説明

電子機器

【課題】搬送異常がジャムによる搬送異常であるか否かを適切に判別できるようにする。
【解決手段】本発明が適用された画像形成装置は、記録ユニットが搭載されたキャリッジを主走査方向に搬送すると共に、記録ユニットにインク液滴を吐出させることにより、用紙に対して主走査方向に画像を形成する(S170)。また、キャリッジの搬送を伴う画像形成動作に先駆けては、キャリッジ搬送路における用紙通過領域の始点位置R1を特定すると共に(S140)、搬送開始位置Xsを記憶保持する(S170)。そして、キャリッジの搬送異常が検知されると(S180でYes)、搬送開始位置Xsと、搬送異常の発生位置X0と、用紙通過領域の始点位置R1との位置関係に基づき、キャリッジが用紙端(始点位置)を跨いだか否かを判断し(S295)、跨いでいる場合には、搬送異常がジャムによる搬送異常であると判定して、ジャムに対応した後続の処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドを搭載したキャリッジを主走査方向に搬送し、主走査方向とは交差する副走査方向にシートを搬送して、シートに画像を形成する画像形成装置が知られている。具体的には、キャリッジの搬送異常を検知すると、キャリッジを緊急停止したりキャリッジを逆方向に戻したりする画像形成装置が知られている(特許文献1参照)。ここで言う搬送異常とは、キャリッジの搬送時に、搬送制御において目標とする結果が得られない状態のことである。搬送異常の検知方法としては、キャリッジ速度やモータの駆動電流・電圧等を監視して、これらの物理量と予め設定された異常判定値との比較により搬送異常を検知する方法が知られている。
【0003】
搬送異常が発生する第一の原因としては、シートとキャリッジとが干渉してジャムが発生し、キャリッジに接触するシートがキャリッジの移動を妨げることに起因して、キャリッジの搬送負荷が上昇することが挙げられる。この場合には、キャリッジの目標速度と実速度の偏差が大きくなることによってモータに入力される駆動電流・電圧が上昇する。このため、上記手法で搬送異常を検知する。また、搬送異常が発生する第二の原因としては、ユーザがキャリッジの搬送路に指を挿入したことに起因して、一時的にキャリッジの搬送負荷が上昇することが挙げられ、第三の原因としては、キャリッジの移動を規制するガイド軸に汚れが付着していることで一時的にキャリッジの搬送負荷が上昇することが挙げられ、第四の原因としては、モータやセンサが正常に機能しなくなることが挙げられる。
【0004】
ところで、このような搬送異常の発生原因を正確に特定できない従来装置では、搬送異常を検知すると、搬送異常がジャムによる搬送異常であると取り扱って過剰なエラー処理を実行する。例えば、搬送異常の種類によっては、搬送制御を直ぐに再開できる場合があるにも拘わらず、搬送異常を検知したときには、一旦、それまで実行していた搬送制御をキャンセルしユーザの操作待ち状態に移行する。ジャムによる搬送異常では、ジャム以外の搬送異常とは異なり、無理に搬送制御を継続すると、インクジェットヘッドのノズル部分に傷がつき致命的なダメージを被る可能性がある。このため、搬送異常の発生原因を正確に特定できない場合には、搬送異常がジャムによる搬送異常であると取り扱って、インクジェットヘッドのノズル部分の損傷を極力防止するのである。
【0005】
しかしながら、このような過剰な対応は、例えばガイド軸が汚れている程度で搬送制御がキャンセルされてしまうことから、ユーザにとっては大変不便である。そこで、特許文献2記載の技術では、搬送異常が検知された時点でのキャリッジ位置に基づき、搬送異常がジャムによる搬送異常であるか否かを判定できるようにし、この判定結果に従って適切にエラー処理を切り替えることができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−055030号公報
【特許文献2】特開2010−064442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2記載の方法では、キャリッジの搬送開始位置によっては、ジャムによる搬送異常ではないのにも関わらず、搬送異常がジャムによる搬送異常であると誤判定してしまう可能性があった。即ち、特許文献2記載の技術では、搬送異常の検知時点でのキャリッジ位置に基づき、搬送異常がジャムによる搬送異常であるか否かを判定するため、搬送開始時点でキャリッジがシート内に侵入した状態にありジャムによる搬送異常が発生しない環境下でも、搬送異常の検知時点でのキャリッジの位置によっては、搬送異常がジャムによる搬送異常であると判定される可能性があった。本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、搬送異常がジャムによる搬送異常であるか否かを精度良く判定可能な電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明の電子機器(請求項1)は、主走査方向にキャリッジを搬送するキャリッジ搬送手段と、主走査方向とは交差する副走査方向にシートを搬送するシート搬送手段と、キャリッジの搬送異常を検知する異常検知手段と、キャリッジ搬送手段によってキャリッジが搬送されるキャリッジ搬送路上でのキャリッジ位置を検出する位置検出手段と、を備える電子機器であって、更に、開始位置記憶手段と、異常発生位置特定手段と、外縁位置特定手段と、ジャム判定手段と、を備えるものである。
【0009】
開始位置記憶手段は、位置検出手段の検出結果に基づき、停止しているキャリッジをキャリッジ搬送手段が主走査方向に搬送する際のキャリッジの搬送開始位置を記憶する。一方、異常発生位置特定手段は、位置検出手段の検出結果に基づき、異常検知手段により搬送異常が検知された時点でのキャリッジ位置である異常発生位置を特定する。そして、外縁位置特定手段は、シート搬送手段により副走査方向に搬送されるシートが通過する領域に対向するキャリッジ搬送路の領域であるシート通過領域の外縁位置を特定する。そして、ジャム判定手段は、上記搬送開始位置及び上記異常発生位置及び上記シート通過領域の外縁位置に基づき、異常検知手段により検知された搬送異常が、キャリッジとシートとの干渉により生じたジャムによる搬送異常であるか否かを判定する。即ち、外縁位置特定手段により特定された外縁位置が、開始位置記憶手段が記憶する搬送開始位置と異常発生位置特定手段により特定された異常発生位置との間に存在する場合には、異常検知手段により検知された搬送異常がジャムによる搬送異常であると判定する。
【0010】
この電子機器によれば、ジャム判定手段が、搬送開始位置及び異常発生位置及びシート通過領域の外縁位置に基づき、異常検知手段により検知された搬送異常がジャムによる搬送異常であるか否かを判定するので、例えば、搬送開始位置がシート通過領域内にありジャムが発生しない環境で、搬送異常がジャムによる搬送異常であると誤判定しなくて済む。従って、この発明によれば、搬送異常がジャムによる搬送異常であるか否かを精度良く判定することができ、この判定結果に基づく処理を適切に実行できる。
【0011】
具体的に、外縁位置特定手段は、上記シート通過領域の外縁位置として、シート通過領域のキャリッジ搬送手段によるキャリッジ搬送方向の上流側及び下流側に存在する二つの外縁の内、上流側に存在する外縁の位置を特定する構成にすることができる。また、ジャム判定手段は、外縁位置特定手段により特定された上流側の外縁位置が、搬送開始位置と異常発生位置との間に存在する場合に、異常検知手段により検知された搬送異常がジャムによる搬送異常であると判定する構成にすることができる(請求項2)。キャリッジがシート通過領域の外縁を跨ぐ場合であってもシート通過領域内から外へキャリッジが移動する場合に、ジャムによる搬送異常が発生する可能性は小さいので、このように電子機器を構成すれば、一層高精度に搬送異常がジャムによる搬送異常であるか否かを判定できる。
【0012】
また、外縁位置特定手段は、シート搬送手段が搬送するシートのサイズ情報を取得し、このサイズ情報に基づき、外縁位置を特定する構成にすることができる(請求項3)。例えば、外縁位置特定手段は、印刷設定画面を通じてユーザが入力したシートサイズの情報に基づいて、外縁位置を特定する構成にすることができる。この他、キャリッジがシートの外縁を検知可能なメディアセンサを備える電子機器において、外縁位置特定手段は、メディアセンサによる検知信号に基づき、外縁位置を特定する構成にすることができる(請求項4)。メディアセンサの検知信号に基づき、外縁位置を特定するように、電子機器を構成すれば、ユーザからの入力情報に基づき外縁位置を特定する場合よりも、正確に外縁位置を特定することができるので、ジャムであるか否かの判定精度が向上する。
【0013】
また、キャリッジ搬送手段は、キャリッジの主走査方向の実速度又は実位置と、その目標値との偏差から、モータに入力する駆動電圧又は駆動電流を決定することにより、キャリッジの主走査方向の速度又は位置を目標値に一致させるようにフィードバック制御し、モータの駆動力によりキャリッジを主走査方向に搬送する構成にすることができる。また、キャリッジ搬送手段がこのようなキャリッジの搬送制御を行う場合、異常検知手段は、偏差、又は、駆動電圧若しくは駆動電流が閾値を超えると、これを搬送異常として検知する構成にすることができる(請求項5)。上記偏差等が閾値を超えたことを条件に搬送異常を検知する電子機器では、キャリッジの移動方向を規制するガイド軸に汚れが付着していたりして、搬送負荷が上昇したときにも、搬送異常が検知されることになるが、このような電子機器に、本発明を適用すれば、検知された搬送異常が、ジャムによる搬送異常であるのか否かを適切に判別できる。
【0014】
また、ガイド軸の汚れ等による搬送負荷の些細な上昇が原因での搬送異常の検知は、本来、緊急停止させる必要のないキャリッジを停止させることになるので、可能な限り回避すべきである。一方、ジャムによる搬送異常については、無理な搬送を続けると、キャリッジに搭載されたヘッドのノズル部分を傷つける可能性があるので、ジャムによる搬送異常が発生した際には、可能な限り迅速に搬送異常を検知してキャリッジを停止させるのが好ましい(特に電子機器がインクジェットプリンタである場合)。従って、インクジェットプリンタ等の電子機器では、ジャムによる搬送異常が起こる領域での上記閾値を下げて、この領域では搬送異常を高感度に検知するようにし、ジャムによる搬送異常が起こらない領域については、上記閾値を上げて、この領域では搬送異常を過度に高感度に検知しないようにするのが好ましい。
【0015】
即ち、キャリッジ搬送路の各地点に対し上記閾値を定める場合には、キャリッジ搬送路におけるシート通過領域内の各地点の閾値を、シート通過領域外の各地点の閾値よりも、小さい値に定めるのがよい(請求項6)。この他、キャリッジ搬送路におけるシート通過領域の外縁に対応する地点の閾値は、その他の各地点の閾値よりも小さい値に定めるのがよい(請求項7)。ジャムが発生するのは、シートの外縁からシート内側にキャリッジが侵入するときであるので、このように閾値を設定すれば、ジャムによる搬送異常を高感度に検知することができる一方、ジャム以外による搬送異常についての検知感度を下げることができ、過度な搬送異常の検知により、ユーザに不満が及ぶのを抑えることができる。
【0016】
また、異常検知手段は、キャリッジ搬送手段がキャリッジを搬送開始位置から所定方向に搬送する際にキャリッジが逆方向に後退すると、これをキャリッジの搬送異常として検知する構成にされてもよい(請求項8)。この他、上述した発明は、シートにインク液滴を吐出可能な記録ユニットがキャリッジに搭載された画像形成装置に適用することができる。このような画像形成装置に本発明の思想を適用すれば(請求項9)、上述した画像形成動作の過程で発生するキャリッジの搬送異常がジャムによる搬送異常であるか否かを精度よく判定することができる。
【0017】
また、画像形成装置には、異常検知手段により搬送異常が検知されると、画像形成手段による画像形成動作を中断させる画像形成中断手段を設け、更に、異常検知手段により搬送異常が検知され、且つ、ジャム判定手段により搬送異常がジャムによる搬送異常であると判定されると、キャリッジ搬送手段に、キャリッジを、当該搬送異常発生時の搬送方向とは逆方向に搬送させる異常時対応手段を設けるとよい(請求項10)。ジャムが発生した場合に、無理にキャリッジを搬送すると、記録ユニットのノズル部分が傷ついてしまう可能性があるが、ジャムが発生した場合にキャリッジを後退させれば、このような問題の発生を抑制することができて好ましい。
【0018】
また、キャリッジ搬送路の一端に、記録ユニットのインク液滴が吐出されるノズル部分をキャッピングするためのキャッピング部が設けられ、キャッピング部が設けられた端部とは反対側の端部に、記録ユニットのフラッシング動作により吐出されるインク液滴を蓄積するためのフラッシング部が設けられた画像形成装置においては、キャリッジ搬送手段に、キャリッジを逆方向に搬送させて、記録ユニットをキャッピング部又はフラッシング部に配置するように、上記異常時対応手段を構成するのがよい(請求項11)。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】画像形成装置1の構成を表す断面図である。
【図2】キャリッジ搬送機構の構成を表す図である。
【図3】画像形成装置1の電気的構成を表すブロック図である。
【図4】CPU11が実行する印刷制御処理を表すフローチャートである。
【図5】CPU11が実行する印刷制御処理を表すフローチャートである。
【図6】位置テーブルTBLの構成を表す図である。
【図7】位置テーブルTBLに記された用紙通過領域始点位置R1を表す図である。
【図8】閾値Thの設定方法を示した図である。
【図9】キャリッジ制御部33が実行する処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施例について、図面と共に説明する。図1に示す本実施例の画像形成装置1は、インクジェットプリンタとして構成され、給紙トレイ101と、給紙トレイ101に積層された用紙Pを一枚ずつ分離して用紙搬送路に送出する給紙ユニット110と、給紙ユニット110を構成する給紙ローラ111の回転により用紙搬送路に送出された用紙Pをピンチローラ133と共に挟持し、回転動作によって、用紙Pを記録ユニット40下のインク吐出位置に搬送する搬送ローラ131と、搬送ローラ131から搬送されてきた用紙Pをピンチローラ143と共に挟持し、回転動作によって、用紙Pを用紙搬送路下流に位置する図示しない排紙トレイに排出する排紙ローラ141と、を備える。
【0021】
給紙ユニット110は、給紙ローラ111の回転により、給紙トレイ101に載置された最上部の用紙Pを分離し、用紙搬送路に送出するものである。給紙ローラ111は、DC(直流)モータで構成される給紙モータ80の駆動力を受けて回転する。用紙搬送路の上流部は、要素151,153,154等から構成され、給紙ローラ111により送出される用紙Pの移動を規制して、給紙トレイ101から送出された用紙Pを、用紙搬送路下流に位置する搬送ローラ131とピンチローラ133との接点SP1に誘導する。本実施例の画像形成装置1では、この用紙搬送路を通じて接点SP1に用紙Pの先端が到来すると、搬送ローラ131の回転動作により、用紙Pが搬送ローラ131及びピンチローラ133の間に引き込まれ、搬送ローラ131及びピンチローラ133に挟持される。その後、用紙Pは、搬送ローラ131の回転と共に、搬送ローラ131の回転量に相当する距離、用紙搬送路下流(副走査方向)に搬送される。
【0022】
搬送ローラ131と排紙ローラ141とを結ぶ用紙搬送路の下流部を構成するプラテン155は、搬送ローラ131から搬送される用紙Pを、記録ユニット40によってインクが吐出されるインク吐出位置に誘導すると共に、記録ユニット40のインク吐出動作により画像が形成された用紙Pを、排紙ローラ141とピンチローラ143との接点SP2に誘導する。用紙Pは、このプラテン155に沿って排紙ローラ141側へと搬送され、先端が排紙ローラ141とピンチローラ143との接点SP2に到達すると、排紙ローラ141の回転と共に、排紙ローラ141とピンチローラ143との間に引き込まれ、排紙ローラ141及びピンチローラ143により挟持される。その後、用紙Pは、排紙ローラ141の回転と共に、図示しない排紙トレイへと排出される。尚、搬送ローラ131は、DCモータで構成されるLFモータ70の駆動力を受けて回転するが、排紙ローラ141及び搬送ローラ131は、互いにベルトにて連結された同径のローラとして構成されており、排紙ローラ141は、搬送ローラ131と連動して回転する。
【0023】
その他、記録ユニット40は、インク液滴を吐出するためのノズル40aが、プラテン155に対向する底面に複数配列されたものである。但し、図2に示すノズル40aは、概念的なものであり、記録ユニット40のノズル40aは、周知のインクジェットヘッドと同様に形成されている。この記録ユニット40は、主走査方向(図1の紙面に対して垂直な方向)に移動可能なキャリッジ50に搭載され、キャリッジ50は、DCモータで構成されるCRモータ60により駆動されて、主走査方向に移動する。図2に示すように、キャリッジ搬送機構は、無端ベルト170に連結されたキャリッジ50が、主走査方向に延びるガイド軸160に沿って移動可能に設けられた構成にされている。無端ベルト170は、CRモータ60の駆動力を受けて回転するプーリー171とプーリー173との間に掛けられ、CRモータ60の駆動力をプーリー171を介して受けて回転する。キャリッジ50は、このCRモータ60の駆動力を受けて回転する無端ベルト170に従動して、ガイド軸160に沿って主走査方向に移動する。また、画像形成装置1には、リニアエンコーダ65(図3参照)が設けられており、このリニアエンコーダ65の構成要素として、図2に示すように、ガイド軸160に沿って、スリットが一定の微小間隔で形成されたタイミングスリット180が設けられ、このスリットの間隔を読み取ってキャリッジ50の位置に対応したパルス信号(エンコーダ信号)を出力するセンサ素子(図示せず)が、キャリッジ50に設けられている。
【0024】
この他、ガイド軸160に沿うキャリッジ搬送路のホームポジション(HP)側の端部には、キャップを記録ユニット40の底面にキャッピングするためのキャッピング部191が設けられている。尚、ここで言うキャリッジ搬送路とは、キャリッジ50がガイド軸160に沿って移動可能な主走査方向の領域のことである。キャッピング部191は、キャリッジ50がホームポジションから離れると、キャップを下方に下げ、キャリッジ50がホームポジション側に接近してくると、キャリッジ50の押圧力により機械的にキャップを上方に徐々に押し上げ、キャリッジ50がホームポジションに到達した時点では、キャップを下方から記録ユニット40の底面に装着してキャッピングを完了する。また、キャリッジ搬送路のホームポジションとは反対側の端部には、記録ユニット40から吐出されるインクを受けて吸収するフラッシング部195が設けられている。以下では、フラッシング部195が設けられたキャリッジ搬送路上の地点を「フラッシング位置」と表現する。尚、本実施例の画像形成装置1は、A4サイズ以下の用紙を給紙可能に構成にされ、キャリッジ搬送路の主走査方向の長さは、A4用紙の幅よりも十分長く設定されている。
【0025】
続いて、図3を用いて画像形成装置1の電気的構成について説明する。本実施例の画像形成装置1は、上述した構成要素の他、CPU11と、CPU11が実行するプログラム等を記憶するROM13と、CPU11によるプログラム実行時に作業領域として使用されるRAM15と、各種設定情報を記憶するEEPROM17と、外部装置90から送信されてくる印刷画像データを受信する通信インタフェース19と、各種操作キー及びメッセージ表示用のディスプレイ及びスピーカを備えるユーザインタフェース21と、印字/モータ制御部30と、記録ユニット40及びCRモータ60及びLFモータ70及び給紙モータ80の夫々を駆動する駆動回路41,61,71,81と、ロータリエンコーダ75,85と、メディアセンサ55と、を備える。また、印字/モータ制御部30は、印字制御部31と、キャリッジ制御部33と、用紙搬送制御部35と、給紙制御部37と、信号処理部34,36,38とを備える。
【0026】
印字制御部31は、記録ユニット40によるインク液滴の吐出動作を制御するものであり、CPU11から入力される指令に従い、駆動回路41を通じて記録ユニット40を駆動し、記録ユニット40によるインク液滴の吐出動作を制御する。この動作によって印字制御部31は、記録ユニット40にCPU11から入力された印刷画像データに基づく画像を用紙Pに形成させる。また、キャリッジ制御部33は、駆動回路61を介してCRモータ60を駆動するものであり、CRモータ60の駆動電圧又は電流を制御することにより、キャリッジ50の搬送制御を行うものである。例えば、インク液滴により用紙Pに画像を形成する際には、インク液滴を目的の地点に着弾させるために、キャリッジ50を定速搬送する。キャリッジ制御部33は、このようなキャリッジ50の搬送制御をCPU11からの指令に従って実行する。尚、キャリッジ制御部33には、上記搬送制御のために信号処理部34からキャリッジ50の位置X及び速度Vの情報が入力される。信号処理部34は、リニアエンコーダ65から入力されるエンコーダ信号(A相信号及びB相信号)を処理して、キャリッジ50の位置X及び速度Vを検出するものである。エンコーダ信号を用いた位置X及び速度Vの検出方法については周知なので、ここでは説明を省略する。
【0027】
また、用紙搬送制御部35は、CPU11からの指令に従い、駆動回路71を介してLFモータ70を制御することにより、用紙Pの搬送を制御するものである。この用紙搬送制御部35には、信号処理部36から、用紙Pの搬送量及び速度の情報が入力される。LFモータ70の回転軸には、ロータリエンコーダ75が設けられており、信号処理部36は、このロータリエンコーダ75から入力されるエンコーダ信号に基づき、用紙の搬送量及び速度を検出し、この情報を用紙搬送制御部35に入力する。また、給紙制御部37は、CPU11からの指令に従い、駆動回路81を介して給紙モータ80を制御することにより、給紙トレイ101から搬送ローラ131への用紙Pの供給動作を実現するものである。給紙制御部37には、信号処理部38から、用紙の搬送量及び速度の情報が入力される。給紙モータ80の回転軸には、ロータリエンコーダ85が設けられており、信号処理部38は、ロータリエンコーダ85から入力されるエンコーダ信号に基づき、用紙の搬送量及び速度を検出し、この情報を給紙制御部37に入力する。
【0028】
CPU11は、このような構成の印字/モータ制御部30の各部に指令入力することにより、主走査方向への画像形成動作、及び、主走査方向とは直交する副走査方向への用紙Pの搬送動作を統括的に制御し、用紙Pに外部装置90から入力された印刷画像データに基づく画像を形成する。また、CPU11は、画像形成動作に伴うキャリッジの搬送時に、キャリッジ制御部33により搬送異常が検知されると、この搬送異常がジャムによる搬送異常であるか否かを判定し、その判定結果に従って、発生した搬送異常に対応した処理を実行する(印刷制御処理)。
【0029】
続いて、CPU11が実行する印刷制御処理について説明する。CPU11は、通信インタフェース19を通じて外部装置90から、印刷指令と共に印刷画像データを受信すると、図4及び図5に示す印刷制御処理を開始する。印刷制御処理を開始すると、CPU11は、外部装置90からの受信データに基づき、給紙トレイ101から供給される用紙のサイズを特定する(S110)。外部装置90は、A4,B5,A5等の用紙サイズの情報を印刷設定画面を通じてユーザから取得し、この取得情報を印刷設定データとして、印刷指令及び印刷画像データと共に送信する構成にされている。CPU11は、S110において、印刷画像データと共に受信した上記印刷設定データが示すこれらの情報に基づき、給紙トレイ101から供給される用紙サイズを特定する。
【0030】
この後、CPU11は、給紙制御部37に指令入力して、給紙ユニット110による給紙動作が開始されるようにする(S120)。また、キャリッジの搬送方向を「順方向」に設定する(S130)。但し、本実施例では、主走査方向であってホームポジションからフラッシング位置へ向かう方向を、特に「順方向」といい、主走査方向であってフラッシング位置からホームポジションに向かう方向を、特に「逆方向」という。
【0031】
S130での処理を終えると、CPU11は、S140に移行し、現在設定されているキャリッジ搬送方向及び特定した用紙サイズに基づき、キャリッジ搬送路において用紙Pが通過する領域である用紙通過領域の始点位置R1及び終点位置R2を特定する。用紙Pは、キャリッジ搬送路の下方をプラテン155に沿って移動するが、ここでは、プラテン155において用紙Pが通過する領域に対向するキャリッジ搬送路上の領域の始点位置R1及び終点位置R2を特定する。尚、始点位置R1とは、キャリッジ搬送路における用紙通過領域の外縁であって、キャリッジ搬送方向の上流側及び下流側に存在する二つの外縁(両端点)の内、上流側に存在する外縁の位置のことであり、終点位置R2とは、上記二つの外縁の内、下流側に存在する外縁の位置のことである。
【0032】
EEPROM17には、図6に示すように、用紙サイズ毎及びキャリッジの搬送方向毎に上記始点位置R1が記述された位置テーブルTBLが記憶されており、CPU11は、この位置テーブルTBLを参照して、S110で特定した用紙サイズ及び現在設定されているキャリッジ搬送方向に対応する用紙通過領域の始点位置R1を特定する。また、位置テーブルTBLが示す始点位置R1から用紙サイズに対応する長さキャリッジ搬送方向に下流の位置を、用紙通過領域の終点位置R2に特定する。尚、S140では、必ずキャリッジ搬送方向が「順方向」に設定されているので、位置テーブルTBLにおいて順方向の始点位置R1を参照する。ちなみに、位置テーブルTBLに記載された逆方向の始点位置R1は、後述するS200で、キャリッジ搬送方向が反転され「逆方向」に設定された際に、S220の処理にて参照される(詳細後述)。
【0033】
位置テーブルTBLについて補足すると、位置テーブルTBLが示す始点位置R1は、図7に示すように、リニアエンコーダ65の設置位置を考慮した値に定められている。画像形成装置1のリニアエンコーダ65を構成するセンサ素子は、キャリッジ50の主走査方向中央に設けられており、キャリッジ位置検出点(図7参照)は、キャリッジ50の主走査方向中央である。即ち、信号処理部34から得られるキャリッジ50の位置Xは、キャリッジ50の先端位置からΔずれている。このため、位置テーブルTBLが示す始点位置R1は、用紙Pにおけるキャリッジ搬送方向上流側の側縁P_Uが通過するキャリッジ搬送路上の地点PPUよりもΔ分キャリッジ搬送方向上流に遡った地点の位置座標に定められている。尚、図7(a)は、キャリッジ搬送方向が順方向であるとき用紙通過領域の始点位置R1として位置テーブルTBLが示す位置座標を示したものであり、図7(b)は、キャリッジ搬送方向が逆方向であるときの用紙通過領域の始点位置R1として位置テーブルTBLが示す位置座標を示したものである。図7に示すように、始点位置R1は、キャリッジ50の先端が用紙Pのエッジに接触する位置に定められる。
【0034】
また、S140での処理を終えると、CPU11は、S150に移行し、キャリッジ搬送路における各地点の閾値Thを設定する。キャリッジ制御部33は、キャリッジ50を定速搬送する際、目標速度Vrと信号処理部34から得られるキャリッジ50の実速度Vとの偏差e=Vr−Vを算出し、この偏差eが閾値Thを超えると、搬送異常を検知する。S150で設定する閾値Thは、この搬送異常の検知感度に影響を与えるパラメータである。本実施例では、信号処理部34から得られる位置Xより高精度の位置情報を得ることができないため、信号処理部34から得られる位置Xの最小単位毎に、閾値Thを設定することで、キャリッジ搬送路における各地点の閾値Thを設定する。
【0035】
具体的には、図8に示すように、S140で特定した始点位置R1の閾値Thを、予め設計段階で定められた第一の閾値Th1に設定し、S140で特定した終点位置R2の閾値Thを、予め設計段階で定められた第一の閾値Th1よりも大きい第二の閾値Th2に設定し、始点位置R1及び終点位置R2に挟まれた用紙通過領域内の各地点の閾値Thを、始点位置R1での閾値Th1及び終点位置R2での閾値Th2を基準に、線形補間した値に設定する。即ち、始点位置R1から終点位置R2に向けて閾値Thが位置に比例して上昇するように、用紙通過領域内の各地点の閾値Thを設定する。また、用紙通過領域外の各地点の閾値Thを、終点位置R2での閾値Th2と同一値に設定する。尚、図8(a)は、キャリッジ搬送方向が「順方向」であるときの閾値Thを示した図であり、図8(b)は、キャリッジ搬送方向が「逆方向」であるときの閾値Thを示した図である。
【0036】
詳述すると、このように閾値Thを設定するのは次の理由からである。即ち、ジャムによる搬送異常については、搬送異常の検知が遅れると記録ユニット40のノズル部分にダメージを与える結果となることから、搬送異常を高感度に検知できるようにするのが好ましい。一方、ガイド軸160の汚れ等による搬送負荷の些細な上昇が原因での搬送異常の検知は、緊急停止させる必要のないキャリッジ50を停止させることになるので、可能な限り回避するのが好ましい。このような理由により、本実施例では、ジャムによる搬送異常が発生しやすい始点位置R1の閾値Th1をキャリッジ搬送路内で最も小さい値に設定して搬送異常の検知感度を最大とし、小さい偏差eで異常検知できるようにしている。また、始点位置R1からキャリッジ搬送方向下流に向けて徐々に搬送異常の検知感度を下げるように(閾値Thを上げるように)することで、搬送負荷の些細な上昇が原因での搬送異常については鈍感に反応するようにしている。尚、閾値Th1及び閾値Th2については、このような思想に合致するよう設計段階で設計者が適宜定めればよい。
【0037】
S150での処理を終えると、CPU11は、S120で開始された給紙動作が完了するまで待機し(S160)、給紙動作が完了すると(S160でYes)、用紙搬送制御部35に指令入力して、用紙搬送制御部35に、給紙された用紙Pを、画像形成開始位置(先頭ライン)が記録ユニット40によるインク吐出位置に到達するまで搬送させる(S165)。その後、CPU11は、印字/モータ制御部30に指令入力することにより、印字/モータ制御部30に、1パス分の画像形成動作を開始させる(S170)。尚、「1パス分の画像形成動作」とは、キャリッジを搬送方向に片道分移動させると共に、この際にインク液滴を記録ユニット40から吐出させることにより、用紙Pに所定ライン数分(例えば1ライン分)の画像を形成する動作のことを言う。例えば、S170では、印字制御部31に、受信した印刷画像データであって、当該印字制御部31に画像形成させるべきラインの印刷画像データを入力すると共に、キャリッジ制御部33に、前段の処理(S130又はS200)で設定されたキャリッジ搬送方向にキャリッジ50を搬送させることにより、印字/モータ制御部30に、1パス分の画像形成動作を開始させる。
【0038】
ここで、印刷制御処理の説明を一旦中断し、S170でCPU11から入力される指令によりキャリッジ制御部33が実行する処理について説明する。図9(a)は、S170で入力されるCPU11からの指令を受けて、キャリッジ制御部33が実行する処理を表すフローチャートである。キャリッジ制御部33は、CPU11からの上記指令を受けると、まず、信号処理部34から得られた現在のキャリッジ50の位置Xを、搬送開始位置Xsとして内蔵メモリに記憶し(S500)、その後、加速区間が終了するまで繰返しキャリッジ50の加速制御を実行する(S510,S520)。例えば、キャリッジ制御部33は、信号処理部34から得られるキャリッジ50の実速度Vに基づき、この速度VがCPU11から指定された加速区間の目標速度軌跡に従うように、CRモータ60に対する操作量uを算出し、算出した操作量uを駆動回路61に入力することにより、駆動回路61に、操作量uに対応する駆動電圧又は駆動電流で、CRモータ60を駆動させる。このようにして、目標速度軌跡に従う加速制御を実現する。これにより、加速区間では、キャリッジ50を定速区間での目標速度Vrまで加速させる。
【0039】
また、上記繰返し行われる加速制御の過程では、信号処理部34から得られるキャリッジ50の位置Xに基づき、キャリッジ50が搬送方向とは逆方向に後退する反転異常、及び、キャリッジ50が停止する停止異常のいずれか一方が生じているか否かを判定する(S515)。そして、反転異常又は停止異常が生じている場合には(S515でYes)、S580に移行し、信号処理部34から得られた現在のキャリッジの位置Xを、異常発生位置X0として内蔵メモリに記憶すると共に(S580)、エラー処理を実行する(S590)。エラー処理では、搬送異常を検知したことをCPU11に通知すると共に、印字制御部31によるインク吐出動作を中断させる。また、キャリッジ50の搬送制御も中断し、図9(a)に示す処理を終了する。
【0040】
一方、正常に加速区間が終了すると(S520でYes)、キャリッジ制御部33は、S530に移行し、定速区間が終了するまで繰返し図9(b)に示す定速搬送制御を実行する(S530,S550)。図9(b)は、キャリッジ制御部33がS530で実行する処理を表すフローチャートである。定速搬送制御では、定速区間での目標速度Vrと、信号処理部34から得られるキャリッジ50の実速度Vとの偏差e=Vr−Vを算出する(S531)。そして、偏差eの算出後には、CPU11による前段の処理(S150又はS230)で設定された閾値Thであって、信号処理部34から得られた現在のキャリッジ50の位置Xに対応する地点の閾値Thを、異常判定値Erに設定し(S532)、偏差eが異常判定値Erを超えているか否かを判断する(S533)。そして、偏差eが異常判定値Er以下であると判断すると(S533でNo)、偏差eに対応する操作量uを算出し(S534)、算出した操作量uを駆動回路61に入力することにより、駆動回路61に、操作量uに対応する駆動電圧又は駆動電流で、CRモータ60を駆動させて、キャリッジ50の主走査方向の速度を、目標速度Vrに一致させるようにフィードバック制御する。キャリッジ制御部33は、偏差eが異常判定値Er以下である場合には(S533でNo)、S540で速度低下異常が発生していないと判断して(S540でNo)、定速区間が終了するまで繰返しこのような定速搬送制御(S530)を実行する。
【0041】
一方、偏差eが異常判定値Erを超えている場合(S533でYes)、キャリッジ制御部33は、速度低下異常が発生していると判断して(S539,S540でYes)、S580に移行し、信号処理部34から得られた現在のキャリッジの位置Xを、異常発生位置X0として記憶すると共に(S580)、上述したエラー処理を実行することで(S590)、搬送異常を検知したことをCPU11に通知する。また、印字制御部31によるインク吐出動作を中断させ、キャリッジ50を減速・停止させて、図9(a)に示す処理を終了する。
【0042】
一方、正常に定速区間が終了すると(S550でYes)、キャリッジ制御部33は、S560に移行し、減速区間が終了するまで繰返し減速制御を実行する(S560,S570)。S560では、例えば、信号処理部34から得られるキャリッジ50の実速度Vに基づき、この実速度VがCPU11から指定された減速区間の目標速度軌跡に従うようにCRモータ60に対する操作量uを算出し、算出した操作量uを駆動回路61に入力することにより、駆動回路61に、操作量uに対応する駆動電圧又は駆動電流で、CRモータ60を駆動させる。このようにして、減速区間では、キャリッジ50が停止するまで、キャリッジ50の搬送制御を行う。そして、減速区間が終了すると(S570でYes)、図9(a)に示す処理を終了する。
【0043】
但し、上記繰返し行われる減速制御の過程では、信号処理部34から得られるキャリッジ50の位置に基づき、キャリッジ50が搬送方向とは逆方向に後退する反転異常、及び、キャリッジ50が正規の停止位置から所定長さ以上手前に停止する停止異常のいずれか一方が生じているか否かを判定し、反転異常又は停止異常が生じている場合には(S565でYes)、S580に移行し、信号処理部34から得られた現在のキャリッジの位置Xを、異常発生位置X0として記憶すると共に、上述したエラー処理を実行する(S590)。その後、図9(a)に示す処理を終了する。このようにして、本実施例では、搬送異常を検知した場合、キャリッジの搬送制御を一旦中断し、「1パス分の画像形成動作」を一旦中断する。
【0044】
話をCPU11が実行する印刷制御処理に戻す(図4参照)。CPU11は、S170における「1パス分の画像形成動作」の開始後には、キャリッジ制御部33により搬送異常が検知されるか、キャリッジ50の搬送制御が正常完了するまで待機する(図4に示すS180,S185)。そして、搬送異常が検知されずに(搬送異常検知の通知を受けることなく)、キャリッジ50の搬送制御が正常完了すると(S185でYes)、S190に移行し、1頁の最終ラインまで「1パス分の画像形成動作」を実行したか否かを判断し、最終ラインまで実行していないと判断すると(S190でNo)、キャリッジ搬送方向を現在設定されている方向と反対方向に再設定する(S200)。即ち、キャリッジ搬送方向が「順方向」に設定されている場合には、キャリッジ搬送方向を「逆方向」に再設定し、キャリッジ搬送方向が「逆方向」に設定されている場合には、キャリッジ搬送方向を「順方向」に再設定する。このようにキャリッジ搬送方向を反転させることにより、本実施例の画像形成装置1は、キャリッジ50を往復動させる。
【0045】
また、キャリッジ搬送方向を再設定すると(S200)、直前のキャリッジ搬送時にメディアセンサ55から得られた用紙エッジ(外縁)の検知信号に基づき、給紙トレイ101から供給された用紙サイズを特定する(S210)。メディアセンサ55は、発光素子及び受光素子を有し、対向する部材の反射光に基づいて対向する部材を検出可能な周知のセンサである。メディアセンサ55は、搬送される用紙Pと対向可能な位置にてキャリッジ50に一体に設けられ、キャリッジ50と共に移動して、用紙Pの副走査方向に沿うエッジの通過時には当該用紙エッジを検知する。S210では、用紙Pの副走査方向に沿う二つのエッジの夫々が検知された時点のキャリッジ50の位置Xに基づき、用紙サイズを特定する。S110で特定される用紙サイズは、外部装置90から通知された用紙サイズであり、給紙トレイ101から供給される用紙Pのサイズと一致することが保証されていない。このため、S210では、ジャムの判定精度を高めるため、実際に供給された用紙Pのサイズを特定する。尚、S210の処理は、給紙後1度のみ実行されればよい。
【0046】
その後、CPU11は、S210で再特定した用紙サイズ及び現時点で設定されているキャリッジ搬送方向に基づき、S140での処理と同様に、今回のキャリッジ搬送方向に対応する用紙通過領域の始点位置R1及び終点位置R2を特定する(S220)。また、ここで特定した用紙通過領域の始点位置R1及び終点位置R2に基づき、キャリッジ搬送路における各地点の閾値Thを、S150と同様の手法で設定する(S230)。S230での処理を終えると、CPU11は、S240に移行し、用紙搬送制御部35に指令入力することにより、用紙搬送制御部35に、用紙Pを1パス分の距離、搬送方向下流に搬送させる。尚、ここで言う「1パス分の距離」は、S170における「1パス分の画像形成動作」によって用紙Pに形成可能な画像の副走査方向の長さに対応する。また、この処理を終えると、CPU11は、S170に移行して、「1パス分の画像形成動作」を印字/モータ制御部30に開始させた後、S180以降の処理を実行する。
【0047】
そして、最終ラインまでの画像形成動作が完了すると(S190でYes)、S250に移行し、用紙搬送制御部35に指令入力して、用紙搬送制御部35に、用紙Pを排紙トレイまで排出する処理を実行させる。その後、S260に移行し、キャリッジ制御部33を通じてキャリッジ50をホームポジションまで移動させる。更に、CPU11は、外部装置90から受信した印刷画像データに、次頁のデータがあるか否かを判断し(S270)、次頁のデータがあると判断すると(S270でYes)、次頁のデータについて、S120以降の処理を実行し、次頁のデータがないと判断すると印刷制御処理を終了する。
【0048】
一方、「1パス分の画像形成動作」の実行中に、キャリッジ制御部33により搬送異常が検知されて当該搬送異常が検知されたことが通知されると(S180でYes)、CPU11は、検知された搬送異常が、加速区間又は減速区間において停止異常が発生したことにより検知された搬送異常であるか否かを判断し(S280)、この異常の発生により検知された搬送異常である場合には(S280でYes)、検知された搬送異常が、ジャムによる搬送異常ではなく、その他の理由による負荷増大を原因とした搬送異常であると判定して、S300に移行する。一方、キャリッジ制御部33により検知された搬送異常が、加速区間又は減速区間において停止異常が発生したことにより検知された搬送異常ではない場合には(S280でNo)、S290に移行する。
【0049】
S290に移行すると、CPU11は、搬送異常が検知された今回のキャリッジ搬送についての情報としてキャリッジ制御部33から搬送開始位置Xs及び異常発生位置X0の情報を取得する。そして、この搬送開始位置Xs及び異常発生位置X0に基づき、今回のS170での処理によるキャリッジ搬送でキャリッジ50が用紙通過領域の始点位置R1を跨ぐように移動したか否かを判断する(S295)。具体的には、搬送開始位置Xsと異常発生位置X0とに挟まれたキャリッジ搬送路の領域内に、用紙通過領域の始点位置R1が存在するか否かによって、キャリッジ50が用紙通過領域の始点位置R1を跨ぐように移動したか否かを判断する。そして、始点位置R1が搬送開始位置Xsと異常発生位置X0との間になくキャリッジ50が始点位置R1を跨ぐように移動していない場合には(S295でNo)、搬送異常がジャムによる搬送異常ではないと判定して、S300に移行する。一方、始点位置R1が搬送開始位置Xsと異常発生位置X0との間にありキャリッジ50が用紙通過領域の始点位置R1を跨ぐように移動している場合には(S295でYes)、搬送異常をジャムによる搬送異常と判定して、S340に移行する。
【0050】
S300に移行すると、CPU11は、搬送異常がジャムによる搬送異常ではないので、キャリッジ制御部33に指令入力して、テスト搬送動作を、キャリッジ制御部33に開始させる。尚、ここで言う「テスト搬送動作」とは、「搬送異常の検知によりキャリッジ50が停止した地点」からキャリッジ搬送方向に、キャリッジ搬送路の端点まで、キャリッジ50を搬送し、その後、キャリッジ搬送路の反対側の端点までキャリッジ50を搬送し、更に、その端点から「搬送異常の検知によりキャリッジ50が停止した地点」までキャリッジ50を搬送する動作のことを言う。「テスト搬送動作」の実行時には、キャリッジ制御部33に、キャリッジ50を、上記「1パスの画像形成動作」実行時よりも低い速度で定速搬送させる。即ち、S300では、キャリッジ50を「搬送異常の検知によりキャリッジ50が停止した地点」を基点として低速で一往復させる。CPU11は、このようなテスト搬送動作の開始後、キャリッジ制御部33により搬送異常が検知されるか、テスト搬送動作が完了するまで待機する(S310,S315)。尚、キャリッジ制御部33は、テスト搬送時においても図9に示す処理と同様の手順で搬送異常を検知するものとする。但し、一度搬送異常が検出された状態では、無理にキャリッジ50を搬送することは好ましくないため、搬送異常の検知感度については高感度に設定するのが好ましい。
【0051】
そして、搬送異常が検知されることなくテスト搬送動作が完了すると(S315でYes)、CPU11は、S320に移行し、キャリッジ制御部33に指令入力して、キャリッジ制御部33に、キャリッジ50を、異常発生位置X0よりもキャリッジ搬送方向上流に所定距離離れた再開位置まで搬送させ、当該再開位置に、キャリッジ50を配置する。尚、再開位置から異常発生位置X0までの距離は、キャリッジ50が停止状態から定速状態に移行するまでに必要十分な距離である。その後、CPU11は、印字/モータ制御部30に指令入力して、搬送異常の検知により中断された「1パス分の画像形成動作」を、印字/モータ制御部30に再開させる(S330)。具体的には、キャリッジ制御部33に、再開位置からキャリッジ50を図9に示す手順で搬送させると共に、異常発生位置X0に到達した時点で、異常発生位置X0以降のインク吐出動作を、印字制御部31を通じて記録ユニット40に実行させる。また、S330の処理後には、S180に移行する。
【0052】
一方、テスト搬送中に、キャリッジ制御部33において搬送異常が検知されると(S310でYes)、CPU11は、S317に移行し、搬送異常が発生したことをユーザに報知するための警報であって搬送異常の解消をユーザに促すための警報を、音及びメッセージの形態で、ユーザインタフェース21を通じて出力する。尚、S317では、搬送異常の種類(ジャムによる搬送異常であるか否か)についてもユーザにメッセージを通じて報知する。その後、当該印刷制御処理を終了する。
【0053】
また、CPU11は、S295でYesと判断してS340に移行すると(図5参照)、搬送異常検知時のキャリッジ搬送方向が「順方向」であるか「逆方向」であるかによって処理を切り替える。具体的に、キャリッジ搬送方向が「順方向」である場合には、S350に移行し、キャリッジ搬送方向が「逆方向」である場合には、S390に移行する。
【0054】
そして、S350に移行すると、キャリッジ制御部33に、キャリッジ50を低速でホームポジションまで後退させる処理を実行させる。この処理の開始後には、キャリッジ制御部33により搬送異常が検知されるか、キャリッジ50がホームポジションに到達することによりキャッピングが完了するまで待機する(S360,S365)。そして、搬送異常が検知されるか(S360でYes)、キャッピングが完了すると(S365でYes)、S370に移行し、S317と同様の手法で、警報を、ユーザインタフェース21を通じて出力する。具体的には、警報出力により、ジャムによる搬送異常が発生したことを報知し、ジャムの解消をユーザに促す。また、この警報出力後には、ユーザインタフェース21を通じて異常が解消した旨の操作信号がユーザから入力されるまで待機し(S380)、異常が解消した旨の操作信号がユーザから入力されると(S380でYes)、S120に移行して、画像形成動作中断時の頁についての画像形成動作を、給紙動作からやり直す。
【0055】
一方、S390に移行すると、CPU11は、キャリッジ制御部33に、キャリッジ50をフラッシング位置まで低速で後退させる処理を実行させ、この処理開始後には、キャリッジ制御部33により搬送異常が検知されるか、キャリッジ50がフラッシング位置に到達するまで待機する(S400,S405)。そして、搬送異常が検知された場合には(S400でYes)、S420に移行し、S370と同様の警報を出力した後、S430に移行する。一方、キャリッジ50がフラッシング位置に到達した場合には(S405でYes)、S410に移行し、S370と同様の警報を出力すると共に、印字制御部31に指令入力することにより、フラッシング動作を開始させる。即ち、インクが乾燥してノズル部分が詰まらないように、記録ユニット40に断続的にインク液滴をノズルから吐出させる。その後、S430に移行する。また、S430に移行すると、CPU11は、ユーザインタフェース21を通じて異常が解消した旨の操作信号がユーザから入力されるまで待機し(S430)、当該操作信号が入力されると(S430でYes)、印字制御部31に指令入力することにより、フラッシング動作を終了させる(S440)。そして、キャリッジ制御部33に、キャリッジ50をホームポジションまで搬送させた後(S450)、S120に移行し、画像形成動作中断時の頁についての画像形成動作を、給紙動作からやり直す。
【0056】
以上、本実施例の画像形成装置1について説明したが、本実施例では、キャリッジ50の搬送開始前にキャリッジ50の搬送開始位置Xsを記憶し(S500)、搬送異常の発生時には当該時点でのキャリッジ50の位置Xを異常発生位置X0として記憶する(S580)。また、キャリッジ50の搬送開始前にはキャリッジ搬送路における用紙通過領域の始点位置(キャリッジ50が用紙通過領域に外部から侵入する位置)R1を特定し、搬送異常の発生時には、搬送開始位置Xsと異常発生位置X0との間に用紙通過領域の始点位置R1が存在するか否かによって、キャリッジ50が用紙通過領域の始点位置R1を跨ぐように移動したか否かを判断する(S295)。そして、跨ぐように移動している場合には、搬送異常がキャリッジ50と用紙Pとの干渉により生じたジャムによる搬送異常であると判定して、ジャムに対応したS340以降の処理を実行し、跨ぐように移動していない場合には、搬送異常がジャムによる搬送異常ではないと判定して、S300以降の処理を実行する。また、搬送異常の発生時にはユーザインタフェース21を通じて搬送異常の種類(ジャムによる搬送異常であるか否か)を報知する(S317,S370,S410,S420)。従って、本実施例によれば、搬送開始位置Xsを考慮せずにジャムか否かを判定する従来技術と比較して、高精度に搬送異常がジャムによる搬送異常であるか否かを判定することができる。例えば、キャリッジ50が用紙Pの外部から内部に侵入するような移動をしておらず、ジャムが発生しえない環境であるにも拘らず、搬送異常がジャムによる搬送異常であると誤判定するのを防止することができる。また、本実施例によれば、高精度にジャムによる搬送異常であるか否かを判定できる結果、搬送異常が生じた際に、過剰な対応を採らなくて済む。即ち、ジャムが発生している場合には、用紙Pをユーザに取り除いてもらわないことには異常が解消しないので、ユーザの対応を待ち、ジャム以外の搬送異常(ガイド軸160の汚れ等による搬送異常)の場合には、一時的に搬送異常が生じただけで自然と異常が解消する可能性が高いので、テスト搬送して異常がなければ、キャリッジ50の搬送制御(画像形成動作)を再開することになるが、本実施例の画像形成装置1によれば、このような処理の切り替え(S300に移行するかS340に移行するかの切り替え)を、搬送異常の原因に合わせて適切に実行することができる。
【0057】
また、本実施例によれば、キャリッジ50の搬送を複数回繰返すことでキャリッジ50を往復動させて用紙Pに画像形成する際に、一回目のキャリッジ搬送では、外部装置90から申告された用紙サイズに基づいて、キャリッジ搬送路における用紙通過領域の始点位置R1を特定するが、二回目以降のキャリッジ搬送では、一回目のキャリッジ搬送で得られたメディアセンサ55による用紙エッジの検知結果に基づき、用紙サイズを特定して、用紙通過領域の始点位置R1を特定するので、ユーザから申告された用紙サイズを信用して搬送異常の種類を判定する場合よりも、高精度に搬送異常がジャムによる搬送異常であるか否かを判定することができる。
【0058】
また、本実施例では、フィードバック制御によるキャリッジ50の搬送制御時に、キャリッジの実速度Vと目標速度Vrとの偏差eが閾値Thを超えると搬送異常を検知するが、この閾値Thを、ジャムによる搬送異常が発生しやすい箇所で小さい値に設定して、ジャムによる搬送異常が発生しやすい箇所では、高感度に搬送異常を検知できるようにした。従って、ジャムの進行により記録ユニット40のノズル面が傷つくのを抑制することができる。また、ジャムによる搬送異常が発生しない箇所では検知感度を低くしているので、ガイド軸160の汚れ等による搬送負荷の些細な上昇が原因での搬送異常の検知を抑制でき、過度な搬送異常の検知により、ユーザに不満が及ぶのを抑えることができる。また、本実施例によれば、ジャムによる搬送異常が発生した場合には、記録ユニット40を後退させて、記録ユニット40をキャッピング位置又はフラッシング位置に搬送するので、ジャムによる搬送異常が発生した際に、ジャムが解消されるまで搬送異常の発生位置でキャリッジ50を停止させておく場合よりも、記録ユニット40の状態を良好に保つことができ、ノズル部分に付着したインクが固まって、ノズルが詰まってしまうのを抑制することができる。
【0059】
尚、以上に説明した実施例と「特許請求の範囲」との対応関係は、次の通りである。即ち、「特許請求の範囲」記載のキャリッジ搬送手段は、キャリッジ制御部33及びキャリッジ搬送機構により実現され、シート搬送手段は、用紙搬送制御部35及び搬送ローラ131等により実現され、異常検知手段は、キャリッジ制御部33が反転異常や停止異常や速度低下異常を検知する動作にて実現され、位置検出手段は、リニアエンコーダ65及び信号処理部34により実現され、開始位置記憶手段は、キャリッジ制御部33が実行するS500の処理により実現され、異常発生位置特定手段は、キャリッジ制御部33が実行するS580の処理により実現されている。この他、外縁位置特定手段は、CPU11がS110,S210で用紙サイズを特定し、S140,S220で用紙通過領域の始点位置R1を特定する動作により実現され、ジャム判定手段は、S290,S295の処理により実現され、画像形成手段は、S170及びS240等の処理により実現され、画像形成中断手段は、S590の処理により実現され、異常時対応手段は、S350,S390の処理により実現されている。
【0060】
また、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。例えば、本発明は、ファクシミリ装置等のその他の電子機器にも適用可能である。また、上記閾値Thは、図8(c)に示すような手法で設定されてもよい。即ち、用紙通過領域の全域を、第一の閾値Th1に設定し、非用紙通過領域の全域を、第二の閾値Th2に設定してもよい。図8(c)は、キャリッジ搬送方向が「順方向」であるときの閾値Thの設定例(変形例)を示す図である。この他、キャリッジ制御部33においては、偏差eから導出される操作量u(制御入力)が異常判定値を超えたか否かによって、搬送異常を検知してもよい。更に言えば、操作量uによる搬送異常の検知は、駆動電圧又は駆動電流によって搬送異常を検知することに等しいので、CRモータ60の駆動電圧又は駆動電流により搬送異常を検知するように、画像形成装置1を構成してもよい。また、位置制御によってキャリッジ50を搬送する場合には、目標位置と実位置との偏差eを求めて操作量uを決定することができ、この偏差e又は操作量uと閾値Thとの比較により搬送異常を検知するように、画像形成装置1を構成することができる。
【0061】
また、メディアセンサ55による用紙サイズの特定は、印字中に行わず、印字開始前に行っても良い。すなわち、用紙Pがキャリッジ50の下方を通過し画像形成開始位置まで送りだされた後に、インクを吐出させずにキャリッジ50を走査させ、メディアセンサ55によってその外縁を特定させても良い。更に、本実施形態では、S280で加減速領域にて速度異常が発生した場合には、ジャムによる搬送異常ではないと判断していたが、加減速領域においても、S290及びS295の判断を行っても良い。すなわち、記録条件によっては、キャリッジ50は加減速領域においても用紙通過領域の始点位置R1を通過することがあるため、キャリッジ50が加減速動作を行っている最中でもジャムが発生するおそれがある。従って、S280の判断を行わず、どの速度領域においても、ジャムかどうかの判断を行っても良い。また、加減速領域においても定速領域と同様に、速度異常低下を搬送異常として検知しても良い。
【符号の説明】
【0062】
1…画像形成装置、11…CPU、13…ROM、15…RAM、17…EEPROM、19…通信インタフェース、21…ユーザインタフェース、30…印字/モータ制御部、31…印字制御部、33…キャリッジ制御部、34,36,38…信号処理部、35…用紙搬送制御部、37…給紙制御部、40…記録ユニット、40a…ノズル、41,61,71,81…駆動回路、50…キャリッジ、55…メディアセンサ、60…CRモータ、65…リニアエンコーダ、70…LFモータ、75…ロータリエンコーダ、80…給紙モータ、85…ロータリエンコーダ、90…外部装置、101…給紙トレイ、110…給紙ユニット、111…給紙ローラ、131…搬送ローラ、141…排紙ローラ、155…プラテン、160…ガイド軸、170…無端ベルト、171,173…プーリー、191…キャッピング部、195…フラッシング部、P…用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向にキャリッジを搬送するキャリッジ搬送手段と、
前記主走査方向とは交差する副走査方向にシートを搬送するシート搬送手段と、
前記キャリッジの搬送異常を検知する異常検知手段と、
前記キャリッジ搬送手段によって前記キャリッジが搬送されるキャリッジ搬送路上での前記キャリッジの位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段の検出結果に基づき、停止している前記キャリッジを前記キャリッジ搬送手段が前記主走査方向に搬送する際の前記キャリッジの搬送開始位置を記憶する開始位置記憶手段と、
前記位置検出手段の検出結果に基づき、前記異常検知手段により搬送異常が検知された時点での前記キャリッジの位置である異常発生位置を特定する異常発生位置特定手段と、
前記シート搬送手段により前記副走査方向に搬送される前記シートが通過する領域に対向する前記キャリッジ搬送路の領域であるシート通過領域の外縁位置を特定する外縁位置特定手段と、
前記異常検知手段により検知された搬送異常が、前記キャリッジと前記シートとの干渉により生じたジャムによる搬送異常であるか否かを判定するジャム判定手段と、
を備え、
前記ジャム判定手段は、前記外縁位置特定手段により特定された前記外縁位置が、前記開始位置記憶手段が記憶する搬送開始位置と前記異常発生位置特定手段により特定された前記異常発生位置との間に存在する場合に、前記異常検知手段により検知された搬送異常が前記ジャムによる搬送異常であると判定すること
を特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記外縁位置特定手段は、前記シート通過領域の外縁位置として、前記シート通過領域の前記キャリッジ搬送手段によるキャリッジ搬送方向の上流側及び下流側に存在する二つの外縁の内、前記上流側に存在する外縁の位置を少なくとも特定し、
前記ジャム判定手段は、前記外縁位置特定手段により特定された前記上流側の外縁位置が、前記搬送開始位置と前記異常発生位置との間に存在する場合に、前記異常検知手段により検知された搬送異常が前記ジャムによる搬送異常であると判定すること
を特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記外縁位置特定手段は、前記シート搬送手段が搬送する前記シートのサイズ情報を取得し、当該サイズ情報に基づき、前記外縁位置を特定すること
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
前記キャリッジは、前記シートの外縁を検知可能なメディアセンサを備え、
前記外縁位置特定手段は、前記メディアセンサによる検知信号に基づき、前記外縁位置を特定すること
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の電子機器。
【請求項5】
前記キャリッジ搬送手段は、モータの駆動力によって前記キャリッジを主走査方向に搬送する構成にされ、前記キャリッジの主走査方向の実速度又は実位置と、その目標値との偏差から、前記モータに入力する駆動電圧又は駆動電流を決定することにより、前記キャリッジの主走査方向の速度又は位置を前記目標値に一致させるようにフィードバック制御して、前記キャリッジを主走査方向に搬送し、
前記異常検知手段は、前記偏差、又は、前記駆動電圧若しくは駆動電流が閾値を超えると、これを前記搬送異常として検知すること
を特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記閾値は、前記キャリッジ搬送路の各地点に対し定められており、
前記キャリッジ搬送路における前記シート通過領域内の各地点の前記閾値は、前記シート通過領域外の各地点の前記閾値よりも、小さい値に定められていること
を特徴とする請求項5記載の電子機器。
【請求項7】
前記閾値は、前記キャリッジ搬送路の各地点に対し定められており、
前記キャリッジ搬送路における前記シート通過領域の外縁に対応する地点の前記閾値は、その他の各地点の前記閾値よりも小さい値に定められていること
を特徴とする請求項5又は請求項6記載の電子機器。
【請求項8】
前記異常検知手段は、前記キャリッジ搬送手段が前記キャリッジを搬送開始位置から所定方向に搬送する際に前記キャリッジが逆方向に後退すると、これを前記キャリッジの搬送異常として検知すること
を特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項9】
前記電子機器は、
前記シートにインク液滴を吐出可能な記録ユニット、が前記キャリッジに搭載された画像形成装置であり、
画像形成指令が入力されると、前記キャリッジ搬送手段に、前記キャリッジを主走査方向に往復動させる一方、前記シート搬送手段に、前記シートを副走査方向に搬送させ、前記キャリッジが主走査方向へ移動する際には、前記記録ユニットにインク液滴を吐出させることで、前記シートに前記画像形成指令にて指定された画像を形成する画像形成手段
を備えることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の電子機器。
【請求項10】
前記異常検知手段により前記搬送異常が検知されると、前記画像形成手段による画像形成動作を中断させる画像形成中断手段と、
前記異常検知手段により前記搬送異常が検知され、且つ、前記ジャム判定手段により前記搬送異常が前記ジャムによる搬送異常であると判定されると、前記キャリッジ搬送手段に、前記キャリッジを、当該搬送異常発生時の搬送方向とは逆方向に搬送させる異常時対応手段と、
を備えること
を特徴とする請求項9記載の電子機器。
【請求項11】
前記キャリッジ搬送路の一端には、前記記録ユニットのインク液滴が吐出されるノズル部分をキャッピングするためのキャッピング部が設けられ、前記キャッピング部が設けられた端部とは反対側の端部には、前記記録ユニットのフラッシング動作により吐出されるインク液滴を蓄積するためのフラッシング部が設けられており、
前記異常時対応手段は、前記キャリッジ搬送手段に、前記キャリッジを前記逆方向に搬送させて、前記記録ユニットを前記キャッピング部又は前記フラッシング部に配置する構成にされていることを特徴とする請求項10記載の電子機器。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−888(P2012−888A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138429(P2010−138429)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】