電子移動解離デバイス
【課題】
【解決手段】イオンガイドを含む電子移動解離デバイスを含む質量分析計を開示する。制御システムは、イオンガイド内の前駆体イオンのフラグメンテーションおよび電荷減少の度合いを決定し、かつイオンガイドを通って移送されるイオンの速さを変更して、フラグメンテーションおよび電荷減少プロセスを最適化する。
【解決手段】イオンガイドを含む電子移動解離デバイスを含む質量分析計を開示する。制御システムは、イオンガイド内の前駆体イオンのフラグメンテーションおよび電荷減少の度合いを決定し、かつイオンガイドを通って移送されるイオンの速さを変更して、フラグメンテーションおよび電荷減少プロセスを最適化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最適化された電子移動解離(「ETD」)デ−タを得るための質量分析の方法および質量分析計に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、イオン−イオン反応デバイスまたはフラグメンテーションデバイスおよびイオン−イオン反応またはフラグメンテーションを行う方法に関する。また、本発明は、電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスに関する。分析種イオンは、イオン−イオン反応またはイオン−中性ガス反応のいずれによってもフラグメンテーションされ得る。また、分析種イオンおよび/またはフラグメントイオンは、プロトン移動または電子移動によって電荷が減少され得る。
【0003】
エレクトロスプレーイオン化イオン源は、周知であり、かつHPLCカラムから溶出した中性ペプチドを気相分析種イオンに変換するために使用され得る。酸性水溶液中で、トリプシンペプチドは、アミノ末端およびC−末端アミノ酸の側鎖の両方においてイオン化される。ペプチドイオンが進行して質量分析計に入ると、正電荷のアミノ基が水素結合し、そしてプロトンをペプチドの骨格に沿ってアミド基へ移動させる。
【0004】
ペプチドイオンを衝突ガスに衝突させることによってペプチドイオンの内部エネルギーを増大させて、ペプチドイオンをフラグメンテーションさせることが公知である。ペプチドイオンの内部エネルギーは、内部エネルギーがその分子の骨格に沿ったアミド結合を開裂するために必要な活性化エネルギーを超えるまで増大される。中性衝突ガスと衝突させることによってイオンをフラグメンテーションするこのプロセスは、一般に衝突誘起解離(「CID」)と呼ばれる。衝突誘起解離から得られたフラグメントイオンは、一般にb−タイプおよびy−タイプのフラグメントイオンまたはプロダクトイオンと呼ばれる。ここで、b−タイプフラグメントイオンはアミノ末端+1つ以上のアミノ酸残基を含み、およびy−タイプフラグメントイオンは、カルボキシル末端+1つ以上のアミノ酸残基を含む。
【0005】
ペプチドをフラグメンテーションする他の方法が公知である。ペプチドイオンをフラグメンテーションする別の方法は、電子捕獲解離(「ECD」)として公知のプロセスによってペプチドイオンを熱電子と相互作用させることである。電子捕獲解離は、衝突誘起解離において観測されるフラグメンテーションプロセスとは実質的に異なるやり方でペプチドを開裂する。特に、電子捕獲解離は、骨格N−Cα結合またはアミン結合を開裂し、そしてその結果生成されるフラグメントイオンは、一般にc−タイプおよびz−タイプのフラグメントイオンまたはプロダクトイオンと呼ばれる。電子捕獲解離は、非エルゴ−ド的であると考えられる。すなわち、開裂が発生した後、移動されたエネルギーが分子全体に分配される。また、電子捕獲解離の発生は、近傍のアミノ酸の性質への依存がより小さく、かつプロリンのN側のみが電子捕獲解離に対して100%開裂されない。
【0006】
衝突誘起解離ではなく電子捕獲解離によってペプチドイオンをフラグメンテーションする1つの利点は、衝突誘起解離には翻訳後修飾(「PTM」)を開裂する傾向があるので修飾場所を特定することが困難であるという問題があるが、対照的に電子捕獲解離によってペプチドイオンをフラグメンテーションする場合は、例えば、リン酸化およびグリコシル化から生じる翻訳後修飾を保存する傾向があることである。
【0007】
しかし、電子捕獲解離技術は、同時に正イオンおよび電子の両方を熱運動エネルギーの近くで閉じ込める必要があるという大きな問題がある。電子捕獲解離は、超伝導磁石を使用して大きな磁場を生成するフ−リエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FT−ICR」)質量分析部を使用して実証されてきた。しかし、そのような質量分析計は、非常に大型で、かつ大半の質量分析ユ−ザにとっては高価すぎる。
【0008】
電子捕獲解離の代替として、リニアイオントラップにおいて負電荷の試薬イオンを多価分析種カチオンと反応させることによってペプチドイオンをフラグメンテーションさせることが可能であることが実証されてきた。正電荷の分析種イオンを負電荷の試薬イオンと反応させるプロセスは、電子移動解離(「ETD」)と呼ばれてきた。電子移動解離は、電子が負電荷の試薬イオンから正電荷の分析種イオンへ移動するメカニズムである。電子の移動後、電荷が減少したペプチドまたは分析種イオンは、電子捕獲解離によるフラグメンテーションを起こすと考えられているメカニズムと同じメカニズムによって解離する。すなわち、電子移動解離は、電子捕獲解離と同様なやり方でアミン結合を開裂すると考えられている。これにより、ペプチド分析種イオンの電子移動解離によって生成されたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンのほとんどは、c−タイプおよびz−タイプのフラグメントイオンまたはプロダクトイオンである。
【0009】
電子移動解離の1つの特に有利な点は、そのようなプロセスが翻訳後修飾(PTM)の特定に特に適していることである。なぜなら、リン酸化またはグリコシル化のような結合の弱いPTMでも、アミノ酸鎖の骨格の電子誘起フラグメンテーションに耐えられるからである。
【0010】
現在、電子移動解離は、カチオンおよびアニオンを2Dリニアイオントラップ中に相互に閉じ込めることによって実証されてきた。2Dリニアイオントラップは、試薬アニオンと分析種カチオンとの間のイオン−イオン反応を促進するように構成される。カチオンおよびアニオンは、2Dリニア四重極イオントラップの両端に補助的な軸方向の閉じ込めRF擬電位障壁を印加することによって、2Dリニアイオントラップ内に同時にトラップされる。しかし、この方法は、イオントラップ内のイオンによって観測される有効なRF擬電位障壁の高さがそのイオンの質量電荷比の関数となるので問題がある。これにより、イオン−イオン反応を促進するためにイオントラップ内に同時に閉じ込め込められ得る分析種イオンおよび試薬イオンの質量電荷比範囲がある程度制限される。
【0011】
電子移動解離を行う別の公知の方法は、固定されたDC軸方向電位を2Dリニア四重極イオントラップの両端に印加して、所定の極性を有するイオン(例えば、試薬アニオン)をそのイオントラップ内に閉じ込める。次いで、イオントラップ内に閉じ込められたイオンに対して反対の極性を有するイオン(例えば、分析種カチオン)がイオントラップ中へ方向付けられる。分析種カチオンは、すでにイオントラップ内に閉じ込められた試薬アニオンと反応する。しかし、また、試薬アニオンをイオントラップ内に滞留させるために使用される軸方向DC障壁は、イオントラップ内に導入される分析種カチオンを加速させる電位として働くという反対の効果を有する。これにより、試薬アニオンと分析種カチオンとの間に大きな運動エネルギーの差または不一致が生じるので、発生し得る任意のイオン−イオン反応が準最適なやり方で発生する。
【0012】
多価(分析種)カチオンが(試薬)アニオンと混合されると、緩く結合した電子が(試薬)アニオンから多価(分析種)カチオンへ移動し得ることが公知である。エネルギーは、多価カチオン中へ解放され、そして多価カチオンは、解離され得る。しかし、(分析種)カチオンのうちの著しい割合は、解離しないで、その代わりに電荷状態が低減され得る。カチオンは、2つのプロセスのうちの1つによって電荷が減少され得る。第一に、カチオンは、電子がアニオンからカチオンへ移動する電子移動(「ET」)によって電荷が減少され得る。第二に、カチオンは、プロトンがカチオンからアニオンへ移動するプロトン移動(「PT」によって電荷が減少され得る。そのプロセスにかかわらず、電荷が減少したプロダクトイオンが大量に存在することが、発生しているイオン−イオン反応(ETまたはPTのいずれか)の度合いを示す質量スペクトル内に観測される。
【0013】
ボトムアップまたはトップダウンのプロテオミックスにおいて、電子移動解離の実験は、解離されたプロダクトイオンの存在度を質量スペクトル内で最大化することによって得られる情報を最大化するために行われ得る。電子移動解離によるフラグメンテーションの度合いは、カチオン(およびアニオン)のコンフォーメーションとともに多くの他の機器要因に依存する。LCの結果から各アニオン−カチオン組み合わせに対する最適なパラメータをアプリオリに知ることは困難であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
電子移動解離および/またはプロトン移動反応を行うための改善された方法およびデバイスを提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一局面によると、
複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスと、
少なくともいくつかの第1のイオンがイオンガイドを通って移送される際に第1のイオンが電子移動解離および/またはプロトン移動反応によってフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを推定、決定または測定し、そしてそれに応答して、第1のイオンがイオンガイドを通過する際の第1のイオンの移送および/またはフラグメンテーションの度合いおよび/または電荷減少の度合いに影響する1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減するように構成および適合される制御システムとを含む質量分析計が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、2つの過渡DC電圧または過渡DC電位が同時にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加され、分析種カチオンおよび試薬アニオンがともにイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心領域に運搬されることを示す。
【図2】図2は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加される進行DC電圧波形を使用して、正イオンおよび負イオンが同じ方向に同時に並進され得る様子を例示する。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係るイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスのSIMION(登録商標)シミュレーションの断面図を示す。
【図4】図4は、2つの互いに反対に進行するDC電圧波形がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加されるものとしてモデル化され、かつ進行DC電圧波形の振幅がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心に向かって順次低減する場合の、好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内の電位エネルギー表面のスナップショットを示す。
【図5】図5は、質量電荷比が300のカチオンおよびアニオンの2対の時間の関数としての軸方向位置を示す。ここで、そのカチオンおよびアニオンは、まずイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの端に提供されるものとしてモデル化し、かつ2つの互いに反対に進行するDC電圧波形は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加され、イオンがイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心領域に収束されるものとしてモデル化した。
【図6A】図6Aは、一実施形態に係る好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内の電位エネルギーを例示するSIMION(登録商標)シミュレーションを示す。
【図6B】図6Bは、一実施形態に係る好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内の電位エネルギーを例示するSIMION(登録商標)シミュレーションを示す。
【図6C】図6Cは、一実施形態に係る好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内の電位エネルギーを例示するSIMION(登録商標)シミュレーションを示す。
【図6D】図6Dは、一実施形態に係る好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内の電位エネルギーを例示するSIMION(登録商標)シミュレーションを示す。
【図7】図7は、イオンガイド結合器を好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの上流に設けることにより、分析種イオンおよび試薬イオンが上記好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス中へ方向付けられ、かつ上記好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスが直交加速飛行時間質量分析部に結合される本発明の実施形態を示す。
【図8A】図8Aは、振幅が0Vの進行波電圧を好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加した場合に得られた質量スペクトルを示す。
【図8B】図8Bは、振幅が0.5Vの進行波電圧を好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加した場合に得られた対応する質量スペクトルを示す。
【図8C】図8Cは、好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加される進行波電圧を1Vに増大した場合に得られた質量スペクトルを示す。
【図9】図9は、本発明の一実施形態に係る質量分析計のイオン源部分を示す。
【図10】図10は、本発明の一実施形態に係る質量分析計を示す。
【図11A】図11Aは、本発明の一実施形態による、3価前駆体分析種カチオンが試薬アニオンとともに1.2ミリ秒の過渡時間でETDセルまたはPTRセルを通って移送された場合に得られた質量スペクトルを示す。
【図11B】図11Bは、本発明の一実施形態による、3価前駆体分析種カチオンが試薬アニオンとともに37ミリ秒の過渡時間でETDセルまたはPTRセルを通って移送された場合に得られた質量スペクトルを示す。
【図11C】図11Cは、本発明の一実施形態による、3価前駆体分析種カチオンが試薬アニオンとともに305ミリ秒の過渡時間でETDセルまたはPTRセルを通って移送された場合に得られた質量スペクトルを示す。
【図12】図12は、本発明の一実施形態に係るフローチャートを示し、電子移動解離反応デバイスの電極に印加された1つ以上の過渡DC電圧の速さまたは振幅を増大または低減して、反応デバイスを通過するイオンのETDフラグメンテーションを最適化し得る様子を示す。
【図13A】図13Aは、振幅が1.4VのDC進行波を電子移動解離イオンガイドの電極に印加した場合に得られる質量スペクトルを示す。
【図13B】図13Bは、振幅が1.0VのDC進行波を電子移動解離イオンガイドの電極に印加した場合に得られる質量スペクトルを示す。
【図13C】図13Cは、振幅が0.8VのDC進行波を電子移動解離イオンガイドの電極に印加した場合に得られる質量スペクトルを示す。
【図13D】図13Dは、振幅が0.4VのDC進行波を電子移動解離イオンガイドの電極に印加した場合に得られる質量スペクトルを示す。
【図13E】図13Eは、振幅が0.1VのDC進行波を電子移動解離イオンガイドの電極に印加した場合に得られる質量スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1のイオンは、好ましくは、(i)アニオンもしくは負電荷のイオン、(ii)カチオンもしくは正電荷のイオン、または(iii)アニオンおよびカチオンの組み合わせもしくは混合物のいずれかを含む。
【0018】
動作モードにおいて、制御システムは、好ましくは、1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減して、第1のイオンがイオンガイドを通過する際の第1のイオンのフラグメンテーションおよび/または電荷減少を最適化および/または最大化するように構成および適合される。
【0019】
別の動作モードにおいて、制御システムは、1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減して、第1のイオンのフラグメンテーションおよび/または電荷減少を最小化および/または低減し、イオンガイドがイオンガイドモードにて動作するように構成および適合され、イオンガイドモードにおいては、イオンガイドへの入力において受け取られるイオンが、実質的にフラグメンテーションおよび/または電荷減少されることなく、イオンガイドの出力へ実質的に前方移送され得る。
【0020】
制御システムは、好ましくは、1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減して、第1のイオンが使用時にイオンガイドを通って移送される速さまたは速度を変更、変化、増大または低減するように構成および適合される。
【0021】
質量分析計は、好ましくは、第1のイオンのうちの少なくともいくつかを使用時に駆動または推進して、イオンガイドを通っておよび/または沿って移動させる第1のデバイスをさらに含む。
【0022】
好ましさがやや低い実施形態によると、第1のデバイスは、(i)イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部もしくはその少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%に沿って直線状軸方向DC電場を生成するか、または(ii)イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部もしくはその少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%に沿って非直線状もしくは階段状の軸方向DC電場を生成する、のいずれかに構成および適合され得る。
【0023】
一実施形態によると、制御システムは、軸方向DC電場または軸方向DC電場の勾配を変更、変化、増大または低減して、ETDによるイオンのフラグメンテーションの度合いを最適化または最大化するように構成および適合され得る。
【0024】
上記好適な実施形態によると、第1のデバイスは、1つ以上の第1の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の第1の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を複数の電極のうちの少なくともいくつかに印加して、少なくともいくつかの第1のイオンを第1の方向のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿っておよび/または通って駆動または推進するように構成および適合される。
【0025】
制御システムは、好ましくは、1つ以上の第1の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の第1の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形が複数の電極のうちの少なくともいくつかに印加され、および/またはイオンガイドの長さに沿って並進される速さまたは速度を変更、変化、増大または低減して、ETDによるイオンのフラグメンテーションの度合いを最適化または最大化するように構成および適合される。
【0026】
一実施形態によると、制御システムは、1つ以上の第1の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の第1の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形の振幅、高さまたは深さを変更、変化、増大または低減して、ETDによるイオンのフラグメンテーションの度合いを最適化または最大化するように構成および適合され得る。
【0027】
好ましさがやや低い実施形態によると、制御システムは、1つ以上の第1の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の第1の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形の周期性および/または形状および/または波形および/またはパターンおよび/またはプロフィールおよび/またはマークスペース比を変更、変化、増大または低減して、ETDによるイオンのフラグメンテーションの度合いを最適化または最大化するように構成および適合され得る。
【0028】
第1のデバイスは、好ましくは、1つ以上の第1の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の第1の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を複数の電極のうちの少なくともいくつかまたは0〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%もしくは95〜100%に印加して、少なくともいくつかの第1のイオンを第1の方向のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部または0〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%もしくは95〜100%に沿っておよび/または通って駆動または推進するように構成および適合される。
【0029】
さらなる実施形態によると、質量分析計は、1つ以上の第2の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の第2の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を複数の電極のうちの少なくともいくつかに印加して、少なくともいくつかの第2のイオンを第2の異なる方向のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿っておよび/または通って駆動または推進するように構成および適合される第2のデバイスをさらに含み得る。
【0030】
制御システムは、1つ以上の第2の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の第2の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形が複数の電極のうちの少なくともいくつかに印加され、および/またはイオンガイドの長さに沿って並進される速さまたは速度を変更、変化、増大または低減して、ETDによるイオンのフラグメンテーションの度合いを最適化または最大化するように構成および適合され得る。
【0031】
一実施形態によると、制御システムは、1つ以上の第2の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の第2の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形の振幅、高さまたは深さを変更、変化、増大または低減して、ETDによるイオンのフラグメンテーションの度合いを最適化または最大化するように構成および適合され得る。
【0032】
好ましさがやや低い実施形態によると、制御システムは、1つ以上の第2の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の第2の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形の周期性および/または形状および/または波形および/またはパターンおよび/またはプロフィールおよび/またはマークスペース比を変更、変化、増大または低減して、ETDによるイオンのフラグメンテーションの度合いを最適化または最大化するように構成および適合され得る。
【0033】
第2のデバイスは、好ましくは、1つ以上の第2の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の第2の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を複数の電極のうちの少なくともいくつかもしくは0〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%もしくは95〜100%に印加して、少なくともいくつかの第2のイオンを第2の方向のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部もしくは0〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%もしくは95〜100%に沿っておよび/または通って駆動または推進するように構成および適合される。
【0034】
一実施形態によると、(a)第2の方向は、第1の方向に実質的に反対であるか、もしくは対向する、または(b)第1の方向と第2の方向との角度は、(i)<30°、(ii)30〜60°、(iii)60〜90°、(iv)90〜120°、(v)120〜150°、(vi)150〜180°、および(vii)180°からなる群から選択される、のいずれかである。
【0035】
一実施形態によると、第2のイオンは、(i)アニオンもしくは負電荷のイオン、(ii)カチオンもしくは正電荷のイオン、または(iii)アニオンおよびカチオンの組み合わせもしくは混合物のいずかを含み得る。
【0036】
第1のイオンは、好ましくは第1の極性を有し、かつ第2のイオンは、好ましくは第1の極性とは反対の第2の極性を有する。
【0037】
一実施形態によると、質量分析計は、好ましくは、第1の正または負の電位または電位差をイオンガイドの第1端または上流端に印加または維持するデバイスであって、第1の正または負の電位または電位差は、好ましくは、使用時に、第1のイオンの少なくともいくつかおよび/または第2のイオンの少なくともいくつかをイオンガイド内に閉じ込めるように働く、デバイスをさらに含む。
【0038】
第1の正または負の電位または電位差によって、好ましくは、第1のイオンの少なくともいくつかおよび/または第2のイオンの少なくともいくつかが第1端または上流端を介してイオンガイドを出射することが可能となる。
【0039】
好ましさがやや低い実施形態によると、制御システムは、第1の正または負の電位または電位差を変更、変化、増大または低減し、イオンガイド内のイオン閉じ込めの度合いまたは量を変更、変化、増大または低減して、ETDによるイオンのフラグメンテーションの度合いを最適化または最大化するように構成および適合され得る。
【0040】
質量分析計は、第2の正または負の電位または電位差をイオンガイドの第2端または上流端において印加するためのデバイスであって、第2の正または負の電位または電位差は、好ましくは、使用時に、第1のイオンの少なくともいくつかおよび/または第2のイオンの少なくともいくつかをイオンガイド内に閉じ込めるように働く、デバイスをさらに含み得る。
【0041】
第2の正または負の電位または電位差によって、好ましくは、第1のイオンの少なくともいくつかおよび/または第2のイオンの少なくともいくつかが第2端または上流端を介してイオンガイドを出射することが可能となる。
【0042】
制御システムは、第2の正または負の電位または電位差を変更、変化、増大または低減し、イオンガイド内のイオン閉じ込めの度合いまたは量を変更、変化、増大または低減して、ETDによるイオンのフラグメンテーションの度合いを最適化または最大化するように構成および適合され得る。
【0043】
質量分析計は、好ましくは、第1の周波数および第1の振幅を有する第1のAC電圧またはRF電圧を複数の電極のうちの少なくともいくつかに印加して、使用時にイオンがイオンガイド内に半径方向に閉じ込められるように構成および適合される第1のRFデバイスをさらに含み、ここで、(a)第1の周波数は、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、および(xxv)>10.0MHzからなる群から選択される、および/または(b)第1の振幅は、(i)<50Vピーク・トゥ・ピーク、(ii)50〜100Vピーク・トゥ・ピーク、(iii)100〜150Vピーク・トゥ・ピーク、(iv)150〜200Vピーク・トゥ・ピーク、(v)200〜250Vピーク・トゥ・ピーク、(vi)250〜300Vピーク・トゥ・ピーク、(vii)300〜350Vピーク・トゥ・ピーク、(viii)350〜400Vピーク・トゥ・ピーク、(ix)400〜450Vピーク・トゥ・ピーク、(x)450〜500Vピーク・トゥ・ピーク、および(xi)>500Vピーク・トゥ・ピークからなる群から選択される、および/または(c)動作モードにおいて、隣接または近接する電極には、第1のAC電圧またはRF電圧の互いに反対の位相が供給される、および/または(d)イオンガイドは、1〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、90〜100または>100グループの電極を含み、ここで、各グループの電極は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の電極を含み、かつ各グループにおける少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の電極には、第1のAC電圧またはRF電圧の同じ位相が供給される、のいずれかである。
【0044】
制御システムは、好ましくは、第1の周波数および/または第1の振幅を変更、変化、増大または低減し、イオンガイド内のイオン閉じ込めおよび/またはイオン−イオン相互作用の度合いまたは量を変更、変化、増大または低減して、ETDによるイオンのフラグメンテーションの度合いを最適化または最大化するように構成および適合される。
【0045】
上記好適な実施形態によると、制御システムは、(i)質量スペクトル、イオン移動度スペクトルまたは他のスペクトル内に観測される1つ以上の第1の親、前駆体、娘、フラグメント、電荷が減少した、または他のイオンの強度または存在度、または(ii)質量スペクトル、イオン移動度スペクトルまたは他のスペクトルの第1の質量範囲または第1の質量電荷比範囲内の1つ以上の第1の親、前駆体、娘、フラグメント、電荷が減少した、または他のイオンの強度または存在度のいずれかを推定、決定または測定することによって、第1のイオンの少なくともいくつかがフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを推定、決定または測定するように構成および適合される。
【0046】
制御システムは、好ましくは、1つ以上の第2の親、前駆体、娘、フラグメント、電荷が減少した、または他のイオンの強度または存在度に対する、質量スペクトルまたはイオン移動度スペクトルの第1の質量範囲または第1の質量電荷比範囲内の1つ以上の第1の親、前駆体、娘、フラグメント、電荷が減少した、または他のイオンの強度または存在度を推定、決定または測定することによって、第1のイオンの少なくともいくつかがフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを推定、決定または測定するように構成および適合される。
【0047】
第1の質量範囲または第1の質量電荷比範囲は、好ましくは、(i)<10、(ii)10〜50、(iii)50〜100、(iv)100〜200、(v)200〜300、(vi)300〜400、(vii)400〜500、(viii)500〜600、(ix)600〜700、(x)700〜800、(xi)800〜900、(xii)900〜1000、(xiii)1000〜1100、(xiv)1100〜1200、(xv)1200〜1300、(xvi)1300〜1400、(xvii)1400〜1500、(xviii)1500〜1600、(xix)1600〜1700、(xx)1700〜1800、(xxi)1800〜1900、(xxii)1900〜2000、および(xxiii)>2000からなる群から選択される質量単位または質量電荷比単位の幅を有する。
【0048】
好適な実施形態によると、制御システムは、第1のイオンの少なくともいくつかがフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを変更、変化、増大または低減して、イオン存在度測定値、イオン強度測定値またはイオン比を所望の値および/または所望の範囲内に維持するように構成および適合される。
【0049】
所望の値および/または所望の範囲は、好ましくは、(i)<0.1、(ii)0.1〜0.2、(iii)0.2〜0.3、(iv)0.3〜0.4、(v)0.4〜0.5、(vi)0.5〜0.6、(vii)0.6〜0.7、(viii)0.7〜0.8、(ix)0.8〜0.9、(x)0.9〜1.0、(xi)1.0〜1.1、(xii)1.1〜1.2、(xiii)1.2〜1.3、(xiv)1.3〜1.4、(xv)1.4〜1.5、(xvi)1.5〜1.6、(xvii)1.6〜1.7、(xviii)1.7〜1.8、(xix)1.8〜1.9、(xx)1.9〜2.0、(xxi)2.0〜2.1、(xxii)2.1〜2.2、(xxiii)2.2〜2.3、(xxiv)2.3〜2.4、(xxv)2.4〜2.5、(xxvi)2.5〜2.6、(xxvii)2.6〜2.7、(xxviii)2.7〜2.8、(xxix)2.8〜2.9、(xxx)2.9〜3.0、(xxxi)3.0〜3.1、(xxxii)3.1〜3.2、(xxxiii)3.2〜3.3、(xxxiv)3.3〜3.4、(xxxv)3.4〜3.5、(xxxvi)3.5〜3.6、(xxxvii)3.6〜3.7、(xxxviii)3.7〜3.8、(xxxix)3.8〜3.9、(xl)3.9〜4.0、(xli)4.0〜4.1、(xlii)4.1〜4.2、(xliii)4.2〜4.3、(xliv)4.3〜4.4、(xlv)4.4〜4.5、(xlvi)4.5〜4.6、(xlvii)4.6〜4.7、(xlviii)4.7〜4.8、(xlix)4.8〜4.9、(l)4.9〜5.0、および(li)>5.0からなる群から選択される。
【0050】
制御システムが、イオン存在度測定値、イオン強度測定値またはイオン比が比較的高いか、または閾値を超えると判定した場合、好ましくは、1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減して、イオン存在度測定値、イオン強度測定値またはイオン比を低減するように構成および適合される。
【0051】
制御システムが、イオン存在度測定値、イオン強度測定値またはイオン比が比較的低いか、または閾値を下回る判定した場合、好ましくは、1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減して、イオン存在度測定値、イオン強度測定値またはイオン比を増大するように構成および適合される。
【0052】
イオンガイドは、好ましくは、使用時にイオンが移送される少なくとも1つの開口を有する複数の電極を含む。
【0053】
一実施形態によると、電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、実質的に円形、矩形、正方形または楕円形の開口を有する。
【0054】
一実施形態によると、電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%は、実質的に同じ第1のサイズを有するか、もしくは実質的に同じ第1の面積を有する開口を有し、および/または電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%は、実質的に同じ第2の異なるサイズを有するか、もしくは実質的に同じ第2の異なる面積を有する開口を有する。
【0055】
一実施形態によると、電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、サイズまたは面積がイオンガイドの軸に沿った方向へいくにつれ順次より大きくおよび/またはより小さくなる開口を有する。
【0056】
一実施形態によると、電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、および(xi)>10.0mmからなる群から選択される内径または寸法を有する開口を有する。
【0057】
一実施形態によると、電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、および(xv)0.25mm以下からなる群から選択される軸方向距離だけ互いに間隔を開けられる。
【0058】
一実施形態によると、複数の電極のうちの少なくともいくつかは、開口を含み、かつ開口の内径または寸法の隣接する電極間の中心−中心軸方向間隔に対する比は、(i)<1.0、(ii)1.0〜1.2、(iii)1.2〜1.4、(iv)1.4〜1.6、(v)1.6〜1.8、(vi)1.8〜2.0、(vii)2.0〜2.2、(viii)2.2〜2.4、(ix)2.4〜2.6、(x)2.6〜2.8、(xi)2.8〜3.0、(xii)3.0〜3.2、(xiii)3.2〜3.4、(xiv)3.4〜3.6、(xv)3.6〜3.8、(xvi)3.8〜4.0、(xvii)4.0〜4.2、(xviii)4.2〜4.4、(xix)4.4〜4.6、(xx)4.6〜4.8、(xxi)4.8〜5.0、および(xxii)>5.0からなる群から選択される。
【0059】
一実施形態によると、複数の電極の開口の内径は、イオンガイドの長軸に沿って1回以上順次増大または低減し、そして次いで順次低減または増大する。
【0060】
一実施形態によると、複数の電極は、幾何体積を規定し、ここで、幾何体積は、(i)1つ以上の球、(ii)1つ以上の扁平楕円体、(iii)1つ以上の扁長楕円体、(iv)1つ以上の楕円体、および(v)1つ以上の不等辺楕円体からなる群から選択される。
【0061】
一実施形態によると、イオンガイドは、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mm、および(xi)>200mmからなる群から選択される長さを有する。
【0062】
一実施形態によると、イオンガイドは、少なくとも(i)1〜10個の電極、(ii)10〜20個の電極、(iii)20〜30個の電極、(iv)30〜40個の電極、(v)40〜50個の電極、(vi)50〜60個の電極、(vii)60〜70個の電極、(viii)70〜80個の電極、(ix)80〜90個の電極、(x)90〜100個の電極、(xi)100〜110個の電極、(xii)110〜120個の電極、(xiii)120〜130個の電極、(xiv)130〜140個の電極、(xv)140〜150個の電極、(xvi)150〜160個の電極、(xvii)160〜170個の電極、(xviii)170〜180個の電極、(xix)180〜190個の電極、(xx)190〜200個の電極、および(xxi)>200個の電極を含む。
【0063】
一実施形態によると、電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、および(xv)0.25mm以下からなる群から選択される厚さまたは軸方向長さを有する。
【0064】
一実施形態によると、複数の電極のピッチ間隔または軸方向間隔は、イオンガイドの長軸に沿って1回以上順次低減または増大する。
【0065】
好ましさがやや低い実施形態によると、イオンガイドは、複数のセグメント化ロッド電極を含み得る。
【0066】
好ましさがやや低い実施形態によると、イオンガイドは、1つ以上の第1の電極と;1つ以上の第2の電極と;使用時にイオンが進行する平面に配置される1つ以上の層の中間電極であって、1つ以上の層の中間電極は、1つ以上の第1の電極と1つ以上の第2の電極との間に配置され、かつ1つ以上の層の中間電極は、1つ以上の層の平面電極またはプレート電極を含み、かつ1つ以上の第1の電極は、最上部の電極であり、かつ1つ以上の第2の電極は、最下部の電極である、1つ以上の層の中間電極とを含み得る。
【0067】
一実施形態によると、(a)静的イオン−イオン反応領域、イオン−中性ガス反応領域または反応体積がイオンガイド中に形成または生成されるか、または(b)動的イオン−イオン反応領域、イオン−中性ガス反応領域または反応体積がイオンガイド中に形成または生成される。
【0068】
質量分析計は、好ましくは、(a)イオンガイドを、動作モードにおいて、(i)<100mbar、(ii)<10mbar、(iii)<1mbar、(iv)<0.1mbar、(v)<0.01mbar、(vi)<0.001mbar、(vii)<0.0001mbar、および(viii)<0.00001mbarからなる群から選択される圧力に維持する、および/または
(b)イオンガイドを、動作モードにおいて、(i)>100mbar、(ii)>10mbar、(iii)>1mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>0.01mbar、(vi)>0.001mbar、および(vii)>0.0001mbarからなる群から選択される圧力に維持する、および/または
(c)イオンガイドを、動作モードにおいて、(i)0.0001〜0.001mbar、(ii)0.001〜0.01mbar、(iii)0.01〜0.1mbar、(iv)0.1〜1mbar、(v)1〜10mbar、(vi)10〜100mbar、および(vii)100〜1000mbarからなる群から選択される圧力に維持する、のいずれかに構成および適合されるデバイスをさらに含み得る。
【0069】
一実施形態によると、イオンガイド内の第1のイオンのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%についての滞留、過渡または反応の時間は、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜5ミリ秒、(iii)5〜10ミリ秒、(iv)10〜15ミリ秒、(v)15〜20ミリ秒、(vi)20〜25ミリ秒、(vii)25〜30ミリ秒、(viii)30〜35ミリ秒、(ix)35〜40ミリ秒、(x)40〜45ミリ秒、(xi)45〜50ミリ秒、(xii)50〜55ミリ秒、(xiii)55〜60ミリ秒、(xiv)60〜65ミリ秒、(xv)65〜70ミリ秒、(xvi)70〜75ミリ秒、(xvii)75〜80ミリ秒、(xviii)80〜85ミリ秒、(xix)85〜90ミリ秒、(xx)90〜95ミリ秒、(xxi)95〜100ミリ秒、(xxii)100〜105ミリ秒、(xxiii)105〜110ミリ秒、(xxiv)110〜115ミリ秒、(xxv)115〜120ミリ秒、(xxvi)120〜125ミリ秒、(xxvii)125〜130ミリ秒、(xxviii)130〜135ミリ秒、(xxix)135〜140ミリ秒、(xxx)140〜145ミリ秒、(xxxi)145〜150ミリ秒、(xxxii)150〜155ミリ秒、(xxxiii)155〜160ミリ秒、(xxxiv)160〜165ミリ秒、(xxxv)165〜170ミリ秒、(xxxvi)170〜175ミリ秒、(xxxvii)175〜180ミリ秒、(xxxviii)180〜185ミリ秒、(xxxix)185〜190ミリ秒、(xl)190〜195ミリ秒、(xli)195〜200ミリ秒、および(xlii)>200ミリ秒からなる群から選択される。
【0070】
一実施形態によると、イオンガイド内の第2のイオンのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%についての滞留、過渡または反応の時間は、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜5ミリ秒、(iii)5〜10ミリ秒、(iv)10〜15ミリ秒、(v)15〜20ミリ秒、(vi)20〜25ミリ秒、(vii)25〜30ミリ秒、(viii)30〜35ミリ秒、(ix)35〜40ミリ秒、(x)40〜45ミリ秒、(xi)45〜50ミリ秒、(xii)50〜55ミリ秒、(xiii)55〜60ミリ秒、(xiv)60〜65ミリ秒、(xv)65〜70ミリ秒、(xvi)70〜75ミリ秒、(xvii)75〜80ミリ秒、(xviii)80〜85ミリ秒、(xix)85〜90ミリ秒、(xx)90〜95ミリ秒、(xxi)95〜100ミリ秒、(xxii)100〜105ミリ秒、(xxiii)105〜110ミリ秒、(xxiv)110〜115ミリ秒、(xxv)115〜120ミリ秒、(xxvi)120〜125ミリ秒、(xxvii)125〜130ミリ秒、(xxviii)130〜135ミリ秒、(xxix)135〜140ミリ秒、(xxx)140〜145ミリ秒、(xxxi)145〜150ミリ秒、(xxxii)150〜155ミリ秒、(xxxiii)155〜160ミリ秒、(xxxiv)160〜165ミリ秒、(xxxv)165〜170ミリ秒、(xxxvi)170〜175ミリ秒、(xxxvii)175〜180ミリ秒、(xxxviii)180〜185ミリ秒、(xxxix)185〜190ミリ秒、(xl)190〜195ミリ秒、(xli)195〜200ミリ秒、および(xlii)>200ミリ秒からなる群から選択される。
【0071】
一実施形態によると、イオンガイド内で生成または形成されたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%についての滞留、過渡または反応の時間は、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜5ミリ秒、(iii)5〜10ミリ秒、(iv)10〜15ミリ秒、(v)15〜20ミリ秒、(vi)20〜25ミリ秒、(vii)25〜30ミリ秒、(viii)30〜35ミリ秒、(ix)35〜40ミリ秒、(x)40〜45ミリ秒、(xi)45〜50ミリ秒、(xii)50〜55ミリ秒、(xiii)55〜60ミリ秒、(xiv)60〜65ミリ秒、(xv)65〜70ミリ秒、(xvi)70〜75ミリ秒、(xvii)75〜80ミリ秒、(xviii)80〜85ミリ秒、(xix)85〜90ミリ秒、(xx)90〜95ミリ秒、(xxi)95〜100ミリ秒、(xxii)100〜105ミリ秒、(xxiii)105〜110ミリ秒、(xxiv)110〜115ミリ秒、(xxv)115〜120ミリ秒、(xxvi)120〜125ミリ秒、(xxvii)125〜130ミリ秒、(xxviii)130〜135ミリ秒、(xxix)135〜140ミリ秒、(xxx)140〜145ミリ秒、(xxxi)145〜150ミリ秒、(xxxii)150〜155ミリ秒、(xxxiii)155〜160ミリ秒、(xxxiv)160〜165ミリ秒、(xxxv)165〜170ミリ秒、(xxxvi)170〜175ミリ秒、(xxxvii)175〜180ミリ秒、(xxxviii)180〜185ミリ秒、(xxxix)185〜190ミリ秒、(xl)190〜195ミリ秒、(xli)195〜200ミリ秒、および(xlii)>200ミリ秒からなる群から選択される。
【0072】
一実施形態によると、イオンガイドは、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜10ミリ秒、(iii)10〜20ミリ秒、(iv)20〜30ミリ秒、(v)30〜40ミリ秒、(vi)40〜50ミリ秒、(vii)50〜60ミリ秒、(viii)60〜70ミリ秒、(ix)70〜80ミリ秒、(x)80〜90ミリ秒、(xi)90〜100ミリ秒、(xii)100〜200ミリ秒、(xiii)200〜300ミリ秒、(xiv)300〜400ミリ秒、(xv)400〜500ミリ秒、(xvi)500〜600ミリ秒、(xvii)600〜700ミリ秒、(xviii)700〜800ミリ秒、(xix)800〜900ミリ秒、(xx)900〜1000ミリ秒、(xxi)1〜2秒、(xxii)2〜3秒、(xxiii)3〜4秒、(xxiv)4〜5秒、および(xxv)>5秒からなる群から選択されるサイクル時間を有する。
【0073】
一実施形態によると、
(a)動作モードにおいて、第1のイオンおよび/もしくは第2のイオンは、イオンガイド内でトラップされるが、実質的にフラグメンテーションおよび/もしくは反応および/もしくは電荷減少がされないように構成および適合され、ならびに/または
(b)動作モードにおいて、第1のイオンおよび/もしくは第2のイオンは、イオンガイド内で衝突により冷却されるか、または実質的に熱化されるように構成および適合され、ならびに/または
(c)動作モードにおいて、第1のイオンおよび/もしくは第2のイオンは、イオンガイド内で実質的にフラグメンテーションおよび/もしくは反応および/もしくは電荷減少がされるように構成および適合され、ならびに/または
(d)動作モードにおいて、第1のイオンおよび/もしくは第2のイオンは、イオンガイドの入口および/もしくは出口に配置される1つ以上の電極によってイオンガイド中へおよび/もしくはそこからパルスとして入射および/もしくは出射されるように構成および適合される。
【0074】
一実施形態によると、
(a)動作モードにおいて、イオンの大部分は、衝突誘起解離によってフラグメンテーションされて、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを形成するように構成され、ここで、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンの大多数は、b−タイプのプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンおよび/またはy−タイプのプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンであり、および/または
(b)動作モードにおいて、イオンの大部分は、電子移動解離によってフラグメンテーションされて、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを形成するように構成され、ここで、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンの大多数は、c−タイプのプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンおよび/またはz−タイプのプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンである。
【0075】
一実施形態によると、電子移動解離を実施するために、(a)分析種イオンは、試薬イオンとの相互作用時にフラグメンテーションされるか、またはプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、および/または(b)電子は、1つ以上の試薬のアニオンもしくは負電荷のイオンから1つ以上の多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンに移動し、この時に、多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、および/または(c)分析種イオンは、中性試薬ガスの分子もしくは原子または非イオン試薬ガスとの相互作用時にフラグメンテーションされるか、またはプロダクトイオンまたはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、および/または(d)電子は、1つ以上の中性、非イオンまたは非荷電塩基のガスまたは蒸気から1つ以上の多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンに移動し、この時に、多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、および/または(e)電子は、1つ以上の中性、非イオンまたは非荷電超強塩基の試薬ガスまたは試薬蒸気から1つ以上の多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンに移動し、この時に、多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、および/または(f)電子は、1つ以上の中性、非イオンまたは非荷電のアルカリ金属のガスまたは蒸気から1つ以上の多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンに移動し、この時に、多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、および/または(g)電子は、1つ以上の中性、非イオンまたは非荷電のガス、蒸気または原子から1つ以上の多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンに移動し、この時に、多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導され、ここで、1つ以上の中性、非イオンまたは非荷電のガス、蒸気または原子は、(i)ナトリウムの蒸気または原子、(ii)リチウムの蒸気または原子、(iii)カリウムの蒸気または原子、(iv)ルビジウムの蒸気または原子、(v)セシウムの蒸気または原子、(vi)フランシウムの蒸気または原子、(vii)C60の蒸気または原子、および(viii)マグネシウムの蒸気または原子からなる群から選択される、のいずれかである、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【0076】
多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンは、好ましくは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質または生体分子を含む。
【0077】
一実施形態によると、電子移動解離を実施するために、(a)試薬のアニオンもしくは負電荷のイオンは、ポリ芳香族炭化水素もしくは置換ポリ芳香族炭化水素から得られ、および/または(b)試薬のアニオンもしくは負電荷のイオンは、(i)アントラセン、(ii)9,10ジフェニル−アントラセン、(iii)ナフタレン、(iv)フッ素、(v)フェナントレン、(vi)ピレン、(vii)フルオランテン、(viii)クリセン、(ix)トリフェニレン、(x)ペリレン、(xi)アクリジン、(xii)2,2’ジピリジル、(xiii)2,2’ビキノリン、(xiv)9−アントラセンカルボニトリル、(xv)ジベンゾチオフェン、(xvi)1,10’−フェナントロリン、(xvii)9’アントラセンカルボニトリル、および(xviii)アントラキノンからなる群から得られ、および/または(c)試薬のイオンまたは負電荷のイオンは、アゾベンゼンアニオンまたはアゾベンゼンラジカルアニオンを含む。
【0078】
一実施形態によると、プロトン移動反応を実施するために、(i)プロトンは、1つ以上の多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンから1つ以上の試薬のアニオンもしくは負電荷のイオンに移動し、この時に、多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、電荷状態が低減され、および/もしくはプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、ならびに/または(ii)プロトンは、1つ以上の多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンから1つ以上の中性、非イオンもしくは非荷電の試薬ガスまたは試薬蒸気に移動し、この時に、多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、電荷状態が低減され、および/またはプロダクトイオンまたはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、のいずれかである。
【0079】
多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンは、好ましくは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質または生体分子を含む。
【0080】
一実施形態によると、プロトン移動反応を実施するために、(a)試薬のアニオンもしくは負電荷のイオンは、(i)カルボン酸、(ii)フェノール、および(iii)アルコキシドを含む化合物からなる群から選択される化合物から得られる、および/または(b)試薬のアニオンもしくは負電荷のイオンは、(i)安息香酸、(ii)過フルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサンもしくはPDCH、(iii)六フッ化硫黄もしくはSF6、および(iv)過フルオロトリブチルアミンもしくはPFTBAからなる群から選択される化合物から得られる、および/または(c)1つ以上の試薬ガスもしくは試薬蒸気は、超強塩基ガスを含む、および/または(d)1つ以上の試薬ガスまたは試薬蒸気は、(i)1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(「TMG」)、(ii)2,3,4,6,7,8、9,10−オクタヒドロピリミドール[1,2−a]アゼピン{異名:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(「DBU」)}、または(iii)7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(「MTBD」){異名:1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−1−メチル−2H−ピリミド[1,2−a]ピリミジン}からなる群から選択される、のいずれかである。
【0081】
質量分析計は、好ましくは、電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置されるイオン源をさらに含み、イオン源は、(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコン上脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝突(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電場イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電場脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、(xvi)ニッケル−63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザ脱離イオン化イオン源、(xviii)熱スプレーイオン源、(xix)大気サンプリンググロー放電イオン化(「ASGDI」)イオン源、および(xx)グロー放電(「GD」)イオン源からなる群から選択される。
【0082】
質量分析計は、好ましくは、1つ以上の連続イオン源またはパルスイオン源をさらに含む。質量分析計は、好ましくは、電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のイオンガイドをさらに含む。質量分析計は、好ましくは、電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のイオン移動度分離デバイスおよび/または1つ以上の電場非対称イオン移動度分光計デバイスをさらに含む。
【0083】
質量分析計は、好ましくは、電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のイオントラップまたは1つ以上のイオントラップ領域をさらに含む。質量分析計は、好ましくは、電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上の衝突、フラグメンテーションまたは反応セルをさらに含み、ここで1つ以上の衝突、フラグメンテーションまたは反応セルは、(i)衝突誘起解離(「CID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(iii)電子移動解離(「ETD」)フラグメンテーションデバイス、(iv)電子捕獲解離(「ECD」)フラグメンテーションデバイス、(v)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(vi)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vii)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(viii)赤外放射誘起解離デバイス、(ix)紫外放射誘起解離デバイス、(x)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(xi)インソースフラグメンテーションデバイス、(xii)インソース衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xiii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiv)電場誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xvi)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加またはプロダクトイオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加またはプロダクトイオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加またはプロダクトイオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加またはプロダクトイオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxvii)イオンを反応させて付加またはプロダクトイオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、(xxviii)イオンを反応させて付加またはプロダクトイオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイス、および(xxix)電子イオン化解離(「EID」)フラグメンテーションデバイスからなる群から選択される。
【0084】
質量分析計は、好ましくは、(i)四重極質量分析部、(ii)二次元または線形四重極質量分析部、(iii)ポールまたは三次元四重極質量分析部、(iv)ペニングトラップ質量分析部、(v)イオントラップ質量分析部、(vi)磁場セクタ質量分析部、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(「ICR」)質量分析部、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析部、(ix)静電またはオービトラップ質量分析部、(x)フーリエ変換静電またはオービトラップ質量分析部、(xi)フーリエ変換質量分析部、(xii)飛行時間質量分析部、(xiii)直交加速飛行時間質量分析部、および(xiv)直線加速飛行時間質量分析部からなる群から選択される質量分析部をさらに含む。質量分析計は、好ましくは、電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のエネルギー分析部または静電エネルギー分析部をさらに含む。質量分析計は、好ましくは、電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のイオン検出器をさらに含む。
【0085】
質量分析計は、好ましくは、電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上の質量フィルタをさらに含み、ここで、1つ以上の質量フィルタは、(i)四重極質量分析部、(ii)二次元または線形四重極質量分析部、(iii)ポールまたは三次元四重極質量分析部、(iv)ペニングトラップ質量分析部、(v)イオントラップ質量分析部、(vi)磁場セクタ質量分析部、(vii)飛行時間質量フィルタ、および(viii)ウィーンフィルタからなる群から選択される。質量分析計は、好ましくは、イオンをパルスにして電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスへ入力するためのデバイスまたはイオンゲートをさらに含む。質量分析計は、好ましくは、実質的に連続なイオンビームをパルスイオンビームに変換するためのデバイスをさらに含む。
【0086】
質量分析計は、好ましくは、(a)分析種イオンおよび/または試薬イオンを生成するための1つ以上の大気圧イオン源、および/または(b)分析種イオンおよび/または試薬イオンを生成するための1つ以上のエレクトロスプレーイオン源、および/または(c)分析種イオンおよび/または試薬イオンを生成するための1つ以上の大気圧化学イオン源、および/または(d)分析種イオンおよび/または試薬イオンを生成するための1つ以上のグロー放電イオン源をさらに含む。
【0087】
一実施形態によると、好ましくは、1つ以上のグロー放電イオン源が質量分析計の1つ以上の真空チャンバに備えられてもよい。
【0088】
一実施形態によると、質量分析計は、C−トラップと、オービトラップ質量分析部とを含み得る。ここで、第1の動作モードにおいて、イオンは、C−トラップへ移送され、そして次いでオービトラップ質量分析部中へ注入され、かつ第2の動作モードにおいて、イオンは、C−トラップへ移送され、そして次いで衝突セルまたは電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイス中へ移送され、ここで少なくともいくつかのイオンは、フラグメントイオンへフラグメンテーションされ、そして次いでフラグメントイオンは、C−トラップへ移送され、その後オービトラップ質量分析部中へ注入される。
【0089】
質量分析計は、好ましくは、使用時にイオンが移送される開口を有する複数の電極を含む積層リングイオンガイドであって、電極の間隔は、イオン経路の長さに沿って増大する、積層リングイオンガイドをさらに含む。イオンガイドの上流部分における電極中の開口は、第1の直径を有し、かつイオンガイドの下流部分における電極中の開口は、第1の直径よりも小さな第2の直径を有し得る。AC電圧またはRF電圧の互いに反対の位相が好ましくは連続した電極に印加される。
【0090】
本発明の別の局面によると、複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスと制御システムとを含む質量分析計の制御システムによって実行可能なコンピュータプログラムが提供される。コンピュータプログラムは、制御システムに
少なくともいくつかの第1のイオンがイオンガイドを通って移送される際に第1のイオンが電子移動解離および/またはプロトン移動反応によってフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを推定、決定または測定し、そしてそれに応答して、第1のイオンがイオンガイドを通過する際の第1のイオンの移送および/またはフラグメンテーションの度合いおよび/または電荷減少の度合いに影響する1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減するようにさせるように構成される。
【0091】
本発明の別の局面によると、コンピュータによって実行可能な命令を含むコンピュータによって読み取り可能な媒体が提供される。命令は、複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスを含む質量分析計の制御システムによって実行可能なように構成され、コンピュータプログラムは、制御システムに
少なくともいくつかの第1のイオンがイオンガイドを通って移送される際に第1のイオンが電子移動解離および/またはプロトン移動反応によってフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを推定、決定または測定し、そしてそれに応答して、第1のイオンがイオンガイドを通過する際の第1のイオンの移送および/またはフラグメンテーションの度合いおよび/または電荷減少の度合いに影響する1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減するようにさせるように構成される。
【0092】
コンピュ−タによって読み取り可能な媒体は、好ましくは、(i)ROM、(ii)EAROM、(iii)EPROM、(iv)EEPROM、(v)フラッシュメモリ、および(vi)光学ディスクからなる群から選択される。
【0093】
本発明の別の局面によると、複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスを準備するステップと、
少なくともいくつかの第1のイオンがイオンガイドを通って移送される際に第1のイオンが電子移動解離および/またはプロトン移動反応によってフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを推定、決定または測定し、そしてそれに応答して、第1のイオンがイオンガイドを通過する際の第1のイオンの移送および/またはフラグメンテーションの度合いおよび/または電荷減少の度合いに影響する1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減するステップと
を含む質量分析の方法が提供される。
【0094】
本発明の別の局面によると、
複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスと、
制御システムであって、
(i)イオンガイドから出現する第1の電荷状態を有する1つ以上の親イオンまたは前駆体イオンの強度または存在度I1を決定し、
(ii)イオンガイドから出現し、かつ電荷が減少した親イオンまたは前駆体イオンに対応し、かつ第1の電荷状態より低い第2の電荷状態を有する1つ以上のイオンの強度または存在度I2を決定し、および
(iii)電極に印加される1つ以上の過渡DC電圧の速度および/または振幅を変更して、比I1/I2または比I2/I1を時間が経過しても実質的に一定の値Rに維持する
ように構成および適合される制御システムと
を含む質量分析計が提供される。
【0095】
本発明の別の局面によると、
複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスと、
制御システムであって、
(i)イオンガイドから出現する第1の電荷状態を有する1つ以上の親イオンまたは前駆体イオンの強度または存在度I1を決定し、
(ii)イオンガイドから出現し、かつフラグメンテーションされた親イオンまたは前駆体イオンに対応する1つ以上のイオンの強度または存在度I2を決定し、および
(iii)電極に印加される1つ以上の過渡DC電圧の速度および/または振幅を変更して、比I1/I2または比I2/I1を時間が経過しても実質的に一定の値Rに維持する
ように構成および適合される制御システムと
を含む質量分析計が提供される。
【0096】
値Rは、好ましくは、(i)<0.1、(ii)0.1〜0.2、(iii)0.2〜0.3、(iv)0.3〜0.4、(v)0.4〜0.5、(vi)0.5〜0.6、(vii)0.6〜0.7、(viii)0.7〜0.8、(ix)0.8〜0.9、(x)0.9〜1.0、(xi)1.0〜1.1、(xii)1.1〜1.2、(xiii)1.2〜1.3、(xiv)1.3〜1.4、(xv)1.4〜1.5、(xvi)1.5〜1.6、(xvii)1.6〜1.7、(xviii)1.7〜1.8、(xix)1.8〜1.9、(xx)1.9〜2.0、(xxi)2.0〜2.1、(xxii)2.1〜2.2、(xxiii)2.2〜2.3、(xxiv)2.3〜2.4、(xxv)2.4〜2.5、(xxvi)2.5〜2.6、(xxvii)2.6〜2.7、(xxviii)2.7〜2.8、(xxix)2.8〜2.9、(xxx)2.9〜3.0、(xxxi)3.0〜3.1、(xxxii)3.1〜3.2、(xxxiii)3.2〜3.3、(xxxiv)3.3〜3.4、(xxxv)3.4〜3.5、(xxxvi)3.5〜3.6、(xxxvii)3.6〜3.7、(xxxviii)3.7〜3.8、(xxxix)3.8〜3.9、(xl)3.9〜4.0、(xli)4.0〜4.1、(xlii)4.1〜4.2、(xliii)4.2〜4.3、(xliv)4.3〜4.4、(xlv)4.4〜4.5、(xlvi)4.5〜4.6、(xlvii)4.6〜4.7、(xlviii)4.7〜4.8、(xlix)4.8〜4.9、(l)4.9〜5.0、および(li)>5.0からなる群から選択される。
【0097】
本発明の別の局面によると、
複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスを準備するステップと、
イオンガイドから出現する第1の電荷状態を有する1つ以上の親イオンまたは前駆体イオンの強度または存在度I1を決定するステップと、
イオンガイドから出現し、かつ電荷が減少した親イオンまたは前駆体イオンに対応し、かつ第1の電荷状態より低い第2の電荷状態を有する1つ以上のイオンの強度または存在度I2を決定するステップと、
電極に印加される1つ以上の過渡DC電圧の速度および/または振幅を変更して、比I1/I2または比I2/I1を時間が経過しても実質的に一定の値Rに維持するステップと
を含む質量分析の方法が提供される。
【0098】
本発明の別の局面によると、
複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスを準備するステップと、
イオンガイドから出現する第1の電荷状態を有する1つ以上の親イオンまたは前駆体イオンの強度または存在度I1を決定するステップと、
イオンガイドから出現し、かつフラグメンテーションされた親イオンまたは前駆体イオンに対応する1つ以上のイオンの強度または存在度I2を決定するステップと、
電極に印加される1つ以上の過渡DC電圧の速度および/または振幅を変更して、比I1/I2または比I2/I1を時間が経過しても実質的に一定の値Rに維持するステップと
を含む質量分析の方法が提供される。
【0099】
値Rは、(i)<0.1、(ii)0.1〜0.2、(iii)0.2〜0.3、(iv)0.3〜0.4、(v)0.4〜0.5、(vi)0.5〜0.6、(vii)0.6〜0.7、(viii)0.7〜0.8、(ix)0.8〜0.9、(x)0.9〜1.0、(xi)1.0〜1.1、(xii)1.1〜1.2、(xiii)1.2〜1.3、(xiv)1.3〜1.4、(xv)1.4〜1.5、(xvi)1.5〜1.6、(xvii)1.6〜1.7、(xviii)1.7〜1.8、(xix)1.8〜1.9、(xx)1.9〜2.0、(xxi)2.0〜2.1、(xxii)2.1〜2.2、(xxiii)2.2〜2.3、(xxiv)2.3〜2.4、(xxv)2.4〜2.5、(xxvi)2.5〜2.6、(xxvii)2.6〜2.7、(xxviii)2.7〜2.8、(xxix)2.8〜2.9、(xxx)2.9〜3.0、(xxxi)3.0〜3.1、(xxxii)3.1〜3.2、(xxxiii)3.2〜3.3、(xxxiv)3.3〜3.4、(xxxv)3.4〜3.5、(xxxvi)3.5〜3.6、(xxxvii)3.6〜3.7、(xxxviii)3.7〜3.8、(xxxix)3.8〜3.9、(xl)3.9〜4.0、(xli)4.0〜4.1、(xlii)4.1〜4.2、(xliii)4.2〜4.3、(xliv)4.3〜4.4、(xlv)4.4〜4.5、(xlvi)4.5〜4.6、(xlvii)4.6〜4.7、(xlviii)4.7〜4.8、(xlix)4.8〜4.9、(l)4.9〜5.0、および(li)>5.0からなる群から選択される。
【0100】
第1および第2の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形または過渡DC進行波は、ETDデバイスまたはPTRデバイスのイオンガイドの電極に逐次または同時に印加され得る。
【0101】
異なる種のカチオンおよび/または試薬イオンがETDデバイスまたはPTRデバイスの両端からデバイスへ入力される実施形態が考えられる。
【0102】
一実施形態によると、ETDデバイスまたはPTRデバイスは、2つの隣接するイオントンネル部分を含み得る。第1のイオントンネル部分における電極は、第1の内径を有し、および第2の部分における電極は、第2の異なる内径(一実施形態によると、第1の内径よりも小さくまたは大きくあり得る)を有し得る。第1および/または第2のイオントンネル部分は、質量分析計のほぼ中心の長軸に対して、傾くか、またはそうでなければ、軸を外れるように配置され得る。これにより、真空チャンバを通って直線的に移動し続ける中性粒子からイオンを分離することが可能となる。
【0103】
また、電子移動解離を実施するために使用される同じ試薬イオンまたは中性試薬ガスを使用して、プロトン移動反応を実施し得え、およびその逆も同様である他の実施形態が考えられる。
【0104】
一実施形態によると、デュアルモードイオン源またはツインイオン源が提供され得る。例えば、一実施形態によると、エレクトロスプレーイオン源を使用して、正の分析種イオンを生成し得、および大気圧化学イオン化イオン源を使用して、負の試薬イオンを生成し得る。また、エレクトロスプレーイオン源、大気圧化学イオン化イオン源またはグロー放電イオン源などの1つのイオン源を使用して、分析種イオンおよび/または試薬イオンを生成し得る実施形態が考えられる。
【0105】
少なくともいくつかの多価分析種カチオンが、少なくともいくつか試薬イオンと相互作用するようにされるのが好ましい。ここで、少なくともいくつかの電子は、試薬アニオンから多価分析種カチオンのうちの少なくともいくつかに移動し、この時に、多価分析種カチオンのうちの少なくともいくつかは、解離するよう誘起されて、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを形成する。
【0106】
上記好適な実施形態は、イオン−イオン反応デバイスおよび/またはイオン−中性ガス反応デバイスに関する。ここで、1つ以上の進行波または静電場が好ましくはRFイオンガイドの電極に印加される。RFイオンガイドは、好ましくは、使用時にイオンが移送される開口を有する複数の電極を含む。好ましくは、1つ以上の進行波または静電場は、好ましくはイオンガイドの電極に印加される1つ以上の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を含む。
【0107】
上記好適な実施形態は、互いに反対の電荷を有するイオンを空間的に操作し、イオン−イオン反応を容易にし、かつ好ましくは最大化、最適化または最小化するように設計される質量分析のためのデバイスに関する。特に、デバイスは、好ましくは、イオンの電子移動解離(「ETD」)フラグメンテーションおよび/またはプロトン移動反応(「PTR」)電荷状態低減を行うように構成および適合される。
【0108】
一実施形態によると、負電荷の試薬イオン(または、中性試薬ガス)は、イオン−イオン反応またはイオン−中性ガスのETDデバイスまたはPTRデバイス中に装填されるか、またはそうでなければ、提供または配置され得る。負電荷の試薬イオンは、例えば、DC進行波または1つ以上の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位をイオン−イオン反応デバイスを形成する電極に印加することによって、イオン−イオンのETDデバイスまたはPTRデバイス中へ移送され得る。
【0109】
一旦試薬アニオン(または、中性試薬ガス)がイオン−イオン反応デバイス(または、イオン−中性ガス反応デバイス)中へ装填されると、次いで多価分析種カチオンが好ましくは1つ以上の後のまたは独立したDC進行波によって反応デバイスを通ってまたはその中へ好ましくは駆動または推進され得る。1つ以上のDC進行波は、好ましくは反応デバイスの電極に印加される。試薬イオンは、好ましくは負電位をイオンガイドの一端または両端に印加することによってイオンガイド内に滞留される。
【0110】
1つ以上のDC進行波は、好ましくはイオンをイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿って並進または推進させるような1つ以上の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を好ましくは含む。したがって、イオンは、好ましくはイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの長さに沿って逐次電極に印加される1つ以上の実電位障壁またはDC電位障壁によって、イオンガイドの長さに沿って有効に並進される。これにより、DC電位障壁間にトラップされた正電荷の分析種イオンは、好ましくはイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの長さに沿って並進され、かつ好ましくはイオンガイドまたは反応デバイス中または内にすでに存在する負電荷の試薬イオン(または、中性試薬ガス)を通っておよび近接して好ましくは駆動または推進される。
【0111】
この実施形態の特に有利な点は、イオン−イオン反応および/またはイオン−中性ガス反応のための最適な状態が好ましくはイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内に実現されることである。さらに、上記好適な実施形態によると、最適な状態は、好ましくはDC進行波の速さ、速度または振幅を変更することによって維持され得る。試薬アニオン(または、試薬ガス)および分析種カチオンの運動エネルギーは、極めて一致するようにされ得る。電子移動解離(または、プロトン移動反応)プロセスから得られるプロダクトイオンまたはフラグメントイオンの滞留時間は、得られたフラグメントイオンまたはプロダクトイオンが通常のようには中性化されないように慎重に制御され得る。
【0112】
本発明の上記好適な実施形態は、分析種イオンのETDフラグメンテーションを最適化しながら主流の(すなわち、非FTICR)市販される質量分析計において有効に電子移動解離および/またはプロトン移動反応を行う能力において、従来の構成に対して著しい改善を与える。
【0113】
好ましくは、例えば、正電荷の分析種イオンをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスを通っておよび/または沿って並進させるために使用される1つ以上のDC進行波の速さおよび/または振幅を制御して、電子移動解離による分析種イオンのフラグメンテーションおよび/またはプロトン移動反応による分析種イオンの電荷状態の低減が最適化され得る。電子移動解離(または、プロトン移動反応)プロセスから得られる正電荷のフラグメントイオンまたはプロダクトイオンは、形成された後もイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内に過度に長く残すことが可能である場合、中性化される可能性がある。上記好適な実施形態によると、正電荷のフラグメントイオンまたはプロダクトイオンは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応内で形成された後、すぐにイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスから取り出されるかまたは引き出されることが可能になる。
【0114】
上記好適な実施形態によると、負電位または負電位障壁は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスもしくはイオン−中性ガス反応デバイスまたはETDもしくはPTRのデバイスの前(例えば、上流)端およびまた後(例えば、下流)端に必要に応じて印加され得る。負電位または負電位障壁は、好ましくは、イオンガイド内に負電荷の試薬イオンを閉じ込めるように働き、同時にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内に生成された正電荷のプロダクトイオンまたはフラグメントイオンがイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスから比較的速く出現または出射することを可能にするか、またはそうさせる。また、分析種イオンが中性ガス分子と相互作用し、そして電子移動解離および/またはプロトン移動反応を受け得る他の実施形態が考えられる。中性試薬ガスが提供される場合、電位障壁が提供されてもよいし、またはされなくてもよい。
【0115】
負電位または負電位障壁がイオンガイドの前(例えば、上流)端のみに印加される他の実施形態が考えられる。負電位または負電位障壁がイオンガイドの後(例えば、下流)端のみに印加されるさらなる実施形態が考えられる。1つ以上の負電位または負電位障壁がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの長さに沿って異なる位置に維持される他の実施形態が考えられる。例えば、1つ以上の負電位または負電位障壁がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの長さに沿って1つ以上の中間位置に提供され得る。
【0116】
好ましさがやや低い実施形態によると、正の分析種イオンが1つ以上の正電位によってイオンガイド内に滞留され、そして次いで試薬イオンまたは中性試薬ガスがイオンガイド中へ導入され得る。
【0117】
一実施形態によると、2つの静電進行波またはDC進行波がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に実質的に同時に印加され得る。進行波静電場または過渡DC電圧波形は、好ましくは、イオンを、例えば、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心領域へ、実質的に同時に互いに反対の方向に移動または並進させるように構成される。
【0118】
好ましくは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスは、好ましくはAC電圧またはRF電圧が供給される複数の積層リング電極を含む。電極は、好ましくは使用時にイオンが移送される開口を含む。イオンは、好ましくは、AC電圧またはRF電圧の互いに反対の位相を隣接する電極に印加して、半径方向の擬電位障壁を好ましくは生成することによって、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内に半径方向に閉じ込められる。半径方向の擬電位障壁は、好ましくは、イオンがイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心長軸に沿って半径方向に閉じ込められるようにする。好ましくはイオンガイドの電極に印加される進行波または複数の過渡DC電位もしくは過渡DC電圧は、好ましくはカチオンおよびアニオン(または、カチオンおよびカチオン、またはアニオンおよびアニオン)が互いに向かって方向付けられ、イオン−イオン反応および/またはイオン−中性ガス反応に好適な状態が好ましくはイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中央(または、他の部分または領域)に生成されるようにされる。
【0119】
一実施形態によると、2つの異なる分析種試料がイオンガイドの異なる端から導入され得る。追加または代替として、2つの異なる種の試薬イオンがイオンガイドの異なる端からイオンガイド中へ導入され得る。
【0120】
上記好適な実施形態に係るイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスは、好ましくは、従来の電子移動解離構成に関連する欠点を回避する。なぜなら、進行波静電場は、軸方向質量電荷比に依存するRF擬電位障壁を生成しないからである。したがって、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内でのイオン閉じ込めは、質量電荷比に依存しない。
【0121】
上記好適な実施形態の他の利点は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加される1つ以上のDC進行波または過渡DC電位もしくは過渡DC電圧の種々のパラメータが制御および最適化され得ることである。例えば、1つ以上のDC進行電圧波の波形、波長、波プロフィール、波速および振幅などのパラメータが制御および最適化され得る。この好適な実施形態によると、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内のイオンの空間位置を、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内のイオンの質量電荷比または極性にかかわらずに柔軟に制御できる。
【0122】
上記好適な実施形態によると、DC進行波パラメータ(すなわち、電極に印加される1つ以上の過渡DC電圧または過渡DC電位のパラメータ)は、イオンガイドまたは反応デバイスのイオン−イオン反応またはイオン−中性ガス領域におけるカチオンおよびアニオン(または、分析種カチオンおよび中性試薬ガス)間の相対的なイオン速度を支配できるように最適化され得る。カチオンおよびアニオンまたはカチオンおよび中性試薬ガス間の相対的なイオン速度は、好ましくは電子移動解離およびタンパク質移動反応の実験において反応速度定数を決定する重要なパラメータである。
【0123】
また、イオン−中性衝突の速度が、高速進行波または定在もしくは静的DC波のいずれかを使用して増大され得る他の実施形態も考えられる。また、そのような衝突を利用して、衝突誘起解離(「CID」)を促進し得る。特に、電子移動解離またはプロトン移動反応から得られたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンは、非共有結合を形成し得る。次いで、これらの非共有結合は、衝突誘起解離によって破壊され得る。衝突誘起解離は独立した衝突誘起解離セルにおいて電子移動解離のプロセスに対して空間的に逐次行われるか、および/または同じイオン−イオン反応またはイオン−中性ガス反応デバイスにおいて電子移動解離プロセスに対して時間的に逐次行われ得る。
【0124】
本発明の一実施形態によると、電子移動解離のプロセスの後に(または前に)プロトン移動反応が行われ、多価フラグメントイオンまたはプロダクトイオン(または、分析種イオン)の電荷状態を低減し得る。
【0125】
一実施形態によると、電子移動解離のために使用される試薬イオンおよびプロトン移動反応のために使用される試薬イオンは、同じのまたは異なる中性化合物から生成され得る。試薬イオンおよび分析種イオンは、同じイオン源または2つ以上の独立したイオン源によって生成され得る。
【0126】
本発明の一実施形態によると、プロダクトイオンスペクトルにおいて、電荷が減少したカチオンまたは電荷が減少した分析種イオンの強度の電荷の減少のない親カチオンの強度に対する比をリアルタイムに監視するデータ指向分析(「DDA」)の新しい方法が提供される。好ましくは、この比を利用して、電子移動解離および/またはプロトン移動反応の度合いを規定する機器パラメータを制御する。これにより、フラグメントイオン効率は、リアルタイムにかつ液体クロマトグラフィ(LC)のピーク溶出時間尺度と同等の時間尺度で最大化され得る。
【0127】
好ましくは、上記好適な実施形態は、好ましくは電荷が減少した分析種カチオンの親分析種カチオンに対する存在度の比にもとづいて、フラグメントおよび/または電荷が減少したイオンの存在度を最大化または変更する機器パラメータのリアルタイムフィードバック制御を提供する。
【0128】
ここで、添付の図面を参照し、本発明の種々の実施形態を、あくまで例として、説明する。
【0129】
図1は、2つの過渡DC電圧または過渡DC電位が同時にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加され、分析種カチオンおよび試薬アニオンがともにイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心領域に運搬されることを示す。
【0130】
図2は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加される進行DC電圧波形を使用して、正イオンおよび負イオンが同じ方向に同時に並進され得る様子を例示する。
【0131】
図3は、本発明の一実施形態に係るイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスのSIMION(登録商標)シミュレーションの断面図を示す。ここで、2つの進行DC電圧波形が同時にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加され、かつ進行DC電圧波形の振幅がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心に向かって順次低減する。
【0132】
図4は、2つの互いに反対に進行するDC電圧波形がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加されるものとしてモデル化され、かつ進行DC電圧波形の振幅がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心に向かって順次低減する場合の、好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内の電位エネルギー表面のスナップショットを示す。
【0133】
図5は、質量電荷比が300のカチオンおよびアニオンの2対の時間の関数としての軸方向位置を示す。ここで、そのカチオンおよびアニオンは、まずイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの端に提供されるものとしてモデル化し、かつ2つの互いに反対に進行するDC電圧波形は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加され、イオンがイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心領域に収束されるものとしてモデル化した。
【0134】
図6A、6B、6Cおよび6Dは、一実施形態に係る好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内の電位エネルギーを例示するSIMION(登録商標)シミュレーションを示す。ここで、焦点またはイオン−イオン反応領域は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心領域に固定されたままにするのではなく、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの長さに沿って順次移動するように構成される。
【0135】
図7は、イオンガイド結合器を好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの上流に設けることにより、分析種イオンおよび試薬イオンが上記好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス中へ方向付けられ、かつ上記好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスが直交加速飛行時間質量分析部に結合される本発明の実施形態を示す。
【0136】
図8Aは、振幅が0Vの進行波電圧を好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加した場合に得られた質量スペクトルを示す。図8Bは、振幅が0.5Vの進行波電圧を好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加した場合に得られた対応する質量スペクトルを示す。図8Cは、好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加される進行波電圧を1Vに増大した場合に得られた質量スペクトルを示す。
【0137】
図9は、本発明の一実施形態に係る質量分析計のイオン源部分を示す。ここで、エレクトロスプレーイオン源を使用して分析種イオンを生成し、かつ試薬イオンが質量分析計の入力真空チャンバ内に位置するグロー放電領域において生成される。
【0138】
図10は、本発明の一実施形態に係る質量分析計を示す。ここで、試薬アニオンおよび分析種カチオンは、第1の衝突セル内で反応するように構成され、そして次いで、得られたプロダクトイオンは、第1の衝突セルの下流に配置されたイオン移動度分光計内において時間的に分離される。
【0139】
図11Aは、本発明の一実施形態による、3価前駆体分析種カチオンが試薬アニオンとともに1.2ミリ秒の過渡時間でETDセルまたはPTRセルを通って移送された場合に得られた質量スペクトルを示す。図11Bは、本発明の一実施形態による、3価前駆体分析種カチオンが試薬アニオンとともに37ミリ秒の過渡時間でETDセルまたはPTRセルを通って移送された場合に得られた質量スペクトルを示す。図11Cは、本発明の一実施形態による、3価前駆体分析種カチオンが試薬アニオンとともに305ミリ秒の過渡時間でETDセルまたはPTRセルを通って移送された場合に得られた質量スペクトルを示す。
【0140】
図12は、本発明の一実施形態に係るフローチャートを示し、電子移動解離反応デバイスの電極に印加された1つ以上の過渡DC電圧の速さまたは振幅を増大または低減して、反応デバイスを通過するイオンのETDフラグメンテーションを最適化し得る様子を示す。
【0141】
図13Aは、振幅が1.4VのDC進行波を電子移動解離イオンガイドの電極に印加した場合に得られる質量スペクトルを示す。図13Bは、振幅が1.0VのDC進行波を電子移動解離イオンガイドの電極に印加した場合に得られる質量スペクトルを示す。図13Cは、振幅が0.8VのDC進行波を電子移動解離イオンガイドの電極に印加した場合に得られる質量スペクトルを示す。図13Dは、振幅が0.4VのDC進行波を電子移動解離イオンガイドの電極に印加した場合に得られる質量スペクトルを示す。図13Eは、振幅が0.1VのDC進行波を電子移動解離イオンガイドの電極に印加した場合に得られる質量スペクトルを示す。
【0142】
以下に、本発明の種々の実施形態を説明する。図1は、本発明の一好適な実施形態に係る積層リングイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を構成するレンズ素子またはリング電極1の断面図を示す。
【0143】
イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2は、好ましくは、使用時にイオンが移送される1つ以上の開口を有する複数の電極1を含む。デジタル電圧パルスパターンまたは列7が、好ましくは、使用時に電極1に印加される。デジタル電圧パルス7は、好ましくは、段階的に逐次印加され、かつ好ましくは矢印6で示されるように電極1に逐次印加される。図1に示す実施形態によると、第1のDC進行波8または過渡DC電圧もしくは過渡DC電位の列が、好ましくは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の第1の(上流)端からイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央へ向かって時間とともに移動するように構成される。同時に、第2のDC進行波9または過渡DC電圧もしくは過渡DC電位の列が必要に応じてイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の第2の(下流)端から、やはりイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央へ向かって時間とともに移動するように構成され得る。これにより、2つのDC進行波8、9または過渡DC電圧もしくは過渡DC電位の列は、好ましくは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の両側からイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央または中心領域へ向かって収束する。
【0144】
図1は、好ましくは時間の関数として(例えば、電子タイミングクロックが進行するにつれて)電極1に印加されるデジタル電圧パルス7を示す。デジタル電圧パルス7のイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の電極1への時間の関数として印加が進行する様子は、好ましくは矢印6によって示される。第1の時刻T1において、T1によって示される電圧パルスが、好ましくは、電極1に印加される。後の時刻T2において、T2によって示される電圧パルスが、好ましくは、電極1に印加される。後の時刻T3において、T3によって示される電圧パルスが、好ましくは、電極1に印加される。最後に、後の時刻T4において、T4によって示される電圧パルスが、好ましくは、電極1に印加される。電圧パルス7は、好ましくは、図示のように方形波電位プロフィ−ルを有する。
【0145】
また図1から明らかなように、電極1に印加されるデジタルパルス7の強度または振幅は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央または中心に向かって低減するように構成され得る。これにより、好ましくはイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の入力領域または出口領域に近接する電極1に印加されるデジタル電圧パルス7の強度または振幅は、好ましくは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域における電極1に好ましくは印加されるデジタル電圧パルス7の強度または振幅よりも大きい。好ましくは電極1に印加される過渡DC電圧もしくは過渡DC電位またはデジタル電圧パルス7の振幅は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って軸方向に離れても低減しない他の実施形態が考えられる。この実施形態によると、デジタル電圧パルス7の振幅は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って軸方向に離れても実質的に一定のままである。
【0146】
好ましくはイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2のレンズ素子またはリング電極1に印加される電圧パルス7は、好ましくは方形波である。イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内の電位は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内の波動関数電位が好ましくは滑らかな関数となるように、好ましくは緩和する。
【0147】
一実施形態によると、分析種カチオン(例えば、正電荷の分析種イオン)および/または試薬アニオン(例えば、負電荷の試薬イオン)は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の両端からイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2中へ同時に導入され得る。一旦イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2に入ると、正イオン(カチオン)は、好ましくはイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の電極1に印加されるDC進行波または1つ以上の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位の正(山)の電位によって、好ましくははね返される。静電進行波がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って移動するにつれ、正イオンは、好ましくは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2に沿って、進行波と同じ方向にかつ実施的に図2に示すようなやり方で推進される。
【0148】
負電荷の試薬イオン(すなわち、試薬アニオン)は、進行DC電圧または進行DC電位がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って移動するにつれ、進行波の正電位へ向かって引きつけられ、かつ同様に進行波の方向へ牽引、駆動または引きつけられる。これにより、正イオンは、好ましくは進行DC波の負の山(正の谷)において進行する一方、負イオンは、好ましくは、進行DC波または1つ以上の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位の正の山(負の谷)において進行する。
【0149】
一実施形態によると、2つの互いに反対方向へ進行するDC波8、9は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の両端からイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央または中心に向かって実質的に同時にイオンを並進させるように構成され得る。進行DC波8、9は、好ましくは、互いに向かって移動するように構成され、かつイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域に有効に収束または併合すると考えられ得る。カチオンおよびアニオンは、好ましくは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央へ向かって同時に搬送される。分析種カチオンが反応デバイスの異なる端から同時に導入され得る、好ましさがやや低い実施形態が考えられる。この実施形態によると、分析種イオンは、反応デバイス内に存在するかまたは後で反応デバイスに付加される中性試薬ガスと反応し得る。別の実施形態によると、2つの異なる種の試薬イオンが上記好適な反応デバイス中へ反応デバイスの異なる端から(同時にまたは後で)導入され得る。
【0150】
一実施形態によると、カチオンは、第1の進行DC波8によってイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心へ向かって並進され得、アニオンは、第2の異なる進行DC波9によってイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心へ向かって並進され得る。
【0151】
しかし、カチオンおよびアニオンの両方が第1のDC進行波8によってイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心(または他の領域)へ向かって同時に並進され得る他の実施形態が考えられる。この実施形態によると、また、カチオンおよび/またはアニオンは、必要に応じて、第2のDC進行電圧波9によってイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心(または他の領域)へ向かって同時に並進され得る。そこで、例えば、一実施形態によると、アニオンおよびカチオンは、他のアニオンおよびカチオンが好ましくは第1の方向に対して反対の第2の方向に好ましくは移動する第2のDC進行波9によって同時に並進されるのと同時に、第1のDC進行波8によって第1の方向へ同時に並進され得る。
【0152】
一実施形態によると、イオンがイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央または中心領域に近づくにつれ、進行波8、9の推進力は、低減するようにプログラムされ得、かつイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域における進行波の振幅は、実質的にゼロとなるか、またはそうでなければ少なくとも著しく低減されるように構成され得る。これにより、進行波の谷およびピ−クは、好ましくは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央(中心)において実施的に消失する(または、そうでなければ著しく低減する)ので、一実施形態によると、反対の極性(または、好ましさがやや低いが同じ極性)のイオンは、次いで好ましくはイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域内で併合しかつ相互作用するようにされる。任意のイオンが、例えば、バッファガス分子との多数回衝突または高い空間電荷効果によって、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央または中心領域から離れて軸方向にランダムに迷走すると、これらのイオンは、次いで、好ましくは、イオンをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心へ向かって戻るように並進または駆動する効果を有する後の進行DC波に出会う。
【0153】
一実施形態によると、正の分析種イオンは、第1の方向へ移動するように構成される第1のDC進行波8によってイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心へ向かって並進されるように構成され得、および負の試薬イオンは、第1の方向に対して反対の第2の方向へ移動するように構成される第2のDC進行波9によってイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心へ向かって並進されるように構成され得る。
【0154】
他の実施形態によると、2つの互いに反対方向のDC進行波8、9をイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の電極1に印加する代わりに、1つのDC進行波がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の電極1に任意の特定の時刻に印加され得る。この実施形態によると、負電荷の試薬イオン(または、好ましさがやや低いが正電荷の分析種イオン)が先にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2中へ装填または方向付けられ得る。試薬アニオンは、好ましくは、DC進行波によってイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の入口領域からイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスに沿ってまたは通って並進される。試薬アニオンは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の反対端または出口端に負電位を印加することによって、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内に滞留され得る。
【0155】
試薬アニオン(または、好ましさがやや低いが分析種カチオン)がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2中に装填された後、正電荷の分析種イオン(または、好ましさがやや低いが負電荷の試薬イオン)が、次いで、好ましくは、電極1に印加されたDC進行波または複数の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位によって、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2に沿ってまたは通って並進される。
【0156】
試薬アニオンおよび分析種カチオンを並進させるDC進行波は、好ましくはイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の電極1に印加される1つ以上の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を好ましくは含む。DC進行波のパラメータおよび、特に、過渡DC電圧または過渡DC電位がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って電極1に印加される速さまたは速度を変更または制御して、負電荷の試薬イオンと正電荷の分析種イオンとの間のイオン−イオン反応を最適化、最大化または最小化し得る。
【0157】
イオン−イオン相互作用から得られるフラグメントイオンまたはプロダクトイオンは、好ましくはDC進行波によって、かつ好ましくはフラグメントイオンまたはプロダクトイオンが中性化される前に、好ましくはイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2から掃き出される。また、未反応の分析種イオンおよび/または未反応の試薬イオンは、所望の場合に、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2から好ましくはDC進行波によって取り出され得る。また、好ましくはイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の少なくとも下流端にわたって印加される負電位は、好ましくは、正電荷のプロダクトアニオンまたはフラグメントアニオンを加速してイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2から出すように働く。
【0158】
一実施形態によると、負電荷のイオンを必要に応じてイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の一端または両端に印加して、負電荷のイオンをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内に滞留させ得る。また、印加される負電位は、好ましくは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内において生成または形成された正電荷のフラグメントイオンまたはプロダクトイオンを促進または駆動して、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の一端または両端を介してイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を出射させる効果を有する。
【0159】
一実施形態によると、正電荷のフラグメントイオンまたはプロダクトイオンは、形成されてから約30ミリ秒後にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を出射するように構成されることにより、正電荷のフラグメントイオンまたはプロダクトイオンがイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内で中性化されることを回避し得る。しかし、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内で形成されたフラグメントイオンまたはプロダクトイオンがイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2からより短時間で、例えば、0〜10ミリ秒、10〜20ミリ秒または20〜30ミリ秒の時間尺度内で出射するように構成され得る他の実施形態が考えられる。あるいは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内で形成されたフラグメントイオンまたはプロダクトイオンは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2からより遅く、例えば、30〜40ミリ秒、40〜50ミリ秒、50〜60ミリ秒、60〜70ミリ秒、70〜80ミリ秒、80〜90ミリ秒、90〜100ミリ秒または>100ミリ秒の時間尺度内で出射するように構成され得る。
【0160】
好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内におけるイオンの動きおよびそこを通るイオンの動きは、SIMION8(登録商標)を使用してモデル化されてきた。図3は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を形成する一列のリング電極1の断面図である。図3に示すようなイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を通るイオンの動きは、SIMION8(登録商標)を使用してモデル化した。また、図3は、本発明の一実施形態に係るイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を形成する電極1に順次印加されるものとしてモデル化された2つの収束DC進行波電圧8、9または過渡DC電圧の列8、9を示す。DC進行波電圧8、9は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心へ向かって収束するものとしてモデル化し、かつイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の両端からイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心へ向かってイオンを同時に並進させる効果を有した。
【0161】
図4は、SIMION(登録商標)によってモデル化されるようなイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内の電位エネルギー表面の特定の時刻におけるスナップショットを示す。
【0162】
図5は、第1のカチオン対およびアニオン対を、まずイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の上流端に配置されるものとしてモデル化し、および第2のカチオン対およびアニオン対を、まずイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの下流端に配置されるものとしてモデル化したシミュレ−ションの結果を示す。2つのDC進行電圧波を、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の電極1に同時に印加されるものとしてモデル化した。一方のDC進行電圧波または過渡DC電圧の列を、イオンをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の前端または上流端からイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心へ並進させるように構成されるものとしてモデル化し、他方のDC進行電圧波または過渡DC電圧の列を、イオンをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の後または下流端からイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心へ並進させるように構成されるものとしてモデル化した。
【0163】
図5は、上記2対のカチオンおよびアニオンのその後の軸方向位置を時間の関数として示す。すべての4つのイオンは、質量電荷比が300であるものとしてモデル化した。図5から明らかなように、両イオン対は、約200μ秒後にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の軸方向長さの中心または中央領域(45mmの変位位置)へ向かって移動する。
【0164】
イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2は、ステンレス鋼から形成される複数の積層導電性円形リング電極1を含むものとしてモデル化した。リング電極は、ピッチが1.5mm、厚さが0.5mm、中心開口径が5mmとなるように構成した。進行波プロフィールは、5μ秒間隔で進行するものとしてモデル化し、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央または中心に向かう等価な波の速度が300m/秒であるものとしてモデル化されるようにした。アルゴンバッファガスは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内に0.076Torr(すなわち、0.1mbar)の圧力で提供されるものとしてモデル化した。イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さは、90mmであるものとしてモデル化した。電圧パルスの通常の振幅は、10Vであるものとしてモデル化した。100VのRF電圧の互いに反対の位相は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を構成する隣り合う電極1に印加されるものとしてモデル化し、イオンがイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内に半径方向にかつ半径方向の擬電位谷内に閉じ込められるようにした。
【0165】
図5から明らかなように、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域内に、互いに反対の極性を有するイオンは、ともに近接した位置にあり、および相対的に低くかつ実質的に等しい運動エネルギーを有する。したがって、イオン−イオン反応領域は、好ましくは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域に提供または生成される。さらに、イオン−イオン相互作用のための状態は、実質的に最適化される。
【0166】
イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内のイオン−イオン反応の位置または場所は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の焦点と呼ばれ得る。というのも、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の焦点は、試薬アニオンおよび分析種カチオンが互いに近接し、そしてしたがって互いに相互作用する場所と考えられ得るからである。互いに反対のDC進行波8、9は、一実施形態によると、焦点または反応体積において出会うように構成され得る。DC進行電圧波8、9または過渡DC電圧もしくは過渡DC電位の振幅は、焦点または反応体積において実質的にゼロ振幅に減衰するように構成され得る。
【0167】
任意のイオン−イオン反応(または、イオン−中性ガス反応)が発生するとすぐに、任意の得られたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンがイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の反応体積から遠ざかるように好ましくは比較的短時間で掃き出されるか、またはそうでなければ、並進するよう構成され得る。一実施形態によると、その結果得られたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンは、好ましくはイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2から出射され、そして次いで飛行時間質量分析部またはイオン検出器などの質量分析部へ前方移送され得る。
【0168】
イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内に形成されたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンは、種々のやり方で引き出され得る。2つの互いに反対のDC進行電圧波8、9がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極1に印加される実施形態に関して、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の下流領域または出口領域に印加されるDC進行波9の進行方向は、反転され得る。また、DC進行波の振幅は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って正規化され、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2は、次いで従来の進行波イオンガイドとして有効に動作し、すなわち、1つの方向へ移動する1つの一定の振幅DC進行電圧波がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の実質的に全体にわたって印加され得る。
【0169】
同様に、1つのDC進行電圧波がまず試薬アニオンをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2に装填し、そして次いでその後に分析種カチオンが同じDC進行電圧波によってイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2中へ装填されるか、またはそこを通って移送される実施形態に関して、次いでその1つのDC進行電圧波はまた、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内で生成された正電荷のフラグメントイオンまたはプロダクトイオンを引き出すように働く。DC進行電圧波の振幅は、一旦フラグメントイオンまたはプロダクトイオンが生成されると、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って正規化され、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2は、従来の進行波イオンガイドとして有効に動作する。
【0170】
イオンは、進行波の場によって、十分に高い圧力(例えば、>0.1mbar)に維持されたイオンガイドを通って並進されると、そのイオンの移動度の順に進行波イオンガイドの端から出現し得ることを示した。比較的高いイオン移動度を有するイオンは、好ましくは比較的低いイオン移動度を有するイオンよりも先にイオンガイドから出現する。したがって、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域において生成されたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンのイオン移動度分離を活用することによって、本発明の実施形態に係る感度およびデューティサイクルの向上などのさらなる解析上の利点が得られ得る。
【0171】
一実施形態によると、イオン移動度分光計または分離段がETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の上流および/または下流に設けられ得る。例えば、一実施形態によると、ETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内に形成され、そしてその後にETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2から引き出されたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンは、次いで好ましくはETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の下流に配置されたイオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータにおいて、そのイオン移動度(または、好ましさがやや低いが電場強度とともに変化するイオン移動度の変化率)に応じて分離され得る。
【0172】
一実施形態によると、ETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を構成するリング電極1の内部開口の直径は、ETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿った電極の位置とともに順次増大するように構成され得る。開口径は、例えば、ETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の入口または出口部分にてより小さく、かつETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心または中央により近いところで比較的より大きくなるように構成され得る。これは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域内でイオンが受けるDC電位の振幅を低減し、他方上記の種々の電極1に印加されるDC電圧の振幅が実質的に一定に維持され得るという効果を有する。したがって、進行波イオンガイド電位は、この実施形態に係るETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央または中心領域で最小となる。
【0173】
別の実施形態によると、リング開口径および電極1に印加される過渡DC電圧または過渡DC電位の振幅の両方は、ETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って変更され得る。
【0174】
リング電極の開口の直径がETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心に向かって増大する実施形態において、中心軸の近くのRF場も低減する。これにより、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域におけるイオンのRFによる加熱が小さくなるという利点がある。この効果は、電子移動解離タイプの反応を最適化し、かつ衝突誘起反応を最小化する際に、特に有利であり得る。
【0175】
さらなる実施形態によると、ETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内の焦点または反応領域の位置は、ETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って時間の関数として軸方向に移動または変更され得る。これは、イオンがETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を通って、中心反応領域内に止まることなく、連続的に流れるか、または通過するように構成され得るという利点がある。これにより、分析種イオンおよび試薬イオンをETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の入口に導入し、そしてプロダクトイオンまたはフラグメントイオンをETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の出口から排出するプロセスを連続的に行うことが可能となる。焦点の並進移動の速度などの種々のパラメータを変更または制御して、イオン−イオン反応効率を最適化、最大化または最小化し得る。焦点の動きは、適切なレンズまたはリング電極1に印加される電圧を切り換えまたは制御することによって段階的に電子的に実現または制御され得る。
【0176】
焦点が時間とともに変更されるETDイオンガイドもしくはPTRイオンガイドまたはイオン−イオン反応領域2内のイオンの動きは、SIMION(登録商標)を使用して研究されてきた。図6A〜6Dは、一実施形態に係る、ETDイオンガイドもしくはPTRイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内の異なる時点での電位エネルギー表面を例示する。ここで、焦点または反応領域の軸方向位置は、時間とともに変化する。破線矢印は、好ましくは本発明の一実施形態に係るETDイオンガイドもしくはPTRイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の電極1に印加される互いに反対の進行波DC電圧の方向を図示する。図6A〜6Dからわかるように、進行DC波電圧の強度は、焦点からの距離または変位とともに直線的に増大するようにプログラムされてきた。しかし、代替として、進行DC電圧波に対して種々の他の振幅関数が使用され得る。また、反応領域または焦点の動きは、例えば、ETDイオンガイドもしくはPTRイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の入口(すなわち、左)からETDイオンガイドもしくはPTRイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の出口(すなわち、右)へ進行するようにプログラムされ得ることもわかる。したがって、電子移動解離(および/またはプロトン移動反応)のプロセスは、焦点がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って移動するか、または並進されるにつれて実質的に連続に発生するように構成され得る。最終的に、電子移動解離反応から得られたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンは、好ましくは、ETDイオンガイドもしくはPTRイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の出口から出現するように構成され、そして例えば、飛行時間質量分析部へ前方移送され得る。システム全体の感度を上げるために、ETDイオンガイドもしくはPTRイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2からイオンを放出するタイミングは、直交加速飛行時間質量分析部の押し込み電極と同期化され得る。また、以下の実施形態の変形例が考えられる。複数の焦点がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って設けられ得る。必要に応じて、焦点のうちのいくつかまたはすべてがイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って並進される。
【0177】
一実施形態によると、上記好適なETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2中に入力される分析種カチオンおよび試薬アニオンは、独立したかまたは異なるイオン源から生成され得る。カチオンおよびアニオンの両方を独立したイオン源から上記好適な実施形態に係るETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2中へ効率的に導入するために、さらなるイオンガイドが上記好適なETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の上流(および/または下流)に設けられ得る。このさらなるイオンガイドは、異なる位置の独立したイオン源からの両方の極性を有するイオンを同時にかつ連続的に受け取り、そして移動させ、そして分析種および試薬イオンの両方を上記好適なETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2中へ方向付けるように構成され得る。
【0178】
図7は、イオンガイド結合器10を使用して、分析種カチオン11および試薬アニオン12の両方を好適なETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2中へ導入して、電子移動解離によりETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内にプロダクトイオンまたはフラグメントイオンを形成し得る実施形態を例示する。イオンガイド結合器10は、例えば、米国6891157に開示されるようなマルチプレートRFイオンガイドを含み得る。イオンガイド結合器10は、ほぼイオン移送平面において配置される複数の平面電極を含み得る。隣接する平面電極は、好ましくは、AC電位またはRF電位の互いに反対の位相に維持される。また、平面電極は、好ましくは、イオンガイド領域がイオンガイド結合器10内に形成されるような形状にされる。上部および/または下部の平面電極が設けられ得、そしてDC電圧および/またはRF電圧を上部および/または下部の平面電極に印加して、イオンガイド結合器10内にイオンを滞留させ得る。
【0179】
また、1つ以上の質量選択的四重極を利用して、イオン源から受け取られる特定の分析種イオンおよび/または試薬イオンを選択し、そして所望のイオンだけをイオンガイド結合器10へ前方移送し得る。飛行時間質量分析部13を上記好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の下流に配置して、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内の反応領域5において生成され、そしてその後にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2から出現するプロダクトイオンまたはフラグメントイオンを受け取り、そして解析し得る。
【0180】
進行DC電圧波を積層リングRFイオンガイドの電極に印加するステップを含む実験によって、進行DC波電圧パルスの振幅を増大するステップか、および/またはイオン反応体積内の進行DC波電圧パルスの速さを増大するステップによって、イオン−イオン反応速度を低減、または必要に応じて停止さえし得るが示されてきた。これは、進行DC電圧波によって分析種カチオンの試薬アニオンに対する相対速度が局所的に増大し得るという事実に基づく。イオン−イオン反応速度は、カチオンおよびアニオン間の相対速度の3乗に反比例することが示されてきた。
【0181】
また、進行DC電圧波の振幅および/または速さを増大するステップは、カチオンおよびアニオンのETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2における滞在時間をともに低減し、かつしたがって反応効率を低減する効果を有し得る。
【0182】
図8A〜8Cは、ハイブリッド四重極飛行時間質量分析計のガスセル内に生成される電子移動解離のプロダクトイオンまたはフラグメントイオンの生成または形成時に進行DC電圧波の振幅を変更する効果を例示する。特に、図8A〜8Cは、質量電荷比が449.9のP物質の3価前駆体カチオンをフラグメンテーションした後、アゾベンゼン試薬アニオンを用いてイオン−イオン反応させて得られる電子移動解離のプロダクトイオンまたはフラグメントイオンを示す。図8Aは、進行波振幅を0Vに設定した場合に記録された質量スペクトルを示す。図8Bは、進行波振幅を0.5Vに設定した場合に記録された質量スペクトルを示す。図8Cは、進行波振幅を1.0Vに増大した場合に記録された質量スペクトルを示す。1.0V進行波がイオンガイドに印加される場合に電子移動解離のプロダクトイオンまたはフラグメントイオンの存在度が著しく低減されることがわかる。この効果を利用して、所望の場合に電子移動解離フラグメントイオンまたはプロダクトイオンの生成を実質的に防止または停止し得る(およびまたプロトン移動反応による電荷状態の低減を防止または停止し得る)。
【0183】
本発明の一実施形態によると、イオン−イオン反応は、ETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の電極1に印加される1つ以上のDC進行波の振幅および/または速さを変更することによって制御、最適化、最大化、または最小化され得る。しかし、進行DC波の場の振幅を電子的に制御する代わりに、その場の振幅が内径または軸方向間隔が変化する積層リング電極を利用することによって機械的に制御され得る他の実施形態が考えられる。リングスタックまたはリング電極1の開口の直径が増大するように構成される場合、同じ振幅電圧がすべての電極1に印加されるとすると、イオンが受ける進行波振幅は低減する。
【0184】
1つ以上の進行DC電圧波の振幅がさらに増大され、そして進行DC電圧波の速度が次いで急激にゼロに低減され、定常波が有効に生成され得る実施形態が考えられる。この実施形態によると、反応体積中のイオンは、ETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の軸に沿って繰り返し加速され、そして次いで減速され得る。この方法を使用して、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンの内部エネルギーを増加させ、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを衝突誘起解離(CID)のプロセスによってさらに分解させ得る。衝突誘起解離のこの方法は、電子移動解離から得られた非共有結合のプロダクトイオンまたはフラグメントイオンを分離する際にとくに有用である。予め電子移動解離反応させた前駆体イオンは、しばしば部分的に分解し(特に、1価および2価の前駆体イオン)、そして部分的に分解したイオンは、互いに非共有結合したままであり得る。
【0185】
別の実施形態によると、対象の非共有結合のプロダクトイオンまたはフラグメントイオンは、進行DC波がイオンを輸送する通常モードにおいて働くことによって積層リングイオンガイドから掃き出されている際に、互いに分離され得る。これは、進行波イオンガイドの速度を十分に高い値に設定して、イオン−分子衝突を発生させ、そして非共有結合のフラグメントイオンまたはプロダクトイオンの分離を誘導することによって実現され得る。
【0186】
別の実施形態によると、分析種イオンおよび試薬イオンは、同じイオン源または質量分析計の共通のイオン生成部またはイオン生成段のいずれかによって生成され得る。例えば、一実施形態によると、分析種イオンは、エレクトロスプレーイオン源によって生成され得、および試薬イオンは、好ましくはエレクトロスプレーイオン源の下流に配置されたグロー放電領域において生成され得る。図9は、分析種イオンがエレクトロスプレーイオン源によって生成される本発明の一実施形態を示す。エレクトロスプレーイオン源のキャピラリは、好ましくは+3kVに維持される。好ましくは、分析種イオンは、好ましくは0Vに維持された質量分析計の試料コーン15へ向かって牽引される。イオンは、好ましくは試料コーン15を通って、そして好ましくは真空ポンプ17によってポンプされた真空チャンバ16中へ移動する。好ましくは高電圧源に接続されたグロー放電ピン18は、好ましくは、真空チャンバ16内の試料コーン15の近くかつ下流に配置される。一実施形態によると、グロー放電ピン18は、−750Vに維持され得る。試薬源19からの試薬は、好ましくはグロー放電ピン18の近くに配置された真空チャンバ16中へ流出されるか、またはそうでなければ供給される。これにより、試薬イオンは、好ましくは、真空チャンバ16内のグロー放電領域20において生成される。次いで、試薬イオンは、好ましくは引き出しコーン21を通って引き出され、そしてさらなる下流真空チャンバ22中へ移動する。イオンガイド23は、好ましくはさらなる真空チャンバ22中に配置される。次いで、試薬イオンは、好ましくは質量分析計のさらなる段24へ移送され、そして好ましくは電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスとして使用される好適なETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2に好ましくは移送される。
【0187】
本発明の一実施形態によると、デュアルモードまたはデュアルイオン源が設けられ得る。例えば、一実施形態によると、エレクトロスプレーイオン源を使用して、分析種(または、試薬)イオンを生成し得、および大気圧化学イオン化イオン源を使用して試薬(または、分析種)イオンを生成し得る。負電荷の試薬イオンは、ETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスの電極に印加される1つ以上の進行DC電圧または過渡DC電圧によって、ETD反応デバイスまたはPTR反応デバイス中へ渡され得る。負DC電位をETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスに印加して、負電荷の試薬イオンをETD反応デバイスまたはPTR反応デバイス内に滞留し得る。次いで、正電荷の分析種イオンは、1つ以上の進行DC電圧または過渡DC電圧をETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスの電極に印加することによって、ETD反応デバイスまたはPTR反応デバイス中に入力され得る。正電荷の分析種イオンは、好ましくは、滞留されず、かつETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスから出射するのを妨げられないようにされる。ETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスの電極に印加される進行DC電圧または過渡DC電圧の種々のパラメータを最適化または制御して、プロトン移動反応による分析種イオンおよび/またはプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンの電子移動解離および/または電荷状態の低減によってフラグメンテーションの度合いを最適化、最大化または最小化し得る。
【0188】
グロー放電イオン源を使用して試薬イオンおよび/または分析種イオンを生成する場合、イオン源のピン電極は、実施形態によると、±500〜700Vの電位に維持され得る。一実施形態によると、イオン源の電位は、正電位(カチオンを生成するため)と負電位(アニオンを生成するため)との間で比較的急速に切り換えられ得る。
【0189】
デュアルモードまたはデュアルイオン源が設けられる場合、そのイオン源がモード間で切り換えられ得ること、またはそのイオン源が約50ミリ秒ごとに互いに切り換えられ得ることが考えられる。以下の実施形態が考えられる。イオン源は、モード間で切り換えられ得るか、またはイオン源は、<1ミリ秒、1〜10ミリ秒、10〜20ミリ秒、20〜30ミリ秒、30〜40ミリ秒、40〜50ミリ秒、50〜60ミリ秒、60〜70ミリ秒、70〜80ミリ秒、80〜90ミリ秒、90〜100ミリ秒、100〜200ミリ秒、200〜300ミリ秒、300〜400ミリ秒、400〜500ミリ秒、500〜600ミリ秒、600〜700ミリ秒、700〜800ミリ秒、800〜900ミリ秒、900〜1000ミリ秒、1〜2秒、2〜3秒、3〜4秒、4〜5秒、または>5秒の時間尺度で互いに切り換えられ得る。1つ以上のイオン源のONおよびOFFを切り換える代わりに、その1つ以上のイオン源が実質的にONのままにされ得る他の実施形態が考えられる。この実施形態によると、バッフルまたは回転イオンビームブロックなどのイオン源セレクタデバイスが使用され得る。例えば、2つのイオン源がONのままにされ得るが、イオンビームセレクタは、好ましくは、任意の特定の時刻にイオンがイオン源のうちの一方から質量分析計へ移送されることだけを可能にする。あるイオン源がONのままにされ、および別のイオン源が繰り返しONおよびOFFに切り換えられ得る、さらなる実施形態が考えられる。
【0190】
一実施形態によると、電子移動解離フラグメンテーション(および/またはプロトン移動反応電荷状態の低減)は、ETDデバイスもしくはPTRデバイスまたはイオンガイドの電極に印加される進行DC電圧の速度および/または振幅を制御することによって制御、最大化、最小化、強化、または実質的に防止され得る。進行DC電圧が電極に非常に急速に印加される場合、電子移動解離によってフラグメンテーションする分析種イオンは非常に少なくあり得る(およびまた、プロトン移動反応による電荷状態の低減は、実質的に低減される)。
【0191】
反応体積がETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスの中心へ向かって最適化された種々の実施形態を説明したが、ETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスが、例えば、ETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスの上流および/または下流端へ向かって最適化される他の実施形態が考えられる。例えば、ETDデバイスもしくはPTRデバイスまたはイオンガイドのリング電極の内径は、ETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスの下流端へ向かって順次増大または低減し得る。追加または代替として、ETDデバイスもしくはPTRデバイスまたはイオンガイドのリング電極のピッチは、ETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスの下流端へ向かって順次低減または増大し得る。
【0192】
ガスフロー動的効果および/または圧力差効果を利用して、分析種イオンおよび/または試薬イオンをETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスの各部を通るように駆動または推進する、他の好ましさがやや低い実施形態が考えられる。ガスフロー動的効果は、上記好適な反応デバイスに沿っておよび通ってイオンを駆動または推進する他の方法または手段に加えて利用され得る。
【0193】
ETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスから出現するイオンは、好ましくはETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスの下流および/または上流に配置された独立のイオン移動度分離セルまたはイオン移動度分離段においてイオン移動度分離され得る。
【0194】
分析種イオンの電荷状態は、分析種イオンが試薬イオンおよび/または中性試薬ガスと相互作用する前に、プロトン移動反応によって低減され得ることが考えられる。追加または代替として、電子移動解離から得られるプロダクトイオンまたはフラグメントイオンの電荷状態は、プロトン移動反応によって低減され得る。
【0195】
また、分析種イオンは、プロトンを試薬イオンまたは中性試薬ガスへ移動させることによってフラグメンテーションされるか、またはそうでなければ、解離するようにされ得ることが考えられる。
【0196】
電子移動解離から得られるプロダクトイオンまたはフラグメントイオンは、ともに非共有結合し得る。非共有結合のプロダクトイオンまたはフラグメントイオンが、衝突誘起解離、表面誘起解離または他のフラグメンテーションプロセスによって、電子移動解離が行われた同じETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスまたはより好ましくはETDイオンガイドまたはPTRイオンガイドの下流に好ましくは配置された独立の反応デバイスまたは反応セルのいずれかの中で、フラグメンテーションされ得る本発明の実施形態が考えられる。
【0197】
分析種イオンをフラグメンテーションまたは解離させた後、キセノン、セシウム、ヘリウムまたは窒素の原子またはイオンなどの準安定原子または準安定イオンと反応または相互作用させ得るさらなる実施形態が考えられる。
【0198】
別の実施形態によると、電子移動解離のための使用に適すると上記に開示されるのと実質的に同じ試薬イオンを追加または代替としてプロトン移動反応のために使用して、分析種イオンの電荷状態を低減し得る。そこで、例えば、一実施形態によると、ポリ芳香族炭化水素または置換ポリ芳香族炭化水素由来の試薬アニオンまたは負電荷のイオンを使用して、プロトン移動反応を開始し得る。プロトン移動反応において使用するための試薬アニオンまたは負電荷のイオンは、(i)アントラセン、(ii)9,10ジフェニル−アントラセン、(iii)ナフタレン、(iv)フッ素、(v)フェナントレン、(vi)ピレン、(vii)フルオランテン、(viii)クリセン、(ix)トリフェニレン、(x)ペリレン、(xi)アクリジン、(xii)2,2’ジピリジル、(xiii)2,2'ビキノリン、(xiv)9−アントラセンカルボニトリル、(xv)ジベンゾチオフェン、(xvi)1,10’−フェナントロリン、(xvii)9’アントラセンカルボニトリル、および(xviii)アントラキノンからなる群から選択される物質から得られ得る。また、アゾベンゼンアニオン、アゾベンゼンラジカルアニオンまたは他のラジカルアニオンを含む試薬のイオンまたは負電荷のイオンを使用してプロトン移動反応を行い得る。
【0199】
一実施形態によると、中性ヘリウムガスが0.01〜0.1mbar、好ましさがやや低いが0.001〜1mbar、の範囲の圧力でETD反応デバイスまたはPTR反応デバイス内に提供され得る。ヘリウムガスは、反応デバイスにおける電子移動解離および/またはプロトン移動反応を支援する際に特に有用であることがわかってきた。窒素ガスおよびアルゴンガスは、好ましさがやや低いが、電子移動解離ではなく衝突誘起解離によって少なくともいくつかのイオンをフラグメンテーションさせ得る。
【0200】
また、デュアルモードイオン源がモード間で切り換えられ得るか、または2つのイオン源が対称または非対称なやり方でON/OFFを切り換えられ得る実施形態が考えられる。例えば、一実施形態によると、分析種イオンを生成するイオン源は、デューティサイクルの約90%の間、ONのままにされ得る。デューティサイクルの残りの10%の間、分析種イオンを生成するイオン源は、OFFに切り換えられ得、そして試薬イオンは、上記好適な反応デバイス内の試薬イオンを補給するために生成され得る。分析種イオンを生成するイオン源がONに切り換えられる(または、分析種イオンが質量分析計中へ移送される)期間の試薬イオンを生成するイオン源がONに切り換えられる(または、試薬イオンが質量分析計中へ移送されるか、または質量分析計内に生成される)期間に対する比が、<1、1〜2、2〜3、3〜4、4〜5、5〜6、6〜7、7〜8、8〜9、9〜10、10〜15〜15〜20、20〜25、25〜30、30〜35、35〜40、40〜45、45〜50または>50の範囲に入り得る他の実施形態が考えられる。
【0201】
本発明の一好適な実施形態を図10に示す。この実施形態は、第1の衝突セルまたはイオン−イオン反応セル25、および第1の衝突セルまたはイオン−イオン反応セル25の下流に配置されたイオン移動度デバイスまたはイオン移動度分光計もしくはイオン移動度セパレータ26を含む。第2の衝突セル27が、好ましくは、イオン移動度デバイスまたはイオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26の下流に配置される。
【0202】
第1の衝突セルまたはイオン−イオン反応セル25は、好ましくは、電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイス25を含む。試薬アニオンおよび分析種カチオンは、好ましくは、電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイス25内で反応するように構成される。質量、電荷状態およびイオン移動度の異なる複数のプロダクトイオンが、好ましくは、電子移動解離および/またはプロトン移動反応プロセスの結果生成され、そしてこれらのイオンは、好ましくは、第1の衝突セル25から出現する。
【0203】
次いで、第1の衝突セル25から現れたすべてのイオンは、好ましくは、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26を通される。動作モードにおいて、第1の衝突セル25から出現したイオンは、好ましくは、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26において、それらイオン移動度に応じて時間的に分離される。別の動作モードにおいて、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26は、有効にOFFに切り換えられ、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26がイオンガイドとして動作するようにし得る。ここで、イオンは、フラグメンテーションされることなく、かつ実質的にイオン移動度に応じて時間的に分離されることなく、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26を通って移送される。
【0204】
次いで、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26から出現するイオンは、好ましくは第2の衝突セル27中へ渡される。動作モードにおいて、第2の衝突セル27は、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26の出口と第2の衝突セル27の入口との間の電位差を比較的高く維持することによって、衝突誘起解離(「CID」)フラグメンテーションセルとして動作され得る。これにより、イオンは、第2の衝突セル27中へ勢いよく加速され、そしてCIDによってフラグメンテーションされる。電子移動解離またはプロトン移動反応から得られるプロダクトイオンまたはフラグメントイオンは、非共有結合を形成して、2つ以上のプロダクトイオンまたはフラグメントイオンが一緒にクラスタを形成し得ることが公知である。動作モードにおいて、第2の衝突セル27を使用して、第1の衝突セル25内に形成されたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンをCIDフラグメンテーションして、プロダクトイオンまたはフラグメントイオン間の任意の非共有結合を破壊し得る。このプロセスは、c−タイプおよびz−タイプのETDフラグメントイオンを生成するためのCIDによる一形態の二次的活性化として考えられ得る。
【0205】
飛行時間質量分析部28は、好ましくは第2の衝突セル27の下流に配置され、かつ第2の衝突セル27から出現するイオンを質量解析するように構成される。
【0206】
上記のような飛行時間質量分析部を使用して、電荷が減少した前駆体イオンの比を監視することによって、ETおよびETDのための最適な反応状態が設定され得る。すべてのプロダクトイオンは、好ましくはイオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26において時間的に分離され、そして好ましくは第2の衝突セル27中に溶出する。イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26は、好ましくは、プロダクトイオンの形状および電荷についての価値のある情報を提供し、かつ好ましくは、また、飛行時間質量分析部28によって測定されたデータのスペクトルの複雑性を低減する。
【0207】
カチオンのコンフォーメーションに依存して電子がカチオンへ電子移動した後、カチオンが非供給結合によりそのままの状態を維持し得ることが観測されてきた。第2の衝突セル27は、好ましくは、電荷が減少した前駆体イオンをCIDにより緩やかにフラグメンテーションするように設けられ、かつ好ましくは前駆体イオンが構成要素のETDタイプイオン(すなわち、c−およびz−タイプのフラグメントイオン)に完全に解離することを可能にする。
【0208】
電子移動および/またはプロトン移動が衝突セル25、27の両方(および/またはイオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26)において行われ得るさらなる実施形態が考えられる。あるいは、CIDが第1の衝突セル25において行われた後、第2の衝突セル27においてETDまたはPTRが行われ得る。これらの変形例は、CIDによるフラグメンテーションの前の任意のコンフォーメーション変化の研究に有用であり得る。
【0209】
ここで、図11A〜11Cを参照して本発明の一好適な実施形態のさらなる局面を説明する。P物質(質量電荷比が449.9)の3価分析種カチオンを実質的に図10に示すように構成したウォーターズ社のQTOF−Premier(登録商標)質量分析計の進行波衝突セル25においてアゾベンゼン(質量電荷比が182)の1価試薬アニオンと反応させる実験を行った。3価分析種カチオンと試薬アニオンとの間の反応の結果、電荷移動が発生した。生成したプロダクトイオンは、衝突セル25から出現し、そして飛行時間質量分析部28によって質量解析された。プロダクトイオンスペクトルの解析により、所定の条件下で、対応する質量電荷比が674および1348である2価および1価の電荷が減少した分析種イオンに対して比較的強いピ−クが示された。
【0210】
衝突セル25の長さに沿って並進される進行波の速さまたは速度は、イオンの過渡時間およびしたがって分析種カチオンと試薬アニオンとのイオン−イオン反応時間が制御または変更されるようにプログラムまたは制御した。分析種カチオンと試薬アニオンとの反応時間が制限される場合、3価前駆体分析種カチオンは、実質的にそのままであり、かつ対応する質量スペクトルにおいて電荷低減および/またはフラグメンテーションが起きている形跡はほとんどない。
【0211】
図11Aは、進行波の過渡時間を1.2ミリ秒に設定した場合に得られた質量スペクトルを示す。図11Aから明らかなように、3価前駆体イオン29は、大部分がフラグメンテーションされないままであり、かつ電荷が減少しなかった。3価前駆体イオン29のうちのいくつかは、フラグメンテーションされることなく電荷が減少して2価イオン30(質量電荷比が674)となった。電荷が減少して質量電荷比が1348の1価イオン31となった3価前駆体イオン29は非常に少なかった。
【0212】
イオン−イオン反応が実質的により長い期間進行することが可能な場合、2価(すなわち、電荷が減少した)分析種イオンの親または前駆体の3価分析種イオンに対する比は、増大する。また、デ−タ中のETDフラグメントイオンが増大するのが観測される。これは、進行波過渡時間が37ミリ秒である場合に得られる質量スペクトルを示す図11Bから明らかである。図11Bに示される質量スペクトルにおいて、2価(電荷が減少した)分析種イオンの強度は、3価の親イオンまたは前駆体イオンの強度を超える。また、2価(電荷が減少した)分析種イオンの強度は、1価(電荷が減少した)分析種イオンの強度とおよそ同じである。また、比較的大きな数のETDフラグメントイオンまたはETDプロダクトイオン32、33が観測される。3価の親イオンまたは前駆体イオンおよび2価および1価(電荷が減少した)分析種イオンの比較強度とともに比較的大きな数のETDフラグメントイオンが存在することは、ETDプロセスおよびPTRプロセスが実質的に最適化されると考えられ得ることを示す。
【0213】
イオン−イオン反応が極端に長い間進行することが可能な場合、電荷減少の度合いが過度になり、そして次いで任意の1価プロダクトイオン自体が実質的に中性化され得る。これにより、すべてのプロダクトイオンの存在度が低減し、そしてやがて本質的に空白の質量スペクトルが生じる。これは、進行波過渡時間が305ミリ秒である場合に得られる質量スペクトルを示し、かつほんのわずかな1価分析種イオンがETDイオンガイドから出現することを示す図11Cから明らかである。ETD中に存在するイオンの大多数は、電荷が減少され、そして次いで中性化された。
【0214】
一実施形態によると、電荷が減少したイオンの電荷の減少がない前駆体イオンに対する最適な存在度比(Ropt)に対応する最適な反応時間(または、進行波速)が設定され得る。図12は、本発明の一実施形態に係るETDデバイスもしくはPTRデバイスまたはイオンガイドにおいてETDを最適化する方法を示すフローチャートである。上記好適な実施形態によると、1つ以上の電荷が減少したカチオンの強度の親カチオンの強度に対する比Rは、好ましくは所定の比に維持されることが望ましい。機器パラメータは、好ましくは、フィードバックループの一部として実行中に自動的にプログラムまたは変更され、次回の飛行時間スペクトルに対する所望の比を得る。最適な比は、好ましくは時間が経過しても実質的に一定であるように維持される。しかし、最適なまたは所望の比は、直線的、段階的、曲線的、非直線的または他のやり方で時間とともに変化し得る、好ましさがやや低い実施形態が考えられる。例えば、ETDデバイスまたはPTRデバイスが、ETDが最適化または最大化される第1のモードとETDが最小化される第2のモードとの間で一度または繰り返し切り換えられることが望まれ得る実施形態が考えられる。
【0215】
図12に示すように、上記プロセスの開始35において、質量スペクトル36が、好ましくは、本発明の一好適な実施形態に係る電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスから出現するイオンについて得られる。電荷が減少した分析種イオンのすべて(または、いくつか)の電荷の減少のない前駆体分析種イオンに対する強度の比Rが好ましくは決定される(37)。次いで、後のステップ38において、測定された比Rが所望の(最適な)比Roptを超えるかどうかが決定される。一実施形態によると、比Roptは、約3:1に設定され得る。
【0216】
前駆体分析種イオンが2+の電荷状態を有し得、かつ1+の電荷状態を有する電荷が減少した前駆体イオンの強度が決定される実施形態が考えられる。前駆体分析種イオンが3+の電荷状態を有し得、かつ2+および/または1+の電荷状態を有する電荷が減少した前駆体イオンの強度が決定される他の実施形態が考えられる。別の実施形態によると、前駆体分析種イオンが4+の電荷状態を有し得、かつ3+および/または2+および/または1+の電荷状態を有する電荷が減少した前駆体イオンの強度が決定される。別の実施形態によると、前駆体分析種イオンが5+の電荷状態を有し得、かつ4+および/または3+および/または2+および/または1+の電荷状態を有する電荷が減少した前駆体イオンの強度が決定される。
【0217】
電荷が減少した前駆体イオンの強度または存在度を測定するステップの代替として、またはそれに加えて、1つ以上のフラグメントイオンの強度または存在度が決定され得る。1つ以上のフラグメントイオンの強度の電荷減少のない前駆体イオンおよび/または電荷減少した前駆体イオンの強度に対する比が好ましくは決定され得、そして制御システムは、この比を最適化、最大化または最小化するように構成され得る。
【0218】
好適なフィードバック制御メカニズムによると、R<Roptの場合、ETDの対象となる前駆体イオンの数は十分でないと考えられ得る。これを補正するために、DC進行波の速さおよび/またはDC進行波の振幅は、好ましくはステップ40において低減して、イオン−イオン反応時間を増大し、およびしたがってETDの対象となる前駆体イオンの数を増大する。
【0219】
反対に、R>Roptの場合、ETDプロセスが極端に優勢であるので、この場合、DC進行波の速さおよび/またはDC進行波の振幅は、好ましくはステップ39において増大されて、イオン−イオン反応時間を低減し、およびしたがって、ETDの効果を低減すると考えられうる。
【0220】
所望の比を達成するために、進行DC電圧波の振幅;ETDデバイスまたはPTRデバイスにおいてイオンを半径方向に閉じ込めるために衝突セルに印加されるAC電圧またはRF電圧の振幅および周波数(および低質量カットオフ);アニオンまたはカチオン源状態;およびETDイオンガイド電圧またはPTRイオンガイド電圧;などのイオン−イオン反応速度に影響のある他のパラメータがまた本発明の一実施形態に係るDDA方法の一部としてプログラムされ得る。
【0221】
電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスに印加される進行波DC電圧の振幅を変更することの、アゾベンゼン試薬イオンとの反応による質量電荷比が449.9の3価P物質のETDフラグメンテーションに対する効果を図13A〜13Eに示す。
【0222】
図13Aは、振幅が1.4Vの進行波DC電圧を電子移動解離デバイスまたはイオンガイドの電極に印加した場合に得られた質量スペクトルを示す。図13Bは、振幅が1.0Vの進行波DC電圧を電子移動解離デバイスまたはイオンガイドの電極に印加した場合に得られた質量スペクトルを示す。図13Cは、振幅が0.8Vの進行波DC電圧を電子移動解離デバイスまたはイオンガイドの電極に印加した場合に得られた質量スペクトルを示す。図13Dは、振幅が0.4Vの進行波DC電圧を電子移動解離デバイスまたはイオンガイドの電極に印加した場合に得られた質量スペクトルを示す。図13Eは、振幅が0.1Vの進行波DC電圧を電子移動解離デバイスまたはイオンガイドの電極に印加した場合に得られた質量スペクトルを示す。
【0223】
図13A〜13Eに示す異なる質量スペクトルを考慮すると、図13Cに示すように進行波DC電圧の振幅を0.8Vに設定した場合に最適なETD状態が観測される。これは、質量電荷比が450の3価前駆体イオンの強度と質量電荷比が675の2価(すなわち、電荷が減少した)分析種イオンおよび質量電荷比が1349の1価(すなわち、電荷が減少した)分析種イオンの強度との比較から明らかである。図13Aから明らかなように、進行波DC電圧が極端に高い場合、前駆体イオンは、DC進行波がETDデバイスまたはイオンガイドの長さに沿って並進される際に進行波DC電圧のDC電位井戸に閉じ込められる。これにより、3価前駆体イオンは、実質的にフラグメンテーションされないままであり、かつその前駆体イオンのほんの小さな割合だけが電荷を低減されて2価イオンになる。反対に、図13Eに示すように、進行波DC電圧が極端に低く設定される場合、イオンをETDデバイスまたはイオンガイドを通っておよび沿って駆動するという点でのDC進行波の効果は、著しく低減される。これにより、イオン−イオン反応時間が著しく増大されるので、著しい電荷減少およびETDフラグメンテーション効果が観測されるようになる。
【0224】
上記好適な実施形態は、イオンが移送される開口を有する複数の電極を含むイオンガイドまたはデバイスにおいてETDおよび/またはPTRを行うことに関するが、ETDデバイスまたはPTRデバイスが複数のロッド電極を含む他の実施形態が考えられる。DC電圧の勾配は、好ましくは、ロッドセットの軸方向長さの少なくとも一部に沿って印加される。制御システムがETDフラグメンテーションおよび/またはPTR電荷減少の度合いが極端に高いと判定した場合、DC電圧勾配は、好ましくは分析種イオンと試薬イオンとのイオン−イオン反応時間が低減されるように増大される。同様に、制御システムがETDフラグメンテーションおよび/またはPTR電荷減少の度合いが極端に低いと判定した場合、DC電圧勾配は、好ましくは分析種イオンと試薬イオンとのイオン−イオン反応時間が増大されるように低減される。試薬イオンの代わりに中性試薬ガスが使用され得る他の実施形態が考えられる。
【0225】
別の実施形態によると、制御システムは、半径方向の擬電位井戸内の半径方向のRF閉じ込めの度合いを変更するように構成および適合され得る。ETDデバイスもしくはPTRデバイスまたはイオンガイドの電極に印加されるRF電圧が増大すると、擬電位井戸のプロフィールは、より狭くなり、イオン−イオン反応体積が低減する。これにより、分析種イオンと試薬イオンとの相互作用はより大きくなり、ETDおよび/またはPTR効果が増大する。制御システムがETDフラグメンテーションおよび/またはPTR電荷減少の度合いが極端に高いと判定した場合、RF電圧は、分析種イオンと試薬イオンとの混合が低減するように低減され得る。同様に、制御システムがETDフラグメンテーションおよび/またはPTR電荷減少の度合いが極端に低いと判定した場合、RF電圧は、分析種イオンと試薬イオンとの混合が増大するように増大され得る。
【0226】
別の実施形態によると、負の試薬イオンは、負電位をETDデバイスもしくはPTRデバイスまたはイオンガイドの一端または両端に印加することによって、ETDデバイスもしくはPTRデバイスまたはイオンガイド内にトラップされ得る。電位障壁が極端に低い場合、ETDデバイスもしくはPTRデバイスまたはイオンガイドは、試薬イオンが比較的漏洩しやすいと考えられ得る。しかし、また、負電位障壁は、ETDデバイスもしくはPTRデバイスまたはイオンガイドに沿っておよび通って正の分析種イオンを加速する効果を有する。したがって、全体としては、負電位障壁が比較的低く設定された場合、イオン−イオン反応時間が好ましくは増大され、かつ反応断面が増大されるので、ETDフラグメンテーションが増大される。制御システムがETDフラグメンテーションおよび/またはPTR電荷減少の度合いが極端に高いと判定した場合、電位障壁は、好ましくは分析種イオンと試薬イオンとの混合が低減するように増大される。同様に、制御システムがETDフラグメンテーションおよび/またはPTR電荷減少の度合いが極端に低いと判定した場合、電位障壁は、好ましくは分析種イオンと試薬イオンとの混合が増大するように低減される。
【0227】
上記好適な実施形態の重点は、質量分析部によって生成された質量スペクトルをリアルタイムに調査および解析する上記好適な実施形態に係る制御システムに置いたが、追加または代替として、制御システムが好適なETDおよび/またはPTR反応デバイスから出現したイオンを時間的に分離し、そして次いでイオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータへ移送することによって得られるイオン移動度スペクトルを調査および解析する、好ましさがやや低い実施形態が考えられる。
【0228】
質量分析計が、例えば、液体クロマトグラフィカラムから溶出しているイオンに対して複数の異なる解析を行い得る本発明の実施形態が考えられる。一実施形態によると、LC溶出ピークの時間尺度内に、分析種イオンは、例えば、親イオンスキャンされ、親イオンまたは前駆体イオンの質量電荷比が決定され得る。次いで、親イオンまたは前駆体イオンは、四重極または他の質量フィルタによって質量選択され、そしてCIDフラグメンテーションされて、b−タイプおよびy−タイプのフラグメントイオンを生成、そして次いで質量解析し得る。次いで、親イオンまたは前駆体イオンは、四重極または他の質量フィルタによって質量選択され、そして次いでETDフラグメンテーションされて、c−タイプおよびz−タイプのフラグメントイオンを生成、そして次いで質量解析し得る。さらなる動作モードにおいて、親イオンまたは前駆体イオンに対して衝突セルの高/低切り換えが行われ得る。この実施形態によると、親イオンまたは前駆体イオンは、2つの異なる動作モードの間で繰り返し切り換えられる。第1の動作モードにおいて、親イオンまたは前駆体イオンは、CIDフラグメンテーションまたはETDフラグメンテーションされる。第2の動作モードにおいて、親イオンまたは前駆体イオンは、実質的にCIDフラグメンテーションまたはETDフラグメンテーションされない。
【0229】
他の実施形態が考えられる。この実施形態を図10を参照して説明する。この実施形態によると、第1の衝突セル25に好ましくはヘリウム衝突ガスが与えられ、かつ第1の衝突セル25が好ましくはETD衝突セルとして動作するデュアル−モードETD/CID質量分析計が提供され得る。イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26が、好ましくは、第1の衝突セル25の下流に設けられ、かつ好ましくはイオンをそのイオン移動度に応じて時間的に分離するように構成される。第2の衝突27が、好ましくは、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26の下流に配置され、かつ第2の衝突27には、好ましくは、アルゴン衝突ガスが与えられる。
【0230】
動作モードにおいて、ETD衝突セル25は、有効にOFFに切り換えられ得る。これは、前駆体イオンが非常に急速にETD衝突セル25を通って移送され、試薬イオンを用いたETDによってフラグメンテーションするための十分な時間がないように構成することによって達成され得る。次いで、前駆体イオンは、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26を通る際に時間的に分離される。イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26の出口領域と第2の衝突セル27の入口領域との間の電位差は、好ましくはイオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26から出現した前駆体イオンが第2の衝突27に入射またはその中へ加速される際にCIDによってフラグメンテーションされるようなレベルに増大される。
【0231】
別の動作モードにおいて、ETD衝突セル25は、有効にONに切り換えられ、そして前駆体イオンは、ETD衝突セル25内で最適なやり方でETDによってフラグメンテーションされるように構成され得る。これは、前駆体イオンがETDフラグメンテーションプロセスを最適化する速度でETD衝突セル25を通って移送されるように構成することによって達成され得る。ETDフラグメンテーションの度合いに影響する速度または他のパラメータは、好ましくは、上記好適な実施形態に係る制御システムによって最適化される。次いで、得られたフラグメントイオンまたはプロダクトイオンは、好ましくは、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26を通る際に時間的に分離される。イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26の出口領域と第2の衝突セル27の入口領域との電位差は、好ましくは、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26から出現したフラグメントイオンまたは前駆体イオンが第2の衝突27に入射して、そしてそこを通過する際にCIDによってフラグメンテーションされないようなレベルに低減される。
【0232】
追加にまたは代替として、ETDによる前駆体イオンのフラグメンテーションの度合いを最適化するために異なるパラメータが変更される、他の好ましさがやや低い実施形態が考えられる。例えば、ETD反応セルの圧力を変更して、ETDによるイオンのフラグメンテーションを制御および/または最適化し得ることが考えられる。また、ETD反応セル内に存在するように構成された試薬イオンの数をリアルタイムに変更して、ETDによるイオンのフラグメンテーションを制御および/または最適化し得ることが考えられる。また、ETD反応セルに入射する分析種イオンの運動エネルギーを変更して、ETDによるイオンのフラグメンテーションを制御および/または最適化し得ることが考えられる。また、さらなる試薬イオンをETD反応セル中にリアルタイムで制御可能に導入して、ETDによるイオンのフラグメンテーションを制御および/または最適化し得ることが考えられる。
【0233】
最後に、一実施形態によると、フラグメンテーションおよび/または電荷減少されたイオンは、水素−重水素(「H−D」)交換を行ったペプチド由来のペプチドイオンを含み得る。水素−重水素交換は、共有結合した水素原子が重水素原子に置換される化学反応である。重水素核は、中性子が1つ余分に付加されているので水素よりも重いという事実を考慮すると、いくつかの重水素を含むタンパク質またはペプチドは、すべてが水素のタンパク質またはペプチドよりも重い。これにより、タンパク質またはペプチドの重水素化を進めると、その分子質量は、着実に増大し、かつこの分子質量の増大は、質量分析によって検出され得る。したがって、上記好適な方法が重水素を含むタンパク質またはペプチドの分析に使用され得ることが考えられる。重水素を含むことを利用して、溶液中のタンパク質の構造力学(例えば、水素−交換質量分析によって)ならびにポリペプチドイオンのガス位相構造およびフラグメンテーションメカニズムの両方を研究し得る。ペプチドの電子移動解離の特に有利な効果は、ETDフラグメンテーション(CIDフラグメンテーションと異なる)には、偶数電子前駆体イオンを振動によって励起させる際の水素の分子内移動である水素スクランブルという問題が起きないことである。本発明の一実施形態によると、上記好適なデバイスおよび方法を使用して、重水素を含むペプチドイオンのETDフラグメンテーションおよび/またはPTR電荷減少を実施し得る。一実施形態によると、重水素を含むペプチドイオンのETDフラグメンテーションおよび/またはPTR電荷減少の度合いが制御、最適化、最大化または最小化され得る。同様に、本発明の一実施形態によると、ETDによるイオンのフラグメンテーションおよび/またはPTRによる電荷減少の前に重水素を含むペプチドイオンにおける水素スクランブルの度合いは、イオンのイオンガイドを通る移送に影響のある1つ以上のパラメータ(例えば、進行波速度および/または振幅)を変更、交換、増加または減少することによって、制御、最適化、最大化または最小化され得る。
【0234】
好適な実施形態を参照して本発明を説明してきたが、特許請求の範囲に記載の発明の範囲を逸脱せずにその形態および詳細が種々に変更され得ることが当業者によって理解される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、最適化された電子移動解離(「ETD」)デ−タを得るための質量分析の方法および質量分析計に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、イオン−イオン反応デバイスまたはフラグメンテーションデバイスおよびイオン−イオン反応またはフラグメンテーションを行う方法に関する。また、本発明は、電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスに関する。分析種イオンは、イオン−イオン反応またはイオン−中性ガス反応のいずれによってもフラグメンテーションされ得る。また、分析種イオンおよび/またはフラグメントイオンは、プロトン移動または電子移動によって電荷が減少され得る。
【0003】
エレクトロスプレーイオン化イオン源は、周知であり、かつHPLCカラムから溶出した中性ペプチドを気相分析種イオンに変換するために使用され得る。酸性水溶液中で、トリプシンペプチドは、アミノ末端およびC−末端アミノ酸の側鎖の両方においてイオン化される。ペプチドイオンが進行して質量分析計に入ると、正電荷のアミノ基が水素結合し、そしてプロトンをペプチドの骨格に沿ってアミド基へ移動させる。
【0004】
ペプチドイオンを衝突ガスに衝突させることによってペプチドイオンの内部エネルギーを増大させて、ペプチドイオンをフラグメンテーションさせることが公知である。ペプチドイオンの内部エネルギーは、内部エネルギーがその分子の骨格に沿ったアミド結合を開裂するために必要な活性化エネルギーを超えるまで増大される。中性衝突ガスと衝突させることによってイオンをフラグメンテーションするこのプロセスは、一般に衝突誘起解離(「CID」)と呼ばれる。衝突誘起解離から得られたフラグメントイオンは、一般にb−タイプおよびy−タイプのフラグメントイオンまたはプロダクトイオンと呼ばれる。ここで、b−タイプフラグメントイオンはアミノ末端+1つ以上のアミノ酸残基を含み、およびy−タイプフラグメントイオンは、カルボキシル末端+1つ以上のアミノ酸残基を含む。
【0005】
ペプチドをフラグメンテーションする他の方法が公知である。ペプチドイオンをフラグメンテーションする別の方法は、電子捕獲解離(「ECD」)として公知のプロセスによってペプチドイオンを熱電子と相互作用させることである。電子捕獲解離は、衝突誘起解離において観測されるフラグメンテーションプロセスとは実質的に異なるやり方でペプチドを開裂する。特に、電子捕獲解離は、骨格N−Cα結合またはアミン結合を開裂し、そしてその結果生成されるフラグメントイオンは、一般にc−タイプおよびz−タイプのフラグメントイオンまたはプロダクトイオンと呼ばれる。電子捕獲解離は、非エルゴ−ド的であると考えられる。すなわち、開裂が発生した後、移動されたエネルギーが分子全体に分配される。また、電子捕獲解離の発生は、近傍のアミノ酸の性質への依存がより小さく、かつプロリンのN側のみが電子捕獲解離に対して100%開裂されない。
【0006】
衝突誘起解離ではなく電子捕獲解離によってペプチドイオンをフラグメンテーションする1つの利点は、衝突誘起解離には翻訳後修飾(「PTM」)を開裂する傾向があるので修飾場所を特定することが困難であるという問題があるが、対照的に電子捕獲解離によってペプチドイオンをフラグメンテーションする場合は、例えば、リン酸化およびグリコシル化から生じる翻訳後修飾を保存する傾向があることである。
【0007】
しかし、電子捕獲解離技術は、同時に正イオンおよび電子の両方を熱運動エネルギーの近くで閉じ込める必要があるという大きな問題がある。電子捕獲解離は、超伝導磁石を使用して大きな磁場を生成するフ−リエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FT−ICR」)質量分析部を使用して実証されてきた。しかし、そのような質量分析計は、非常に大型で、かつ大半の質量分析ユ−ザにとっては高価すぎる。
【0008】
電子捕獲解離の代替として、リニアイオントラップにおいて負電荷の試薬イオンを多価分析種カチオンと反応させることによってペプチドイオンをフラグメンテーションさせることが可能であることが実証されてきた。正電荷の分析種イオンを負電荷の試薬イオンと反応させるプロセスは、電子移動解離(「ETD」)と呼ばれてきた。電子移動解離は、電子が負電荷の試薬イオンから正電荷の分析種イオンへ移動するメカニズムである。電子の移動後、電荷が減少したペプチドまたは分析種イオンは、電子捕獲解離によるフラグメンテーションを起こすと考えられているメカニズムと同じメカニズムによって解離する。すなわち、電子移動解離は、電子捕獲解離と同様なやり方でアミン結合を開裂すると考えられている。これにより、ペプチド分析種イオンの電子移動解離によって生成されたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンのほとんどは、c−タイプおよびz−タイプのフラグメントイオンまたはプロダクトイオンである。
【0009】
電子移動解離の1つの特に有利な点は、そのようなプロセスが翻訳後修飾(PTM)の特定に特に適していることである。なぜなら、リン酸化またはグリコシル化のような結合の弱いPTMでも、アミノ酸鎖の骨格の電子誘起フラグメンテーションに耐えられるからである。
【0010】
現在、電子移動解離は、カチオンおよびアニオンを2Dリニアイオントラップ中に相互に閉じ込めることによって実証されてきた。2Dリニアイオントラップは、試薬アニオンと分析種カチオンとの間のイオン−イオン反応を促進するように構成される。カチオンおよびアニオンは、2Dリニア四重極イオントラップの両端に補助的な軸方向の閉じ込めRF擬電位障壁を印加することによって、2Dリニアイオントラップ内に同時にトラップされる。しかし、この方法は、イオントラップ内のイオンによって観測される有効なRF擬電位障壁の高さがそのイオンの質量電荷比の関数となるので問題がある。これにより、イオン−イオン反応を促進するためにイオントラップ内に同時に閉じ込め込められ得る分析種イオンおよび試薬イオンの質量電荷比範囲がある程度制限される。
【0011】
電子移動解離を行う別の公知の方法は、固定されたDC軸方向電位を2Dリニア四重極イオントラップの両端に印加して、所定の極性を有するイオン(例えば、試薬アニオン)をそのイオントラップ内に閉じ込める。次いで、イオントラップ内に閉じ込められたイオンに対して反対の極性を有するイオン(例えば、分析種カチオン)がイオントラップ中へ方向付けられる。分析種カチオンは、すでにイオントラップ内に閉じ込められた試薬アニオンと反応する。しかし、また、試薬アニオンをイオントラップ内に滞留させるために使用される軸方向DC障壁は、イオントラップ内に導入される分析種カチオンを加速させる電位として働くという反対の効果を有する。これにより、試薬アニオンと分析種カチオンとの間に大きな運動エネルギーの差または不一致が生じるので、発生し得る任意のイオン−イオン反応が準最適なやり方で発生する。
【0012】
多価(分析種)カチオンが(試薬)アニオンと混合されると、緩く結合した電子が(試薬)アニオンから多価(分析種)カチオンへ移動し得ることが公知である。エネルギーは、多価カチオン中へ解放され、そして多価カチオンは、解離され得る。しかし、(分析種)カチオンのうちの著しい割合は、解離しないで、その代わりに電荷状態が低減され得る。カチオンは、2つのプロセスのうちの1つによって電荷が減少され得る。第一に、カチオンは、電子がアニオンからカチオンへ移動する電子移動(「ET」)によって電荷が減少され得る。第二に、カチオンは、プロトンがカチオンからアニオンへ移動するプロトン移動(「PT」によって電荷が減少され得る。そのプロセスにかかわらず、電荷が減少したプロダクトイオンが大量に存在することが、発生しているイオン−イオン反応(ETまたはPTのいずれか)の度合いを示す質量スペクトル内に観測される。
【0013】
ボトムアップまたはトップダウンのプロテオミックスにおいて、電子移動解離の実験は、解離されたプロダクトイオンの存在度を質量スペクトル内で最大化することによって得られる情報を最大化するために行われ得る。電子移動解離によるフラグメンテーションの度合いは、カチオン(およびアニオン)のコンフォーメーションとともに多くの他の機器要因に依存する。LCの結果から各アニオン−カチオン組み合わせに対する最適なパラメータをアプリオリに知ることは困難であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
電子移動解離および/またはプロトン移動反応を行うための改善された方法およびデバイスを提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一局面によると、
複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスと、
少なくともいくつかの第1のイオンがイオンガイドを通って移送される際に第1のイオンが電子移動解離および/またはプロトン移動反応によってフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを推定、決定または測定し、そしてそれに応答して、第1のイオンがイオンガイドを通過する際の第1のイオンの移送および/またはフラグメンテーションの度合いおよび/または電荷減少の度合いに影響する1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減するように構成および適合される制御システムとを含む質量分析計が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、2つの過渡DC電圧または過渡DC電位が同時にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加され、分析種カチオンおよび試薬アニオンがともにイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心領域に運搬されることを示す。
【図2】図2は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加される進行DC電圧波形を使用して、正イオンおよび負イオンが同じ方向に同時に並進され得る様子を例示する。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係るイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスのSIMION(登録商標)シミュレーションの断面図を示す。
【図4】図4は、2つの互いに反対に進行するDC電圧波形がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加されるものとしてモデル化され、かつ進行DC電圧波形の振幅がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心に向かって順次低減する場合の、好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内の電位エネルギー表面のスナップショットを示す。
【図5】図5は、質量電荷比が300のカチオンおよびアニオンの2対の時間の関数としての軸方向位置を示す。ここで、そのカチオンおよびアニオンは、まずイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの端に提供されるものとしてモデル化し、かつ2つの互いに反対に進行するDC電圧波形は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加され、イオンがイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心領域に収束されるものとしてモデル化した。
【図6A】図6Aは、一実施形態に係る好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内の電位エネルギーを例示するSIMION(登録商標)シミュレーションを示す。
【図6B】図6Bは、一実施形態に係る好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内の電位エネルギーを例示するSIMION(登録商標)シミュレーションを示す。
【図6C】図6Cは、一実施形態に係る好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内の電位エネルギーを例示するSIMION(登録商標)シミュレーションを示す。
【図6D】図6Dは、一実施形態に係る好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内の電位エネルギーを例示するSIMION(登録商標)シミュレーションを示す。
【図7】図7は、イオンガイド結合器を好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの上流に設けることにより、分析種イオンおよび試薬イオンが上記好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス中へ方向付けられ、かつ上記好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスが直交加速飛行時間質量分析部に結合される本発明の実施形態を示す。
【図8A】図8Aは、振幅が0Vの進行波電圧を好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加した場合に得られた質量スペクトルを示す。
【図8B】図8Bは、振幅が0.5Vの進行波電圧を好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加した場合に得られた対応する質量スペクトルを示す。
【図8C】図8Cは、好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加される進行波電圧を1Vに増大した場合に得られた質量スペクトルを示す。
【図9】図9は、本発明の一実施形態に係る質量分析計のイオン源部分を示す。
【図10】図10は、本発明の一実施形態に係る質量分析計を示す。
【図11A】図11Aは、本発明の一実施形態による、3価前駆体分析種カチオンが試薬アニオンとともに1.2ミリ秒の過渡時間でETDセルまたはPTRセルを通って移送された場合に得られた質量スペクトルを示す。
【図11B】図11Bは、本発明の一実施形態による、3価前駆体分析種カチオンが試薬アニオンとともに37ミリ秒の過渡時間でETDセルまたはPTRセルを通って移送された場合に得られた質量スペクトルを示す。
【図11C】図11Cは、本発明の一実施形態による、3価前駆体分析種カチオンが試薬アニオンとともに305ミリ秒の過渡時間でETDセルまたはPTRセルを通って移送された場合に得られた質量スペクトルを示す。
【図12】図12は、本発明の一実施形態に係るフローチャートを示し、電子移動解離反応デバイスの電極に印加された1つ以上の過渡DC電圧の速さまたは振幅を増大または低減して、反応デバイスを通過するイオンのETDフラグメンテーションを最適化し得る様子を示す。
【図13A】図13Aは、振幅が1.4VのDC進行波を電子移動解離イオンガイドの電極に印加した場合に得られる質量スペクトルを示す。
【図13B】図13Bは、振幅が1.0VのDC進行波を電子移動解離イオンガイドの電極に印加した場合に得られる質量スペクトルを示す。
【図13C】図13Cは、振幅が0.8VのDC進行波を電子移動解離イオンガイドの電極に印加した場合に得られる質量スペクトルを示す。
【図13D】図13Dは、振幅が0.4VのDC進行波を電子移動解離イオンガイドの電極に印加した場合に得られる質量スペクトルを示す。
【図13E】図13Eは、振幅が0.1VのDC進行波を電子移動解離イオンガイドの電極に印加した場合に得られる質量スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1のイオンは、好ましくは、(i)アニオンもしくは負電荷のイオン、(ii)カチオンもしくは正電荷のイオン、または(iii)アニオンおよびカチオンの組み合わせもしくは混合物のいずれかを含む。
【0018】
動作モードにおいて、制御システムは、好ましくは、1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減して、第1のイオンがイオンガイドを通過する際の第1のイオンのフラグメンテーションおよび/または電荷減少を最適化および/または最大化するように構成および適合される。
【0019】
別の動作モードにおいて、制御システムは、1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減して、第1のイオンのフラグメンテーションおよび/または電荷減少を最小化および/または低減し、イオンガイドがイオンガイドモードにて動作するように構成および適合され、イオンガイドモードにおいては、イオンガイドへの入力において受け取られるイオンが、実質的にフラグメンテーションおよび/または電荷減少されることなく、イオンガイドの出力へ実質的に前方移送され得る。
【0020】
制御システムは、好ましくは、1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減して、第1のイオンが使用時にイオンガイドを通って移送される速さまたは速度を変更、変化、増大または低減するように構成および適合される。
【0021】
質量分析計は、好ましくは、第1のイオンのうちの少なくともいくつかを使用時に駆動または推進して、イオンガイドを通っておよび/または沿って移動させる第1のデバイスをさらに含む。
【0022】
好ましさがやや低い実施形態によると、第1のデバイスは、(i)イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部もしくはその少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%に沿って直線状軸方向DC電場を生成するか、または(ii)イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部もしくはその少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%に沿って非直線状もしくは階段状の軸方向DC電場を生成する、のいずれかに構成および適合され得る。
【0023】
一実施形態によると、制御システムは、軸方向DC電場または軸方向DC電場の勾配を変更、変化、増大または低減して、ETDによるイオンのフラグメンテーションの度合いを最適化または最大化するように構成および適合され得る。
【0024】
上記好適な実施形態によると、第1のデバイスは、1つ以上の第1の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の第1の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を複数の電極のうちの少なくともいくつかに印加して、少なくともいくつかの第1のイオンを第1の方向のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿っておよび/または通って駆動または推進するように構成および適合される。
【0025】
制御システムは、好ましくは、1つ以上の第1の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の第1の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形が複数の電極のうちの少なくともいくつかに印加され、および/またはイオンガイドの長さに沿って並進される速さまたは速度を変更、変化、増大または低減して、ETDによるイオンのフラグメンテーションの度合いを最適化または最大化するように構成および適合される。
【0026】
一実施形態によると、制御システムは、1つ以上の第1の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の第1の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形の振幅、高さまたは深さを変更、変化、増大または低減して、ETDによるイオンのフラグメンテーションの度合いを最適化または最大化するように構成および適合され得る。
【0027】
好ましさがやや低い実施形態によると、制御システムは、1つ以上の第1の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の第1の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形の周期性および/または形状および/または波形および/またはパターンおよび/またはプロフィールおよび/またはマークスペース比を変更、変化、増大または低減して、ETDによるイオンのフラグメンテーションの度合いを最適化または最大化するように構成および適合され得る。
【0028】
第1のデバイスは、好ましくは、1つ以上の第1の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の第1の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を複数の電極のうちの少なくともいくつかまたは0〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%もしくは95〜100%に印加して、少なくともいくつかの第1のイオンを第1の方向のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部または0〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%もしくは95〜100%に沿っておよび/または通って駆動または推進するように構成および適合される。
【0029】
さらなる実施形態によると、質量分析計は、1つ以上の第2の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の第2の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を複数の電極のうちの少なくともいくつかに印加して、少なくともいくつかの第2のイオンを第2の異なる方向のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿っておよび/または通って駆動または推進するように構成および適合される第2のデバイスをさらに含み得る。
【0030】
制御システムは、1つ以上の第2の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の第2の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形が複数の電極のうちの少なくともいくつかに印加され、および/またはイオンガイドの長さに沿って並進される速さまたは速度を変更、変化、増大または低減して、ETDによるイオンのフラグメンテーションの度合いを最適化または最大化するように構成および適合され得る。
【0031】
一実施形態によると、制御システムは、1つ以上の第2の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の第2の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形の振幅、高さまたは深さを変更、変化、増大または低減して、ETDによるイオンのフラグメンテーションの度合いを最適化または最大化するように構成および適合され得る。
【0032】
好ましさがやや低い実施形態によると、制御システムは、1つ以上の第2の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の第2の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形の周期性および/または形状および/または波形および/またはパターンおよび/またはプロフィールおよび/またはマークスペース比を変更、変化、増大または低減して、ETDによるイオンのフラグメンテーションの度合いを最適化または最大化するように構成および適合され得る。
【0033】
第2のデバイスは、好ましくは、1つ以上の第2の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の第2の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を複数の電極のうちの少なくともいくつかもしくは0〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%もしくは95〜100%に印加して、少なくともいくつかの第2のイオンを第2の方向のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部もしくは0〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%もしくは95〜100%に沿っておよび/または通って駆動または推進するように構成および適合される。
【0034】
一実施形態によると、(a)第2の方向は、第1の方向に実質的に反対であるか、もしくは対向する、または(b)第1の方向と第2の方向との角度は、(i)<30°、(ii)30〜60°、(iii)60〜90°、(iv)90〜120°、(v)120〜150°、(vi)150〜180°、および(vii)180°からなる群から選択される、のいずれかである。
【0035】
一実施形態によると、第2のイオンは、(i)アニオンもしくは負電荷のイオン、(ii)カチオンもしくは正電荷のイオン、または(iii)アニオンおよびカチオンの組み合わせもしくは混合物のいずかを含み得る。
【0036】
第1のイオンは、好ましくは第1の極性を有し、かつ第2のイオンは、好ましくは第1の極性とは反対の第2の極性を有する。
【0037】
一実施形態によると、質量分析計は、好ましくは、第1の正または負の電位または電位差をイオンガイドの第1端または上流端に印加または維持するデバイスであって、第1の正または負の電位または電位差は、好ましくは、使用時に、第1のイオンの少なくともいくつかおよび/または第2のイオンの少なくともいくつかをイオンガイド内に閉じ込めるように働く、デバイスをさらに含む。
【0038】
第1の正または負の電位または電位差によって、好ましくは、第1のイオンの少なくともいくつかおよび/または第2のイオンの少なくともいくつかが第1端または上流端を介してイオンガイドを出射することが可能となる。
【0039】
好ましさがやや低い実施形態によると、制御システムは、第1の正または負の電位または電位差を変更、変化、増大または低減し、イオンガイド内のイオン閉じ込めの度合いまたは量を変更、変化、増大または低減して、ETDによるイオンのフラグメンテーションの度合いを最適化または最大化するように構成および適合され得る。
【0040】
質量分析計は、第2の正または負の電位または電位差をイオンガイドの第2端または上流端において印加するためのデバイスであって、第2の正または負の電位または電位差は、好ましくは、使用時に、第1のイオンの少なくともいくつかおよび/または第2のイオンの少なくともいくつかをイオンガイド内に閉じ込めるように働く、デバイスをさらに含み得る。
【0041】
第2の正または負の電位または電位差によって、好ましくは、第1のイオンの少なくともいくつかおよび/または第2のイオンの少なくともいくつかが第2端または上流端を介してイオンガイドを出射することが可能となる。
【0042】
制御システムは、第2の正または負の電位または電位差を変更、変化、増大または低減し、イオンガイド内のイオン閉じ込めの度合いまたは量を変更、変化、増大または低減して、ETDによるイオンのフラグメンテーションの度合いを最適化または最大化するように構成および適合され得る。
【0043】
質量分析計は、好ましくは、第1の周波数および第1の振幅を有する第1のAC電圧またはRF電圧を複数の電極のうちの少なくともいくつかに印加して、使用時にイオンがイオンガイド内に半径方向に閉じ込められるように構成および適合される第1のRFデバイスをさらに含み、ここで、(a)第1の周波数は、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、および(xxv)>10.0MHzからなる群から選択される、および/または(b)第1の振幅は、(i)<50Vピーク・トゥ・ピーク、(ii)50〜100Vピーク・トゥ・ピーク、(iii)100〜150Vピーク・トゥ・ピーク、(iv)150〜200Vピーク・トゥ・ピーク、(v)200〜250Vピーク・トゥ・ピーク、(vi)250〜300Vピーク・トゥ・ピーク、(vii)300〜350Vピーク・トゥ・ピーク、(viii)350〜400Vピーク・トゥ・ピーク、(ix)400〜450Vピーク・トゥ・ピーク、(x)450〜500Vピーク・トゥ・ピーク、および(xi)>500Vピーク・トゥ・ピークからなる群から選択される、および/または(c)動作モードにおいて、隣接または近接する電極には、第1のAC電圧またはRF電圧の互いに反対の位相が供給される、および/または(d)イオンガイドは、1〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、90〜100または>100グループの電極を含み、ここで、各グループの電極は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の電極を含み、かつ各グループにおける少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の電極には、第1のAC電圧またはRF電圧の同じ位相が供給される、のいずれかである。
【0044】
制御システムは、好ましくは、第1の周波数および/または第1の振幅を変更、変化、増大または低減し、イオンガイド内のイオン閉じ込めおよび/またはイオン−イオン相互作用の度合いまたは量を変更、変化、増大または低減して、ETDによるイオンのフラグメンテーションの度合いを最適化または最大化するように構成および適合される。
【0045】
上記好適な実施形態によると、制御システムは、(i)質量スペクトル、イオン移動度スペクトルまたは他のスペクトル内に観測される1つ以上の第1の親、前駆体、娘、フラグメント、電荷が減少した、または他のイオンの強度または存在度、または(ii)質量スペクトル、イオン移動度スペクトルまたは他のスペクトルの第1の質量範囲または第1の質量電荷比範囲内の1つ以上の第1の親、前駆体、娘、フラグメント、電荷が減少した、または他のイオンの強度または存在度のいずれかを推定、決定または測定することによって、第1のイオンの少なくともいくつかがフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを推定、決定または測定するように構成および適合される。
【0046】
制御システムは、好ましくは、1つ以上の第2の親、前駆体、娘、フラグメント、電荷が減少した、または他のイオンの強度または存在度に対する、質量スペクトルまたはイオン移動度スペクトルの第1の質量範囲または第1の質量電荷比範囲内の1つ以上の第1の親、前駆体、娘、フラグメント、電荷が減少した、または他のイオンの強度または存在度を推定、決定または測定することによって、第1のイオンの少なくともいくつかがフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを推定、決定または測定するように構成および適合される。
【0047】
第1の質量範囲または第1の質量電荷比範囲は、好ましくは、(i)<10、(ii)10〜50、(iii)50〜100、(iv)100〜200、(v)200〜300、(vi)300〜400、(vii)400〜500、(viii)500〜600、(ix)600〜700、(x)700〜800、(xi)800〜900、(xii)900〜1000、(xiii)1000〜1100、(xiv)1100〜1200、(xv)1200〜1300、(xvi)1300〜1400、(xvii)1400〜1500、(xviii)1500〜1600、(xix)1600〜1700、(xx)1700〜1800、(xxi)1800〜1900、(xxii)1900〜2000、および(xxiii)>2000からなる群から選択される質量単位または質量電荷比単位の幅を有する。
【0048】
好適な実施形態によると、制御システムは、第1のイオンの少なくともいくつかがフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを変更、変化、増大または低減して、イオン存在度測定値、イオン強度測定値またはイオン比を所望の値および/または所望の範囲内に維持するように構成および適合される。
【0049】
所望の値および/または所望の範囲は、好ましくは、(i)<0.1、(ii)0.1〜0.2、(iii)0.2〜0.3、(iv)0.3〜0.4、(v)0.4〜0.5、(vi)0.5〜0.6、(vii)0.6〜0.7、(viii)0.7〜0.8、(ix)0.8〜0.9、(x)0.9〜1.0、(xi)1.0〜1.1、(xii)1.1〜1.2、(xiii)1.2〜1.3、(xiv)1.3〜1.4、(xv)1.4〜1.5、(xvi)1.5〜1.6、(xvii)1.6〜1.7、(xviii)1.7〜1.8、(xix)1.8〜1.9、(xx)1.9〜2.0、(xxi)2.0〜2.1、(xxii)2.1〜2.2、(xxiii)2.2〜2.3、(xxiv)2.3〜2.4、(xxv)2.4〜2.5、(xxvi)2.5〜2.6、(xxvii)2.6〜2.7、(xxviii)2.7〜2.8、(xxix)2.8〜2.9、(xxx)2.9〜3.0、(xxxi)3.0〜3.1、(xxxii)3.1〜3.2、(xxxiii)3.2〜3.3、(xxxiv)3.3〜3.4、(xxxv)3.4〜3.5、(xxxvi)3.5〜3.6、(xxxvii)3.6〜3.7、(xxxviii)3.7〜3.8、(xxxix)3.8〜3.9、(xl)3.9〜4.0、(xli)4.0〜4.1、(xlii)4.1〜4.2、(xliii)4.2〜4.3、(xliv)4.3〜4.4、(xlv)4.4〜4.5、(xlvi)4.5〜4.6、(xlvii)4.6〜4.7、(xlviii)4.7〜4.8、(xlix)4.8〜4.9、(l)4.9〜5.0、および(li)>5.0からなる群から選択される。
【0050】
制御システムが、イオン存在度測定値、イオン強度測定値またはイオン比が比較的高いか、または閾値を超えると判定した場合、好ましくは、1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減して、イオン存在度測定値、イオン強度測定値またはイオン比を低減するように構成および適合される。
【0051】
制御システムが、イオン存在度測定値、イオン強度測定値またはイオン比が比較的低いか、または閾値を下回る判定した場合、好ましくは、1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減して、イオン存在度測定値、イオン強度測定値またはイオン比を増大するように構成および適合される。
【0052】
イオンガイドは、好ましくは、使用時にイオンが移送される少なくとも1つの開口を有する複数の電極を含む。
【0053】
一実施形態によると、電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、実質的に円形、矩形、正方形または楕円形の開口を有する。
【0054】
一実施形態によると、電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%は、実質的に同じ第1のサイズを有するか、もしくは実質的に同じ第1の面積を有する開口を有し、および/または電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%は、実質的に同じ第2の異なるサイズを有するか、もしくは実質的に同じ第2の異なる面積を有する開口を有する。
【0055】
一実施形態によると、電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、サイズまたは面積がイオンガイドの軸に沿った方向へいくにつれ順次より大きくおよび/またはより小さくなる開口を有する。
【0056】
一実施形態によると、電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、および(xi)>10.0mmからなる群から選択される内径または寸法を有する開口を有する。
【0057】
一実施形態によると、電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、および(xv)0.25mm以下からなる群から選択される軸方向距離だけ互いに間隔を開けられる。
【0058】
一実施形態によると、複数の電極のうちの少なくともいくつかは、開口を含み、かつ開口の内径または寸法の隣接する電極間の中心−中心軸方向間隔に対する比は、(i)<1.0、(ii)1.0〜1.2、(iii)1.2〜1.4、(iv)1.4〜1.6、(v)1.6〜1.8、(vi)1.8〜2.0、(vii)2.0〜2.2、(viii)2.2〜2.4、(ix)2.4〜2.6、(x)2.6〜2.8、(xi)2.8〜3.0、(xii)3.0〜3.2、(xiii)3.2〜3.4、(xiv)3.4〜3.6、(xv)3.6〜3.8、(xvi)3.8〜4.0、(xvii)4.0〜4.2、(xviii)4.2〜4.4、(xix)4.4〜4.6、(xx)4.6〜4.8、(xxi)4.8〜5.0、および(xxii)>5.0からなる群から選択される。
【0059】
一実施形態によると、複数の電極の開口の内径は、イオンガイドの長軸に沿って1回以上順次増大または低減し、そして次いで順次低減または増大する。
【0060】
一実施形態によると、複数の電極は、幾何体積を規定し、ここで、幾何体積は、(i)1つ以上の球、(ii)1つ以上の扁平楕円体、(iii)1つ以上の扁長楕円体、(iv)1つ以上の楕円体、および(v)1つ以上の不等辺楕円体からなる群から選択される。
【0061】
一実施形態によると、イオンガイドは、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mm、および(xi)>200mmからなる群から選択される長さを有する。
【0062】
一実施形態によると、イオンガイドは、少なくとも(i)1〜10個の電極、(ii)10〜20個の電極、(iii)20〜30個の電極、(iv)30〜40個の電極、(v)40〜50個の電極、(vi)50〜60個の電極、(vii)60〜70個の電極、(viii)70〜80個の電極、(ix)80〜90個の電極、(x)90〜100個の電極、(xi)100〜110個の電極、(xii)110〜120個の電極、(xiii)120〜130個の電極、(xiv)130〜140個の電極、(xv)140〜150個の電極、(xvi)150〜160個の電極、(xvii)160〜170個の電極、(xviii)170〜180個の電極、(xix)180〜190個の電極、(xx)190〜200個の電極、および(xxi)>200個の電極を含む。
【0063】
一実施形態によると、電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、および(xv)0.25mm以下からなる群から選択される厚さまたは軸方向長さを有する。
【0064】
一実施形態によると、複数の電極のピッチ間隔または軸方向間隔は、イオンガイドの長軸に沿って1回以上順次低減または増大する。
【0065】
好ましさがやや低い実施形態によると、イオンガイドは、複数のセグメント化ロッド電極を含み得る。
【0066】
好ましさがやや低い実施形態によると、イオンガイドは、1つ以上の第1の電極と;1つ以上の第2の電極と;使用時にイオンが進行する平面に配置される1つ以上の層の中間電極であって、1つ以上の層の中間電極は、1つ以上の第1の電極と1つ以上の第2の電極との間に配置され、かつ1つ以上の層の中間電極は、1つ以上の層の平面電極またはプレート電極を含み、かつ1つ以上の第1の電極は、最上部の電極であり、かつ1つ以上の第2の電極は、最下部の電極である、1つ以上の層の中間電極とを含み得る。
【0067】
一実施形態によると、(a)静的イオン−イオン反応領域、イオン−中性ガス反応領域または反応体積がイオンガイド中に形成または生成されるか、または(b)動的イオン−イオン反応領域、イオン−中性ガス反応領域または反応体積がイオンガイド中に形成または生成される。
【0068】
質量分析計は、好ましくは、(a)イオンガイドを、動作モードにおいて、(i)<100mbar、(ii)<10mbar、(iii)<1mbar、(iv)<0.1mbar、(v)<0.01mbar、(vi)<0.001mbar、(vii)<0.0001mbar、および(viii)<0.00001mbarからなる群から選択される圧力に維持する、および/または
(b)イオンガイドを、動作モードにおいて、(i)>100mbar、(ii)>10mbar、(iii)>1mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>0.01mbar、(vi)>0.001mbar、および(vii)>0.0001mbarからなる群から選択される圧力に維持する、および/または
(c)イオンガイドを、動作モードにおいて、(i)0.0001〜0.001mbar、(ii)0.001〜0.01mbar、(iii)0.01〜0.1mbar、(iv)0.1〜1mbar、(v)1〜10mbar、(vi)10〜100mbar、および(vii)100〜1000mbarからなる群から選択される圧力に維持する、のいずれかに構成および適合されるデバイスをさらに含み得る。
【0069】
一実施形態によると、イオンガイド内の第1のイオンのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%についての滞留、過渡または反応の時間は、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜5ミリ秒、(iii)5〜10ミリ秒、(iv)10〜15ミリ秒、(v)15〜20ミリ秒、(vi)20〜25ミリ秒、(vii)25〜30ミリ秒、(viii)30〜35ミリ秒、(ix)35〜40ミリ秒、(x)40〜45ミリ秒、(xi)45〜50ミリ秒、(xii)50〜55ミリ秒、(xiii)55〜60ミリ秒、(xiv)60〜65ミリ秒、(xv)65〜70ミリ秒、(xvi)70〜75ミリ秒、(xvii)75〜80ミリ秒、(xviii)80〜85ミリ秒、(xix)85〜90ミリ秒、(xx)90〜95ミリ秒、(xxi)95〜100ミリ秒、(xxii)100〜105ミリ秒、(xxiii)105〜110ミリ秒、(xxiv)110〜115ミリ秒、(xxv)115〜120ミリ秒、(xxvi)120〜125ミリ秒、(xxvii)125〜130ミリ秒、(xxviii)130〜135ミリ秒、(xxix)135〜140ミリ秒、(xxx)140〜145ミリ秒、(xxxi)145〜150ミリ秒、(xxxii)150〜155ミリ秒、(xxxiii)155〜160ミリ秒、(xxxiv)160〜165ミリ秒、(xxxv)165〜170ミリ秒、(xxxvi)170〜175ミリ秒、(xxxvii)175〜180ミリ秒、(xxxviii)180〜185ミリ秒、(xxxix)185〜190ミリ秒、(xl)190〜195ミリ秒、(xli)195〜200ミリ秒、および(xlii)>200ミリ秒からなる群から選択される。
【0070】
一実施形態によると、イオンガイド内の第2のイオンのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%についての滞留、過渡または反応の時間は、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜5ミリ秒、(iii)5〜10ミリ秒、(iv)10〜15ミリ秒、(v)15〜20ミリ秒、(vi)20〜25ミリ秒、(vii)25〜30ミリ秒、(viii)30〜35ミリ秒、(ix)35〜40ミリ秒、(x)40〜45ミリ秒、(xi)45〜50ミリ秒、(xii)50〜55ミリ秒、(xiii)55〜60ミリ秒、(xiv)60〜65ミリ秒、(xv)65〜70ミリ秒、(xvi)70〜75ミリ秒、(xvii)75〜80ミリ秒、(xviii)80〜85ミリ秒、(xix)85〜90ミリ秒、(xx)90〜95ミリ秒、(xxi)95〜100ミリ秒、(xxii)100〜105ミリ秒、(xxiii)105〜110ミリ秒、(xxiv)110〜115ミリ秒、(xxv)115〜120ミリ秒、(xxvi)120〜125ミリ秒、(xxvii)125〜130ミリ秒、(xxviii)130〜135ミリ秒、(xxix)135〜140ミリ秒、(xxx)140〜145ミリ秒、(xxxi)145〜150ミリ秒、(xxxii)150〜155ミリ秒、(xxxiii)155〜160ミリ秒、(xxxiv)160〜165ミリ秒、(xxxv)165〜170ミリ秒、(xxxvi)170〜175ミリ秒、(xxxvii)175〜180ミリ秒、(xxxviii)180〜185ミリ秒、(xxxix)185〜190ミリ秒、(xl)190〜195ミリ秒、(xli)195〜200ミリ秒、および(xlii)>200ミリ秒からなる群から選択される。
【0071】
一実施形態によると、イオンガイド内で生成または形成されたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%についての滞留、過渡または反応の時間は、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜5ミリ秒、(iii)5〜10ミリ秒、(iv)10〜15ミリ秒、(v)15〜20ミリ秒、(vi)20〜25ミリ秒、(vii)25〜30ミリ秒、(viii)30〜35ミリ秒、(ix)35〜40ミリ秒、(x)40〜45ミリ秒、(xi)45〜50ミリ秒、(xii)50〜55ミリ秒、(xiii)55〜60ミリ秒、(xiv)60〜65ミリ秒、(xv)65〜70ミリ秒、(xvi)70〜75ミリ秒、(xvii)75〜80ミリ秒、(xviii)80〜85ミリ秒、(xix)85〜90ミリ秒、(xx)90〜95ミリ秒、(xxi)95〜100ミリ秒、(xxii)100〜105ミリ秒、(xxiii)105〜110ミリ秒、(xxiv)110〜115ミリ秒、(xxv)115〜120ミリ秒、(xxvi)120〜125ミリ秒、(xxvii)125〜130ミリ秒、(xxviii)130〜135ミリ秒、(xxix)135〜140ミリ秒、(xxx)140〜145ミリ秒、(xxxi)145〜150ミリ秒、(xxxii)150〜155ミリ秒、(xxxiii)155〜160ミリ秒、(xxxiv)160〜165ミリ秒、(xxxv)165〜170ミリ秒、(xxxvi)170〜175ミリ秒、(xxxvii)175〜180ミリ秒、(xxxviii)180〜185ミリ秒、(xxxix)185〜190ミリ秒、(xl)190〜195ミリ秒、(xli)195〜200ミリ秒、および(xlii)>200ミリ秒からなる群から選択される。
【0072】
一実施形態によると、イオンガイドは、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜10ミリ秒、(iii)10〜20ミリ秒、(iv)20〜30ミリ秒、(v)30〜40ミリ秒、(vi)40〜50ミリ秒、(vii)50〜60ミリ秒、(viii)60〜70ミリ秒、(ix)70〜80ミリ秒、(x)80〜90ミリ秒、(xi)90〜100ミリ秒、(xii)100〜200ミリ秒、(xiii)200〜300ミリ秒、(xiv)300〜400ミリ秒、(xv)400〜500ミリ秒、(xvi)500〜600ミリ秒、(xvii)600〜700ミリ秒、(xviii)700〜800ミリ秒、(xix)800〜900ミリ秒、(xx)900〜1000ミリ秒、(xxi)1〜2秒、(xxii)2〜3秒、(xxiii)3〜4秒、(xxiv)4〜5秒、および(xxv)>5秒からなる群から選択されるサイクル時間を有する。
【0073】
一実施形態によると、
(a)動作モードにおいて、第1のイオンおよび/もしくは第2のイオンは、イオンガイド内でトラップされるが、実質的にフラグメンテーションおよび/もしくは反応および/もしくは電荷減少がされないように構成および適合され、ならびに/または
(b)動作モードにおいて、第1のイオンおよび/もしくは第2のイオンは、イオンガイド内で衝突により冷却されるか、または実質的に熱化されるように構成および適合され、ならびに/または
(c)動作モードにおいて、第1のイオンおよび/もしくは第2のイオンは、イオンガイド内で実質的にフラグメンテーションおよび/もしくは反応および/もしくは電荷減少がされるように構成および適合され、ならびに/または
(d)動作モードにおいて、第1のイオンおよび/もしくは第2のイオンは、イオンガイドの入口および/もしくは出口に配置される1つ以上の電極によってイオンガイド中へおよび/もしくはそこからパルスとして入射および/もしくは出射されるように構成および適合される。
【0074】
一実施形態によると、
(a)動作モードにおいて、イオンの大部分は、衝突誘起解離によってフラグメンテーションされて、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを形成するように構成され、ここで、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンの大多数は、b−タイプのプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンおよび/またはy−タイプのプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンであり、および/または
(b)動作モードにおいて、イオンの大部分は、電子移動解離によってフラグメンテーションされて、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを形成するように構成され、ここで、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンの大多数は、c−タイプのプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンおよび/またはz−タイプのプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンである。
【0075】
一実施形態によると、電子移動解離を実施するために、(a)分析種イオンは、試薬イオンとの相互作用時にフラグメンテーションされるか、またはプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、および/または(b)電子は、1つ以上の試薬のアニオンもしくは負電荷のイオンから1つ以上の多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンに移動し、この時に、多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、および/または(c)分析種イオンは、中性試薬ガスの分子もしくは原子または非イオン試薬ガスとの相互作用時にフラグメンテーションされるか、またはプロダクトイオンまたはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、および/または(d)電子は、1つ以上の中性、非イオンまたは非荷電塩基のガスまたは蒸気から1つ以上の多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンに移動し、この時に、多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、および/または(e)電子は、1つ以上の中性、非イオンまたは非荷電超強塩基の試薬ガスまたは試薬蒸気から1つ以上の多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンに移動し、この時に、多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、および/または(f)電子は、1つ以上の中性、非イオンまたは非荷電のアルカリ金属のガスまたは蒸気から1つ以上の多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンに移動し、この時に、多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、および/または(g)電子は、1つ以上の中性、非イオンまたは非荷電のガス、蒸気または原子から1つ以上の多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンに移動し、この時に、多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導され、ここで、1つ以上の中性、非イオンまたは非荷電のガス、蒸気または原子は、(i)ナトリウムの蒸気または原子、(ii)リチウムの蒸気または原子、(iii)カリウムの蒸気または原子、(iv)ルビジウムの蒸気または原子、(v)セシウムの蒸気または原子、(vi)フランシウムの蒸気または原子、(vii)C60の蒸気または原子、および(viii)マグネシウムの蒸気または原子からなる群から選択される、のいずれかである、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【0076】
多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンは、好ましくは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質または生体分子を含む。
【0077】
一実施形態によると、電子移動解離を実施するために、(a)試薬のアニオンもしくは負電荷のイオンは、ポリ芳香族炭化水素もしくは置換ポリ芳香族炭化水素から得られ、および/または(b)試薬のアニオンもしくは負電荷のイオンは、(i)アントラセン、(ii)9,10ジフェニル−アントラセン、(iii)ナフタレン、(iv)フッ素、(v)フェナントレン、(vi)ピレン、(vii)フルオランテン、(viii)クリセン、(ix)トリフェニレン、(x)ペリレン、(xi)アクリジン、(xii)2,2’ジピリジル、(xiii)2,2’ビキノリン、(xiv)9−アントラセンカルボニトリル、(xv)ジベンゾチオフェン、(xvi)1,10’−フェナントロリン、(xvii)9’アントラセンカルボニトリル、および(xviii)アントラキノンからなる群から得られ、および/または(c)試薬のイオンまたは負電荷のイオンは、アゾベンゼンアニオンまたはアゾベンゼンラジカルアニオンを含む。
【0078】
一実施形態によると、プロトン移動反応を実施するために、(i)プロトンは、1つ以上の多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンから1つ以上の試薬のアニオンもしくは負電荷のイオンに移動し、この時に、多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、電荷状態が低減され、および/もしくはプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、ならびに/または(ii)プロトンは、1つ以上の多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンから1つ以上の中性、非イオンもしくは非荷電の試薬ガスまたは試薬蒸気に移動し、この時に、多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、電荷状態が低減され、および/またはプロダクトイオンまたはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、のいずれかである。
【0079】
多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンは、好ましくは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質または生体分子を含む。
【0080】
一実施形態によると、プロトン移動反応を実施するために、(a)試薬のアニオンもしくは負電荷のイオンは、(i)カルボン酸、(ii)フェノール、および(iii)アルコキシドを含む化合物からなる群から選択される化合物から得られる、および/または(b)試薬のアニオンもしくは負電荷のイオンは、(i)安息香酸、(ii)過フルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサンもしくはPDCH、(iii)六フッ化硫黄もしくはSF6、および(iv)過フルオロトリブチルアミンもしくはPFTBAからなる群から選択される化合物から得られる、および/または(c)1つ以上の試薬ガスもしくは試薬蒸気は、超強塩基ガスを含む、および/または(d)1つ以上の試薬ガスまたは試薬蒸気は、(i)1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(「TMG」)、(ii)2,3,4,6,7,8、9,10−オクタヒドロピリミドール[1,2−a]アゼピン{異名:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(「DBU」)}、または(iii)7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(「MTBD」){異名:1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−1−メチル−2H−ピリミド[1,2−a]ピリミジン}からなる群から選択される、のいずれかである。
【0081】
質量分析計は、好ましくは、電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置されるイオン源をさらに含み、イオン源は、(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコン上脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝突(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電場イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電場脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、(xvi)ニッケル−63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザ脱離イオン化イオン源、(xviii)熱スプレーイオン源、(xix)大気サンプリンググロー放電イオン化(「ASGDI」)イオン源、および(xx)グロー放電(「GD」)イオン源からなる群から選択される。
【0082】
質量分析計は、好ましくは、1つ以上の連続イオン源またはパルスイオン源をさらに含む。質量分析計は、好ましくは、電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のイオンガイドをさらに含む。質量分析計は、好ましくは、電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のイオン移動度分離デバイスおよび/または1つ以上の電場非対称イオン移動度分光計デバイスをさらに含む。
【0083】
質量分析計は、好ましくは、電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のイオントラップまたは1つ以上のイオントラップ領域をさらに含む。質量分析計は、好ましくは、電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上の衝突、フラグメンテーションまたは反応セルをさらに含み、ここで1つ以上の衝突、フラグメンテーションまたは反応セルは、(i)衝突誘起解離(「CID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(iii)電子移動解離(「ETD」)フラグメンテーションデバイス、(iv)電子捕獲解離(「ECD」)フラグメンテーションデバイス、(v)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(vi)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vii)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(viii)赤外放射誘起解離デバイス、(ix)紫外放射誘起解離デバイス、(x)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(xi)インソースフラグメンテーションデバイス、(xii)インソース衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xiii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiv)電場誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xvi)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加またはプロダクトイオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加またはプロダクトイオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加またはプロダクトイオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加またはプロダクトイオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxvii)イオンを反応させて付加またはプロダクトイオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、(xxviii)イオンを反応させて付加またはプロダクトイオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイス、および(xxix)電子イオン化解離(「EID」)フラグメンテーションデバイスからなる群から選択される。
【0084】
質量分析計は、好ましくは、(i)四重極質量分析部、(ii)二次元または線形四重極質量分析部、(iii)ポールまたは三次元四重極質量分析部、(iv)ペニングトラップ質量分析部、(v)イオントラップ質量分析部、(vi)磁場セクタ質量分析部、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(「ICR」)質量分析部、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析部、(ix)静電またはオービトラップ質量分析部、(x)フーリエ変換静電またはオービトラップ質量分析部、(xi)フーリエ変換質量分析部、(xii)飛行時間質量分析部、(xiii)直交加速飛行時間質量分析部、および(xiv)直線加速飛行時間質量分析部からなる群から選択される質量分析部をさらに含む。質量分析計は、好ましくは、電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のエネルギー分析部または静電エネルギー分析部をさらに含む。質量分析計は、好ましくは、電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のイオン検出器をさらに含む。
【0085】
質量分析計は、好ましくは、電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上の質量フィルタをさらに含み、ここで、1つ以上の質量フィルタは、(i)四重極質量分析部、(ii)二次元または線形四重極質量分析部、(iii)ポールまたは三次元四重極質量分析部、(iv)ペニングトラップ質量分析部、(v)イオントラップ質量分析部、(vi)磁場セクタ質量分析部、(vii)飛行時間質量フィルタ、および(viii)ウィーンフィルタからなる群から選択される。質量分析計は、好ましくは、イオンをパルスにして電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスへ入力するためのデバイスまたはイオンゲートをさらに含む。質量分析計は、好ましくは、実質的に連続なイオンビームをパルスイオンビームに変換するためのデバイスをさらに含む。
【0086】
質量分析計は、好ましくは、(a)分析種イオンおよび/または試薬イオンを生成するための1つ以上の大気圧イオン源、および/または(b)分析種イオンおよび/または試薬イオンを生成するための1つ以上のエレクトロスプレーイオン源、および/または(c)分析種イオンおよび/または試薬イオンを生成するための1つ以上の大気圧化学イオン源、および/または(d)分析種イオンおよび/または試薬イオンを生成するための1つ以上のグロー放電イオン源をさらに含む。
【0087】
一実施形態によると、好ましくは、1つ以上のグロー放電イオン源が質量分析計の1つ以上の真空チャンバに備えられてもよい。
【0088】
一実施形態によると、質量分析計は、C−トラップと、オービトラップ質量分析部とを含み得る。ここで、第1の動作モードにおいて、イオンは、C−トラップへ移送され、そして次いでオービトラップ質量分析部中へ注入され、かつ第2の動作モードにおいて、イオンは、C−トラップへ移送され、そして次いで衝突セルまたは電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイス中へ移送され、ここで少なくともいくつかのイオンは、フラグメントイオンへフラグメンテーションされ、そして次いでフラグメントイオンは、C−トラップへ移送され、その後オービトラップ質量分析部中へ注入される。
【0089】
質量分析計は、好ましくは、使用時にイオンが移送される開口を有する複数の電極を含む積層リングイオンガイドであって、電極の間隔は、イオン経路の長さに沿って増大する、積層リングイオンガイドをさらに含む。イオンガイドの上流部分における電極中の開口は、第1の直径を有し、かつイオンガイドの下流部分における電極中の開口は、第1の直径よりも小さな第2の直径を有し得る。AC電圧またはRF電圧の互いに反対の位相が好ましくは連続した電極に印加される。
【0090】
本発明の別の局面によると、複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスと制御システムとを含む質量分析計の制御システムによって実行可能なコンピュータプログラムが提供される。コンピュータプログラムは、制御システムに
少なくともいくつかの第1のイオンがイオンガイドを通って移送される際に第1のイオンが電子移動解離および/またはプロトン移動反応によってフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを推定、決定または測定し、そしてそれに応答して、第1のイオンがイオンガイドを通過する際の第1のイオンの移送および/またはフラグメンテーションの度合いおよび/または電荷減少の度合いに影響する1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減するようにさせるように構成される。
【0091】
本発明の別の局面によると、コンピュータによって実行可能な命令を含むコンピュータによって読み取り可能な媒体が提供される。命令は、複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスを含む質量分析計の制御システムによって実行可能なように構成され、コンピュータプログラムは、制御システムに
少なくともいくつかの第1のイオンがイオンガイドを通って移送される際に第1のイオンが電子移動解離および/またはプロトン移動反応によってフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを推定、決定または測定し、そしてそれに応答して、第1のイオンがイオンガイドを通過する際の第1のイオンの移送および/またはフラグメンテーションの度合いおよび/または電荷減少の度合いに影響する1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減するようにさせるように構成される。
【0092】
コンピュ−タによって読み取り可能な媒体は、好ましくは、(i)ROM、(ii)EAROM、(iii)EPROM、(iv)EEPROM、(v)フラッシュメモリ、および(vi)光学ディスクからなる群から選択される。
【0093】
本発明の別の局面によると、複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスを準備するステップと、
少なくともいくつかの第1のイオンがイオンガイドを通って移送される際に第1のイオンが電子移動解離および/またはプロトン移動反応によってフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを推定、決定または測定し、そしてそれに応答して、第1のイオンがイオンガイドを通過する際の第1のイオンの移送および/またはフラグメンテーションの度合いおよび/または電荷減少の度合いに影響する1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減するステップと
を含む質量分析の方法が提供される。
【0094】
本発明の別の局面によると、
複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスと、
制御システムであって、
(i)イオンガイドから出現する第1の電荷状態を有する1つ以上の親イオンまたは前駆体イオンの強度または存在度I1を決定し、
(ii)イオンガイドから出現し、かつ電荷が減少した親イオンまたは前駆体イオンに対応し、かつ第1の電荷状態より低い第2の電荷状態を有する1つ以上のイオンの強度または存在度I2を決定し、および
(iii)電極に印加される1つ以上の過渡DC電圧の速度および/または振幅を変更して、比I1/I2または比I2/I1を時間が経過しても実質的に一定の値Rに維持する
ように構成および適合される制御システムと
を含む質量分析計が提供される。
【0095】
本発明の別の局面によると、
複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスと、
制御システムであって、
(i)イオンガイドから出現する第1の電荷状態を有する1つ以上の親イオンまたは前駆体イオンの強度または存在度I1を決定し、
(ii)イオンガイドから出現し、かつフラグメンテーションされた親イオンまたは前駆体イオンに対応する1つ以上のイオンの強度または存在度I2を決定し、および
(iii)電極に印加される1つ以上の過渡DC電圧の速度および/または振幅を変更して、比I1/I2または比I2/I1を時間が経過しても実質的に一定の値Rに維持する
ように構成および適合される制御システムと
を含む質量分析計が提供される。
【0096】
値Rは、好ましくは、(i)<0.1、(ii)0.1〜0.2、(iii)0.2〜0.3、(iv)0.3〜0.4、(v)0.4〜0.5、(vi)0.5〜0.6、(vii)0.6〜0.7、(viii)0.7〜0.8、(ix)0.8〜0.9、(x)0.9〜1.0、(xi)1.0〜1.1、(xii)1.1〜1.2、(xiii)1.2〜1.3、(xiv)1.3〜1.4、(xv)1.4〜1.5、(xvi)1.5〜1.6、(xvii)1.6〜1.7、(xviii)1.7〜1.8、(xix)1.8〜1.9、(xx)1.9〜2.0、(xxi)2.0〜2.1、(xxii)2.1〜2.2、(xxiii)2.2〜2.3、(xxiv)2.3〜2.4、(xxv)2.4〜2.5、(xxvi)2.5〜2.6、(xxvii)2.6〜2.7、(xxviii)2.7〜2.8、(xxix)2.8〜2.9、(xxx)2.9〜3.0、(xxxi)3.0〜3.1、(xxxii)3.1〜3.2、(xxxiii)3.2〜3.3、(xxxiv)3.3〜3.4、(xxxv)3.4〜3.5、(xxxvi)3.5〜3.6、(xxxvii)3.6〜3.7、(xxxviii)3.7〜3.8、(xxxix)3.8〜3.9、(xl)3.9〜4.0、(xli)4.0〜4.1、(xlii)4.1〜4.2、(xliii)4.2〜4.3、(xliv)4.3〜4.4、(xlv)4.4〜4.5、(xlvi)4.5〜4.6、(xlvii)4.6〜4.7、(xlviii)4.7〜4.8、(xlix)4.8〜4.9、(l)4.9〜5.0、および(li)>5.0からなる群から選択される。
【0097】
本発明の別の局面によると、
複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスを準備するステップと、
イオンガイドから出現する第1の電荷状態を有する1つ以上の親イオンまたは前駆体イオンの強度または存在度I1を決定するステップと、
イオンガイドから出現し、かつ電荷が減少した親イオンまたは前駆体イオンに対応し、かつ第1の電荷状態より低い第2の電荷状態を有する1つ以上のイオンの強度または存在度I2を決定するステップと、
電極に印加される1つ以上の過渡DC電圧の速度および/または振幅を変更して、比I1/I2または比I2/I1を時間が経過しても実質的に一定の値Rに維持するステップと
を含む質量分析の方法が提供される。
【0098】
本発明の別の局面によると、
複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスを準備するステップと、
イオンガイドから出現する第1の電荷状態を有する1つ以上の親イオンまたは前駆体イオンの強度または存在度I1を決定するステップと、
イオンガイドから出現し、かつフラグメンテーションされた親イオンまたは前駆体イオンに対応する1つ以上のイオンの強度または存在度I2を決定するステップと、
電極に印加される1つ以上の過渡DC電圧の速度および/または振幅を変更して、比I1/I2または比I2/I1を時間が経過しても実質的に一定の値Rに維持するステップと
を含む質量分析の方法が提供される。
【0099】
値Rは、(i)<0.1、(ii)0.1〜0.2、(iii)0.2〜0.3、(iv)0.3〜0.4、(v)0.4〜0.5、(vi)0.5〜0.6、(vii)0.6〜0.7、(viii)0.7〜0.8、(ix)0.8〜0.9、(x)0.9〜1.0、(xi)1.0〜1.1、(xii)1.1〜1.2、(xiii)1.2〜1.3、(xiv)1.3〜1.4、(xv)1.4〜1.5、(xvi)1.5〜1.6、(xvii)1.6〜1.7、(xviii)1.7〜1.8、(xix)1.8〜1.9、(xx)1.9〜2.0、(xxi)2.0〜2.1、(xxii)2.1〜2.2、(xxiii)2.2〜2.3、(xxiv)2.3〜2.4、(xxv)2.4〜2.5、(xxvi)2.5〜2.6、(xxvii)2.6〜2.7、(xxviii)2.7〜2.8、(xxix)2.8〜2.9、(xxx)2.9〜3.0、(xxxi)3.0〜3.1、(xxxii)3.1〜3.2、(xxxiii)3.2〜3.3、(xxxiv)3.3〜3.4、(xxxv)3.4〜3.5、(xxxvi)3.5〜3.6、(xxxvii)3.6〜3.7、(xxxviii)3.7〜3.8、(xxxix)3.8〜3.9、(xl)3.9〜4.0、(xli)4.0〜4.1、(xlii)4.1〜4.2、(xliii)4.2〜4.3、(xliv)4.3〜4.4、(xlv)4.4〜4.5、(xlvi)4.5〜4.6、(xlvii)4.6〜4.7、(xlviii)4.7〜4.8、(xlix)4.8〜4.9、(l)4.9〜5.0、および(li)>5.0からなる群から選択される。
【0100】
第1および第2の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形または過渡DC進行波は、ETDデバイスまたはPTRデバイスのイオンガイドの電極に逐次または同時に印加され得る。
【0101】
異なる種のカチオンおよび/または試薬イオンがETDデバイスまたはPTRデバイスの両端からデバイスへ入力される実施形態が考えられる。
【0102】
一実施形態によると、ETDデバイスまたはPTRデバイスは、2つの隣接するイオントンネル部分を含み得る。第1のイオントンネル部分における電極は、第1の内径を有し、および第2の部分における電極は、第2の異なる内径(一実施形態によると、第1の内径よりも小さくまたは大きくあり得る)を有し得る。第1および/または第2のイオントンネル部分は、質量分析計のほぼ中心の長軸に対して、傾くか、またはそうでなければ、軸を外れるように配置され得る。これにより、真空チャンバを通って直線的に移動し続ける中性粒子からイオンを分離することが可能となる。
【0103】
また、電子移動解離を実施するために使用される同じ試薬イオンまたは中性試薬ガスを使用して、プロトン移動反応を実施し得え、およびその逆も同様である他の実施形態が考えられる。
【0104】
一実施形態によると、デュアルモードイオン源またはツインイオン源が提供され得る。例えば、一実施形態によると、エレクトロスプレーイオン源を使用して、正の分析種イオンを生成し得、および大気圧化学イオン化イオン源を使用して、負の試薬イオンを生成し得る。また、エレクトロスプレーイオン源、大気圧化学イオン化イオン源またはグロー放電イオン源などの1つのイオン源を使用して、分析種イオンおよび/または試薬イオンを生成し得る実施形態が考えられる。
【0105】
少なくともいくつかの多価分析種カチオンが、少なくともいくつか試薬イオンと相互作用するようにされるのが好ましい。ここで、少なくともいくつかの電子は、試薬アニオンから多価分析種カチオンのうちの少なくともいくつかに移動し、この時に、多価分析種カチオンのうちの少なくともいくつかは、解離するよう誘起されて、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを形成する。
【0106】
上記好適な実施形態は、イオン−イオン反応デバイスおよび/またはイオン−中性ガス反応デバイスに関する。ここで、1つ以上の進行波または静電場が好ましくはRFイオンガイドの電極に印加される。RFイオンガイドは、好ましくは、使用時にイオンが移送される開口を有する複数の電極を含む。好ましくは、1つ以上の進行波または静電場は、好ましくはイオンガイドの電極に印加される1つ以上の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を含む。
【0107】
上記好適な実施形態は、互いに反対の電荷を有するイオンを空間的に操作し、イオン−イオン反応を容易にし、かつ好ましくは最大化、最適化または最小化するように設計される質量分析のためのデバイスに関する。特に、デバイスは、好ましくは、イオンの電子移動解離(「ETD」)フラグメンテーションおよび/またはプロトン移動反応(「PTR」)電荷状態低減を行うように構成および適合される。
【0108】
一実施形態によると、負電荷の試薬イオン(または、中性試薬ガス)は、イオン−イオン反応またはイオン−中性ガスのETDデバイスまたはPTRデバイス中に装填されるか、またはそうでなければ、提供または配置され得る。負電荷の試薬イオンは、例えば、DC進行波または1つ以上の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位をイオン−イオン反応デバイスを形成する電極に印加することによって、イオン−イオンのETDデバイスまたはPTRデバイス中へ移送され得る。
【0109】
一旦試薬アニオン(または、中性試薬ガス)がイオン−イオン反応デバイス(または、イオン−中性ガス反応デバイス)中へ装填されると、次いで多価分析種カチオンが好ましくは1つ以上の後のまたは独立したDC進行波によって反応デバイスを通ってまたはその中へ好ましくは駆動または推進され得る。1つ以上のDC進行波は、好ましくは反応デバイスの電極に印加される。試薬イオンは、好ましくは負電位をイオンガイドの一端または両端に印加することによってイオンガイド内に滞留される。
【0110】
1つ以上のDC進行波は、好ましくはイオンをイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿って並進または推進させるような1つ以上の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を好ましくは含む。したがって、イオンは、好ましくはイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの長さに沿って逐次電極に印加される1つ以上の実電位障壁またはDC電位障壁によって、イオンガイドの長さに沿って有効に並進される。これにより、DC電位障壁間にトラップされた正電荷の分析種イオンは、好ましくはイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの長さに沿って並進され、かつ好ましくはイオンガイドまたは反応デバイス中または内にすでに存在する負電荷の試薬イオン(または、中性試薬ガス)を通っておよび近接して好ましくは駆動または推進される。
【0111】
この実施形態の特に有利な点は、イオン−イオン反応および/またはイオン−中性ガス反応のための最適な状態が好ましくはイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内に実現されることである。さらに、上記好適な実施形態によると、最適な状態は、好ましくはDC進行波の速さ、速度または振幅を変更することによって維持され得る。試薬アニオン(または、試薬ガス)および分析種カチオンの運動エネルギーは、極めて一致するようにされ得る。電子移動解離(または、プロトン移動反応)プロセスから得られるプロダクトイオンまたはフラグメントイオンの滞留時間は、得られたフラグメントイオンまたはプロダクトイオンが通常のようには中性化されないように慎重に制御され得る。
【0112】
本発明の上記好適な実施形態は、分析種イオンのETDフラグメンテーションを最適化しながら主流の(すなわち、非FTICR)市販される質量分析計において有効に電子移動解離および/またはプロトン移動反応を行う能力において、従来の構成に対して著しい改善を与える。
【0113】
好ましくは、例えば、正電荷の分析種イオンをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスを通っておよび/または沿って並進させるために使用される1つ以上のDC進行波の速さおよび/または振幅を制御して、電子移動解離による分析種イオンのフラグメンテーションおよび/またはプロトン移動反応による分析種イオンの電荷状態の低減が最適化され得る。電子移動解離(または、プロトン移動反応)プロセスから得られる正電荷のフラグメントイオンまたはプロダクトイオンは、形成された後もイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内に過度に長く残すことが可能である場合、中性化される可能性がある。上記好適な実施形態によると、正電荷のフラグメントイオンまたはプロダクトイオンは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応内で形成された後、すぐにイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスから取り出されるかまたは引き出されることが可能になる。
【0114】
上記好適な実施形態によると、負電位または負電位障壁は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスもしくはイオン−中性ガス反応デバイスまたはETDもしくはPTRのデバイスの前(例えば、上流)端およびまた後(例えば、下流)端に必要に応じて印加され得る。負電位または負電位障壁は、好ましくは、イオンガイド内に負電荷の試薬イオンを閉じ込めるように働き、同時にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内に生成された正電荷のプロダクトイオンまたはフラグメントイオンがイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスから比較的速く出現または出射することを可能にするか、またはそうさせる。また、分析種イオンが中性ガス分子と相互作用し、そして電子移動解離および/またはプロトン移動反応を受け得る他の実施形態が考えられる。中性試薬ガスが提供される場合、電位障壁が提供されてもよいし、またはされなくてもよい。
【0115】
負電位または負電位障壁がイオンガイドの前(例えば、上流)端のみに印加される他の実施形態が考えられる。負電位または負電位障壁がイオンガイドの後(例えば、下流)端のみに印加されるさらなる実施形態が考えられる。1つ以上の負電位または負電位障壁がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの長さに沿って異なる位置に維持される他の実施形態が考えられる。例えば、1つ以上の負電位または負電位障壁がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの長さに沿って1つ以上の中間位置に提供され得る。
【0116】
好ましさがやや低い実施形態によると、正の分析種イオンが1つ以上の正電位によってイオンガイド内に滞留され、そして次いで試薬イオンまたは中性試薬ガスがイオンガイド中へ導入され得る。
【0117】
一実施形態によると、2つの静電進行波またはDC進行波がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に実質的に同時に印加され得る。進行波静電場または過渡DC電圧波形は、好ましくは、イオンを、例えば、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心領域へ、実質的に同時に互いに反対の方向に移動または並進させるように構成される。
【0118】
好ましくは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスは、好ましくはAC電圧またはRF電圧が供給される複数の積層リング電極を含む。電極は、好ましくは使用時にイオンが移送される開口を含む。イオンは、好ましくは、AC電圧またはRF電圧の互いに反対の位相を隣接する電極に印加して、半径方向の擬電位障壁を好ましくは生成することによって、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内に半径方向に閉じ込められる。半径方向の擬電位障壁は、好ましくは、イオンがイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心長軸に沿って半径方向に閉じ込められるようにする。好ましくはイオンガイドの電極に印加される進行波または複数の過渡DC電位もしくは過渡DC電圧は、好ましくはカチオンおよびアニオン(または、カチオンおよびカチオン、またはアニオンおよびアニオン)が互いに向かって方向付けられ、イオン−イオン反応および/またはイオン−中性ガス反応に好適な状態が好ましくはイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中央(または、他の部分または領域)に生成されるようにされる。
【0119】
一実施形態によると、2つの異なる分析種試料がイオンガイドの異なる端から導入され得る。追加または代替として、2つの異なる種の試薬イオンがイオンガイドの異なる端からイオンガイド中へ導入され得る。
【0120】
上記好適な実施形態に係るイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスは、好ましくは、従来の電子移動解離構成に関連する欠点を回避する。なぜなら、進行波静電場は、軸方向質量電荷比に依存するRF擬電位障壁を生成しないからである。したがって、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内でのイオン閉じ込めは、質量電荷比に依存しない。
【0121】
上記好適な実施形態の他の利点は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加される1つ以上のDC進行波または過渡DC電位もしくは過渡DC電圧の種々のパラメータが制御および最適化され得ることである。例えば、1つ以上のDC進行電圧波の波形、波長、波プロフィール、波速および振幅などのパラメータが制御および最適化され得る。この好適な実施形態によると、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内のイオンの空間位置を、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内のイオンの質量電荷比または極性にかかわらずに柔軟に制御できる。
【0122】
上記好適な実施形態によると、DC進行波パラメータ(すなわち、電極に印加される1つ以上の過渡DC電圧または過渡DC電位のパラメータ)は、イオンガイドまたは反応デバイスのイオン−イオン反応またはイオン−中性ガス領域におけるカチオンおよびアニオン(または、分析種カチオンおよび中性試薬ガス)間の相対的なイオン速度を支配できるように最適化され得る。カチオンおよびアニオンまたはカチオンおよび中性試薬ガス間の相対的なイオン速度は、好ましくは電子移動解離およびタンパク質移動反応の実験において反応速度定数を決定する重要なパラメータである。
【0123】
また、イオン−中性衝突の速度が、高速進行波または定在もしくは静的DC波のいずれかを使用して増大され得る他の実施形態も考えられる。また、そのような衝突を利用して、衝突誘起解離(「CID」)を促進し得る。特に、電子移動解離またはプロトン移動反応から得られたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンは、非共有結合を形成し得る。次いで、これらの非共有結合は、衝突誘起解離によって破壊され得る。衝突誘起解離は独立した衝突誘起解離セルにおいて電子移動解離のプロセスに対して空間的に逐次行われるか、および/または同じイオン−イオン反応またはイオン−中性ガス反応デバイスにおいて電子移動解離プロセスに対して時間的に逐次行われ得る。
【0124】
本発明の一実施形態によると、電子移動解離のプロセスの後に(または前に)プロトン移動反応が行われ、多価フラグメントイオンまたはプロダクトイオン(または、分析種イオン)の電荷状態を低減し得る。
【0125】
一実施形態によると、電子移動解離のために使用される試薬イオンおよびプロトン移動反応のために使用される試薬イオンは、同じのまたは異なる中性化合物から生成され得る。試薬イオンおよび分析種イオンは、同じイオン源または2つ以上の独立したイオン源によって生成され得る。
【0126】
本発明の一実施形態によると、プロダクトイオンスペクトルにおいて、電荷が減少したカチオンまたは電荷が減少した分析種イオンの強度の電荷の減少のない親カチオンの強度に対する比をリアルタイムに監視するデータ指向分析(「DDA」)の新しい方法が提供される。好ましくは、この比を利用して、電子移動解離および/またはプロトン移動反応の度合いを規定する機器パラメータを制御する。これにより、フラグメントイオン効率は、リアルタイムにかつ液体クロマトグラフィ(LC)のピーク溶出時間尺度と同等の時間尺度で最大化され得る。
【0127】
好ましくは、上記好適な実施形態は、好ましくは電荷が減少した分析種カチオンの親分析種カチオンに対する存在度の比にもとづいて、フラグメントおよび/または電荷が減少したイオンの存在度を最大化または変更する機器パラメータのリアルタイムフィードバック制御を提供する。
【0128】
ここで、添付の図面を参照し、本発明の種々の実施形態を、あくまで例として、説明する。
【0129】
図1は、2つの過渡DC電圧または過渡DC電位が同時にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加され、分析種カチオンおよび試薬アニオンがともにイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心領域に運搬されることを示す。
【0130】
図2は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加される進行DC電圧波形を使用して、正イオンおよび負イオンが同じ方向に同時に並進され得る様子を例示する。
【0131】
図3は、本発明の一実施形態に係るイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスのSIMION(登録商標)シミュレーションの断面図を示す。ここで、2つの進行DC電圧波形が同時にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加され、かつ進行DC電圧波形の振幅がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心に向かって順次低減する。
【0132】
図4は、2つの互いに反対に進行するDC電圧波形がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加されるものとしてモデル化され、かつ進行DC電圧波形の振幅がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心に向かって順次低減する場合の、好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内の電位エネルギー表面のスナップショットを示す。
【0133】
図5は、質量電荷比が300のカチオンおよびアニオンの2対の時間の関数としての軸方向位置を示す。ここで、そのカチオンおよびアニオンは、まずイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの端に提供されるものとしてモデル化し、かつ2つの互いに反対に進行するDC電圧波形は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加され、イオンがイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心領域に収束されるものとしてモデル化した。
【0134】
図6A、6B、6Cおよび6Dは、一実施形態に係る好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内の電位エネルギーを例示するSIMION(登録商標)シミュレーションを示す。ここで、焦点またはイオン−イオン反応領域は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心領域に固定されたままにするのではなく、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの長さに沿って順次移動するように構成される。
【0135】
図7は、イオンガイド結合器を好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの上流に設けることにより、分析種イオンおよび試薬イオンが上記好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス中へ方向付けられ、かつ上記好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスが直交加速飛行時間質量分析部に結合される本発明の実施形態を示す。
【0136】
図8Aは、振幅が0Vの進行波電圧を好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加した場合に得られた質量スペクトルを示す。図8Bは、振幅が0.5Vの進行波電圧を好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加した場合に得られた対応する質量スペクトルを示す。図8Cは、好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加される進行波電圧を1Vに増大した場合に得られた質量スペクトルを示す。
【0137】
図9は、本発明の一実施形態に係る質量分析計のイオン源部分を示す。ここで、エレクトロスプレーイオン源を使用して分析種イオンを生成し、かつ試薬イオンが質量分析計の入力真空チャンバ内に位置するグロー放電領域において生成される。
【0138】
図10は、本発明の一実施形態に係る質量分析計を示す。ここで、試薬アニオンおよび分析種カチオンは、第1の衝突セル内で反応するように構成され、そして次いで、得られたプロダクトイオンは、第1の衝突セルの下流に配置されたイオン移動度分光計内において時間的に分離される。
【0139】
図11Aは、本発明の一実施形態による、3価前駆体分析種カチオンが試薬アニオンとともに1.2ミリ秒の過渡時間でETDセルまたはPTRセルを通って移送された場合に得られた質量スペクトルを示す。図11Bは、本発明の一実施形態による、3価前駆体分析種カチオンが試薬アニオンとともに37ミリ秒の過渡時間でETDセルまたはPTRセルを通って移送された場合に得られた質量スペクトルを示す。図11Cは、本発明の一実施形態による、3価前駆体分析種カチオンが試薬アニオンとともに305ミリ秒の過渡時間でETDセルまたはPTRセルを通って移送された場合に得られた質量スペクトルを示す。
【0140】
図12は、本発明の一実施形態に係るフローチャートを示し、電子移動解離反応デバイスの電極に印加された1つ以上の過渡DC電圧の速さまたは振幅を増大または低減して、反応デバイスを通過するイオンのETDフラグメンテーションを最適化し得る様子を示す。
【0141】
図13Aは、振幅が1.4VのDC進行波を電子移動解離イオンガイドの電極に印加した場合に得られる質量スペクトルを示す。図13Bは、振幅が1.0VのDC進行波を電子移動解離イオンガイドの電極に印加した場合に得られる質量スペクトルを示す。図13Cは、振幅が0.8VのDC進行波を電子移動解離イオンガイドの電極に印加した場合に得られる質量スペクトルを示す。図13Dは、振幅が0.4VのDC進行波を電子移動解離イオンガイドの電極に印加した場合に得られる質量スペクトルを示す。図13Eは、振幅が0.1VのDC進行波を電子移動解離イオンガイドの電極に印加した場合に得られる質量スペクトルを示す。
【0142】
以下に、本発明の種々の実施形態を説明する。図1は、本発明の一好適な実施形態に係る積層リングイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を構成するレンズ素子またはリング電極1の断面図を示す。
【0143】
イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2は、好ましくは、使用時にイオンが移送される1つ以上の開口を有する複数の電極1を含む。デジタル電圧パルスパターンまたは列7が、好ましくは、使用時に電極1に印加される。デジタル電圧パルス7は、好ましくは、段階的に逐次印加され、かつ好ましくは矢印6で示されるように電極1に逐次印加される。図1に示す実施形態によると、第1のDC進行波8または過渡DC電圧もしくは過渡DC電位の列が、好ましくは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の第1の(上流)端からイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央へ向かって時間とともに移動するように構成される。同時に、第2のDC進行波9または過渡DC電圧もしくは過渡DC電位の列が必要に応じてイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の第2の(下流)端から、やはりイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央へ向かって時間とともに移動するように構成され得る。これにより、2つのDC進行波8、9または過渡DC電圧もしくは過渡DC電位の列は、好ましくは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の両側からイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央または中心領域へ向かって収束する。
【0144】
図1は、好ましくは時間の関数として(例えば、電子タイミングクロックが進行するにつれて)電極1に印加されるデジタル電圧パルス7を示す。デジタル電圧パルス7のイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の電極1への時間の関数として印加が進行する様子は、好ましくは矢印6によって示される。第1の時刻T1において、T1によって示される電圧パルスが、好ましくは、電極1に印加される。後の時刻T2において、T2によって示される電圧パルスが、好ましくは、電極1に印加される。後の時刻T3において、T3によって示される電圧パルスが、好ましくは、電極1に印加される。最後に、後の時刻T4において、T4によって示される電圧パルスが、好ましくは、電極1に印加される。電圧パルス7は、好ましくは、図示のように方形波電位プロフィ−ルを有する。
【0145】
また図1から明らかなように、電極1に印加されるデジタルパルス7の強度または振幅は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央または中心に向かって低減するように構成され得る。これにより、好ましくはイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の入力領域または出口領域に近接する電極1に印加されるデジタル電圧パルス7の強度または振幅は、好ましくは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域における電極1に好ましくは印加されるデジタル電圧パルス7の強度または振幅よりも大きい。好ましくは電極1に印加される過渡DC電圧もしくは過渡DC電位またはデジタル電圧パルス7の振幅は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って軸方向に離れても低減しない他の実施形態が考えられる。この実施形態によると、デジタル電圧パルス7の振幅は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って軸方向に離れても実質的に一定のままである。
【0146】
好ましくはイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2のレンズ素子またはリング電極1に印加される電圧パルス7は、好ましくは方形波である。イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内の電位は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内の波動関数電位が好ましくは滑らかな関数となるように、好ましくは緩和する。
【0147】
一実施形態によると、分析種カチオン(例えば、正電荷の分析種イオン)および/または試薬アニオン(例えば、負電荷の試薬イオン)は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の両端からイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2中へ同時に導入され得る。一旦イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2に入ると、正イオン(カチオン)は、好ましくはイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の電極1に印加されるDC進行波または1つ以上の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位の正(山)の電位によって、好ましくははね返される。静電進行波がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って移動するにつれ、正イオンは、好ましくは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2に沿って、進行波と同じ方向にかつ実施的に図2に示すようなやり方で推進される。
【0148】
負電荷の試薬イオン(すなわち、試薬アニオン)は、進行DC電圧または進行DC電位がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って移動するにつれ、進行波の正電位へ向かって引きつけられ、かつ同様に進行波の方向へ牽引、駆動または引きつけられる。これにより、正イオンは、好ましくは進行DC波の負の山(正の谷)において進行する一方、負イオンは、好ましくは、進行DC波または1つ以上の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位の正の山(負の谷)において進行する。
【0149】
一実施形態によると、2つの互いに反対方向へ進行するDC波8、9は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の両端からイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央または中心に向かって実質的に同時にイオンを並進させるように構成され得る。進行DC波8、9は、好ましくは、互いに向かって移動するように構成され、かつイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域に有効に収束または併合すると考えられ得る。カチオンおよびアニオンは、好ましくは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央へ向かって同時に搬送される。分析種カチオンが反応デバイスの異なる端から同時に導入され得る、好ましさがやや低い実施形態が考えられる。この実施形態によると、分析種イオンは、反応デバイス内に存在するかまたは後で反応デバイスに付加される中性試薬ガスと反応し得る。別の実施形態によると、2つの異なる種の試薬イオンが上記好適な反応デバイス中へ反応デバイスの異なる端から(同時にまたは後で)導入され得る。
【0150】
一実施形態によると、カチオンは、第1の進行DC波8によってイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心へ向かって並進され得、アニオンは、第2の異なる進行DC波9によってイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心へ向かって並進され得る。
【0151】
しかし、カチオンおよびアニオンの両方が第1のDC進行波8によってイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心(または他の領域)へ向かって同時に並進され得る他の実施形態が考えられる。この実施形態によると、また、カチオンおよび/またはアニオンは、必要に応じて、第2のDC進行電圧波9によってイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心(または他の領域)へ向かって同時に並進され得る。そこで、例えば、一実施形態によると、アニオンおよびカチオンは、他のアニオンおよびカチオンが好ましくは第1の方向に対して反対の第2の方向に好ましくは移動する第2のDC進行波9によって同時に並進されるのと同時に、第1のDC進行波8によって第1の方向へ同時に並進され得る。
【0152】
一実施形態によると、イオンがイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央または中心領域に近づくにつれ、進行波8、9の推進力は、低減するようにプログラムされ得、かつイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域における進行波の振幅は、実質的にゼロとなるか、またはそうでなければ少なくとも著しく低減されるように構成され得る。これにより、進行波の谷およびピ−クは、好ましくは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央(中心)において実施的に消失する(または、そうでなければ著しく低減する)ので、一実施形態によると、反対の極性(または、好ましさがやや低いが同じ極性)のイオンは、次いで好ましくはイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域内で併合しかつ相互作用するようにされる。任意のイオンが、例えば、バッファガス分子との多数回衝突または高い空間電荷効果によって、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央または中心領域から離れて軸方向にランダムに迷走すると、これらのイオンは、次いで、好ましくは、イオンをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心へ向かって戻るように並進または駆動する効果を有する後の進行DC波に出会う。
【0153】
一実施形態によると、正の分析種イオンは、第1の方向へ移動するように構成される第1のDC進行波8によってイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心へ向かって並進されるように構成され得、および負の試薬イオンは、第1の方向に対して反対の第2の方向へ移動するように構成される第2のDC進行波9によってイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心へ向かって並進されるように構成され得る。
【0154】
他の実施形態によると、2つの互いに反対方向のDC進行波8、9をイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の電極1に印加する代わりに、1つのDC進行波がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の電極1に任意の特定の時刻に印加され得る。この実施形態によると、負電荷の試薬イオン(または、好ましさがやや低いが正電荷の分析種イオン)が先にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2中へ装填または方向付けられ得る。試薬アニオンは、好ましくは、DC進行波によってイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の入口領域からイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスに沿ってまたは通って並進される。試薬アニオンは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の反対端または出口端に負電位を印加することによって、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内に滞留され得る。
【0155】
試薬アニオン(または、好ましさがやや低いが分析種カチオン)がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2中に装填された後、正電荷の分析種イオン(または、好ましさがやや低いが負電荷の試薬イオン)が、次いで、好ましくは、電極1に印加されたDC進行波または複数の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位によって、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2に沿ってまたは通って並進される。
【0156】
試薬アニオンおよび分析種カチオンを並進させるDC進行波は、好ましくはイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の電極1に印加される1つ以上の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を好ましくは含む。DC進行波のパラメータおよび、特に、過渡DC電圧または過渡DC電位がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って電極1に印加される速さまたは速度を変更または制御して、負電荷の試薬イオンと正電荷の分析種イオンとの間のイオン−イオン反応を最適化、最大化または最小化し得る。
【0157】
イオン−イオン相互作用から得られるフラグメントイオンまたはプロダクトイオンは、好ましくはDC進行波によって、かつ好ましくはフラグメントイオンまたはプロダクトイオンが中性化される前に、好ましくはイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2から掃き出される。また、未反応の分析種イオンおよび/または未反応の試薬イオンは、所望の場合に、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2から好ましくはDC進行波によって取り出され得る。また、好ましくはイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の少なくとも下流端にわたって印加される負電位は、好ましくは、正電荷のプロダクトアニオンまたはフラグメントアニオンを加速してイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2から出すように働く。
【0158】
一実施形態によると、負電荷のイオンを必要に応じてイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の一端または両端に印加して、負電荷のイオンをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内に滞留させ得る。また、印加される負電位は、好ましくは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内において生成または形成された正電荷のフラグメントイオンまたはプロダクトイオンを促進または駆動して、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の一端または両端を介してイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を出射させる効果を有する。
【0159】
一実施形態によると、正電荷のフラグメントイオンまたはプロダクトイオンは、形成されてから約30ミリ秒後にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を出射するように構成されることにより、正電荷のフラグメントイオンまたはプロダクトイオンがイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内で中性化されることを回避し得る。しかし、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内で形成されたフラグメントイオンまたはプロダクトイオンがイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2からより短時間で、例えば、0〜10ミリ秒、10〜20ミリ秒または20〜30ミリ秒の時間尺度内で出射するように構成され得る他の実施形態が考えられる。あるいは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内で形成されたフラグメントイオンまたはプロダクトイオンは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2からより遅く、例えば、30〜40ミリ秒、40〜50ミリ秒、50〜60ミリ秒、60〜70ミリ秒、70〜80ミリ秒、80〜90ミリ秒、90〜100ミリ秒または>100ミリ秒の時間尺度内で出射するように構成され得る。
【0160】
好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内におけるイオンの動きおよびそこを通るイオンの動きは、SIMION8(登録商標)を使用してモデル化されてきた。図3は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を形成する一列のリング電極1の断面図である。図3に示すようなイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を通るイオンの動きは、SIMION8(登録商標)を使用してモデル化した。また、図3は、本発明の一実施形態に係るイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を形成する電極1に順次印加されるものとしてモデル化された2つの収束DC進行波電圧8、9または過渡DC電圧の列8、9を示す。DC進行波電圧8、9は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心へ向かって収束するものとしてモデル化し、かつイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の両端からイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心へ向かってイオンを同時に並進させる効果を有した。
【0161】
図4は、SIMION(登録商標)によってモデル化されるようなイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内の電位エネルギー表面の特定の時刻におけるスナップショットを示す。
【0162】
図5は、第1のカチオン対およびアニオン対を、まずイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の上流端に配置されるものとしてモデル化し、および第2のカチオン対およびアニオン対を、まずイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの下流端に配置されるものとしてモデル化したシミュレ−ションの結果を示す。2つのDC進行電圧波を、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の電極1に同時に印加されるものとしてモデル化した。一方のDC進行電圧波または過渡DC電圧の列を、イオンをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の前端または上流端からイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心へ並進させるように構成されるものとしてモデル化し、他方のDC進行電圧波または過渡DC電圧の列を、イオンをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の後または下流端からイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心へ並進させるように構成されるものとしてモデル化した。
【0163】
図5は、上記2対のカチオンおよびアニオンのその後の軸方向位置を時間の関数として示す。すべての4つのイオンは、質量電荷比が300であるものとしてモデル化した。図5から明らかなように、両イオン対は、約200μ秒後にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の軸方向長さの中心または中央領域(45mmの変位位置)へ向かって移動する。
【0164】
イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2は、ステンレス鋼から形成される複数の積層導電性円形リング電極1を含むものとしてモデル化した。リング電極は、ピッチが1.5mm、厚さが0.5mm、中心開口径が5mmとなるように構成した。進行波プロフィールは、5μ秒間隔で進行するものとしてモデル化し、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央または中心に向かう等価な波の速度が300m/秒であるものとしてモデル化されるようにした。アルゴンバッファガスは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内に0.076Torr(すなわち、0.1mbar)の圧力で提供されるものとしてモデル化した。イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さは、90mmであるものとしてモデル化した。電圧パルスの通常の振幅は、10Vであるものとしてモデル化した。100VのRF電圧の互いに反対の位相は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を構成する隣り合う電極1に印加されるものとしてモデル化し、イオンがイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内に半径方向にかつ半径方向の擬電位谷内に閉じ込められるようにした。
【0165】
図5から明らかなように、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域内に、互いに反対の極性を有するイオンは、ともに近接した位置にあり、および相対的に低くかつ実質的に等しい運動エネルギーを有する。したがって、イオン−イオン反応領域は、好ましくは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域に提供または生成される。さらに、イオン−イオン相互作用のための状態は、実質的に最適化される。
【0166】
イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内のイオン−イオン反応の位置または場所は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の焦点と呼ばれ得る。というのも、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の焦点は、試薬アニオンおよび分析種カチオンが互いに近接し、そしてしたがって互いに相互作用する場所と考えられ得るからである。互いに反対のDC進行波8、9は、一実施形態によると、焦点または反応体積において出会うように構成され得る。DC進行電圧波8、9または過渡DC電圧もしくは過渡DC電位の振幅は、焦点または反応体積において実質的にゼロ振幅に減衰するように構成され得る。
【0167】
任意のイオン−イオン反応(または、イオン−中性ガス反応)が発生するとすぐに、任意の得られたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンがイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の反応体積から遠ざかるように好ましくは比較的短時間で掃き出されるか、またはそうでなければ、並進するよう構成され得る。一実施形態によると、その結果得られたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンは、好ましくはイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2から出射され、そして次いで飛行時間質量分析部またはイオン検出器などの質量分析部へ前方移送され得る。
【0168】
イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内に形成されたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンは、種々のやり方で引き出され得る。2つの互いに反対のDC進行電圧波8、9がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極1に印加される実施形態に関して、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の下流領域または出口領域に印加されるDC進行波9の進行方向は、反転され得る。また、DC進行波の振幅は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って正規化され、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2は、次いで従来の進行波イオンガイドとして有効に動作し、すなわち、1つの方向へ移動する1つの一定の振幅DC進行電圧波がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の実質的に全体にわたって印加され得る。
【0169】
同様に、1つのDC進行電圧波がまず試薬アニオンをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2に装填し、そして次いでその後に分析種カチオンが同じDC進行電圧波によってイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2中へ装填されるか、またはそこを通って移送される実施形態に関して、次いでその1つのDC進行電圧波はまた、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内で生成された正電荷のフラグメントイオンまたはプロダクトイオンを引き出すように働く。DC進行電圧波の振幅は、一旦フラグメントイオンまたはプロダクトイオンが生成されると、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って正規化され、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2は、従来の進行波イオンガイドとして有効に動作する。
【0170】
イオンは、進行波の場によって、十分に高い圧力(例えば、>0.1mbar)に維持されたイオンガイドを通って並進されると、そのイオンの移動度の順に進行波イオンガイドの端から出現し得ることを示した。比較的高いイオン移動度を有するイオンは、好ましくは比較的低いイオン移動度を有するイオンよりも先にイオンガイドから出現する。したがって、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域において生成されたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンのイオン移動度分離を活用することによって、本発明の実施形態に係る感度およびデューティサイクルの向上などのさらなる解析上の利点が得られ得る。
【0171】
一実施形態によると、イオン移動度分光計または分離段がETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の上流および/または下流に設けられ得る。例えば、一実施形態によると、ETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内に形成され、そしてその後にETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2から引き出されたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンは、次いで好ましくはETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の下流に配置されたイオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータにおいて、そのイオン移動度(または、好ましさがやや低いが電場強度とともに変化するイオン移動度の変化率)に応じて分離され得る。
【0172】
一実施形態によると、ETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を構成するリング電極1の内部開口の直径は、ETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿った電極の位置とともに順次増大するように構成され得る。開口径は、例えば、ETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の入口または出口部分にてより小さく、かつETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心または中央により近いところで比較的より大きくなるように構成され得る。これは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域内でイオンが受けるDC電位の振幅を低減し、他方上記の種々の電極1に印加されるDC電圧の振幅が実質的に一定に維持され得るという効果を有する。したがって、進行波イオンガイド電位は、この実施形態に係るETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央または中心領域で最小となる。
【0173】
別の実施形態によると、リング開口径および電極1に印加される過渡DC電圧または過渡DC電位の振幅の両方は、ETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って変更され得る。
【0174】
リング電極の開口の直径がETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心に向かって増大する実施形態において、中心軸の近くのRF場も低減する。これにより、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域におけるイオンのRFによる加熱が小さくなるという利点がある。この効果は、電子移動解離タイプの反応を最適化し、かつ衝突誘起反応を最小化する際に、特に有利であり得る。
【0175】
さらなる実施形態によると、ETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内の焦点または反応領域の位置は、ETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って時間の関数として軸方向に移動または変更され得る。これは、イオンがETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を通って、中心反応領域内に止まることなく、連続的に流れるか、または通過するように構成され得るという利点がある。これにより、分析種イオンおよび試薬イオンをETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の入口に導入し、そしてプロダクトイオンまたはフラグメントイオンをETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の出口から排出するプロセスを連続的に行うことが可能となる。焦点の並進移動の速度などの種々のパラメータを変更または制御して、イオン−イオン反応効率を最適化、最大化または最小化し得る。焦点の動きは、適切なレンズまたはリング電極1に印加される電圧を切り換えまたは制御することによって段階的に電子的に実現または制御され得る。
【0176】
焦点が時間とともに変更されるETDイオンガイドもしくはPTRイオンガイドまたはイオン−イオン反応領域2内のイオンの動きは、SIMION(登録商標)を使用して研究されてきた。図6A〜6Dは、一実施形態に係る、ETDイオンガイドもしくはPTRイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内の異なる時点での電位エネルギー表面を例示する。ここで、焦点または反応領域の軸方向位置は、時間とともに変化する。破線矢印は、好ましくは本発明の一実施形態に係るETDイオンガイドもしくはPTRイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の電極1に印加される互いに反対の進行波DC電圧の方向を図示する。図6A〜6Dからわかるように、進行DC波電圧の強度は、焦点からの距離または変位とともに直線的に増大するようにプログラムされてきた。しかし、代替として、進行DC電圧波に対して種々の他の振幅関数が使用され得る。また、反応領域または焦点の動きは、例えば、ETDイオンガイドもしくはPTRイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の入口(すなわち、左)からETDイオンガイドもしくはPTRイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の出口(すなわち、右)へ進行するようにプログラムされ得ることもわかる。したがって、電子移動解離(および/またはプロトン移動反応)のプロセスは、焦点がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って移動するか、または並進されるにつれて実質的に連続に発生するように構成され得る。最終的に、電子移動解離反応から得られたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンは、好ましくは、ETDイオンガイドもしくはPTRイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の出口から出現するように構成され、そして例えば、飛行時間質量分析部へ前方移送され得る。システム全体の感度を上げるために、ETDイオンガイドもしくはPTRイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2からイオンを放出するタイミングは、直交加速飛行時間質量分析部の押し込み電極と同期化され得る。また、以下の実施形態の変形例が考えられる。複数の焦点がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って設けられ得る。必要に応じて、焦点のうちのいくつかまたはすべてがイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って並進される。
【0177】
一実施形態によると、上記好適なETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2中に入力される分析種カチオンおよび試薬アニオンは、独立したかまたは異なるイオン源から生成され得る。カチオンおよびアニオンの両方を独立したイオン源から上記好適な実施形態に係るETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2中へ効率的に導入するために、さらなるイオンガイドが上記好適なETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の上流(および/または下流)に設けられ得る。このさらなるイオンガイドは、異なる位置の独立したイオン源からの両方の極性を有するイオンを同時にかつ連続的に受け取り、そして移動させ、そして分析種および試薬イオンの両方を上記好適なETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2中へ方向付けるように構成され得る。
【0178】
図7は、イオンガイド結合器10を使用して、分析種カチオン11および試薬アニオン12の両方を好適なETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2中へ導入して、電子移動解離によりETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内にプロダクトイオンまたはフラグメントイオンを形成し得る実施形態を例示する。イオンガイド結合器10は、例えば、米国6891157に開示されるようなマルチプレートRFイオンガイドを含み得る。イオンガイド結合器10は、ほぼイオン移送平面において配置される複数の平面電極を含み得る。隣接する平面電極は、好ましくは、AC電位またはRF電位の互いに反対の位相に維持される。また、平面電極は、好ましくは、イオンガイド領域がイオンガイド結合器10内に形成されるような形状にされる。上部および/または下部の平面電極が設けられ得、そしてDC電圧および/またはRF電圧を上部および/または下部の平面電極に印加して、イオンガイド結合器10内にイオンを滞留させ得る。
【0179】
また、1つ以上の質量選択的四重極を利用して、イオン源から受け取られる特定の分析種イオンおよび/または試薬イオンを選択し、そして所望のイオンだけをイオンガイド結合器10へ前方移送し得る。飛行時間質量分析部13を上記好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の下流に配置して、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内の反応領域5において生成され、そしてその後にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2から出現するプロダクトイオンまたはフラグメントイオンを受け取り、そして解析し得る。
【0180】
進行DC電圧波を積層リングRFイオンガイドの電極に印加するステップを含む実験によって、進行DC波電圧パルスの振幅を増大するステップか、および/またはイオン反応体積内の進行DC波電圧パルスの速さを増大するステップによって、イオン−イオン反応速度を低減、または必要に応じて停止さえし得るが示されてきた。これは、進行DC電圧波によって分析種カチオンの試薬アニオンに対する相対速度が局所的に増大し得るという事実に基づく。イオン−イオン反応速度は、カチオンおよびアニオン間の相対速度の3乗に反比例することが示されてきた。
【0181】
また、進行DC電圧波の振幅および/または速さを増大するステップは、カチオンおよびアニオンのETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2における滞在時間をともに低減し、かつしたがって反応効率を低減する効果を有し得る。
【0182】
図8A〜8Cは、ハイブリッド四重極飛行時間質量分析計のガスセル内に生成される電子移動解離のプロダクトイオンまたはフラグメントイオンの生成または形成時に進行DC電圧波の振幅を変更する効果を例示する。特に、図8A〜8Cは、質量電荷比が449.9のP物質の3価前駆体カチオンをフラグメンテーションした後、アゾベンゼン試薬アニオンを用いてイオン−イオン反応させて得られる電子移動解離のプロダクトイオンまたはフラグメントイオンを示す。図8Aは、進行波振幅を0Vに設定した場合に記録された質量スペクトルを示す。図8Bは、進行波振幅を0.5Vに設定した場合に記録された質量スペクトルを示す。図8Cは、進行波振幅を1.0Vに増大した場合に記録された質量スペクトルを示す。1.0V進行波がイオンガイドに印加される場合に電子移動解離のプロダクトイオンまたはフラグメントイオンの存在度が著しく低減されることがわかる。この効果を利用して、所望の場合に電子移動解離フラグメントイオンまたはプロダクトイオンの生成を実質的に防止または停止し得る(およびまたプロトン移動反応による電荷状態の低減を防止または停止し得る)。
【0183】
本発明の一実施形態によると、イオン−イオン反応は、ETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の電極1に印加される1つ以上のDC進行波の振幅および/または速さを変更することによって制御、最適化、最大化、または最小化され得る。しかし、進行DC波の場の振幅を電子的に制御する代わりに、その場の振幅が内径または軸方向間隔が変化する積層リング電極を利用することによって機械的に制御され得る他の実施形態が考えられる。リングスタックまたはリング電極1の開口の直径が増大するように構成される場合、同じ振幅電圧がすべての電極1に印加されるとすると、イオンが受ける進行波振幅は低減する。
【0184】
1つ以上の進行DC電圧波の振幅がさらに増大され、そして進行DC電圧波の速度が次いで急激にゼロに低減され、定常波が有効に生成され得る実施形態が考えられる。この実施形態によると、反応体積中のイオンは、ETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の軸に沿って繰り返し加速され、そして次いで減速され得る。この方法を使用して、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンの内部エネルギーを増加させ、プロダクトイオンまたはフラグメントイオンを衝突誘起解離(CID)のプロセスによってさらに分解させ得る。衝突誘起解離のこの方法は、電子移動解離から得られた非共有結合のプロダクトイオンまたはフラグメントイオンを分離する際にとくに有用である。予め電子移動解離反応させた前駆体イオンは、しばしば部分的に分解し(特に、1価および2価の前駆体イオン)、そして部分的に分解したイオンは、互いに非共有結合したままであり得る。
【0185】
別の実施形態によると、対象の非共有結合のプロダクトイオンまたはフラグメントイオンは、進行DC波がイオンを輸送する通常モードにおいて働くことによって積層リングイオンガイドから掃き出されている際に、互いに分離され得る。これは、進行波イオンガイドの速度を十分に高い値に設定して、イオン−分子衝突を発生させ、そして非共有結合のフラグメントイオンまたはプロダクトイオンの分離を誘導することによって実現され得る。
【0186】
別の実施形態によると、分析種イオンおよび試薬イオンは、同じイオン源または質量分析計の共通のイオン生成部またはイオン生成段のいずれかによって生成され得る。例えば、一実施形態によると、分析種イオンは、エレクトロスプレーイオン源によって生成され得、および試薬イオンは、好ましくはエレクトロスプレーイオン源の下流に配置されたグロー放電領域において生成され得る。図9は、分析種イオンがエレクトロスプレーイオン源によって生成される本発明の一実施形態を示す。エレクトロスプレーイオン源のキャピラリは、好ましくは+3kVに維持される。好ましくは、分析種イオンは、好ましくは0Vに維持された質量分析計の試料コーン15へ向かって牽引される。イオンは、好ましくは試料コーン15を通って、そして好ましくは真空ポンプ17によってポンプされた真空チャンバ16中へ移動する。好ましくは高電圧源に接続されたグロー放電ピン18は、好ましくは、真空チャンバ16内の試料コーン15の近くかつ下流に配置される。一実施形態によると、グロー放電ピン18は、−750Vに維持され得る。試薬源19からの試薬は、好ましくはグロー放電ピン18の近くに配置された真空チャンバ16中へ流出されるか、またはそうでなければ供給される。これにより、試薬イオンは、好ましくは、真空チャンバ16内のグロー放電領域20において生成される。次いで、試薬イオンは、好ましくは引き出しコーン21を通って引き出され、そしてさらなる下流真空チャンバ22中へ移動する。イオンガイド23は、好ましくはさらなる真空チャンバ22中に配置される。次いで、試薬イオンは、好ましくは質量分析計のさらなる段24へ移送され、そして好ましくは電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスとして使用される好適なETDデバイスもしくはPTRデバイス、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2に好ましくは移送される。
【0187】
本発明の一実施形態によると、デュアルモードまたはデュアルイオン源が設けられ得る。例えば、一実施形態によると、エレクトロスプレーイオン源を使用して、分析種(または、試薬)イオンを生成し得、および大気圧化学イオン化イオン源を使用して試薬(または、分析種)イオンを生成し得る。負電荷の試薬イオンは、ETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスの電極に印加される1つ以上の進行DC電圧または過渡DC電圧によって、ETD反応デバイスまたはPTR反応デバイス中へ渡され得る。負DC電位をETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスに印加して、負電荷の試薬イオンをETD反応デバイスまたはPTR反応デバイス内に滞留し得る。次いで、正電荷の分析種イオンは、1つ以上の進行DC電圧または過渡DC電圧をETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスの電極に印加することによって、ETD反応デバイスまたはPTR反応デバイス中に入力され得る。正電荷の分析種イオンは、好ましくは、滞留されず、かつETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスから出射するのを妨げられないようにされる。ETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスの電極に印加される進行DC電圧または過渡DC電圧の種々のパラメータを最適化または制御して、プロトン移動反応による分析種イオンおよび/またはプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンの電子移動解離および/または電荷状態の低減によってフラグメンテーションの度合いを最適化、最大化または最小化し得る。
【0188】
グロー放電イオン源を使用して試薬イオンおよび/または分析種イオンを生成する場合、イオン源のピン電極は、実施形態によると、±500〜700Vの電位に維持され得る。一実施形態によると、イオン源の電位は、正電位(カチオンを生成するため)と負電位(アニオンを生成するため)との間で比較的急速に切り換えられ得る。
【0189】
デュアルモードまたはデュアルイオン源が設けられる場合、そのイオン源がモード間で切り換えられ得ること、またはそのイオン源が約50ミリ秒ごとに互いに切り換えられ得ることが考えられる。以下の実施形態が考えられる。イオン源は、モード間で切り換えられ得るか、またはイオン源は、<1ミリ秒、1〜10ミリ秒、10〜20ミリ秒、20〜30ミリ秒、30〜40ミリ秒、40〜50ミリ秒、50〜60ミリ秒、60〜70ミリ秒、70〜80ミリ秒、80〜90ミリ秒、90〜100ミリ秒、100〜200ミリ秒、200〜300ミリ秒、300〜400ミリ秒、400〜500ミリ秒、500〜600ミリ秒、600〜700ミリ秒、700〜800ミリ秒、800〜900ミリ秒、900〜1000ミリ秒、1〜2秒、2〜3秒、3〜4秒、4〜5秒、または>5秒の時間尺度で互いに切り換えられ得る。1つ以上のイオン源のONおよびOFFを切り換える代わりに、その1つ以上のイオン源が実質的にONのままにされ得る他の実施形態が考えられる。この実施形態によると、バッフルまたは回転イオンビームブロックなどのイオン源セレクタデバイスが使用され得る。例えば、2つのイオン源がONのままにされ得るが、イオンビームセレクタは、好ましくは、任意の特定の時刻にイオンがイオン源のうちの一方から質量分析計へ移送されることだけを可能にする。あるイオン源がONのままにされ、および別のイオン源が繰り返しONおよびOFFに切り換えられ得る、さらなる実施形態が考えられる。
【0190】
一実施形態によると、電子移動解離フラグメンテーション(および/またはプロトン移動反応電荷状態の低減)は、ETDデバイスもしくはPTRデバイスまたはイオンガイドの電極に印加される進行DC電圧の速度および/または振幅を制御することによって制御、最大化、最小化、強化、または実質的に防止され得る。進行DC電圧が電極に非常に急速に印加される場合、電子移動解離によってフラグメンテーションする分析種イオンは非常に少なくあり得る(およびまた、プロトン移動反応による電荷状態の低減は、実質的に低減される)。
【0191】
反応体積がETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスの中心へ向かって最適化された種々の実施形態を説明したが、ETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスが、例えば、ETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスの上流および/または下流端へ向かって最適化される他の実施形態が考えられる。例えば、ETDデバイスもしくはPTRデバイスまたはイオンガイドのリング電極の内径は、ETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスの下流端へ向かって順次増大または低減し得る。追加または代替として、ETDデバイスもしくはPTRデバイスまたはイオンガイドのリング電極のピッチは、ETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスの下流端へ向かって順次低減または増大し得る。
【0192】
ガスフロー動的効果および/または圧力差効果を利用して、分析種イオンおよび/または試薬イオンをETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスの各部を通るように駆動または推進する、他の好ましさがやや低い実施形態が考えられる。ガスフロー動的効果は、上記好適な反応デバイスに沿っておよび通ってイオンを駆動または推進する他の方法または手段に加えて利用され得る。
【0193】
ETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスから出現するイオンは、好ましくはETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスの下流および/または上流に配置された独立のイオン移動度分離セルまたはイオン移動度分離段においてイオン移動度分離され得る。
【0194】
分析種イオンの電荷状態は、分析種イオンが試薬イオンおよび/または中性試薬ガスと相互作用する前に、プロトン移動反応によって低減され得ることが考えられる。追加または代替として、電子移動解離から得られるプロダクトイオンまたはフラグメントイオンの電荷状態は、プロトン移動反応によって低減され得る。
【0195】
また、分析種イオンは、プロトンを試薬イオンまたは中性試薬ガスへ移動させることによってフラグメンテーションされるか、またはそうでなければ、解離するようにされ得ることが考えられる。
【0196】
電子移動解離から得られるプロダクトイオンまたはフラグメントイオンは、ともに非共有結合し得る。非共有結合のプロダクトイオンまたはフラグメントイオンが、衝突誘起解離、表面誘起解離または他のフラグメンテーションプロセスによって、電子移動解離が行われた同じETD反応デバイスまたはPTR反応デバイスまたはより好ましくはETDイオンガイドまたはPTRイオンガイドの下流に好ましくは配置された独立の反応デバイスまたは反応セルのいずれかの中で、フラグメンテーションされ得る本発明の実施形態が考えられる。
【0197】
分析種イオンをフラグメンテーションまたは解離させた後、キセノン、セシウム、ヘリウムまたは窒素の原子またはイオンなどの準安定原子または準安定イオンと反応または相互作用させ得るさらなる実施形態が考えられる。
【0198】
別の実施形態によると、電子移動解離のための使用に適すると上記に開示されるのと実質的に同じ試薬イオンを追加または代替としてプロトン移動反応のために使用して、分析種イオンの電荷状態を低減し得る。そこで、例えば、一実施形態によると、ポリ芳香族炭化水素または置換ポリ芳香族炭化水素由来の試薬アニオンまたは負電荷のイオンを使用して、プロトン移動反応を開始し得る。プロトン移動反応において使用するための試薬アニオンまたは負電荷のイオンは、(i)アントラセン、(ii)9,10ジフェニル−アントラセン、(iii)ナフタレン、(iv)フッ素、(v)フェナントレン、(vi)ピレン、(vii)フルオランテン、(viii)クリセン、(ix)トリフェニレン、(x)ペリレン、(xi)アクリジン、(xii)2,2’ジピリジル、(xiii)2,2'ビキノリン、(xiv)9−アントラセンカルボニトリル、(xv)ジベンゾチオフェン、(xvi)1,10’−フェナントロリン、(xvii)9’アントラセンカルボニトリル、および(xviii)アントラキノンからなる群から選択される物質から得られ得る。また、アゾベンゼンアニオン、アゾベンゼンラジカルアニオンまたは他のラジカルアニオンを含む試薬のイオンまたは負電荷のイオンを使用してプロトン移動反応を行い得る。
【0199】
一実施形態によると、中性ヘリウムガスが0.01〜0.1mbar、好ましさがやや低いが0.001〜1mbar、の範囲の圧力でETD反応デバイスまたはPTR反応デバイス内に提供され得る。ヘリウムガスは、反応デバイスにおける電子移動解離および/またはプロトン移動反応を支援する際に特に有用であることがわかってきた。窒素ガスおよびアルゴンガスは、好ましさがやや低いが、電子移動解離ではなく衝突誘起解離によって少なくともいくつかのイオンをフラグメンテーションさせ得る。
【0200】
また、デュアルモードイオン源がモード間で切り換えられ得るか、または2つのイオン源が対称または非対称なやり方でON/OFFを切り換えられ得る実施形態が考えられる。例えば、一実施形態によると、分析種イオンを生成するイオン源は、デューティサイクルの約90%の間、ONのままにされ得る。デューティサイクルの残りの10%の間、分析種イオンを生成するイオン源は、OFFに切り換えられ得、そして試薬イオンは、上記好適な反応デバイス内の試薬イオンを補給するために生成され得る。分析種イオンを生成するイオン源がONに切り換えられる(または、分析種イオンが質量分析計中へ移送される)期間の試薬イオンを生成するイオン源がONに切り換えられる(または、試薬イオンが質量分析計中へ移送されるか、または質量分析計内に生成される)期間に対する比が、<1、1〜2、2〜3、3〜4、4〜5、5〜6、6〜7、7〜8、8〜9、9〜10、10〜15〜15〜20、20〜25、25〜30、30〜35、35〜40、40〜45、45〜50または>50の範囲に入り得る他の実施形態が考えられる。
【0201】
本発明の一好適な実施形態を図10に示す。この実施形態は、第1の衝突セルまたはイオン−イオン反応セル25、および第1の衝突セルまたはイオン−イオン反応セル25の下流に配置されたイオン移動度デバイスまたはイオン移動度分光計もしくはイオン移動度セパレータ26を含む。第2の衝突セル27が、好ましくは、イオン移動度デバイスまたはイオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26の下流に配置される。
【0202】
第1の衝突セルまたはイオン−イオン反応セル25は、好ましくは、電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイス25を含む。試薬アニオンおよび分析種カチオンは、好ましくは、電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイス25内で反応するように構成される。質量、電荷状態およびイオン移動度の異なる複数のプロダクトイオンが、好ましくは、電子移動解離および/またはプロトン移動反応プロセスの結果生成され、そしてこれらのイオンは、好ましくは、第1の衝突セル25から出現する。
【0203】
次いで、第1の衝突セル25から現れたすべてのイオンは、好ましくは、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26を通される。動作モードにおいて、第1の衝突セル25から出現したイオンは、好ましくは、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26において、それらイオン移動度に応じて時間的に分離される。別の動作モードにおいて、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26は、有効にOFFに切り換えられ、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26がイオンガイドとして動作するようにし得る。ここで、イオンは、フラグメンテーションされることなく、かつ実質的にイオン移動度に応じて時間的に分離されることなく、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26を通って移送される。
【0204】
次いで、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26から出現するイオンは、好ましくは第2の衝突セル27中へ渡される。動作モードにおいて、第2の衝突セル27は、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26の出口と第2の衝突セル27の入口との間の電位差を比較的高く維持することによって、衝突誘起解離(「CID」)フラグメンテーションセルとして動作され得る。これにより、イオンは、第2の衝突セル27中へ勢いよく加速され、そしてCIDによってフラグメンテーションされる。電子移動解離またはプロトン移動反応から得られるプロダクトイオンまたはフラグメントイオンは、非共有結合を形成して、2つ以上のプロダクトイオンまたはフラグメントイオンが一緒にクラスタを形成し得ることが公知である。動作モードにおいて、第2の衝突セル27を使用して、第1の衝突セル25内に形成されたプロダクトイオンまたはフラグメントイオンをCIDフラグメンテーションして、プロダクトイオンまたはフラグメントイオン間の任意の非共有結合を破壊し得る。このプロセスは、c−タイプおよびz−タイプのETDフラグメントイオンを生成するためのCIDによる一形態の二次的活性化として考えられ得る。
【0205】
飛行時間質量分析部28は、好ましくは第2の衝突セル27の下流に配置され、かつ第2の衝突セル27から出現するイオンを質量解析するように構成される。
【0206】
上記のような飛行時間質量分析部を使用して、電荷が減少した前駆体イオンの比を監視することによって、ETおよびETDのための最適な反応状態が設定され得る。すべてのプロダクトイオンは、好ましくはイオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26において時間的に分離され、そして好ましくは第2の衝突セル27中に溶出する。イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26は、好ましくは、プロダクトイオンの形状および電荷についての価値のある情報を提供し、かつ好ましくは、また、飛行時間質量分析部28によって測定されたデータのスペクトルの複雑性を低減する。
【0207】
カチオンのコンフォーメーションに依存して電子がカチオンへ電子移動した後、カチオンが非供給結合によりそのままの状態を維持し得ることが観測されてきた。第2の衝突セル27は、好ましくは、電荷が減少した前駆体イオンをCIDにより緩やかにフラグメンテーションするように設けられ、かつ好ましくは前駆体イオンが構成要素のETDタイプイオン(すなわち、c−およびz−タイプのフラグメントイオン)に完全に解離することを可能にする。
【0208】
電子移動および/またはプロトン移動が衝突セル25、27の両方(および/またはイオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26)において行われ得るさらなる実施形態が考えられる。あるいは、CIDが第1の衝突セル25において行われた後、第2の衝突セル27においてETDまたはPTRが行われ得る。これらの変形例は、CIDによるフラグメンテーションの前の任意のコンフォーメーション変化の研究に有用であり得る。
【0209】
ここで、図11A〜11Cを参照して本発明の一好適な実施形態のさらなる局面を説明する。P物質(質量電荷比が449.9)の3価分析種カチオンを実質的に図10に示すように構成したウォーターズ社のQTOF−Premier(登録商標)質量分析計の進行波衝突セル25においてアゾベンゼン(質量電荷比が182)の1価試薬アニオンと反応させる実験を行った。3価分析種カチオンと試薬アニオンとの間の反応の結果、電荷移動が発生した。生成したプロダクトイオンは、衝突セル25から出現し、そして飛行時間質量分析部28によって質量解析された。プロダクトイオンスペクトルの解析により、所定の条件下で、対応する質量電荷比が674および1348である2価および1価の電荷が減少した分析種イオンに対して比較的強いピ−クが示された。
【0210】
衝突セル25の長さに沿って並進される進行波の速さまたは速度は、イオンの過渡時間およびしたがって分析種カチオンと試薬アニオンとのイオン−イオン反応時間が制御または変更されるようにプログラムまたは制御した。分析種カチオンと試薬アニオンとの反応時間が制限される場合、3価前駆体分析種カチオンは、実質的にそのままであり、かつ対応する質量スペクトルにおいて電荷低減および/またはフラグメンテーションが起きている形跡はほとんどない。
【0211】
図11Aは、進行波の過渡時間を1.2ミリ秒に設定した場合に得られた質量スペクトルを示す。図11Aから明らかなように、3価前駆体イオン29は、大部分がフラグメンテーションされないままであり、かつ電荷が減少しなかった。3価前駆体イオン29のうちのいくつかは、フラグメンテーションされることなく電荷が減少して2価イオン30(質量電荷比が674)となった。電荷が減少して質量電荷比が1348の1価イオン31となった3価前駆体イオン29は非常に少なかった。
【0212】
イオン−イオン反応が実質的により長い期間進行することが可能な場合、2価(すなわち、電荷が減少した)分析種イオンの親または前駆体の3価分析種イオンに対する比は、増大する。また、デ−タ中のETDフラグメントイオンが増大するのが観測される。これは、進行波過渡時間が37ミリ秒である場合に得られる質量スペクトルを示す図11Bから明らかである。図11Bに示される質量スペクトルにおいて、2価(電荷が減少した)分析種イオンの強度は、3価の親イオンまたは前駆体イオンの強度を超える。また、2価(電荷が減少した)分析種イオンの強度は、1価(電荷が減少した)分析種イオンの強度とおよそ同じである。また、比較的大きな数のETDフラグメントイオンまたはETDプロダクトイオン32、33が観測される。3価の親イオンまたは前駆体イオンおよび2価および1価(電荷が減少した)分析種イオンの比較強度とともに比較的大きな数のETDフラグメントイオンが存在することは、ETDプロセスおよびPTRプロセスが実質的に最適化されると考えられ得ることを示す。
【0213】
イオン−イオン反応が極端に長い間進行することが可能な場合、電荷減少の度合いが過度になり、そして次いで任意の1価プロダクトイオン自体が実質的に中性化され得る。これにより、すべてのプロダクトイオンの存在度が低減し、そしてやがて本質的に空白の質量スペクトルが生じる。これは、進行波過渡時間が305ミリ秒である場合に得られる質量スペクトルを示し、かつほんのわずかな1価分析種イオンがETDイオンガイドから出現することを示す図11Cから明らかである。ETD中に存在するイオンの大多数は、電荷が減少され、そして次いで中性化された。
【0214】
一実施形態によると、電荷が減少したイオンの電荷の減少がない前駆体イオンに対する最適な存在度比(Ropt)に対応する最適な反応時間(または、進行波速)が設定され得る。図12は、本発明の一実施形態に係るETDデバイスもしくはPTRデバイスまたはイオンガイドにおいてETDを最適化する方法を示すフローチャートである。上記好適な実施形態によると、1つ以上の電荷が減少したカチオンの強度の親カチオンの強度に対する比Rは、好ましくは所定の比に維持されることが望ましい。機器パラメータは、好ましくは、フィードバックループの一部として実行中に自動的にプログラムまたは変更され、次回の飛行時間スペクトルに対する所望の比を得る。最適な比は、好ましくは時間が経過しても実質的に一定であるように維持される。しかし、最適なまたは所望の比は、直線的、段階的、曲線的、非直線的または他のやり方で時間とともに変化し得る、好ましさがやや低い実施形態が考えられる。例えば、ETDデバイスまたはPTRデバイスが、ETDが最適化または最大化される第1のモードとETDが最小化される第2のモードとの間で一度または繰り返し切り換えられることが望まれ得る実施形態が考えられる。
【0215】
図12に示すように、上記プロセスの開始35において、質量スペクトル36が、好ましくは、本発明の一好適な実施形態に係る電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスから出現するイオンについて得られる。電荷が減少した分析種イオンのすべて(または、いくつか)の電荷の減少のない前駆体分析種イオンに対する強度の比Rが好ましくは決定される(37)。次いで、後のステップ38において、測定された比Rが所望の(最適な)比Roptを超えるかどうかが決定される。一実施形態によると、比Roptは、約3:1に設定され得る。
【0216】
前駆体分析種イオンが2+の電荷状態を有し得、かつ1+の電荷状態を有する電荷が減少した前駆体イオンの強度が決定される実施形態が考えられる。前駆体分析種イオンが3+の電荷状態を有し得、かつ2+および/または1+の電荷状態を有する電荷が減少した前駆体イオンの強度が決定される他の実施形態が考えられる。別の実施形態によると、前駆体分析種イオンが4+の電荷状態を有し得、かつ3+および/または2+および/または1+の電荷状態を有する電荷が減少した前駆体イオンの強度が決定される。別の実施形態によると、前駆体分析種イオンが5+の電荷状態を有し得、かつ4+および/または3+および/または2+および/または1+の電荷状態を有する電荷が減少した前駆体イオンの強度が決定される。
【0217】
電荷が減少した前駆体イオンの強度または存在度を測定するステップの代替として、またはそれに加えて、1つ以上のフラグメントイオンの強度または存在度が決定され得る。1つ以上のフラグメントイオンの強度の電荷減少のない前駆体イオンおよび/または電荷減少した前駆体イオンの強度に対する比が好ましくは決定され得、そして制御システムは、この比を最適化、最大化または最小化するように構成され得る。
【0218】
好適なフィードバック制御メカニズムによると、R<Roptの場合、ETDの対象となる前駆体イオンの数は十分でないと考えられ得る。これを補正するために、DC進行波の速さおよび/またはDC進行波の振幅は、好ましくはステップ40において低減して、イオン−イオン反応時間を増大し、およびしたがってETDの対象となる前駆体イオンの数を増大する。
【0219】
反対に、R>Roptの場合、ETDプロセスが極端に優勢であるので、この場合、DC進行波の速さおよび/またはDC進行波の振幅は、好ましくはステップ39において増大されて、イオン−イオン反応時間を低減し、およびしたがって、ETDの効果を低減すると考えられうる。
【0220】
所望の比を達成するために、進行DC電圧波の振幅;ETDデバイスまたはPTRデバイスにおいてイオンを半径方向に閉じ込めるために衝突セルに印加されるAC電圧またはRF電圧の振幅および周波数(および低質量カットオフ);アニオンまたはカチオン源状態;およびETDイオンガイド電圧またはPTRイオンガイド電圧;などのイオン−イオン反応速度に影響のある他のパラメータがまた本発明の一実施形態に係るDDA方法の一部としてプログラムされ得る。
【0221】
電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスに印加される進行波DC電圧の振幅を変更することの、アゾベンゼン試薬イオンとの反応による質量電荷比が449.9の3価P物質のETDフラグメンテーションに対する効果を図13A〜13Eに示す。
【0222】
図13Aは、振幅が1.4Vの進行波DC電圧を電子移動解離デバイスまたはイオンガイドの電極に印加した場合に得られた質量スペクトルを示す。図13Bは、振幅が1.0Vの進行波DC電圧を電子移動解離デバイスまたはイオンガイドの電極に印加した場合に得られた質量スペクトルを示す。図13Cは、振幅が0.8Vの進行波DC電圧を電子移動解離デバイスまたはイオンガイドの電極に印加した場合に得られた質量スペクトルを示す。図13Dは、振幅が0.4Vの進行波DC電圧を電子移動解離デバイスまたはイオンガイドの電極に印加した場合に得られた質量スペクトルを示す。図13Eは、振幅が0.1Vの進行波DC電圧を電子移動解離デバイスまたはイオンガイドの電極に印加した場合に得られた質量スペクトルを示す。
【0223】
図13A〜13Eに示す異なる質量スペクトルを考慮すると、図13Cに示すように進行波DC電圧の振幅を0.8Vに設定した場合に最適なETD状態が観測される。これは、質量電荷比が450の3価前駆体イオンの強度と質量電荷比が675の2価(すなわち、電荷が減少した)分析種イオンおよび質量電荷比が1349の1価(すなわち、電荷が減少した)分析種イオンの強度との比較から明らかである。図13Aから明らかなように、進行波DC電圧が極端に高い場合、前駆体イオンは、DC進行波がETDデバイスまたはイオンガイドの長さに沿って並進される際に進行波DC電圧のDC電位井戸に閉じ込められる。これにより、3価前駆体イオンは、実質的にフラグメンテーションされないままであり、かつその前駆体イオンのほんの小さな割合だけが電荷を低減されて2価イオンになる。反対に、図13Eに示すように、進行波DC電圧が極端に低く設定される場合、イオンをETDデバイスまたはイオンガイドを通っておよび沿って駆動するという点でのDC進行波の効果は、著しく低減される。これにより、イオン−イオン反応時間が著しく増大されるので、著しい電荷減少およびETDフラグメンテーション効果が観測されるようになる。
【0224】
上記好適な実施形態は、イオンが移送される開口を有する複数の電極を含むイオンガイドまたはデバイスにおいてETDおよび/またはPTRを行うことに関するが、ETDデバイスまたはPTRデバイスが複数のロッド電極を含む他の実施形態が考えられる。DC電圧の勾配は、好ましくは、ロッドセットの軸方向長さの少なくとも一部に沿って印加される。制御システムがETDフラグメンテーションおよび/またはPTR電荷減少の度合いが極端に高いと判定した場合、DC電圧勾配は、好ましくは分析種イオンと試薬イオンとのイオン−イオン反応時間が低減されるように増大される。同様に、制御システムがETDフラグメンテーションおよび/またはPTR電荷減少の度合いが極端に低いと判定した場合、DC電圧勾配は、好ましくは分析種イオンと試薬イオンとのイオン−イオン反応時間が増大されるように低減される。試薬イオンの代わりに中性試薬ガスが使用され得る他の実施形態が考えられる。
【0225】
別の実施形態によると、制御システムは、半径方向の擬電位井戸内の半径方向のRF閉じ込めの度合いを変更するように構成および適合され得る。ETDデバイスもしくはPTRデバイスまたはイオンガイドの電極に印加されるRF電圧が増大すると、擬電位井戸のプロフィールは、より狭くなり、イオン−イオン反応体積が低減する。これにより、分析種イオンと試薬イオンとの相互作用はより大きくなり、ETDおよび/またはPTR効果が増大する。制御システムがETDフラグメンテーションおよび/またはPTR電荷減少の度合いが極端に高いと判定した場合、RF電圧は、分析種イオンと試薬イオンとの混合が低減するように低減され得る。同様に、制御システムがETDフラグメンテーションおよび/またはPTR電荷減少の度合いが極端に低いと判定した場合、RF電圧は、分析種イオンと試薬イオンとの混合が増大するように増大され得る。
【0226】
別の実施形態によると、負の試薬イオンは、負電位をETDデバイスもしくはPTRデバイスまたはイオンガイドの一端または両端に印加することによって、ETDデバイスもしくはPTRデバイスまたはイオンガイド内にトラップされ得る。電位障壁が極端に低い場合、ETDデバイスもしくはPTRデバイスまたはイオンガイドは、試薬イオンが比較的漏洩しやすいと考えられ得る。しかし、また、負電位障壁は、ETDデバイスもしくはPTRデバイスまたはイオンガイドに沿っておよび通って正の分析種イオンを加速する効果を有する。したがって、全体としては、負電位障壁が比較的低く設定された場合、イオン−イオン反応時間が好ましくは増大され、かつ反応断面が増大されるので、ETDフラグメンテーションが増大される。制御システムがETDフラグメンテーションおよび/またはPTR電荷減少の度合いが極端に高いと判定した場合、電位障壁は、好ましくは分析種イオンと試薬イオンとの混合が低減するように増大される。同様に、制御システムがETDフラグメンテーションおよび/またはPTR電荷減少の度合いが極端に低いと判定した場合、電位障壁は、好ましくは分析種イオンと試薬イオンとの混合が増大するように低減される。
【0227】
上記好適な実施形態の重点は、質量分析部によって生成された質量スペクトルをリアルタイムに調査および解析する上記好適な実施形態に係る制御システムに置いたが、追加または代替として、制御システムが好適なETDおよび/またはPTR反応デバイスから出現したイオンを時間的に分離し、そして次いでイオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータへ移送することによって得られるイオン移動度スペクトルを調査および解析する、好ましさがやや低い実施形態が考えられる。
【0228】
質量分析計が、例えば、液体クロマトグラフィカラムから溶出しているイオンに対して複数の異なる解析を行い得る本発明の実施形態が考えられる。一実施形態によると、LC溶出ピークの時間尺度内に、分析種イオンは、例えば、親イオンスキャンされ、親イオンまたは前駆体イオンの質量電荷比が決定され得る。次いで、親イオンまたは前駆体イオンは、四重極または他の質量フィルタによって質量選択され、そしてCIDフラグメンテーションされて、b−タイプおよびy−タイプのフラグメントイオンを生成、そして次いで質量解析し得る。次いで、親イオンまたは前駆体イオンは、四重極または他の質量フィルタによって質量選択され、そして次いでETDフラグメンテーションされて、c−タイプおよびz−タイプのフラグメントイオンを生成、そして次いで質量解析し得る。さらなる動作モードにおいて、親イオンまたは前駆体イオンに対して衝突セルの高/低切り換えが行われ得る。この実施形態によると、親イオンまたは前駆体イオンは、2つの異なる動作モードの間で繰り返し切り換えられる。第1の動作モードにおいて、親イオンまたは前駆体イオンは、CIDフラグメンテーションまたはETDフラグメンテーションされる。第2の動作モードにおいて、親イオンまたは前駆体イオンは、実質的にCIDフラグメンテーションまたはETDフラグメンテーションされない。
【0229】
他の実施形態が考えられる。この実施形態を図10を参照して説明する。この実施形態によると、第1の衝突セル25に好ましくはヘリウム衝突ガスが与えられ、かつ第1の衝突セル25が好ましくはETD衝突セルとして動作するデュアル−モードETD/CID質量分析計が提供され得る。イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26が、好ましくは、第1の衝突セル25の下流に設けられ、かつ好ましくはイオンをそのイオン移動度に応じて時間的に分離するように構成される。第2の衝突27が、好ましくは、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26の下流に配置され、かつ第2の衝突27には、好ましくは、アルゴン衝突ガスが与えられる。
【0230】
動作モードにおいて、ETD衝突セル25は、有効にOFFに切り換えられ得る。これは、前駆体イオンが非常に急速にETD衝突セル25を通って移送され、試薬イオンを用いたETDによってフラグメンテーションするための十分な時間がないように構成することによって達成され得る。次いで、前駆体イオンは、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26を通る際に時間的に分離される。イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26の出口領域と第2の衝突セル27の入口領域との間の電位差は、好ましくはイオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26から出現した前駆体イオンが第2の衝突27に入射またはその中へ加速される際にCIDによってフラグメンテーションされるようなレベルに増大される。
【0231】
別の動作モードにおいて、ETD衝突セル25は、有効にONに切り換えられ、そして前駆体イオンは、ETD衝突セル25内で最適なやり方でETDによってフラグメンテーションされるように構成され得る。これは、前駆体イオンがETDフラグメンテーションプロセスを最適化する速度でETD衝突セル25を通って移送されるように構成することによって達成され得る。ETDフラグメンテーションの度合いに影響する速度または他のパラメータは、好ましくは、上記好適な実施形態に係る制御システムによって最適化される。次いで、得られたフラグメントイオンまたはプロダクトイオンは、好ましくは、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26を通る際に時間的に分離される。イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26の出口領域と第2の衝突セル27の入口領域との電位差は、好ましくは、イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ26から出現したフラグメントイオンまたは前駆体イオンが第2の衝突27に入射して、そしてそこを通過する際にCIDによってフラグメンテーションされないようなレベルに低減される。
【0232】
追加にまたは代替として、ETDによる前駆体イオンのフラグメンテーションの度合いを最適化するために異なるパラメータが変更される、他の好ましさがやや低い実施形態が考えられる。例えば、ETD反応セルの圧力を変更して、ETDによるイオンのフラグメンテーションを制御および/または最適化し得ることが考えられる。また、ETD反応セル内に存在するように構成された試薬イオンの数をリアルタイムに変更して、ETDによるイオンのフラグメンテーションを制御および/または最適化し得ることが考えられる。また、ETD反応セルに入射する分析種イオンの運動エネルギーを変更して、ETDによるイオンのフラグメンテーションを制御および/または最適化し得ることが考えられる。また、さらなる試薬イオンをETD反応セル中にリアルタイムで制御可能に導入して、ETDによるイオンのフラグメンテーションを制御および/または最適化し得ることが考えられる。
【0233】
最後に、一実施形態によると、フラグメンテーションおよび/または電荷減少されたイオンは、水素−重水素(「H−D」)交換を行ったペプチド由来のペプチドイオンを含み得る。水素−重水素交換は、共有結合した水素原子が重水素原子に置換される化学反応である。重水素核は、中性子が1つ余分に付加されているので水素よりも重いという事実を考慮すると、いくつかの重水素を含むタンパク質またはペプチドは、すべてが水素のタンパク質またはペプチドよりも重い。これにより、タンパク質またはペプチドの重水素化を進めると、その分子質量は、着実に増大し、かつこの分子質量の増大は、質量分析によって検出され得る。したがって、上記好適な方法が重水素を含むタンパク質またはペプチドの分析に使用され得ることが考えられる。重水素を含むことを利用して、溶液中のタンパク質の構造力学(例えば、水素−交換質量分析によって)ならびにポリペプチドイオンのガス位相構造およびフラグメンテーションメカニズムの両方を研究し得る。ペプチドの電子移動解離の特に有利な効果は、ETDフラグメンテーション(CIDフラグメンテーションと異なる)には、偶数電子前駆体イオンを振動によって励起させる際の水素の分子内移動である水素スクランブルという問題が起きないことである。本発明の一実施形態によると、上記好適なデバイスおよび方法を使用して、重水素を含むペプチドイオンのETDフラグメンテーションおよび/またはPTR電荷減少を実施し得る。一実施形態によると、重水素を含むペプチドイオンのETDフラグメンテーションおよび/またはPTR電荷減少の度合いが制御、最適化、最大化または最小化され得る。同様に、本発明の一実施形態によると、ETDによるイオンのフラグメンテーションおよび/またはPTRによる電荷減少の前に重水素を含むペプチドイオンにおける水素スクランブルの度合いは、イオンのイオンガイドを通る移送に影響のある1つ以上のパラメータ(例えば、進行波速度および/または振幅)を変更、交換、増加または減少することによって、制御、最適化、最大化または最小化され得る。
【0234】
好適な実施形態を参照して本発明を説明してきたが、特許請求の範囲に記載の発明の範囲を逸脱せずにその形態および詳細が種々に変更され得ることが当業者によって理解される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスと、
少なくともいくつかの第1のイオンが前記イオンガイドを通って移送される際に前記第1のイオンが電子移動解離および/またはプロトン移動反応によってフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを推定、決定または測定し、そしてそれに応答して、前記第1のイオンが前記イオンガイドを通過する際の前記第1のイオンの移送および/またはフラグメンテーションの度合いおよび/または電荷減少の度合いに影響する1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減するように構成および適合される制御システムと
を含む質量分析計。
【請求項2】
前記第1のイオンは、
(i)アニオンもしくは負電荷のイオン、
(ii)カチオンもしくは正電荷のイオン、または
(iii)アニオンおよびカチオンの組み合わせもしくは混合物
のいずれかを含む、請求項1に記載の質量分析計。
【請求項3】
動作モードにおいて、前記制御システムは、前記1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減して、前記第1のイオンが前記イオンガイドを通過する際の前記第1のイオンのフラグメンテーションおよび/または電荷減少を最適化および/または最大化するように構成および適合される、請求項1または2に記載の質量分析計。
【請求項4】
動作モードにおいて、前記制御システムは、前記1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減して、前記第1のイオンのフラグメンテーションおよび/または電荷減少を最小化および/または低減し、前記イオンガイドがイオンガイドモードにて動作するように構成および適合され、前記イオンガイドモードにおいては、前記イオンガイドへの入力において受け取られるイオンが、実質的にフラグメンテーションおよび/または電荷減少されることなく、前記イオンガイドの出力へ実質的に前方移送される、請求項1、2または3に記載の質量分析計。
【請求項5】
前記制御システムは、前記1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減して、前記第1のイオンが使用時に前記イオンガイドを通って移送される速さまたは速度を変更、変化、増大または低減するように構成および適合される、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項6】
前記第1のイオンのうちの少なくともいくつかを使用時に駆動または推進して、前記イオンガイドを通っておよび/または沿って移動させる第1のデバイスをさらに含む、請求項5に記載の質量分析計。
【請求項7】
前記第1のデバイスは、
(i)前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部もしくはその少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%に沿って直線状軸方向DC電場を生成するか、または
(ii)前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部もしくはその少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%に沿って非直線状もしくは階段状の軸方向DC電場を生成する
のいずれかに構成および適合される、請求項6に記載の質量分析計。
【請求項8】
前記制御システムは、前記軸方向DC電場または前記軸方向DC電場の勾配を変更、変化、増大または低減するように構成および適合される、請求項7に記載の質量分析計。
【請求項9】
前記第1のデバイスは、1つ以上の第1の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の第1の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加して、少なくともいくつかの第1のイオンを第1の方向の前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿っておよび/または通って駆動または推進するように構成および適合される、請求項6、7または8に記載の質量分析計。
【請求項10】
前記制御システムは、前記1つ以上の第1の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または前記1つ以上の第1の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形が前記複数の電極の少なくともいくつかに印加され、および/または前記イオンガイドの長さに沿って並進される速さまたは速度を変更、変化、増大または低減するように構成および適合される、請求項9に記載の質量分析計。
【請求項11】
前記制御システムは、前記1つ以上の第1の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または前記1つ以上の第1の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形の振幅、高さまたは深さを変更、変化、増大または低減するように構成および適合される、請求項9または10に記載の質量分析計。
【請求項12】
前記制御システムは、前記1つ以上の第1の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または前記1つ以上の第1の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形の周期性および/または形状および/または波形および/またはパターンおよび/またはプロフィールおよび/またはマークスペース比を変更、変化、増大または低減するように構成および適合される、請求項9、10または11に記載の質量分析計。
【請求項13】
前記第1のデバイスは、前記1つ以上の第1の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または前記1つ以上の第1の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を前記複数の電極の少なくともいくつかまたは0〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%もしくは95〜100%に印加して、少なくともいくつかの前記第1のイオンを第1の方向の前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部または0〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%もしくは95〜100%に沿っておよび/または通って駆動または推進するように構成および適合される、請求項9〜12のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項14】
1つ以上の第2の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の第2の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加して、少なくともいくつかの第2のイオンを第2の異なる方向の前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿っておよび/または通って駆動または推進するように構成および適合される第2のデバイスをさらに含む、請求項9〜13のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項15】
前記制御システムは、前記1つ以上の第2の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または前記1つ以上の第2の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形が前記複数の電極の少なくともいくつかに印加され、および/または前記イオンガイドの長さに沿って並進される速さまたは速度を変更、変化、増大または低減するように構成および適合される、請求項14に記載の質量分析計。
【請求項16】
前記制御システムは、前記1つ以上の第2の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または前記1つ以上の第2の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形の振幅、高さまたは深さを変更、変化、増大または低減するように構成および適合される、請求項14または15に記載の質量分析計。
【請求項17】
前記制御システムは、前記1つ以上の第2の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または前記1つ以上の第2の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形の周期性および/または形状および/または波形および/またはパターンおよび/またはプロフィールおよび/またはマークスペース比を変更、変化、増大または低減するように構成および適合される、請求項14、15または16に記載の質量分析計。
【請求項18】
前記第2のデバイスは、前記1つ以上の第2の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または前記1つ以上の第2の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を前記複数の電極の少なくともいくつかまたは0〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%もしくは95〜100%に印加して、少なくともいくつかの前記第2のイオンを前記第2の方向の前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部または0〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%もしくは95〜100%に沿っておよび/または通って駆動または推進するように構成および適合される、請求項14〜17のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項19】
(a)前記第2の方向は、前記第1の方向に実質的に反対であるか、もしくは対向する、または
(b)前記第1の方向と前記第2の方向との角度は、(i)<30°、(ii)30〜60°、(iii)60〜90°、(iv)90〜120°、(v)120〜150°、(vi)150〜180°、および(vii)180°からなる群から選択される
のいずれかである、請求項14〜18のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項20】
前記第2のイオンは、
(i)アニオンもしくは負電荷のイオン、
(ii)カチオンもしくは正電荷のイオン、または
(iii)アニオンおよびカチオンの組み合わせもしくは混合物
のいずかを含む、請求項14〜19のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項21】
前記第1のイオンは、第1の極性を有し、かつ前記第2のイオンは、前記第1の極性とは反対の第2の極性を有する、請求項14〜20のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項22】
第1の正または負の電位または電位差を前記イオンガイドの第1端または上流端に印加または維持するデバイスであって、前記第1の正または負の電位または電位差は、使用時に、前記第1のイオンの少なくともいくつかおよび/または前記第2のイオンの少なくともいくつかを前記イオンガイド内に閉じ込めるように働く、デバイスをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項23】
前記第1の正または負の電位または電位差によって、前記第1のイオンの少なくともいくつかおよび/または前記第2のイオンの少なくともいくつかが前記第1端または上流端を介して前記イオンガイドを出射することが可能となる、請求項22に記載の質量分析計。
【請求項24】
前記制御システムは、前記第1の正または負の電位または電位差を変更、変化、増大または低減して、前記イオンガイド内のイオン閉じ込めの度合いまたは量を変更、変化、増大または低減するように構成および適合される、請求項22または23に記載の質量分析計。
【請求項25】
第2の正または負の電位または電位差を前記イオンガイドの第2端または上流端において印加するためのデバイスであって、前記第2の正または負の電位または電位差は、使用時に、前記第1のイオンの少なくともいくつかおよび/または前記第2のイオンの少なくともいくつかを前記イオンガイド内に閉じ込めるように働く、デバイスをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項26】
前記第2の正または負の電位または電位差によって、前記第1のイオンの少なくともいくつかおよび/または前記第2のイオンの少なくともいくつかが前記第2端または上流端を介して前記イオンガイドを出射することが可能となる、請求項25に記載の質量分析計。
【請求項27】
前記制御システムは、前記第2の正または負の電位または電位差を変更、変化、増大または低減して、前記イオンガイド内のイオン閉じ込めの度合いまたは量を変更、変化、増大または低減するように構成および適合される、請求項25または26に記載の質量分析計。
【請求項28】
第1の周波数および第1の振幅を有する第1のAC電圧またはRF電圧を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加して、使用時にイオンが前記イオンガイド内に半径方向に閉じ込められるように構成および適合される第1のRFデバイスをさらに含み、ここで、
(a)前記第1の周波数は、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、および(xxv)>10.0MHzからなる群から選択される、および/または
(b)前記第1の振幅は、(i)<50Vピーク・トゥ・ピーク、(ii)50〜100Vピーク・トゥ・ピーク、(iii)100〜150Vピーク・トゥ・ピーク、(iv)150〜200Vピーク・トゥ・ピーク、(v)200〜250Vピーク・トゥ・ピーク、(vi)250〜300Vピーク・トゥ・ピーク、(vii)300〜350Vピーク・トゥ・ピーク、(viii)350〜400Vピーク・トゥ・ピーク、(ix)400〜450Vピーク・トゥ・ピーク、(x)450〜500Vピーク・トゥ・ピーク、および(xi)>500Vピーク・トゥ・ピークからなる群から選択される、および/または
(c)動作モードにおいて、隣接または近接する電極には、前記第1のAC電圧またはRF電圧の互いに反対の位相が供給される、および/または
(d)前記イオンガイドは、1〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、90〜100または>100グループの電極を含み、ここで、各グループの電極は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の電極を含み、かつ各グループにおける少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の電極には、前記第1のAC電圧またはRF電圧の同じ位相が供給される
のいずれかである、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項29】
前記制御システムは、前記第1の周波数および/または前記第1の振幅を変更、変化、増大または低減して、前記イオンガイド内のイオン閉じ込めおよび/またはイオン−イオン相互作用の度合いまたは量を変更、変化、増大または低減するように構成および適合される、請求項28に記載の質量分析計。
【請求項30】
前記制御システムは、
(i)質量スペクトル、イオン移動度スペクトルまたは他のスペクトル内に観測される1つ以上の第1の親、前駆体、娘、フラグメント、電荷が減少した、または他のイオンの強度または存在度、または
(ii)質量スペクトル、イオン移動度スペクトルまたは他のスペクトルの第1の質量範囲または第1の質量電荷比範囲内に観察される1つ以上の第1の親、前駆体、娘、フラグメント、電荷が減少した、または他のイオンの強度または存在度
のいずれかを推定、決定または測定することによって、前記第1のイオンの少なくともいくつかがフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを推定、決定または測定するように構成および適合される、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項31】
前記制御システムは、1つ以上の第2の親、前駆体、娘、フラグメント、電荷が減少した、または他のイオンの強度または存在度に対する、質量スペクトルまたはイオン移動度スペクトルの第1の質量範囲または第1の質量電荷比範囲内の1つ以上の第1の親、前駆体、娘、フラグメント、電荷が減少した、または他のイオンの強度または存在度を推定、決定または測定することによって、前記第1のイオンの少なくともいくつかがフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを推定、決定または測定するように構成および適合される、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項32】
前記第1の質量範囲または第1の質量電荷比範囲は、(i)<10、(ii)10〜50、(iii)50〜100、(iv)100〜200、(v)200〜300、(vi)300〜400、(vii)400〜500、(viii)500〜600、(ix)600〜700、(x)700〜800、(xi)800〜900、(xii)900〜1000、(xiii)1000〜1100、(xiv)1100〜1200、(xv)1200〜1300、(xvi)1300〜1400、(xvii)1400〜1500、(xviii)1500〜1600、(xix)1600〜1700、(xx)1700〜1800、(xxi)1800〜1900、(xxii)1900〜2000、および(xxiii)>2000からなる群から選択される質量単位または質量電荷比単位の幅を有する、請求項30または31に記載の質量分析計。
【請求項33】
前記制御システムは、前記第1のイオンの少なくともいくつかがフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを変更、変化、増大または低減して、イオン存在度測定値、イオン強度測定値またはイオン比を所望の値および/または所望の範囲内に維持するように構成および適合される、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項34】
前記所望の値および/または所望の範囲は、(i)<0.1、(ii)0.1〜0.2、(iii)0.2〜0.3、(iv)0.3〜0.4、(v)0.4〜0.5、(vi)0.5〜0.6、(vii)0.6〜0.7、(viii)0.7〜0.8、(ix)0.8〜0.9、(x)0.9〜1.0、(xi)1.0〜1.1、(xii)1.1〜1.2、(xiii)1.2〜1.3、(xiv)1.3〜1.4、(xv)1.4〜1.5、(xvi)1.5〜1.6、(xvii)1.6〜1.7、(xviii)1.7〜1.8、(xix)1.8〜1.9、(xx)1.9〜2.0、(xxi)2.0〜2.1、(xxii)2.1〜2.2、(xxiii)2.2〜2.3、(xxiv)2.3〜2.4、(xxv)2.4〜2.5、(xxvi)2.5〜2.6、(xxvii)2.6〜2.7、(xxviii)2.7〜2.8、(xxix)2.8〜2.9、(xxx)2.9〜3.0、(xxxi)3.0〜3.1、(xxxii)3.1〜3.2、(xxxiii)3.2〜3.3、(xxxiv)3.3〜3.4、(xxxv)3.4〜3.5、(xxxvi)3.5〜3.6、(xxxvii)3.6〜3.7、(xxxviii)3.7〜3.8、(xxxix)3.8〜3.9、(xl)3.9〜4.0、(xli)4.0〜4.1、(xlii)4.1〜4.2、(xliii)4.2〜4.3、(xliv)4.3〜4.4、(xlv)4.4〜4.5、(xlvi)4.5〜4.6、(xlvii)4.6〜4.7、(xlviii)4.7〜4.8、(xlix)4.8〜4.9、(l)4.9〜5.0、および(li)>5.0からなる群から選択される、請求項33に記載の質量分析計。
【請求項35】
前記制御システムは、イオン存在度測定値、イオン強度測定値またはイオン比が比較的高いか、または閾値を超えると判定した場合、前記1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減するように構成および適合される、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項36】
前記制御システムは、イオン存在度測定値、イオン強度測定値またはイオン比が比較的低いか、または閾値を下回る判定した場合、前記1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減するように構成および適合される、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項37】
前記イオンガイドは、使用時にイオンが移送される少なくとも1つの開口を有する複数の電極を含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項38】
(a)前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%は、実質的に円形、矩形、正方形または楕円形の開口を有する、ならびに/または
(b)前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%は、実質的に同じ第1のサイズを有するか、または実質的に同じ第1の面積を有する開口を有し、および/もしくは前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%は、実質的に同じ第2の異なるサイズを有するか、もしくは実質的に同じ第2の異なる面積を有する開口を有する、ならびに/または
(c)前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%は、サイズもしくは面積が前記イオンガイドの軸に沿った方向へいくにつれ順次より大きくおよび/もしくはより小さくなる開口を有する、ならびに/または
(d)前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%は、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、および(xi)>10.0mmからなる群から選択される内径または寸法を有する開口を有する、ならびに/または
(e)前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%は、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、および(xv)0.25mm以下からなる群から選択される軸方向距離だけ互いに間隔を開けられる、ならびに/または
(f)前記複数の電極の少なくともいくつかは、開口を含み、かつ前記開口の内径もしくは寸法の隣接する電極間の中心−中心軸方向間隔に対する比は、(i)<1.0、(ii)1.0〜1.2、(iii)1.2〜1.4、(iv)1.4〜1.6、(v)1.6〜1.8、(vi)1.8〜2.0、(vii)2.0〜2.2、(viii)2.2〜2.4、(ix)2.4〜2.6、(x)2.6〜2.8、(xi)2.8〜3.0、(xii)3.0〜3.2、(xiii)3.2〜3.4、(xiv)3.4〜3.6、(xv)3.6〜3.8、(xvi)3.8〜4.0、(xvii)4.0〜4.2、(xviii)4.2〜4.4、(xix)4.4〜4.6、(xx)4.6〜4.8、(xxi)4.8〜5.0、および(xxii)>5.0からなる群から選択される、ならびに/または
(g)前記複数の電極の開口の内径は、前記イオンガイドの長軸に沿って1回以上順次増大もしくは低減し、そして次いで順次低減もしくは増大する、ならびに/または
(h)前記複数の電極は、幾何体積を規定し、ここで、前記幾何体積は、(i)1つ以上の球、(ii)1つ以上の扁平楕円体、(iii)1つ以上の扁長楕円体、(iv)1つ以上の楕円体、および(v)1つ以上の不等辺楕円体からなる群から選択される、ならびに/または
(i)前記イオンガイドは、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mm、および(xi)>200mmからなる群から選択される長さを有する、ならびに/または
(j)前記イオンガイドは、少なくとも(i)1〜10個の電極、(ii)10〜20個の電極、(iii)20〜30個の電極、(iv)30〜40個の電極、(v)40〜50個の電極、(vi)50〜60個の電極、(vii)60〜70個の電極、(viii)70〜80個の電極、(ix)80〜90個の電極、(x)90〜100個の電極、(xi)100〜110個の電極、(xii)110〜120個の電極、(xiii)120〜130個の電極、(xiv)130〜140個の電極、(xv)140〜150個の電極、(xvi)150〜160個の電極、(xvii)160〜170個の電極、(xviii)170〜180個の電極、(xix)180〜190個の電極、(xx)190〜200個の電極、および(xxi)>200個の電極を含む、ならびに/または
(k)前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%は、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、および(xv)0.25mm以下からなる群から選択される厚さもしくは軸方向長さを有する、ならびに/または
(l)前記複数の電極のピッチ間隔または軸方向間隔は、前記イオンガイドの長軸に沿って1回以上順次低減もしくは増大する
のいずれかである、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項39】
前記イオンガイドは、複数のセグメント化ロッド電極を含む、請求項1〜36のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項40】
前記イオンガイドは、
1つ以上の第1の電極と、
1つ以上の第2の電極と、
使用時にイオンが進行する平面に配置される1つ以上の層の中間電極であって、前記1つ以上の層の中間電極は、前記1つ以上の第1の電極と前記1つ以上の第2の電極との間に配置され、かつ前記1つ以上の層の中間電極は、1つ以上の層の平面電極またはプレート電極を含み、かつ前記1つ以上の第1の電極は、最上部の電極であり、かつ前記1つ以上の第2の電極は、最下部の電極である、1つ以上の層の中間電極と
を含む、請求項1〜36のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項41】
(a)静的イオン−イオン反応領域、イオン−中性ガス反応領域もしくは反応体積が前記イオンガイド中に形成もしくは生成されるか、または
(b)動的イオン−イオン反応領域、イオン−中性ガス反応領域もしくは反応体積が前記イオンガイド中に形成もしくは生成される、
先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項42】
(a)前記イオンガイドを、動作モードにおいて、(i)<100mbar、(ii)<10mbar、(iii)<1mbar、(iv)<0.1mbar、(v)<0.01mbar、(vi)<0.001mbar、(vii)<0.0001mbar、および(viii)<0.00001mbarからなる群から選択される圧力に維持する、ならびに/または
(b)前記イオンガイドを、動作モードにおいて、(i)>100mbar、(ii)>10mbar、(iii)>1mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>0.01mbar、(vi)>0.001mbar、および(vii)>0.0001mbarからなる群から選択される圧力に維持する、ならびに/または
(c)前記イオンガイドを、動作モードにおいて、(i)0.0001〜0.001mbar、(ii)0.001〜0.01mbar、(iii)0.01〜0.1mbar、(iv)0.1〜1mbar、(v)1〜10mbar、(vi)10〜100mbar、および(vii)100〜1000mbarからなる群から選択される圧力に維持する
のいずれかに構成および適合されるデバイスをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項43】
(a)前記イオンガイド内の前記第1のイオンのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%についての滞留、過渡もしくは反応の時間は、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜5ミリ秒、(iii)5〜10ミリ秒、(iv)10〜15ミリ秒、(v)15〜20ミリ秒、(vi)20〜25ミリ秒、(vii)25〜30ミリ秒、(viii)30〜35ミリ秒、(ix)35〜40ミリ秒、(x)40〜45ミリ秒、(xi)45〜50ミリ秒、(xii)50〜55ミリ秒、(xiii)55〜60ミリ秒、(xiv)60〜65ミリ秒、(xv)65〜70ミリ秒、(xvi)70〜75ミリ秒、(xvii)75〜80ミリ秒、(xviii)80〜85ミリ秒、(xix)85〜90ミリ秒、(xx)90〜95ミリ秒、(xxi)95〜100ミリ秒、(xxii)100〜105ミリ秒、(xxiii)105〜110ミリ秒、(xxiv)110〜115ミリ秒、(xxv)115〜120ミリ秒、(xxvi)120〜125ミリ秒、(xxvii)125〜130ミリ秒、(xxviii)130〜135ミリ秒、(xxix)135〜140ミリ秒、(xxx)140〜145ミリ秒、(xxxi)145〜150ミリ秒、(xxxii)150〜155ミリ秒、(xxxiii)155〜160ミリ秒、(xxxiv)160〜165ミリ秒、(xxxv)165〜170ミリ秒、(xxxvi)170〜175ミリ秒、(xxxvii)175〜180ミリ秒、(xxxviii)180〜185ミリ秒、(xxxix)185〜190ミリ秒、(xl)190〜195ミリ秒、(xli)195〜200ミリ秒、および(xlii)>200ミリ秒からなる群から選択され、ならびに/または
(b)前記イオンガイド内の前記第2のイオンのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%についての滞留、過渡もしくは反応の時間は、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜5ミリ秒、(iii)5〜10ミリ秒、(iv)10〜15ミリ秒、(v)15〜20ミリ秒、(vi)20〜25ミリ秒、(vii)25〜30ミリ秒、(viii)30〜35ミリ秒、(ix)35〜40ミリ秒、(x)40〜45ミリ秒、(xi)45〜50ミリ秒、(xii)50〜55ミリ秒、(xiii)55〜60ミリ秒、(xiv)60〜65ミリ秒、(xv)65〜70ミリ秒、(xvi)70〜75ミリ秒、(xvii)75〜80ミリ秒、(xviii)80〜85ミリ秒、(xix)85〜90ミリ秒、(xx)90〜95ミリ秒、(xxi)95〜100ミリ秒、(xxii)100〜105ミリ秒、(xxiii)105〜110ミリ秒、(xxiv)110〜115ミリ秒、(xxv)115〜120ミリ秒、(xxvi)120〜125ミリ秒、(xxvii)125〜130ミリ秒、(xxviii)130〜135ミリ秒、(xxix)135〜140ミリ秒、(xxx)140〜145ミリ秒、(xxxi)145〜150ミリ秒、(xxxii)150〜155ミリ秒、(xxxiii)155〜160ミリ秒、(xxxiv)160〜165ミリ秒、(xxxv)165〜170ミリ秒、(xxxvi)170〜175ミリ秒、(xxxvii)175〜180ミリ秒、(xxxviii)180〜185ミリ秒、(xxxix)185〜190ミリ秒、(xl)190〜195ミリ秒、(xli)195〜200ミリ秒、および(xlii)>200ミリ秒からなる群から選択され、ならびに/または
(c)前記イオンガイド内で生成もしくは形成されたプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%についての滞留、過渡もしくは反応の時間は、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜5ミリ秒、(iii)5〜10ミリ秒、(iv)10〜15ミリ秒、(v)15〜20ミリ秒、(vi)20〜25ミリ秒、(vii)25〜30ミリ秒、(viii)30〜35ミリ秒、(ix)35〜40ミリ秒、(x)40〜45ミリ秒、(xi)45〜50ミリ秒、(xii)50〜55ミリ秒、(xiii)55〜60ミリ秒、(xiv)60〜65ミリ秒、(xv)65〜70ミリ秒、(xvi)70〜75ミリ秒、(xvii)75〜80ミリ秒、(xviii)80〜85ミリ秒、(xix)85〜90ミリ秒、(xx)90〜95ミリ秒、(xxi)95〜100ミリ秒、(xxii)100〜105ミリ秒、(xxiii)105〜110ミリ秒、(xxiv)110〜115ミリ秒、(xxv)115〜120ミリ秒、(xxvi)120〜125ミリ秒、(xxvii)125〜130ミリ秒、(xxviii)130〜135ミリ秒、(xxix)135〜140ミリ秒、(xxx)140〜145ミリ秒、(xxxi)145〜150ミリ秒、(xxxii)150〜155ミリ秒、(xxxiii)155〜160ミリ秒、(xxxiv)160〜165ミリ秒、(xxxv)165〜170ミリ秒、(xxxvi)170〜175ミリ秒、(xxxvii)175〜180ミリ秒、(xxxviii)180〜185ミリ秒、(xxxix)185〜190ミリ秒、(xl)190〜195ミリ秒、(xli)195〜200ミリ秒、および(xlii)>200ミリ秒からなる群から選択され、ならびに/または
(d)前記イオンガイドは、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜10ミリ秒、(iii)10〜20ミリ秒、(iv)20〜30ミリ秒、(v)30〜40ミリ秒、(vi)40〜50ミリ秒、(vii)50〜60ミリ秒、(viii)60〜70ミリ秒、(ix)70〜80ミリ秒、(x)80〜90ミリ秒、(xi)90〜100ミリ秒、(xii)100〜200ミリ秒、(xiii)200〜300ミリ秒、(xiv)300〜400ミリ秒、(xv)400〜500ミリ秒、(xvi)500〜600ミリ秒、(xvii)600〜700ミリ秒、(xviii)700〜800ミリ秒、(xix)800〜900ミリ秒、(xx)900〜1000ミリ秒、(xxi)1〜2秒、(xxii)2〜3秒、(xxiii)3〜4秒、(xxiv)4〜5秒、および(xxv)>5秒からなる群から選択されるサイクル時間を有する、
先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項44】
(a)動作モードにおいて、第1のイオンおよび/もしくは第2のイオンは、前記イオンガイド内でトラップされるが、実質的にフラグメンテーションおよび/もしくは反応および/もしくは電荷減少がされないように構成および適合され、ならびに/または
(b)動作モードにおいて、第1のイオンおよび/もしくは第2のイオンは、前記イオンガイド内で衝突により冷却されるか、もしくは実質的に熱化されるように構成および適合され、ならびに/または
(c)動作モードにおいて、第1のイオンおよび/もしくは第2のイオンは、前記イオンガイド内で実質的にフラグメンテーションおよび/もしくは反応および/もしくは電荷減少がされるように構成および適合され、ならびに/または
(d)動作モードにおいて、第1のイオンおよび/もしくは第2のイオンは、前記イオンガイドの入口および/もしくは出口に配置される1つ以上の電極によって前記イオンガイド中へおよび/もしくはそこからパルスとして入射および/もしくは出射されるように構成および適合される、
先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項45】
(a)動作モードにおいて、イオンの大部分は、衝突誘起解離によってフラグメンテーションされて、プロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを形成するように構成され、ここで、前記プロダクトイオンもしくはフラグメントイオンの大多数は、b−タイプのプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンおよび/またはy−タイプのプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンであり、および/または
(b)動作モードにおいて、イオンの大部分は、電子移動解離によってフラグメンテーションされて、プロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを形成するように構成され、ここで、前記プロダクトイオンもしくはフラグメントイオンの大多数は、c−タイプのプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンおよび/またはz−タイプのプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンである、
先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項46】
電子移動解離を実施するために、
(a)分析種イオンは、試薬イオンとの相互作用時にフラグメンテーションされるか、またはプロダクトイオンまたはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、および/または
(b)電子は、1つ以上の試薬のアニオンもしくは負電荷のイオンから1つ以上の多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンに移動し、この時に、前記多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、プロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、および/または
(c)分析種イオンは、中性試薬ガスの分子もしくは原子または非イオン試薬ガスとの相互作用時にフラグメンテーションされるか、またはプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、および/または
(d)電子は、1つ以上の中性、非イオンもしくは非荷電塩基のガスもしくは蒸気から1つ以上の多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンに移動し、この時に、前記多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、プロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、および/または
(e)電子は、1つ以上の中性、非イオンまたは非荷電超強塩基の試薬ガスもしくは試薬蒸気から1つ以上の多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンに移動し、この時に、前記多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、プロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、および/または
(f)電子は、1つ以上の中性、非イオンもしくは非荷電アルカリの金属ガスもしくは金属蒸気から1つ以上の多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンに移動し、この時に、前記多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、プロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、および/または
(g)電子は、1つ以上の中性、非イオンもしくは非荷電のガス、蒸気もしくは原子から1つ以上の多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンに移動し、この時に、前記多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、プロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導され、ここで、前記1つ以上の中性、非イオンもしくは非荷電のガス、蒸気もしくは原子は、(i)ナトリウムの蒸気もしくは原子、(ii)リチウムの蒸気もしくは原子、(iii)カリウムの蒸気もしくは原子、(iv)ルビジウムの蒸気もしくは原子、(v)セシウムの蒸気もしくは原子、(vi)フランシウムの蒸気もしくは原子、(vii)C60の蒸気もしくは原子、および(viii)マグネシウムの蒸気もしくは原子からなる群から選択される
のいずれかである、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項47】
前記多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質または生体分子を含む、請求項46に記載の質量分析計。
【請求項48】
電子移動解離を実施するために、
(a)前記試薬のアニオンもしくは負電荷のイオンは、ポリ芳香族炭化水素もしくは置換ポリ芳香族炭化水素から得られ、および/または
(b)前記試薬のアニオンもしくは負電荷のイオンは、(i)アントラセン、(ii)9,10ジフェニル−アントラセン、(iii)ナフタレン、(iv)フッ素、(v)フェナントレン、(vi)ピレン、(vii)フルオランテン、(viii)クリセン、(ix)トリフェニレン、(x)ペリレン、(xi)アクリジン、(xii)2,2’ジピリジル、(xiii)2,2’ビキノリン、(xiv)9−アントラセンカルボニトリル、(xv)ジベンゾチオフェン、(xvi)1,10’−フェナントロリン、(xvii)9’アントラセンカルボニトリル、および(xviii)アントラキノンからなる群から得られ、および/または
(c)前記試薬のイオンまたは負電荷のイオンは、アゾベンゼンアニオンまたはアゾベンゼンラジカルアニオンを含む、
請求項46または47に記載の質量分析計。
【請求項49】
プロトン移動反応を実施するために、
(i)プロトンは、1つ以上の多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンから1つ以上の試薬のアニオンもしくは負電荷のイオンに移動し、この時に、前記多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、電荷状態が低減され、および/またはプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、
(ii)プロトンは、1つ以上の多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンから1つ以上の中性、非イオンもしくは非荷電の試薬ガスもしくは試薬蒸気に移動し、この時に、前記多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、電荷状態が低減され、および/またはプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される
のいずれかである、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項50】
前記多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質または生体分子を含む、請求項49に記載の質量分析計。
【請求項51】
プロトン移動反応を実施するために、
(a)前記試薬のアニオンもしくは負電荷のイオンは、(i)カルボン酸、(ii)フェノール、および(iii)アルコキシドを含む化合物からなる群から選択される化合物から得られる、および/または
(b)前記試薬のアニオンもしくは負電荷のイオンは、(i)安息香酸、(ii)過フルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサンまたはPDCH、(iii)六フッ化硫黄またはSF6、および(iv)過フルオロトリブチルアミンまたはPFTBAからなる群から選択される化合物から得られる、および/または
(c)前記1つ以上の試薬ガスもしくは試薬蒸気は、超強塩基ガスを含む、および/または
(d)前記1つ以上の試薬ガスもしくは試薬蒸気は、(i)1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(「TMG」)、(ii)2,3,4,6,7,8、9,10−オクタヒドロピリミドール[1,2−a]アゼピン{異名:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(「DBU」)}、もしくは(iii)7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(「MTBD」){異名:1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−1−メチル−2H−ピリミド[1,2−a]ピリミジン}からなる群から選択される
のいずれかである、請求項49または50に記載の質量分析計。
【請求項52】
(a)前記電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置されるイオン源であって、前記イオン源は、(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコン上脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝突(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電場イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電場脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、(xvi)ニッケル−63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザ脱離イオン化イオン源、(xviii)熱スプレーイオン源、(xix)大気サンプリンググロー放電イオン化(「ASGDI」)イオン源、および(xx)グロー放電(「GD」)イオン源からなる群から選択されるイオン源、および/または
(b)1つ以上の連続イオン源またはパルスイオン源、および/または
(c)前記電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のイオンガイド、および/または
(d)前記電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のイオン移動度分離デバイスおよび/または1つ以上の電場非対称イオン移動度分光計デバイス、および/または
(e)前記電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のイオントラップまたは1つ以上のイオントラップ領域、および/または
(f)前記電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上の衝突、フラグメンテーションまたは反応セルであって、ここで前記1つ以上の衝突、フラグメンテーションまたは反応セルは、(i)衝突誘起解離(「CID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(iii)電子移動解離(「ETD」)フラグメンテーションデバイス、(iv)電子捕獲解離(「ECD」)フラグメンテーションデバイス、(v)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(vi)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vii)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(viii)赤外放射誘起解離デバイス、(ix)紫外放射誘起解離デバイス、(x)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(xi)インソースフラグメンテーションデバイス、(xii)インソース衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xiii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiv)電場誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xvi)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加またはプロダクトイオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加またはプロダクトイオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加またはプロダクトイオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加またはプロダクトイオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxvii)イオンを反応させて付加またはプロダクトイオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、(xxviii)イオンを反応させて付加またはプロダクトイオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイス、および(xxix)電子イオン化解離(「EID」)フラグメンテーションデバイスからなる群から選択される1つ以上の衝突、フラグメンテーションまたは反応セル、および/または
(g)質量分析部であって、(i)四重極質量分析部、(ii)二次元または線形四重極質量分析部、(iii)ポールまたは三次元四重極質量分析部、(iv)ペニングトラップ質量分析部、(v)イオントラップ質量分析部、(vi)磁場セクタ質量分析部、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(「ICR」)質量分析部、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析部、(ix)静電またはオービトラップ質量分析部、(x)フーリエ変換静電またはオービトラップ質量分析部、(xi)フーリエ変換質量分析部、(xii)飛行時間質量分析部、(xiii)直交加速飛行時間質量分析部、および(xiv)直線加速飛行時間質量分析部からなる群から選択される質量分析部、および/または
(h)前記電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のエネルギー分析部または静電エネルギー分析部、および/または
(i)前記電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のイオン検出器、および/または
(j)前記電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上の質量フィルタであって、前記1つ以上の質量フィルタは、(i)四重極質量分析部、(ii)二次元または線形四重極質量分析部、(iii)ポールまたは三次元四重極質量分析部、(iv)ペニングトラップ質量分析部、(v)イオントラップ質量分析部、(vi)磁場セクタ質量分析部、(vii)飛行時間質量フィルタ、および(viii)ウィーンフィルタからなる群から選択される1つ以上の質量フィルタ、および/または
(k)イオンをパルスにして前記電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスへ入力するためのデバイスまたはイオンゲート、および/または
(l)実質的に連続なイオンビームをパルスイオンビームに変換するためのデバイス
のいずれかをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項53】
(a)分析種イオンおよび/もしくは試薬イオンを生成するための1つ以上の大気圧イオン源、ならびに/または
(b)分析種イオンおよび/もしくは試薬イオンを生成するための1つ以上のエレクトロスプレーイオン源、ならびに/または
(c)分析種イオンおよび/もしくは試薬イオンを生成するための1つ以上の大気圧化学イオン源、ならびに/または
(d)分析種イオンおよび/もしくは試薬イオンを生成するための1つ以上のグロー放電イオン源
をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項54】
1つ以上のグロー放電イオン源が前記質量分析計の1つ以上の真空チャンバに備えられる、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項55】
前記質量分析計は、
C−トラップと、
オービトラップ質量分析部と
を含み、
第1の動作モードにおいて、イオンは、前記C−トラップへ移送され、そして次いで前記オービトラップ質量分析部中へ注入され、および
第2の動作モードにおいて、イオンは、前記C−トラップへ移送され、そして次いで衝突セルまたは電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイス中へ移送され、ここで少なくともいくつかのイオンは、フラグメントイオンへフラグメンテーションされ、そして次いで前記フラグメントイオンは、前記C−トラップへ移送され、その後前記オービトラップ質量分析部中へ注入される、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項56】
前記質量分析計は、
使用時にイオンが移送される開口を有する複数の電極を含む積層リングイオンガイドであって、前記電極の間隔は、イオン経路の長さに沿って増大し、かつ前記イオンガイドの上流部分における前記電極中の開口は、第1の直径を有し、かつ前記イオンガイドの下流部分における前記電極中の開口は、前記第1の直径よりも小さな第2の直径を有し、かつAC電圧またはRF電圧の互いに反対の位相が連続した電極に印加される、積層リングイオンガイドを含む、
先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項57】
複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスと制御システムとを含む質量分析計の前記制御システムによって実行可能なコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムは、前記制御システムに
少なくともいくつかの第1のイオンが前記イオンガイドを通って移送される際に前記第1のイオンが電子移動解離および/またはプロトン移動反応によってフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを推定、決定または測定し、そしてそれに応答して、前記第1のイオンが前記イオンガイドを通過する際の前記第1のイオンの移送および/またはフラグメンテーションの度合いおよび/または電荷減少の度合いに影響する1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減するようにさせるように構成される、
コンピュータプログラム。
【請求項58】
コンピュータによって実行可能な命令を含むコンピュータによって読み取り可能な媒体であって、前記命令は、複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスを含む質量分析計の制御システムによって実行可能なように構成され、前記コンピュータプログラムは、前記制御システムに
少なくともいくつかの第1のイオンが前記イオンガイドを通って移送される際に前記第1のイオンが電子移動解離および/またはプロトン移動反応によってフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを推定、決定または測定し、そしてそれに応答して、前記第1のイオンが前記イオンガイドを通過する際の前記第1のイオンの移送および/またはフラグメンテーションの度合いおよび/または電荷減少の度合いに影響する1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減するようにさせるように構成される、
コンピュータによって読み取り可能な媒体。
【請求項59】
前記コンピュ−タによって読み取り可能な媒体は、(i)ROM、(ii)EAROM、(iii)EPROM、(iv)EEPROM、(v)フラッシュメモリ、および(vi)光学ディスクからなる群から選択される、請求項58に記載のコンピュータによって読み取り可能な媒体。
【請求項60】
複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスを準備するステップと、
少なくともいくつかの第1のイオンが前記イオンガイドを通って移送される際に前記第1のイオンが電子移動解離および/またはプロトン移動反応によってフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを推定、決定または測定し、そしてそれに応答して、前記第1のイオンが前記イオンガイドを通過する際の前記第1のイオンの移送および/またはフラグメンテーションの度合いおよび/または電荷減少の度合いに影響する1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減するステップと
を含む質量分析の方法。
【請求項61】
複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスと、
制御システムであって、
(i)前記イオンガイドから出現する第1の電荷状態を有する1つ以上の親イオンまたは前駆体イオンの強度または存在度I1を決定し、
(ii)前記イオンガイドから出現し、かつ電荷が減少した親イオンまたは前駆体イオンに対応し、かつ前記第1の電荷状態より低い第2の電荷状態を有する1つ以上のイオンの強度または存在度I2を決定し、および
(iii)前記電極に印加される1つ以上の過渡DC電圧の速度および/または振幅を変更して、比I1/I2または比I2/I1を時間が経過しても実質的に一定の値Rに維持する
ように構成および適合される制御システムと
を含む質量分析計。
【請求項62】
複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスと、
制御システムであって、
(i)前記イオンガイドから出現する第1の電荷状態を有する1つ以上の親イオンまたは前駆体イオンの強度または存在度I1を決定し、
(ii)前記イオンガイドから出現し、かつフラグメンテーションされた親イオンまたは前駆体イオンに対応する1つ以上のイオンの強度または存在度I2を決定し、および
(iii)前記電極に印加される1つ以上の過渡DC電圧の速度および/または振幅を変更して、比I1/I2または比I2/I1を時間が経過しても実質的に一定の値Rに維持する
ように構成および適合される制御システムと
を含む質量分析計。
【請求項63】
前記値Rは、(i)<0.1、(ii)0.1〜0.2、(iii)0.2〜0.3、(iv)0.3〜0.4、(v)0.4〜0.5、(vi)0.5〜0.6、(vii)0.6〜0.7、(viii)0.7〜0.8、(ix)0.8〜0.9、(x)0.9〜1.0、(xi)1.0〜1.1、(xii)1.1〜1.2、(xiii)1.2〜1.3、(xiv)1.3〜1.4、(xv)1.4〜1.5、(xvi)1.5〜1.6、(xvii)1.6〜1.7、(xviii)1.7〜1.8、(xix)1.8〜1.9、(xx)1.9〜2.0、(xxi)2.0〜2.1、(xxii)2.1〜2.2、(xxiii)2.2〜2.3、(xxiv)2.3〜2.4、(xxv)2.4〜2.5、(xxvi)2.5〜2.6、(xxvii)2.6〜2.7、(xxviii)2.7〜2.8、(xxix)2.8〜2.9、(xxx)2.9〜3.0、(xxxi)3.0〜3.1、(xxxii)3.1〜3.2、(xxxiii)3.2〜3.3、(xxxiv)3.3〜3.4、(xxxv)3.4〜3.5、(xxxvi)3.5〜3.6、(xxxvii)3.6〜3.7、(xxxviii)3.7〜3.8、(xxxix)3.8〜3.9、(xl)3.9〜4.0、(xli)4.0〜4.1、(xlii)4.1〜4.2、(xliii)4.2〜4.3、(xliv)4.3〜4.4、(xlv)4.4〜4.5、(xlvi)4.5〜4.6、(xlvii)4.6〜4.7、(xlviii)4.7〜4.8、(xlix)4.8〜4.9、(l)4.9〜5.0、および(li)>5.0からなる群から選択される、
請求項61または62に記載の質量分析計。
【請求項64】
複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスを準備するステップと、
前記イオンガイドから出現する第1の電荷状態を有する1つ以上の親イオンまたは前駆体イオンの強度または存在度I1を決定するステップと、
前記イオンガイドから出現し、かつ電荷が減少した親イオンまたは前駆体イオンに対応し、かつ前記第1の電荷状態より低い第2の電荷状態を有する1つ以上のイオンの強度または存在度I2を決定するステップと、
前記電極に印加される1つ以上の過渡DC電圧の速度および/または振幅を変更して、比I1/I2または比I2/I1を時間が経過しても実質的に一定の値Rに維持するステップと
を含む質量分析の方法。
【請求項65】
複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスを準備するステップと、
前記イオンガイドから出現する第1の電荷状態を有する1つ以上の親イオンまたは前駆体イオンの強度または存在度I1を決定するステップと、
前記イオンガイドから出現し、かつフラグメンテーションされた親イオンまたは前駆体イオンに対応する1つ以上のイオンの強度または存在度I2を決定するステップと、
前記電極に印加される1つ以上の過渡DC電圧の速度および/または振幅を変更して、比I1/I2または比I2/I1を時間が経過しても実質的に一定の値Rに維持するステップと
を含む質量分析の方法。
【請求項66】
前記値Rは、(i)<0.1、(ii)0.1〜0.2、(iii)0.2〜0.3、(iv)0.3〜0.4、(v)0.4〜0.5、(vi)0.5〜0.6、(vii)0.6〜0.7、(viii)0.7〜0.8、(ix)0.8〜0.9、(x)0.9〜1.0、(xi)1.0〜1.1、(xii)1.1〜1.2、(xiii)1.2〜1.3、(xiv)1.3〜1.4、(xv)1.4〜1.5、(xvi)1.5〜1.6、(xvii)1.6〜1.7、(xviii)1.7〜1.8、(xix)1.8〜1.9、(xx)1.9〜2.0、(xxi)2.0〜2.1、(xxii)2.1〜2.2、(xxiii)2.2〜2.3、(xxiv)2.3〜2.4、(xxv)2.4〜2.5、(xxvi)2.5〜2.6、(xxvii)2.6〜2.7、(xxviii)2.7〜2.8、(xxix)2.8〜2.9、(xxx)2.9〜3.0、(xxxi)3.0〜3.1、(xxxii)3.1〜3.2、(xxxiii)3.2〜3.3、(xxxiv)3.3〜3.4、(xxxv)3.4〜3.5、(xxxvi)3.5〜3.6、(xxxvii)3.6〜3.7、(xxxviii)3.7〜3.8、(xxxix)3.8〜3.9、(xl)3.9〜4.0、(xli)4.0〜4.1、(xlii)4.1〜4.2、(xliii)4.2〜4.3、(xliv)4.3〜4.4、(xlv)4.4〜4.5、(xlvi)4.5〜4.6、(xlvii)4.6〜4.7、(xlviii)4.7〜4.8、(xlix)4.8〜4.9、(l)4.9〜5.0、および(li)>5.0からなる群から選択される、
請求項64または65に記載の方法。
【請求項1】
複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスと、
少なくともいくつかの第1のイオンが前記イオンガイドを通って移送される際に前記第1のイオンが電子移動解離および/またはプロトン移動反応によってフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを推定、決定または測定し、そしてそれに応答して、前記第1のイオンが前記イオンガイドを通過する際の前記第1のイオンの移送および/またはフラグメンテーションの度合いおよび/または電荷減少の度合いに影響する1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減するように構成および適合される制御システムと
を含む質量分析計。
【請求項2】
前記第1のイオンは、
(i)アニオンもしくは負電荷のイオン、
(ii)カチオンもしくは正電荷のイオン、または
(iii)アニオンおよびカチオンの組み合わせもしくは混合物
のいずれかを含む、請求項1に記載の質量分析計。
【請求項3】
動作モードにおいて、前記制御システムは、前記1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減して、前記第1のイオンが前記イオンガイドを通過する際の前記第1のイオンのフラグメンテーションおよび/または電荷減少を最適化および/または最大化するように構成および適合される、請求項1または2に記載の質量分析計。
【請求項4】
動作モードにおいて、前記制御システムは、前記1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減して、前記第1のイオンのフラグメンテーションおよび/または電荷減少を最小化および/または低減し、前記イオンガイドがイオンガイドモードにて動作するように構成および適合され、前記イオンガイドモードにおいては、前記イオンガイドへの入力において受け取られるイオンが、実質的にフラグメンテーションおよび/または電荷減少されることなく、前記イオンガイドの出力へ実質的に前方移送される、請求項1、2または3に記載の質量分析計。
【請求項5】
前記制御システムは、前記1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減して、前記第1のイオンが使用時に前記イオンガイドを通って移送される速さまたは速度を変更、変化、増大または低減するように構成および適合される、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項6】
前記第1のイオンのうちの少なくともいくつかを使用時に駆動または推進して、前記イオンガイドを通っておよび/または沿って移動させる第1のデバイスをさらに含む、請求項5に記載の質量分析計。
【請求項7】
前記第1のデバイスは、
(i)前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部もしくはその少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%に沿って直線状軸方向DC電場を生成するか、または
(ii)前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部もしくはその少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%に沿って非直線状もしくは階段状の軸方向DC電場を生成する
のいずれかに構成および適合される、請求項6に記載の質量分析計。
【請求項8】
前記制御システムは、前記軸方向DC電場または前記軸方向DC電場の勾配を変更、変化、増大または低減するように構成および適合される、請求項7に記載の質量分析計。
【請求項9】
前記第1のデバイスは、1つ以上の第1の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の第1の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加して、少なくともいくつかの第1のイオンを第1の方向の前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿っておよび/または通って駆動または推進するように構成および適合される、請求項6、7または8に記載の質量分析計。
【請求項10】
前記制御システムは、前記1つ以上の第1の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または前記1つ以上の第1の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形が前記複数の電極の少なくともいくつかに印加され、および/または前記イオンガイドの長さに沿って並進される速さまたは速度を変更、変化、増大または低減するように構成および適合される、請求項9に記載の質量分析計。
【請求項11】
前記制御システムは、前記1つ以上の第1の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または前記1つ以上の第1の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形の振幅、高さまたは深さを変更、変化、増大または低減するように構成および適合される、請求項9または10に記載の質量分析計。
【請求項12】
前記制御システムは、前記1つ以上の第1の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または前記1つ以上の第1の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形の周期性および/または形状および/または波形および/またはパターンおよび/またはプロフィールおよび/またはマークスペース比を変更、変化、増大または低減するように構成および適合される、請求項9、10または11に記載の質量分析計。
【請求項13】
前記第1のデバイスは、前記1つ以上の第1の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または前記1つ以上の第1の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を前記複数の電極の少なくともいくつかまたは0〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%もしくは95〜100%に印加して、少なくともいくつかの前記第1のイオンを第1の方向の前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部または0〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%もしくは95〜100%に沿っておよび/または通って駆動または推進するように構成および適合される、請求項9〜12のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項14】
1つ以上の第2の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または1つ以上の第2の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加して、少なくともいくつかの第2のイオンを第2の異なる方向の前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿っておよび/または通って駆動または推進するように構成および適合される第2のデバイスをさらに含む、請求項9〜13のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項15】
前記制御システムは、前記1つ以上の第2の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または前記1つ以上の第2の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形が前記複数の電極の少なくともいくつかに印加され、および/または前記イオンガイドの長さに沿って並進される速さまたは速度を変更、変化、増大または低減するように構成および適合される、請求項14に記載の質量分析計。
【請求項16】
前記制御システムは、前記1つ以上の第2の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または前記1つ以上の第2の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形の振幅、高さまたは深さを変更、変化、増大または低減するように構成および適合される、請求項14または15に記載の質量分析計。
【請求項17】
前記制御システムは、前記1つ以上の第2の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または前記1つ以上の第2の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形の周期性および/または形状および/または波形および/またはパターンおよび/またはプロフィールおよび/またはマークスペース比を変更、変化、増大または低減するように構成および適合される、請求項14、15または16に記載の質量分析計。
【請求項18】
前記第2のデバイスは、前記1つ以上の第2の過渡DC電圧もしくは過渡DC電位または前記1つ以上の第2の過渡DC電圧波形もしくは過渡DC電位波形を前記複数の電極の少なくともいくつかまたは0〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%もしくは95〜100%に印加して、少なくともいくつかの前記第2のイオンを前記第2の方向の前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部または0〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%もしくは95〜100%に沿っておよび/または通って駆動または推進するように構成および適合される、請求項14〜17のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項19】
(a)前記第2の方向は、前記第1の方向に実質的に反対であるか、もしくは対向する、または
(b)前記第1の方向と前記第2の方向との角度は、(i)<30°、(ii)30〜60°、(iii)60〜90°、(iv)90〜120°、(v)120〜150°、(vi)150〜180°、および(vii)180°からなる群から選択される
のいずれかである、請求項14〜18のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項20】
前記第2のイオンは、
(i)アニオンもしくは負電荷のイオン、
(ii)カチオンもしくは正電荷のイオン、または
(iii)アニオンおよびカチオンの組み合わせもしくは混合物
のいずかを含む、請求項14〜19のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項21】
前記第1のイオンは、第1の極性を有し、かつ前記第2のイオンは、前記第1の極性とは反対の第2の極性を有する、請求項14〜20のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項22】
第1の正または負の電位または電位差を前記イオンガイドの第1端または上流端に印加または維持するデバイスであって、前記第1の正または負の電位または電位差は、使用時に、前記第1のイオンの少なくともいくつかおよび/または前記第2のイオンの少なくともいくつかを前記イオンガイド内に閉じ込めるように働く、デバイスをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項23】
前記第1の正または負の電位または電位差によって、前記第1のイオンの少なくともいくつかおよび/または前記第2のイオンの少なくともいくつかが前記第1端または上流端を介して前記イオンガイドを出射することが可能となる、請求項22に記載の質量分析計。
【請求項24】
前記制御システムは、前記第1の正または負の電位または電位差を変更、変化、増大または低減して、前記イオンガイド内のイオン閉じ込めの度合いまたは量を変更、変化、増大または低減するように構成および適合される、請求項22または23に記載の質量分析計。
【請求項25】
第2の正または負の電位または電位差を前記イオンガイドの第2端または上流端において印加するためのデバイスであって、前記第2の正または負の電位または電位差は、使用時に、前記第1のイオンの少なくともいくつかおよび/または前記第2のイオンの少なくともいくつかを前記イオンガイド内に閉じ込めるように働く、デバイスをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項26】
前記第2の正または負の電位または電位差によって、前記第1のイオンの少なくともいくつかおよび/または前記第2のイオンの少なくともいくつかが前記第2端または上流端を介して前記イオンガイドを出射することが可能となる、請求項25に記載の質量分析計。
【請求項27】
前記制御システムは、前記第2の正または負の電位または電位差を変更、変化、増大または低減して、前記イオンガイド内のイオン閉じ込めの度合いまたは量を変更、変化、増大または低減するように構成および適合される、請求項25または26に記載の質量分析計。
【請求項28】
第1の周波数および第1の振幅を有する第1のAC電圧またはRF電圧を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加して、使用時にイオンが前記イオンガイド内に半径方向に閉じ込められるように構成および適合される第1のRFデバイスをさらに含み、ここで、
(a)前記第1の周波数は、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、および(xxv)>10.0MHzからなる群から選択される、および/または
(b)前記第1の振幅は、(i)<50Vピーク・トゥ・ピーク、(ii)50〜100Vピーク・トゥ・ピーク、(iii)100〜150Vピーク・トゥ・ピーク、(iv)150〜200Vピーク・トゥ・ピーク、(v)200〜250Vピーク・トゥ・ピーク、(vi)250〜300Vピーク・トゥ・ピーク、(vii)300〜350Vピーク・トゥ・ピーク、(viii)350〜400Vピーク・トゥ・ピーク、(ix)400〜450Vピーク・トゥ・ピーク、(x)450〜500Vピーク・トゥ・ピーク、および(xi)>500Vピーク・トゥ・ピークからなる群から選択される、および/または
(c)動作モードにおいて、隣接または近接する電極には、前記第1のAC電圧またはRF電圧の互いに反対の位相が供給される、および/または
(d)前記イオンガイドは、1〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、90〜100または>100グループの電極を含み、ここで、各グループの電極は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の電極を含み、かつ各グループにおける少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の電極には、前記第1のAC電圧またはRF電圧の同じ位相が供給される
のいずれかである、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項29】
前記制御システムは、前記第1の周波数および/または前記第1の振幅を変更、変化、増大または低減して、前記イオンガイド内のイオン閉じ込めおよび/またはイオン−イオン相互作用の度合いまたは量を変更、変化、増大または低減するように構成および適合される、請求項28に記載の質量分析計。
【請求項30】
前記制御システムは、
(i)質量スペクトル、イオン移動度スペクトルまたは他のスペクトル内に観測される1つ以上の第1の親、前駆体、娘、フラグメント、電荷が減少した、または他のイオンの強度または存在度、または
(ii)質量スペクトル、イオン移動度スペクトルまたは他のスペクトルの第1の質量範囲または第1の質量電荷比範囲内に観察される1つ以上の第1の親、前駆体、娘、フラグメント、電荷が減少した、または他のイオンの強度または存在度
のいずれかを推定、決定または測定することによって、前記第1のイオンの少なくともいくつかがフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを推定、決定または測定するように構成および適合される、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項31】
前記制御システムは、1つ以上の第2の親、前駆体、娘、フラグメント、電荷が減少した、または他のイオンの強度または存在度に対する、質量スペクトルまたはイオン移動度スペクトルの第1の質量範囲または第1の質量電荷比範囲内の1つ以上の第1の親、前駆体、娘、フラグメント、電荷が減少した、または他のイオンの強度または存在度を推定、決定または測定することによって、前記第1のイオンの少なくともいくつかがフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを推定、決定または測定するように構成および適合される、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項32】
前記第1の質量範囲または第1の質量電荷比範囲は、(i)<10、(ii)10〜50、(iii)50〜100、(iv)100〜200、(v)200〜300、(vi)300〜400、(vii)400〜500、(viii)500〜600、(ix)600〜700、(x)700〜800、(xi)800〜900、(xii)900〜1000、(xiii)1000〜1100、(xiv)1100〜1200、(xv)1200〜1300、(xvi)1300〜1400、(xvii)1400〜1500、(xviii)1500〜1600、(xix)1600〜1700、(xx)1700〜1800、(xxi)1800〜1900、(xxii)1900〜2000、および(xxiii)>2000からなる群から選択される質量単位または質量電荷比単位の幅を有する、請求項30または31に記載の質量分析計。
【請求項33】
前記制御システムは、前記第1のイオンの少なくともいくつかがフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを変更、変化、増大または低減して、イオン存在度測定値、イオン強度測定値またはイオン比を所望の値および/または所望の範囲内に維持するように構成および適合される、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項34】
前記所望の値および/または所望の範囲は、(i)<0.1、(ii)0.1〜0.2、(iii)0.2〜0.3、(iv)0.3〜0.4、(v)0.4〜0.5、(vi)0.5〜0.6、(vii)0.6〜0.7、(viii)0.7〜0.8、(ix)0.8〜0.9、(x)0.9〜1.0、(xi)1.0〜1.1、(xii)1.1〜1.2、(xiii)1.2〜1.3、(xiv)1.3〜1.4、(xv)1.4〜1.5、(xvi)1.5〜1.6、(xvii)1.6〜1.7、(xviii)1.7〜1.8、(xix)1.8〜1.9、(xx)1.9〜2.0、(xxi)2.0〜2.1、(xxii)2.1〜2.2、(xxiii)2.2〜2.3、(xxiv)2.3〜2.4、(xxv)2.4〜2.5、(xxvi)2.5〜2.6、(xxvii)2.6〜2.7、(xxviii)2.7〜2.8、(xxix)2.8〜2.9、(xxx)2.9〜3.0、(xxxi)3.0〜3.1、(xxxii)3.1〜3.2、(xxxiii)3.2〜3.3、(xxxiv)3.3〜3.4、(xxxv)3.4〜3.5、(xxxvi)3.5〜3.6、(xxxvii)3.6〜3.7、(xxxviii)3.7〜3.8、(xxxix)3.8〜3.9、(xl)3.9〜4.0、(xli)4.0〜4.1、(xlii)4.1〜4.2、(xliii)4.2〜4.3、(xliv)4.3〜4.4、(xlv)4.4〜4.5、(xlvi)4.5〜4.6、(xlvii)4.6〜4.7、(xlviii)4.7〜4.8、(xlix)4.8〜4.9、(l)4.9〜5.0、および(li)>5.0からなる群から選択される、請求項33に記載の質量分析計。
【請求項35】
前記制御システムは、イオン存在度測定値、イオン強度測定値またはイオン比が比較的高いか、または閾値を超えると判定した場合、前記1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減するように構成および適合される、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項36】
前記制御システムは、イオン存在度測定値、イオン強度測定値またはイオン比が比較的低いか、または閾値を下回る判定した場合、前記1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減するように構成および適合される、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項37】
前記イオンガイドは、使用時にイオンが移送される少なくとも1つの開口を有する複数の電極を含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項38】
(a)前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%は、実質的に円形、矩形、正方形または楕円形の開口を有する、ならびに/または
(b)前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%は、実質的に同じ第1のサイズを有するか、または実質的に同じ第1の面積を有する開口を有し、および/もしくは前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%は、実質的に同じ第2の異なるサイズを有するか、もしくは実質的に同じ第2の異なる面積を有する開口を有する、ならびに/または
(c)前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%は、サイズもしくは面積が前記イオンガイドの軸に沿った方向へいくにつれ順次より大きくおよび/もしくはより小さくなる開口を有する、ならびに/または
(d)前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%は、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、および(xi)>10.0mmからなる群から選択される内径または寸法を有する開口を有する、ならびに/または
(e)前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%は、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、および(xv)0.25mm以下からなる群から選択される軸方向距離だけ互いに間隔を開けられる、ならびに/または
(f)前記複数の電極の少なくともいくつかは、開口を含み、かつ前記開口の内径もしくは寸法の隣接する電極間の中心−中心軸方向間隔に対する比は、(i)<1.0、(ii)1.0〜1.2、(iii)1.2〜1.4、(iv)1.4〜1.6、(v)1.6〜1.8、(vi)1.8〜2.0、(vii)2.0〜2.2、(viii)2.2〜2.4、(ix)2.4〜2.6、(x)2.6〜2.8、(xi)2.8〜3.0、(xii)3.0〜3.2、(xiii)3.2〜3.4、(xiv)3.4〜3.6、(xv)3.6〜3.8、(xvi)3.8〜4.0、(xvii)4.0〜4.2、(xviii)4.2〜4.4、(xix)4.4〜4.6、(xx)4.6〜4.8、(xxi)4.8〜5.0、および(xxii)>5.0からなる群から選択される、ならびに/または
(g)前記複数の電極の開口の内径は、前記イオンガイドの長軸に沿って1回以上順次増大もしくは低減し、そして次いで順次低減もしくは増大する、ならびに/または
(h)前記複数の電極は、幾何体積を規定し、ここで、前記幾何体積は、(i)1つ以上の球、(ii)1つ以上の扁平楕円体、(iii)1つ以上の扁長楕円体、(iv)1つ以上の楕円体、および(v)1つ以上の不等辺楕円体からなる群から選択される、ならびに/または
(i)前記イオンガイドは、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mm、および(xi)>200mmからなる群から選択される長さを有する、ならびに/または
(j)前記イオンガイドは、少なくとも(i)1〜10個の電極、(ii)10〜20個の電極、(iii)20〜30個の電極、(iv)30〜40個の電極、(v)40〜50個の電極、(vi)50〜60個の電極、(vii)60〜70個の電極、(viii)70〜80個の電極、(ix)80〜90個の電極、(x)90〜100個の電極、(xi)100〜110個の電極、(xii)110〜120個の電極、(xiii)120〜130個の電極、(xiv)130〜140個の電極、(xv)140〜150個の電極、(xvi)150〜160個の電極、(xvii)160〜170個の電極、(xviii)170〜180個の電極、(xix)180〜190個の電極、(xx)190〜200個の電極、および(xxi)>200個の電極を含む、ならびに/または
(k)前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%は、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、および(xv)0.25mm以下からなる群から選択される厚さもしくは軸方向長さを有する、ならびに/または
(l)前記複数の電極のピッチ間隔または軸方向間隔は、前記イオンガイドの長軸に沿って1回以上順次低減もしくは増大する
のいずれかである、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項39】
前記イオンガイドは、複数のセグメント化ロッド電極を含む、請求項1〜36のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項40】
前記イオンガイドは、
1つ以上の第1の電極と、
1つ以上の第2の電極と、
使用時にイオンが進行する平面に配置される1つ以上の層の中間電極であって、前記1つ以上の層の中間電極は、前記1つ以上の第1の電極と前記1つ以上の第2の電極との間に配置され、かつ前記1つ以上の層の中間電極は、1つ以上の層の平面電極またはプレート電極を含み、かつ前記1つ以上の第1の電極は、最上部の電極であり、かつ前記1つ以上の第2の電極は、最下部の電極である、1つ以上の層の中間電極と
を含む、請求項1〜36のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項41】
(a)静的イオン−イオン反応領域、イオン−中性ガス反応領域もしくは反応体積が前記イオンガイド中に形成もしくは生成されるか、または
(b)動的イオン−イオン反応領域、イオン−中性ガス反応領域もしくは反応体積が前記イオンガイド中に形成もしくは生成される、
先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項42】
(a)前記イオンガイドを、動作モードにおいて、(i)<100mbar、(ii)<10mbar、(iii)<1mbar、(iv)<0.1mbar、(v)<0.01mbar、(vi)<0.001mbar、(vii)<0.0001mbar、および(viii)<0.00001mbarからなる群から選択される圧力に維持する、ならびに/または
(b)前記イオンガイドを、動作モードにおいて、(i)>100mbar、(ii)>10mbar、(iii)>1mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>0.01mbar、(vi)>0.001mbar、および(vii)>0.0001mbarからなる群から選択される圧力に維持する、ならびに/または
(c)前記イオンガイドを、動作モードにおいて、(i)0.0001〜0.001mbar、(ii)0.001〜0.01mbar、(iii)0.01〜0.1mbar、(iv)0.1〜1mbar、(v)1〜10mbar、(vi)10〜100mbar、および(vii)100〜1000mbarからなる群から選択される圧力に維持する
のいずれかに構成および適合されるデバイスをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項43】
(a)前記イオンガイド内の前記第1のイオンのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%についての滞留、過渡もしくは反応の時間は、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜5ミリ秒、(iii)5〜10ミリ秒、(iv)10〜15ミリ秒、(v)15〜20ミリ秒、(vi)20〜25ミリ秒、(vii)25〜30ミリ秒、(viii)30〜35ミリ秒、(ix)35〜40ミリ秒、(x)40〜45ミリ秒、(xi)45〜50ミリ秒、(xii)50〜55ミリ秒、(xiii)55〜60ミリ秒、(xiv)60〜65ミリ秒、(xv)65〜70ミリ秒、(xvi)70〜75ミリ秒、(xvii)75〜80ミリ秒、(xviii)80〜85ミリ秒、(xix)85〜90ミリ秒、(xx)90〜95ミリ秒、(xxi)95〜100ミリ秒、(xxii)100〜105ミリ秒、(xxiii)105〜110ミリ秒、(xxiv)110〜115ミリ秒、(xxv)115〜120ミリ秒、(xxvi)120〜125ミリ秒、(xxvii)125〜130ミリ秒、(xxviii)130〜135ミリ秒、(xxix)135〜140ミリ秒、(xxx)140〜145ミリ秒、(xxxi)145〜150ミリ秒、(xxxii)150〜155ミリ秒、(xxxiii)155〜160ミリ秒、(xxxiv)160〜165ミリ秒、(xxxv)165〜170ミリ秒、(xxxvi)170〜175ミリ秒、(xxxvii)175〜180ミリ秒、(xxxviii)180〜185ミリ秒、(xxxix)185〜190ミリ秒、(xl)190〜195ミリ秒、(xli)195〜200ミリ秒、および(xlii)>200ミリ秒からなる群から選択され、ならびに/または
(b)前記イオンガイド内の前記第2のイオンのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%についての滞留、過渡もしくは反応の時間は、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜5ミリ秒、(iii)5〜10ミリ秒、(iv)10〜15ミリ秒、(v)15〜20ミリ秒、(vi)20〜25ミリ秒、(vii)25〜30ミリ秒、(viii)30〜35ミリ秒、(ix)35〜40ミリ秒、(x)40〜45ミリ秒、(xi)45〜50ミリ秒、(xii)50〜55ミリ秒、(xiii)55〜60ミリ秒、(xiv)60〜65ミリ秒、(xv)65〜70ミリ秒、(xvi)70〜75ミリ秒、(xvii)75〜80ミリ秒、(xviii)80〜85ミリ秒、(xix)85〜90ミリ秒、(xx)90〜95ミリ秒、(xxi)95〜100ミリ秒、(xxii)100〜105ミリ秒、(xxiii)105〜110ミリ秒、(xxiv)110〜115ミリ秒、(xxv)115〜120ミリ秒、(xxvi)120〜125ミリ秒、(xxvii)125〜130ミリ秒、(xxviii)130〜135ミリ秒、(xxix)135〜140ミリ秒、(xxx)140〜145ミリ秒、(xxxi)145〜150ミリ秒、(xxxii)150〜155ミリ秒、(xxxiii)155〜160ミリ秒、(xxxiv)160〜165ミリ秒、(xxxv)165〜170ミリ秒、(xxxvi)170〜175ミリ秒、(xxxvii)175〜180ミリ秒、(xxxviii)180〜185ミリ秒、(xxxix)185〜190ミリ秒、(xl)190〜195ミリ秒、(xli)195〜200ミリ秒、および(xlii)>200ミリ秒からなる群から選択され、ならびに/または
(c)前記イオンガイド内で生成もしくは形成されたプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくは100%についての滞留、過渡もしくは反応の時間は、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜5ミリ秒、(iii)5〜10ミリ秒、(iv)10〜15ミリ秒、(v)15〜20ミリ秒、(vi)20〜25ミリ秒、(vii)25〜30ミリ秒、(viii)30〜35ミリ秒、(ix)35〜40ミリ秒、(x)40〜45ミリ秒、(xi)45〜50ミリ秒、(xii)50〜55ミリ秒、(xiii)55〜60ミリ秒、(xiv)60〜65ミリ秒、(xv)65〜70ミリ秒、(xvi)70〜75ミリ秒、(xvii)75〜80ミリ秒、(xviii)80〜85ミリ秒、(xix)85〜90ミリ秒、(xx)90〜95ミリ秒、(xxi)95〜100ミリ秒、(xxii)100〜105ミリ秒、(xxiii)105〜110ミリ秒、(xxiv)110〜115ミリ秒、(xxv)115〜120ミリ秒、(xxvi)120〜125ミリ秒、(xxvii)125〜130ミリ秒、(xxviii)130〜135ミリ秒、(xxix)135〜140ミリ秒、(xxx)140〜145ミリ秒、(xxxi)145〜150ミリ秒、(xxxii)150〜155ミリ秒、(xxxiii)155〜160ミリ秒、(xxxiv)160〜165ミリ秒、(xxxv)165〜170ミリ秒、(xxxvi)170〜175ミリ秒、(xxxvii)175〜180ミリ秒、(xxxviii)180〜185ミリ秒、(xxxix)185〜190ミリ秒、(xl)190〜195ミリ秒、(xli)195〜200ミリ秒、および(xlii)>200ミリ秒からなる群から選択され、ならびに/または
(d)前記イオンガイドは、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜10ミリ秒、(iii)10〜20ミリ秒、(iv)20〜30ミリ秒、(v)30〜40ミリ秒、(vi)40〜50ミリ秒、(vii)50〜60ミリ秒、(viii)60〜70ミリ秒、(ix)70〜80ミリ秒、(x)80〜90ミリ秒、(xi)90〜100ミリ秒、(xii)100〜200ミリ秒、(xiii)200〜300ミリ秒、(xiv)300〜400ミリ秒、(xv)400〜500ミリ秒、(xvi)500〜600ミリ秒、(xvii)600〜700ミリ秒、(xviii)700〜800ミリ秒、(xix)800〜900ミリ秒、(xx)900〜1000ミリ秒、(xxi)1〜2秒、(xxii)2〜3秒、(xxiii)3〜4秒、(xxiv)4〜5秒、および(xxv)>5秒からなる群から選択されるサイクル時間を有する、
先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項44】
(a)動作モードにおいて、第1のイオンおよび/もしくは第2のイオンは、前記イオンガイド内でトラップされるが、実質的にフラグメンテーションおよび/もしくは反応および/もしくは電荷減少がされないように構成および適合され、ならびに/または
(b)動作モードにおいて、第1のイオンおよび/もしくは第2のイオンは、前記イオンガイド内で衝突により冷却されるか、もしくは実質的に熱化されるように構成および適合され、ならびに/または
(c)動作モードにおいて、第1のイオンおよび/もしくは第2のイオンは、前記イオンガイド内で実質的にフラグメンテーションおよび/もしくは反応および/もしくは電荷減少がされるように構成および適合され、ならびに/または
(d)動作モードにおいて、第1のイオンおよび/もしくは第2のイオンは、前記イオンガイドの入口および/もしくは出口に配置される1つ以上の電極によって前記イオンガイド中へおよび/もしくはそこからパルスとして入射および/もしくは出射されるように構成および適合される、
先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項45】
(a)動作モードにおいて、イオンの大部分は、衝突誘起解離によってフラグメンテーションされて、プロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを形成するように構成され、ここで、前記プロダクトイオンもしくはフラグメントイオンの大多数は、b−タイプのプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンおよび/またはy−タイプのプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンであり、および/または
(b)動作モードにおいて、イオンの大部分は、電子移動解離によってフラグメンテーションされて、プロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを形成するように構成され、ここで、前記プロダクトイオンもしくはフラグメントイオンの大多数は、c−タイプのプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンおよび/またはz−タイプのプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンである、
先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項46】
電子移動解離を実施するために、
(a)分析種イオンは、試薬イオンとの相互作用時にフラグメンテーションされるか、またはプロダクトイオンまたはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、および/または
(b)電子は、1つ以上の試薬のアニオンもしくは負電荷のイオンから1つ以上の多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンに移動し、この時に、前記多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、プロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、および/または
(c)分析種イオンは、中性試薬ガスの分子もしくは原子または非イオン試薬ガスとの相互作用時にフラグメンテーションされるか、またはプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、および/または
(d)電子は、1つ以上の中性、非イオンもしくは非荷電塩基のガスもしくは蒸気から1つ以上の多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンに移動し、この時に、前記多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、プロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、および/または
(e)電子は、1つ以上の中性、非イオンまたは非荷電超強塩基の試薬ガスもしくは試薬蒸気から1つ以上の多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンに移動し、この時に、前記多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、プロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、および/または
(f)電子は、1つ以上の中性、非イオンもしくは非荷電アルカリの金属ガスもしくは金属蒸気から1つ以上の多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンに移動し、この時に、前記多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、プロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、および/または
(g)電子は、1つ以上の中性、非イオンもしくは非荷電のガス、蒸気もしくは原子から1つ以上の多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンに移動し、この時に、前記多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、プロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導され、ここで、前記1つ以上の中性、非イオンもしくは非荷電のガス、蒸気もしくは原子は、(i)ナトリウムの蒸気もしくは原子、(ii)リチウムの蒸気もしくは原子、(iii)カリウムの蒸気もしくは原子、(iv)ルビジウムの蒸気もしくは原子、(v)セシウムの蒸気もしくは原子、(vi)フランシウムの蒸気もしくは原子、(vii)C60の蒸気もしくは原子、および(viii)マグネシウムの蒸気もしくは原子からなる群から選択される
のいずれかである、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項47】
前記多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質または生体分子を含む、請求項46に記載の質量分析計。
【請求項48】
電子移動解離を実施するために、
(a)前記試薬のアニオンもしくは負電荷のイオンは、ポリ芳香族炭化水素もしくは置換ポリ芳香族炭化水素から得られ、および/または
(b)前記試薬のアニオンもしくは負電荷のイオンは、(i)アントラセン、(ii)9,10ジフェニル−アントラセン、(iii)ナフタレン、(iv)フッ素、(v)フェナントレン、(vi)ピレン、(vii)フルオランテン、(viii)クリセン、(ix)トリフェニレン、(x)ペリレン、(xi)アクリジン、(xii)2,2’ジピリジル、(xiii)2,2’ビキノリン、(xiv)9−アントラセンカルボニトリル、(xv)ジベンゾチオフェン、(xvi)1,10’−フェナントロリン、(xvii)9’アントラセンカルボニトリル、および(xviii)アントラキノンからなる群から得られ、および/または
(c)前記試薬のイオンまたは負電荷のイオンは、アゾベンゼンアニオンまたはアゾベンゼンラジカルアニオンを含む、
請求項46または47に記載の質量分析計。
【請求項49】
プロトン移動反応を実施するために、
(i)プロトンは、1つ以上の多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンから1つ以上の試薬のアニオンもしくは負電荷のイオンに移動し、この時に、前記多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、電荷状態が低減され、および/またはプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される、
(ii)プロトンは、1つ以上の多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンから1つ以上の中性、非イオンもしくは非荷電の試薬ガスもしくは試薬蒸気に移動し、この時に、前記多価分析種のカチオンもしくは正電荷のイオンの少なくともいくつかは、電荷状態が低減され、および/またはプロダクトイオンもしくはフラグメントイオンを解離および形成するように誘導される
のいずれかである、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項50】
前記多価分析種のカチオンまたは正電荷のイオンは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質または生体分子を含む、請求項49に記載の質量分析計。
【請求項51】
プロトン移動反応を実施するために、
(a)前記試薬のアニオンもしくは負電荷のイオンは、(i)カルボン酸、(ii)フェノール、および(iii)アルコキシドを含む化合物からなる群から選択される化合物から得られる、および/または
(b)前記試薬のアニオンもしくは負電荷のイオンは、(i)安息香酸、(ii)過フルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサンまたはPDCH、(iii)六フッ化硫黄またはSF6、および(iv)過フルオロトリブチルアミンまたはPFTBAからなる群から選択される化合物から得られる、および/または
(c)前記1つ以上の試薬ガスもしくは試薬蒸気は、超強塩基ガスを含む、および/または
(d)前記1つ以上の試薬ガスもしくは試薬蒸気は、(i)1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(「TMG」)、(ii)2,3,4,6,7,8、9,10−オクタヒドロピリミドール[1,2−a]アゼピン{異名:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(「DBU」)}、もしくは(iii)7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(「MTBD」){異名:1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−1−メチル−2H−ピリミド[1,2−a]ピリミジン}からなる群から選択される
のいずれかである、請求項49または50に記載の質量分析計。
【請求項52】
(a)前記電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置されるイオン源であって、前記イオン源は、(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコン上脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝突(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電場イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電場脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、(xvi)ニッケル−63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザ脱離イオン化イオン源、(xviii)熱スプレーイオン源、(xix)大気サンプリンググロー放電イオン化(「ASGDI」)イオン源、および(xx)グロー放電(「GD」)イオン源からなる群から選択されるイオン源、および/または
(b)1つ以上の連続イオン源またはパルスイオン源、および/または
(c)前記電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のイオンガイド、および/または
(d)前記電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のイオン移動度分離デバイスおよび/または1つ以上の電場非対称イオン移動度分光計デバイス、および/または
(e)前記電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のイオントラップまたは1つ以上のイオントラップ領域、および/または
(f)前記電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上の衝突、フラグメンテーションまたは反応セルであって、ここで前記1つ以上の衝突、フラグメンテーションまたは反応セルは、(i)衝突誘起解離(「CID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(iii)電子移動解離(「ETD」)フラグメンテーションデバイス、(iv)電子捕獲解離(「ECD」)フラグメンテーションデバイス、(v)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(vi)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vii)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(viii)赤外放射誘起解離デバイス、(ix)紫外放射誘起解離デバイス、(x)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(xi)インソースフラグメンテーションデバイス、(xii)インソース衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xiii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiv)電場誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xvi)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加またはプロダクトイオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加またはプロダクトイオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加またはプロダクトイオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加またはプロダクトイオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxvii)イオンを反応させて付加またはプロダクトイオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、(xxviii)イオンを反応させて付加またはプロダクトイオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイス、および(xxix)電子イオン化解離(「EID」)フラグメンテーションデバイスからなる群から選択される1つ以上の衝突、フラグメンテーションまたは反応セル、および/または
(g)質量分析部であって、(i)四重極質量分析部、(ii)二次元または線形四重極質量分析部、(iii)ポールまたは三次元四重極質量分析部、(iv)ペニングトラップ質量分析部、(v)イオントラップ質量分析部、(vi)磁場セクタ質量分析部、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(「ICR」)質量分析部、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析部、(ix)静電またはオービトラップ質量分析部、(x)フーリエ変換静電またはオービトラップ質量分析部、(xi)フーリエ変換質量分析部、(xii)飛行時間質量分析部、(xiii)直交加速飛行時間質量分析部、および(xiv)直線加速飛行時間質量分析部からなる群から選択される質量分析部、および/または
(h)前記電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のエネルギー分析部または静電エネルギー分析部、および/または
(i)前記電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上のイオン検出器、および/または
(j)前記電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つ以上の質量フィルタであって、前記1つ以上の質量フィルタは、(i)四重極質量分析部、(ii)二次元または線形四重極質量分析部、(iii)ポールまたは三次元四重極質量分析部、(iv)ペニングトラップ質量分析部、(v)イオントラップ質量分析部、(vi)磁場セクタ質量分析部、(vii)飛行時間質量フィルタ、および(viii)ウィーンフィルタからなる群から選択される1つ以上の質量フィルタ、および/または
(k)イオンをパルスにして前記電子移動解離デバイスまたはプロトン移動反応デバイスへ入力するためのデバイスまたはイオンゲート、および/または
(l)実質的に連続なイオンビームをパルスイオンビームに変換するためのデバイス
のいずれかをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項53】
(a)分析種イオンおよび/もしくは試薬イオンを生成するための1つ以上の大気圧イオン源、ならびに/または
(b)分析種イオンおよび/もしくは試薬イオンを生成するための1つ以上のエレクトロスプレーイオン源、ならびに/または
(c)分析種イオンおよび/もしくは試薬イオンを生成するための1つ以上の大気圧化学イオン源、ならびに/または
(d)分析種イオンおよび/もしくは試薬イオンを生成するための1つ以上のグロー放電イオン源
をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項54】
1つ以上のグロー放電イオン源が前記質量分析計の1つ以上の真空チャンバに備えられる、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項55】
前記質量分析計は、
C−トラップと、
オービトラップ質量分析部と
を含み、
第1の動作モードにおいて、イオンは、前記C−トラップへ移送され、そして次いで前記オービトラップ質量分析部中へ注入され、および
第2の動作モードにおいて、イオンは、前記C−トラップへ移送され、そして次いで衝突セルまたは電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイス中へ移送され、ここで少なくともいくつかのイオンは、フラグメントイオンへフラグメンテーションされ、そして次いで前記フラグメントイオンは、前記C−トラップへ移送され、その後前記オービトラップ質量分析部中へ注入される、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項56】
前記質量分析計は、
使用時にイオンが移送される開口を有する複数の電極を含む積層リングイオンガイドであって、前記電極の間隔は、イオン経路の長さに沿って増大し、かつ前記イオンガイドの上流部分における前記電極中の開口は、第1の直径を有し、かつ前記イオンガイドの下流部分における前記電極中の開口は、前記第1の直径よりも小さな第2の直径を有し、かつAC電圧またはRF電圧の互いに反対の位相が連続した電極に印加される、積層リングイオンガイドを含む、
先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項57】
複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスと制御システムとを含む質量分析計の前記制御システムによって実行可能なコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムは、前記制御システムに
少なくともいくつかの第1のイオンが前記イオンガイドを通って移送される際に前記第1のイオンが電子移動解離および/またはプロトン移動反応によってフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを推定、決定または測定し、そしてそれに応答して、前記第1のイオンが前記イオンガイドを通過する際の前記第1のイオンの移送および/またはフラグメンテーションの度合いおよび/または電荷減少の度合いに影響する1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減するようにさせるように構成される、
コンピュータプログラム。
【請求項58】
コンピュータによって実行可能な命令を含むコンピュータによって読み取り可能な媒体であって、前記命令は、複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスを含む質量分析計の制御システムによって実行可能なように構成され、前記コンピュータプログラムは、前記制御システムに
少なくともいくつかの第1のイオンが前記イオンガイドを通って移送される際に前記第1のイオンが電子移動解離および/またはプロトン移動反応によってフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを推定、決定または測定し、そしてそれに応答して、前記第1のイオンが前記イオンガイドを通過する際の前記第1のイオンの移送および/またはフラグメンテーションの度合いおよび/または電荷減少の度合いに影響する1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減するようにさせるように構成される、
コンピュータによって読み取り可能な媒体。
【請求項59】
前記コンピュ−タによって読み取り可能な媒体は、(i)ROM、(ii)EAROM、(iii)EPROM、(iv)EEPROM、(v)フラッシュメモリ、および(vi)光学ディスクからなる群から選択される、請求項58に記載のコンピュータによって読み取り可能な媒体。
【請求項60】
複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスを準備するステップと、
少なくともいくつかの第1のイオンが前記イオンガイドを通って移送される際に前記第1のイオンが電子移動解離および/またはプロトン移動反応によってフラグメンテーションおよび/または電荷減少される度合いを推定、決定または測定し、そしてそれに応答して、前記第1のイオンが前記イオンガイドを通過する際の前記第1のイオンの移送および/またはフラグメンテーションの度合いおよび/または電荷減少の度合いに影響する1つ以上のパラメータを変更、変化、増大または低減するステップと
を含む質量分析の方法。
【請求項61】
複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスと、
制御システムであって、
(i)前記イオンガイドから出現する第1の電荷状態を有する1つ以上の親イオンまたは前駆体イオンの強度または存在度I1を決定し、
(ii)前記イオンガイドから出現し、かつ電荷が減少した親イオンまたは前駆体イオンに対応し、かつ前記第1の電荷状態より低い第2の電荷状態を有する1つ以上のイオンの強度または存在度I2を決定し、および
(iii)前記電極に印加される1つ以上の過渡DC電圧の速度および/または振幅を変更して、比I1/I2または比I2/I1を時間が経過しても実質的に一定の値Rに維持する
ように構成および適合される制御システムと
を含む質量分析計。
【請求項62】
複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスと、
制御システムであって、
(i)前記イオンガイドから出現する第1の電荷状態を有する1つ以上の親イオンまたは前駆体イオンの強度または存在度I1を決定し、
(ii)前記イオンガイドから出現し、かつフラグメンテーションされた親イオンまたは前駆体イオンに対応する1つ以上のイオンの強度または存在度I2を決定し、および
(iii)前記電極に印加される1つ以上の過渡DC電圧の速度および/または振幅を変更して、比I1/I2または比I2/I1を時間が経過しても実質的に一定の値Rに維持する
ように構成および適合される制御システムと
を含む質量分析計。
【請求項63】
前記値Rは、(i)<0.1、(ii)0.1〜0.2、(iii)0.2〜0.3、(iv)0.3〜0.4、(v)0.4〜0.5、(vi)0.5〜0.6、(vii)0.6〜0.7、(viii)0.7〜0.8、(ix)0.8〜0.9、(x)0.9〜1.0、(xi)1.0〜1.1、(xii)1.1〜1.2、(xiii)1.2〜1.3、(xiv)1.3〜1.4、(xv)1.4〜1.5、(xvi)1.5〜1.6、(xvii)1.6〜1.7、(xviii)1.7〜1.8、(xix)1.8〜1.9、(xx)1.9〜2.0、(xxi)2.0〜2.1、(xxii)2.1〜2.2、(xxiii)2.2〜2.3、(xxiv)2.3〜2.4、(xxv)2.4〜2.5、(xxvi)2.5〜2.6、(xxvii)2.6〜2.7、(xxviii)2.7〜2.8、(xxix)2.8〜2.9、(xxx)2.9〜3.0、(xxxi)3.0〜3.1、(xxxii)3.1〜3.2、(xxxiii)3.2〜3.3、(xxxiv)3.3〜3.4、(xxxv)3.4〜3.5、(xxxvi)3.5〜3.6、(xxxvii)3.6〜3.7、(xxxviii)3.7〜3.8、(xxxix)3.8〜3.9、(xl)3.9〜4.0、(xli)4.0〜4.1、(xlii)4.1〜4.2、(xliii)4.2〜4.3、(xliv)4.3〜4.4、(xlv)4.4〜4.5、(xlvi)4.5〜4.6、(xlvii)4.6〜4.7、(xlviii)4.7〜4.8、(xlix)4.8〜4.9、(l)4.9〜5.0、および(li)>5.0からなる群から選択される、
請求項61または62に記載の質量分析計。
【請求項64】
複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスを準備するステップと、
前記イオンガイドから出現する第1の電荷状態を有する1つ以上の親イオンまたは前駆体イオンの強度または存在度I1を決定するステップと、
前記イオンガイドから出現し、かつ電荷が減少した親イオンまたは前駆体イオンに対応し、かつ前記第1の電荷状態より低い第2の電荷状態を有する1つ以上のイオンの強度または存在度I2を決定するステップと、
前記電極に印加される1つ以上の過渡DC電圧の速度および/または振幅を変更して、比I1/I2または比I2/I1を時間が経過しても実質的に一定の値Rに維持するステップと
を含む質量分析の方法。
【請求項65】
複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスを準備するステップと、
前記イオンガイドから出現する第1の電荷状態を有する1つ以上の親イオンまたは前駆体イオンの強度または存在度I1を決定するステップと、
前記イオンガイドから出現し、かつフラグメンテーションされた親イオンまたは前駆体イオンに対応する1つ以上のイオンの強度または存在度I2を決定するステップと、
前記電極に印加される1つ以上の過渡DC電圧の速度および/または振幅を変更して、比I1/I2または比I2/I1を時間が経過しても実質的に一定の値Rに維持するステップと
を含む質量分析の方法。
【請求項66】
前記値Rは、(i)<0.1、(ii)0.1〜0.2、(iii)0.2〜0.3、(iv)0.3〜0.4、(v)0.4〜0.5、(vi)0.5〜0.6、(vii)0.6〜0.7、(viii)0.7〜0.8、(ix)0.8〜0.9、(x)0.9〜1.0、(xi)1.0〜1.1、(xii)1.1〜1.2、(xiii)1.2〜1.3、(xiv)1.3〜1.4、(xv)1.4〜1.5、(xvi)1.5〜1.6、(xvii)1.6〜1.7、(xviii)1.7〜1.8、(xix)1.8〜1.9、(xx)1.9〜2.0、(xxi)2.0〜2.1、(xxii)2.1〜2.2、(xxiii)2.2〜2.3、(xxiv)2.3〜2.4、(xxv)2.4〜2.5、(xxvi)2.5〜2.6、(xxvii)2.6〜2.7、(xxviii)2.7〜2.8、(xxix)2.8〜2.9、(xxx)2.9〜3.0、(xxxi)3.0〜3.1、(xxxii)3.1〜3.2、(xxxiii)3.2〜3.3、(xxxiv)3.3〜3.4、(xxxv)3.4〜3.5、(xxxvi)3.5〜3.6、(xxxvii)3.6〜3.7、(xxxviii)3.7〜3.8、(xxxix)3.8〜3.9、(xl)3.9〜4.0、(xli)4.0〜4.1、(xlii)4.1〜4.2、(xliii)4.2〜4.3、(xliv)4.3〜4.4、(xlv)4.4〜4.5、(xlvi)4.5〜4.6、(xlvii)4.6〜4.7、(xlviii)4.7〜4.8、(xlix)4.8〜4.9、(l)4.9〜5.0、および(li)>5.0からなる群から選択される、
請求項64または65に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図13E】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図13E】
【公表番号】特表2011−517052(P2011−517052A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504520(P2011−504520)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【国際出願番号】PCT/GB2009/000902
【国際公開番号】WO2009/127808
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(504142097)マイクロマス ユーケー リミテッド (57)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【国際出願番号】PCT/GB2009/000902
【国際公開番号】WO2009/127808
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(504142097)マイクロマス ユーケー リミテッド (57)
【Fターム(参考)】
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