説明

電子部品およびコンデンサ

【課題】基板へのダメージが少ない導電層形成手段の提供、および優れた電気特性を有する電子部品およびコンデンサの提供。
【解決手段】セラミック、またはアルミニウム、タンタル、ニオブ、またはこれらの酸化物もしくは窒化物からなる基板と、該基板上に粘着性を有する導電性シートを配置することによって形成された導電層を含む電子部品、および該電子部品を有するコンデンサ。導電層を形成する過程で、基板に加えられる圧力が少ない。その結果、導電層形成過程での基板へのダメージが抑制され、電子デバイスの信頼性向上に寄与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板と導電性シートとが積層された電子部品に関する。また、本発明は、前記電子部品を有するコンデンサに関する。本発明は、電気回路基板などの各種電子デバイスに用いられる。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスを形成する上では、基板上に導電層が形成されたもの、すなわち電子部品が用いられることが多い。この電子部品は、例えば、コンデンサなどに用いられる。
【0003】
基板上に導電層を形成する方法としては、スクリーン印刷や転写が用いられていた。スクリーン印刷を用いる方法としては、例えば、特許文献1には、スクリーン印刷を用いてプリント配線板を製造する方法が開示されている。転写によって導電層を形成する方法としては、例えば、特許文献2が挙げられる。
【0004】
しかしながら、基板自身が非常に弱い場合、スクリーン印刷や転写の過程で基板に問題が生じることがある。例えば、スクリーン印刷においてはスキージーを用いてペーストを基板上に塗布することとなるが、スキージーによって加えられる押圧によって、基板が歪むおそれがある。また、転写の際にも圧力を加える必要があり、同様に基板が歪むおそれがある。近年においては、電子デバイスの小型化を実現するために薄い基板を用いることが求められており、基板へ加えられる圧力による基板へのダメージが懸念されている。
【0005】
一方、積層型の部品の場合、各層は導電性接着剤で接合する場合が多いが(例えば、特許文献3)、導電性接着剤を用いる場合、接着層の膜厚を均一化するのが難しい。また、塗布面のむらやボイドによる接合不良を起こすことが懸念される。さらに、接着層が存在するため、製品が厚さおよび抵抗値が上昇する傾向がある。他にも、各層を加熱処理によって形成してから導電性接着剤によって各層を接合することになるので、基板へかかる熱負荷が大きくなる。
【0006】
【特許文献1】特開2004−063538号公報
【特許文献2】国際公開第02/03766号パンフレット
【特許文献3】米国特許第6985353号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、基板へのダメージが少ない導電層形成手段を提供し、もって、優れた電気特性を有する電子部品の実現に寄与することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基板と、前記基板に貼付された、粘着性を有する導電性シートとを含む電子部品に関する。また本発明は、前記電子部品を有するコンデンサに関する。
【0009】
詳細には、本発明の電子部品は、基板と、前記基板に貼付された、粘着性を有する導電性シートとを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の電子部品は、粘着性を有する導電性シートが、基板の上面、下面および少なくとも1つの側面を被覆するように配置されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の電子部品は、粘着性を有する導電性シートが貼付された基板、すなわち本発明の電子部品を2以上積層したもの(積層電子部品)を包含する。この積層電子部品では、各層は粘着性を有する導電性シートの粘着力を利用して互いに接着されることが好ましい。また、別法として、積層電子部品は、各層が導電性接着剤を用いて互いに接着されてもよい。
【0012】
本発明のコンデンサは、上記のいずれかの電子部品または積層電子部品を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の電子部品、積層電子部品、またはコンデンサを構成する基板は、誘電体、または導体と誘電体とから形成されることが好ましい。
【0014】
具体的には、本発明の電子部品または積層電子部品を構成する基板は、セラミック、またはアルミニウム、タンタル、ニオブ、またはこれらの酸化物もしくは窒化物からなる群から選択されることができる。また、本発明のコンデンサを構成する基板は、セラミック;アルミニウムとその酸化物もしくは窒化物;タンタルとその酸化物もしくは窒化物;ニオブとその酸化物もしくは窒化物;およびアルミニウム、タンタルまたはニオブの酸化物もしくは窒化物からなる群から選択されることができる。特に、本発明のコンデンサを構成する基板は、化成処理によって表面に酸化被膜が形成された金属アルミニウムからなる金属板であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電子部品においては、基板上に粘着性を有する導電性シートを配置することによって、導電層を形成する。このため、導電層を形成する過程で、基板に加えられる圧力が少ない。その結果、導電層形成過程での基板へのダメージが抑制され、ひいては電子デバイスの信頼性向上に寄与する。
【0016】
また、基板上に導電ペーストを塗布して導電層を形成する場合には、塗布部位によって膜厚のばらつきが生じやすい。本発明においては、シート状の導電層が予め作成されるが、シート状の導電層は膜厚コントロールが比較的容易である。このため、一定の膜厚の導電層が形成され、形成される電子部品およびこれを有するコンデンサ間の性能のばらつきを抑えることが可能であると同時に、その薄型化、小型化にも貢献しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、電子部品に関する。この電子部品は、基板と、前記基板に貼付された粘着性を有する導電性シートとを含むものである。また、本発明は、コンデンサに関する。このコンデンサは、前記電子部品を有するものである。以下、順次これらの発明について説明する。
【0018】
(I)電子部品
図面を参照して、本発明の電子部品を説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態の電子部品301を示す斜視図である。この電子部品301は、基板10と粘着性を有する導電性シート20とを有する。基板10は、上面101、下面102、および2組の対向する側面103、114を有する。粘着性を有する導電性シート20は、この基板の上面101、下面102および1組の対向する側面114を覆うように設置されている。
【0020】
粘着性を有する導電性シート20は、電子部品の目的に合わせ、基板の側面114の幅方向のいずれの位置に配置されていてもよい。例えば、粘着性を有する導電性シート20は、図1に示されるように中央部に配置されてもよく、あるいは、図示していないが片側に寄せて配置されていてもよい。
【0021】
粘着性を有する導電性シート20を設ける基板10の側面114の幅をW10、粘着性を有する導電性シート20の幅をW20とする場合、W10:W20の比は、100:98〜100:50であることが好ましい。なお、基板10の大きさは、幅×奥行き方向の長さ×厚さで、例えば0.4cm×0.4cm×0.5mm〜3cm×3cm×3mm程度の範囲であることが好ましい。
【0022】
(第1の実施形態の電子部品の製造方法)
本発明の第1の実施形態の電子部品は、例えば図2(a)〜(c)に示すようにして製造される。具体的には、粘着性を有する導電性シート20を、基板10の上面101、下面102、および2組の対向する側面103、104のうち1組の対向する側面104を被覆するように巻きつける。粘着性を有する導電性シート20が巻きつけられる側面104のことを、側面114と呼ぶ。
【0023】
粘着性を有する導電性シート20の巻きつけ開始位置は、例えば図2では基板10の上面101の中央付近としたが、本発明は特にこれに限定されない。例えば、上面101と側面114の1つが交差する部分を開始位置としてもよい。
【0024】
巻きつける方法は、手動であってもよく、可能な場合には自動化手段を用いてもよい。
【0025】
巻きつけた粘着性を有する導電性シート20を基板10にしっかり密着させるため、電子部品301を加熱処理することが好ましい。加熱の条件は80℃〜200℃、10分〜60分であることが好ましい。
【0026】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態の電子部品302を示す斜視図である。この電子部品302は、基板10と、粘着性を有する導電性シート20とを有する。本実施形態では、基板10は第1の実施形態で説明したものと同じであるが、粘着性を有する導電性シート20の被覆形態が、第1の実施形態と異なる。
【0027】
粘着性を有する導電性シート20は、上面101および下面102と、1組の対向する側面の一方の側面114のみに設けられる。
【0028】
粘着性を有する導電性シート20は、基板10の上面101および下面102において、1組の対向する側面の、一方の側面114から他方の側面104まで敷設することができる。あるいは、粘着性を有する導電性シート20は、一方の側面114から他方の側面104の途中まで、すなわち、基板10の側面103の長さD10の途中まで敷設されていてもよい。途中まで敷設する場合、敷設の長さ(奥行き方向の長さ)D20は、D10:D20の比として、好ましくは、100:100〜100:90の範囲である。
【0029】
基板10の側面114の幅(W10)と、粘着性を有する導電性シート20の幅(W20)の比、W10:W20は、100:98〜100:50であることが好ましい。
【0030】
(第2の実施形態の電子部品の製造方法)
本発明の第2の実施形態の電子部品302は、図1に示される電子部品301の場合と同様に、粘着性を有する導電性シート20を、手動または可能な場合には自動化手段により基板10に巻きつけることによって製造される。ただし、図1に示される電子部品301の場合とは異なり、基板10の上面101、下面102、および1組の対向する側面の一方の側面114のみを被覆するように、粘着性を有する導電性シート20を巻きつける。
【0031】
[第3の実施形態]
(i)第1の例
図4(A)(斜視図)および図4(B)(側面106を示す側面図)は、本発明の第3の実施形態の第1の例の積層電子部品303を示す図である。この積層電子部品303は、2以上の図1に示される電子部品301を積層させた構造を有する積層体である。
【0032】
図に示すように、電子部品303において、電子部品301は同一の配向を有する。すなわち、電子部品301の粘着性を有する導電性シート20で被覆された1組の対向する側面114と、被覆されていない1組の対向する側面103とが、それぞれ同じ向きになるように配置される。この結果として、積層電子部品303は、粘着性を有する導電性シート20で被覆された1組の対向する側面114が積み重なった、側面106と、粘着性を有する導電性シート20で被覆されていない1組の対向する側面103が積み重なった、側面105とを有する。
【0033】
図では5枚の電子部品301が積層された例を示したが、積層数は特に限定されず、用途に応じて設定することができる。
【0034】
本発明の積層電子部品303は、粘着性を有する導電性シート20を有する電子部品301の積層体であるので、この積層体は粘着性を有する導電性シート20のみで接着され、積層体とすることができる。積層電子部品303の接着には、電子部品301に含まれる粘着性を有する導電性シート20の粘着力を利用する。
【0035】
なお、本発明では、必要に応じて、別途導電性接着剤を用いて、あるいは、本発明で用いる導電性シートを電子部品間に介在させて、積層体の接着を実現してもよい。以下に、これらの例について説明する。
【0036】
(ii)第2の例
第2の例は、複数の電子部品301の間に導電性接着剤を介在させて積層した積層電子部品の例である。図4(C)は、このような積層電子部品304の側面図である。図4(C)は、積層体の側面106側の図である。
【0037】
この積層電子部品304は、図示されるように接着手段として導電性接着剤40を使用して、電子部品301を積層させたものである。
【0038】
(iii)第3の例
第3の例は、複数の電子部品301の間に粘着性を有する導電性シートを介在させて積層した積層電子部品の例である。図4(D)は、この積層電子部品305の側面図である。図4(D)は、積層体の側面106側の図である。
【0039】
この積層電子部品305は、電子部品301の接着手段として、各電子部品301間に粘着性を有する導電性シート20を間挿して用いる。電子部品の接着には、粘着性を有する導電性シートの粘着力を利用する。
【0040】
(第3の実施形態の電子部品の製造方法)
本発明の第3の実施形態の積層電子部品は、2以上の電子部品301を、同一の配向で積層することによって製造される。すなわち、電子部品303において、電子部品301を、粘着性を有する導電性シート20で被覆されている側面114と、被覆されていない側面103とが、電子部品303の各側面内で混在しないような向きで積層する。積層は、手動または自動で行うことができる。
【0041】
上記第1の例の積層電子部品303では、各電子部品301間の接着には、電子部品301に含まれる粘着性を有する導電性シート20の粘着力を利用する。
【0042】
十分な接着力が確保される場合には、第1の例の積層電子部品のように導電性接着剤を用いずに電子部品を接着することが好ましい。この場合、導電性接着剤を用いない分、導電性接着剤を用いる場合と比べて、得られる積層体の厚さが薄くなり、製品の小型化に寄与する。また、導電性接着剤はある程度の抵抗を有するため、導電性接着剤を用いると、製品の抵抗値が上昇する傾向がある。導電性接着剤を用いない場合、抵抗値を低く抑えることが可能である。さらに、接着剤を用いない場合、工程の短縮および部品への熱履歴の低減といった利点もある。
【0043】
例えば、第2または第3の例の積層電子部品のように、導電性接着剤40または粘着性を有する導電性シート20を必要に応じて各電子部品301の間に介在させて積層体を形成することができる。導電性接着剤40は、例えば注射器状のものを用いて手動または自動化手段により付着させることができる。粘着性を有する導電性シート20は、手動または自動化手段で各電子部品301に貼付することができる。なお、電子部品301を複数積層する場合、積層は予め導電性接着剤40または粘着性を有する導電性シート20を、電子部品301にそれぞれ塗布または貼付し、これを順次積層すればよい。あるいは、電子部品301に導電性接着剤40または粘着性を有する導電性シート20を塗布または貼付し、次いでこの導電性接着剤40または粘着性を有する導電性シート20の面に電子部品301を積層し、この手順を繰り返すことにより積層電子部品を形成してもよい。
【0044】
本発明では、電子部品301を積層した後、この積層体を加熱して硬化させることによって各電子部品301を一体化させる。加熱条件は、概ね25℃〜200℃、5分〜60分であることが好ましい。
【0045】
[第4の実施形態]
第4の実施形態は、1枚の粘着性を有する導電性シートと、複数の基板とから構成される積層電子部品の例である。
【0046】
図5(A)は第4の実施形態の積層電子部品306の斜視図であり、図5(B)は、この積層電子部品306の側面107を示す側面図である。この積層電子部品306は、まず、1枚の粘着性を有する導電性シート20が、第1の基板10の下面102、1組の対向する側面のうちの一方の側面114および上面101をそれぞれ覆い、この上面の粘着性を有する導電性シート20上に第2の基板10'が設けられる。この第2の基板10'の1組の対向する側面のうち、第1の基板10の粘着性を有する導電性シート20が覆っている側面114と対向する側の側面114'と、第2の基板10'の上面101'とを、前記1枚の粘着性を有する導電性シート20が覆う。このような構造が積層電子部品306の積層数繰り返され、第4の実施形態の積層電子部品306を構成する。
【0047】
図5(A)および(B)に示されるように、積層電子部品306の側面108においては、粘着性を有する導電性シート20で被覆された基板の側面114と、被覆されていない基板の側面104とが、交互に現れる。すなわち、側面108は、粘着性を有する導電性シート20で部分的に被覆されている。
【0048】
一方、図5(A)および(B)に示されるように、積層電子部品306の他の1組の対向する側面107は、粘着性を有する導電性シート20で被覆されていない構造となる。
【0049】
図5では5枚の基板を用いているが、積層数は特に限定されず、用途に応じて増減することができる。
【0050】
次に、上記第4の実施形態の別の例を図5(C)に示す。図5(C)は、積層電子部品307の側面図であり、一方の側面107の側から見た図である。
【0051】
この例は、積層電子部品306の、粘着性を有する導電性シート20で被覆されている側面108の一方の側を、粘着性を有する導電性シート20でさらに被覆した構造を有する。
【0052】
次に、上記第4の実施形態の別の例を図5(D)に示す。図5(D)は、積層電子部品308の側面図であり、一方の側面107の側から見た図である。
【0053】
この例は、積層電子部品306の、粘着性を有する導電性シート20で被覆されている側面108の両方の側を、粘着性を有する導電性シート20でさらに被覆した構造を有する。
【0054】
(第4の実施形態の電子部品の製造方法)
本発明の第4の実施形態の電子部品306は、粘着性を有する導電性シート20と、2以上の基板10とを、手動または自動化手段により、交互に重ね合わせることによって製造される。例えば、積層電子部品306は、図6(a)〜(e)に示すようにして製造することができる。具体的には、まず、1枚の粘着性を有する導電性シート20を準備する。この粘着性を有する導電性シート20上に、第1の基板10の下面102を接着する。次に、粘着性を有する導電性シート20で、基板10の1組の対向する側面のうちの一方の側面114を被覆し(図6(a))、続いて、上面101を被覆する(図6(b))。次に、この第1の基板10の上面の粘着性を有する導電性シート20上に第2の基板10'の下面102'を接着する。このとき、粘着性を有する導電性シート20は、この第2の基板の側面のうち、第1の基板10'の粘着性を有する導電性シート20が覆っている側面114と対向する側の側面114'の側に延びている。この粘着性を有する導電性シート20を、第2の基板10'の上面を覆うように接着させると、前記側面114'と第2の基板の上面101'に粘着性を有する導電性シート20が敷設される(図6(c)、(d))。この操作を繰り返すことで、第4の実施形態の積層電子部品306を得ることができる(図6(e))。
【0055】
上記の積層電子部品307および308は、積層電子部品306の、粘着性を有する導電性シート20で部分的に被覆されている側面108に対して、粘着性を有する導電性シート20を、手動または自動化手段により貼付することによって製造される。
【0056】
本発明では、基板および粘着性を有する導電性シートを積層した後、これを加熱して硬化させることによって各構成要素を一体化させる。加熱の条件は、80℃〜200℃、10分〜60分であることが好ましい。
【0057】
[第5の実施形態]
第5の実施形態は、第2の実施形態の電子部品を複数積層した積層電子部品の例である。第5の実施形態の積層電子部品は、2以上の図3に示される電子部品302を積層させた構造を有する。積層電子部品内における積層された電子部品302の配向は特に限定されず、各電子部品302の粘着性を有する導電性シート20で被覆された側面114が、積層電子部品の1組の対向する側面の、どちらの面に、どの順番で現れていてもよい。
【0058】
一例として、図7(A)は、本発明の第5の実施形態の積層電子部品309を示す斜面図である。積層電子部品309は、1組の対向する側面109を有し、この側面109は、電子部品302の粘着性を有する導電性シート20で被覆された側面114と、これに対向する被覆されていない側面104とが交互に現れる構造を有する。
【0059】
一方、積層電子部品309の1組の対向する側面105においては、電子部品302の、粘着性を有する導電性シート20で被覆されていない側面103が現れる。
【0060】
図7(A)では5枚の電子部品302が積層されているが、積層数は特に限定されず、用途に応じて増減することができる。
【0061】
また、電子部品302の積層構造は、図7(A)の例に限定されず、粘着性を有するシート20で被覆された側面114または被覆されていない側面104同士が連続して、あるいはそれらの側面がランダムに、側面109に現れていてもよい。
【0062】
次に、第5の実施形態の別の例について説明する。図7(B)にこの例の積層電子部品310を示す。この例は、積層電子部品309において、電子部品302の間に、導電性接着剤40を介在させた例である。さらに、図示していないが、導電性シート40に代えて、導電性シート20を介在させてもよい。
【0063】
(第5の実施形態の電子部品の製造方法)
本発明の第5の実施形態の積層電子部品は、2以上の電子部品302を、電子部品302の粘着性を有する導電性シート20で被覆された側面114が、積層電子部品の1組の対向する側面のどちらか一方に現れるように重ね合わせることによって製造される。
【0064】
その一例として、本発明の第5の実施形態の積層電子部品309は、2以上の電子部品302を、粘着性を有する導電性シート20で被覆された側面114が1組の対向する側面109に交互に現れるように、重ね合わせることによって製造される。
【0065】
積層電子部品309では、5枚の電子部品302を用いているが、積層枚数は特に限定されず、用途に応じて増減してもよい。
【0066】
また、電子部品302の積層方法は、積層電子部品309の例に限定されず、例えば、電子部品302を、被覆された側面114または被覆されていない側面104同士が連続して、あるいはそれらがランダムに側面109に現れるように、重ね合わせてもよい。
【0067】
この第5の実施形態において、電子部品302は、電子部品302に含まれる粘着性を有する導電性シート20の粘着力を利用して互いに接着される。
【0068】
本実施形態では、積層手段はこれに限定されず、例えば図7(B)に示す上記例では、電子部品302間に導電性接着剤40を塗布し、各電子部品302を接着してもよい。また、図示はしないが、電子部品302間に粘着性を有する導電性シート20を間挿して用いることによって、粘着性を有する導電性シートの粘着力を利用して互いに接着してもよい。
【0069】
さらに、第4の実施形態で説明した2種類の例のように、粘着性を有する導電性シート20で部分的に被覆されている側面109の一方または両方に対して、粘着性を有する導電性シート20を、手動または自動化手段により貼付してもよい。
【0070】
本発明の例の電子部品は、上述のものに限られず、例えば電子部品301と電子部品302とを種々の組み合わせで積層させたものであってもよい。
【0071】
導電性接着剤40は、上述した通り、例えば注射器状のものを用いて手動または可能な場合には自動化手段により付着させることができる。導電性シートは、手動または自動化手段で各電子部品302に貼付することができる。なお、電子部品302を複数積層する場合、積層は予め導電性接着剤40または導電性シート20を、電子部品302にそれぞれ塗布または貼付し、これを順次積層すればよい。あるいは、電子部品302に導電性接着剤40または導電性シート20を塗布または貼付し、次いでこの導電性接着剤40または導電性シート20の面に電子部品302を積層し、この手順を繰り返すことにより積層電子部品を形成してもよい。
【0072】
本発明では、電子部品302を積層した後、これを加熱して硬化させることによって各電子部品302を一体化させる。加熱の条件は、概ね25℃〜200℃、5分〜60分であることが好ましい。
【0073】
(II)コンデンサ
以下に、本発明のコンデンサについて説明する。以下に説明するコンデンサは、1つの可能性として、金属板を用い、この金属板上に誘電体としてその金属板の金属酸化被膜が形成されているものを基板として採用した例である。
【0074】
図8は、本発明の1つの実施形態のコンデンサ60を示す断面図である。この構造を、以下に具体的に説明する。
【0075】
電子部品311は、金属板12と金属板12の上面、下面および1組の対向する側面を被覆する酸化被膜14とからなる基板10と、基板10の酸化被膜14上に貼付された粘着性を有する導電性シート20とからなる。酸化被膜14で被覆されていない1組の対向する側面、金属板の上面および下面の粘着性を有する導電性シート20により被覆されていない部分、および、粘着性を有する導電性シート20が貼付されている側面の該粘着シートが貼られていない部分は、金属板12の表面が露出している(すなわち、酸化被膜で被覆されていない)。
【0076】
この電子部品311を、金属が露出している端部が同じ方向となるような向きで複数層積層させたものが、本発明の積層電子部品312である。図では4枚の電子部品311が積層されて積層電子部品312を形成しているが、積層数は特に限定されず、用途に応じて増減することができる。
【0077】
本発明のコンデンサ60は、積層電子部品312の1組の対向する2つの側面のそれぞれにおいて、積層電子部品312を構成する電子部品311の金属の表面が露出している端部を、接合したものである。図の符号50は接合部を示す。
【0078】
(本実施形態のコンデンサの製造方法)
このコンデンサは、例えば図9(a)〜(f)に示すようにして製造される。
【0079】
具体的には、まず、金属板12を準備する(図9(a))。この金属板を化成処理することによって、表面に酸化被膜14を形成させ、これを基板10とする(図9(b))。次に、この基板10に対して、粘着性を有する導電性シート20を、基板10の上面、下面および1組の対向する側面を被覆するように巻きつける(図9(c))。続いて、基板10の、粘着性を有する導電性シート20で被覆されていない1組の対向する側面、金属板の上面および下面の粘着性を有する導電性シート20により被覆されていない部分、および、粘着性を有する導電性シート20が貼付されている側面の該粘着性を有する導電性シートが貼られていない部分について、エッチング等によって、金属板12の表面を露出させ、電子部品311を形成する(図9(d))。こうして製造された電子部品311を、金属板12の表面が露出した端部が、同一の側面に現れるように2枚以上積層させて積層体を形成し、これを加熱することによって各構成要素を一体化させ、電子部品312とする(図9(e))。最後に、この電子部品312を構成する電子部品311の、金属板12の表面が露出している端部を、電子部品312のそれぞれの側において接合して、本発明のコンデンサ60とする(図9(f))。接合する方法は、特に限定されるものではないが、具体的には、ハンダ付け、溶接、導電性接着剤による接合が挙げられる。この実施形態では4枚の電子部品311が積層されているが、積層枚数は特に限定されず、用途に応じて増減することができる。
【0080】
また、積層手段は上記の方法に限定されず、例えば、積層電子部品312の形成において、電子部品311同士の間に導電性接着剤を用いて接着してもよい。導電性接着剤は、例えば注射器状のものを用いて手動または自動化手段により付着させることができる。また、さらに、電子部品間に粘着性を有する導電性シートを間挿することによって、粘着性を有する導電性シートの粘着力を利用して互いに接着してもよい。
【0081】
以下に、本発明の電子部品およびコンデンサの各構成要素について説明する。
【0082】
(III)各構成要素
[1.基板]
本発明の基板は、特に限定されず、実施例で使用したセラミック基板の他、金属アルミニウム、金属タンタル、金属ニオブまたはこれらの酸化物もしくは窒化物からなる基板を含む。例えば、金属タンタル、金属ニオブ、金属アルミニウムなどからなる金属板の表面に化成処理を施して酸化被膜を形成させたものであっても構わない。
【0083】
[2.粘着性を有する導電性シート]
本発明でいう「粘着性」とは、導電性シートを基板に貼付したとき、または部品同士を重ね合わせたときに、導電性シートと基板とが、または部品同士が動かない程度の粘着性をいう。
【0084】
一般に、印刷や転写の場合、基板の側面に導電層を形成することは非常に難しい。それに対して、本発明においては、本発明の粘着性を有する導電性シートを巻きつけることによって、基板の上面、側面および下面に導電層を容易に形成することができる。この場合、導電層の厚さの制御も容易である。
【0085】
本発明の粘着性を有する導電性シートは、電子部品間の接着に用いることもできる。
【0086】
積層電子部品が本発明の電子部品を積層したものである場合、電子部品に使用される粘着性を有する導電性シートと、電子部品間の接着に用いる粘着性を有する導電性シートとは、組成が同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0087】
本発明の粘着性を有する導電性シートは、例えば、60〜95wt%の導電性粒子および5〜40wt%の有機樹脂(バインダ)を含む。
【0088】
以下に、本発明の粘着性を有する導電性シートの製造に使用することができる材料について説明する。
【0089】
(i)導電性粒子
本発明に使用される導電性粒子は、導電性を発現できるものであればとくに限定されるものではなく、金、銀、白金、パラジウム、銅、錫などの金属から適切に選択される。また、グラファイト、カーボンブラックなどの、非金属であっても導電性が発現される粒子を選択しても構わない。また、これらの導電性粒子を単独または数種類混合して使用することもできるし、これらの合金粒子、導電性粒子あるいはガラス粒子などの非導電性粒子に導電性金属を鍍金した粒子を用いることもできる。
【0090】
導電性粒子の形状は特に限定されず、鱗片状などであってもよい。
【0091】
また、粒径の範囲は特に限定されず、例えば平均粒径で10μm以下のものを用いることができる。
【0092】
(ii)有機樹脂(バインダ)
本発明に使用される有機樹脂は、熱可塑性樹脂であっても、熱硬化性樹脂であってもよい。また、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を混合して用いてもよい。通常は、これらの有機樹脂は適切な溶剤に溶解して使用される。
【0093】
a)熱可塑性樹脂
本発明に使用される熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではなく、ポリエステル樹脂、(Bostik社製Vitelなど)、アクリル樹脂(Lucite社製Elvaciteなど)、フッ素樹脂(DuPont performance elastomer社製Bytonなど)、シリコーン樹脂(GE Silicone社製)などが挙げられる。
【0094】
粘着性を有する導電性シートを形成する有機樹脂として熱可塑性樹脂を用いる場合、積層後の加熱温度に対して十分低い温度の軟化点を有する熱可塑性樹脂を選択することが特に好ましい。熱可塑性樹脂の軟化点が、積層後の加熱温度に近いか、あるいはそれよりも高いような場合、十分な接着力が得られない場合がある。具体的には、軟化点は150℃以下であることが好ましい。
【0095】
b)熱硬化性樹脂
本発明に使用される熱硬化性樹脂は、特に限定されるものではなく、エポキシ系熱硬化性樹脂、ウレタン系熱硬化性樹脂、フェノール系熱硬化性樹脂などが挙げられる。
【0096】
粘着性を有する導電性シートを形成する有機樹脂として熱硬化性樹脂を用いる場合は、粘着性を有する導電性シートを剥離機能が付与されたプラスチックフィルム上に形成する段階では硬化反応が生じず、かつ、当該粘着性を有する導電性シートを用いて本発明の電子部品を形成した後に加熱によって硬化反応が生じるような熱硬化性樹脂と硬化剤との組み合わせを選択する必要がある。固形の熱硬化性樹脂を使用するときには、その軟化点が加熱温度に対して十分低い温度であることが好ましい。具体的には、軟化点が150℃以下であることが好ましい。
【0097】
本発明で用いられる熱硬化性樹脂と硬化剤との組み合わせの代表例としては、エポキシ樹脂−フェノール系硬化剤、エポキシ樹脂−イミダゾール系硬化剤、エポキシ樹脂−アミン系硬化剤、フェノール樹脂−アミン系硬化剤などが挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。
【0098】
(iii)溶剤
本発明の有機樹脂を溶解するために使用してもよい溶剤は、有機樹脂を完全に溶解することができる溶剤であれば特に限定されるものではなく、例えばシクロヘキサノン、酢酸ブチル、セロソルブなどを含む。
【0099】
熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂100gに対して、100g〜400gの量での溶剤の使用が好ましい。
【0100】
(iv)硬化剤
本発明の熱硬化性樹脂を硬化するために使用してもよい硬化剤は、特に限定されるものではなく、例えばポリアミドなどを含む。
【0101】
以下に、上述の材料を使用して本発明の粘着性を有する導電性シートを製造する方法について説明する。
【0102】
(粘着性を有する導電性シートの製造方法)
((第1の例))
第1の例として、まず、本発明のポリエステル樹脂を溶剤に溶解し、ポリエステル樹脂溶液とする。次いで、このポリエステル樹脂溶液に本発明の導電性粒子、例えば銀粒子を配合する。次いで、この配合物を、例えば三本ロールを用いて混練し、導電性ワニスを調製する。混練手段は特に限定されるものではないが、一般に三本ロールが使用される。
【0103】
この導電性ワニスを、剥離機能が付与されたプラスチックフィルム(例えば、帝人デュポンフィルム社製ピューレックス)に均一に塗布し、次いで乾燥させる。
【0104】
乾燥条件として、乾燥温度は25℃〜100℃、乾燥時間は5分〜60分であることが好ましい。
【0105】
塗布するワニスの膜厚は、その後の乾燥条件および目的とする粘着性を有する導電性シートの膜厚に依存するが、一般に、塗布状態で100μm以下であることが好ましい。なお、塗布状態とは、乾燥前の濡れている状態をいう。
【0106】
本発明の粘着性を有する導電性シートは、この乾燥した導電性ワニスを、剥離機能が付与されたプラスチックフィルムから剥がすことによって得られる。剥離機能が付与されたプラスチックフィルム(例えば、帝人デュポンフィルム社製ピューレックス)を使用直前まで存在させて、シート同士の付着を防止してもよい。
【0107】
こうして得られる、粘着性を有する導電性シートの膜厚は、50μm以下であることが好ましい。
【0108】
((第2の例))
第2の例として、まず、本発明のエポキシ樹脂を溶剤に溶解し、エポキシ樹脂溶液とする。次に、本発明のフェノール系硬化剤を溶剤に溶解し、フェノール系硬化剤溶液とする。
【0109】
第1の例で作成したポリエステル樹脂溶液と、前記エポキシ樹脂溶液と、前記フェノール樹脂溶液と、本発明の導電性粒子、例えば銀粒子とを配合する。ポリエステル樹脂溶液、エポキシ樹脂溶液およびフェノール系硬化剤溶液の配合比は、90:7:3〜50:35:15であることが好ましい。
【0110】
次いで、この配合物を混練して、導電性ワニスを調製する。混練手段は、第1の例に示すものを用いることができる。
【0111】
この導電性ワニスを、剥離機能が付与されたプラスチックフィルム(例えば、帝人デュポンフィルム社製ピューレックス)に均一に塗布し、次いで乾燥させる。乾燥条件および塗布するワニスの膜厚は、第1の例の場合と同様である。
【0112】
本発明の粘着性を有する導電性シートは、この乾燥した導電性ワニスを、剥離機能が付与されたプラスチックフィルムから剥がすことによって得られる。第1の例と同様に、剥離機能が付与されたプラスチックフィルムを使用直前まで存在させて、シート同士の付着を防止してもよい。
【0113】
こうして得られる、粘着性を有する導電性シートの膜厚は、50μm以下であることが好ましい。
【0114】
[3.導電性接着剤]
本発明の電子部品製造における接着またはコンデンサ製造における接合に使用することができる導電性接着剤は、特に限定されるものではなく、市販品、例えばドータイト(藤倉化成社製)やユニメック(ナミックス社製)などを用いることができる。また、液状エポキシ樹脂、例えばEPON828(Hexion Specialty Chemical社製)と、反応性希釈剤、例えばエポジル749(Air Products and Chemical社製)と、一液型硬化剤、例えばイミダゾール系硬化剤(四国化成工業社製)または二液型硬化剤、例えばアミン系硬化剤(Air Products and Chemical社製)と、導電性粒子とを適切に配合して用いることもできる。
【実施例】
【0115】
(実施例1)
軟化点が99℃であるポリエステル樹脂(Bostik社製Vitel3550B)30gをシクロヘキサノン70gに溶解し、ポリエステル樹脂溶液とした。次いで、この樹脂溶液37gに銀粉(平均粒径3μm)63gを配合し、三本ロールにて混練し、導電性ワニスを作成した。
【0116】
このワニスを、剥離機能が付与されたプラスチックフィルム(帝人デュポンフィルム社製ピューレックス)に均一に塗布し、80℃で5分間乾燥させた。プラスチックフィルムより乾燥した導電性ワニスを剥がし、膜厚約35μmの粘着性を有する導電性シートを得た。
【0117】
この粘着性を有する導電性シートを、図2(a)〜(c)に示されるようにセラミック基板に巻きつけ、160℃で60分加熱し、図1で示される電子部品を得た。
【0118】
液状エポキシ樹脂(Hexion Specialty Chemical社製、EPON828)9部、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製)4部、ジシアンジアミド1部およびイミダゾール系硬化剤(四国化成工業社製 2P4MHZ)0.3部に、銀粉(平均粒径3μm)86gを配合し、三本ロールで混練し、導電性接着剤を得た。
【0119】
この導電性接着剤を用いて、5枚の図1で示される電子部品を張り合わせ、160℃で1時間加熱して、図4(C)で示される積層構造を有する積層電子部品を得た。
【0120】
冷却後、この図4(C)で示される積層構造を有する積層電子部品の最上面−最下面間の抵抗値を測定したところ、得られた抵抗値は0.09Ωであった。また、この電子部品の厚さは4.1mmであり、面内での均一性があった。
【0121】
なお、図1で示される電子部品の上部下部間の抵抗値は0.07Ωであり、この電子部品1枚あたりの厚さは0.68mmであった。
【0122】
(実施例2)
実施例1と同様にして、膜厚約35μmの、粘着性を有する導電性シートを得た。
【0123】
この粘着性を有する導電性シートと5枚のセラミック基板とを交互に重ね合わせ、160℃で60分間加熱して、図5(A)および図5(B)で示される積層構造を有する積層電子部品を得た。
【0124】
冷却後、この図5(A)および図5(B)で示される積層構造を有する積層電子部品の最上面−最下面間の抵抗値を測定したところ、得られた抵抗値は0.74Ωであった。また、この電子部品の厚さは3.4mmであり、面内での均一性があった。
【0125】
なお、積層電子部品の最上面−最下面間の抵抗値が実施例1の場合よりも高くなっているのは、積層構造が異なるためである。
【0126】
(実施例3)
軟化点が92℃であるエポキシ樹脂(DowChemical社製DER642U)50gを酢酸カルビトール50gに溶解し、エポキシ樹脂溶液とした。軟化点が83℃であるフェノール系硬化剤(DowChemical社製DEH81)50gを酢酸カルビトール50gに溶解し、フェノール系硬化剤溶液とした。
【0127】
実施例2で作成したポリエステル樹脂溶液34g、前記エポキシ樹脂溶液1.5g、前記フェノール系硬化剤溶液0.7g、および銀粉(平均粒径3μm)64gを配合し、三本ロールにて混練し、導電性ワニスを作成した。
【0128】
このワニスを、剥離機能が付与されたプラスチックフィルム(帝人デュポンフィルム社製ピューレックス)に均一に塗布し、80℃で5分間乾燥させた。プラスチックフィルムより乾燥した導電性ワニスを剥がし、膜厚約40μmの、粘着性を有する導電性シートを得た。
【0129】
実施例2と同様に、この粘着性を有する導電性シートと5枚のセラミック基板とを交互に重ね合わせ、160℃で60分間加熱して、図5(A)および図5(B)で示される積層構造を有する積層電子部品を得た。
【0130】
冷却後、この積層電子部品の最上面−最下面間の抵抗値を測定したところ、得られた抵抗値は3.1Ωであった。また、この電子部品の厚さは3.4mmであり、面内での均一性があった。
【0131】
(実施例4)
実施例1と同様にして、膜厚約35μmの粘着性を有する導電性シートを得た。
【0132】
この粘着性を有する導電性シートを、セラミック基板に対してその上面、下面、および4つのうち1つの側面のみを被覆するように巻きつけた。次いで、これを160℃で60分間加熱して、図3で示される電子部品を得た。
【0133】
5枚の図3で示される電子部品を、粘着性を有する導電性シートで被覆された側面が互い違いに対向するように積層した。その際、各電子部品間を、導電性接着剤を用いて接合した。次いで、これを160℃で60分間加熱して、図7(B)で示される積層構造を有する電子部品を得た。
【0134】
冷却後、積層電子部品の最上面−最下面間の抵抗値を測定したところ、得られた抵抗値は0.26Ωであった。また、この電子部品の厚さは4.0mmであり、面内での均一性があった。
【0135】
(実施例5)
実施例1と同様にして、膜厚約35μmの粘着性を有する導電性シートを得た。
【0136】
粘着性を有する導電性シートと5枚のセラミック基板とを、図5(A)および図5(B)で示されるように交互に重ねた。次いで、粘着性を有する導電性シートで部分的に被覆されている2つの側面を、粘着性を有する導電性シートでさらに被覆した。これを160℃で60分間加熱して、図5(D)で示される積層構造を有する積層電子部品を得た。
【0137】
冷却後、この積層電子部品の最上面−最下面間の抵抗値を測定したところ、得られた抵抗値は0.09Ωであった。また、この電子部品の厚さは3.4mmであり、面内での均一性があった。
【0138】
(実施例6)
実施例1において、導電性接着剤の代わりに粘着性を有する導電性シートで基板間を接着し、160℃で60分間加熱して、図4(D)で示される積層構造を有する積層電子部品を得た。
【0139】
冷却後、この積層電子部品の最上面−最下面間の抵抗値を測定したところ、得られた抵抗値は0.13Ωであった。また、この電子部品の厚さは3.7mmであり、面内での均一性があった。
【0140】
実施例1〜6に示すように、粘着性を有する導電性シートを用いて積層電子部品を形成した場合、導電層を均一な膜厚で容易に形成することができる。また、導電層を形成する際に高い圧力を加える必要がないため、基板へのダメージが低減される。
【0141】
実施例2、3、5および6のように、粘着性を有する導電性シート自身を導電性接着剤として各層間の接合をとった場合には、積層部品の厚さをさらに薄くすることが可能となる。この利点は、例えばコンデンサに応用する場合、コンデンサの特性のひとつであるESR(等価直列抵抗)値を下げることに寄与しうる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明の第1の実施形態の電子部品を示す斜視図である。
【図2】(a)〜(c)は、図1に示される電子部品の製造工程を説明するための斜視図である。
【図3】本発明の第2の実施形態の電子部品を示す斜視図である。
【図4】(A)は、図1に示される電子部品が積層された構造を有する本発明の第3の実施形態の積層電子部品を示す斜視図であり、(B)は、その側面図である。(C)および(D)は、本発明の第3の実施形態の別の例の積層電子部品を示す側面図である。
【図5】(A)は、本発明の第4の実施形態の積層電子部品の一例を示す斜視図であり、(B)は、その側面図である。(C)および(D)は、本発明の第4の実施形態の別の例の積層電子部品を示す側面図である。
【図6】(a)から(e)は、図5(A)および(B)に示される積層電子部品の製造工程を説明するための側面図である。
【図7】(A)は、本発明の第5の実施形態の積層電子部品の一例を示す斜面図である。(B)は、本発明の第5の実施形態の別の例の積層電子部品を示す側面図である。
【図8】本発明の1つの実施形態のコンデンサを示す概略的な断面図である。
【図9】(a)〜(f)は、図8に示される本発明の1つの実施形態のコンデンサの製造工程を説明するための図である。
【符号の説明】
【0143】
10 基板
10' 第2の基板
101 基板10の上面
101' 第2の基板の上面
102 基板10の下面
102' 第2の基板の下面
103 基板10の1組の対向する側面
104 基板10の1組の対向する側面
104' 第2の基板の1組の対向する側面
105 積層電子部品の、粘着性を有する導電性シートで被覆されていない側面
106 積層電子部品の、導電性シートで被覆された側面
107 積層電子部品の、基板が粘着性を有する導電性シートで被覆されていない側面
108 積層電子部品の、基板が粘着性を有する導電性シートで交互に被覆された側面
109 積層電子部品の、積層構造を構成する電子部品が導電性シートで交互に被覆された側面
114 基板10の、粘着性を有する導電性シートで被覆される側面
114' 第2の基板の、粘着性を有する導電性シートで被覆される側面
12 金属板
14 酸化被膜
20 粘着性を有する導電性シート
301 図1に示される電子部品
302 図3に示される電子部品
303 図4(A)および(B)に示される積層電子部品
304 図4(C)に示される積層電子部品
305 図4(D)に示される積層電子部品
306 図5(A)および(B)に示される積層電子部品
307 図5(C)に示される積層電子部品
308 図5(D)に示される積層電子部品
309 図7(A)に示される積層電子部品
310 図7(B)に示される積層電子部品
311 図9(d)に示される積層電子部品
312 図9(e)に示される積層電子部品
40 導電性接着剤
50 接合部
60 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に貼付された、粘着性を有する導電性シートと
を含む電子部品。
【請求項2】
前記粘着性を有する導電性シートが、前記基板の上面、下面および少なくとも1つの側面を被覆するように配置されている、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記基板が誘電体、または導体と誘電体とから形成される請求項1に記載の電子部品。
【請求項4】
前記基板が、セラミック、またはアルミニウム、タンタル、ニオブ、またはこれらの酸化物もしくは窒化物からなる、請求項1に記載の電子部品。
【請求項5】
請求項1に記載の電子部品を有するコンデンサ。
【請求項6】
粘着性を有する導電性シートが貼付された基板が、2以上積層されている積層電子部品。
【請求項7】
前記基板が、粘着性を有する導電性シートの粘着力を利用して互いに接着されている、請求項6に記載の積層電子部品。
【請求項8】
前記電子部品が、導電性接着剤を用いて互いに接着されている、請求項6に記載の積層電子部品。
【請求項9】
前記基板が誘電体、または導体と誘電体とから形成される請求項6に記載の積層電子部品。
【請求項10】
前記基板が、セラミック、またはアルミニウム、タンタル、ニオブ、またはこれらの酸化物もしくは窒化物からなる、請求項6に記載の積層電子部品。
【請求項11】
請求項6に記載の積層電子部品を有するコンデンサ。
【請求項12】
前記基板は誘電体、または導体と誘電体から形成される、請求項11に記載のコンデンサ。
【請求項13】
前記基板が、セラミック;アルミニウムとその酸化物もしくは窒化物;タンタルとその酸化物もしくは窒化物;ニオブとその酸化物もしくは窒化物;およびアルミニウム、タンタルまたはニオブの酸化物もしくは窒化物からなる群から選択される、請求項11に記載のコンデンサ。
【請求項14】
前記基板は化成処理によって表面に酸化被膜が形成された金属アルミニウムからなる金属板である、請求項11に記載のコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−10797(P2008−10797A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−182583(P2006−182583)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】