電子素子基板
【課題】界面を酸素原子終端にすると、価電子バンドオフセットが下がると予想されている(第一原理計算による)が、それを具体的に達成するものを実現することを目的とした。
【解決手段】上記課題を解決するために、電子素子基板において、酸化膜の金属基板との界面が酸素原子により終端されていることを特徴とする手段を採用した。
【解決手段】上記課題を解決するために、電子素子基板において、酸化膜の金属基板との界面が酸素原子により終端されていることを特徴とする手段を採用した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属基板表面に酸化膜を有する電子素子基板に関する。
【背景技術】
【0002】
薄い酸化膜は、そのバンドギャップの大きさに応じて、優れたトンネルバリア層や電界効果素子の材料として、またはメモリーなどの半導体素子の材料として有用である。
そのうち、金属−トンネルバリア層−金属(MIM構造)をもつ電子放出源、金属−トンネルバリア層−センサー層(MIS)という構造を持ち、センサー層での電子授受をトンネルバリア層を通して金属層へ伝えるタイプのセンサー、MIM・MIS構造で、スピンを持つ材料を含む場合の磁気デバイスなどへ応用できる、アルミナ膜とその作製法について特許を申請した(特許文献1参照)。
その方法では、界面が酸化膜を構成する金属原子で終端されており(図1(a))、基板が銅やニッケルの場合、価電子バンドオフセット(正孔に対するショットキーバリア高さ)が大きいという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
界面を酸素原子終端にすると、この価電子バンドオフセットが下がると予想されている(第一原理計算による)が、それを具体的に達成するものがなかったので、本願発明は、それを課題として、実現することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の電子素子基板は、酸化膜の金属基板との界面が酸素原子により終端されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明者らは、金属基板との界面が酸素原子により終端された(図1(b))アルミナ極薄膜の作製に成功した。
界面終端原子の種類を決定付けるルールを見出し、金属基板と界面が酸素原子により終端された酸化膜の作製法として用いることを可能にした結果として得られた新たな電子素子基板である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】金属基板とアルミナ膜界面の界面終端の模式図。(a)アルミニウム原子終端、(b)酸素原子終端。
【図2】非特許文献1に示されたアルミニウム原子終端を持つ銅基板上のアルミナ膜極薄膜の光電子スペクトル。
【図3】実験番号11の熱処理前のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【図4】実験番号11の熱処理後のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【図5】実験番号1のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【図6】実験番号2のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【図7】実験番号3のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【図8】実験番号4のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【図9】実験番号5のアルミナ膜の高速反射電子線回折パターン。
【図10】実験番号5のアルミナ膜の走査型二次電子像。
【図11】実験番号6のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【図12】実験番号7のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【図13】実験番号8のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【図14】実験番号9のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【図15】実験番号10のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【図16】実験番号10のアルミナ膜の走査型二次電子像。
【図17】実験番号12の熱処理前のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【図18】実験番号12の熱処理後のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【図19】実験番号13の熱処理後のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の基板の材質は、銅(111)、ニッケル(111)を実施例で示したが、当該実施例による知見に基づき以下の理由により、同様の結晶表面構造をもつ金属元素、特に、fcc金属の(111)およびhcp金属の(0001)の面へ適用可能である。
本発明は、金属基板(M)と酸化物(AxOy)の界面が、熱力学的に以下の関係式を満たすことにより酸素原子により終端されることに立脚している。
酸化物の界面が酸素原子により終端されるということは、酸化物の極性面が金属基板上に成長することを意味している。酸化物の酸素終端面は、酸素が最密充填した構造をとる場合が多く、その場合表面は二次元的に6回対称性をもつ。したがって、熱力学的に以下の関係式を満たすならば、実施例としてあげた銅(111)、ニッケル(111)のほかに、6回対称性を持つfcc金属の(111)およびhcp金属の(0001)面上で成長すると考えられる。
【化1】
【0008】
本発明を製造するのに用いる製法では、酸化される金属元素の基板への蒸着中の雰囲気に酸素を存在させることが重要であり、その酸素分圧の適切な範囲は、以下のようにして定めることができる。
酸素分圧:上記の化学平衡式(2)で、以下の化2の条件を満たし、かつ、酸化物の金属元素が十分に酸化された状態で膜成長する酸素分圧範囲
アルミナ膜では5x10−8mbar〜6.6x10−7mbar。実施例では2x10−7mbarおよび5x10−7mbarであるが、公知文献のBに挙げた文献により、5x10−8mbar〜6.6x10−7mbarの酸素分圧範囲では、上記化学平衡式において酸素終端側で安定であることが示されている。
【化2】
【0009】
酸素分圧は、それぞれの酸化膜ごとに異なる、上記の化学平衡式で、前記化2の条件を満たし、かつ、酸化物の金属元素が十分に酸化された状態で膜成長する酸素分圧の範囲となる。 前記化学平衡式(2)の条件を満たし、かつ、酸化物の金属元素が十分に酸化された状態で膜成長する酸素分圧範囲とすることで、アルミ以外の蒸着可能な金属元素(例えば、マグネシウム、すず、亜鉛、ハフニウム、ジルコニウム、セリウム、クロミウム、ニッケルなど)を利用することができる。
アルミナ膜では、実施例に挙げた2x10−7mbarおよび5x10−7mbarのみでなく、5x10−8mbar〜6.6x10−7mbarの範囲で可能であると考えられる。
【0010】
成長温度
界面が熱力学的平衡に必要な原子移動が可能な温度以上で、酸化膜が昇華しない温度範囲であれば、基板へ酸化膜として蒸着することができる。
アルミナ膜では500℃以上、830℃以下。界面が熱力学的平衡に必要な原子移動が可能な温度以上であることが必要である。実施例から400℃では熱力学的平衡に達していないが500℃では熱力学的に平衡な界面が形成されていることがわかる。温度の上限はアルミナ膜が昇華しない温度範囲で制限され、文献に基づきその温度は830℃以下。
成長温度は、それぞれの酸化膜ごとに異なる、原子移動が可能な温度以上で酸化膜が昇華しない温度以下の範囲となる。
例えば、アルミナ膜では500℃以上、830℃以下。
【0011】
膜厚:0.4 nmから8 nm
極性面を界面とする酸化物薄膜は、(金属面−酸素面)を1ユニットとして、最低3ユニット分以上の厚さを持ってはじめて酸化物膜としての性質を持つ。3ユニット分の厚さはほぼ0.4nmであり、これが最小膜厚である。最大膜厚は、酸化物薄膜中に生じるひずみの大きさに依存するが、実施例において5nm以上の膜がエピタキシャル作製できることが示されており、文献から、エピタキシャル膜中のひずみが大きくなると多結晶体になるが膜厚はさらに厚くできることがわかっている。MISやMIM構造の機能を発揮する観点から10nm未満の膜を使用すると考えられるため、最大膜厚として8nmとする。
【実施例1】
【0012】
本実施例は、Alを各種金属基板の(111)面に酸素雰囲気化で蒸着した例を示す。
基板の表面、蒸着条件、及び得られた酸化アルミ薄膜については、表1に詳しく示す通りである。
前記アルミナ薄膜の厚さは光電子スペクトルから推定した。
また、エピタキシャルであるかアモルファスであるかは低速電子線回折が明瞭か否かで判断した。
なお、実験番号13は、低速電子線回折が得られたが、スポット状ではなくリング状のパターンであることから多結晶体であることが判明した。
段差間隔とは、基板表面の研磨精度により現れる原子ステップ間に存在するテラスの幅をいい、この間隔が長いほど、研磨精度が高いことを意味する。
実験番号5では、アルミナ膜の走査型二次電子像には、図9に示すように、200nm程度の広さの原子レベルで平坦なテラスと原子ステップが観察され、原子レベルで平坦なアルミナ膜が得られていることがわかる。
また、実験番号10で示すより研磨精度の高い清浄なニッケル単結晶(111)上では、1000nmの段差間隔の平坦面が得られた。
図2に見られるように、界面がアルミニウム原子になっている場合は、Al 2p光電子スペクトルに、酸化膜中のAlと金属Alのピークの間に界面のAlの成分によるピーク(強度が弱くコブ状に見えることが多い)が観測される。
図3に見られるように、酸化されていないAl成分は鋭い2つのピークからなるスペクトルを与え、アルミナ膜中のAl成分は幅の広いピークを与えるので、ピークの幅から、酸化物によるピークか金属Alによるピークかの判別が付く。
図3を酸素中熱処理すると金属Alの大部分が酸化されて、図4に見られるように、図3で見られた鋭い2つのピークの強度が減少し、アルミナ膜中のAlによるピークの強度が増加した。図3、図4ともに、界面のAl成分がコブとして観測された。しかしこのコブは、図2、図18、図19と比べて強度が弱く、界面元素はアルミニウム原子と酸素原子の両方になっていると考えられる。
図17に見られるように、酸素分圧1x10−7mbar、200℃において、高い蒸着速度でアルミニウムを蒸着した場合には、蒸着したAlと酸素との反応が十分に進まず、酸化されていない金属Alが多量に残り、強度の高い鋭い2つのピークからなるスペクトルが観測された。また、界面Al成分も観測された。この試料を酸素分圧1x10−6mbar、200℃でアニールすることにより酸化反応が進み、残っていた金属Alの大部分が酸化されて、図18に見られるように、金属Al成分のピーク強度は激減して、アルミナ膜中のAl成分の強度が大きく増加した。また、界面Al成分は図2と同程度の強度で観測され、界面元素はアルミニウム原子であることがわかる。
なお、実験番号11,12,13は、本実施例の限界を示す為の参考例である。
これより、本実施例では、3/4hr以上で50×10℃以上に加熱するのが、酸素終端とするのに適切な範囲であると考えられる。
【表1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO2007/029754
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】J. Applied Physics, 103, 033707 (2008)
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属基板表面に酸化膜を有する電子素子基板に関する。
【背景技術】
【0002】
薄い酸化膜は、そのバンドギャップの大きさに応じて、優れたトンネルバリア層や電界効果素子の材料として、またはメモリーなどの半導体素子の材料として有用である。
そのうち、金属−トンネルバリア層−金属(MIM構造)をもつ電子放出源、金属−トンネルバリア層−センサー層(MIS)という構造を持ち、センサー層での電子授受をトンネルバリア層を通して金属層へ伝えるタイプのセンサー、MIM・MIS構造で、スピンを持つ材料を含む場合の磁気デバイスなどへ応用できる、アルミナ膜とその作製法について特許を申請した(特許文献1参照)。
その方法では、界面が酸化膜を構成する金属原子で終端されており(図1(a))、基板が銅やニッケルの場合、価電子バンドオフセット(正孔に対するショットキーバリア高さ)が大きいという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
界面を酸素原子終端にすると、この価電子バンドオフセットが下がると予想されている(第一原理計算による)が、それを具体的に達成するものがなかったので、本願発明は、それを課題として、実現することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の電子素子基板は、酸化膜の金属基板との界面が酸素原子により終端されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明者らは、金属基板との界面が酸素原子により終端された(図1(b))アルミナ極薄膜の作製に成功した。
界面終端原子の種類を決定付けるルールを見出し、金属基板と界面が酸素原子により終端された酸化膜の作製法として用いることを可能にした結果として得られた新たな電子素子基板である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】金属基板とアルミナ膜界面の界面終端の模式図。(a)アルミニウム原子終端、(b)酸素原子終端。
【図2】非特許文献1に示されたアルミニウム原子終端を持つ銅基板上のアルミナ膜極薄膜の光電子スペクトル。
【図3】実験番号11の熱処理前のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【図4】実験番号11の熱処理後のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【図5】実験番号1のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【図6】実験番号2のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【図7】実験番号3のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【図8】実験番号4のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【図9】実験番号5のアルミナ膜の高速反射電子線回折パターン。
【図10】実験番号5のアルミナ膜の走査型二次電子像。
【図11】実験番号6のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【図12】実験番号7のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【図13】実験番号8のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【図14】実験番号9のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【図15】実験番号10のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【図16】実験番号10のアルミナ膜の走査型二次電子像。
【図17】実験番号12の熱処理前のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【図18】実験番号12の熱処理後のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【図19】実験番号13の熱処理後のアルミナ膜の光電子スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の基板の材質は、銅(111)、ニッケル(111)を実施例で示したが、当該実施例による知見に基づき以下の理由により、同様の結晶表面構造をもつ金属元素、特に、fcc金属の(111)およびhcp金属の(0001)の面へ適用可能である。
本発明は、金属基板(M)と酸化物(AxOy)の界面が、熱力学的に以下の関係式を満たすことにより酸素原子により終端されることに立脚している。
酸化物の界面が酸素原子により終端されるということは、酸化物の極性面が金属基板上に成長することを意味している。酸化物の酸素終端面は、酸素が最密充填した構造をとる場合が多く、その場合表面は二次元的に6回対称性をもつ。したがって、熱力学的に以下の関係式を満たすならば、実施例としてあげた銅(111)、ニッケル(111)のほかに、6回対称性を持つfcc金属の(111)およびhcp金属の(0001)面上で成長すると考えられる。
【化1】
【0008】
本発明を製造するのに用いる製法では、酸化される金属元素の基板への蒸着中の雰囲気に酸素を存在させることが重要であり、その酸素分圧の適切な範囲は、以下のようにして定めることができる。
酸素分圧:上記の化学平衡式(2)で、以下の化2の条件を満たし、かつ、酸化物の金属元素が十分に酸化された状態で膜成長する酸素分圧範囲
アルミナ膜では5x10−8mbar〜6.6x10−7mbar。実施例では2x10−7mbarおよび5x10−7mbarであるが、公知文献のBに挙げた文献により、5x10−8mbar〜6.6x10−7mbarの酸素分圧範囲では、上記化学平衡式において酸素終端側で安定であることが示されている。
【化2】
【0009】
酸素分圧は、それぞれの酸化膜ごとに異なる、上記の化学平衡式で、前記化2の条件を満たし、かつ、酸化物の金属元素が十分に酸化された状態で膜成長する酸素分圧の範囲となる。 前記化学平衡式(2)の条件を満たし、かつ、酸化物の金属元素が十分に酸化された状態で膜成長する酸素分圧範囲とすることで、アルミ以外の蒸着可能な金属元素(例えば、マグネシウム、すず、亜鉛、ハフニウム、ジルコニウム、セリウム、クロミウム、ニッケルなど)を利用することができる。
アルミナ膜では、実施例に挙げた2x10−7mbarおよび5x10−7mbarのみでなく、5x10−8mbar〜6.6x10−7mbarの範囲で可能であると考えられる。
【0010】
成長温度
界面が熱力学的平衡に必要な原子移動が可能な温度以上で、酸化膜が昇華しない温度範囲であれば、基板へ酸化膜として蒸着することができる。
アルミナ膜では500℃以上、830℃以下。界面が熱力学的平衡に必要な原子移動が可能な温度以上であることが必要である。実施例から400℃では熱力学的平衡に達していないが500℃では熱力学的に平衡な界面が形成されていることがわかる。温度の上限はアルミナ膜が昇華しない温度範囲で制限され、文献に基づきその温度は830℃以下。
成長温度は、それぞれの酸化膜ごとに異なる、原子移動が可能な温度以上で酸化膜が昇華しない温度以下の範囲となる。
例えば、アルミナ膜では500℃以上、830℃以下。
【0011】
膜厚:0.4 nmから8 nm
極性面を界面とする酸化物薄膜は、(金属面−酸素面)を1ユニットとして、最低3ユニット分以上の厚さを持ってはじめて酸化物膜としての性質を持つ。3ユニット分の厚さはほぼ0.4nmであり、これが最小膜厚である。最大膜厚は、酸化物薄膜中に生じるひずみの大きさに依存するが、実施例において5nm以上の膜がエピタキシャル作製できることが示されており、文献から、エピタキシャル膜中のひずみが大きくなると多結晶体になるが膜厚はさらに厚くできることがわかっている。MISやMIM構造の機能を発揮する観点から10nm未満の膜を使用すると考えられるため、最大膜厚として8nmとする。
【実施例1】
【0012】
本実施例は、Alを各種金属基板の(111)面に酸素雰囲気化で蒸着した例を示す。
基板の表面、蒸着条件、及び得られた酸化アルミ薄膜については、表1に詳しく示す通りである。
前記アルミナ薄膜の厚さは光電子スペクトルから推定した。
また、エピタキシャルであるかアモルファスであるかは低速電子線回折が明瞭か否かで判断した。
なお、実験番号13は、低速電子線回折が得られたが、スポット状ではなくリング状のパターンであることから多結晶体であることが判明した。
段差間隔とは、基板表面の研磨精度により現れる原子ステップ間に存在するテラスの幅をいい、この間隔が長いほど、研磨精度が高いことを意味する。
実験番号5では、アルミナ膜の走査型二次電子像には、図9に示すように、200nm程度の広さの原子レベルで平坦なテラスと原子ステップが観察され、原子レベルで平坦なアルミナ膜が得られていることがわかる。
また、実験番号10で示すより研磨精度の高い清浄なニッケル単結晶(111)上では、1000nmの段差間隔の平坦面が得られた。
図2に見られるように、界面がアルミニウム原子になっている場合は、Al 2p光電子スペクトルに、酸化膜中のAlと金属Alのピークの間に界面のAlの成分によるピーク(強度が弱くコブ状に見えることが多い)が観測される。
図3に見られるように、酸化されていないAl成分は鋭い2つのピークからなるスペクトルを与え、アルミナ膜中のAl成分は幅の広いピークを与えるので、ピークの幅から、酸化物によるピークか金属Alによるピークかの判別が付く。
図3を酸素中熱処理すると金属Alの大部分が酸化されて、図4に見られるように、図3で見られた鋭い2つのピークの強度が減少し、アルミナ膜中のAlによるピークの強度が増加した。図3、図4ともに、界面のAl成分がコブとして観測された。しかしこのコブは、図2、図18、図19と比べて強度が弱く、界面元素はアルミニウム原子と酸素原子の両方になっていると考えられる。
図17に見られるように、酸素分圧1x10−7mbar、200℃において、高い蒸着速度でアルミニウムを蒸着した場合には、蒸着したAlと酸素との反応が十分に進まず、酸化されていない金属Alが多量に残り、強度の高い鋭い2つのピークからなるスペクトルが観測された。また、界面Al成分も観測された。この試料を酸素分圧1x10−6mbar、200℃でアニールすることにより酸化反応が進み、残っていた金属Alの大部分が酸化されて、図18に見られるように、金属Al成分のピーク強度は激減して、アルミナ膜中のAl成分の強度が大きく増加した。また、界面Al成分は図2と同程度の強度で観測され、界面元素はアルミニウム原子であることがわかる。
なお、実験番号11,12,13は、本実施例の限界を示す為の参考例である。
これより、本実施例では、3/4hr以上で50×10℃以上に加熱するのが、酸素終端とするのに適切な範囲であると考えられる。
【表1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO2007/029754
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】J. Applied Physics, 103, 033707 (2008)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板表面に酸化膜を有する電子素子基板であって、前記酸化膜の金属基板との界面が酸素原子により終端されていることを特徴とする電子素子基板。
【請求項1】
金属基板表面に酸化膜を有する電子素子基板であって、前記酸化膜の金属基板との界面が酸素原子により終端されていることを特徴とする電子素子基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−16704(P2011−16704A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163988(P2009−163988)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】
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