説明

電子装置

【課題】 携帯型情報端末からの映像などの画面情報の表示中における、ユーザ入力に対するレスポンスを改善した「電子装置」を提供する。
【解決手段】 本発明の電子装置40は、ユーザの制御コマンドを携帯端末側へ送信する制御コマンド送信部166と、そのコマンドに応じた携帯端末側からの出力データを受信する受信部168と、受信した携帯端末側からの出力データを、ディスプレイ上に表示可能にする表示制御部169とを有する。制御コマンド送信部166は、ユーザからの制御コマンドが携帯端末側へ送信されるタイミングを制御する信号発行制御部166aを有しており、ここで設定された送信のタイミングに従って、制御コマンドを携帯端末側へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型情報端末が接続されたとき携帯型情報端末のアプリケーションを遠隔操作することができる電子装置に関し、特に、車載用の電子装置において、携帯型端末装置から転送されるナビゲーション地図に係る映像データを表示するときの表示制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンなどに代表される高機能な携帯型情報端末の利用が増加している。このような携帯型情報端末が車内に持ち込まれたとき、携帯型情報端末を車載用電子装置に接続し、車載用電子装置において携帯型情報端末のメディアデータなどを利用することが可能なものが登場している。すなわち携帯型情報端末は、内部に格納するメディアデータやアプリケーションを、パーソナルコンピュータ側から転送可能とするなどの目的のために、USBその他の規格による接続インタフェースを備えている。そして、最近の車載用電子装置は、その接続インタフェースを利用して、携帯型情報端末とのデータ交換を可能として、電子装置側から携帯型情報端末のアプリケーションを利用できるように構成されている。
【0003】
特に最近では、携帯型情報端末側で利用できるカーナビゲーションのアプリケーションが高性能化してきており、これを車載用電子装置に接続して利用したいという要望が高い。その一方で、そのようなアプリケーションを車載用電子装置側で利用する上では問題点もある。
【0004】
すなわち、ナビゲーションに係るアプリケーションでは、GPSで測量された車両位置情報に基づいて地図に係る映像データを生成し、表示出力する必要があるが、車載用電子装置側でこれを利用する場合、USBなどの接続インタフェースを介して送られてくる映像データ、すなわち連続する多数の圧縮された画像データを、電子装置側でデコードし、かつ電子装置側のディスプレイに適合するよう前処理する必要が生じる。転送されるデータ容量や前処理に必要なステップによっては、これらの処理によって電子装置側のコンピュータ資源が大量に消費される。一方で、携帯型情報端末と電子装置との間では、この映像データの転送以外にも、アプリケーションを制御するためのコマンドやステータスなどのやり取りが必要であり、そのためのコンピュータ資源の消費が発生する。
【0005】
そのため、電子装置側でナビゲーション映像の再生処理を優先的に行わせて映像をスムーズに再生させようとすると、制御コマンドやステータス転送のために利用できるコンピュータ資源が少なくなり、そのレスポンスが低下してしまい、一方で、制御コマンドやステータス転送のレスポンスを優先的に処理するようにすると、映像の再生処理が低下して、そのスムーズな描画ができなくなるといった問題がある。
【0006】
ナビゲーション地図データのデータ容量を最適化する技術に関して特許文献1が存在する。この文献では、車速を検知し、その車速に応じて地図データを構成する画素の数量を可変させることで、総合的なデータ転送量を低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010ー210554号公報 しかしながら、この文献は画像データの転送量を低減するものの、必ずしも電子装置側でのCPUの負荷を低減するものではないので、制御コマンドとの処理優先度に関する問題は、本文献では解決することはできない。そしてこのような問題は、ナビゲーションに係る地図データに拘わらず、データ容量の大きいアプリケーションを利用する場合に生じる問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明は、上記従来の課題を解決し、携帯型情報端末からの画面情報をスムーズに表示させる一方で、ユーザの操作に基づく電子装置側から制御コマンドなどの処理を迅速に行わせることが可能な電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電子装置は、接続した携帯型情報端末側のアプリケーションを起動して、表示手段上にその出力を表示可能とする電子装置であって、携帯型情報端末との間でデータおよび制御信号の送受のための接続を確立する接続手段と、ユーザの携帯型情報端末側への制御要求を受け付ける入力手段と、前記入力手段によるユーザの前記制御要求を検出する検出手段と、前記検出されたユーザの制御要求に係る制御信号を、携帯型情報端末側へ送信する制御要求送信手段と、前記制御信号に応じた携帯型情報端末側からの出力データを受信する受信手段と、前記受信した携帯型情報端末側からの出力データを、前記表示手段に適合するよう処理して表示可能にする表示制御手段と、を有し、前記制御要求送信手段は、ユーザからの制御要求に基づく制御信号が携帯型情報端末側へ送信されるタイミングを制御する信号発行制御手段を有し、該信号発行制御手段で設定された送信のタイミングに従って、前記制御信号を携帯型情報端末側へ送信する電子装置である。
【0010】
好ましくは前記信号発行制御手段は、少なくとも前記携帯型情報端末側からの出力データの処理を優先させる第1のタイミングモードと、前記制御信号の携帯型情報端末への送信を優先させる第2のタイミングモードとを有する。好ましくは前記信号発行制御手段は、ユーザからの携帯型情報端末側への制御要求があったときに、所定時間だけ前記第2のタイミングモードで、携帯型情報端末への制御信号の送信を行わせる。好ましくは前記電子装置が、車載用のものであり、かつその車両が走行中であるか否かを判断する走行状態判定手段を有し、前記信号発行制御手段が、車両の走行中には前記第1のタイミングモード、車両の停車中には前記第2のタイミングモード、の各モードで携帯型情報端末ヘの制御信号の送信を行わせる。好ましくは前記携帯型情報端末側から送信される出力データが、映像を構成する多数の連続送信される画像データを含んでおり、前記信号発行制御手段は、ユーザからの携帯型情報端末側への制御要求があってから該制御要求に基づく制御信号を携帯型情報端末側へ送信するまでの間に処理する前記画像データの数量を可変させることによって、前記第1および第2のタイミングモードを生成する。好ましくは前記携帯型情報端末側から送信される出力データが、GPS測量に基づくナビゲーションの映像地図データを含み、前記ユーザからの携帯型情報端末側への制御要求が、該映像地図データの表示態様の変更要求を含む。
【0011】
本発明に係るメディアシステムは、上記の特徴を備えた電子装置と、当該電子装置に接続された携帯型情報端末とを有する。好ましくは前記携帯型情報端末が、前記接続手段を介して電子装置に接続されたときに、前記電子装置からの制御信号を受けて、当該電子装置にその出力データを送信するよう機能するターミナルモードを有する。
【0012】
本発明の電子装置における制御プログラムは、接続した携帯型情報端末側のアプリケーションを起動して、表示手段上にその出力を表示可能とする電子装置における制御プログラムであって、携帯型情報端末との間でデータおよび制御信号の送受のための接続を確立するステップと、入力手段を介してユーザの携帯型情報端末側への制御要求を受け付けるステップと、前記入力手段によるユーザの前記制御要求を検出するステップと、前記検出されたユーザの制御要求に係る制御信号を、携帯型情報端末側へ送信するステップと、前記制御信号に応じた携帯型情報端末側からの出力データを受信するステップと、前記受信した携帯型情報端末側からの出力データを、前記表示手段に適合するよう処理して表示可能にするステップと、を有し、前記検出されたユーザの制御要求に係る制御信号を、携帯型情報端末側へ送信するステップは、ユーザからの制御要求に基づく制御信号が携帯型情報端末側へ送信されるタイミングを制御するステップを有し、ここで設定された送信のタイミングに従って、前記制御信号を携帯型情報端末側へ送信する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、例えばユーザの入力が開始された、車両が停車中である、などの状況に応じて、電子装置における処理の優先順位を調整することができるようになるので、その状況での優先度の高い処理にコンピュータの資源を最適化でき、その結果、データが円滑に処理されない、ユーザ操作に対するレスポンスが悪くなる、といった問題を最小化できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例に係るメディアシステムの構成を示す図である。
【図2】図1に示す車載用電子装置の典型的な構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す携帯型情報端末の典型的な構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例に係るターミナルモードの基本動作を説明するフローチャートである。
【図5】本発明の実施例に係る車載用電子装置と携帯型情報端末間の信号転送を説明するフローチャートである。
【図6】本発明の実施例による制御コマンド入力時の動作を説明するフローチャートである。
【図7】本発明の第1の実施例によるタイミングモードの設定動作を説明するフローチャートである。
【図8】本発明の第1の実施例によるタイミングモードの動作を説明するタイミングチャートである。
【図9】本発明の実施例による制御コマンドの送信タイミングを説明するための図である。
【図10】本発明の第2の実施例によるタイミングモードの設定動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。好ましい実施態様では、移動体として自動車を例示し、自動車に電子装置が搭載され、そこに携帯型情報端末が接続された例を説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明の実施例に係るメディアシステムの構成を示す図である。本実施例のメディアシステム10は、携帯型情報端末20(以下、携帯端末と略す)と、携帯端末20が接続手段30を介して接続された車載用電子装置40(以下、電子装置と略す)とを含んで構成される。ここで、携帯端末20は、ユーザ入力に応答して種々の情報処理を行う情報処理装置、コンピュータ装置などであることができ、その機能が特に制限されるものではなく、例えば、携帯電話機、スマートフォン、携帯型音声再生装置、携帯型映像再生装置、ポータブルの情報処理端末などであることができる。もっとも、以下の説明では、携帯端末20は、GPSなどの測位データに基づく移動体ナビゲーションを可能にするアプリケーションを搭載した携帯型情報端末を前提とする。電子装置40は、ユーザ入力に応答して種々の情報処理を行う情報処理装置、コンピュータ装置などであることができ、その機能が特に制限されるものではなく、例えば、ナビゲーション機能、オーディオ機能、ビデオ機能、テレビ機能、ラジオ機能などを含むことができる。電子装置40と携帯端末20とを接続する接続手段30は、有線ケーブルまたは無線信号のいずれであってもよい。例えば、USBケーブル、無線LAN、ブルーツースなどを用いて両機器を接続することができる。
【0017】
本実施例のメディアシステム10では、電子装置40に携帯端末20が接続されたとき、両機器はターミナルモードで動作する。ターミナルモードでは、映像データ、音声データ、制御データ等が機器間で転送され、携帯端末20に表示される画面情報が電子装置40に表示される。また、ターミナルモードでは、携帯端末20への直接的な入力操作が制限され(ロック)され、電子装置40からのみユーザ入力が可能になる。つまり、ユーザは、電子装置40の画面を操作することで、携帯端末20が保有するアプリケーションを遠隔操作することができる。
【0018】
ターミナルモードにおいて、携帯端末20のアプリケーションが起動されたとき、携帯端末20から電子装置40へ転送される画面情報は、ディジタル映像データおよびディジタル音声データを含み、これらはデータラインを介して送信される。映像データは、好ましくは、RFB(Remote Frame buffer)プロトコルを用いて通信制御され、音声データは、RTP(Real-time Transport Protocol)を用いて通信制御される。また、電子装置40から携帯端末20へ送信される操作情報(タッチパネルの座標情報やキー入力情報)、割り込み発生信号、その他の両機器間での制御信号は、制御ラインを介して送受される。
【0019】
図2(a)は、電子装置40の典型的な構成を示すブロック図である。同図に示すように、電子装置40は、ユーザからの入力を受け取る入力部100、携帯端末20との接続を確立する接続部110、携帯端末20から転送される画面情報等をDRAM等のバッファメモリに受信等する受信部120、携帯端末20から転送された画面情報等をディスプレイに表示する表示部130、音声を出力する音声出力部140、電子装置40が保有または管理するメディアソース150、各部を制御する制御部160、アプリケーションソフトウエア等を実行するためのプログラムを格納するプログラムメモリ170、音楽、映像、地図などの種々のデータを記憶可能なデータメモリ180、各部を接続するバス190とを備えている。
【0020】
好ましくは、入力部100は、リモコンやカーソルによる入力に加え、ディスプレイへのタッチパネル入力、ハンズフリー通話時のマイクロフォン44を含む。なお、携帯端末20を介してのハンズフリー通話時には、車内のスピーカ42から音声が出力される。メディアソース150は、例えば、CD、DVD、HDDなどの記録媒体に記録されたメディアデータの再生、テレビ放送やラジオ放送で受信したメディアデータの出力等を行うもので、所望のメディアソース150の選択は、ユーザ入力により行われる。プログラムメモリ170は、携帯端末20との接続を制御するプログラム、ターミナルモードを制御するプログラム、メニュー操作やメディアソース150を実行するためのアプリケーションなどを含む。制御部160は、中央処理装置(CPU)またはマイクロコントローラなどの処理装置を含んで構成され、プログラムメモリ170のプログラムまたはアプリケーションを実行することで各部の制御を行う。また、ここには図示しないが、制御部160は、車両の走行に関する情報、例えば、パーキングオンのオフ/オフ情報、車速情報、自車位置情報などを受け取り、この情報に応じた制御を行うことができる。
【0021】
図2(b)は、プログラムメモリ170に含まれるターミナルモード時の携帯端末側アプリケーションの制御プログラムに係る機能ブロック図である。この制御プログラムは、ターミナルモードにおいて、ユーザが携帯端末20のアプリケーションを使用する際に、その制御コマンドを携帯端末側に送信するタイミングを決定し、その決定されたタイミングで制御コマンドを端末側へ伝え、対応する表示映像データを受信してディスプレイ上に表示する一連の機能を実現する。
【0022】
この目的のために、同図(b)に示すように制御プログラム162は、タッチパネルその他の入力手段を介したユーザからの入力を検出するユーザ入力検出部164と、信号発行制御部166aで設定された所定のタイミングでユーザの制御コマンドに基づく制御信号を、携帯端末20側へ送信する制御コマンド送信部166と、電子装置40側からの要求に応じて携帯端末20から送信される映像を構成する圧縮された連続画像データを受信して、バッファリングする画像データ受信部168と、受信した画像データをデコードし、電子装置側のディスプレイの表示に最適化するよう前処理する表示制御部169とを有する。
【0023】
詳細は後述するが、車載用電子装置のターミナルモードにおいて、携帯端末20からのナビゲーション映像がディスプレイ上に表示されている場合、ユーザからの入力は、直ちに端末側へ送信されず、表示する画像データの処理の区切りのタイミングを待って送られる。制御コマンド送信部166の信号発行制御部166aは、この制御信号の送出タイミングを所定の基準に従って設定するものであり、制御コマンド送信部166は、ユーザ入力があった場合に、タイマーを起動し、信号発行制御部166aで設定されたタイミングを参照し、そのタイミングを待ってコマンドを携帯端末20へ送出する。
【0024】
実施例において、制御コマンド送信部166は、2種類のタイミング、すなわち、携帯端末20側からの出力データの処理を優先させるタイミングモード(以下、映像優先モードという)と、制御コマンドの携帯端末への送信を優先させるタイミングモード(以下、コマンド優先モード)を持っている。そして、第1の実施例において、信号発行制御部166aは、電子装置40がターミナルモードに入ったときに、そのデフォルトのモードとして、映像優先モードを設定する。そして、ユーザ入力があった場合に、この設定モードをコマンド優先モードに切り替え、その状態を一定時間維持する。各モードの詳細については後述する。
【0025】
図3は、携帯端末の典型的な構成を示すブロック図である。携帯端末20は、ユーザからの入力を受け取る入力部200、電子装置40との接続を確立する接続部210、ディスプレイに種々の画像を表示する表示部220、音声を出力する音声出力部230、外部のサーバとデータ通信をしたり他の携帯電話機との通話を可能にする通信部240、制御部250、携帯端末20が保有するアプリケーション等のプログラムを格納するプログラムメモリ260、音楽、映像、地図などのデータを記憶するデータメモリ270、各部を接続するバス280とを備えている。
【0026】
好ましくはプログラムメモリ260は、電子装置40に接続されときに実行されるターミナルモードを制御するプログラムを含む。ターミナルモードでは、携帯端末20は、表示部220に表示する映像データを含む画面情報を電子装置40に転送し、また、入力部200への入力操作をロックする。典型的な実施態様では接続部210は、携帯端末がデータ転送のためにコンピュータに接続するUSB等の接続インタフェースを利用して構成される。
【0027】
図4は、本実施例のターミナルモードの基本的な動作を説明するフローチャートである。電子装置40および携帯端末20は、接続部110および210を介して相互に接続されたか否かを確認し(S101)、接続が確認されると、電子装置40および携帯端末20はターミナルモードで動作する(S102)。ターミナルモードへの移行は、画面情報/操作情報の送受が可能となる接続が確認されれば十分であり、本例で言えば、ターミナルモードへの移行には、両機器がUSBケーブルまたは無線LANにより接続されていることが確認されればよい。
【0028】
ターミナルモードに移行すると、電子装置40は、メニュー画面に関するアプリケーションを起動し、表示部130にメニュー画面を表示させ(S103)、メニュー画面には、電子装置40から遠隔操作が可能な携帯端末20のアプリケーションに関するアイコンや電子装置40が管理するアプリケーションに関するアイコンなどが表示される。また、車両走行中には、遠隔操作が可能なアイコンの表示を制限するようにしてもよい。電子装置40は、入力部100を介してメニュー画面への入力操作(例えば、タッチ入力)が行われたか否かを監視し(S104)、携帯端末20のアイコンについての入力が行われた場合には、入力座標またはキー情報等の操作情報が制御ラインを介して携帯端末20へ送信される(S105)。携帯端末20は、受信した操作情報に基づき該当するアプリケーションを起動する(S106)。アプリケーションが起動されると、携帯端末20は、表示部220に表示する画面情報と同一の画面情報を電子装置40に転送し(S107)、転送された画面情報が電子装置40の表示部120に表示され、音声がスピーカから出力される(S108)。
【0029】
次に、本発明の第1の実施例に係るターミナルモード時の動作について図5のフローチャートを参照して説明する。このフローチャートでは、ターミナルモードにおいて、携帯端末20側のナビゲーション・アプリケーションが起動され、そのナビゲーションに係る映像データが電子装置40側のディスプレイに表示されているときに、ユーザ入力が発生した場合を例として示している。携帯端末20および電子装置40がUSBケーブル等により接続されると、両機器の接続部110、210が接続を認識し、その認識結果を受けて制御部160、250は、両機器をターミナルモードに移行させる(S201)。この状態で携帯端末20の操作はロックされ、電子装置40側のディスプレイ上に携帯端末20側を操作するためのメニューが表示される。
【0030】
ターミナルモードにおいて、メニュー画面に表示された、携帯端末20のナビゲーションに係るアプリケーション(以下、単に「ナビゲーション」という)を選択するユーザ操作が行われると(S202)、まず制御コマンド送信部166の信号発行制御部166aは、制御コマンドの送信タイミングのデフォルトモードとして、映像優先モードを設定する(S203)。そして、その操作情報を制御ラインを介して携帯端末20へ送信する。携帯端末20は、この制御信号に応じて、選択されたナビゲーションを起動する(S204)。ユーザとの複数のやり取りを通して(S205)、携帯端末20は、その要求に係る映像データを含む画像情報を生成し、電子装置40に対して転送する(S206)。画面情報は、ディジタル映像データおよび/または音声データを含み、これらのデータは、例えば、パケット化されて圧縮送信され、受信部120のバッファメモリに一時的に蓄積される。電子装置40は、転送された画面情報を解析し、分類して、各データの種類に応じた前処理を実施する(S207)。デコードおよび前処理された映像を構成する多数の連続画像データは、決められたフレームレートで表示部130に表示される(S208)。
【0031】
電子装置40側で携帯端末20からの映像データが処理され、ディスプレイ上に表示されている状態において、ユーザによる入力動作があると、制御部のユーザ入力検出部164はこれを検出する(S209)。このユーザ入力の検出を契機として、後述する制御コマンド送信処理が実施され(S210)、設定されたタイミングでこのユーザ入力に応じた制御信号が、携帯端末20へ送信される。携帯端末20側ではこの制御信号の解析が行われ(S211)、それに応じた処理を実行して、その結果としての情報を電子装置40へ向けて送信する。電子装置40側ではその情報に基づく処理を実行し、新たな画面構成などを構築して画面表示などを通してユーザに結果を返す。
【0032】
次に、図6を参照して、映像再生中にユーザ入力が検知されたときの制御コマンドの送信処理(図5におけるS210)、すなわち制御コマンド送信部166の動作について説明する。ナビゲーション映像の再生中にユーザ入力が検出されると(S301)、最初に、その制御コマンドが携帯端末20向けのものか、電子装置40向けのものかが判断される(S302)。典型的なユーザ入力はタッチスクリーン・ディスプレイ上のアイコンを押下することによりなされるが、押下されたアイコンの属性に基づいてこの判断を行うことができる。判断の結果、ユーザ入力が電子装置40向けのものである場合には、通常の電子装置におけるコマンド処理が実施される。
【0033】
ユーザ入力が携帯端末20向けのものである場合には、信号発行制御部166aが呼び出され、制御コマンドの送信タイミングの設定処理が実施される(S303)。初期状態において制御コマンドの送信タイミングは、スムーズに映像再生が行われるように映像優先モードにセットされており(図5のS203)、送信タイミングの設定処理においては、これをコマンド優先モードに切り替え、一定時間その状態を維持する。この処理の詳細については追って説明する。次に、この設定されたモード、すなわちコマンド優先モードが読み出されて(S304)、制御コマンド送信部166は、その設定されたタイミングを待って(S305)、制御コマンドを携帯端末20へ送信する(S306)。ここで、制御コマンドはコマンド優先モードに係るタイミングで送信されるため、ユーザ入力が検知されてからの遅延時間は最小に抑えられ、したがって、ユーザ操作に対するレスポンスの低下を引き起こすことがない。
【0034】
次に、図7を参照して、信号発行制御部166aにおけるコマンド送信タイミングの設定処理(図6のS303)について説明する。この設定処理では、最初に現在の設定モードが確認される(S401)。設定モードが映像優先モード(初期状態)である場合には、モードをコマンド優先モードに切り替る(S402)。次に、所定の設定時間を計測するためにタイマーが始動される(S403)。そして、設定された時間が経過すると(S404)、モードは映像優先モードに戻される(S405)。この設定時間は、次のユーザ入力が起こり得る間隔を基準に経験的に決定される。つまり、この設定時間が短すぎると、ユーザ入力のたびにモードの切り替え処理が発生してしまう一方で、設定時間が長すぎると、ナビゲーション映像の再生遅延の原因となる。タイマーの経過時間前に次のユーザ入力が発生した場合には、タイマーはリセットされ、ゼロ時間からのカウントが開始される。
【0035】
図8は、信号発行制御部166aにおけるタイミングモードの切り替え動作を説明するためのタイミングチャートである。図ではナビゲーション映像がディスプレイ上に表示されている状態で、ユーザ入力があった場合のモードの切り替えタイミングを示している。すなわち、初期状態でモードは映像優先モードにセットされており、ここでユーザ入力があると、それを契機として一定時間、コマンド優先モードに切り替わる。そして、一定時間が経過後にモードは、映像優先モードに戻る。モードがコマンド優先モードにある状態でさらにユーザ入力があった場合は、タイマーがリセットされ、その時点から一定時間が計測される。
【0036】
図9は、前記各モードにおける制御コマンドの送信タイミングを説明するための図である。ここではナビゲーション映像のための7コマ分の画像データが、携帯端末20から送信されている状態において、ユーザ入力があったと仮定して説明をする。各コマの画像データはそれを電子装置40のディスプレイに表示再生するために、デコードおよびディスプレイへの最適化のための前処理を施される。ここで最初の画像(画像1)の処理の直前または処理中にユーザ入力があった場合、タイミングモードが映像優先モードに設定されていると(図における2列目)、画像4までのデータ処理を完了してから画像5の処理のためのコンピュータ資源を活用して、コマンド送信のための処理を実行する。このため、いわゆるコマ落ちは1画像で済み、再生映像はスムーズに見える。一方で、タイミングモードがコマンド優先モードに設定されている場合は(図における3列目)、ユーザ入力が行われると1画像分のデータ処理を完了して直ちにコマンド送信のための処理を実行する。画像処理中に連続してユーザ入力があると(通常、そのようなことが多い)、受信画像に対するコマ落ちの数量が多くなって映像の再生品質は低下するが、ユーザの入力に対するレスポンスは良くなる。
【0037】
本実施例による制御コマンドの送信タイミングによれば、初期状態でそのモードは映像優先モードに設定されているので、ナビゲーション映像の再生はスムーズに行われる。一方で、ユーザ入力があった場合にはモードはそれを起点とする一定時間だけコマンド優先モードに切り替えられ、そのため操作に対する高いレスポンス性能が保証される。
【0038】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第1の実施例では、ユーザ入力を契機として制御コマンドの送信タイミングのモードを切り替えるようにする例を示したが、第2の実施例では、本電子装置を搭載する車両の走行状態に応じてタイミングモードの切り替えを行う例について説明する。図10は、第2の実施例によるタイミングモードの設定動作を説明するフローチャートである。
【0039】
本設定動作は、図5におけるステップS202において、ナビゲーションに係るアプリケーションがユーザにより選択され、その起動が開始されたことを契機として開始されると共に、ナビゲーションの動作中は、所定の時間間隔で繰り返し呼び出され実施される。処理の最初で車両の走行状態に係る情報を取得し(S501)、車両が走行中であるか、停車中であるかを判断する(S502)。この情報はナビゲーション装置が備えるGPSその他の位置測量装置、車両に搭載されている車速センサーからの車速パルス信号を利用する。そして、車両が走行中であると判断された場合、制御コマンドの送信タイミングのモードを、映像優先モードに設定する(S503)。これは、車両の走行中にユーザ入力が行われる頻度は低く、一方でナビゲーション装置による誘導が適時に行われることが重要(特に、交差点などにおける進路変更案内など)であるためである。一方で、車両が停車中であると判断された場合には、モードをコマンド優先モードに設定する(S504)。これは、停車中においてはナビゲーション装置による誘導の必要性は低くなり、一方でユーザによる入力操作が発生する可能性が高いためである。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。上記実施例では、携帯端末におけるナビゲーション起動中における制御コマンドの送信タイミングについて説明したが、携帯端末上の他のアプリケーション、例えば、映像再生、音楽再生などを電子装置側で動作させるような場合においても、本発明のタイミング制御を利用できる。
【符号の説明】
【0041】
10:メディアシステム 20:携帯型情報端末
30:接続手段 40:電子装置
160:制御部 162:制御プログラム
164:ユーザ入力検出部 166:制御コマンド送信部
166a:信号発行制御部 168:画像データ受信部
169:表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続した携帯型情報端末側のアプリケーションを起動して、表示手段上にその出力を表示可能とする電子装置であって、
携帯型情報端末との間でデータおよび制御信号の送受のための接続を確立する接続手段と、
ユーザの携帯型情報端末側への制御要求を受け付ける入力手段と、
前記入力手段によるユーザの前記制御要求を検出する検出手段と、
前記検出されたユーザの制御要求に係る制御信号を、携帯型情報端末側へ送信する制御要求送信手段と、
前記制御信号に応じた携帯型情報端末側からの出力データを受信する受信手段と、
前記受信した携帯型情報端末側からの出力データを、前記表示手段に適合するよう処理して表示可能にする表示制御手段と、を有し、
前記制御要求送信手段は、ユーザからの制御要求に基づく制御信号が携帯型情報端末側へ送信されるタイミングを制御する信号発行制御手段を有し、該信号発行制御手段で設定された送信のタイミングに従って、前記制御信号を携帯型情報端末側へ送信する電子装置。
【請求項2】
前記信号発行制御手段は、少なくとも前記携帯型情報端末側からの出力データの処理を優先させる第1のタイミングモードと、前記制御信号の携帯型情報端末への送信を優先させる第2のタイミングモードとを有する、請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記信号発行制御手段は、ユーザからの携帯型情報端末側への制御要求があったときに、所定時間だけ前記第2のタイミングモードで、携帯型情報端末への制御信号の送信を行わせる、請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記電子装置が、車載用のものであり、かつその車両が走行中であるか否かを判断する走行状態判定手段を有し、
前記信号発行制御手段が、車両の走行中には前記第1のタイミングモード、車両の停車中には前記第2のタイミングモード、の各モードで携帯型情報端末ヘの制御信号の送信を行わせる、請求項2に記載の電子装置。
【請求項5】
前記携帯型情報端末側から送信される出力データが、映像を構成する多数の連続送信される画像データを含んでおり、
前記信号発行制御手段は、ユーザからの携帯型情報端末側への制御要求があってから該制御要求に基づく制御信号を携帯型情報端末側へ送信するまでの間に処理する前記画像データの数量を可変させることによって、前記第1および第2のタイミングモードを生成する、請求項2ないし4いずれか1つに記載の電子装置。
【請求項6】
前記携帯型情報端末側から送信される出力データが、GPS測量に基づくナビゲーションの映像地図データを含み、
前記ユーザからの携帯型情報端末側への制御要求が、該映像地図データの表示態様の変更要求を含む、請求項5に記載の電子装置。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれか1つに記載の電子装置と、当該電子装置に接続された携帯型情報端末とを有するメディアシステム。
【請求項8】
前記携帯型情報端末が、前記接続手段を介して電子装置に接続されたときに、前記電子装置からの制御信号を受けて、当該電子装置にその出力データを送信するよう機能するターミナルモードを有する、請求項7に記載のメディアシステム。
【請求項9】
接続した携帯型情報端末側のアプリケーションを起動して、表示手段上にその出力を表示可能とする電子装置における制御プログラムであって、
携帯型情報端末との間でデータおよび制御信号の送受のための接続を確立するステップと、
入力手段を介してユーザの携帯型情報端末側への制御要求を受け付けるステップと、
前記入力手段によるユーザの前記制御要求を検出するステップと、
前記検出されたユーザの制御要求に係る制御信号を、携帯型情報端末側へ送信するステップと、
前記制御信号に応じた携帯型情報端末側からの出力データを受信するステップと、
前記受信した携帯型情報端末側からの出力データを、前記表示手段に適合するよう処理して表示可能にするステップと、を有し、
前記検出されたユーザの制御要求に係る制御信号を、携帯型情報端末側へ送信するステップは、ユーザからの制御要求に基づく制御信号が携帯型情報端末側へ送信されるタイミングを制御するステップを有し、ここで設定された送信のタイミングに従って、前記制御信号を携帯型情報端末側へ送信する、電子装置における制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−208044(P2012−208044A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74783(P2011−74783)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】