える。
【0012】
印刷ヘッド7には、キャリッジ10に着脱可能に装着される図外のインクカートリッジ、又は、キャリッジ10外に装着される図外のインクカートリッジからのインクが供給される。
【0013】
モーター14により駆動プーリー15が回転し、キャリッジ10が取付けられたタイミングベルト17のベルト部分が駆動プーリー15と従動プーリー16との間の所定領域を往復移動することにより、キャリッジ10が所定領域を往復移動可能に構成される。
【0014】
尚、図外の取込ローラーにキャリッジ10を移動させるとともに印刷ヘッド7の図外のノズルから印刷対象物18に向けてインクを吐出させることにより、印刷対象物18に印刷が行われる。印刷が終了した印刷対象物18は図外の排出ローラーにより排出トレイ19に排出される。
【0015】
インクシステム8は、非印刷時に印刷ヘッド7のノズルを覆ってノズルの乾燥防止やノズルのインクを吸引するためのキャップ22、図外のポンプ、廃液タンク、クリーナー等を備える。
【0016】
軸回転駆動用のモーター4からの回転力は、例えば、動力伝達歯車や動力伝達ベルト等の動力伝達機構20を介してまず回転軸の一例としての送り軸5に伝達され、さらに、送り軸5から図外の動力伝達機構を介して複数の軸に伝達される。例えば、送り軸5の回転力が動力伝達機構を介して、印刷対象物18をケース2内に取込むための図外の取込ローラーを有した取込軸、上述した排出ローラーを有した排出軸等に伝達され、これら取込軸、排出軸等が回転する。
また、送り軸5の回転力が動力伝達機構21を介して、インクシステム8のキャップ22を上下動させるための図外の歯車軸のような回転軸にも伝達される。
【0017】
つまり、送り軸5は、印刷対象物18を印刷ヘッド7による印刷位置に送る際にモーター4からの回転力を受けて回転するとともに、印刷対象物18を印刷ヘッド7による印刷位置に送る際以外にも、取込軸、排出軸等の回転軸を回転させる際や、インクシステム8のキャップ22を上下動させる際等にモーター4からの回転力を受けて回転し、取込軸、排出軸等の回転軸、キャップ22を上下動させるための図外の回転軸等に回転力を伝達する回転軸である。
【0018】
プリンター1の動作を説明する。軸回転駆動用のモーター4を駆動させて送り軸5を回転させ図外の取込軸及び取込ローラーを回転させることよって印刷対象物18がケース2内に取込まれる。また、ケース2内に取込まれた印刷対象物を、送り軸5及び送りローラー5aを回転させて、印刷ヘッド7のインクを吐出する図外のノズルと対面させることが可能な位置まで送る。そして、キャリッジ10を移動させて印刷ヘッド7の図外のノズルから印刷対象物18に向けてインクを吐出させることにより、印刷対象物18に印刷が行われる。さらに、送り軸5を回転させ図外の排出軸及び排出ローラーを回転させることにより、印刷が終了した印刷対象物18を排出トレイ19に排出させる。
また、非印刷時やヘッドクリーニング時において、送り軸5を回転させることによりキャップ22を上下動させるための図外の回転軸を回転させてキャップ22を上動させ、印刷ヘッド7のノズルをキャップ22で覆う。
【0019】
実施形態1では、モーター4からの回転力を動力伝達機構20を介して最初に受け、回転力を回転力伝達機構を介してその他の回転軸に伝達する回転軸である送り軸5を、図2に示すように、中空部5xを有した金属製の軸体5yと、軸体5yの前記中空部5x内に充填された制振材5zとを備えた構成とした。
制振材5zとしては、ゴム、樹脂、オイル、軸体5yとは異なる金属等を用いればよい。
例えば、両端開口の円管状の軸体5yの中空部5x内に制振材5zを充填し、軸体5yの両端開口を蓋材5t(図2(b)参照)で塞ぐことにより、送り軸5を形成すればよい。尚、例えば、ゴム、樹脂、金属等の棒状固体を中空部5x内に嵌合する場合には、軸体5yの両端開口を塞がなくてもよい。
【0020】
実施形態1によれば、中空部5xを有した軸体5yと、軸体5yの前記中空部5x内に充填された制振材5zとを備えた回転軸である送り軸5を備えたので、モーター4からの回転力を受けて回転する送り軸5の振動が制振材5zにより抑制されるので、送り軸5の振動を抑制できる。
従って、送り軸5を回転可能に支持する回転軸支持フレーム3b及びキャリッジ支持フレーム3a、動力伝達機構、送り軸5以外の回転軸、インクシステム等の部位への振動伝播を抑制できる。特に、従来、送り軸5から回転軸支持フレーム3b及びキャリッジ支持フレーム3aに振動が伝播された場合に回転軸支持フレーム3b及びキャリッジ支持フレーム3aが振動しやすく、騒音源となっていたが、実施形態1によれば、送り軸5の振動を抑制できることから、回転軸支持フレーム3b及びキャリッジ支持フレーム3aの振動による騒音を抑制できる。また、送り軸5の送りローラー5aと印刷対象物18との接触により発生する音の振動レベルを低減できて、騒音を抑制できる。
即ち、実施形態1によれば、騒音を抑制できるとともに、印刷ヘッド7、送り軸5以外の回転軸、インクシステム8等の動作部位の動作信頼性を向上でき、しかも、印刷ヘッド7による印刷精度向上が図れるプリンター1を得ることができる。
【0021】
実施形態2
実施形態1では、モーター4からの回転力を動力伝達機構を介して最初に受ける回転軸が送り軸5である場合を例示したが、モーター4からの回転力を動力伝達機構を介して最初に受ける回転軸が送り軸以外の回転軸(例えば、取込軸又は排出軸等)である構成のプリンターにおいては、当該回転軸を、中空部5xを有した軸体5yと、軸体5yの前記中空部5x内に充填された制振材5zとを備えた構成とすればよい。
【0022】
実施形態3
モーター4からの回転力を動力伝達機構を介して最初に受ける回転軸、及び、当該回転軸以外の複数の回転軸(例えば、取込軸、排出軸、ローラー軸、キャップ22を上下動させるための回転軸等)のうちの1つ以上の回転軸を、中空部5xを有した軸体5yと、軸体5yの前記中空部5x内に充填された制振材5zとを備えた構成としてもよい。
【0023】
実施形態4
軸体5yの中空部5xの容積と中空部5x中に充填する制振材5zの材料とを選定して、回転軸の回転速度に応じて決まる回転軸の振動レベルの最も大きい振動周波数帯の振動を抑制する制振構造を有した回転軸とした。
実施形態4によれば、回転軸の振動レベルの最も大きい振動周波数帯の振動を抑制できるので、回転軸の振動を効果的に抑制できる。
【0024】
実施形態5
異なる断面形状の中空部5xを複数備えた軸体5yを用い、軸体5yの複数の異なる断面形状の中空部5x内にそれぞれ制振材5zが充填されて構成された回転軸とした。
実施形態5によれば、制振材5zの配置形態の違いにより、それぞれ異なる振動周波数帯の振動を抑制できるようになり、回転軸の振動をより効果的に抑制できる。
【0025】
実施形態6
制振材5zとして密度の異なる複数の材料を用いて構成された回転軸とした。
実施形態6によれば、密度の異なる複数の材料により、異なる複数の振動周波数帯の振動を抑制できるようになり、回転軸の振動をより効果的に抑制できる。
【0026】
実施形態7
一部に中実な軸部を有するとともに一部に中空部5xを有した構成の軸体5yを用いて構成された回転軸とした。例えば、両端部のみ中空部5xに形成された軸体5yを用い、両端部の中空部5x内に制振材5zを充填して構成された回転軸とした。
実施形態7によれば、異なる複数の振動周波数帯の振動を抑制できるとともに、中実な軸部により軸体5yの強度を強くできるので、軸体5yを小径にでき、回転軸の小型化が図れる。
【0027】
実施形態8
制振材5zが充填されていない中空部5xを残した構成の回転軸とした。
実施形態によれば、異なる複数の振動周波数帯の振動を抑制できるようになり、回転軸の振動をより効果的に抑制できるとともに、回転軸の軽量化が図れる。
【0028】
尚、本発明においては、回転軸は、回転時の回転バランスを保つように形成する。
【0029】
また、本発明は、インクジェットプリンターのみならず、回転軸を有するファクシミリ、複写機、スキャナ装置等の電子機器に適用できる。
【符号の説明】
【0030】
1 インクジェットプリンター、2 ケース、
4 軸回転駆動用のモーター(駆動源)、5 送り軸(回転軸)、
5a 送りローラー、5x 中空部、5y 軸体、5z 制振材、
7 印刷ヘッド、8 インクシステム、18 印刷対象物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、前記駆動源からの回転力を受けて回転する回転軸と、前記回転軸を回転可能に支持する支持部分とを備えた電子機器において、
前記回転軸が、中空部を有した軸体と、前記軸体の前記中空部内に設けられた制振材とを備えた構成であることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記回転軸は、前記駆動源からの回転力を最初に受け、回転力を別の回転軸に伝達する回転軸であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記回転軸は、前記軸体の前記中空部の容積と前記中空部内に充填する前記制振材の材料とを選定して前記回転軸の振動レベルの最も大きい振動周波数帯の振動を抑制するように構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記軸体は異なる断面形状の中空部を複数備え、前記回転軸は前記軸体の複数の異なる断面形状の中空部内にそれぞれ制振材が充填されて構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子機器。
【請求項5】
前記制振材として、密度の異なる複数の材料を用いたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子機器。
【請求項6】
前記軸体は、一部に中実な軸部を有するとともに一部に中空部を有した構成であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子機器。
【請求項7】
電子機器がインクジェットプリンターであり、前記回転軸は、印刷対象物を前記インクジェットプリンターのケース内に取込むローラーを有した回転軸、前記ケース内に取込まれた前記印刷対象物を印刷ヘッドのインクを吐出するノズルと対面する位置に送るローラーを有した回転軸、印刷終了後の前記印刷対象物を前記ケース外に排出するローラーを有した回転軸、インクシステムに設けられた回転軸のうちの1つ以上の回転軸であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−166417(P2012−166417A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28289(P2011−28289)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】