説明

電子素子及びその製造方法

【課題】 ナノチューブを用いた新規の電子素子を提供する。
【解決手段】 N型半導体の特性を有するソース電極6及びドレイン電極7が両端に設けられた、P型半導体の特性を有するカーボンナノチューブ1と、カーボンナノチューブ1を挟んで対向するように設けられるバイアス電極2及び制御電極3と、を備える電子素子である。バイアス電極2と制御電極3とに異なる電圧を印加することで、ソース電極6とドレイン電極7との間にチャネルが形成されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子素子及びその製造方法に関し、特に、カーボンナノチューブのようなナノチューブを用いた新規の電子素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノチューブを用いたエレクトロニクス技術について注目が集まっている。特に、カーボンによるナノチューブであるカーボンナノチューブを用いたエレクトロニクス技術についての研究が進んでいる。
カーボンナノチューブは、炭素原子がハニカム形状に配列されて構成されるグラファイトシートを円筒状に巻いた構造を有している。カーボンナノチューブには、一層のグラファイトシートからなる単層カーボンナノチューブ、複数のグラファイトシートからなる多層カーボンナノチューブがある。単層カーボンナノチューブは、一般に断面の直径が1〜2nmであり、多層ナノチューブは、断面の直径が数nmから数十nmである。いずれのカーボンナノチューブも長さは様々であり、数μmを長さを有するものもある。
【0003】
カーボンナノチューブの電気的特性は、直径や螺旋度(chirality:カイラリティ)によって変化する。つまり、直径や、グラファイトシートを巻く際に、円筒の軸に対してハニカム形状をまっすぐ巻くか傾けて巻くかにより、カーボンナノチューブの導電性が大きく変化する。このような直径及びカイラリティの組み合わせにより、カーボンナノチューブは、金属、N型半導体、或いはP型半導体と同じ電気的特性を有することができる。また、カーボンナノチューブは熱伝導性に優れている。そのために、電子素子にカーボンナノチューブに用いた場合、熱特性の優れた動作を示すことを期待されている。
【0004】
近年、このようなカーボンナノチューブを用いた電子素子、特にトランジスタ(以下、「CNTトランジスタ」という)が多数提案されている。そのほとんどは、従来からあるシリコンのトランジスタと同様の構成である。
【0005】
例えばCNTトランジスタは、カーボンナノチューブの両端にソース電極及びドレイン電極を設けて、カーボンナノチューブの軸に平行にゲート電極を設けた構成が基本的な構成となる。カーボンナノチューブは、N型半導体又はP型半導体の特性を有するものである。このようなCNTトランジスタのゲート電極に電圧を印加すると、カーボンナノチューブ内にチャネルが形成される。チャネルによりソース電極とドレイン電極とが導通状態になり、チャネル電流が流れ、CNTトランジスタがオン状態になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のCNTトランジスタは、ゲート電極に電圧が印加されると電界が発生する。、この電界によりカーボンナノチューブにチャネルが形成される。しかし電界は、カーボンナノチューブ内で均一に発生するものではない。例えば、カーボンナノチューブのドレイン電極及びソース電極の近傍では、各電極の影響で電界が均一にならない。そのために、トランジスタがオン状態であってもチャネル電流が均一にならず、完全動作にはならない。
また、現在提案されているCNTトランジスタのほとんどはシリコンのトランジスタと同様の構成で作成してあり、カーボンナノチューブの持つ特徴を十分に活かしたものとはいえない。
【0007】
本発明は、ナノチューブを用いた新規の電子素子及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決する本発明の電子素子は、第1の半導体の特性を有するナノチューブと、第2の半導体の特性を有し、前記ナノチューブの両端に設けられる電極と、前記ナノチューブを挟んで対向するように設けられる第1導体及び第2導体と、を備えている。この電子素子は、前記第1導体と前記第2導体とに異なる電圧を印加することで、前記ナノチューブの両端に設けられた電極間にチャネルが形成されるように構成されている。
【0009】
第1導体及び第2導体は、ナノチューブを挟んで対向するように設けられる。そのために第1導体及び第2導体に異なる電圧を印加することで発生する電界は、ナノチューブ内に略均一に発生するようになる。電界が略均一に発生するために、ナノチューブの両端に設けられた電極による影響が小さくなり、チャネルを流れるチャネル電流が均一になる。チャネル電流が均一になるために、この電子素子は完全動作を行うことができる。
【0010】
このような電子素子において、前記ナノチューブの両端に設けられた前記電極の少なくとも一方を、例えば、前記ナノチューブと一体に形成された、第2の半導体の特性を有するナノチューブにより構成するようにしてもよい。各電極は、従来の半導体で用いられるようなシリコンなどの素材を用いて構成することもできるが、このようにナノチューブと一体に形成することで、製造が容易になる。ナノチューブは、例えば直径を変えることにより、一体に形成されていても電気的特性を変化させることができる。
【0011】
前記第1導体及び前記第2導体は、例えば、前記ナノチューブの長さ以上の大きさで形成され、また、前記電界を前記ナノチューブの軸に対して垂直な方向に発生させるように構成される。第1導体及び第2導体は金属で構成することも可能であるが、例えば、前記第1導体及び前記第2導体の少なくとも一方を、金属の特性を有するナノチューブにより構成するようにしてもよい。
【0012】
このような電子装置において、第1の半導体の特性、第2の半導体の特性とは、電気的特性が、P型半導体の特性或いはN型半導体の特性を指している。第1の半導体の特性がP型半導体の特性であり、第2の半導体の特性がN型半導体の特性である場合、つまり、前記ナノチューブがP型半導体の特性を有するものであり、前記ナノチューブの両端に設けられた前記電極がN型半導体の特性を有するものである場合に、前記ナノチューブは、前記第1導体及び前記第2導体の相対的に高い電圧が印加される側に、前記チャネルが形成されるようになる。逆に、第1の半導体の特性がN型半導体の特性であり、第2の半導体の特性がP型半導体の特性である場合、つまり、前記ナノチューブがN型半導体の特性を有するものであり、前記ナノチューブの両端に設けられた前記電極がP型半導体の特性を有するものである場合に、前記ナノチューブは、前記第1導体及び前記第2導体の相対的に低い電圧が印加される側に、前記チャネルが形成されるようになる。
【0013】
本発明の電子素子の製造方法は、第1の半導体の特性を有するとともにその両端に第2の半導体の特性を有する電極が設けられたナノチューブを、このナノチューブの軸から見て直線上に3以上並ぶように形成する第1の段階と、所定の1のナノチューブを挟んで対向する2のナノチューブをそれぞれ導体に置き換える第2の段階と、を含んでいる。このような方法により、前記所定の1のナノチューブの両端に形成される電極間に、2の前記導体に異なる電圧を印加することでチャネルを形成する電子素子を製造することができる。電子素子は、例えばチャネルが形成されるか否かでスイッチングするスイッチ素子として用いることができる。
【0014】
前記第1の段階は、例えば、半導体基板上に金属触媒の薄膜を配置する段階と、4価の元素雰囲気で所定の温度に加熱して前記半導体基板上に3以上の第1ナノチューブを形成し、更にこの第1ナノチューブを、3価又は5価の一方の元素雰囲気で所定の温度に加熱して第2の半導体の特性を有するものに変化させる段階と、第2の半導体の特性を有する前記第1ナノチューブをマスクしておき、4価の元素雰囲気で所定の温度に加熱して前記第1ナノチューブに連続して第2ナノチューブを形成し、更にこの第2ナノチューブを、3価又は5価の他方の元素雰囲気で所定の温度に加熱して第1の半導体の特性を有するものに変化させる段階と、第2の半導体の特性を有する前記第1ナノチューブ及び第1の半導体の特性を有する前記第2ナノチューブをマスクしておき、4価の元素雰囲気で所定の温度に加熱して前記第2ナノチューブに連続して第3ナノチューブを形成し、更にこの第3ナノチューブを、3価又は5価の一方の元素雰囲気で所定の温度に加熱して第2の半導体の特性を有するものに変化させる段階と、を含んでいる。このような手順により形成された前記第1ナノチューブ及び前記第3ナノチューブを前記第2の半導体の特性を有する電極とし、前記第2ナノチューブを第1の半導体の特性を有する前記ナノチューブとして形成する。つまり、一端に設けられる第2の半導体の特性を有する電極、第1の半導体の特性を有するナノチューブ、他端に設けられる第2の半導体の特性を有する電極、の順に形成する。
【0015】
別の例として、ナノチューブを第1又は第2の半導体の特性を有するものとして形成しておき、選択的に、電極に当たる両端部分又は当該両端部分を除く部分を、第2又は第1の半導体の特性を有するものに変化させるようにしてもよい。
例えば、前記第1の段階が、半導体基板上に金属触媒の薄膜を配置する段階と、4価の元素雰囲気で所定の温度に加熱して前記半導体基板上に3以上の第4ナノチューブを形成し、更にこの第4ナノチューブを、3価又は5価の一方の元素雰囲気で所定の温度に加熱して第2の半導体の特性を有するものに変化させる段階と、第2の半導体の特性を有するものに変化した前記第4ナノチューブの前記電極に当たる両端部分をマスクしておき、前記第4ナノチューブのマスクされていない部分を、3価又は5価の他方の元素雰囲気で所定の温度に加熱して第1の半導体の特性を有するものに変化させる段階と、を含んでいる。このような手順により形成された前記第4ナノチューブの、前記両端部分を前記第2の半導体の特性を有する電極とし、そのほかの部分を第1の半導体の特性を有する前記ナノチューブとして形成する。
或いは、前記第1の段階が、半導体基板上に金属触媒の薄膜を配置する段階と、4価の元素雰囲気で所定の温度に加熱して前記半導体基板上に3以上の第5ナノチューブを形成し、更にこの第5ナノチューブを、3価又は5価の他方の元素雰囲気で所定の温度に加熱して第1の半導体の特性を有するものに変化させる段階と、第1の半導体の特性を有するものに変化した前記第5ナノチューブの前記電極に当たる両端部分を除く部分をマスクしておき、前記第5ナノチューブのマスクされていない部分を、3価又は5価の一方の元素雰囲気で所定の温度に加熱して第2の半導体の特性を有するものに変化させる段階と、を含んでいる。このような手順により形成された前記第5ナノチューブの、前記両端部分を前記第2の半導体の特性を有する電極とし、そのほかの部分を第1の半導体の特性を有する前記ナノチューブとして形成する。
【0016】
前記第2の段階は、例えば、前記2のナノチューブを除去する段階と、除去された後に導体を形成する段階と、により実現できる。また、前記第2の段階は、前記1のナノチューブをマスクする段階と、前記2のナノチューブを所定の元素雰囲気で所定の温度で加熱することで、導体に変化させる段階と、により実現することもできる。
【0017】
本発明の他の電子素子の製造方法は、半導体基板上に対して軸が垂直になるように、第1の半導体の特性を有するとともに、その両端に第2の半導体の特性を有する電極が設けられたナノチューブを、ナノチューブの軸から見て直線上に3以上並ぶように形成する第1の段階と、樹脂により前記ナノチューブを被覆して固定する第2の段階と、前記半導体基板を除去する第3の段階と、前記樹脂を一部除去して、前記ナノチューブの両端に設けられた前記電極を前記樹脂から露出させる第4の段階と、所定の1の前記ナノチューブを挟んで対向するように形成された2のナノチューブをそれぞれ導体に置き換える第5の段階と、前記ナノチューブの両端に設けられた前記電極及び2つの前記導体のそれぞれに端子を設ける第6の段階と、前記端子を絶縁体により被覆するとともに、前記樹脂を除去する第7の段階と、を含んでいる。このような方法より、前記所定の1のナノチューブの両端に形成される電極間に、2の前記導体に異なる電圧を印加することでチャネルを形成する電子素子を製造することができる。この電子装置は、ナノチューブと導体との間に間隙が設けられており、これにより絶縁されている。
【0018】
本発明の他の電子素子の製造方法は、半導体基板上に対して軸が垂直になるように、第1の半導体の特性を有するとともに、その両端に第2の半導体の特性を有する電極が設けられたナノチューブを、ナノチューブの軸から見て直線上に3以上並ぶように形成する第1の段階と、絶縁体により前記ナノチューブを被覆して固定する第2の段階と、前記半導体基板を除去する第3の段階と、前記絶縁体を一部除去して、前記ナノチューブの両端に設けられた前記電極を前記絶縁体から露出させる第4の段階と、所定の1の前記ナノチューブを挟んで対向するように形成された2のナノチューブをそれぞれ導体に置き換える第5の段階と、前記ナノチューブの両端に設けられた前記電極及び2つの前記導体のそれぞれに端子を設ける第6の段階と、を含んでいる。このような方法により、前記所定の1のナノチューブの両端に形成される電極間に、2の前記導体に異なる電圧を印加することでチャネルを形成する電子素子を製造することができる。この電子装置は、ナノチューブと導体とが絶縁体により絶縁されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0020】
<動作原理>
図1〜図5は、本発明の電子素子によるCNTトランジスタの動作原理を説明するための図である。このカーボンナノチューブ1は、P型半導体の特性を有するものである。
【0021】
図1では、カーボンナノチューブ1の軸に対して平行に、カーボンナノチューブ1を挟む位置に2つの電極が対向して配置される。本明細書では、一方の電極をバイアス電極2、他方の電極を制御電極3という。バイアス電極2及び制御電極3は、カーボンナノチューブ1の長さ以上の大きさで構成される。バイアス電極2には電源4の陰極が接続されており、制御電極3には電源4の陽極が接続されている。これによりバイアス電極2には電源4から負電圧が印加され、制御電極3には電源4から正電圧が印加される。なお本明細書では、バイアス電極2に印加される電圧をバイアス電圧、制御電極3に印加される電圧を制御電圧という。
【0022】
図2では、バイアス電極2及び制御電極3が板状に形成されており、対向する面が、カーボンナノチューブ1を挟んで平行になっている。図3では、バイアス電極2及び制御電極3のカーボンナノチューブ1側の面が、カーボンナノチューブの側面に沿った形状に形成される。このように、バイアス電極2及び制御電極3は、カーボンナノチューブ1の側面を挟んで対向するように配置されていればよい。バイアス電極2及び制御電極3とカーボンナノチューブ1との間は絶縁されている。例えば、単にバイアス電極2及び制御電極3とカーボンナノチューブ1との間に間隙を設けて構成してもよく、またバイアス電極2及び制御電極3とカーボンナノチューブ1との間にSiO等の絶縁体を挟むように構成してもよい。
【0023】
図4は、バイアス電極2及び制御電極3に電源4から電圧が印加された場合に発生する電界Eと、電界Eにより形成される反転層5とを表している。バイアス電極2に電源4から負電圧が印加され、制御電極3に電源4から正電圧が印加されると、制御電圧3からバイアス電極2に向かって電界Eが発生する。電界Eが発生すると、カーボンナノチューブ1内の電子がカーボンナノチューブ1の制御電極3側に移動する。これによりP型半導体の特性を有するカーボンナノチューブ1内に、N型半導体の特性を有する領域が形成される。カーボンナノチューブ1内で、電子が移動してN型半導体の特性を有することになった領域を反転層5という。バイアス電極2及び制御電極3は、カーボンナノチューブ1の長さと同じかそれ以上の長さで構成されるために、電界Eは、カーボンナノチューブ1の全体に対して平行に発生する。
【0024】
電源4の正負を逆に接続した場合、つまりバイアス電極2に正電圧、制御電圧3に負電圧が印加されると、電界Eはバイアス電極2から制御電極3の向きに発生する。これにより反転層5がカーボンナノチューブ1のバイアス電極2側に形成される。
バイアス電極2及び制御電極3に同じ電圧を印加した場合、バイアス電極2と制御電極3との間に電界Eは発生しない。そのために、カーボンナノチューブ1内の電子が移動せず、反転層5が形成されることはない。
【0025】
図5は、図1のカーボンナノチューブ1の両端にソース電極6及びドレイン電極7を設けた構成を表している。カーボンナノチューブ1はP型半導体の特性を有しており、ソース電極6及びドレイン電極7はN型半導体の特性を有している。
電源4からバイアス電極2及び制御電極3にそれぞれ異なる電圧が印加されると、図4に示すように電界Eが発生する。カーボンナノチューブ1には、電界Eの発生により、反転層が形成される。反転層は、カーボンナノチューブ1内に形成されるN型半導体の特性を有する領域である。反転層の形成により、ソース電極6とドレイン電極7とが導通状態になる。バイアス電極2及び制御電極3に同じ電圧が印加されると、電界Eが発生しないので反転層が形成されない。その結果、ソース電極6とドレイン電極7とが導通状態にならない。
【0026】
このように、バイアス電極2及び制御電極3に印加する電圧により、カーボンナノチューブ1に反転層5が形成されるか否か、また反転層5が形成される場合にそれがカーボンナノチューブ1のバイアス電極2側か或いは制御電極3側かが決まる。また、カーボンナノチューブ1の両端にソース電極及びドレイン電極を設けると、バイアス電極2及び制御電極3に印加する電圧により、ソース電極とドレイン電極との間が導通状態になるか否かが決まる。このようなカーボンナノチューブ1の性質を利用して、スイッチング素子やCNTトランジスタ等の電子素子を実現することができる。
【0027】
以上の説明では、カーボンナノチューブ1がP型半導体の特性を持つものとして説明したが、N型半導体の特性を有するものであっても、同様に、バイアス電極2及び制御電極3に印加する電圧によって反転層5を形成することができる。この場合の反転層5は、正孔によって負電圧が印加される電極側に形成される。反転層5は、N型半導体の特性を有するカーボンナノチューブ内のP型半導体の特性を有する領域に形成される。
【0028】
<トランジスタの構成>
図6(a)、(b)は、このようなカーボンナノチューブ1の特性を利用して構成された、CNTトランジスタの一例を表す図である。このカーボンナノチューブ1も図1と同様にP型半導体の特性を有するものである。本実施形態に用いられるカーボンナノチューブは、長さが1μm〜1mm(10−6〜10−3m)であり、直径が0.5nm〜100nm(10−9〜10−7m)である。しかし、カーボンナノチューブの大きさはこれに限定されるものではなく、上記の動作原理で説明したような動作を行うものであれば、本発明の電子素子に用いることが可能である。また材質も、カーボンに限定する必要がなく、カーボン以外の材質、例えばホウ素系の材質を用いたナノチューブであっても、本発明の電子素子に用いることが可能である。
【0029】
図6(a)のCNTトランジスタでは、カーボンナノチューブ1の両端にN型半導体によるソース電極6及びドレイン電極7が設けられる。ソース電極6及びドレイン電極7がN型半導体の場合には、N型半導体の特性を有するカーボンナノチューブにより形成してもよく、またシリコンなどの他の素材によるN型半導体を用いて形成してもよい。ソース電極6にはソース端子6aが設けられる。ドレイン電極7にはドレイン端子7aが設けられる。
【0030】
バイアス電極2及び制御電極3は、ソース電極6、カーボンナノチューブ1、及びドレイン電極7を足した長さと同じ大きさに構成される。バイアス電極2にはバイアス端子2aが設けられ、制御電極3には制御端子3aが設けられる。バイアス電極2及び制御電極3は導電性の材質で形成されており、例えば、金属、或いは金属の特性を有するカーボンナノチューブなどを用いることができる。斜線部分はSiOなどにより形成された絶縁体8である。ソース端子6aは絶縁体8を貫通してソース電極6に接続されており、ドレイン端子7aは絶縁体8を貫通してドレイン電極7に接続されている。
【0031】
図6(b)は、CNTトランジスタの別の構成例を表す図である。図6(a)のCNTトランジスタとは、バイアス端子2a及び制御端子3aが設けられる場所が異なり、また、カーボンナノチューブ1とバイアス電極2、制御電極3との間の絶縁体が設けられていない点が異なる。ソース端子6aは絶縁体8を貫通してソース電極6に接続されており、ドレイン端子7aは絶縁体8を貫通してドレイン電極7に接続されており、バイアス端子2aは絶縁体8を貫通してバイアス電極2に接続されており、制御端子3aは絶縁体8を貫通して制御電極3に接続されている。
【0032】
図6(a)、(b)に示すように、カーボンナノチューブ1とバイアス電極2及び制御電極3との間は絶縁される。カーボンナノチューブ1とバイアス電極2及び制御電極3との間には、SiOのような絶縁体を設けてもよいが、絶縁耐電圧の関係から、不活性ガスの充填、或いは真空にしてもよい。
【0033】
図7〜図10は、図6(b)のCNTトランジスタの動作を説明するための図である。なお、図6(a)のCNTトランジスタも同様の動作を行うので、ここでは説明を省略する。
【0034】
図7、図8は、図6(b)のCNTトランジスタを動作させるために2つの電源を接続した図である。このCNTトランジスタは、バイアス端子2aに第1電源VDD1の陽極が接続され、制御端子3aに第1電源VDD1の陰極が接続されている。これにより第1電源VDD1から正電圧がバイアス電極2に印加され、負電圧が制御電極3に印加されるようになっている。またCNTトランジスタは、ソース端子6aに第2電源VDD2の陰極が接続され、ドレイン端子7aに第2電源VDD2の陽極が接続されている。そのために第2電源VDD2から正電圧がドレイン電極7に印加され、負電圧がソース電極6に印加されるようになっている。
【0035】
第1電源VDD1により、バイアス電極2から制御電極3に向かって電界Eが発生する。電界Eが発生することにより、カーボンナノチューブ1内の電子がバイアス電極2側に移動する。電子の移動により、図8に示すように、カーボンナノチューブ1のバイアス電極2側に反転層5が形成される。反転層5は、N型半導体の特性を有する。反転層5、ソース電極6、及びドレイン電極7はN型半導体の特性を有するので、反転層5がチャネルとなってソース電極6とドレイン電極7とが導通状態になる。導通状態になることで、カーボンナノチューブ1にチャネルが形成されてドレイン電流が流れる。
【0036】
図9、図10は、図7、図8の図から第1電源VDD1の極性を逆にして接続した場合の図である。第1電源VDD1から負電圧がバイアス電極2に印加され、正電圧が制御電極3に印加される。このように接続することで、制御電極3からバイアス電極2に向かって電界Eが発生する。電界Eが発生することにより、図10に示すように、反転層5によるチャネルがカーボンナノチューブ1の制御電極3側に形成され、ソース電極6とドレイン電極7とが導通状態になる。導通状態になることで、カーボンナノチューブ1にチャネルが形成されてドレイン電流が流れる。
【0037】
本明細書では、図8の導通状態をバイアス電極側の導通、図10の導通状態を制御電極側の導通という。これら2つの導通状態を用いて、相補型の回路を構成することが可能である。これについては後述する。バイアス電極側の導通及び制御電極側の導通のいずれも、電界Eの強さによってチャネルを形成する電子の量が決まる。ドレイン電流は、チャネルを形成する電子の量によって電流量が決まる。これによって、CNTトランジスタの電流増幅率が決まるようになっている。
【0038】
図6〜図10では、カーボンナノチューブ1がP型半導体の特性を有する場合について説明した。P型半導体の特性を有するので、電子がカーボンナノチューブ1内でキャリアとして働く。
【0039】
これ以外にも、N型半導体の特性を有するカーボンナノチューブもCNTトランジスタに用いることが可能である。この場合は、正孔がキャリアになる。また、ソース電極6及びドレイン電極7にP型半導体の特性を有するものが用いられる。キャリアが正孔になるために、第1電源VDD1の極性がP型半導体の特性を有するカーボンナノチューブとは逆になる。つまり、バイアス電極2から制御電極3に向かって電界Eが発生する場合に、制御電極側の導通になり、制御電極3からバイアス電極2に向かって電界Eが発生する場合に、バイアス電極側の導通になる。
【0040】
図7、9からわかるように、本実施形態のCNTトランジスタでは、カーボンナノチューブ1に対して平行な電界Eが発生する。そのために、ソース電極6とドレイン電極7との間でチャネルが形成されて、カーボンナノチューブ1にドレイン電流が流れる。これは完全動作である。従来のCNTトランジスタは、電流が完全に流れなくなることはないために不完全動作である。不完全動作は論理振幅の低下を招くとともに、動作速度の低下を招く。完全動作を行う本実施形態のCNTトランジスタでは、従来の不完全動作に伴う論理振幅の低下、動作速度の低下を防止することができる。
【0041】
<CNTトランジスタの製造方法>
図11〜図23は、本実施形態のCNTトランジスタを製造する手順の一例を表す図である。ここでは、N型半導体の特性を有するカーボンナノチューブをソース電極及びドレイン電極として備えた、P型半導体の特性を持つカーボンナノチューブによるCNTトランジスタを製造する場合について説明する。
【0042】
まず、アーク放電、レーザ蒸発、化学的気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)等の既知の方法で、単層のカーボンナノチューブを形成する。図11では、基板100上に鉄、コバルト、ニッケル等の微粒子による金属触媒(本実施形態では鉄触媒101a〜101c)の薄膜を配置しておき、CVDによりカーボンナノチューブを形成する。基板100は、例えば従来の半導体製造に用いられるシリコンを材料とした半導体基板である。ナノチューブは、4価の元素雰囲気で所定の温度、例えば600〜700℃に加熱することで形成することができる。本実施形態ではカーボンナノチューブを形成するので、炭素雰囲気で600〜700℃に加熱することで形成する。
カーボンナノチューブを5価の元素(例えばリン)雰囲気で600〜700℃に加熱することで、N型半導体の特性を有するものに変化させることができる。また、カーボンナノチューブを3価の元素(例えばガリウム)雰囲気で600〜700℃に加熱することで、P型半導体の特性を有するものに変化させることができる。
【0043】
図11では、炭素雰囲気で600〜700℃に加熱してカーボンナノチューブを形成した後に、このカーボンナノチューブを5価の元素雰囲気で600〜700℃に加熱することで、N型半導体の特性を有するカーボンナノチューブ102a〜102cを形成する。カーボンナノチューブ102a〜102cは、軸が基板100に対して垂直になるように形成される。また、カーボンナノチューブ102a〜102cは、軸から見ると直線上に並ぶように形成される。
【0044】
引き続きP型半導体の特性を有するカーボンナノチューブ103a〜103cを形成する(図12)。炭素雰囲気で600〜700℃に加熱して、既に形成されているカーボンナノチューブ102a〜102cの下に連続してカーボンナノチューブを形成した後に、このカーボンナノチューブを3価の元素雰囲気で600〜700℃に加熱することで、P型半導体の特性を有するカーボンナノチューブ103a〜103cを形成する。カーボンナノチューブ103a〜103cを形成する際には、既に形成されたカーボンナノチューブ102a〜102cをマスクしておく必要がある。マスクしなければ、電気的特性が変化するためである。また、カーボンナノチューブ103a〜103cを形成する前に、既に形成されたカーボンナノチューブ102a〜102cを適当な長さに成形するようにしてもよい。
【0045】
カーボンナノチューブ103a〜103cの形成が終了すると、引き続きN型半導体の特性を有するカーボンナノチューブ104a〜104cを形成する(図13)。炭素雰囲気で600〜700℃に加熱して、既に形成されているカーボンナノチューブ103a〜103cの下に連続してカーボンナノチューブを形成した後に、このカーボンナノチューブを5価の元素雰囲気で600〜700℃に加熱することで、N型半導体の特性を有するカーボンナノチューブ104a〜104cを形成する。カーボンナノチューブ104a〜104cを形成する際には、既に形成されたカーボンナノチューブ102a〜102c、103a〜103cをマスクしておく必要がある。マスクしなければ、電気的特性が変化するためである。また、カーボンナノチューブ104a〜104cを形成する前に、既に形成されたカーボンナノチューブ103a〜103cを適当な長さに成形するようにしてもよい。
【0046】
以上は、カーボンナノチューブを形成する一例であり、これ以外の方法でN型半導体の特性を有するカーボンナノチューブの間にP型半導体の特性を有するカーボンナノチューブを形成するようにしてもよい。例えば、N型半導体の特性を有するカーボンナノチューブを生成しておき、その中程をP型半導体の特性を有するように変化させてもよい。これは、炭素雰囲気で600〜700℃に加熱することでカーボンナノチューブを形成しておき、次いで、このカーボンナノチューブを5価の元素雰囲気で600〜700℃に加熱することでN型半導体の特性を有するカーボンナノチューブを形成する。その後、カーボンナノチューブの両端をマスクして3価の元素雰囲気で600〜700℃に加熱することで、中程をP型半導体の特性を有するように変化させることができる。また逆に、P型半導体の特性を有するカーボンナノチューブを生成しておき、その両端をN型半導体の特性を有するように変化させてもよい。この実施形態では、3つのカーボンナノチューブを形成したが、3以上であればいくつであってもよい。
【0047】
カーボンナノチューブの形成が終了すると、基板100上で、カーボンナノチューブを被覆するように樹脂(本実施形態ではレジスト105)を形成する(図14)。レジスト105の形成は、従来の半導体製造工程でも行われており、同様の工程により形成可能である。レジスト105によりカーボンナノチューブが固定される。
【0048】
次いで、基板100及び鉄触媒101a〜101cを除去する(図15)。これは、例えば研磨することで行うことができる。次いで、レジスト105を一部除去して、カーボンナノチューブ102a〜102c、104a〜104cをレジスト105から露出させる(図16)。レジストの除去は、従来の半導体製造工程でも行われており、同様の工程により可能である。
【0049】
次いで、レジスト105から露出しているカーボンナノチューブ102b、104bをレジスト106a、106bにより被覆する(図17)。次いで、カーボンナノチューブ102a、102c、103a、103c、104a、104cを除去する(図18)。カーボンナノチューブ102a、102c、103a、103c、104a、104cは、例えば、酸素雰囲気で約800℃以上に加熱することで、二酸化炭素となって除去される。カーボンナノチューブ102b、104bは、レジスト106a、106bにより被覆されているので、除去されずに残る。除去した部分は空洞になる。次いで、空洞部分に金属などの導体107、108を形成する(図19)。導体の形成は従来の半導体製造工程でも行われており、同様の工程により可能である。次いで、カーボンナノチューブ102b、104bを被覆しているレジスト106a、106bを除去する(図20)。この工程も、従来の半導体製造工程と同様の工程で可能である。
【0050】
次いで、カーボンナノチューブ102b、104b、導体107、108に端子109〜114を形成するとともに配線を行う(図21)。端子109〜114の形成及び配線は、従来の半導体製造工程でも行われており、同様の工程により可能である。次いで、端子109〜114を被覆するように絶縁体115、116を形成する(図22)。絶縁体115、116には、例えば、従来の半導体装置で用いられているSiOを用いることができる。次いで、レジスト105をすべて除去する(図23)。レジストの除去は、従来の半導体製造工程でも行われており、同様の工程により可能である。
【0051】
以上のような工程により、図6(b)に示すようなCNTトランジスタを製造することが可能である。カーボンナノチューブ103bがカーボンナノチューブ1に、カーボンナノチューブ102bがドレイン電極7に、カーボンナノチューブ104bがソース電極6に、導体107が制御電極3に、導体108がバイアス電極2に、それぞれ相当する。
【0052】
従来のCNTトランジスタは、カーボンナノチューブが基板に対して軸が平行になるように配置されている。これに対して、本実施形態のCNTトランジスタでは、カーボンナノチューブが基板に対して軸が垂直になるように配置される。本実施形態では、絶縁体115、116が基板に相当する。そのために、基板面の法線方向からCNTトランジスタを見た場合に、従来よりもCNTトランジスタの占有面積が小さくなり、集積度を向上させることができる。
【0053】
上記の製造手順では、カーボンナノチューブ1とバイアス電極2及び制御電極3との間が真空になる。図23のレジスト105を除去した後に、不活性ガスを充填してもよい。また、図14でレジスト105の代わりにSiOなどの絶縁体によりカーボンナノチューブを被覆しておき、図23の工程を省略して絶縁体を残すようにすると、カーボンナノチューブ1とバイアス電極2及び制御電極3との間に絶縁体を設けたCNTトランジスタを製造することができる。図18でカーボンナノチューブ102a、102c、103a、103c、104a、104cを除去せずに、金属の特性を有するものに変化させるようにすると、図19のように、導体107、108を空洞部分に形成する必要はなくなる。例えば、所定の元素雰囲気で所定の温度に加熱することで、図18でカーボンナノチューブ102a、102c、103a、103c、104a、104cを金属の特性を有するものに変化させる。
カーボンナノチューブ1がN型半導体の特性を有する場合には、図11〜図13の工程で、N型半導体の特性を有するカーボンナノチューブと、P型半導体の特性を有するカーボンナノチューブとを形成する順序を逆にするとよい。
【0054】
ソース電極及びドレイン電極をカーボンナノチューブにより形成する場合は、上記の手順になるが、シリコン等の従来の素材を用いた半導体により形成する場合は、例えば以下のような手順になる。
【0055】
まず、基板100上にはP型半導体の特性を有するカーボンナノチューブを形成する。その後、レジスト105でカーボンナノチューブを固定して、カーボンナノチューブの両端をレジスト105から露出させる。露出後にカーボンナノチューブの両端に、シリコン等の従来の素材を用いたN型半導体によりソース電極及びドレイン電極を形成する。この後は、図17以降の工程により、CNTトランジスタを製造することができる。なお、カーボンナノチューブがN型半導体の特性を有する場合には、シリコン等の従来の素材を用いたP型半導体によりソース電極及びドレイン電極を形成する。
【0056】
上記の製造手順では、図11〜図13において、カーボンナノチューブを基板100に対して軸が垂直になるように形成したが、これとは別に、軸が基板100に対して平行になるようにカーボンナノチューブを形成するようにしてもよい。例えば、図24に示すように基板100に対して垂直にシリコン壁100aを形成しておき、このシリコン壁100aの壁面に鉄触媒101a〜101cを配置させてCVDなどによりカーボンナノチューブを形成する。シリコン壁100aが図11〜図13の基板100の代わりになる。このように形成すると、図15に相当する工程で除去の対象となるのはシリコン壁100a及び鉄触媒101a〜101cになる。他の工程は上記と同様である。図25は、軸が基板100に対して平行になるようにカーボンナノチューブが形成されたCNTトランジスタを表している。
【0057】
<CNTトランジスタを用いた電子装置>
以上のようなCNTトランジスタを用いて構成した電子装置の例を以下に示す。この電子装置は、2電源で構成された相補型論理回路(インバータ回路、バッファ回路、NAND回路、3状態論理回路、XNOR回路)、オシレータ回路、メモリ回路等である。また電子装置で用いられるパストランジスタも示す。なお本発明はこれらの電子装置に限られるものでなく、使用するCNTトランジスタの種類、接続形態、電源の接続形態等により多種多様な電子装置を実現できるものである。
【0058】
[インバータ回路]
図26(a)、(b)は、いずれも本発明のCNTトランジスタにより構成された2電源のインバータ回路の構造を表す図である。図27は、このインバータ回路を表す図である。このインバータ回路は、第1CNTトランジスタ10、第2CNTトランジスタ20、第1電源VDD1、及び第2電源VDD2を備えている。
【0059】
図26(a)、図27のインバータ回路では、第1CNTトランジスタ10の制御端子11及び第2CNTトランジスタ20の制御端子21に、入力端子Vinが接続される。第1CNTトランジスタ10のドレイン端子14には、第1電源VDD1の陽極が接続され、バイアス端子13には、第2電源VDD2の陽極が接続される。第2CNTトランジスタ20のソース端子22には、第1電源VDD1の陰極が接続され、バイアス端子23には、第2電源VDD2の陰極が接続される。第1CNTトランジスタ10のソース端子12及び第2トランジスタ20のドレイン端子24には、出力端子Voutが接続される。
【0060】
このような構成により、第1電源VDD1の正電圧である電圧V1が第1CNTトランジスタ10のドレイン電極19に印加される。第1電源VDD1の負電圧である電圧G1が第2CNTトランジスタ20のソース電極25に印加される。第2電源VDD2の正電圧である電圧V2が、第1CNTトランジスタ10のバイアス電極16に印加される。第2電源VDD2の負電圧である電圧G2が第2CNTトランジスタ20のバイアス電極26に印加される。
【0061】
図28、図29は、このようなインバータ回路にハイ論理(電圧V2に等しい)が入力された場合を説明するための図である。
【0062】
第1CNTトランジスタ10は、入力端子Vinから制御端子11にハイ論理が入力されるために、制御電極17に電圧V2が印加される。第1CNTトランジスタ10のバイアス電極16には、第2電源VDD2から電圧V2が印加されている。制御電極17とバイアス電極16とに同じ電圧が印加されるために、第1CNTトランジスタ10には電界Eが発生しない。そのために、第1CNTトランジスタ10はオフ状態になる。
【0063】
第2CNTトランジスタ20は、入力端子Vinから制御端子21にハイ論理が入力されるために、制御電極27に電圧V2が印加される。第2CNTトランジスタ20のバイアス電極26には、第2電源VDD2から電圧G2が印加されている。制御電極27に印加される電圧がバイアス電極26に印加される電圧よりも大きいために、制御電極27からバイアス電極26に向かって電界Eが発生する。これにより、カーボンナノチューブ28は制御電極27側の導通の状態になり、第2CNTトランジスタ20がオン状態になる。
【0064】
第1CNTトランジスタ10がオフ状態、第2CNTトランジスタ20がオン状態になるために、出力端子Voutからは第2CNTトランジスタ20のソース電極25に印加される電圧が出力される。ここでは、ソース電極25に第1電源VDD1から電圧G1が印加されているので、出力端子Voutからは電圧G1がロー論理として出力されることになる。
【0065】
図30、図31は、このようなインバータ回路にロー論理(電圧G2に等しい)が入力された場合を説明するための図である。
【0066】
第1CNTトランジスタ10は、入力端子Vinから制御端子11にロー論理が入力されるために、制御電極17に電圧G2が印加される。第1CNTトランジスタ10のバイアス電極16には、第2電源VDD2から電圧V2が印加されている。バイアス電極16に印加される電圧が制御電極17に印加される電圧よりも大きいために、バイアス電極16から制御電極17に向かって電界Eが発生する。これにより、カーボンナノチューブ18はバイアス電極16側の導通の状態になり、第1CNTトランジスタ10がオン状態になる。
【0067】
第2CNTトランジスタ20は、入力端子Vinから制御端子21にロー論理が入力されるために、制御電極27に電圧G2が印加される。第2CNTトランジスタ20のバイアス電極26には、第2電源VDD2から電圧G2が印加されている。制御電極27とバイアス電極26とに同じ電圧が印加されるために、第2CNTトランジスタ20には電界Eが発生しない。そのために、第2CNTトランジスタ20はオフ状態になる。
【0068】
第1CNTトランジスタ10がオン状態、第2CNTトランジスタ20がオフ状態になるために、出力端子Voutからは第1CNTトランジスタ10のソース電極15に印加される電圧が出力される。ここでは、ソース電極15に第1電源VDD1から電圧V1が印加されているので、出力端子Voutからは電圧V1がハイ論理として出力されることになる。
【0069】
図28〜図31に示すように、入力端子Vinにハイ論理が入力されると出力端子Voutからロー論理が出力される。入力端子Vinにロー論理が入力されると出力端子Voutからハイ論理が出力される。このように、図26(a)、図27に示す回路はインバータの動作を行う。
【0070】
図26(b)のインバータ回路は、図26(a)のインバータ回路と比較して、第1CNTトランジスタ10の制御端子11及び第2CNTトランジスタ20の制御端子21を同一に構成している点が異なっている。しかしこのような構成でも、図26(a)と同様の動作を行うことができる。制御端子を同一に構成しているために、図26(a)よりも小さい構成で同じ機能を実現できる。そのために、図26(a)のインバータ回路よりも集積度が向上する。このインバータ回路は、以下のように動作する。
【0071】
入力端子Vinから制御端子11にハイ論理が入力されると、制御電極17に電圧V2が印加される。バイアス電極16には第2電源VDD2から電圧V2が印加され、バイアス電極26には第2電源VDD2から電圧G2が印加されている。制御電極17とバイアス電極16とに同じ電圧が印加され、制御電極17に印加される電圧がバイアス電極26に印加される電圧よりも大きいために、制御電極17からバイアス電極26に向かってのみ電界Eが発生する。これにより、カーボンナノチューブ28は制御電極17側の導通の状態になる。そのために、出力端子Voutからはカーボンナノチューブ28に設けられたソース電極25に印加される電圧が出力される。ここでは、ソース電極25に第1電源VDD1から電圧G1が印加されているので、出力端子Voutからは電圧G1がロー論理として出力されることになる。
【0072】
入力端子Vinから制御端子11にロー論理が入力されると、制御電極17に電圧G2が印加される。バイアス電極16には第2電源VDD2から電圧V2が印加され、バイアス電極26には第2電源VDD2から電圧G2が印加されている。制御電極17とバイアス電極26とに同じ電圧が印加され、バイアス電極16に印加される電圧が制御電極17に印加される電圧よりも大きいために、バイアス電極16から制御電極17に向かって電界Eが発生する。これにより、カーボンナノチューブ18はバイアス電極16側の導通の状態になる。そのために、出力端子Voutからはカーボンナノチューブ18に設けられたドレイン電極19に印加される電圧が出力される。ここでは、ドレイン電極19に第1電源VDD1から電圧V1が印加されているので、出力端子Voutからは電圧V1がロー論理として出力されることになる。
すなわち、インバータの動作を行う。
【0073】
[バッファ回路]
図32は、本実施形態のCNTトランジスタを用いて構成されたバッファ回路を表す図である。バッファ回路は、第2電源VDD2の接続方向を除いて、図26のインバータ回路と同じ回路構成である。このバッファ回路では、第2電源VDD2の陰極は第1CNTトランジスタ10のバイアス端子13に接続され、陽極は第2CNTトランジスタ20のバイアス端子23に接続される。第2電源VDD2の負電圧である電圧G2が第1CNTトランジスタ10のバイアス電極16に印加され、第2電源VDD2の正電圧である電圧V2が第2CNTトランジスタ20のバイアス電極26に印加される。
【0074】
このようなバッファ回路の入力端子Vinにハイ論理(電圧V2に等しい)が入力されると、第1CNTトランジスタ10がオン状態になる。第1CNTトランジスタ10のバイアス電極16に第2電源VDD2から電圧G2が印加され、入力端子Vinにより制御電極17に電圧V2が印加されることで制御電極17からバイアス電極16の向きへ電界Eが発生し、カーボンナノチューブ18にチャネルが形成されるためである。
また入力端子Vinにハイ論理が入力されることで、第2CNTトランジスタ20がオフ状態になる。第2CNTトランジスタ20のバイアス電極26に第2電源VDD2から電圧V2が印加され、入力端子Vinにより制御電極27に電圧V2が印加されるために電界Eが発生せず、カーボンナノチューブ28にチャネルが形成されないためである。
【0075】
第1CNTトランジスタ10がオン状態、第2CNTトランジスタ20がオフ状態になるために、出力端子Voutには第1CNTトランジスタ10のソース電極15に印加されている第1電源VDD1の正電圧である電圧V1がハイ論理として出力される。
【0076】
バッファ回路の入力端子Vinにロー論理(電圧G2に等しい)が入力されると、第1CNTトランジスタ10がオフ状態になる。第1CNTトランジスタ10のバイアス電極16に第2電源VDD2から電圧G2が印加され、入力端子Vinにより制御電極17に電圧G2が印加されるために電界Eが発生せず、カーボンナノチューブ18にチャネルが形成されないためである。
また入力端子Vinにロー論理が入力されることで、第2CNTトランジスタ20がオン状態になる。第2CNTトランジスタ20のバイアス電極26に第2電源VDD2から電圧V2が印加され、入力端子Vinにより制御電極27に電圧G2が印加されることでバイアス電極26から制御電極27に向かって電界Eが発生するために、カーボンナノチューブ28にチャネルが形成されるためである。
【0077】
第2CNTトランジスタ20がオン状態、第1CNTトランジスタ10がオフ状態になるために、出力端子Voutには第2CNTトランジスタ20のドレイン電極29に印加されている第1電源VDD1の負電圧である電圧G1がロー論理として出力される。
【0078】
[NAND論理回路]
図33は、本実施形態のCNTトランジスタを用いたNAND論理回路を表す図である。このNAND論理回路は、第1入力端子Vin1、第2入力端子Vin2、出力端子Vout、第1電源VDD1、第2電源VDD2、及び第1〜第4CNTトランジスタ10、20、30、40を備えている。
【0079】
第1CNTトランジスタ10の制御端子11及び第4CNTトランジスタ40の制御端子41には、第1入力端子Vin1が接続される。第1CNTトランジスタ10のドレイン端子14には、第1電源VDD1の陽極が接続され、バイアス端子13には、第2電源VDD2の陽極が接続される。第4CNTトランジスタ40のソース端子42には、第1電源VDD1の陰極が接続され、バイアス端子43には、第2電源VDD2の陰極が接続される。
【0080】
第2CNTトランジスタ20の制御端子21及び第3CNTトランジスタ30の制御端子31には、第2入力端子Vin2が接続される。第2CNTトランジスタ20のドレイン端子24には、第1電源VDD1の陽極が接続され、バイアス端子23には、第2電源VDD2の陽極が接続される。第3CNTトランジスタ30のソース端子32は、第4CNTトランジスタ40のドレイン端子44に接続され、バイアス端子33には、第2電源VDD2の陰極が接続される。
【0081】
第1CNTトランジスタ10のソース端子12、第2CNTトランジスタ20のソース端子22、及び第3CNTトランジスタ30のドレイン端子34は、出力端子Voutに接続される。
【0082】
このような構成により、第1電源VDD1の正電圧である電圧V1が、第1CNTトランジスタ10のドレイン電極19及び第2CNTトランジスタ20のドレイン電極29に印加される。第1電源VDD1の負電圧である電圧G1が、第4CNTトランジスタ40のソース電極45に印加される。第2電源VDD2の正電圧である電圧V2が、第1CNTトランジスタ10のバイアス電極16及び第2CNTトランジスタ20のバイアス電極26に印加される。第2電源VDD2の負電圧である電圧G2が、第3CNTトランジスタ30のバイアス電極36及び第4CNTトランジスタ40のバイアス電極46に印加される。
【0083】
第1入力端子Vin1にロー論理(電圧G2に等しい)が入力され、第2入力端子Vin2にロー論理(電圧G2に等しい)が入力されると、以下のような動作になる。
【0084】
第1CNTトランジスタ10は、第1入力端子Vin1から制御端子11にロー論理が入力されるために、制御電極17に電圧G2が印加される。第1CNTトランジスタ10のバイアス電極16には、第2電源VDD2から電圧V2が印加されている。バイアス電極16に印加される電圧が制御電極17に印加される電圧よりも大きいために、バイアス電極16から制御電極17に向かって電界Eが発生する。これによりカーボンナノチューブ18はバイアス電極16側の導通の状態になり、第1CNTトランジスタ10がオン状態になる。
【0085】
第2CNTトランジスタ20は、第1入力端子Vin2から制御端子21にロー論理が入力されるために、制御電極27に電圧G2が印加される。第2CNTトランジスタ20のバイアス電極26には、第2電源VDD2から電圧V2が印加されている。バイアス電極26に印加される電圧が制御電極27に印加される電圧よりも大きいために、バイアス電極26から制御電極27に向かって電界Eが発生する。これによりカーボンナノチューブ28はバイアス電極26側の導通の状態になり、第2CNTトランジスタ20がオン状態になる。
【0086】
第3CNTトランジスタ30は、第2入力端子Vin2から制御端子31にロー論理が入力されるために、制御電極37に電圧G2が印加される。第3CNTトランジスタ30のバイアス電極36には、第2電源VDD2から電圧G2が印加されている。制御電極37とバイアス電極36とに同じ電圧が印加されるために、第3CNTトランジスタ30には電界Eが発生しない。そのために、第3CNTトランジスタ30はオフ状態になる。
【0087】
第4CNTトランジスタ40は、第2入力端子Vin1から制御端子41にロー論理が入力されるために、制御電極47に電圧G2が印加される。第4CNTトランジスタ40のバイアス電極46には、第2電源VDD2から電圧G2が印加されている。制御電極47とバイアス電極46とに同じ電圧が印加されるために、第4CNTトランジスタ40には電界Eが発生しない。そのために、第4CNTトランジスタ40はオフ状態になる。
【0088】
第1、第2CNTトランジスタ10、20がオン状態、第3、第4CNTトランジスタ30、40がオフ状態になるために、出力端子Voutからは、第1CNTトランジスタ10のドレイン電極19に印加される電圧、又は第2CNTトランジスタ20のドレイン電極29に印加される電圧が出力される。ここでは、いずれのドレイン電極19、29にも第1電源VDD1から電圧V1が印加されているので、出力端子Voutからは電圧V1がハイ論理として出力されることになる。
【0089】
第1入力端子Vin1にロー論理(電圧G2に等しい)が入力され、第2入力端子Vin2にハイ論理(電圧V2に等しい)が入力されると、以下のような動作になる。
【0090】
第1CNTトランジスタ10は、第1入力端子Vin1から制御端子11にロー論理が入力されるために、制御電極17に電圧G2が印加される。第1CNTトランジスタ10のバイアス電極16には、第2電源VDD2から電圧V2が印加されている。バイアス電極16に印加される電圧が制御電極17に印加される電圧よりも大きいために、バイアス電極16から制御電極17に向かって電界Eが発生する。これによりカーボンナノチューブ18はバイアス電極16側の導通の状態になり、第1CNTトランジスタ10がオン状態になる。
【0091】
第2CNTトランジスタ20は、第1入力端子Vin2から制御端子21にハイ論理が入力されるために、制御電極27に電圧V2が印加される。第2CNTトランジスタ20のバイアス電極26には、第2電源VDD2から電圧V2が印加されている。制御電極27とバイアス電極26とに同じ電圧が印加されるために、第1CNTトランジスタ20には電界Eが発生しない。そのために、第2CNTトランジスタ20はオフ状態になる。
【0092】
第3CNTトランジスタ30は、第2入力端子Vin2から制御端子31にハイ論理が入力されるために、制御電極37に電圧V2が印加される。第3CNTトランジスタ30のバイアス電極36には、第2電源VDD2から電圧G2が印加されている。制御電極37に印加される電圧がバイアス電極36に印加される電圧よりも大きいために、制御電極37からバイアス電極36に向かって電界Eが発生する。これにより、カーボンナノチューブ38は制御電極37側の導通の状態になり、第3CNTトランジスタ30がオン状態になる。
【0093】
第4CNTトランジスタ40は、第2入力端子Vin1から制御端子41にロー論理が入力されるために、制御電極47に電圧G2が印加される。第4CNTトランジスタ40のバイアス電極46には、第2電源VDD2から電圧G2が印加されている。制御電極47とバイアス電極46とに同じ電圧が印加されるために、第4CNTトランジスタ40には電界Eが発生しない。そのために、第4CNTトランジスタ40はオフ状態になる。
【0094】
第1、第3CNTトランジスタ10、30がオン状態、第2、第4CNTトランジスタ20、40がオフ状態になるために、出力端子Voutからは、第1CNTトランジスタ10のドレイン電極19に印加される電圧が出力される。ここでは、ドレイン電極19に第1電源VDD1から電圧V1が印加されているので、出力端子Voutからは電圧V1がハイ論理として出力されることになる。
【0095】
第1入力端子Vin1にハイ論理(電圧V2に等しい)が入力され、第2入力端子Vin2にロー論理(電圧G2に等しい)が入力されると、以下のような動作になる。
【0096】
第1CNTトランジスタ10は、第1入力端子Vin1から制御端子11にハイ論理が入力されるために、制御電極17に電圧V2が印加される。第1CNTトランジスタ10のバイアス電極16には、第2電源VDD2から電圧V2が印加されている。制御電極17とバイアス電極16とに同じ電圧が印加されるために、第1CNTトランジスタ10には電界Eが発生しない。そのために、第1CNTトランジスタ10はオフ状態になる。
【0097】
第2CNTトランジスタ20は、第1入力端子Vin2から制御端子21にロー論理が入力されるために、制御電極27に電圧G2が印加される。第2CNTトランジスタ20のバイアス電極26には、第2電源VDD2から電圧V2が印加されている。バイアス電極26に印加される電圧が制御電極27に印加される電圧よりも大きいために、バイアス電極26から制御電極27に向かって電界Eが発生する。これによりカーボンナノチューブ28はバイアス電極26側の導通の状態になり、第2CNTトランジスタ20がオン状態になる。
【0098】
第3CNTトランジスタ30は、第2入力端子Vin2から制御端子31にロー論理が入力されるために、制御電極37に電圧G2が印加される。第3CNTトランジスタ30のバイアス電極36には、第2電源VDD2から電圧G2が印加されている。制御電極37とバイアス電極36とに同じ電圧が印加されるために、第3CNTトランジスタ30には電界Eが発生しない。そのために、第3CNTトランジスタ30はオフ状態になる。
【0099】
第4CNTトランジスタ40は、第2入力端子Vin1から制御端子41にハイ論理が入力されるために、制御電極47に電圧V2が印加される。第4CNTトランジスタ40のバイアス電極46には、第2電源VDD2から電圧G2が印加されている。制御電極47に印加される電圧がバイアス電極46に印加される電圧よりも大きいために、制御電極47からバイアス電極46に向かって電界Eが発生する。これにより、カーボンナノチューブ48は制御電極47側の導通の状態になり、第4CNTトランジスタ40がオン状態になる。
【0100】
第2、第4CNTトランジスタ20、40がオン状態、第1、第3CNTトランジスタ10、30がオフ状態になるために、出力端子Voutからは、第2CNTトランジスタ20のドレイン電極29に印加される電圧が出力される。ここでは、ドレイン電極29に第1電源VDD1から電圧V1が印加されているので、出力端子Voutからは電圧V1がハイ論理として出力されることになる。
【0101】
第1入力端子Vin1にハイ論理(電圧V2に等しい)が入力され、第2入力端子Vin2にハイ論理(電圧V2に等しい)が入力されると、以下のような動作になる。
【0102】
第1CNTトランジスタ10は、第1入力端子Vin1から制御端子11にハイ論理が入力されるために、制御電極17に電圧V2が印加される。第1CNTトランジスタ10のバイアス電極16には、第2電源VDD2から電圧V2が印加されている。制御電極17とバイアス電極16とに同じ電圧が印加されるために、第1CNTトランジスタ10には電界Eが発生しない。そのために、第1CNTトランジスタ10はオフ状態になる。
【0103】
第2CNTトランジスタ20は、第1入力端子Vin2から制御端子21にハイ論理が入力されるために、制御電極27に電圧V2が印加される。第2CNTトランジスタ20のバイアス電極26には、第2電源VDD2から電圧V2が印加されている。制御電極27とバイアス電極26とに同じ電圧が印加されるために、第1CNTトランジスタ20には電界Eが発生しない。そのために、第2CNTトランジスタ20はオフ状態になる。
【0104】
第3CNTトランジスタ30は、第2入力端子Vin2から制御端子31にハイ論理が入力されるために、制御電極37に電圧V2が印加される。第3CNTトランジスタ30のバイアス電極36には、第2電源VDD2から電圧G2が印加されている。制御電極37に印加される電圧がバイアス電極36に印加される電圧よりも大きいために、制御電極37からバイアス電極36に向かって電界Eが発生する。これにより、カーボンナノチューブ38は制御電極37側の導通の状態になり、第3CNTトランジスタ30がオン状態になる。
【0105】
第4CNTトランジスタ40は、第2入力端子Vin1から制御端子41にハイ論理が入力されるために、制御電極47に電圧V2が印加される。第4CNTトランジスタ40のバイアス電極46には、第2電源VDD2から電圧G2が印加されている。制御電極47に印加される電圧がバイアス電極46に印加される電圧よりも大きいために、制御電極47からバイアス電極46に向かって電界Eが発生する。これにより、カーボンナノチューブ48は制御電極47側の導通の状態になり、第4CNTトランジスタ40がオン状態になる。
【0106】
第1、第2CNTトランジスタ10、20がオフ状態、第3、第4CNTトランジスタ30、40がオン状態になるために、出力端子Voutからは第4CNTトランジスタ40のソース電極45に印加される電圧が、第3CNTトランジスタ30を介して出力される。ここでは、ソース電極45に第1電源VDD1から電圧G1が印加されているので、出力端子Voutからは電圧G1がロー論理として出力されることになる。
【0107】
以上のように、このNAND論理回路は、NAND論理を満たすように動作する。
【0108】
[3状態論理回路]
図34は、本実施形態のCNTトランジスタを用いた3状態論理回路を表す図である。この3状態論理回路は、入力端子Vin、制御入力端子Vcont、出力端子Vout、第1電源VDD1、第2電源VDD2、及び第1〜第4CNTトランジスタ10、20、30、40を備えている。
【0109】
第1CNTトランジスタ10の制御端子11及び第2CNTトランジスタ20の制御端子21には、入力端子Vinが接続される。第1CNTトランジスタ10のドレイン端子14には、第1電源VDD1の陽極が接続され、第2CNTトランジスタ20のソース端子22には、第1電源VDD1の陰極が接続される。第1CNTトランジスタ10のソース端子12及び第2CNTトランジスタ20のドレイン端子24には、出力端子Voutが接続される。
【0110】
第3CNTトランジスタ30の制御端子31及び第4CNTトランジスタ40の制御端子41には、制御入力端子Vcontが接続される。第3CNTトランジスタ30のドレイン端子34には、第2電源VDD2の陽極が接続され、第4CNTトランジスタ40のソース端子42には、第2電源VDD2の陰極が接続される。第3CNTトランジスタ30のバイアス端子33及び第4CNTトランジスタ40のバイアス端子43には、第1電源VDD1の陰極が接続される。
【0111】
第1CNTトランジスタ10のバイアス端子13と第3CNTトランジスタ30のソース端子32とは接続されており、第2CNTトランジスタ20のバイアス端子23と第4CNTトランジスタ40のドレイン端子44とは接続されている。
【0112】
このような構成により、第1電源VDD1の正電圧である電圧V1が、第1CNTトランジスタ10のドレイン電極19に印加される。第1電源VDD1の負電圧である電圧G1が、第2CNTトランジスタ20のソース電極25、第3CNTトランジスタ30のバイアス電極36、及び第4CNTトランジスタ40のバイアス電極46に印加される。第2電源VDD2の正電圧である電圧V2が、第3CNTトランジスタ30のドレイン電極39に印加される。第2電源VDD2の負電圧である電圧G2が、第4CNTトランジスタ40のソース電極45に印加される。
第1CNTトランジスタ10のバイアス電極16には、第3CNTトランジスタ30がオン状態になった場合にのみ、第3CNTトランジスタ30のソース電極35と同じ電圧が印加されるようになっている。第2CNTトランジスタ20のバイアス電極26には、第4CNTトランジスタ40がオン状態なった場合のみ、第4CNTトランジスタ40のドレイン電極49と同じ電圧が印加されるようになっている。
第3CNTトランジスタ30のバイアス電極36及び第4CNTトランジスタ40のバイアス電極46には、同じ第1電源VDD1の負電圧が印加されるので、これらの電極を同一のものとして形成してもよい。
【0113】
入力端子Vinにロー論理(電圧G2に等しい)が入力され、制御入力端子Vcontにロー論理(電圧G1に等しい)が入力されると、以下のような動作になる。
【0114】
第3CNTトランジスタ30は、制御入力端子Vcontにロー論理が入力されるために、制御電極37に電圧G1が印加される。第3CNTトランジスタ40のバイアス電極36には、第1電源VDD1から電圧G1が印加されている。制御電極37とバイアス電極36とに同じ電圧が印加されるために、第3CNTトランジスタ30には電界Eが発生しない。そのために、第3CNTトランジスタ30はオフ状態になる。
【0115】
第4CNTトランジスタ40は、制御入力端子Vcontにロー論理が入力されるために、制御電極47に電圧G1が印加される。第4CNTトランジスタ40のバイアス電極46には、第1電源VDD1から電圧G1が印加されている。制御電極47とバイアス電極46とに同じ電圧が印加されるために、第4CNTトランジスタ40には電界Eが発生しない。そのために、第4CNTトランジスタ40はオフ状態になる。
【0116】
第1CNTトランジスタ10のバイアス電極16には、第3CNTトランジスタ30のドレイン電極39と同じの電圧が印加される。第3CNTトランジスタ30のソース電極35は、第3CNTトランジスタ30がオン状態の場合に、電位がドレイン電極39の電位と等しくなり、オフ状態の場合にハイ・インピーダンス状態になる。そのために、第1CNTトランジスタ10のバイアス電極16もハイ・インピーダンス状態になる。第2CNTトランジスタ20のバイアス電極26も、同様に、第4CNTトランジスタ40がオフ状態の場合は、ハイ・インピーダンス状態になる。
【0117】
本実施形態のCNTトランジスタは、バイアス電極と制御電極とに印加される電圧により、オン状態、オフ状態が切り替わるようになっているために、いずれかの電極がハイ・インピーダンス状態の場合には、ドレイン端子からの出力もハイ・インピーダンス状態になる。
【0118】
つまり制御入力端子Vcontにロー論理が入力されると、第3、第4CNTトランジスタ30、40がオフ状態になり、第1CNTトランジスタ10のソース端子14及び第2CNTトランジスタ20のドレイン端子24からの出力がハイ・インピーダンス状態になるので、出力端子Voutの出力もハイ・インピーダンス状態になる。
【0119】
入力端子Vinにロー論理(電圧G2に等しい)が入力され、制御入力端子Vcontにハイ論理(電圧V1に等しい)が入力されると、以下のような動作になる。
【0120】
第3CNTトランジスタ30は、制御入力端子Vcontにハイ論理が入力されるために、制御電極37に電圧V1が印加される。第3CNTトランジスタ30のバイアス電極36には、第1電源VDD1から電圧G1が印加されている。制御電極37に印加される電圧がバイアス電極36に印加される電圧よりも大きいために、制御電極37からバイアス電極36に向かって電界Eが発生する。これにより、カーボンナノチューブ38は制御電極37側の導通の状態になり、第3CNTトランジスタ30がオン状態になる。
【0121】
第3CNTトランジスタ30がオン状態になることで、第3CNTトランジスタ30のソース電極35には、ドレイン電極39に印加されている電圧と同じ電圧V2が印加されることになる。第3CNTトランジスタ30のソース電極35と第1CNTトランジスタ10のバイアス電極16とは接続されているので、第1CNTトランジスタ10のバイアス電極16にも電圧V2が印加される。
【0122】
第4CNTトランジスタ40は、制御入力端子Vcontにハイ論理が入力されるために、制御電極47に電圧V1が印加される。第4CNTトランジスタ40のバイアス電極46には、第1電源VDD1から電圧G1が印加されている。制御電極47に印加される電圧がバイアス電極46に印加される電圧よりも大きいために、制御電極47からバイアス電極46に向かって電界Eが発生する。これにより、カーボンナノチューブ48は制御電極47側の導通の状態になり、第4CNTトランジスタ40がオン状態になる。
【0123】
第4CNTトランジスタ40がオン状態になることで、第4CNTトランジスタ40のドレイン電極49には、ソース電極45に印加されている電圧と同じ電圧G2が印加されることになる。第4CNTトランジスタ40のドレイン電極49と第2CNTトランジスタ20のバイアス電極26とは接続されているので、第2CNTトランジスタ20のバイアス電極26にも電圧G2が印加される。
【0124】
第1CNTトランジスタ10は、入力端子Vinから制御端子11にロー論理が入力されるために、制御電極17に電圧G2が印加される。第1CNTトランジスタ10のバイアス電極16には、第3CNTトランジスタ30から電圧V2が印加されている。バイアス電極16に印加される電圧が制御電極17に印加される電圧よりも大きいために、バイアス電極16から制御電極17に向かって電界Eが発生する。これにより、カーボンナノチューブ18はバイアス電極16側の導通の状態になり、第1CNTトランジスタ10がオン状態になる。
【0125】
第2CNTトランジスタ20は、入力端子Vinから制御端子21にロー論理が入力されるために、制御電極27に電圧G2が印加される。第2CNTトランジスタ20のバイアス電極26には、第4CNTトランジスタ30から電圧G2が印加されている。制御電極27とバイアス電極26とに同じ電圧が印加されるために、第2CNTトランジスタ20には電界Eが発生しない。そのために、第2CNTトランジスタ20はオフ状態になる。
【0126】
第1CNTトランジスタ10がオン状態、第2CNTトランジスタ20がオフ状態になるために、出力端子Voutからは、第1CNTトランジスタ10のドレイン電極19に印加される電圧が出力される。ここでは、ドレイン電極19に第1電源VDD1から電圧V1が印加されているので、出力端子Voutからは電圧V1がハイ論理として出力されることになる。
【0127】
入力端子Vinにハイ論理(電圧V2に等しい)が入力され、制御入力端子Vcontにロー論理(電圧G1に等しい)が入力されると、以下のような動作になる。
【0128】
上述の通り、制御入力端子Vcontにロー論理が入力されると、第3、第4CNTトランジスタ30、40がオフ状態になる。そのために、第1、第2CNTトランジスタ10、20のバイアス電極16、26がハイ・インピーダンス状態になる。バイアス電極16、26がハイ・インピーダンス状態になるので、第1CNTトランジスタ10のソース端子12及び第2CNTトランジスタ20のドレイン端子24からの出力がハイ・インピーダンス状態になる。よって、出力端子Voutの出力もハイ・インピーダンス状態になる。
【0129】
入力端子Vinにハイ論理(電圧V2に等しい)が入力され、制御入力端子Vcontにハイ論理(電圧V1に等しい)が入力されると、以下のような動作になる。
【0130】
上述の通り、制御入力端子Vcontにハイ論理が入力されると、第3、第4CNTトランジスタ30、40がオン状態になる。そのために、第1CNTトランジスタ10のバイアス電極16に電圧V2が印加され、第2CNTトランジスタ20のバイアス電極26に電圧G2が印加される。
【0131】
第1CNTトランジスタ10は、入力端子Vinから制御端子11にハイ論理が入力されるために、制御電極17に電圧V2が印加される。第1CNTトランジスタ10のバイアス電極16には、第3CNTトランジスタ30から電圧V2が印加されている。制御電極17とバイアス電極16とに同じ電圧が印加されるために、第1CNTトランジスタ10には電界Eが発生しない。そのために、第1CNTトランジスタ10はオフ状態になる。
【0132】
第2CNTトランジスタ20は、入力端子Vinから制御端子21にハイ論理が入力されるために、制御電極27に電圧V2が印加される。第2CNTトランジスタ20のバイアス電極26には、第4CNTトランジスタ30から電圧G2が印加されている。バイアス電極26に印加される電圧が制御電極27に印加される電圧よりも大きいために、制御電極27からバイアス電極26に向かって電界Eが発生する。これにより、カーボンナノチューブ28は制御電極27側の導通の状態になり、第2CNTトランジスタ20がオン状態になる。
【0133】
第2CNTトランジスタ20がオン状態、第1CNTトランジスタ10がオフ状態になるために、出力端子Voutからは、第2CNTトランジスタ20のソース電極25に印加される電圧が出力される。ここでは、ソース電極25に第1電源VDD1から電圧G1が印加されているので、出力端子Voutからは電圧G1がロー論理として出力されることになる。
【0134】
以上のように、この3状態論理回路は、制御入力端子Vcontにハイ論理が入力されている場合に、入力端子Vinの入力が論理反転して出力端子Voutに出力され、制御入力端子Vcontにロー論理が入力されている場合に出力端子Voutの出力がハイ・インピーダンス状態になる。つまり、入力に応じて、ハイ論理、ロー論理、ハイ・インピーダンスの3状態が出力されるようになっている。
【0135】
[オシレータ回路]
図35は、本実施形態のCNTトランジスタを用いたオシレータ回路を表す図である。このオシレータ回路は、入力端子Vin、出力端子Vout、第1電源VDD1、第2電源VDD2、及び第1〜第4CNTトランジスタ10、20、30、40を備えている。
【0136】
第1CNTトランジスタ10の制御端子11及び第2CNTトランジスタ20の制御端子21には、入力端子Vinが接続される。第1CNTトランジスタ10のドレイン端子14には、第1電源VDD1の陽極が接続され、バイアス端子13には、第2電源VDD2の陽極が接続される。第2CNTトランジスタ20のソース端子22には、第1電源VDD1の陰極が接続され、バイアス端子23には、第2電源VDD2の陰極が接続される。第1CNTトランジスタ10のソース端子12と第2CNTトランジスタ20のドレイン端子24とは接続されており、第3CNTトランジスタ30の制御端子31及び第4CNTトランジスタ40の制御端子41に接続されている。
【0137】
第3CNTトランジスタ30のドレイン端子34には、第2電源VDD2の陽極が接続され、バイアス端子33には、第1電源VDD1の陰極が接続される。第4CNTトランジスタ40のソース端子42には、第2電源VDD2の陰極が接続され、バイアス端子43には、第1電源VDD1の陽極が接続される。第3CNTトランジスタ30のソース端子32と第4CNTトランジスタ40のドレイン端子44とは接続されており、出力端子Voutに接続されている。また、第3CNTトランジスタ30のソース端子32及び第4CNTトランジスタ40のドレイン端子44は、第1CNTトランジスタ10の制御端子11及び第2CNTトランジスタ20の制御端子21に接続されている。
【0138】
このような構成により、第1電源VDD1の正電圧である電圧V1が、第1CNTトランジスタ10のドレイン電極19及び第4CNTトランジスタ40のバイアス電極46に印加される。第1電源VDD1の負電圧である電圧G1が、第2CNTトランジスタ20のソース電極25及び第3CNTトランジスタ30のバイアス電極36に印加される。第2電源VDD2の正電圧である電圧V2が、第1CNTトランジスタ10のバイアス電極16及び第3CNTトランジスタ30のドレイン電極39に印加される。第2電源VDD2の負電圧である電圧G2が、第2CNTトランジスタ20のバイアス電極26及び第4CNTトランジスタ40のソース電極45に印加される。
【0139】
入力端子Vinをハイ論理(電圧V2に等しい)及びロー論理(電圧G2に等しい)のいずれかに決めることで、この回路は発振するようになる。ここでは、ハイ論理を入力する場合について説明する。
【0140】
第1CNTトランジスタ10は、入力端子Vinから制御端子11にハイ論理が入力されると、制御電極17に電圧V2が印加される。第1CNTトランジスタ10のバイアス電極16には、第2電源VDD2から電圧V2が印加されている。制御電極17とバイアス電極16とに同じ電圧が印加されるために、第1CNTトランジスタ10には電界Eが発生しない。そのために、第1CNTトランジスタ10はオフ状態になる。
【0141】
第2CNTトランジスタ20は、入力端子Vinから制御端子21にハイ論理が入力されると、制御電極27に電圧V2が印加される。第2CNTトランジスタ20のバイアス電極26には、第2電源VDD2から電圧G2が印加されている。制御電極27に印加される電圧がバイアス電極26に印加される電圧よりも大きいために、制御電極27からバイアス電極26に向かって電界Eが発生する。これにより、カーボンナノチューブ28は制御電極27側の導通の状態になり、第2CNTトランジスタ20がオン状態になる。
【0142】
第1CNTトランジスタ10がオフ状態、第2CNTトランジスタ20がオン状態になるために、第3、第4CNTトランジスタ30、40の制御電極37、47には第2CNTトランジスタ20のドレイン電極29に印加されている電圧と同じ電圧が印加されることになる。第2CNTトランジスタ20のドレイン電極29には、ソース電極25に印加されている電圧と同じ電圧が印加される。第2CNTトランジスタ20のソース電極25には電圧G1が印加されているので、第3、第4CNTトランジスタ30、40の制御電極37、47には電圧G1が印加されることになる。
【0143】
第3CNTトランジスタ30は、第2CNTトランジスタ20により制御電極37に電圧G1が印加される。第3CNTトランジスタ30のバイアス電極36には、第1電源VDD1から電圧G1が印加されている。制御電極37とバイアス電極36とに同じ電圧が印加されるために、第3CNTトランジスタ30には電界Eが発生しない。そのために、第3CNTトランジスタ30はオフ状態になる。
【0144】
第4CNTトランジスタ40は、第2CNTトランジスタ20により制御電極47に電圧G1が印加される。第4CNTトランジスタ40のバイアス電極46には、第1電源VDD1から電圧V1が印加されている。バイアス電極46に印加される電圧が制御電極47に印加される電圧よりも大きいために、バイアス電極46から制御電極47に向かって電界Eが発生する。これにより、カーボンナノチューブ48はバイアス電極46側の導通の状態になり、第4CNTトランジスタ40がオン状態になる。
【0145】
第3CNTトランジスタ30がオフ状態、第4CNTトランジスタ40がオン状態になるために、出力端子Voutからは第4CNTトランジスタ40のソース電極45に印加される電圧が出力される。ここでは、ソース電極45に第2電源VDD2から電圧G2が印加されているので、出力端子Voutからは電圧G2がロー論理として出力されることになる。出力端子Voutから出力される電圧G2は、第1、第2CNTトランジスタ10、20の制御電極17、27にも印加される。
【0146】
第1、第2CNTトランジスタ10、20は、電圧G2が入力されると、先ほどとは逆に、第1CNTトランジスタ10がオン状態になり、第2CNTトランジスタ20がオフ状態になる。これにより、第3、第4CNTトランジスタ30、40の制御電極37、47に、第1CNTトランジスタ10のドレイン電極19に印加されている電圧V1が、第1CNTトランジスタ10のソース電極15を介して印加される。
【0147】
第3、第4CNTトランジスタ30、40は、電圧V1が入力されると、先ほどとは逆に、第3CNTトランジスタ30がオン状態になり、第4CNTトランジスタ40がオフ状態になる。これにより、出力端子Voutからは電圧V2がハイ論理として出力される。出力端子Voutから出力される電圧V2は、第1、第2CNTトランジスタ10、20の制御電極17、27にも印加される。
【0148】
このように、このオシレータ回路は、入力端子Vinの最初の状態をハイ論理、ロー論理のいずれかに決めてやることで、出力端子Voutからハイ論理とロー論理とが交互に出力されるととになる。つまり、発振することになる。
【0149】
[スタティックメモリ回路]
図36は、本実施形態のCNTトランジスタを用いたスタティックメモリ回路を表す図である。スタティックメモリ回路は、図35のオシレータ回路と似た回路構成であり、第3CNTトランジスタ30のバイアス端子33に第1電源VDD1の陽極が接続され、第4CNTトランジスタ40のバイアス端子43に第1電源VDD1の陰極が接続される点で異なる。そのために、第3CNTトランジスタ30のバイアス電極36に電圧V1が印加され、第4CNTトランジスタ40のバイアス電極46に電圧G1が印加される。
【0150】
入力端子Vinからハイ論理(電圧V2に等しい)及びロー論理(電圧G2に等しい)のいずれかを入力すると、この回路はその論理を保持する。ここでは、ハイ論理を入力する場合について説明する。
【0151】
第1CNTトランジスタ10は、入力端子Vinから制御端子11にハイ論理が入力されると、制御電極17に電圧V2が印加される。第1CNTトランジスタ10のバイアス電極16には、第2電源VDD2から電圧V2が印加されている。制御電極17とバイアス電極16とに同じ電圧が印加されるために、第1CNTトランジスタ10には電界Eが発生しない。そのために、第1CNTトランジスタ10はオフ状態になる。
【0152】
第2CNTトランジスタ20は、入力端子Vinから制御端子21にハイ論理が入力されると、制御電極27に電圧V2が印加される。第2CNTトランジスタ20のバイアス電極26には、第2電源VDD2から電圧G2が印加されている。制御電極27に印加される電圧がバイアス電極26に印加される電圧よりも大きいために、制御電極27からバイアス電極26に向かって電界Eが発生する。これにより、カーボンナノチューブ28は制御電極27側の導通の状態になり、第2CNTトランジスタ20がオン状態になる。
【0153】
第1CNTトランジスタ10がオフ状態、第2CNTトランジスタ20がオン状態になるために、第3、第4CNTトランジスタ30、40の制御電極37、47には第2CNTトランジスタ20のドレイン電極29に印加されている電圧と同じ電圧が印加されることになる。第2CNTトランジスタ20のドレイン電極29には、ソース電極25に印加されている電圧と同じ電圧が印加される。第2CNTトランジスタ20のソース電極25には電圧G1が印加されているので、第3、第4CNTトランジスタ30、40の制御電極37、47には電圧G1が印加されることになる。
【0154】
第3CNTトランジスタ30は、第2CNTトランジスタ20により制御電極37に電圧G1が印加される。第3CNTトランジスタ30のバイアス電極36には、第1電源VDD1から電圧V1が印加されている。バイアス電極36に印加される電圧が制御電極37に印加される電圧よりも大きいために、バイアス電極36から制御電極37に向かって電界Eが発生する。これにより、カーボンナノチューブ38はバイアス電極36側の導通の状態になり、第3CNTトランジスタ30がオン状態になる。
【0155】
第4CNTトランジスタ40は、第2CNTトランジスタ20により制御電極47に電圧G1が印加される。第4CNTトランジスタ40のバイアス電極46には、第1電源VDD1から電圧G1が印加されている。制御電極47とバイアス電極46とに同じ電圧が印加されるために、第4CNTトランジスタ40には電界Eが発生しない。そのために、第4CNTトランジスタ40はオフ状態になる。
【0156】
第3CNTトランジスタ30がオン状態、第4CNTトランジスタ40がオフ状態になるために、出力端子Voutからは第3CNTトランジスタ30のドレイン電極39に印加される電圧が出力される。ここでは、ドレイン電極39に第2電源VDD2から電圧V2が印加されているので、出力端子Voutからは電圧V2がハイ論理として出力されることになる。出力端子Voutから出力される電圧V2は、第1、第2CNTトランジスタ10、20の制御電極17、27にも印加される。
【0157】
第1、第2CNTトランジスタ10、20は、再び電圧V2が制御電極17、27に印加される。そのために、同じ動作を繰り返すことになる。つまりこの回路は、一度入力Vinに入力されたハイ論理を保持することになる。ロー論理が入力される場合も、オン状態、オフ状態になるCNTトランジスタが入れ替わって、同様の動作を行い、ロー論理を保持する。このように、この回路は2つの電源が供給される限り入力された論理を保持するので、スタティックメモリ回路として働く。
【0158】
[XNOR回路]
図37は、本実施形態のCNTトランジスタを用いたXNOR論理回路を表す図である。このXNOR論理回路は、第1入力端子Vin1、第2入力端子Vin2、出力端子Vout、電源VDD、第1、第2CNTトランジスタ10、20、及びインバータ回路50を備えている。インバータ回路50は、図27に示すようなCNTトランジスタを用いたものでもよく、また、従来からあるCMOS回路によるものでもよい。
【0159】
インバータ回路50の入力には、入力端子Vinが接続される。インバータ回路50の出力は、第1CNTトランジスタ10の制御端子11に接続される。第1CNTトランジスタ10のドレイン端子14には、電源VDDの陽極が接続され、バイアス端子13には、第2入力端子Vin2が接続される。第2CNTトランジスタ20の制御端子21には、第1入力端子Vin1が接続され、ソース端子22には電源VDDの陰極が接続され、バイアス端子23には、第2入力端子Vin2が接続される。第1CNTトランジスタ10のソース端子12及び第2CNTトランジスタ20のドレイン端子24は、出力端子Voutに接続される。
【0160】
このような構成により、第1電源VDD1の正電圧である電圧V1が、第1CNTトランジスタ10のドレイン電極19に印加される。第1電源VDD1の負電圧である電圧G1が、第2CNTトランジスタ20のソース電極25に印加される。
【0161】
第1入力端子Vin1にロー論理(電圧G2)が入力され、第2入力端子Vin2にロー論理(電圧G2)が入力されると、以下のような動作になる。
【0162】
第1CNTトランジスタ10は、第1入力端子Vin1からの入力がインバータ回路50により反転して入力されるので、制御端子11にハイ論理が入力され、制御電極17に電圧V2が印加される。第2入力端子Vin2からバイアス端子13にロー論理が入力されるためにバイアス電極16には電圧G2が印加される。制御電極17に印加される電圧がバイアス電極16に印加される電圧よりも大きいために、制御電極17からバイアス電極16に向かって電界Eが発生する。これにより、カーボンナノチューブ18は制御電極17側の導通の状態になり、第1CNTトランジスタ10がオン状態になる。
【0163】
第2CNTトランジスタ20は、第1入力端子Vin2から制御端子21にロー論理が入力されるために制御電極27に電圧G2が印加され、第2入力端子Vin2からバイアス端子23にロー論理が入力されるためにバイアス電極26に電圧G2が印加される。制御電極27とバイアス電極26とに同じ電圧が印加されるために、第2CNTトランジスタ20には電界Eが発生しない。そのために、第2CNTトランジスタ20はオフ状態になる。
【0164】
第1CNTトランジスタ10がオン状態、第2CNTトランジスタ20がオフ状態になるために、出力端子Voutからは第1CNTトランジスタ10のドレイン電極19に印加される電圧が出力される。ここでは、ドレイン電極19に電源VDD1から電圧V1が印加されているので、出力端子Voutからは電圧V1がハイ論理として出力されることになる。
【0165】
第1入力端子Vin1にロー論理(電圧G2)が入力され、第2入力端子Vin2にハイ論理(電圧V2)が入力されると、以下のような動作になる。
【0166】
第1CNTトランジスタ10は、第1入力端子Vin1からの入力がインバータ回路50により反転して入力されるので、制御端子11にハイ論理が入力され、制御電極17に電圧V2が印加される。第2入力端子Vin2からバイアス端子13にハイ論理が入力されるためにバイアス電極16に電圧V2が印加される。制御電極17とバイアス電極16とに同じ電圧が印加されるために、第1CNTトランジスタ10には電界Eが発生しない。そのために、第1CNTトランジスタ10はオフ状態になる。
【0167】
第2CNTトランジスタ20は、第1入力端子Vin2から制御端子21にロー論理が入力されるために制御電極27に電圧G2が印加され、第2入力端子Vin2からバイアス端子23にハイ論理が入力されるためにバイアス電極26に電圧V2が印加される。バイアス電極26に印加される電圧が制御電極27に印加される電圧よりも大きいために、バイアス電極26から制御電極27に向かって電界Eが発生する。これにより、カーボンナノチューブ28はバイアス電極26側の導通の状態になり、第2CNTトランジスタ20がオン状態になる。
【0168】
第1CNTトランジスタ10がオフ状態、第2CNTトランジスタ20がオン状態になるために、出力端子Voutからは第2CNTトランジスタ20のソース電極25に印加される電圧が出力される。ここでは、ソース電極25に電源VDD1から電圧G1が印加されているので、出力端子Voutからは電圧G1がロー論理として出力されることになる。
【0169】
第1入力端子Vin1にハイ論理(電圧V2)が入力され、第2入力端子Vin2にロー論理(電圧G2)が入力されると、以下のような動作になる。
【0170】
第1CNTトランジスタ10は、第1入力端子Vin1からの入力がインバータ回路50により反転して入力されるので、制御端子11にロー論理が入力され、制御電極17に電圧G2が印加される。第2入力端子Vin2からバイアス端子13にロー論理が入力されるためにバイアス電極16に電圧G2が印加される。制御電極17とバイアス電極16とに同じ電圧が印加されるために、第1CNTトランジスタ10には電界Eが発生しない。そのために、第1CNTトランジスタ10はオフ状態になる。
【0171】
第2CNTトランジスタ20は、第1入力端子Vin2から制御端子21にハイ論理が入力されるために制御電極27に電圧V2が印加され、第2入力端子Vin2からバイアス端子23にロー論理が入力されるためにバイアス電極26に電圧G2が印加される。制御電極27に印加される電圧がバイアス電極26に印加される電圧よりも大きいために、制御電極27からバイアス電極26に向かって電界Eが発生する。これにより、カーボンナノチューブ28は制御電極27側の導通の状態になり、第2CNTトランジスタ20がオン状態になる。
【0172】
第1CNTトランジスタ10がオフ状態、第2CNTトランジスタ20がオン状態になるために、出力端子Voutからは第2CNTトランジスタ20のソース電極25に印加される電圧が出力される。ここでは、ソース電極25に電源VDD1から電圧G1が印加されているので、出力端子Voutからは電圧G1がロー論理として出力されることになる。
【0173】
第1入力端子Vin1にハイ論理(電圧V2)が入力され、第2入力端子Vin2にハイ論理(電圧V2)が入力されると、以下のような動作になる。
【0174】
第1CNTトランジスタ10は、第1入力端子Vin1からの入力がインバータ回路50により反転して入力されるので、制御端子11にロー論理が入力され、制御電極17に電圧G2が印加される。第2入力端子Vin2からバイアス端子13にハイ論理が入力されるためにバイアス電極16に電圧V2が印加される。バイアス電極16に印加される電圧が制御電極17に印加される電圧よりも大きいために、バイアス電極16から制御電極17に向かって電界Eが発生する。これにより、カーボンナノチューブ18はバイアス電極16側の導通の状態になり、第1CNTトランジスタ10がオン状態になる。
【0175】
第2CNTトランジスタ20は、第1入力端子Vin2から制御端子21にハイ論理が入力されるために制御電極27に電圧V2が印加され、第2入力端子Vin2からバイアス端子23にハイ論理が入力されるためにバイアス電極26に電圧V2が印加される。制御電極27とバイアス電極26とに同じ電圧が印加されるために、第2CNTトランジスタ20には電界Eが発生しない。そのために、第2CNTトランジスタ20はオフ状態になる。
【0176】
第1CNTトランジスタ10がオン状態、第2CNTトランジスタ20がオフ状態になるために、出力端子Voutからは第1CNTトランジスタ10のドレイン電極19に印加される電圧が出力される。ここでは、ドレイン電極19に電源VDD1から電圧V1が印加されているので、出力端子Voutからは電圧V1がハイ論理として出力されることになる。
【0177】
以上のように、このXNOR論理回路は、XNOR論理を満たすように動作する。
【0178】
[パストランジスタ]
本実施形態のCNTトランジスタは、相補型の回路のみでなく、パストランジスタとしても有効に用いることができる。CNTトランジスタは完全動作を行うので、ソース端子に印加される電圧が変動する場合、ドレイン端子からその変動が正確に出力される。例えば、ソース端子にハイ論理、ロー論理が交互に入力される場合には、そのハイ論理、ロー論理の電位が正確にドレイン端子から出力される。
【0179】
図38は、CNTトランジスタをパストランジスタとして用いた場合の模式図である。
このパストランジスタは、ソース端子を入力端子51aとして用い、ドレイン端子を出力端子52aとして用いている。CNTトランジスタは、基板57上に、カーボンナノチューブ59の軸が基板57に対して平行になるように配置してある。CNTトランジスタは、SiOのような絶縁体58で覆われており、絶縁体58を貫通して、入力端子51a、出力端子52a、バイアス端子53、制御端子55が設けられる。
【0180】
入力端子51aはソース電極51に接続されており、出力端子52aはドレイン電極52に接続されており、バイアス端子53はバイアス電極54に接続されており、制御端子55は制御電極56に接続されている。
【0181】
バイアス端子53及び制御電極55に同じ電圧が印加される場合には、カーボンナノチューブ59にチャネルが形成されず、ソース電極51とドレイン電極5との間が導通しない。これによりCNTトランジスタはオフ状態になる。この場合、入力端子51aに印加される電圧は出力端子52aから出力されない。そのために、出力端子52aはハイ・インピーダンス状態になる。
【0182】
バイアス端子53及び制御電極55に異なる電圧が印加される場合には、カーボンナノチューブ59が制御電極56側の導通、或いはバイアス電極54側の導通の状態になるので、ソース電極51とドレイン電極5との間が導通する。これによりCNTトランジスタはオン状態になる。この場合、入力端子51aに印加される電圧は出力端子52aから出力される。入力端子51aにハイ論理が入力されると出力端子52aからハイ論理が出力され、入力端子51aにロー論理が入力されると出力端子52aからロー論理が出力される。
【0183】
以上のように、本実施形態のCNTトランジスタを、2電源を用いて様々に接続することで、多種多様な回路を実現できる。この実施形態のCNTトランジスタは、電子のみをキャリアとした単キャリアであるので、完全動作が実現され、論理が更に明確になる。CNTトランジスタは一種類のみしか使用していないので、P型トランジスタの特性を有するCNTトランジスタとN型のトランジスタの特性を有するCNTトランジスタとを用いることにより発生する従来の様々な問題が回避できる。また、電子の移動速度は、正孔の移動速度よりも速い。そのために、電子をキャリアとして用いると、正孔をキャリアとして用いる場合よりも高速に動作する。
なお、正孔をキャリアとして用いる場合、つまりカーボンナノチューブにN型半導体の特性を有するものを用いる場合でも、チャネルが形成される場所がバイアス電極側か制御電極側かが変わるだけで、同様に、多種多様な回路を実現できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】カーボンナノチューブを用いたトランジスタの動作原理の説明図。
【図2】カーボンナノチューブを用いたトランジスタの動作原理の説明図。
【図3】カーボンナノチューブを用いたトランジスタの動作原理の説明図。
【図4】カーボンナノチューブを用いたトランジスタの動作原理の説明図。
【図5】カーボンナノチューブを用いたトランジスタの動作原理の説明図。
【図6】図6(a)、(b)ともにCNTトランジスタの例示図。
【図7】図6(b)のCNTトランジスタの動作説明図。
【図8】図6(b)のCNTトランジスタの動作説明図。
【図9】図6(b)のCNTトランジスタの動作説明図。
【図10】図6(b)のCNTトランジスタの動作説明図。
【図11】CNTトランジスタを製造する手順を表す図。
【図12】CNTトランジスタを製造する手順を表す図。
【図13】CNTトランジスタを製造する手順を表す図。
【図14】CNTトランジスタを製造する手順を表す図。
【図15】CNTトランジスタを製造する手順を表す図。
【図16】CNTトランジスタを製造する手順を表す図。
【図17】CNTトランジスタを製造する手順を表す図。
【図18】CNTトランジスタを製造する手順を表す図。
【図19】CNTトランジスタを製造する手順を表す図。
【図20】CNTトランジスタを製造する手順を表す図。
【図21】CNTトランジスタを製造する手順を表す図。
【図22】CNTトランジスタを製造する手順を表す図。
【図23】CNTトランジスタを製造する手順を表す図。
【図24】CNTトランジスタを製造する手順を表す図。
【図25】CNTトランジスタを製造する手順を表す図。
【図26】図26(a)、(b)ともに本実施形態のCNTトランジスタを用いたインバータ回路の構造図。
【図27】本実施形態のCNTトランジスタを用いたインバータ回路を表す図。
【図28】本実施形態のインバータ回路にハイ論理が入力された場合の説明図。
【図29】本実施形態のインバータ回路にハイ論理が入力された場合の説明図。
【図30】本実施形態のインバータ回路にロー論理が入力された場合の説明図。
【図31】本実施形態のインバータ回路にロー論理が入力された場合の説明図。
【図32】本実施形態のCNTトランジスタを用いたバッファ回路を表す図。
【図33】本実施形態のCNTトランジスタを用いたNAND論理回路を表す図。
【図34】本実施形態のCNTトランジスタを用いた3状態論理回路を表す図。
【図35】本実施形態のCNTトランジスタを用いたオシレータ回路を表す図。
【図36】本実施形態のCNTトランジスタを用いたスタティックメモリ回路を表す図。
【図37】本実施形態のCNTトランジスタを用いたXNOR論理回路を表す図。
【図38】本実施形態のCNTトランジスタをパストランジスタとして用いた場合の模式図。
【符号の説明】
【0185】
1、18、28、38、48、59、102a〜102c、103a〜103c、104a〜104c カーボンナノチューブ
2、16、26、36、46、54 バイアス電極
2a、13、23、33、43、53 バイアス端子
3、17、27、37、47、56 制御電極
3a、11、21、31、41、55 制御端子
4 電源
5 反転層
6、15、25、35、45、51 ソース電極
6a、12、22、32、42 ソース端子
7、19、29、39、49、52 ドレイン電極
7a、14、24、34、44 ドレイン端子
8、58、115、116 絶縁体
10 第1CNTトランジスタ
20 第2CNTトランジスタ
30 第3CNTトランジスタ
40 第4CNTトランジスタ
50 インバータ
57、100 基板
100a シリコン壁
101a〜101c 鉄触媒
105、106a、106b レジスト
107、108 導体
109〜114 端子
Vin、51a 入力端子
Vin1 第1入力端子
Vin2 第2入力端子
Vout、52a 出力端子
Vcont 制御入力端子
VDD1 第1電源
VDD2 第2電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の半導体の特性を有するナノチューブと、
第2の半導体の特性を有し、前記ナノチューブの両端に設けられる電極と、
前記ナノチューブを挟んで対向するように設けられる第1導体及び第2導体と、を備えており、
前記第1導体と前記第2導体とに異なる電圧を印加することで、前記ナノチューブの両端に設けられた電極間にチャネルが形成されるように構成されている、
電子素子。
【請求項2】
前記ナノチューブの両端に設けられた前記電極の少なくとも一方は、前記ナノチューブと一体に形成された、第2の半導体の特性を有するナノチューブにより構成される、
請求項1記載の電子素子。
【請求項3】
前記第1導体及び前記第2導体は、前記ナノチューブの長さ以上の大きさで形成されており、前記電界を前記ナノチューブの軸に対して垂直な方向に発生させるように構成されている、
請求項1記載の電子素子。
【請求項4】
前記第1導体及び前記第2導体の少なくとも一方は、金属の特性を有するナノチューブにより構成されている、
請求項1記載の電子素子。
【請求項5】
前記ナノチューブはP型半導体の特性を有するものであり、
前記ナノチューブの両端に設けられた前記電極はN型半導体の特性を有するものであり、
前記ナノチューブは、前記第1導体及び前記第2導体の相対的に高い電圧が印加される側に、前記チャネルが形成されるようになっている、
請求項1記載の電子素子。
【請求項6】
前記ナノチューブはN型半導体の特性を有するものであり、
前記ナノチューブの両端に設けられた前記電極はP型半導体の特性を有するものであり、
前記ナノチューブは、前記第1導体及び前記第2導体の相対的に低い電圧が印加される側に、前記チャネルが形成されるようになっている、
請求項1記載の電子素子。
【請求項7】
第1の半導体の特性を有するとともにその両端に第2の半導体の特性を有する電極が設けられたナノチューブを、このナノチューブの軸から見て直線上に3以上並ぶように形成する第1の段階と、
所定の1のナノチューブを挟んで対向する2のナノチューブをそれぞれ導体に置き換える第2の段階と、を含み、
前記所定の1のナノチューブの両端に形成される電極間に、2の前記導体に異なる電圧を印加することでチャネルを形成する電子素子の製造方法。
【請求項8】
前記第1の段階は、
半導体基板上に金属触媒の薄膜を配置する段階と、
4価の元素雰囲気で所定の温度に加熱して前記半導体基板上に3以上の第1ナノチューブを形成し、更にこの第1ナノチューブを、3価又は5価の一方の元素雰囲気で所定の温度に加熱して第2の半導体の特性を有するものに変化させる段階と、
第2の半導体の特性を有する前記第1ナノチューブをマスクしておき、4価の元素雰囲気で所定の温度に加熱して前記第1ナノチューブに連続して第2ナノチューブを形成し、更にこの第2ナノチューブを、3価又は5価の他方の元素雰囲気で所定の温度に加熱して第1の半導体の特性を有するものに変化させる段階と、
第2の半導体の特性を有する前記第1ナノチューブ及び第1の半導体の特性を有する前記第2ナノチューブをマスクしておき、4価の元素雰囲気で所定の温度に加熱して前記第2ナノチューブに連続して第3ナノチューブを形成し、更にこの第3ナノチューブを、3価又は5価の一方の元素雰囲気で所定の温度に加熱して第2の半導体の特性を有するものに変化させる段階と、を含み、
前記第1ナノチューブ及び前記第3ナノチューブを前記第2の半導体の特性を有する電極とし、前記第2ナノチューブを第1の半導体の特性を有する前記ナノチューブとする、
請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
前記第1の段階は、
半導体基板上に金属触媒の薄膜を配置する段階と、
4価の元素雰囲気で所定の温度に加熱して前記半導体基板上に3以上の第4ナノチューブを形成し、更にこの第4ナノチューブを、3価又は5価の一方の元素雰囲気で所定の温度に加熱して第2の半導体の特性を有するものに変化させる段階と、
第2の半導体の特性を有するものに変化した前記第4ナノチューブの前記電極に当たる両端部分をマスクしておき、前記第4ナノチューブのマスクされていない部分を、3価又は5価の他方の元素雰囲気で所定の温度に加熱して第1の半導体の特性を有するものに変化させる段階と、を含み、
前記第4ナノチューブの、前記両端部分を前記第2の半導体の特性を有する電極とし、そのほかの部分を第1の半導体の特性を有する前記ナノチューブとする、
請求項7記載の製造方法。
【請求項10】
前記第1の段階は、
半導体基板上に金属触媒の薄膜を配置する段階と、
4価の元素雰囲気で所定の温度に加熱して前記半導体基板上に3以上の第5ナノチューブを形成し、更にこの第5ナノチューブを、3価又は5価の他方の元素雰囲気で所定の温度に加熱して第1の半導体の特性を有するものに変化させる段階と、
第1の半導体の特性を有するものに変化した前記第5ナノチューブの前記電極に当たる両端部分を除く部分をマスクしておき、前記第5ナノチューブのマスクされていない部分を、3価又は5価の一方の元素雰囲気で所定の温度に加熱して第2の半導体の特性を有するものに変化させる段階と、を含み、
前記第5ナノチューブの、前記両端部分を前記第2の半導体の特性を有する電極とし、そのほかの部分を第1の半導体の特性を有する前記ナノチューブとする、
請求項7記載の製造方法。
【請求項11】
前記第2の段階は、
前記2のナノチューブを除去する段階と、
除去された後に導体を形成する段階と、を含む、
請求項7記載の製造方法。
【請求項12】
前記第2の段階は、
前記1のナノチューブをマスクする段階と、
前記2のナノチューブを所定の元素雰囲気で所定の温度で加熱することで、導体に変化させる段階と、を含む、
請求項7記載の製造方法。
【請求項13】
半導体基板上に対して軸が垂直になるように、第1の半導体の特性を有するとともに、その両端に第2の半導体の特性を有する電極が設けられたナノチューブを、ナノチューブの軸から見て直線上に3以上並ぶように形成する第1の段階と、
樹脂により前記ナノチューブを被覆して固定する第2の段階と、
前記半導体基板を除去する第3の段階と、
前記樹脂を一部除去して、前記ナノチューブの両端に設けられた前記電極を前記樹脂から露出させる第4の段階と、
所定の1の前記ナノチューブを挟んで対向するように形成された2のナノチューブをそれぞれ導体に置き換える第5の段階と、
前記ナノチューブの両端に設けられた前記電極及び2つの前記導体のそれぞれに端子を設ける第6の段階と、
前記端子を絶縁体により被覆するとともに、前記樹脂を除去する第7の段階と、を含み、
前記所定の1のナノチューブの両端に形成される電極間に、2の前記導体に異なる電圧を印加することでチャネルを形成する電子素子を製造する方法。
【請求項14】
半導体基板上に対して軸が垂直になるように、第1の半導体の特性を有するとともに、その両端に第2の半導体の特性を有する電極が設けられたナノチューブを、ナノチューブの軸から見て直線上に3以上並ぶように形成する第1の段階と、
絶縁体により前記ナノチューブを被覆して固定する第2の段階と、
前記半導体基板を除去する第3の段階と、
前記絶縁体を一部除去して、前記ナノチューブの両端に設けられた前記電極を前記絶縁体から露出させる第4の段階と、
所定の1の前記ナノチューブを挟んで対向するように形成された2のナノチューブをそれぞれ導体に置き換える第5の段階と、
前記ナノチューブの両端に設けられた前記電極及び2つの前記導体のそれぞれに端子を設ける第6の段階と、を含み、
前記所定の1のナノチューブの両端に形成される電極間に、2の前記導体に異なる電圧を印加することでチャネルを形成する電子素子を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2008−135412(P2008−135412A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−77625(P2005−77625)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【Fターム(参考)】