説明

電子部品の取付構造とその取付方法

【課題】金型の構造が簡易であり、金型コストを抑えることができ、確実に絶縁性を有しリードの短絡を防止することができる電子部品の取付構造とその取付方法を提供する。
【解決手段】矩形のケース12で覆われケース12からリード16が外側に突出した電子部品14を備える。電子部品14のケース12の一側面に取り付けられた放熱板18と、放熱板18に取り付けられ、放熱板18の電子部品14が取り付けられた側面に、リード16の一部を覆う絶縁性樹脂で成形されたモールド部28とを備える。モールド部28から突出した電子部品14のリード16がプリント基板24に接続されるとともに、モールド部28がプリント基板24に当接して成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子部品の端子間に絶縁性樹脂を取り付けた電子部品の取付構造とその取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パワートランジスタ等の電子部品に放熱板が取り付けられ、冷却用ファンによって外気を吹き付けて電子部品を放熱する電源装置等において、外気に含まれる塵埃等が、電子部品のリードや、リードがハンダ付けされたプリント基板上等に堆積し、湿気を吸収して導電性を有するに至ると、リード間で短絡事故を起こし故障の原因となるおそれがあった。また、金属くず等の導電性の埃が飛来して短絡するおそれもあった。
【0003】
このような短絡を防止するため、従来、電子部品と放熱板が互いに取り付けられた状態で全体を絶縁性樹脂でモールドする構造がある。あるいは、電子部品を放熱板に取り付ける前に、電子部品のリードのみを絶縁性樹脂でモールドし、その後放熱板へ取り付ける方法もある。
【0004】
例えば、特許文献1,2の複合半導体装置には、リードのみをモールドした後に半導体素子等の電子部品を放熱板へ取り付ける構造が開示されている。この構造は、導体パターン上に半導体チップなどの電子部品を搭載し、所定の電気回路を構成した絶縁基板と、この絶縁基板を搭載する放熱板と、この放熱板に絶縁基板を覆って被せられる絶縁ケースが設けられている。そして、絶縁ケースの側壁には、絶縁基板の導体パターンに下端が固着され、他端が絶縁ケースの外側に導出されるリードがインサートモールドされているものである。
【0005】
また、別の構造としてはリードにチューブ状のスペーサを装着する構造もある。さらに特許文献3に開示された電子部品の短絡防止スペーサは、電子部品を嵌合する空間である被着部が形成され、被着部の底面には電子部品の各リードを挿通する複数の挿通口が設けられている。この短絡防止スペーサの使用方法は、電子部品をスペーサ本体の被着部に入れ、挿通口からリードを突出させる。そして電子部品を実装する基板に、スペーサから突出したリードを、ハンダ付けするものである。
【0006】
その他に、電子部品全体を絶縁キャップで覆ったり、コーティング処理したりする方法もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−177017号公報
【特許文献2】特開2003−168766号公報
【特許文献3】特開2007−220963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記背景技術の、電子部品と放熱板の全体を絶縁性樹脂でモールドする場合は、成型のための金型が少なくとも一対必要とし、全体構造も大きくなりコストがかかるという問題がある。さらに、モールド材の体積も大きくなるため、モールド材料費が増え、重量が増すことによる余分な固定機能を付ける必要がある。また、放熱板の放熱性が悪くなり別の放熱構造が必要となる。
【0009】
特許文献1,2のようにリードをモールドした後に放熱板へ取り付ける方法も、成型のための金型が複雑であり、工程も多くなるものである。さらに、リード周辺も成形する場合、そのための金型も必要であり、コストアップの原因となっている。また電子部品はモールドされた後に放熱板へ取り付けられるため、放熱板に接触する取付面に絶縁性樹脂が付着しないような精度の良い金型が必要であった。
【0010】
また、絶縁性樹脂がプリント基板に密着していると、電子部品のリードをプリント基板のリード挿入穴に挿通して裏面にハンダ付けする際に、発生するガスがリード挿通穴とリードの隙間を通過することができず、プリント基板の電子部品側に抜けず、ハンダに穴あきが発生し信頼性が損なわれるという問題がある。
【0011】
また、チューブ状のスペーサを装着する構造、また絶縁紙等を用いる構造では、プリント基板とスペーサまたは絶縁紙に隙間ができ、隙間をふさぐ効果が低下することが考えられる。
【0012】
さらに、コーティング処理をする方法は、塗布管理が難しく、塗りむらなどが発生するおそれがある。また、コーティング処理をした部品を空冷ファン近傍に配置する場合は、風速が速いため吸い込まれた空気とともに細かい粒子あるいは水分等の影響が強く、コーティング膜が禿げてしまい、効果がなくなるという問題がある。
【0013】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、金型の構造が簡易であり、金型コストを抑えることができ、確実に絶縁性を有しリードの短絡を防止することができる電子部品の取付構造とその取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、矩形のケースで覆われ前記ケースからリードが外側に突出した電子部品と、前記電子部品の前記ケースの一側面に取り付けられた放熱板と、前記放熱板を成形用金型の一部として成形されたモールド部であって、前記放熱板に取り付けられ前記放熱板の前記電子部品が取り付けられた側面に、前記リードの一部を覆う絶縁性樹脂で成形されたモールド部とを備え、前記モールド部から突出した前記電子部品の前記リードがプリント基板に接続されるとともに、前記モールド部が前記プリント基板に当接して成る電子部品の取付構造である。
【0015】
前記電子部品の前記リードは前記モールド部の底面から外側に突出し、前記電子部品の前記リードは前記プリント基板の前記リード挿入穴に挿通されて反対側に突出しハンダ付けされ、前記モールド部の前記底面は前記プリント基板に当接し、前記モールド部の前記底面には、前記リード部が突出する部分を通過する溝部が設けられ、前記溝部は、前記モールド部の、前記放熱板及び前記プリント基板と接しないいずれかの側面に連通して、外気に開口されているものである。
【0016】
前記放熱板の、前記電子部品と当接する側面には、前記金型を前記放熱板に取り付けたときに前記金型の前記絶縁性樹脂が充填される空間部に連通する貫通穴が設けられ、前記絶縁性樹脂が前記貫通穴にも充填されて成るものである。
【0017】
また本発明は、矩形のケースで覆われ前記ケースからリードが外側に突出する電子部品を放熱板の一方の側面に固定し、前記放熱板の側面に、前記リードの一部を覆うとともに前記電子部品の少なくとも一部を覆う金型を密閉して取り付け、前記金型に絶縁性樹脂を注入してモールド部を成形し、この後前記放熱板と前記モールド部が取り付けられた前記電子部品のリードをプリント基板に接続する電子部品の取付方法
である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電子部品の取付構造とその取付方法は、金型の構造が簡易であり、金型コストを抑えることができ、確実に絶縁性を有しリード間の短絡を防止することができる。また、リードを確実にプリント基板にハンダ付けすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施形態の電子部品の取付構造の正面図(a)と右側面図(b)である。
【図2】この実施形態の電子部品の取付構造の部分拡大正面図である。
【図3】この実施形態の電子部品の取付構造を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1〜図3はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態の電子部品の取付構造10は、矩形のケース12で覆われた電子部品14を有し、ケース12の底面12aには、複数本のリード16が底面12aに対してほぼ直角に突出して設けられている。
【0021】
電子部品14の、ケース12の底面12aと交差する側面12bには、金属板で作られた放熱板18が、ネジ20で固定されている。放熱板18は、放熱性の良い材料が使用され、例えば熱伝導性の良いアルミニウム等で作られている。放熱板18の、電子部品14と当接する側面18aには、後述する金型36を放熱板18に取り付けたときに、金型36の空間部37に連通する位置に貫通穴22が設けられている。貫通穴22は、放熱板18の側面18aとその反対側の側面18bを貫通している。
【0022】
放熱板18の、電子部品14が取り付けられた側面18aには、矩形のモールド部28が設けられている。モールド部28は絶縁性樹脂で作られた矩形のブロック体であり、ポリアミド、ポリエステル等の熱可塑性樹脂で成形されている。モールド部28は、電子部品14のリード16側の端部付近からリードの一部を覆って取り付けられ、モールド部28の上面28aから電子部品14のケース12の一部が突出し、モールド部28の上面28aと反対側の底面28bからは、リード16が下方に突出している。底面28bには、リード16が突出する部分を通過する溝部30が設けられている。溝部30は、モールド部28の、放熱板18と接していないいずれかの側面に連通して、外気に開口されている。モールド部28の、放熱板18と接する側面28cには放熱板18の貫通穴22が対向し、絶縁性樹脂が貫通穴22に連続して充填されて放熱板18の側面18bに達し、側面18bに沿ってわずかに広がり、フランジ部32が形成されている。
【0023】
電子部品14と放熱板18、モールド部28は、互いに取り付けられた状態でプリント基板24に取り付けられている。プリント基板24の所定位置には、電子部品14のリード16が挿通されるリード挿入穴26が形成されている。放熱板18の、電子部品14のリード16に近い端面18cがプリント基板24に当接し、電子部品14のリード16は、プリント基板24のリード挿入穴26に挿通されてプリント基板24の反対側に突出し、ハンダ34で接続されている。
【0024】
次に、電子部品の組み立て及び取付方法について、図3に基づいて説明する。まず、電子部品14を放熱板18の側面18aに当接し、ネジ20で固定する。この後、放熱板18の側面18aに、モールド部28を成形する金型36を取り付ける。
【0025】
ここで、金型36について説明する。金型36は、熱伝導性が良く放熱性の良いアルミニウム製であり、放熱板18の側面18aを水平方向にコの字形に囲む3つの側面36aと、上方部を覆う上面36bと、下方部を覆う底面36cで形成されている。3つの側面36aと、上面36b、底面36cで囲まれた内側は、絶縁性樹脂が充填されてモールド部28を成形する空間部37となる。また、側面18aに対面する部分は開口されている。金型36の上面36bには、電子部品14のケース12が嵌合される凹部38が、側面18aに当接する開口に連通して形成されている。金型36の底面36cには、電子部品14のリード16が挿通される挿通口40が形成されている。底面36cの、上面36bに対向する面、つまり空間部37の内周面には、挿通口40を含む位置に突部42が一体に形成されている。突部42は、モールド部28の凹部38のネガ形状であり、金型36の底面36cを、他のいずれかの側面間を横断するように形成される。ここでは、開口部と反対側に位置する側面36aに達している。
【0026】
次に、モールド部28を成型する際、金型36を、他方の金型に兼用した放熱板18の側面18aに当接させる。金型36の上面36bの凹部38には電子部品14のケース12を嵌合させ、底面36cの挿通口40には電子部品14のリード16を差し込む。底面36cの、上面36bに対向する面が、放熱板18の端面18cとほぼ面一で且つ隙間がないようにセットする。この状態で、放熱板18の貫通穴22は、金型36の空間部37に連通する。
【0027】
そして、放熱板18の貫通穴22に、側面18b側から加熱溶融した絶縁性樹脂を圧入し、空間部37に充填し、冷却し成形する。加熱溶融した絶縁性樹脂を圧入する方法は、低圧の射出成型等である。次に、所定温度まで冷却して空間部37の内側にモールド部28が成形された後、金型36を外す。電子部品14と放熱板18、モールド部28は、互いに取り付けられた状態で、プリント基板24のリード挿入穴26に電子部品14のリード16を挿通し、プリント基板24の反対側から突出したリード16をハンダ34で固定する。このとき、ハンダ34の熱で発生するガスはリード挿入穴26とリード16の隙間を通過して反対側面に抜けて溝部30から逃がすことができる。これにより、ハンダに穴あきが発生するのを防止することができる。
【0028】
この実施形態の電子部品の取付構造10によれば、放熱板18を金型の一方に兼用しているので、1部材の金型36で絶縁性が高いモールド部28を成形することができ、金型コストを抑え、確実にリード16の短絡を防止することができる。モールド部28の底面28bには、溝部30が設けられているため、ハンダ34の熱で発生するガスが、リード挿入穴26とリード16の隙間を通過して溝部30から逃がすことができ、ハンダの穴あきを防止し、信頼性を高めることができる。そして、隣接するリード16間は、モールド部28の底面28bがプリント基板24に当接して電子部品14を実装するため、確実にリード16間の短絡を防ぐことができる。
【0029】
さらに、電子部品14を放熱板18に取り付けた後に、モールド部28を形成するため、電子部品14のケース12の、放熱板18に取り付ける側面12bに絶縁性樹脂が付着しないような管理が不要となり、作業工程が容易となり、金型の精度が高くなくてもよい。モールド部28は、放熱板18の貫通穴22とフランジ部32に絶縁性樹脂が連続して一体となり、放熱板18に確実に取り付けられ、外れることがない。
【0030】
なお、この発明の電子部品の取付構造とその取付方法は、上記実施の形態に限定されるものではなく、放熱板に貫通穴を設けず、金型側から樹脂を注入しても良い。さらに、使用する金型は、複数に分かれているものでも良い。また、モールド部等の形状や素材等適宜変更可能である。溝部の断面形状は半円形以外のいろいろな形状でもよく、溝部が通過する方向も確実に外気に開口されていればよい。絶縁性樹脂が注入される貫通穴の形状や位置も自由に変更可能であり、切り欠き状のものでもよい。
【符号の説明】
【0031】
10 電子部品の取付構造
12 ケース
14 電子部品
16 リード
18 放熱板
20 ネジ
22 貫通穴
24 プリント基板
26 リード挿入穴
28 モールド部
30 溝部
32 フランジ部
34 ハンダ
36 金型
37 空間部
38 凹部
40 挿通口
42 突部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形のケースで覆われ前記ケースからリードが外側に突出した電子部品と、前記電子部品の前記ケースの一側面に取り付けられた放熱板と、前記放熱板を成形用金型の一部として成形されたモールド部であって、前記放熱板に取り付けられ前記放熱板の前記電子部品が取り付けられた側面に前記リードの一部を覆う絶縁性樹脂で成形されたモールド部とを備え、前記モールド部から突出した前記電子部品の前記リードがプリント基板に接続されるとともに、前記モールド部が前記プリント基板に当接して成ることを特徴とする電子部品の取付構造。
【請求項2】
前記電子部品の前記リードは前記モールド部の底面から外側に突出し、前記電子部品の前記リードは前記プリント基板の前記リード挿入穴に挿通されて反対側に突出しハンダ付けされ、前記モールド部の前記底面は前記プリント基板に当接し、前記モールド部の前記底面には、前記リード部が突出する部分を通過する溝部が設けられ、前記溝部は、前記モールド部の、前記放熱板及び前記プリント基板と接しないいずれかの側面に連通して、外気に開口されている請求項1記載の電子部品の取付構造。
【請求項3】
前記放熱板の、前記電子部品と当接する側面には、前記金型を前記放熱板に取り付けたときに前記金型の前記絶縁性樹脂が充填される空間部に連通する貫通穴が設けられ、前記絶縁性樹脂が前記貫通穴にも充填されて成る請求項1記載の電子部品の取付構造。
【請求項4】
矩形のケースで覆われ前記ケースからリードが外側に突出する電子部品を放熱板の一方の側面に固定し、前記放熱板の側面に、前記リードの一部を覆うとともに前記電子部品の少なくとも一部を覆う金型を密閉して取り付け、前記金型に絶縁性樹脂を注入してモールド部を成形し、この後前記放熱板と前記モールド部が取り付けられた前記電子部品のリードを、プリント基板に接続することを特徴とする電子部品の取付構造の取付方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−272637(P2010−272637A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122111(P2009−122111)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000103208)コーセル株式会社 (80)
【Fターム(参考)】