説明

電子装置及び表示装置及びクロック信号供給制御方法

【課題】
クロック信号によるノイズの影響を、安価且つ簡単な回路構成で低減させた電子装置及びクロック信号供給制御方法の提供。
【解決手段】
スケーラIC121からTVマイコン131へのOSDクロック信号線供給ラインであるOSDクロック信号線17と基準電位(グランド)との間にバイパス回路122を設け、装置起動時の発振不安定期間若しくはTVマイコン131がOSDクロック信号を必要としない期間において、バイパス回路122をオンとすることにより、OSDクロック信号をグランドに接地し、OSDクロック信号線17から発せられるノイズを低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロック信号の供給制御方法及び、クロック信号の供給制御について考慮された電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子装置は、その構成として、アナログ回路とデジタル回路との双方を備えるものがほとんどであり、アナログ信号とデジタル信号の双方を扱っている。このような電子装置内では、信号をアナログからデジタルへと変換する場合の同期信号となるクロックや、ICなどのシステムクロックなど、多種のクロック信号が使用されている。このようなクロック信号は、電子装置で扱う情報の巨大化及び高速化に伴い高周波化しており、高い周波数のクロック信号の発生源である発振回路やクロック信号が流れるラインはノイズの発生源となっている。また、多種類の周波数のクロック信号が使用されることにより、電子装置内外で扱われる各信号相互の高調波ノイズの影響も問題となっている。
【0003】
上記したようなノイズ問題に対し、不要なクロックの発振を停止させることにより不要輻射ノイズの低減と低電力化を図った従来技術が特許文献1〜特許文献4等によって開示されており、クロック信号が流れるラインにスイッチを設け、クロック信号が不要である場合にはスイッチを開放することによりクロック信号をラインに流さないようにすることで、ノイズの影響を低減させた従来技術が特許文献5〜特許文献6などによって開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−55498号公報
【特許文献2】特開平8−130689号公報
【特許文献3】特開平8−256076号公報
【特許文献4】特開平10−20835号公報
【特許文献5】実開平5−20473号公報
【特許文献6】特開2000−293504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜特許文献4等によって開示される従来技術では、不要なクロック(動作していない回路へのクロック)の発振を停止(クロック信号を発生する発振回路の発振動作停止)させることにより不要輻射ノイズの低減と低電力化を図るものとしているが、1つの発振回路から複数の回路へクロックを供給している場合(必ずしも同一周波数のクロックを複数の回路に供給しているものに限らず、基本周波数を分周若しくは逓倍してそれぞれの回路に供給している場合もあり、1つの発振源から多数の回路へクロック信号が供給されるケースは多い)、発振自体を停止させてしまうと全ての回路へのクロック供給が停止してしまうため、「クロックを必要としていない一部の回路へのクロック信号の供給のみを停止させる」ということができないものであった。
【0006】
一方、特許文献5〜特許文献6等によって開示される従来技術では、クロック信号が流れるラインにスイッチを設け、クロック信号が不要である場合にはスイッチを開放することによりクロック信号をラインに流さないようにすることで、ノイズの影響を低減させるものとしており、この場合、「クロック信号を必要としていない回路のみへのクロック供給を停止させる」ことが可能となるが、「スイッチ」はコスト上の理由等からトランジスタを用いて構成されるのが一般的であり、クロック信号のラインにトランジスタを設ける(信号ラインに直列にエミッタ・コレクタを接続し(npn型の場合)、ベースへの制御信号により信号ラインをオン・オフする)と、信号ラインにトランジスタによる電圧降下が生じるという問題や、クロックが高周波である場合には、高周波対応のトランジスタを使用する必要があり、コスト高となる問題、さらには、クロック信号の位相がずれる可能性があるなどの問題が生じる。「スイッチ」にトランジスタではなくリレーや切換え専用ICなどを使用することもできるが、この場合、部品の大型化やコスト高となるものであった。
【0007】
また、発振回路の発振開始時には、発振周波数が安定しない期間があり、周波数が安定していない場合には当然にクロック信号としての用を成さず、この間におけるクロック信号ラインはノイズ発生源となるだけのものとなる。「発振開始時の発振周波数不安定期間」とは、単純に特定の周波数の発振のみを行う発振回路が、安定した発振を開始するまでの期間の他に、例えば、「多種類の周波数の発振をできる汎用のIC(発振回路を含むIC)であって、当該汎用ICが組み込まれた装置に適合する周波数をサーチするために、起動時に、高い周波数から順次低い周波数へと切り替えながら適合周波数を検出する動作を行うため、発振開始時(起動時)に発振周波数が変化する」という場合などがある。
【0008】
本発明は、上述した点に鑑み、クロック信号によるノイズの影響を、安価且つ簡単な回路構成で低減させた電子装置及びクロック信号供給制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の電子装置は、各種ICや電子回路における同期信号となるクロック信号を発生させる発振回路と、当該発振回路からの前記クロック信号が出力されるクロック信号線と基準電位となるグランド線との間に設けられるバイパス回路と、を備え、前記発振回路の発振開始時における発振周波数不安定期間において、前記バイパス回路をオンとすることにより前記発振周波数不安定期間における前記クロック信号をグランドに接地し、前記発振回路の発振周波数が安定した後に、前記バイパス回路をオフとすることにより前記クロック信号を前記クロック信号線から出力させることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、発振回路の発振開始時における発振周波数が安定しない期間(クロック信号としての用を成さない期間)において、クロック信号が出力されるクロック信号線と基準電位となるグランド線との間に設けられるバイパス回路がオンとされ、クロック信号(発振周波数が安定していない信号)がグランドに接地される。なお、「発振開始時の発振周波数不安定期間」とは、前述したごとく、単純に特定の周波数の発振のみを行う発振回路が、安定した発振を開始するまでの期間の他に、例えば、「多種類の周波数の発振をできる汎用のIC(発振回路を含むIC)であって、当該汎用ICが組み込まれた装置に適合する周波数をサーチするために、起動時に、高い周波数から順次低い周波数へと切り替えながら適合周波数を検出する動作を行うため、発振開始時(起動時)に発振周波数が変化する期間」のように、ICの規格上、起動時に発振周波数が変化するような場合なども含む。
【0011】
請求項2の電子装置は、複数の各種ICや電子回路における同期信号となるクロック信号を発生させる発振回路と、当該複数の各種IC若しくは電子回路のそれぞれに接続される前記発振回路からの前記クロック信号が出力されるクロック信号線と基準電位となるグランド線との間に設けられるバイパス回路と、を備え、前記各種IC若しくは電子回路のうち前記クロック信号を必要としていないIC若しくは電子回路に接続される前記クロック信号線と前記グランド線との間に設けられた前記バイパス回路をオンとすることにより、前記クロック信号を必要としていないIC若しくは電子回路に対する前記クロック信号の供給を停止させることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、クロック信号を必要としていないIC若しくは電子回路へのクロック信号線とグランド線との間に設けられるバイパス回路がオンとされ、クロック信号を必要としていないIC若しくは電子回路へのクロック信号のみがグランドに接地される。なお、「クロック信号を必要としていないIC若しくは電子回路」とは、クロック信号を全く使用することがないIC若しくは電子回路ということではなく、各IC若しくは電子回路の動作状況により、クロック信号の必要の有無が変動するものであって、クロック信号を必要としていない状態であるIC若しくは電子回路などを示すものである。
【0013】
請求項3の電子装置は、複数の各種ICや電子回路における同期信号となるクロック信号を発生させる発振回路と、当該複数の各種IC若しくは電子回路のそれぞれに接続される前記発振回路からの前記クロック信号が出力されるクロック信号線と基準電位となるグランド線との間に設けられるバイパス回路と、を備え、前記発振回路の発振開始時における発振周波数不安定期間において、前記バイパス回路をオンとすることにより前記発振周波数不安定期間における前記クロック信号をグランドに接地し、前記発振回路の発振周波数が安定した後に、前記バイパス回路をオフとすることにより前記クロック信号を前記クロック信号線から出力させるようにし、且つ、前記各種IC若しくは電子回路のうち前記クロック信号を必要としていないIC若しくは電子回路に接続される前記クロック信号線と前記グランド線との間に設けられた前記バイパス回路をオンとすることにより、前記クロック信号を必要としていないIC若しくは電子回路に対する前記クロック信号の供給を停止させることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、発振回路の発振開始時における発振周波数が安定しない期間(クロック信号としての用を成さない期間)において、クロック信号線と基準電位となるグランド線との間に設けられるバイパス回路がオンとされることによりクロック信号(発振周波数が安定していない信号)がグランドに接地され、且つ、クロック信号を必要としていないIC若しくは電子回路へのクロック信号線とグランド線との間に設けられるバイパス回路がオンとされることによりクロック信号を必要としていないIC若しくは電子回路へのクロック信号のみがグランドに接地される。
【0015】
請求項4の表示装置は、請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の電子装置である表示装置であって、前記電子装置が、映像信号を装置の解像度に合わせて変換するスケーラ回路を備えた表示装置であり、前記発振回路が、パネル表示用のクロックを生成する発振回路であり、且つ、当該パネル表示用のクロックがOSD信号を生成するためのOSDクロックとしても出力され、前記バイパス回路が、前記OSDクロックが出力されるクロック信号線と前記グランド線との間に設けられたことを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、発振回路の発振開始時における発振周波数が安定しない期間(クロック信号としての用を成さない期間)において、OSDクロックがグランドに接地され、且つ、OSD機能が動作していない(OSD信号を生成する回路が動作していない)期間においてOSDクロックがグランドに接地される。
【0017】
請求項5の表示装置は、請求項4記載の表示装置であって、前記スケーラ回路と前記発振回路とが備えられたスケーラICの、前記OSDクロックが出力されるOSDクロック出力端子の近傍となる部分に、前記バイパス回路が形成されたことを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、OSDクロック出力端子とバイパス回路との距離が短いものとなる。
【0019】
請求項6のクロック信号供給制御方法は、各種ICや電子回路における同期信号となるクロック信号を発生させる発振回路と、当該発振回路からの前記クロック信号が出力されるクロック信号線と基準電位となるグランド線との間に設けられるバイパス回路と、を備えた電子装置のクロック信号供給制御方法であって、前記発振回路の発振開始時における発振周波数不安定期間において、前記バイパス回路をオンとすることにより前記発振周波数不安定期間における前記クロック信号をグランドに接地し、前記発振回路の発振周波数が安定した後に、前記バイパス回路をオフとすることにより前記クロック信号を前記クロック信号線から出力させることを特徴とする。
【0020】
請求項7のクロック信号供給制御方法は、複数の各種ICや電子回路における同期信号となるクロック信号を発生させる発振回路と、当該複数の各種IC若しくは電子回路のそれぞれに接続される前記発振回路からの前記クロック信号が出力されるクロック信号線と基準電位となるグランド線との間に設けられるバイパス回路と、を備えた電子装置のクロック信号供給制御方法であって、前記各種IC若しくは電子回路のうち前記クロック信号を必要としていないIC若しくは電子回路に接続される前記クロック信号線と前記グランド線との間に設けられた前記バイパス回路をオンとすることにより、前記クロック信号を必要としていないIC若しくは電子回路に対する前記クロック信号の供給を停止させることを特徴とする。
【0021】
請求項8のクロック信号供給制御方法は、複数の各種ICや電子回路における同期信号となるクロック信号を発生させる発振回路と、当該複数の各種IC若しくは電子回路のそれぞれに接続される前記発振回路からの前記クロック信号が出力されるクロック信号線と基準電位となるグランド線との間に設けられるバイパス回路と、を備えた電子装置のクロック信号供給制御方法であって、前記発振回路の発振開始時における発振周波数不安定期間において、前記バイパス回路をオンとすることにより前記発振周波数不安定期間における前記クロック信号をグランドに接地し、前記発振回路の発振周波数が安定した後に、前記バイパス回路をオフとすることにより前記クロック信号を前記クロック信号線から出力させるようにし、且つ、前記各種IC若しくは電子回路のうち前記クロック信号を必要としていないIC若しくは電子回路に接続される前記クロック信号線と前記グランド線との間に設けられた前記バイパス回路をオンとすることにより、前記クロック信号を必要としていないIC若しくは電子回路に対する前記クロック信号の供給を停止させることを特徴とする。
【0022】
請求項9のクロック信号供給制御方法は、請求項6乃至請求項8の何れか1つに記載のクロック信号供給制御方法であって、前記電子装置が、映像信号を装置の解像度に合わせて変換するスケーラ回路を備えた表示装置であり、前記発振回路が、パネル表示用のクロックを生成する発振回路であり、且つ、当該パネル表示用のクロックがOSD信号を生成するためのOSDクロックとしても出力され、前記バイパス回路が、前記OSDクロックが出力されるクロック信号線と前記グランド線との間に設けられることにより、前記OSDクロックの供給制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の請求項1の、各種ICや電子回路における同期信号となるクロック信号を発生させる発振回路と、当該発振回路からの前記クロック信号が出力されるクロック信号線と基準電位となるグランド線との間に設けられるバイパス回路と、を備え、前記発振回路の発振開始時における発振周波数不安定期間において、前記バイパス回路をオンとすることにより前記発振周波数不安定期間における前記クロック信号をグランドに接地し、前記発振回路の発振周波数が安定した後に、前記バイパス回路をオフとすることにより前記クロック信号を前記クロック信号線から出力させることを特徴とする電子装置によれば、発振回路の発振開始時における発振周波数が安定しない期間(クロック信号としての用を成さない期間であり、すなわちクロック信号線がノイズ発生源となるだけのものとなっている期間)において、クロック信号がグランドに接地されるため、クロック信号線からのノイズの影響を低減させることができる。また、「バイパス回路」は、クロック信号線とグランド線との間にトランジスタを接続する(コレクタをクロック信号線に、エミッタをグランド線に接続し、ベースに入力する制御信号によりオン・オフさせる)ことによって構成することができるため、簡単且つ安価な回路構成とすることができ、且つ、前述したような、クロック信号が流れるラインにスイッチを設け、クロック信号が不要である場合にはスイッチを開放するように構成した場合に問題となる、クロック信号線に生じるトランジスタによる電圧降下や、高周波対応のトランジスタを使用する必要性、クロック信号の位相がずれる可能性といったことを考慮する必要が無い。
【0024】
本発明の請求項2の、複数の各種ICや電子回路における同期信号となるクロック信号を発生させる発振回路と、当該複数の各種IC若しくは電子回路のそれぞれに接続される前記発振回路からの前記クロック信号が出力されるクロック信号線と基準電位となるグランド線との間に設けられるバイパス回路と、を備え、前記各種IC若しくは電子回路のうち前記クロック信号を必要としていないIC若しくは電子回路に接続される前記クロック信号線と前記グランド線との間に設けられた前記バイパス回路をオンとすることにより、前記クロック信号を必要としていないIC若しくは電子回路に対する前記クロック信号の供給を停止させることを特徴とする電子装置によれば、クロック信号を必要としていないIC若しくは電子回路へのクロック信号のみがグランドに接地されるため、1つの発振回路から複数の回路へクロックを供給している場合であっても、クロック信号線に不要なクロック信号が供給されることを防止することができ、クロック信号線からのノイズの影響を低減させることができる。また、クロックの発振自体は停止していないため、停止状態であった回路(クロック信号を必要とする回路)が起動する際に、即座に安定した発振状態のクロック信号を供給することができる。
【0025】
本発明の請求項5の、前記スケーラ回路と前記発振回路とが備えられたスケーラICの、前記OSDクロックが出力されるOSDクロック出力端子の近傍となる部分に、前記バイパス回路が形成されたことを特徴とする請求項4記載の表示装置によれば、OSDクロック出力端子とバイパス回路との距離が短いものとなるため、バイパス回路オン時(OSDクロックのグランド時)に、OSDクロックが印加されるクロック信号線の距離も短くなり、クロック信号線からのノイズの影響を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の具体的実施例について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施態様は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するためのものではない。
【実施例1】
【0027】
図1は本実施例の液晶表示装置1の本発明に関する部分のみの概略を示すブロック図であり、図2はバイパス回路の一例を示す回路ブロック図である。図3は液晶表示装置1の外観を示す斜視図であり、図4は液晶表示装置1の起動時(電源オン時)の本発明に関する部分の動作の概略を示すフローチャートである。
【0028】
図1〜図3に示されるように、液晶表示装置1は、表示部(液晶)11、表示部11を制御するためのLCD制御基板12、外部から入力される映像・音声信号の処理や装置全体の制御を行うTV基板13、リモコン装置2と共に入力インターフェースとなる操作部14などを有する。LCD制御基板12には、映像信号を装置の解像度に合わせて変換するスケーラ回路と、パネル表示用のクロックを生成する発振回路と、を有するスケーラIC121が備えられ、OSDクロック信号をグランドに接地するバイパス回路122が備えられる。OSDクロック信号は、OSD(On Screen Display)信号を生成するために使用される同期信号である。TV基板13は、装置全体の制御やOSD信号の生成を行うTVマイコン131や、チューナ部132、外部入出力部であるAV入力部133、リモコン装置2からの信号を受信する受光部134などを備え、図1のブロック図では概略化しているが、TV基板13内の各部とLCD制御基板12内の各部とがFFCなどによって電気的に接続される。なお、本実施例の液晶表示装置1は、アナログ回路部分とデジタル回路部分を可能な限り別基板とすることにより、アナログ回路とデジタル回路とにおける相互のノイズの影響の低減を図っており、これにより、主にデジタル信号を処理するスケーラICと主にアナログ信号を処理するTVマイコンとが別基板に実装されるように構成されている。
【0029】
パネル表示用のクロックは、表示部11の画面を構成する各画素の点灯制御を行うためのドットクロックであり、その周波数は、映像信号の垂直同期周波数や表示画面の解像度などによって定まる(例えば、映像信号の垂直同期が60Hzで、有効解像度が640×480(VGA規格)である場合には、27MHzとなる)。OSD機能は、文字情報などを画面に表示させる機能であり、映像に重畳されて表示されるものであるため、OSD信号もパネル表示用のクロックと同一周波数の同期信号に基づいて生成される必要がある。従って、OSDクロック信号(パネル表示用のクロックと同一)が、パネル表示用のクロックを生成するスケーラIC121から、OSD信号を生成するTVマイコン131に、OSDクロック信号線17を介して供給される。なお、本実施例のスケーラIC121は、表示画面の解像度がVGA規格及びXGA規格であるものの双方に使用できる汎用ICであり、XGA規格の解像度に対応した64MHzのパネル表示用クロックも発生させることができ、起動時のイニシャル設定がXGA仕様となっているため、起動時には先ず64MHzでの発振を行い、表示画面の解像度がVGA規格である場合には、これを検知した後に27MHzの発振を行う動作をするものとなっている。
【0030】
図2にはスケーラIC121から出力されるOSDクロック信号をグランドに接地させるためのバイパス回路122の1例を示した。図に示されるように、トランジスタ1221のコレクタがコンデンサ18を介してOSDクロック信号線17に、エミッタが基準電位(グランド線)に接続され、ベースが抵抗1223を介して定電圧源(5V)に接続される。さらに、トランジスタ1222のコレクタが定電圧源(5V)と抵抗1223との間に接続され、エミッタがグランド線に、ベースが抵抗1224を介してTVマイコン131に接続される。このような構成によりバイパス回路122は、TVマイコン131からの制御信号(ハイレベル信号)によりトランジスタ1222がオンとなることによってトランジスタ1221がオフとなり(バイパス回路122オフ)、OSDクロック信号がスケーラIC121からTVマイコン131へと入力される。一方、TVマイコン131からの制御信号(ローレベル信号)によりトランジスタ1222がオフとなると、トランジスタ1221がオンとなり(バイパス回路122オン)、OSDクロック信号がグランドに接地される。なお、コンデンサ18・コンデンサ19は、IC保護用や高調波ノイズ抑制用のコンデンサである。上記のような構成としているのは、装置の起動時(電源オン時)などに確実にOSDクロック信号をグランドに接地させるためであり(図2のような構成とすることにより、電源オン時に定電圧源の電圧が得られると同時にトランジスタ1221がオンとなり、TVマイコン131からの制御信号が無い(ローレベル)状態においてOSDクロック信号線17がグランドに接地されるようになる)、本発明の適用に好適なものであるが、本発明をこれに限るものではなく、OSDクロック信号線とグランドとの間をバイパスオン・オフさせることができるものであればよい(例えば、トランジスタ1221のベースに直接TVマイコン131の制御信号を入力するようにしてもよい)。
【0031】
次に、図4を参照しつつ、液晶表示装置1の起動時(電源オン時)の本発明に関する部分の動作の概略を説明する。TVマイコン131は、ステップ41で電源スイッチ(操作部14に備えられる電源スイッチ14a若しくはリモコン装置2に備えられる電源スイッチ2a)の入力待ちを行い、電源オンの入力があった場合には、バイパス回路122をオン(図2に示したようなバイパス回路の場合は、装置の起動と同時にバイパス回路がオンとなる)とし(OSDクロック信号をグランドに接地し)、タイマをスタートする。タイマはTVマイコン131が有するタイマ機能によってもよいし、TVマイコン131外のタイマ回路によってもよい(ステップ42)。続くステップ43では、タイマが150m秒経過(電源オンから150m秒経過)したか否かを判断し、経過した場合には、バイパス回路122をオフとする(OSDクロック信号をTVマイコンへ入力)。なお、「150m秒」とは、スケーラIC121のクロック発振周波数が安定するのに(前述してきたごとく、起動時の周波数変動期間を経て周波数が一定するのに)十分な時間としての具体例であり、スケーラIC121の仕様などに伴って適宜変更されて適用されるものである。
【0032】
このような構成とすることにより、装置の電源オン時における発振回路(スケーラIC121)の発振周波数が安定しない期間(クロック信号としての用を成さない期間であり、すなわちOSDクロック信号線17がノイズ発生源となるだけのものとなっている期間)において、OSDクロック信号線17がグランドに接地されるため、OSDクロック信号線17からのノイズの影響を低減させることができるのである。特に、本実施例の液晶表示装置1のごとく、OSDクロック信号線17が、2つの基板間を接続するものであり、フラットケーブルのような接続線によって構成される部分があるような場合(アナログ回路部分とデジタル回路部分を可能な限り別基板としたため)には、当該ケーブル部分からの不要輻射ノイズが多くなるため、ケーブル部分に至る前(LCD制御基板12内)でOSDクロック信号線17をグランドに接地することにより、ノイズの影響を大幅に低減させることができる。なお、図5に、スケーラIC121とバイパス回路122との距離関係を示すために、LCD制御基板12のバイパス回路122が備えられる部分の実際のパターンの拡大図を示した(LCD制御基板12は多層基板で構成されるため、基板表面を示した図5のみでは回路的には意味を成さない)。スケーラIC121のOSDクロック信号の出力端子は、図中のC654付近であり、バイパス回路122との距離は実測で1.5cm程度となっている。このように、OSDクロック信号の出力端子の近傍にバイパス回路122を設けることにより、OSDクロック信号が印加されるOSDクロック信号線の距離も短くなり(バイパス回路122オン時)、OSDクロック信号線からのノイズの影響を低減させることができる。
【0033】
なお、本実施例では、電子装置の例として表示装置であるLCDを用いて説明し、ノイズ抑止のためにグランドに接地するクロック信号の一例としてOSDクロック信号を採り上げているが、本発明をこれに限るものではなく、ICや電子回路の同期信号となるクロック信号を使用する電子装置に対して有効に適用することができる。また、表示装置の例としてLCDを用いて説明したが、本発明をこれに限るものではなく、表示画面を構成する各画素の点灯制御を行うためにドットクロックが必要となるもの(例えばPDP:Plasma Display Panelやプロジェクターなど)であれば本実施例と同様の概念で、有効に適用することができる。加えて、本実施例では、スケーラIC121のクロック発振周波数が安定したか否かの判断を時間制御によって行っているが、本発明をこれに限るものではなく、例えば、スケーラIC121のクロック発振周波数を監視し(実測し)、発振周波数が所定レベルに達したか否かを判断する等してもよい。
【実施例2】
【0034】
図6は液晶表示装置の本発明に関する部分の動作の概略を示すフローチャートである。なお、本実施例における液晶表示装置は実施例1と同様の構成であるため、ここでの説明を省略し、必要があるときは図1〜図3などを参照して説明する。
【0035】
本実施例のOSDクロック信号供給制御について図6を参照しつつ説明する。OSD機能が起動していない場合には、バイパス回路122をオンとすることでOSDクロック信号をグランドに接地する(ステップ61)。ステップ62ではOSD機能の起動(操作部114やリモコン装置2からの入力により発生するOSD表示要求や、他の機能からのOSD表示要求など)の有無を確認し、OSD機能の起動があった場合(TVマイコン131は、文字情報等をOSD信号へ変換する回路を備え、OSD表示要求があった場合にOSD信号を生成するものであるため、「OSD機能の起動及び終了」を判断することができる。)にはバイパス回路122をオフとしてOSDクロック信号をTVマイコン131へと入力する。なお、OSD機能の動作の概略は、TVマイコン131が、入力されたOSDクロック信号に基づいてOSD信号を生成し、当該OSD信号がスケーラIC121へと入力され、スケーラIC121において映像信号(チューナ部132若しくはAV入力部133から入力される映像信号をパネル表示用のクロックに基づいて変換したもの)にOSD信号が重畳されて表示部11に送出されることによって行われる。ステップ64では、OSD機能の動作終了か否かを判断し、OSD機能が動作を終了した場合には、ステップ61へと移行してバイパス回路122をオンとする。
【0036】
以上のごとく、本実施例によれば、OSD機能(文字情報等をOSD信号へ変換する回路)がOSDクロック信号を必要としていない場合には、OSDクロック信号をグランドに接地するため、OSDクロック信号線17に不要なクロック信号が供給されることを防止することができ、OSDクロック信号線17からの不要輻射ノイズの発生を低減させることができる。なお且つ、本実施例によれば、OSDクロック信号のみの供給を停止させることができ、また、クロックの発振自体は停止させていないため、当該クロックを使用する他の回路(例えばパネル表示用のクロックを使用して表示部の解像度に合わせた映像信号を生成するスケーラ回路)の動作に影響を与えることが無い。加えて、クロックの発振が停止していないため、OSD機能が起動する際に、即座に安定した発振状態のクロック信号を供給することができる。なお、図7に別のOSDクロック信号供給制御を示すフローチャートを示した。図7におけるOSDクロック信号供給制御は、実施例1(図4)と実施例2(図6)の機能を包含するものであり、それぞれの実施例と同様の動作概念について同一の符号を使用している。図7に示されるOSDクロック信号供給制御によれば、電源オン後の150m秒以内の期間においては、OSD表示要求の有無に関わらずバイパス回路122をオン(OSDクロック信号をグランドに接地)としており(図7ステップ42・ステップ43)、当該期間の経過後にOSD機能の起動/終了に従ってバイパス回路122をオフ/オンとしている(図7ステップ61〜ステップ64)。このような構成により、電源オン時の発振不安定期間(OSDクロックが本来の機能を成さない期間)においてはOSD表示要求の有無に関わらずOSDクロック信号がグランドに接地され、当該期間の経過後には、OSD機能の起動期間のみOSDクロック信号の供給が行われるため、OSDクロック信号線17からの不要輻射ノイズの発生を有効に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】液晶表示装置の本発明に関する部分のみの概略を示すブロック図
【図2】バイパス回路の一例を示す回路ブロック図
【図3】液晶表示装置の外観を示す斜視図
【図4】液晶表示装置の起動時(電源オン時)の本発明に関する部分の動作の概略を示すフローチャート
【図5】LCD制御基板のバイパス回路が備えられる部分の実際のパターンの拡大図
【図6】液晶表示装置の本発明に関する部分の動作の概略を示すフローチャート
【図7】液晶表示装置の本発明に関する部分の別の動作の概略を示すフローチャート
【符号の説明】
【0038】
1 液晶表示装置(電子装置)
12 LCD制御基板
13 TV基板
17 OSDクロック信号線
121 スケーラIC
122 バイパス回路
131 TVマイコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種ICや電子回路における同期信号となるクロック信号を発生させる発振回路と、当該発振回路からの前記クロック信号が出力されるクロック信号線と基準電位となるグランド線との間に設けられるバイパス回路と、を備え、前記発振回路の発振開始時における発振周波数不安定期間において、前記バイパス回路をオンとすることにより前記発振周波数不安定期間における前記クロック信号をグランドに接地し、前記発振回路の発振周波数が安定した後に、前記バイパス回路をオフとすることにより前記クロック信号を前記クロック信号線から出力させることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
複数の各種ICや電子回路における同期信号となるクロック信号を発生させる発振回路と、当該複数の各種IC若しくは電子回路のそれぞれに接続される前記発振回路からの前記クロック信号が出力されるクロック信号線と基準電位となるグランド線との間に設けられるバイパス回路と、を備え、前記各種IC若しくは電子回路のうち前記クロック信号を必要としていないIC若しくは電子回路に接続される前記クロック信号線と前記グランド線との間に設けられた前記バイパス回路をオンとすることにより、前記クロック信号を必要としていないIC若しくは電子回路に対する前記クロック信号の供給を停止させることを特徴とする電子装置。
【請求項3】
複数の各種ICや電子回路における同期信号となるクロック信号を発生させる発振回路と、当該複数の各種IC若しくは電子回路のそれぞれに接続される前記発振回路からの前記クロック信号が出力されるクロック信号線と基準電位となるグランド線との間に設けられるバイパス回路と、を備え、前記発振回路の発振開始時における発振周波数不安定期間において、前記バイパス回路をオンとすることにより前記発振周波数不安定期間における前記クロック信号をグランドに接地し、前記発振回路の発振周波数が安定した後に、前記バイパス回路をオフとすることにより前記クロック信号を前記クロック信号線から出力させるようにし、且つ、前記各種IC若しくは電子回路のうち前記クロック信号を必要としていないIC若しくは電子回路に接続される前記クロック信号線と前記グランド線との間に設けられた前記バイパス回路をオンとすることにより、前記クロック信号を必要としていないIC若しくは電子回路に対する前記クロック信号の供給を停止させることを特徴とする電子装置。
【請求項4】
前記電子装置が、映像信号を装置の解像度に合わせて変換するスケーラ回路を備えた表示装置であり、前記発振回路が、パネル表示用のクロックを生成する発振回路であり、且つ、当該パネル表示用のクロックがOSD信号を生成するためのOSDクロックとしても出力され、前記バイパス回路が、前記OSDクロックが出力されるクロック信号線と前記グランド線との間に設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の電子装置である表示装置。
【請求項5】
前記スケーラ回路と前記発振回路とが備えられたスケーラICの、前記OSDクロックが出力されるOSDクロック出力端子の近傍となる部分に、前記バイパス回路が形成されたことを特徴とする請求項4記載の表示装置。
【請求項6】
各種ICや電子回路における同期信号となるクロック信号を発生させる発振回路と、当該発振回路からの前記クロック信号が出力されるクロック信号線と基準電位となるグランド線との間に設けられるバイパス回路と、を備えた電子装置のクロック信号供給制御方法であって、前記発振回路の発振開始時における発振周波数不安定期間において、前記バイパス回路をオンとすることにより前記発振周波数不安定期間における前記クロック信号をグランドに接地し、前記発振回路の発振周波数が安定した後に、前記バイパス回路をオフとすることにより前記クロック信号を前記クロック信号線から出力させることを特徴とするクロック信号供給制御方法。
【請求項7】
複数の各種ICや電子回路における同期信号となるクロック信号を発生させる発振回路と、当該複数の各種IC若しくは電子回路のそれぞれに接続される前記発振回路からの前記クロック信号が出力されるクロック信号線と基準電位となるグランド線との間に設けられるバイパス回路と、を備えた電子装置のクロック信号供給制御方法であって、前記各種IC若しくは電子回路のうち前記クロック信号を必要としていないIC若しくは電子回路に接続される前記クロック信号線と前記グランド線との間に設けられた前記バイパス回路をオンとすることにより、前記クロック信号を必要としていないIC若しくは電子回路に対する前記クロック信号の供給を停止させることを特徴とするクロック信号供給制御方法。
【請求項8】
複数の各種ICや電子回路における同期信号となるクロック信号を発生させる発振回路と、当該複数の各種IC若しくは電子回路のそれぞれに接続される前記発振回路からの前記クロック信号が出力されるクロック信号線と基準電位となるグランド線との間に設けられるバイパス回路と、を備えた電子装置のクロック信号供給制御方法であって、前記発振回路の発振開始時における発振周波数不安定期間において、前記バイパス回路をオンとすることにより前記発振周波数不安定期間における前記クロック信号をグランドに接地し、前記発振回路の発振周波数が安定した後に、前記バイパス回路をオフとすることにより前記クロック信号を前記クロック信号線から出力させるようにし、且つ、前記各種IC若しくは電子回路のうち前記クロック信号を必要としていないIC若しくは電子回路に接続される前記クロック信号線と前記グランド線との間に設けられた前記バイパス回路をオンとすることにより、前記クロック信号を必要としていないIC若しくは電子回路に対する前記クロック信号の供給を停止させることを特徴とするクロック信号供給制御方法。
【請求項9】
前記電子装置が、映像信号を装置の解像度に合わせて変換するスケーラ回路を備えた表示装置であり、前記発振回路が、パネル表示用のクロックを生成する発振回路であり、且つ、当該パネル表示用のクロックがOSD信号を生成するためのOSDクロックとしても出力され、前記バイパス回路が、前記OSDクロックが出力されるクロック信号線と前記グランド線との間に設けられることにより、前記OSDクロックの供給制御を行うことを特徴とする請求項6乃至請求項8の何れか1つに記載のクロック信号供給制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−109379(P2006−109379A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−296886(P2004−296886)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(390001959)オリオン電機株式会社 (427)
【Fターム(参考)】