説明

電子部品の表面実装方法及び電子部品が実装された基板

【課題】はんだ材を用いることなく、接合界面のクラックの発生の抑制を図ることのできる電子部品の表面実装方法及び電子部品が実装された基板を提供する。
【解決手段】絶縁性基材10上に、導電性回路21と、導電性回路21の表面側に形成される熱可塑性樹脂で構成されるレジスト30とを設ける工程と、電子部品40の電極41の表面に金属層50を設ける工程と、電子部品40の金属層50を、レジスト30に押し当てながら、金属層50の表面に略平行な方向に振動する超音波振動による負荷を与えることで、レジスト30を溶融により部分的に除去させて金属層50と導電性回路21とを接合させ、その後、超音波振動による負荷をなくして、溶融した熱可塑性樹脂を冷却により硬化させる工程と、を備える電子部品40の表面実装方法であって、金属層50は、そのせん断強度が導電性回路21を構成する材料のせん断強度よりも低い材料からなる薄い層で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗やコンデンサなどの各種電子部品を、導電回路が形成されたプリント配線基板上に表面実装するための電子部品の表面実装方法及び電子部品が実装された基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、抵抗やコンデンサなどの各種電子部品を基板上に表面実装する場合には、はんだ材を用いる方法で行われている。かかる従来技術について、図5を参照して説明する。図5は従来例1に係る表面実装手順を示す工程図である。
【0003】
この従来例においては、基板として、耐熱性のガラスエポキシ樹脂やポリイミド樹脂からなる基材210の表面に、12μm〜35μm程度の厚みの銅箔220を積層したものを用いている(図5(A)参照)。この基板に対して、従来公知のフォトリソ法及びエッチング法を用いて導電性回路221を形成する(同図(B)参照)。さらに電子部品300を接続する位置に、はんだ材との濡れ性を付与するために、Snなどのめっき230を施して、プリント配線基板200を作製する(同図(C)参照)。
【0004】
次に、導電性回路221におけるめっき230上に、クリームはんだ240をスクリーン印刷等により供給する。そして、電子部品300の電極部310をはんだ240上に配置する(同図(D)参照)。電子部品300を配置した状態で、260〜270℃で数秒間加熱して、はんだ240を溶融し、フィレット241を形成後、冷却により硬化させる。その後、はんだ240内にあったフラックス材を洗浄により除去することで、導電性回路221上への電子部品300の実装が完了する。
【0005】
ところで、近年、電子機器の小型化に伴って、プリント配線基板のより一層の小型化や基板に対する電子部品のより高密度な実装が要求されている。そのため、導電回路の面積が縮小し、はんだ材の供給不足による接合不良や、はんだ材のはみ出しによる隣接回路間の短絡という不具合発生のリスクが高くなっている。はんだの接合信頼性を確保するフィレットの形成のためには、導電回路面積をある程度確保する必要があり、上記の実装方法では、小型化に限界がある。
【0006】
このような問題を解消するために、シート状のはんだ材にフラックスフィルムを積層した接続シートを用いる方法、異方導電性シートや異方導電性ペースト等を用いる方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、かかる方法では、はんだ材等をフィルム化すること、あるいは、異方導電性材の使用で材料コストが増加し、加熱工程が削減することができないことから、低コスト化という需要には対応できない。
【0007】
また、小型化及び低コスト化の需要に同時に対応できる方法として、本願の出願人は、はんだ材を用いない表面実装方法を既に提案している(特許文献2参照)。かかる方法について、図6及び図7を参照して説明する。図6は従来例2に係る表面実装方法によって得られた、電子部品が実装された基板の模式的断面図である。図7は従来例2に係る表面実装手順を示す工程図である。
【0008】
この従来例においては、基板として、ガラスエポキシ樹脂等からなる絶縁性基材410上に金属箔420が積層されたものを用いている(図7(A)参照)。この基板表面上に、インク材として構成される熱可塑性の樹脂材(以下、レジストと称する)を所要パターン形状となるように塗布する(同図(B)参照)。そして、レジスト430により覆われ
ていない露出した部分の金属をエッチング除去して導電性回路421を形成する。このようにして、導電性回路421が形成されたプリント配線基板400が得られる(同図(C)参照)。
【0009】
また、別工程において、電子部品500の電極510の表面上に突起状の突出電極450をめっき、あるいは従来公知のスタッドバンプ法等により形成する(同図(D)参照)。
【0010】
そして、この電子部品500を、60℃程度に加熱したプリント配線基板400表面のレジスト430上に、突出電極450が当るように超音波振動を付加した状態で押し当てる(同図(E)参照)。これにより、突出電極450とレジスト430との間で生じる摩擦によって、レジスト430における突出電極450の先端の押し当てられた部位が溶融し除去される。そして、突出電極450の先端と導電性回路421との間に、超音波振動に伴う摩擦による金属融着部460が形成される。その後、超音波振動を停止させることで、熱可塑性樹脂で構成されているレジスト430が冷却されて、再び硬化して、電子部品500の電極510と導電性回路421とが、突出電極450及び金属融着部460を介して電気的に接続される(同図(F)及び図6参照)。
【0011】
以上のような表面実装方法により、はんだ材を用いる必要がなく、小型化及び低コスト化の需要に同時に対応することが可能となる。
【0012】
しかしながら、かかる表面実装方法の場合、超音波振動を付加している工程中に、電子部品500の電極510と突出電極450との間の界面や、突出電極450と金属融着部460との間の界面にクラックが生じるリスクが高いという問題がある。
【0013】
すなわち、超音波振動を利用した接合のメカニズムは、接合界面の相対すべり摩擦、表面酸化膜の破壊、金属拡散の発生、接合の完了の順で行われる。しかしながら、これら一連の流れが、接合界面全体で同時に起こる訳ではなく、既に、接合が完了した部位に対しても、超音波振動による負荷が継続的にかかる場合がある。この場合、超音波振動による応力が界面のすべりで逃げることができず、接合部にせん断応力が作用してしまう。これにより、通常、溶接部の変形強度は大きくなっているために、接合部近傍でクラックが発生し易くなる。
【0014】
また、上記の実装方法においては、突起状の突出電極450を形成するコストが高いという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2005−203693号公報
【特許文献2】特許第3584404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、はんだ材を用いることなく、接合界面のクラックの発生の抑制を図ることのできる電子部品の表面実装方法及び電子部品が実装された基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0018】
すなわち、第一の電子部品の表面実装方法は、
基板本体上に、導電性回路と、該導電性回路の表面側に形成される熱可塑性樹脂層とを設ける工程と、
電子部品の電極の表面に金属層を設ける工程と、
前記電子部品の前記金属層を前記熱可塑性樹脂層に押し当てながら、該金属層の表面に略平行な方向に振動する超音波振動による負荷を与えることで、熱可塑性樹脂を溶融により部分的に除去させて前記金属層と前記導電性回路とを接合させ、その後、超音波振動による負荷をなくして、溶融した熱可塑性樹脂を冷却により硬化させる工程と、
を備える電子部品の表面実装方法であって、
前記金属層は、そのせん断強度が前記導電性回路を構成する材料のせん断強度よりも低い材料からなる薄い層で構成されることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、はんだ材を用いることなく、電子部品の表面実装を行うことが可能となる。
【0020】
また、金属層として、そのせん断強度が導電性回路を構成する材料のせん断強度よりも低い材料からなる薄い層で構成されるものを採用したことによって、超音波振動により負荷が与えられている場合でも、導電性回路が破損してしまうことを抑制できる。
【0021】
また、金属層として、上記のような構成を採用したことにより、電子部品の電極と金属層との接合部分(説明の便宜上、第1接合部分と称する)や、金属層と導電性回路との接合部分(説明の便宜上、第2接合部分と称する)に対するせん断応力による負荷を抑制することができる。その理由は、次の通りである。
【0022】
すなわち、第一に、超音波振動を利用して、突出電極の先端により熱可塑性樹脂層を部分的に除去して、突出電極と導電性回路とを接合する場合に比して、第2接合部分の面積が広く、せん断応力を軽減させることができる。第二に、突出電極の場合に比して、厚み(本発明の場合には金属層における層の厚み、突出電極の場合には突出量に相当)を薄くできるため、第1接合部分と第2接合部分との間で生じる応力モーメントを小さくすることができ、各接合部分におけるせん断応力を軽減させることができる。第三に、突出電極の場合に比して、弾性変形域が大きくなり、延性が増すため、せん断応力を吸収し易くなる。
【0023】
以上のように、本発明によれば、導電性回路の破損を抑止し、かつ各接合部分に対するせん断応力による負荷を抑制できるため、接合界面のクラックの発生を抑制することが可能となる。
【0024】
前記熱可塑性樹脂層の中に、そのモース硬さが前記導電性回路を構成する材料のモース硬さよりも大きな材料からなる粒子を分散させるとよい。
【0025】
こうすることによって、超音波振動による負荷を与える際の振動によって、熱可塑性樹脂層の中に分散された粒子により金属表面に傷を付ける「やすり効果」が発揮される。これにより、金属表面の不活性層(酸化膜)が除去され、金属接合が開始される。従って、金属層のモース硬さが導電性回路のモース硬さよりも低い場合であっても、導電性回路表面の酸化膜破壊による接合を適切に行わせることができる。
【0026】
また、第二の発明は、
基板本体上に、導電性回路と、該導電性回路の表面側に形成される金属層とを設ける工程と、
前記金属層の表面側に熱可塑性樹脂層を設ける工程と、
電子部品の電極表面を、前記熱可塑性樹脂層に押し当てながら、前記電極表面に略平行な方向に振動する超音波振動による負荷を与えることで、熱可塑性樹脂を溶融により部分的に除去させて前記電極と前記金属層とを接合させ、その後、超音波振動による負荷をなくして、溶融した熱可塑性樹脂を冷却により硬化させる工程と、
を備える電子部品の表面実装方法であって、
前記金属層は、そのせん断強度が前記導電性回路を構成する材料のせん断強度よりも低い材料からなる薄い層で構成されることを特徴とする。
【0027】
かかる第二の発明においても、第一の発明の場合と同様の理由により、導電性回路の破損を抑止し、かつ各接合部分に対するせん断応力による負荷を抑制できるため、接合界面のクラックの発生を抑制することが可能となる。
【0028】
また、本発明の電子部品が実装された基板は、上記のいずれか一つに記載の電子部品の表面実装方法によって、基板本体上に電子部品が実装されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本発明によれば、はんだ材を用いることなく、接合界面のクラックの発生の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例1に係る電子部品が実装された基板の模式的断面図である。
【図2】本発明の実施例1に係る電子部品の表面実装方法における表面実装手順を示す工程図である。
【図3】本発明の実施例2に係る電子部品の表面実装方法を説明する図である。
【図4】本発明の実施例3に係る電子部品の表面実装方法における表面実装手順を示す工程図である。
【図5】図5は従来例1に係る表面実装手順を示す工程図である。
【図6】図6は従来例2に係る表面実装方法によって得られた、電子部品が実装された基板の模式的断面図である。
【図7】図7は従来例2に係る表面実装手順を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0032】
(実施例1)
図1及び図2を参照して、本発明の実施例1に係る電子部品の表面実装方法及び電子部品が実装された基板について説明する。
【0033】
<電子部品が実装された基板>
特に、図1を参照して、本発明の実施例1に係る電子部品の表面実装方法によって得られる、電子部品が実装された基板について説明する。
【0034】
本実施例に係る電子部品が実装された基板100は、基板本体としての絶縁性基材10と、絶縁性基材10の表面上に形成された導電性回路21と、電子部品40における一対の電極41の表面に設けられ、かつ導電性回路21と電気的に接続した状態で固定される金属層50とを備えている。また、基板100においては、絶縁性基材10と電子部品40との固定をより補強する機能を発揮する樹脂固定部31も設けられている。
【0035】
なお、絶縁性基材10の材料の好適例として、ガラスエポキシ樹脂を挙げることができる。また、本実施例においては、電子部品40としては、抵抗やコンデンサなど、表面実装によって実装可能な種々の電子部品を適用できる。
【0036】
<電子部品の表面実装方法>
特に、図2を参照して、本実施例に係る電子部品の表面実装方法について説明する。
【0037】
<<工程1>>
絶縁性基材10の表面に金属箔20を積層する(図2(A)参照)。
【0038】
(具体的な一例)50μmの厚みのガラスエポキシ製の絶縁性基材(ガラエポプリプレグ)10の片面に、35μmの厚みの硬質アルミからなる金属箔20を重ねて、熱間プレスによって、これらを接着する。なお、この接着方法については、公知技術であるので、その詳細説明は省略する。
【0039】
このようにして、絶縁性基材10の表面に金属箔20が積層されたものが得られる。なお、金属箔20の他の具体例としては、18μmの銅箔を挙げることができる。
【0040】
<<工程2>>
金属箔20の表面に、所望のパターン形状(導電性回路の形状)のレジスト30を、熱可塑性樹脂からなるインク材によって形成する(同図(B)参照)。
【0041】
(具体的な一例)金属箔20の表面上に、150℃程度の温度で溶融するポリオレフィン系の熱可塑性接着剤等により、所望のパターン形状のレジスト30(熱可塑性樹脂層)を形成する。このレジスト30は、グラビア印刷等の方法によって2〜3μm厚程度塗布することにより形成する。
【0042】
<<工程3>>
レジスト30によって覆われていない露出した部位の金属箔20をエッチングにより除去して、導電性回路21を形成する。この導電性回路21の表面は、熱可塑性樹脂層としてのレジスト30によって覆われている(同図(C)参照)。
【0043】
(具体的な一例)エッチング処理に際しては、エッチング液としてNaOH(120g/l)を50℃の条件にて使用するとよい。ここで、レジスト30として用いたポリオレフィン系樹脂の代わりにポリエステル系の可塑性樹脂を用いることもできる。この場合、エッチング時のエッチング液には、酸系のFeClを用いる。
【0044】
尚、本実施例においては、導電性回路21の接合部の面積は、電子部品40の電極41における接合部の面積より小さくすることが可能である。そのため、従来のはんだ材による実装方法(例えば、1.0mm×0.5mmサイズのチップコンデンサの場合、電極面積の2倍程度の面積が必要)に比べて、導電性回路21の接合部の面積を小さくすることができる。
【0045】
<<別工程>>
別工程において、電子部品40の電極41における導電性回路21との接合側の全面に、1μm程度の薄い層となる金属層50をめっき等により形成する(同図(D)参照)。ここで、この金属層50を構成する材料は、そのせん断強度(せん断抵抗)が、導電性回路21を構成する材料のせん断強度よりも低いものを用いている。また、金属層50の両面は平坦な面となるように形成している。
【0046】
(具体的な一例)1.0mm×0.5mmサイズのチップコンデンサ(電子部品40)における一対の電極41のそれぞれに対して、導電性回路21との接合側の全面に、せん断強度1600kg/cmの金を用いて、従来公知の金メッキ法などによって1μm程度の厚みとなるように金属層50を形成する。
【0047】
ここで、導電性回路21がアルミニウムで構成される場合、せん断強度は2000〜3000kg/cm程度であり、銅で構成される場合、せん断強度は3000kg/cm以上である。従って、いずれの場合であっても、金属層50のせん断強度は、導電性回路21のせん断強度よりも低くなる。
【0048】
なお、本実施例においては、電極41における導電性回路21との接合側の面にのみ金属層50を設ける場合を示したが、電極41における露出面全体に金属層50を形成してもよい。この場合、電極41における接合側の面以外の面(上面及び側面)にめっきが施されないようにする必要がなく、金属層50を形成する工程を簡略化できる。
【0049】
<<工程4>>
電子部品40の電極41の表面に設けられた金属層50を、熱可塑性樹脂層としてのレジスト30に押し当てながら、金属層50の表面に略平行な方向に振動する超音波振動による負荷を与える(同図(E)参照)。この工程においては、導電性回路21上にレジスト30が形成されている絶縁性基材10を60℃程度に加熱した状態で行う。
【0050】
このように、圧力による負荷をかけつつ、超音波振動による負荷を与えることによって、熱可塑性樹脂からなるレジスト30は、その一部が、超音波振動による機械的摩擦により導電性回路21の表面から除去される。すなわち、レジスト30は、摩擦熱によって、その一部が溶融し、かつ加圧によって、溶融した樹脂は、圧力がかかる方向に対して垂直な方向に押しのけられて、金属層50の表面と導電性回路21の表面との間の領域から除去される。
【0051】
また、導電性回路21の表面の酸化物層も同じく機械的に除去されることで、電極41上の金属層50の表面と導電性回路21の表面が接触し、更に、超音波振動による摩擦により、これらの表面間には金属融着部が形成される。
【0052】
その後、超音波振動による負荷をなくすことで、熱により溶融していた熱可塑性樹脂は冷却により再び硬化する。これにより、絶縁性基材10と電子部品40との固定をより補強する機能を発揮する樹脂固定部31が形成される(同図(F)参照)。
【0053】
(具体的な一例)チップコンデンサ(電子部品40)の電極41に設けられた金属層50を、圧力0.2kg/mmの条件下でレジスト30に押し当てながら、振動数63KHzの超音波振動の負荷を与える。
【0054】
これらの負荷を与える工程は0.3秒程度行う。これにより、チップコンデンサを絶縁性基材10上に強固に固定することができ、かつ、チップコンデンサにおける電極41と、絶縁性基材10上の導電性回路21とを、金属層50を介して電気的に接続することができる。なお、上記の通り、金属層50と導電性回路21との間には金属融着部が形成されるため、これらは強固に固定される。
【0055】
なお、金属層50の材料の一例として、金の場合を示したが、金属層50の材料は金に限られるものではない。金属層50の材料は、導電性を備え、かつそのせん断強度(せん断抵抗)が、導電性回路21を構成する材料のせん断強度よりも低ければよい。従って、
導電性回路21を構成する材料に応じて、金の他、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、銅、またはこれらを適宜組み合わせた合金などを採用することができる。
【0056】
また、絶縁性基材10の一例として、50μm厚のガラスエポキシ製のものを示したが、絶縁性基材10の材料や厚みは、これに限られるものではない。
【0057】
本実施例において、超音波振動の負荷を与える時間は非常に短時間で済むため、摩擦による熱は、絶縁性基材10までは伝わらない。従って、絶縁性基材10として、耐熱性の低い、融点120℃程度のPETフィルム(例えば25μm厚)を使用することもできる。
【0058】
<本実施例に係る電子部品の表面実装方法の優れた点>
<<はんだ材が不要であることの効果>>
上記の通り、本実施例に係る表面実装方法によれば、はんだ材を用いることなく、電子部品40を絶縁性基材10に実装することができる。従って、次のような効果を得ることができる。
【0059】
はんだ材の供給不足やはみ出し等に伴う断線や短絡の問題がなく、導電性回路21の面積を小さくできる。はんだ接合信頼性を確保するためのフィレット形成が必要ではないため、導電性回路21の面積を小さくできる。はんだ材と導電性回路21を構成する材料のぬれ性に関する問題がなく、導電性回路21の表面のめっきが削減できたり、導電性回路21の材料として安価なアルミニウムを採用できたりするなど、材料コストを削減できる。はんだ材を溶融させるような高温度の熱処理が不要なため、プリント配線基板における基材(絶縁性基材10)として、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の安価な低耐熱材料を使用することもできる。高温度の熱処理に必要な装置、及び使用エネルギを削減することで、さらなる製造コストの低下を図れる。また、使用エネルギ、あるいは従来の工法で必要であったはんだ材やフラックス材を削減することで、環境に対する負荷を軽減できる。
【0060】
また、はんだ材の使用に伴う、クラック,ボイド,ウイスカの発生の問題がなく、電子部品の浮きなどの品質的な低下の問題がない。更に、従来工法で必要であった、エッチングレジスト剥離,レジスト塗布,めっき,はんだ材の供給,熱処理、及びフラックス材の洗浄などの作業が不要となり、加工工数を大幅に削減することができる。これに伴い、製造コストの削減、及び生産性の向上が可能となる。
【0061】
<<金属層をせん断強度の低い材料からなる薄い層で構成したことによる効果>>
上記の通り、本実施例においては、電子部品40の表面に設けられる金属層50は、そのせん断強度が導電性回路21を構成する材料のせん断強度よりも低い材料からなる薄い層(導電性回路21側は平坦な面となる層)で構成される。従って、次のような効果を得ることができる。
【0062】
すなわち、本実施例においては、金属層50として、上記のような構成を採用したことにより、超音波振動により負荷が与えられている場合でも、導電性回路21が破損してしまうことを抑制できる。これは、せん断強度が、金属層50よりも導電性回路21の方が高いことや、金属層50の表面が平坦な面であることに起因する。
【0063】
また、金属層50として、上記のような構成を採用したことにより、電子部品40の電極41と金属層50との接合部分(説明の便宜上、第1接合部分と称する)や、金属層50と導電性回路21との接合部分(説明の便宜上、第2接合部分と称する)に対するせん断応力による負荷を抑制することができる。その理由は、次の通りである。
【0064】
すなわち、第一に、超音波振動を利用して、突出電極の先端により熱可塑性樹脂層を部分的に除去して、突出電極と導電性回路とを接合する場合に比して、第2接合部分の面積が広く、せん断応力を軽減させることができる。
【0065】
第二に、突出電極の場合に比して、厚み(本実施例の場合には金属層50における層の厚み、突出電極の場合には突出量に相当)を薄くできるため、第1接合部分と第2接合部分との間で生じる応力モーメントを小さくすることができ、各接合部分におけるせん断応力を軽減させることができる。
【0066】
第三に、突出電極の場合に比して、本実施例に係る金属層50の方が、弾性変形域が大きくなり、延性が増すため、せん断応力を吸収し易くなる。
【0067】
以上のように、本実施例によれば、導電性回路21の破損を抑止し、かつ各接合部分に対するせん断応力による負荷を抑制できるため、接合界面のクラックの発生を抑制することが可能となる。
【0068】
また、従来のように突出電極を採用する場合には、当該突出電極を形成するために、メッキマスク等を形成する工程が必要であったのに対して、本実施例によれば、当該工程が不要となるため、従来工法比で50%程度の低コストで電子部品の表面実装が可能となる。
【0069】
(実施例2)
図3には、本発明の実施例2が示されている。本実施例においては、上記実施例1で示した構成において、熱可塑性樹脂層(レジスト)の中に、硬い材料からなる粒子を分散させた場合を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0070】
上記実施例1で説明した通り、金属層50の材料としては、そのせん断強度が導電性回路21を構成する材料のせん断強度よりも低いものを採用できる。例えば、せん断強度が約200kg/cmの錫(Sn)を使用することも可能である。
【0071】
しかしながら、金属層50と導電性回路21とを電気的に接続させるためには、超音波振動による負荷を与えることで、金属層50によって、熱可塑性樹脂(レジスト30)の一部を溶融させ、除去させると共に、導電性回路21の表面の酸化物による層も除去しなければならない。
【0072】
ここで、錫のモース硬度は1.5程度であり、アルミニウムや銅のモース硬度に比べて低い。なお、アルミニウムのモース硬度は2.75、銅のモース硬度は2.5〜3.0である。
【0073】
従って、導電性回路21の材料として、銅やアルミニウムが用いられた場合に、金属層50の材料として錫を採用すると、超音波摩擦による導電性回路21の表面の酸化物の層の除去は進行し難く、金属層50と導電性回路21との間の金属融着部の形成が進み難いという問題がある。
【0074】
本実施例においては、金属層50の材料として、錫などのモース硬度の小さなものを採用した場合であっても、金属層50と導電性回路21との間に、金属融着部を好適に形成させることができる手法を説明する。
【0075】
すなわち、本実施例においては、レジスト30aとして、2μm〜3μm程度の熱可塑性樹脂層の中に、そのモース硬さが金属層50を構成する材料のモース硬さよりも大きく、かつ導電性回路21を構成する材料のモース硬さよりも大きな材料からなる粒子30bを分散させた構成を採用している(図3の上図参照)。
【0076】
なお、熱可塑性樹脂の好適な例としては、ポリオレフィン系のものを挙げることができる。また、粒子30bの好適な例としては、SiO、Al、SiC等のセラミック、あるいは、ニッケル、銅、マンガン、鉄、チタン等の金属からなる直径が0.3μm以上0.5μm以下の略球形の粒子を挙げることができる。
【0077】
なお、表面実装方法(工程)については、上記実施例1と同一であるので、その説明は省略する。
【0078】
本実施例においては、上記の通り、熱可塑性樹脂層の中に、モース硬さが大きな粒子30bを分散させたレジスト30aを採用している。従って、実施例1で説明した工程4の超音波振動による負荷を与える工程において、金属層50や導電性回路21に対して粒子30bによる摩擦力が加わる点が実施例1とは異なる。なお、図3の下図は、超音波振動による負荷を与えている最中であって、熱可塑性樹脂の一部が溶融し、除去されており、かつ金属層50と導電性回路21とが接する前の状態を模式的断面図にて示している。
【0079】
実施例1で説明した工程4において、金属層50と導電性回路21が超音波振動によって摩擦接触する際、双方のモース硬度に差があると、モース硬度の高い側の表面酸化膜の破壊が進まず、金属融着部が形成し難い問題が生じる。しかし、本実施例によれば、熱可塑性樹脂中に分散されている粒子30bが、金属層50と導電性回路21との界面にするようになるため、双方の表面酸化物を均一に破壊し、金属融着部を好適に形成させることが可能となる。
【0080】
以上のように、本実施例によれば、金属層50の材料として、錫などのモース硬度の小さなものを採用した場合であっても、金属層50と導電性回路21との間に、金属融着部を好適に形成させることができる。
【0081】
(実施例3)
図4には、本発明の実施例3が示されている。電子部品を絶縁性基材に固定する前の段階において、上記実施例1では、金属層を電子部品の電極側に設ける場合を示したが、本実施例では、金属層を絶縁性基材側に設ける場合を示す。その他の基本的な構成及び作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0082】
上記実施例1においては、電子部品40を絶縁性基材10に固定する前の段階において、金属層50を電子部品40の電極41の表面に設ける場合を示した。しかし、電極41における導電性回路21に対する接合側の面は、十分な面積を持っているため、実施例1における工程4において、電子部品40の導電性回路21に対する位置合わせは、高精度に行う必要はない。
【0083】
従って、低コスト化等を目的として、電子部品40を絶縁性基材10に固定する前の段階において、金属層を絶縁性基材10側(より具体的には、導電性回路21の表面)に設けるようにすることもできる。
【0084】
<電子部品の表面実装方法>
特に、図4を参照して、本実施例に係る電子部品の表面実装方法について説明する。
【0085】
<<工程1>>
実施例1の場合と同様に、絶縁性基材10の表面に金属箔20を積層する(図4(A)参照)。
【0086】
(具体的な一例)50μmの厚みのガラスエポキシ製の絶縁性基材(ガラエポプリプレグ)10の片面に、18μmの厚みの金属箔(銅箔)20を重ねて、熱間プレスによって
、これらを接着する。このようにして、絶縁性基材10の表面に金属箔20が積層されたものが得られる。
【0087】
<<工程2>>
金属箔20の表面上に、所要パタ−ン形状のめっき用レジストを形成した後、該めっき用レジストによって覆われていない金属箔20の露出部分に、従来公知のめっき処理(無電解めっきや電解めっき処理)により、金属層55を形成する。この金属層55を構成する材料は、実施例1の場合と同様に、そのせん断強度(せん断抵抗)が、導電性回路21を構成する材料のせん断強度よりも低いものを用いている。また、金属層55の両面は平坦な面となるように形成している。また、この金属層55は、実施例1の場合と同様に、1μm程度の薄い層により構成される。更に、この金属層55の材料についても、実施例1の場合と同様に、導電性回路21を構成する材料に応じて、金、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、銅、またはこれらを適宜組み合わせた合金などを採用することができる。
【0088】
金属層55を形成した後に、めっき用レジストを金属箔20の表面から剥離する(同図(B)参照)。なお、図4においては、めっき用レジストについては図示していない。
【0089】
<<工程3>>
金属箔20上における金属層55が設けられた部位を含む表面に、所望のパターン形状(導電性回路の形状)のレジスト35を、熱可塑性樹脂からなるインク材によって形成する(同図(C)参照)。
【0090】
(具体的な一例)金属箔20上における金属層55が設けられた部位を含む表面上に、150℃程度の温度で溶融するポリオレフィン系の熱可塑性接着剤等により、所望のパターン形状のレジスト35(熱可塑性樹脂層)を形成する。このレジスト30は、グラビア印刷等の方法によって2〜3μm厚程度塗布することにより形成する。
【0091】
<<工程4>>
レジスト35によって覆われていない露出した部位の金属箔20をエッチングにより除去して、導電性回路21を形成する。この導電性回路21の表面は、熱可塑性樹脂層としてのレジスト35によって覆われており、かつ金属層55が設けられている部位においては、当該金属層55を挟むようにしてレジスト35に覆われている(同図(D)参照)。
【0092】
<<工程5>>
電子部品40の電極41の表面を、熱可塑性樹脂層としてのレジスト35に押し当てながら、電極41の表面に略平行な方向に振動する超音波振動による負荷を与える(同図(E)参照)。この工程においては、導電性回路21上にレジスト35等が形成されている絶縁性基材10を60℃程度に加熱した状態で行う。
【0093】
この超音波振動による負荷を与えることによって、電子部品40の電極41と金属層55が電気的に接合するメカニズムについては、上記実施例1の場合と同様である。
【0094】
すなわち、圧力による負荷をかけつつ、超音波振動による負荷を与えることによって、
熱可塑性樹脂からなるレジスト35は、その一部が、超音波振動による機械的摩擦により金属層55の表面から除去される。すなわち、レジスト35は、摩擦熱によって、その一部が溶融し、かつ加圧によって、溶融した樹脂は、圧力がかかる方向に対して垂直な方向に押しのけられて、電子部品40の電極41の表面と金属層55の表面との間の領域から除去される。
【0095】
また、電極41の表面の酸化物層も同じく機械的に除去されることで、電極41の表面と金属層55の表面が接触し、更に、超音波振動による摩擦により、これらの表面間には金属融着部が形成される。
【0096】
その後、超音波振動による負荷をなくすことで、熱により溶融していた熱可塑性樹脂は冷却により再び硬化する。これにより、絶縁性基材10と電子部品40との固定をより補強する機能を発揮する樹脂固定部が形成される(実施例1と同様のため、図4では不図示)。
【0097】
なお、工程5において、電子部品40を押し当てる圧力、超音波振動の振動数、負荷を与える時間の具体例については、上記実施例1で示した場合と同様であるので、その説明は省略する。
【0098】
以上のように、本実施例においても、上記実施例1の場合と同様の効果を得ることができる。また、本実施例においても、上記実施例2で説明したように、熱可塑性樹脂層(レジスト35)の中に、硬い材料からなる粒子を分散させることで、超音波振動による負荷を与えている際の摩擦力を高めるようにすることができる。
【0099】
(その他)
上記各実施例における金属層50,55の層の厚さは、1μm以上3μm以下とするのが好適である。金属層50,55の厚さを1μm以上に設定する理由は、超音波摩擦によって削り取られる量を考慮したものである。金属層50,55の厚さを1μm未満に設定した場合には、界面内に電極となる金属が存在しなくなってしまう虞があり、接合欠陥を生じる可能性が高くなってしまう。また、金属層50,55の厚さを厚くすることはコストアップの要因となり、かつ厚すぎると金属層内にクラックが発生するリスクがあることから、金属層50,55の厚さの上限は3μm程度が好適である。
【符号の説明】
【0100】
10 絶縁性基材
20 金属箔
21 導電性回路
30 レジスト
30a レジスト
30b 粒子
31 樹脂固定部
35 レジスト
40 電子部品
41 電極
50 金属層
55 金属層
100 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板本体上に、導電性回路と、該導電性回路の表面側に形成される熱可塑性樹脂層とを設ける工程と、
電子部品の電極の表面に金属層を設ける工程と、
前記電子部品の前記金属層を前記熱可塑性樹脂層に押し当てながら、該金属層の表面に略平行な方向に振動する超音波振動による負荷を与えることで、熱可塑性樹脂を溶融により部分的に除去させて前記金属層と前記導電性回路とを接合させ、その後、超音波振動による負荷をなくして、溶融した熱可塑性樹脂を冷却により硬化させる工程と、
を備える電子部品の表面実装方法であって、
前記金属層は、そのせん断強度が前記導電性回路を構成する材料のせん断強度よりも低い材料からなる薄い層で構成されることを特徴とする電子部品の表面実装方法。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂層の中に、そのモース硬さが前記導電性回路を構成する材料のモース硬さよりも大きな材料からなる粒子を分散させることを特徴とする請求項1に記載の電子部品の表面実装方法。
【請求項3】
基板本体上に、導電性回路と、該導電性回路の表面側に形成される金属層とを設ける工程と、
前記金属層の表面側に熱可塑性樹脂層を設ける工程と、
電子部品の電極表面を、前記熱可塑性樹脂層に押し当てながら、前記電極表面に略平行な方向に振動する超音波振動による負荷を与えることで、熱可塑性樹脂を溶融により部分的に除去させて前記電極と前記金属層とを接合させ、その後、超音波振動による負荷をなくして、溶融した熱可塑性樹脂を冷却により硬化させる工程と、
を備える電子部品の表面実装方法であって、
前記金属層は、そのせん断強度が前記導電性回路を構成する材料のせん断強度よりも低い材料からなる薄い層で構成されることを特徴とする電子部品の表面実装方法。
【請求項4】
請求項1,2または3に記載の電子部品の表面実装方法によって、基板本体上に電子部品が実装されたことを特徴とする電子部品が実装された基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−59816(P2012−59816A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199832(P2010−199832)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】