説明

電子機器

【課題】位置情報の算出に要する時間をより効果的に短縮可能な電子機器を提供すること。
【解決手段】衛星運行情報生成部122は、航法衛星から受信した電波信号に基づいて衛星運行情報を生成して記憶部130に記憶する。通信部70は、航法衛星からの電波信号を受信する機能を有し、直接無線通信が可能な距離にある他の電子機器との間で直接無線通信を行う。衛星運行情報受信部22は、通信部70を介して当該他の電子機器から衛星運行情報を受信する。衛星運行情報更新部24は、衛星運行情報受信部22が受信した衛星運行情報と記憶部130に記憶された衛星運行情報とを照合し、照合結果に応じて、衛星運行情報受信部22が受信した衛星運行情報を用いて記憶部130に記憶された衛星運行情報を更新する。位置情報算出部124は、記憶部130に記憶された衛星運行情報に基づいて自己の位置情報を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航法衛星からの電波信号を受信する機能を有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の航法衛星(人工衛星の一種)から時刻情報や軌道情報を重畳させた電波を送信し、地上の受信機でこれらの電波を受信して位置を測位する衛星航法システム(「衛星測位システム」ともいう)が知られている。広く普及している衛星航法システム(衛星測位システム)としては、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite Systems)の一種であるGPS(Global Positioning System)がある。
【0003】
このシステムでは、GPS受信機がGPS衛星から送信される電波信号(以下、「GPS衛星信号」という)を受信し、GPS衛星信号に重畳されたGPS衛星情報(GPS衛星の軌道情報や時刻情報など)を取得して位置情報を算出する。このようなGPS受信機では、短時間での位置情報の提供が要求される場合が多く、位置情報算出時のGPS衛星情報を記憶しておき、次回の位置情報算出に利用される。ところが、GPS受信機の起動時やスタンバイ状態からの復帰時などには、GPS衛星情報が記憶されていなかったり、記憶されているGPS衛星情報が古いため使用できない場合もある。このような場合、捕捉できるGPS衛星を探索する処理から行わなければならず、受信条件が良くても位置情報の算出に数分程度の時間を要することになってしまう。
【0004】
この問題を解決するために、GPS受信機が、最新のGPS衛星情報を管理・記録するGPS衛星情報サーバーとの通信によって最新のGPS衛星情報を取得する(サーバーアシスト)手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−195846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、GPS衛星情報サーバーから取得した情報は、その地域で受信可能な衛星の情報など一般的な情報に過ぎず、取得した情報を用いても、実際にはビルなど電波の障害物があってGPS衛星信号を受信できない場合もある。また、GPS衛星情報サーバーとの通信は、携帯電話通信網やLANを経由して行う必要があり、コストや消費電流が増えるためGPS受信機を搭載した小型の電子機器には適さない。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、位置情報の算出処理に要する時間をより効果的に短縮可能な電子機器を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、航法衛星からの電波信号を受信する機能を有する電子機器であって、航法衛星から受信した電波信号に基づいて衛星運行情報を生成し、生成した衛星運行情報を記憶部に記憶する衛星運行情報生成部と、航法衛星からの電波信号を受信する機能を有し、直接無線通信が可能な距離にある他の電子機器との間で直接無線通信を行う通信部と、前記通信部を介して前記他の電子機器から衛星運行情報を受信する衛星運行情報受信部と、前記衛星運行情報受信部が受信した衛星運行情報と前記記憶部に記憶された衛星運行情報とを照合し、照合結果に応じて、前記衛星運行情報受信部が受信した衛星運行情報を用いて前記記憶部に記憶された衛星運行情報を更新する衛星運行情報更新部と、前記記憶部に記憶された衛星運行情報に基づいて、自己の位置情報を算出する位置情報算出部と、を含む、電子機器である。
【0009】
本発明の電子機器によれば、例えば、位置情報の算出に有効な衛星運行情報を他の電子機器から受信した場合、必要に応じて、記憶している衛星運行情報を他の電子機器から受信した衛星運行情報を用いて更新することで、位置情報の算出により有効な衛星運行情報にすることができる。従って、本発明によれば、位置情報の算出処理に要する時間をより効果的に短縮することができる。
【0010】
(2)この電子機器において、前記衛星運行情報受信部は、衛星運行情報として前記他の電子機器が捕捉した航法衛星を特定可能な捕捉衛星情報を受信するようにしてもよい。
【0011】
このように、他の電子機器から受信した捕捉衛星情報を用いることで、捕捉できる可能性が相対的に高い航法衛星から優先して位置情報の算出に必要な衛星情報の取得を試みることができる。従って、起動時のように捕捉可能な航法衛星が全くわからない状態から位置情報の算出を行う場合と比較して、位置情報の算出処理に要する時間を短縮することができる。
【0012】
(3)この電子機器において、前記衛星運行情報受信部は、衛星運行情報として航法衛星の軌道を特定可能な軌道情報を受信するようにしてもよい。
【0013】
このように、他の電子機器から受信した軌道情報(航法衛星の概略の軌道を特定可能な概略軌道情報や当該他の電子機器が捕捉した航法衛星の詳細な軌道を特定可能な詳細軌道情報など)を用いることで、位置情報の算出に必要な衛星情報の取得処理を効率化することができるので、位置情報の算出処理に要する時間を効率的に短縮することができる。
【0014】
(4)この電子機器において、前記衛星運行情報受信部は、衛星運行情報として前記位置情報の算出をサポートする管理情報を受信するようにしてもよい。
【0015】
このように、他の電子機器から受信した管理情報を用いることで、位置情報の算出処理を効率化することができるので、処理時間を効率的に短縮することができる。
【0016】
(5)この電子機器において、前記衛星運行情報受信部は、前記捕捉衛星情報を受信した後、さらに衛星運行情報として航法衛星の軌道を特定可能な軌道情報を受信するようにしてもよい。
【0017】
このようにすれば、捕捉衛星情報の受信後であって軌道情報の受信前又は受信中に他の電子機器との通信が不能になったとしても、受信済みの捕捉衛星情報に基づいて位置情報の算出に要する時間を短縮することができる。
【0018】
(6)この電子機器において、前記衛星運行情報受信部は、前記捕捉衛星情報を受信した後、さらに衛星運行情報として前記位置情報の算出をサポートする管理情報を受信するようにしてもよい。
【0019】
このようにすれば、軌道情報の受信後であって管理情報の受信前又は受信中に他の電子機器との通信が不能になったとしても、受信済みの捕捉衛星情報と軌道情報に基づいて位置情報の算出に要する時間を効率的に短縮することができる。
【0020】
(7)この電子機器において、前記衛星運行情報更新部は、前記衛星運行情報受信部が受信した衛星運行情報に付されたタイムスタンプと前記記憶部に記憶された衛星運行情報に付されたタイムスタンプとを比較し、前記衛星運行情報受信部が受信した衛星運行情報が前記記憶部に記憶された衛星運行情報よりも新しい場合、前記記憶部に記憶された衛星運行情報を前記衛星運行情報受信部が受信した衛星運行情報に更新するようにしてもよい。
【0021】
このようにすれば、記憶部に記憶される衛星運行情報をより新しい状態に保つことができるので、位置情報の算出処理に要する時間を短縮することができる。
【0022】
(8)この電子機器は、他の電子機器からの衛星運行情報の送信要求に応じて、前記記憶部に記憶された衛星運行情報の少なくとも一部を、前記通信部を介して当該他の電子機器に送信する衛星運行情報送信部をさらに含むようにしてもよい。
【0023】
このようにすれば、当該電子機器と他の電子機器の間で、位置情報の算出に最適な衛星運行情報を共有することができる。
【0024】
(9)この電子機器において、前記衛星運行情報送信部は、前記記憶部に記憶された衛星運行情報が有効期限内の情報であるか否かを判定し、有効期限を過ぎた衛星運行情報を送信しないようにしてもよい。
【0025】
このように、位置情報の算出に使用できない衛星運行情報を無駄に送信しないことで、他の電子機器との通信に要する時間や消費電流を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】GPSの概要について説明するための図。
【図2】GPSの航法メッセージの構成について説明するための図。
【図3】本実施形態の電子機器の構成例を示す図。
【図4】GPSアンテナとGPSモジュールの実装例についての説明図。
【図5】GPSアンテナとGPSモジュールの実装例についての説明図。
【図6】GPSアンテナとGPSモジュールの実装例についての説明図。
【図7】位置情報算出の全体処理の一例を示すフローチャート図。
【図8】近距離無線通信(衛星運行情報の受信)の具体例を示すフローチャート図。
【図9】近距離無線通信(衛星運行情報の送信)の具体例を示すフローチャート図。
【図10】衛星運行情報更新処理の具体例を示すフローチャート図。
【図11】位置情報算出処理の具体例を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0028】
1.GPSの概要
図1は、GPSの概要について説明するための図である。
【0029】
GPS衛星2(航法衛星の一例)は、地球の上空の所定の軌道上を周回しており、1.57542GHzの電波(L1波)に航法メッセージを重畳させた電波信号(以下、「GPS衛星信号」という)を地上に送信している。
【0030】
現在、約30個のGPS衛星が存在しており、GPS衛星信号がどのGPS衛星から送信されたかを識別するために、各GPS衛星はC/Aコード(Coarse/Acquisition Code)と呼ばれる1023chip(1ms周期)の固有のパターンをGPS衛星信号に重畳する。C/Aコードは、各chipが+1又は−1のいずれかでありランダムパターンのように見える。GPSでは、すべてのGPS衛星が異なるC/Aコードを用いて同一周波数の衛星信号を送信するCDMA(Code Division Multiple Access)方式を採用しており、GPS衛星信号と各C/Aコードのパターンの相関をとることにより、GPS衛星信号に重畳されているC/Aコードを検出することができる。
【0031】
GPS衛星2は原子時計を搭載しており、GPS衛星信号には原子時計で計時された極めて正確な時刻情報が含まれている。また、地上のコントロールセグメント(不図示)により各GPS衛星に搭載されている原子時計のわずかな時刻誤差が測定されており、航法メッセージにはその時刻誤差を補正するための時刻補正データも含まれている。
【0032】
図2は、航法メッセージの構成について説明するための図である。図2に示すように、航法メッセージは、全ビット数1500ビットのメインフレームを1単位とするデータとして構成される。メインフレームは、それぞれ300ビットの5つのサブフレーム1〜5に分割されている。1つのサブフレームのデータは、各GPS衛星から6秒で送信される。従って、1つのメインフレームのデータは、各GPS衛星から30秒で送信される。
【0033】
サブフレーム1には、週番号データや前記の時刻補正データ等の衛星補正データが含まれている。週番号データは、現在のGPS時刻情報が含まれる週を表す情報である。GPS時刻情報の起点は、UTC(協定世界時)における1980年1月6日00:00:00であり、この日に始まる週は週番号0となっている。週番号データは、1週間単位で更新される。
【0034】
サブフレーム2、3には、エフェメリスデータ(各GPS衛星の詳細な軌道情報)が含まれる。エフェメリスデータは、各GPS衛星の詳細な軌道情報であり、2時間毎に更新され、有効時間は4時間ほどである。
【0035】
サブフレーム4、5には、アルマナックデータが含まれている。アルマナックデータは、全GPS衛星の概略の軌道情報であり、1日毎に更新される。
【0036】
さらに、サブフレーム1〜5には、先頭から、30ビットの同期パターンが格納されたTLM(Telemetry)ワードと30ビットの時刻情報が格納されたHOWワードが含まれている。
【0037】
TLMワードやHOWワードは、GPS衛星から6秒間隔で送信されるのに対し、週番号データ等の衛星補正データ、エフェメリスデータ、アルマナックデータは30秒間隔で送信される。
【0038】
本実施形態の電子機器1は、各GPS衛星からGPS衛星信号を受信して航法メッセージを復調し、航法メッセージに含まれる時刻情報と時刻補正データを使用して内部時刻を修正する処理や、航法メッセージに含まれる時刻情報と軌道情報(エフェメリスデータ)を使用して測位計算処理などを行う。
【0039】
電子機器1は、2次元の位置(x,y)を算出する場合、x,yに加えて内部時刻の誤差tを未知数とし、3個以上のGPS衛星からの各航法メッセージに含まれる時刻情報と軌道情報(エフェメリスデータ)を使用して3つ以上の連立方程式を立て、その解を求める処理を行う。同様に、電子機器1は、3次元の位置(x,y,z)を算出する場合、x,y,zに加えて内部時刻の誤差tを未知数とし、4個以上のGPS衛星からの各航法メッセージに含まれる時刻情報と軌道情報(エフェメリスデータ)を使用して4つ以上の連立方程式を立て、その解を求める処理を行う。
【0040】
電子機器1は、電源投入時など有効なエフェメリスデータを保持していない場合、まず、捕捉可能な、すなわち航法メッセージを復調可能なGPS衛星を探索する処理から始める(コールドスタート)。コールドスタートの場合、全GPS衛星についてエフェメリスデータの取得を試み、取得できたエフェメリスデータを記憶するまで12.5分かかる。なお、4個以上のGPS衛星のエフェメリスデータが得られた時点で3次元の測位計算を行うことができるが、結果が得られるまでに数分程度を要する。
【0041】
これに対して、電子機器1は、スタンバイモードから復帰した場合など、有効なエフェメリスデータは保持していないが、有効なアルマナックデータを保持している場合、捕捉可能なGPS衛星を推定することができるので、測位計算の結果が得られるまでの時間を短縮することができる(ウォームスタート)。
【0042】
また、電子機器1は、有効なエフェメリスデータを4個以上保持していれば、直ちに測位計算を開始することができる(ホットスタート)。
【0043】
本実施形態の電子機器1は、測位計算を開始する前に、直接無線通信(サーバーを介さない無線通信)が可能な距離にある他の電子機器1との間で直接無線通信(以下、「近距離無線通信」という)を行い、当該他の電子機器1からGPS衛星の運行に関する衛星運行情報を受信する。この衛星運行情報には、航法メッセージに含まれる各情報に加えて、捕捉したGPS衛星の情報やGPS衛星信号の受信強度なども含まれる。そして、電子機器1は、自己が記憶している衛星運行情報に含まれる各情報と他の電子機器1から受信した衛星運行情報に含まれる各情報を比較して取捨選択して最新かつ有効な衛星運行情報に更新し、更新後の衛星運行情報を使用して測位計算を行う。これにより、測位計算の時間を短縮することが可能になる。
【0044】
2.電子機器の構成
2−1.機能構成
図3は、本実施形態の電子機器の構成例を示す図である。本実施形態の電子機器1は、GPSモジュール10、GPSアンテナ12、TCXO(Temperature Compensated X’tal Oscillator)14、処理部(CPU)20、操作部30、表示部40、ROM(Read Only Memory)50、RAM(Random Access Memory)60、通信部70を含んで構成されている。なお、本実施形態の電子機器1は、これらの一部の構成(要素)を省略したり、新たな構成(要素)を追加した構成としてもよい。
【0045】
GPSモジュール(GPS受信機)10は、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルター100、RF処理部110、ベースバンド処理部120、記憶部130を含んで構成されている。なお、本実施形態のGPSモジュール10は、これらの一部の構成(要素)を省略したり、新たな構成(要素)を追加した構成としてもよい。
【0046】
SAWフィルター100は、GPSアンテナ12が受信した電波からGPS衛星信号を抽出する処理を行う。すなわち、SAWフィルター100は、1.5GHz帯の信号を通過させるバンドパスフィルターとして構成される。
【0047】
RF処理部110は、SAWフィルター100が抽出したGPS衛星信号を、中間周波数帯(例えば、数MHz)の信号(IF信号)にダウンコンバートした後、A/D変換してベースバンド処理部120に出力する。
【0048】
ベースバンド処理部120は、RF処理部110が出力するIF信号からベースバンド信号を復調し、復調したベースバンド信号に対して各種の処理を行う。特に、本実施形態のベースバンド処理部120は、衛星運行情報生成部122及び位置情報算出部124を含んで構成されている。なお、本実施形態のベースバンド処理部120は、これらの一部の構成(要素)を省略したり、新たな構成(要素)を追加した構成としてもよい。
【0049】
衛星運行情報生成部122は、ベースバンド信号に基づいて、GPS衛星の運行に関する衛星運行情報を生成し、生成した衛星運行情報を記憶部130に記憶する処理を行う。
【0050】
具体的には、衛星運行情報生成部122は、まず、捕捉可能なGPS衛星を検索する衛星探索処理を行う。より詳細には、衛星運行情報生成部122は、各C/Aコードと同一のパターンのローカルコードを発生し、ベースバンド信号に含まれる各C/Aコードとローカルコードの相関をとる処理を行う。そして、衛星運行情報生成部122は、各ローカルコードに対する相関値がピークになるようにローカルコードの発生タイミングを調整し、相関値が閾値以上となる場合にはそのローカルコードのGPS衛星に同期(GPS衛星を捕捉)したものと判断する。そして、衛星運行情報生成部122は、捕捉したGPS衛星の衛星識別情報(例えば衛星番号)を記憶部130に記憶する。衛星運行情報生成部122は、複数(例えば12個)の衛星を対象にこの衛星探索処理を並列して行うことで、処理時間の短縮化が図られる。
【0051】
また、衛星運行情報生成部122は、ベースバンド信号から航法メッセージを復調し、航法メッセージに含まれる各種情報を取得する。具体的には、衛星運行情報生成部122は、捕捉したGPS衛星のC/Aコードと同一のパターンのローカルコードとベースバンド信号をミキシングすることで、航法メッセージを復調し、航法メッセージに含まれる軌道情報(エフェメリスデータやアルマナックデータ)や時刻情報などを取得する。そして、衛星運行情報生成部122は、取得した航法メッセージに含まれる各情報を記憶部130に記憶する。
【0052】
さらに、衛星運行情報生成部122は、各GPS衛星からのGPS衛星信号の受信強度の情報を記憶部130に記憶するようにしてもよい。
【0053】
なお、衛星運行情報生成部122は、衛星運行情報の各々に、取得又は生成した日時などのタイムスタンプを付加して記憶部130に記憶する。
【0054】
衛星運行情報生成部122が生成した衛星運行情報及びその他の衛星運行情報は、衛星運行情報リスト132として記憶部130に記憶される。
【0055】
位置情報算出部124は、記憶部130に記憶された最新の衛星運行情報リスト132に基づいて、測位計算を行い、測位計算により得られた測位データ(位置情報や時刻情報)を記憶部130に記憶し、あるいは当該測位データを処理部(CPU)20に送信する。
【0056】
TCXO14は、RF処理部110やベースバンド処理部120のクロック信号を生成する。
【0057】
ROM50は、処理部(CPU)20が各種の計算処理や制御処理を行うためのプログラム、各種のアプリケーション用のプログラムやデータ等を記憶している。
【0058】
処理部(CPU)20は、ROM50に記憶されているプログラムに従って、各種の計算処理や制御処理を行う。具体的には、処理部(CPU)20は、GPSモジュール10に対して各種の制御コマンドを送信してGPSモジュール10の動作を制御したり、GPSモジュール10から測位データを受け取って各種の計算処理を行う。また、処理部(CPU)20は、操作部30からの操作信号に応じた各種の処理、表示部40に各種の情報を表示させるための表示信号を送信する処理、他の電子機器1とデータ通信を行うために通信部350を制御する処理等を行う。
【0059】
操作部30は、操作キー、ボタンスイッチ、タッチパネル等により構成される入力装置であり、ユーザーによる操作に応じた操作信号を処理部(CPU)20に出力する。この操作部30の操作により、各種のアプリケーションの起動や終了が指示される。
【0060】
表示部40は、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成される表示装置であり、処理部(CPU)20から入力される表示信号に基づいて各種の情報(例えば、位置情報や時刻情報等)を表示する。
【0061】
RAM60は、処理部(CPU)20の作業領域として用いられ、ROM50から読み出されたプログラムやデータ、操作部30から入力されたデータ、処理部(CPU)20が各種プログラムに従って実行した演算結果等を一時的に記憶する。
【0062】
通信部70は、他の電子機器1との間で近距離無線通信を行う。具体的には、通信部70は、処理部(CPU)20からのデータを無線信号に重畳して他の電子機器1に送信する処理や、他の電子機器1からの無線信号を受信し、当該無線信号に重畳されたデータを抽出して処理部(CPU)20に出力する処理などを行う。近距離無線通信の通信規格としては、例えば、Blootooth(登録商標)、BLE(Bluetooth Low Energy)、赤外線通信、無線LANなどが挙げられる。
【0063】
特に、本実施形態の処理部(CPU)20は、衛星運行情報受信部22、衛星運行情報更新部24、衛星運行情報送信部26を含んで構成されている。なお、本実施形態の処理部(CPU)20は、これらの一部の構成(要素)を省略したり、新たな構成(要素)を追加した構成としてもよい。
【0064】
衛星運行情報受信部22は、通信部70を介して他の電子機器1から衛星運行情報を受信する処理を行う。
【0065】
例えば、衛星運行情報受信部22は、衛星運行情報として他の電子機器1が捕捉したGPS衛星の衛星識別情報(例えば衛星番号)などの捕捉衛星情報を受信するようにしてもよい。
【0066】
また、例えば、衛星運行情報受信部22は、衛星運行情報として他の電子機器1が取得したGPS衛星の軌道情報を受信するようにしてもよい。例えば、衛星運行情報受信部22は、軌道情報として全GPS衛星の概略軌道情報(アルマナックデータ)や当該他の電子機器1が取得した各GPS衛星の詳細軌道情報(エフェメリスデータ)を受信する。なお、衛星運行情報受信部22は、他の電子機器1から、捕捉衛星情報を受信した後、さらに軌道情報を受信するようにしてもよい。
【0067】
また、例えば、衛星運行情報受信部22は、衛星運行情報として他の電子機器1が保有する管理情報を受信するようにしてもよい。管理情報は、位置情報の算出をサポートする情報であり、例えば、GPS衛星毎のGPS衛星信号の受信強度の情報や、受信可能な位置にあるが受信できなかったGPS衛星の情報などである。なお、衛星運行情報受信部22は、他の電子機器1から、軌道情報を受信した後に、さらに管理情報を受信するようにしてもよい。
【0068】
衛星運行情報更新部24は、衛星運行情報受信部22が受信した衛星運行情報と記憶部130に記憶された衛星運行情報とを照合し、照合結果に応じて、衛星運行情報受信部22が受信した衛星運行情報を用いて衛星運行情報リスト132を更新する処理を行う。
【0069】
例えば、衛星運行情報更新部24は、衛星運行情報受信部22が受信した衛星運行情報と同じ種類の衛星運行情報が衛星運行情報リスト132に含まれていない場合は、当該衛星運行情報を衛星運行情報リスト132に追加するようにしてもよい。例えば、衛星運行情報受信部22がアルマナックデータを受信し、衛星運行情報リスト132にアルマナックデータが含まれていなければ、当該アルマナックデータを衛星運行情報リスト132に追加するようにしてもよい。また、例えば、衛星運行情報受信部22が衛星番号kのエフェメリスデータを受信し、衛星運行情報リスト132に衛星番号kのエフェメリスデータが含まれていなければ、当該衛星番号kのエフェメリスデータを衛星運行情報リスト132に追加するようにしてもよい。ただし、衛星運行情報更新部24は、追加対象の情報の有効期限が切れているような場合は、衛星運行情報リスト132に追加しないようにしてもよい。
【0070】
また、例えば、衛星運行情報更新部24は、衛星運行情報受信部22が受信した衛星運行情報と同じ種類の衛星運行情報が衛星運行情報リスト132に含まれる場合は、当該衛星運行情報を衛星運行情報リスト132に含まれる同じ種類の衛星運行情報とそれぞれ比較し、位置情報の算出により有効な衛星運行情報を選択して衛星運行情報リスト132を更新するようにしてもよい。例えば、衛星運行情報更新部24は、衛星運行情報受信部22が受信した衛星運行情報の各々(例えば、捕捉可能なGPS衛星の識別情報、アルマナックデータ、各GPS衛星のエフェメリスデータなど)に付加されたタイムスタンプと、衛星運行情報リスト132に含まれる同じ種類の衛星運行情報に付されたタイムスタンプとを比較し、新しい方の衛星運行情報を選択して衛星運行情報リスト132を更新するようにしてもよい。
【0071】
このような、衛星運行情報受信部22と衛星運行情報更新部24の各処理により、衛星運行情報リスト132は位置情報の算出にとって最適な情報に順次更新される。
【0072】
衛星運行情報送信部26は、他の電子機器1からの衛星運行情報の送信要求に応じて、衛星運行情報リスト132に含まれる衛星運行情報の少なくとも一部を、通信部70を介して当該他の電子機器1に送信する処理を行う。
【0073】
衛星運行情報送信部26は、衛星運行情報リスト132に含まれる衛星運行情報の各々が有効期限内の情報であるか否かを判定し、有効期限を過ぎた衛星運行情報を送信しないようにしてもよい。具体的には、例えば、衛星運行情報送信部26は、送信に先立ち、衛星運行情報リスト132に含まれる各衛星運行情報に付されたタイムスタンプを現在時刻と比較し、当該各衛星運行情報に対してあらかじめ設定された有効期限を過ぎているか否かを判定する。
【0074】
2−2.実装例
図4〜図6は、GPSアンテナ12とGPSモジュール10の実装例についての説明図である。本実施形態では、GPSアンテナ12とGPSモジュール20がほぼ同じサイズの別々のボード(プリント基板)に搭載されている。なお、図4〜図6において、各ボードに搭載される一部の部品の図示を省略している。
【0075】
図4(A)及び図4(B)は、それぞれGPSアンテナ12が搭載された第1ボード80の上面図及び下面図である。GPSアンテナ12(パッチアンテナ)は、その表面の中心部から少しずれた位置に貫通穴が設けられており、この貫通穴を貫通するピン81によって第1ボード80の上面に固定されている。また、第1ボード80には、3ピンコネクターを取り付けるための3つの貫通穴が形成された取り付け部82と、他の3ピンコネクターを取り付けるための3つの貫通穴が形成された取り付け部83とが設けられている。さらに、第1ボード80の下面には、RFケーブルのコネクターを取り付けるための取り付け部84が設けられている。
【0076】
図5(A)及び図5(B)は、それぞれGPSモジュール10が搭載された第2ボード90の上面図及び下面図である。GPSモジュール10(IC)は、第2ボード90の上面に固定されている。また、第1ボード80には、3ピンコネクターを取り付けるための3つの貫通穴が形成された取り付け部92と、他の3ピンコネクターを取り付けるための3つの貫通穴が形成された取り付け部93とが設けられている。また、第2ボード90の上面には、RFケーブルのコネクターを取り付けるための取り付け部94が設けられている。さらに、第2ボード90の下面には、20ピンのコネクターを取り付けるための取り付け部91が設けられている。
【0077】
図6は、GPSアンテナ12が搭載された第1ボード80とGPSモジュール20が搭載された第2ボード90を接続した実装例の概略側面図である。図6の実装例では、第1ボード80の下面と第2ボード90の上面を対向させ、3ピンコネクター85を第1ボード80の取り付け部82と第2ボード90の取り付け部92に差し込んで取り付け、3ピンコネクター86を第1ボード80の取り付け部83と第2ボード90の取り付け部93に差し込んで取り付けることで、第1ボード80と第2ボード90が接続されている。また、RFケーブル96の両端のコネクター96a,96bを、それぞれ第1ボード80の取り付け部84と第2ボード90の取り付け部94に差し込んで取り付けることで、GPSアンテナ12(パッチアンテナ)とGPSモジュール10(IC)が電気的に接続されている。
【0078】
なお、第2ボード90の下面の取り付け部91には20ピンコネクター95が取り付けられており、この20ピンコネクター95を介して、第3ボードをさらに重ねて接続することができるようになっている。
【0079】
例えば、第3ボードとして、処理部20(CPU)や通信部70を含む近距離無線通信モジュールが搭載されたボードを接続することで、GPSアンテナ12、GPSモジュール10、近距離無線通信モジュールを極めて小型に一体化することができ、また、消費電流を抑えることができるので、携帯機器に搭載することが容易になる。
【0080】
また、例えば、第3ボードとして、PCとの通信が可能なUSBボードを接続することで、GPSアンテナ12とGPSモジュールからなるGPS受信機の評価を簡単に実施することができる。
【0081】
また、例えば、第3ボードとして、メモリーカードを搭載したボードを接続することで、GPS受信機による測位データのログを簡単に取得することができる。
【0082】
なお、20ピンコネクター85,86を取り外すだけで第1ボード80と第2ボード30を簡単に分離することができるので、電子機器の筐体の制約に応じて、第1ボード80と第2ボード30を柔軟に配置させることもできる。
【0083】
3.電子機器の処理
3−1.位置情報算出の全体処理
図7は、本実施形態の電子機器による位置情報算出の全体処理の一例を示すフローチャート図である。
【0084】
図7に示すように、本実施形態の電子機器1(1Aとする)は、位置情報算出イベントが発生すると(S10のY)、まず、他の電子機器1(1B、1C、・・・とする)との間で近距離無線通信を行い、衛星運行情報の共有を図る(S20、近距離無線通信処理)。位置情報算出イベントは、例えば、電子機器1Aの電源投入時や間欠動作におけるスタンバイモードからの復帰時などに自動的に発生する場合もあれば、ユーザーによる操作部30の操作などに応じて不定期に発生する場合も考えられる。
【0085】
次に、電子機器1Aは、記憶部130に記憶されている衛星運行情報を、必要に応じて、他の電子機器1B、1C、・・・から受信した衛星運行情報を用いて更新する(S30、衛星運行情報更新処理)。
【0086】
最後に、電子機器1Aは、更新後の衛星運行情報を用いて位置情報を算出する(S40、位置情報算出処理)。
【0087】
3−2.近距離無線通信処理
図8及び図9は、図7の近距離無線通信処理(S20)の具体例を示すフローチャート図である。
【0088】
図8は、電子機器1Aが他の電子機器1B、1C、・・・から衛星運行情報を受信する処理のフローチャート図である。図9は、電子機器1B、1C、・・・のいずれかが電子機器1Aに衛星運行情報を送信する処理のフローチャート図である。
【0089】
電子機器1Aは、まず、近距離にある不特定の他の電子機器1B、1C、・・・に対して、照会信号を送信する(S100)。
【0090】
他の電子機器1B、1C、・・・は、電子機器1Aからの照会信号を受信すると(S150のY)、電子機器1Aに対して応答信号を送信する(S152)。
【0091】
電子機器1Aは、電子機器1B、1C、・・・からの応答信号のいずれも制限時間内に受信しなければ(S102のNかつS104のY)、処理を終了する。例えば、近くに他の電子機器1B、1C、・・・がない場合や、通信環境が劣悪な場合などが考えられる。
【0092】
一方、他の電子機器1B、1C、・・・のいずれかからの応答信号を制限時間内に受信すると(S102のY)、電子機器1Aは、この応答信号を送信した電子機器(1Bとする)に衛星運行情報要求信号を送信する(S106)。
【0093】
電子機器1Bは、この衛星運行情報要求信号を制限時間内に受信しなければ(S154のNかつS156のY)、処理を終了する。例えば、電子機器1A又は電子機器1Bが近距離無線通信圏外に移動した場合や、通信環境が劣悪な場合などが考えられる。
【0094】
一方、電子機器1Bが衛星運行情報要求信号を制限時間内に受信すると(S154のY)、電子機器1Aと電子機器1Bの間での通信が確立し、電子機器1Aからの照会信号を受信した他の電子機器1C、・・・は、電子機器1Aと電子機器1Bの間の通信が終了するまで、衛星運行情報要求信号を受信できず、電子機器1Aに定期的に応答信号を送信する処理を繰り返す。
【0095】
そして、電子機器1Bは、電子機器1Aに衛星運行情報を送信する処理を行う(S158〜S172)。
【0096】
具体的には、電子機器1Bは、捕捉衛星情報(捕捉したGPS衛星の衛星識別情報)を記憶部130に記憶していれば(S158のY)、まず、電子機器1Aにこの捕捉衛星情報を送信する(S160)。なお、電子機器1Bは、捕捉衛星情報として、捕捉したGPS衛星の衛星識別情報とともに、あるいは、捕捉したGPS衛星の衛星識別情報に代えて、捕捉したGPS衛星の中で受信強度が相対的に高い(受信できる可能性が相対的に高い)GPS衛星の衛星識別情報を送信するようにしてもよい。
【0097】
次に、電子機器1Bは、概略軌道情報(アルマナックデータ)を記憶部130に記憶していれば(S162のY)、電子機器1Aにこの概略軌道情報(アルマナックデータ)を送信する(S164)。
【0098】
次に、電子機器1Bは、詳細軌道情報(エフェメリスデータ)を記憶部130に記憶していれば(S166のY)、電子機器1Aにこの詳細軌道情報(エフェメリスデータ)を送信する(S168)。
【0099】
最後に、電子機器1Bは、管理情報(GPS衛星毎のGPS衛星信号の受信強度の情報や受信可能な位置にあるが受信できなかったGPS衛星の情報など)を記憶部130に記憶していれば(S170のY)、電子機器1Aにこの管理情報を送信する(S172)。
【0100】
電子機器1Aは、電子機器1Bからの衛星運行情報(捕捉衛星情報、概略軌道情報、詳細軌道情報、管理情報)を順次受信し、受信した衛星運行情報を記憶部(RAM60等)に一時的に記憶(取得)する(S110)。
【0101】
電子機器1Aは、電子機器1Bに衛星運行情報要求信号を送信(S106)してから所定の制限時間が経過すると(S112のY)、衛星運行情報の受信処理をやめて電子機器1Bとの通信を強制終了する(S116)。例えば、電子機器1A又は電子機器1Bが近距離無線通信圏外に移動した場合や、通信環境が劣悪な場合などが考えられる。
【0102】
電子機器1Bは、すべての衛星運行情報の送信処理を終了すると、電子機器1Aに送信終了信号を送信し(S174)、処理を終了する。
【0103】
電子機器1Aは、電子機器1Bからの送信終了信号を制限時間内に受信すると(S112のNかつS1114のY)、電子機器1Bとの通信を終了する(S116)。
【0104】
続いて、電子機器1Aは、他の電子機器1C、・・・のいずれかからの応答信号を制限時間内に受信すると(S118のY)、電子機器1Aは、この応答信号を送信した電子機器(1Cとする)に衛星運行情報要求信号を送信し(S106)、電子機器1Cが衛星運行情報要求信号を制限時間内に受信することで(S154のY)、電子機器1Aと電子機器1Cの間での通信が確立する。
【0105】
そして、電子機器1Cが電子機器1Aに衛星運行情報と送信終了信号を送信し(S158〜A174)、電子機器1Aは、この衛星運行情報と送信終了信号を受信し(S108〜S116)、電子機器1Cとの通信を終了する(S116)。
【0106】
同様に、電子機器1Aは、制限時間が経過するまで(S120のN)他の電子機器から衛星運行情報を受信(取得)し(S106〜S116)、制限時間が経過すると(S120のY)、処理を終了する。
【0107】
3−3.衛星運行情報更新処理
図10は、図7の衛星運行情報更新処理(S30)の具体例を示すフローチャート図である。
【0108】
電子機器1Aは、図7の近距離無線通信処理(S20)で他の電子機器1から衛星運行情報を受信できなかった場合(S200のN)、処理を終了する。
【0109】
一方、電子機器1Aは、図7の近距離無線通信処理(S20)で他の電子機器1から衛星運行情報を受信できた場合(S200のY)、受信した衛星運行情報と同種の衛星運行情報を記憶部130に記憶していなければ(S202のN)、受信した衛星運行情報を記憶部130に記憶し(S210)、衛星運行情報リスト132を更新する。
【0110】
また、電子機器1Aは、受信した衛星運行情報と同種の衛星運行情報を記憶部130に記憶していれば(S202のY)、受信した衛星運行情報と記憶部130に記憶された衛星運行情報とを比較し、どちらが位置情報の算出に用いるパラメーターとしてより適切か判定する(S204)。例えば、受信した衛星運行情報と記憶部130に記憶された衛星運行情報の一方は有効であるが他方は無効である場合には有効な衛星運行情報の方をより適切であると判定してもよい。また、ともに有効であれば、タイムスタンプを比較し、より新しい衛星運行情報の方がより適切であると判定してもよい。
【0111】
受信した衛星運行情報の方が適切である場合(S206のY)、受信した衛星運行情報を用いて衛星運行情報リスト132を更新する(S208)。一方、記憶部130に記憶された衛星運行情報の方が適切である場合(S206のN)は、衛星運行情報リスト132を更新しない。
【0112】
電子機器1Aは、他の電子機器1から受信したすべての衛星運行情報のうち、未処理の衛星運行情報があれば(S212のY)、当該未処理の衛星運行情報に対してS204〜S210の処理を行い、未処理の衛星運行情報が無くなれば(S212のN)、処理を終了する。
【0113】
3−4.位置情報算出処理
図11は、図7の位置情報算出処理(S40)の具体例を示すフローチャート図である。
【0114】
電子機器1Aは、まず、衛星運行情報リスト132を参照し、衛星運行情報リスト132にN個以上の有効な詳細軌道情報(エフェメリスデータ)が含まれていれば(S300のY)、最適なN個の詳細軌道情報(エフェメリスデータ)を選択し(S302)、測位計算を行う(S324)。この場合、ホットスタートでの位置情報算出処理になる。ここで、測位計算において2次元の位置を算出する場合はN=3であり、3次元の位置を算出する場合はN=4である。
【0115】
衛星運行情報リスト132にN個以上の有効な詳細軌道情報(エフェメリスデータ)が含まれていない場合(S300のN)、衛星運行情報リスト132に有効な概略軌道情報(アルマナックデータ)が含まれていれば(S304のY)、電子機器1Aは、この概略軌道情報(アルマナックデータ)からすべてのGPS衛星の位置を把握し、受信し易い位置にあるGPS衛星ほど衛星探索の優先順位を上位に設定し(S306)、衛星探索を開始する(S312)。この場合、ウォームスタートでの位置情報算出処理になる。
【0116】
衛星運行情報リスト132に有効な概略軌道情報(アルマナックデータ)も含まれていない場合(S304のN)、衛星運行情報リスト132に有効な捕捉衛星情報(電子機器1Aが捕捉しているGPS衛星又は他の電子機器1が捕捉したGPS衛星の衛星識別情報)が含まれていれば(S308のY)、電子機器1Aは、捕捉衛星情報に基づく受信可能なGPS衛星を優先して衛星探索の順番を設定し(S310)、衛星探索を開始する(S312)。
【0117】
なお、衛星運行情報リスト132に有効な捕捉衛星情報も含まれていなければ(S308のN)、電子機器1Aは、初期状態(電源投入時と同じ状態)から衛星探索を開始する(S312)。この場合、コールドスタートでの位置情報算出処理になる。
【0118】
電子機器1は、衛星探索を開始した後、制限時間内にGPS衛星を捕捉できなければ(S314のNかつS316のY)、処理を終了する。この場合、位置情報は算出されない。
【0119】
一方、制限時間内にGPS衛星を捕捉できた場合(S314のY)、電子機器1は、捕捉したGPS衛星からの航法フレームに含まれる衛星情報の取得を開始する(S318)。なお、電子機器1Aは、1つのGPS衛星を捕捉した後も衛星探索を継続し、他のGPS衛星の捕捉を試みる。
【0120】
そして、電子機器1Aは、N個以上の詳細軌道情報(エフェメリスデータ)を取得できなかった場合(S320のNかつS322のY)、処理を終了する。この場合、位置情報は算出されない。なお、N個以上の詳細軌道情報(エフェメリスデータ)を取得できなかった場合とは、N個以上のGPS衛星を捕捉できなかった場合もしくはN個以上のGPS衛星を捕捉できたがN個以上の詳細軌道情報(エフェメリスデータ)を取得できなかった場合に相当する。
【0121】
一方、制限時間内にN個以上の詳細軌道情報(エフェメリスデータ)を取得できた場合(S320のY)、電子機器1Aは、N個の詳細軌道情報(エフェメリスデータ)を選択して測位計算を行う(S324)。
【0122】
そして、電子機器1Aは測位計算により得られた測位データを記憶部130に記録し(S326)、処理を終了する。
【0123】
以上に説明したように、本実施形態の電子機器1は、近い位置にある他の電子機器1から衛星運行情報を取得するので、サーバーアシスト方式のように遠方にあるサーバーが有する情報と比較して位置情報の算出に極めて有効な情報を得る。従って、位置情報の算出処理に要する時間を効果的に短縮することができる。
【0124】
特に、本実施形態では、電子機器1又は他の電子機器1が移動するような場合に近距離通信の時間が短いことを想定し、他の電子機器1は、位置情報の算出に必要なデータ量の小さい衛星運行情報から順に、具体的には、捕捉衛星情報、概略軌道情報、詳細軌道情報、管理情報の順に送信する。
【0125】
本実施形態の電子機器1は、概略軌道情報の受信中に他の電子機器1との通信が不能になったとしても、捕捉衛星情報を受信済みである。電子機器1は、受信済みの捕捉衛星情報を用いることで、ウォームスタートにより、捕捉できる可能性が相対的に高いGPS衛星から優先して衛星情報の取得を試みることができる。従って、コールドスタートの場合と比較して位置情報の算出処理に要する時間を短縮することができる。
【0126】
また、本実施形態の電子機器1は、詳細軌道情報の受信中に他の電子機器1との通信が不能になったとしても、捕捉衛星情報と概略軌道情報を受信済みである。受信済みの捕捉衛星情報と概略軌道情報を用いることで、ウォームスタートにより、捕捉できる可能性が極めて高いGPS衛星から優先して衛星情報の取得を試みることができる。すなわち、位置情報の算出に必要な衛星情報の取得処理を効率化することができるので、位置情報の算出処理に要する時間を効率的に短縮することができる。
【0127】
また、本実施形態の電子機器1は、詳細軌道情報まで受信できると、この詳細軌道情報を用いることで、位置情報の算出に必要な数の全部又は一部の詳細軌道情報をGPS衛星から取得する処理を省略することができる。特に、衛星運行情報リスト132に既に測位計算に必要な数の詳細軌道情報があれば、ホットスタートにより、直ちに測位計算を行うことができるので、位置情報の算出処理に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0128】
さらに、本実施形態の電子機器1は、管理情報まで受信できると、この管理情報を用いることで、位置情報の算出処理を効率化したり、測位計算の精度を高めたりすることができる。
【0129】
また、複数の電子機器1の間で互いに不足している衛星運行情報を送受信することで、複数の電子機器1の間で位置情報の算出に最適な最新の衛星運行情報を共有することができる。これにより、各電子機器1は、位置情報の算出処理を短縮する相乗効果が得られる。
【0130】
4.電子機器の使用例
電子機器1の使用例として、以下のようなものが挙げられる。
【0131】
[使用例1]
例えば、1人のユーザーが複数の電子機器1を携帯し、任意の2つの電子機器1の間での近距離無線通信を行うことで、すべての電子機器1が互いに位置情報の算出に最適な衛星運行情報を共有する。このようにすれば、受信条件や受信性能の違いにより電子機器1毎に生成される衛星運行情報が異なっても、最適な衛星運行情報の共有化を図ることで位置情報の算出時間を短縮することができる。
【0132】
[使用例2]
例えば、あるユーザーがGPS衛星からの電波が届かない屋内に長時間いると、当該ユーザーが携帯する電子機器1に記憶されている衛星運行情報の有効期限が過ぎている場合が考えられる。このような場合に、当該ユーザーが屋外に出ることで電子機器1が位置情報の算出処理を開始するような場合、当該ユーザーが移動中に近づいた他のユーザーが携帯する電子機器1から近距離無線通信により衛星運行情報を受信することで位置情報の算出時間を短縮することができる。
【0133】
[使用例3]
例えば、複数のユーザーが屋内にいる場合、窓際など電波が届く位置にいる第1のユーザーが携帯する電子機器1から、その隣にいる第2のユーザーが携帯する電子機器1が近距離無線通信により有効な衛星運行情報を受信し、さらに、その隣にいる第3のユーザーが携帯する電子機器1が、近距離無線通信により第2のユーザーが携帯する電子機器1から当該衛星運行情報をさらに受信する。このように、有効な衛星運行情報が複数の電子機器1を伝搬することで、GPS衛星からの電波が届かない位置にある電子機器1も位置情報の算出処理を行うことができる。
【0134】
[使用例4]
例えば、ユーザーが車両等の移動体に乗っており、当該ユーザーが携帯する電子機器1が当該移動体に固定された他の電子機器1(カーナビゲーションシステムのGPS受信機など)との間で近距離無線通信を行うことで、位置情報の算出に最適な衛星運行情報を取得する。このようにすれば、受信性能のよい他の電子機器1から最適な衛星運行情報を取得して位置情報の算出時間を短縮することができる。
【0135】
[使用例5]
例えば、室内に固定された電子機器1(GPS受信機能付きのテレビなど)が、ユーザーが携帯する他の電子機器1との間で近距離無線通信を行うことで、位置情報の算出に最適な衛星運行情報を取得する(例えば、GPS受信機能付きのテレビが受信可能なチャネルを検索したり、時差を加味した時刻合わせをするような場合に位置情報が必要になる)。このようにすれば、室内に固定され、受信環境が悪い電子機器1であっても、移動可能な他の電子機器1から最適な衛星運行情報を取得して位置情報の算出時間を短縮することができる。
【0136】
以上に説明した本実施形態の電子機器1としては、例えば、位置表示機能を有する、携帯電話機、スマートフォン、携帯型ナビゲーション装置(PND:Portable Navigation Device)、携帯情報端末(PDA:Personal Data Assistance)、デジタルカメラ、活動量計などの携帯機器、カーナビゲーションシステム用の車載機器、時刻及び時差修正機能を有する電子時計など様々な電子機器を考えることができる。
【0137】
なお、本実施形態では、GPS衛星信号を受信して測位する電子機器を例に挙げ説明したが、本発明は、GLONASS、GALILEOなどのその他の衛星航法システム(衛星測位システム)の航法衛星からの衛星信号を受信して測位する電子機器にも適用することができる。
【0138】
なお、本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0139】
例えば、図8のフローチャートにおいて、電子機器1Aは、他の電子機器1との通信を終了した後(S116)、当該他の電子機器1の要求の有無にかかわらず衛星運行情報を送信する処理を行うようにしてもよい。この場合、他の電子機器1は、電子機器1Aからの衛星運行情報の受信をするか否かを選択できるようにしてもよい。
【0140】
また、例えば、図9のフローチャートにおいて、電子機器1B、1C、・・・は、衛星運行情報リスト132に含まれる各衛星運行情報(捕捉衛星情報、概略軌道情報、詳細軌道情報、管理情報)について、有効な衛星運行情報(有効期限を過ぎていない衛星運行情報)のみを電子機器1Aに送信するようにしてもよい。このようにすれば、位置情報の算出に使用できない衛星運行情報を無駄に送信しないので、近距離無線通信に要する時間や消費電流を低減させることができる。
【0141】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0142】
1 電子機器、2 GPS衛星、10 GPSモジュール、12 GPSアンテナ、14 TCXO、20 処理部(CPU)、22 衛星運行情報受信部、24 衛星運行情報更新部、26 衛星運行情報送信部、30 操作部、40 表示部、50 ROM、60 RAM、70 通信部、80 第1ボード、81 ピン、82,83,84 取り付け部、85,86 3ピンコネクター、90 第2ボード、91,92,93,94 取り付け部、95 20ピンコネクター、96 RFケーブル、96a,96b コネクター、100 SAWフィルター、110 RF処理部、120 ベースバンド処理部、122 衛星運行情報生成部、124 位置情報算出部、130 記憶部、132 衛星運行情報リスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航法衛星からの電波信号を受信する機能を有する電子機器であって、
航法衛星から受信した電波信号に基づいて衛星運行情報を生成し、生成した衛星運行情報を記憶部に記憶する衛星運行情報生成部と、
航法衛星からの電波信号を受信する機能を有し、直接無線通信が可能な距離にある他の電子機器との間で直接無線通信を行う通信部と、
前記通信部を介して前記他の電子機器から衛星運行情報を受信する衛星運行情報受信部と、
前記衛星運行情報受信部が受信した衛星運行情報と前記記憶部に記憶された衛星運行情報とを照合し、照合結果に応じて、前記衛星運行情報受信部が受信した衛星運行情報を用いて前記記憶部に記憶された衛星運行情報を更新する衛星運行情報更新部と、
前記記憶部に記憶された衛星運行情報に基づいて、自己の位置情報を算出する位置情報算出部と、を含む、電子機器。
【請求項2】
請求項1において、
前記衛星運行情報受信部は、
衛星運行情報として前記他の電子機器が捕捉した航法衛星を特定可能な捕捉衛星情報を受信する、電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記衛星運行情報受信部は、
衛星運行情報として航法衛星の軌道を特定可能な軌道情報を受信する、電子機器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記衛星運行情報受信部は、
衛星運行情報として前記位置情報の算出をサポートする管理情報を受信する、電子機器。
【請求項5】
請求項2において、
前記衛星運行情報受信部は、
前記捕捉衛星情報を受信した後、さらに衛星運行情報として航法衛星の軌道を特定可能な軌道情報を受信する、電子機器。
【請求項6】
請求項5において、
前記衛星運行情報受信部は、
前記捕捉衛星情報を受信した後、さらに衛星運行情報として前記位置情報の算出をサポートする管理情報を受信する、電子機器。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記衛星運行情報更新部は、
前記衛星運行情報受信部が受信した衛星運行情報に付されたタイムスタンプと前記記憶部に記憶された衛星運行情報に付されたタイムスタンプとを比較し、前記衛星運行情報受信部が受信した衛星運行情報が前記記憶部に記憶された衛星運行情報よりも新しい場合、前記記憶部に記憶された衛星運行情報を前記衛星運行情報受信部が受信した衛星運行情報に更新する、電子機器。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
他の電子機器からの衛星運行情報の送信要求に応じて、前記記憶部に記憶された衛星運行情報の少なくとも一部を、前記通信部を介して当該他の電子機器に送信する衛星運行情報送信部をさらに含む、電子機器。
【請求項9】
請求項8において、
前記衛星運行情報送信部は、
前記記憶部に記憶された衛星運行情報が有効期限内の情報であるか否かを判定し、有効期限を過ぎた衛星運行情報を送信しない、電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−251947(P2012−251947A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126597(P2011−126597)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】