説明

電子装置及びノイズ抑制方法

【課題】配線基板の裏面と筐体の内表面の間の空間から高周波数帯の電磁ノイズが放射されることを抑制する。
【解決手段】配線基板200は筐体100の内表面上に配置され、かつ裏面210が筐体100の内表面101に対向している。第1導体110は、筐体100及び配線基板200の一方(本実施形態では筐体100)に繰り返し、例えば周期的に設けられている。第2導体212は、筐体100及び配線基板200の他方(本実施形態では配線基板200)に設けられ、複数の第1導体110と対向している。そして平面視において複数の第1導体100及び第2導体212は、配線基板200が有するノイズ源を囲んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体に配線基板を取り付けた構造を有している電子装置及びノイズ抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板には半導体装置などの電子部品が搭載されている。このため、配線基板には、半導体装置及びこの半導体装置に接続している信号線から電磁ノイズが放射される。この電磁ノイズは、同じ筐体内に配置されている他の半導体装置を誤動作させる原因になる。このため、配線基板から電磁ノイズが放射されないようにする必要がある。
【0003】
電磁ノイズの一部は、配線基板の裏面と筐体の内表面の間の空間から放射される。この空間から電磁ノイズが放射されることを抑制する技術としては、例えば特許文献1に記載されている技術がある。この技術は、配線基板の裏面と筐体の内表面とを複数の金属ポストで接続するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−210922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年は半導体装置の高性能化が進んでおり、これに伴って半導体装置の動作クロック数がGHz帯になってきている。この場合、配線基板の裏面と筐体の内表面の間の空間から放射される電磁ノイズもGHz帯になるが、このような高周波数帯の電磁ノイズは、特許文献1に記載の技術では止めることは難しい。
【0006】
本発明の目的は、配線基板の裏面と筐体の内表面の間の空間から高周波数帯の電磁ノイズが放射されることを抑制できる電子装置及びノイズ抑制方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、筐体と、
前記筐体の内表面上に配置され、かつ裏面が前記内表面に対向している配線基板と、
前記筐体及び前記配線基板の一方に繰り返し設けられた複数の第1導体と、
前記筐体及び前記配線基板の他方に設けられ、前記複数の第1導体と対向している第2導体と、
前記筐体及び前記配線基板の前記一方に設けられ、前記複数の第1導体それぞれに電気的に接続している第3導体と、
を備える電子装置が提供される。
【0008】
本発明によれば、筐体と、
前記筐体の内表面上に配置され、かつ裏面が前記内表面に対向している配線基板と、
を有する電子装置において、
前記筐体及び前記配線基板の一方に複数の第1導体を繰り返し設け、かつ前記筐体及び前記配線基板の他方に第2導体を前記複数の第1導体と対向する位置に設け、前記複数の第1導体と前記第2導体によりEBG(Electromagnetic Band Gap)構造を形成して、前記筐体と前記配線基板の間の空間からノイズが漏洩することを抑制するノイズ抑制方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、配線基板の裏面と筐体の内表面の間の空間から高周波数帯の電磁ノイズが放射されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る電子装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1の要部を拡大した図である。
【図3】EBG構造体のレイアウトを示す平面図である。
【図4】第2の実施形態に係る電子装置の構成を示す断面図である。
【図5】図4におけるEBG構造体のレイアウトを示す平面図である。
【図6】第3の実施形態に係る電子装置の構成を示す断面図である。
【図7】図6におけるEBG構造体のレイアウトを示す平面図である。
【図8】第4の実施形態に係る電子装置におけるEBG構造体のレイアウトを示す平面図である。
【図9】第5の実施形態に係る電子装置におけるEBG構造体のレイアウトを示す平面図である。
【図10】第6の実施形態に係る電子装置におけるEBG構造体のレイアウトを示す平面図である。
【図11】第7の実施形態に係る電子装置の断面図である。
【図12】第8の実施形態に係る電子装置の断面図である。
【図13】図12の要部を拡大した図である。
【図14】第9の実施形態に係る電子装置の断面図である。
【図15】第10の実施形態に係る電子装置の構成を示す断面図である。
【図16】第11の実施形態に係る電子装置の構成を示す断面図である。
【図17】単位セルの構造の第1の変形例を示す図である。
【図18】図17に示した単位セルのレイアウトを説明するための平面図である。
【図19】図17及び図18に示した単位セルの等価回路図である。
【図20】単位セルの構造の第2の変形例を示す図である。
【図21】単位セルの構造の第3の変形例を示す図である。
【図22】図21に示した単位セルにおける導体プレーンのレイアウトを示すための平面図である。
【図23】単位セルの構造の第4の変形例を示す図である。
【図24】図23に示した単位セルにおける第2導体のパターンを示す平面図である。
【図25】単位セルの構造の第5の変形例における第2導体のパターンを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電子装置の構成を示す断面図であり、図2は図1の要部を拡大した図である。この電子装置は、筐体100、配線基板200、複数の第1導体110、第2導体212、及び第3導体を備えている。配線基板200は筐体100の内表面上に配置され、かつ裏面210が筐体100の内表面101に対向している。第1導体110は、筐体100及び配線基板200の一方(本実施形態では筐体100)に繰り返し、例えば周期的に設けられている。第2導体212は、筐体100及び配線基板200の他方(本実施形態では配線基板200)に設けられ、複数の第1導体110と対向している。第3導体は、筐体100及び配線基板200のうち上記した一方(本実施形態では筐体100)に設けられ、複数の第1導体110それぞれに電気的に接続している。本実施形態では筐体100そのものが導電性を有しているため、筐体100そのものが第3導体を兼ねている。平面視において複数の第1導体110及び第2導体212は、配線基板200が有するノイズ源を囲んでいる。
【0013】
配線基板200が有するノイズ源は、配線基板200の裏面210と筐体100の内表面101との間の空間に電磁ノイズを放射するものである。具体的には、ノイズ源は、例えば配線基板200の裏面210に搭載された電子部品320、及び裏面210に設けられた信号配線214である。また配線基板200は導体プレーン220,240を有している。導体プレーン220,240の一方(例えば導体プレーン220)は電源プレーンであり、他方(例えば導体プレーン240)はグラウンドプレーンである。導体プレーン220にはスリット202が設けられている。スリット202もノイズ源となる。
【0014】
本実施形態では、配線基板200は多層配線基板であり、第2導体212は配線基板の裏面210に設けられている。そして図2に示すように、第1導体110と第2導体212は、誘電層14を挟んで対向している。誘電層14は、一面が複数の第1導体110に接しており、他面が第2導体212に接している。また第2導体212は、図示しないビアを介して、導体プレーン220及び導体プレーン240のいずれか一方、例えば導体プレーン220に電気的に接続している。導体プレーン220は第2導体212より一層内側の導体層であり、絶縁層221を介して第2導体212に対向している。
【0015】
第1導体110及び第2導体212は、EBG(Electromagnetic Band Gap)構造体10の単位セル12の少なくとも一部を構成している。具体的には、第1導体110は、島状(例えば正方形又は長方形)の導体パターンであり、柱状の接続部材112を介して筐体100に取り付けられている。接続部材112は、平面視において第1導体110の中心に接続している。また第2導体212はシート状の導体パターンである。単位セル12はマッシュルーム型のEBG構造体の単位セルであり、筐体100、柱状の接続部材112、島状の第1導体110、誘電層14、及び第2導体212により形成されている。筐体100がマッシュルームに接続する導体プレーンに相当している。そして接続部材112がマッシュルームのインダクタンス部分に相当しており、第1導体110がマッシュルームのヘッド部分に相当している。そして配線基板200の第2導体212がマッシュルームと対向した導体プレーンに相当している。このような構成において、誘電層14の厚さ、並びに第1導体110の大きさ及び配列によってEBG構造体10の各容量の大きさが制御され、接続部材112の長さ及び太さによってEBG構造体10のインダクタンス成分が制御される。これらを調節することにより、EBG構造体10のバンドギャップ帯を調節して、上記したノイズ源が放射する電磁ノイズがこのバンドギャップ帯に含まれるようにすることができる。
【0016】
単位セル12は平面視において2次元的に繰り返し、例えば周期的に配列されている。ここで「繰り返し」単位セル12を配置する場合、互いに隣り合う単位セル12において、同一のビアの間隔(中心間距離)が、ノイズとして想定している電磁波の波長λの1/2以内となるようにするのが好ましい。また「繰り返し」には、いずれかの単位セル12において構成の一部が欠落している場合も含まれる。また単位セル12が2次元配列を有している場合には、「繰り返し」には単位セル12が部分的に欠落している場合も含まれる。また「周期的」には、一部の単位セル12において構成要素の一部がずれている場合や、一部の単位セル12そのものの配置がずれている場合も含まれる。すなわち厳密な意味での周期性が崩れた場合においても、単位セル12が繰り返し配置されている場合には、EBGとしての特性を得ることができるため、「周期性」にはある程度の欠陥が許容される。なおこれらの欠陥が生じる要因としては、単位セル12間に配線やビアを通す場合、既存の配線レイアウトにEBG構造を追加する場合において既存のビアやパターンによって単位セル12が配置できない場合、製造誤差、及び既存のビアやパターンを単位セル12の一部として用いる場合などが考えられる。
【0017】
なお電子部品320は、例えば半導体パッケージであり、配線基板200は例えばマザーボードである。電子部品320は、ハンダボール322を介して配線基板200の裏面210に設けられた配線(図示せず)に接続している。また配線基板200の表面には、信号配線206が設けられており、かつ電子部品300が搭載されている。電子部品300は例えば半導体パッケージであり、ハンダボール302を介して配線基板200の表面に設けられた配線(図示せず)に接続している。信号配線214は、電子部品320又は電子部品300に接続している。
【0018】
また配線基板200は、ネジ350を用いて筐体100に固定されている。ネジ350はEBG構造体10が設けられている領域に配置されている。なおEBG構造体10は、ネジ350が設けられる領域において単位セル12が欠落しているが、この欠落は上記したようにEBG構造体10のノイズフィルタとしての特性には影響を与えない。
【0019】
図3は、EBG構造体10のレイアウトを示す平面図である。本図に示す例において配線基板200の裏面には電子部品320が複数設けられており、各電子部品320には信号配線214が接続している。またEBG構造体10は配線基板200の縁に沿って設けられているが、さらにEBG構造体10は、複数の電子部品320及びその電子部品320に接続している信号配線214を、他の電子部品320や他の信号配線214から分離する位置にも設けられている。すなわちEBG構造体10は、ノイズ源を個別に囲んでいる。なおEBG構造体10は、信号配線214を、その信号配線214が接続している電子部品320からは分離していない。また配線基板200は長方形であるが、ネジ350は配線基板200の2つの短辺の中央に合計2つ設けられている。
【0020】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。本実施形態においてEBG構造体10は、第1導体110及び第2導体212を用いて形成されている。第1導体110は筐体100に形成されており、第2導体212は配線基板200に形成されている。このため、EBG構造体10は配線基板200の裏面210と筐体100の間の空間を内側に含むように形成されていることになる。従って、この空間内を電磁ノイズが伝播して外部に放射されることが抑制される。
【0021】
またEBG構造体10は、複数の電子部品320及びその電子部品320に接続している信号配線214を、他の電子部品320や他の信号配線214から分離している。このため電子部品320が生成する信号によって、他の電子部品320が誤動作することを抑制できる。
【0022】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る電子装置の構成を示す断面図であり、第1の実施形態における図1に相当している。図5は図4におけるEBG構造体10のレイアウトを示す平面図であり、第1の実施形態における図3に相当している。この電子装置は、EBG構造体10より内側にネジ350が設けられている点を除いて、第1の実施形態と同様の構成である。
【0023】
本実施形態によっても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。またEBG構造体10において単位セル12を欠落させる必要がないため、EBG構造体10のノイズフィルタとしての能力をさらに高めることができる。
【0024】
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態に係る電子装置の構成を示す断面図であり、第2の実施形態における図4に相当している。図7は図6におけるEBG構造体10のレイアウトを示す平面図であり、第2の実施形態における図5に相当している。この電子装置は、EBG構造体10が配線基板200の縁に沿う位置にのみ設けられている点を除いて、第2の実施形態に係る電子装置と同様の構成である。
【0025】
本実施形態によっても、EBG構造体10は配線基板200の裏面210と筐体100の間の空間を内側に含むように形成されていることになる。従って、この空間内を電磁ノイズが伝播して外部に放射されることが抑制される。また配線基板200の裏面210のうちEBG構造体10が占める面積を小さくすることができるため、配線基板200の裏面210に多くの電子部品320を搭載したり配線を引き回したりすることができる。
【0026】
(第4の実施形態)
図8は、第4の実施形態に係る電子装置におけるEBG構造体10のレイアウトを示す平面図である。この電子装置は、以下の点を除いて、第1の実施形態に係る電子装置と同様の構成である。
【0027】
まずネジ350は、配線基板200の4つの角それぞれに設けられている。ネジ350が設けられている領域では、EBG構造体10の単位セル12が欠落している。また、平面視においてEBG構造体10は、電子部品320及び信号配線214と重なる領域を除いて配線基板200の全面に設けられている。
【0028】
本実施形態によっても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また平面視においてEBG構造体10は、電子部品320及び信号配線214と重なる領域を除いて配線基板200の全面に設けられている。従って、EBG構造体10のノイズフィルタとしての能力をさらに高めることができる。
【0029】
(第5の実施形態)
図9は、第5の実施形態に係る電子装置におけるEBG構造体10のレイアウトを示す平面図である。この電子装置は、EBG構造体10が電子部品320及び信号配線214の周囲にのみ設けられている点、及びネジ350が配線基板200の2つの短辺の中央に合計2つ設けられている点を除いて、第4の実施形態に係る電子装置と同様の構成である。
【0030】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また配線基板200の裏面210のうちEBG構造体10が占める面積を小さくすることができるため、配線基板200の裏面210に多くの電子部品320を搭載したり配線を引き回したりすることができる。
【0031】
(第6の実施形態)
図10は、第6の実施形態に係る電子装置におけるEBG構造体10のレイアウトを示す平面図である。この電子装置は、以下の点を除いて第4の実施形態に係る電子装置と同様の構成である。
【0032】
まず、EBG構造体10は、配線基板200の縁に沿う領域にのみ設けられている。またネジ350は、配線基板200の2つの短辺の中央に合計2つ設けられている。ネジ350が設けられている領域においてEBG構造体10は、単位セル12が欠落しているが、幅が狭くならないように内周側に単位セル12が追加されている。すなわちEBG構造体10は、ネジ350を迂回するように配置されている。
【0033】
本実施形態によっても、配線基板200の裏面210と筐体100の間の空間を電磁ノイズが伝播して外部に放射されることが抑制される。また配線基板200の裏面210のうちEBG構造体10が占める面積を小さくすることができるため、配線基板200の裏面210に多くの電子部品320を搭載したり配線を引き回したりすることができる。
【0034】
(第7の実施形態)
図11は、第7の実施形態に係る電子装置の断面図であり、第1の実施形態における図1に相当している。この電子装置は、ノイズ源として貫通ビア230を有している点を除いて、第1の実施形態に係る電子装置と同様の構成である。貫通ビア230は、電子部品300,320の少なくとも一方に電気的に接続しており、平面視においてEBG構造体10によって囲まれている。
【0035】
本実施形態において、貫通ビア230の端部は配線基板200の裏面210に露出している。従って貫通ビア230もノイズ源となるが、貫通ビア230は平面視においてEBG構造体10によって囲まれている。従って、配線基板200の裏面210と筐体100の間の空間を介して貫通ビア230からノイズが放射されることを抑制できる。このため、本実施形態によっても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0036】
(第8の実施形態)
図12は、第8の実施形態に係る電子装置の断面図であり、第2の実施形態における図4に相当している。図13は図12の要部を拡大した図であり、第2の実施形態における図5に相当している。この電子装置は、配線基板200の裏面210に電子部品320が搭載されていない点、及びEBG構造体10の単位セル12の構成を除いて第2の実施形態に係る電子装置と同様の構成である。
【0037】
本実施形態において筐体100には第1導体110及び接続部材112が設けられていない。その代わりに、誘電層14が直接筐体100に接している。また第2導体212は島状の導体であり、繰り返し、例えば周期的に設けられている。複数の第2導体212は、それぞれ絶縁層221に設けられたビア222を介して導体プレーン220に接続している。本実施形態では、第2導体212が本発明における第1導体に相当しており、筐体100が本発明における第2導体に相当している。
【0038】
本実施形態においても単位セル12はマッシュルーム型のEBG構造体の単位セルであり、筐体100、誘電層14、第2導体212、ビア222、及び導体プレーン220により形成されている。導体プレーン220がマッシュルームに接続する導体プレーンに相当している。そしてビア222がマッシュルームのインダクタンス部分に相当しており、第2導体212がマッシュルームのヘッド部分に相当している。そして筐体100がマッシュルームと対向した第2導体プレーンに相当している。
【0039】
本実施形態によっても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また筐体100、誘電層14、第2導体212、ビア222、及び導体プレーン220により単位セル12が形成されているが、これらの形成には特別な工程は必要ない。従って、電子装置の製造コストを低くすることができる。
【0040】
(第9の実施形態)
図14は、第9の実施形態に係る電子装置の断面図であり、第8の実施形態における図12に相当している。この電子装置は、以下の点を除いて第8の実施形態に係る電子装置と同様の構成である。なお説明のため、ネジ350は図示を省略している。
【0041】
まず筐体100の内表面101のうちEBG構造体10が設けられている領域には凸部102が全域にわたって形成されている。すなわちEBG構造体10は、凸部102を構成の一部としている。この結果、EBG構造体10が設けられていない領域では、配線基板200の裏面210と筐体100の内表面101の間隔が広くなっている。そして、配線基板200の裏面210には電子部品320がハンダボール322を介して搭載されている。
【0042】
本実施形態によっても第8の実施形態と同様の効果を得ることができる。また配線基板200の裏面210に電子部品320を実装することができるため、配線基板200の面積を大きくしなくても、配線基板200に実装できる電子部品320の数を増やすことができる。
【0043】
(第10の実施形態)
図15は、第10の実施形態に係る電子装置の構成を示す断面図であり、第1の実施形態における図1に相当している。本実施形態に係る電子装置は、電子部品320の種類によってEBG構造体10の構成、具体的には誘電層14の厚み及び接続部材112の長さが異なっている点を除いて、第1の実施形態に係る電子装置と同様の構成である。具体的には、図中右側の電子部品320を囲んでいるEBG構造体10は、図中左側の電子部品320を囲んでいるEBG構造体10に対して、誘電層14が厚くなっており、これに伴って接続部材112が短くなっている。
【0044】
本実施形態によっても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また複数の電子部品320の間で放出するノイズの周波数が異なる場合であっても、電子部品320別にEBG構造体10の構造を変えることができるため、いずれの電子部品320からもノイズが放射されることを抑制できる。
【0045】
(第11の実施形態)
図16は、第11の実施形態に係る電子装置の構成を示す断面図であり、第9の実施形態における図14に相当している。本実施形態に係る電子装置は、電子部品320の種類によってEBG構造体10の構成、具体的には凸部102の高さ及び誘電層14の厚みが異なっている点を除いて、第9の実施形態に係る電子装置と同様の構成である。具体的には、図中右側の電子部品320を囲んでいるEBG構造体10は、図中左側の電子部品320を囲んでいるEBG構造体10に対して、凸部102が低くなっており、その分誘電層14が厚くなっている。
【0046】
本実施形態によっても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また複数の電子部品320の間で放出するノイズの周波数が異なる場合であっても、電子部品320別にEBG構造体10の構造を変えることができるため、いずれの電子部品320からもノイズが放射されることを抑制できる。
【0047】
上記した各実施形態では、EBG構造体10の単位セル12は所謂マッシュルーム構造を有している。しかし単位セル12の構造は、上記した構造に限定されない。
【0048】
図17は、単位セル12の構造の第1の変形例を示す図である。図18は、図17に示した単位セル12のレイアウトを説明するための平面図である。この変形例は、島状の第1導体110の代わりに配線状の第1導体113が設けられている点、及び接続部材112が第1導体113の一端に接続している点を除いて、第1の実施形態に示した単位セル12と同様の構成である。
【0049】
図19は、図17及び図18に示した単位セル12の等価回路図である。単位セル12は、等価回路上、直列インピーダンス部16と並列アドミタンス部15によって構成される。直列インピーダンス部16は、筐体100及び配線基板200の第2導体212によるインダクタンスLによって構成される。並列アドミタンス部15は、筐体100と第2導体212の間に生じる容量C、接続部材112によるインダクタンスL、及び第1導体113と第2導体212からなる伝送線路により構成される。ここで伝送線路について詳細に説明する。第1導体113はオープンスタブとして機能する。すなわち第1導体113及び第2導体212のうち第1導体113に対向する領域は、第1導体113をリターンパスとする伝送線路として機能する。
【0050】
そして、並列アドミタンス部15及び直列インピーダンス部16の値によって、EBG構造体10のバンドギャップ周波数が決まる。具体的には、オープンスタブして機能する第1導体113を長くすることによって、並列アドミタンス部15によるアドミタンスの値を大きくして、EBG構造体10のバンドギャップ周波数帯を低周波化することができる。第1導体113は、例えばスパイラル形状はジグザグ形状(ミアンダ形状)とすることにより、占有面積を大きくすることなく長くすることができる。
【0051】
図20は、単位セル12の構造の第2の変形例を示す図である。この変形例は、第2導体212の代わりに配線状の第2導体213が設けられている点、及びビア222が第2導体213の一端に接続している点を除いて、第8の実施形態に示した単位セル12と同様の構成である。図20に示した単位セル12は、上下が逆になっている点を除いて、図17〜図19に示した単位セル12と等価である。
【0052】
図21は、単位セル12の構造の第3の変形例を示す図である。図22は、図21に示した単位セル12における導体プレーン220レイアウトを示すための平面図である。この変形例は、導体プレーン220に複数の開口223及び複数の配線状の導体パターン224が設けられている点を除いて、第8の実施形態に示した単位セル12と同様の構成である。
【0053】
開口223は島状の第2導体212それぞれと対向する位置に設けられており、かつ平面視においてビア222を内側に含んでいる。本図に示す例において、平面視において開口223は第2導体212を内側に含んでいるが、このような構成には限定されない。開口223は第2導体212と相似形であり、かつ平面視において中心が重なっている。そしてこの中心にビア222が配置されている。導体パターン224は、開口223それぞれの中に配置されており、ビア222と導体プレーン220の本体とを接続している。
【0054】
そして図21及び図22に示す単位セル12は、第8の実施形態に係る単位セル12と同様にマッシュルーム構造を有している。ただし、導体パターン224がビア222とともにマッシュルームのインダクタンスを構成している。すなわち本変形例では、第8の実施形態と比較して単位セル12のインダクタンスが大きくなる。このため、構造体10のバンドギャップ周波数帯を変化させない場合、単位セル12を小型化することができる。また単位セル12の大きさを変えない場合、EBG構造体10のバンドギャップ周波数帯を低周波化することができる。
【0055】
図23は、単位セル12の構造の第4の変形例を示す図である。図24は、図23に示した単位セル12における第2導体212のパターンを示す平面図である。この変形例において単位セル12は、第2導体212及び筐体100によって構成されている。
【0056】
第2導体212には、開口218が繰り返し、例えば周期的に設けられている。複数の開口218それぞれの中には、導体パターン216,217が設けられている。導体パターン216は島状の導体パターンであり、導体パターン217は配線状の導体パターンである。導体パターン216は導体パターン217を介して第2導体212に接続している。複数の開口218それぞれを基準にしたとき、導体パターン216,217は互いに同じ位置に配置されている。
【0057】
本実施形態の単位セル12において、筐体100と導体パターン216の間には容量Cが形成され、導体パターン217は、第2導体212と導体パターン217の間にインダクタンスLを与える。そして本実施形態の単位セル12は、マッシュルーム構造の単位セルと等価である。すなわち第2導体212がマッシュルームに接続する導体プレーンに相当している。そして導体パターン217がマッシュルームのインダクタンス部分に相当しており、導体パターン216がマッシュルームのヘッド部分に相当している。そして筐体100がマッシュルームと対向した導体プレーンに相当している。
【0058】
本変形例によれば、2層の導体層によりEBG構造体10を構成することができるため、EBG構造体10を設けるために必要な部分を薄くすることができる。
【0059】
図25は、単位セル12の構造の第5の変形例における第2導体212のパターンを示す平面図である。この変形例において単位セル12は、第2導体212が導体パターン216を有していない点を除いて、図23及び図24に示した単位セル12と同様の構成である。
【0060】
この単位セル12は、図20に示した第2の変形例と等価である。このため、オープンスタブして機能する導体パターン217を長くすることによってアドミタンスの値を大きくして、EBG構造体10のバンドギャップ周波数帯を低周波化することができる。導体パターン217は、例えばスパイラル形状はジグザグ形状(ミアンダ形状)とすることにより、占有面積を大きくすることなく長くすることができる。
【0061】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0062】
10 EBG構造体
12 単位セル
14 誘電層
15 並列アドミタンス部
16 直列インピーダンス部
100 筐体
101 内表面
102 凸部
110 第1導体
112 接続部材
113 第1導体
200 配線基板
202 スリット
206 信号配線
210 裏面
212 第2導体
213 第2導体
214 信号配線
216 導体パターン
217 導体パターン
218 開口
220 導体プレーン
221 絶縁層
222 ビア
223 開口
224 導体パターン
230 貫通ビア
240 導体プレーン
300 電子部品
302 ハンダボール
320 電子部品
322 ハンダボール
350 ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の内表面上に配置され、かつ裏面が前記内表面に対向している配線基板と、
前記筐体及び前記配線基板の一方に繰り返し設けられた複数の第1導体と、
前記筐体及び前記配線基板の他方に設けられ、前記複数の第1導体と対向している第2導体と、
前記筐体及び前記配線基板の前記一方に設けられ、前記複数の第1導体それぞれに電気的に接続している第3導体と、
を備える電子装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置において、
平面視において前記複数の第1導体及び第2導体は、前記配線基板が有するノイズ源を囲んでいる電子装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電子装置において、
前記ノイズ源は、前記裏面に露出しているビア、前記裏面に形成された配線、又は前記裏面に実装された電子部品である電子装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電子装置において、
前記ノイズ源は前記電子部品であり、
前記筐体の内表面のうち前記複数の第1導体又は前記第2導体を有する領域に設けられた凸部を備える電子装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか一つに記載の電子装置において、
前記配線基板は電源プレーン及びグラウンドプレーンを有しており、
前記ノイズ源は、前記電源プレーン又は前記グラウンドプレーンに設けられたスリットである電子装置。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか一つに記載の電子装置において、
前記配線基板は前記ノイズ源を複数有しており、
前記複数の第1導体及び第2導体は、前記複数のノイズ源を個別に囲んでいる電子装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の電子装置において、
前記配線基板は電源プレーン及びグラウンドプレーンを有しており、
前記複数の第1導体及び前記第2導体のうち前記配線基板に設けられている導体は、前記電源プレーン及び前記グラウンドプレーンのいずれか一方に電気的に接続している電子装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つに記載の電子装置において、
前記複数の第1導体及び前記第2導体のうち前記配線基板に設けられている導体は、前記配線基板の裏面に形成されている電子装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電子装置において、
一面が前記複数の第1導体に接しており、他面が前記第2導体に接している誘電層をさらに備える電子装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一つに記載の電子装置において、
前記配線基板は電源プレーン及びグラウンドプレーンを有しており、
前記複数の第1導体は前記配線基板に設けられており、
前記配線基板の電源プレーン及び前記グラウンドプレーンの一方は、前記配線基板の絶縁層を介して前記複数の第1導体に対向しており、
前記複数の第1導体は、それぞれ前記絶縁層に設けられたビアを介して前記電源プレーン及び前記グラウンドプレーンの一方に接続している電子装置。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一つに記載の電子装置において、
前記複数の第1導体は、柱状の接続部材を介して前記筐体に取り付けられている電子装置。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか一つに記載の電子装置において、
前記複数の第1導体と同一層に設けられたシート状の第3導体と、
前記第3導体に繰り返し設けられた複数の開口と、
を備え、
前記複数の第1導体は、前記複数の開口内それぞれに設けられており、かつ前記第3導体に接続している電子装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一つに記載の電子装置において、
平面視において前記複数の第1導体及び第2導体は、前記配線基板の縁に沿って形成されている電子装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一つに記載の電子装置において、
前記筐体は導電性を有しており、
前記第2導体は、前記筐体である電子装置。
【請求項15】
筐体と、
前記筐体の内表面上に配置され、かつ裏面が前記内表面に対向している配線基板と、
を有する電子装置において、
前記筐体及び前記配線基板の一方に複数の第1導体を繰り返し設け、かつ前記筐体及び前記配線基板の他方に第2導体を前記複数の第1導体と対向する位置に設け、前記複数の第1導体と前記第2導体によりEBG(Electromagnetic Band Gap)構造を形成して、前記筐体と前記配線基板の間の空間からノイズが漏洩することを抑制するノイズ抑制方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−124503(P2011−124503A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283093(P2009−283093)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、総務省、「マイクロ波帯、ミリ波帯の利用拡大のための機器雑音抑制技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】