電子源、画像表示装置、画像再生装置、配線基板、及び配線基板の製造方法
【課題】ワイヤー自体の抵抗値が経時的に変化しにくい配線基板を備えた電子源を提供することを目的とする。
【解決手段】電子源は、表面に溝を備える基板と、該溝に沿って、該溝内に少なくともその一部が配置された導電性のワイヤーと、ワイヤーと交差してワイヤー上に配置された配線と、を備えた配線基板と、配線基板上に配置され、前記導電性のワイヤーと前記配線に電気的に接続された複数の電子放出素子と、を備え、ワイヤーの表面が、ワイヤーを構成する材料の酸化物からなる被覆層で覆われている。
【解決手段】電子源は、表面に溝を備える基板と、該溝に沿って、該溝内に少なくともその一部が配置された導電性のワイヤーと、ワイヤーと交差してワイヤー上に配置された配線と、を備えた配線基板と、配線基板上に配置され、前記導電性のワイヤーと前記配線に電気的に接続された複数の電子放出素子と、を備え、ワイヤーの表面が、ワイヤーを構成する材料の酸化物からなる被覆層で覆われている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子源、画像表示装置、画像再生装置、配線基板、及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LCD(液晶ディスプレイ)やPDP(プラズマディスプレイ)、FED(電界放出型ディスプレイ)などの平板型画像表示装置(フラットパネルディスプレイ)は複数の画素を平面状に配置した表示装置である。電子放出素子を用いたフラットパネルディスプレイでは、マトリクス状に配列された複数の配線(マトリクス配線)の各交差部またはその近傍に位置する電子放出素子に選択的に電圧をかけることにより、各電子放出素子からの電子放出を制御し、画像を表示する。
【0003】
マトリクス配線は、走査信号が印加される走査配線と、変調信号が印加される信号配線とで構成される。近年、より高精細な画像を表示することのできるディスプレイの需要が大きい。そのため、配線はより細線化する必要がある一方で、細線化による配線の抵抗の増加を避けるために配線の膜厚を大きくする必要があった。また、より簡易に作成することのできるディスプレイが求められている。
【0004】
このような要求に対する解決策の一つとして、特許文献1及び特許文献2は、基板表面に設けた溝内に、予め用意した金属のワイヤーを埋め込み、これを配線に用いることを開示している。
【特許文献1】特開2005−216639号公報
【特許文献2】特開2004−342547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に開示される方法では、ワイヤー自体の抵抗値が経時的に変化する場合があった。例えば、経時変化の例としては、製造プロセス中や駆動中の雰囲気に残存するガスとワイヤー材料とが反応することによるワイヤー自体の抵抗値の変化が挙げられる。特に、製造プロセスでは昇温降温の繰返し行われることにより、ワイヤー自体の抵抗値が変化する場合がある。また、走査線と信号線との間を絶縁する為にガラスペーストの絶縁材料を印刷法などにより走査線と信号線との間に形成する必要があるため、コストが上昇するといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の電子源は上記課題を解決するために成されたものであり、表面に溝を備える基板と、該溝に沿って該溝内に配置された、金属を含む導電性のワイヤーと、ワイヤーと交差してワイヤー上に配置された配線と、を備えた配線基板と、配線基板上に配置され、前記導電性のワイヤーと前記配線とに電気的に接続された複数の電子放出素子と、を備え、ワイヤーが、ワイヤーを構成する金属の酸化物層で構成されている、ことを特徴とする。
【0007】
(2)また、本発明は、電子源と、該電子源から放出された電子が照射されることで発光する発光体とを備える画像表示装置であって、電子源が(1)に記載の電子源であることを特徴とする。
【0008】
(3)また、本発明は、放送信号および電気通信回線を経由した信号の少なくとも一方を受信する受信装置と該受信装置に接続した画像表示装置とを少なくとも備える画像再生装置であって、画像表示装置が(2)に記載の画像表示装置であることを特徴とする。
【0009】
(4)また、本発明は、表面に溝を備える基板と、該溝に沿って該溝内に配置された、金属を含む導電性のワイヤーと、ワイヤーと交差してワイヤー上に配置された配線と、を備えた配線基板であって、ワイヤーが、ワイヤーを構成する材料の酸化物層を備えており、酸化物層が、少なくとも配線とワイヤーとの間およびワイヤーと溝の内壁との間に配置されている、ことを特徴とする。
【0010】
(5)また、本発明の配線基板の製造方法は、表面に溝を備える基板と、該溝に沿って、該溝内に少なくともその一部が配置された導電性のワイヤーと、を備えた配線基板の製造方法であって、溝内に、その表面を予め酸化させた金属性のワイヤーを配置する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、抵抗値変動などが抑えられ、電気的に安定な簡易な構成の配線基板及びその製造方法で作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に図面を参照して、本発明に好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。ただし、本実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
以下に記す実施形態では、配線基板上に電子放出素子として表面伝導型電子放出素子を配置した例(電子源基板の例)を挙げて、本発明について説明する。表面伝導型電子放出素子は、間隙を備える導電性膜と当該導電性膜の両端に接続された一対の電極とから構成される。しかしながら、電子源に用いる電子放出素子としては、電界放出型電子放出素子、MIM型電子放出素子など、少なくとも2つの電極を備える電子放出素子であれば好ましく適用することができる。また、本発明の配線基板(配線を備えた基板)は、液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイやプラズマディスプレイなど、様々なディスプレイの基板に用いることができる。即ち、図7などに示した、マトリクス状に配列された配線(配線7と酸化物被膜8で覆われたワイヤー3とで構成される)に、上述した電子放出素子や、EL素子や、TFTなどの、少なくとも2つの端子を備える機能素子(電子デバイス)を接続すれば、ディスプレイなどの様々な電子機器を構成することができる。
【0014】
本実施形態において、表面が酸化物からなる酸化被膜(本発明の「被覆層」に相当)で覆われたワイヤーを備えた配線基板を、電子源に適用した例について説明する。尚、本発明における、酸化被膜で覆われたワイヤーは、ワイヤーとは別の部材としての酸化被膜を表面に備えたワイヤーや、表面を酸化したワイヤー(ワイヤー自身が表面酸化被膜を備えるワイヤー)を適用することができる。尚、ワイヤーの表面を酸化することで構成したワイヤーでは、ワイヤーの表面からワイヤーの中心に向かってその酸化度合いが徐々に変化した形態となり易い。そのため、ワイヤー自身が表面酸化被膜を備える形態では、「ワイヤーと酸化被膜とが明確な境界を備えていない形態」あるいは「表面酸化膜を備えたワイヤー」をも含むものである。尚、「ワイヤー」とは、基板上に配線材料をスパッタ法や塗布法などで堆積させて、直接、基板上で形作る(成型する)配線ではなく、予め、別のところ(基板上以外の場所)で既に成型された配線を指し、典型的には針金のような部材を指す。
【0015】
<<実施形態1>>
図7は本実施形態におけるマトリクス配線構造の平面模式図である。尚、ここで示す例では、配線基板上に電子放出素子を設けている。図8は、図7のA-A線におけるマトリ
クス配線構造の断面模式図であり、図9は、図7のB-B線におけるマトリクス配線構造
の断面模式図である。
【0016】
<配線基板>
本発明における配線基板は、少なくとも、溝2を備える基板1と、溝2に沿って溝2内に少なくともその一部が配置された、金属を含む導電性のワイヤー3であって、当該ワイヤーがワイヤーを構成する金属の酸化物層を表面に備えるものである。そして、以下に説明する態様では、さらに、ワイヤー3の酸化被膜8の一部に設けられた開口部4と、開口部4を通してワイヤーと接続された第1の電極5と、ワイヤー3上に、ワイヤーと交差するように配置された配線7と、配線7と接続する第2の電極10とから構成される。
【0017】
基板1の材料は、ガラスが好ましい。金属を含むワイヤー3は、好ましくは、金属を主成分とするワイヤーである。金属としては、Cu、Al、Niのいずれかから選択される。更に好ましくは、いわゆる無酸素銅のワイヤー3で構成される。無酸素銅であれば、酸化度合いを制御することができる。ワイヤー3の表面は、ワイヤー3を構成する材料の酸化物からなる酸化被膜8で覆われている。酸化被膜8は、ワイヤー3の表面に設けられた絶縁層であり、ワイヤー3の一部を酸化することで構成された酸化層であることが好ましい。酸化被膜8は、少なくとも配線7とワイヤー3との間およびワイヤー3と溝2の内壁との間に配置されている。ワイヤー3を酸化皮膜で覆うことにより、例えば、製造プロセス中や駆動中の雰囲気に残存するガスとワイヤー材料とが反応することによるワイヤー自体の抵抗値の変化を防ぐことができる。金属を含むワイヤー3の形状は、断面が円形や矩形のものが用いられるが、特に限定されない。断面が円形のワイヤーは、入手が容易で、一般的にICなどのボンディング材料として市販されている線材や、エナメル線用のものを使用することができるので特に好ましく適用することができる。所定の寸法のワイヤーを用いたい場合には、公知の延伸機によって作製されたワイヤーを用いればよい。
【0018】
第1の電極5はワイヤー3と一対の電極である第2の電極10の一方とを接続するための電極(接続パッド)である。第1の電極5はワイヤー3の表面のうち、酸化被膜8で覆われていない部分である研磨部4(接続部)と接続される。第2の電極10は表面伝導型電子放出素子を構成するための一対の電極であり、溝2の近傍に位置し、基板1の表面上に配置されている。
【0019】
配線7は、ワイヤー3と交差してワイヤー3上に配置される。複数の配線7と複数のワイヤー3とでマトリクス配線を構成する場合には、例えば、図12に示すように、各々のX方向配線72(ワイヤー3)上に複数のY方向配線73が配置されることになる。配線7は、基板1の表面上に配置された第2の電極10の他方の一部を覆うことで、第2の電極10と接続される。配線7とワイヤー3との間には、ワイヤー3表面に設けられた絶縁層(酸化被膜8)があるので、電圧にもよるが、配線7とワイヤー3との絶縁が保つことが可能である。
【0020】
ワイヤー3の表面のうち、酸化被膜8で覆われていない部分4は、ワイヤー3の表面に酸化被膜8を形成した後、その一部を研磨するなどして酸化被膜8の一部を除去することで形成することができる。酸化被膜8で覆われていない部分4の形成方法としては、上記研磨に限らず、公知のエッチング方法など特に限定されるものではない。
【0021】
ワイヤー3は、溝2内に完全に埋め込まれた形態(即ち、基板表面とワイヤー3の上端が揃っている形態あるいは基板表面よりもワイヤー3の上端が低い位置にある形態)が好ましい。換言すれば、ワイヤー3の直径が、溝2の深さ以下であることが好ましい。しか
しながら、若干、溝2内からワイヤー3の上端が突出した形態(即ち、基板表面よりもワイヤー3の上端が高い位置にある形態)であってもよい。換言すれば、ワイヤー3の直径が、溝2の深さよりも若干大きくてもよい。
【0022】
また、本発明の配線基板では、図1〜図6に示す様に、図7〜図9に示した構成に加え、酸化シリコン層9(絶縁層)を、ワイヤー3上(ワイヤー3と配線7との間)に配置することもできる。これにより、配線7とワイヤー3との絶縁耐圧を向上することができる。
【0023】
<<実施形態2>>
図1は本実施形態におけるマトリクス配線構造の平面模式図である。図2は、図1のA-A線におけるマトリクス配線構造の断面模式図であり、図2は、図1のB-B線におけるマトリクス配線構造の断面模式図である。
【0024】
図1〜図3で示した形態では、酸化シリコン層9が、ワイヤー3および溝2の周囲の基板1の表面に配置された形態である。そして、表面伝導型電子放出素子が酸化シリコン層9の上に配置されている。このような形態にすれば、ワイヤー3の基板1への密着力の向上と表面伝導型電子放出素子の電子放出特性への基板1の構成物質の拡散による影響の緩和とを行うことができる。また、配線7とワイヤー3との絶縁耐圧を向上することができる。
【0025】
<<実施形態3>>
図4は本実施形態におけるマトリクス配線構造の平面模式図である。図5は、図4のA-A線におけるマトリクス配線構造の断面模式図であり、図6は、図4のB-B線におけるマトリクス配線構造の断面模式図である。
【0026】
図4〜図6に示した形態では、図1〜図3に示した形態に比べて、酸化シリコン層9の配置位置が、実質的に溝2上に収めた形態である。この形態でも、ワイヤー3を基板1に固着することができると同時に、配線7とワイヤー3との絶縁耐圧を向上することができる。
【0027】
<<変形例>>
尚、ここで示した形態では、1つのワイヤ−3の左右に電子放出素子を配置した形態を示したが、電子放出素子は片側にのみ配置する形態とすることもできる。
【0028】
<電子源>
また、図1、図4、図7に示すユニットを、複数、基板1上に行列状に設けることで、マトリクス状に配列された複数の電子放出素子を備えた電子源を構成することができる。
【0029】
<画像表示装置>
図12は、マトリクス状に電子放出素子を配列した電子源を備えた画像表示装置であるフラットパネルディスプレイの一例である。X方向配線72がワイヤー3に相当し、Y方向配線73が上述した配線7に相当する。一対の電極12、13が、上述した電子放出素子を構成する第2の電極10に相当する。また15は、上述した間隙12を備える導電性膜11である。一対の電極12、13と間隙12を備える導電性膜15とで、電子放出素子が構成される。リアプレート71が上述した基板1に相当する。86はフェースプレートであり、ガラス基板83の表面には電子線が照射されることで発光する発光体膜84(本発明の「発光体」に相当)と、アノード電極85とが設けられている。リアプレート71とフェースプレート86との間に支持枠82が設けられている。リアプレート71とフェースプレート86と支持枠82とで、内部が真空に保持された容器88が構成される。
X方向配線72のそれぞれには端子(Dox1〜Doxm)が接続され、同様にY方向配線73のそれぞれには端子(Doy1〜Doym)が接続されている。アノード電極85
には高圧電源と接続される端子87が接続されている。図13に示す外容器(ディスプレイパネル88)と駆動回路とでフラットパネルディスプレイ101が構成される。
【0030】
<画像再生装置>
また、図12を用いて説明した本実施形態のフラットパネルディスプレイ101と放送信号および電気通信回線を経由した信号の少なくとも一方を受信する受信装置とを用いて画像再生装置を構成することができる。
【0031】
具体的には、受信装置と、受信した信号を選曲するチューナーと、選曲した信号に含まれる信号を、ディスプレイパネル88に出力してスクリーンに表示または再生させる。上記受信装置は、テレビジョン放送などの放送信号を受信することができる。また、上記選曲した信号に含まれる信号としては、映像情報、文字情報および音声情報の少なくとも1つを指す。尚、「スクリーン」は、図12で示したディスプレイパネル88においては、発光体膜84に相当すると言うことができる。この構成によりテレビジョンなどの画像再生装置を構成することができる。勿論、放送信号がエンコードされている場合には、本実施形態の画像再生装置はデコーダーも含むことができる。また、音声信号については、別途設けたスピーカーなどの音声再生手段に出力して、ディスプレイパネル88に表示される映像情報や文字情報と同期させて再生する。
【0032】
また、映像情報または文字情報をディスプレイパネル88に出力してスクリーンに表示および/あるいは再生させる方法としては、例えば以下のように行うことができる。まず、受信した映像情報や文字情報から、ディスプレイパネル88の各画素に対応した画像信号を生成する。そして生成した画像信号を、ディスプレイパネル88(図13のC11)の駆動回路(図13のC12)に入力する。そして、駆動回路に入力された画像信号に基づいて、駆動回路からディスプレイパネル88内の各電子放出素子に印加する電圧を制御して、画像を表示する。
【0033】
<テレビジョン装置>
図13は、画像再生装置の一例であるテレビジョン装置のブロック図である。受信回路(C20)は、チューナーやデコーダ等からなり、衛星放送や地上波等のテレビ信号や、無線回線網、電話回線網、ディジタル回線網、アナログ回線網、TCP/IPプロトコルで結ばれたインターネット等の電気通信回を介したデータ放送等を受信し、復号化した映像データをI/F部(インターフェース部)(C30)に出力する。I/F部(C30)は、映像データを表示装置の表示フォーマットに変換して上記ディスプレイパネル(C11)に画像データを出力する。画像表示装置(C10)は、ディスプレイパネル(C11)、駆動回路(C12)及び制御回路(C13)を含む。制御回路は、入力した画像データに表示パネルに適した補正処理等の画像処理を施すともに、駆動回路(C12)に画像データ及び各種制御信号を出力する。駆動回路(C12)は、入力された画像データに基づいて、ディスプレイパネル(C11)の各配線7(図16のDox1〜Doxm、Doy1〜Doyn参照)に駆動信号を出力し、テレビ映像が表示される。受信回路(C20)とI/F部(C30)は、セットトップボックス(STB)として画像表示装置(C10)とは別の筐体に収められていてもよいし、また画像表示装置(C10)と同一の筐体に収められていてもよい。
【0034】
また、インターフェースには、プリンター、デジタルビデオカメラ、デジタルカメラ、ハードディスクドライブ(HDD)、デジタルビデオディスク(DVD)などの画像記録装置や画像出力装置に接続することができる構成とすることもできる。そして、このようにすれば、画像記録装置に記録された画像をディスプレイパネル(C11)に表示させる
こともできる。また、ディスプレイパネル(C11)に表示させた画像を、必要に応じて加工し、画像出力装置に出力させることもできる画像再生装置(例えば、テレビジョン)を構成することができる。
【0035】
ここで述べた画像再生装置の構成は、一例であり、本発明の技術思想に基づいて種々の変形が可能である。また、本発明の画像再生装置は、テレビ会議システムやコンピュータ等のシステムと接続することで、様々な画像再生装置を構成することができる。
【0036】
<配線基板及び電子源の製造方法>
次に、本実施形態の基板1の製造方法について図11を用いてその一例を以下に説明する。
【0037】
(工程1)
まず、基板1を用意し、基板1の表面上に感光性のレジスト21を積層する(図11(A)、図11(B))。
【0038】
レジスト21としては、ドライフィルムレジスト(DFR)、あるいは、液体レジストを用いる。特に、ドライフィルレジストを用いるのが好ましい。
【0039】
(工程2)
ついで、溝2を形成する部分のみが露出するように、フォトグラフィー法により、レジスト21を露光、現像する(図11(C)、図11(D))。
【0040】
(工程3)
そして、露出した基板1の表面(溝2を形成する部分)に溝2を形成する(図11(E))。
【0041】
溝2の形成方法としては、ウエットエッチングやドライエッチングなど公知の手法を用いることができるが、サンドブラスト法を用いることが好ましい。
【0042】
(工程4)
次いで、溝2内に、溝2の幅よりも小さい直径を備える導電性のワイヤー3を配設する(図11(F))。
【0043】
ワイヤー3としては、金属ワイヤーを用いることができる。金属としては好ましくはAl、Cu、Niのいずれかを用いる。Cuワイヤーとしては酸化度合いが制御できる無酸素銅ワイヤーを用いるのが好ましい。
【0044】
(工程5)
そして、好ましくは、少なくとも溝2内に配置されたワイヤー3と溝2の周囲の基板1の表面とを覆うように酸化シリコン(典型的にはSiO2)からなる酸化シリコン層9を設ける(図11(F))。
【0045】
酸化シリコン層9は、例えば、シリカゾルをスリットコーターで塗布し、酸素雰囲気中で焼成することで形成することができる。尚、この工程5は省略することもできる。
【0046】
(工程6)
次いで、レジスト21を剥離する。
【0047】
尚、本工程6は、工程3(図11(E))と工程4(図11(F))との間に行っても
よい。即ち、レジスト21を除去してから、溝2内にワイヤー3を配設しても良い。
【0048】
また、レジスト21の除去を工程3と工程4との間に行った場合には、基板1の全面に、酸化シリコン層9を設けることもできる。特に、表面伝導型電子放出素子を基板1上に設ける場合には、基板1からのアルカリ成分の拡散を防ぐために、酸化シリコン層9を、基板1の全面に設けることが好ましい(図10(G)を参照)。
【0049】
(工程7)
次いで、一対の電極である第2の電極10を基板1の表面上に設ける(図11(H))。
【0050】
第2の電極10は、例えば、第2の電極10を構成する金属を含む樹脂膜を所定のパターンで基板1の表面上に設け、これを酸素雰囲気中で加熱焼成することで形成することができる。第2の電極10を構成する金属としては、例えば白金を用いることができる。上記酸素雰囲気中での焼成工程により、ワイヤー3の表面に酸化被膜8を形成することができる。
【0051】
尚、ここでは、第2の電極10を形成する工程において、同時に、酸化被膜8を形成したが、酸化被膜8の形成は、本工程で行うものに限定されるものではない。即ち、別の工程で、ワイヤー3の表面に酸化被膜8を設けることもできる。
【0052】
例えば、予め酸化被膜8を供えたワイヤー3を用意しておき、これを、工程4(図11(F))で溝2内に配設してもよい。このようにすれば、本工程7において、第2の電極10の形成方法は特に制限されない。あるいは、また、酸化シリコン層9を設ける場合には、工程5の焼成工程を使って、ワイヤー3の表面に所定の厚みの酸化被膜8を設けることもできる。
【0053】
(工程8)
その後、ワイヤー3と電極10とを接続するため、部分研磨にて、酸化被膜8の一部を除去してワイヤー3の表面の一部(接続部)を露出させる(研磨部4の形成)。
ここでは、接続部である研磨部4を研磨することで形成したが、この方法に限定されるものではない。例えば、ワイヤー3の研磨部4に相当する箇所を予め保護層で覆っておき、上述した酸化被膜8を形成した後に、保護層を除去する方法などを採用することはできる。
【0054】
(工程9)
次に配線7と第1の電極5(接続電極)とを形成することで、本発明のマトリクス配線構造を形成する。
【0055】
配線7および第1の電極5の製造方法は特に限定されるものではないが、安価に簡易に形成するには、例えば、導電性ペーストを印刷法により所定の箇所に印刷し、焼成する方法を採用することができる。
【0056】
以上の工程により、ワイヤー3と配線7の交差部の絶縁性が確保され、簡易な構成であり、低抵抗であり、基板1表面から配線7が突出することを抑制したマトリクス配線を形成することができる。
【0057】
この後、表面伝導型電子放出素子を形成するために、一対の電極間に導電性膜11を設け、その後、配線7とワイヤー3とを介して公知のフォーミング工程や活性化工程などの通電工程を行う。このようにすることで、高精細で、特性バラツキが少なく、放出される
電子軌道の変動が少ない良好な電子源を形成することができる。良好な電子源を形成できる要因の一つには、低抵抗であるワイヤーを用いることで、各電子放出素子に供給する電圧のバラツキを少なくすることができる。
【0058】
また、別の要因としては、基板1に設けた溝2内にワイヤー3を配設することで、高精度な配線7を作れ、また、配線7の上端と基板1の表面との距離を抑制できるので、放出される電子の軌道に対する配線7の影響を抑制することができる。尚、本実施形態に適用することのできる電子放出素子としては、カーボンナノチューブなどのカーボンファイバーを用いた電界放出型電子放出素子や、MIM型電子放出素子などを用いることができる。
【0059】
<実施例>
以下に本発明の実施例を示す。基板1をガラス基板1として、以下説明する。
【0060】
<実施例1>
図1〜図3に示したワイヤー埋め込みマトリクス配線基板を図11の工程フローで形成した。
【0061】
まず、ガラス基板1を用い、ガラス基板1上にドライフィルムレジストを積層し、フォトグラフィー法により、溝2を形成部分のみのレジスト21を溶解し、次いでサンドブラスト法を用いて幅約110μm深さ約110μmの溝2を形成した(図10(A)〜図10(E))。
【0062】
溝形成法としては、サンドブラスト法やウエットエッチングが一般的であるが、これらに限定されるものではない。その後、ドライフィルムレジストを剥離し、本例においては、溝2形成後に、ガラス基板1の全面に、酸化シリコン層9としてSiO2膜をスパッタリング法で成膜した。SiO2成膜は該パッシベーション膜の上に形成しても、パッシベーション層単体でも構わない。
【0063】
次いで、溝2内に直径105ミクロンの銅製のワイヤー3を配設した。Cuワイヤーは酸化度合いが制御できる無酸素銅ワイヤーを用いるのが好ましい。
【0064】
次に、ガラス基板1、溝2及び、配置されたワイヤー3を覆うようにシリカコート材である酸化シリコン層9をスリットコーターで塗布し、大気雰囲気中において250℃で仮焼成した。次いで、500℃で大気中焼成して白金製の第2の電極10を得るとともに、ワイヤー表面に2ミクロンの酸化被膜8を形成させ、覆っているシリカコート材とで3ミクロンの絶縁層を形成した。
【0065】
その後、ワイヤー3と第2の電極10のコンタクト部分を作製するため、部分研磨にて接続部のみ通電が可能なように表面被膜を一部除外した。
【0066】
次にAgペーストを用いて配線7を幅50ミクロン、膜厚5ミクロンで印刷法を用いて形成すると共に、第2の電極10とワイヤー3とを接続する接続パット5を印刷し、500℃で焼成を行い、配線基板を完成させた。その結果、ワイヤー3と配線7との交差部において、絶縁が確保されていることを確認した。
【0067】
<実施例2>
溝2の形成、ドライフィルムレジストの剥離(図10(A)〜図10(E))まで実施例1と同様に行う。次に、あらかじめ大気雰囲気中で加熱することで、表面に3ミクロンの酸化被膜8を形成したワイヤー3を溝2内に配設した。そして、ガラス基板1、溝2及
び、配置されたワイヤー3を覆うようにシリカ系コート材である酸化シリコン層9をスリットコーターで2ミクロン塗布し、大気雰囲気中において仮焼成した。次いで、500℃で大気焼成して白金製の第2の電極10を得た。表面酸化膜8とシリカコート層9とで5ミクロンの絶縁層を形成した。次に、Agペーストを用いて配線7を印刷法を用いて形成すると共に、第2の電極10とワイヤー3との接続用の接続パットである第1の電極5を同時印刷し、500℃で焼成を行い、マトリクス基板を完成させた。その結果、ワイヤー3と配線7との交差部において、絶縁が確保されていることを確認した。
【0068】
<実施例3>
図4〜図6に示したマトリクス配線を備える配線基板を図11の工程フローで形成した。
【0069】
溝2形成まで実施例1と同様に行い、ドライフィルムレジストを残したまま、ワイヤー3を溝2内に配設した(図11(F))。次に、溝2及び、配置されたワイヤー3を覆うようにシリカ系コート材である酸化シリコン層9をスリットコーターで2ミクロン塗布し、大気雰囲気中において250℃で仮焼成した。その後ドライフィルムレジストを剥離した(図11(G))。
【0070】
次いで、有機白金膜を500℃で大気焼成して白金製の第2の電極10を得ると共に、ワイヤー3表面に2ミクロンの酸化被膜8を形成させた(図11(H))。酸化被膜8と、覆っている酸化シリコン9とで4ミクロンの絶縁層を形成した。
【0071】
次に、Agペーストを用いて配線7を印刷法を用いて形成すると共に、第2の電極10とワイヤー3との接続用の第1の電極5を同時印刷し、500℃で焼成を行い、配線基板を完成させた。その結果、ワイヤー3と配線7の交差部において、絶縁が確保されていることを確認した。
【0072】
<実施例4>
図7〜図9に示したマトリクス配線を備える基板1を形成した。
【0073】
実施例1と同様に溝2を形成し、その後、第2の電極10を形成した。次に、ワイヤー3の配設まで行った後、スクリーン印刷法を用いて第2の電極10とワイヤー3との接続用の第1の電極5を印刷し、500℃で焼成を行い、第1の電極5でワイヤー3のガラス基板1への固定を行うと共に、ワイヤー3の表面に2ミクロンの酸化被膜8を形成した。
【0074】
次にAgペーストを用いて配線7を印刷法を用いて形成し、500℃で焼成を行い、マトリクス基板を完成させた。その結果、ワイヤー3と配線7との交差部において、絶縁が確保されていることを確認した。
【0075】
また、上記各実施例で形成した配線基板を用いて、第2の電極10間に導電性膜11を設けた後に、配線7とワイヤー3を介して導電性膜11に通電することで公知のフォーミング工程および活性化工程を行って表面伝導型電子放出素子を形成した。その後、図12に示す画像表示装置を形成したところ、高精細で均一性の高い良好な画像を表示することができた。
【0076】
以上説明したように、本実施例に従い大気焼成による酸化を利用した絶縁層形成による配線基板を作製するならば、材料、プロセス面からローコストで、かつ、高精細なマトリクス配線構造を形成することが可能であり、極めて良好なディスプレイパネルを形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本実施形態におけるマトリクス配線構造の平面模式図である。
【図2】図1に示すマトリクス配線構造の断面模式図である。
【図3】図1に示すマトリクス配線構造の断面模式図である。
【図4】本実施形態における他のマトリクス配線構造の平面模式図である。
【図5】図4に示すマトリクス配線構造の断面模式図である。
【図6】図4に示すマトリクス配線構造の断面模式図である。
【図7】本実施形態における他のマトリクス配線構造の平面模式図である。
【図8】図7に示すマトリクス配線構造の断面模式図である。
【図9】図7に示すマトリクス配線構造の断面模式図である。
【図10】本実施形態におけるマトリクス配線構造の工程図である。
【図11】本実施形態におけるマトリクス配線構造の工程図である。
【図12】本実施形態における画像表示装置の模式図である。
【図13】本実施形態におけるテレビジョン装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0078】
1 基板(ガラス基板)
2 溝
3 ワイヤー
4 研磨部(接続部)
5 第1の電極
7 配線
8 酸化被膜(絶縁層)
9 酸化シリコン層(絶縁層)
10 第2の電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子源、画像表示装置、画像再生装置、配線基板、及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LCD(液晶ディスプレイ)やPDP(プラズマディスプレイ)、FED(電界放出型ディスプレイ)などの平板型画像表示装置(フラットパネルディスプレイ)は複数の画素を平面状に配置した表示装置である。電子放出素子を用いたフラットパネルディスプレイでは、マトリクス状に配列された複数の配線(マトリクス配線)の各交差部またはその近傍に位置する電子放出素子に選択的に電圧をかけることにより、各電子放出素子からの電子放出を制御し、画像を表示する。
【0003】
マトリクス配線は、走査信号が印加される走査配線と、変調信号が印加される信号配線とで構成される。近年、より高精細な画像を表示することのできるディスプレイの需要が大きい。そのため、配線はより細線化する必要がある一方で、細線化による配線の抵抗の増加を避けるために配線の膜厚を大きくする必要があった。また、より簡易に作成することのできるディスプレイが求められている。
【0004】
このような要求に対する解決策の一つとして、特許文献1及び特許文献2は、基板表面に設けた溝内に、予め用意した金属のワイヤーを埋め込み、これを配線に用いることを開示している。
【特許文献1】特開2005−216639号公報
【特許文献2】特開2004−342547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に開示される方法では、ワイヤー自体の抵抗値が経時的に変化する場合があった。例えば、経時変化の例としては、製造プロセス中や駆動中の雰囲気に残存するガスとワイヤー材料とが反応することによるワイヤー自体の抵抗値の変化が挙げられる。特に、製造プロセスでは昇温降温の繰返し行われることにより、ワイヤー自体の抵抗値が変化する場合がある。また、走査線と信号線との間を絶縁する為にガラスペーストの絶縁材料を印刷法などにより走査線と信号線との間に形成する必要があるため、コストが上昇するといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の電子源は上記課題を解決するために成されたものであり、表面に溝を備える基板と、該溝に沿って該溝内に配置された、金属を含む導電性のワイヤーと、ワイヤーと交差してワイヤー上に配置された配線と、を備えた配線基板と、配線基板上に配置され、前記導電性のワイヤーと前記配線とに電気的に接続された複数の電子放出素子と、を備え、ワイヤーが、ワイヤーを構成する金属の酸化物層で構成されている、ことを特徴とする。
【0007】
(2)また、本発明は、電子源と、該電子源から放出された電子が照射されることで発光する発光体とを備える画像表示装置であって、電子源が(1)に記載の電子源であることを特徴とする。
【0008】
(3)また、本発明は、放送信号および電気通信回線を経由した信号の少なくとも一方を受信する受信装置と該受信装置に接続した画像表示装置とを少なくとも備える画像再生装置であって、画像表示装置が(2)に記載の画像表示装置であることを特徴とする。
【0009】
(4)また、本発明は、表面に溝を備える基板と、該溝に沿って該溝内に配置された、金属を含む導電性のワイヤーと、ワイヤーと交差してワイヤー上に配置された配線と、を備えた配線基板であって、ワイヤーが、ワイヤーを構成する材料の酸化物層を備えており、酸化物層が、少なくとも配線とワイヤーとの間およびワイヤーと溝の内壁との間に配置されている、ことを特徴とする。
【0010】
(5)また、本発明の配線基板の製造方法は、表面に溝を備える基板と、該溝に沿って、該溝内に少なくともその一部が配置された導電性のワイヤーと、を備えた配線基板の製造方法であって、溝内に、その表面を予め酸化させた金属性のワイヤーを配置する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、抵抗値変動などが抑えられ、電気的に安定な簡易な構成の配線基板及びその製造方法で作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に図面を参照して、本発明に好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。ただし、本実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
以下に記す実施形態では、配線基板上に電子放出素子として表面伝導型電子放出素子を配置した例(電子源基板の例)を挙げて、本発明について説明する。表面伝導型電子放出素子は、間隙を備える導電性膜と当該導電性膜の両端に接続された一対の電極とから構成される。しかしながら、電子源に用いる電子放出素子としては、電界放出型電子放出素子、MIM型電子放出素子など、少なくとも2つの電極を備える電子放出素子であれば好ましく適用することができる。また、本発明の配線基板(配線を備えた基板)は、液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイやプラズマディスプレイなど、様々なディスプレイの基板に用いることができる。即ち、図7などに示した、マトリクス状に配列された配線(配線7と酸化物被膜8で覆われたワイヤー3とで構成される)に、上述した電子放出素子や、EL素子や、TFTなどの、少なくとも2つの端子を備える機能素子(電子デバイス)を接続すれば、ディスプレイなどの様々な電子機器を構成することができる。
【0014】
本実施形態において、表面が酸化物からなる酸化被膜(本発明の「被覆層」に相当)で覆われたワイヤーを備えた配線基板を、電子源に適用した例について説明する。尚、本発明における、酸化被膜で覆われたワイヤーは、ワイヤーとは別の部材としての酸化被膜を表面に備えたワイヤーや、表面を酸化したワイヤー(ワイヤー自身が表面酸化被膜を備えるワイヤー)を適用することができる。尚、ワイヤーの表面を酸化することで構成したワイヤーでは、ワイヤーの表面からワイヤーの中心に向かってその酸化度合いが徐々に変化した形態となり易い。そのため、ワイヤー自身が表面酸化被膜を備える形態では、「ワイヤーと酸化被膜とが明確な境界を備えていない形態」あるいは「表面酸化膜を備えたワイヤー」をも含むものである。尚、「ワイヤー」とは、基板上に配線材料をスパッタ法や塗布法などで堆積させて、直接、基板上で形作る(成型する)配線ではなく、予め、別のところ(基板上以外の場所)で既に成型された配線を指し、典型的には針金のような部材を指す。
【0015】
<<実施形態1>>
図7は本実施形態におけるマトリクス配線構造の平面模式図である。尚、ここで示す例では、配線基板上に電子放出素子を設けている。図8は、図7のA-A線におけるマトリ
クス配線構造の断面模式図であり、図9は、図7のB-B線におけるマトリクス配線構造
の断面模式図である。
【0016】
<配線基板>
本発明における配線基板は、少なくとも、溝2を備える基板1と、溝2に沿って溝2内に少なくともその一部が配置された、金属を含む導電性のワイヤー3であって、当該ワイヤーがワイヤーを構成する金属の酸化物層を表面に備えるものである。そして、以下に説明する態様では、さらに、ワイヤー3の酸化被膜8の一部に設けられた開口部4と、開口部4を通してワイヤーと接続された第1の電極5と、ワイヤー3上に、ワイヤーと交差するように配置された配線7と、配線7と接続する第2の電極10とから構成される。
【0017】
基板1の材料は、ガラスが好ましい。金属を含むワイヤー3は、好ましくは、金属を主成分とするワイヤーである。金属としては、Cu、Al、Niのいずれかから選択される。更に好ましくは、いわゆる無酸素銅のワイヤー3で構成される。無酸素銅であれば、酸化度合いを制御することができる。ワイヤー3の表面は、ワイヤー3を構成する材料の酸化物からなる酸化被膜8で覆われている。酸化被膜8は、ワイヤー3の表面に設けられた絶縁層であり、ワイヤー3の一部を酸化することで構成された酸化層であることが好ましい。酸化被膜8は、少なくとも配線7とワイヤー3との間およびワイヤー3と溝2の内壁との間に配置されている。ワイヤー3を酸化皮膜で覆うことにより、例えば、製造プロセス中や駆動中の雰囲気に残存するガスとワイヤー材料とが反応することによるワイヤー自体の抵抗値の変化を防ぐことができる。金属を含むワイヤー3の形状は、断面が円形や矩形のものが用いられるが、特に限定されない。断面が円形のワイヤーは、入手が容易で、一般的にICなどのボンディング材料として市販されている線材や、エナメル線用のものを使用することができるので特に好ましく適用することができる。所定の寸法のワイヤーを用いたい場合には、公知の延伸機によって作製されたワイヤーを用いればよい。
【0018】
第1の電極5はワイヤー3と一対の電極である第2の電極10の一方とを接続するための電極(接続パッド)である。第1の電極5はワイヤー3の表面のうち、酸化被膜8で覆われていない部分である研磨部4(接続部)と接続される。第2の電極10は表面伝導型電子放出素子を構成するための一対の電極であり、溝2の近傍に位置し、基板1の表面上に配置されている。
【0019】
配線7は、ワイヤー3と交差してワイヤー3上に配置される。複数の配線7と複数のワイヤー3とでマトリクス配線を構成する場合には、例えば、図12に示すように、各々のX方向配線72(ワイヤー3)上に複数のY方向配線73が配置されることになる。配線7は、基板1の表面上に配置された第2の電極10の他方の一部を覆うことで、第2の電極10と接続される。配線7とワイヤー3との間には、ワイヤー3表面に設けられた絶縁層(酸化被膜8)があるので、電圧にもよるが、配線7とワイヤー3との絶縁が保つことが可能である。
【0020】
ワイヤー3の表面のうち、酸化被膜8で覆われていない部分4は、ワイヤー3の表面に酸化被膜8を形成した後、その一部を研磨するなどして酸化被膜8の一部を除去することで形成することができる。酸化被膜8で覆われていない部分4の形成方法としては、上記研磨に限らず、公知のエッチング方法など特に限定されるものではない。
【0021】
ワイヤー3は、溝2内に完全に埋め込まれた形態(即ち、基板表面とワイヤー3の上端が揃っている形態あるいは基板表面よりもワイヤー3の上端が低い位置にある形態)が好ましい。換言すれば、ワイヤー3の直径が、溝2の深さ以下であることが好ましい。しか
しながら、若干、溝2内からワイヤー3の上端が突出した形態(即ち、基板表面よりもワイヤー3の上端が高い位置にある形態)であってもよい。換言すれば、ワイヤー3の直径が、溝2の深さよりも若干大きくてもよい。
【0022】
また、本発明の配線基板では、図1〜図6に示す様に、図7〜図9に示した構成に加え、酸化シリコン層9(絶縁層)を、ワイヤー3上(ワイヤー3と配線7との間)に配置することもできる。これにより、配線7とワイヤー3との絶縁耐圧を向上することができる。
【0023】
<<実施形態2>>
図1は本実施形態におけるマトリクス配線構造の平面模式図である。図2は、図1のA-A線におけるマトリクス配線構造の断面模式図であり、図2は、図1のB-B線におけるマトリクス配線構造の断面模式図である。
【0024】
図1〜図3で示した形態では、酸化シリコン層9が、ワイヤー3および溝2の周囲の基板1の表面に配置された形態である。そして、表面伝導型電子放出素子が酸化シリコン層9の上に配置されている。このような形態にすれば、ワイヤー3の基板1への密着力の向上と表面伝導型電子放出素子の電子放出特性への基板1の構成物質の拡散による影響の緩和とを行うことができる。また、配線7とワイヤー3との絶縁耐圧を向上することができる。
【0025】
<<実施形態3>>
図4は本実施形態におけるマトリクス配線構造の平面模式図である。図5は、図4のA-A線におけるマトリクス配線構造の断面模式図であり、図6は、図4のB-B線におけるマトリクス配線構造の断面模式図である。
【0026】
図4〜図6に示した形態では、図1〜図3に示した形態に比べて、酸化シリコン層9の配置位置が、実質的に溝2上に収めた形態である。この形態でも、ワイヤー3を基板1に固着することができると同時に、配線7とワイヤー3との絶縁耐圧を向上することができる。
【0027】
<<変形例>>
尚、ここで示した形態では、1つのワイヤ−3の左右に電子放出素子を配置した形態を示したが、電子放出素子は片側にのみ配置する形態とすることもできる。
【0028】
<電子源>
また、図1、図4、図7に示すユニットを、複数、基板1上に行列状に設けることで、マトリクス状に配列された複数の電子放出素子を備えた電子源を構成することができる。
【0029】
<画像表示装置>
図12は、マトリクス状に電子放出素子を配列した電子源を備えた画像表示装置であるフラットパネルディスプレイの一例である。X方向配線72がワイヤー3に相当し、Y方向配線73が上述した配線7に相当する。一対の電極12、13が、上述した電子放出素子を構成する第2の電極10に相当する。また15は、上述した間隙12を備える導電性膜11である。一対の電極12、13と間隙12を備える導電性膜15とで、電子放出素子が構成される。リアプレート71が上述した基板1に相当する。86はフェースプレートであり、ガラス基板83の表面には電子線が照射されることで発光する発光体膜84(本発明の「発光体」に相当)と、アノード電極85とが設けられている。リアプレート71とフェースプレート86との間に支持枠82が設けられている。リアプレート71とフェースプレート86と支持枠82とで、内部が真空に保持された容器88が構成される。
X方向配線72のそれぞれには端子(Dox1〜Doxm)が接続され、同様にY方向配線73のそれぞれには端子(Doy1〜Doym)が接続されている。アノード電極85
には高圧電源と接続される端子87が接続されている。図13に示す外容器(ディスプレイパネル88)と駆動回路とでフラットパネルディスプレイ101が構成される。
【0030】
<画像再生装置>
また、図12を用いて説明した本実施形態のフラットパネルディスプレイ101と放送信号および電気通信回線を経由した信号の少なくとも一方を受信する受信装置とを用いて画像再生装置を構成することができる。
【0031】
具体的には、受信装置と、受信した信号を選曲するチューナーと、選曲した信号に含まれる信号を、ディスプレイパネル88に出力してスクリーンに表示または再生させる。上記受信装置は、テレビジョン放送などの放送信号を受信することができる。また、上記選曲した信号に含まれる信号としては、映像情報、文字情報および音声情報の少なくとも1つを指す。尚、「スクリーン」は、図12で示したディスプレイパネル88においては、発光体膜84に相当すると言うことができる。この構成によりテレビジョンなどの画像再生装置を構成することができる。勿論、放送信号がエンコードされている場合には、本実施形態の画像再生装置はデコーダーも含むことができる。また、音声信号については、別途設けたスピーカーなどの音声再生手段に出力して、ディスプレイパネル88に表示される映像情報や文字情報と同期させて再生する。
【0032】
また、映像情報または文字情報をディスプレイパネル88に出力してスクリーンに表示および/あるいは再生させる方法としては、例えば以下のように行うことができる。まず、受信した映像情報や文字情報から、ディスプレイパネル88の各画素に対応した画像信号を生成する。そして生成した画像信号を、ディスプレイパネル88(図13のC11)の駆動回路(図13のC12)に入力する。そして、駆動回路に入力された画像信号に基づいて、駆動回路からディスプレイパネル88内の各電子放出素子に印加する電圧を制御して、画像を表示する。
【0033】
<テレビジョン装置>
図13は、画像再生装置の一例であるテレビジョン装置のブロック図である。受信回路(C20)は、チューナーやデコーダ等からなり、衛星放送や地上波等のテレビ信号や、無線回線網、電話回線網、ディジタル回線網、アナログ回線網、TCP/IPプロトコルで結ばれたインターネット等の電気通信回を介したデータ放送等を受信し、復号化した映像データをI/F部(インターフェース部)(C30)に出力する。I/F部(C30)は、映像データを表示装置の表示フォーマットに変換して上記ディスプレイパネル(C11)に画像データを出力する。画像表示装置(C10)は、ディスプレイパネル(C11)、駆動回路(C12)及び制御回路(C13)を含む。制御回路は、入力した画像データに表示パネルに適した補正処理等の画像処理を施すともに、駆動回路(C12)に画像データ及び各種制御信号を出力する。駆動回路(C12)は、入力された画像データに基づいて、ディスプレイパネル(C11)の各配線7(図16のDox1〜Doxm、Doy1〜Doyn参照)に駆動信号を出力し、テレビ映像が表示される。受信回路(C20)とI/F部(C30)は、セットトップボックス(STB)として画像表示装置(C10)とは別の筐体に収められていてもよいし、また画像表示装置(C10)と同一の筐体に収められていてもよい。
【0034】
また、インターフェースには、プリンター、デジタルビデオカメラ、デジタルカメラ、ハードディスクドライブ(HDD)、デジタルビデオディスク(DVD)などの画像記録装置や画像出力装置に接続することができる構成とすることもできる。そして、このようにすれば、画像記録装置に記録された画像をディスプレイパネル(C11)に表示させる
こともできる。また、ディスプレイパネル(C11)に表示させた画像を、必要に応じて加工し、画像出力装置に出力させることもできる画像再生装置(例えば、テレビジョン)を構成することができる。
【0035】
ここで述べた画像再生装置の構成は、一例であり、本発明の技術思想に基づいて種々の変形が可能である。また、本発明の画像再生装置は、テレビ会議システムやコンピュータ等のシステムと接続することで、様々な画像再生装置を構成することができる。
【0036】
<配線基板及び電子源の製造方法>
次に、本実施形態の基板1の製造方法について図11を用いてその一例を以下に説明する。
【0037】
(工程1)
まず、基板1を用意し、基板1の表面上に感光性のレジスト21を積層する(図11(A)、図11(B))。
【0038】
レジスト21としては、ドライフィルムレジスト(DFR)、あるいは、液体レジストを用いる。特に、ドライフィルレジストを用いるのが好ましい。
【0039】
(工程2)
ついで、溝2を形成する部分のみが露出するように、フォトグラフィー法により、レジスト21を露光、現像する(図11(C)、図11(D))。
【0040】
(工程3)
そして、露出した基板1の表面(溝2を形成する部分)に溝2を形成する(図11(E))。
【0041】
溝2の形成方法としては、ウエットエッチングやドライエッチングなど公知の手法を用いることができるが、サンドブラスト法を用いることが好ましい。
【0042】
(工程4)
次いで、溝2内に、溝2の幅よりも小さい直径を備える導電性のワイヤー3を配設する(図11(F))。
【0043】
ワイヤー3としては、金属ワイヤーを用いることができる。金属としては好ましくはAl、Cu、Niのいずれかを用いる。Cuワイヤーとしては酸化度合いが制御できる無酸素銅ワイヤーを用いるのが好ましい。
【0044】
(工程5)
そして、好ましくは、少なくとも溝2内に配置されたワイヤー3と溝2の周囲の基板1の表面とを覆うように酸化シリコン(典型的にはSiO2)からなる酸化シリコン層9を設ける(図11(F))。
【0045】
酸化シリコン層9は、例えば、シリカゾルをスリットコーターで塗布し、酸素雰囲気中で焼成することで形成することができる。尚、この工程5は省略することもできる。
【0046】
(工程6)
次いで、レジスト21を剥離する。
【0047】
尚、本工程6は、工程3(図11(E))と工程4(図11(F))との間に行っても
よい。即ち、レジスト21を除去してから、溝2内にワイヤー3を配設しても良い。
【0048】
また、レジスト21の除去を工程3と工程4との間に行った場合には、基板1の全面に、酸化シリコン層9を設けることもできる。特に、表面伝導型電子放出素子を基板1上に設ける場合には、基板1からのアルカリ成分の拡散を防ぐために、酸化シリコン層9を、基板1の全面に設けることが好ましい(図10(G)を参照)。
【0049】
(工程7)
次いで、一対の電極である第2の電極10を基板1の表面上に設ける(図11(H))。
【0050】
第2の電極10は、例えば、第2の電極10を構成する金属を含む樹脂膜を所定のパターンで基板1の表面上に設け、これを酸素雰囲気中で加熱焼成することで形成することができる。第2の電極10を構成する金属としては、例えば白金を用いることができる。上記酸素雰囲気中での焼成工程により、ワイヤー3の表面に酸化被膜8を形成することができる。
【0051】
尚、ここでは、第2の電極10を形成する工程において、同時に、酸化被膜8を形成したが、酸化被膜8の形成は、本工程で行うものに限定されるものではない。即ち、別の工程で、ワイヤー3の表面に酸化被膜8を設けることもできる。
【0052】
例えば、予め酸化被膜8を供えたワイヤー3を用意しておき、これを、工程4(図11(F))で溝2内に配設してもよい。このようにすれば、本工程7において、第2の電極10の形成方法は特に制限されない。あるいは、また、酸化シリコン層9を設ける場合には、工程5の焼成工程を使って、ワイヤー3の表面に所定の厚みの酸化被膜8を設けることもできる。
【0053】
(工程8)
その後、ワイヤー3と電極10とを接続するため、部分研磨にて、酸化被膜8の一部を除去してワイヤー3の表面の一部(接続部)を露出させる(研磨部4の形成)。
ここでは、接続部である研磨部4を研磨することで形成したが、この方法に限定されるものではない。例えば、ワイヤー3の研磨部4に相当する箇所を予め保護層で覆っておき、上述した酸化被膜8を形成した後に、保護層を除去する方法などを採用することはできる。
【0054】
(工程9)
次に配線7と第1の電極5(接続電極)とを形成することで、本発明のマトリクス配線構造を形成する。
【0055】
配線7および第1の電極5の製造方法は特に限定されるものではないが、安価に簡易に形成するには、例えば、導電性ペーストを印刷法により所定の箇所に印刷し、焼成する方法を採用することができる。
【0056】
以上の工程により、ワイヤー3と配線7の交差部の絶縁性が確保され、簡易な構成であり、低抵抗であり、基板1表面から配線7が突出することを抑制したマトリクス配線を形成することができる。
【0057】
この後、表面伝導型電子放出素子を形成するために、一対の電極間に導電性膜11を設け、その後、配線7とワイヤー3とを介して公知のフォーミング工程や活性化工程などの通電工程を行う。このようにすることで、高精細で、特性バラツキが少なく、放出される
電子軌道の変動が少ない良好な電子源を形成することができる。良好な電子源を形成できる要因の一つには、低抵抗であるワイヤーを用いることで、各電子放出素子に供給する電圧のバラツキを少なくすることができる。
【0058】
また、別の要因としては、基板1に設けた溝2内にワイヤー3を配設することで、高精度な配線7を作れ、また、配線7の上端と基板1の表面との距離を抑制できるので、放出される電子の軌道に対する配線7の影響を抑制することができる。尚、本実施形態に適用することのできる電子放出素子としては、カーボンナノチューブなどのカーボンファイバーを用いた電界放出型電子放出素子や、MIM型電子放出素子などを用いることができる。
【0059】
<実施例>
以下に本発明の実施例を示す。基板1をガラス基板1として、以下説明する。
【0060】
<実施例1>
図1〜図3に示したワイヤー埋め込みマトリクス配線基板を図11の工程フローで形成した。
【0061】
まず、ガラス基板1を用い、ガラス基板1上にドライフィルムレジストを積層し、フォトグラフィー法により、溝2を形成部分のみのレジスト21を溶解し、次いでサンドブラスト法を用いて幅約110μm深さ約110μmの溝2を形成した(図10(A)〜図10(E))。
【0062】
溝形成法としては、サンドブラスト法やウエットエッチングが一般的であるが、これらに限定されるものではない。その後、ドライフィルムレジストを剥離し、本例においては、溝2形成後に、ガラス基板1の全面に、酸化シリコン層9としてSiO2膜をスパッタリング法で成膜した。SiO2成膜は該パッシベーション膜の上に形成しても、パッシベーション層単体でも構わない。
【0063】
次いで、溝2内に直径105ミクロンの銅製のワイヤー3を配設した。Cuワイヤーは酸化度合いが制御できる無酸素銅ワイヤーを用いるのが好ましい。
【0064】
次に、ガラス基板1、溝2及び、配置されたワイヤー3を覆うようにシリカコート材である酸化シリコン層9をスリットコーターで塗布し、大気雰囲気中において250℃で仮焼成した。次いで、500℃で大気中焼成して白金製の第2の電極10を得るとともに、ワイヤー表面に2ミクロンの酸化被膜8を形成させ、覆っているシリカコート材とで3ミクロンの絶縁層を形成した。
【0065】
その後、ワイヤー3と第2の電極10のコンタクト部分を作製するため、部分研磨にて接続部のみ通電が可能なように表面被膜を一部除外した。
【0066】
次にAgペーストを用いて配線7を幅50ミクロン、膜厚5ミクロンで印刷法を用いて形成すると共に、第2の電極10とワイヤー3とを接続する接続パット5を印刷し、500℃で焼成を行い、配線基板を完成させた。その結果、ワイヤー3と配線7との交差部において、絶縁が確保されていることを確認した。
【0067】
<実施例2>
溝2の形成、ドライフィルムレジストの剥離(図10(A)〜図10(E))まで実施例1と同様に行う。次に、あらかじめ大気雰囲気中で加熱することで、表面に3ミクロンの酸化被膜8を形成したワイヤー3を溝2内に配設した。そして、ガラス基板1、溝2及
び、配置されたワイヤー3を覆うようにシリカ系コート材である酸化シリコン層9をスリットコーターで2ミクロン塗布し、大気雰囲気中において仮焼成した。次いで、500℃で大気焼成して白金製の第2の電極10を得た。表面酸化膜8とシリカコート層9とで5ミクロンの絶縁層を形成した。次に、Agペーストを用いて配線7を印刷法を用いて形成すると共に、第2の電極10とワイヤー3との接続用の接続パットである第1の電極5を同時印刷し、500℃で焼成を行い、マトリクス基板を完成させた。その結果、ワイヤー3と配線7との交差部において、絶縁が確保されていることを確認した。
【0068】
<実施例3>
図4〜図6に示したマトリクス配線を備える配線基板を図11の工程フローで形成した。
【0069】
溝2形成まで実施例1と同様に行い、ドライフィルムレジストを残したまま、ワイヤー3を溝2内に配設した(図11(F))。次に、溝2及び、配置されたワイヤー3を覆うようにシリカ系コート材である酸化シリコン層9をスリットコーターで2ミクロン塗布し、大気雰囲気中において250℃で仮焼成した。その後ドライフィルムレジストを剥離した(図11(G))。
【0070】
次いで、有機白金膜を500℃で大気焼成して白金製の第2の電極10を得ると共に、ワイヤー3表面に2ミクロンの酸化被膜8を形成させた(図11(H))。酸化被膜8と、覆っている酸化シリコン9とで4ミクロンの絶縁層を形成した。
【0071】
次に、Agペーストを用いて配線7を印刷法を用いて形成すると共に、第2の電極10とワイヤー3との接続用の第1の電極5を同時印刷し、500℃で焼成を行い、配線基板を完成させた。その結果、ワイヤー3と配線7の交差部において、絶縁が確保されていることを確認した。
【0072】
<実施例4>
図7〜図9に示したマトリクス配線を備える基板1を形成した。
【0073】
実施例1と同様に溝2を形成し、その後、第2の電極10を形成した。次に、ワイヤー3の配設まで行った後、スクリーン印刷法を用いて第2の電極10とワイヤー3との接続用の第1の電極5を印刷し、500℃で焼成を行い、第1の電極5でワイヤー3のガラス基板1への固定を行うと共に、ワイヤー3の表面に2ミクロンの酸化被膜8を形成した。
【0074】
次にAgペーストを用いて配線7を印刷法を用いて形成し、500℃で焼成を行い、マトリクス基板を完成させた。その結果、ワイヤー3と配線7との交差部において、絶縁が確保されていることを確認した。
【0075】
また、上記各実施例で形成した配線基板を用いて、第2の電極10間に導電性膜11を設けた後に、配線7とワイヤー3を介して導電性膜11に通電することで公知のフォーミング工程および活性化工程を行って表面伝導型電子放出素子を形成した。その後、図12に示す画像表示装置を形成したところ、高精細で均一性の高い良好な画像を表示することができた。
【0076】
以上説明したように、本実施例に従い大気焼成による酸化を利用した絶縁層形成による配線基板を作製するならば、材料、プロセス面からローコストで、かつ、高精細なマトリクス配線構造を形成することが可能であり、極めて良好なディスプレイパネルを形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本実施形態におけるマトリクス配線構造の平面模式図である。
【図2】図1に示すマトリクス配線構造の断面模式図である。
【図3】図1に示すマトリクス配線構造の断面模式図である。
【図4】本実施形態における他のマトリクス配線構造の平面模式図である。
【図5】図4に示すマトリクス配線構造の断面模式図である。
【図6】図4に示すマトリクス配線構造の断面模式図である。
【図7】本実施形態における他のマトリクス配線構造の平面模式図である。
【図8】図7に示すマトリクス配線構造の断面模式図である。
【図9】図7に示すマトリクス配線構造の断面模式図である。
【図10】本実施形態におけるマトリクス配線構造の工程図である。
【図11】本実施形態におけるマトリクス配線構造の工程図である。
【図12】本実施形態における画像表示装置の模式図である。
【図13】本実施形態におけるテレビジョン装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0078】
1 基板(ガラス基板)
2 溝
3 ワイヤー
4 研磨部(接続部)
5 第1の電極
7 配線
8 酸化被膜(絶縁層)
9 酸化シリコン層(絶縁層)
10 第2の電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に溝を備える基板と、
該溝に沿って該溝内に配置された、金属を含む導電性のワイヤーと、
前記ワイヤーと交差して前記ワイヤー上に配置された配線と、
を備えた配線基板と、
前記配線基板上に配置され、前記導電性のワイヤーと前記配線とに電気的に接続された複数の電子放出素子と、
を備え、
前記ワイヤーが、前記ワイヤーを構成する金属の酸化物層を表面に備えている、
ことを特徴とする電子源。
【請求項2】
前記ワイヤーを構成する金属が、Cu、Ni、Alのいずれかの金属であることを特徴とする請求項1に記載の電子源。
【請求項3】
電子源と、該電子源から放出された電子が照射されることで発光する発光体とを備える画像表示装置であって、前記電子源が請求項1または請求項2に記載の電子源であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
放送信号および電気通信回線を経由した信号の少なくとも一方を受信する受信装置と該受信装置に接続した画像表示装置とを少なくとも備える画像再生装置であって、前記画像表示装置が請求項3に記載の画像表示装置であることを特徴とする画像再生装置。
【請求項5】
表面に溝を備える基板と、
該溝に沿って該溝内に配置された、金属を含む導電性のワイヤーと、
前記ワイヤーと交差して前記ワイヤー上に配置された配線と、
を備えた配線基板であって、
前記ワイヤーが、前記ワイヤーを構成する金属の酸化物層を表面に備えており、
前記酸化物層が、少なくとも前記配線と前記ワイヤーとの間および前記ワイヤーと前記溝の内壁との間に配置されている、
ことを特徴とする配線基板。
【請求項6】
前記ワイヤーを構成する金属が、Cu、Ni、Alのいずれかの金属であることを特徴とする請求項5に記載の配線基板。
【請求項7】
表面に溝を備える基板と、
該溝に沿って、該溝内に配置された導電性のワイヤーと、
を備えた配線基板の製造方法であって、
前記溝内に、その表面を予め酸化させた金属性のワイヤーを配置する工程、
を備えることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項8】
さらに、前記ワイヤーと交差して前記ワイヤー上に配置された配線を印刷法により設ける工程を有することを特徴とする請求項7に記載の配線基板の製造方法。
【請求項1】
表面に溝を備える基板と、
該溝に沿って該溝内に配置された、金属を含む導電性のワイヤーと、
前記ワイヤーと交差して前記ワイヤー上に配置された配線と、
を備えた配線基板と、
前記配線基板上に配置され、前記導電性のワイヤーと前記配線とに電気的に接続された複数の電子放出素子と、
を備え、
前記ワイヤーが、前記ワイヤーを構成する金属の酸化物層を表面に備えている、
ことを特徴とする電子源。
【請求項2】
前記ワイヤーを構成する金属が、Cu、Ni、Alのいずれかの金属であることを特徴とする請求項1に記載の電子源。
【請求項3】
電子源と、該電子源から放出された電子が照射されることで発光する発光体とを備える画像表示装置であって、前記電子源が請求項1または請求項2に記載の電子源であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
放送信号および電気通信回線を経由した信号の少なくとも一方を受信する受信装置と該受信装置に接続した画像表示装置とを少なくとも備える画像再生装置であって、前記画像表示装置が請求項3に記載の画像表示装置であることを特徴とする画像再生装置。
【請求項5】
表面に溝を備える基板と、
該溝に沿って該溝内に配置された、金属を含む導電性のワイヤーと、
前記ワイヤーと交差して前記ワイヤー上に配置された配線と、
を備えた配線基板であって、
前記ワイヤーが、前記ワイヤーを構成する金属の酸化物層を表面に備えており、
前記酸化物層が、少なくとも前記配線と前記ワイヤーとの間および前記ワイヤーと前記溝の内壁との間に配置されている、
ことを特徴とする配線基板。
【請求項6】
前記ワイヤーを構成する金属が、Cu、Ni、Alのいずれかの金属であることを特徴とする請求項5に記載の配線基板。
【請求項7】
表面に溝を備える基板と、
該溝に沿って、該溝内に配置された導電性のワイヤーと、
を備えた配線基板の製造方法であって、
前記溝内に、その表面を予め酸化させた金属性のワイヤーを配置する工程、
を備えることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項8】
さらに、前記ワイヤーと交差して前記ワイヤー上に配置された配線を印刷法により設ける工程を有することを特徴とする請求項7に記載の配線基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−16225(P2008−16225A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−183699(P2006−183699)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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